P「如月?どっかで聞いたことあるような」千早「?」(148)

P(どこだっけ?)

千早「……どうかしましたか?」

P「あ、いや。なんでもない、これからよろしくな」

千早「はい……」

P(なんか、気難しそうな子だな)

P(……しかし、どこで聞いたんだけ。如月……如月……)

P(待てよ?確か……、あの時の男の子って)

P(……いや、さすがに偶然だな。忘れよう)

P(あんな事思い出したところで、今さらな)

P(あれからもう、10年近くか?はっきりは覚えてないけど)

P(まあいい、か。今はこの子に集中しないと)

P「えっと。千早は歌が好きなんだっけ」

千早「そうですね。いずれは歌手になりたいとおもってます」

P「なるほど。アイドルとして長くやっていく気はないと」

千早「ですから、あまりダンスなどに興味は」

P「いや、アイドルの間は踊ってくれないと困るんだが」

千早「そう、ですか」

P(あー、ちょっと面倒くさいなこの子)

P(どう育てたらこの年でこうなるんだろうな、家庭環境劣悪なのか?)

P「……わかったよ、とりあえず。ボーカルレッスンを多めにしてやるから」

P「そのかわり、ダンスとかもやってくれよ」

千早「……わかりました」

P「……ふーん、さすがに歌はうまいな。すごいよ」

千早「……ありがとうございます」

P「子供の頃からうまかったの?」

千早「いえ、昔は……その……」

P「じゃ、練習したわけだ。まあ、歌が上手なのはいいことだ、それだけでアピールできるからな」

P(とはいえ、この性格じゃあんまりテレビにはだせないか?)

P(変に受け答えして、干されでもしたら。せっかくのダイヤの原石がドブ川だ)

P「ああ、そうだ。そのうちデビューすることになるとおもうんだけど」

P「多分、PVとか、ジャケットの写真とかの衣装も必要なんだよね」

P「一応、きくけど。希望はある?」

千早「別に、なんでもいいです。衣装が歌に作用するとはおもいませんし」

P「あのな、フリフリの服で演歌歌ってもだめだろ?」

千早「歌がよければ、それでも十分成立するのでは?」

P「してもそりゃ、キワモノだ」

P「とりあえず、衣装は……まあ、歌がきまってからでいいや」

P「こういう歌がいいっていうのは?」

千早「歌えというのなら、どのようなものでも歌います」

P(と、いうけど。あんまりあまったるいのは止めておこう)

P「……しかし、そんなに歌が大事か?」

千早「何が言いたいんですか?」

P「いや?アイドルなんだし、歌なんて二の次三の次だろ」

P「俺はそこまで、重要なものとは思えないけどね」

千早「……」

P「ま、お前が歌いたいっていうなら。俺はその場を提供しなくちゃいけないけどさ」

P「今日は初日だし」

P「この程度でいいか……それじゃ、また明日な」

千早「お疲れさまです……」

P「ああ、お疲れ様」

P(うあー、ホント。お疲れさまだよ、俺)

翌日

P「今日は営業するぞー」

P「とはいえ。ちょっとしたショーのアシスタントみたいなもんだけどな」

千早「それが歌うことになにかつながるのでしょうか」

P「いいや、まったく」

P「あれ、でもまったくというわけでもないか。知名度はあがるし」

千早「……」

P「乗り気じゃない?歌じゃないから?」

千早「正直に言わせてもらえば、そうですね」

P「あのな?」

P「数学の時間に現国の勉強してみろよ、ただのバカだろ」

P「俺は、お前をプロデュースしなくちゃいけない」

P「もちろん。お前が望むなら、歌わせてやる」

P「けど、今はまだそういう段階じゃない」

P「こっちの方針には従ってもわらないと、プロデュースできないんだよな」

千早「そうですか、……わかりました」

P「……ま」

P「そんなに歌いたいなら、家で家族の前で〝おうたのひろう〟でもすればいいだろ」

千早「……」

P「ほら。いくぞ、ここで話してたら時間におくれちゃうし」

千早「は、はい……」

P(はあ、……なんなんだ、こいつ)

千早(なんなの、この人)

P(──なんとか終わったけど)

P(完全に身が入ってなかったな……)

P(ここにきて、最初の担当がコレで大丈夫なのかよ)

P(如月って苗字で、無駄に昔のこと思い出しちまうし)

P(……イライラするッ!)

千早「プロデューサー、どうかしましたか?」

P「……ちっ」

P「なんでもないよ」

P「……じゃ、今日はこれで終わりだな」

千早「はい」

P「また明日……」

千早「あ、あの……。明日、お休みをいただけませんか?」

P「ん?オフか。まあ、いいけど?どうせ明日はまだこれといった予定なかったし」

千早「では、お願いします」

P「何かあんの?」

千早「……少し」

P「?」

翌日

P(……ふう、他のアイドルのプロデュースも任せられてないし)

P(社長から直々にオフをもらってしまった)

P(まあ。今は仕事もすくないし、余裕が少しあるのかな)

P(俺としては、別の子に担当かわりたいんだけど……)

P「ん、あれは」

千早「……」

P(まいったな、オフでアレに会うなんて)

P(……何するんだろ、ちょっと尾行してやろう)

P(……あれ、ここの墓)

P(来た事あるような……?)

千早「……」

P(誰かの墓参りか……?)

P(じーさん、ばーさん。……いや、親か?)

千早「それじゃ、またくるわね……優」

P「!?」

P(優、って…………)

P(……帰ったな)

P「……これが、あいつの家の墓」

P「…………やっぱり、如月優って、あいつの」

P「……はは」

P「なんて偶然だよ、……まったく、ありえないわ」

P「せっかく、就職できたっていうのに」

P「親戚の家に養子にはいってまで苗字変えて、家から出たってのに」

P「結局……、あんたがやらかしたことが、俺の人生めちゃくちゃにするのかよ」

P「父さん……」

P「いや、関係ない」

P「父さんが千早の弟を殺したやつだとしても」

P「だからって、俺がその事で何かをしなくちゃいけないわけじゃない」

P「……なあ、お前はうちの家族を恨んでるのか」

P「ま、それもそうか。見たところ、事故のせいでお前の姉ちゃん。ああなったみたいだし」

P「…………」

P「……ごめん、本当に……ごめんなさい……」

P(……こんなことで、お前の姉ちゃんは許してくれないだろうけど)

P(せめてもの、罪滅ぼし。……俺が罪悪感から逃げたいだけの自己満足かもしれないけど)

P(あの娘は、……俺がトップアイドルにしてみせる)

P(だから、そこで姉ちゃん見ててやってくれよ)

P(……ほんと、ごめんな)

翌日

P「……今日はボーカルレッスンをしよう」

千早「!」

千早「いいんですか?」

P「ああ。長所は伸ばすべきだ」

P「……その、お前を、トップアイドルにしてやるよ」

P「歌手になる足がかりとしては、申し分ないだろ」

千早「あの、どうかなさったんですか?」

P「まあ、昨日いろいろと考えてね」

P「俺はプロデューサーだから、やっぱり。道を示すべきかな、と」

千早「はあ……、そうですか……」

P「ま、いいじゃないか」

P「レッスンはじめようぜ……、そのうち、CDもデビューさせてやるよ」

P「だから。まあ、改めてよろしくな、千早」

千早「あ、はい、よろしくおねがいします……」

P(さて、そうと決まればがんばらないとな)

P(そうだ。CDだよ、CD!)

P(なにかいい曲はないかな)

P「……ふむ、技術があるヤツなだけあって、迷うな」

P「どれ歌わせても、それなりにこなしてくれそうだし」

P「うーん……」

千早「~~~~♪」

P(ふむ、レッスンも上々か)

P「よし。今日はこれくらいにしよう、すごくよかったぞ」

千早「そうですか?」

P「ああ、そこで相談なんだが。早速、CDでも出そうかとおもってる」

千早「……っ!」

P「で、いくつか候補があるんだけど」

P「どれがいい?」

千早「それは、プロデューサーの決めたものでかまいませんよ」

P「いや、やっぱり。せっかくの1stシングルだし。千早が……」

千早「そうですか……。では、まずどんな曲があるか、聴かせてもらえませんか?」

千早「……この曲がいい」

千早「この曲が、歌いたいです」

P「お、これか……」

P「俺もこれがいいって思ってたんだよな」

P「じゃ、これでCDデビューだ」

P「ははっ、一位めざしてがんばろうっ」

P「初登場……30位か」

千早「……」

P「あ、いや。最初でこれって、すげーんじゃない?」

P「うん。それに、じわじわと売れていけるはずだし」

P「それに、次はもっと上を目指すっていうモチベーションにもなる」

千早「……そうですね」

千早「これくらいで、折れいられませんね」

P「おうよ」

P(……絶対、お前をてっぺんにつけれていくから)

P(もし、折れたとしても、俺が支えなくちゃいけないんだ)

P「……まあ、何にせよ」

P「発売祝いだ、飯食いにいこう。おごるよ」

千早「……いいんですか」

P「ああ、かまわないよ」

P「あ、でも。ファミレスでいいよな、あんまりお金ないし。若いうちから高級なもんくっても心が貧しくなる」

千早「あ、はい。構いませんよ」

P「よし。じゃあ、いこうか」

P「……なんだ、千早は鶏肉が好きなのか?」

千早「あ、いえ。そういうわけでは……」

P「おいしいよな、鶏肉」

P「まあ、俺はブタが一番すきだけど」

千早「……あの」

P「ん?」

千早「ド、ドリンクバー、行こうかとおもうんですが」

千早「プロデューサーはどうします?ついでについできま……」

P「ん?」

千早「い、い、いえっ、な、ななな……、なんでもっ」 プルプル

P「ま、まあ。とりあえず、メロンソーダで」

P「あ、そういや。ご飯たべるってこと……」

P「親御さんにいった?」

千早「あ、いえ……。私、一人暮らしですから」

P「そ、そうなのか」

P(やっぱり、あのことのせいでうまくいってないとか?)

P(それとも、たんなる事務所に通うためか?)

P(……ああ、やめとこ)

P「一人で大変じゃない?」

千早「そう思うことは、多々ありますけど……なんとか」

P「ふぅん」

P「ああ、そうだ」

P「パンツ。パンツ、俺のやるよ」

千早「は?」

P「あ、いやっ、違うんだ……」

P「ほら?……その、男モノの洗濯あると、いろいろと虫除けに、さ」

千早「……あっ、なるほど」

P「どう?」

千早「でも、でしたら……、自分で買った方が」

P「いーじゃん、金かかるだけなんだし!」

P「俺はトランクスいっぱいもってるから。な?」

千早「……あ、」

千早「ありがとう、ございます」

千早(驚いた……、いきなりパンツだなんて)

P(……よし、家に帰ったら確かまだはいてないのあったし。それでいこう)

P「さて、食べ終わったことだし。そろそろいくか」

千早「あ、はい……」

P「送っておくよ、家どのあたり?」

千早「一人で大丈夫ですよ?」

P「いいよ、……まあ、ついでということで」

千早「…………では、お願いします」

千早(どうしたのかしら、いきなりやさしくなったりして)

P「へぇ、ここか」

P(俺よりいいじゃんっ、いくらだろ、このマンション)

千早「では、私はこれで」

P「うんっ、またな」

千早「きょうは、ありがとうございました」

P「気にするなよ。……じゃ、明日」

千早「はい……」

P「……ただいまー」

P「っと、誰もいないんだけどな」

P「……お風呂はいったら寝よう」

P(……本当のこと、千早に伝えるべきなのかな)

P(やめておくか、……知らない方が、きっといい)

P(苗字を変えたのも、他の誰かに昔のことを少しでも感づかれないようにだし)

P(それに、あの事故のこと一番思い出したくないのは、千早だろうな)

P「……さて!今日の入浴剤はっと」

P「はァ~……」 ザプーン

P「一日の疲れが、湯にとける……」

P(しかし、俺はこのままでいいのかね)

P(……ちゃんと、千早を導けるのかな)

P「……はは、考えても仕方ないか」 チャプン

P「明日も、がんばろう」  ブクブク……

翌日

P「おはよう、千早」

千早「おはようございます、プロデューサー」

P「今日はさ、……その、ダンスでいきたいんだけど、いいかな」

千早「…はい」

P「い、いいの?」

千早「……歌は大事なのはかわりませんが」

千早「その、踊ることも、それなりに重要かと思いまして」

P「だ、だよな!踊りながら安定して歌えるってのも結構な才能なんだぜ?」

P「きっと、千早なら大丈夫だよ、うん」

千早「  」 シュバッババサッ

P(へえ、ダンスも結構すごいな)

P(なんていうか、それなりにキレがあるっていうか)

P(こう、……レベル高い、っていうか)

P(とにかく、すごい。割と本当に、千早ってすごいのかも)

千早「ハァ…っ、はぁ……、はぁっ……」

P「よしっ、それくらいでいいだろ!よかったぞ」

千早「はい、ありがとう……ございます」

P「……そうそう、CDの売り上げ。結構あがってるらしいぞ」

千早「ほ、ほんとうですか!?」

P「うん。……口コミかなんかで広がったらしくしてさ」

P「ラジオかなんかで流れたのかな」

千早「……」

P「……千早、顔」

千早「へっ」

P「緩んでる」

千早「……っ!!そ、そんなことは」

P「はは。いいじゃないか」

P「俺も、素直にうれしいよ」

P「だから、そうだな。次はもっと上をいけるようにがんばろう」

千早「はい、そうですね」

P「そうだなぁ、次はいっその事、曲のテイストを変えてみるか」

P「それとも、同じようなのでいくか」

P「迷うな……」

P「……ま、それはまたリリースの時期にきめよう」

千早「そうですね……」

P「まあ、ゆっくりと階段のぼっていこうぜ」

P「いきなり駆け上がっても、疲れちまうし」

P「エレベーターーなんか、もってのほかだろ?」

千早「ええ。私たちは私たちのペースで」

P「ああ!」

数週間後

P「さて、次の曲をそろそろ出そうと思うんだけど」

千早「今回は、どんな歌ですか?」

P「はは、そうあせるな。今回もいくつか候補があってね」

P「選んでほしいんだ、千早に」

千早「でも、前も私が選びましたよ?」

P「いや、でもさ……、お前が歌う曲だぞ?」

千早「でも。プロデューサーに選んでほしいです」

P「そ、そう?」

P「う~ん、じゃあ……」

P「コレなんてどう?」

千早「……では、視聴してみますね?」

P「ああ、気に入ってもらえると、うれしい」

千早「…………」

千早「これは、……いい歌ですね」

P「おっ、だろっ!?」

P「千早、千早ッ!」

P「やったぞ、12位、12位だ!」

千早「え、……本当ですか!?」

P「ああ、これはいけるぞ。はぁー、いやぁ、よかったよかった!」

P「これは次、10位以内、入れるぞ!」

千早「プ、プロデューサー!まだ気がはやいのでは……」

千早「それに、慢心はどうかと」

P「そうか?……ま、何にしても」

P「お前がうれしそうで、本当によかった。俺もうれしいよ」

千早「……あ、ありがとうございます」

千早「あの、どうかしたんですか?」

P「い、いや……、なんでもないんだ」

P(……あともう少しだな、あともうちょっとで)

千早「……あの、プロデューサー」

P「ん!なにかな」

千早「……その、これからもよろしくお願いしますね?」

P「なんだよ、いきなり。あたりまえだろ」

千早「どうしてでしょうね、なぜか言いたくなってしまって」

千早「おかしい、ですね。……ふふ」

P「……さて、きっとこうなったら仕事もちょっとは増えるだろうし」

P「がんばろうな」

数日後

P(しかし、10位にははいってないのに)

P(一気に売れ出したな)

P(まあ、歌はうまいし、……顔もいいし)

P(さもありなん、だな)

P(……こっからが本番だ)

P(もっと、彼女を高いところにつれていってやるんだ)

P「いやあ、今日もよかったぞ、千早!」

千早「そうですか?……もっとやれたのではないかと思うのですが」

P「いいんだって。俺としては、花丸あげたいよ」

千早「ふふっ、ありがとうございます、プロデューサー」

千早「でも、……これで満足してはいられません」

千早「トップアイドルになるためには、……ですよね?」

P「あ、…うんっ、そうだな!」

P(……まあ、これからもがんばって)

千早「あ、あの、プロデューサー?……少し、いいですか?」

P「ん?あ、ああ。構わんけど、どした」

千早「いえ、あのその、……今日、うちにきてくれませんか?」

P「はっ!?だ、だめだって!んなの!ちょっと、何いってんだ!?」

千早「……そうですよね、男性を家にいれるのは」

P「事務所じゃ、できない話?」

千早「はい」

P「あー、なら。わかったよ」

P「……じゃ、お前の家にいく。でも、……細心の注意をはらって、な?」

P「わかったか?」

千早「はい、……わかってます」

P「じゃあ、帰りに、お前の家にいくとするよ。一緒にいくのはまずいから、時間差で」

千早「わかりました。」

───
──


P「……で、話ってどうかしたのか?」

千早「それが……」

千早「あ、あのっ、私……、プロデューサーには感謝してるんですよ?」

千早「あなたのおかげで、私はここまでこれました」

千早「そして、これからも……、この先へいける気がします」

千早「……そんな貴方に、私は感謝してるんです」

千早「…………いえ。そういう感情ではなく。もっと」

千早「私。あなたが好きです」

P「……!」

千早「おかしいですよね、すみません。どうこうしてくれってわけではないです」

千早「ただ、気持ちをしってもらいたかっただけ」

P「……す、すまん。俺は」

千早「わかってますよ。あなたはプロデューサーで、私はアイドルなんですから」

P「違う、……違うんだ!」

P「確かに、それもあるけど!」

P「もっと、……俺とお前の、根底にある問題が……!」

千早「問題?」

P「……っ!しま……っ!……すまん、わすれてくれ」

千早「あの、問題ってなんですか?」

P「なんでもないんだ、なんでも」

千早「……お願いします、聞かせてください」

P「……~~っ、……っ!!」

P「わ、……わかった」

P「なあ、お前。弟がいたよな」

千早「!?……なぜ、それを?」

P「名前は、優くん」

P「……もう、ずっと前に事故で亡くなった」

千早「どうして、プロデューサーがそれを……」

P「俺の父さんなんだ、あの時の運転手」

千早「……嘘」

P「……正直、恨まれてもしょうがないって思ってる」

P「けどっ、俺の中では、もう終わったことで……!」

P「人殺しの子供だとか、言われるようなこともなくなったし」

P「母さんも、ちょっとずつ、明るくなってきて……!」

P「俺の中で、もう全部、終わってって……」

P「それでも、お前と会って、……やっぱり、俺には一生ついてまわるんだって思って」

P「……なにより、本当に、お前や、優くんに…申し訳なくて」

P「こんなこと、お前の前で言っちゃいけないのはわかるけど」

P「……あの事故のせいで、俺の家庭も、人生もめちゃくちゃだったよ」

P「学校じゃ、いじめられて。近所にも白い目でみられて」

P「…………正直、最悪だったよ」

P「けど、……そんなの、お前に比べたら」

P「だからこそ、俺はせめてもの罪滅ぼしのために、お前をプロデュースしようとした」

P「できることなんて、それしかないし、……それじゃだめだって、わかるけど!」

P「けど、……おれは、……もう、逃げたかった、罪悪感から」

P「……はは、だから、俺には、ないんだよ!お前に好いてもらうような資格も、値打ちも!」

千早「プロデューサー……」

P「ごめん、……ちょっと、取り乱した」

千早「泣かないでください」

P「……はは、ほんと、情けないよな」

P「お前を、トップアイドルにしてやるだとか、なんだとかいっておいて」

P「結局は、……自分のためなんだ」

千早「……それでも」

千早「プロデューサーが、私を導いてくれたことは変わらないじゃないですか」

P「なんで」

P「なんで、お前はそういう事がいえるんだ……っ!?」

P「おれは、お前の、弟を……!」

P「優くんを死なせたやつの息子なんだぞ!?」

P「……憎くないのか」

千早「それは、……プロデューサーのお父さんには恨みのひとつやふたつ」

千早「ないといえば、嘘になります」

P「だ、だったら、なんで、どうして……!」

千早「プロデューサーは、プロデューサーじゃないですか」

P「……俺は、俺?」

千早「プロデューサーが、優を死なせたわけじゃないでしょう?」

千早「……ほら、だからお願いします」

千早「そんなに、自分を責めないでください」

P「……ごめん、ほんとうに、ごめん……」

千早「謝るのも、やめてください」

千早「……ふふ、本当のことを教えてくれて、うれしかった」

千早「でも。黙っていた事にはちょっと、怒ってますよ?」

千早「だから、……罰としてひとつ。お願いをきいてくれますか?」

P「お願い?」

千早「これからは、贖罪や、罪悪感から逃げるためじゃなくて」

千早「ちゃんと。プロデューサーとして……、私を導いてください」

P「…………うんっ」

P「……これからも、じゃあ、よろしくってことで」

千早「はい、こちらこそ。よろしくお願いします」

P「……へへっ」

千早「ふふ……」

P「…………ありがとう、お前のおかげで、すっきりしたよ」

P「肩の荷がおりたっていうか」

P「なんだろ、……とにかく」

P「本当のこと、話してよかった」

P「……運命って、信じてなかったけど」

P「多分きっと、それはこの事をいうんだろうな」

P「……さて、じゃあ、俺はこれで。そろそろ帰らないと」

ギュッ

P「ん……」

千早「あの、もう少しだけ……一緒に」

P「……いいのか?」

千早「おねがい、します」

P「……わかったよ」

P「……なあ、千早?」

千早「はい」

P「……いや、さっきの話なんだけど」

P「…………ああ、まあ。俺もさ、千早のことは、好きなんだ」

P「……だけど。父さんのこと、理由にずっとそれを黙ってた、立場上のこともあるし」

P「でも。隠し事したら、また怒られちゃうもんな」

P「だから、素直に、好きだよ……、千早」

P「だから、一緒に。トップアイドル目指そう」

千早「はい……、プロデューサーとなら。どこへでもいける気がします」

P「……なんか、照れくさいな」

千早「でも、とても幸せですよ」

P「そうか、……俺も、幸せだよ」

千早「……」

P「……」


チュッ

P「……さて、本当に帰らないと」

P「それじゃあ、また明日。千早」

千早「はい、また明日」

P「あぁ、……あと、さ」

P「……いや、やっぱり、いい!じゃあな!ゆっくり寝ろよな!」

千早「おやすみなさい、プロデューサー」

千早「……」

千早「ふふ」

千早「……今度の休みに、優の所にいかないといけないわね」

千早「いろいろあったけど、私は元気よって……」

千早「きっと、彼は私をトップアイドルにしてくれるから」

千早「そうなったら、あなたにも私の歌が届くはずよね」

千早「……あなたが好きでいてくれたから、私は歌える」

千早「そして、これからは彼もいるから」

千早「……さてと」

千早「そろそろ寝る支度をしないと、明日から改めてトップアイドルめざしてがんばらないといけなものね」

後日

P「千早、すごいぞ!CDがじわじわ売れてるって!」

千早「ほんとうですか!?」

P「ああ!これなら本当に、トップアイドルも夢じゃないぞ」

千早「はい、ですが。だからといって気を抜かないで、気を引き締めていきかなくては」

P「おう。……よし、じゃあ、そろそろ3rdシングルの準備をしようか」

P「いろいろ候補があるけど、どれがいい?」

千早「一斉に挙げてみませんか?」

P「おいおい、意見割れたらどうする?」

千早「なぜだか、割れない自信があるんです」

P「そう?じゃ……いっせーのーでっ!」

二人「これ!」

千早「……ね?」

P「おぅ…、すごいな」

P「じゃ、この歌で次こそTOP10。いや、3位以内でもめざすぞ!」

P「そのために、営業とかもがんばらないとな」

千早「そうですね、ふふ。二人でならやれる気がします」

P「ああ。二人で……、これからずっと頑張っていこう」

千早「はい!」

千早「…………ずっと?」

P「あ、……いやっ」

P「その、ごめん。それについてはまた改めて!」

千早「期待してますね?」

P「お、おう」

千早「……大好き」

P「俺もだよ」

千早「ちゃんと、言ってください」

P「……好きだよ」

千早「〝大〟が足りません」

P「お前ってやつは。……大好きだよ、千早」

千早「満足しました。……でも、飽きませんよ、一生」

P「ま」

P「飽きられてもこまるけどな」

千早「私だって。飽きさせませんから」

P「おおっ、こわいな」

P「……じゃ、曲もきまったことだし!」

P「めざせ、トップアイドルだな!」

千早「はい……!」




おわり

読んでくださったかた、ありがとうございました。
他の娘とか、出したかったがちょっと余裕なかった。
セクロスシーンとかも考えたけど、野暮になりそうでやめた。
それじゃ、お休みなさいまし。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom