男「ボクは世界一のバトル解説役になる!」 (67)

バトル解説役とは──その名の通り『バトルを解説する役割を担う人間』である。



ボクサー「シッ、シシッ!」シュパパッ

柔道家「うぐっ……!」ヨロッ…

解説役「なんてジャブだ! 予備動作が全くない!」



魔術師「ヒッヒッヒ……」ボワァッ

兵士「ぐわあああっ!」メラメラ…

解説役「あの黒い炎……まさか、封印されし黒魔法ブラックファイア!?」



選手「今だ! フォーメーション“Z”だ!」バッ

敵選手「なにっ!?」

解説役「ほう……。高校サッカーで、このフォーメーションを見られるとは……」



あらゆる分野のバトルに彼らは存在し、今日も活躍を続けている。

門外不出の古武術の技も解説できるからな
某格闘漫画なんて当主ですら知らない技を知ってたし

そしてここにまた一人、『バトル解説道』に足を踏み入れんとする男がいた。



ザッ……!

男(ここが『バトル解説役養成学校』……!)

男(今日からボクの“バトル解説道”が始まるんだ……!)

男(ボクは世界一のバトル解説役になる!)

<入学式>

校長『諸君、まずは入学おめでとう』

校長『これから君たちは、『バトル解説役』を目指して』

校長『本校でバトル解説の全てを学んでもらうことになる』

校長『バトル解説の道は長く険しい……』

校長『例年、この学校を卒業できるのは、入学したうちの一割ほどじゃ』

校長『ある意味では、戦闘だけを専門とする人間より辛いかもしれん』

校長『しかし、くじけず頑張ってもらいたい』

男「…………」ゴクッ…

校長『さて、まずは今の君たちの実力を知るといい』

校長『正確にいえば、“実力のなさ”を……じゃな』パチンッ

男(実力のなさ?)



すると──

バババッ!

戦闘員A「勝負だ!」ザッ

戦闘員B「望むところだ!」サッ



男(えっ、ここでバトルが始まるのか!?)

どんな学校だよ

戦闘員A「だだだだだっ!」

戦闘員B「でりゃりゃりゃっ!」

バキィッ! ドドドッ! ドゴッ! ズドォンッ!



男「…………!」

男(全然……見えない……! 何をやってるのかすら分からない……!)



校長『どうじゃ?』

校長『おそらく、解説どころか見ることすらできておらんだろう』

校長『しかし、我が校の卒業生にかかれば──』

卒業生「…………」スッ

戦闘員A「でりゃあっ!」

バキィッ!

卒業生「すげぇパンチだ!」

卒業生「当たる瞬間に捻りを加えてある……コークスクリューブローか!」

戦闘員B「なんのぉっ!」グッ…

卒業生「あのブローを受けて、なんともないのか!」

卒業生「戦闘員Bもすげえタフネスしてやがる……まるで戦車!」

男(す、すごい……!)

男(あのスピードの戦闘を、いともたやすく解説するなんて……)

男(しかも、ボクにも分かりやすく二人の戦闘がどんなものか伝わってくる……)

男(これが……バトル解説……!)

職業だったのか・・・

男塾では解説にかなり笑ったわ

校長『ご苦労じゃった。下がってよろしい』

卒業生「はい」

校長『諸君』

校長『はっきりいって、今の戦闘などは難易度としては易しい部類に入る』

校長『戦闘内容も単純だったし、スピードもさほどではなかったからのう』

男(あれで易しいのか……!)

校長『しかし、君たちも訓練を重ねれば、今の戦闘を解説することが可能になる!』

校長『解説道……極めてみせよ!』



オオオオオッ……!

バキ解説には敵わんな

何人かOB知ってるわ

<教室>

男(ボクのクラスはここか……)

友人「よう」

男「あ、やあ」

友人「いやぁ~たまげたな。さっきの入学式は」

友人「さっきの戦闘、全然見えなかったぜ……」

男「ボクだってそうさ」

男「正直、バトル解説役になんかなれるのかなって不安になったもん」

友人「でも……いずれあれぐらい楽勝で解説できるような解説役になってやろうぜ!」

男「うん!」

すると──

バババッ!

担任「ボンジュ~ル!」スタッ

シ~ン……

男(なんなんだ、この人……バク転しながら教室に入ってきたぞ……?)

友人(変なヤツ……こいつが担任か?)

担任「…………」ピクピクッ

担任「何をやっているんだ、君たちは!」

男&友人「!?」

ザワッ……

担任「今みたいな時に解説しなくてどうする!?」

担任「“バク転しながら、教室に入ってきただと!?”とか! “身軽だ!”とか!」

担任「“フランス語を使うってことはフランス人!?”とか! ──色々あるだろう!」

男「……あ」ハッ

友人「そうか……」

担任「解説役は『解説してくれ』と頼まれてから解説するとは限らない!」

担任「また、解説を要するようなバトルはいつどこで始まるか分からない!」

担任「君たちは常に気を張っていなければならないのだ! 分かるね!?」

男(そうだ……ボクたちは解説役を目指すんだから)

男(いつどこでどんなバトルが起こっても)

男(咄嗟に対応できるようにしなきゃいけないんだ……)

友人「ふん、こうでなくっちゃな!」ニヤ…

支援

一時限目『知識』──

担任「知識は解説の基本だ! 解説道は、知識に始まり知識に終わる!」

担任「知識がなければ、解説などできるわけがない!」

担任「剣道を知らぬ者が、どうやって剣道の解説をする!?」

担任「サッカーに無知な者が、どうやってサッカーの試合を説明する!?」

担任「必殺技が放たれた時、技のことを知らなければなにもしゃべることができない!」

担任「知ること! これは解説道の基本である!」

担任「武術はもちろん、魔法、武器、スポーツ、恋愛、政治、経済、何でもだ!」

担任「知りすぎる、などということはない!」



この学校の卒業生の進路は、自分で決めることができない。

解説役を欲する世界へ、ランダムに放り込まれるのである。

ゆえに解説役となるならば、“全て”を知らなくてはならないのだ。

担任「では、今日は格闘技知識についての講義を行う」

担任「しっかりメモを取って、どんな格闘技の試合をも解説できるようになれ!」

男「はいっ!」

友人「はいっ!」

男(いよいよ始まった……ボクの解説道が!)

担任「ではまず、空手における拳の握り方……」カリカリ…

男「ふむふむ……」

友人「ほうほう……」

二時限目『リアクション』──

担任「解説とは、バトルを輝かせるもの!」

担任「ただ知識をベラベラとしゃべるだけでは話にならん!」

担任「時には怯え、時には驚き、時にははしゃぎ、時には大笑いして」

担任「バトルに華をそえねばならん!」

担任「膨大な知識に良質なリアクションが加わって、初めて解説といえるのだ!」



男「なるほど……」

友人「奥が深いな……」

ほうほう

男「うわっ!」

担任「ダメだダメだ、やり直し!」

友人「うわぁぁぁっ!」

担任「わざとらしい! やり直し!」

「うわあっ!」 「わあ~っ!」 「うわわっ!」

担任「いいか、ただ大声を張り上げればいいというものではない!」

担任「驚愕や緊張、絶望といった感情をこめなければ意味がない!」

担任「さあ、もう一度だ!」

男「うわぁっ!」

友人「うわわあっ!」

出川哲朗

出川哲朗

昼食時間──

担任「これより給食を配るが、食事時も気を緩めるな!」

担任「出された料理、全て解説しながら食べるのだ!」

担任「世の中には、料理バトルというものもあるのだからな!」

男「食事時も休めないなんて……」

友人「解説道は厳しいぜ……」




男「こ、これはイカ! なんて歯応え……素晴らしい歯応えだ!」モグッ…

担任「ボキャブラリーが少なすぎる! 歯応え以外にもなんかいえ!」

友人「うまいクッキーだな」サクサク…

担任「それはマカロンだ、バカモノ!」

面白い

三時限目『体力作り』──

担任「知識やリアクションだけでは不十分!」

担任「解説には体力も必要だ!」

担任「卒業後、どんな世界に送り込まれるかにもよるが」

担任「解説役は、あらゆる環境で解説をこなさなければならないのだからな!」

担任「時には自分自身が戦うことになるかもしれぬ!」

担任「いずれにせよ、体力がなければ話にならんのだ!」



男「体力ってことは……」

友人「まさか……」

担任「腕立て伏せ100回!」

担任「今日は回数を少なめにしてやるが、数はどんどん増やしていくからな!」

男「くっ……!」グッグッ…

男「まさか、筋トレをやるはめになるなんて……」グッグッ…

友人「まるで軍隊だな……」グッグッ…

友人「だが、これぐらいしないといい解説役にはなれないんだろうぜ」グッグッ…

担任「コラそこの二人、しゃべるな!」

男&友人「すみません!」

ホームルーム──

担任「これで今日の授業は終わりだ」

担任「といっても最後まで気を抜かないように」ギュルルルッ

男&友人「!」ハッ

友人「先生が回ってやがる! まるでフィギュアスケートだ!」

男「つま先で立つことで、摩擦を極限まで減らしているのか!」

担任「そこの二人、なかなかいいスジをしているな」ピタッ

担任「だが、まだまだひよっこだがな」

担任「今のように、いつでも解説する心構えをしておくのだぞ」



男(よぉ~し、頑張るぞ!)

養成学校は全寮制である。

<寮>

男「ここがこの学校の寮か……」

友人「見ろよ、あっちで先輩たちが解説バトルやってるぜ」



先輩A「つりゃあっ!」ブオンッ

先輩B「むっ、疾風のような廻し蹴り! 空手をやっているな!」

先輩B「でりゃあっ!」バババッ

先輩A「なんて連打だ! まるでマシンガンだ!」



解説バトルとは──文字通り、解説しながらバトルをすることである。

バトル解説役を目指す上での、ポピュラーな修業方法の一つ。

むろん、熟練者がやらねば解説が間に合わないか、あるいは舌を噛むことになる。

支援

先輩A「はあっ!」ドゴッ

先輩B「この掌底……内臓まで響いてくる!」



友人「すげぇな……」

男「うん……」

友人「今はまだ、俺たちにはあんな芸当はムリだが」

友人「いつか、俺たち二人で解説バトルをやろうぜ!」

男「うん!」

自分でバトルすんな

長く険しいバトル解説の日々が幕を開けた!



担任「これはヌンチャクという武器でな」

担任「こうして振り回して敵を倒すのに使う」ヒュンヒュンッ

男「へぇ~」

友人「痛そうだな……」



男「な、なんてスピードだ!」

担任「驚きが足りん! 今のリアクションでは大した速さには感じられないぞ!」

友人「この速さ……まるで馬並みだ!」

担任「そこはもっとハッタリをきかせて、チーター並みといえ!」

担任「腕立て伏せ1000回、開始ッ!」

男「ぬぐおぉぉぉ……!」グッグッ…

友人「ぐううっ!」グッグッ…

担任「1000回やるまで、立つことも休むことも許さん!」

男「き、きつい……」グッ…

友人「くじけんなよ……」ググッ…



担任「さあ、このバラバラに解体された銃を組み立てるのだ!」

担任「自分の力で組み立てれば、銃の構造を理解できる!」

男「はいっ!」カチャカチャ…

友人「はい!」カチャカチャ…

男「えぇ~っと、これがこっちで……」カチャ…

友人「この部品はここか?」カチャ…

担任「どうだ、この手の動きが見えるか!?」ババババッ

男「見えます」

担任「では、今の10秒間で私は左右の手を何回チョキに変えた?」

男「812回です」

担任「正解!」

男(よし……動体視力がだいぶ鍛えられてきたぞ!)



男「うわぁぁぁっ!」

友人「うおおおおおっ!」

男「うわぁぁぁっ!」

友人「うおおおおおっ!」

男「うわぁぁぁっ!」

友人「うおおおおおっ!」

担任「二人とも、いい声になってきたな!」

友人「今日は休日だから、二人で解説バトルしようぜ!」

男「いいよ!」

友人「つりゃっ!」バッ

男「このフットワーク……卓球のフットワークを応用させたものか!」

男「だっ!」シュッ

友人「なんてパンチだ……リニアモーターカーより速いッ!」



男「ぐぅ……ぐぅ……」

男(夢の中でも解説のことは忘れてはならない!)

男(夢でだってバトルは発生するかもしれないんだから……!)



………………

…………

……

しえ

生活の全てを『バトル解説』に捧げることおよそ五年──



担任「アン、ドゥ、トロワ!」バババッ

友人「なんだと! あ、あの動きは……!?」

男「知っているのかい!?」

友人「ああ……あれはダンスと拳法を組み合わせた、ダンシング拳法!」

男「ダンシング拳法……聞いたことがある!」

男「拳法を禁じられたある国の武術家が編み出した、幻の拳法だとか……!」

担任「……みごとだ。スピード、タイミング、リアクション、全て完璧だった」

担任「この五年間で、私のクラスは君たち二人だけになってしまったが、よくやった」

担任「あとは校長が課す最終試験を残すのみ!」

担任「君たちなら絶対に合格できる!」

男&友人「はいっ!」



二人は脱皮を果たしていた。

最終試験──

校長直属の戦闘員二名が行う変幻自在のバトルを、解説しきることである。



校長「この最終試験をクリアすれば、君は晴れて卒業じゃ」

校長「準備は……いいかね?」

男「お願いします!」

校長「では開始ッ!」



戦闘員A「キエエエエエッ!」

男「あ、あの咆哮は特殊な周波数で敵を惑わすという“鬼声”!」

戦闘員B「無駄だ……なぜなら私はこれを耳につけている」スッ…

男「なにいっ!? 事前に耳栓をつけていただと!?」

男「なんて用意周到な奴だ、戦闘員B!」ゴクッ…



校長(ほう、ツバを飲み込むのは高ポイントじゃな。緊張感を煽ることができる)

戦闘員A「ならば、これでどうだ!」シュッ

バキィッ!

戦闘員B「ぐっ……!」ビリビリ…

男「スネをぶつけるような蹴り! 戦闘員Aはムエタイ経験者だったのか!」

戦闘員B「フッ……格闘技には銃で対抗する!」チャッ

男「あの銃は……グロック17!」

男「プラスチック、ポリマー2を利用した、オーストリア製の名拳銃!」

戦闘員B「……死ね」

ドンッ! ドンッ! ドンッ!

戦闘員A「ふん、銃など効かんな……」

男「むむ、あの鎧の材質……オリハルコン! あれじゃ銃弾は効かない!」

男「すげえ……どちらも一歩も譲らない!」



校長(ふむ、なかなかのものじゃ。少々解説がキレイすぎるが、まぁ問題あるまい)

戦闘員A「どうやら、真っ当な戦闘では勝負がつかんようだ」

戦闘員A「こうなれば、カードゲームで勝負!」

戦闘員B「おう!」

男「あのカードゲームは……見たことがある!」

男「かつて社会現象を巻き起こしたという“デュエルカオスカードバトル”だ!」

戦闘員A「俺のカードはこれだ」スッ…

男「あっ、あれは幻のレアカードといわれる“滅殺カジキマグロ”!?」

戦闘員B「ならば俺はコイツで勝負!」

男「むっ、あれは“ダンベル小僧”! しかも印刷ミスのあるバージョン!」



校長(カードゲームについても学習しておるようじゃのう……みごと!)

キャプ翼の解説者もここのOBなのだろうけ・・・

戦闘員A「ハァ、ハァ、ハァ……」

戦闘員B「ゼェ、ゼェ、ゼェ……」

男「どっちも疲労困憊……凄まじいバトルだった……!」

戦闘員A「どうやらカードでも決着はつかないようだな」

戦闘員B「うむ」

戦闘員A「というわけで料理勝負だ!」

戦闘員B「いいとも!」

男「ボクが審判を引き受けましょう!」



校長(バトルは格闘戦やゲームだけとは限らん……さあ、解説してみせい!)

戦闘員A「まず俺のから、どうぞ」

男「ほう、松茸ごはんですか」モグッ…

男「う、うまい……!」

男「丹波松茸の風味と、新潟コシヒカリの堅実さが絡み合い」

男「絶妙なハーモニーを奏でている! これぞ食材が奏でるオーケストラだ!」

戦闘員B「次は俺だ」

男「タケノコご飯ですか」モグッ…

男「ほう、これは合馬のタケノコの歯応えが素晴らしい!」コリコリ…

男「これに宮城ササニシキのあっさりとした食感が加わると、まさに無敵艦隊!」

男「甲乙つけがたいですなァ!」

戦闘員A「互角のようだな」

戦闘員B「うむ」



校長(さて……そろそろこのワシも参加させてもらうぞ)ニヤッ

戦闘員A「ならばこの剣で決着をつける!」ジャキッ

男「あ、あれは……!」

校長「知っておるのか!?」

男「うむ……人を百万人喰らったとされる大蛇アナルコンダを倒した」

男「伝説の──“マングースソード”ッ!」

校長「マングースソード!? いったいどんな剣なんじゃ!?」

男「およそ100年前、“Mr.ナマクラ”の異名で知られた売れない鍛冶屋が」

男「どうせ廃業だからと、半ばヤケクソで打った剣だ!」

男「偶然にも凄まじい切れ味を生み出したおかげで、鍛冶屋は大金持ちになったという」

男「その後、同じのを作ってくれといわれても二度と作れなかったらしいがな」

校長「な、なるほど……」

戦闘員B「ふん、俺の武器はこれだ!」ジャキッ

男「む……!」ピクッ

校長「なんじゃ、驚かせおって。ただの斧ではないか」

男「お前の目は節穴か……? あれはただの斧なんかじゃない!」

校長「なんじゃと!?」

男「見るがいい、あの斧の形状! まるで手と手が握り合っているようだろう!?」

校長「ほ、本当じゃ! いったいなんという名前なんじゃ!?」

男「あれこそ、最強の斧といわれる“握手アックス”だ!」

男「あまりに強すぎるため、時の権力者によって闇に葬られたと聞いていたが」

男「まさか実在していたとはな……」ニヤッ



校長(ワシの問いにテンポよく答えたか……よくやった! さあラストじゃ!)

アナルコンダにやられた

戦闘員A「いくぞぉぉぉぉぉ!」

戦闘員B「でやぁぁぁぁぁ!」

ガキキキンッ! キンッ! ガキンッ! キンッ!

男「光速で武器を打ち合うことで、一撃のたびに空間に歪みが生じている!」

男「下手に近づけば、一瞬で次元の藻屑だ!」

校長「ひぃぃ!」

戦闘員A「うおおおおっ!」

ブオンッ!!!

男「あれは、戦闘員Aの必殺技“ビッグバン斬”!」

男「ビッグバンにおいて生ずるエネルギーを刃に集約し、相手を切り裂く大技だ!」

戦闘員B「でやあああっ!」

シュバッ!!!

男「戦闘員Bも最強奥義“マッスルアックス”で対抗する気か!」

男「斧を筋肉で叩きつけるシンプルかつパワフルな奥義! この勝負、どうなる!?」

ザンッ……!

戦闘員A「ぐはっ……なんて強さだ……!」

戦闘員A「む、ねん……!」ドサァッ

戦闘員B「俺が強かったんじゃない……お前が弱すぎたのさ」

ヒュゥゥゥゥゥ……

男「終わった……のか……」




校長(大げさにせず、あえて茫然としてみせることで)

校長(戦いの無常さをみごとに表現しておる……パーフェクトじゃ!)

既に解説者の方が強そう

そして──

校長「うむ、合格だ!」

男「ありがとうございますっ……!」

戦闘員A「よくやった」

戦闘員B「俺たちも、戦ってて気分がよかったよ」

男「お二人こそ、お疲れ様でした!」

校長「……君の卒業後の進路はまだ決まってはおらぬが、おって連絡する」

校長「それまでは十分体を休めておくように」

男「はいっ!」

校長(また一人……優れた解説役が誕生したか)

戦闘員が聖闘士レベル

友人「よう!」

男「やあ!」

友人「その顔は……合格したって顔だな?」

男「うん!」

友人「へへっ、俺もどうにか合格したぜ!」

男「やったぁ! 二人とも卒業だね!」

友人「ああ……これで俺たちもついにバトル解説役だ」

友人「だが、おそらく卒業後の進路はバラバラになるだろう」

友人「だから最後に……お前と決着をつけておきてえ」

友人「解説バトル勝負だッ!」

男「いいよ、喜んで受けて立つ!」

友人「いくぜ!」ダッ

男「なんてダッシュだ、まるでスペースシャトルのような加速!」

友人「どりゃあっ!」バキッ

男「ぐっ……! このパンチ、ボクシングのジャブに空手のエッセンスを加えている!」

男「でりゃあっ!」ドゴッ

友人「ぐおっ、すげえ前蹴りだ!」

友人「力任せに蹴っているように見えて、相手の急所を的確に狙っている!」

男「…………」ニヤッ

友人「…………」ニヤッ

バキィッ……! ドカッ……! ゴッ……!



………………

…………

……

ビッグバン集約……

<卒業式>

校長『諸君、卒業おめでとう』

校長『これから君たちはそれぞれの世界で、バトル解説役となる』

校長『能力バトル、格闘技、剣術、料理、ゲーム、ビジネス、ギャンブル、裁判……』

校長『どんなバトルが君たちを待っているか分からない』

校長『しかし、君たちならばどんな世界でもやっていけるはずじゃ!』

校長『幸運を祈る!』ビシッ

男「す、すごい……幸運を祈るっていっておきながら親指を下に向けた!」

友人「さすが校長だぜ……!」

校長『いい解説じゃ』

校長はなんなんだよ

卒業式後──

男「ところで友人はどんな世界にいくんだ?」

友人「えぇ~と、『モテナイ君は恋人が欲しい』ってところだな」

友人「恋愛系の漫画世界らしい」

男「恋愛? バトルなんかあるのかな」

友人「きっと恋のバトルを解説する役割になるんだろうぜ」

友人「お前は?」

男「『現実』だってさ」

友人「へぇ~、どんな世界なんだ?」

男「さあ……校長先生もよく知らないっていってたし……行ってみないと分からないな」

友人「そっか……」

友人「んじゃ、もう会えないかもしれないけど……お互い解説頑張ろうぜ!」

男「うん!」

こうして二人はそれぞれの世界に旅立った。

……

…………

………………





男(ボクがバトル解説役として『現実』に来てから、およそ三年の月日が流れた)

男(ボクはたまたま寄ったある国で)

男(友人の向かった先の世界が描かれている本を見つけることができた)

男(この『モテナイ君は恋人が欲しい』って漫画を読むと──)ペラ…



モテナイ『くっそぉ、なんでビジンちゃんはあんな奴の恋人になったんだ!』イライラ…

セワヤキ『吊り橋効果ってやつだな』

モテナイ『吊り橋効果? なんだそれ?』

セワヤキ『ようするに、ピンチの時ほど人は恋に落ちやすいって理論だ』

セワヤキ『あの二人はついこないだ、キャンプで遭難したからな』

モテナイ『なるほどぉ~』



男(主人公“モテナイ”の親友である“セワヤキ”ってキャラはどう見ても友人だ)

男(養成学校で学んだ、恋愛のノウハウを解説している)

男(この漫画を読むたび、彼も頑張ってるんだなぁ、って励まされるよ)

男(それに比べてボクときたら……)

男(この世界のキャラクターはどうにもノリが悪い)

男(普通ならボクが解説したら、うなずいて感心してくれるはずなのに──)



兵士「敵国兵士め、ぶっ殺してやる!」ガチャッ

男「おおっ、あれはブローニングM2重機関銃!」

男「ジョン・ブローニングによって開発──」

兵士「ジャマだ!」ガガガガガッ

男「あだだっ!」

男(痛いなぁ、解説してる最中に攻撃してくるなんて……ルール違反だ!)

男(ま、養成学校で鍛え抜いたボクの体には効きもしないけどさ)

兵士「ひええ、化け物だぁ~!」スタタタッ

男「あ、逃げやがった! おい、最後までボクの解説聞けよ! 待てったら!」



男(──ってな具合で、ボクが解説すると、みんな逃げたり、戦闘をやめたりしちゃう)

男(こんな感じで、ボクは三年間でいくつもの戦争や紛争を中断させてしまった)

男(校長先生や担任の先生が今のボクを見たら、さぞ怒ることだろう……)

男(最近では──)



ニュース『また謎の青年が、長年続く民族紛争に終止符を打ちました』

信者「あなたは平和の神に間違いありません! どうか祈らせて下さい!」

指導者「ぜひ君にノーベル平和賞を与えたい!」



男(ボクを敬う宗教ができるわ、ノーベル賞を与えるだの、大騒ぎだ)

男(そんなガラじゃないってのに……)

男(面倒だから、いつも逃げ回ってるけどね)

男(もし……)

男(もし、ボクのせいでこの『現実』とかいう世界から)

男(バトルがなくなっちゃったら、どうしよう?)

男「…………」

男(そしたら……平和を解説するのがボクの役目になるのかな)










                                     おわり

おつ

なんか壮大なオチになったな
乙!

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