キャラバン「(ハイエースなんかに負けないんだから!)」 (46)

キャラバン「(そうよ、私の方がパワーあるし、燃費もいいし、オートマも1段多いし)」

キャラバン「(なにより、私の方が断然カッコいいじゃない!)」

キャラバン「(とは言ったものの、全然お客さんこないなぁ・・・)」

営業「ああ、暇だなぁ・・・お客さん来ないかなぁ・・・」

キャラバン「(営業さんもいつもこんな感じだし、私いつ売れるんだろ)」

ウィーン

キャラバン「(あ、お客さんきた!営業さん!お客さんだよ!)」

男「・・・・・・」

営業「このままだとまた転勤かなぁ・・・転勤やだなぁ・・・」

男「・・・、あの・・・」

営業「次はどこかなぁ、九州?北海道?まさか、外国なんてことは・・・」

男「あの!」

営業「うひゃあいっ!?あっ、い、いらっしゃいませ!」

キャラバン「(ダメだこりゃ)」

営業「ネンピガー、エコカーゲンゼイガー、」

キャラバン「(いつもマニュアル通りの接客ねぇ、あそこまでいくと感心しちゃう)」

キャラバン「(ところであの人、何を買うんだろ?)」

営業「こちらが、荷室になります」

バコッ

キャラバン「(うひゃあっ!?ま、まさか私!?)」

男「ふむふむ・・・」

キャラバン「(じっくり見られてる・・・が、がんばれ私!)」

営業「・・・ということで、総額がこのくらいに・・・」

男「なるほど」

キャラバン「(ふぅ・・・やっと終わった。)」

営業「それで、この条件ですと、先ほどの展示車と全く同じになるんですよ」

男「あ、はい」

営業「もしこの展示車で良ければ、先ほどの総額からこれほど引かせていただいて・・・」

キャラバン「(も、もしかしてこの人が私のご主人様に?)」

男「じゃあ、それでお願いします」

営業「ありがとうございます!それでは手続きが・・・」

キャラバン「(やった!売れ残って中古車センター行きを免れた!良かった!)」

キャラバン「(あれからもう半年、ご主人様といえば、通勤と近所の買い物ぐらいしか私を使ってくれない)」

キャラバン「(もっといっぱい荷物を積むことができるのに、人も乗せられるのに)」

キャラバン「(私である必要あったのかなぁ?ノート君やマーチちゃんでも十分だったんじゃ)」

男「・・・」

ガチャッ、バタン キュルルッ クワッカカカカカギュルオン!ガラガラガラガラ・・・

キャラバン「(今日も近所のスーパーに買い物かな?やりがいのない仕事だけど、頑張んなきゃ)」

キャラバン「(あれ、スーパー過ぎちゃった。今日は遠出するのかな?)」

プルルル プルルル ピッ

男「あ、もしもし、はい、あ、もう集まってます?あ、はい。今向かってます」

キャラバン「(ご主人様、運転中の電話はあぶないよ!違反だよ!)」

男「少し、急ぐか」

グオオオオオオッ

キャラバン「(誰かと待ち合わせ・・・さっきの感じだと彼女とかじゃないよね)」

キャラバン「(人いっぱい乗せるかな?荷物いっぱい載せるかな?)」

キャラバン「(ここは・・・駅?)」

友人A「ナンバー○○-○○のキャラバン・・・これかな。」

男「あ、どうも。えーと・・・」

友人A「はい、自分がAです」

友人B「お初ッス、Bッス」

友人C「Cです。今日はよろしくお願いしますね・・・デュフッ」

キャラバン「(ご主人様のお友達?なんだか・・・個性的な人たち)」

キャラバン「(お友達、っていう割には初対面な感じよね)」

男「それで、Aさん、現場は・・・」

A「まずは高速で○○インターまで」

キャラバン「(高速!初めてだけど、頑張らなきゃ!)」

キャラバン「(現場、って言ってたけど、引っ越しのお手伝いでもするのかな?)」

B「楽しみッス。楽しみッスねぇ」

C「フヒヒ、テンションメガMAXでござる」

キャラバン「(・・・、ホント、個性的)」

男「このあたりですか・・・」

A「はい、予定の時刻まであと1時間ほどでしょうか」

キャラバン「(何もない山奥ね。こんなところで何するんだろ)」

B「停まってるとマズイッスよ。目立つッスよ」

C「それは言えますなぁ」

男「じゃあ、周辺探索がてら少し流しましょう」

キャラバン「(私のナビでもこのあたりにお店とかはないし、走ってもつまらないと思うけどな)」

A「そろそろ、予定の時刻です」

B「緊張してきたッスねぇ・・・」

C「シミュレート通りやるだけでござる。怖気づいたでござるか?」

B「武者震いッスよ。武者震い」

男「あ、きた!あの子ですか!?」

A「はい、そうです!」

男「よしッ!行くぞッ!!!」

グオオオオオオオオオオ!!!!!!!!

キャラバン「(ちょっと、こんな加速したら燃費が悪くなるよ!)」

キャラバン「(危ない!女の子にぶつかる!もっと右に・・・)」

A「今です!」

ガラガラッ!

キャラバン「(ひゃあっ!?走行中にドア開けたらだめだって!警告を表示しないと・・・)」

B&C「うりゃあっ!」

少女「ひっ!?きゃああああああああああああっ!!!!!」

キャラバン「(えっ!?これって、もしかして誘拐!?だめだよご主人様!)」

キャラバン「(誘拐って、すごく効率悪いんだよ!?やるなら現金輸送車を襲ったほうが・・・)」

キャラバン「(じゃなくって!悪いことしたらダメだって!このまま警察に・・・)」

A「周囲確認!周りに人目はありません!」

男「よし・・・よし!やった!」

少女「むぐーっ!むぐぐーっっ!!!」

B「怖がる必要ないッスよー、俺たちチョー優しいッスからねー」

C「も、もうたまらん!こっ、このまま・・・」

A「いけません!地点移動するまでお預けです!」

キャラバン「(さらに人気のない山奥に来ちゃった・・・)」

A「じゃあ、カメラを設置してください」

キャラバン「(カメラ・・・?家族の人にビデオを送りつけて身代金を要求するのかな・・・)」

B「こんなもんスかねぇ」

C「バッチグーでござりまするな」

男「では、そろそろ」

少女「やだ・・・おじさんたち、だれ?何するの?」

男「ふふっ、可愛いなぁ・・・」

少女「う、うちはお金ないよ!おうちに帰して!」

C「フシュルル・・・も、もう辛抱たまりませぬ!」

少女「ひっ!きゃああああ!いやあああああ!!!」

キャラバン「(違う!誘拐じゃない!こ、これってまさか!)」

少女「ひぎゃあ!!!痛い!いたーいいい!!!!」

キャラバン「(信じられない!こんな、小さな子に!)」

キャラバン「(もう見てられない・・・!)」

少女「う・・・あ・・・」

男「ふぅ・・・」

A「さて、お嬢ちゃん、ここでお別れだ。いいね?君は悪い夢を見ただけだ」

少女「ひっ、ぐすっ、えぐっ、」

B「だれにも喋っちゃダメッスよ~」

C「誰かに話したらまた君に会いに来ちゃうよ~、フヒヒッ」

少女「は、はい・・・」

男「じゃあ、さっきの場所まで連れてってあげよう」

キャラバン「(私が買われてからそろそろ2年)」

キャラバン「(ご主人様はあれからまた何度か・・・その・・・悪いことを繰り返した)」

キャラバン「(私、悪いことをする為に作られたのかな・・・)」

男「あ、はい。またいつもの駅で」

キャラバン「(また悪いことするんだね、ご主人様)」

男「さて、と。時間通りに着いたぞ・・・あれ?皆は?」

警官「君、ちょっといいかね?」

男「うわっ!?なっ、なっ!?」

警官「そんなに驚かなくてもいいだろう。今、時間いいかね?」

男「いやっ、ちょっと、急いでるもので」

警官「・・・単刀直入に聞こう。この写真の男たちに見覚えはあるかね」

キャラバン「(あ・・・あれは、いつも悪いことをしてるご主人様のお友達・・・!)」

男「いえっ!そんな奴らに見覚えはないです!これで失礼します!」

警官「君、すまんが免許証の提示と・・・、あと車のナンバーを控えさせてくれ」

男「ええい、くそっ!」

ガチャッ バタン! グオオオオオオオ

警官「あっ、待ちなさい!君!」

キャラバン「(に、逃げちゃった・・・)」

男「くそっ、くそっ!みんな捕まっちまったのか!?」

キャラバン「(ご主人様も早く自首しようよ・・・)」

パトカー「前方の車!停止しなさい!」

男「逃げてやる!どこまでも!」

グオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

キャラバン「(くっ!こんなスピード出したの初めて・・・!)」

キャラバン「(ここは・・・初めて悪いことした山の中・・・)」

男「はあっはあっ、こ、ここまで逃げればなんとか・・・」

ファン ファン ファン ファン

男「ちくしょう!まだ追ってきやがる!」

パトカー「前方の車!ただちに停止しなさい!」

男「くそったれ!」

グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!

キャラバン「(このスピードじゃ、曲がりきれない!!!!!)」

シュパァッ!

男「うわあああああ!!!落ちる!!!!!」

キャラバン「(ご主人様を守らなきゃ・・・!)」

ボブン!

男「うぷっ!」

グシャッ

キャラバン「(ん・・・ご主人様は・・・?)」

男「うぐ・・・あ・・・」

キャラバン「(良かった、無事みたい・・・)」

キャラバン「(私はもう、だめだろうな)」

キャラバン「(たぶん、直すより新しく買ったほうが安上がりになっちゃう)」

キャラバン「(でも、最後に思いっきり走ることができて楽しかったな)」

キャラバン「(生まれ変わったら、今度は優しいご主人様の所に・・・)」

キャラバン「(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)」

捜査部長「主犯格の男の容体は安定、回復次第取り調べを行い・・・」

後輩刑事「いやー、なんかすごい事件でしたね」

先輩刑事「ん?おお、そうだな」

後輩刑事「先輩、鑑識の人から面白い話を聞いたんですよ」

先輩刑事「ほー、どんな」

後輩刑事「いや、ホシが使ってたキャラバンあるじゃないですか。
     あれなんですけど、地面に衝突する前にエアバックが作動してたんですって」

先輩刑事「ホントか?日産にそんな新しい技術があったかな」

後輩刑事「いや、よくわかんないですけど、ちょうどそのタイミングで誤作動したとか」

先輩刑事「ははっ、そりゃ出来過ぎた話だ」

後輩刑事「でもそのおかげで被疑者死亡で書類送検。なんてことにならずに済んだわけですよ」

先輩刑事「そりゃあキャラバンに感謝しないとなぁ。またマスコミに叩かれる所だ」

キャラバン「(うーん・・・ここは天国?それとも・・・)」

アトラス「(よう、目が覚めたか)」

キャラバン「(あ、あなたは・・・アトラスさん?)」

バネット「(おはよう、お姉ちゃん)」

キャラバン「(バネットちゃん・・・)」

バネット「(お姉ちゃん、すごいボロボロだったけど、直って良かったね!)」

キャラバン「(そうだった。私・・・)」

アトラス「(そうか、そんなことがあったか・・・)」

キャラバン「(はい。私、私・・・)」

アトラス「(お前に罪はない。我々車に限らず、道具の運命はみな使う人間に左右されるものだ)」

バネット「(でも、大変な目にあったね・・・)」

キャラバン「(ところで、ここは?)」

アトラス「(日産直営の中古車ディーラーだ)」

キャラバン「(中古車・・・私、また走れるの?)」

アトラス「(まぁ、お前はその・・・いわくつきだからな。その分安く売られるが)」

バネット「(でも、その分買い手はつくと思うよ!)」

キャラバン「(そうね・・・)」

アトラス「(向かいにある建物が見えるか?)」

キャラバン「(あれは・・・トヨタの中古車ディーラー・・・!あの車は!)」

アトラス「(あれはお前の宿敵、ハイエースだったな。俺の宿敵ダイナもあそこにいる)」

バネット「(私の敵、タウンエースもあそこだよ!)」

キャラバン「(絶対に、ハイエースには負けられない!)」

~FIN~

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年09月24日 (土) 21:37:21   ID: 19s2Pnom

日本の中古車査定基準だと
犯/罪に使われた車と自/サツ車の査定価格は
本来の価格の10分の1まで下がってしまう。
ましてやこのキャラバンは大クラッシュもやってるから
現実なら解体されてしまうか、外人バイヤーに部品扱いで
ドナドナされてどこぞの途上国でやっつけ修復され
数百万kmに渡ってギタギタに酷使されるか位の未来しか残って無い。

2 :  SS好きの774さん   2016年12月29日 (木) 23:43:58   ID: VmrwWj5W

現実がそうだからこそ、このキャラバンには救いがあっていい。そう思った

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