春香「君のためのラブソング」 (24)

千早「僕は知ってるよ♪ ちゃんと見てるよ♪」

千早「頑張ってる君のこと~♪」

ガチャッ

春香「ただいま~、ってあれ? 千早ちゃんだけ?」

千早「は、春香っ!?」

春香「ど、どうしたのそんなに驚いて」

千早「な、なんでもないわ…… そうね、音無さんは出かけてるから今は私一人ね」

春香「そうなんだ~」


千早(さっき歌ってたの聞かれてなかったかしら……)ドキドキ

春香「千早ちゃん次の仕事まで時間開くの?」

千早「そうね、少しだけ」

春香「それじゃあ一緒にお昼食べない?」

千早「いいわね、何食べたい?」

春香「んー? 千早ちゃんは?」

千早「私は春香と一緒でいいわ」

春香「えー? それは責任重大だなぁ」

千早「フフッ、そんなに重く考えなくてもいいわよ」

春香「んー……」

春香「ねぇ千早ちゃん?」

千早「なに?」

春香「さっき一人で歌ってたでしょ」

千早「きっ、気づいてたの!?」

春香「外まで聞こえてたよ」

千早「っ///」

春香「あー、千早ちゃん照れてるー!」

千早「気づいてたのなら先に言ってよ! 不意打ちは卑怯よ…///」

春香「ごめんごめん」

千早「で、お昼ご飯はどうするのよ」

春香「じゃあカツ丼で!」

千早「はいはい、じゃあ電話してくるわね」

春香「……あ、待って! カロリーがっ」

千早「あ、もしもし カツ丼二人前お願いします」

春香「手遅れだったか……」

春香「しょうがない! 今日のレッスンはいつもより頑張るぞ!!」

千早「いい心がけね」

春香「この出前が届くまでの時間ってなんだか落ち着かないよね」

千早「そうね」

春香「……」

千早「……」

春香「当たり前と言うけど♪ 当たり前じゃない♪ 頑張ってる君のこと~♪」

千早「や、やめてよもうっ///」

春香「なんでー? これ私の持ち歌だよー」

千早「もちろん知ってるわよ! さっきのは忘れてくれないかしらっ?///」

春香「えー? どうしよっかなー」

春香「じゃあね、なんでこの曲を歌ってたか教えて?」

千早「それは……」

千早「好きだからよ」

春香「えっ?」

千早「この曲が」

春香「あ、うん、この曲が、この曲がね……」

千早「春香の歌うこの曲が」

春香「私の…歌う……?」

千早「そうよ」

千早「この曲を聞くと頑張ろう、って気持ちになれるの」

千早「春香がいてくれるから頑張れるのよ」

春香「千早ちゃん・・・・・」

千早「って、何言ってるんだろ私///」

春香「とっても嬉しいよ千早ちゃん!」

千早「そ、そうかしら?」

春香「それに、私の想いはちゃんと届いてたんだなぁって」

千早「春香の…想い……?」

春香「あのね、この曲を歌うときいっつも千早ちゃんのこと考えながら歌ってたんだぁ」

春香「私の中ではこの曲は『千早ちゃんのためのラブソング』なんだよ!」

千早「私の…ための……」

春香「私は千早ちゃんがいちばん頑張ってること知ってるんだ!」

千早「そんなことないわ、春香だって、事務所の皆だって頑張ってるわよ」

春香「えへへ、ありがと///」

春香「でもね、違うの」

春香「千早ちゃんってホントは寂しがり屋のくせに独りで抱え込んでさ、何もない、大丈夫だって顔して澄ましてるでしょ」

千早「そうかしら……」

春香「そうだよ、ずっと千早ちゃんのこと見てたからわかるの」

千早「ず、ずっと?///」

春香「そう、ずっと」

春香「だからそんな千早ちゃんは誰かにもっと褒めてもらうべきだと思うんだ」

春香「だから……」

春香「世界でいちばん頑張ってる君に」

『この広い世界で君に会えたなんて』

『奇跡だと思うのさ』

『ずっと大切にしたいから―――』


春香「千早ちゃんのためのラブソング」

千早「春香……」

春香「千早ちゃん……」

千早「ありがとう、ほんとうに…… 心が軽くなった気がするわ……」

春香「ねぇ、千早ちゃん?」

千早「なに?春香?」

「私ね、千早ちゃんのことが―――」

コンコン

「カツ丼二丁お持ちしましたァーーー!!」

春香「すふぇあぁ!?!?」ビックゥッ

千早「っ!?」ビクッッ

春香「あ、カツ丼! カツ丼ね!!」

千早「そうだった、カツ丼、カツ丼……」

春香「今行きまーーっす!」

千早(な、なんだかホッとしたようながっかりしたような……)

千早(でも、焦る必要はないのかもしれない)

千早(おばあちゃんになっても)

千早(守ってくれるのでしょう?)クスッ


千早「私だって、知ってるから、ちゃんと見てるから」


春香「千早ちゃーん! ちょっときてーー!」

千早「はいはい」


千早「私だって春香のこと――」



終わり

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