美希「ハニー、ミキ結婚するね?」(406)

P「え?」

美希「ミキにふさわしい人、見つけちゃったんだ」

P「い、いやちょっと待てよ! アイドルはどうするんだ!」

美希「ごめんね、バイバイ」

P「お、おい美希! 嘘だろ、待ってくれ、美希!!」

――




P「美希……いかないでくれ……頼む」

P「美希……」

P「……はっ」

P「これまたベタな夢だな……」


P「仕事行くか……」

P(よりによって朝からあんな夢を見てしまうとは)

P(……美希は、うちの事務所のアイドルで)

P(今からちょうど1か月前くらいだったかな? 事務所に初めて来たときに、出会った)

P(きっとその時から惹かれていたというか、一目惚れに近いような……)


P「よろしくお願いします」

律子「えっとそれじゃ、プロデューサー殿はそちらの……ちょっと美希?」

美希「んー?」

P「……この子は」

律子「あぁ、えぇと……」

美希「ミキ? 美希は星井美希って言うの! よろしくね?」

P「あ、あぁよろしく。ちなみに俺は……」

美希「ねぇねぇそこの人。ミキ眠たいからちょっと寝るね? だから時間になったら起こして欲しいな」

P「え?」

律子「ちょ、ちょっと美希! アンタプロデューサーになんてこと!」

美希「え? プロデューサー?」

P(律子が散々叱って、その最中にも言ってしまえばほとんど話を聞かずに)

P(ただ見てた俺の方をチラチラ覗いて。目が合った時、俺はもう)

P(……もちろんルックスもさながら。後で年齢を聞いたときは、それこそ驚いた)

P(自分がプロデュースするアイドルとしてなのか……一人の女性としてなのか)

P(どちらにせよ、俺にできることは一つだった。気に入ってる相手ともなれば、それなりにやる気もでる)



美希「ねぇねぇプロデューサー! どうだった?」

P「すごいじゃないか美希! またこのオーディションも合格だな!」

美希「えへへ、ミキにかかればこれくらい簡単なの!」

P「……それにしても、それだけ力が合ったのにどうして」

美希「何が?」

P「あ、いや……今までだってアイドルやってたんだろう? なのに無名ってのがどうも信じられないというか」

美希「うーん、やる気の問題かな?」

P「やる気?」

美希「なんとなくやる気が出たってだけだよ? 今までは、なんていうか退屈だったの」

P「退屈、か」

美希「だからプロデューサーが来るって聞いて、すっごくワクワクしてたの!」

P「それはそれは」

美希「ねぇねぇ、次のお仕事は!」

――

P(それはもう天才としか形容し難いほど、優秀で素晴らしい人材だった)

P(……逆に、そのことを聞いて。初日に俺のことを見ていたのは単なる好奇心だと)

P(男性としての興味ではないんだと実感して、少しだけがっかりした。というのが本音だ)

P(美希のことを知っていくと、男性関係は軽くいなしてきた、とも聞くし。もともと期待する方がおかしいのだが)

P(舞台で輝く美希を見てると、その気持ちは高まる一方で……とそんなある日)

――

美希「ねぇねぇハニー!」

P「なんだ美……え?」

美希「どうしたの?」

P「いや、美希……その、今なんて」

美希「……ハニー?」

P「そうだ、それ! なんでそんな……」

美希「プロデューサーは、ただのプロデューサーじゃない、って思ったから」

P「え?」

美希「ミキね、ずっとキラキラしたいって思ってたの! 舞台の上でいろんなダンスや歌をして」

美希「今まで全然できなかったことが、今毎日できてるってことがすっごく嬉しいの」

P「……」

美希「プロデューサーのおかげだって、思ってる。だから、プロデューサーはミキのハニーなの!」

P「い、いや……」

美希「……嫌?」

P「いやじゃ、ないが……その、仕事では押さえてくれると」

美希「お仕事が終わったらいいの?」

P「そういうことでもなく! わ、わかった……好きにしてくれ。でも、できるだけ外では、気を付けてくれ」

美希「はいなの!」

P「……」

――
P(もちろん嬉しかった。でもそれ以上に不安の方が大きくて)

P(急にそんなふうに慕われては、どう対応していいかもわからず……いわゆる勘違いをしてしまいそうで)

P(そんな勘違いがいいのか悪いのか、順調に進み、ついには日常的にスキンシップがはかられるようになった現在)

P(……さっきの夢を見てしまった。どうしてこうも、夢のダメージは大きいのか)

P「……はぁ」

P(精神的なところだけ強く感じるのか、結構胸が痛む)

P(……あれだけ慕ってくれている美希も、いつかは。なんて、父親でもあるまいし)

P(しかし、想えば想うほど。アイドルとプロデューサー、そもそも交わることなどないはず)

P(さっきの夢が、やたらリアルに思えてきて余計切なくなる。というのは、出勤中の男としては不釣り合いだろうか)

P「あーもうダメだこんなんじゃ! シャキッとシャキッと!」

律子「あ、あの……」

P「え? うわぁああ!!!」

律子「わっ……お、驚かさないでくださいよ……」

P「あ、り、律子か……すまん」

律子「びっくりしますよ……歩いてる男の人が急に大声を上げるんですから……」

P「そ、それはまあ……この通り、そんなに人多くないしさ?」

律子「まあいいんですけど……何かあったんですか?」

P「え? いや、別にそういうあれじゃないんだ!」

律子「もしよかったら相談に乗りますよ? 私も、一応プロデューサーですし」

P「……うん、ありがとう。特にアイドルの事になると、女同士の方が捗るだろうしな」

律子「アイドル?」

P「あぁいや、別になんでもないんだ。ありがとな」

律子「いえ、そういうことならいいんです」

P「……さて、と。今日も頑張るか」

律子「そうですね、頑張りましょう!」

ガチャッ

美希「あ、ハニー!」

P「おっと美希、来てたのか。おはよう」

美希「だって今日、お仕事早いんじゃなかった?」

P「いや、いつもより早いって話でさ」

美希「えー!」

P「今からだと……3時間くらい、あるか?」

美希「……」

P「いや、それはなんていうか……俺も伝達ミスだったな、すまんすまん」

美希「……いいの」

P「そうか、次はちゃんと……」

美希「その時間、ハニーとデートするの!」

P「……え?」

美希「ハニーが悪いんだから、いいよね?」

P「あ、いや、でも、俺ちょっと仕事……」

美希「……」

P「……デートと言っても何するんだ」

美希「この時間じゃお店も空いてないの。適当に散歩しよ?」

P「……わかった」

美希「~♪」

P「……」

美希「どうかした?」

P「あ、いや。その、楽しいか?」

美希「うーん、楽しくはないかな」

P「……まあ、そうですよね」

美希「~♪」

P「その……美希さん?」

美希「何?」

P「どこに向かってるんだ?」

美希「別に?」

P「……」

美希「こういうのは男の人がリードしてくれるんじゃないの?」

P「……そう、なんだろうな」

美希「……ハニーは、嫌?」

P「嫌なんてそんな……ただ、デートと言うのはさ」

美希「……」

P「……美希?」

美希「……デート、してくれるんでしょ?」

P「うん、でもその……」

美希「デートってすれば、ただ出かけるだけでいいとか思った?」

P「み、美希?」

美希「……ミキは、誰にでもハニーとか、言うと思った?」

P「あ、いやそんなこと……」

美希「……ううん、なんでもない。ごめんなさい」

P「……」

美希「うー、やっぱり朝は寒いの……そろそろ、戻ろ?」

P「あ、うん……」

P(俺には美希が何を考えてるか、何を求めているかわからない)

P(たとえ分かったとして、それが俺に対する愛情だったとしても……受け入れることは)

美希「ハニー?」

P「おっと……」

美希「どうかした?」

P「いや、ちょっと考え事をな」

美希「……さっきのことは、気にしないで?」

P「あ、うん」

美希「……今日の収録の後って、迎えにきてくれる?」

P「え? えーと、時間は合うと思うが」

美希「そっか、わかったの!」

P「迎えに行っていいのか? そのまま帰ってもいいんだぞ?」

美希「んーとね、ちょっとだけ寄りたいところがあるから付き合って欲しいなって」

P「寄りたいところ?」

美希「さっきダメだったから、チャンスを上げるの!」

P「……あー」

美希「いいでしょ?」

P「……わかった」

美希「それじゃ、行ってくるの!」

P「あぁ、行ってらっしゃい」

P(美希のわがままはなかなか厄介なものばかりで。でも、それをかなえてあげたいと心のどこかで思っていて)

P(……ひいきはしないように心がけてるが、やっぱり弱い)

律子「プロデューサー?」

P「おっと、律子か」

律子「さっき美希と出かけて、何か?」

P「……いや、まあデートと称して散歩に行ったんだが……お気に召さなかったようで」

律子「……それでなんとなくわかりましたけど」

P「具体的に何かをするわけにもいくまい……美希の気持ちはわかるけどさ」

律子「……」

P「律子はどうした方がいいと思う?」

律子「……さぁ、それは美希にしかわからないでしょうから」

P「やっぱり、そうだよなぁ」

律子「……あとは、本人と」

P「まあ、とりあえず大丈夫だろう。目立つ事はしないつもりだし」

律子「心配はしてませんよ、まあ頑張ってください」

P「うん、ありがとうな」

---
美希「待ってたの、ハニー!」

P「すまんな、ちょっと遅れて」

美希「ううん、大丈夫」

バタン

P「それでどこに行くんだっけか?」

美希「……」

P「美希?」

美希「このまま……車の中でもいいよ?」

P「え?」

美希「……ミキは、それで」

P「美希……?」

美希「ミキ……ハニーのことが好き」

P「……それは前から聞いて」

美希「違うの! だって、どうせ……ハニーは適当な言葉だって思ってて……」

P「て、適当だなんてそんな……」

美希「でも、今何も思ってない……」

P「な、何が……」

美希「ミキはこんなにドキドキしてるのに……ハニーは全然変わってないの……」

P「……」

美希「……本当は、ダメなのわかってる……分かってるけど、ちゃんと言いたかったから」

美希「ハニーが優しくしてくれるから、ミキだって……期待しちゃったのに」

P「……美希」

美希「えへへ、今朝のデートのお詫びに本当は……もっと欲しいけど」

美希「……最後まで聞いてくれたから、今日はもういいの。うちに向かって?」

P「あ、うん……」

P(緊張してないわけじゃない。ただ、目の前で起こったことがにわかに信じられなくて……)

P(それを、ただ純粋に喜ぶことができない立場、というのも一つだろうが)

P(……何にせよ、らしくない美希を乗せたまま、沈黙に包まれたまま無事家に着いた)

美希「……もう着いちゃったの」

P「……あぁ」

美希「それじゃ、また……明日、ね?」

P「……あぁ」

美希「ミキなら……ミキが運転手なら、自分の家に連れて行っちゃうよ?」

P「……」

美希「……じゃあね」

バタン

P(美希は最後に、精一杯の美希らしさを俺に見せて)

P(……きっと明日からも、変わらない日常なんだろう。そう思うと、やっぱりこの想いは重たい)

P(はじめからそんな想い持っていなければ……もしかしたら、美希も悩まなくて済んだのかもしれないのに)

P(家に着いた俺は、何ということもなくベッドに倒れ込んで)

P「……はぁ」

P「……いっそ、今日あの夢を見たい」

P(というか、夢じゃなくて本当なら……諦めもつくかも。なんて弱音を吐いたりして)

P(珍しく何もせず、そのまま眠ってしまった)


P(翌日、事務所に着くと誰もいなかった)

P(……と思ったら)

P「……早いな」

美希「……おはよう、ハニー」

P「おはよう、美希」

美希「……ハニー」

P「どうした?」

ギュッ

P「え? ちょ、ちょっと美希!?」

美希「……」

P「お、おい離れ……」

美希「……ハニー、ごめんなさい」

P「……美希」

美希「……ダメな子だよね、ミキ」

P「……」

美希「もうね、こんなわがままなこと言わないから……」

美希「……だから、今日だけ」

P「……」

P(ベタベタな展開……だと突っ込んだとしても俺にはどうすることもできず)

P(……数分後、美希は離れた。目は軽く赤くなっていて)

美希「……あはっ! なんだか、スッキリしちゃったの!」

P「美希……」

美希「大丈夫……ハニーは、ハニーは悪くないから……」

美希「それで、ミキはいいの……」

P「……」

P(何も口にしてくれない美希に対してなのか、何もわからない自分に対してなのか分からない)

P(結局ずっと見てるだけだった、という自分に対しても……とにかく苛立が押さえきれなかった)

P(もう思っていることを絡まったまま吐き出してやりたかった。でも、そんなこと流石にできず)

P(美希に対する想い、今の葛藤からひねりだした言葉は……)

P「……俺も好きだ」

美希「……え?」

P「俺も好きなんだ! でも、でも……」

ちょっと離席
よかったら保守頼む
落ちてたら立て直す

まだ残ってたかありがたい
一応あと1時間くらいで戻れると思う
もしよかったら保守頼む

美希「本当?」

P「……ごめん」

美希「な、なんで? なんでハニーが謝るの?」

P「俺のせい……だから。これからのことも……」

美希「……」

P(初めて顔を合わせた時から、きっとひいき目で見ていたんだと思う)

P(大したことじゃないんだろうけど、美希にとってはそれが新鮮で、生きやすい環境になって)

P(気付いたら……きっとそんなこと。だから俺のせい)

P「……でも謝るっていうのは、順番が逆だよな」

P「その、俺の気持ちも……そういうことなんだが、付き合うことはできない……」

美希「うん、それはわかるよ? ……でも、よくわかんないよ」

美希「ハニーは……ハニーは本当にミキのこと……」

P「それは本当だ! 多分……プロデュースする前から、半分」

P「プロデューサーになって、やっぱり……好きだって。でも、そんなの無理に決まってるだろ?」

美希「無理じゃないの! 無理じゃ……やっぱり、アイドルだから……?」

P「……あぁ。あとは、年齢もあるし……ファンを裏切ることになってしまう」

P(ちゃんと時間をかけてそういう結果にするならまだしも、これじゃ……本当に子供の恋愛だ)

美希「……」

P「美希も、だからそういう風に気を使ってくれていたんだろ?」

美希「ミキは……」

P「俺の方も、まだ混乱してて全部伝えられないけど……少し落ち着こう」

P「そろそろ人も来る時間だし……また後で」

美希「……うん」

P(美希は事務所のソファーで寝転がっていた)

P(それでもアイドルが入ってくるといつものように明るく、マイペースに振る舞って)

P(……一度だけ目が合ってしまい、気まずくなったのも一瞬)

P(気付いたら事務所には俺と美希だけになっていた)

美希「……ハニー」

P「……もうこんな時間か」

美希「ミキね、ちょっとずつだけどハニーとのこと整理してみたの」

P「……」

美希「……やっぱり、好きだよ?」

美希「もしかしたら、ハニーからは子供の恋愛ごっこ、みたいに思われてるかもしれないけど……」

P「いや、そんなこと」

美希「うん、わかってる。でも、ミキは本気だってこと知って欲しかったから」

P「……そうか。ありがとう」

P「……なら俺がしなきゃ行けない事はこれからのこと」

P「美希としては……その、気持ちは変わらないわけだもんな」

美希「もちろんなの」

P「うん、じゃあ提案させてもらう。俺もただ机に向かって座ってただけじゃないからな」

美希「……見てたけど、ほとんどハニー、ミキのこと見てたでしょ?」

P「え!? あ、い、いや……そうだったか?」

美希「バレバレだよ? 目が合ったとき注意しようかと思ったくらいなの」

P「そ、それは……意識してなかった……すまない」

美希「えへへ……でも、やっぱりそういうのがホンキって感じで、嬉しいな」

P「……」

美希「女の子は誰でも、相思相愛の恋に憧れるんだよ?」

P「……俺だけの持論でいいなら、男だって憧れるさ」

美希「……それで?」

P「あ、すまんすまん。とりあえず……先に言っておくべき事があるよな」

P「美希……俺と付き合ってくれるか?」

美希「……え?」

P「……」

美希「……う、うん。その、こちらこそよろしくお願いします……なの」

P「……はぁ」

美希「え? ハ、ハニー?」

P「……いや、告白なんて初めてしたもんでな」

美希「初めて……」

P「そこに関しては、美希は経験豊富というか」

美希「……ミキだって誰かを好きになるのは、初めてだよ?」

P「……それはそれは光栄です。で、だ」

P「付き合う……と言っても、それは残念ながら公にはできん。事務所の皆にも、だ」

P「だから……週1回だけ。二人でいる日を作ろうと思う」

美希「二人で……」

P「と言っても派手なことはできないからな……こういう、二人きりで話すとか、そんな程度だ」

美希「……」

P「何か質問は……?」

美希「ううん……どちらかと言えば、びっくりしてるの」

P「びっくり?」

美希「だって、プロデューサーと付き合うなんて……」

P「……俺としても結構プロデューサー失格なところまで来てる。だから、この先が重要だ」

P「いつまでもコソコソ付き合ってる訳にも行かない。だから、目標を立てる」

美希「目標?」

P「……笑うなよ」

美希「?」

P「……結婚だ」

美希「……え?」

P「俺は! 俺はその、それくらいの覚悟で付き合おうとしてる!」

P「……ただな? プロデューサーがアイドルに、とか。まだ14歳の子に……とかいろいろあるわけで」

P「……でも、年齢や肩書きで今の俺たちの気持ちを遮って欲しくない……と、俺は思うんだ」

美希「……」

P「……美希?」

美希「……う、うあ」

P「え!? あ、いや、その美希!?」

美希「ご、ごめ……なさ、嬉しくて……」

P「美希……」

美希「え、えへへ……ハニーはやっぱり、すごいの……」

美希「結婚なんて……ミキ、まだ中学生だよ?」

P「だからその、さっきの言い訳があるわけで……」

美希「うん、わかってるの。結婚できるまで……頑張ればいいんでしょ?」

P「……そんなにスムーズに行けば、なんてことないんだがな」

美希「ミキを誰だと思ってるの?」

P「これはこれは、頼りになるお言葉で」

美希「……約束」

P「……」

美希「これは、約束だよ? ハニーと、結婚する」

P「あぁ、もちろん」

美希「……今日は眠れないの」

P「ダメだ、ちゃんと休まないと明日に響くからな」

美希「こう言うときは普通、今夜はうちに泊まっていけとか」

P「ただでさえ捕まりそうなんだから、勘弁してくれ……」

P(その後は、特に何もなくたわいもない会話をして、美希を家に送り届けた)

P(美希が結婚できるようになるまで2年……はないか)

P(それまで他のアイドル達も一人前に育てなければ)

P(……それでも、やれる。やらなきゃいけないんだ)

P(気分としては最高のまま家に帰り、少女に対して語った愛の言葉に今更恥ずかしくなって)

P(一人で暴れたり泣き叫んだり、と思えば真剣な顔で今後の計画を練り始めたり)

P(……恋は盲目。まさにその通りで)

P(二人だけが知る、二人の関係を始めてから、二人の時間、三回目のこと)


P「……美希」

美希「何? ハニー?」

P「……噂がな」

美希「え?」

P「あ、いやなんでもないんだ」

美希「噂?」

P「あ、いや……どこから嗅ぎ付けたのか知らないが、いつもでっち上げ記事ばかり作ってるところがな」

P「……だから、一応伝えておく事にする。耳を貸せ」

美希「?」

P「……」

美希「……うん」

P「わかったな?」

美希「わかったの」

P「……いい子だ」

美希「……ハニー」


P(今思えばどこから、なんてアホなことを抜かしていたことに突っ込みを入れてやりたい)

P(事務所が安全だと勝手に思い込んで、仕事が終わっても残っていたのだから疑われるのも無理はない)

P(……不安は的中し、その会話をした次の朝、早速記事になっていた)

P「……」

律子「……プロデューサー」

P「律子か……いや、うん。単なる噂には過ぎないんだが……」

律子「……あまり、こういうことは言いたくないんですけど」

律子「何人か、最近プロデューサーと美希の仲がいい……と」

P「……」

律子「あ、で、でも勘違いしないあげて下さい! その、陥れようとか言う訳では……」

P「……わかってる。事務所全体の問題だもんな」

律子「……」

P「今日の迎え、美希のことも頼めるか?」

律子「は、はい。大丈夫です」

P「……すまん」

P(こうなることはどこかで予想がついたはずなのに)

P(そして、こうなったら誰が一番辛いか、わかるはずなのに)

P(アイドルはそういうものだと、一番理解しているはずの俺が……恋に溺れて、理由にして)

P(今日美希とは会わないつもりだった。急にそういう行動をしても怪しまれるが、結局は同じだ)

P(……だが、昨日の会話が早速役に立つ)

P(俺は仕事が終わってから適当に時間をつぶしてから、とある公園に来た)

P「……まだ1ヶ月経ってないんじゃないか」

P(つぶやいていると、やがてやってきた)

P「……美希」

美希「……プロデューサー」

P「……慣れると、その呼ばれ方は辛いものがあるな」

美希「……」

P「……殴ってくれても構わない。正直、俺の不手際が招いたことだ」

P「……こうなった場合、どうするかは俺の知る限り2つ」

P「俺とは何も無い事を証明するために、別の担当に移って活動を続ける」

P「もう一つは、開き直って俺と逃げるかだ」

P「どちらを選択してくれても、俺は一向に構わない。それだけのことをした」

美希「……」

P「さぁ、美……」

パァン

P「……っ」

美希「ハニー……」

P「……」

美希「……ハニーとお別れするのは嫌」

P「……」

美希「でも、アイドルを捨ててまで、皆を裏切って一緒になるのは……違うって思う」

P「……そうだな」

美希「……なら、どうすればいいの? って、ハニーに聞くつもりだった」

美希「ハニーと一緒にいたいのに……ハニーのせいで……って。でも」

美希「……全部ハニーに任せてたから、いけなかったんだって」

P「……美希」

美希「だからね、ミキちゃんと考えてきたの」

美希「16まで、外国にいるね?」

P「……なっ!」

美希「そうすれば、全部うまくいくの……最初から、ミキが悪かったの」

P「い、いやでも……」

美希「……プロデューサーは、大変なんだって、すごく思った。そんなプロデューサーが、ミキは大好き」

美希「だからって、独り占めして他の皆にまで迷惑をかけちゃうなら……ミキは諦めるの」

美希「きっとそれくらいしないと、ハニーと釣り合わないから!」

P(掠れる声、美希なりに必死に答えを出してきたんだろう)

P(なのに、俺は……)

P「……俺には、何も言えない」

美希「さっきのビンタはね、別にハニーが……ミキと付き合おうって言ったことについてじゃないの」

美希「方法がさっきの二つしか無かったこと、それがミキはちょっと悲しかっただけ」

P「……」

美希「……だから、本当にミキのこと思ってるなら」

美希「……待ってて」

P「……美希」

美希「2年、待ってて? ミキも我慢する。だからハニーも!」

P「……俺に、できるだろうか」

美希「ハニーなら大丈夫だよ……きっと」

P(二人は見つめ合う。少しずつ距離を縮めていく)

P(何も言わなくても、ここに来て話を進めたように。どちらともなくやがて……とそのとき)

P(脳裏によぎる……悪魔のささやきか神のお告げか、互いが触れる前にそれを口にだす)

P「……ここは、誰か見てるかもしれない」

美希「あ……うん」

P「……2年後な」

美希「……絶対だよ」

P「……絶対」

P(そして改めて、二人は触れ合う。手と手を固く握りしめて、また会う日までと)

P(……気がついたら、美希は日本からいなくなっていた。本当に、気がついたら)

P(火種程度だった噂も徐々に消え、うちの事務所にも平穏が戻った)

P(いなくなった後も美希のことは忘れられずにいる。当たり前だ)

P(それでも、確かに仕事の効率は上がった気がする)

P(一目惚れから始まった恋。燃え上がるのが早くて冷めるのも……)

P(……この時点では、別に冷めてなどいなかった。日に日に燃え上がる一方なくらいで)

P(美希が帰ってきて、すぐ結婚するのか、それとも俺の元でアイドルとして復帰するのか)

P(……どうなるかはまだ分からない。だからこそ、俺は今目の前の仕事に力を入れるしかなかった)

P「……美希」

律子「プロデューサー?」

P「あ、律子か……」

律子「……美希のこと、気になりますか」

P「……気にはしてないさ。あいつのことだ、うまくやってるに決まってる」

律子「それもそうですよね」

P「あぁ……むしろ気にしなきゃいけないのは俺自身の方で……」

律子「あ、プロデューサー、ちょっと……」

----
美希(はじめて会った時……確か、そこの人って言っちゃったんだよね……)

美希(でも、それくらい普通の人って感じだった)

美希(お仕事をして行くうちに、どんどん楽しくなって)

美希(この人のおかげなのかな、って思ったら余計すごく思えてきて)

美希(……それに、今だからわかるけどやっぱり優しかったよ?)

美希(気付いたらもう、好きになってた)

美希(好きで好きでしょうがないのに、プロデューサーだから)

美希(それなのに、どうして優しくするの?)

美希(……どうして、好きなんて言うの?)

美希(ずっと悩んでた。でも、ハニーは……)

美希(……付き合い始めはあんまり実感なかった)

美希(でも、ハニーもミキのことを好きだってことがわかると、すっごく嬉しくて)

美希(本当に……嬉しくて。もっともっと、好きになってた)

美希(だから、あの記事はショックだった。ハニーと会えなくなるなんて、嫌)

美希(でも、今までだって我慢してきた。これからも我慢すればいい)

美希(そうすれば、また。ハニーとほんの少しだったけど、恋人みたいに過ごす毎日が、戻ってくるんだよね)

美希(だからミキは頑張るの。2年……耐えられるかわからないけど、耐えてみせる)

美希(それでもね……たまに聞きたくなっちゃうんだ、ハニーの言葉)

美希(……ハニーの顔がみたい、ハニーと手をつなぎたい)

美希(それにまだ、ハニーと……恋人らしいこと、何もしてないよ)

美希(だから、ただ頑張るの。メールすれば、電話しちゃうかもしれない。電話すれば、泣き出しちゃうかもしれない)

美希(ミキが泣いてたら……ハニーはそのままで居られる? ちゃんと、お仕事できる?)

美希(ミキだって自信ないから、どんなに辛くても……一人で頑張るんだよ?)

美希「ハニー……」

「……待ってて」

---
P「……待ってる」

律子「結構待ってますよね? 返事なかなか来ないですよね?」

P「あそこはいつもギリギリだから、仕方ないんじゃないか?」

律子「まあそういうことなら」

P「……律子の方は最近大丈夫か?」

律子「え? あ、えぇもうそれは全然!」

P「美希がいなくなって、ちょっとでも楽になるかと思えば、痛手になるとはな」

P「どこまでも予想外だ。やっぱりあいつは、そういうやつだったよ」

律子「……」

P「……律子はどう思う?」

律子「え?」

P「美希の……なんていうんだろう」

律子「……こんなことを聞くのは、その……よくないとは思うんですけど」

律子「プロデューサーと美希は……やっぱり」

P「……16になったら戻ってくる」

律子「……え?」

P「……それだけだ。それだけの関係」

律子「……」

P「……」

律子「……プロデューサー」

P(俺は美希の話をすると、どこか遠い目をしているらしい)

P(そんなに気になるなら連絡を取ればいいじゃないか、なんて言われるがそんなこと出来る訳が無い)

P(俺はただ待っていろと言われたんだ。それも、半ばあいつを追い出す形で)

P(電話して、何て声をかけてやればいい? 待ってるから、それしか言えない)

P(時間はあっという間に過ぎる。一度も美希と連絡を取らないまま)

P(……カレンダーを見ると、そろそろ美希が15になる)

P(一瞬電話でおめでとうと言いたいが、すぐ踏みとどまる)

P(仕事自体も安定してきて、心の余裕もでてきた)

P(最近は心無しか律子と動く事が多くなった)

P(事務所単位で活動する機会が増えた、というのもあると思うが何よりプロデューサーが二人居るといろいろと捗る)

P(そんなとある日の仕事終わり)

律子「おつかれさまです、プロデューサー」

P「お、律子か。お疲れ」

律子「今日はみんな頑張ってくれましたね!」

P「なかなか熱いライブになったな。次はオールスターでバラエティだろ? もう楽しみだよ」

律子「……あの、プロデューサー?」

P「ん? どうかしたか?」

律子「みんな疲れて帰っちゃいましたけど、どうですか少し?」

P「おぉ、確かに。それじゃあ行くとするか」


P「打ち上げって雰囲気でもないよな」

律子「まあ私まだ飲めないですし、時間も時間なのでこのくらいがちょうどいいかと」

P「まあ確かに。それじゃあ俺もソフトドリンクで」

律子「はい! それじゃ改めて、おつかれさまでした!」

P「なんていうか、最近すごく調子がいいよな」

律子「そうですよね。美希が居なくなって、一時はどうなるかと思いましたけど」

P「律子のユニットも結構当たってるらしいじゃないか」

律子「え? あ、いや、あれはプロデューサーの意見も取り入れたおかげ、というか……」

P「そんなことはないさ、ほとんど律子の案だろうし」

律子「またまたそんな! ココまで来れたのは、お世辞抜きでプロデューサーのおかげですって!」

P「その言葉をもらうとしても、俺だけの力ではないと言っておこうかな」

律子「い、いやいや私なんか……」

P「え? あー……うん、いや、律子は十分頑張ってるって」

律子「そんなこと……この前だって……」

P(律子は確かに頑張っている。俺も頑張っている)

P(それでも頑張れているのは、やはり”彼女”の存在が合ってこそなのだが)

P(俺以外の人にとっては、今や過去の人物として、当たり前になってしまってるのかもしれない)

律子「……ちょっと、お聞きしておきたいんですけど」

P「あぁ、うん。なんだ?」

律子「……この前の、美希の件です」

P「美希?」

律子「16に……ってことは、つまり」

P「……それか」

律子「話しづらいことっていうのは、百も承知で!」

P「……すまん、それについてはちょっと話したくない、かな」

律子「……2年、ですよね」

P「え?」

律子「だいたい、2年。美希が日本を発ってからもう半年は過ぎたでしょう?」

P「……そうだな。詳しく言うなら、ほぼ後1年だ」

律子「え? あ……今日はもう、美希の……」

P「……」

律子「……そこまで大事な相手なのに、何の連絡もなしで」

P「仕方ないだろう? 14の少女を何の装備も持たせずに海外へ追いやったのは俺だ」

律子「そ、そんなこと……」

P「……それこそ、美希にとっては遊び、くらいでちょうどよかったのかもしれない」

P「美希の心にかこつけて、真剣だとか、立場は関係ないとかごまかして……」

P「結局は俺が、美希と……いや、辞めにしよう。酒もなしにこんなこと話したってしょうがない」

律子「……」

P「……とにかく、俺は美希とは」

律子「わ、私は!」

P「……律子?」

律子「わ、私は……美希は……」

P「……」

律子「……ホンキだったと、思いますよ」

P「……そうか」

律子「……はい」

P(待つしか選択肢がない俺にとって、美希は俺の何と呼べばいい?)

P(婚約相手だなんて、自惚れにもほどがある。恋人相手とも言わない)

P(もっともらしいのは、元彼女くらいか。しかし、美希によってはこれも叱られかねない)

P(……もう少し昔に話していたら、名残惜しさに涙を流していたかもわからない)

P(あっという間に打ち上げは終わり、二人でカフェを出た)

律子「……ありがとうございました」

P「あぁ、いやこちらこそ。よかったら家まで送ろうか」

律子「あ、でも……」

P「ここからならそう遠くないだろ?」

律子「……はい、それじゃ」

P「うん」

P「俺としては次の……」

律子「……」

P「どちらかと言えば、メインの司会進行に……」

律子「……」

P「……律子?」

律子「え? は、はい!」

P「大丈夫か?」

律子「だ、大丈夫……です」

P「……そうか」

律子「あ、この辺で大丈夫です」

P「ん? もう少し先じゃ」

律子「いいんです! 結構着いてきてもらっちゃったので」

P「いやいやこれくらい。それじゃあまた明日か?」

律子「……は、はい」

P「よし、それじゃ」

律子「……」

P(俺は振り返って歩き出そうとした)

P(視界に金髪の、女の子が見えたような気がした)

P(と、次の瞬間、体に衝撃が……)

---

---
美希「……よし」

美希(こっちに来てから半年、もうちょっと経ったかも)

美希(それなりに海外での生活も楽しいけど……やっぱり)

美希(辛いことがあって、会いたくて会いたくて、どうしようもなかった)

美希(それでも、電話の無い部屋で一人泣いてた)

美希(そういうのと最低限の服を、目一杯詰め込んだバッグと、今日本にいるんだよ?)

美希(……ハニーに会いたい。でも、それだけじゃない)

美希(ただ会いたいわけじゃない、成長した美希を見てもらうの)

美希(それで、できれば……思いっきり甘えたい。抱きしめてもらいたい)

美希(それで、声がかれるくらい泣いて……いつかのように、スッキリしてまた海外に戻るの)

美希(どうして2年経ってないのに戻ってきたんだ! なんて言ったらまたひっぱたいてやるの!)

美希(なんて、まさかないと思うけど……結局は会いたいから。誕生日まで待って、今日帰ってきた)

美希「待っててね、ハニー!!」

美希(なんて叫んだら……すれ違った人をびっくりさせちゃった、ごめんね?)

美希(とりあえずもうこんな時間だし……明日の朝から事務所にお邪魔して挨拶ついでにハニーに会えばいいよね)

美希(それほど荷物も多くないけど、やっぱりかさばるからゆっくり移動して……)

美希(……でもやっぱり、事務所に寄って行こうかな? 景色も懐かしいし、散歩ついでに)

美希(……あれ? もしかしてあれって、ハニー?)

美希(……あはっ、嘘みたい)

美希(そんな、絵本みたいな王子様との再会が、本当に起こるなんて)

美希(……どうしよう、声がでない。まだ半年だよ? 本当は2年だって言ってたのに)

美希(あの背中、見ただけでわかる。声が、頭の中に流れてくる)

美希(でも、でも。ちゃんと、ハニーの声で、”美希”って呼んで欲しい)

美希(だから、後ろからゆっくり近づくの。えへへ、どうせなら驚かせたいでしょ?)

美希(そーっと近づこうとするけど、荷物が邪魔でうまく動けない)

美希(でも、そうやってハニーを追いかけてたら、びっくりしちゃったの)

美希(遠くから見てただけだからよくわからなかったけど、隣にもう一人居る?)

美希(あれは……律子、さん?)

美希(二人で一緒に並んで歩いて……少しだけ、胸がズキッて痛む。でも、それくらい平気)

美希(どうせなら一緒に驚かせちゃおうかな、なんて思ってたら急に立ち止まって)

美希(そっか、ここが律子の家? ハニーは送ってあげてたの!)

美希(だからミキはハニーの真後ろに立って、振り向くのをずっと待ってた!)

美希(それで、やっとハニーがこっちを向いて、目が合ったから思いっきり叫ぼうとしたの)

美希「ハ……!!」


美希(声は最後まででなくて……振り返ったはずのハニーは、もう一度律子さんの方を向いて)

美希(ココからでも見えるくらいのところで。二人は)

美希「……なん、で」

美希(キスをしてた)

美希(まるで時間が止まったみたいに)

美希(体は動かなくて、息ができなくて、目も逸らせなくて)

美希(二人はもう、ずっとずっとキスをしてるように見えて)

美希(気がついたときには、二人が何かを話してた。もちろん聞こえないけど)

美希(聞きたくも、なかったけど。それより、もう何がなんだかわからなくて)

美希(ただただ怖くて。そこにいるのが、本物じゃないって、ずっとつぶやきながら)

美希(やっと動いた体が、なんとかバッグを持って、分けも分からず二人と反対の方向に歩こうとしたとき一瞬)

美希(二人の方を見たとき、律子と、目が合ったような気がして。だからもう、こらえきれなくなって)

美希(必死にそこから遠ざかろうとした。声を殺して、それでも必死に、遠くに遠くに)

美希(……気がついたら、自分の家に着いてた)

美希(何も考えたくなくて、そのままベッドに倒れ込んで)

美希「……夢、だよね」

美希(夢じゃなくて本当なら……美希はどうすればいいんだろう、なんて弱音を吐いたりして)

美希(何もしないで、そのまま眠ってしまったの)

----
P(一瞬、時間が止まった)

P(振り返って、背中にいるはずの律子は、ピントが合わないほど俺の近くにいて)

P(俺はただ立ちすくんだまま、律子からの”コミニュケーション”に応じていた)

P(そして、静かに律子が俺から離れると、泣きそうな声で話を始めた)

律子「……ごめん、なさい」

P「……」

律子「私……」

P「……いや、律子」

律子「……好き、なんです」

P「……」

律子「……私は」

P(全く理解できそうもなかった。でも、微かに感じていたのは、きっとそういうことなんだと)

P(地面にへたりこんで泣き出してしまった律子に、ただ現状を把握したい俺は、慰めより先に質問を優先した)

            { (   , -‐…‐-   .
              >一'         `ヽ、
           , ′                \
             /                      ヽ
          ′ ′    ,k      、      `ヽ
              i     |∧     |_\ k     ',
            i  i|    厶{-\(\{   ∨,ハ   }ハノ
            |/ i|   |/ __{    `  ヽア圷、} }V   ノ}
        /ィ  {人 lk灯 圷ミ     ′ヒッ ハノー=彡 ;
        / 厶イ  ヽ{`弋ッ     , .:.:.: {i }ハ  く┐
      _彡'′rfア   人 :.:.:.           从ノ    从_
 ー=≦-=≦-=ニ人_ 、  ミ=-    c  ー≠ァ /  {/ニニ}  はーあ…やってらんねえの
    { {云==ニ二三ハ_  ー=_,⊇ニ=--=≦ニ=‐ … ‐=ミう厶
      〉'′           ̄              、 ヽ、', \
.   /              _,.  -‐…‐-  .  Y } }ハ_}   ヽ
___廴        _,. -=≠ ´               ヽ }、}_/     人__
   三≧=--=≦三ア´     _  -- ─ ─└'…¬冖  ´
    三三三三ア´     rfニ三三三
     三三と7      ,仁三三
      三三{_{      イ三三
            └{_{ k'′
           └'′

P「……話してくれるか」

律子「……美希の話を聞く前からです」

P「……」

律子「何を言っても……私が悪い事には変わりないんです……」

P「それでもいい、だから説明してくれ」

律子「……プロデューサーが、入ってきた頃から……気になってはいたんです」

律子「それは単純に、どんな人なのか……そういう興味でした。でも」

律子「仕事ができる、信頼の高い人物、それに人当たりもいい……なんて、長所を挙げてもしょうがないんですけど」

律子「ただ……惹かれてた、それだけなんです……」

P「……」

P(改めて流れ出した時間を感じながら、少しずつ……やがてどういうことか理解するところに至った)

P(……結局は、律子も俺と同じ。ただ、その場における関係が複雑だった、というだけで)

P(事を単純に見てしまえば、俺が美希に抱いた感情と、なんら変わりはない……が)

P「……今更、この事についてお前を責めたりはしない」

P「でも、やっぱり俺は……」

律子「分かってます! 分かってたから……だからこそ……」

P「……言い訳も、聞くさ」

律子「言い訳どころじゃ、ないです……でも、少しでもこの言い訳が償いになるなら……」

律子「……結局は、美希がいないうちに……そういう、ことで」

律子「何度も辞めようとしました! でも、でも貴方が……貴方がどんどん優しくなるから……」

P「……」

律子「……もう、こんな機会は、ないって」

律子「美希のことを、どこまで思ってるかなんて結局私にはわからないんです」

律子「どんなに深く聞き出したところで、無駄なのに……そういうのが、重なって……」

律子「もう、今しかない……なんて、馬鹿みたいに焦って……私は」

P「……分かるけど、分からないよ」

律子「……」

P「もし、俺がお前のことを好きなら。もうそれは、喜んで受け取ると思う」

P「……でも、相思相愛じゃないなら、これは難しい」

律子「……分かってます」

P「……今日のことはもう忘れて、帰るんだ」

律子「すみ、ませ……」

P「……」

P(あの痛みを、もしかしたら俺も受けていたのかもしれない)

P(そう思うと、されたことの痛みはそれほどのものじゃなくて)

P(……美希を思えば、それは……美希?)

P(とそのとき、律子が急に目を見開いた)

律子「あ……あぁ……」

P「なんだ、なんだよ律子、なんだよ!!」

P(すぐ振り向けなかったのはどうして?)

P(さっき振り向いた拍子に見えたのは、美希のような何か)

P(もし、もしも。もしも、美希がそこに居たら。そう考えて、初めて先のことに恐怖を覚えた)

P(そのことが本能的に、一瞬にして思考され。体が動かなくなったとしたなら)

P(能動的な思考回路はどう動かせばいい? 美希がいたとして、何と言えばいい? 言えるわけがない)

P「忘れよう、律子。忘れるんだ、帰るんだ!」

P(振り返る間もなく、後ろを見て何か言おうとしている律子にそう強く告げた)

P(律子がいなくなるまで、俺は律子を見守っていた。そうして)

P(完全に誰もいなくなった道を見渡してから深呼吸……勢いをつけながら……ゆっくり後ろを向いた)

P(……そこには、誰も立っていなかった)

これだから誰にでも優しくする男はダメだって言われるんだな

---
P(あの一瞬が、美希にみられていようと、そうでなかろうと)

P(俺にできることなど、結局のところ限られている)

P(……2年。そう、2年だ)

P(耐えた事などないが、2年なら頑張れそうな気がする)

P(もちろん何か根拠があるわけではない。ただ、なんとなく)

P(それは事柄によるだろうし、どういう環境かにもよる)

P(でも……2年なら、と考えてしまうのだが。律子の言うことは、効率的には間違っていない)

P(意中の相手の隣が空いているところを狙う、というのはなんだろうか)

P(うまい例えにならないが、結局のところその人間の意思の強さにゆだねられるわけだ)

P(改めてその事を考え、今の段階で俺は律子に靡く気はない、と反芻する)

P(先のは、言いようも知れぬ恐怖から……なんて言い訳をしても無駄)

P(俺にできることは……ただ待つだけ……だがしかし)

P(仮に美希が……2年後に連絡をしてこなかった場合)

P(……俺は美希を責めることはできない)

P(だからといって……律子に靡く、なんていうのは……違う。反射的に理解できる)

P(……考えればキリがない。それは俺が自ら生んだ結果故)

P(全てを整理するのは、1年後。それからでも遅くない)

P(そのときの美希の意見を尊重する事……俺に出来るのはそれだけだ)

P(……律子も、きっと納得してくれるだろう)

P(俺は待ってるよ、美希)

---

---
美希「ハッピーバースデー、なの」

美希「16、あっという間だった……」

美希(うーん……あれは、ちょうど1年前のことだったかな)

美希(絶対、忘れられない……)

美希(結局、何もせずにこっちに帰ってきちゃったんだっけ……)

美希(律子、さんと……目が合った気がしたから)

美希(もしかしたら……もしかしたら、ハニーから電話がくるかも、なんて信じてたけど)

美希(そんなこと、辞めたんだ)

美希(……絶対待っててくれてるって、信じることにしたの)

美希(その後、なんだったかちゃんと説明してもらうんだ)

美希(……あはっ、でもあの日は眠れなかったなあ)

美希(ただ、律子さんが怖くて。ハニーを、取られちゃうんじゃないか、って)

美希(でもね、それはそうなの。待ってて、だけだなんて調子が良すぎるよね)

美希(ミキがちゃんとしてれば、電話やメールで確かめられるのに)

美希(それをしなくてもハニーなら大丈夫って信じてる)

美希(……信じてるけど、怖いよ)

美希(律子さんと一緒になって欲しい、なんて思わない。ずっとずっと、もしミキがいなくなったとしても)

美希(ただミキのこと、待ってて欲しいって思う。それがわがままだとしても)

美希(だけど……それじゃ、せっかく待ってくれたハニーに申し訳ないから……)

美希(……ついでに、ミキのバースデーに、わがままを一つもらって欲しいな)

美希(そのために1年間、頑張って頑張って、今こうやって元気でいられるんだもん)

美希(……ハニーの口から、聞かせて欲しい)

美希のモテモテなのに一途ってギャップはすごい威力だよな

---

prrrr

P「……はい」

美希「……ミキ、だよ?」

P「……久しぶり」

美希「あはっ、本当……久しぶりなの」

P「……うん」

美希「……」

P「あ、美希。まずは、誕生日おめでとう」

美希「ありがとうなの!」

P「……16、か。早いな」

美希「……うん。そっちはどう?」

P「皆元気にやってる。美希も大丈夫か?」

つまり律子さんがわざと美希とプロデューサーの仲をマスコミにタレ込んで引き裂いた訳か。

美希「ミキだもん、大丈夫」

P「……何か変わったこととか」

美希「……うん」

P「……美希」

美希「……もうすぐしたらね、日本に戻ろうかなって思ってるんだけど」

P「……あぁ」

美希「……その前にね、一つだけ聞いて欲しい事があって」

P「……なんだ?」

美希「……」

P「……」





美希「ハニー、美希結婚するね?」

「美希。2年間待った。お前のわがまま、なんだって聞いてやるつもりだ」

「電話口で早速不安そうな声を聞いて、安心した。俺にだけ見せてくれる、美希だと思った」

「でも、2年経ったら違うのかもな。もう、何がなんだか分からなくなって」

「お前のために待った俺が言う言葉は、なんだろうな。何がいいんだろうな」

「俺がお前のためにしてやれる、最高のバースデープレゼント……」

---

「……ハニーは、2年間待ってくれてたよね。だから、きっと……わがままなんでも聞いてくれるって思う」

「だから、甘えたい。1年前にできなかったこと、全部全部してもらうつもりなの」

「でも、その前にね。やっぱり、気になるから。ハニーの口から、聞かせて欲しいの」

「美希のことを、どこまで思ってくれてるかを、聞かせて?」

「2年間分の想いを全部……美希へのプレゼントとして」

P「……美希」

美希「……」

P「……」

美希「……」





P「おめでとう」




美希「……ハニー」

「疑って欲しいのに……もっと、深く聞いて欲しいのに……」

「もう、どの言葉も出そうになくて……結局もう一度」


美希「ハ、ハニー……美希ね、結婚するんだよ?」


「心の底から、願う。少しくらいイントネーションを変えたって、いいよね?」

「だからお願い……伝わって……!」


P「……あぁ、おめでとう」


「なんで、どうして? 美希のことを……本当に思ってくれてるから?」

「それとも……律子さん……なの?」

「ねぇ……ハニー……」


美希「……それじゃ、切る、ね?」

P「……あぁ。また日本で会うときは、よろしくな」

これはバッドコミュニケーションなのか……?

「……美希が決めたことなら、もう迷わない。それがお前の出した答えなんだろう?」

「俺と律子のことを見て……愛想を尽かしてしまったのか」

「向こうで良い男でも見つけたのか……わからないが」

「……お前のことを、愛しているから。俺はもう、何も言わない」

美希「ハ、ハニー……美希ね、結婚するんだよ?」

「……いいんだ、俺に同情なんてしなくても」

「お前は選ぶ権利がある。何も、迷わなくていい」

「だからせめて、2年待った俺にこれだけは言わせてくれ」

P「……あぁ、おめでとう」

「……日本で旦那さんに、挨拶くらいはしたいな。なんて」

「少し、贅沢かな……」

----

心の中とセリフの「」を使い分けて欲しかった

---

P「……さて」

P「……どうしようか」

P「あはは……」

P「かっこつけたものの……」

P「……辛いな」

P「あー……」

P「……もしかしたら、夢のように」

P「無理矢理引き止めたら……」

P「……あ」

prrrr

P「……もしもし? 律子か? 今、何してた?」

relationsの脳内再生が止まらない

P「すまんな、急に呼び出したりなんかして」

律子「あ、いえ……でも珍しいですね。こんな時間に」

P「……時差がな」

律子「……あ」

P「いや、それはいいんだ。というか、久しぶりだな」

律子「……」

P「……気にしなくていい。別に、お前がやったことは……褒められることではないが、咎めるほどのものではない」

P「……俺たちのことを一番見てくれてた、そういうやつだってこと、ちゃんとわかってる」

律子「……あの一件は」

P「帳消しだ。大丈夫、あれ以来何も起こさずに今日までやってきたじゃないか」

律子「……それこそ、ひたすら誘惑したり、裏から手を回したりする勇気があればいいんですけど」

律子「全部中途半端で……今日も来るかどうか、結構悩んだんですよ?」

P「そういうところだよ律子。重く考えすぎなくていい。好きな人と食事ってだけで、出かける理由にはなるだろ?」

律子「……場合が、場合で」

P「まあまあ気にするな。今日は俺のおごりだ」

律子「……何か、合ったんですか? それこそ、美希のこととか……」

P「ん? あーいや別に?」

律子「そう、ですか……」

P「ただちょっと、今日は律子に言いたいことがあってきた」

律子「私にですか? 一体何を?」







P「結婚を前提に、付き合ってくれないか?」

律子「……え?」

P「……まあそのうち詳しく話す予定だったが、どうやら美希に振られたみたいなんだ」

P「すごく調子のいい話なんだが……少しずつ、距離を縮めていければと思ってる」

P「……どうだろうか」

律子「……」

P「……やっぱり、調子が良すぎるか」

律子「……それは、嬉しいですよ?」

律子「ただ……美希の話を……」

P「あぁ……うん、わかった。話すよ」


律子「……」

P「……こんな感じだ」

律子「……わかりました」

P「……」

律子「私の方こそ、よろしくお願いします」

P「本当か?」

律子「ただ。条件がありますよ」

P「え?」

律子「……盗人猛々しい、と言われればそれまでですが」

律子「結婚式に、美希を呼ばないと約束してもらえますか?」

P「……」

律子「プロデューサー?」

P「……わかった」

律子「それじゃ……よろしくお願いします」

律子「……でもですね、私はもうずっと前から好意を持ってたんです」

律子「……プロデューサーが良ければ、今月中にでも結婚式を挙げませんか?」

P「……別に構わないさ」

私のものにならなくていい

側にいるだけでいい

あの子(律子)にもしも飽きたら

すぐに呼び出して

壊れるくらいに抱きしめて

---

美希(ハニーはきっと……ミキのことを思ってくれた)

美希(だから、ミキのことを……何も言わずに受け入れてくれた……でも)

美希「そんな優しさ……いらないの」

美希「ハニーは、優しすぎるの……」

美希「最高で、最悪の……バースデー……なの」

美希(……それなら、まだいいの)

美希(律子、さんと……付き合ってて)

美希(ミキの嘘が、ちょうどよくて……)

美希(……もう、仕方ないよね)

美希(……これはミキが決めた事。それに、ハニーが決めた事)

美希(まずは、日本に帰らなくちゃ……)

美希「……あれ? ハニーから……メール?」

美希「……」



美希「……明日、結婚式?」


美希「……あはっ」


美希「ハニー……」





美希「……おめでとう」

---

それでもきっと、
アイマスなら……!
この展開からパーフェクトコミュニケーションに………!

         \       /   _/_
           |  |    /     /  i ヽ  ⌒ヽ
         | ̄| ̄|\  / \_,ノ   | ̄|\     `ー‐' ̄``ー ~ ~
          ̄             ̄

  _|_ヽ _|_i_  __|_  \    _/_   _|_  |   i _/_   /  ̄/ ̄|
  _|_   |  !  〉 ┌┤   _|  |   / _i ヽ   |    |   |  / _i ヽ |  /   |
.  |_|  〉  |     └┤   ,|_| ̄|\  |_|\  |___  └  」  .|_|\ L_/   /
                                ヽ | /

                                 ○

                                 (    r、r、 _ ミヽ
                            ,-'フ ̄  )  ._ } } ノ )┐
               ___         { 〈 -‐"⌒ヽ、 `ヽ ヽ   ノ
            / ̄      ̄`ヽ 、__,, -''"       ヽゞ {__  ノ
          /             /      八    ヘ  | |
.         /              ,i    ハ_/ ヽ ∟__ i .ノ /
         /               ノ_  |几i   Vヽハ-ゝ./
       /  /     |     / ノ 厂J '´ ̄   `ヽ|」/

    __ノ          |     /  ̄フ_lゑ ____匸Z_从   ┼_   ゝ   ヽ
  /─'"⌒ ̄`ー- 、__  __ノ   イ i i iヽ/ x  )    `,^   (又 ) / 、_)ヽ つ
  〉──‐'⌒ ̄ ̄`ー-─ =ー-、_∠⊥─┴ゝ─-─-─‐┴-─- 、

  ゝ                                     _)
    ̄¨¨`ー-──-─-─-─-─-─-─-─-─-──‐'''''''""" ̄

---

美希「……綺麗な音」

美希「確か……この辺で」



P「……」

美希「……ハ」

P「ん? ……え?」

美希「……」

P「……美希、美希……なのか?」

美希「……そこの人!」

P「……え?」

美希「ミキはね、星井美希って言うの! ダンスや歌、いろいろできちゃうよ?」

P「……」

律子「計画通り……!」

律子「……あ、プロデューサーこんなと……」

美希「……律子、さん」

律子「美希……」

美希「……えへへ、律子さん綺麗だよ?」

律子「……」

美希「ハ……そこの人もすっごくかっこいいし、お似合いのカップルって感じかな!」

P「……」

美希「あ、カップルじゃなくてもう結婚するから……夫婦? うらやましいの!」

美希「でもね、ミキももう少ししたら……マイハニーと結婚するから……余計楽しみになってきたかな!」

律子「美、希……」

美希「……えっと、二人はどうしたの? 式は?」

P「いや、そろそろなはずだが……」

美希「よかった、間に合ったんだね? 二人の一番綺麗なところ、見逃すところだったの!」

律子「あぐ……ぐすっ……」

美希「特に、誓いのキスを、する、ところ……なんて……ね!」

P「……」

美希「……律子、さん」

律子「み、き……」

美希「……なんで泣いてるの?」

律子「わた、し……」

美希「……今までさんをつけなかったりしてたの、覚えてる?」

律子「……え?」

美希「……だからね、きっとその”さん”の分……2年、生まれてくるのが遅かったの」

美希「だから、仕方ないの!」

美希は優しい子やで……

律子「違うの……美希……」

美希「もー、あんまり弱気なこと言ってると……取っちゃうよ?」

律子「……」

美希「なーんて、冗談なの! ミキにだって、ちゃんとハニーがいるからね!」

律子「……」

美希「……ねぇ、そこの人」

P「……」

美希「ミキはね、2年間いろんな事情でキラキラできなかったの」

美希「頑張ってキラキラしようとしたけど、やっぱり何かが足りなくてできなかったの!」

美希「だから、今度は二人で一緒に、ミキのことキラキラさせて欲しい、って思うな!」

P「美希……」

美希「……それで美希は、幸せだから!」

私のものにならなくていい……

律子「……もう、いいでしょう……プロデューサー」

P「……え?」

律子「……美希も」

美希「え?」

律子「……もう嫌になっちゃうわよね」

律子「そんなに……明るく振る舞われるなんて思っても見なかったわ……」

P「り、律子?」

律子「……なんていう、悪役はやっぱり私には似合わないのよ」

律子「それに、こんな重苦しいウェディングドレスなんて……いらない!」

バサッ


美希「り、律子……さん?」

律子「……ごめんなさい、美希。私は貴方を、騙してた」

お!

律子「騙してた……というか、試してたというか……」

P「り、律子……?」

律子「……プロデューサーから聞いて、分かったの。そんなやり取りで、二人が別れるなんて」

律子「だからプロデューサーを試した。それも、すぐ分かっちゃったけど」

P「な、何がなんだか……」

律子「……プロデューサーは、私のことを……気遣ってくれてたんです」

P「……え?」

律子「電話の後すぐに私に連絡をくれましたよね?」

律子「……同じ痛みを味わって欲しくないから。きっとそれを無意識のうちに」

律子「……貴方は優しすぎるんですよ」

P「そ、そんなことは!!」

律子「なら考えもなしに今まで付き合ったこともない人間と結婚の約束なんて結べますか?」

律子「あれは失恋の八つ当たりではなくて、きっと……プロデューサーの優しさだったんですよ」

律子「だからこそ、あんな無意味な条件も取り付けて」

P「……美希に、と」

律子「プロデューサーのことです、私のことを思って、と美希への想いを封印するでしょう」

律子「逆に本気で私のことを想ってくれているなら、美希へ連絡するはずですから。自慢というか、なんというか」

律子「……そして、美希に連絡をしたのは私」

美希「律子さん……が?」

律子「あぁもう……美希がプロデューサーに未練を抱いてるうんぬんの説明はありますけど、もういいんです!」

P「……」

美希「……律子、さん」

律子「……2年ぶりの再会ですよ? まだ、”ハニー”とは会えて無いでしょう?」

美希「!!!」

P「……美希」

美希「……ハ」

P「……こんな俺をハニーと呼んでくれるのか?」

美希「……ハニ」

P「一度はお前を……他の男に許した俺を、許してくれるのか?」

美希「ハニー……」

P「……美希」

美希「……」

P「……まだ俺のことを、愛してくれているか」

美希「当たり前なの……当たり前なの!!!」

美希「ずっとずっと、会いたかった!!」

美希「ハニーと、ハニーと会いたかったの!!」

P「あ、あぁ……」

美希「ハニー!! うわあああああああん!!

P「美希……美希っ……!」

律子「……落ち着いた?」

美希「……うん」

律子「はい、でしょ?」

美希「こんなときくらい、うんでもいいの……」

律子「全くもう……さっきはさんとかなんとか言ってたくせに」

P「……律子、その」

律子「私のことは良いんですよ! で、何か忘れてません?」

P「……あ」

律子「困ったわね……新婦が居なくなっちゃったわ……」

P「……お前はとんでもないことを考えつく。美希がこなかったら……」

律子「さぁ? とにかく、もう時間ないですよ?」

P「……だ、そうだ」

美希「え……?」

P(……俺の気がつかないところでいろんなものが動いていた)

P(危うく俺は、いくつか大切なものを失うところだったのだろう)

P(それでも……こうして優秀な仕事仲間、恋人に恵まれたからこそ……今こうして)

P(って、今はそれどころじゃないよな。バースデーには、的外れなものをプレゼントしたことだし)

P「……美希」

美希「なぁに、ハニー?」

P「俺は今、すっごく幸せなんだ。変か?」

美希「ううん、だってミキもすっごく幸せなんだ」

P(さっきまではまるで修羅場で、今だに涙の跡は残ってるけど)

P(……律子のことも、あるけれど。もう今の俺には、今のこの瞬間の幸せを噛み締めることしかできなさそうだ)

美希「……ハニー?」

P「どうした?」

美希「……美希、結婚するけど、いい?」

P「……相手によるな」

美希「ハニーと、だよ?」

P「誰か、ミキの口から言って欲しい」

美希「……ハニーは、ハニーなの!!!」

P(そんなミキの叫び声を塞ぐようにして)

P(いつしかし損ねた、俺と美希の初めての触れ合いを)

P(少し困惑している客の目の前で、容赦なく披露していた)

P(……とんでもない結婚式はあっという間に過ぎ去って、美希は着替えに行った)

P「……おっと、律子」

律子「……プロデューサー」

P「……なんというか、謝っても謝っても」

律子「そんなこと。元はと言えば私が悪かったんですから」

P「……親御さんだって来てたんだろう?」

律子「えぇそれはもう。後でなんて言い訳しようか、なんて考えてたところです」

P「……」

律子「いいんです、身から出た錆ですから」

律子「……プロデューサーが美希を想い続ける限り、私は引く。そう決めてたんです」

律子「それでも一度手を染めてしまったら、誰かが傷つくしか方法はないんですよ」

P「……」

律子「言い訳臭くなっちゃいますけどね! 私は……とりあえず満足です。これは、本当で」

P「……律子」

律子「……でもですね、諦めてませんよ?」

P「……え?」

律子「最初の美希じゃないですけど、油断してたら取っちゃいますから」

P「な、何がだよ……」

律子「だから、その優しさにつけこんで今度こそは……みたいな」

P「もう勘弁してくれないか……」

律子「あはは、冗談です。って言いたいんですけど。まあ、それは置いときましょう」

律子「……とりあえずは、美希と幸せになってください。話はそれからです」

P「……それはもう、言われなくても。今の俺にできる、唯一の事だと想ってる」

律子「まあそうでしょうね。美希だから許してくれた、ってのもあると想いますけど」

P「……うん」

律子「それじゃ、私は帰ります。今日は一人で帰りますから」

P「あ、そうか。気をつけて」

律子「……ありがとうございました、プロデューサー」

美希「……律子、さんは?」

P「あぁ、今帰ったよ」

美希「ふーん……」

P「……何か言いたかったか?」

美希「……そりゃあ、あるの」

P「……何を言っても、無駄な感じがする。って言うのは、俺のせいなんだが」

美希「ミキも考えただけじゃよくわかんないからもう、忘れることにしたの」

P「……それはそれでどうなんだろうと」

美希「でも、それくらいハニーと結ばれたことが嬉しいの」

P「……うん」

美希「今はそれでいいよ」

P「……美希がそういうなら、そうなんだろう」

P(倫理的な観点で話を進めたとして、それを裁判にかけられたら俺は負けるだろう)

P(ただ、事が進んでしまった場合において、それはどうしようもないケースというのが存在する)

P(ならもう、過去を忘れるしか手段はないのだろうか)

P(何かしらの方法で、償いをした方がいいのだろうか)

P(結局のところ、俺には答えが出せそうもない)

P(だから、一番楽な方法に落ち着く。弱い人間だ、自分でもそう想う)

P(でも、何かつまずいたときに、また考えればいい)

P(考えに考えるのは多分もう一生分味わったと想うから)

P(それまではただ、この本能的な愛を貪って暮らすことにする)

P(……夢で終わった方が、気持ちは晴れるかもしれない。でも、これが夢であって欲しいとは思わない)

P(幸せって何か結局分からないまま、俺たちは幸せに過ごす)

P(そういうのが一番人間らしくて……一番ベタな話なのかもしれない)

保守thx
おやすみ!

おつー!

律子をdisってるわけではないってのは一つ

美希を諦めたってところの解釈について弁解というか
”諦めた”わけではなくて、ただ美希の気持ちを尊重した、という
天秤にかけた末、自分がダメだと引き止める事より相手を尊重すべきだと感じた
その上でPが屑だというなら仕方ないけど……読んでる方とはやっぱり感覚が違ってくるのか

それは分かったんだけど
結局一度も会わず即律子の方へ行ったのが反発くらったんじゃなかろうか

尊重するのはいいけど律子の方に行くのは違うだろ
>>203でも似たようなことPが言ってるし

>>389
なるほど……
気持ち的には、尊重したは良いが振られたような感じでがっくりきて
その痛みが律子の時とリンクしちゃって、振った事に対して申し訳なさを感じ、すぐに連絡を取った
連絡を取っちゃったからもう美希のことは眼中になくてシャットアウト、みたいな感じだ
自分で動けないダメPというのは否定しないけどね

>>392で分かった
かと言ってその前で律子に折れててもあれだし結局屑Pか…

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