八神和麻「学園都市?」 (348)

初SSです
時間軸は当麻くんが記憶を失う少し前

更新不定期な上にいろいろ至らない点はありますがよろしくお願いします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1391302711

時期は八月の初め。
世間一般の学生は夏休みに入った所だろう。

現代最強の風術師・八神和麻は神凪家当主・神凪重悟からの連絡を受け、神凪本家に呼び出されていた。

重悟「そこの理事長殿から依頼が来ていてな
とある生徒に接触してほしいとの事だ」

和麻「それでなんで俺が?
そこらの分家の奴等でも適当に放り込みゃいいだろう」

厳馬「お前を名指しとのことだ」

和麻「ずいぶんと有名になっちまったもんだ」

横に控えていた実の父、神凪厳馬の発言に軽口で答える。

重悟「行ってくれるか?和麻」

和麻「まぁ名指しなら仕方ないな」

重悟「助かる
それと、綾乃はおいていってもらえるか?」

和麻「まぁそれは構わんが」

厳馬「明日の17時に学園都市の前で担当の者に詳しい話を聞け
その他諸々の雑事もあるそうだが、くれぐれも・・・」

和麻「わかったわかった適当にやるから任せとけ」

そう言って父の小言を遮ると縁側から飛び立ってしまった。



和麻がいなくなったことを確認し、厳馬は重く口を開く。

厳馬「学園都市といえば黒い噂が絶えないと聞き及んでおります・・・
今回の依頼、ただで済むとは思えないのですが」

重悟「であったとしても、和麻ならうまくやるであろう
そう判断したからこそこの話を和麻に通した
そうであろう?」

厳馬「出過ぎた物言い、失礼しました」

重悟「さて、わしらもそろそろ準備しようかのう
会合の時間も迫っておるしな」

厳馬「はっ!」

定期的にある神凪家の会合。
今日もいつも通りただの茶飲み話で終わるであろう。

重悟(和麻がいないことで綾乃が駄々をこねなければいいが・・・)

それだけが重悟の気がかりであった。

次の日


和麻「さて、よくよく考えればずいぶん急な話だが・・・」

などとぼやきながら学園都市のゲートの前まで向かうと、緑のジャージを着た長身の美女がこちらに手をふってきた。

黄泉川「あんたが八神和麻じゃん?」

和麻「そうだが、あんたが担当の?」

黄泉川「黄泉川愛穂じゃん
今回は警備員の仕事よろしく頼むじゃんよ」

和麻「・・・ハァ!?」

全く聞いていない話かとも思ったが、去り際に厳馬が『諸々の雑事も』と言っていたことを思い出してしまう。

和麻「・・・俺は違う話を聞いていたはずなんだが?」

メインの仕事を終わらせて帰ろう。
聞いていなかったことにすればいい。
そんなことを考えての発言だったが・・・。

黄泉川「それについては中で統括理事会に直接聞くじゃん
いやー最近スキルアウトが活発すぎて人手が足りないから助かるじゃん」

そう言って肩をバシバシ叩くと有無を言わせずにゲートへ歩いていく黄泉川。

和麻「・・・クッソ」

小さくそう呟くとおとなしくついていく和麻であった。

学園都市内
下校時刻ともあってか、学生で賑わっている。

和麻「とりあえず統括理事会とかいうののところに向かってるってことでいいのか?」

黄泉川「それが統括理事会も忙しいらしくてね
とりあえずは警備員の仕事から先に教えるじゃん」

和麻「マジか・・・」

和麻の目論見が速攻で崩れる。

当麻「ん?あれ黄泉川先生?」

土御門「お?教師以外の男つれてるとは珍しいにゃー」

青ピ「まさか・・・まさか黄泉川センセまで・・・
やっぱり男は顔なん?顔がなきゃだめなん?」

そこにちょうど通りがかったツンツン頭とサングラスと青髪にピアスの三人組。

和麻(・・・?)

ふと当麻は今までにない妙な違和感を覚えた。
超能力者だからというわけでもなさそうだ。

黄泉川「おお、3馬鹿じゃん
補習は終わったじゃん?」

当麻「なんとか無事終わりましたよー
もう上条さん頭が痛いです」

青ピ「んで?そのとなりの人だれなん?」

土御門「・・・っ」

黄泉川「ああ、紹介するじゃん
今日から警備員の増員として私の下に入る八神和麻じゃんよ」

和麻「ん、よろしくでいいのか?」

接触対象ではないかと和麻は推測したが、なにをどう接触すればいいのか。
違和感の元をたどればいいのだろうか。

黄泉川「こっちは私の学校の生徒じゃん」

当麻「上条当麻です」

土御門「・・・土御門元春だぜい」

和麻(土御門?)

聞き覚えのありすぎる名字だった。
しかも悪い方で。

青ピ「ぼかぁ・・・」

土御門「すまん!急用思い出したから帰るにゃー」

そういって走り出してしまう土御門。

上条「・・・どうしたんだ?」

青ピ「さぁ?トイレでも我慢しとったんとちゃう?」

呆然と見送る友人二人。

黄泉川「なんかよくわかんないけど、とりあえず子供はまっすぐ帰りな
最近スキルアウトが妙に活発なのは聞いてるじゃん?」

当麻「そうっすね
上条さんなんて真っ先に絡まれそうですよ」

青ピ「つっちー帰ってまったし、ゲーセンは今度にしよか?」

そういって帰っていく二人。

和麻(ふむ・・・正直嫌だが、あとで接触してみるか)

黄泉川「さて時間も押してるしとっとといくじゃん」

和麻「ハァ・・・」

どうにでもしてくれと言わんばかりにため息をつくと、煙草を取り出す和麻。

黄泉川「おっと喫煙は喫煙所でお願いするじゃん
ここは学生の街じゃん」

和麻「・・・不幸だ」

諦めて煙草をしまうと、そう小さく呟いた。

アンチスキル七十三支部

なにやら大人たちがこちらに目も向けず、忙しそうに動き回っている。

黄泉川「ここがアンチスキル七十三支部じゃん
1日一回はここに顔だすこと
有事の際には独断専行せずに最初にここに連絡をいれること
こちらからの連絡には必ず応答すること
それだけ守ればとりあえずは好きにして良いじゃん
本当はもう少し色々あるけど、八神はあくまでも客員だからそこまでは求めないじゃん」

和麻(めんどくせぇ)

黄泉川「今めんどくさいとか思ったじゃん?」

和麻「いえいえ滅相もございません」

鉄装「あれ?黄泉川先生、そちらのかたは?」

忙しそうに動き回る中から一人の眼鏡の女性がこちらに声をかけてきた。

黄泉川「ほら、以前に話があった外からの増員の人じゃん
腕っぷしはお墨付きの頼れる人材だって話じゃんよ?」

和麻「は・・・?
まてまてまてまて!
俺は荒事に投入されるために呼ばれたのか!?」

黄泉川「あれ?聞いてない?
上に能力者素手で取り押さえられる人材要求したら八神が来たじゃん」

鉄装「へぇー、強いんですね!」

眼鏡の女性から熱い視線が向けられる。
ただし、向けられる対象にとってはあまりよろしくない流れで。

鉄装「あ、私は鉄装綴里と申します
至らないところもありますがよろしくお願いします」

黄泉川「鉄装は至らないところだらけじゃん」

そう言って豪快に笑う黄泉川。
いつのまにか支部にいる人間の注目を集めていた。

黄泉川「んじゃまー紹介しとくじゃん・・・」

大体2時間後

諸々の手続きを終え、学園都市の情報や常識を聞き、歓迎会だなんだと騒ぐ黄泉川をいなし、八神和麻は支部をあとにしていた。
ちなみに住む場所は決めていなかったが、言わないことにした。
黄泉川に言うと嫌な予感がする。

和麻(さて、あのサングラスでも探すか)

すでに時間は21時半過ぎ。
完全下校時刻はとっくに過ぎているため、歩いている生徒の数は少ない。

和麻(さて、マーキングはしといたが・・・)

土御門元春にはすでに風をつけてある。
あとは少し意識を向ければすぐに見つかる・・・。

和麻(掴んだ)

どうやら第七学区にいるようだ。
因みに学園都市の地理関係は大まかにだが頭にいれてきている。

和麻「んじゃま、とっとといきますか」

周囲の空気の密度を変えて姿を消すと、風を操り真っ直ぐと飛んでいった。


第七学区学生寮

土御門はイラついていた。

土御門「あの男を学園都市にいれるだなんて・・・アレイスターは正気か!?」

直接連絡をとろうともしたが、忙しいの一言で蹴られてしまった。
今回の台本では自分はお呼びでは無いのだろう。
しかし・・・。

土御門「相手はあの死神だぞ・・・」

「おいおい死神とはひどい言いぐさだな」

土御門「!?」

背後から今一番聞きたくない声を聞いた。

和麻「邪魔するぞ」

振り替えると、いつのまにかソファでのんびりと寛ぐ和麻の姿があった。
その姿は、『以前』見たときと比べれば雰囲気が違ったが、土御門にとってはまさしく死神であった。

土御門「・・・なんのようだ?」

鍵がかかっていた筈だ。
そんな驚きの声をおさえ、静かに問う。

和麻「やっぱり土御門家のもんか
なに、ご挨拶にでもと思ってな」

対称的に、世間話でもするかのように気楽な声を出す。

土御門「死神、疫病神、悪魔、通ったあとには大量破壊
ビッグベンを傾かせた張本人がなんのようだと聞いてるんだ」

和麻「ずいぶんと詳しいようで」

土御門「裏の世界でお前のことを知らないやつなんているか
警備員だ?ふざけてるのか?
なにをたくらんでる?
言っておくが、『ここ』で何かやらかそうってんなら・・・」

虚勢だ。
目の前の死を振り撒く男に対し、自分は無力であることは百も承知である。
しかし、この腐った街には守りたいものが、守るものがある。
土御門は退くわけにはいかなかった。

あれ?書き込まれてない?

蜍倬&縺?〒縺励◆

和麻「まぁ落ち着けよ
最近は俺も平和路線なんだぜ?
仲良くしようや」

警戒を顕にする目の前の男にそう言うが、意味があるはずがない。

土御門「なにしに来たか、それだけ言え」

和麻「ハァ・・・」

とりつく島もないとはこの事だ。
和麻は大きなため息をついた。

和麻「今回はここの理事長直々のご指名だ
とある生徒に接触しろとのことだ
なんかそれとついでに警備員もやることになっちまった」

土御門「他には?」

和麻「特になし
前者の仕事も上からの音沙汰が無くてな
今のところやることが無い状態だ」

土御門「信じるとでも?
そもそも俺はなにも聞いていない」

和麻「信じてもらうしか無いな」 ?

どこまでも平行線だった。

和麻(めんどくせぇ・・・)

しかし、場合によっては学園都市内での貴重な協力者になる可能性がある。
前ほどからの会話からして上との繋がりもあるようだ。

和麻「しゃーねーな
そういうことなら帰るか」

だが和麻はそんな堪え性のある男でもなかった。

和麻(まぁどうにかなるだろ)

そう考えると、あっさりと踵を返した。
すると。

土御門「待て」

どういう風の吹き回しか、向こうから呼び止めてきた。

和麻「なんだ?」

土御門「お前、本当に『あの』八神和麻か?」

和麻「どの八神和麻かはしらんが、俺は俺以外の八神和麻を知らんぞ?」

どこまでも軽口で返す和麻。

土御門「・・・イギリスで見たときとずいぶんやり方が違うんだな
頭の中身引っ張り出す宝貝はどうした?」

和麻「一応持ってはいるが・・・
なんだ?使ってほしかったのか?」

やはりどこまでも茶化した調子の和麻。

土御門「ずいぶんと大人しくなったんだな」

和麻「そりゃいつまでも火遊びなんてやってられるかよ」

土御門「ふむ・・・」

なにかを考え込む土御門であったが、ふと合点がいったように口を開く。

土御門「ひとつだけ聞かせてくれ
接触対象は上条当麻なのか?」

和麻「いまんところは不明だ
俺もまだ聞かされてないんでね」

土御門「そうか・・・
食って掛かって悪かったな」

和麻「へぇ?
そりゃどういう風の吹き回しだ?」

土御門「俺はイギリスでお前さんを見たきりだったからにゃー
その上当時のお前さんの印象のヤバさと言ったらなかったぜぃ」

和麻「・・・なんなんだ?その喋り方は」

土御門「お仕事モードとの使い分けってやつだにゃー
俺みたいな若輩者は形から入るんだぜぃ」

和麻「公私の使い分けは大事だな
ところ構わずプラズマぶつけてくる猪にも見習わせたいところだ」

土御門「とりあえず今のあんたはそこまで危険じゃなさそうだにゃー
前のあんたならこんな状況にならないだろうしにゃー」

和麻「その心は?」

土御門「今頃脳ミソいじくり回されて廃人でしょう」

とりあえずの警戒は解いたようだ。

和麻「ったくなんでそこまで警戒されにゃならんのかね」

土御門「それをあんたが言うのかい?
とりあえず聞きたいことはなんだにゃ?
そのために来たんだろ?」

和麻「いや、最初は土御門のもんなら挨拶だけでもと思ってな
ただ上に直接連絡ができるなら話が早い」

土御門「そりゃ良い心がけだにゃー
でも残念ながら今は連絡とれない状態だぜい」

和麻「さっさと帰れると思ったんだが・・・」

土御門「すまんにゃー
代わりといっちゃーあれだけど、なんかあったら連絡してくれぃ
戦力にはなれんけどここの事はそれなりに詳しいんだぜぃ?」

先程の態度とは打って変わって好意的な姿勢に、こんどは和麻が怪訝な顔をした。

和麻「そりゃずいぶんと手のひら返してくれるな
そこまでいくと疑っちゃうぜ?」

土御門「むしろ連絡くれるとそっちの行動が分かりやすくて助かるってのもあるにゃー
あとはあんたに個人的なパイプが出来れば色々便利かと思ったんだぜい
今はフリーなんだろ?」

あっけからんと言い放つ土御門。
最初は外敵にただ警戒するだけであったが、今は落ち着きを取り戻したのか学生とは思えない強かさと、大人顔負けの底を見せない立ち回りを見せていた。

和麻(どんな環境で育ったんだか・・・)

和麻は呆れ半分、感心半分といった感じに思っていた。

和麻「ま、一応頭の片隅には留めといてやるよ」

土御門「これが俺の連絡先だぜい」

和麻「ん、助かる
んじゃそろそろおいとましますか」

土御門「なんだ?どうせなら飯でも食ってけばいいのに・・・」

そう言って一瞬目を離すと、和麻は居た痕跡一つ残さずいなくなっていた。

土御門「・・・忍者かよ」

気を張りすぎたのか、凄まじい疲労感が土御門を襲っていた。
今日はこのまま寝てしまおう。
そう決めた。

次の日夕方頃

和麻は宿として選んだホテルのスイートで散々自堕落に過ごしたあと、黄泉川に言われた通り支部に来ていた。

和麻「うぃーっす」

気の抜けた声を出しながら入ったが、昨日の三割ほどの人数がいるだけであった。

事務員「あ、協力員の八神和麻さんですね?」

和麻「そうだが、昨日と比べて随分と閑散としてるな」

事務員「下校時刻ですのでみんな見回りにいってますよ」

和麻「へぇ、わざわざご苦労なこって」

事務員「そうなんですよ
危険手当以外に報酬はでないのに皆有志で集まってくれてるんですよ
本当に御苦労様です」

和麻(嫌味のつもりでいったんだが・・・)

事務員「あぁ、それとちょうどよかった
先程風紀委員のほうから格闘術の訓練の相手を寄越してほしいと連絡があったので行ってもらって良いですか?」

和麻「風紀委員?」

和麻の脳内には神経質そうな女生徒が不良をボコボコにしている絵が浮かんだ。

事務員「説明されてませんでしたか?
教員の有志で作る警備員のほかに生徒の有志で構成されている自警団があるんですよ」

和麻「ほぉ・・・よくやるなぁ」

自身の学生時代と比較して素直に感心する。

和麻「ま、ガキの相手くらいなら構わんよ」

事務員「助かります
場所は第二学区の風紀委員訓練所になります」

和麻「今日はそれが終わったらもういいな?」

事務員「ええ、報告する必要はありませんよ」

和麻「わかった
じゃあちょっくらいってくるわ」

なんだかんだで早くもしっかり馴染んでいる和麻であった。

第二学区風紀委員訓練施設

和麻「ここか・・・」

和麻は場所を確認すると真っ直ぐ入っていこうとした。
その時、風が背後に突然現れた人の気配を掴んだ。

「そこの殿方!この施設に何のようですの?」

振り替えると、制服を着た小柄なツインテールの女生徒がいた。

和麻「いや、格闘術のコーチとして呼ばれたんだが」

黒子「あら、そうでしたの・・・」

和麻「別にはいっても問題ないな?」

黒子「いえ、警備員の方が来るとは聞き及んでおりますが、貴方のような若い方は見覚えがありませんの
身分証だけでも見せてもらってよろしいでしょうか?」

和麻「あー、身分証
身分証ねー」

恐らく学園都市に入ったときに貰い、できる限り肌身離すなと言われたやつのことだろう。

和麻(そういやそんなもんもあったな)

たしか昨日の夜にホテルのテーブルの上に放り投げたきりだ。

和麻「すまん、忘れた」

黒子「はぁ?その様なことが通るとお思いですの?
学生ではあるまいし」

学生に学生じゃあるまいしと説教される絵はなかなかにシュールである。

和麻「だよな・・・
すまん、取ってくるわ」

強行突破する意味も無い和麻は、素直に取りに帰ろうとした。

第二学区風紀委員訓練施設

和麻「ここか・・・」

和麻は場所を確認すると真っ直ぐ入っていこうとした。
その時、風が背後に突然現れた人の気配を掴んだ。

「そこの殿方!この施設に何のようですの?」

振り替えると、制服を着た小柄なツインテールの女生徒がいた。

和麻「いや、格闘術のコーチとして呼ばれたんだが」

黒子「あら、そうでしたの・・・」

和麻「別にはいっても問題ないな?」

黒子「いえ、警備員の方が来るとは聞き及んでおりますが、貴方のような若い方は見覚えがありませんの
身分証だけでも見せてもらってよろしいでしょうか?」

和麻「あー、身分証
身分証ねー」

恐らく学園都市に入ったときに貰い、できる限り肌身離すなと言われたやつのことだろう。

和麻(そういやそんなもんもあったな)

たしか昨日の夜にホテルのテーブルの上に放り投げたきりだ。

和麻「すまん、忘れた」

黒子「はぁ?その様なことが通るとお思いですの?
学生ではあるまいし」

学生に学生じゃあるまいしと説教される絵はなかなかにシュールである。

和麻「だよな・・・
すまん、取ってくるわ」

強行突破する意味も無い和麻は、素直に取りに帰ろうとした。

連投しちゃった
ごめんなさい

黒子「いえ、一応不審者として拘束させていただきますわ」

和麻「へぇ・・・
あんた、例の風紀委員とかいうのか?」

黒子「察しがよろしいのですね
ついでに大人しくついてきてくれると助かるのですけれど?」

まぁこの手の手合いは大人しくついては来ないだろう。
そう黒子は思っていた。
さらに言えば、目の前の男は中肉中背で特に鍛えている感じもない上に、覇気のようなものが何一つ感じられない。

黒子(どこでコーチの話を聞き付けたかは知りませんが、流石に騙されませんの)

その上大人であるなら能力も使えないであろう。
負ける気は一切無かった。
それどころか、相手を怪我させないようにとすら気遣かっていた。
ところが。

和麻「しゃーねーな
どこ行きゃいいんだ?」

黒子「・・・へ?」

和麻「なんだよ、連れてくんじゃないのか?
黄泉川にでも連絡とりゃすぐわかるしな」

なにも疚しいことなどしていない。
和麻の反応は当然であった。
しかし黒子は完全に不審者と決めていたので逆に困惑してしまった。

黒子「もしかして・・・本当に警備員の方でしたの?」

和麻「ああ、臨時だがな」

黒子「・・・そういえば外から客員を呼んでいるとか言ってましたわね」

しかしこんな優男とは思ってもみなかった。
黄泉川のように素手で能力者を取り押さえられる人材だと聞いていたからだ。

黒子「・・・わかりましたわ
あとで黄泉川先生に確認を取るので今回はいいですわ」

和麻「そりゃありがたい
じゃあどこにいけばいいかもついでに教えてもらっていいか?」

黒子「なら一緒に行きませんこと?」

黒子は思った。
手合わせをして試してみよう。
本物なら自分が相手でもそこそこやれるだろう。
偽物なら骨の一本でも折って追い返せばいい。

和麻「そりゃ助かるわ
また不審者とか言われたらたまらねーからな」

そんなことを目の前の少女が考えているとも知らず、そんな事を言う。

黒子「わたくし白井黒子と申しますの
以後お見知りおきを」

和麻「八神和麻だ
ご丁寧にどーも」

黒子「それでは此方になりますわ」



訓練所グラウンド
走り込む者や手合わせをするものなど、思い思いに過ごしている。

和麻(青春だねぇ)

ジジ臭いことを考えていると、黒子が眼鏡の女性に手を降った。

黒子「固法先輩!」

固法「白井さん!あら?そちらの方は?」

黒子「今回の格闘術訓練のコーチをうけてくださいました八神和麻さんですの」

和麻「ん、よろしくな」

固法「ご足労おかけします
風紀委員の固法美偉です
今回はよろしくお願いします」

和麻「グラウンドってことは実戦でいいんだよな?」

固法「ええ、それなりに鍛えてますから多少手荒でもかまいません」

和麻「参加者は?」

固法「他に一名ほどいますよ
ほら、あそこの花飾りの子です」

和麻(花飾り・・・まぁ花飾りだな)
?
それは花飾りというにはあまりに大きかった。
だが、花飾りとしか形容しようがなかった。

和麻(あれ学校で弄られないのか?
髪飾りが本体とかハナチャンとかビオランテとか)

などと大変失礼な事を考えていると、向こうがこちらに気づいて走りよってきた。

初春「こんにちは!
あなたが今回の先生ですか?」

和麻「おう
八神和麻だ、よろしくな」

初春「初春飾利です!
よろしくお願いします!」

和麻(ずいぶんと元気がいいな
やっぱり花取ったら弱るのか?)

やってみたい気持ちを抑える。

黒子「では自己紹介も終わったわけですし、最初はわたくしが手合わせお願いしてもよろしいですか?」

和麻「ん、どっからでも構わんよ」

固法「では今回はアンチスキルが相手と想定していますので能力の使用は可でよろしいですか?」

和麻「問題ない」

ふと、自分も力を使っていいのかとも思ったが、流石に思いとどまる。

黒子「ではいきますわよ」

瞬間、黒子が目の前から消えた。

和麻「お?」

そして背後に現れた黒子が側頭部を狙った回し蹴りを放つ。

黒子(とった!)

不意討ちというと少し卑怯な気もしたが、完全に頭に入るタイミングだった。

和麻「おー、コレが超能力か」

だが和麻はなんでもないように頭を下げて避ける。

黒子「な!?」?

黒子は驚愕の声を上げる。

和麻「なんだ?それだけか?」

いったん距離をとると、もう一度。

黒子「まだまだですの!」

背後に跳ぶ。
今度は胴を薙ぐようにもう一度回し蹴り。

和麻「いや流石に芸がないぞ?」

目も向けずに受けようとする和麻。
だが蹴りが腕に当たる瞬間、黒子はまた転移、今度は足元に現れた。

黒子「フッ!!」

短く息を吐きながら足払い。
だが読まれていたかのように蹴り始めを足で抑えられてしまう。

和麻「それで?」

意地の悪い笑いを浮かべながら和麻は聞いた。


初春「すごい・・・」

能力を併用して凄まじい動きを見せる黒子の動きを全て見切る和麻を見て、そう呟くことしかできなかった。

固法「大能力者を手玉にとるなんて・・・」

その間も黒子の猛攻は続くが、いなされかわされ、受け止められていた。



黒子(どうなってますの?
まるで全身に目がついているようですわ)

転移も織り混ぜながらの連続攻撃。
すべて死角や隙をついての攻撃だったが、それをいとも簡単に見切られる状況に、だんだんと黒子は焦り始めていた。

黒子「このっ!」

そしてボディを狙った大降りの拳打。

和麻「まだやるのか?」

体重の乗った、それこそ当たれば骨を2、3本折るような一撃を掴み、和麻は促した。
これ以上やっても意味がないと。

黒子「・・・ふぅ
たしかに、これ以上は無駄ですわね」

目の前の男には敵わない。
黒子はそう悟った。
なぜなら、和麻はその場から一度も動いていなかったからだ。

和麻「もーちょい相手の行動観察したほうがいいぞ
撒き餌に引っ掛かりすぎだ」

黒子「へ?」

和麻「隙をついてたんだろ?
その隙は本当に隙だったのか?」

黒子「・・・なるほど
意図して作った死角だったと?」

和麻「ただ技自体は悪くなかったぞ
ま、経験積むこったな」

完敗だった。
だが。

黒子「ではなぜ初撃を避けられたのですの?
こちらの能力がわかっていたとでも?」

それだけが不可解だった。
この男とは初対面の筈だ。
なぜこうも手の内がバレていたのか。

和麻「ああ、お前入り口のところで突然背後に現れたろ?
あれで当たりつけてたんだが、正解だったみたいだな」

黒子「・・・それこそ背中に目でもついてるんですの?」

和麻「気配がいきなり現れればフツー疑問持つだろ」

その気配に気付くのはフツーなのだろうか?

黒子「本当に完敗ですわね
お手合わせありがとうございました」

そこで初春と固法がこちらに向かってきた。

初春「八神さんって強いんですね!」

固法「これは私たちじゃ手も足も出なさそうね」

和麻「まぁ稽古付けにきたわけだからな
別に勝負する必要はねーだろ」

初春「私は護身程度しか・・・」

和麻「そういやあんたらはどんな能力持ってるんだ?」

固法「私は透視能力ね
相手の隠し持ってる武器くらいならわかるわ」

初春「わたしは手で触れたものの温度を保てます
お茶とかあったかいままにできるんですよ」

和麻「固法はともかく初春は戦闘向けでは無いと・・・」

初春「はい、なので普段はバックアップが仕事なんですけど
やっぱり有事の際にはある程度戦えたほうがいいじゃないですか
いつも後ろで見てるのも嫌ですし」

なんとなくだが、彼女には守りたいものがあるんじゃないか?
そんな風に和麻は感じていた。

和麻「いい心がけだな
んじゃ、二人で軽く組手やってみてくれるか?
悪いところはその都度指摘するからな」

和麻は、目の前の少女には力を貸したいと思った。
地獄を見るのは自分だけでいいと。

和麻「あと煙草吸っていいか?」

黒子「喫煙所でお願いしますわ」

それこそ柄じゃない。
内心自分を嘲笑していた。

数十分後
和麻式(父親ゆずり)の容赦ない訓練に三人ともへばりきっていた。

黒子「道理で・・・強いわけ・・・ですわ・・・」

へたりこみ、呼吸が整わない黒子。

初春「・・・」

初春にいたっては砂の上にうつ伏せに倒れている、話す体力も無いようだ。

固法「本日は・・・ありがとうございました・・・」

基礎体力の違いだろうか。
固法はそれほど酷くは無いようだが、やはり呼吸が整いきってはいない。

和麻「ん?もういいのか?」

固法「これ以上は効率も悪いでしょうし・・・明日の授業に支障が出てもいけないので」

和麻「そうか、なら俺はもういくぞ
じゃあな」

たいして疲れた様子もなくあっさりと別れを告げると飄々と歩いていく。
そんな和麻の姿を見て、黒子が化け物ですわと呟いた。

帰り道(第七学区あたり)
完全下校時刻が近いせいか、人気はほとんどない。

和麻(さて、昨日今日と連絡は無しか・・・)

本来の仕事の話が降りてこないことに、和麻はイラつきを感じていた。
なんならボイコットして帰ってやろうかとも。

和麻(もっぺん土御門に連絡とれるか聞いてみるか)

チェイサー!

和麻「?」

掛け声のようなものが聞こえた。
そちらに目を向けてみると、黒子とおなじ制服を着た少女が自販機に蹴りをかましていた。
自販機は次々と缶を吐き出す、壊れたようだ。

和麻(暑さにやられたやつか?)

かかわり合いにならないようにしようとしたが、黄泉川が飲み会がどうのこうのの話に挟まれて不審者の捕縛もするよう言われていたことを思い出した。

和麻(うわ・・・マジかよ)

見なかったことにしようか迷っていると、先に向こうがこちらに気づいてしまった。

御坂「なによあんた
人のことジロジロ見て、なんか用?」

和麻(いきなり喧嘩腰かよ・・・
親の顔見てみたいぜ)

向こうから来てしまったら仕方がない。
渋々と言う。

和麻「あー、警備員のもんだ
とりあえず器物損壊とかそんな感じで拘束させてもらっていいか?」

御坂「ハァ!?お金入れたのに物出さないこの自販機が悪いんでしょうが!」

和麻「それならそれで蹴りいれる前に管理先に連絡いれるとかあるだろうが
とりあえず壊すなんてろくな大人にならんぞ」

正論ではあるが、どの口が言うのか。

御坂「なによ、あたしに説教すんの?」

和麻「仕事なんだから仕方ねーだろ
とりあえず来いよ、カツ丼くらいは出るかもしれんぞ」

御坂「なによもう!話になんないわ!」

こっちの台詞だと思ったが、口に出す前に足元に電撃が飛んできた。

和麻「なんだ?お前能力者か?」

御坂「そうよ!これでも文句あるの?」

和麻「いや文句とかじゃないだろ
悪いことは悪いだ」

御坂「ったく、アイツは相変わらず逃げるし!変な警備員には絡まれるし!」

和麻「いやなんの話だよ
あと客観的に見て変なのは明らかにお前だろ・・・」

御坂「うっさい!」

こんどは明らかに和麻を狙って電撃が飛ぶ。

和麻「うおっ、あぶねーな」

軸をずらして避ける和麻。
話が通じないどころか噛み合わない。

和麻「暑さにやられたか?冷たいもんでも飲んで病院行けよ」

御坂「誰がキ○ガイよ!バカにしてんの!?」

だれもそこまでは・・・暗に言ったか。

御坂「もームカついた!あんた覚悟しなさい!」

そう宣言すると、電撃を連続で飛ばしてくる。

和麻(なんなんだ?ったく)

電撃の軌道を見切り、ひょいひょいと避ける和麻。
だがその姿すらムカつくらしい。

御坂「なに避けてんのよ!大人しく寝てなさい!」

和麻「無茶言うなよ通り魔」

御坂「誰が通り魔よ!」

更に攻撃は苛烈になるが、掠する気配すらない。

和麻「めんどくせぇ」

御坂「ふざけんな!こっちの台詞よ!」

和麻「・・・ちーと痛いぞ?」

和麻はもともと堪え性のある方ではない。
空気の層を作って電撃をねじ曲げながら真っ直ぐ御坂に向かう。

御坂「ちょ・・・どういうこと?!」

和麻「ま、力があろうがこんなもんか」

そのまま掌底で顎を打ち上げる。
不意を突かれた御坂はなにも反応できないまま気絶した。

和麻「さて、支部につれてきゃいいのか?」

和麻が少女を担ごうとしたとき、前方に覚えのある気配が現れた。

和麻(白井か?)

黒子「ジャッジメントですの!
お姉さまをお離しなさい!」

そう高らかに宣言する想像通りの少女、白井黒子。

和麻「よう、さっきぶりだな
わざわざ悪いがこちとら仕事中だ」

黒子「やはり貴方は警備員などでは無かったのですね、八神和麻!」

和麻「は?なんの話だ?」

黒子「とぼけないでくださいまし!
婦女誘拐の現行犯ですのよ!」

たしかにこの場面だけ見ればそうと取れなくもない。

和麻「なんだ?こいつの知り合い・・・」黒子「問答無用ですの!」

最後まで聞かず、黒子はドロップキックをお見舞いしてきた。

和麻「おいおいはしたないことするもんじゃないぜ」

やはり簡単に受け止められる。

黒子「そのかたをどなたと心得ますの!?」

和麻「水戸の光國公とでもいうのか?」

黒子「ふざけないでくださいまし!
常盤台の超電磁砲、御坂美琴様と知っての狼藉ですの!?」

和麻「んなもん知るか
何処の誰だろうが器物損壊の現行犯
まともに躾られてねーガキはお仕置きだ」

黒子「なにを訳のわからないことを!」

黒子の両手にいつのまにか針のようなものが四対握られている。

黒子「もう一度言いますわ
貴方は話の分からない方では無いでしょう?
大人しく拘束されてくださいな」

和麻「拘束されんのはテメーだじゃじゃ馬」

なぜ挑発しにかかるのか。
ご丁寧に中指まで立てている。

黒子「いい覚悟してますのね・・・
留置所で反省するといいですわ!」

その瞬間、両手の針のうち二対が消えた。

和麻「おっと」

その場から飛び退くと、足元のアスファルトに針・・・鉄心が刺さっていた。
恐らく靴を縫い止めようとしたのだろう。

和麻「なかなかイカス技つかうじゃねーの」

黒子(これも避けられるなんて・・・
仕方がありませんわ、それなりに痛い目をみてもらいますの)

残る三対の鉄心を次々と転移させる黒子。
狙いは両手両足。

和麻「本気モードってか?
なかなかあぶないことするな」

なんでもないように避けながらまだ軽口を叩く和麻。
しかし、それは黒子には予測済みだった。

黒子(回避先に一本・・・これで終わりですの!)

回避先を読んで当てるのではなく置いておく。
勝ったと思った・・・しかし。

和麻「まぁ狙いは悪くないな」

それさえも半歩ずらして避けられてしまう。

黒子「嘘っ・・・ですの・・・」

和麻「相手が悪かったな」

そう言って悠々と目の前に歩いてくる和麻。

黒子(お姉さま・・・申し訳ございません・・・)

動こうにも先の訓練がハード過ぎたせいか限界が来ていた。

黒子「うぅ・・・グスッ」

和麻「おいおいまるで俺が悪役じゃねーの」

そういって煙草を取り出す和麻。

黒子「ここは・・・禁煙ですの・・・」

和麻「お?わりいわりい」

今の反応で、やはり話は通じると思った黒子は懇願した。

黒子「わたくしはどうなってもいいですの!
どうかお姉さまだけは・・・お姉さまだけは・・・」

泣きながら地に頭を付ける黒子。
場面とタイミングが合えば美しいシーンだったかもしれない。

和麻「あのなぁ・・・
別に俺は人売り飛ばすような極悪人でもガキどもに欲情するキの字でもねーよ」

そう、この勘違いさえ無ければ。

黒子「ではどうして・・・」

和麻「だから警備員だっていってるだろ
あの自販機ぶっ壊してるとこ見て確保しようとしたら突っかかってきたから寝かせただけだ」

壊れた自販機を和麻に指差され目を向けると、排出口に大量の缶が詰まっていた。

和麻「な?どっちが悪いか明確だろ?
つーかコイツ警備員に問答無用で襲いかかるとかどういう神経してんだよ」

黒子「そういうあなたこそlevel5を倒すなんて化け物ですの?」

level5
学園都市の中でも7人しかいない頂点の存在。
一人一人が戦略兵器クラスの能力を持っていると和麻は《風の噂》で聞いていた。

和麻「level5?こいつがか?」

黒子「知りませんでしたの!?
そちらの方こそ学園都市が誇るlevel5第三位、御坂美琴様ですのよ!?」

和麻「へー、そりゃすごいな」

たいして驚いた風もなく言ってのける。

黒子(お姉さまには不意打ちも効かないはず・・・
ほんとうに何者ですの?)

和麻「つっても何処の誰かなんて関係無いがな
なんならお前風紀委員だろ?
任せてもいいか?」

そんなことまで言い出す始末だった。

黒子「いいんですの?」

和麻「顔見知りみたいだしそっちのほうがいいだろ
なにより面倒事はごめんだ」

それだけ言うとなんの関心も無いように行ってしまった。

黒子(本当に・・・何者?
初春に調べてもらう必要がありそうですわね)

これからやるべきことを決めると、黒子は御坂を担ぎ、ゆっくりと寮へと向かっていった。

少し行ったところの路地

和麻「んで?そろそろ出てきてもいいぞ、土御門」

土御門「いやー、早速常盤台の電撃姫を伸すとはなかなかやるにゃー」

路地の陰から見知ったサングラスが現れる。
ずっと見ていたのなら擁護くらいしろと思う。

和麻「そんなに有名なのか?あの跳ねっ返りは」

土御門「level1から努力でlevel5まで上がった、俺らみたいな低レベル能力者の期待の星だにゃー」

和麻「ふぅん、あれがねぇ
そういや常盤台ってなんだ?」

土御門「常盤台中学のことだぜよ
学園都市屈指のお嬢様学校だにゃー」

和麻「てーことは白井もそうなのか」

土御門「お?大して驚かないんだな
てっきり「あの暴れん坊将軍が!?」とか言うかと思ったんだがにゃー」

和麻「表じゃちゃんとしてんだろ?
似たようなのが神凪家にもいるしな」

土御門「へー、神凪家にもいろいろいるんだにゃー」

和麻「お前んとこの長女と次男坊もなかなかひどいだろ」

土御門「あれは不治の病だぜい
ま、俺も人のこと言えねーが」

和麻「・・・土御門家は変態しかいねーのか?」

土御門「いやいや調べてみればあんたのブラコンぶりもなかなか筋金入りだぜい?」

和麻「はっはっは、一緒にするなよ」

土御門「はっはっは、そりゃ失礼したぜよ」

くだらない雑談と共に乾いた笑いが路地裏にこだまする。

和麻「んじゃ要件聞こうか?
わざわざ四方山話をしに来た訳じゃないだろ?」

土御門「統括理事長が直接会うそうだ
ついてきてもらっていいか?」

仕事モードになる土御門。

和麻「なるほどな
正直帰ろうかと思ってたんだが」

土御門「向こうにもそれなりに準備とかあったみたいだぞ?
なんせ会うのがあの八神和麻だ
下手打って『全部』消し飛ばされても困るんじゃないか?」

和麻「やれやれ、ずいぶん用心深いんだな」

土御門「組織のトップなんてどこもそんなもんさ
さ、エスコートするぞ?」

和麻「やめろ気持ち悪い」

そうして二人は路地の闇に消えていった。

今日投稿できる分はこれで終了です。

捕捉説明として、黒子は外の人間だと分かっているので能力は使えないと思っていますが、御坂さんは都市内の大学生だと思ってます。

第七学区・窓のないビル前

それほど歩いていない距離に、それはあった。
出入口、窓の類いが一切見当たらない奇妙な建造物だった。

和麻(通気孔すら無いのか・・・
さらには魔術的防御も完璧か
大統領用の核シェルターより頑丈なんじゃねーの?)

土御門「さ、着いたぞ
統括理事長の居城、通称『窓のないビル』だ」

和麻「そのまんまだな
もーちょい凝った名前とか付けてやれよ」

土御門「あくまで通称だ
文句はつけたやつに頼むわ」

そんなくだらない話をしていると、窓のないビルの方から桃色のサラシにブレザーを羽織るというずいぶんと個性的な少女がこちらに向かってきた。

結標「なにくだらない話してるのよ土御門
こっちはとっとと帰って寝たいんだから」

土御門「そりゃ悪かった
こっちが今回のお客様だ、丁寧に運べよ?」

結標「丁寧も糞もないわ
それじゃあ貴方、目を閉じてじっとしててね」

和麻「あー・・・その、なんだ・・・
お相手は嬉しいんだが痴女はちょっと」

すこし怯えたように言う和麻。

結標「誰が痴女よ!
土御門!コイツなんなのよ!?」

土御門「下手したら学園都市第一位と実力でタメはるような男だ
喧嘩売るなら他所で頼むわ」

結標「さすがに冗談でしょ
あんな化け物がそこら辺に転がってるわけ無いじゃない」

土御門「あーもーうっさい
とっとと送れ案内人
それがお前の仕事だろ!」

結標「・・・あとで話付けるからね!」

結標がそう言った次の瞬間、和麻の目の前に壁が広がっていた。

和麻「へぇ、これが空間転移ねぇ
縮地とはまた違うみたいだな」

「仙術などという底の知れた物と一緒にしてもらっては困るな」

背後から中性的で厳かな声が聞こえた。

和麻「へぇ、あんたがここの理事長か
初めましてでいいのか?」

アレイスター「そうだな、初めまして
学園都市統括理事長アレイスター・クロウリーだ」

赤い液体に満たされた巨大な円筒器の中にそいつはいた。
逆さに吊るされたその姿は男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える。

和麻「The wickedest man in the world.
世界最悪の変人様の治める都市ねぇ」

アレイスター「君と同じさ、若気の至りというやつだよ」

和麻「若気の至りの後始末はしとけよ
東方聖堂騎士団の内輪揉めに駆り出された俺の身にもなってほしいもんだ」

アレイスター「それはすまないことをしたね
だが君のことだ、うまくまとめてくれたんだろう?」

和麻「わかってるくせに良く言う
当時の俺だぜ?」

和やかな会談。
しかしその実、一触即発の空気が漂っていた。
和麻はアレイスターをアルマゲストの関係者ではないかと疑っていた。

和麻(あのビーカー・・・位相をずらしてあるのか、厄介だな)

アレイスター・クロウリーは表向きには死亡したことになっているが、このような高度な術を使う辺り、恐らく本物だろうと和麻は踏んでいた。

アレイスター「八神和麻君、君はなぜ私にそんなにも殺意を向けるのかね?」

和麻「そんなもん向けてたか?
気づかなかったぜ」

アレイスター「もしかして私が君の恋人の敵の一人だとでも思っているのかい?」

和麻「なんだ、そんなことまで知ってんのか」

アレイスター「答えだけ言うとノーだ
あのような快楽主義者の愉快犯らと一緒にされるとは大変不愉快だ」

和麻「なるほどな
ならとりあえずは苦労して位相ごと真っ二つにする必要は無いわけか」

アレイスター「できるのかい?」

和麻「かなり疲れるがな」

アレイスターは、自らの情報網をもってしても所々でしか引っ掛からない和麻を少なかれ警戒していた。
石蕗家の神を再起不能にし、べリアルの片腕を追い返し、神凪家ともつながるこの男。
目的のためにも、油断することなどできなかった。

アレイスター「それは怖い
やはり君は得体が知れないね」

しかし、うまくいけば『プラン』を大幅に、それこそ数百年単位で短縮することさえできるだろう。

和麻「それじゃあ、用件を聞こうか
俺をここに呼んだ理由を」

アレイスター「なに、ある学生と手合わせをしてほしいだけだ
なんなら殺してしまってもかまわない」

和麻「代わりに死んでも文句は言うなってか?
ずいぶんとキナ臭くなってきたな」

アレイスター「もちろん殺さず無力化できるのならお願いしたいがね
そして、できることなら『全力』で頼むよ」

含みのある言い方。

和麻「いいのか?本当に死ぬかもしれんぞ?」

アレイスター「そこ程度で終わるならそれまでだということさ」

和麻「依頼であるなら理由は聞かんよ」

アレイスター「そうしてくれると助かるな
では日程や場所は決まり次第土御門に伝えさせよう」

和麻「こちらとしては報酬さえもらえれば文句は言わんよ
学園都市のトップだろ?期待してるぜ」

アレイスター「そちらに関しては納得いく額を出すよう約束するよ」

和麻「『本気』まで出させるんだ
それなりに期待させてもらうぜ」

アレイスター「頼むよ
ではまた会おう」

気がつくと、和麻は外にいた。

今日はここまでにしておきます

次は月曜日の予定です

和麻「ったく・・・喫煙所少なすぎるだろ」

和麻は煙草を吸いに喫煙所まで来ていた。

和麻「ふぅー・・・」

薬中のように緩んだ顔で煙を吐き出す作業をしていると、喫煙所に新たな客人が来たようだ。

小萌「あ、めずらしく先客がいますね?
ご一緒よろしいですか?」

見た目小学生の・・・小学生だった。

和麻(おいおい風紀委員さんよ・・・風紀乱れすぎだろ)

その幼女は特に気にした様子もなく手慣れた様子で火を付けると、旨そうにふかしはじめた。
年期のはいったその行動をみると、ある種の貫禄さえ感じる。

和麻(一応俺警備員だよな?
なんか言うべきか?)

小萌「この辺じゃ見ない顔ですね?
外から来たですか?」

特に気負った様子もなく雑談を振られる。

和麻「あ、ああ、警備員の増員として呼ばれたんだ」

若干声がひきつっていたのは気のせいではないだろう。
相手が仙人の類いで身体の成長を止めていることも考えたが、普通は肉体の適齢期で止めるものだ。
こんな幼い姿で留める理由がない・・・一部の需要を除けば。

和麻(やめだ)

和麻は考えることをやめた。

その後、適当な話を2、3交わし、お互い名前も知らないまま別れた。

和麻(今日はとっとと寝るか)

言い様のない疲労感を感じながら。

んじゃ本編投下

土御門「お疲れ様だぜい」

土御門と結標が出迎えてくれた。

結標「私は帰って寝るわ?
じゃあね」

名前も知らない少女は、そう言うとあっさりと帰っていった。

土御門「んで?なんの話だったのかにゃー?」

和麻「ん、ただ依頼内容詰めただけだ」

土御門「ふーん」

サングラスの奥の目が怪しく光る。

土御門「んで?統括理事長殿との会談はどうだったかにゃー」

和麻「ありゃ目的のためには手段選ばないタイプだな
筋金入りのリアリストだ」

土御門「それこそあんたが言えるのかい?」

和麻「俺ってそんな風に思われてるのか?」

土御門「一人始末するために街一つ更地にする男で有名だぜい」

和麻「あぁ、あんときのか
ありゃアイツが逃げ回るから悪い」

おそらく『あの頃』の話であろう。
平然と言ってのける和麻。

土御門「んじゃお開きかにゃー
俺は飯食いに行くけど和麻も一緒にどうだ?」

土御門は和麻と言う人物を調べるにつれ、興味を持ち始めていた。
落ちこぼれの挙げ句に放逐、出会いと別れ、力を手に入れ、死神となり、いつのまにか人が変わっていた。
人の人生に興味を持つなんてろくな趣味ではないが、彼の半生に限っては興味を持たない方が難しいであろう。

和麻「変な店はやめろよ?」

土御門「俺をどんな目で見てるんだよ
普通のファミレスだぜよ」

もう少し、下らない話でも構わないから話をしたいと思った。
もしかしたら、自分の見えていなかった新しい道が見えるかもしれない。

和麻「奢りか?」

土御門「お前さんのが金持ってるだろ・・・」

夜は更けていく。

次の日
学園都市はある噂で持ちきりだった。
学園都市第三位超電磁砲が気絶した状態で担がれて帰ってきた。
その状況を目撃した寮の生徒を発信源に、様々な憶測が飛び出したのだ。

曰く、新しいlevel5が現れた。
曰く、第一位か第二位に喧嘩を売った。
曰く、都市伝説の無能力者に倒された。

他にもオカルト混じりの物や無責任で適当極まりないもの、陰謀論まで持ち上がる始末だ。

初春「それで!?実際のところどうなんですか、黒子さん!」

いつものカフェに黒子を連れ出した初春は、開口一番そう切り出した。

黒子「どうって、あの噂のことですの?」

担いで帰った黒子は同級生、同僚、はては上級生にまで質問攻めにあっていたのですぐに見当が付いた。

黒子(こちらも聞きたいことがありますのに・・・)

あの謎の多い男、八神和麻のことだ。
しかし初春はそんなことを聞けるようなテンションではなかった。

黒子(彼の素性が分かるまでは話さない方が良さそうですわね)

無論、無用な混乱を避けるためだ。
噂では学園都市最強の名を賭けて第一位に挑む無法者が後を絶たないらしい。
外の人間に負けたなんて噂が立てば御坂の日常など簡単に壊れるだろう。

初春「あれ?黒子さんどうかしたんですか?」

黙り込んで考える黒子を見て不審に思う。

黒子「いいえ、なんでもありませんわ
それと、昨日のことはわたくしもよく知りませんの
お姉さまが倒れていたから保護しただけですわ」

今朝からこの返答をしたのは何回目だろうか。
少なくとも両手両足の指の数では足りない。

初春「そうなんですかー
肝心の御坂さんは体調不良だって言うし」

そうだ。
御坂も部屋から出てきていない。
あの男の口振りから考えると歯牙にも掛けられずあっさりと負けたのだろう。

黒子(でもおかしな話ですわ
いつものお姉さまならすぐにでもリベンジに行く筈ですのに)

だからこそ御坂にはあの男の事をなにも教えていない。
得体が知れないのもそうだが、警備員の支部に殴り込みをかけられても困る。

黒子「まぁその話はここで話しても仕方ありませんわ
それよりも初春に調べて欲しいことがありますの」

多少強引にだが話題の方向転換をはかる。

初春「私がですか?
あんまり危ないこと調べさせないでくださいよ?」

黒子「まあまあ
今度スイーツでも奢りますのでここは一つ」

初春「仕方ないですね?♪
それで?なにを調べればいいんですか?」

黒子「昨日のコーチの八神和麻さんの・・・」和麻「俺がどうかしたのか?」

黒子「!?」

突然向かいの席から、この場には居て欲しくない男の声が聞こえた。

初春「あ、和麻さん
昨日はありがとうございました
お陰さまで今日は学校遅刻しました」

和麻「そりゃ悪かったな
あれでも加減したつもりなんだが」

のんびりと会話する初春と、それに応じる和麻。

黒子「・・・あら八神さん
本日はどうなさったので?」

平静を装う黒子。

和麻「暇潰しだよ
今日は特にやることも見つからないんでね」

初春「警備員がそんなことでいいんですかー?」

和麻「なんだよ
お前らも暇じゃないのか?
学生が喫茶店なんざ不良の始まりだぜ?」

初春「もー、戦前の話されても困りますよー」

和麻「戦後の話だろ?
俺何歳なんだよ」

黒子「盛り上がっているところ悪いのですが、初春と仕事の話がございますので少々遠慮していただいてもよろしいでしょうか?」

初春「え?そうでしたっ・・・」黒子「そうですの!」

和麻「なんだ、そりゃ悪かったな
じゃあ御坂にせめて人の居ないところでやれって言っといてくれ」

気にした様子もなくそれだけ言い残すと、店をあとにした。
爆弾を残して。

初春「御坂さんと和麻さんなにかあったんですか?」

黒子「なにもありませんことよ!」

初春「な、なんで怒ってるんですか?」

黒子「怒ってなどいませんの!」

つい声が大きくなってしまうが、周囲の視線を集めていることに気づく。

黒子「ごめんなさい、ちょっと気が立っていましたの」

初春「まあ別にいいですよ
いつものことですし?」

含みのある言い方だが黒子は反論を飲み込む。
これでは話が進まない。

黒子「・・・それで、調べてほしいのは今の八神和麻さんのことですわ」

初春「八神さんですか?それまたどうして・・・はっ、まさか黒子さん!?
遂に普通の男の人に興味が!?」

黒子「なにを言っていますの
わたくしはお姉さま一筋ですわ」

あっさりと受け流せるくらいには落ち着いたようだ。

初春「なぁんだ、つまんないですねー」

黒子「なにか言いまして?」

初春「なんでもないですよーだ
八神さんのことを調べればいいんですか?」

黒子「ええ、できればなにも聞かずに、誰にもバレないようにお願いしたいのですが」

初春「いいですけど、あんまり危ないことはやめてくださいよ?
入院でもされるとまた私の仕事が増えるんですから」

黒子「できるだけ、気を付けますわ」

初春「はぁ・・・まぁ黒子さんの無茶は今に始まった訳でも無いですけど」

黒子「お願いしますわ」

黒子(なにも出てこないのが一番なのですけど・・・)

黒子は無意識に和麻の出ていった喫茶店のドアを睨んでいると、不意に携帯が鳴った。

時は少し遡り、和麻が喫茶店から出てきた直後、和麻の携帯が振動した。

和麻(うわ・・・黄泉川からじゃねーか)

わざわざ連絡をしてくるのだ、なにかが起きたのだろう。

和麻「チッ・・・どうかしたのか?」

舌打ちをしながら応答する。

黄泉川「和麻!今何処にいるじゃん!?」

随分と焦っているようだ。

和麻「ん?第十五学区だが」

黄泉川「ならちょうどいいじゃん!
第九学区で能力者狩りがあったみたいじゃん!」

和麻「能力者狩り?なんだそりゃ」

黄泉川「説明はあと!
場所は携帯に送るから直行して増援が向かうまでその場を押さえるじゃん!
頼んだよ!」

和麻「へ、あ?お、おい!」

問答無用で通話を切られる。

和麻「ったく、これもお仕事か・・・」

うんざりと言った感じで和麻は現場へと向かった。
後ろで黒子と初春があわてて喫茶店からとび出してくる気配を感じていた。

よっし、本日分はこれにて完売です。

構想のあったところは全部終わってしまったので、次はもう少し遅れます。
今週末までには一度は投下する心構えでいるつもりですので、お待ちいただけると幸いです。



誰か風の聖痕の事を殆ど知らない俺に和麻のスペックを教えてくれ!

>>105
重度のブラコンで弟のためなら空間も超える風使い
だった気がする

>>108
大雑把過ぎて全然分からないけどとりあえずブラコンの重篤さは分かったわw
つーか風だけで位相までどうにかなるのかよw

>>109
精霊術士の攻撃は物理特性を無視するので、悪霊を燃やしたり斬ったりすることが可能です。
術者の力量によっては「最古杵視すを燃やす」「重力攻撃を斬る」なんてこともできます。
和麻は風の精霊王と契約した「契約者」(=史上最強の風の精霊使いといって問題なし)なので、
「次元の壁」くらい斬れます。(もっとも本編で斬ったのは結界による次元の壁だと思ったけど)

なお、精霊術については以下の特性があります。
・地水火風のうち、一系統しか使えない。(家系で決まるケースが多い)
・対応する精霊のいない場所では使用不可(例:完全な闇の中では火の精霊術は使えない)
・呪文詠唱不要(他の魔術系統に比べ、戦闘では圧倒的有利)
・風の精霊術は広範囲の索敵、飛行、ステルス迷彩など多彩なことが出来る反面、火・水・地に比べ、
 破壊力が圧倒的に落ちる(同格の術者なら勝てる見込みが無いくらい)
 ※ただし和麻は力量が桁違いなので、現役最強の炎術士を倒したことがある。

>>110
分かりやすい解説サンクス!

○術者の力量によっては「最古杵視すを燃やす」「重力攻撃を斬る」なんてこともできます。
という事は未元物質とかベクトル操作とかも何とかなりそうだな

○・対応する精霊のいない場所では使用不可
空気そのものか風の無い空間では使えないって事か


とりあえず結論として「力>技」を地で行く作品なんだなw某筋肉妖怪の「技を超える純粋な強さ!それがパワーだ!!」って言葉を思い出したぜw
しかも和麻は格闘技の達人見たいだし戦闘に於いてはマジ完璧超人だな

投下します

第九学区・路地裏

「能力者っつっても能力がなけりゃこんなもんかよっ!」
「ヒャハハハ!」
「おーおー、やっぱ能力者は金持ってんなー」
「散々見下してきた劣等生に足蹴にされる気分はどうですか??」

下品な笑い声と罵声が響き渡っている。
ひょろいのがボコられてるのが見える。足元にある歪んだ眼鏡は彼のものだろう。

和麻(なるほどな)

能力者狩りというものがなんとなくわかった。
ここは超能力を開発する学校だ、無能力者の扱いが如何程かは想像に難くない。
そしてそんな無能力者が能力者の力を無効化できたらどうなるのかが目の前の光景なのだろう。

和麻(とりあえず場の鎮圧か?
あのボコられてる奴におっ死なれても困るしな)

相手は見たところ八人、普通じゃ勝負にもならないだろうが、和麻は躊躇なく路地に踏み込んだ。

だいたい二分ほどだろうか?
八人のスキルアウトは地を舐めていた

口ピアス「つ、つえぇ」

唯一意識の残っていた口にピアスをした男。

和麻「おいひょろいの、大丈夫か?」

ガリ眼鏡「はい・・・うぅ」

怪我の具合を簡単に見るが、どうやら足が折れているようだ。

和麻「その調子じゃ動けんな
もうすぐ警備員か風紀委員が来るから大人しくしてな」

首を縦に振る眼鏡君。

和麻「んじゃこっちだな
どうやって能力を無効にしたんだ?」

口ピアス「んなこと誰が言うか・・・ヒィ!」

不良のささやかな反抗は、和麻の蹴りが背後のビルにめり込む音に消された。

和麻「俺は気が長い方じゃない
折角怪我はさせてないのにな・・・
まぁ入院したいならさせてやるが」

口ピアス「は、話す!話すよ!」

和麻「最初っからそう言えや」

口ピアス「AIMジャマーだよ・・・」

和麻「なんだそりゃ?」

口ピアス「なにって・・・あんた外の人間か?」

和麻「まぁそんなこたぁいいだろ」

少し威圧してみる。

口ピアス「すすすすいません!
そのAIMジャマーは複雑な演算がいる代わりに超能力をほぼ使用不可能にできるって話なんです」

和麻「ほぉ・・・
持ち運びとかできるのか?」

口ピアス「機材がでかい上に場所ごとの演算が要るから持ち運びは不可能なんです
だからここに誘い込んでたんスけど・・・」

無理に不馴れな敬語を使うピアス男。

和麻「そいつはまだ動いてるのか?」

口ピアス「はい、電源はつけっぱなし・・・です」

和麻(こいつは使えるな)

なにかを閃いた和麻。

和麻「ちょっと待ってろ」

それだけ言うと、うずくまっていた眼鏡君に近づき、いきなり顎先を蹴り抜いた。

口ピアス「いやいやいやなにやって・・・」

昏倒する憐れな被害者。

和麻「気が変わった
お前は見逃してやる
そのかわり俺からの指示に従ってもらうぞ?」

口ピアス「はぁ?そりゃどういう・・・」

和麻「気が変わったっていってんだろ
あんまり余計なこと聞くとまた変わるかもな」

口ピアス「ごめんなさい!」

和麻「おら、ほかの警備員が来る前にとっとといけ
あとそのなんとかジャマーはそのままにしとけ」

口ピアス「はい!ありがとうございます!」

そう言って走り去っていく名前も知らない男。

和麻(さて、どう転ぶかな)

遠くから黄泉川達が来るのを感じながら煙草に火をつけた。

なんかサクサク書けたっぽいので投下します

とある屋台

黄泉川「いやー!それにしてもお手柄だったじゃん!」

すでに4次会にまで突入し、さっきから何度も聞いた言葉を聞きながら黄泉川に背中をバシバシ叩かれる和麻。

和麻「いてーよ」

酔っ払いの絡みを適当にいなしながら焼き鳥をつまむ。

鉄装「でも本当にすごいですよ!
『7人』も相手にして倒しちゃうなんて!」

そう、その場にいたのは7人。そういうことになっている。
ちなみに被害者は興奮が酷かったため気絶させたことにした。

小萌「おじさーん!チョウチン一つ!」

大将「あいよ」

いつのまにか合流していたいつぞやの名も知らぬ喫煙少女。
黄泉川と鉄装が呼んでいた名前から小萌という立派な教師らしい。
どうなってるんだ学園都市。

和麻(やっぱ仙人・・・?
けどそんな気配は欠片もないぞ?)

小萌「おじさーん!シンノス!」

大将「あいよ」

あとどうなってるんだこの屋台。

和麻は考えないことにして酒を一気にあおった。

黄泉川「お、いい飲みっぷりじゃーん!」

小萌「ほら、鉄装先生も負けてられませんよー!」

鉄装「え、ちょ、もういいですってば!」

和麻(・・・綾乃の子守りの方が楽だったな)

顔だけ見れば美女( α)だが、こんな状況は勘弁してほしいと思い、そんなに昔でも無いのにやけにあの頃が懐かしい和麻だった。

小萌「おじさーん!瓶追加!あとハウカットル!」

大将「あいよ」

和麻(あいよじゃねーよ)

学園都市の狂気を垣間見た気がした。

翌日
今日は金曜日
もうすぐ学校から解放される生徒たちは週末の計画を立てているだろう。

ボーイ「八神様、お電話です」

和麻「ん?どこからだ?」

世の学生達が最後の気力を振り絞って勉学に励んでいる中、和麻はホテルでグータラしていた。
そこにホテルのボーイが備え付けの電話に内線をいれてきたのだった。

ボーイ「神凪様と仰っております」

和麻(宗家か?)

なにか新しい依頼でも入ったのだろうか。

和麻「繋いでくれ」

ボーイ「承りました」

そして外と電話が繋がる。

「あ、兄様?煉です!」

和麻「おー、煉か
元気してたか?」

それは和麻の実の弟、神凪煉だった。

煉「ビックリしたんですよ!急に兄様が学園都市に行ってしまったと聞いて姉様も・・・」「ちょっとコラなに言ってんの煉!?」

和麻「なんだ、綾乃もいるのか」

煉「ええと、姉様と代わりますね
もう姉様ったらさっきから代われって・・・」「れ?ん??」「ごめんなさーい!」

綾乃「ちょっと和麻!!一言も無しに行くなんて流石に酷くない!?」

いきなり怒鳴り声に変わる。
和麻のはとこであり、次期神凪家当主候補にして炎の精霊王から賜ったとされる一族の宝剣・炎雷覇の継承者である神凪綾乃であった。

和麻「酷いなんてことあるかよ
仕事なんだから仕方ないだろうが」

綾乃「それにしてももっと・・・こう・・・あるでしょうが!」

和麻「ああ?なに言ってんだお前は」

綾乃「???もういいわ!煉に代わる!!」

それだけ言い捨てると煉へと電話を渡したようだ。

和麻「なんだあいつ?
月のもんでも近いのか?」

煉「兄様・・・最低です」

代わってからのセクハラ全開な第一声に心底あきれたように返す。

和麻「冗談だ
アイツなりに心配したみたいだな」

煉「わかってるんならからかわないでくださいよ・・・」

和麻「それでどうかしたのか?」

煉「ああ、そうだ
明日そちらに行きますね」

和麻「お?そりゃ構わんが
なんかの仕事か?」

煉「いえ、ただの社会見学です
良い機会だと父様の許しももらいました」

和麻「へー、それならゲートまで迎えに行くぞ?
何時ごろだ?」

やはり弟には態度が軟化するようだ。

煉「朝十時頃になると思います」

和麻「綾乃は?」

煉「姉様は仕事が入っていて来られないそうですよ」

和麻「そうか
なら綾乃にへまするなよとだけ言っといてくれ」

「聞こえてんのよ!そっちこそ物壊さないようにね!!」

煉「だそうですよ」

煉はもう慣れたとでも言わんばかりに引き継ぐ。

和麻「んじゃあまた明日な」

煉「はい!」

電話が切られる。

和麻(なら先に『あっち』片付けとくか)

和麻は窓を開けると、ある気配に向けて飛び立った。

以上です
次は月曜までにどうにかします

なんか荒れてるー?
まぁいいや投下します

初春「八神さんのこと調べてみたんですけど・・・」

初春は、学校が終わるとすぐに黒子に連絡を取り、以前の喫茶店で顔を合わせていた。

黒子「見せてもらってもよろしくて?」

初春「一応犯罪なんですよ?」

そういいながらも黒子にノートパソコンの画面を見せる。

黒子(生まれは不明、高校を卒業、そのままフリーター
幼い頃に両親が失踪し、天涯孤独・・・)

奇特といえば奇特と言えなくもないが、多少の苦労があったにせよ普通と言っても差し支えない半生だ。
だが、その普通というのが如何にも怪しかった。
あそこまでの腕前なら格闘技の有段者であったりしてもおかしくないが、何一つそのような輝かしいものはない。

黒子「まるで意図的に改竄されているようですわ」

初春「そうなんですよ
戸籍に改竄の後がありました」

戸籍ということは、初春は国のサーバーにでも潜り込んだのだろうか。

黒子「なるほど・・・一筋縄では行きませんのね」

初春「あと・・・気になるものがもうひとつ」

ノートパソコンを叩く。

初春「間違えてよくわからないオカルトサイトに接続してしまったんですけど・・・」

そこにはこう書かれていた。

「我らが仇敵八神和麻が日本にいるらしい」
「すでにミハイルが殺られたそうだ」
「神凪まで敵に回すとは愚かな」

黒子「・・・ゲームの話ですの?」

初春「そうかと思ったんですけど、最新の書き込みが・・・」

そういって画面をスクロールさせる。

「仇敵八神和麻が学園都市へ入ったらしい」
「男子生徒三人と接触、内一人は土御門家の内偵とみられる」
「謎の建造物に入るところを確認、建造物への侵入は困難を極める」
「女生徒二名と接触、これを利用することを提案する」

黒子「これって・・・」

初春「!?更新があります!」

「j6VDQPN4FxFGamiPXGZGR」

謎の文字列と魔方陣。

黒子「・・・」
初春「・・・」

突然二人は無言で立ち上がると、会計を済ませ、なにかにとりつかれたようにふらふらと歩いていった。
その目に光は無かった。



黒子「う・・・ん・・・」

黒子が苦しそうにうめき、目を覚ます。

黒子「・・・!?
ここは・・・どこですの?」

見たところどこかの廃墟のようだ。
薄暗くて視界は悪い。

「もう少し長く寝ている予定なのですが」

黒子「!!」

目の前には黒いローブの人影が居た。
声から察するに女性だろう。
足元には初春が倒れている。

黒子「初春に何をしましたの!?」

黒ローブ「貴女と同じように眠ってもらっています」

黒子「・・・何者ですの?」

黒ローブ「答える義務はありません」

きっぱりと言い切られる。

黒子「目的くらいは話してくれませんの?」

黒ローブ「そうですね・・・貴女は八神和麻を知っていますね」

黒子(あの方のお知り合い?)

黒ローブ「八神和麻を殺そうと思いまして」

黒ローブはなんの感情の起伏も見せず、淡々と話す。

黒子「それでわたくしたちを人質に?」

黒ローブ「はい、場合によっては死んでいただくかも知れませんが」

本当に淡々と死刑宣告をされる。

黒子(まずいですわ
せめて初春だけでも・・・)

黒ローブ「ああ、貴女が空間転移できることはわかっています
なので、少しでも妙な動きをすればこちらの方に死んでいただきます」

先手を打たれる。
どうやらこちらを監視していたようだ。
そしてその殺気は明らかに本物だ。
浴びたことのないような鋭利な殺意に固まる黒子。

黒ローブ「・・・随分と早いですね
招待状はまだですよ?」

突然、薄暗がりの方へと声を掛ける。

「ま、白井が狙われてるのはわかってたからな
ただあんまり尻尾出さないもんだから泳がせてみたんだが」

いつも通りの気の無い飄々とした歩みで近づいて来るのは、この騒動の中心人物・八神和麻。
あっけにとられる黒子を他所に黒ローブは話を始めた。

黒ローブ「初めまして
貴方は私を知らないでしょう
しかし私は貴方のことを思わない日はありませんでした」

和麻「おーおー、随分と熱心なファンが居たもんだ
サインでもやろうか?」

この男は状況を理解しているのだろうか?
どこまでもいつも通りに話す。

黒ローブ「私が欲しいのは貴方の命です
この状況を見れば素直に殺されてくれると思うのですが」

そういって黒子に歩み寄ると、首筋に袖口から出したナイフを突きつける。

黒子「八神さん!お逃げください!
わたくしは風紀委員になった時から覚悟は出来てますの!」

殺害予告に入ったところで我に返った黒子は叫ぶ。

和麻「ま、なんだ
一応お前らも弟子みたいなもんだからな
見捨てはしんよ」

黒子「そんな悠長な!」

黒ローブ「では・・・」

肯定と受け取ったのか、黒ローブはうつむきながら小さくなにかの呪文を唱える。
詠唱と共に足元に魔方陣が浮かび上がってくる。
なにかに気付いた和麻。

和麻「お前・・・悪魔と契約したのか?
やめときゃ良いのに、ろくなことにならんぞ」

反応せず呪文を唱え続ける黒ローブ。

和麻「なに代償にしたか知らんが、俺一人のために随分仰々しいことで」

黒ローブがピクリと反応した。
詠唱を止め、ゆっくりとうつむいていた顔が上がる。

黒ローブ「仰々しい・・・?仰々しいだと?
貴様がなにをしたかも知らずに!!」

ずっと感情を見せなかった黒ローブが初めて激昂する。
その拍子にローブがずり落ちた。

和麻「なんだ、美人じゃねーの」

美しい金糸の髪に青い目、透き通るような白い肌と、どこかのモデルかと思うくらいに整った顔立ちだった。
憤怒に顔を歪めていなければ。

女魔術師「黙れ!黙れ黙れ黙れ!!
なにを代償にしたかだと!?教えてあげる、私はね、あの人との記憶を全て犠牲にしたわ!
お陰であの人の顔も、声も、名前も全て思い出せない!
それでも、そうなってでもあの人の仇だけは射ちたかったの!」

すべて吐き出しきるといった様相で叫ぶ女。

黒子「・・・仇?悪魔?
一体・・・あなたたちはなんなんですの?」

女魔術師「貴女も、あの人殺しの屑には近づかない方がいいわ
こんな風に不幸にしかならないもの」

先程の憤怒の形相から一転、やさしく微笑む。しかし、その豹変は恐怖を逆撫でするだけだった。
なにも言えなくなる黒子。

謎の文字列って意味あるのかな

和麻「・・・ひとつだけ聞いていいか?」

唐突に真面目な顔で聞く。

女魔術師「いいわ、ひとつだけよ
それ以上は待てない」

懺悔しなさいと、女は思っていた。
懺悔し、命乞いをして、無様に殺されればいい。
あの人に、あの人にあの人にあの人にあの人に!

和麻「じゃあ・・・」

しばしの間。女は期待を込め、全身全霊で声を待つ。









和麻「・・・サヨナラだ」

次の瞬間、女魔術師の両手両足は切り飛ばされた。

女魔術師「・・・へ?え?」

あまりに急な展開に間抜けな声を出す女魔術師。
そして痛みを感じるよりも速く、首を跳ねられた。

女魔術師「・・・あ」

死の間際に見た。
あの憎い男が・・・悪魔が微笑むのを。

はい今日はここまで

>>152
なんかそれっぽいのが欲しかったので適当です

次は一週間以内を予定してます

黒子「ひ・・・あ・・・」

そして黒子は展開についていけず、血を浴びながらも叫び声すらあげられない。

和麻「さて・・・と
おい、立てるか?」

黒子「っ!こないで下さいまし!」

黒子を気遣って近づくが、黒子は拒絶した。
間違いない、この男は危険だ。
命を救われたことは分かっているが、こいつは人を殺して平然としていられる人間であり、人の仇敵になるような人間だ。
それがわかった瞬間、黒子の溜まっていた不信感が爆発した。

和麻「ひでーの、人が気遣ってやってんのに」

黒子(初春を・・・初春を逃がさなければ!)

黒子は最早和麻の声など聞いていなかった。
一種のパニック状態だ。

初春「う、ん?」

そしてタイミングが良いのか悪いのか、初春が目を覚ましてしまった。

初春「うー、あれ?ここどこですか?
ってえ?白井さん・・・え?」

黒子を目に留め、周囲を見回す。
血塗れの黒子に、バラバラ死体。

初春「うそ・・・ですよね?」

黒子「初春!早く逃げますわよ!急いで!」

初春「いや!来ないで!
何でこんなことを!?」

必死で拒絶する初春。

和麻(おー、こうやって冤罪って生まれるんだな)

当の本人は呑気なあたり、黒子も救われない。

黒子「なにを意味のわからないことを言ってますの!?」

初春「や、八神さん!
なんで白井さんを止めてくれなかったんですか!?」

和麻の元に走りよってくる初春。

黒子「初春!そっちは・・・!」

和麻「ん?いや白井はなんもやってないぞ?」

そろそろ助け船?を出す。

初春「え?でも、血塗れですよ!?」

和麻「俺が殺った」

初春「ふえ?」

もはや思考が追い付いていない。

和麻「白井も落ち着け
1から説明してやるから」

黒子「説明なんて要りませんわ!」

もはやヒステリーの域に入り始めている。

和麻「じゃあ殺す以外に選択肢はあったか?
それとも俺に死ねってか?」

黒子「拘束したり説得したりがあるでしょうに!」

和麻「通じる相手に見えたか?」

黒子「それは・・・」

和麻「ほれ、深呼吸しろ」

黒子「・・・話だけは、話だけは聞いてあげますわ!」

和麻「んじゃ場所移すか
死体の隣で雑談も嫌だろ?」

黒子「このままにしていきますの!?」

和麻「そのへんは気にしなくていい」

初春「話がまったくわからないんですけど・・・」

和麻「道すがら白井に聞け
んじゃ移動するぞ」

黒子「わたくし血まみれなのですけれど・・・」

和麻「てめーでどうにかしろテレポーター」

初春「ちょっ、待ってください・・・なんか、急に腰が・・・抜けて・・・」

黒子「初春!?大丈夫ですの!?」

てんやわんやになりながら移動を始めた一行であった。

和麻「はぁー・・・さて、どっから話すかね」

嘆息を一つ。
場所はちかくにあったカラオケに移した。

和麻「まず、お前ら魔術って信じるか?」

黒子「・・・なにを馬鹿なことをと言うところですが、信じないと始まらないのでしょうね」

テレポートで自室に帰り、着替えてきた黒子。

初春「パソコンのおかしなページを見たところまでは覚えていますし・・・
もうそのページには行けなくなってますけど」

和麻「まあ、信じられんかもな
ここは科学の街って売り込みだし」

我慢しかねた様に煙草を吸い出す和麻。

黒子「遠慮して頂けませんの?」

和麻「煙はそっちいかないようにしてるから気にするな」

初春「どうやってですか・・・」

あきれたような二人。

和麻「んでだ、言っちまえば俺も魔術師の一種だ
精霊術師っつってな」

風を操り、煙草の煙を操作してみせる和麻。

黒子「風を・・・操れるんですの?」

初春「風力使いみたいですねー」

和麻「風っつーか気体なら大方全部だな
たとえばこの場に水素だけ大量に召喚することもできるぜ?」

初春「冗談でもやめてくださいよー」

和麻「んで、精霊術師は四種類いてだな
まあこの話はいいか。めんどーだし」

初春「えー、気になりますよー」

黒子「言い掛けて止めるのはどうかと思いますわ」

和麻「言い忘れてたわ、この話は基本他言無用な
ある程度権力もってるやつならみんな知ってるが」

初春「そうじゃないとお仕事貰えませんもんね」

黒子「そういう問題ですの?」

和麻「んで、俺はちょっと昔にいろんな所で暴れてたわけだ
その火種があちこちにあってな」

初春「あれ?精霊術師の話は?」

スルーさせてもらえないようだ。

和麻「んだよそんなに聞きたいのか?」

初春「そりゃもう!」

和麻「はぁ・・・」

心底めんどくさそうに溜め息をつく。

和麻「えーと、この世界には四大精霊ってのがいてだな
世の中のほぼすべてのものがこれに属してるんだわ
んで、その四大・風、火、地、水
それぞれの精霊と交感できるのが精霊術師だ
お前らの超能力と違って精霊を通して世界に自分の意思を直接顕現させることができるんだわ」

黒子「わたくしたちのと違って?」

和麻「そうだ
お前らのは、見た感じ余所の力を無理矢理この世界にねじ込んでるみたいだな
それに対してこっちのは世界の法則を書き換えてるもんだ
力量次第じゃ物理法則なんざ無視できるぜ?
水の中で火を付けたりな」

黒子「・・・聞けば聞くほど信じられませんわね」

黒子はやはり信じられないといった様子だ。

初春「じゃあじゃあ、八神さんは風でなにか凄いことできるんですか?」

初春は期待に目を輝かせている。

和麻「その話は今はいいだろ。そうそう見せられるもんでもねーし
それで、さっき襲ってきた女も魔術師だな」

黒子「魔術師?精霊術師ということですの?」

和麻「いや、精霊術ってのは才能が必要で、才能は基本的に家系で決まる
精霊術以外にも魔術ってのはあってだな」

黒子「頭がこんがらがってきましたわ」

和麻「まぁあれだ、いろんな流派があるわけだ」

黒子「そういえば悪魔がどうとか言ってましたわね」

初春「悪魔もいるんですか?」

和麻「ん、いる
なにかしら生け贄を捧げるだけでぽんと力をくれる優れものさ
その代わり代償がえぐい上に死ぬと魂持ってかれる」

初春「魂ってやっぱりあるんですか?」

和麻「おう、輪廻転生そのまんまで考えてくれ」

黒子「ますます非現実的な話ですわ」

和麻「若いのに頭かてーぞ
そんなんあるんだくらいに思っとけ
知らんだけで世の中魔法も幽霊も妖魔もそこら辺にいるんだ
精霊術師の仕事は基本的に悪霊とか妖魔退治だしな」

初春「妖魔!?吸血鬼とか鬼とか妖精とかサンタクロースとかほんとにいるんですか!?」

やけに食い付く初春。

黒子「サンタは妖怪ですの・・・?」

和麻「おー、大体全部いるぞ
サンタはお前の親父だけどな
っと、話が脱線したな」

いい加減話を戻すことにする。

和麻「俺が火遊びに夢中だった頃にある組織を潰して回ってたんだわ
そんなかにはなにも知らない一般人しかいない支部もあった
多分そこの生き残りか親族だろうな」

和麻が見たところ、あの女が契約していた悪魔は相当下級であった。
にもかかわらず、記憶を丸っと持っていかれているあたり素人だろうと当たりを付けていた。

黒子「・・・罪も無い人を殺したんですの?」

和麻「ん、できる限り皆殺しにしてた」

初春「酷い・・・」

和麻「あの頃は夢中だったからな・・・
なんも目に入ってなかった。それだけだ
言い訳するつもりはないよ」

あっさりと、本当にあっさりと言う和麻に二人はなにも言えなかった。
ただ、声のトーンが少し落ちた事に初春は気づいていた。

和麻「つまらん話したな
俺を危険だと思うならもう近づかない方がいい
またあの手の輩が寄ってくるかもしれんしな」

これで話は終わりだと立ち上がり、そのまま去っていく和麻。

初春「・・・なにに夢中だったのかは話してもらえないんですか?」

ポツリと初春が呟く。

和麻「・・・それこそ言って聞かせるような話じゃねーよ」

拒絶するように扉が閉じられた。

なんか調子いいです
そのうち減速すると思います

思ったより書き溜めできなかったけど投下します

帰り道

時は既に黄昏時。

和麻が帰ってから二人は一言も話していなかった。


初春「・・・なんか・・・大変なこと聞いちゃいましたね」


おずおずと口を開く初春。


黒子「そうですわね

知らないところで魑魅魍魎が跋扈していて、それを人知れず退治する魔法使い・・・

まるでファンタジー小説ですわ」


しかも使い古されたタイプだ。


初春「それでどうするんですか?」


黒子「どう、とは?」


嘘だ、何を聞いてきたのかは分かっている。


初春「八神さんのことですよ

少なくともなにか事情があったみたいですよ?」


分かっているのだ。

しかし、殺意無く平然と人を殺す和麻を見て、純粋に『恐ろしい』と感じてしまった。

いままで風紀委員として見てきたどんな犯人とも違う・・・根本的になにかが違う。

黒子「・・・わたくしは、八神さんと接触するのは危険だと思いますわ

あの方と一緒にいると何に巻き込まれるか分かったものじゃありませんわ」

できる限り平然と、初春を心配させないよう声を出す。

大丈夫だ、誤魔化せる。

初春「白井さん・・・」

いや、誤魔化せていなかったようだ。
初春の気遣う視線が痛い。

黒子「・・・ふぅ、敵いませんわね
率直に言うと、わたくしは八神さんが恐ろしいですわ
前に立つと震えそうになるくらいに」

初春「でも!」

黒子「ええ、わたくしたちを助けて下さいましたわ
それでも、あの方は世界の裏側の人間なのでしょう
だからこそ余り関わるなと言ってくださったのだと思いますわ
今回は勉強になった。それでいいではありませんの」

初春「そんな・・・」

黒子「この件に関しては・・・わたくしたちは無力なのですから」

何から何まで正論だ。黒子は我ながら思う。

黒子(なのに、このイラつきは何なのでしょうか?)

寮が分かれる道に差し掛かる。

黒子「では、これで
また明日ですの」

自分の寮の方角へ歩き出す。
そう、明日から元通りだ。

初春「・・・白井さんがそう決めたのなら仕方ないかも知れませんがっ!
私っ!そんな白井さん好きじゃないです!」

突然初春がそう叫ぶと、走っていってしまった。

黒子(・・・どうすればいいんですの?)

加勢?邪魔にしかならないだろう。
バックアップ?廃ビルから出るときに何処かに連絡をしていたことから、既に協力者がいるのだろう。
そもそも私は彼の力になりたいのか?
懺悔でもさせたいのか?

黒子「どうしろって・・・いいますの?」

そう小さく呟いた。
何故だろうか、涙が溢れていた。

「あれ?黒子どうしたの・・・ってあんたなんで泣いてんの!?」

和麻「よう土御門、後始末ごくろうさん」

和麻は土御門の部屋にいた。

土御門「まったくだぜぃ
急に呼び出されたと思ったら血の海どうにかしろとか嫌がらせかと思ったにゃー」

うんざりといった風に首を振る土御門。

土御門「それで、なんで俺の部屋にくるのかにゃー?
厄介事はそろそろ返品したいぜぃ」

和麻「なに、理事長に言伝てだ」

土御門「・・・なにかあったのか?」

サングラスの奥の眼光が鋭くなる。

和麻「そんな気張らんでいい
ただ、明日弟の煉が社会見学に来るんでね」

土御門「なるほど・・・」

学園都市に入る許可をよこせということだろうと思った。
しかし・・・。

和麻「つーことだから、煉になんかあってみろ
この街をただの窪地にすっからな?」

にやけた顔のまま、しかしとんでもない量の殺気が溢れだす。

和麻「一言一句正確に伝えろよ?
聞いてねーじゃ困るからな」

冷や汗でびしょびしょになりながら土御門は声を絞り出す。

土御門「・・・噂に違わぬブラコンぶりだにゃー」

和麻「文句でもあんのか」

土御門「いや・・・気持ちはよくわかるぜぃ」

力で我を押し通せる。
その事を羨ましいとも思うが、流石に口にはしない。

土御門「わかった、アレイスターに伝えとくぜよ」

和麻「頼むぞ?」

と、そこで土御門がなにかを思い付いたようだ。

土御門「そうだ、学園都市にもレンタカーとかあるんだぜい?」

和麻「ほー、気が利くな」

土御門「まぁな
あとで場所の情報送っとくぜよ」

和麻「ありがとな
んじゃ良い週末を」

それだけ言うと今回はきちんと玄関から出ていった。

土御門「ん、良い週末を」

和麻は不覚にもニヤリと笑う土御門に気付かなかった。

御坂「ほら、落ち着いた?」

道でなぜか泣いていた黒子をなんとかなだめながら、御坂たちは寮へと帰ってきていた。

黒子「はい、ご迷惑お掛けしましたの」

黒子はまだ目が赤いが、 平静を取り戻したようだ。

御坂「何があったの?
あんたが泣くなんて相当よ?」

黒子「・・・仕事でこっぴどく失敗してしまいましたの」

御坂「へぇ?
私には言えないことなのね?」

伊達に付き合いが長いわけではない。
一発で看破されてしまった。

黒子「・・・ごめんなさいですの」

御坂「はぁ・・・まったくあんたは・・・」

長いだけに、同居人の無茶はお互い今に始まったことではない。
ため息一つで全部吐き出しきった御坂。

黒子「そういうお姉様は体調はもう大丈夫ですの?」

御坂「あー・・・黒子には言っとくね
あの変な警備員探してたのよ」

黒子「!!」

びくりと、無様なほどに反応する黒子。

御坂「なんだ、あんたのこともアイツが原因なんだ・・・
ならなおさら黙っちゃおけないわね」

そういって立ち上がる御坂。
八神和麻を探しにいくのだろう。

黒子「お、お待ちください!」

御坂「たぶんlevel4くらいの能力者だと思ったから油断しなきゃへーきよ
油断してたなんて言い訳する気はないけど、このままじゃlevel5なんて恥ずかしくて名乗ってられないわ」

御坂であれば至極当然な、しかし黒子にとっては絶対に行かせられないことを言う。

黒子「しかし・・・」

そこまでいいかけ、まさか説明する訳にもいかず、確実に信じてもらえないことを思い出す。

御坂「んじゃちょっと行ってくるから
寮監にはうまくいっといてね」

黒子「明日!
明日は休日ですわよ!
明日いけばいいと思いますわ!」

咄嗟だったが、悪くない理由だと思った。

御坂「あのねぇ・・・
まさか警備員の詰め所に殴り込むわけにもいかないでしょうが
今の時間なら警邏中だろうから一人だろうし」

黒子「うっ・・・」

返す言葉が見つからない黒子。
次の言葉を探すうちに、御坂は本当に出ていってしまった。

黒子(まさか殺すことは無いと思いたいのですが・・・
どうか、八神さんが見つかりませんように・・・)

もう黒子には祈ることしかできなかった。
信仰無き科学の住人の祈りが届くことがあるのかはわからないが。

今日はこれまでです
次は今週中にがんばります

ちょこっと投下しますー

とある学生寮前
土御門との話を終えた和麻がいた。

和麻「さて、そろそろ『下準備』でも始めるべきかね?」

呟くと第九学区の方へと足を向けたが・・・。

和麻「?」

進行方向に見知った気配を見つけた。
それは以前伸した御坂美琴という少女のようだ。
誰かを探しているようだ。

和麻(んだよ御礼参りか?
めんどくせーな)

厄介事そのものでありながら厄介事には基本的に関わりたくない和麻は、風を操り、自身に完全な迷彩を張る。

和麻(こんなもんか)

なに食わぬ顔で目的地へと歩き出す和麻。
暫く行くと御坂とかち合った。
普通なら完全に姿を消している和麻に気づくはずもなく、そのまますれ違うはずなのだが・・・。

御坂「・・・そこ!」

御坂はまるで見えているかのように正確に和麻へと電撃を放った。

和麻「チッ・・・」

舌打ちをしながら迷彩を解き、回避する和麻。

御坂「私の周囲には電磁バリア張ってあんのよ
なんの装置使ったかは知らないけど残念だったわね」

得意気に語る御坂。

和麻「なるほどねぇ
んで?なんか俺に用か?」

あくまでとぼける和麻。

御坂「さすがにどこの誰ともわかんないやつに負けたんじゃ学園都市第三位の名折れなのよね
そういうわけだから私と勝負しなさい!」

ビシッと指を突き付け、宣戦布告をする。

和麻「すまんな、今日は閉店済みだ
また明日頼むわ」

それだけ言うと、和麻は踵を返すが。

御坂「そういう訳にも・・・いかないのよ!」

当たれば消し炭になるような電流をまっすぐ和麻にむかって放つ。

和麻「はぁ・・・」

最近多くなった溜め息を付きながら見もせずに避ける。

和麻「俺の敗けでいいからそれでいいか?
俺にも予定があんだよ」

御坂「私の大事な後輩泣かせた分ぶん殴らせてくれるならいいわよ?」

和麻「泣く?誰がだ?」

本気で心当たりのない話をされ、怪訝な顔になる。

御坂「すっとぼけんじゃない!
黒子になにしたのよ!」

和麻「いやいやその話はマジで知らん」

御坂「嘘吹いてんじゃないわよ!」

絶え間なく電撃を飛ばすが、かすりもさせずに避ける和麻。

和麻「おまえめんどくさいとか言われねーの?
相手してらんねーわ」

いい加減焦れた和麻は懐に手を入れ、何かを放った。

御坂「このっ!」

電撃で撃ち落とすと、それは一枚の札だった。

御坂「なんのつもり・・・っ!?」

それを確認できた瞬間、なんと札が煙を発しながら爆発した。
煙で視界がゼロになる。

御坂「不意打ちしようって?
無駄よ!」

電磁バリアに神経を集中させ、来るはずの攻撃に備える。

御坂「・・・・」

なにも来ない。

御坂「・・・・・?」

やはりなにもこない。
やがて、煙が晴れてきた。

御坂「・・・え?」

誰もいなかった。
どこからか声が聞こえてくる。

和麻『今日はそれなりに急いでるんでね
また今度遊んでやるよ』

それは背後からのようで、前からのようにも聞こえ、近くにも遠くにも感じた不思議な声だった。

御坂「な・・・ば、バカにしてえええええぇぇぇ!!!!」

その日、第七学区のなにもない道路に雷が落ちたという。

めっちゃ眠いので申し訳ないけどここまでにします
次は日曜日を予定してます

なお、次はちょっとした幕間になる予定です

投下します

朝、学園都市、ゲート前
学園都市に入るのも出るのも煩雑な手続きを必要とするためか、あまり人気はない。

和麻はレンタカーを借り、煉を待っていた。

和麻「んで?」

土御門「どうかしたかにゃー?」

青ピ「なぁなぁ?八神さんの家族の人ってどないな人なん?
お姉さんだったり妹さんだったりせーへんの?」

上条「久々にゲートまできたなー!」

青ピ「普段こっちまでこーへんもんなー」

和麻「何でお前らがいるんだ!?」

なぜかゲート前で待ち構えていた3馬鹿を引き連れて。

土御門「学園都市案内するなら詳しいやついた方がいいと思ったんだぜい」

和麻「なら三人もいらねーだろ!
土御門以外とっとと帰れ!」

青ピ「そないなけったいなこと言わんと
楽しそうなことはみんなで分かち合うべきやと思うで!」

当麻「俺土御門に叩き起こされて理由も知らずに来たのですが・・・」

和麻「ならそのまま帰っていいぞ
なんなら小遣いやるから・・・」

「あ!にいさまー!」

最悪のタイミングだった。
恐らく理事長どのが気を使って手続きを省略してくれたのだろう。

和麻(あとでアイツのビル5.5度傾けて観光名所にしてやる・・・)

駆け寄って抱きついてくる弟を受け止めながら物騒なことを考える和麻。

和麻「おう煉、元気そうで何よりだな」

煉「はいっ!兄様もお元気そうで」

女と見間違わんばかりに可憐な容姿。
中学生のわりに高くない身長とまだ声変わり前の高い声とが相まって男に告白されたことさえある大切な弟との再開だ。
嬉しくないはずはないが・・・。

和麻「それで?」

煉「?なんでしょうか」

和麻は嫌でも煉の後ろから歩いてくる少年が目に入ってしまう。

「ここが学園都市か、面白いところだね」

和麻「なっ・・・んでソイツがここにいるんだ?」

ほぼ悲鳴のような声を上げかけ、無理矢理抑える和麻。

煉「朧《ロン》君は前から学園都市に興味があるって言ってたので一緒に来るか聞いてみたんです」

朧「やあ、和麻さん
お久しぶりですね」

敵意の欠片も持たず、完璧に微笑むそれは、和麻の兄弟子にしてトラウマ混じりの数少ない天敵、仙人・李朧月《リー・ロンユエ》であった。

?一方、なにも知らぬ野郎共。

青ピ「おお!あれ『妹』!?
めっちゃかわええやん!」

当麻「でも彼氏いるみたいだぞ?
最近の『小学生』は進んでますねぇ
なあ?シスコン軍曹どの?」

土御門「馬鹿め、一番かわいいのは舞夏と決まっているのにゃー」

土御門(煉君のことは教えない教えない方が面白そうだにゃー)

こそこそと話す二人と、真実を知りながら乗っかる土御門。
すると、煉が一人で三人の元へと来た。

煉「えっと、こちらでの兄様の知り合いだと聞きました
神凪煉です、今日はよろしくお願いします」

ペコリとお辞儀をする煉。

土御門「おー、礼儀正しい子だにゃー
土御門元春だぜい
八神さんどうかしたのかにゃー?」

煉「朧君・・・僕の友達と話があると言ってました」

少し心配そうに言う。

当麻「上条当麻だ
やっぱり八神さんも兄として気になるのかな?
ん?八神さん?」

何かに気づく当麻。
しかし、口を開く前に青ピが我慢しかねたように喋り出す。

青ピ「いやぁ!こんなかわええ『女の子』とお友達になれてぼかぁ感激ですわ!」

ピシリと煉が固まる。

短いけどこのへんで
来週は忙しいので週末くらいに投下します

無論、早く上がればそのときにあげますが

なんか進まない・・・
とりあえずできたところ投下します

和麻「師兄殿・・・いまさらあなたがどこに現れようが驚きませんが・・・なぜこの街に?」

煉を3馬鹿の元へと送り出したあと、和麻は世にも珍しく姿勢を正して問う。

朧「こちら側の人間ならこの街に興味を持つのは当然だろう?」

何一つ嘘はないと言わんばかりの顔で言ってのける。
あるいは本当にそうなのかもしれないが。

和麻「・・・まぁ、俺に不都合が起きなければなんでもいいですよ」

目の前の化け物から本音を引き出すなど不可能なことを知っている和麻は早々に切り上げる。

朧「ああ、そうそう
君にプレゼントがあってね」

唐突な発言に和麻の顔がこれ以上ないほどにひきつる。

和麻「・・・まさか、またなにか新しい宝貝でも開発なさったのですか?」

少し後ずさる和麻。

朧「まあまあ、見るだけ見てってよ」

絶妙な、逃げに入る直前のタイミングで装飾のほとんどない指輪を投げて寄越す。

和麻「おっと・・・あー、あれですか?
時限式で爆発するとか?」

タイミングをずらされた和麻は素直に受け取ってしまう。

朧「まあまあ、はめてみてのお楽しみってことでどうだい?」

いたって爽やかに、にこやかに、しかし何かあることを言外に認める。

和麻「お楽しみは最後までとっておきたいのですが・・・
なんなら墓までお楽しみでも構いませんぜ?」

無駄な抵抗だとわかっていながら抗う。

朧「僕からのプレゼントだって言ってるんだよ?」

和麻「あー・・・わかりました」

どこまでもにこやかな脅しに屈する和麻。
渋々と怪しさ全開な指輪を中指に付ける。

朧「ああ、そうそう
その指輪ははめると24時間ははずせないからね?」

和麻「・・・」

はめたあとに言うなと思うが、言ったところで無駄な事を和麻は知っていた。

朧「じゃあいこうか
煉君達を待たせているからね」

何事もなかったかのように四人の元へと向かう朧。
しかし、和麻はそれどころでは無かった。

和麻「・・・師兄、今回のコレはどういったものか説明していただいてもよろしいでしょうか?」

顔をひきつらせながら念のため聞いてみる。

朧「前にも言ったと思うけど、師の元に帰ってきて欲しいと思っているんだよ
だからね、今日一日精霊の事を忘れてほしいんだ」

和麻(くそったれが・・・)

朧「なにやら不満そうだね?」

和麻「師兄のお心遣いに感謝していたところです
そういうわけなんで外してください」

朧「いったでしょ?
24時間は外せないって
指でも落とせば別かもね」

それだけいうと煉達の元へと行ってしまう。
和麻は精霊の声が消え、すっかり静かになった違和感に渋い顔をしながら着いていくしかなかった。

「僕は男です!!!!」

そんな声が聞こえ、なんとなく展開が読めたが笑えない和麻だった。

以上です
次も一週間後を考えています

よっし上げます
意気込んだわりには少ないです

青ピ「いやほんとすまん!
煉君があんまりかわいい顔しとったからぼかぁてっきり・・・」

煉「もういいですってば!」

当麻(男の子だったのか・・・)

土御門(笑うな・・・まだ我慢だ・・・)

順調に好感度を下げる青ピと顔を真っ赤にして怒る煉、素直に感心する当麻に車の影で必死に笑いをこらえる土御門。

朧「やあ、いったいどうしたのかな?」

煉「あ、朧君!
・・・大丈夫だった?」

まだ少し顔が赤いが、第一声に朧を心配する煉。

朧「お兄さんにお礼を言ってただけだからね
あと師匠からの贈り物もあったし」

煉「あ、紹介しますね
僕の友達の李朧月君です」

朧「はじめまして
気軽に朧って呼んで欲しいな」

見る者を問答無用で安心させるような完璧な笑顔を作る朧。

当麻「はじめまして、上条当麻ですよー」

そんな風に自己紹介が始まったところだが、和麻は少し離れたところでしゃがみこみ、指輪をどうにかしようと足掻いていた。

和麻(解呪は・・・だめだ三日は掛かる
破壊は・・・指に空間レベルで同化してるのか?腕ごと吹き飛ぶなコレ
くっそ、どんだけ『堅い』んだ・・・
精霊との交信もできないんじゃ契約も意味ないか・・・?
いっそ本当に指詰めるか?)

パニックに近い状態になった和麻は堂々巡りの末に危ない結論に達しかけていた。

「・・・さま?・・・いさま!・・・にいさま!」

和麻「ん?おおう煉か
どした?」

気がつくと煉が目の前まで来ていた。

煉「どうしたって・・・珍しいですね
皆さんがそろそろ移動しようと言ってますよ?」

和麻「おいおい、移動しようって車出すの誰だとおもってんだよ」

異変を悟られないよう、いつも通りに皮肉を言うと車の方へ歩き出す。

和麻(最悪師兄もいるしなんかあってもどうにかなるか・・・?)

こっそり朧にアイコンタクトを送ってみるが、見事にスルーされた。

煉「車なんですか?」

和麻「・・・ん、おお
レンタカーだけどな」

土御門「本日は不肖ながらわたくしめが道案内させていただくぜぃ」

青ピ「車も久々やなー」

上条「俺は小萌先生の車にちょこちょこ乗るけどな」

口を滑らせる当麻。

土御門「なんと!?」

青ピ「かみやん・・・許すまじ!」

一気に殺気立つ二人。

上条「ちょ、補習で遅くなったときに送ってもらっただけですのことよ!?」

じりじりと距離を詰め始める二人に慌てて弁解する。

和麻「んだよおまえらロリコンか?
その年で特殊な性癖持つと苦労するぞ?」

呆れたように言い、返事は聞かずに車に乗り込んだ。
煉と朧はすでに乗り込んでいる。

青ピ「かみやん、後できっちり話つけるで!」

土御門「これは公開リンチ確定だにゃー」

そう言って二人も乗り込む。

上条「あああ、不幸だ・・・」

辛気臭く呟くと、とぼとぼと最後に乗り込む当麻であった。

以上です
つぎは二週間以内と猶予をいただきたいです。
大変申し訳ない。
早く上がれば早く上げますので。
申し訳ない



ところで「李朧月」ってなんて読むの?
「り ろうげつ」でいいの?「朧」って一文字の場合は「おぼろ」って読むの?
こういうのは読み仮名振ってほしいわ

やっと先の展開に目処がたったので投下します
呼んでくださる方々、お待たせして申し訳ありません

土御門「とりあえず行き先はセブンスミストでいいかにゃー」

上条「まぁあそこならなんでもあるしな」

適当に車を走らせ始めると、行き先の相談が始まった。
当然煉は助手席だ。

和麻「おいおい旅行に来てまでショッピングモールってどうなんだよ」

青ピ「言うても学園都市に観光名所なんてあらへんで?」

朧「研究施設とかは見られないのかい?」

土御門「学園都市の研究施設は極秘情報の塊だからにゃー
部外者じゃまず見られないと思うぜい」

和麻「煉はなんか見たいもんとかあるのか?」

煉「いえ、僕は兄様に会いに来たので特には」

純真無垢な笑顔で即答する煉。

上条「なんていい子なんだ・・・っ!
俺の回りのやつらに爪の垢でも飲ませたいですよ」

土御門「ほんと、この二人が実の兄弟とは信じられんにゃー」

朧「それは僕も常々思っていました」

和麻「土御門、お前後で話し合おうな?」

土御門「なんで俺だけ!?朧君だけ贔屓する気かにゃー!?」

早くも打ち解けた様に話す五人。

青ピ「素直な弟系ショタ・・・ハァハァ」

一番後ろの隅で怪しく呟く青ピ。
その声が唯一届いた朧は少し距離を取った。

結局、セブンスミストに行くことになった一行。

煉「おっきいですねぇ」

青ピ「!!
煉君!今のもっかい言ってくれへん!?」

和麻「殺すぞお前」

朧「でもこの規模はすごいね」

上条「とりあえず適当にぶらぶらしようぜ」

土御門「そうだにゃー」

煉と朧を先頭に歩き出す。
青ピと当麻は二人と話している。

和麻「おい、土御門」

四人とは少しだけ距離をとり、和麻は土御門に話しかけた。

土御門「どうかしたのかにゃー?」

和麻「先にいっとく、俺は今風術が使えない」

土御門の目付きが鋭くなる。

土御門「そりゃまたなんで」

和麻「理由は聞くな
まあなんかあっても多少のことなら煉がどうにかできるだろうが・・・」

土御門「さっき李朧月になんか渡されてたな
それが原因か?」

和麻「よく見てるな」

土御門「奴は何者だ?」

和麻「んー・・・
俺の兄弟子」

少しの間のあと、嫌そうに言った。

土御門「兄弟子?精霊術師か?」

和麻「いや、違う
仙人だ」

土御門「せっ・・・!
仙人って・・・冗談だろ?」

声が大きくなりかけたが、寸でのところで押さえ、気づかれてないかと前の組・・・主に朧の様子を伺う。

和麻「無駄だ
全部聞こえてるし全部知ってるよ
あの人はそういう人だ」

土御門「ってことは何か?
お前さん・・・仙人なのか?」

仙人とは、仙術を修め、自然と一体となり、世界と一体となる奥義にたどり着いた者達の総称だ。
その者は不老不死となり、神の如き術を使うと言う。

和麻「いや、俺はちょっとかじっただけだ
今は精霊術の下地に使わせてもらってる」

土御門「下地って・・・」

絶句するしか無かった。
仙術はほぼすべての魔術の上位に位置する術である。
土御門は精霊術に関しては門外漢であるものの、その行為がどれだけ前代未聞のものかはすぐにわかった。

和麻「つーわけだから今日は開店休業だ
トラブルあったらよろしく頼むわ」

真面目に聞いた土御門が哀れに見えるほど軽く言う和麻。

土御門「ま、まてまてっ
なんでその兄弟子がわざわざお前さんにそんなことするんだ」

和麻「あー・・・
たぶん只の嫌がらせじゃねーか?
前にもこんなことあったし」

和麻は少し前に送られたあの胸くそ悪い人形を思い出していた。

土御門「・・・なんとなく李朧月とかいうのの人となりがわかってきたぜい」

和麻「ん、そういうわけだから気を付けろ?
正体知っちまった以上お前も・・・」

いいかけたところで言葉を切る。

朧「ん?続きをどうぞ?」

いつの間にか音も無く隣を歩く朧に土御門が固まる。

朧「どうしたんだい?おいてくよ?」

当たり前のようににっこりと微笑む。

朧「とりあえずあそこの喫茶店に入ることになったみたいだよ?」

指差す先を見ると煉が手を振っている。
だが、後ろの店からなぜか当麻が飛び出してきた。

上条「うおおおおお!!!
なんでこんなところにいんだよ!?」

御坂「待ちなさいいい!!
いい加減勝負しろーー!!」

追って出てくる和麻としてもあまり会いたくない帯電した少女。

土御門「あーあーかみやん・・・って
なんであんたまで隠れてるんだにゃー?」

なぜか物陰に隠れている和麻。

和麻「なんか知らんが喧嘩売ってくるんだよ・・・」

朧「そりゃまた命知らずだね
でもそれなら、なんであの子は生きてるんだい?
僕も師匠もそんな甘ったれに育てた覚えはないよ」

和麻「育てられた覚えもありませんがね
この街のやつ無闇に殺っちまうと後から損失額の請求とかされそうじゃないですか」

土御門「なあなあ、それはいいけどこっち向かって来てるぜい?」

上条「八神さああああん!!
助けてくれええええ!!!」

叫びながらこちらに全力で走ってくる当麻。

和麻「な!?空気読めよバカ野郎!」

思わず顔を出して怒鳴ってしまう。

御坂「なに!?あの警備員もいんの!?
ちょうどいいわ!二人まとめてかかってらっしゃい!!」

どこまでもヒートアップする御坂。

和麻「うーわ・・・」

朧「なつかれてるみたいでよかったじゃないか」

和麻「それは中国の隠語《スラング》かなにかですかね?」

観念して物陰から出てくる和麻。
土御門はいつの間にか店から出てきた青ピと静観に徹している。

和麻「一応聞いておきますが、可愛い弟分の代わりに相手してくださるとかないんですかね?」

朧「べついいけど彼女がどうなっても良いのかな?」

和麻「ハァ・・・」

嘆息する他なかった。
そこに当麻が走りよってくる。

上条「八神さんもビリビリに追っかけられてるんですか?」

和麻「ん、まあいろいろあってな」

御坂「さあ!どっからでもかかってらっしゃい!!」

和麻「おめーも大変だな
んで?お前は何が使えるんだ?」

上条「なんにも
上条さんは正真正銘のlevel0ですよー」

御坂「ちょっと!無視しないでよ!」

和麻「おいおいなにやったら無能力者がlevel5に追っかけ回されんだよ」

上条「いや不良に絡まれてるのを助けたらなぜかこんなことに・・・
あああ不幸だぁ・・・」

和麻「おいおい逆恨みもいいとこじゃねーか・・・」

御坂「無視すんなや!!!」

ずっと放置されていた御坂がついにキレる。
人ひとり消し炭にして余りある電撃を飛ばしてくる。
ちなみにここはショッピングモールの中だ。

上条「うお!ばか!!」

とっさに当麻が前に出て右腕を突き出すと、なにかが割れたような音と共に電流が掻き消された。

御坂「でたわねインチキ能力!」

和麻「うお!?なんだそりゃ
無能力じゃなかったのか?」

さすがの和麻も驚きの声をあげる。

上条「測定では無能力なんだけど、俺の右手はあらゆる異能を打ち消す力があるんだ
『幻想殺し』って呼んでるんだけど」

和麻「なんだよそれチートじゃねーか」

上条「右手以外は生身ですからねー
思ったより不便な能力だよ」

和麻(不便だ?バカ言ってんじゃねーよ
ほんとにすべての異能を消せるなら俺たちゃ廃業じゃねーか)

恐らく上条当麻はその能力の本当の価値に気づいていないのだろう。
彼がその気になれば魔術の世界の仕組みさえ変えかねない力だと言うのに。

和麻「んじゃあれだ、共闘な
お前が前衛で俺は後衛」

上条「後衛って・・・なにするんですか?」

和麻「応援とか?」

上条「いやいやそれってなにもしないってことですよね!?」

和麻「しゃーねーだろ、こちとら無力で善良な一般人だ」

御坂「作戦会議は終わったかしら?
私も友達待たせてるのよ」

上条(ならこっちにくるなよ・・・)

思ったが言わない大人な当麻だったが・・・。

和麻「ならこっちきてんじゃねーよバカじゃねぇの?」

言いたい放題な和麻。
御坂の額に青筋が浮く。

御坂「へぇ・・・?
なに?喧嘩売ってるわけなんだ
一回まぐれで勝っただけで調子のってるの?」

帯電量が徐々に、しかし目に見えて大きくなる。

上条「八神さん・・・なんで火に油注ぐんですか・・・」

和麻「あれだよ
イラつかせて隙をつくるみたいな?」

上条「なんで疑問系なんですか!?」

和麻「よっし、んじゃあと任せたぞ前衛君」

上条「えっ・・・ちょっ!?」

抗議の声を上げようとするも、御坂が動く。

御坂「ふっとべえええええ!!!」

上条「ぎゃあああああ!!!
不幸だぁぁぁぁぁ!!!!」

ほぼ最大火力の電撃を浴びせかけようとした時、当麻の待ち望んだ仲裁者がやっと現れた。

以上です
次は一週間後を予定しています

あとそろそろオリ設定が所々出てきますがご容赦を
どちらの原作も壊れないように気を付けますが

上げますね
どこの設定が壊れてる等言ってくださると嬉しいです
今後の参考になりますので

煉「待ってください!」

御坂の前に手を広げて割り込む少年。

御坂「ちょっと!危ないわよ!」

攻撃の寸前で止まる。

煉「さっきから聞いていれば横暴ですよ!」

自分よりも背の低い少年に睨まれ、半呆然とする。

煉「貴女の力は何のための物なんですか!!
無抵抗な人を傷付ける為の物なんですか!?
なにがあったかは知りませんが、上条さんは本当に嫌がってます!
これ以上やるなら僕が相手になります!!」

和麻「いいぞー煉ー」

煉「兄様は黙っててください!」

上条「八神さん・・・空気読みませんか?」

最悪のタイミングで茶々を入れる和麻。
だが、御坂は考え込んでいた。

御坂(たしかに、アイツは私を助けようとして割り込んできたんだっけ・・・
それなのにいちゃもんつけて追いかけ回して・・・
今日だって友達と遊びに来てるのよね
それを邪魔して襲いかかって、最悪じゃない
その上襲われてるっていうのにアイツは一度も反撃したことないし・・・)

御坂は自分の手をじっと見つめる。

御坂(なんのための力・・・か
考えたこともなかったな)

御坂「・・・いいわ
アンタ、上条当麻だっけ?」

上条「え?あ、はい」

御坂「もう追っかけたりしないからそんなにかしこまらないでよ
その、あの・・・悪かったわね」

顔を背けて、小さな声でではあるが、確かにその声は当麻の元へ届いていた。

上条「ん、気にすんな
俺も気にしてないよ」

とても爽やかな、まさに青春という絵であった。

和麻「いやぁなんというか、清々しいねぇ」

煉「話せばわかってくれる人でよかったです」

御坂が考え込んでいる最中に当麻の背後の和麻の元へ移動していた煉。

和麻「んじゃ大団円ってことで・・・」

御坂「待ちなさい」

喫茶店のほうへ向かおうとしたが、呼び止められる。

御坂「コイツのことはいいとして・・・アンタを見逃す謂れはないわよ」

和麻「はぁ?
お前ここは良い話だなーで締めるところだろ」

煉「兄様・・・またなにかやらかしたんですか?」

呆れ顔になる煉。

和麻「失礼な
なんか後輩泣かせたとか言っていちゃもんつけてくんだよ」

ますます呆れた顔になる煉。

煉「そうなんですか
なら素直にやられてください」

そう言うと当麻をつれ、土御門たちと合流するとなんのためらいもなく喫茶店に入ってしまった。

和麻「おい煉、れーん」

呼ぶも、無情に扉は閉じられる。

和麻「なぁ、実の兄にひどいと思わねーか?」

御坂「知らないわよ
というかあの子と兄弟なの?
似てないわねー」

和麻「そうか?」

御坂「ま、そんなこと今はいいわ
私の大事な後輩泣かせた以上は、きっちり落とし前つけてもらうんだから」

和麻「だからなぁ・・・
俺は白井に何かした覚えはないぞ?」

「おねぇさまぁぁぁ!おまちくださぃぃぃ!!」

突如として現れ、話を割って御坂に組み付く少女。

御坂「ちょ、黒子!?
何で止めるのよ!」

黒子「勘違いですの!
八神さんは関係ありませんの!」

御坂「関係ないってどういうことよ
黒子が泣くなんてただ事じゃないわよ?」

黒子「それは・・・えっと・・・」

返答に困る。
こっそり和麻に視線を向け助けを求めるが、肩をすくめられてしまった。

「私がお話しします」

御坂「え?なに、初春も関係してるの?」

遅れて喫茶店から出てくる初春。

初春「はい
なので、とりあえず喫茶店入りませんか?」

周囲を見渡すと、人だかりができていた。
ちらほらと三角関係や痴情の縺れなどの不穏な単語まで聞こえる。

御坂「・・・ちゃんと説明してよ?」

少し納得いかない様子だが従うことにした。

以上となります
次は火曜日くらいを予定してます

不満点やおかしい点は言ってくださると助かります
何分初めてなもので

あげますねー

煉「あれ?兄様?
ずいぶん早かったですね」

和麻「開口一番それかよ・・・」

中に入ると、和麻達のグループと見知らぬ黒髪の少女が同じテーブルに座っていた。

御坂「佐天さん待たせちゃってごめんね」

どうやら名前は佐天というらしい。

佐天「いえいえ、いつものことですもん
ただ上条さんが先に来たのにはビックリしましたけどねー」

煉「佐天涙子さんです
そちらの初春さんのご学友だそうですよ」

どうやら自己紹介は済んでいるようだ。

和麻「ん、八神和麻だ
よろしくな」

佐天「煉君のお兄さんですね!
やだもう兄弟そろってイケメンじゃないですかー!」

ずいぶんとハイテンションな娘である。

和麻「そりゃどーも」

佐天「ご紹介に預かりました佐天涙子です!
中学1年生で絶賛彼氏募集中です!」

青ピが目を輝かせたが、恐らく彼に春はこないであろう。

御坂「初めての人もいるし一応名乗るわね
御坂美琴よ
常磐台中学二年生」

黒子「白井黒子ですの
お姉さまと同じく常磐台中学の一年ですの」

初春「柵川中学一年初春飾利です
白井さんとは同じ風紀委員なんですよ」

煉「神凪煉です
中学一年です」
?
朧「李朧月です
煉君と同じ学校です
朧って呼んでくれるとうれしいな」

その後は三馬鹿も続き、待ちかねた青ピがドン引きされたところで佐天から質問が入った。

佐天「はいはーい!
なんで和麻さんと煉君は名字が違うんですかー?」

和麻「俺は『でき』が悪くて親父に勘当されてっからな」

煙草に火を付けながら軽く言う。

佐天「ほえー
勘当なんてはじめて聞きました
やっぱりあれですか?ぶん殴られて、でてけー!みたいな?」

黒子「ちょっと佐天さん
失礼ですわよ」

さすがに突っ込んだ話題に白井が止める。

和麻「そんなにドラマチックなもんでもねー
たんに家のやり方と反りが合わなかっただけだ」

煙を気だるげに吐き出す。

佐天「なるほどなるほどー」

分かってるのか分かってないのかよく分からない反応。

御坂「それで?
黒子になにがあったのよ」

当然と言えば当然だが、やはり話題はこの事になってしまう。
意を決したように初春が喋りだした。

初春「昨日、私はミスでアンチスキルに捕まってしまいました
そのせいで白井さんも危ない目に遭って・・・
その時に八神さんが助けてくれたんですよ」

ほぼ一息に喋る初春。

黒子「そ、そうなのです!
それで自分の無力さを実感してしまいまして」

アイコンタクトを受け取った黒子はあわてて繋ぐ。

佐天「昨日そんなことあったの!?」

土御門「そうだにゃー
たまたま俺も現場にいたんだけど凄かったぜぃ
八神が並みいるアンチスキルをちぎっては投げってな具合で」

察した土御門が援護を送る。

御坂「ちょっと黒子も初春も怪我とかなかったの!?」

黙っていたということよりも心配が先に立ってしまう。

黒子「幸い助けが早かったお陰で何事もございませんわ」

御坂に嘘をつく。
その行為に強い胸の痛みを感じ、少し顔をしかめる。

御坂「そうだったの・・・
ごめんね、なんにも知らないで・・・」

黒子「お、お姉様はわるくありませんことよ!
黒子のことを思ってくださっていたことは充分つたわっておりますの!」

御坂「黒子・・・ありがとう
でも八神さんには謝らないとね
けじめだもん」

そういうと、姿勢をただして和麻に顔を向ける。

御坂「なにも知らずに一方的に攻撃したりしてごめんなさい
あと、二人を助けてくれてありがとう」

和麻「気にしちゃいねーよ」

それだけ答えると紫煙で空気を汚す作業を再開した。



煉「珍しいですね兄様」

先程の話題で少し重い空気になりかけたが、話が終わったとたんに我慢しかねたとでも言うように佐天が初春と黒子に質問攻めを開始し、少ししたところで煉が小声で話しかけてきた。

和麻

和麻「ん?なにがだ?」

煉「あれだけで済ますなんて
いつもなら損害賠償だ慰謝料だーって・・・」

和麻「前々から思ってたが、お前とはいっぺん差しで話し合う必要がありそうだな?」

そんな仲睦まじい(?)会話の最中であった。

初春「あ、私の携帯ですね」

携帯が鳴り出した。

初春「ちょっと失礼しますね」

そう言って席を立ち、一分もしないうちに大慌てで戻ってきた。

初春「白井さん!
衛星がこの辺りで重力子の増大をとらえたそうです!」

黒子「!!」

その他一同「??」

はい、今日は以上です
つぎも一週間後になると思われます
締め切りは守りたいです

投下します
あんまり量ないです

佐天「なにそれどういうこと?」

和麻「重力子?
モールのど真ん中で加速実験中ってか?
さすがは学園都市、やることがちげーな」

黒子「バカなことをいっている場合ではありませんの!
一般人を急いで退避させませんと!初春もお急ぎなさい!」

初春「は、はい!
とりあえず皆さんは私についてきてください!」

言って立ち上がり、出口へ向かう。
黒子は店内にいる人に避難を促している。

和麻「ん?」

その時和麻のポケットの携帯が鳴った。

和麻「黄泉川か?」

黄泉川『和麻!今何処にいるじゃん!?』

和麻「前におんなじ台詞聞いたぞ?
幸か不幸かは知らんがお目当てのモールだ」

黄泉川『ちょうどいいじゃん!
応援がいくまで風紀委員と連携とって一般人の避難誘導頼むじゃん!』

和麻「んなもんやったことねーぞ」

黄泉川『なんでもいいからモールから逃がすじゃん!』

和麻「了解
うまいことやっとくわ」

向こうから慌ただしく電話が切られる。

和麻「つーわけで俺も避難誘導手伝うわ
なにすりゃいい?」

初春「助かります!
このお店の外の人たちをお願いしてもいいですか!?」

和麻「わかった」

手短に答えると外へと行こうとしたが、急に思い付いたように戻ってきた。

和麻「当麻
ちょっと手ぇ貸せ」

それだけ言い、状況を飲み込めない当麻を引きずっていく。

上条「えっ、ちょ!
なんでせうか!?」

和麻「事件性あるっぽいからな
お前の右手が役に立つかもしれん」

それを聞いて当麻の顔が引き締まる。

上条「わかった、なにすればいい?」

和麻「とりあえずは俺にくっついて・・・」

そう遠くない爆発音が和麻の発言を遮った。

短くて申し訳ないですが、今日は以上です
つぎも一週間でおねがいします

遅れてしまい、大変申し訳なく思います。
投下いたします。

黒子「嘘でしょう!?
はやすぎますの!!」

初春「どこで爆発が!?」

あわてて外に駆け出す二人。

和麻「ん、ちょっとまて」

その二人の首根っこを掴んで留める。

初春「な、なにを・・・」

初春は抗議の声をあげかけ、黒子は口をぱくぱくさせている。

和麻「早すぎるってどういうことだ」

初春「事件についてなにも聞いてないんですか?」

和麻「生憎とな」

初春「わかりました
手短に説明します
この事件は無差別爆破事件です
なんらかの能力を使って量子加速を発生させて爆破していることと、ぬいぐるみなどの物に偽装していることがわかっています
目的等はすべて不明
爆破地点は衛星による量子観測によってある程度の予見が可能ですが、今回はいままでと比べて爆発がかなり早いです
容疑者はlevel4《大能力者》以上だと思われますが、書庫《バンク》には該当者1名のみ
しかし、該当者は諸事情により昏睡状態にあり、犯行は不可能です」

多少早口に、要点だけをかいつまんで説明する。

和麻「なんかきなくせぇな・・・」

初春「へ?」

和麻「被害者は何人くらい出てる?」

初春「一般人に数名と・・・風紀委員、警備員に多数です」

和麻「なるほどな・・・
んじゃ俺と当麻で行ってくるからお前らはこっちの避難進めとけ
んでそれが終わったらこの店の前で待ってろ」

初春「えっ?でもっ・・・」

和麻「店内見てみろ」

店内には当麻たち以外にも客はいる。
今の爆発音でパニックになるとも限らないからだ。
現に少しずつざわめきが大きくなっている。

和麻「うちの弟頼んだぞ
んじゃ当麻クン、よろしく頼むよ」

上条「お、おう!」

返事も聞かずに駆け出す二人。

和麻(まさか・・・こんな形で役に立つとはね・・・)

和麻「世の中ってのは皮肉だねぇ」

走りながら呟く和麻。

上条「なんかいいました!?」

和麻「いいや、なんにも」

ニヤリと黒い・・・見ようによっては卑屈な笑みを浮かべ、誰にも気づかれぬままに消し去った。

少ないですが、以上です

お久しぶりです
ほとんどかきためできませんでしたが、投下します

上条(あれは・・・眼鏡じゃないな
あっちは・・・グループか、違う)

一人でいる卑屈っぽい眼鏡を探せ。
見つけたら警備員騙って片っ端から拘束しろ。
逃げようとしたやつはぶん殴れ。
?
そんな曖昧かつむちゃくちゃな指示を和麻に出された当麻は、避難する人々を必死に監視していた。

上条「あ、あのっ
ちょっと来てもらっていいでせうか?」

眼鏡A「へ?な、なんなんですか!?
なんで僕だけ!?」

上条「警備員の仕事なんですよ
お願いしますよ
あ、すいませんそこの人!」

眼鏡B「なななななに!?」

上条「警備員なんスけど・・・」

すでに9人は拘束しただろうか。
理由も成果もゴールもわからない作業に当麻は疲れきっていた。

上条「はぁ・・・不幸だ・・・ん?」

ため息をついていると、視界の端で不振な動きを捉えた。

上条(あいつ・・・?)

それは、あまりにも些細なことで、普段なら気にならないちょっとした仕草。
手を目元に持ってくるだけの行動。

上条「あの、ちょっといいですか?」

介旅「・・・なんですか?」

しかし、当麻にはピンときていた。
普段から眼鏡を掛けているのなら、無い状態に違和感を覚えるはずだと。
結論から言えば、それは「何時もの」不幸に繋がっていくのだが・・・。

上条「いやー、警備員の仕事なんですけどね・・・
ちょっと来ても・・・えっ、あっ!ちょっと!!」

言い終わらないうちに踵を反して出口へと走り出す男。
あまりの思い切りの良さに一瞬呆然としてしまう当麻。

和麻「こちらは通行止めとなっておりまーす」

しかし、当麻より先で漏れがいないか監視していた和麻に足を払われ、派手に転倒する。

介旅「なっ・・・なにするんですか!?」

和麻「いやそういうのいいから
わかってんだろ?面貸せよ」

介旅「くっ・・・くそっ!」

ポケットからなにかを取りだし、和麻に投げつけた。

和麻「ああ?」

それはスプーンだった。
訳もわからずキャッチする。

介旅「く、くくく
・・・吹っ飛べよぉ!」

突如、和麻の手の中のスプーンが・・・いや、スプーンの周囲の空間が歪む。

短いですが、以上です。
次は、来月のはじめまで待ってくださいお願いします。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom