アニ「ヒャッハー!久々のシャバだー!」(175)

進行遅め
捏造あり

アニ「…結晶から出たはいいけど、ここは…?」

ストヘス区でミカサ達に捕まり、最後の力で結晶化して…どれ位の時間が経ったのか。
結晶化した時から記憶がプッツリ途絶えている。
と、いうよりおそらく意識がなかったんだろう。

何日、何週間?いや、何ヶ月?

アニは結晶化したその時から何一つ変わらぬ姿であった。

アニ(よく分からないけど、そんなに時間は経っていない…?
まぁ目の前に兵士とかいなくてよかったよ)

部屋を見渡す。

アニ(地下牢か…それもかなり古い。
入口から光が入っているけどかなり暗いね。
鍵も空いてるし、これと言って人がいた形跡も無い。
…不用心過ぎやしないか?)

牢から出ると、すぐ横に見張りの物であろう机と椅子を見付ける。

アニ(…これは日誌?)

薄明かりの中、机の上に置いてあるノートをめくる。

アニ「…ぷわっ!?」

ノートを開いただけで埃が舞い上がる。

アニ「ゴホッ…どうなってんのさ…」

ノートはかなり劣化しているが辛うじて読み取る事が出来そうだ。

アニ(上の方が汚くて読めない…。
多分、日付が書いてあったんだろう。
えーっと…)

『本日も異常無し』

アニ(『本日も異常無し』ばっかりじゃないか。
なんかないのかな…ん?)

『久しぶりに顔を見に来た。
***ぶりかな。君が***で***してたのを思い出す。
早く***たいよ』
(***は汚れていて読めない)

アニ(誰だろう…名前が汚れてて読めないね。
A…n…tくらいしか…)

アニ(他には…)

ページをめくりながら椅子に座ろうとする。

ミシッ

アニ「えっ?」

ガッターン!

アニ「うわっ!
痛っ…!ってしまった…!」

椅子は劣化が進んでいたのか、アニの体重にすら耐えきれなかった。

大きな物音を立ててしまった事に焦り、咄嗟に机の下に隠れる。

アニ(今、誰か来たらマズイ…!)

アニ(他には…)

ページをめくりながら椅子に座ろうとする。

ミシッ

アニ「えっ?」

ガッターン!

アニ「うわっ!
痛っ…!ってしまった…!」

椅子は劣化が進んでいたのか、アニの体重にすら耐えきれなかった。

大きな物音を立ててしまった事に焦り、咄嗟に机の下に隠れる。

アニ(今、誰か来たらマズイ…!)

アニの不安と裏腹に時間が経っても誰も来ることはなかった。
それどころか何も聞こえてこない。

足音、話し声、人独特の気配すらも感じない。

アニ(いったいどうなって……ん、なんだこれ?)

アニはふと足元に落ちていた紙を拾い上げて明るみに出す。

アニ「!?」

チラシのようなもの。
そこに記されていたことは、アニの想定した事を遥かに上回ることであった。

『野菜20%割引!』

アニ「う…嘘…!」

アニは紙面の上部に書かれていたことに驚いていた。

『890年*月*日』

アニ「そ、そんなに眠っていたっていうのかい…!?」

アニは困惑していた。
本当に40年以上も時が経っているのか。
ここはどこなのか。
なぜ人がいないのか。
ライナーは?ベルトルトは?計画は?
故郷はどうなったのだろうか?

考えても何も解決はしない。

アニ「ここにいてもしょうがないね…
外に出るしか…」

アニはゆっくりと階段を上がると、庭のような場所にでる。

アニ(眩しっ…ここは…どこ…?)

どうやら大きな建物の中庭のような場所みたいだ。

アニ(兵団の施設…?
…しかし誰もいないね。不気味過ぎるよ)

ガタッ

アニ(人か!?)

アニは階段に戻り、身を潜めた。

ガタガタッ
ガシャン

アニ(~~~っ!?)

建物の窓から見えた影。
こんなところにいるはずがない。
アニは何度も目を疑った。

アニ(なんで……なんで巨人がここに!?)

自分がいる場所は壁内だと思っていた。

しかし目に映る3m級の巨人。

アニは身を強張らせる。

アニ(見つかったらマズイ…!
立体機動も無しでどうすればいい!?
巨人化は?ダメだ!
こんなワケ分からない状況じゃリスクが大き過ぎる!
見つかる前に逃げなきゃ…)

巨人との距離はおよそ20m。
いつ見つかってもおかしくない。

アニ(あいつが後ろを向いた瞬間に…!)

アニ(今だ!)

巨人が後ろを向いた瞬間、階段から飛び出し逆方向にアニは走り出した。

アニ(見つかってない…?)

ガシャン!

アニ「っ!?」

ドシンドシンドシンドシンドシンドシン!!

アニ(気付いたか…!)

足音が自分に向いているのが分かった。
アニは振り返らずに一目散に逃げる。

建物内に逃げ込んだアニは止まること無く逃げ回った。

アニ(しつこいね !
段々距離が縮まってきてるじゃないか…!)

アニは急に足止める。

アニ(行き止まり!?)

ドシンドシンドシン!

アニ「くそっ!」

咄嗟にすぐ横の部屋に逃げ込み、鍵をかけた。

アニ(こんなの時間稼ぎにすら…。
こうなったら窓から外へ…!)

ガッシャーン!

窓を突き破り、外へと脱出。

そしてアニは言葉を失った。

アニ「…え?」

周囲は見渡す限りの廃墟。

そして2体の巨人。
8mと12m級の巨人と目が合う。

そしてゆっくりとアニに向けて手を伸ばす。

アニ「あ…」

動けない。
仮に逃げたとしてもすぐに捕まるだろう。

巨人「あー」

アニを掴み大口を開ける。

アニ(……ライナー…ベルトルト…ごめん…)

アニは目を閉じ食われるのを待つだけだった。

「巨人発見!!
マズイ!誰か捕まっているぞ!!
俺が腕を切り落とす!援護しろ!」

「じゃあ私が13m級を!」

「俺は隊長の援護を!」

バシュウウウウ!

隊長→班長

瞬く間に殲滅される巨人。

切り落とされた巨人の手からアニが這い出る。

「危なかったな。新兵か?
お前、何班だ?」

無精髭の男がアニに詰め寄る。
答えられない。
アニは黙り込むだけだった。

「班長、怯えてるんですからもっと優しくしないと」

横から割り込むように若い男が入ってくる。

「…ん?そのマーク…憲兵団が何故ここに?」

「今回の作戦に憲兵はいないはずですね」

アニは頬に汗が伝うのを感じる。

アニ「わ、私は…」

「あー!なんで手伝ってくれなかったんですか!」

13m級の方へ向かっていった女兵が駆け寄ってくる。


「やかましい。
知能巨人じゃあるまいし、お前なら楽勝だろうが」

知能巨人という言葉にアニがピクリと反応する。

「どうしました?」

女兵がうつむくアニの顔を覗き込んだ。

アニ「ーーーえっ」

目の前には見たことのある顔。

私の同期、104期生の1人。

アニ「サ…シャ…?」

「なんだ、お前の知り合いか?」

「いえ…?すみません、何処かで会いましたっけ?」

アニ「何言って…あんたサシャじゃないのか?」

「そう…ですけど」

「サシャは有名人だからな。
知らない人の方が少ないだろ。
だよな?大食い姫」

「もー!大食いは言わないでくださいよー!
これは遺伝みたいものだからしょうがないんです!」

「いや、サシャはそれ以外にも凄いところあるからね。
ね、天才アタッカーさん」

「天才って…先輩、なんか馬鹿にしてません?」

「ははは。サシャの実力は兵長お墨付きだからね。
一緒の班で心強いよ」

サシャ「ふふん。任せてください。
13m級の1匹くらいなんてことありませんよ」ドヤッ

どうみてもサシャだ。
普段から人とはあまり接しないようにしてきたが、サシャは余りにも目立ち過ぎた。
嫌でも顔は覚えている。
見間違うはずもない。

ーーーだが

違う点が一つある。
美しかった黒髪が金髪になっているという事だ。

班長「で、お前は何者なんだ?」

アニ「え…いや、わからない…」

先輩「えっ?わからないって?」

アニ「ここがどこなのか…今が何年なのか…」

サシャ「今は910年ですよー」モグモグ

アニ「はぁ!?」

サシャ「んグッ!?の、喉に…!!」ドンドン

アニ「890年じゃ…ないのか?」

班長「はぁ?何を言ってるんだ?」

先輩「んん?そのジャケット…いつの型ですか?
見たこと無いけど…」

アニ「…分からない。
気が付いたらここにいたんだ…(ってことにしておこう)」

先輩「…記憶喪失ってやつですかね?」

班長「まさか。
……怪しいな。
お前…何者なんだ?」

ブレードに手をかけ、アニを睨みつける。

アニ「…っ!」

張り詰める空気。

サシャの胸を叩く音だけが響き渡る。

下手な嘘は通用しそうにない。
アニはゆっくりと口を開いた。

アニ「私は…104期生の…ミーナ・カロライナ…。
壁外遠征で巨人と交戦中に気絶して、気が付いたらここに…」

咄嗟に付いた嘘。
間接的だが自分が殺した友人の名前を使ってしまった。

心がチクリと痛む。

先輩「104期生って…あの黄金期じゃないか」

アニ「黄金期…?」

先輩「ミカサ・アッカーマンを筆頭に、エレン・イェーガーなどの歴戦の英雄を輩出した世代だ」

サシャ「私の祖母と祖父もその一人ですよ!」

アニ「そ、祖母と祖父!?」

サシャ「」

先輩「104期生って…あの黄金期じゃないか」

アニ「黄金期…?」

先輩「ミカサ・アッカーマンを筆頭に、エレン・イェーガーなどの歴戦の英雄を輩出した世代だよ」

サシャ「私の祖母と祖父もその一人ですよ!」

アニ「そ、祖母と祖父!?」

サシャ「はい。サシャ・ブラウスは私の祖母です。
母からはよく若い頃の祖母と瓜二つだって言われます。
あ、ちなみに私の名前は母が亡くなった祖母の名前にしたんです。
祖母のように勇敢で聡明な人になれるようにって」

アニ「サシャが聡明…?
あいつがどんな奴だったか知らないのかい…?
それと…祖父って誰?」

サシャ「祖父はジャン・キルシュタインですよ」

アニ「はああ!?」

アニ(あいつ、ミカサ一筋じゃなかったの!?
まぁサシャとはよく話してたイメージはあったけど…。
私はてっきりコニーかと…)

サシャ「どうしました?」

アニ「いや…なんでも…」

班長「…悪いが、お前が104期生ってことを信じることはできない。
そんなタイムスリップみたいな話はあり得ないしな」

先輩「うーん…とりあえず作戦中ですからねぇ。
ひとまず身柄は確保させてもらいましょうか」

アニ「…分かった」

サシャ「…!」ピクッ

班長「…どうした」

サシャ「…巨人が接近してますね。
足音は四つ。13m級が二体、8m級が一体。
後は…でかいですね、18m級が一体、です。
距離は500。どんどんこっちに来てますね」

班長「18m級…?
まさか……奴が!?」

アニ(奴?まさかライナー…?)

サシャ「もうちょっと近づかないと分からないですけど、おそらく『獣』だと思います」

先輩「いきなり来たか…。
班長、どうします?」

班長「目標が向こうから出向いて来るとはな。
…やるぞ。これ以上作戦を長引かせる訳にはいかん」

サシャ「信号弾打ちます?」

班長「やめとけ。こっちの位置がバレちまう」

先輩「とは言えど、四体同時はサシャがいるにしてもキツイです。
ましてやあの獣までいるとなると…」

班長「ふむ…サシャ。
獣以外の三体を任せてもいいか?」

サシャ「了解です!」

アニ「ちょっ…!三体引き受けるなんて自殺行為じゃないか!」

サシャ「大丈夫です!ここの地形なら楽勝ですよ!」

先輩「頼りにしてるよ。
私は班長と2人で獣を討伐ってことですかね」

班長「ああ。陽動は任せた。俺が奴を削ぎ落とす」

班長「あとはお前なんだが…。
…悪いがついて来てもらおう。
身元がハッキリしない以上泳がせて置くわけにもいかないんでな」

アニ「…了解」

サシャ「私の目の届く所にいてくださいね。
とは言っても危ないことに変わりはありませんが…」

先輩「…!
目標視認!距離200!来ますよ!!」

班長「あとはお前なんだが…。
…悪いがついて来てもらおう。
身元がハッキリしない以上泳がせて置くわけにもいかないんでな」

アニ「…了解」

サシャ「私の目の届く所にいてくださいね。
とは言っても危ないことに変わりはありませんが…」

先輩「…!
目標視認!距離200!来ますよ!!」

班長「俺たちは建物を迂回して左右から獣を挟み込む!
サシャは正面から引きつけてくれ!」

サシャ「了解です!」

アニ「無茶だ!
そんな事したらサシャが…!」

サシャ「だいじょーぶです!
ミーナ?でしたっけ?
見つからないように、あっちの建物の中に隠れててください!
もう来ますよ!早く!!」

アニ「…っ!」

けたたましい足音を立てて迫り来る巨人。

獣の巨人は後方から動かずにサシャを眺めている。

サシャ「さてさて…あなた方には悪いですが…」

アニ(サシャ…?)

サシャの雰囲気が変わる。
普段のおちゃらけた天真爛漫なサシャとは違い、まるで獲物を狙う狼のような眼光。
口元を歪ませ「ガルル」と言った声が漏れ出す。

サシャの放つ殺気はアニまで届いていた。

アニ(あ、あれがサシャ!?
野獣…?いや、あれは全てを屠る狩人の目…!)

アニはかつてリヴァイと対峙したときと同じような気配を感じる。

ーーーいや、それ以上かもしれなかった。

続きは今夜

気味の悪い笑みを浮かべながら迫る巨人。

13m級が二体同時に飛びかかる。

サシャ「フーッ…」

大きな深呼吸をし、アンカーを頭上に放ち、ガスを吹かして上へ飛ぶ。

ドォン!

サシャのいた場所に巨人が突っ込む。

空中で反転したサシャはアンカーを二匹の巨人にうなじに一本ずつ打ち込み急降下。

ズババンッ!

閃光のようなスピードでほぼ同時にうなじを削ぎ取った。

アニ(…強い)

アニは遠巻きながらもサシャの背中に感じたものがあった。

アニ(あれ…?
今一瞬だけどサシャとミカサがダブって見えたような…)

8m級がサシャに手を伸ばし近づく。

既に8m級の後方に放ったアンカーを使い、タンッ、タンッと軽快なステップで壁を走る。

あっという間に背後に回り込んだサシャはガスを巧みに吹かし、方向転換する。

アニ(コニー…ジャン…?)

ズバァン!

ばっくりとうなじが削がれ8m級が沈む。

アニ(今のは…私の…)

まだ成人にも満たない少女の小さな背中には、幾重にも想いが込められていた。

アニ(なるほどね…強いわけだ)

サシャの背中に託されていた自分の想い。

60年前に残してきた後悔と数々の罪。

アニ(あ…れ…?なんで…?)

頬を伝う暖かい感触。

あの時から抑えていた感情が決壊し、アニの心から想いが溢れ出していた。

アニ「ごめん…なさい」

誰かに言ったつもりでは無い。
許して貰いたいわけでも無い。

ただ、自然と溢れ出した言葉。

戦士としての行持を全うするために殺した心。
その心が今、静かに脈動を始めた。

サシャの背中を見ていたアニの目に光が宿る。

アニ(私は…戦士じゃなくてもいい。
もう…仲間を…友を…大切な物を裏切りたくない…!)

サシャ「…っ!」ピクッ

サシャが何かに気付く。
バッと後ろ向き大声を上げた。

サシャ「ダメや!!!
先輩!班長!!

これは罠ですッッッ!!!!」

微かにサシャの声が届いていた。

しかし、アタック直前の2人は止まることができなかった。

先輩「あっ…!ぐあああああ!!!?」

突如建物の影から飛び出してきた巨人。
反応する間も無く下半身を食い千切られる。

班長「くそっ!!
読まれてたのか……くっ!?」

先輩兵士と同じく大口を開け迫り来る巨人。

先輩「うおおっ!!」

ガスを吹かしに回避成功。

しかしーーー

サシャ「ーーーあっ」

ガシッ

班長「うっ!?くそっ!!放せ…!!」

回避した先にいる獣。
その長い手にいとも簡単に捕まってしまう。

サシャ「班長おおお!!!」

班長「あっ…がっ…!」

ミシミシと音を立てて体が潰れて行く。

班長「逃…げろ…!」

自分はもう間に合わない。
そう感じると、サシャに最期の指示を出した。
サシャとの距離は200程度。
囁く程度の声が聞こえるはずはなかった。

サシャ「…っ!!」

アニ「ダメだ!もう間に合わない…」

サシャ「了解しました!班長!!」

アニ「っ!!」

サシャはそう言い放つとアニを抱えて立体機動に移った。

班長「…そうだ…それでいい…お前は…生き延びて…このクソ猿を…」

ググッ…と獣の手に力が入る。

先輩「ぶっ殺してくれ…!」

グシャッ

ここまで
寝る前に少し書く…かも

支援してくれた人ありがとう
オチは考えてあるので多分完結はそんなに遅くならないと思う
捏造ありの細かい設定はあまり気にして無いのであしからず

アニを抱え、全速力で建物のあいだを駆けた。

アニが知っているサシャであったら、目の前で人が死ぬ光景に慌てふためき、泣き出していただろう。

そして仇を取ろうと突っ込んでいたかもしれない。

アニ「…サシャ」

何て声をかければいいのか悩む。
励ましの言葉?
そんなものクソの役にも立ちはしないだろう。

サシャ「…目の前で人が死ぬのは慣れっこです」

ギリッと歯を食いしばり苦虫を噛んだような顔した。

サシャ「奴とここで戦う事に意味はありません。
…勇敢と無謀は違います」

アニ「そう…だね」

サシャ「周りに巨人はいないみたいですね。
ここで一晩明かしましょう」

アニ「…ああ」

そう言いながら後ろに回したポーチからパンを取り出す。

サシャ「食べます?
食べる事は命の補充ですよ」

アニ「…え?今…なんて?」

サシャ「ん?パン、食べます?
美味しいですよ」

こいつはサシャじゃない。

私の知っているサシャは食べ物を分けたりしない。

アニ「調子狂うね…」

サシャ「はい、どうぞ」

アニ「…分けるって普通は半分にするもんだと思うんだけど」

アニの手に乗せられた小石程度のパン。
どうみても意図的に千切られた形跡がある。

サシャ「すいません…もう食べちゃいました…」

アニ「……ふふっ」パクッ

サシャ「?」

やっぱりサシャはサシャだった。

サシャ「さて、これからどうしましょうかね…」ゴソゴソ

再びポーチを漁り、蒸した芋を取り出す。

サシャ「あ、これは上げられませんよ」

アニ「いらないよ」

もう、胸がいっぱいだ。

アニ「増援は?」

サシャ「信号弾を打って増援を呼びたいんですけど…獣に見られる可能性が高いです。
それに日も暮れてます。
色の判別は難しいでしょうね」

アニ「あ、ああ…そうだよね」

サシャに反論される違和感。
私の知っているサシャだったら「信号弾打ちましょうよ!誰か来てくれるかもしれないです!パァン!」とか言ってる気がする。

サシャ「夜は活動しない巨人も獣が近くにいると動くんです。
夜間の行動は諦めて夜明けと共に出ます。
ここで奴を逃すわけには行きません。
私1人で策を立てて行くしか…」

アニ「…一人じゃない」

サシャ「…いえ、増援を呼ぶ時間は…」

アニ「…私も戦うよ」

続きは12時ごろに

サシャ「…気持ちだけ受け取っておきます」

アニ「一人じゃあいつには勝てない。
そんなことはあんたなら分かるはずだ」

うぐっと声を飲み込む。

サシャ「…立体機動も無しに戦う方法なんてあるんですか?」

アニ「…あるよ。
一つだけ、ね」

アニはそう言って指輪をやはめ込んだ。

サシャ「指輪…?」

アニ「奴の取り巻きは任せな。
私が道を開いてやる」

サシャ「何か…策があるんですね」

アニ「…」コク

サシャ「…分かりました。信じます」

アニ「そんなに簡単に信じていいのかい?」

サシャ「うーん…どうなんでしょうね…。
正直、怪しいとは思いますけど」

アニ「…だろうね」

サシャ「ただ…」

アニ「…?」

サシャ「ミーナの目がじいちゃんとばぁちゃんの目と同じ風に見えるんです。
なんていうか、目付きとか大きさとかじゃなくて…強いて言うなら…光、ですかね」

アニ「…あんたは私が守るよ」

サシャ「今日会ったばかりなのに、ミーナの言葉には安心感があるんですよね。
うーん…友達?みたい感じです」

アニ「…友達か。
そんな大層なもんじゃないよ」

サシャ「不思議ですよねぇ…。
あ、そろそろ休息を取りましょう。
私が見張りをするのでアニは先に寝てください」

アニ「そうさせてもらうよ」

屋上

サシャ「寒っ…。
今日は雲ひとつ無いですねぇ。
星が綺麗…」

アニ「サシャ」

サシャ「うわわっ!?
驚かさないで下さいよ!!」

アニ「悪いね。なかなか寝付けなくって」

サシャ「私の耳をかいくぐるとはやりますね…。
子守唄でも歌いますか?」

アニ「…話が聞きたいんだ」

サシャ「話?」

アニ「そうだね…あんたのじいちゃんとばぁちゃんの話とか…ね」

サシャ「あ、ミーナは60年前から来たんでしたっけ。
気になるんですか?」

アニ「聞かせて欲しいんだ。
…私の同期達の話を」

サシャ「構いませんよ。私の知ってる範囲でよければ」

サシャから聞いた話全て驚かされる話ばかりだった。

エレンの力で人類は大きく進歩した。
戦火に散ってしまったらしいが、最後は壮絶な死に方で、後世に語り継がれる英雄になったらしい。

ミカサはリヴァイの後継として兵長に就任。
リヴァイ顔負けの実力で人類の矛となったみたいだ。
なんと今の兵長に後任渡すまで最前線で戦い続けていたらしい。
そして還暦で引退。
化物だね。

ジャンとサシャは調査兵団で頭角を現し、エレンとミカサの右腕として活躍したそうだ。
2人は結婚した後にサシャは身籠り兵士を引退。
ジャンは歳で引退してから教官職に就いたらしい。

ライナー、ベルトルト、そして私の名前な出てくることはなかった。

しかし鎧、超大型、女型の名で歴史には残されていた。

鎧の巨人…ライナーは再び壁を破ろうと出現した。
しかし黄金期と呼ばれる調査兵団の前に破れ、ウォール・シーナ南東の大渓谷に沈む。
その時の戦いで最も活躍したと言われたのがコニーだった。
鎧の巨人にトドメを一撃を放った後に絶命した。
死ぬ間際にジャンからサシャと結婚する事を告げられて、「ええっ、マジかよ。サシャのおっぱい揉み放題ジャン」が最期の言葉になったらしい。
馬鹿は死んでも治らないとはこのことだろう。
…まぁあいつらしいけどね。

1番驚いたのはアルミンだった。

ミカサと同じく最年少で調査兵団団長に就任。
アルミンの考える作戦が最も人類の進歩に貢献したと言われている。

団長を引退した後は…

アルレルト総統、だとさ。

ベルトルト…超大型は姿を表すことはなかったらしい。
あいつの事だ。
ライナーも私もいなくなってどっかで縮こまってるんだろうね。
デカイ図体してさ。


何故かクリスタの話は出てこなかった。
あんなに目立つんだから話くらいあると思うんだけどね。
おそらく……。

あと…あのソバカス女…名前なんだっけ…。
まぁいいか。

サシャ「じいちゃんがばぁちゃんと結婚した決め手はですね……あ」

アニ「夜…明けたね」

水平線に浮かぶ朝日。
それが作戦開始の合図だった。

アニ「…寝てないけど大丈夫かい?」

サシャ「不思議と絶好調です。負ける気しませんね。
ミーナは?」

アニ「私は平気だよ。
なにせ60年間寝てたみたいだし」

サシャ「あはは。そうでしたね!」

アニ「…さて、行こうか」

サシャ「…はい!
あ、その…ミーナ…」

アニ「…アニ。
私の名前はアニ・レオンハートだ」

サシャ「あー…やっぱり。
なんかミーナって感じがしなかったんですよねー。
アニ…うん、アニはしっくりきます!」

アニ「…大した勘だね。あんたには敵わないよ」

サシャ「アニ…どんな策があるか教えてくれませんでしたけど…。
囮を任せておいて厚かましいですが…その…死なないでくださいね」

アニ「…あんたもね」

サシャ「それじゃ…行きますか!」

サシャが馬を呼び寄せ手綱を握る。

サシャ「よしよし。いい子ですね。
ちょっと無理してもらいますけど頼みますよ」

馬「任せな」

サシャ「…!」ピクッ

アニ「…見つけたかい?」

サシャ「はい。なんだか今日は耳が一段と遠くまで聞こえます。
距離北東に800、獣の他に3匹。
建物の影に3匹隠れてますね」

アニ「問題無いね。
作戦通り馬で近付くよ」

サシャ「…はい」

余計なツッコミすると、60年も経ってるのに科学技術的な進歩がないってどうなんだ…

>>87
あぁんそこまで考えさせんといて
息抜きに書いてるから粗くても我慢しておくれ

続き

サシャ「ここら辺が多分限界ですね。
これ以上近付くと多分気付かれます」

アニ「…分かった。
ここからは私の出番だ」

サシャ「え…?ちょっ、アニ…!?」

アニがスタスタと巨人の方に歩きだす。

サシャ「そんなに前に出たら…!」

前方の巨人がアニに気付いた。

獣も同時にアニの存在に気付き、ボソボソと何か巨人に伝える。

それと同時に、取り巻きの3体の巨人がアニに向けて走り出した。

サシャ「ア……!」

名前を呼ぼうとすると、アニは一瞬サシャの方に視線を送った。

大丈夫、だから。

そう聞こえた気がした。

サシャ「了解…!作戦に移ります…!」

アニ「まったく…嫌になるよ」パチン

60年前に友を裏切り、次は故郷を、ライナーとベルトルトを、そして父を裏切ろうしている。

アニ「ライナー…ベルトルト……お父さん…」

ピッ

自分の気持ちは裏切りたくない。
たとえここで死ぬことになっても。

アニ(…ごめんね)

カッ!

女型「キアアアアアアアアアアアア!!!」

閃光と共に咆哮が響き渡る。

サシャ「っ新手!?」

馬「集中しな嬢ちゃん。舌噛んじまうぜ」

サシャ「…分かってます!」

アニは一つだけサシャに頼み事をしていた。

「何があっても振り返るな」

と。

作戦と言っても内容は前回の獣と交戦した時とほとんど一緒だった。

馬を使い建物を迂回。

アニが獣の取り巻きを引きつけてる間にサシャが獣を狙う。

物陰に潜んでいる巨人は3匹。

サシャのセンサーによると獣のを囲むように配置されている。

サシャ「…ガスは極力使いません。
馬さんの脚を頼らせてもらいます。
あそこの建物に一匹いるので、通り過ぎる直前に一瞬止まってください」

馬「振り落とされるなよ」

サシャ「…今です!」

馬「ヒヒヒーン!!」

ズゥゥウン!!

サシャを喰らおうとした巨人がくちを開けて飛び出す。
巨人の噛み付きが空振り、前のめりに倒れる。

サシャ「馬さん、GO!!!」

馬「よし来た」

馬が走り出すと同時に巨人のうなじにアンカーを打ち込む。

サシャ「はあっ!!!」

ザンッ!

うなじを深く削ぎ落とし、落下地点にいた馬に再び乗り込む。

サシャ「後は獣まで一気に…!」

獣のまでの距離は100を切ろうとしていた。

サシャ「!!」

ヒュウウウウ…

サシャ「馬さん!加速してください!」

ドォン!

突如降り注ぐ瓦礫。
加速しなければ死んでいただろう。

サシャ「見つかっちゃいましたね…!」

獣がサシャを目がけ再び投擲を行った。

サシャ「このまま立体機動に移ります!
馬さんは退避しててください!」パシュッ

馬「…死ぬなよ。
俺の背中には嬢ちゃん以外乗せるつもりは無いからな」

サシャ「…了解ですっ!!」

ドォン!!

サシャ(この投擲さえ抜ければ…っ!)

ドォン!!

サシャ「あと…少し…!」

ドォン!!

獣のまで距離30を切ったところで獣動きが止まる。

建物の陰から現れる13m級の巨人。
隠れていた巨人を呼び寄せたのだ。

目の前を通り過ぎるサシャを捉えようと手を伸ばす。

サシャ「バレバレですよ!」チャキッ

ズバンッ!

アンカーを壁に打ち込み、巨人の手を回避。
そしてすれ違い様に巨人の首を前からうなじにかけて大きく削ぎ取った。

サシャ(これで獣まで一直線に!)

建物の屋上を走り獣の目掛けて全力で駆ける。

サシャは最初の一撃に全てをかけようとしていた。

獣の巨人は立体機動の弱点と対策法を熟知している。
度重なる調査兵団との戦いによって、獣に立体機動はもはや脅威ではなくなっていたのだ。

リヴァイ、ミカサの歴戦の兵士にも仕留められなかったほどに獣の巨人は手強い。

サシャの勝機も薄かった。

獣がサシャを視界に捉え首を傾げる。

獣「あれ…?どっかで会ったことないっけ…」

サシャ「二年ぶりですね…獣の巨人さん…!」

ダンッ!

サシャ獣の目掛けて建物から飛んだ。

2年前、サシャが新兵だった時に一度だけ獣の巨人の討伐任務に参加していたことがあった。

結果は惨敗。
当時の調査兵団は獣の率いる巨人群に数で圧倒され、ほぼ壊滅状態に陥った。

サシャは最後まで戦い、獣の右腕を切り落とした。

その成果から生き残った調査兵団は撤退に成功。

新兵でありながら結果を残したサシャはその頃から天才と呼ばれ、調査兵団のエースとして活躍してきた。

そして2年の時を経て、再び戦いの火蓋が切って落とされた。

サシャ「アアアアアッ!!!」

続きは12時ごろ

捏造し過ぎか…

サシャ「くっ…!」

ドォン!

サシャは獣に接近することができなかった。
立体機動を熟知している獣が狙うのはワイヤーのみ。

無防備に伸びるワイヤーを掴んだ瞬間、勝負が決まる。

そこだけに集中していれば手練れであっても接近さえ許すことは無かった。

最も厄介なのは獣の長い腕。
中途半端な場所にアンカーを打ち込もう物なら、即座に掴むことができるリーチは立体機動そのものの動きを制限する。

サシャ「はぁ…はぁ…」

このままではジリ貧。
サシャは最後の賭けに出る。

獣「…?もう諦めるんですか?」

ブレードを納め、獣に向き直った。

サシャ「…人は諦めた時に負けたことになるんです。
だから私は…絶対に諦めません!!」

獣「よく分からないけど…もう死んでくれるかな」

ポリポリと顔をかきながら、獣が手を振り下ろす。

ドォォォン!

ビシュッ

立ち込める砂煙の中から何かが飛び出す。

ドドッ

獣「うっ…?」

突如、獣の両目に突き刺さった矢。

視界を奪うとはいかないが獣の視界を霞める程度の効果はあった。

その隙をサシャは決して逃さない。

サシャ「これが最初で最後の一撃やあああああああッ!!!」パシュッ

矢を放つと同時にサシャは砂煙の中から飛び出し、獣の真横まで走っていた。

建物か跳ぶと同時にアンカーを獣のうなじに打ち込み、サシャは真横からの一閃を狙う。

矢に一瞬気を取られた獣はアンカーには反応できなかったものの、即座にワイヤーを掴もうとする。

スピード勝負。
コンマ数秒の世界でサシャは全てを賭けた。

人類は60年という歳月を使い、立体機動装置の性能の底上げを行う。

ガスの貯蓄量、ブレードの強化、軽量化に成功。

地味な変化ではあったが、兵士1人の生存率を著しく向上させることなった。

立体機動は完成された。
当時の技工部はこれ以上の進化は不可能だと結論づける。

しかし、当時の調査兵団団長だったアルミンの発明により一つだけ新たな機能を追加することに成功した。

それにより立体機動のスピードを一瞬だけ大幅に上げることができるようになる。

ブースター。
つまり加速装置を搭載させたのだった。

しかしこの加速装置は使われることは滅多無かった。

ガスの半分以上を一瞬で使い、その反動は肉体の限界を超える。

使えば動けなくなることが目に見えるため、誰も使いこなせなかった。
いや、誰もが使うのをためらった。

玉砕戦法。

アルミンは全てを捨てて戦う覚悟のある者にのみ加速装置を持たせた。

ワイヤーに迫る獣の手。

サシャは加速装置のトリガーに掛けた指を躊躇い無く引いた。

ドンッ!!

サシャ「うっ…ぐ………アアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

爆発音に近い音を立ててサシャは加速する。

身体が軋み、視界がボヤける。


サシャ「……届かんかいっ!!!」

ここまで
明日中に完結予定

ズバァン!

獣の手をすり抜け大きくうなじを削ぎ取った。

サシャ「やった…!」

空に放り出されるようにサシャが落下していく。

サシャ(あかん…!このままじゃ地面に…)

反動で体と立体機動が上手く動かせない。

馬「嬢ちゃん!!」バッ

サシャ「ぐえっ!!」ドサッ

飛び出した馬の背中に腹から落ちたサシャは情けない悲鳴を上げた。

サシャ「痛た…馬さん…助かりました」

馬「無茶をしやがって…。
だが…最高にcoolだったぜ」ブルルッ

サシャ「あはは…」

ドシン…ドシン…

サシャ「…!?」

前方に巨人が一体現れる。
隠れていた3体の残り1体がサシャに向かって来ていた。

サシャ「馬さん!」

馬「悪い…!さっき嬢ちゃんを助けた時に脚をやっちまったみたいだ…!」

サシャ「ええっ!?しっかりしてくださいよ!
ほら!踏ん張らんかい!!」スパァン!

馬「痛ぇ!!ブレードで叩くな!無理だよ!足折れてるから!」

サシャ「ああもう!
そこまで来ちゃってるじゃないですかぁ!!」

巨人「あー」

サシャ馬「うわああああああ!!!」

グシャッ!!

サシャ「うひゃあっ!?」

目の前の巨人の頭が吹き飛ぶ。
その横には女型の巨人が立っていた。

サシャ「えっ…どうなって…」

バシュウウウ…

女型のうなじから蒸気が上がる。

サシャ「ア…アニ…!?」

アニ「ゴホッ!…悪い…少し遅れた…。
…無事かい?」

サシャ「え、ええ…。
アニ…あなたはいったい…」

アニ「…秘密さ。
それより獣は…?」

サシャ「えへへ」ブイッ

サシャは満面の笑顔でVサインを送った。

アニ「よく…やったね」

獣「あー…やられちゃった」シュウウウ…

アニサシャ「っ!?」

獣「このまま死ぬのは癪だしね…。
道連れにでもさせてもらおうかなぁ…」シュウウウ…

獣が大きく息を吸う。

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!

サシャ「…!?」ビリビリ

アニ(今のは…まさか!?)

獣「…それじゃ、せいぜい頑張ってね」

獣は崩れ落ち、気化して逝った。

サシャの背筋に悪寒が走る。

アニ「サシャ!!私に乗るんだ!!
早く!!」

馬「俺は!?」

アニ「喋った!?」

馬「(いっけね)ブルッwヒヒーンwww」

アニ「気のせいか…。
心無しかジャンに似てるところが腹立たしいよ」

サシャ「じーちゃんは人間ですよ!」

馬「あの極悪馬面と一緒にしないでくれよ」

アニ「おい!今喋っただろ!!」

馬「ヒヒーンwwwブルッヒヒーンwww」

アニ「ああもう!!
どうでもいいから…いや、良くないけど!
早くしな!!」ムンズ

サシャ「うわっ!」

馬「ぐああっ!
胴体を鷲掴みにするんじゃない!!
出る!!臓物ブチまけちゃううう!!」

アニ「うっせぇ!馬が喋るんじゃないよ!!」

馬「馬にも人権はあると訴えたい」

アニ「無いよ!ジャン以外には!!」

サシャ「!!
アニ!全方位から物凄い数の巨人が接近してます!!」

アニ「分かってる!舌噛むんじゃないよ!!
巨人の数が少ない方角は分かるかい!?」

サシャ「足音が少ないのは…あっちです!!」

アニ「私は中に戻る!
しっかり掴まってな!!」

馬「おうよ。あ、掴まる手が無かった」

ダッ!

アニ(全速力でも逃げ切れるか…!
いざとなったら…)

サシャ「アニ!前方から3m級が来ます!!」

巨人「ヒャッハー!女だー!!」

女型「…!」ググッ

ズダンッ!

10mを軽く超える跳躍で3m級を飛び越える。

サシャ「凄いっ…!」

ズゥン!

サシャ「」ガリッ

ブシャアアア

アニ(舌噛むなって言ったろ!!)

再び全速力で走り出す女型。

しかし後ろから迫る巨人の群。

その重圧はアニを焦燥させる。

アニ(マズいね…!
何匹か足が速いやつもいる…っ!?)

サシャ「あい!まえからひまふ!!(アニ!前から来ます!!)」

巨人「いい女型がいやがるぜぇ!ヒャッハー!」

アニ(…舐めんじゃないよ!)

女型「アアアッ!!」シュッ

ドコォォォ!!!

前方から飛びかかる巨人の頭を蹴り飛ばす。

巨人「いでぇよおおお!!!」ガシッ

頭を吹き飛ばされながら女型の体にしがみつく巨人。

アニ(しまっ…!)

ズゥゥウン…

蹴りを出したことにで片足だった女型はいとも簡単に倒されてしまう。

女型「アアッ!!」ドコッ!

サシャ(と馬)を片手守るために片手が塞がっている女型は、空いた手で巨人を引き離さそうとする。

女型「……アアアッ!!」

引き離した隙間に足を入れ、思い切り蹴り飛ばす。

蹴り飛ばすと同時に立ち上がり再び走ろうとする。

しかしーーー

巨人「逃がさねえぞぉ~!」

飛び越した巨人が後ろから飛びつく。
前のめりに女型が倒れ、その衝撃でサシャと馬が地面に放り出される。

サシャ「あっ…ぐ…!」

馬「おうふっ!!」

アニ(サシャが…!!)

次々と女型に飛びつく巨人。

アニは既に身動きが取れなくなっていた。

巨人「まずはその邪魔な服を引き裂いてやるぅ~!」

バリッ
ブチブチッ

巨人の群れに食い荒らされる女型。

うなじに歯を突き立てるまでそうかからないだろう。

サシャ「ア…ニ…!」

体が動かない。
放り出された時に頭を打ちつけていたサシャは頭から流血し、美しい金髪は血に染まり、視界が霞んでいた。

サシャ「やめ…て…」

ブチブチッ

巨人が止まることはない。
それどころかーーー

サシャ「あ…」

巨人と目が合う。
そしてゆっくりとサシャに向かって歩き出した。

アニ(サシャ…!
…………させない。
あいつだけは…絶対に…!
サシャだけは絶対に殺させないッ!!!)

女型「キィィイイイアアアアアアアアアアアアアア!!」

サシャ「ア…ニ…?」

女型が獣と同じような咆哮を上げた瞬間、目の前の巨人が止まる。

サシャ「え…?」

巨人は女型の方に走り出す。

女型にまとわりつく巨人の動きが加速しだした。

サシャ「な…んで…」

アニ(もう…これ位しかできない…。
頼む…誰か…誰かサシャを助けに…!)

食い尽くされて行く女型。

硬化してうなじを守るがそれも時間の問題だった。

サシャ「アニ…死なないでくださいって…言ったじゃないですかぁ…」

サシャは泣きながらアニの方へと這う。

アニ(来るんじゃない…もう手遅れさ…)

サシャ「アニ…アニ…」

アニ(なんて顔してんだい…鼻水垂れてるよ…)

サシャ「最後まで…諦めないで…一緒に生きて…帰りましょうよ…!」

アニ(生きて…)

サシャ「今…助けます…!」チャキッ

ブレードに手をかけ、子鹿の様に立ち上がる。
風が吹けば倒れてしまいそうだった。

サシャ「何匹いようとも…全員うなじを削ぎ落として…必ず…!」

アニ(サシャ…なんで私のためなんかに…)

サシャ「わだじは絶対あぎらべないッ!!!」

アニ(…やっぱり馬鹿だね。流石はサシャの孫だ。
でも……そんな顔されたら…

私も最後まで足掻かなきゃいけないじゃないか!!!!)

アニサシャ「ウアアアアアアアアアアアアアッ!!」

「良く言った」

サシャ「……へ?」グスッ

ポンと肩を叩かれ思わず振り返る。

そこには長身の老人と若い細身の女が立っていた。

サシャ「…誰…ですか?」

老人「それは答えられないけど…後は任せて」

女「うおっ。こいつがあの芋女の孫か。
本当にそっくりだな」

サシャ「…?」

サシャは状況が飲み込めていない。
ただ、老人の優しい顔を見ていた。

女「おらっ。これでも食ってろ」

サシャ「ふがっ!?」

女がおもむろにサシャの口にパンを突っ込む。

サシャ「これは…パァン!?」モガモガ

女「ダハハ!どこまでそっくりなんだよ!」

老人「ちょっ…ダメだよ。今にも死にそうなんだから…」

サシャ「…あ」フラッ

サシャは気が抜けて倒れこむ。

老人「おっと…さて、アニを助けないとね」

女「いいのか?戦士の行持とやらは?」

老人「…いいんだよ。
僕はあの時…戦士として既に死んでいるからね」

女「あのゴリラが死んだ時…か。
ま、それとは別に助けたいだけだろ?
大好きなアニちゃんをよ」

老「全く君は…ほら、やるよユミル」

ユミル「昔よりちったぁ勇敢になったんじゃねぇか?
ベルトルさんよ」

ベルトルト「人は年を取れば変わるさ。
まぁ…昔から姿が変わらないユミルには分からないかな」

ユミル「けっ、老人が無茶すんなよ。
ほれナイフ」

ベルトル「…行くよ」ピッ

ユミル「おう」ピッ

ーーーカッ!!

辺りに転がる巨人の群れ。
体から蒸気を放ち、霧がかかっているようだ。

ユミル「さっすが超大型巨人。
ほとんど1人でやっちまったな。
で、アニのやつは…っと」

ベルトルト「……」

ユミル「おーいベルトルさん。
アニは生きてたか……って、おいおい…」

ベルトルト「…そうか。
君にも生きて会いたいと思う人ができたんだね…」

ベルトルト「…おかえりアニ。
そしておやすみ、だね…」

人類は睡魔に勝てない…

アニ…アニ…!

誰かが私の名前を読んでいる。

私は…生きているのか?

そうだ…サシャは…?

アニ「……サシャは!?」

アニの目の前には老婆が1人。
優しい笑みを浮かべている。

「…ここにいますよ」

老婆がアニを抱きしめる。

アニ「サシャ…?
…そうか…私はまた……」

サシャ「…寝過ぎですよ。
もう…こんなしわくちゃのお婆さんになっちゃったじゃないですか」

アニ「…巨人」

アニ「…巨人は?」

サシャ「…もういませんよ」

アニ「よかった…うまく逃げ切れたんだね」

サシャ「そうじゃありません」

アニ「…そうじゃない?」

サシャ「もう巨人はどこにもいないんですよ」

アニ「…?」

サシャ「勝ちましたよ、人類」ブイッ

あの時と変わらぬ笑顔。

アニ「…おつかれさま、サシャ」

ふっとアニが微笑んだ。

サシャ「…はい!」

くぅ疲

息抜きで書いたつもりが予想以上に長引いた…

ここまで見てくれてありがとう

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月26日 (火) 21:56:47   ID: EPf5l5nq

ごめんなさい 馬鹿だから何がなんだか分からねぇ…

2 :  SS好きの774さん   2014年12月05日 (金) 16:46:10   ID: yOnSTSUt

ベルトルトはいた。

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