春香「765アイドル襲撃事件」 (118)

~~~~~


「……どういうおつもりですか」

「フフフ……お前には私の計画につきあってもらう」

「計画?

そのようなものに乗るとでも……」

「いや、正確にはお前を少し借りるだけだな」

「借りる?」

「こいつを見ろ」

「なっ……!?」

「フフフ……奴らの怯える顔が目に浮かぶわ……ハハハハハ……!」


~~~~~

小鳥「これで……よし!

はー、お掃除おしまい!今日はいつもより早く帰れそうね」

雪歩「お疲れ様ですぅ。小鳥さんはもうお帰りになられるんですか?」

小鳥「ええ。今日はプロデューサーさんは泊りだし、他に帰ってくる人もいないしね」

雪歩「じゃあ、一緒に帰りませんか?」

千早「では私もご一緒します」

小鳥「あら、いいわよ。ちょっと待っててね、着替えてくるから」

雪歩「わかりましたぁ」

小鳥「お待たせ。じゃあ帰りましょうか」

雪歩「はい」

千早「はい」


小鳥「ちゃんと鍵をかけて……と。うん、これでよし」

雪歩「小鳥さん、明日は何時ぐらいに事務所に?」

小鳥「えーと、いつもと同じくらいね。どうして?」

雪歩「明日私、朝にお仕事があるんです。だから、事務所にも朝早く行かないとなーと思って」

千早「直接現場に行けばいいんじゃない?」

雪歩「それも思ったんだけど、何だか一度事務所に行った方が気合が入るというか」

千早「まあ、それもそうね」

小鳥「あら、それなら明日朝早く……」

雪歩「あ、いえそんな、小鳥さんにご迷惑をかけるわけには……」

小鳥「そう?」

雪歩「はい、私が勝手に言ってるだけですし。ちゃんとみんなで作った合鍵もありますよ」

小鳥「それなら大丈夫ね。千早ちゃんは明日の予定は?」

千早「OFFですけど、春香と一緒にレッスンをする約束をしたので朝から事務所に行こうかと思ってます」

小鳥「なら、千早ちゃんたちが来るまでには開けておかないとね」

千早「私も合鍵は持ってますけど……」

小鳥「それに、あんまり遅いと私の帰りも遅くなるのよね…だから明日は私も気持ち早めに行くことにするわ」

千早「わかりました。それでは私はこの辺りで」

雪歩「バイバイ千早ちゃん」

小鳥「また明日ね」

千早「はい、さようなら二人とも」スタスタ


雪歩「ふぅ~……手が冷たいですぅ」

小鳥「まだまだ夜は寒いわねー」

雪歩「手袋が欠かせないですね」

小鳥「まあ、寒いのは厚着すればある程度は何とかなるんだけどね」

雪歩「そうですね。あ、私はこっちなので」

小鳥「さようなら雪歩ちゃん、明日のお仕事、頑張ってね」

雪歩「はい!」

翌朝 早朝


雪歩「はふぅ、寒いなぁ……」

雪歩「こんな日は温かいお茶に限ります。早く事務所に行って温まりたいです~」

雪歩「えっと鍵は……」


ガチャ

雪歩「……あれ?開いてる…?」

雪歩「小鳥さんかな?大丈夫ですって言ったのに……」キイィ

雪歩「おはようございますぅ」


シーン……

雪歩「……誰もいない?」

雪歩「そんなはずは……昨日の夜はちゃんと鍵をかけてたのに……」

雪歩「じゃあ誰が鍵を開けたんだろう……もしかして泥棒!?」

雪歩「……でも窓を割られたりはしてないし……」


ガタッ

雪歩「ひぅっ!?」

雪歩「だ、誰かいるんですかぁ……?」

雪歩「…………気のせい、かな?」


ゴソゴソ

雪歩「ひぃん!?」

雪歩(や、やっぱり誰かいる…!)


ぬぅ

雪歩「っ!!?」

雪歩(つ、机の下から出てくるなんて……!)

雪歩「だ、誰ですかあなたは!?」

雪歩(覆面で顔がわからない……)

雪歩(それに、全身黒タイツなんて……)

雪歩(……あ、もしかして何かのドッキリ?)

雪歩(だとしても、何だか怖い……)


雪歩「ぁあの、どちら様で……?」

「……………」

雪歩「うう、何か言ってくださいよぅ……?」

雪歩(あれ、右手に何か持って……!?)


雪歩「……包……丁………!?」




春香「あ、小鳥さん!おはようございます!」

小鳥「あら春香ちゃん、おはよう。今日は早いのね」

春香「はい、今日は午前のOFFに千早ちゃんとレッスンする約束してるんです!だから一番乗りに来ようと思って」

小鳥「昨日千早ちゃんも言ってたわ。でも、今日は一番乗りじゃないかもね」

春香「え?」

小鳥「今日は雪歩ちゃんが朝のお仕事なんですって。それで朝事務所に寄ってから行くらしいわ」

春香「そうなんですか。じゃあ今もう事務所にいるのかな?」

小鳥「そうかもしれな……」


『キャアアアアアアアアア!!!』

2人「!?」

春香「今のは…雪歩の!?」

小鳥「事務所の方から聞こえたわ、何かあったのかもしれない!急ぐわよ春香ちゃん!」

春香「は、はい!」


~~~~~


雪歩「な、何ですか!何なんですか!」

「……………」ジリジリ

雪歩「こ、来ないでください!来ないでぇ!!」

「……………」ジリジリ

雪歩「い、いや……いやだ……!!」


「……………」ジリジリ

雪歩「いや……来ないで……来ないでぇ……!!!」

ドッ

雪歩「!?」

雪歩(そんな…いつの間に壁に……!)


「……………」ジリジリ

雪歩「あ、あ…………!!」ジワァ


バァン!

春香「雪歩!!」

小鳥「雪歩ちゃん!!」

雪歩「………あ……」


2人「!?」

雪歩「たす……け………」


ドスッ

雪歩「!!!!」

「……………」

ズッ


雪歩「……か………は……?」


春香「ゆ……雪……歩………?」

雪歩「は……はる………か……ちゃ………


に……げ………」フラッ



ドサァ


春香「雪歩!!!」

小鳥「雪歩ちゃん!!!」

「……………」タタタッ

春香「あっ!ま、待て!」

小鳥「春香ちゃん、そっちは放っておきなさい!先に雪歩ちゃんを!」

春香「え?」


雪歩「…は……ぁ……っ……!」ゲホッ

小鳥「雪歩ちゃん、大丈夫!?しっかりして!

春香ちゃん、すぐに救急車を!それからプロデューサーさんに連絡!」

春香「は、はい!」

小鳥「雪歩ちゃん、大丈夫だからね!頑張って!」

雪歩「………こ……と…り……さ………」

小鳥「喋らないの!とにかく落ち着いて!」


ガチャ

伊織「……な、何よこれ……!?」

病院


春香「……………」

小鳥「雪歩ちゃん………」


ガララッ

伊織「………」

小鳥「伊織ちゃん!」

春香「雪歩は!?」


伊織「……大丈夫よ。何とか一命はとりとめたわ」

小鳥「そう、よかった……」

春香「よかった……本当に……」

伊織「ただ、しばらくは目を覚ましそうにないわ。仕事も出来ないかもしれないわね」

小鳥「そう………」

ガチャッ

P「すいません遅くなりましたァ!!」

真「雪歩!!大丈夫!?」

伊織「うるさいわよアンタ達!病院なんだから静かにしなさいよね!」

P「あ、ああ、すまん。気が動転しててな……」

真「ご、ごめんよ伊織……」

伊織「……まあ、仕方ないわよね」

真「それで、雪歩は?」

伊織「さっき手術が終わって、今はこの中で寝てるわ。命に別状とか、そういうのはないわよ」

真「そっか、よかった……」

P「……しかし、どうして雪歩が……」

小鳥「わかりません……雪歩ちゃんに限って、誰かの恨みを買うようなことはないと思うんですけど……」

P「狂的なファンとか?一昔前のジョン・レノンみたいな」

小鳥「さあ、どうでしょう……」

伊織「どこにでも頭のおかしい奴はいるものよ。

だからと言って許せるわけがないけど……」

真「ああ、絶対に許せない。

犯人め、絶対にボクが捕まえてみせる!」

P「おいおい、馬鹿なことはするなよ?」


春香「……………」

P「………春香?」

春香「え?」

P「どうしたずっと下向いて、具合でも悪いのか?」

春香「あ、いえ、大丈夫です。気にしないでください」

P「そうか?何かあったらすぐに言えよ」

春香「はい、ありがとうございます」


春香(……どうして私は、あの時立っていることしか出来なかったんだろう)

春香(目の前で仲間が襲われてるのに、何で何もできなかったんだろう)

春香(足がすくんでたわけでも、怖かったわけでもない)


春香(……なのに動けなかった)

春香(あんなに怯えてたのに……)

春香(あの雪歩の顔、絶対忘れられないだろうな……)

春香(……………)

春香(………真じゃないけど)

春香(犯人は絶対、私が……!!)


P「春香、お前やっぱりおかしいぞ」

春香「え?」

伊織「アンタさっきからずっとブツブツ言ってるわよ、気づいてないかもしれないけど」

春香「そ、そうだった?」

小鳥「何だか顔色も悪いみたいだし……」

P「悪いこと言わないから今日はもう休め、な?現場には俺から言っておくから」

春香「………はい」

真「………春香……」

小鳥「……仕方ないかもしれないわね」

P「?」

小鳥「春香ちゃん、直接見ちゃったから……

雪歩ちゃんが……」


P「…そうですか……」


伊織「……とりあえず、雪歩のことは私に任せて。アンタ達は事務所に戻んなさい」

真「任せていいのかい、伊織?」

伊織「いつまでもここにいたってしょうがないでしょ。社長達にも何も言ってないじゃない」

P「わかった、頼んだぞ伊織。何かあったらまた連絡してくれ」

伊織「わかったわ」

事務所前


真美「……ねえ亜美」

亜美「……何?」

真美「これどうなってんの?」

亜美「わかんない」

真美「何で事務所がパトカーに囲まれてるんだろうね→」

亜美「ね→」

真美「泥棒でも入ったのかな?」

亜美「かもしんないね→」

真美「とりあえず入ろっか?」

亜美「そだね」


P「何やってんだこんなとこで?」

亜美「あっ、兄ちゃん」

社長「さて、どういうことか説明してくれるかね」

亜美「そうだぞ兄ちゃん」

律子「事務所は立ち入り禁止になってるし……」

あずさ「パトカーがいっぱいで、何だか物騒だわ~」

美希「警察に何があったって聞かれたけど、ミキ達何にも知らないの」

千早「春香どころか、誰とも連絡が取れないし」

貴音「一体、事務所で何があったのですか?」

真美「大人しく白状しろー!」


P「……………っ」フルフル

社長「………?」

真美「に、兄ちゃん?」


小鳥「……私から話します」

小鳥「……以上です」

P「……………」


社長「な………」

亜美「ゆ、ゆきぴょんが……」

真美「う、嘘だよね?ねえ兄ちゃん?」

P「嘘ならどれだけよかったか……」

千早「どういうことなんですか?何故萩原さんが……」

P「俺が聞きたいくらいだ」

真「……どうしてよりにもよって雪歩が……」

美希「………なんなの」

貴音「……………」

社長「……にわかには信じられんが、本当のようだな……」

P「春香もかなりショックを受けていたようなので、今日は帰らせました。

皆もショックだろうが、雪歩には今は伊織がついてる。そこは心配しなくていい」

小鳥「心配なのは、あなた達なの」

あずさ「私達ですか?」

P「ああ。雪歩が狙われた理由はわからんが、もし犯人の狙いが765プロそのものなら、お前達も危険にさらされるかもしれん」

社長「なるほど。ならば念入りに警戒せねばな。しかし、プロデューサー君と律子君が全員について回ることは……かといってこれ以上被害者を増やすわけにもいかない……そうだ!」

律子「?」

社長「これから諸君らには、出来るだけ単独行動を控えてもらう。幸いしばらくはソロの仕事は少ないようだしな」

律子「それで、どうしてもソロの仕事が入っているアイドルには、私かプロデューサーがつきそう、と」

社長「そういうことだ。もし手が足りないようなら私も手伝おう。さて、納得してくれるか君達?」

千早「わかりました。出来るだけ他の皆と行動を共にすることにします」

美希「ミキもわかったの。一人で帰るのはやめるの」

貴音「承知しました。ここにいない者には私から伝えておきます」

社長「よし。

それにしても、今日は事務所は使えそうにないな……」

P「そうですね……」


貴音「……………」ピピッ

亜美「お姫ちん誰に電話してんの?」

貴音「今この場にいない響への連絡です。何も伝えずに響を危険に晒すわけにはいきません」

真美「そだね。じゃあ真美はやよいっちに連絡するよ」ピピッ

貴音「お願いします」

響「ええ!?雪歩が!?」

貴音『ええ、そうです』


やよい「雪歩さんが!?」

真美『そうなんだよ…』


響「何てこった……」

やよい「そんな……」


響「……何となくだけど、このまま放っておくと、事務所の皆まで危ない気がするぞ」

貴音『ですから連絡したのです。高木殿から、単独行動は控えるように、と』


真美『だからやよいっちもさ、一人で現場に行ったり帰ったりするのはできるだけやめよって話ー。今日も律っちゃんが迎えに行くらしいからヨロシクねい』

やよい「はーい、わかったよー」ピッ


やよい「……雪歩さん……」

数日後


雪歩「……………」


ガララッ

雪歩「!」

伊織「調子はどう?」

雪歩「伊織ちゃん……大丈夫、気分はよくなったよ」

伊織「しっかり安静にしてなさいよ、さっき目が覚めたばかりなんだから」

雪歩「うん、ありがとう伊織ちゃん」

伊織「お礼なんていらないわよ。ホントもう調子狂うんだから」

雪歩「ふふふ、伊織ちゃんも相変わらずだね」

伊織「そろそろ包帯代えた方がいいんじゃない?」

雪歩「そうかな?」

伊織「そうよ、ずっとその包帯のままじゃない。今代えてあげるから」

雪歩「そ、そんな悪いよぅ、伊織ちゃんにやってもらうなんて……」

伊織「う…うるさいわね!私だってやりたくてやってるわけじゃないわよ!

ただ、アンタがあんまりにも汚らしい格好してるから、見るに堪えなくなっただけよ!」

雪歩「伊織ちゃん……」

伊織「わ、わかったらさっさとしなさいよ!」

雪歩「えへへ、ありがとう伊織ちゃん」

伊織「だからお礼なんてやめなさいっては……まったく」スッ


雪歩「っ」ビクッ


伊織「……?」

伊織「どうかした?」

雪歩「え?何が?」

伊織「(気のせいかしら……)

……何でもないわ。じゃあ……」スッ


雪歩「っ!」ビクッ


伊織「(やっぱり気のせいじゃない……)

……………」スウッ


雪歩「ひっ!?」ビクゥッ

雪歩「……あ、ご、ごめんね!?大丈夫だか……」

伊織「ねえ、アンタもしかして……


触られるのが……恐いの?」

雪歩「えっ!?そ、そんなことないよ!」

伊織「じゃあ何でさっきから私にビクビクしてるのよ。男だったらまだしも」

雪歩「ほ、本当に大丈夫だから……」


伊織「………」スッ

雪歩「ひぅ!」ビクッ

伊織「……全然大丈夫じゃないじゃない」

雪歩「……うぅ……」

伊織「よくそんなんで今まで笑えてたわね……私だったら、誰も部屋に入れずに追い返してると思うわ」

雪歩「だって……せっかく伊織ちゃんが優しくしてくれてるのに……私の…勝手な都合で………」ポロポロ

伊織「ちょ、泣かないでよ!」

雪歩「ごめんね……ごめんね伊織ちゃん……」ポロポロ

伊織「何でアンタが泣くのよ。アンタには何の罪もないじゃない」

雪歩「でも、でもぉ……」ポロポロ

伊織「そんな泣いてばっかりだと、アンタいつかホントに涙枯れちゃうわよ?」

雪歩「……うぅ……」

伊織「ほら、いつまでも泣いてたってしょうがないでしょ。勝手な都合とか言ってるけど、無理なものは無理なんだからしょうがないじゃない」

雪歩「……………」


伊織「意地はらないで頼んなさいよ。アンタにだけ辛い思いなんてさせないんだから」

雪歩「……伊織ちゃぁ……ふえぇぇ」

伊織「ちょっと、だから泣かないでってば!」

伊織「じゃ、大人しくしてなさいよ」ガラララ

伊織「ふぅ、全く世話が焼けるわね……あれ?」


春香「……伊織……」

伊織「春香じゃない、何やってるのよこんなとこで。仕事はどうしたの?」

春香「お見舞い……かな。雪歩が目を覚ましたって連絡があったから。お仕事はもう今日は終わったよ」

伊織「そ。じゃあせっかくだから顔見せて行きなさいよ。」

春香「うん、そうするよ」

伊織「あと、あれ、えーと……」

春香「?」

伊織「……ううん、やっぱり本人から聞いた方がいいわ。それじゃあね」

ガララッ

雪歩「?……あ、春香ちゃん」

春香「………雪歩」

雪歩「お見舞い来てくれたの?ありがとう」

春香「傷は大丈夫なの?」

雪歩「うん、しばらく安静にしてたらちゃんと塞がるって。やっぱり水瀬財閥はすごいね」

春香「流石だね」

雪歩「本当は早く復帰したいんだけどね。ずっとベットの上じゃ、みんなにどんどん置いてかれちゃうよぅ」

春香「焦らなくてもいいよ、雪歩のファンはちゃんと待ってるよ」

雪歩「えへへ、そうかな」

春香「……………」

雪歩「……春香ちゃん?」


春香「………さっき、伊織と話してたよね」

雪歩「え?……あ、聞かれてたんだ……」

春香「聞こえてたよ……全部」

雪歩「は、恥ずかしいな……目、赤くないかな」

春香「…本当なの?触られるのが怖いって……」

雪歩「……ここで嘘ついてもしょうがないか。

うん、怖い。すごく怖い」

春香「………」

雪歩「765プロのみんながそんなことするわけがないってことはわかってるんだけど、誰かの体が近づいて来ると、どうしてもあの光景を思い出しちゃって……」

春香「……雪歩………」

雪歩「……やっぱり、ダメダメだな私。またトラウマが増えちゃうなんて……」


春香「………私のせいで……」

雪歩「え?」

風呂

雪歩「私のせい……って?」

春香「私が見てることしかできなかったから……私に勇気がなかったから……!」

雪歩「ちょ、ちょっと待って春香ちゃん、どうしたの?」

春香「どうしたもこうしたも、雪歩がこんな目に遭ったのも……!」

雪歩「春香ちゃ……」

春香「雪歩が目の前で襲われてたのに!私は何にもできなくて!雪歩が倒れるのを見てただけで!私は!私からは………」

春香「……はっ」


雪歩「…ぅ……」プルプル

春香「ご、ごめん雪歩!怖がらせるつもりじゃ……」

雪歩「だ、大丈夫、ちょっとびっくりしただけだから……」プルプル


春香「………ホントにごめん。こんなことになるなんて……」

雪歩「……春香ちゃん………」

春香「……じゃあ、そろそろ帰るよ。遅くまでごめんね」

雪歩「ううん、そんなこと」

春香「じゃあ………」ガラララ

雪歩「……春香ちゃん」

春香「?」ピタッ


雪歩「……今日は、来てくれてありがとう。

また来ててくれたら……嬉しいな」

春香「………!」

雪歩「それじゃあね。早く退院して、765プロに戻るからね」

春香「……うん…また来るね」

ガラララ

ピシャッ


春香「……………」


雪歩『また来てくれたら……嬉しいな』


春香「……………っ」ホロッ

春香(どうして……どうしてあんなに優しい言葉が言えるんだろう……)

春香「……う……うぅ………」ポロポロ


♪~♪~

春香「…?電話?

……プロデューサーさんから?」

春香「はいもしもし?」

P『あー春香、今病院にいるんだよな?』

春香「はい、そうですけど…」

P『実はその近くで美希の撮影の仕事があるんだが、俺も律子も社長も出払ってて手が足りないんだ。

だからちょっと美希を迎えに行ってやってくれないか?』

春香「そういうことならお安いご用です、任せてください。場所はどこですか?」

P『○○スタジオだ、春香も何回か行ったことあるだろ?』

春香「あー、わかりますわかります。○○スタジオに美希を迎えに行けばいいんですね?」

P『そういうことだ。悪いな、事務所になら音無さんがいるはずだから。

じゃ、頼んだぞ』

春香「はーい、わかりました」ピッ

○○スタジオ


春香「美希ー?」

美希「あっ、春香!」

春香「お待たせ」

美希「遅いの!ミキずっと待ってたんだよ!」

春香「ごめんごめん、ちょっと道間違えちゃって」

美希「やっぱり春香はおっちょこちょいなの」

春香「あはは……それじゃ帰ろっか」

美希「うん」

美希「それでね、そこでデコちゃん怒って」

春香「そりゃ怒るよ……伊織も災難だったね」

美希「あれは流石に反省したの」

春香「あはは……」

美希「………あれ?」

春香「え?」


美希「春香目赤くない?」

春香「そ、そう?」

美希「よく見たら目尻に線もついてるし……」

春香「………」


美希「泣いてたの?」

春香「……やっぱり美希は流石だなぁ」

美希「そんな顔してたら誰だってわかるの」

春香「そんなに酷い顔してた?」

美希「なの」

春香「うぐ」

美希「まあ何で泣いてたかまではわかんないけど。何で?」

春香「それ聞く?」

美希「あ、やっぱり待って!ミキが推理するの!」

春香「………」

美希「えっと、春香はデコちゃんの病院にいたんだよね?」

春香「そうだよ」

美希「病院には雪歩がいるから……お見舞い?」

春香「そんな感じかな」

美希「でもただのお見舞いで泣くわけないし……うーん……」

春香「わかんないならわかんないで……」

美希「玉ねぎでも切った?」

春香「何で!?」

美希「冗談なの」

春香「もう」

美希「でももうわかんな……


あ、もしかして……雪歩に責められた、とか?」


春香「……責められてた方がいくらかよかったかもね」

美希「え?」

春香「雪歩、私が帰る時にすっごく優しく笑ってくれたんだよ」

美希「それならよかったんじゃ…」

春香「雪歩が襲われてるのに、何も出来なかった私にだよ」

美希「……春香?」

春香「病室でも1人で騒いで雪歩を怖がらせちゃったし、雪歩のトラウマも増やしちゃったっていうのに……」

美希「……………」

春香「それなのに、雪歩は笑っててくれて、自分がどうしようもなく情けなく思えてきて……」


美希「」パコーン

春香「痛っ!?」

美希「春香は考え過ぎなの」

春香「考え過ぎって……」

美希「雪歩が怒ってるわけでもないのに、何で春香が自分を責めてるのかわかんないの」

春香「それは……雪歩だってホントは怒ってるかもしれないし……」

美希「でも笑ってたんでしょ?」

春香「それはそうだけど……」

美希「ミキは雪歩じゃないからよくわかんないけど、雪歩って口には出さなくても顔に出やすいでしょ?」

春香「確かに」

美希「それで顔が引きつってたり目が笑ってなかったら怒ってたり怖がってたりしてるかもしれないけど、そんな顔してたの?」

春香「……してない。いつもの優しい雪歩の顔だったよ」

美希「じゃあ怒ってないんじゃないかな?多分本心からまた来てほしいって思ったんだと思うよ、多分だけど」

春香「でも……」

美希「まだ言うの?春香ってば頑固なの」

春香「頑固なのは認めるけど」

美希「ミキじゃこれ以上上手く言えないけど、春香は納得してないんだよね」

春香「そんなこと言っても……」

美希「じゃあ雪歩に直接聞いてみたら?」

春香「え」

美希「そうでもしないと、多分春香はいつまでも自分を責め続けると思うな」

春香「…………」

美希「と言っても、これじゃ雪歩に丸投げするみたいだけどね。

でもとりあえず、ミキは春香が自分を責めるのはおかしいと思うな」

春香「……そうかなぁ……」

春香「あ、ゴメン、ちょっとトイレ行ってくるね」

美希「わかったの」

春香「ここで待っててね」

美希「はーい」


美希(…やっぱり春香、元気ないの……

よーし、ここは一つ、あったかいココアでも奢ってあげるの)

美希「確かあっちに自販機が……あ、あそこだ」タタッ


美希「えーっと……えー!ココア売り切れてるのー!

うーん…ミキはコーヒーキライだし……あとは冷たいのしか……

あ、あっちにも自販機が」


ザッ

美希「え?」

春香「お待たせー……って、あれ?美希?」

春香「いない……何処かにジュースでも買いに行ったのかな」

春香「もう、ここで待っててって言ったのに……」

春香「……もしかして、気を使って何か買いに行ってくれたのかな」

春香(……美希はああ言ってたけど……


直接聞くのは流石に怖いよ……)

春香「……はぁ」


「キャーーッ!!!」

春香「!?」


春香「……美希!?」

ダッ

美希「何なの!あなた誰なの!」

「…………」

美希「覆面なんかして、全身真っ黒で変なカッコなの」

「……………」

美希「そのロープでミキをどうするつもり?誘拐でもするの?」

「……………」ダッ

美希「えっ……」

バッ

美希「ヤ、ちょっ!?」

シュルッ

美希「!?(く、首に……!)」

「……………」グッ

美希「は、はなし……!」ジタバタ

美希(凄い力…全然離れない……!)

「……………」ググッ

美希「~~~っ!!」パタパタ

美希(く、くるし……)


「……………」

美希「……っあ………!」プルプル

美希(も、もうダメ………死んじゃう………!


助けて……!!)



春香「美希!!!」ダダダッ

美希「………!!」

春香「何してるの!!美希から離れ……!!」

「……………」

春香(こ、この人……雪歩の……!!)

春香「~~~っ!!!」ギリッ


ガシッ

春香「……美希から離れて!!今すぐに!!!」グッ

美希(春香……!)


「………」

春香「離れなさい!!離れて!!このっ!!」バシバシ


「………………」バッ

春香「えっ…」


ゴッ

病院


バタバタ

オーイコッチダー
ハヤクシロー

雪歩「何だか騒がしいなぁ…何かあったのかな?」


P「おい美希!どっちだ!」

美希「こっちなの!」

P「こっちか!」


雪歩「あれ?今の声…プロデューサーと美希ちゃん?どうしてこんな時間に……しかもすごく慌ててたような」


社長「おお、ここだったかね萩原君」

雪歩「社長まで……何かあったんですか?」

社長「実はだね……」

雪歩「は……春香ちゃんが……!?」

社長「そうだ」

雪歩「それで、春香ちゃんは!?」ガタッ

ズキッ

雪歩「っ!」

社長「落ち着きたまえ萩原君、君の傷まで開いたら……」

雪歩「でも……」


ガラッ

P「はぁ~……」

雪歩「プロデューサー」

社長「おお、終わったかね」

P「はい、何とか。安静にしてれば今日中にも目を覚ますそうです」

社長「そうか、よかった……」

雪歩「プロデューサー、どうして春香ちゃんが……」

P「ああ、今日春香が見舞いに来ただろ?

たまたまこの病院近くのスタジオで美希の撮影の仕事があったから、春香に迎えに行ってもらってたんだ」

雪歩「はあ」

P「それで帰ってる途中に春香がトイレに行ったらしいんだが、その時に美希が狙われたらしい。

それで美希を助けようとした春香が犯人と取っ組み合いになって、バールか何かで頭を殴られたそうだ」

雪歩「そんな………」

P「そこで通行人に見つかって、犯人は逃げてしまったらしい。

美希によれば、犯人は黒い覆面をした全身真っ黒の人間だったらしい」

雪歩「!!」

P「……?どうした?」


雪歩「……私の犯人と、同じです」

P「何!?」

P「雪歩の犯人と一緒だと……?」

雪歩「はい、私も黒い覆面をした全身黒タイツの人に襲われました」

社長「同一犯となると……犯人の標的は、765プロそのものなのかもしれないな」

P「その可能性が高いですね……引き続き、警戒に当たります」

社長「ああ、そうしてくれ。私からも念入りに伝えておくよ」


雪歩「あの……」

P「ん?」

雪歩「美希ちゃんは……?」

P「美希は春香の所に残ってるよ。何があったかはわからないが、ミキが悪いんだミキのせいだって、ずっと春香の横で泣いてるんだ」

雪歩「……………」

コンコン

雪歩「……美希ちゃん」


美希「うわぁ~ん!春香ぁ~!!」

雪歩「!?」ビクッ

美希「ミキが悪かったの!ミキが春香の言うこと聞かなかったからなの!ごめんなさいぃ~!!」

雪歩「ね、ねえ、美希ちゃん?」

美希「ぐすっ……?雪歩…?」

雪歩「こんばんは。ちょっと久しぶりだね」

美希「……うん」

雪歩「美希ちゃんは怪我はなかったの?」

美希「…うん……首を絞められただけだったから大丈夫なの……でも、春香が……」


春香「………………」

雪歩「春香ちゃんなら大丈夫だよ。安静にしてれば今日中にも目を覚ますってプロデューサーが言ってたよ」

美希「……でも、春香がやられちゃったのはミキのせいなの」

雪歩「美希ちゃんの?」

美希「……春香が待ってろって言ったのに、ミキが勝手に自販機に行っちゃったの……

そしたらミキが襲われて、春香が助けに来てくれたんだけど……」

雪歩「その春香ちゃんが……」

美希「あの時ミキがちゃんと言われた通りに待ってたら、こんな事にはならなかったの!

なのにミキが勝手なことしたから……うっ……うわぁ~ん!!春香ぁごめんなさいぃ~!!」

雪歩「美希ちゃん……」

雪歩「……美希ちゃん」

美希「えぐっ、ぐすっ……?」

雪歩「美希ちゃんは、春香ちゃんを困らせようとして自販機に行ったの?」

美希「……ううん…何だか春香が元気無かったから、何か買って来てあげようと思って……」

雪歩「そっか。

じゃあ、そのことをちゃんと伝えて謝れば、春香ちゃんもきっと許してくれるよ」

美希「……………」

雪歩「……美希ちゃんも、春香ちゃんと一緒だね」

美希「え……?」

雪歩「春香ちゃんも、私が怪我をしたのは自分のせいだー私が悪いんだーって、美希ちゃんみたいに自分を責めてたんだ。私はそんなこと、全然思ってないのにね」

美希「……………」

雪歩「確かに、勝手にどこかに行っちゃった美希ちゃんにも責任はあるかもしれないよ。

でも、それで自分を責めるのは償いでも何でもないよ」

美希「……!」

雪歩「大事なのは、自分が傷つけてしまったと思う人に何をしてあげられるかだと思うよ。

春香ちゃんも、自分を責めてはいたけど、一番にお見舞いに来てくれたし。

春香ちゃんがどう思ってのことかはわからないけど、私にとってはすごく嬉しかったんだ」

美希「…………」

雪歩「……って、美希ちゃん顔赤いよ?大丈夫?」

美希「……さっき春香に自分を責めるなってお説教したばっかりなの」カアァ

雪歩「ふふ、そうだったんだ」

美希「でも、何かわかった気がするの。まずは春香に謝って、それから春香とか雪歩が喜ぶことするの!」

雪歩「え、私も?」

美希「雪歩も色々教えてくれたの。だから雪歩にも何かしてあげたいの!」

雪歩「わ、私はそんな大したこと……」

美希「いいからいいから!早く言うの!」ガシッ

雪歩「ひぃぅ!?」ビクッ

美希「!?ど、どうかしたの?」ギュッ

雪歩「……っ……!」プルプル

美希「……雪歩?何で震えてるの?」

雪歩(い、いきなり過ぎて怖がる暇もなかった……!)

雪歩(……でも、何だろう)

雪歩(……とっても、あったかい……)

雪歩(ちょっと強引だったけど……)

雪歩(こうやって握られてると、だんだん震えもおさまってきたような……)


雪歩「……ふふっ」

美希「雪歩?」

雪歩「ふえっ?あ、あ、ごめんね?」

美希「震えたり笑ったり、変な雪歩なの」

雪歩「………ふふ」

美希「それで、雪歩はミキに何してほしいの?」

雪歩「そうだなぁ……

ううん、こうやって手を握ってくれるだけで、私は充分だよ」

美希「え?それでいいの?」

雪歩「うん、それがいいの」

美希「わかったの!ミキでいいならいつでも握ってあげるね!」

雪歩「ありがとう美希ちゃん」



春香「……う、うぅ~ん……」

2人「!」

美希「春香!」

雪歩「春香ちゃん!」

春香「……あれ、私は何して……?


美希!?」

美希「うわっ」

春香「大丈夫!?怪我は無かった!?あの黒い男は!?」

ズキッ

春香「あつっ……」

雪歩「は、春香ちゃん落ち着いて」

春香「あれ、雪歩……?どうしてここに?」

雪歩「ここは病院だよ。春香ちゃんも怪我してここに運ばれて来たの」

春香「私が怪我して……?

そういえば私、殴られたような……」サスサス

ズキッ

春香「いっ」

雪歩「触っちゃダメだよ、まだ治療したばっかりなんだから」

春香「ご、ゴメン」


美希「春香……」

春香「あ、美希、怪我は……」


バッ

美希「ごめんなさいなの!」

春香「えっ?」

美希「美希が勝手にジュース買いに行ったりしたから春香が襲われちゃったの!」

春香「そ、そんなことないよ!あれは私がヘマして……」

美希「それじゃミキの気が済まないの!絶対春香に謝るって決めてたの!」

春香「え、ええ~……?」


美希「……はっ」

雪歩「ふふ、美希ちゃんてば」

春香「?」

春香「あれ、美希も目赤いよ?」

美希「こ、これはその……」

雪歩「美希ちゃん、春香ちゃんの横でずっと泣いてたんだよ。ごめんなさいごめんなさいって」

美希「ゆ、雪歩……」

春香「そうなの、美希?」

美希「うぅ……///」

春香「でも、さっき私には考えすぎだって……」

美希「……だから、ミキも雪歩にお説教されたの」

春香「雪歩に?」

美希「なの」

雪歩「お説教だなんてそんな……私はただ、私の考えを言っただけだよぅ」

雪歩「自分を責めるだけじゃなくて、その後にその人に何ができるかが大事だって」

春香「……」

雪歩「春香ちゃんも、私が目を覚ましたあと一番にお見舞いに来てくれたよね」

春香「あ、あれはただ謝ろうと……」

雪歩「そうだとしても、私にはそれが嬉しかったんだ。そんな何気無いことでもね」ニコ

春香「雪歩………」グスッ

雪歩「ほら、もう泣かないで。春香ちゃんには笑顔が一番なんだから」

美希「その通りなの!春香がいつまでもそんな暗い顔してるなら、ミキが追い抜かしちゃうの!」フンス

春香「二人とも……」

春香「って、美希には言われたくないかも」

美希「うぐ」

春香「もう勘弁してほしいよ、心配したんだからぁ……」

美希「……ごめんなさいなの」

春香「……なんてね。簡単には追いつかせないよ!」

美希「春香!それでこそ春香なの!」

雪歩「やっとらしくなったね、春香ちゃん」

春香「ありがとう二人とも、元気出たよ!」

美希「ミキだって、春香にも雪歩にも負けないの!」

春香「そうこなくっちゃね!……えへへ」

美希「あはっ☆」

雪歩「……ふふふ」ニコ

P「……こっちは何とかなったみたいですね」

社長「そうだね。

まったく、こんな事件さえも向上心の糧にしてしまうとは、彼女達の前向きさには恐れ入るよ」

P「そうですね」

社長「君の影響もあるのではないかね?君がプロデュースし始めてから、みるみるうちに成長しているように見える」

P「まさか、買いかぶりすぎですよ。紛れもない彼女達自身の力です」

社長「ははは、それはそれで頼もしい限りだね」

P「しかし、これで事件が終わったわけでは……」

社長「うむ……犯人もまだ捕まっていない、しかも他のアイドル諸君もまだ狙われている可能性もあるというのに」

P「それに、こっちが丸く収まったとしても……

あっちが黙ってるはずないんだよなあ……」

翌日 事務所


真美「えーっ!?はるるんとミキミキが襲われた!?」

真「どういうことですかプロデューサー!?」

P「いや、今説明した通りだよ。昨日の夜に帰り道で美希が襲われて、助けようとした春香が殴られて怪我をしたんだ」

伊織「何よそれ!こないだ雪歩が襲われたばかりじゃない!なのにどういうことよ!」

P「そんなこと俺が聞きたいぐらいだ。犯人め、許せん……」

あずさ「それで、犯人は?」

P「まだ捕まっていない。二人の話によれば、雪歩を襲った犯人と同一犯らしい。

この分だと、765プロ全員が襲われる危険もある。皆、これまで以上に気をつけてくれ」

千早「犯人は私達に何の恨みがあるのかしら……」

あずさ「早く犯人が捕まるといいけど……」

亜美「で、ミキミキとはるるんは?」

P「春香は雪歩と同じ病院に入院してるよ。頭を殴られたと聞いてたが、幸い大事に至らずに済んだ。

美希の方は春香のお陰で無事だった。もう今日の分の仕事に行ったぞ」

やよい「二人ともおおごとにならなくてよかったですー」

貴音「不幸中の幸い、といったところでしょうか。この幸運に感謝せねばいけませんね」

P「それはそうかもな。


(しかし……)」

真「雪歩だけじゃなくて春香や美希にまで手を出すなんて!犯人め、ボクがとっ捕まえてボコボコにしてやらないと気が済まないぞ!!」

伊織「あら真、ボコボコにするのもいいけど、社会的に抹殺するのもいいんじゃない?」

亜美「んっふっふー、これは我々の出番のようですな真美隊員」

真美「そのようですな亜美隊員、私達で犯人を捕まえてしんぜようぞ」

2人「オー!」


P「(やっぱりこいつらが黙ってるはずないよな……)

な、なぁ皆、雪歩の時も言ったがあんまり無茶なことは……」

真「何ですかプロデューサー!事務所の仲間がやられてるっていうのに、ボク達は黙って警察に丸投げするって言うんですか!?そんなの納得できません!」

伊織「そうよ、そもそも警察なんてそんなに信用出来るものでもないのよ!」

P「そうは言うがお前ら、犯人の特徴もわからないのにどうやるっていうんだ」

真「そ、それは……」

伊織「何とかしてやるわよ!私達を甘く見ないでよね!」

P「それに、もし見つけ出したとしてもだ。俺が心配なのはむしろその先の話だ」

真「どういうことですか?」

P「犯人が俺みたいなヘタレな普通男だったらまだしも、相手は泣いて怯える雪歩を躊躇いなく……傷つけるような奴だぞ。……正気の沙汰じゃない」

真「う……」

伊織「そ、それはそうだけど……」

P「だ、だから…な?今回は……」

真「……でも、ボクはやっぱり…!」


貴音「静まりなさい、真」

真「……え?」

貴音「伊織も亜美も真美も、少し頭を冷やすのです」

伊織「た、貴音……?」

貴音「プロデューサー殿が口うるさく言うのも、貴方達を思ってのこと。その気遣いがわからない貴方達ではないはずです。

違いますか?あなた様」

P「えあ、ま、まあそうだな」

貴音「許せぬ気持ちは皆同じ。しかし、怒りに任せて闇雲に行動するのでは獣と変わりません。

今一度冷静になり、わたくし達が何を為すべきか考えましょう」

亜美「お姫ちん……」

真美「……お姫ちんの言う通りだにぇ」

伊織「し、仕方ないわね……」

真「……僕も悪かったよ貴音……頭に血が上ってた」

貴音「それで良いのです」

P(……頼りになるなあ貴音は)


千早「……………?」

やよい「うっうー、やっぱり貴音さんはさすがですー。ね、響さん」

響「……………」

やよい「……響さん?」

響「え?あぁごめん、ちょっと考え事してたぞ。貴音がどうしたって?」

やよい「貴音さんって、いつも落ち着いててかっこいいなーって」

響「そうだなー、普段はちょっと分からないところもあるけど、こういう時の貴音は頼りになるなー」

やよい「でも、私も犯人は許せません!みなさんに酷いことするなんて!早く捕まってほしいです!」

響「そりゃそうだ!自分だって許せないぞ!

(……でも………)」


響(……何か嫌な予感がするんだよなぁ………)

響(普段の自分なら、きっと真や伊織と一緒に騒いで、貴音に説教されてたんだろうな)

響(でも、今回はそれじゃダメだっていう気がするんだ)

響(自分、昔から勘はいいからな)

響(それに、これも勘だけど、今回の一連の事件には、あの人が関わってる気がするんだ)


響(……765プロを目の敵にしてるあの人が)


響(でも、勘だけで物事を語るのはよくないって、貴音にもプロデューサーにも言われたぞ)

響(自分だってそれはわかってる。いくら勘がいいとは言っても、それで何度も痛い目見てきたからな)

響(それに、今は貴音が皆を抑えてくれてるし、いざとなればプロデューサーだって律子だって頼りになるけど……)

響(もしここで自分が適当なこと言って皆を刺激しちゃえば、多分もう抑えられなくなるぞ……)

響(貴音は誘えないな。貴音が抜けたら、事務所が一気に不安定になる)

響(美希もダメだな。今回実際に襲われてるんだし、こんな成功する保障のない危ないことに巻き込むなんてもってのほかさー)

響(他の皆だって、きっと思うようには動けないだろうし……)

響(やっぱり、今回は自分が何とかしなきゃ。自分が一人で……)

響(でも、流石に誰にも伝えずいなくなるのはまずいな……かといってプロデューサーが許してくれるとも思えないぞ)

響(社長もダメな気がする……止められて皆に話されてお終いだ。

……やっぱり………)


小鳥「物騒ね……早く捕まるといいけど……」

響「ピヨ子」

小鳥「あら、どうかした響ちゃん?」


響「……話があるぞ、あっちの部屋に来て」

小鳥「………?」

小鳥「だ、ダメよそんな危ないこと!響ちゃんにもしものことがあったら……!」

響「でも、誰かがやらなきゃいけないんだ!それに今それが出来るのは自分だけなんだ!」

小鳥「ひ、響ちゃん……」

響「お願いだ、この通りだ!」ガバッ


小鳥「………わかったわ。このことは皆には内緒にしておくわ」

響「ピヨ子!」

小鳥「ただ、約束して」

響「?」

小鳥「絶対に無茶をしないこと。危ないと思ったら、すぐに逃げるのよ。私ならいつでも事務所にいるから」

響「わかったぞピヨ子、じゃあ……」

小鳥「……ええ。気をつけてね」

響「さーて、そうと決まればさっそく準備を……」ガチャッ


ガンッ

やよい「あうっ!?」

響「や、やよい!?」

やよい「うぅ~……」ウルウル

響「ご、ごめんなやよい!まさかそんなところにいるとは思わなかったんだ!」

やよい「だ、大丈夫です響さん~……

ところで……」

響「?」


やよい「やめるって、どういうことですか?」

響「!?」

響「き、聞いてたのか!?」

やよい「全部は聞こえませんでしたけど、やめるっていうのと、小鳥さんが止める声は聞こえました」

響(全部聞かれてたわけじゃないのか……ならまだごまかせそうだ)

やよい「やめるって、本当なんですか!?響さんとお別れなんて、そんなのいやです!」

響「落ち着けやよい、別にやめるわけじゃないさー」

やよい「え?」

響「ちょっとお休みをもらっただけさ、一週間くらい」

やよい「お休みですか?」

響「そうだ」

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