たまこ「最近私のパンツがよく無くなるんだよね……」(196)

みどり「!?」

史織「えっ? それって変質者とか……」

たまこ「うぇぇ~。怖いなぁ……。どうしよう」

みどり「たっ、たまこのパンツを盗むなんて許せないね!」

たまこ「あ、でも私の部屋にあるはずなのにどうして盗まれるんだろう」

かんな「犯人は実は身近な人間だったりして……」

たまこ「えぇ!? それは無いよ~」

かんな「どうして?」

たまこ「だって私のパンツなんてとってもしょうがないもん」

かんな「分かりませんよ」

史織「そうそう。最近は色んな人がいるから」

たまこ「そうかなぁ」

みどり「いや、もしかしたら全く知らない他人だったり……」

たまこ「それも嫌だよ……」

史織「とりあえず、鍵はちゃんと閉めて用心するに越したことはないよ」

たまこ「そうだね!」

かんな「防犯もうちにおまかせあれ」

たまこ「流石かんなちゃん!」

かんな「ふふふ……。それほどでもありませんよ」

史織「じゃあ日も暮れてきたし私は帰ろうかな」

かんな「あ、そうだね私も」

みどり「じゃあ私も」

たまこ「あ、はーい。じゃあね~」

史織「戸締りはきちんとするんだよ!」

たまこ「気をつけます!」

かんな「それじゃ」

みどり「じゃあね! たまこ」

みどり「あ、ちょっと私買い物頼まれてたからここで」

かんな「そっか」

史織「それじゃあ」

みどり「うん。じゃあね二人とも」

みどり「そんな……ばれない完璧なタイミングでやってたのにどうして……」

みどり「一つとったらちゃんと別のを補充していたのに……」

みどり「でももうパンツを頂戴できないとなると、この衝動を一体何にぶつければ……」

史織「えっ?」

みどり「えっ」

史織「あ、あの」

みどり「あっ、あれ~? どうしたのこんな所で!」

史織「い、いや今パンツって」

みどり「ぱっ、パンツ? えぇ~? 私そんなこと言ってないけどー」

史織「目がすごい速さで泳いでるよ……」

みどり「あ、あの……どこから」

史織「えぇっと、パンツを頂戴できない、とか」

みどり「うわぁぁぁぁぁぁ」

史織「!?」

みどり「おっ、お願い! このことはたまこには……! たまこだけには言わないで!」

史織「で、でも……」

みどり「私たまこから嫌われたら何を生きがいにしていいかわかんなくなるから!」

みどり「死ぬよ!」

史織「えっ」

みどり「本当に死ぬよ!」

史織「えぇっ……、わっ、わかったから!」

みどり「本当? 流石史織!」

史織「でもどうして……」

みどり「最初は出来心で……、でも一度はまったらなかなか抜け出せなくて」

史織「そんなに何回もしたの?」

みどり「うん……」

史織「だったら普通ばれちゃうんじゃ」

みどり「私のを代わりに入れておいたから」

史織「えっ? ちょっともう一回言ってもらってもいいかな」

みどり「だから、私のをたまこのパンツの代わりに入れておいたから。その場で」

史織「……変態」

みどり「うっ」

史織「あの……そんなことして恥ずかしくないの?」

みどり「だって……、最近たまこが史織にばっかり構うから」

史織「えっ、私のせいなの?」

みどり「いや、別にそういう意味じゃないけどさ」

史織「もしかしてみどりってたまこの事が好きなの?」

みどり「……!え、あ」

史織「好きなんだね」

みどり「……史織には知られたくなかったのに」

史織「どうして?」

みどり「いやだって私史織がたまこの事を狙ってるんじゃないかって」

史織「それはないよ……」

史織「でも、要するにたまこと恋人になれたらパンツを盗む必要もなくなるってことだよね?」

みどり「えっ? それはまあ……そうだけど」

史織「だったらできる限り協力するからもうパンツ泥棒なんてしないで」

みどり「きょ、協力してくれるの?」

史織「だってもしもばれちゃったら気まずいし」

みどり「そうだよね」

史織「それで、どうするの?」

みどり「勿論乗らせていただきます!」

史織「このことはかんなは知ってるの?」

みどり「私がたまこのことを好きなのは知ってるみたいだけど、パンツの件は知らないはず……」

史織「じゃあかんなにも言おっか」

みどり「えぇ!? やめてよ!」

史織「あ、かんな?ちょっと商店街に来てもらえる?」

みどり「あぁぁぁぁ!」

史織「すぐ来れる? あ、よかった。ありがとう。それじゃあ」

みどり「私はどうすれば……」

かんな「やあお二人さん」

みどり「早っ!」

史織「あのね、みどりが実は」

かんな「パンツを盗んでた?」

みどり「えっ!?」

史織「えぇっ? 知ってたの?」

かんな「たまちゃんの家でその話題になったときみどちゃんの瞳孔が2ミリほど大きくなったから」

みどり「えぇっ!?」

史織「す、すごいね……」

みどり「あはは……かんなに嘘はつけないね」

かんな「目測は得意ですから」

かんな「それでどうしたの?」

史織「みどりがもうパンツ泥棒なんてしないように協力してあげようと思って」

かんな「あぁ、なるほど」

史織「それでかんなにも協力して貰えたらなって」

かんな「いいですよ」

みどり「えっ!?」

かんな「いや……私もともと分からない程度に協力していたけどね」

史織「じゃあこれからはもっと露骨に」

かんな「ですな」

みどり「いやいやいや、二人とも? 私は別に今の関係のままでも……」

史織「じゃあもうたまこに変な事しないって約束できる?」

みどり「それは……」

かんな「もしかしてみどちゃん他に何かしてたり」

みどり「えぇっ!? そんな何かするだなんて……。ちょっと写真を撮ってるだけだよ!」

史織「ちなみに何枚くらい?」

みどり「えっと……多分300枚くらいはあると思うけど」

史織「えっ!? そんなに?」

かんな「ちなみにどんな写真を撮ってるの?」

みどり「それは携帯の中に幾つか入って……あっ」

かんな「ここにみどちゃんの携帯があります」

みどり「いっ、いつの間に……! ダメだって、洒落になんないから!」

かんな「あ、このフォルダかな? パスワードかかってるけど」

史織「たまこの誕生日とか入れてみたらどうかな」

かんな「あ、入れた」

みどり「あぁぁぁぁ……」

史織「寝顔、後ろ姿、ツーショット……」

かんな「あっこれは、着替え中の……」

みどり「それはダメ!」

史織「いや、もう私達見ちゃってるし……」

かんな「これは流石にびっくりですよ。いつ撮ったんですか」

みどり「前一緒に銭湯に行ったときにこっそり……」

かんな「みどちゃんってもっとうぶな子かと思ってましたよ」

史織「う、うわぁ……」

みどり「ひ、引かないでよ」

史織「もう十分なくらいだよ」

みどり「もう嫌ぁ……」

かんな「これは何としてもくっつけるかしないとダメですね」

史織「だね」

かんな「とりあえずみどちゃん、今日は帰った方がよろしいかと」

みどり「うん……そうする」

みどり「それじゃあ……」

かんな「……みどちゃんから負のオーラが見えるよ」

史織「知ってはいけない一面だったかなぁ……」

かんな「いやいや、ここで矯正しておかないと本当の事がたまちゃんに知られた時は……」

史織「絶交されるかも」

かんな「まあたまちゃんなら許しちゃいそうだけどね」

史織「それはあるね」

かんな「それで、どうしようか?」

史織「そうだよね……協力するって言っても何をしたらいいか」

かんな「また今度みどちゃんと三人でお話しようか」

史織「そうだね」

かんな「じゃあ今日はこれで」

史織「うん。それじゃあ」

かんな「また明日」

かんな「こんちはー」

邦夫「いらっしゃい」

邦夫「あれ、今日はいないんだ」

かんな「あぁ、たまちゃんですか? 今日は作戦会議なので……」

邦夫「……? とりあえずコーヒー、どうぞ」

史織「ありがとうございます」

かんな「それじゃあ第一回、みどちゃんとたまちゃんをくっつかせる会ー」

史織「わ、わー……」

みどり「……」

史織「じゃあ……どうしようか」

かんな「それじゃあ私達の作戦を練るために色々聞いていこうかな」

みどり「聞くって?」

かんな「例えば、たまちゃんのどんな所が好きなの?とか」

みどり「えぇ……。恥ずかしいんだけど」

かんな「みどちゃん、あんなの見られておいてまだ恥ずかしいの?」

みどり「その事は出来れば忘れて頂きたいんですけど……」

史織「インパクトが大きかったからね……」

かんな「忘れられない思い出になりましたね」

史織「あはは……」

かんな「それで、みどちゃんはたまちゃんのどんな所が好きなの?」

みどり「……それは言い出したら沢山あるんだけど、守ってあげたい感じがあるというか」

史織「守ってあげたい感じ?」

みどり「ほら、たまこって何となく抜けてる所があるでしょ? だから庇護欲が湧いちゃうっていうか」

かんな「ふむふむ。続けて」

みどり「後は、商店街の事をやってる時のたまこはさっき言ってた感じとは反対に真剣で頑張ってるからかっこよくて」

みどり「あ、後々! やっぱり可愛いよね。相当もててるはずなんだけどなぁ……」

みどり「なのに鈍感で、私がアピールしても全く気付かないし。でもそれもまた安心するし、振り向いてもらいたいって原動力になるからいいんだけど」

みどり「他には……」

かんな「もういいよ。みどちゃん」

みどり「え、あ……ごめん」

史織「みどりって本当にたまこのことが好きなんだね」

史織「てっきり私もっと下心だらけなのかと思っちゃってた……」

みどり「でも実際、そういう目でたまこを見てるのは事実だよ……」

みどり「いつからか、あっちから触られたらドキドキしてしまうようになっちゃったし」

みどり「今の関係より悪くなるなんて考えられないから、理性を保ってるけど」

かんな「複雑だね……」

史織「いっそのこと告白しちゃうとか」

みどり「……それは無理だよ。だってたまこは多分私を恋愛の対象として見てないし」

かんな「ずっと幼馴染としての関係があるから、難しいだろうね」

みどり「そうそう。考えれば考えるほど今更どうやってたまこを振り向かせたらいいのかわかんないし」

みどり「大体私がいきなり告白なんてしたらたまこ困っちゃうでしょ?」

史織「そうだね……。でもたまこはちゃんと受け止めて考えてくれるんじゃない?」

みどり「それでもしたまこに断られなんてしたら私は……」

史織「たまこはそんなことで友達じゃなくなるとか、そういう子じゃないと思うんだけど……」

みどり「分かってる! 分かってるけど、踏み出せない」

かんな「ならまずは、たまちゃんにみどちゃんを意識させることが最優先だよね」

みどり「でもどうやって?」

かんな「例えば、たまちゃんは女同士での恋愛ってのがわかんないと思うんだよね。というか普通の恋愛も怪しいけど」

かんな「だから、自分の近くでそういうカップルがいれば意識するようになるんじゃないかな?」

みどり「なるほど……。でもそんなのいないじゃん」

かんな「そこで、私達ですよ。ね、しおちゃん」

史織「そういうことね……。私は別にいいけど」

かんな「じゃあ今日から私達はカップルです」

史織「うん」

みどり「でも……いいの? 噂になんかなったりしたら」

史織「私は全然平気だけど」

かんな「同じく」

みどり「変なことになりそうだったらすぐに止めていいからね?」

かんな「そんな些細なことであーだこーだ言う人はうちの学校にはいませんよ」

みどり「その自信は一体どこから……」

かんな「まあまあ私達に任せといて下さいよ」

史織「やるからには、リアリティを出さないとね」

かんな「その通りです。じゃあ明日は私がお弁当作ってくるから」

史織「えっ? いいの? 悪いよ……」

かんな「しおちゃん、私達はカップルなんだよ!」

史織「もう始まってるんだね。あ、じゃあ明後日は私が作ってくるね!」

みどり「本格的だね……」

たまこ「今日も部活疲れたねえ」

みどり「だね」

かんな「今日は重大発表があります」

たまこ「どうしたの?」

かんな「実は私としおちゃん、付き合うことになりました」

たまこ「えぇぇぇぇ!?」

たまこ「嘘、本当に?」

史織「本当だよ。たまこ」

たまこ「わっ、史織ちゃん!?」

たまこ「そういえば今日、かんなちゃんが史織ちゃんのお弁当持ってきてたよね……」

たまこ「そういうことだったのかぁ……。で、でも女の子同士だよ?」

かんな「たまちゃん、愛に性別は関係ないんだよ」

たまこ「そ、そうだよね……。あ! ごめんね、別に否定するような意味で行った訳じゃないから」

史織「大丈夫だよ」

かんな「ということで、私達は二人で先に帰らせていただきます」

たまこ「そっか~。恋人同士だもんね! すごいなぁ……」

かんな「それじゃあ」

史織「また明日ね」

たまこ「あ、ばいばい! かんなちゃん、史織ちゃん」

たまこ「それじゃあ帰ろっか! みどりちゃん」

みどり「えっ? あ、そうだね!」

たまこ「いやぁ~……、にしてもすごいなぁ……憧れちゃうよ」

みどり「そ、そうだね」

みどり「……」

みどり「あのさ、たまこ」

たまこ「うん?」

みどり「たまこは女の子同士でも抵抗……みたいなのは無いの?」

たまこ「え? そうだなぁ……。私は別にお互いが好きならいいと思うけど」

みどり「そ、そうなんだ……。そうだよね! うん!」

たまこ「おっ、何か元気だねみどりちゃん」

みどり「え!? いやいや、私は別にいつも通りだけど」

たまこ「そっかそっか」

たまこ「はぁ~……。私にもいつかあんな風に恋人は出来るのかな?」

みどり「……出来るよ」

たまこ「へ?」

みどり「たまこはモテモテだからね!」

たまこ「もう! 冗談が上手いんだから」

みどり「いやいや、本当だよ?」

たまこ「私がモテモテなら、みどりちゃんなんてどんだけもててるんだって感じだよー」

みどり「はぁ……私なんかの何がいいんだか」

たまこ「そりゃあもちろん、可愛いし、頼れるし……いい所いっぱいあると思うけどなぁ」

みどり「照れるからやめてよ~。私はたまこにそう思ってもらえるだけで嬉しいな、なんて」

たまこ「えぇっ、私なんかでいいならいくらでも言ってあげるよ~!」

みどり「……ありがと」

みどり「あ、メールだ」

たまこ「どうしたの?」

みどり「ううん! 何でもないよ!」

たまこ「そっか。あ、じゃあ私ここで」

みどり「あれっ、もう商店街かぁ」

たまこ「あはは、早いね~」

みどり「だね。それじゃ」

たまこ「じゃあね~!」

みどり「はぁ……たまこはもうそろそろ帰ってる時間だよね。そろそろ行こうかな」

信彦「あら? みどりじゃないか」

みどり「あ、お爺ちゃん」

信彦「今日はどうしたんだ?」

みどり「今日はちょっと友達と待ち合わせ」

信彦「そうかぁ。最近学校はどうだ? 楽しい?」

みどり「うん。別に楽しいけど……どうして?」

信彦「最近元気がないように見えたからね」

みどり「あ、そっか……。それならもう私は大丈夫だから」

信彦「良かった良かった」

みどり「それじゃあ私行くね。またねお爺ちゃん」

みどり「こんにちは」

邦夫「いらっしゃい。二人は奥にいるよ」

かんな「あ、みどちゃーん」

みどり「遅くなってごめんね!」

史織「全然いいよ」

かんな「どうだった? 私達のカップルっぷりは」

みどり「結構自然な感じだったと思う……」

史織「あの後メールでじっくり計画を練ったからね」

かんな「ね」

みどり「流石だね」

かんな「そうそう、みどちゃんの方は何か進展はありましたか?」

みどり「あ、そういえばたまこは同性の恋愛にあんまり抵抗が無いみたい」

史織「それが分かっただけでもかなりやりやすくなったよね」

みどり「だね。私にもチャンスがある気がして嬉しかったし」

かんな「気がするんじゃなくて、あるんだよ」

みどり「そっか……。そうだよね」

史織「次は二人っきりでどこかへ遊びに行ってみるとかはどう?」

かんな「いいね。いっつも私達で遊ぶことは多いけど、二人では最近はなかったんじゃない?」

みどり「それいいかも! でもどんな感じで誘おう……」

かんな「いつも通りに、何気ない感じで誘ってみたら?」

みどり「まあ、そうだよね。それ以外にどう誘えって話だよね」

史織「みどりって普通にそういうこと出来そうなのに、たまこが絡むと途端に消極的になるね」

かんな「それがいいんだよ」

史織「ギャップ?」

かんな「うむ」

みどり「は、恥ずかしいからこの話題は終わり!」

かんな「じゃあ明日にでも誘ってみるといいよ」

みどり「そうする。あ、でもどこへ行けばいいかな?」

史織「ショッピングモールとか……?」

みどり「それじゃあたまこ怒っちゃうんじゃない?」

かんな「でも商店街でデートもねえ……」

みどり「デートって……。まあ確かにそれもそうだよね」

史織「あ、じゃあ映画館で映画を見るとか」

みどり「あ、それ結構いいかも」

かんな「見るならもちろん恋愛モノですよね!」

みどり「えぇ~……なんか露骨過ぎない?」

かんな「たまちゃん相手にはそれくらいガツガツいかないと」

みどり「……じゃあ、そうする」

かんな「ファイト」

史織「頑張って!」

みどり「ありがとう」

史織「じゃあ今日はもう遅いしお開きにしようか」

かんな「あっ! 今日が平日だってこと忘れてた……。ご飯待たせちゃってるよ」

みどり「えぇっ!? ごめんねわざわざ」

かんな「ううん、いいよいいよ。それじゃあ!」

みどり「じゃ」

史織「明日報告よろしくね」

みどり「はいはい。分かってますって!」

みどり「おはよー!」

たまこ「あっ、みどりちゃん! おはよ~」

みどり「ねえたまこ、突然なんだけど明日一緒に映画館行かない?」

たまこ「おっ、いいね~」

たまこ「かんなちゃんと史織ちゃんは?」

みどり「えっ……。えっと……たまには二人で遊ぶのもいいかな、みたいな」

たまこ「いいよ~! 幼馴染水入らずですなぁ」

みどり「そうそう。じゃあ明日駅の前で10時に待ち合わせでもいい?」

たまこ「了解!」

史織「あ、みどり約束できたって」

かんな「お、本当だ」

史織「ねえ」

かんな「どしたのしおちゃん」

史織「私達もこっそり行かない?」

かんな「おぉ……ノリノリだね。もちろんいいよ」

史織「じゃあみどりにメールで聞いて、時間とか場所はまた後でメールするね」

かんな「ほい」

史織「それじゃ、私こっちだから」

かんな「じゃあね~」

みどり「服はどうしようかな……」

みどり「この間買ったこれも可愛いなぁ……いや、でもこの1年寝かせたとっておきのも悪くない」

みどり「う~ん……。やっぱりこれにしよう……。冒険するよりも慣れてる方が丁度いいし」

みどり「よし、髪もいつも以上に気を遣って整えたし」

みどり「問題ないよね。よし……あ、靴はどうしようかな」

みどり「とはいえそんなに種類もないけど」

みどり「この服なら……この靴が色合いも合ってていいかな?」

みどり「よしこれだ! 遅れたら嫌だし早めに出なきゃね……」

みどり「行ってきます!」

みどり「このまま行けば9時半には着いちゃうな……」

みどり「まあ待てばいっか」

みどり「……」

みどり「……あれ?」

みどり「た、たまこ?」

たまこ「あ、みどりちゃんおはよ~!」

みどり「まだ9時半も回ってないけど……どうして」

たまこ「今日が楽しみでつい……」

みどり「……!」

たまこ「なんてのは冗談で、時間を1時間間違えちゃって」

みどり「あはは、たまこらしいよ!……」

もち蔵「たまこたまこたまこたまこたまこたまこ――」
あんこ「…………」パンパンパンパン

たまこ「でも今日が楽しみだったのは本当だからね」

みどり「へへ、知ってるよ!ありがと」

たまこ「えへへ」

みどり「それにしても、映画の開演までかなり時間があるね……」

たまこ「何してようか……。あ、もしよかったらご飯食べない?」

みどり「別にいいよ~」

たまこ「みどりちゃん朝ごはん食べた?」

みどり「ちょっとだけね」

たまこ「そっかぁ。私朝ごはん食べずに出ちゃったから……」

みどり「なるほど。じゃあ行こっか!」

たまこ「ん~、お餅もいいけどハンバーガーも美味しいなぁ」

たまこ「こうなると、デザートにお餅も欲しくなってくるなぁ……」

みどり「たまこは本当にお餅が好きだね」

たまこ「お餅は深いんだよ! デザートとして食べるお餅も、その前に食べた物で相性があるから!」

みどり「そうなの?」

たまこ「あれ、憶えてない? 私が中学生の間に自由研究でやったやつなんだけど……」

みどり「あ、もしかして私も手伝わされたやつ?」

たまこ「そうそうそれそれ!」

みどり「もう、あの後私体重が増えちゃったんだからね……」

たまこ「あはは、ごめんね?」

たまこ「でも今はデラちゃんが試食してくれるからね大丈夫だよ!」

みどり「だね。……でも私も手伝ってあげれそうなことなら手伝ってあげるよ?」

たまこ「あ、じゃあ来年の自由研究は一緒にやろ?」

みどり「うん!」

たまこ「あ! でもお互い太っちゃうと嫌だから試食はデラちゃんに任せて、私達は作るのに専念しよう!」

みどり「あはは、それがいいね」

たまこ「はぁ~……美味しかった!」

みどり「時間も丁度いい頃合いだね」

たまこ「じゃあ映画館に行こ~!」

みどり「席はどこにしようか?」

たまこ「じゃあ、真ん中で!」

みどり「じゃあ、こことここの席お願いします」

たまこ「流石に朝一番の上映だから人がすいてていいね」

みどり「だね。ほとんど貸し切りみたいな感じだよね」

たまこ「そうだねぇ~。あ! ポップコーンとジュースも買おうよ!」

みどり「ポップコーンのサイズはMでいい?」

たまこ「うん。あ、私コーラで!」

みどり「了解。もう開場されてるみたいだから、たまこ先に行って待っててよ」

たまこ「はーい」

みどり「すみません。ポップコーンのMと、コーラを2つお願いします」

みどり「お待たせー」

たまこ「ありがと~! もうそろそろ始まるよ!」

たまこ「そういえばみどりちゃんとこういう映画見るの初めてだね!」

みどり「言われてみればそうだね」

たまこ「私映画なんて見るの久しぶりだからドキドキしてきちゃった」

みどり「あはは、ちょっと始まる前はドキドキっていうか、不思議な感じがするよね」

たまこ「うんうん! 分かるよ」

みどり「あ、暗くなったね」

たまこ「寝ないようにしなきゃ」

みどり「あはは」

史織「お待たせ」

かんな「おはよう」

史織「うん、おはよう」

かんな「今きっとみどちゃん達は映画を見てる時間だね」

史織「そうだね。12時に終わる予定だからそれまで何してようか」

かんな「とりあえずゲームセンターにでも行きません?」

史織「そうだね」

史織「私ゲームセンターなんてすごい久しぶりかも」

かんな「そうなんだ。とはいえ私も久々ですけどね」

史織「すごい音……」

かんな「このうるささがゲームセンターに来た!って感じがする」

史織「醍醐味みたいな感じはするよね」

かんな「うんうん。ちょっとクレーンゲームしてもよろしい?」

史織「うん」

かんな「そうだなぁ……。あのぬいぐるみの台にしようかな」

かんな「……よし!」

史織「頑張って!」

かんな「クレーンゲームのアームの角度と景品の大きさから鑑みて……狙うは首!」

かんな「……よしよし」

史織「あんな簡単そうに取っちゃうなんて……すごいよ!」

かんな「いやいや、あんなの慣れですよ」

史織「流石は大工の娘?」

かんな「将来のために重機の勉強もしてますからね」

かんな「よし、じゃあこのぬいぐるみはしおちゃんにあげよう」

史織「えっ、いいの?」

かんな「いいよいいよ。元々プレゼントするつもりだったから」

史織「ありがとう!可愛いね……」

かんな「もうちょっとクレーンゲームやってもいいかな?」

史織「見てるだけで楽しいからどんどんやってもいいよ」

かんな「ではお言葉に甘えてやらせていただきます」

たまこ「くぅー……、くぅー……」

みどり「あ、もう終わっちゃったのか……」

みどり「たまこ、本当に寝ちゃうなんて……。というか私の肩にもたれてくるから途中から映画に全然集中出来なかった……」

みどり「なんて可愛い寝顔……」

みどり「あっ! こんなことしてちゃダメだよね。おーい、たまこー」

たまこ「ぇ……ぁ……、あれ?」

みどり「おはよ」

たまこ「あ!? もしかして私寝ちゃってた?」

みどり「ぐっすり」

たまこ「そんなぁ……。私前に来たときも寝ちゃったから今日は何としてもちゃんと見るつもりだったのに……」

みどり「まあいいじゃん!」

たまこ「えぇ~……」

みどり「もう、まだ拗ねてるの?」

たまこ「だってぇ……」

みどり「実は私も途中から集中出来なかったからおあいこだよ?」

たまこ「えっ、そうなの?」

みどり「そうそう」

たまこ「そうなんだ……。ならまあいいかな!」

みどり「うんうん。これからどうする?」

たまこ「あ、私ゲームセンターに行きたい!」

みどり「ゲームセンターか。久々だ……」

たまこ「私も! だから行ってみたくて」

みどり「そうだね! じゃあ行こ行こ」

みどり「何か……」

たまこ「すごい人だかりが出来てるね」

みどり「何だろ? ちょっと行ってみようか」

たまこ「うん」

たまこ「あ、あれはもしかして」

みどり「あぁ! 史織にかんな!」

かんな「やあやあどうも」

史織「二人ともこんにちは」

たまこ「史織ちゃんすごい荷物だよ!?」

史織「あぁ、これかんなが取った景品なんだよ」

みどり「あ、また取った」

みどり「ちょっとかんなってば! もうやめたら?」

かんな「……はっ。私としたことがつい熱が入りすぎて」

かんな「あ! しおちゃんこんなに持たせちゃってごめんね」

史織「私は別にいいんだけど……」

かんな「こんなに持って帰れないし、周りの人達に配ろうかな……」

史織「うん」

たまこ「史織ちゃんも大変だねぇ」

史織「あはは、でも楽しいよ?」

みどり「それにしても、どうしてここへ……」

史織「えっ? ぐ、偶然じゃないかな」

みどり「へぇー……。偶然ねえ」

かんな「……ふう。やっと配り終わった」

史織「お疲れ様」

かんな「腕疲れてない? 大丈夫?」

史織「ちょっと腕が痛いけどこれくらいなら平気かな」

かんな「無理はしないでね?」

みどり「にしても、結局いつもの4人になっちゃったねぇ」

たまこ「あはは、ほんと」

史織「どうしようか……。別々で行動しようか」

かんな「あ、じゃあプリクラでも撮りませんか?」

たまこ「うわーっ! 久しぶり!」

かんな「最初は一緒に来た同士で、その後は皆で撮るのはどう?」

史織「いいね」

たまこ「わーっ!可愛く撮れてるなぁ……」

たまこ「進化してるなぁ……」

みどり「ほら、落書き出来るよ! 行こ?」

たまこ「そうだね!」

みどり「……よいしょっと」

たまこ「わぁっ! いろんなのがあるよー!」

みどり「本当だね」

たまこ「見て見てー! ちょび髭みどりちゃん!」

みどり「あー! じゃあ私は犬鼻たまこ!」

たまこ「あーっ、やったなぁ!」

みどり「うりうり!あ、ここは猫耳をつけよう」

test

たまこ「おっ! 出てきたよ~」

みどり「うわっ……」

たまこ「まあそりゃそうなるよね……。あんなに落書きしあったらねぇ」

みどり「まあこれはこれで……」

史織「二人とも終わった?」

たまこ「うん、終わったよー」

かんな「どれどれ、可愛く移ってますね。ちょっと自由な感じになっちゃってますけど」

たまこ「アツい攻防戦が繰り広げられてたんだよ!」

史織「よくわからない……」

みどり「あ、そうだ。次は皆で撮るんだっけ?」

かんな「そうだね」

たまこ「じゃあ今度は皆で落書きだね!」

みどり「いや、次は流石にあんなのはもうしない方がいいと思うけど」

たまこ「もちろんわかってますよ~」

たまこ「はぁ~……楽しかったね~!」

みどり「皆可愛く撮れてるしね」

史織「手帳に貼ろうかな……」

かんな「いいね、私もそうしようかな」

みどり「じゃあ私はバトンのカバーの裏にでも」

たまこ「なるほど! じゃあ私は……お餅?」

みどり「食べられなくなるでしょ!」

たまこ「えへ、冗談だよ」

かんな「あ、次はあそこの小物屋さん寄ってみない?」

みどり「いいよー」

たまこ「う~ん……これもいいかなぁ……」

かんな「たまちゃん、何選んでるの?」

たまこ「キーホルダー。みどりちゃんに今日誘ってもらったお礼に何かお揃いのキーホルダーとかあげれたらいいなって思って」

かんな「なるほど……ふむ」

かんな「私もしおちゃんにあげようかな」

たまこ「おっ、いいねぇ」

かんな「どんなのがいいかな?」

たまこ「う~ん……、何だろう……」

かんな「あ、やっぱりいいよ。たまちゃんは自分の決めてて?」

たまこ「そうするよー」

みどり「この小物可愛いなぁ」

史織「みどり!」

みどり「あっ、史織」

史織「調子はどんな感じ?」

みどり「お陰様でいい感じだよ」

史織「そっか……良かった。発端の事件が嘘みたいだね」

みどり「うっ……まだ引っ張るか」

史織「ううん、もうこれでおしまい」

史織「みどりはたまこのことが好きすぎて、やっちゃったんでしょ? もう十分純粋な想いだって分かったから」

みどり「……そっか」

史織「後は告白するだけじゃないかな」

みどり「え?」

史織「気が早いとは思うけど、たまこなら十分に受け止めてくれるよ。答えが何であれね」

史織「速く告白しないと、このままうやむやになって終わっちゃうよ?」

みどり「……」

史織「それに、遅かれ早かれ勝算が100%で告白なんて出来ないよ」

みどり「……そうだね」

史織「もう二人は十分に信頼出来る関係なんだから、みどりの想いをぶつけても大丈夫なんじゃないかな」

みどり「……うん」

史織「……それじゃあ」

みどり「うん……告白、しようかな」

たまこ「いやぁ……今日はよく遊んだねぇ」

みどり「ほんとにね」

史織「じゃあ私達はこっちから電車に乗って帰るから」

たまこ「わかった~」

かんな「じゃあね!」

みどり「さよなら」

史織「……じゃあね」

みどり「……」

たまこ「それじゃ、私達も帰ろうか~」

みどり「だね」

たまこ「今日はありがとね! 私とっても楽しかったよ」

みどり「私も楽しかった!」

みどり「あ、あのね、たまこ」

たまこ「うん?」

みどり「私たまこに謝らないといけないことと、言いたいことがあるの」

たまこ「な、何?」

みどり「前にさ、たまこのパンツが無くなるって話をしてたでしょ?」

たまこ「うん……」

みどり「それ盗んだの私なの!」

たまこ「…………」

みどり「……うっ……ご、ごめんなさい……。私汚いの」

みどり「ひっ、うぅ……私、こんなんでたまこのこと好きだなんて言える資格ないよね」

みどり「皆まで巻き込んじゃって」

みどり「ほんと、ごめん……ううぅ。私とは今日限りの付き合いでいいから……」

たまこ「……」

たまこ「ねえ、みどりちゃん」

みどり「……うっ……ぐす」

たまこ「私ね、実は全部知ってたんだよ」

たまこ「あ、でも好きってことはついこの間まで知らなかったけど……」

たまこ「この間かんなちゃんから喫茶店での会話を録音した音声を貰ってね?」

たまこ「最初はみどりちゃんのことが怖かったけど、聴いてるうちにみどりちゃんの想いがこっちにまで伝わってきて」

たまこ「私みどりちゃんが泥棒しちゃったことを謝れたら許して、みどりちゃんの告白にも答えようと思ってたの」

たまこ「それでみどりちゃんは今きちんと言えたよね。だから私は許すから!」

たまこ「次はみどりちゃんの番だよ」

みどり「ごめん……ごめんね……!」

みどり「ありがとう……たまこが優しくて本当に良かった」

みどり「私は、私はたまこのことが大好きです!」

みどり「……」

たまこ「うん! 私も大好き!」

みどり「たまこぉぉぉぉ……」

たまこ「わっ、みどりちゃん苦しいっ……」

たまこ「……えへへ」

たまこ「あ、そうだ! これ。さっきのお店で買ったキーホルダー」

たまこ「お揃いのハート型だよ! もちもちしてて可愛いやつを選んだんだよ」

みどり「あ、ありがと……。可愛いね」

たまこ「これでずっと一緒だよ。さあ、帰ろう?」

みどり「うん……!」

かんな「計画通り」

史織「やっぱりすごいね……」


終わり

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