咲「ある日突然、私に12人ものお姉さんができたらどうしますか?」(168)

 ある日突然、長野に住む宮永咲ちゃんに12人ものお姉さんができたらどうしますか?

 それも……とびっきり格好良く、とびっきり美人で。
 とびっきり世話焼きで、とびっきりの優しい。

 しかも、そのうえ彼女達はみんなみんな、とびっきり咲ちゃんのコトが大好きなんです。
 でも、残念なことに咲ちゃんとお姉さんは現在離れ離れに暮らしていて……。

 実際に会うことができるのは、1週間に1回と決められた“咲ちゃんの日”だけ。
 大好きな咲ちゃんと自由に会えないお姉さんは……さみしくて、いつも咲ちゃんのことばかり想ってしまいます。

「神様……どうか、早く咲ちゃんに会えますように。私の大事な大事な咲ちゃん……会えないでいると……淋しい気持ちでいっぱいになっちゃうよ……」

 だから、ようやく1週間に1度の「咲ちゃんの日」がめぐってきて。
 2人が会えたときには、お姉さんは世界中の幸せを独り占めしたみたいに、とってもとっても幸せ。

 もちろん姉妹なんだけど、気分はまるで楽しいデート! そしてお姉さんは、咲ちゃんのそばにぴったりくっついて。
 心配そうに咲ちゃんの顔をのぞき込み、こう言うのです。

「咲ちゃんは……私のコト、好き?」

 お姉さん達はちっちゃい頃からずっとずっとただ純粋に咲ちゃんのコトが大好きでした。
 やさしくってステキで世界にただ1人、自分だけの大切な咲ちゃん……。

 だから、いつもいつも咲ちゃんと一緒にいたくて、いつもいつも咲ちゃんにかまってほしくて……。
 ここに登場するのはそんな美人でな女性達……。外見も性格もちがう12人のお姉さん達ですが、想いだけはみんな同じ……そう。

「……咲ちゃん、大好き!」

00 片岡 優希   01 染谷 まこ   02 竹井 久    03 原村 和    04 宮永 咲
05 井上 純    06 沢村 智紀  07 国広 一    08 龍門渕 透華 09 天江 衣
10 福路 美穂子 11 吉留 未春  12 文堂 星夏  13 深堀 純代   14 池田 華菜
15 津山 睦月   16 妹尾 佳織  17 蒲原 智美  18 東横 桃子   19 加治木 ゆみ
20 宮永 照    21 弘世 菫    22 渋谷 尭深  23 亦野 誠子   24 大星 淡

25 上重 漫    26 真瀬 由子  27 愛宕 洋榎  28 愛宕 絹恵   29 末原 恭子
30 神代 小蒔   31 狩宿 巴    32 滝見 春    33 薄墨 初美   34 石戸 霞
35 小瀬川 白望 36 エイスリン   37 鹿倉 胡桃   38 臼沢 塞    39 姉帯 豊音
40 松実 玄    41 松実 宥    42 新子 憧    43 鷺森 灼    44 高鴨 穏乃
45 園城寺 怜   46 二条 泉    47 江口 セーラ 48 船久保 浩子 49 清水谷 竜華

50 花田 煌    51 安河内 美子 52 江崎 仁美  53 白水 哩    54 鶴田 姫子

55 辻垣内 智葉 56 ダヴァン     57 郝 慧宇    58 雀 明華    59 ネリー
60 椿野 美幸   61 依藤 澄子  62 古塚 梢    63 森垣 友香   64 安福 莉子
65 本内 成香   66 チョコレ    67 寺崎 遊月  68 新免 那岐   69 佐々野 いちご
70 荒川 憩    71 対木 もこ   72 百鬼 藍子   73 宇津木 玉子 74 南浦 数絵

75 小走 やえ   76 岡橋 初瀬  77 志崎 綾    78 山谷 ひな   79 ギバード 桜子
80 赤土 晴絵   81 新子 望    82 小鍛治 健夜 83 福与 恒子   84 藤田 靖子
85 三尋木 咏   86 針生 えり   87 野依 理沙   88 村吉 みさき  89 久保 貴子
90 瑞原 はやり  91 戒能 良子  92 赤阪 郁乃   93 愛宕 雅枝   94 熊倉 トシ
95 夢乃 マホ   96 室橋 裕子   97 大沼 秋一郎 98 ハギヨシ    99 須賀 京太郎

>>3-14のコンマが咲のお姉ちゃん

おら

ksk

――宮永咲、清澄に進学するほんの少し前の夜

咲「お父さん、もう一度言ってくれる……?」

咲父「だからな、咲には12人のお姉ちゃんが居るんだよ。そうかー、お姉ちゃん達に会ったのは咲がとても小さい頃だったから覚えてないか」ハハハ

咲「笑い事じゃないよ!? っていうかなんでお父さんはそんなに楽しそうなの!?」

咲父「まず長野では天江衣ちゃんだろ、龍門渕透華ちゃんだろ、ハギヨシくんだろ。他にも池田華菜ちゃんに、加治木ゆみちゃんに原村和ちゃん」

咲父「福岡にだっているんだぞー、白水哩ちゃんに鶴田姫子ちゃん。大阪には清水谷竜華ちゃんに江口セーラちゃん」

咲父「外国にはチョコレちゃんって子がいるし、なんとあの麻雀で有名な戒能良子プロだっているんだぞー」

咲「突っ込みたいとこ色々あるけどまず1つ、明らかに男の人がいるんだけど!? お姉ちゃんなんだよね!?」

咲父「ああ、ハギヨシくんはああ見えて男装女子なんだ」

咲「面識がないからなんとも言えないけど突っ込み辛いよ!? 男装女子ってなんなのさ!?」

咲「っていうかお姉ちゃんが住んでる所の範囲が偏り過ぎだよ! 長野に6人はともかくほかは何故に福岡に大阪と外国!?」

咲父「実は父さん、博多ラーメンとたこ焼きが好きで小さい頃の咲を連れ回して何度も大阪と福岡に通ってたんだよー」

咲「一切合切記憶に無いよ私!」

咲父「ちなみにチョコレちゃんは外国から日本に引っ越して来てまた外国に引っ越したんだ。さすがに僕も外国はしょっちゅういけないからね」

咲「都合がいいなぁもう!」

咲「ハァハァ……突っ込み疲れたなんて初めての経験だけど、これだけは言わせて」

咲「全員小さい頃、私がお姉ちゃんって懐いてただけで……」




咲「血縁関係は、ないんだよね……?」




咲父「…………」

咲父「…………」

咲父「………そうだ、みんな麻雀が強いらしくて全員インターハイを目指しているらいいぞ! 咲も麻雀をもう一度初めてみるのもいい機会なんじゃないかい?」ハハハ

咲「お父さーん!?」

――清澄

咲「京ちゃん、ある日突然12人のお姉ちゃんが出来たらどうする?」

京太郎「天国過ぎて毎日がハッピーだな。いきなりどうした?」

咲「ちょっと、ね……」



和「清澄にも麻雀部はあるようですが、部員が足りないようですね」

優希「誰か他のメンバーを探せばいいじぇ!」

和「それはそうですが、強い方は風越にいくでしょうし――!?」

和「あれ、は……咲、ちゃん……?」

和「あの愛らしい表情、控えめな体つき、そして忘れられるはずのないツノ!」

和「間違いありません! あれは咲ちゃんです!」

優希「ちょ、ちょっと和ちゃん!? どこいくんだじぇー!?」




京太郎「ん? なんか女の子が物凄い勢いでこっちに向かってくるぞ」

咲「ほんとだ……ぅわ、キレイな子――――」ハッ




?『咲ちゃん、また泣いてるんですか?』

咲『えっぐ、えぐ、だって、お年玉が……』

?『まったく、麻雀で賭けなんてそんな犯罪ありえません!』

?『とはいっても咲ちゃんのご家族を告訴するわけにもいきませんし……』

咲『勝っても怒られちゃうし、負けても照お姉ちゃんに『本気を出して!』って怒られちゃうし……』

咲『私どうすればいいのかなぁ、“ ”お姉ちゃん……』

?『……仕方ありません。あまりおすすめできる方法ではありませんが、勝っても駄目、負けても駄目なら方法は1つです』

?『プラスマイナスゼロを目指してみる、というのはどうでしょうか?』

咲『プラスマイナスゼロ……?』

?『完璧にそれをするというのは不可能だと思いますが、咲ちゃんは麻雀が上手だからきっと出来ますよ!』

咲『プラスマイナスゼロ……うん! 私、頑張ってみる! ありがとう――』




咲『和お姉ちゃん!』

咲「……」

和「はぁはぁ……咲ちゃん、ですよね」

咲「……もしかして、和、お姉ちゃん?」

和「覚えてて、くれたんですね」

和「咲ちゃん、咲ちゃん……会いたかった! ずっと、会いたかった! 咲ちゃーん!」ダキ

咲「あわわ、和お姉ちゃん、胸が、胸が当たってる///」




優希「……なんだじょこれ? てかお前は誰だじぇ?」

京太郎「……俺にもわからん。お前こそ誰だ」

――麻雀部

和「何年振りでしょうか……咲ちゃんのことは一時たりとも忘れたことはありませんでしたよ」

咲「私は今の今まで忘れてたり……」アハハ

和「咲ちゃん酷いです! もう、お姉ちゃん拗ねちゃいますよ?」プンスカ

咲「ご、ごめんね和お姉ちゃん……」

和「……キス」

咲「え?」

和「キス、してくれたら許します」

咲「ええええええ!?///」

和「いいじゃないですか、小さい頃はしょっちゅうしてたんですから」

咲「そそそそ、そうだっけ!? で、でもそれは小さい頃の話で、今は私達高校生だし」

和「……」ションボリ

咲(うあぁん、見るからに落ち込んじゃってるよー……)

咲「……」

咲「――///」ホッペチュ






和「――数年ぶりに咲ちゃんからキスいただきましたああああああああああああああぁ!」

咲「和お姉ちゃん、声が大きいよぉ///」



まこ「何しにきたんじゃあいつらは……」

久「初々しいわねぇ」

優希「これ私と和ちゃんの入部届だじぇ」

京太郎「ついでに話の流れで俺と咲も入部することになったんでよろしくっす」

久「まっ、何はともあれこれでインターハイに出場する条件が揃ったわね。目指せ――全国! ってね」

――そんなこんなで対局中

咲「ロン、1000点」

久(わざと点を下げて、三連続プラマイゼロ――!?)

京太郎「あー、俺のテンパイが……」

優希「今回も和ちゃんがトップかー」

和「」プルプル

和「咲ちゃん!」

咲「ひゃい!?」

久(和も気づいたわね。この子がワザと毎局プラマイゼロという離れ技を――)

和「――素晴らしい! 完璧なプラスマイナスゼロじゃないですか!」

久「」

和「正直、いくら咲ちゃんでも完璧なプラマイゼロは無理だと思っていました。ですが、まさかこうまでも極めているなんて……」

咲「うん、和お姉ちゃんに教えて貰ってから沢山練習したんだ」

和「お姉ちゃん感激しました! ご褒美にキスしてあげます! キスさせてください! キスさせて!」

咲「だ、だから恥ずかしいよぉ///」

優希(私の中の和ちゃんが粉々にくだけていくじぇ……)

京太郎(残念な美少女ってのはこういうことをいうんだろうな……)

久「」

まこ「この麻雀部は色んな意味で大丈夫なんじゃろうか」

 そんなこんなでなんやかんやあって麻雀で勝つことの楽しさを覚えた咲はプラマイゼロを止めた。
 全国で優勝しないと和が東京の進学校へ行かねばならないことを知った咲はそれを阻止すべく強くなることを決意。
 手始めにまこの実家の雀荘でメイド服を装着し手伝いを兼ねながらお客さん相手に試合経験を重ねるのであった。

おっちゃん1「いやー、お嬢ちゃん達強いねー」

和「当然です。私の自慢の妹ですから」

咲「そ、それほどでも――――」ゾク

咲「っ!?」



良子「グッドモーニング……おや、今日のバイトはプリティですね」

咲(なにこの感じ――まるでお姉ちゃんと対局した時みたいな、だけどどこか懐かしい感覚……)

和(咲ちゃん、震えてる……?)

良子「いつものデリバリー、エクストララージでお願いします」

まこ「抹茶パフェですね」

良子「ハロー、よろし……く……」

咲「……」

良子「……さ、き?」

咲(この人、私を知って――)ハッ



?『それ、ロン』

咲『うわぁ! また負けちゃった……“ ”お姉ちゃんは本当に強いね! 照お姉ちゃんよりも強いかも!』

?『それほどでも』

咲『そんなに強かったら、やっぱりプロを目指すの?』

?『どうかな。私は同年代では頭一つ飛び抜けているという自覚はあるけど』

?『だからといってプロを相手に大立ち回り出来ると思っているほど自惚れては居ないつもりだから』

咲『そんなことないよ! “ ”お姉ちゃんならプロの人にだって絶対に負けないもん!』

?『ふふっ、嬉しいことを言ってくれる……咲は、私がプロになったら嬉しい?』

咲『うん!』

?『そっか……だったら、プロを目指すのも悪くない――』

咲『頑張ってね!』






咲『良子お姉ちゃん!』

咲(そう、だ。あの後、良子お姉ちゃんは外国へ麻雀留学へ行ってしまって、それっきりで……)

良子「咲、なの?」

咲「……うん、そうだよ。良子お姉ちゃん」

良子「咲――! 咲いいいいぃ!」ガバァ

咲「良子お姉ちゃーん」ダキ





和「」

まこ「し、死んどる……」

良子「サンクスゴッド。まさかこんな所で生き別れの妹に出会えるなんて」

咲「お姉ちゃん、本当にプロになれたんだね……」

良子「イエス。咲の為にファイトを重ねて、今では新人プロの中でもトップランカーですよ」フフン

咲「ごめんなさい良子お姉ちゃん。良子姉ちゃんは私なんかの為に頑張ってくれてたのに、私は今まで忘れてて……」ポロポロ

良子「……泣かないでください、咲。全てのプロのトップにスタンドするまで咲会わないと勝手に決めたのは私なんですから」ナデナデ






和「なんですかあれは!? 私以外に咲ちゃんのお姉ちゃんがいるなんてそんなオカルトありえません!」

まこ(お、生き返った)

――事情説明後

和「……」キッ

良子「……」フフン

咲「それでね良子お姉ちゃん。私、全国で優勝しなきゃいけないんだけど、今の私達で全国を勝ち抜けるかな?」

良子「――正直にインフォームするなら、難しいでしょう」

咲「そっか……」

良子「ですが、咲も和もまだまだグローイングの余地は残されています」

良子「それ次第では、ウィンの可能性もあるはず。ファイトです、咲」

咲「うん、ありがとうお姉ちゃん! あ、それとね、お姉ちゃんに1つだけ言いたいことがあるんだ……」

良子「?」

咲「あのね、その喋り方……ちょっと、変かも」

良子「」

 そんなこんなでなんやかんやあって戒能良子までもが参加した強化合宿でレベルを一段と上げた清澄一同。
 焼けるように暑い8月、ついに全国大会県予選が始まる――。

京太郎「人多いなー」

久「年々増えるわねぇ」

優希「ん? 咲ちゃんがいないじょー」

和「え!?」

久「また迷子か……」

まこ「あいつぁ携帯とかもっちょらんけぇのぅ――お?」


モブ1「風越女子だ! 去年は県2位! 部員800人を要する強豪!」

モブ2「龍門渕も来たぞー! 去年の四天王は2年になっても健在だ!」



一「ボク目立つの嫌いなんだけどなぁ」

透華「何をおっしゃいますの!? 目立ってなんぼ、目立ってなんぼですわ!」

純「しかし衣おっせーな」

透華「また目覚ましが壊れたりしているに違いありませんわ」

純「オレ昨日あいつんち行って目覚まし5つセットして来たぞ」

一「うわぁ」





咲「うぅ、完全に迷っちゃったよ……」




純「!?」ゾク

一「!?」ゾク

透華「――」ヒエ

純(なん、だ――今の!?)

一(なんだかわからないけど、凄いのとすれ違った――!?)

智紀「――清澄高校の制服」

純「じゃあ、あれが原村和か――!?」

透華「――」

一「……透華? 透華!」

透華「」ハッ

透華「あ、あら? 今私どうしてましたの?」

一(今、一瞬だけだけど透華の状態が去年のインハイみたいに……あの子、一体……)

 なんやかんや以下省略で清澄は順調に勝ち進みついぞ決勝戦へ歩を進めた。
 苦戦に苦戦を重ね、それでも前へ進む少女達に微笑みかけるのは勝利の栄光かそれとも敗北の苦渋か。

 そして今――。

咲「う、そ……」

 皮肉な運命が。

ゆみ「正直、お前と争いなんてしたくなかったよ――咲」

 かつては姉と慕い。

華菜「だけど、負けるわけにはいかないし!」

 かつては妹と愛で。

咲「ゆみお姉ちゃん、華菜おねえちゃん――そして」

 仲睦まじげに微笑みあった姉妹達に未曾有の試練を問いかける!

衣「――久しいな。渇望していたよ、再び咲と相交えるこの刻を――!」

咲「衣ちゃん!」

衣「ちゃんではなく」

――かなり昔

衣『海底撈月』ゴッ

透華『――』ヒエ

咲『凄い凄い! お姉ちゃん達、本当に強い!』

衣『ふっ、そういう咲も中々やるじゃないか』

透華『――』コク

咲『私なんてまだまだだよー。全然上がれないもん』

衣『いや、衣達と真正面からぶつかって心が折れるどころか笑顔で立ち向かってくる相手なんていままでいなかった』

衣『だから、咲と打つのはとても楽しいぞ!』

透華『――』コクコク

咲『私もお姉ちゃん達と麻雀を打つのはとっても楽しいよ!』

咲『でもね衣お姉ちゃん、透華お姉ちゃん。お外にはもっと強い人達がいっぱいいるんだ!』

衣『ほう、そうなのか?』

咲『良子お姉ちゃんも強いでしょー、和お姉ちゃんも強いしー、“ ”お姉ちゃんも強くて……』

衣『ふむ。咲がそういうのなら、いつしか衣も外に飛び出して行くのも悪くはないかもしれない』

衣『よし、お父さんとお母さんの研究が一段落して、衣も今の環境が落ち着いたらいつか咲の元へ行くぞ!』

透華『――』

咲『うん、約束だよお姉ちゃん! また一緒に麻雀を打とうね!』

――別の昔

咲『うああああん、ゆみお姉ちゃーん!』

ゆみ『どうした咲?』

咲『うぐ、ひぐ、照お姉ちゃんがね、もう私とは麻雀を打ちたくないって……』

ゆみ『……よしよし。照は酷い奴だな。あとで私から言っておいてあげる』ナデナデ

咲『あ、ありがとう……』

ゆみ(原因は、プラスマイナスゼロか……しかし勝っても怒られて、負けても怒られたら、他に咲にどうすればいいというんだ……照)

ゆみ(咲は強い。きっと咲が姉と慕うもの達の誰よりも……だからこそ照は咲に本気になって欲しいのだろう。何よりも麻雀に打ち込む者として)

ゆみ(お年玉を賭けるなんていいだしたのも、全ては咲の本気を煽るため。なのにプラマイゼロなんて真似をされたら照も憤る、か)

ゆみ(……可愛さ余って憎さ百倍。やれやれ、どうにも咲のことが好きすぎていけないな、私達お姉ちゃんは……)

――さらに別の昔

華菜『もー、いい加減泣き止めし咲ー』

咲『だって、私のせいでゆみお姉ちゃんと照お姉ちゃんが、喧嘩しちゃって……』グスグス

華菜『大丈夫だって、喧嘩なんてほとぼり冷めたら気にしなくなるものだし』

咲『でも……』

華菜(たくもー。咲の為に行動起こしてもそのせいで咲が泣いてたら意味ないし)

華菜(姉妹は、仲良くしてるのが一番なんだから)

――?

ハギヨシ『……皆様は、咲と少し距離を奥べきです』

ゆみ『いくら貴女のいうことでも、それは了承しがたいな……』

照『……』

華菜『そうだし! 一番の年長だからっておーぼーだし!』

ハギヨシ『……先日、私の主のご親族が亡くなられました』

華菜『……そ、それはご冥福をお祈るし』

ハギヨシ『それが切欠で、ご親族の忘れ形見である衣様は精神を病ませ、愛を求めるが故にいつか友となれる者すら壊しかねない麻雀を打つようになってしまった』

ゆみ『それは残念だと思うが、それと私達が咲と距離を置くことにどう関係する?』

ハギヨシ『……今の貴方達、とくにゆみ様と照様は、衣様と同じです』

ハギヨシ『愛するが故に、愛を欲するが故に、気づかぬ内に愛する者を傷つけている』

ハギヨシ『貴方達の喧嘩で、咲がどれほど涙を流したのかわかりますか?』

ゆみ『っ……だが、それは照が!』

照『……私は、咲と離れる』

華菜『にゃ!?』

ゆみ『照!?』

照『両親の仲が冷えきってしまって、離婚の話を昨日、聞かされた』

照『母さんは東京に引っ越すことを考えているみたいだし、私も東京にいく』

ゆみ『咲を置いていくつもりか!?』

照『咲のプラマイゼロなんて腑抜けた麻雀は、もうみたくない』

ゆみ『――照、お前っ! ……見損なったぞ! 咲がプラマイゼロを打つようになったのはお前の……!』

照『――黙れ!』

照『何がわかる……何がわかる!?』

照『咲と血の繋がらないお前たちに! ただ咲にお姉ちゃんと呼ばれているだけのお前たちに! 私達姉妹の何がわかるというんだ!?』

華菜『っ』

ゆみ『……照うううううぅ!』

ハギヨシ『そこまでです、お二方』パシ

ハギヨシ『照様、いかな咲の実姉のあなたでも、それは失言ですよ』

ハギヨシ『例え血が繋がらなくとも、例え本当の姉でなくとも』

ハギヨシ『私達にとって、咲は大切で愛しい妹で――私にとっては、照様』

ハギヨシ『あなたも、妹だと思っています』

照『……勝手に、人を妹呼ばわりしないで』

照『私はもう誰も愛さない』

照『私が愛するのは麻雀だけ』

照『好敵手なんていらない。愛しい妹なんていらない』






照『私に、妹なんていない』

照『私に、姉なんていない』

照『私に、姉妹なんて――いらない』

咲『お姉ちゃん達は、みんな、どこいっちゃったの……?』

咲『なんで、みんな私から離れていっちゃうの……?』

咲『ハギヨシお姉ちゃんも、良子お姉ちゃんも、哩お姉ちゃんも、竜華お姉ちゃんも、セーラお姉ちゃんも、ゆみお姉ちゃんも』

咲『衣お姉ちゃんも、透華お姉ちゃんも、華菜お姉ちゃんも、姫子お姉ちゃんも、和お姉ちゃんも、チョコレお姉ちゃんも』

咲『照お姉ちゃん、も』








咲『なん、で……いなくなっちゃうの』

咲(……そっか。だから私は再会するまで、お姉ちゃん達の記憶が無かったんだ)

咲(あんなに好きだったお姉ちゃん達が、私の側から離れていってしまうことへの恐怖)

咲(その恐怖に耐え切れなくて、私は自ら記憶を閉ざしていたから……)



衣「さあ咲! いままでハギヨシに邪魔されて会いに行くことすら出来なかったけれど、そんな束縛はもう無い!」

衣「衣にはもう咲しかいない! 思う存分やり合おう! 咲だけは壊れない! 咲だけが私と遊んでくれるんだ!」



咲(私は逃げていた。一度離れていってしまったお姉ちゃん達と触れ合うことを)

咲(また傷つくかもしれない、また仲良く出来るわけがないと、逃げてばかりで――!)

和『何年振りでしょうか……咲ちゃんのことは一時たりとも忘れたことはありませんでしたよ』

良子『……泣かないでください、咲。全てのプロのトップにスタンドするまで咲会わないと勝手に決めたのは私なんですから』

ゆみ『正直、お前と争いなんてしたくなかったよ――咲』

華菜『だけど、負けるわけにはいかないし!』

衣『――久しいな。渇望していたよ、再び咲と相交えるこの刻を――!』








咲(それなのに、みんなこんな私のことを忘れてなんてなかった! みんな、こんな私のことを思っていてくれた!)

咲『リンシャンカイホー?』

?『麻雀の役の名前だよ。『山の上で花が咲く』って意味なんだ』

咲『咲く? おんなじだ! 私の名前と!!』

?『森林限界を超えた高い山の上。そこに花が咲くこともある。おまえもその花のように――』







         『強く――』







咲「私はっ! もう、逃げない!」ゴッ!

 ――ある日突然、12人ものお姉さんができたらどうしますか?



咲「決まってるよ――!」

咲「そんなこと、とっくの昔に決まってた!」

咲「誰もが羨むくらい! 誰がも呆れ返るくらい!」




咲「みんなで、仲良く麻雀を打つんだ!」






咲さんの嶺上開花が姉妹の絆を取り戻すと信じて――。

第一部、カン!

ちょっと滅茶苦茶にストーリーが進みすぎて書いてる本人すらわけわからんくなったので一先ず終わりです
あと一応照以外のお姉ちゃんは血が繋がっていないっす
では

あとチョコレって有栖山の選手だったんだな
完全に外人かと思ってた。どうしよ

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