P「春香が行方不明ですか!?」小鳥「バイクも無いと…」(122)

小鳥「プロデューサー、やっぱり禁止までしたのは…」

P「…とにかく先に春香を見つけるのが先です、小鳥さん。警察に連絡、それと事務所としての見解も示さなくちゃいけない」

小鳥「…分かりました」

P「…」

遡る事2週間前

Vo審査員「あら!2番のボーカルいい感じね!」

Vi審査員「6番ちゃんもう少し頑張りましょうね」

Da審査員「おっ!4番のダンスいいよ!」

~結果発表~

Vi審査員「おめでとう!優勝は3番よ!」

春香「!」

Vi審査員「あ、呼ばれなかった人は帰っていいわよ」

プロデューサー「おめでとう!春香!」

春香「はい!まさかこんな良い点数で勝てるなんて…」

プロデューサー「ああ、だがまだ通過点だからな?」

春香「えへへ、分かってますって」



とあるアイドル「くっそー…」

とあるプロデューサー「お疲れ、はい、タオル」

とあるアイドル「…悪い、負けちまった」

とあるプロデューサー「今回のオーディションは実力アップがどれ程のものかを確かめるために受けたんだろ?」

とあるアイドル「確かに…だけど負け戦とは思ってなかったからなあ、勝てると思ったから受けたんだぜ?」

とあるプロデューサー「…まあ、こんな事言った後になんだけどさ。2位に食い込めただけでも凄いよ、確実に実力は上がってきている。特に兼ねてからの強みであり課題でもあったVoだが、審査員の食いつきは前とは比べ物にならなかったぞ!」

とあるアイドル「ま、その肝心のVo審査員は途中で帰っちまったけどな」

とあるプロデューサー「うっ…」

とあるアイドル「…ありがとう、プロデューサー」

とあるプロデューサー「事実を言ったまでさ」

とあるアイドル「しっかし、765の天海春香、ちょっと前まではさっぱりだったはずなのに急に頭角を現してきたな」

とあるプロデューサー「…そういう分析って俺の仕事なんだけど」

とあるアイドル「たまたま気になってただけだって」

とあるプロデューサー「確かに、彼女の成長は目を見張るものがあるな」

とあるアイドル「くっそー、快進撃を続けてきたアタシも一度ここでストップかー」

とあるプロデューサー「おいおい、今までとんとん拍子で来たと思ってるのか?」

とあるアイドル「…まさか」

とあるプロデューサー「こんな時はいつも何してた?」

とあるアイドル「決まってるだろ、言わせるなって」

とあるプロデューサー「よし、ご褒美だ!行って来い!」

とあるアイドル「サンキュー!」

とあるプロデューサー「今度はどこに行くんだ?」

とあるアイドル「んー、ちょっと遠目かな?一人の予定だし」

とあるプロデューサー「あれ、前から言ってたあの子は?」

とあるアイドル「拓海か、拓海なら最近ブラブラするのはもうやめてバイク屋に弟子入りしたって、急にどうしたんだろう?聞いても絶対教えてくれなかったし」

とあるプロデューサー「理由は分からないけど、良いことなんじゃないかな?」

とあるアイドル「そうだな、まあそんなんだから忙しいんだってさ」

とあるプロデューサー「そっか、寂しいだろうけど忙しいのは何よりってね」

P「最近ミスが多いぞ」

春香「…すみません」

P「春香も今やランクCアイドルだ、今までだって手を抜かせてきたつもりは無いが、今までよりメディアの露出も増えて厳しい目線にも晒される。ランクアップしたからって、ちょっと浮かれてるんじゃないのか?」

春香「…頑張ります」

P「…うん、春香が頑張ってるのは俺だってよく分かってる、だからここまでこれた。でも、キツイこと言うけど頑張ってるのは春香だけじゃないんだ」

春香「…はい」

P「反省してくれてるみたいだから今日はもう何も言わないけど、この状態だったら初めにも話したけど今企画してるユニットのセンターを美希に交代してもらうからな」

春香「…はい」

P「じゃあ、今日はこれで。気をつけて帰れよ、お疲れ様」

春香「…はい、お疲れ様でした」

K125「その顔を見る限り、たっぷり絞られたようじゃな」

春香「…うん」

春香「最近忙しくって…」

K125「じゃったら早く寝るんじゃ」

春香「でも、あんまり乗れてないでしょ?コレダお爺ちゃんに…」

K125「ワシは春香のお父さんが面倒を見てくれているから問題ないわい」

RG500Γ「そうだよ、だから今は仕事と学校に専念したほうがいい」

春香「…」

春香「ねえ、コレダお爺ちゃん」

K125「なんじゃ」

春香「10分だけ!」

K125「は?」

ガコン!ガコガコガコガコココ…

春香「はあ…この感じだぁ…」

春香パパ「あれ、出かけるのか?」

春香「う、うんちょっと買うものがあったの忘れてて」

春香パパ「そうか、寄り道するんじゃないぞ。じゃあもう寝るから鍵閉めよろしく。お休み」

K125「…全く」

RG500Γ「ははは…」

春香「夜風も気持ちいいよ~、ちょっと虫が気になるけど…」

K125「ちょっとだけじゃぞ」

春香「分かってますって」

鈴菌か

翌朝

春香ママ「春香!何二度寝してるの!」

春香「…!!」

春香「ええ~!?こんな時間!?」

春香ママ「さっき起こしたでしょ!?パパに送ってもらいなさい!」

春香「そんなの知らないよ~!」バタバタ

ガチャガタタガタ…

春香パパ「これは遅刻だなあ」

K125「ほれみろ、言わんこっちゃ無い」

RG500Γ「エンジンはもう暖まってるよ、しっかりつかまっててね」

春香「うぅ…」

生徒「お早うございます!」ダダダッ

教頭先生「お早う、あと3分だぞ~」

校長先生「ではでは、そろそろ戻りますかな」

教頭先生「はい、いやあ、今日もいい天気…」

ヴウウウウウウゥゥゥン!

校長先生・教頭先生「!?」

ヴウウウンガチャタタタタ…

春香パパ「ほら!早くメット取ってウェアを脱ぎなさい!」

春香「分かってるよ~!」

教頭先生「そういうところはきっかりしてるんですなあ」

春香パパ「申し訳ありません、先生…」

キーンコーンカーンコーン

春香「ああ!チャイム!おお、お早うございま!うわあっ!」

どんがらすたっ

校長先生「受身ですか」

教頭先生「バイクに乗ると上手くなるんですかね」

校長先生「そんなに頻繁にこけるのなら誰も乗らないかと」

春香「うう~!」ダッ

春香パパ「本当に申し訳ありません!今後遅刻はしないようきつく言っておきます…」

教頭先生「よろしくお願いしますよ、アイドルも大変なようですがこちらの方も頑張って頂かないと。ですよね、校長先生…」

校長先生「ウォルターウルフか…」

RG500Γ「え、あ、そうです…」

教頭先生・春香パパ「…校長先生?」

紫煙

春香「プロデューサー、行ってきます」

P「うう、すまない…車で寝てる、終わっても寝てたら携帯にかけてくれ…」

春香「ゆっくり休んでくださいね、仕事はちゃんとやっておきますから心配しないでください!」

P「春香こそ頑張れよ、お休み…」zzz

春香(…なんて言ったは良いけど…)

春香(…正直この番組のお仕事はあんまり好きじゃないんだけどな…)

春香(…えり好みしてちゃダメ!プロデューサーが見つけてくれたお仕事なんだから!)

P「…お、収録は終わったみたいだな」

春香「あれ、起きたんですか?」

P「ついさっきね。収録の様子は見れなかったけど、担当の人と話してたら春香の事褒めてたぞ、頑張ったな、春香」

春香「は、はい!ありがとうございます、プロデューサー」

春香(…なんか、複雑だな)

千早「聞いて!春香!私の新しいソロ曲が決まったの!」

春香「おお!?おめでとう!千早ちゃん!」

美希「さすが、千早なの」

千早「ありがとう、リリースはまだまだ先だけど、その曲なんだけどね、凄く面白そうで…」

春香(…そっか、千早ちゃんは夢に向かって頑張ってるんだ…)

千早「…でも、まだまだ私はアイドルとしてはダメね、表情が硬いって言われるし、美希、それに春香にはまだ追いつけないわ」

春香「え、私?」

千早「ユニットのセンターでしょ?私と美希の。プロデューサーは実力が伴わないなら美希と交代するとは言っていたけど私は春香がセンターがしっくりくると思うわ」

美希「うん、美希もそう思うな」

美希「ねえ、美希ね、今が今までで一番楽しいの。なんとなく始めたアイドルだけど、春香的に言えばやっとエンジンが掛かった感じ、かな?」

美希「だからね、美希、頑張るよ!3人で成功させるの!」

春香(美希…)

春香「そ、そっか、私頑張るよ!」

千早「ええ、私も2人に負けないよう頑張るわ」

春香(アイドル…か…)



春香(小さい頃からの夢だったけど…)

春香(もうちょっと華やかなものだとは思っていたけど、やっぱりそう甘くは無いよね…)

春香(今日もくたくた、明日もくたくた…)

春香(前まではオフの時はいっつもバイクに乗ってたんだけどな…)

春香(…お父さんがコレダお爺ちゃんのエンジン掛けてる…)

春香(調子悪くなるんだよね…乗る間隔が空くと…)

春香(…)



春香ハッ

春香(今何時!?)

春香(し、しまった~!また寝坊した~!)

春香(うぅ…あんなに父さんに叱られたのに…)

春香(レッスンに絶対間に合わないよ…)

春香(…そうだ!…いや…でも…)



K125「お、今日はオフなのか」

春香「…」

K125「…なんじゃなんじゃ?」

RG500Γ「え、どうしたのかい?」

春香「ちょ、ちょっと今日はコレダお爺ちゃんでお仕事へ…」

K125「プロデューサーからバイク通勤は禁止されていたんじゃなかったのか?通勤は今まで通り電車にしろって」

春香「じ、実は寝坊しちゃって電車に乗り遅れちゃって…バイクなら間に合うんだけど…」

RG500Γ「はあ…」

K125「…まったく」

P「よし、ちゃんと集ったな」

春香(ふう、間に合った間に合った…)

P「じゃあ、レッスン開始だぞ、ちゃんとトレーナーさんの指示に従うように!」

春香・美希・千早「はい!」



P「…やっぱりな」

K125「…」

P「春香、ちょっとこい」

春香「はい」

春香(…まさか)



春香「…」

P「ツーリングはたまにだから良い、ペース配分や休憩もある」

P「こんな長距離を毎回バイクで通っていたらいつか事故を起こす、そう言って禁止だって約束したよな?春香」

春香「…実は、寝坊して…それでレッスンに遅れたくなかったから…」

P「…結構スケジュール詰めてるからな…」

P「…春香、美希とセンターを交代だ。無理してるだろ」

春香「…!」

P「美希にも共通パートのレッスンはさせてある、だから…」

春香「い、いやです!」

春香(あれ…?)

P「ん…」

春香「私、センターがいいんです!!」

春香(私、何を言って…)

P「春香、責任感が足りないぞ、こんな調子で良いものに仕上がると思うか?」

春香「で、でも!!」

P「…」

春香 ビクッ

P「…アイドルとは何か考えろ、アイドルはファンの人に喜んで貰うのが仕事だろう!」

春香「…!」

P「…それと決まりを破った事への罰だ、バイクにはしばらく乗っちゃいけない」

春香「…!そ、それだけは!」

P「…春香はアイドル活動よりバイクの方が大切なのか!?」

春香「プ、プロデューサーだってバイクに乗ってるじゃ…」

P「俺は俺の務めは果たしていると自信を持って言える!だが春香はどうだ!」

春香「…」

P「お父さんには既に電話して話を付けてある、乗って帰ってくれるらしいからキーを渡しておきなさい」



春香パパ「なんで父さんに言ってくれなかったんだ?」

春香「…前に遅刻したから、言えなかった」

春香パパ「…全く」

春香パパ「ルールを破ったんだ、春香。バイクだって交通ルールを守るし破ったら罰則だ」

春香「…」

春香(…父さんは3本目のスペアキーがあるのを知らないんだ)

春香(…)

K125(…ん?)

K125(…春香か、おや?)

K125「春香、こんな夜中に何を…」

RG500Γ「…ん、ちょ、ちょっと、その荷物!?それにこんな時間に!?」

春香「…」ガション

K125「お、おい!春香!聞いておるのか!」ズリズリ

RG500Γ「春香ちゃん!」

春香パパ「…」zzz...

春香ママ「…」zzz...

春香(…)

春香(家、暗くて良く見えないや)

春香(まあ、どうでもいいけど…)

春香 ハッ

P『見ろ!皆!綺麗な事務所だぞー!』

皆 ウワー!スゴーイ!

千早『…まあ、どうでも、いいですけど』

P『!?』

春香『はは、千早ちゃん…』

春香(…)

春香(…もう、関係ないもん)

ガコン!ガコガコガコガコココガコココ…

美希「春香…どこ行っちゃったんだろ…」

千早「…携帯も置いてってしまうなんて…」

P(コレダは125ccだから高速道路は無理だ、だから時間的に考えてもそんなに遠くは行っていないはず…)

P(…)

『プロデューサー、やっぱり禁止までしたのは…』

『俺は俺の務めは果たしていると自信を持って言える!だが春香はどうだ!』

P(くそっ…!)

K125「…で、どうするつもりなんじゃ」

春香「…」

K125「…だんまりか」

K125(…しかしこんなことになるとはの…)

K125(初めての北海道が…)

K125(…苫小牧って北海道のどの辺りじゃ)

翌朝

春香「…」

K125「お、目が覚めたか、春香」

K125「北海道はもっと牛とか羊とかがいると思ってたんじゃがの」

K125「今日はどこへ行くんじゃ?」

春香「…」

K125「ま、どこへ行こうがわしがどうこうできるもんではないか」

K125「ほー、工業の町か、苫小牧は。ん、なんじゃ、もう出て行くつもりなのか?」

ガコガコココガコ…

スタタタタタタ…

K125「お、JAZZか」

JAZZ「…ん?見慣れないバイク…」

K125「神奈川から来たんじゃ、今家出に付き合っとる最中での」

JAZZ「ええ!?家出!?そんな遠くから?」

K125「色々あったらしくての、そういえばお前さんのオーナーも若いの」

JAZZ「そうそう、そこの高専に通ってて、でもこいつもサボり多くってさー」

K125「お、信号が変わったようじゃの、じゃあの」

JAZZ「あ、ああ、気をつけて」

苫高専生A「今日信号待ちの後ろの子可愛かったー…」

苫高専生B「未履修には気をつけろよ、え…春香ちゃんが失踪!?」

苫高専生A「あー、765プロダクションだべ?」

苫高専生B「ショックで胃に穴開きそうだわ…」

苫高専生A「そういえば今朝見た子に似てたかも」

苫高専生B「こんなに可愛い子が2人も3人居るわけないしょや!ああああ無事で居てくれええええ」

K125「ガソリンを入れなくてもいいのか?もう無いぞ?」

春香「…」

K125「また押して歩くハメになるぞ」

春香「…」

K125(…ほんとにだんまりじゃの、昼食も普通にしてるから金はあるはずなんじゃが…)

K125(しっかし、こんななんにも無いところでガス欠になったらどうするんじゃ…)

K125(…来たか)

プスプスプス…

春香「…」ガション

K125「ほれ見ろ」

春香「…」

K125「ガソリンスタンドの位置は分かるのか?」

春香「…」

春香「…ひっく…ひっく…ううぅぅっ…うわああああああぁぁぁん!!」

K125「…」

K125(…ん?)

ボボボギュイイイイイィィィン!!

ボボッボボボボッボボ…

春香(…?)

夏樹「…何やってるの?大丈夫?」

春香「…え…!?」

春香「や、やっぱり木村夏樹さんだ…」

夏樹「知っててくれてたんだ、ありがとな」

春香「はい、テレビとかで、凄くかっこいいなーって…」

春香(…)

春香(私の事は…知らないのかな…)

春香(そりゃそっか、木村さんと私じゃ全然違うもん…)

夏樹「名前は?なんて言うの?」

春香「え、え…?」

夏樹「いや、アンタの名前だよ」

春香「えっと…」

春香「え、えりこです」

夏樹「えりこか」

春香(…なんで嘘ついちゃったんだろ…)

『…なんか、複雑だな』

春香(…)

春香(…私…嘘ついてばっかり…)

夏樹「…それで、なんでこんなとこで泣いてたの?」

春香「…ええと…」

夏樹「何!?神奈川から茨城まで行って、フェリーで北海道まで来てろくに給油もしないで滅茶苦茶に走ってたのか!?」

春香「…はい」

夏樹「…とにかく、ほら、これ入れてやるから」

春香「携行缶…」

夏樹「ここを真っ直ぐ行けばあるから、1Lありゃあ次のスタンドには間に合うだろ」

春香「…すみません」

夏樹「…ん、それ2stオイルってやつ?」

春香「はい、そうです」

夏樹「…なんだこの単車?」

春香「K125ですよ、スズキ、K125です」

夏樹「んー?聞いたことねえな」

春香「夏樹さんのバイクはなんですか?見慣れないフレーム…」

夏樹「ザンザスだよ、カワサキの」

春香「…」

夏樹「カワサキの4発ネイキッドはゼファーしか知らないって言いたいんだろ」

春香「うっ…」

XANTHUS「しょうがねえよ、俺は売れてねえし」

K125「どこのメーカーにも居るもんじゃよ、そういう車種は」

XANTHUS「ありがとうよ。なんもフォローになってないけど、ははは」

夏樹「良い単車なんだぜ?足回りは貧弱だがそれでもアタシにきっちり応えてくれる、コンパクトで加速も良いしな」

夏樹「…まあなんでもいいけどさ」

おう

春香はコレダよりモトコンポのイメージ

春香(…)

『まあ、なんでも、いいですけど』

春香(…)

夏樹「んじゃ、アタシはこれで」

春香「えっ、ちょ…」

夏樹「どうした?」

春香(言、言わなきゃ)

春香「そ、その…ありがとうございました…」

春香(うっ…そ、そうじゃなくって…)

夏樹「…違うだろ?」

春香「えっ…」

夏樹「今回はアタシから誘うけどな、今度からはちゃんと自分から言おうぜ」

夏樹「着いてきなよ、合わせるから」

春香「…!」

春香「は、はい!」

K125「わしゃ2ストロークエンジンじゃがいかんせん古くての、お前さんに比べると大したこと無いぞ」

XANTHUS「気にするなよ。あんまり飛ばしてっと、アイドルが速度超過で罰金とか洒落になんねえしな」

K125「それもそうか、ではよろしく」

春香「よろしくね、ザンザス君」

夏樹「ふっ、可愛い事するじゃん」

春香「えへへ…」

XANTHUS「おう、よろしくな。なんつって…」

春香 ウィンク

XANTHUS「…マジ?」

K125「そういう事もあるもんじゃ」

春香「夏樹さんは、今はオフなんですか?」

夏樹「オフ?」

春香(あ…)

春香(…べ、別にアイドルじゃない人もオフって言うよね?)

夏樹「うん、そんなところ。大きい仕事っつーか…まあ仕事か、それが終わったから3日貰ってさ」

春香「そうなんですか」

春香(…良かった、疑われなくて…)

春香(…)

春香(…なんでビクビクしてるんだろ…私…)

春香「夏樹さんはなんでザンザスを選んだんですか?」

夏樹「ん?」

春香「理由があるのかなーって」

夏樹「理由か、アタシの友達に向井拓海って奴が居るんだけど、そいつが私に選んでくれたんだよな」

春香「!?」

夏樹「速いのがいいって言ったから候補は色々あったけど、一番ピピっと来たんだよ、ザンザスが」

春香「そ、そうなんですか」

春香(世間って狭い…)

夏樹「でも最初拓海には、やめとけって言われたんだよな、候補に挙げといて何がやめとけだっての」

夏樹「でもまあ絶対これがいいって言ってさ、お店の人も『お目が高いですね!』なんて、まあ後で理由調べたら腰抜かしたよ、これ2000台ちょっとしか売れなかったんだな」

春香「ははは…」

訳がわからない上に淡々と進んでなんかアレ

夏樹「逆に聞くけどなんでK125を選んだんだ?」

春香「え、えーと…私は…実はこれ、解体屋の隅に転がってたんです」

夏樹「へえ?じゃあレストアしたんだ?」

春香「そうですね、お店の人に頼んで。初めはこれを直すぐらいなら別のを買ったほうがいいって言われたんですけど…」

春香「…でも、これに乗りたいなって思ったんです、他にもお店の人に勧めてもらったのはあったんですけど、どれも今一つで…」

夏樹「…ふーん、似たようなもんだな、アタシ達」

春香「…そうですね、えへへ」

春香(…似たようなもの…か…)

春香(…全然違うんです…違うんですよ…)

春香(私なんかとは…夏樹さんは…全然…)

春香「…はぁ」

Xanthus「何ため息ついてるんだよ」

春香「…」

K125「本当にらしくないの、春香」

春香「…らしくない、か」

支援

Xanthus「自分探しの旅ってか」

春香「そんなんじゃないもん…」

Xanthus「じゃあ現実からの逃避行だ」

春香「…別に北海道に行きたかったわけじゃないんだけど、なんとなく北に来ちゃったんだ…」

Xanthus「昔から犯人は北上するって言うしな」

春香「…ねえ、私らしさってなんだろう?」

Xanthus「そう言われてもなあ」

K125「んー、抜けてる、かの」

春香「何それ」プンプン

春香「あ~あ…事務所の皆はそれぞれキャラが立ってるのに、私って普通…」

春香「千早ちゃんみたいに歌がうまいわけでも、真みたいにダンスが得意なわけでも…」

K125「強いて言うならドジとかじゃないのか?」

春香「…それって、私の個性じゃないもん…」

春香「一生懸命頑張ってもあざとい、ドジしちゃってもあざとい…」

春香「いやんなっちゃう…」

Xanthus「…逆に聞くけど、俺達スポーツネイキッドやビジバイらしさって何だ?」

春香「…スポーツネイキッドなら速い、スタイリッシュ、ビジバイなら燃費が良いとか?」

K125「わしゃ取り立てて燃費が良いわけではないがベストセラーじゃ」

Xanthus「俺は素質はあるはずなんだがさっぱり売れなかったぜ」

春香「…」

春香「よく分からなくなってきちゃった、あ~あ…」

Xanthus「まあ何が言いてえかって言うとな、そんなに難しく考える必要は無いってことよ」

春香「…ザンザスらしいや」

Xanthus「…あん?」

春香「何となく直線番長っぽいって意味」

春香「おやすみ、部屋に戻るね」

Xanthus「…別にそんなことはないと思うんだけどな」

これ、バイクはバイク語で会話してるんじゃなくて、普通に人間とも話が通じてるのか?

春香だけじゃね

夏樹「まー、旅館も良いもんだな」

春香「そうですね、落ち着きますよね」

夏樹「旅に出てるんだなあって感じ?あ~、イギリスとかアメリカとかいつか行ってみたいな」

春香「夏樹さんなら向こうでも通用しますよ!」

夏樹「フッ、どうだろうね、向こうはロックの本場だからさ。ま、通用しないままとは言わせないけど!」

春香(…やっぱり、凄い人ってこうなんだなあ…)

夏樹「…よし、ブログ更新っと」

夏樹「ちょっと外出ようぜ、星が綺麗だからさ。今の時期でも冷えるからジャケット着とけよ」



夏樹「いいねえ、イギリス、アメリカ。向こうでも単車走らせたいねぇ」

春香「ロイヤルエンフィールドとかハーレーに乗ってみたり?」

夏樹「ははは、単車は日本車に限るよ、特にカワサキが一番だ」

XANTHUS「流石、良く分かってるぜ」

K125「ははは、これはスズキ車としては聞き逃せんの」

春香「私は乗ってるのがたまたまスズキなだけかな…あ、スズキ派が居ますよ、私の…」

春香(…)

夏樹「知り合い?」

K125「…」

春香「そ、そうですね」

春香(…プロデューサー、か…)

春香(…もう戻れないんだろうな、765プロダクション)

夏樹「ふーん、そうなんだ。アタシはザンザスしか乗ったこと無いから他は知らないなあ」

春香「やっぱりカフェ・レーサーカスタムとか憧れたりしますか?」

夏樹「んー…そんなに?」

春香「あれ、そうなんですか」

夏樹「カフェ・レーサーってアレだろ?速く、カッコよくがコンセプトのカスタムじゃん」

夏樹「ザンザスの方が速いし、カッコいいぜ!」

春香「おお…ばしっと…」

夏樹「まあベース車によるんだろうけどな、ははは」

春香「それもそうですね、あはは」

夏樹「まあ、不人気車種だなんだ言われてるけどなあ…でもそんなの関係無いじゃん?」

夏樹「アタシがカッコいいと思ったんだ、だからカッコいい」

春香「…そういうものですか」

夏樹「…そういうもんだよ」


夏樹「765プロの、天海春香さん」


春香「…!」

夏樹「最初っから分かってたよ、失踪してたのもな。女の子がうずくまって泣いてたから止まったけど、まさか天海春香とはな。一瞬目を疑ったぜ」

春香「…」

春香「…私、何してるんだろ…えぐっ…」

夏樹「…」

K125「…聞いてるから、話してみなさい」

春香「…うぅっ…」

春香「…自分でも、厳しいのは分かってたのに…センターじゃ無くなるって言われたら、えぐっ…センターじゃ無くなるのが怖くなって…」


春香「周りの皆は一生懸命に頑張ってて、夢に向かって…私だって辛いこともあったけど…今までは…ひっく…夢に向かって前進していけてたから…」


春香「で、でも、今じゃその夢も霞んじゃって…ひっく…なんっ…で…私…えぐっ…アイドルやってるのか分かんなくなっちゃって…なのに…辞めることも怖くて…」


春香「あんなに好きだったのに、アイドルのお仕事が…それが今じゃただ辛いだけで…それで…こんなに皆に迷惑かけちゃって…私…私…ううっ…」

春香「…もう、無理です…!無理なんですよ…!!楽しかったレッスンも…!事務所の皆と笑うのも…!」

春香「大好きなプロデューサーさんや事務所の皆と一緒にお仕事するのも…!!小さな頃からの夢でもあった、そして皆と約束した、トップアイドルになるって夢を叶える事も…!!!」

夏樹「…当たり前だろ、甘えるんじゃないよ」

春香「…それぐらい、えぐっ、分かってます…私で、ひっく、でも…もう…事務所に戻れないって事ぐらい…」

夏樹「はあ?本当に全然分かって無いんだな」

春香「…?」

夏樹「やらかしちまったもんはしょうがないし、そりゃあもう辞めさせられたって文句は言えねえよ?765プロみたいな他に頑張ってる奴が居るところならアンタみたいなやる気の無いアイドルをいつまで囲っててもしょうがないだろ」

春香「…だから…そんなことは…」

夏樹「ちげえ!!アタシの言いたい事はそんな事じゃねえ!!」

春香「!」

夏樹「お前がプロデューサーや事務所の皆と約束したのはそんな程度の事だったのかよ!!」

夏樹「お世辞にも才能があるなんて言えないお前がここまでやって来れたのは只の運だったってわけか!?」

春香「…違う!!違います!!…でも…でも、もう無理なんですよッ!!」

春香「所詮、夢は夢、私は只の夢見る女の子だったんです!!」

夏樹「…自分一人が挫折を味わってるなんて思うな!?」

春香「…!」ビクッ

春香「…で、でも、夏樹さんは違うじゃないですか…!」

夏樹「…違わなくねえよ、この前のオーディション、春香が得点15で1位になった時アタシは2位だった、けど何点だったと思う?」

春香「…あの時に!?」

夏樹「どうやら覚えられてすら無かったようだな、ははは」

春香「え、いや、その…」

夏樹「気にするなよ、正解はVi4のDa3の7点だ、肝心要のVo審査員は途中で帰っちまったからな」

春香「…7…点…」

夏樹「事務所の同期に大見得切って受けた結果がこれだぜ?これだけじゃねえ、何度辞めようと思ったか分からないさ」

夏樹「ロックなアイドルなんて今じゃ言ってるけど、初めは今の事務所じゃなくて、別の事務所に居たんだ。けどそこの命令でクール路線で売り込んでた、でも燻ってた、ランクDに上がるのさえ無理だったんだぜ」

夏樹「でも、そんな時今のプロデューサーに引っこ抜かれてさ、アタシがやりたい事を言ったらのびのびやらせてくれたんだ」

夏樹「…それでも順調とは言えなかった、結構前にランクCに上がれたのは良いがそこ止まり、チャートの伸びも今一つ、ランクBになんてとてもじゃないが現状じゃ無理だ」

夏樹「だが、アタシはトップアイドルを諦めない!!理由がわかるか!?」

春香「夏樹さんは、自分に自信があるからじゃないですか…」

夏樹「違うね、確かに自信が無い訳じゃないがそれだけじゃない」

春香「じゃ、じゃあ何なんですか…?」

夏樹「質問の仕方を変えるぞ、春香のプロデューサーはどうして春香をアイドルにしようと決めたと思う?」

春香「…分かりません、し…」

春香(だって、そんなの…もう…!)

春香「もう…!関係無いじゃ…!」


夏樹「春香の夢を信じたからだろうが!!」


春香「…!!」

夏樹「うちのプロデューサーも言ってたけど、765のプロデューサーは将来のアイドルマスターだって!!」


夏樹「そんなプロデューサーが!春香が言う通りの只の夢見る女の子に!」


夏樹「心血注いで身体摩り減らしてまでプロデュースなんかするわけねえだろうがあッ!!」


夏樹「逃げるな!!天海春香!!このまま迷惑掛けるだけ掛けてばっくれんのかよ!?」

青春してるのう

『責任感が足りないぞ?春香』

K125「…何でもけじめはつけねばいかんぞ、春香」

XANTHUS「俺達単車だってそうさ、暴れ馬に好き好んで乗る奴も居るが、本来の良い単車ってのは乗り手の要求に応える単車ってもんじゃねえのか」

XANTHUS「俺達単車は乗る奴が居なきゃ朽ちていくし、乗る奴だって俺達が居なけりゃそもそも単車に乗れないんだ」

XANTHUS「お前も応えてやれよ、アイドルとプロデューサーも似たような関係だろ?」

春香「…」

ギュイイイイイン!!!

春香「…!!」ハッ

夏樹「…来たみたいだな」

キキーッ!

Bandit250V「春香ちゃん!」

P「…春香か!?」

地元かよ

春香「…あ…あ…」

P「春香なんだよな!?それに夏樹さんですよね!?」ダッ

夏樹「…ええ、そうです!!」

P「…ハアッ…ハアッ…」ヨロヨロ

P「良かった…本当に…」ヘタッ

春香「プ…プロ…デューサー…」

P「…話は後だ、とにかく、帰ろう」

春香「…は、はい…」

『今回はアタシから誘うけどな、今度からはちゃんと自分から言おうぜ』

『…何でもけじめはつけねばいかんぞ、春香』

春香(…!)

春香「…あ…」

P「…?」

春香「…あの…」

P「…どうした?」

春香「私!!私頑張りますから!!!やらせてください!!!」バッ

P「!!」

春香「今回のユニットをやらせてください!!センターを美希と交代してやらせてください!!お願いします!!!」

P「お、おい!土下座なんかやめないか!!」

春香「お願いします!!お願いします!!」

P「だったら立つんだ春香!」

春香「…は、はい!?」バッ

P「…アイドルが顔に砂つけてどうするんだっての!」フキフキ

春香「うう…」

P「…記者会見を開こう、そして一緒に謝ろう、春香。謝るのは俺に対してじゃない、迷惑をかけた方々や心配をかけたファンの方々だ。」

P「それに、俺が春香の気持ちを今一つ分かってなかったのも、スケジュールの管理が甘かったのも事実なんだ…」

P「それなのに、自分は自分の役割を果たしているだなんて…」

P「…ごめんな、春香。皆待ってるぞ」

春香「うううっ…うわあああああぁぁぁん!!」

記者達「天海春香さんの芸能活動上でのトラブルが原因ということでよろしいのでしょうか!?」

P「先程も述べました通りでございます」

記者達「木村夏樹さんからの報告で初めて分かったと言うことですが、木村夏樹さんはそのトラブルとは何か関係が!?」

春香「木村さんとはたまたま苫小牧で会っただけです。木村さんには大変お世話になり、また多大なご迷惑をお掛けしましたが、今回のトラブルとは全く関係ありません」

記者達「事務所側とのトラブルということで、既に他プロダクションから引き抜きの話が上がっているとの事ですが、今後の活動について何か!」

春香「私を今まで支えてくださったのは765プロダクションであり、また今の私があるのも765プロダクションがあっての事です、そしてこれからもここで仕事をしていきたいと思いましたし、今回のような大騒動を起こしたにも関わらず私の在籍も許可してくださいました」

記者「765プロダクションにて活動を引き続き行うということでよろしいのですね!?」

春香「はい!今まで以上に頑張りたいと思います!」

真「しかし北海道に行ってたなんてなあ…」

雪歩「ビックリしましたぁ…」

あずさ「本当、私でもそんなところには…」

伊織「でもってどこまでなら行ったのよ…」

亜美「とかちっち?」

真美「スライスチーズ?」

律子「苫小牧から札幌を通って小樽だから場所が全然違うわよ…」

やよい「くっしゃろこのクッシーさんは居ましたかぁ?」

律子「クッシーさんも所ジョージさんも居ません!」

響「それにしても、自分驚きすぎて2回も聞き返したぞ…」

貴音「本当に、心臓が止まるかと思いました…」

千早「春香ったら…相談してくれれば良かったのに…」

美希「もう会えないかもって思ったの…」

春香「…ごめんね、皆…」

律子「ま、無事で何よりよ。でも春香が居なくなった時は本当にびっくりしたんだからね」

真「木村さんから連絡があった時なんか、プロデューサー、すぐにバイクに乗ってすっ飛んでったんだよ」

春香(バンディット君も暖気無しでいきなりアクセル開けられたからビックリしたって言ってたっけ…)

春香「うう…反省してます…」

伊織「ホント、とんでもない事するんだから…」

美希「…」ジーッ

春香「?」

美希「春香ー!!」ガバッ

春香「わわっ!?」ドサッ

千早「!?」

美希「もう黙って居なくなるなんて嫌なのー!」

春香「み、美希…」

美希「春香ー!!」

亜美「ひゅーひゅー」

真美「熱いね~」

千早「ちょ、ちょっと美希、春香が重いって、離しなさい!」アワアワ

美希「春香~」

春香「…しばらくこのままでもいいかな?」

千早「!?」



終わり

おつ

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