男「ガンプラバトル?」セイ「ブルーディスティニー1号機ですね!」 (67)

『ガンダムビルドファイターズ』
を中心にしたガンダム作品のSSです


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背後には青い地球。
俺たちが守らねばならないもの。
けれど今、俺を突き動かしているのは、人の想いだった。

「―――――――――」
「―――――――――」

彼の心を感じる。
優しくも悲しい、温かくも切ない。
そして俺にとっては懐かしいもの。

壊れそうな腕で掴む緑色の鉄。
その向こうには蒼い宇宙。
いつからか俺を捉えて離さない変わらない蒼。

光の中で祈るように、いつかの日々を思い出した。

―――――――――――――――――――――――――

長い夢を見た。

男「…あれ、…うん…?」

妹「あ…兄さん、目が覚めたんですね」

男「妹…?俺はいったい…」

妹「あはは、兄さんったら友さんにジュースの買い出し頼まれて部室出た後に、熱中症で倒れちゃったんですよ?」

瞼を開けると、少し硬いベッドの上。学校の保健室で、横には可愛い俺の妹。

男「あ…あー、そうだ、そうか。はは、ここのところ作業しっぱなしで睡眠不足だったしな」

妹「もー、気をつけてくださいね?皆さん心配してますから」

男「ああ、ごめんな。お…」

妹「…お?」

男(だが妹はこんなにも、何かを優しく訴えかけるような声をしていただろうか)

男「あ、いや…お前にも心配かけたな、すまん」

妹「…ふふっ。そういうセリフはちゃんと皆さんにも言うんですよ?」

男「肝に銘じておく」

妹「今日の部活はもうおしまいですから。帰りましょう、立てますか?」スッ

男「おう(あ…あれ?)」ギュッ

妹「にい…さん?痛っ」

男「……………」ギュィィ

妹「…泣いているんですか?」

男「…ごめん…。なん、か…」

妹「あ、あの…」

男(何でだろう、どうしてこんなにも妹に触れたいんだろう)

男「ずっと…こうしたかったみたいな…」

妹「えっ…に、兄さん…?//」

ガラッバァァァァァァァン

女「…男…?」

男「…女…?」

女「…せっかく人が心配して様子見に来てあげたら!」

女「なんでっ!妹ちゃんと!二人きりの保健室で抱き合ってるの!」

男「混ざる?」

女「け…結構です!」

男「ふーん」

妹「(兄さん兄さん)」

男「(うん?)」

妹「(今ですよ、さっき言ったみたいに)」

男「(ん?んん)あ、女」

女「何っ!って離れなよ二人とも!」

男「心配してくれてありがとな」
  
女「………帰るっ!お大事にっ!」フンッ

男「ごめんな妹、なんか迷惑かけちった」サッ

妹「い、いえっ!私は大丈夫です!」

男「俺たちも帰ろうか」

妹「はい!」

―次の日―

男「おはよう、妹」

妹「おはようございます、兄さん。昨夜はよく眠れましたか?」

男「ああ」

男「(変な夢も見なかったしな)」

妹「そうでしたか。今日は涼しい内に家を出ましょう」

男「ん、そうしよう」

―教室―

男「あれ?女、珍しく早いな」

女「そっちこそ珍しく早いね」

男「涼しい内に登校しようって妹がな。これ、借りてたガンプラビルダーズのやつ。ありがとな」

女「どういたしまして。それで、具合はどうなの?」

男「軽いものだったから大丈夫らしい。しばらくは無理せず生活しろとさ」

女「良かった…部活は出る?」

男「おう。そろそろ大会予選に向けて動かないといけないし」

女「そうだね、機体は決めたの?マドロック?ヘイズル?」

男「そうだなぁ…なんか面白いギミックつけたいな」

―部室―

男「クーラー、万歳」

友「オッス、男。昨日は悪いな、具合良くないのに賭け勝負なんかやらせて」

男「おっす、まあ恒例だったからな。大会もあるしお互い体調管理には気を付けよう」

友「おう。で、ガンダム弄ってきたから一戦どうだ?」

男「あーいいぞ。練習台のジェノアス(AGE-1頭)でいいなら」

友「ああ、対戦してもらえるだけ助かるぜ」

Please set your GP Base

Beginning plavsky particle dispersal

Field 『Forest』

Please set your GUNPLA

Battle start!

男「どれどれっと…うわぁ悪趣味」ビシュン

友「何だと!」シュゥゥゥ

男「お前のガンダム、だんだんフルアーマー化してるよな」ビシュン

友「重装甲化は正義だろ!予選では複数の敵を相手にすることを考えてだな――」ビシュンビシュン


男(俺たちはとある高校の模型部に所属している)

男(スポーツが盛んだった学校だが、近年のガンプラバトルの発展により
  遂に今年から我が校にもまともな設備が導入、模型部は学校規模での活動を行えるようになった)

男(ガンプラ製作が好きだった俺は模型部に入部)

男(去年の地方予選はガトリングシールド二丁持ちのグフ・カスタムで出場するも、取り回しの悪さであえなく撃破された)

友「見よこのビーム!ビーム!ビィィィイム!」ビシュンビシュンビシュウウン

男(ガンダムにゴテゴテしたバックパックを載せてライフル二丁持ちしてるのは中学からの付き合いの友)

男(脚を怪我して控えに回っていた野球部員だったが、数か月前に模型部へ転向した)

男(塞ぎこんでいた彼がこうも楽しそうにしてくれてるのは何とも嬉しいが)

男(初心者だから勧めたガンダムは高機動化と重装甲化を繰り返している)

妹「こんにちは、兄さん、先輩」

男「おー、お疲れ」シュォォォ

友「おっすからのーミサポじゃあああ!!」シュパパパパ

男「そのザクのミサイルポッド、バランス悪くしてそうだなー」シュゥゥゥゥバシュン

男(入学してすぐに入部してきたのは俺の一つ下の妹)

男(昔から一緒にガンダムに親しんできただけあって詳しく、ガンプラも丁寧に作るし操縦も上手い)

男(おまけに可愛い出来た妹だ)

友「ふっ!撃ち切った後はパージすることでデッドウェイト化を避けるんだ!」

男「パージはロマンだよな」

妹「兄さん、汗を掻いていますよ」フキフキ

男「ん、ありがと」

友「あがあああああ秘密兵器のスナライが勝手にいいいいいい!」ビッシュウウウウン

男「あーフリッ頭部が」ドーン

友「堕ちろ堕ちろ堕ちろぉ!」ビシュンビシュン

男「はい対戦ありがとうございました」ドゴォォン

Battle Ended

男(傷の入った胴体と頭をリサイクル箱へ入れ、残りを練習機ボックスへ)

友「どうよ?」

男「主兵装をビームで固める意味あるか?」

友「それはなぁ…弾速っていう点で考えるとどうしてもビームになるんだよな」

男「いっそもっとジェネ積んでビーライ統一とかしてみたらどうだ」

友「あ、面白いかも。取り回しのいい奴も載せるか」

妹「ストライクノワールのビームライフルショーティーとかどうですか?」

友「おぉ、それいい」

女「ちっすちっすー」

男「ちーっす」友「チィィィス」妹「こんにちは、部長」

女「追加の部費受け取ってきたよ」

男(去年、廃部寸前の模型部を強引に存続させ現部長の椅子に座ったのは女だ)

男(ゲーマーを自称するだけあって、シミュレーターの操縦は惚れ惚れするくらい上手い)

友「追加の部費?学校側も気合入ってんなぁ」

妹「何かとお金掛かりますからね」

女「どうする?今日は買い出しに行こうか?」ウズウズ

男(ただ、普段は何とも可愛い女の子だ)

男「じゃあ行こうか。俺も新機体探したいし」

友「俺はサンダーボルト版FAが気になるわ」

妹「あの…兄さん」クイックイッ

男「うん?」

妹「昨日倒れてるんですから、気分が悪くなってきたら無理しないでくださいね?」

男「あーそうだったな。うん分かったよ」

妹「約束ですからね」フフッ

―バス内―

男「ふぅ」

妹「ふふっ」ヒザマクラー

女「…」友「…」

―夜ノ橋カメラ―

男「んー今回はどれにすっかなー」

友「男は何が一番好きなんだ?」

男「好きなのは色々あるけどやっぱこれ、ゲルググだな」

女「ジョニー・ライデンの帰還とか読んでると惚れるよね」

男「そうそう。でも戦うとしたら結構やる気出さんとなー」

妹「武装二つですし、薙刀も取扱いを気をつけなきゃいけませんからね」

友「へぇー」

男「しかしやっぱカッコいいよなー」


女「…」サッ

男「買うんか」

女「ゲルググ、私も好きだから」

男「そか」


女「友はそろそろ他の作品にも手を出してみるといいと思うよ」

友「そうだなぁ…まだ1stと0083とWと種系しか見てないんだよな」

男「あーそういえばアレだな」

友「どうした」

男「さっき話したお前の機体コンセプト、これに似てるわ」

『GN-006 ケルディムガンダム』

妹「ガンダム00のケルディムですね。ビームの狙撃銃、切り替えによるサブマシンガンに二丁拳銃」

女「シールドビットは一人で同時操作は無理でしょうから、固定装甲にしちゃった方がいいわね。あとで00のBlu-ray貸すよ」

友「へぇ。じゃあこれ作ってみるかな」

男「購入決定だな」

女「私ちょっと備品買ってくるね」

男「あ、600番減ってるから頼むわ」

女「はーい」タッタッ

友「男!俺は店のバトルシステムで戦ってきてもいいか!」

男「おーう暴れてこーい」


男「さーて俺は何にしますかね」

妹「やっぱりUCものが好きなんですか?」

男「そうだな、確かに歴史の流れを感じられる宇宙世紀ものは好きだなー」

妹「ふ~ん…あ!ドレッドノート!」

男「お、Xアストレイか、懐かしいな。俺こいつの盾とか脚とか好きだわ」

妹「私も好きなんです!私これで行きますね!」

男「お前ドラグーン使えるの?大変だと思うけど」

妹「何とかなる気がします!」


女(ええと…600番と1000番…)

店員A「Bくーん、これ棚に置いてきてー」

店員B「ウィース、…先輩、このプラモ何スか?買ってきたんスか?」

店長A「いやー実はね、イオリ模型店さんから商品入れ替えーってことでもらってきたのよ」

店員A「それ店としてどうなんスか…この店どうなってるんスか置いてきやーす…」マジヤベー

女(…イオリ模型店?)

男「うーん…うーん…」

妹「兄さん、考えすぎて倒れないでくださいね?」

男「うーん」

妹「もうこのゾーン何周しました?」

男「うーん…あれ?これさっきは無かったよな」

妹「あ、そうですね。店員さんがちょうど置いて行ったんでしょうか」

男「ふむ…」

『―――――』

男「―――?」

男「妹、今何か言ったか?」

妹「え?いえ、何も」キョトン

男「そうか。ええと…RX-79…BD-1…」

男「ブルー…ディスティニー…1号機か」

妹「原作ゲームが古いので私もGジェネくらいでしか知らないですね」

男「俺はバトオペで愛用してたなー懐かしい」

男(箱絵かっこええなぁ)

男「…よし、俺これ買うわ。あとは予備パーツに…」


男「…友?」

友「うへへ…ラストシューティングばりにボロボロだよ…」

女「そろそろ会計いこっか。いくつか予備機も選んどいたよ。男くんはBD-1かーいいね」

妹「お二人とも、明日はお休みですし泊まっていきませんか?」

友「賛成ィ!」

女「友達の家でプラモ作成会って素敵だねー」

妹「兄さんもいいですよね?」

男「おう、でも料理手伝ってな」

妹「もちろんです!」ニコッ

(自宅にて料理を振る舞いプラモを作り風呂に順番に入り)

(妹の部屋で女が、俺の部屋で友が寝た)

―翌日―

妹「兄さん!兄さんってば!」

男「…うん…?…妹、おはよう」

妹「おはようございます!なんで机に突っ伏して寝てるんですかぁー!」

男「え?あっれ」

男(…おか、しい。おかしい。俺は昨夜、友と同じタイミングで布団で眠ったはずだ)

妹「…兄さん、無理はしないって…約束だったじゃないですか…」ポロポロ

男「…!(俺もその約束は分かってたのに…)」

男(なんで作成途中だったBD-1はこんな綺麗に完成してるんだ)

妹「…ひぐっ…兄さぁん…」

男「ご、ごめんっ!」ダキッ

妹「…あんまりこういうことがあると…眠るまで一緒にいてもらいますよ…?//」ギュッ


友「なんだこれ」女「なにこれ」

男「朝はパン」妹「パンパパン」


男「とりあえず簡易シミュでブルーを動かすか」

(家庭用ゲーム機にて発売されたガンプラバトルの簡易シミュレーター。プラモの読み込みは出来るが)

(過度な改造や自作キット、オリジナルギミックなどは反映されないしコントローラーも違うので操縦訓練に使う程度である)

(バトルシステムは高価だし仕方ない)

女「付き合うよ」

男「よろしくな」

Please set your GP Base

field 『Canyon』

Battle start !

女「私はプレイアブルの陸戦型ゲルググで行くね」ピシィィィン

男「両腕にガトリングとミサランってのが良いよな」ババババ

(ブルーディスティニー1号機、通称BD-1の武装は100㎜マシンガン)

(頭部バルカンに胸部バルカン、腹部有線式ミサイルランチャー)

(両足のふくらはぎにあるサーベルラックのビームサーベル2本)

(運動性が高いので、射撃を絡めつつ接近する立ち回りになるだろう)

(正直変則的な機体だと思う)

男「ブルーがホバー走行まで出来るのはちょっと意味が分からないが」手動リロード

女「ブーストの節約になるんじゃない」シュパパパ

男「有線ミサイルといい操作が大変だな」シュウウウウウウ

女「何戦でも付き合うよ」ガガガガ


友「夜に言われたいぜ」

妹「あまり身の危険を感じることを言うと追い出しますよ」


男「武装が多すぎて同時発射とか残弾管理とか大変だなー」バシュバシュ

女「正直EXAMなしだと機体コンセプトがよく分からないね」ビシュウン

男(EXAMシステムとは、ブルーディスティニーシリーズに搭載された対ニュータイプ用OSである)

男(ニュータイプの脳波を捕捉すると発動し、コントロールを乗っ取り機体リミッターを解除し暴走する)

男(赤い光を放ちながら鬼神の如く戦うところや、対NT兵器という点でのちのNT-Dに通ずるものがある)

男(1号機はこのシステムの負荷に耐えるためにベースが陸戦型ジムから途中で陸戦型ガンダムへと変更された)

男(頭部がジム頭なのはそのためである)

男(しかしガンプラバトルにおいてこれを再現するにはプラフスキー粒子に関する高度な技術が必要だ)

男「EXAM無いとちょっと高機動なやたら射撃兵装多いジムだな」ババババ

女「どこかに持ち込んでEXAM再現も考えてみるのはどう?(陸ゲルの盾は過信できないか)」ガガガ

男「赤化と性能向上だけやるとトランザムみたいだな。あ、リロード」カチッ

女「ベルト給弾にしてみたらどう?」バババパシュンパシュン

男「上手くやらないと取り回しが重くなりそうだなそれ」シュウウン

男(ミサランは弾切れ、予備マガジンはこれがラスト。そろそろ仕掛けるか)バババババ

男(弾幕を張りつつ地形とホバーを活かして接近、サーベルラックオープン)

女(来る、腕部ガトリングとミサランは残弾ナシ、盾は被弾してるけどまだ持つか)

女(やっぱりこの機体サイズじゃ大きめの盾が欲しいな)

女(牽制に弾を使わされすぎた、ここからBD-1の手数に対応するにはもう一手いるね)

女「そのためには――」バッ ピシィィィン

男(上を取ってきた?)

男「…は?やべっ(太陽を背にしてビーム撃ってきやがった!)」バシュウウ

女「もらい!(ガードが早いけど陸戦シールドじゃ一発しか無理でしょ、姿勢崩れてるしもう一発)」ピシィィィン

男「くっそ!(左腕損傷で使い物にならねぇ、姿勢制御しながらマシンガン乱射)」ババババ

男「!(ガードしながら突っ込んできやがる!)」

男(マシンガン放棄、サーベルを抜いて――)

女(タックルを当ててから近距離射撃――)ガガガガ

男(胸部バルカン撒きながらバックブースト!)ババババ

女「!思ったより高推力だね(タックルが追いつかない!盾も弾受け過ぎて破損、左腕に異常発生)」ピーッピーッ

男(脚のバーニアとホバー軌道でターンしてブースト全速)

女(破損した左腕側に回り込まれた、ライフルで迎撃!)ピシィィィン

男「いっけぇぇぇぇ!!」ザッ


ピッ ドォォォォン

Battle Ended


女「危なかった」

男「あそこでライフル直撃させてくるお前のエイム力にはつくづく泣かされるよ」

女「バックブーストからターンに使ったホバー走行は切るべきだったね、最後の突進の軌道が分かりやすくなっちゃった)

男「スラスターだけでホバー移動の真似事する奴にアドバイスされましても」

女「男くんは接近戦のスラスター移動のパターンが少ないんだよ。教えてあげるから練習しよ?」

男「ええええ」


友「朝にあれを見たせいか女が積極的だな」

妹「?」

妹「兄さん、陽も高くなってきましたしそろそろ休憩してください」

男「ん、わかった」フゥ

女「あ…ごめんね、具合良くないのに無理させちゃって」

男「ううん、すごく勉強になったよ。ありがとう、またよろしくな」

女「…お疲れ様//」カァッ

妹「ふふふ」


友「おっ、大会の特集だってよ」ピッ

妹「カルボナーラ作りましたので皆さんどうぞー」

男「あれ、父さんたちは?」

妹「お爺ちゃんちに行ってくるそうです」

『それでは中継のキララさん』

『はい、皆さんこんにちは、キララです!今日は有名ビルダーであり第7回――』

男「いつからかこの人、ガンプラアイドルじゃなくてガンプラファイター兼タレントになったよなー」

妹「第8回大会が凄かったですね。お腹大きい状態で片翼のウイングゼロで奮闘して注目されてました」

女「あれは感動したね、無事出産出来て安心したよ」

『――のイオリ・セイ君にインタビューでこちら、イオリ模型店にやってきました!』

男「お、現役高校生最高と評される名ビルダー様だな」

妹「兄さんと同い年でしたっけ?すごいですよね」

男「おいやめろ年齢だけで俺を比較に出すな。そもそも女も友も同い年だろうが」

妹「ふふっ、すみません」

『キララさん、お久しぶりです!大会ではよろしくお願いしますね!』

『ええ、対戦楽しみにしてますね!』

『ではセイくん、今年の第11回ガンプラバトル選手権世界大会について――』

男「世界大会かー。とにかく予選勝たないとな」

女「部内から活躍した人が出れば注目度も上がるよね」

友「この地域は聖鳳学園から世界大会出場経験者が2人も出てるからなー、頑張らないと」

妹「頑張りましょう!」

男「妹、お茶取って」

妹「はーい」

『――といったところですね。えー、イオリ模型店はお取り寄せから改造相談まで広く承っております!気軽にお越しください!』

『はい、セイ君貴重なお話ありがとうございました~!大会予選第3ブロックは2週間後ついに開幕!今年はどんな熱闘が見られるのでしょうか!』

妹「そういえばこのお店、隣町にありますよね」

友「へぇ、そうなんだ」

女「…あ、ねぇ男」

男「どうした?」

女「イオリ君にEXAM再現の件、相談してみたら?」

男「ん…いいかもな」

友「電話番号出てたからメモっといたぞ」

男「有能だなお前、後で電話してみるか」


セイ「はい、こちらイオリ模型店です!」

男「あ、えーっと――」


男「アポ取れました」

友「驚きの早さ」

妹「兄さん。自転車とかで無理せず、ちゃんと電車かバス使うんですよ?私もついていきますから」

女「ホントいい妹持ったね」

妹「一昨日熱中症で倒れたのに今朝もベッドで寝ないなんて!心配でたまりません!」

男「あぁ可愛いなぁ」ボソッ

妹「へっ?//」

女「…男、私も行くから」ムッ

友「この前みたくなられても困るしな、俺も行くよ」

男「悪いな」

女「交通費は部費から出ます」ニッコリ

男「部費万歳」

―バス内―

男「うーんムニャムニャ」zzz...

妹「ふふっ」ヒザマクラー

女「この流れ昨日も見たよ」

友「この兄妹どうなってんだ」

―イオリ模型店―

セイ「いらっしゃいませ!」

男「こんちは、電話の者です」

セイ「はい、BD-1の方ですね!こちらの製作スペースにどうぞ!」


セイ「それでさっきのご相談の話ですが」

男「あ、同い年だし敬語は無しで頼むよ」

セイ「わかりま…分かった!で、EXAMシステムなんだけどさ」

セイ「カメラの赤化、リミッター解除による性能向上って形がいいと思うんだ」

男「ふむふむ」

セイ「他にやるなら各推力装置に赤いフィルターかけてスラスターの光を赤くしたり、GPベースと連動して起動時の音声設定したり」

セイ「さらにこだわるなら、任意起動とファンネルやドラグーンのような遠隔操作を感知して起動って分けたりは出来ると思うよ!」

友「すげぇ」女「開始10秒で負けを確信した」妹「さすが有名ビルダーですね」

男「………」

セイ「男くん?」

男「…感動した!!!イオリ君、今日はビシバシ鍛えてくれ!」

セイ「…もちろんっ!!さぁ、取りかかろう!」ニカッ

男(そこからリミッターには各部の段階構成があーだこーだ)

男(セイ自作のRGシステムの転用がどうのこうの)

男(システム起動にはGPベースの細かい調整がうんたらかんたら)

男(ビルダー、イオリ・セイは目を輝かせて本当に楽しそうに協力してくれた)

セイ「男くん、エグザム起動時の声なんだけどさ」

男「あー、EXAMシステムスタンバイって奴か」

セイ「何かのゲームから音声を持ってくることも出来るけど、女さんか妹さんに声を録音してもらうっていうのはどうかな!」

女(ジムストライカーを作る手が止まる)ピクッ

妹(ドラグーンを磨き上げる手が止まる)ピクッ

友(ガンプラ好きが高じすぎてるのか天然なのかわざとなのか…)

男「おーそれいいな!それじゃあ――」

女(私だよね?ガンプラに妹の声なんてシスコンじゃない!)

妹(私ですよね?ガンプラにお前の声をくれなんて告白同然なこと女さんに言えるわけありませんし!)

男「妹!ちょっと来てくれ」

妹「はーいっ!」ニッコニコニコニコ

女「ちょ、ちょっと!何で妹ちゃんなの!?」ガタンッ

男「え?だって、妹の声の方があの声に似てるだろ」

女「私の声が悪いって言うの!?」

男「いや、お前の声は好きだよ」

女「えっ」

男「大会終わったらまた二人でカラオケ行こうぜ」

女「う、うんっ!///」

妹「また?兄さんちょっとその話詳しく(試合に勝って勝負に負けた気分です)」

友(皆でカラオケ行こうぜじゃないあたり、男も意外と攻めてるよなぁ)


妹「EXAMシステム、スタンバイ」

男(頭部を中心に各部に手を加え、GPベースの設定変更、数度の起動試験を兼ねて)

男「完成だああああああああああああああああ!!!」

セイ「やったあああああああああああああ!!!」

男「ありがとう、セイ!!この恩は必ず!!」ガシッ

セイ「バトルで返してもらうのを、楽しみにしてるよ!!」ガシッ

男「おうっ!!」

友「ものすげー意気投合したな」

女「急に熱くなったねここ」パタパタ

妹「バスの時間もありますし、そろそろ帰り支度しましょうか」


男(帰り際に、皆に頼んでセイと二人きりにしてもらった)

男「セイ、聞きたいことがあるんだ」

セイ「何?」

男「俺がガンプラバトルを始めたのは、あの第7回大会でお前を見て憧れたからなんだ」

セイ「えっ、そうだったの!?あはは、なんだか照れるなぁ」

男「同い年の子がこんなにも素晴らしいガンプラを作れるのだと感動した」

男「けどそれだけじゃない。理想のビルダーとファイターの関係、その絆に俺は感動したんだ!」

セイ「あ…」

男「…言いたくないなら別に構わない。ファイターとしてのセイとの戦いでも勿論嬉しい!けど」

男「やっぱりあのコンビを、この目で見て、戦いたいと思う気持ちの方が強いんだ」

男「教えてくれ。…レイジくんは、今どこに?」


セイ「…レイジはあの後、いなくなったよ」

セイ「きっともう、帰ってくることはない。けど彼は、僕にたくさんのものを教えてくれた」

セイ「だから、…今年も僕は戦うよ。ビルダーとしてだけのイオリ・セイじゃない」

セイ「いつかレイジがバカにできないくらい、ファイターとしても強くなってみせる!」

男「…!」

男(俺たちは再び握手を交わし、大会で会うことを約束した)


セイ(そういえばレイジがくれた石、あの後無くなってたんだよね)

セイ(いったいどこに行ったんだろう)

男(頭部を中心に各部に手を加え、GPベースの設定変更、数度の起動試験を兼ねて)

男「完成だああああああああああああああああ!!!」

セイ「やったあああああああああああああ!!!」

男「ありがとう、セイ!!この恩は必ず!!」ガシッ

セイ「バトルで返してもらうのを、楽しみにしてるよ!!」ガシッ

男「おうっ!!」

友「ものすげー意気投合したな」

女「急に熱くなったねここ」パタパタ

妹「バスの時間もありますし、そろそろ帰り支度しましょうか」


男(帰り際に、皆に頼んでセイと二人きりにしてもらった)

男「セイ、聞きたいことがあるんだ」

セイ「何?」

男「俺がガンプラバトルを始めたのは、あの第7回大会でお前を見て憧れたからなんだ」

セイ「えっ、そうだったの!?あはは、なんだか照れるなぁ」

男「同い年の子がこんなにも素晴らしいガンプラを作れるのだと感動した」

男「けどそれだけじゃない。理想のビルダーとファイターの関係、その絆に俺は感動したんだ!」

セイ「あ…」

男「…言いたくないなら別に構わない。ファイターとしてのセイとの戦いでも勿論嬉しい!けど」

男「やっぱりあのコンビを、この目で見て、戦いたいと思う気持ちの方が強いんだ」

男「教えてくれ。…レイジくんは、今どこに?」


セイ「…レイジはあの後、いなくなったよ」

セイ「きっともう、帰ってくることはない。けど彼は、僕にたくさんのものを教えてくれた」

セイ「だから、…今年も僕は戦うよ。ビルダーとしてだけのイオリ・セイじゃない」

セイ「いつかレイジがバカにできないくらい、ファイターとしても強くなってみせる!」

男「…!」

男(俺たちは再び握手を交わし、大会で会うことを約束した)


セイ(そういえばレイジがくれた石、あの後無くなってたんだよね)

セイ(いったいどこに行ったんだろう)

―後日―

男(その後、俺たちは予備の機体作成や模擬戦に明け暮れた)

男(プラクティスモードを利用しての機体の細かい調整もやった)

男(今日は店舗のバトルシステムを利用して大詰めの模擬戦だ)

友「よっしゃ、本気で行くぜ男!」

男(友は目覚ましいほどの成長を遂げている)

男(特に操縦面、まだ荒いところはあるがここぞというときの集中力は脅威だ)

男(最近の友はインパルスガンダムをいろいろカスタムしていた。一昨日は四足歩行して昨日は羽が生えてた)

Please set your GP Base

Beginning plavsky particle dispersal

Field 『Space』

Please set your GUNPLA

Battle start!

男(…が、今日の友の機体はガンダム試作4号機 ガーベラ)

男(推力の調整を図るためにシールドや細部にアポジモーターやバーニアが増設されているようだ)

友「お、今日のは宇宙仕様のBD-1か」ビシュンビシュン

男「最近練習機が多かったからな」ババババビシュンビシュン

友「バックパック換装にビームライフル、コマンドのシールド…?ガンプラビルダーズに出てた奴だっけ?」ガシュッ

友([ピザ]リを蹴ってマシンガンを回避)

男「ああ。女がBlu-ray貸してくれたんだ」バババビシュゥゥン

男(胸部マシンガンで弾幕を張り、要所でビームライフルを放つ)

友「ほいほいっ」バシュバシュ

男「うっわ何その機動、バーニアだけでそこまでいけんのかよ」バババ

友「かーらーのー、オラッ!」ビシュウウウン

男「無理(この盾じゃ一撃耐えが限界か)」バシュ ババババババババビシュン

男(盾は捨て、腰にマウントしたマシンガンを左手に)

友「うっわお前100㎜マシンガンまで持ってきてんのかよ」ビシュウウン

男「心配性って嫌だよなー」ババババババ ビシュン

友「倍返し撃ち好きだなお前…二丁持ちでどうやって100㎜リロードすんだよ…」

男「機体コンセプトが迷子なのは自覚してるわ」

男(仕掛けるか)

男(オーバーヒート覚悟でビームライフルを連射)ビシュンビシュン

男(胸部バルカンは弾幕張り、左手のマシンガンは3点バーストに切り替え)

友「おいおい、ヘビーアームズか何かかよ」バシュ

友(盾でマシンガンを受けつつ、[ピザ]リとスラスター制御で回避運動を続ける)

男(弾幕をさらに厳しく、ランドセルのスラスターを吹かして接近)

友(このラッシュを凌ぐために――)

男(友の機動のクセ、ビームライフルのエネルギー残量を考え――)

友「ここで弾幕を抜けるっ!」バシュ

男(この[ピザ]リ蹴りを狙う!)

男(ブルーの中で唯一爆風を活かせる武装)

男(腹部の有線式ミサイルランチャーを、ガーベラが蹴る[ピザ]リへ射出!)

友「なにっ!?」ズドォォォォン

男(姿勢が崩れたところへ最後のビームライフル)ビシュウン

友「くぅ!」バッ

男「流石のガードの速さだわ」バッ

男(オバヒしたライフルは捨て、胸部バルカンは残弾ナシ、マシンガンをフルオートに切り替え乱射)

男(脚部サーベルラックを両解放、右手にビームサーベル、さらに接近!)

友「くそったれぇ!!」ズガガガガガ

友(全速バックブースト、…!? シールドブースターが動かない!弾を受け過ぎたか!)

友「チィッ!(シールドを放棄、サーベル抜いて[ピザ]リ蹴りからターン)」バシュウウ

男(弾切れのマシンガンを放棄、左のサーベルは抜いてビームを発生させずに後ろ手に隠す)

男「…せぇい!(中段から切りつけて)」

友「はっ!(左のサーベルで受け止めて、零距離ライフルで腹をぶち抜く!)」

男(――そのライフルの銃口先から左のサーベルを発生させて止める!)

友「な、はぁぁあ!?(何だそりゃ、止められない!)」ビシュゥドゴォン

(銃口からサーベルで妨害されガーベラのライフルは爆破を起こすも)

(高出力なビームライフルは防ぎきれず、ブルーの左腕も破損する)

男「やっぱビーム斬りは非効率的だな」バッ カチッ

『EXAMシステム、スタンバイ』

男(爆風と[ピザ]リに紛れてEXAMを手動で起動)

男(さらに[ピザ]リ蹴りと全速ブーストから)

男「――貫くッ!!!」ザッ

友「――!!!(速すぎる…!)」

ズバッ ドゴォォォン

Battle Ended

友「あー負けだ負け。バトルロワイヤルを見込してプロペラントタンク付きのガーベラを選んだけど、装備が汎用的すぎるか」

男「いかん、友がまた重MS化を目論んでいる…」

友「しかし何かしらの策は練らなきゃだろ」

男「そうだな…俺も今のスタイルじゃ連戦は厳しいしな」

友「さーて、どうすっかな…」

妹「部長、模擬戦の相手お願いします!」

女「よろしくね、妹ちゃん」

男「あいつ妹のドラグーンシステム見越してサバーニャ持ってきやがった…」

女「部長としていい練習相手になろうと努めているだけだよ」

Battle Start!

妹「部長!マルチロックオンと10基のビットなんて卑怯です!」シュピピピピ

女「ふふ、そっちにも43基ビーム砲搭載してるじゃない。ビット系機体は情報処理量が勝負だよ!」ビシュビシュビシュビシュ


男「もう次元が違い過ぎて意味が分からん」

友「やはり戦いは数か…男はファンネルとか使わないのか?」

男「うーん、数基なら使えなくはないんだけど肌に合わないかな。趣味的にもあまり好きじゃないし」

女「お、男!大会では私ちゃんと(男の好きな)ゲルググ使うからね!」

男「? おう、楽しみにしてるよ」ニコッ

女「うん//」カァァ

妹「今です、プリスティス!ドラグーン全発射!(趣味的にもあまり好きじゃない…あまり好きじゃない…)」バシュバシュバシュバシュ

女「あれ?」チュドーン バトルエンディド

妹「ドラグーン外そっかな…(また試合に勝って勝負に負けました…)」ショボーン

―そして第11回ガンプラバトル選手権 第3ブロック 日本代表予選の朝―

男「いらっしゃい、女」

女「お邪魔します。妹ちゃんは?」

男「まだ準備してるよ。暑いし上がってくれ」


女「ついに大会だねー」

男「今年は勝ち抜きたいな」

女「去年は二人だったのが懐かしいね」

男「賑やかになったもんだよなー」

女「うんうん、すっごく楽しい!でも」

男「うん?」

女「男との二人の時間が減って、距離がなんだかよく分からないのが不安かな、はは」

男「女…」

女「ごめんね、変なこと言って」

男「いいさ。去年みたく負けて泣きついてくれても」

女「あ、あれは後から恥ずかしいからもうやらないっ!」

男「される方は喜ぶぞ?」

女「えっ//」

男「…妹や友がいたってさ、そんな気にしなくてもいいぞ。変に壁作ったり、俺との対応無理に変えたりしないでさ」

男「お前と過ごした一年は本当に楽しかったから」

女「男…」

女「…うん、決めた」

男「ん?」

女「私バトルロワイヤルを勝ち抜いたら、男に大切なこと伝えるよ」

男「…おう。待ってるよ」



男(それ「俺この戦いが終わったら結婚するんだ」ってフラグじゃねーか)

―初戦―

男(初戦の試合形式は1対1)

男(これに勝てば昨年より導入された、2回戦のバトルロワイヤルに勝ち進める)

男(まずはいつも通りの立ち回りで組み立て、2回戦のためにEXAMは出来るだけ隠していこう)

『ただいまより第5試合を開始します』

男「っしゃ、出番だな」

妹「兄さん頑張って!」友「勝てよ!」女「行ってらっしゃい!」

男「おう、行ってくらぁ」

ドクンドクン

少年「対戦よろしくおねがいしまーす」

男「はーいよろしくでーす」ドクン

Please set your GP Base

男「あいつらと過ごしてきた自分を信じろ」カチャッ

Beginning plavsky particle dispersalシュウウウウウ

Field 『Torington Base』 シュピーン

男「作り上げたガンプラを信じろ」ドクン

Please set your GUNPLA

男「ブルーが見せる物を信じろ」

Battle start!

男「行くぞ、ブルー」フーッ

男(フィールドはトリントン基地)

男(そして相手は…うわー超飛んでるわ、バイアラン…カスタムか)

男(2号機みたいな連邦カラーリングだけど装備は1号機だな)

少年「当たれー!!」シュパパパパパパ

男(あれはビーム・マシンガンだっけ?撃ちながら突っ込んでくるな)

男(UC見た少年が無双機体といってもユニコーンよりバイカスを選ぶとは)

男「つっても俺の初ガンプラはガンキャノンでした」ドヒュッ

男(今回は地上戦仕様のBD-1)

男(基本的にはオリジナルと同じだが、中遠距離用に陸戦型ガンダムのロケットランチャーを装備させた)

男「が、ビーマシ相手じゃ活きづらいな」ドヒュゥ

男(ロケランは建物に当てて爆風を活かし、推進力のアドバンテージはホバーでカバーしよう)

男(予想よりは厳しい。搦め手で速く決めるか)

男「…ふんっ!(陸戦シールドを投擲、盾に向けてロケランを発射)」

少年「なんだっ!? 前が!」モワモワ

男(簡易的な煙幕として機能させ、正面から左でサーベル抜いて切りかかる!)ザッ

少年「わっ!」ジジジジ

男「…!(サーベル抜く動作のいらないバイアランじゃ対応されるか)」

少年「ええいっ!」ゴゥ

男(しかも左手はサーベルじゃなくて掴みかかってくる――!)カチリ

『EXAMシステム、スタンバイ』

男(一瞬でいい)ゴッ バァァァ

少年「!? 消えた!」スカッ

男「決めるっ!」ズバァ カチリ

Battle Ended

男「ふーっ(女が考案したワンセコンドトランザムならぬワンセコンドEXAM)

男(一秒だけEXAMを発動し機動性を上げて意表を突く)

男(対応されないようにあまり乱用はしたくないが、どうも頼りがちだな)

友「男!」パンッ

妹「さすがです!」パンッ

男「おう」

女「お疲れさま、男」スッ

男「…いいもんだな」

女「?」

男「手を打ち合って勝利を祝える、仲間がいるってのは」パンッ

女「うんっ!」パンッ


男(この日、女はジョニー・ライデン搭乗機カラーの赤い陸戦型ゲルググでジンクスⅢを瞬殺)

男(友はガンダムヘビーアームズでV2アサルトバスターと壮絶な射撃戦を繰り広げギリギリで勝利を掴む)

男(妹は地上戦でドラグーンが使えないことからアカツキのオオワシユニットを転用してドレッドノートに装備、ゴテゴテした改造の百式を撃破)

男(我が部は全員が初戦突破、第二回戦バトルロワイヤルへの進出を決めた)

男「セイは…ちゃんと勝ち進んでるな」

―その夜、自宅にて―

女「全員の初戦突破を祝いまして」カンパーイ

男「思った以上に我が部の練度は高かったな」カンパーイ

妹「兄さんたちのアドバイスのおかげですよ」カンパーイ

友「だな。正直勝ててすげー嬉しいよ、感謝してるわ」カンパーイ

父「おめでとう諸君、さぁ食え飲め燃え上がれ!」カンパァァァァイ

母「ゆっくりしていってねー(こいつ酒癖悪いし早めに連れ出すか)」カンパイ


男「初出場もいるし確認しよう」

男「地方予選の試合間隔は一週間」

男「来週行われる総当たりのバトルロワイヤル戦のスコア上位16名が決勝トーナメントに進める」

女「問題はやはりバトルロワイヤル」

女「増えすぎた競技人口を解決するために地方予選にも導入された、初戦に勝利した100機以上のガンプラが一堂に会して戦うルール」

女「フィールドもとんでもなく大きい上に長期戦も予想される、まさに大会のメインイベントだね」

妹「対多人数戦、長期戦を見越した装備が必要ですね」

友「ビビり気味なプレイングや隠密プレイじゃ到底勝ち残れないポイント方式なのも大事だな」

男「フィールドは荒野、森林地帯、山岳地帯、湖の複合ステージだ」

女「出来るなら皆で勝ち上がりたいね」

男「開始地点がランダムだから作戦を立てるのは難しいけどな」

友「男、参考までに聞かせてほしいんだがどんなカスタムにするんだ?」

男「俺は前から準備してあるんだ」

男「継戦能力向上のために陸ガン系のウェポンラックを載っける。さらにアレックスのチョバムアーマーを転用して防御面を向上」

男「機動性がガタ落ちだから肩と腰を替えて補助バーニアを追加、ウェポンラックとアーマーはパージ可能にする」

男「アーマーとラックには森林迷彩を施し、武装面でも予備弾倉は多めに」

男「手持ちに180㎜キャノン、ラック内にロケランとマシンガンと父さんが自作した対MS用地雷とアーミーナイフ」

男「今の俺に出来るブルーディスティニーのフル装備だが、重すぎるから状況によってはほぼ使わずに捨てるだろうな」

友「すげー…」

妹「フル装備状態でどれだけ戦えるかが鍵になりそうですね」

女「地上だから遠隔操作系のビットとかは無いだろうし、EXAMは任意起動だけになりそうだね」


友「男、アーミーナイフの採用理由はやっぱりエネルギーの節約か?」

男「ああ。サーベルすら使えなくなった場合の最終手段やENに余裕を持たせたいとき、あとは対ビーム装甲の突破用かな」

友「なるほど…」

男「実体剣の採用を考えてるのか?ジンの重斬刀みたいな」

友「ああ。やっぱり二回戦もヘビーアームズベースで行こうと思う。ここからさらにケルディムのパーツを加えて、アーミーナイフは大型化しよう」

女「するとあれが参考になるかもね。ガンダム00のガンダムエクシアって奴調べておくといいよ」

妹「確かに、大型の折り畳み式実体剣という点ではぴったりですね」

友「ありがとう、見てみるよ」

女「私は出来のいい本命のパーツに換えるかな。武装はユーマ・ライトニング機を意識して魔改造ゲルググを作り上げるよ」

男「お、楽しみ。ナイトシーカー戦とか熱いよな」

女「期待しててね、男」フフッ

男(いかんな、今朝あんなこと言われたから妙に意識してしまう)ドキドキ

妹「私はアストレイのフライトユニットを使いますね。燃料タンクで活動時間を延ばします」

妹「ついでにガーベラストレートも持っていきます」

男「よし、食べ終わったらさっそく設計から取りかかろうか」

女「重量バランスとか調整で気を遣うからね」

友「早めに機体調整終わらせて、試合直前には注目候補のおさらいもしようぜ」

ゴチソウサマデシター


友「内蔵火器はヘビーアームズ系、動力はGNドライヴ、シールドビットは一か所に集めて」

友「外付けの武器はケルディム系とGNソード…」

友(ダメだ…まだ何か足りない…)


男「んじゃ気を付けてな、友、女」

友「おう、おやすみ」

女「また明日ねー」

友(…男)

友(自慢の脚を怪我して塞ぎこんでた俺を救ってくれたのは、お前なんだぜ)

友(もう今は、お前に教えられてるだけの俺じゃない)

友(勝手でごめんな…けど俺はお前に、どうしてもこの恩を返したいんだ)

―――――――――――――――――――――

『声が…聞こえる…誰だ、誰かそこに居るのか』

『…あの機体もまた、人の意志を背負ったものなのか』

男(戦っている…)

『あぁ…蒼い空にあるのは、憎しみだけではない』
 
男(これは誰の記憶なのだろう)

『ギラ・ドーガ!?…いや、そうだよな』

男(悲しみだけじゃない、強い意志を感じる)

『そうだよ…そうなんだ…!誰にだってわかってることじゃないか!!
こんなところで――……地球に育む、生命の歴史を終わらせちゃいけないってことぐらい――…!!』



『蒼い死神…! 俺は、お前なんかに呑まれはしない!』

――――――――――――――――――――――

男「あれ…俺、また机で寝てる…」ガバッ

男(…蒼い…死神…)

妹「兄さん、入りますよー?」ガチャッ

妹「あれ?起きてたんですね、兄さん」

男「あ、ああ、早く目が覚めたんで作業してたんだわ」

妹「…朝日が差し込んで、兄さんのBD-1、すごく綺麗…」

男(本当に…綺麗だ)

男(そして冷たい宇宙に取り残されたような孤独を、恐ろしさを孕んでいる)

妹「…兄さん、また泣いてるんですか?」スッ

男「妹の指、温かいな」

妹「兄さんの涙も、温かいです」

妹「朝ごはん作ってきますね、顔を洗ってきてください」ガチャ

男(…俺…)

男(肩部の換装と頭部の装甲追加は、まだやってなかったはずなのに…)

男「…蒼い…死神…」

男「お前は俺に、何を見せるつもりなんだ…?」


―後日 部室―

男「ではロワイヤルに出場する注目選手のおさらいだ」

男「まずは俺たちも会っているイオリ・セイ」

男「非常にハイレベルな製作技術がウリだ」

女「今年の機体はクロスボーンガンダムX3がベースみたいだね」

女「初戦では変わった仕様は見られなかったしここで機体を変えてくるかも」

友「俺たちもかなり変えるからな、初戦の参戦機体はここではあまり参考にならないか」

男「他にもサザキ・ススムやカトーといった常連もやはり初戦を勝ち抜いている」

女「あとキララさんもやっぱりいるね」

妹「ですがやはり最大の難関は…」

男「そう。国内最強ファイターと呼び声の高いメイジン・カワグチだ」

女「PPSE社の会長交代からはビルダーとファイターを兼任してるね」

妹「初戦でもPPSE社のワークスモデルではなく、自作のνガンダムの改良型を使用してますね」

友「優勝候補筆頭といったところだな」

男「彼らの動きにはやはり警戒しておくべきだろう」

―第二回戦 バトルロワイヤル当日―

ワァァァァァァァァァァァァァ ワァァァァァァ

友「すごい熱気だな」

女「観客動員数も大会中最多だからね」

男「各メディアの注目も高いぞ」

妹「き、緊張します」

『さぁついに始まります!予選第二回戦、バトルロワイヤルッ!』ワーワー

『この巨大フィールドで、初戦に勝利した総勢112機ものガンプラがぶつかり合いますっ!』ウオオオオ

Please set your GP Base

男「部長、出撃前の一言頼む(通信)」カチッ 

Beginning plavsky particle dispersal

女「いきなりだね…各員、悔いの残らない戦いをしよう」シュゥゥゥ

Field 『Earth』

友「了解」
妹「はいっ!」
男「おう」

Please set your GUNPLA

妹「ドレッドノートガンダム!」カチャッ
友「ケルディムヘビーアームズ」カチャッ
女「ゲルググ・レッドロア」カチャッ

男「え、お前名前つけてたのかよ」カチャッ
女「い、いいだろ別に!」

Battle start!

男「ブルーディスティニー1号機ウェポンラック&チョバムアーマー装備、俺、出るっ!」バシュッ
友「長っ!行くぜ!」バシュッ
妹「私、行きます!」バシュッ
女「通信一旦切るよ、勝って会おうね!」バシュッ

―森林地帯―

男(極端な話、この戦いは1対100だ)

男(その中で上位16名のスコアを出すには複数機撃破が求められる)

男(つまり高出力長距離砲が採用されるだろう――回避!)ピピピピピ

ドォォォォォン ナンダ!? アグニダ!

男(着脱式のヘッドギア採用は正解、レーダー性能はやはり重要だ)

男(他には隠密性の高い機体による闇討ち、狙撃型も考えられる)

男(幸い、すぐそこに迷彩に合った森林地帯がある。そこで地雷とキャノンメインで戦おう)

『さぁバトルが始まりました!この初動、いったいどんなプレイングが展開されるのか!』

―山岳地帯―

妹(あれは…ガンダムXディバイダーですね)

妹(金色…ってことはあれが常連のカトーさんという方でしょうか)ピピ

妹「!(向こうの丘に友さんが控えてますね)」

妹(牽制からオーソドックスに格闘戦へ移行しましょう)

カトー「戦いは質…戦いは質…!」ビシュ

妹(ディバイダーは展開モーションから弾道を予測して回避)シュッ

カトー「避けただと!?」バッ

妹(サーベル戦に持ち込んで)ザッ

カトー「くっ!」ジジジジ

妹(鍔迫り合いからスラスターで旋回、角度を調整して――)ピピ

ピシュウウン チュドーン

『おおっと大会常連のカトー氏!開始わずか1分で撃ち抜かれたぁぁ!』ワーワー

カトー「何が起こった…そんなバカな…」ガクッ


妹「友さん、いい狙撃でした」ピ

友「悪い子だなぁ、妹ちゃん」ニッ

―森林地帯―

ドォン ドォン

男「…首尾悪いなぁ」

男(まだ地雷は機能してない。これはまだいい、設置自体に意味がある)

男(だが180㎜キャノンも簡単には食らってもらえない。結局ガチンコ勝負は避けられないか)ピピ

女「男、どこにいる?」ピッ

男「森林地帯、A-26だ」

女「分かった」ピッ

男「おい」

男「…来る気か?あいつ」ピピピ

男「接近する機影…セブンイレブンストフリ…だと…?」

男「迎撃する!」ドォン

『各地で戦闘が始まりました!現時点での脱落はまだ4機!』

女「想像していたほど戦場はまだ加熱してない」

女「…絶対に、勝ち残る」

女「勝って男との約束を果たすんだ…!」ゴォォォ

―山岳地帯―

友「ありゃ黒いガンダム3機…」

友「チーム固めに睨まれるのは危険だが狙撃を…」ピピ

友「ん…?あれは…」

『おぉーっとメイジン・カワグチ!ストライクノワール、スローネアイン、マスターの黒いガンダムチームに遭遇だ!』

(公式で挿入されるメイジン専用BGM)オオオアアエエアアエェエエ

名人「………こいつら、来るのか?」

友「友より全員へ!名人の機体を捕捉した、写真と位置情報を送る!」ピッピッピ

女「ありがと…νガンダム?あの装備は…」ピッ

妹「雑誌で見たことあります。ユウキ・タツヤのデビュー作のガンプラ…」ピッ

妹「νガンダムヴレイブとマーキュリーレヴ…たぶん10年モノです、あれ」

友「すげぇな…20年モノのウイングで予選突破したファイターもいたっけ」

男「あー、交戦中だ。あとで確認する」ピッ


『マスターがウイングシールドを展開して先行していく!』

名人「落ちろ!」ガガガガガ

ハァーッハッハッハ ダカラオマエハアホナノダー

『マーキュリーレヴがガトリングを連射!しかしマスターには効いていない!』

名人「ちぃ!」ガシャッ シャキーン パシュウ

『今度はレールガンだ!だがマスターは回避!』

名人「いい腕だ!」バッ シュッシュッ

『名人も負けていない!後続のノワールのライフル連射もスローネのランチャーも悠々回避!』ワーワー

ハァーッハッハッハ ダークネス!フィンガァァァァ!
     
名人「好きにはさせるか!」キュピピピーン

バッ ゴスッ ドォォォン

名人「一機撃破!」ガッ

『!? な、なんと名人、さらに武装を隠していた!あれは…ガンダムハンマーだぁぁぁ!』ウオオオオ


友「は?は?」

女「…あれは本当にメイジン・カワグチなの…?」

妹「り、理解できません…名人がこの試合でガンダムハンマーだなんて…!」

名人「何がきたって、ガンダムで押し出してやる!」ガシャッ ババババドシュンドシュン

『名人、大量に武装を展開!回避と射撃と接近を同時に行っている!』ワーワー

ウワアアアアアアアアアアア ドォーン

名人「次!」ゴッ

友「ノワールまで落とされた…!やはり奴は危険だ!」ゴォォォ…

友(こんなチャンスはもう無いかもしれない!ケルディムのGNスナイパーライフルⅡなら…!)ピピ

名人「いけ!ガンダムハンマー!」ゴンッブンッ

グワアアアアアアア ドォーン

『名人、ガンダムチームを撃破ァ!』ウオオオオオオ


友「そこだ、狙い撃つぜぇっ!!」ピュシィィィィン

キュピピピーン

名人「…甘い!!」ズバァッ

友「!! そんな…!」

『な、なんとメイジン・カワグチ!狙撃に対し瞬時にサーベルを展開!ビームを切り裂いたぁぁぁぁぁ!!』ウオオオオオオオオ

妹「あれが人間の反応なの…!?」

友「クソッ…名人に見られた…!後退する!」バッ

妹「先輩、撤退支援します」シュウゥ

―森林地帯―

男(はぁ…簡易で全身チェック…内部は異常なし)

男(180㎜キャノンは喪失、チョバムアーマー63%損傷)

男「バランス悪くなったな、ヘッドギアはパージ」ガシュッ

男(いい腕だった…散々手こずらせてくれやがって)

男(たまたま地雷を踏んでくれたから良かったものの、やはりこの重装備はタイマン性能が落ちるな)

男「破損率の高いアーマーをパージ、各武装再装填」ガシュゥ

男「ラック内を整理して再装備、さっきのポイントに移動するか」

男「女、俺は山岳地帯に移動する。各員、位置情報を頼む」ピ

男(とりあえず一機撃墜…どこまでやれる…?)

―山岳地帯―

男「ん…?あのクロスボーンガンダムは…セイか!」


セイ「ユウキ先輩!なんだか様子がおかしいですよ!?」ビシュンビシュン

名人「遊んでんじゃない!」パシュウパシュウ

セイ「先輩!僕が分からないんですか!」ズバッ

名人「だぁぁあ!」ズバァッ

男「なんだ…?お、赤いゲルググ」

女「男!さっきから名人の戦闘の中継見てるんだけど、なんだか変なの」

男「変って、どういうことだ?」

女「口調もこう変だし、反応がいくらなんでも超人的すぎるし、っていうかガンダムハンマーだし」

女「そもそもνガンダムヴレイブ自体、彼のプレイスタイルと違う気がするし」

女「まるで、メイジン・カワグチでもユウキ・タツヤでも無いような…」

男「へぇ…何かの亡霊でも乗り移ってるのかね」ピピ

男「! 名人の戦いぶりを見て、MSが集まってきてるな」ゴッ

女「ちょ、ちょっと男!どこ行くの!?」

男「セイには生き残ってもらわないとならないんでね!名人をやる!」


妹「…!? 兄さんが名人に…!」

友「おいおいあいつ…援護に行くか」


セイ「! あのブルーディスティニーは…男くん!?」ピ

名人「まだ援護がいた?」

男「行くぜ、セイ――」ズキッ

男(! 急に頭痛が…何だ…?)

「俺は、ブルーが見せる物の先に何があるのか…それが知りたい」

男「声が…聞こえる…誰だ、誰かそこに居るのか?」ズキッ

「EXAM…俺を呼んでいるのか」

男「…EXAM…蒼い死神…」ズキッ

「また使うのか…」システムエラーガハッセイシマシタ

男「なんなんだよ…このモビルスーツは…!」ズキッズキッ

「EXAMを…」システムエラーガハッセイシマシタ

男「なんなんだよ、こいつはぁっ!」ズキッズキッズキッ

システムエラーガハッセイシマシタ
システムエラーガハッセイシマシタ
システムエラーガハッセイシマシタ
――――
―――――――
―――――――――――
――――――――――――――――――――――――

『EXAM SYSTEM STAND BY』

――――――――――――――――――――――――
―――――――――――
―――――――
――――

女「! 男、こんな序盤にEXAMを…!」

女(しかもアーマーもウェポンラックも捨てて突撃!?)

名人「EXAM…人が人に罰を与えるなどと!」ズバァッ

男「…………!(ビット機体もいないのに勝手にEXAMが…!)」ズバァッ

『赤く揺らめくブルーディスティニーが名人に突っ込んでいくゥ!』ウオー

女「とにかく男に通信を…通信エラー!?」ビーッビーッ

女「どうなってるのさ、もうっ!」

セイ「おかしい…」

セイ(あのEXAMで解放される機体出力は120%のはずだ)

名人「くっ!!」

セイ(だがどう見てもそんなもんじゃない!サーベルのぶつけ合いでユウキ先輩を圧倒している!)

セイ(あのBD-1にいったい何が…!?)

男「ハァッハァッ…!(システムが…俺の操縦を受け付けない…!)」ザッ

名人「こんなところでやられるか…!後退だ!」バシュッ

ウワーメイジンコッチクルゾー ブルーモコッチクルゾー

男「アガアアアアア…!(それどころか勝手に動きやがる!暴走してるんだ…!)」

ドォーン ズバッズバッ ドォーン

『ブ、ブルーディスティニー!次々敵機を撃破しています!まさに蒼い死神!』ワーワー

女「どうしよう…どうすれば…!」

妹「兄さん…!」

友「…………!」

―――――――――――――――――――――――――――

『――そうやってお前は、全ての他人を見下すのか!』

男(…こうして彼の記憶を見るのも三度目か)

『ジオンの騎士たるこの私の力、見せてやろう!!』

男(ユウ・カジマ。地球連邦軍所属のMSパイロット)

男(一年戦争時の階級は少尉。暴走したBD-1を止め、BD-1、BD-3を駆り)

男(ジオン軍のニムバス・シュターゼン大尉とEXAM機同士の壮絶な戦いを繰り広げ――生還)

男(ア・バオア・クー戦も戦い抜き、その後も14年もの間戦い続けた生粋の連邦軍人である)

男(最終的に第二次ネオ・ジオン抗争…シャアの反乱の際、アクシズ降下阻止にジェガンで参加した。当時の階級は大佐)

男(アクシズに取りつくもその後生還、この時の命令違反で予備役に編入されその翌年に退役したという)

男(彼はどうやってEXAMを制御したんだろうか。精神的な強さと操縦技術?)

『その傲慢さを償え!ニムバァァァス!!』

男(そしてこの景色は、ブルーが俺に見せているものなのか?)

―――――――――――――――――――――――――――

システムダウン システムヲサイキドウシマス

ピーガガガ ビーッビーッビーッ

男「…ハッ…ハッ…ハァッ…ハァァッ…!」ビーッビーッビーッ

男「……5分経ったか…?ご丁寧にリミッター再現かよ」ビーッビーッビーッ

男「機体出力…180%も出てたのか…?各部に負担がかかりすぎてる」ビーッビーッ

男「…通信、復帰」ピ

女「男!?男!返事して!!」

男「俺だ…少し気を失ってたらしい。状況は?」

『ブルー沈黙!15機のMSを撃墜しついに膝をつきました!』ワーワー

男「は…?おいおい…ブルーってこいつかよ」

女「ブルーが暴走してた…妹ちゃんにも殴りかかったんだよ?」

男「なんだって…?妹!」

妹「私は無事ですよ…いつもドラグーン機でEXAM相手してましたからね、えへへ」ピッ

妹「とはいっても友さんが助けてくれなかったら…」


サザキ「――ハイスコアプレイヤーを倒せばボクの上位進出は確実!」ゴッ

男「敵か!?…くそっ…動けブルー!」ビーッビーッ

サザキ「改良に改良を重ねたこのデスティニーギャンクリーガーで!トーナメントへの切符を手に入れさせてもらう!」ゴォォォォ

妹「ギャンが…飛んでる…!」

女「しまっ…間に合わない…!」

ガンッ

サザキ「何だ!?防がれた!」

女「…あれは…!」

男「シールドビット…!?」

友「…女!早くカバーに回れ!(高出力な格闘武器だな、ビットはもう使えない)」

女「! 了解!」

『こちらではゲルググ対ギャン!因縁の対決が始まりました!』ワーワー

女「ここまで接近されてると格闘戦だね」ゴッ

男「ゲルググのあの武装…ジムストライカーのツインビームスピアか!」

サザキ「ボクの光の翼についてこれるかなぁああぁ!!」バッシュバシュバシュ バッ

女「それぐらい…自力でやってあげるよ!!」バッシュバシュバシュ ザッ


友「男!動けるか!」

男「あぁ…戦闘は不安だが、まだ動くぐらいは」

男(サーベルは喪失、射撃武装も盾も残ってない…残りはナイフだけか)

男(よくもこんな状態で戦っていたものだ)

男「…さっきのシールドビット…お前が…?」

友「ん?ああ」

妹「重力下のビット操作なんて無理だと思ったんですけどねー。基本は私が教えたら、いつの間にか先輩出来るようになってたんです」

友「連結や分離操作までは無理だから、一か所にまとめて重力下対応で推進力を調整してな」

男(…ビットの重力下調整…?いくらなんでも高度すぎる…本当に友が…?)ピピピ

男「敵か」

『そしてこちらでは皆さんご存知のあの人!キララだ~っ!』

(公式で挿入されるキララ専用BGM)トゥートュルー

キララ「散々暴れまわってくれたわね!このレグナントで蹴散らしてあげるわ!!」

男「…デケェ!!??」

妹「やっぱりピンクだー!」

友「…ここは俺に任せろっ!!」ゴッ

男「友!?(こいつもフラグ立てやがった!)」


友(…残弾は残り50%を切った)

友(粒子残量もそこまで余裕があるわけじゃない)

友(別にここで無理する必要なんてない、男の上位進出は確定してるんだ)

友「けど何やってんだろうな、俺は」

友(男に借りを返したい、あいつに何かしてやりたい)

キララ「ファングはオートで、ミサイルとバルカン全発射!」シュシュシュシュ


友「つまりなんだ、俺は男がピンチになってくれるのを待ってたってわけだ」ハハッ

――――――――――――――――――――――

セイ「いらっしゃいませー!…あれ?先日ご来店された…えっと男さんの…」

友「あー、友だ。実は俺も改造相談があってな」

セイ「大丈夫ですよー!こちらへどうぞ!」


セイ「重力下のシールドビット運用とトランザムシステム…?」

友「試合前で大変なのは分かってる!けどお願いだっ!!」

友「どうしても男の力になりたいんだ!今の機体じゃダメなんだ!!」

セイ「…ええっ!いいですよ、とことんやりましょう!」ニッ

――――――――――――――――――――――

友「トランザムッ!」TRANS-AM SYSTEM

妹「えっ!?」

男「…友の機体が赤く…!」

キララ「間に合うもんですか!ブルーさえ落とせば!」

友(ライフルをサブマシンガンモードに!)

友「全弾発射!!(まだ足りない!)」シュパパパパパバババババババ

友「乱れ撃つぜぇっ!!」シュパパパパビシュンビシュンバババ

キララ「撃ち落された!?けど大型ビーム砲なら!」ゴゴゴ

友「ライフルモード!狙い撃つ!」ピシュウウン ドゴォーン

キララ「止められた!…こんの…!」ゴッ

友(内蔵火器残弾ゼロ、粒子残量は…もうライフルは捨てだな)

友「なら…GNソードだ…!」バッ

キララ「捻り潰してあげるんだから!」バッ

ズバァァッ

友「切り裂くっ!(操縦が重い…!腕が…!)」ズバズバッ ズキッ

キララ「! どこ!?」ハッ

友「行くぞ…ガンダァァァァムッ!!」ズッバァァァ

キララ「速すぎる…」ドォンドンドン ドガァァン

『レグナント、完膚なきまでに切り裂かれたーっ!』キララチャァーン

キララ「アタシのレグナントがー!」ウワァァァァン 

友「ハァ…ハァ…俺もここまでかな」トランザムダウン ピピピピ

友「…ビーム…あ、避けらんねぇわこれ」ハハ

ドォーン

サザキ「ギャギャギャギャーン!」ドォーン

女「いい腕じゃない…可動式スピアまでは読めなかったみたいだけどね」フゥ

女(想像以上に消耗した…機体に無理をさせすぎたかな)

女「? あんなところに熱源反応?」ピピ


妹「まったく、ゲドラフだかなんだかのタイヤのせいでガーベラ折れちゃいました」ハァ

妹「そのあたりに一度降りて予備燃料に切り替えましょう」

妹「兄さん、機体状況は?」

男「お前らが守ってくれるおかげでまだ生きてるよ」

妹「兄さんにも燃料補給します」

男「悪いな…」


『ユニコーンガンダムチーム、未だ健在!』

男「はは…なんだそりゃ、嫌らしいチームだなおい」

妹「兄さん、16番目のスロットを――」

バシュウウウン

妹「!? ビーム?まずい――」

男「…!」

ジジジジッジジジジ

男(その瞬間、真紅のゲルググが盾を突き出して俺たちを庇った)



女「…あーあ…何してんだろ、私」

男「お、女!何してんだ、早く離れろ!」

女「あー、あはは?不可能を可能にしてみたかったっていうか?」

女「ていうかもう無理だよ、間に合わないや」ジジ

男「女…」

女「ごめんね、男」

女「この戦いが終わったら…って思ったけど」

女「また先になっちゃった」エヘヘ

ドォーン

男「……………………」

妹「…部長…」

男「…妹、燃料サンキュな」

妹「に、兄さん?どこへ?」

男「ついてくんなよ、俺のために落ちる必要なんて無いからな」

男「あと生き残れ」バシュッ

妹「兄さん!」

男「…ビッグガン…ザクか…!」ピピピ

男「逃がすかよ畜生…っ!」シュウウウ

ドォーン


『バトルロワイヤル終了ーっ!順位表が発表されるまでしばらくお待ちください!』


男「ハァッ…ったく、どいつもこいつも…」ザシュッ

男「バッカじゃねーの…」グスッ

-Result-

友        :3機撃墜  行動不能
妹        :3機撃墜  生存
女        :1機撃墜  行動不能
イオリ・セイ   :6機撃墜  生存
メイジン・カワグチ:12機撃墜 生存

サザキ・ススム  :2機撃墜  行動不能
カトー      :0機撃墜  行動不能
キララ      :3機撃墜  行動不能

男 :17機撃墜 生存

上位進出:男 妹 セイ 名人   他12名

―自宅―

男「…あぁぁぁぁもうっ!怒ればいいのか感謝すればいいのか分からんお疲れ!」カンパァァイ

妹「いきなりはっちゃけましたね」カンパーイ

女「さっきまでの不機嫌モードよりマシかな」カンパーイ

友「いやー俺はスッキリしたんだけどな」カンパーイ

男「なぁーにがスッキリだボケ!あぁでも怒れる立場じゃねえぇ!!」ウガー

妹「兄さん酔ってます?」フフ

男「はーい申し開きのお時間デース」

女「一応男からお願い」

男「俺は森林地帯に降下、ストフリを撃破後に女と合流して」

男「…メイジンとセイに近づいたとき、勝手にEXAMが作動した」

女「! …任意起動じゃなく、イオリくんと用意した『遠隔操作武装に反応して起動』する方だったんだね」

妹「でも何度見直しても、あの場面にそんなものは無かったんですよね」

妹「参加機体を洗い出しても、MSで積んでるのは友さんのシールドビットだけのはずです」

妹「そもそも地上でファンネルやビットが使えてるんなら私だってドラグーン使ってますし」ジロ

友「ア、ハハ…キララさんのGNファングは?」

妹「あれは見た限りじゃ自動操縦です。操作信号の関係でEXAMは反応しないはずなんです」

男「勝手に起動しただけじゃない。出力も120%じゃなく180%、俺の操縦を受け付けないし、勝手に戦うし5分でキッチリ停止した」

妹「…システムトラップ?」

女「…EXAMの亡霊?」

友「…Ghost in the Machine?」

男「…とにかく、何かがおかしいのは分かる。さっき連絡を取ったから明日からセイにも協力してもらって調べるよ」

男「で…何はともあれその時点で16機撃墜して上位確実だった俺ですが」

男「そのもう撃破されても問題ないブルーを守ろうとした貴様ら…!どういうつもりだ!」

男「はいまず友!つーかなんだあのシールドビットとトランザムは!」

友「あー試合終わったしいいか。初戦の後にセイくんに頼んで改造手伝ってもらったんだよ」

妹「何だか部活単位でイオリさんに申し訳なくなってきました」

女「今度とも売り上げに貢献していく方針で行こう」

男「で!特攻した理由を言え!」

友「…あーあれだ、BD-1の様子がおかしかったからな。後で検証に使うだろうと思って守りにいったんだ」

友「気に病むなよ?俺は初出場で初戦と合わせて4機も落とせたんだ、満足してるよ」

男「あー、ありがとう?いいや…次、女」

女「私は…うーんと…//」

男「なんかもういいや」

女「酷っ!? 何その扱い!」

男「妹」

妹「はい」

男「お疲れ様」

妹「はいっ!」

女「あれ?私部長だよね?うん私部長だ」

―自室―

男「…ブルーディスティニー…」

男(形は保たれているが、実際はボロボロだ)

男(第三回戦の1対1…俺はこいつを…)

女「男。ちょっといいかな」カチャッ

男「女か。ちょうどいいや、二人で話したいことがあったんだ」

女「うん、何?」

男「今日の。理由は知らんけど、守ってくれてありがとう」

女「どういたしまして。ご感想は?」

男「悔しさ半分2割怒り、残りは正直嬉しかった」

女「そっか」フフッ

男「もうあんなことすんなよ、心臓に悪いから」

女「ごめんごめん。それでさ、次の試合の機体はどうするのか気になって」

男「ああ。それでお前に相談しようと思って」

女「うん、協力するよ」

男「察しが良くて助かる」セツメイチュウ

女「そんなことが…」フーム

男「単にバトルシステムに仕込まれたシステムトラップか何かだと思ってたが…やはり何かしらのオカルトはありそうだ」

女「…やっぱり、ブルーは一度降りた方がいいね」

男「ああ。それで代わりの機体を用意したいが、セイとは戦う可能性があるから新機体の件で頼るわけにはいかない」

女「妹ちゃんは試合残ってるからいいとして、友は?」

男「あいつ、手首痛めてると思う。トランザムの出力出し過ぎだし今週無理してたんだろ。ほっとけば病院行くだろうよ」

女「…男は大丈夫なの?」

男「不幸中の幸いというか、あのEXAM中は完全にコントロール奪われてたからな。自力だったらヤバかったかも」

女「そっか…じゃ、じゃあ久しぶりに二人で作ろっか」

男「よろしく頼む」アーダコーダ

~作成中~

女「よし、じゃあ続きはまた。…無理しないでね、男」

男「あ、女」

女「何?」

男「お前のゲルググ、カッコ良かったぞ」

女「…えへへ、また明日!」バタン

男(女には世話になりっぱなしだ)

男(けど…この戦いが終わったら…)

―イオリ模型店―

セイ「いらっしゃいませ!あ…男くん!」

男「セイ…何度も押しかけてすまない」

セイ「ううん。僕もあのときから気になってたし、それに僕も協力したガンプラだからね。しっかり調べないと」


男「まずこれが妹が編集してくれた、EXAM発動時の映像」

男「こっちは取り寄せたバトルシステムの記録、GPベース、そしてBD-1」


セイ「これは…バトルシステム側の異常の線が高いけど…」ウウム

セイ「男くん、次の試合でBD-1を使う予定は?」

男「無い。少なくともこの謎が解明するまで、ブルーを使う気は無いよ」

セイ「しばらくBD-1を預かってもいいかな?」

男「ああ。正直お前ぐらいしか頼れる相手がいないんだ」

セイ「分かった。知り合いにも声かけてどうにか調べてみる」

男「よろしく頼む」

男「それじゃお互い試合頑張ろうな」ガチャッ


セイ「まさか…」パキ

セイ「こんなところにあったなんて」

―自室―

男(EXAMに関する異常な出来事の数々)

男(思えばEXAMはコントロールどころじゃない)

男(俺の体まで乗っ取り、BD-1を作らせたんだ)

男(ユウ・カジマ)

男(νガンダムに乗る、様子のおかしなユウキ・タツヤ)

男(謎に塗れた第7回世界大会)

男(プラフスキー粒子)

男(サイコ・フレーム)

男(ニュータイプ)

男(アクシズショック)

男(アムロ・レイ)

男(…マリオン・ウェルチ)

男(どこからおかしくなった?どこから俺の現実は奪われた?)

男(そのとき隣にいたのは誰だ――?)コンコン

妹「失礼しますね、兄さん」ガチャッ

妹「機体の調整の方は順調ですか?」

男「妹」

妹「はい?」

男「お前には宇宙が何色に見える?」

妹「宇宙の色ですか?そうですねぇ」フフッ

男(最初に隣にいたのは妹だ)

男(俺の知らない俺が、急に触れたくなったのは妹だ)


妹「私には――……蒼色に見えます」


男(俺の中の『ユウ・カジマ』が手を伸ばしたのは)

男(宇宙を蒼と表現するのは)

男(彼女の中に眠った『マリオン・ウェルチ』…?)

男「そっか、変なこと聞いて悪かった。試合までには予備の機体も間に合いそうだよ」

妹「それは良かったです。何かお手伝いできることがあったら言ってくださいね」フフ

男「お前も試合あるんだから、体調管理はしっかりな」

妹「はい。それではおやすみなさい、兄さん」

男(……全てが俺の想像通りなら)

男(あれが本物のEXAMなら)

男(…全ての原因は――)

―第三回戦―

『それでは皆さんお待ちかね!上位トーナメント初戦!』ワーワー

『くじ引きで決められた対戦表の通りに進行していきます!』ワーワー

友「…まさかこうなるとはな」

女「…男…」

『第一試合!なんとまさかの兄妹対決!』ワーワー

男「…戦いだ」

妹「…行きます!」

『男くんvs妹さん!』ワーワー

Please set your GP Base

Beginning plavsky particle dispersal

Field 『Space』

Please set your GUNPLA

Battle start!

女『男…本当に蒼く塗るの?』

男『ああ。ニュータイプは宇宙が蒼く見えるっていうんで迷彩色としての蒼なんだってよ』

女『いやそうじゃなくてさ…あんなことがあったのに怖くないの?結局EXAM積んでるし』

男『怖いよ。けど蒼は好きだしさ』

男『それにこいつは、俺が本当に作りたかった“ブルーディスティニー”なんだ』

男「ブルースタークジェガン、出る!」バシュッ


男「さて、妹は…(おそらくドラグーン装備のXアストレイだと思うが)」ピピピ

男「! あーあ…さすが俺の妹だわ、いい趣味してるよまったく」

妹「フィンファンネル射出、ハイメガキャノンチャージ開始」シュシュシュッ

男「(ガンダムデルタカイ…ファンネルはνガンダムのものに換えられてるな)」

男「(青い炎は出てない…いや、あいつには必要なかったか)」

妹「(ファンネルを見てもEXAMが作動しない…非搭載か任意起動式ですね)」

男「行くぜ、ニュータイプ」ピーピーピー バシュゥ

妹「…集中!」ピポパ ビシュウウウウン

男(俺たちの現実に、何かが異世界から紛れ込んだ)バシュウ

男(いやそれはもっと前、10年以上前のプラフスキー粒子発見の時からだ)シュゥゥゥ

男(秘匿された技術、突然行方不明になったPPSEマシタ会長とファイターのレイジ)バシュウ

男(そして俺の中のユウ・カジマの記憶…いや魂とでもいうべきか)ババババ

男(そのユウが反応した、妹の中のマリオン・ウェルチの魂)シュゥゥゥ

男(確信している。妹は正気だし俺の可愛い妹だ。マリオンは“眠っている”のだ)ババババ

『スタークジェガン、デルタカイの猛攻を凌いでいます!』ウオオオオ

男(そこから考えれば彼女を眠らせる何かがあるはずだ)ビシュウウン

男(…それはつまり俺とセイが作ったのではなく、本物のEXAM?)シュゥゥゥ

男(遠隔操作に反応するのでもない“ニュータイプ”に反応する本来のEXAMだ)

男(ここにもう2つの異常が存在する)バッ

男(あのBD-1の中。もしくはBD-1に反応するシステムトラップ)ビシュウウン

男(それがバグとでも呼ぶべきあのEXAMを発動させた)ビシュウンビシュン

男(そしてその対象となるニュータイプは誰か?)シュウ ガッ

男(マリオンは眠っているしあの時妹は離れた場所にいた)ピポパ ガシュ

男(ならもっとも疑うべきは――メイジン・カワグチ)ドシュウゥ

『ジェガン、ついにファンネルを全て撃ち落したぁ!』ウオオオオ

男(あの様子のおかしな名人。俺が接近したときに起動したEXAM。彼の言動とνガンダム)ザッ

男(そして最後の要因はユウ・カジマの生涯で最大のオカルト)ズバァッ

男(アクシズ・ショック…そしてその原因)ジジジジ

男(サイコフレーム、νガンダム、…アムロ・レイ)バッ

男(俺と同じように名人の中にはアムロがいるのか?)シュウウウ

男(それはこれから調べればいい)シュッシュ

男「…バグで無双した俺が勝ち残るなんてのはどうかと思ってたが」ズバァッ

男「あいつと作ったガンプラ、壊したくなくなっちまったよ」ハハ カチッ

『EXAMシステム、スタンバイ』

男「お前ならついてこれるだろ、行くぜ!」バッ

妹「EXAM…、…!」バッ

―――――――――――
―――――――
――――

Battle Ended

『この激闘を制したのは――ガンダムデルタカイ!妹選手の勝利だぁーっ!』ワァァァァァ

男「ごめんな。負けちまった」

女「ううん、いいバトルだったよ。お疲れ様」

――――――――――――――――――――――――
―――――――――――
―――――――
――――

男(こうして俺はベスト16で大会を終えた)

男(妹は準決勝で名人に敗北しベスト4)

男(あの敗戦の後、俺はイオリ模型店に立ち寄り)

男(そこでセイが呼んだというイオリ・タケシとセイに全てを打ち明け、彼らにBD-1を託した)

男(セイはBD-1を大幅改修、RGシステムを中心にセイ独自のカスタムを施し使用)

男(…EXAMの戦いはイオリ・セイ対メイジン・カワグチの決勝で決着する)

『ド、ドロー!両者行動不能!決着は再試合に持ち越されます!』ウオオオオオ

男(そしてBD-1は頭部を中心に修復不可能なほどに破壊された)

男(イオリ・タケシの調べによると、試合中にこの会場のバトルシステム内で不審なプログラムが作動しているのが確認されたという)

男(試合後に気を失い運ばれたメイジン・カワグチは最近の記憶が無いと言ったそうだ)

男(自分で使わないと発言していたファンネル搭載機のHi-νガンダムを決勝で使用したことについても覚えがないらしい)

男(…決勝の日から俺は、ユウ・カジマの夢を見ることは無くなった)

―自宅―

男(反省会だとか言って妹が二人を連れ込み、またしてもお泊まり)

友「すごい試合だったなー」パチン

女「第7回のセイ&レイジ組vsメイジンの名バトルを思い出す戦いだったね」シーッ

男(ビルダーのセイにEXAMコントロールが加われば確かにそうなるか)パチン

妹「そろそろお風呂沸きますけど、誰から入ります?」

友「俺からいいかな」イイヨーイイヨーイイデスヨー イッテキマース

妹「! あ、私ちょっとコンビニ行ってきますね!」バタン

女「ちょ…どうしたのあの子。ねぇ…。男、また難しい顔してる」

男「ん。そうか?」

女「もう全部終わったんだよ?笑おうよ、ね」

男「そうだなー…どうもよくわからんものに青春を奪われた気がしないでもないんだよな」

女「まぁ男は大変だったねー」パチリ

男「そうだ…女、俺の携帯取って」

女「はーい」

男「サンキュ…えっと」プルルルル

妹『はい兄さん!二人きりにしてあげたのになんで電話してくるんですか!』

男「すぐ済むって。えっとな、空見てみ?」

妹『はい、見ました』

男「宇宙って何色だと思う?」

妹『うーん…ありきたりですけど、黒に見えます』

男「…そっか。んじゃ」エッニイサン ピッ

女「なに今の電話…」

男「戦いが終わったという確認みたいなもんだよ」フーッ

女「ふーん?」

男「…なぁ女、お前が伝えようとした大切なことってのが何かは知らないけどさ」

女「っ!?////」カァァ

男「ニュータイプでもイノベイターでも無いんだ、人が分かりあうにはきっと言葉が足りない」

男「だから言うよ。俺と――――」

―後日―

彼の話を強引に解釈するなら。

破損したBD-1の頭部には、レイジがくれたあの石。今はもう粉々に割れてしまっている。
会場のバトルシステムはこれに反応していた。破壊対象としてでなく動力源として。
謎のEXAMは本来のEXAMとも少し違う。レイジのような適応力の高い人間に対して発動するのだ。
おそらくはマシタ会長が仕込んだ攻撃プログラム。彼が使える手札はアリアン製のものしかない。
アリアンの石を動力源とし、アリアンの人間に代表される適応力の高い人間に対して発動。コントロールを奪い暴走する。

アクシズショックの現場に居合わせたアムロ・レイとユウ・カジマ。
さらにニュータイプでありユウと関係の深いマリオン・ウェルチ。
3人の魂がユウキ先輩、男くん、妹さんの3人に入った。
ユウキ先輩は意識を奪われるほど、男くんは夢を見るくらい、妹さんには大きな変化は見られなかったという。
石が割れた後、彼らの存在は確認されていない。ユウキ先輩もおかしなところはなくなった。
あのEXAMはニュータイプであるアムロ・レイに反応していたのだろうか。

そしてどういうわけかこの石がBD-1の頭部に紛れ込み、男くんは無意識でBD-1を仕上げていたという。
石に幻覚作用でもあるのだろうか。ガンプラの中の幽霊?それとも、それこそブルーディスティニー…宿命だったのか?
真相は分からないし、現実味の無い出来事ばかりだ。けれど異世界の王子、レイジは僕といた。
だからこの物語は僕らの胸にしまっておこう。石は割れてしまっても、レイジと過ごした日々は色褪せない。

セイ「決勝…頑張るよ、レイジ」


『やってきました、決勝戦再試合!今日はどんなバトルが我々を待ち受けているのか!』ワーワー

友「始まるぞー!」ワーワー

妹「楽しみです!」ワーワー

女「男はどっちを応援するの?」ワーワー

男「そりゃセイだよ。去年のリベンジ、期待するぜ」ワーワー

蒼い運命に振り回された夏が過ぎていく。
賑やかになった部活で、来年も大会に出て、今度はきっとセイと戦える。
右手には彼女の左手。来年もその先も、この想いは変わらない。

セイ「X3ファントム、行きます!」バシュゥ

名人「フラッグ・アメイジング、出る!」バシュゥ

この日、この夏最高気温が叩き出された――……。

――――――――――――――――――――――――

「…夢でも見ていたのだろうか」

背後には青い地球。
俺たちが守らねばならないものもの。
目を開いて操縦桿をきつく握りしめ、虹の中へ飛び込んでいく。

「しかしこのあたたかさを持った人間が地球さえ破壊するんだ。それをわかるんだよアムロ!」

「わかってるよ!だから、世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろ!」

虹の彼方に、彼女の幻影を見た気がした。

マリオン。
久しぶりに笑えた気がするよ。
優しい虹は俺を包んで、宇宙の蒼に消えていった。




『――宇宙には心が満ちているの。』



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