モバP「ま、まゆぅぅぅ……」 まゆ「はぁい♪」(220)

きらり「うきゃーっ☆Pちゃんおっすおっす!」

ガシャーン

P「あははーきらりおはよう今日も元気いいなぁ」

P「(ロッカーがひしゃげてる……後で直しておかないと)」

杏「ねープロデューサー帰っていい?」

P「待って!待って!!飴やるから……な!?」

法子「プロデューサー!新作ドーナツの味見してよ!」

P「なぁ、そろそろチョコを単品で作る気ないか?」モグモグ

かな子「私もケーキ作ってきたんですよ!」バーン!

P「わかった、わかったからせめてホールはやめてくれ」モグモグ

拓海「お、おはよう……」

P「おおその衣装似合ってるな拓海!かわいいぞ!」

拓海「か、かわいくなんかねぇよ!!」

バキッ!!

P「おごふっ!?」 ドガッシャーン

凛「……」ガタッ

P「大丈夫!大丈夫だから凛!落ち着いてくれ!」

凛「私は落ち着いてるけど」

P「とりあえずその表情をやめようか!」

諸星きらり

双葉杏

椎名法子

三村かな子

向井拓海

渋谷凛

―――――――

P「……はー」

「おつかれですねぇ」

P「えっ!?いや別に全然そんなことないですよ!
だからエナドリは買わな……ってあれ?まゆ?」

まゆ「はぁい」

P「……なんだまゆか。てっきりちひろさんかと思っちゃったよ」

コト

P「……ん?これは?」

まゆ「コーヒーですよぉ。Pさんお疲れのご様子だったので」

P「……そうか、ありがとな」 ゴク……

まゆ「……落ち着かれました?」

P「おう。しかしまゆといると落ち着くな……普段は気の休まることがないから」

まゆ「そういうお仕事なのは理解してますけど……無理しないでくださいね?」

P「ははは。大丈夫だって。お前らをトップアイドルにするまで俺は倒れん」

まゆ「……トップアイドルになっても、Pさんが倒れちゃったら意味ないですよ?」

P「何を言ってるんだ、お前らの活躍をテレビで見るだけの生活……そこに苦労なんてないさ。
あるのは達成感と充実感!よーし!仕事がんばるぞー!」

まゆ「……」


佐久間まゆ

――――――――――

P「お疲れさまでした!」

「お疲れさまでしたー」

――

P「いやぁ……まさかこんなに早くゴールデンの仕事が来るなんて!」

P「最高だな……やっぱりCDがオリコンに入ったのが良かったか……」

P「よーし、ここががんばり時だ!いくぞー俺!」

――

カタカタカタカタカタ……

P「まずはテレビ用の資料とオファーが来てるラジオ番組の整理」

P「それからキャンペーンガールと定期ライブ」

P「あとは近日バレンタインイベントがあるからそれに関する日程調整」

P「レッスンや新人の育成の書類もまだだったか……」

カタカタカタカタ……

P「……やっぱりマネージャーとかいたほうがいいよなぁ」

P「そろそろ俺一人では荷が重いような気がしてきた」

P「しかしあいつらを何とかできるマネージャーか……そうそういないんじゃないだろうか?」

P「うーむ……」

カタカタタ……

P「はっ!考え事してたから、一行ずれてる!?」

P「しまった……もう一回チェックしないと」

カタカタカタカタ……

「……」

―――――

P「……ん」

P「……ほうぁっ!?ね、寝てた!?今何時だ!?」

P「というかこのタオルケット……?」

まゆ「おはようございまぁす」

P「まゆ!?」

まゆ「今は深夜の二時ですよぉ……」

P「ええっ!?ま、まゆお前……早く帰らないと!心配してるぞ!?」

まゆ「誰がですかぁ?」

P「そりゃ、親御さんに決まってるだろ!」

まゆ「うふ……私ずっと一人暮らしですよ。何言ってるんですか?」

P「……あ、そうか」

まゆ「毎日仙台に帰れるわけないじゃないですかぁ。Pさんってばお茶目ですね」

P「あはは……じゃない!だとしても、お前いつまでここにいるんだ!
女の子が外泊なんてPさん許さないぞ!」

まゆ「……Pさんが起きないからですよぉ?」

P「いやそれは悪かったから……次からは」

コト

P「……これは?」

まゆ「……まゆは何でも知ってるんですよぉ?最近ろくなもの食べてませんよね?」

P「え、いや……」

まゆ「……カップ麺やお菓子ばかりじゃ体調崩すにきまってるじゃないですかぁ」

P「いや、今のところは大丈夫だし」

まゆ「……今のところは?」

P「……う」

まゆ「今、今ってそれはいつまで続くんですかぁ……?ゴールデンのお仕事が来た子がいるんですよね?
じゃあ他の子にもテレビオファーが来るんじゃないですかぁ?
CDデビューしてる子は他にもいっぱいいるんですよね?ならもっと仕事が増えてもおかしくないですよね?」

P「ま、まぁ……それはそうかもしれないけど」

まゆ「そもそもこの時間までかかって終わらない仕事を毎日してるんですよねぇ……?いつ休んでるんですか?」

P「で、でもさ?俺が休んだら誰が仕事すんのって話だしさ」

まゆ「……」ガタッ

P「うおっ!?いやほら!俺もまだまだ若いし、大丈夫だって!」

まゆ「……この文章をデータ化すればいいんですよね?」

P「……え?そうだな。でも」

まゆ「……私こう見えて器用なんですよぉ。パソコンの使い方なら一通り知ってます」

P「しかしアイドルにそんな仕事させるわけには」

まゆ「……Pさん」

P「は、はい」

まゆ「私たちはアイドルという……お仕事をしてるんですよぉ?
それはPさんが一番わかってるはずです」

P「……あ、ああ」

まゆ「だったら私たちを頼ってください。私たちは貴方の担当アイドルであると同時に……、
貴方の仕事仲間ですからぁ」

P「……まゆ」

まゆ「……感動してる暇があったら体を休めておいてください。
冷めちゃいます」

P「まゆ……ありがとう」

まゆ「いいえ……これくらい、当然ですよぉ」

P「いただきます……」モグ

P「……!」

P「すごくうまい……なんだこれ」

まゆ「……お野菜のリゾットです。今Pさんのお腹は荒れてると思いますから。
胃薬も置いておきましたので飲んでおいてくださいねぇ?」

カタカタカタ……

P「まゆ、うう……、ありがとう……」モグモグ

まゆ「……」

カタカタカタカタ……

カチャン

P「ごちそうさま!すごくうまかったよ!
よし、仕事再開するから代わってくれ!」

まゆ「……Pさん」

P「はい?」

まゆ「明日もお仕事あるんですよねぇ?」

P「うん。あるね」

まゆ「……仮眠室で寝ててください」

P「!?何言ってんだまゆ!いくらなんでもプロデューサーが
アイドルに仕事任せて寝るわけには」

まゆ「……さっさと仮眠室に行ってきてください。
さもないと、今すぐ警察に電話して、『乱暴された』って言いますよぉ?」

P「……な!?ま、まゆ、冗談だろ?」

まゆ「……これが冗談を言ってる目に見えますかぁ?」

P「……あ、あう」

まゆ「……書類の内容だけ教えてください。
まとめる分に関してはやっておきますからぁ」

P「……いや、しかし」

まゆ「……でももしかしもないですよぉ?」

P「うう……でもまゆに無理をさせるわけには」

まゆ「……もし」

P「もし?」

まゆ「今日Pさんに私が仕事を任せて、帰ったとするじゃないですかぁ」

P「うん」

まゆ「それでPさんが倒れたら、私はどうすると思いますかぁ?」

P「……責任を感じる?」

まゆ「惜しいですねぇ。正解は『あまりの責任に私はお風呂場で手首を切る』ですよぉ」

P「ちょっと待って!?それは駄目!!様々な意味で駄目!事務所潰れちゃう!!」

まゆ「……そうなってほしくなかったら、さっさと睡眠をとってきてください。
八時には起こしますからぁ」

P「……でも、まゆ」

まゆ「……まだ何かあるんですか?あと私は明日オフですよぉ。
だからゆっくり寝させてもらいます」

P「……すまん、ありがとう」

まゆ「いえ……これくらいは当然ですよぉ」

――――


まゆ「……」

カタカタカカタ……

まゆ「……(どう考えてもPさん一人でやる仕事量じゃないですねぇ)」

カタカタカタ……

まゆ「……(これを今晩中に終わらせようとしていたなら……本当にすごい人)」

カタカタカタ……

まゆ「……(やっぱり、私の目に狂いはなかったみたい……)」

カタカタカタ…… タンッ

―――

ユサ ユサ

「……ですよぉ」

「……さぁん……ないと……よぉ」

P「……ん」

まゆ「起きないと……あ、やっと起きましたぁ?

P「おうおはよう……ま……」

P「って!まゆ結局徹夜したのか!?大丈夫か!?体調は!?」

ガバッ

まゆ「きゃっ……!?」

P「あ、ごごごめん……」

まゆ「うふ……、Pさんはまゆに何してもいいんですよ……?」

P「いや流石に担当アイドルに手を出す気はない」キリッ

まゆ「(そんなところも素敵……)はいどうぞ」

コト

P「……これは」

まゆ「トースト、スクランブルエッグ。お野菜のスープですよぉ。
コーヒーもあります。Pさんは確かブラック派でしたよね?」

P「ま、まゆぅ……」ウルウル

まゆ「感動するほどろくなもの食べてなかったんですかぁ……?」

P「えっ、いやそうじゃなくて……その」

まゆ「……」ニッコリ

P「……あれ、それ俺の財布」

まゆ「……先日のレシートですねぇ」

P「……な?まゆわかるだろ?人の財布とっちゃ駄目だってことくらい、だから返」

まゆ「……これはなんですかぁ?」

P「……え?いやその、特売だったので」

まゆ「カップ麺……ダース買いですねぇ。そんなに好きなんですかぁ?」

P「……まぁ、うん。そうだよね」

まゆ「……事務所のごみ箱に、たくさんありましたよねぇ。カップ麺」

P「……まぁここ、お湯もあるし、キッチンあるし」

まゆ「……これは、ドラッグストアですねぇ」

P「……最近のドラッグストアすごいぞ、安いし、なんでもあるし」

まゆ「栄養ドリンクとカロリーメイト……それに胃薬ですかぁ?
なんでこんなに不健康な組み合わせなんですかぁ……?」

P「……いや、なんというか」

まゆ「……」

ビリビリッ!!

P「ひぃ!?」

まゆ「金輪際買うな……とは言いません。でもPさんは少し不健康すぎます。
もう少しでいいので食生活を改めてください」

P「しかしな?俺だって時間というものが」

スッ

P「……これは?」

まゆ「お弁当です。これなら仕事の合間に食べられますよね?」

P「……ま、まゆぅぅぅ!」

まゆ「……うふ、私はPさんのためなら何でもします、だから」

フラッ

P「……まゆ!」

まゆ「おっと、これじゃあ私もPさんのこといえま……ひゃっ!?」

ガバッ

まゆ「(お、お姫様だっこ……)」

P「ありがとうまゆ……とりあえずここで寝てろ。
俺はもう大丈夫だから」

ポフ

まゆ「……はぁい。そんなところも大好きですよ」

P「……ああ、俺も好きだぞ。アイドルとしてな」

まゆ「……(やっぱり、折れてはくれないんですねぇ)」

―――――――

P「えーっと……今日は響子と収録、その後なんだっけか。
後でスケジュール帳でも確認するか」

響子「おはようございまーす!」

P「おうおはよう!今日も元気がいいな!」

響子「そういうプロデューサーこそ、今日はいつもより肌のつやがいいですね!」

P「おう?そうか?まぁ昨日は久々にちゃんと寝たからな!」ハッハッハ

響子「久々にって……普段からちゃんと寝てください!」

P「お、おう……これからはそうするよ。できるだけ」

響子「……えと、なんかあったんですか?」

P「いや別に?さぁ収録いくぞー!」

響子「あっ……は、はい!」



五十嵐響子

――――

ブロロロロ……

P「時期が時期だから、今回はバレンタイン特集だな。
料理の腕を見込まれて、上からのお願いだそうだ」

響子「えっ……そ、そんな仕事、私が受けて良かったんでしょうか……?」

P「大丈夫じゃないか?わがモバプロでも近々バレンタインイベントをするつもりだったしな。
丁度いい番宣じゃないだろうか」

響子「わかりました……がんばります!」

―――

司会者「本日は、お料理、お掃除、なんでもござれ!
お嫁さん系アイドル、五十嵐響子ちゃんが来てくれましたー!」

スタジオ「ウオオオオオオオオーッ!!」

響子「こんにちわー!五十嵐響子です!」

司会者「今日はバレンタイン特集ということで……
ご家庭で簡単に作れるチョコレートのレシピがあるって?」

響子「はい!手間をかけずに、愛情たっぷり!
スペシャルチョコレートラングドシャです!」

司会者「おお、それはすごい……!」


P「……(うむうむ、問題ないな)」

グー

P「……(すごいお腹空いた)」

AD「大丈夫ですかプロデューサーさん。休憩取ります?」

P「あ、いえ、大丈夫です」

AD「有名ですよ。業界で。『不死身のP』って」

P「なんでそんなクリーチャーみたいに扱われてるんですか」

AD「いやいや、違いますよ。どこのプロダクションも羨ましがってましたよ。
貴方が一人いれば、数十人くらいはトップアイドルが排出できると」

P「買い被りすぎですよ」

D「おい、何やってんだAD」

AD「ヒィスミマセン」

D「……いやまぁ、でもお前の気持ちはわかる。
俺でもちょっと怖いくらいだからな」

P「……怖い?」

D「ああ、いえ、そういった意味ではありません。
一人であれだけの女の子を完璧にプロデュースしきるなど、人間離れしているということです」

P「いえいえ、あれは彼女たちの実力です」

D「それを見抜き、大成させているのだから、十分すごいですよ」

あっ

>>55の最初に

AD「流石モバプロのPさんですね」

P「えっ」


追加で

カーット!

D「……OK。ありがとうございます五十嵐さん」

響子「いえ!こちらこそありがとうございました!」

P「よーし帰るかー」

響子「はい!」

―――――

ブロロロロ……

P「(結局飯くってない……忘れてた)」

響子「プロデューサー、大丈夫ですか?」

P「何がだ?」

響子「お腹」

P「……」グゥゥゥ

響子「やっぱり」

P「……まぁ運転中だし食べるわけには」

キキッ

響子「……渋滞みたいですね」

P「……」

響子「私は構いませんから、どうぞ食べてください」

P「えっ、いいの?」

響子「今日はちゃんと用意してるみたいですね。
なんとなくわかります」

P「なんでわかんの!?」

響子「……女の勘ってやつでしょうか」

P「すごいなそれ……じゃあ食べるか。
悪いななんか」

響子「いえいえ」

P「……~♪」ガサガサ

パカッ

P「おーうまそう」

響子「……」ピクッ

P「いただきまー……」

響子「プロデューサー、それは?」

P「え、弁当」

響子「手作りですか?」

P「おう」

響子「誰の?」

P「まゆ」

響子「……なるほど」ギリッ

P「(ぎりっ?)」

響子「プロデューサー!明日は私が作ってきてもいいですか!?」

P「ええっ!?」

響子「お願いします!」

P「い、いいけど……」

響子「やったー!」

P「……(明日まゆもくれたら二つになるのか、胃もたれしそうだな)」

響子「ふふっ♪(スペシャルなメニューを考えておかないと)」

――――― 翌日

まゆ「おはようございまぁす」

P「ああ、まゆおはよう。昨日はちゃんと眠れたか?」

まゆ「はぁい。おかげさまで」

P「そりゃよかった。今日のスケジュールだがな」

響子「おはようございまーす!」

P「おうおはよう」

まゆ「響子ちゃん……おはよう」

響子「プロデューサー、まゆさん、おはようございます!」

P「今日響子はレッスンだったな。表現力だったか」

響子「はい!今日も頑張ります!あとこれどうぞ!」

P「お?これは」

響子「お弁当です!愛情込めて作りました!」

P「そうかそうか……それはよかっ」

まゆ「……」

P「(アカン)」

響子「じゃあ私行ってきますね!」

タッ

P「あ、相変わらず元気いいなぁ……」

まゆ「そうですねぇ」

P「まゆぅ、あの子に悪気はないから気にしないでやってくれな」

まゆ「いいえ……私、使えるものはなんでも使う主義ですからぁ」

P「……え?」

まゆ「それよりPさん、今日のスケジュールは」

P「(思い過ごし、だったのか……?)」

P「おう!昼から雑誌の撮影、夕方から雑誌インタビューだ。
『さくまゆちゃんに聞くオトコゴコロ講座』だそうだ」

まゆ「……他の子の方が良かったんじゃないでしょうかその仕事」

P「いや……先方がどうしてもまゆがいいって」

まゆ「わかりましたぁ。では準備しましょう?」

P「おう!」

――――――

P「(……お昼の時間になったが)」

まゆ「……」モグモグ

P「(食べづらい……!)」

まゆ「うふ……Pさん?」

P「はい?」

まゆ「今日は私、お弁当作ってきてないんですよぉ」

P「えっ?」

まゆ「うふ……昨日Pさんが手作りのお弁当を食べてるところを見たら……
必ず翌日作りたいと申し出るアイドルがいると思ってましたからぁ」

P「……えっ?マジで?」

まゆ「なーんて……冗談ですよぉ。今日は寝坊して、作れなかったんです」

P「(自分の分はあるのに、か……。まゆ……お前は一体何者なんだ?)」

――――――

記者「ということで……さくまゆちゃんにインタビュー!!!」

P「(随分とテンションの高い記者さんだなぁ)」

まゆ「お願いしまぁす」

記者「わー、本当に可愛いね!流石元読者モデル……。
今回は急遽の取材だけど、大丈夫?この前のさくまゆちゃんの記事が大うけしちゃってさぁ。
読者からすっごい続編の希望がとどいてたの」

P「この前?」

まゆ「読者モデルの時のものですねぇ。私が簡単な質問に答えただけだったと思いますが……」

記者「そう!それ!そこでさくまゆちゃんの答えがすっごい支持を得てさぁ……」

P「どんなのだったんですか?」

記者「あんまし覚えてない」

P「ええ!?」

記者「だからこうしてもう一度インタビューをって訳ですよ!
あ、写真は撮りましたよね?」

P「ああ、午前に」

記者「それの横に掲載しますから、そんな感じで!」

P「ああなるほど。わかりました」

記者「Pさんも同席するんですかー?」

P「そりゃあそうでしょうよ……大丈夫だとは思ってますが、一応」

まゆ「大丈夫ですよぉ」

P「しかしな」

まゆ「……これ」

スッ

P「USB……?」

まゆ「それをパソコンにインストールしてみてください。
きっとすごいことになりますよぉ?」

P「……そうなのか?」

まゆ「どうせまだ……出先でもやらなければならないくらいお仕事たまってるんですよね?」

P「うっ」

記者「たいへんですねぇ」

まゆ「私は大丈夫ですから……仕事、してきてください」

P「うう……まゆ……ありがとう」

ガチャ

バタン

記者「尻に敷いてるねぇ~……!」

まゆ「いいえぇ。あの人は素敵なプロデューサーですから、私なんかよりも仕事を優先してほしいだけです」

記者「ぶっちゃけ、好きなの?」

まゆ「今の私が好きなのは、ファンの皆さんですよぉ……うふ」

記者「流石さくまゆちゃん……ブレないね!」

まゆ「うふ……ではご質問をどうぞ?」

記者「おっけー!最高の記事にしちゃおう!」

まゆ「はぁい」

――――――

P「……しっかしUSBか、まゆ機械に詳しかったんだな」

カチャッ

ポンッ

P「……exeがひとつにテキストファイル。なんだこれ」

『izumisystem』

P「イズミシステム……?なんか聞いたことあるなぁ」

P「……テキストを読むか。どれどれ」


『オーバーワークで死にかけているPへ』


P「……間違ってないけど」

『このシステムは、非常に簡単な書類管理プログラム。
誰でも使えるように簡略化しておいたから安心して』

P「なんかバカにされてる気がする」

『とりあえずシステムを起動して、アイドル名を入力して新規フォルダを作って』

P「……」

カチカチ

『その後、アイドルごとにお仕事資料をドラッグアンドドロップ』

P「……」

『次に、【抽出】ボタンを押してみて』

P「……」カチッ

P「!?」

『これで、アイドルがいつ、誰と共演するかなどの情報がまとめられたはず。
でも、完璧じゃないから、ダブルチェックよろしくね』

P「こ、このプログラムすごいな……他にも色々機能が」

P「……イズミシステム」

P「あっ」

P「……泉か!!」


大石泉

―――――――

記者「……で、さくまゆちゃん的には、男の子を落とすにはどうすればいいと思うの?」

まゆ「私なら……尽くしますねぇ」

記者「尽くす?」

まゆ「はぁい。とことん。それこそ相手が私という存在なしでは生きられないくらい……」

記者「尽くすってレベル、超えてない……?」

まゆ「……愛があるなら、似たようなものですよぉ」

記者「……ひゅう!流石まゆちゃん!」

まゆ「いえ。そんなこと……」

記者「……じゃあもし、相手が完璧だったら?」

まゆ「完璧?」

記者「そう。完璧。仕事とプライベートの両立もできて、
家事もできる、対人関係も問題なし!そんな完璧超人!」

まゆ「……うふ、そんな人いませんよ」

記者「えー……たとえばそっちのプロデューサーとか、『サイボーグ』とか
『アイドルをプロデュースされるために作られた生命体』とかいろいろ言われてるよ?」

まゆ「……は?」

記者「……」ゾゾクッ!!

記者「……あ、い、いやそういわれてるだけで!別に私が言ったわけじゃないからね!?」

まゆ「……いいえ。別に怒ってませんから、安心してくださぁい」

記者「(何今の殺気……あやうく漏らすとこだったじゃない……)」

まゆ「それに……うちのPさんは、別に完璧超人でもサイボーグでもありませんよ」

記者「(……お?)」

まゆ「毎日遅くまで頑張って仕事して……寝る間も惜しんでレッスン案を考えて、
それでも自分が疲れてるところはアイドルたちに見せようとしない。ちょっと頑張り屋さんなだけの、ただのプロデューサーです」

記者「……ずいぶんと信頼してるんだね」

まゆ「ええ、付き合い長いですからぁ……」

記者「(半年とか言ってなかったっけ?)」

―――――

まゆ「終わりましたぁ」

P「おう!まゆ。すまなかったな」

まゆ「いいえ。追い出したのは私ですし」

P「……あーそうだったな、それよりあのUSB」

まゆ「はぁい。そうですよ。泉ちゃんに頼んで作ってもらいました」

P「(あれを一日くらいで作った泉も凄いな)
もしかして……オフの日にか?」

まゆ「……そうですよぉ」

P「まったく……お前も無理するのが好きだな。ちゃんと寝たのか?」

まゆ「うふ……ご心配ありがとうございます。でもPさんよりはちゃんと寝てるので
心配しないでくださいね?」

P「……それを言われるとなんとも言えないな。これからはしっかり寝るよ」

まゆ「……体調管理もプロデューサーの仕事、ですよ?」

P「……その台詞、どこかで」

まゆ「……昔、体調を崩した私に言ってくれたじゃないですか。
『体調管理も、読者モデルの仕事』って」

P「……あっ」

まゆ「あの頃から……いえ、なんでもないです。
さぁ、事務所に戻りましょう?」

P「……おう」

ガチャ

バタム

ブロロロロ……

―――――――

P「さてと、まゆは今日終わりだったな、送っていくよ」

まゆ「お願いしますねぇ。じゃあ鍵しめますよ」

P「えっ」

まゆ「……まさか、私一人を家に帰して、今日も徹夜で仕事しようなんて思ってませんよね?」

P「……いや、あのプログラムのおかげで随分進んだんだ、だからもうちょっとで終わるかなって」

まゆ「……懲りない人ですねぇ」

P「……いやいや!?仕事しないとさ!?ほら!?」

まゆ「……不調で仕事をすれば、それはそのまま仕事効率の低下につながります。
ちょっと仕事でもして待っててください」

スタスタ

P「えっ……まゆ?」

――――

P「……」

カタカタカタカタ……

P「(なんだろうか……普段より仕事の進みが早い)」

カタカタカタカカタ……

P「(プログラムのおかげ……睡眠もとってるし、
最近食事もしっかり食べてる)」

カタカタカカタカタ……

P「(やっぱり健康管理って大切なんだなぁ……)」

まゆ「Pさん」

P「うおっびっくりした。音もなく近づくな」

まゆ「すみません。できましたよぉ」

P「できた?」

まゆ「はい、お夕飯です」

P「……晩御飯を作ってたのか」

まゆ「……さ、座ってください。二人で食べましょう?」

P「……何か事務所でアイドルと二人で晩御飯って変な気分だな」

まゆ「……Pさん」

P「なんだ」

まゆ「私、一人暮らしなんです」

P「ああ、知ってるぞ」

まゆ「……だから、こうして、誰かと一緒に食べる事ってなくて」

P「……えっ」

まゆ「……うふ、久しぶりに、ご飯が楽しいんです」

P「……(なんやこの天使)」

まゆ「さ、食べましょう。今日は豆腐ハンバーグですよ」

P「(ヘルシーかつボリューミー。まゆの底の深さがうかがえる……)」

P「いただきます!!」

モグモグ

P「……うまい!!」

まゆ「本当ですかぁ?」

P「ああ!こんな美味い物を食べたのは久しぶりだ!」ガツガツ

まゆ「……うふ、Pさんったら」

P「あはは……!」

P「……(あれ?何か忘れてないか?)」

P「(仕事?違うな。仕事はもう少しで終わる。今日は12時には就寝できる)」

P「(明日のスケジュール……問題ない。ちゃんと連絡もしてある)」

P「(なんだろう……まぁいっか!)」

まゆ「うふ……」

男性を捕まえるにはまず胃袋を捕まえる、といいます

―――――――

P「おはようございまーす!」

凛「おはよう。プロデューサー」

P「おうおはよう凛!今日も元気そうだな!」

凛「……そんなことわかるの?」

P「はっはっは!当たり前じゃないか!」

凛「……そっか」

響子「おはようございまーす!」

P「おう響子おはよう!」

響子「プロデューサー!はいこれ!愛妻弁当です!」

P「あ、うんありがとう……」

凛「……」

P「(もうやめようよ、このシチュエーション……!!)」

ま、まだだ正妻といえば凛という風潮がある今なら……!

凛「(これは……)」

凛「(……これは、負けられない!!私も明日はお弁当を)」

まゆ「……Pさんって意外と食が細いんですよねぇ」

凛「……まゆ?」

P「えっ」

まゆ「あれ?Pさん、今日は杏さんを迎えに行かなくていいんですか?」

P「あっ忘れてた!!行ってくる!!」

ガッチャンバッタン

凛「……ちょっと詳しく聞かせてもらえるかな」

まゆ「……うふ、それでこそ凛ちゃん」

まゆ「……明日凛ちゃんがお弁当を作ってきたとする」

凛「……」

まゆ「……響子ちゃんもお弁当を作ってきたとする」

凛「……」

まゆ「……Pさんは、どうすると思う?」

凛「……頑張って、両方食べる」

まゆ「正解。Pさんは……アイドルの前ではボロを出さない。
そして明日は?」

凛「……バレンタインデー!」

まゆ「……大正解。たくさんのアイドルからチョコを貰ったPさんは」

凛「……できる限り、その場で食べる」

まゆ「その通り。じゃあPさんが明日、本当に欲しいものは?」

凛「……ブラックコーヒー!!」

まゆ「だいせいかぁい」

凛「……ありがとうね、まゆ」

まゆ「うふ……当然よぉ。だって私たち……『仲間』じゃない……」ニコ

まゆ「……あと」

凛「……ん?」

まゆ「……Pさん、最近悩んでるみたい」

凛「何を?」

まゆ「どうも……アイドルのキャラが一定で、お仕事が定量しかこないって」

凛「……それは、つまり?」

まゆ「……たとえばクールなのにすごく可愛い事をしてくれるアイドルなんかいたら、
嬉しいと思うんだけどな」

凛「……!!」

まゆ「……あ、明日凛ちゃん、バレンタインイベントで生放送だっけ?」

凛「……」

まゆ「そこで思わぬキャラを発揮したら……Pさん喜ぶかも……」

凛「……まぁ、あくまで可能性の話だよね」

まゆ「そうね♪」

凛「……」

まゆ「……(うふ)」

――――――――

P「……(今日はバレンタイン……!)」

P「……(普通の男なら、チョコがどうとかで騒ぐところだろうが……そんな場合じゃない)」

P「……(今日放送の収録がいくつか控えてる上、生放送もある……!)」

P「……(今日は、失敗できない!)」

凛「……おはよう」

P「おうおはよう!凛!今日も頑張っていこうな!」

響子「おはようございます!」

P「おうおはよう響子!今日は放映日だぞ!」

響子「あとこれ、どうぞ!」

P「ああ、べん……えっ二つ?」

響子「バレンタインチョコです!愛をこめて作りました!」

P「(あっ……)」チラッ

凛「良かったじゃん、プロデューサー」

P「え、あ、うんありがとうな響子」

響子「はい!じゃあ今日もレッスン行ってきまーす!」

P「おうがんばれー」

凛「……がんばってねー」

P「……凛」

凛「どうしたの?」

P「なんかあった?」

凛「何も?」

P「……そうか」

―――――

P「……(まさかこんなにチョコをもらうことになるとはな)」

ドッサリ

凛「モテモテだね、プロデューサー」

P「職場柄ってやつかな。俺が別段モテてるわけじゃない」

凛「(凄い鈍感だなぁ……)」

P「にしても口の中が甘い……」

凛「……プロデューサー、これ」

P「凛もか!ありが――――えっ?」

凛「……はじめて作ったから、おいしいかわからないけど」

P「……ぽ、ポテトチップス?」

凛「……どうかな」

P「……いただきます」

サクッ

P「……ウメエエエエエエエエエエッ!」

凛「……そっか」ニコ

P「ありがとう!ありがとう凛ー!!」

凛「……ううん。いいよ」

凛「それより……」

P「それより?」

凛「……なんでもない。さ、仕事いこっか」

――――――――

P「……おお緊張してきた」

凛「なんでプロデューサーが……」

P「だだだって、大物司会に生放送だって!」

凛「それでも、いつも通り、仕事をこなすだけだよ」

P「……凛ちゅわん」

凛「次その呼び方したら踏むよ」

P「ごめんなさい」

凛「……ん」

スッ

P「……これは?」

カチャッ

スンッ……

P「……コーヒー?」

凛「……甘い物ばっかり、だったでしょ?今日」

P「り、凛ちゅわぁぁぁん!!」

グシッ

P「オギャアア!!」


―――――

司会「さぁ始まりました。アイドル大感謝祭!バレンタイン!
様々なプロダクションから、有名アイドルのみなさんにお越しいただいてます!」

卯月「わーすごいね凛ちゃんねー見てほら!すごい!有名な人ばっかり!」

凛「卯月、もう少し静かに……」

未央「本当だー凄いすごいー!!」

凛「……もういっか」

―――

司会「さぁ、次の戦いは……チョコレート渡し対決ー!!」

ワアアアアアアアアアア!!!

司会「チョコレートを審査員の方に渡してもらい、
その可愛さを競います」

島村卯月

本田未央

卯月「島村卯月です!がんばります!!」

アイドル「(いちいちフルネーム……この子……できる!)」

司会「ではどうぞ」

卯月「はい!!」

スッ

卯月「頑張って作りました!どうぞ!!」

審査員「ありがとう!!がんばって食べるよ!!」

ドッ

P「(おお……うけてるうけてる。いいぞ卯月)」

審査員「では続いて~」

アイドル「はーい!」

――――

未央「どうぞ……先輩!」

審査員「ありがとう……大切にするよ」

ワアアアアアアアアアアア

P「(素晴らしい盛り上がりだ……これは予想以上だぞ)」

―――

P「(次は凛の番か)」

司会「クールでスタイリッシュ!尻に敷かれたいアイドルナンバーワン!
渋谷凛ちゃん!」

凛「はい」

P「(どんなふうに渡すか……。ここは勝負所だな)」

凛「……ご主人様!」

P「え」

審査員「えっ」

凛「私の愛情いっぱいのチョコ……受け取ってほしいわん!」

P「(……わん!?)」

司会者「……えっ」

審査員「……えっ」

シンッ……

凛「(やばっ……失敗したかな)」


ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
オオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!

凛「ひっ!?」

司会「ひゃっほおおおおおおおおおおおおおう!!!」

審査員「宴じゃあああああああああああああああ!!!」

凛「えっ」

凛「なにこれ」

司会者「まさか……まさかです!!!
趣味は犬の散歩だと思ってましたが……まさか自らを犬に例えてくるとはァーッ!!!」

審査員「んあああああああああわんこりんちゃん可愛いよおおおおおおおおおお」

審査員B「スーハー!!クンカクンカペロペロ!!」

卯月「凛ちゃーーん!!私ーーー!!!結婚してーー!!!」

未央「愛してるううううううううううううううううう!!!!」

ワアァァァァァァァアァァァァァァ……!!

凛「(なにこれこわい)」

P「(大変な事になった)」

>卯月「凛ちゃーーん!!私ーーー!!!結婚してーー!!!」

>未央「愛してるううううううううううううううううう!!!!」


おい同期ちょっと待て

――――――

凛「……お、おつかれさまでしたー」

司会「素晴らしかったよ!!!おつかれ!!」

審査員「フヒィ」

審査員B「帰るぞ。ほら凛ちゃんのフィギュア予約しに……」

審査員「!!」


P「……おつかれ」

凛「本当に疲れたよ」

卯月「お疲れ様でーす!」

未央「お疲れ様でーす☆」

P「……まぁ、今日はとりあえず、素晴らしかったぞ、お前ら」

卯月「だいたい凛ちゃんのおかげだよ!」

未央「だよね!」

凛「えっ」

P「まぁそうだな」

P「……とりあえず、何でこうなったかはわからんが、
素晴らしかったぞ、凛」

ナデナデ

凛「……あう」

卯月「きゃー照れ凛ちゃんかわいー!」

未央「●REC」

凛「と、撮るなーっ!」

卯月・未央「きゃーっ!逃げろーっ!」

凛「もー!」

P「……(すごいな、こいつらマジで仲いいな)」

凛「……プロデューサー!」

P「なんだ?」

凛「今日は……今日のところは私の負けだって、言っておいて!
でもまだ完全に負けたわけじゃないからとも!」

P「……は?」

凛「……じゃ!」

ダッ

P「お、おい!凛!?」

マテー!

マタナイヨー!

P「……どういうことだ?」

―――――――――

P「……ふー」

P「バレンタインイベントも無事終了!
あの後凛への出演依頼がむちゃくちゃ増えたが……まぁそれは明日処理するか」

P「ようやくひと段落ってとこか」

コト

まゆ「お疲れ様です」

P「……もう驚かないぞ」

まゆ「うふ……Pさんもようやく慣れてくれたんですねぇ」

P「だが……もう俺も元気になったし、次からはこうはいかんぞ」

まゆ「そうするとどうなるんですかぁ?」

P「仕事が終わったらすぐ……お前は自宅に帰ってもらう!
どんな手を使ってでもだ!」

まゆ「その後来ますよぉ?」

P「それは困るな……なぁまゆ、わかってくれよ、お前はアイドルなんだ。
だから夜出歩くなんてことは」

ズズッ……

P「……これは」

まゆ「カフェモカですよぉ。バレンタインですから。甘さ控えめにしてあります」

P「……本当になんでもできるんだな」

まゆ「何でもできるわけじゃありません……ただPさんのためならなんでもできますよ……?」

P「どう違うんだそれは」

まゆ「全然違いますよぉ……」

P「なら……俺のために早めに自宅に帰ることもできるな!」

まゆ「もちろんですよぉ」

P「よーし!じゃあ今日は帰ってもらうぞ!あっはっは!」

まゆ「……Pさぁん」

P「なんだ」

まゆ「……こんな時間に、女の子を一人で帰らせるんですかぁ?」

P「……わかったよ。送っていくから」

まゆ「うふ……それでこそ。Pさんです」

―――――

ブロロロロ……

P「……そうだ、今日凛が言ってたんだがな」

まゆ「何をですかぁ?」

P「……『今日は……今日のところは私の負けだ、
でもまだ完全に負けたわけじゃないから』
って言ってたんだが、なんのことかわかるか?」

まゆ「あらぁ……凛ちゃんったら意外と素直なんですねぇ」

P「あれ?お前ら何か勝負でもしてたのか?」

まゆ「してた、というより、『してる』が正しいですねぇ……」

P「おいおい……アイドル同士仲良くしてくれよ?
喧嘩みたいなのは困るぞ」

まゆ「大丈夫ですよぉ。私と凛ちゃんは、とっても仲良しですからぁ」

P「ならいいんだが」

まゆ「……そこを左です」

P「おう」

キキッ

P「ついたぞ……って、お?」

まゆ「……えっ?電気がついてる」

P「お前……行くとき消していかなかったのか」

まゆ「……そんなことはありません。私、確かに」

P「……(なるほど……空き巣か、ストーカー?
何にせよ、まゆの帰宅が遅いのを知ってる人物か)」

P「……入口で待ってろ、俺が確かめてきてやる」

まゆ「あ、ありがとうございます……」

ガチャッ……

シーン……

P「……(どこだ?まゆの部屋か……?しかしここ地味に広いな。
まぁアイドルだから当然といえば当然……)」

バタン

ガチッ

P「えっ?」

まゆ「……これでよし、っと」

カチン

P「……何やってんだまゆ」

まゆ「チェーンかけちゃいました。これで安心ですね」

P「……全く。さっきのは嘘か?」

まゆ「……防犯対策に、ずっと家の電気をつけてるんですよぉ」

P「……あーもう。心配して損した、帰るぞ」

まゆ「……もう、帰っちゃうんですかぁ?」

P「当たり前だろう。俺はまだ仕事が残ってるんだ」

まゆ「これですかぁ?」

スッ

P「えっ」

まゆ「主に凛ちゃんに来たオファーの整理ですよねぇ?
ノートPCも持ってきましたし……ここでやれば大丈夫ですよね?」

P「し、仕事ってのは持ちだし禁止なんだよ!」

まゆ「……時々持って帰ってやってますよねぇ?」

P「うっ……」

まゆ「社長に言っちゃおうかなー……なんて」

P「お前、俺を脅す気か!?」

まゆ「うふ……Pさんの家でもいいなら……ここでもいいですよね。
さ、上がってください。温めなおしますから」

P「……温めなおす?」

――

P「……なぁまゆ」

まゆ「はぁい?」

P「なんで二人分の夕食があるんだ?」

まゆ「作りすぎちゃいました」

P「お皿も並べられてるけど」

まゆ「並べすぎちゃいました♪」

P「……お前、最初からこのつもりで」

まゆ「……だって」

まゆ「……こうでもしないと、またPさんは無理するじゃないですか」ウルウル

P「(涙目で上目使い!?)」

まゆ「……そんなの、耐えられなくて」

P「……本音は?」

まゆ「一緒に晩御飯食べましょう?」

P「あ、ほとんど変わらないんだねそこは」

まゆ「うふ……だって私の選んだ男の人ですよぉ?」

P「どういう意味だ?」

まゆ「……どうせ、ほとんど気が付いてるんですよね?」

P「……それに気が付いてるお前こそ何者だ」

まゆ「うふ……貴方の事が大好きな、ただのアイドルですよぉ」

P「なるほどな……」

P「……今日のところは俺の負けだ。
晩飯食って、ここで仕事して帰るわ」

まゆ「……うふ」

P「……なんだその笑い」

まゆ「……明日も、明後日も、勝負しましょう?」

P「……担当アイドルと勝負、意味がわからんがな」

まゆ「……Pさんなら、受けてくれますよねぇ?」

P「負けたらどうなるんだ?それは?」

まゆ「別にどうにもなりませんよぉ。ただPさんの仕事が快適になるだけです」

P「……なるほどな。勝ったらどうなるんだ」

まゆ「私が、Pさんのいう事をなんでも聞きますよぉ」

P「……いつもと一緒じゃないのか」

まゆ「いいえ……『いなくなれ』とか『俺に関わるな』でも、
なんでも……」

P「流石にそんな酷い事は言わないと思うがな……」

ピーッ

まゆ「あ、できました。さぁ、食べましょう……?」

P「……ああ」


――――――

P「(それから俺と、まゆとの謎の戦いが始まった)」

P「(勝負方法、内容も不明。勝敗の基準すらない)」

P「(とにかく、どちらかが『負け』と認識したら負けのゲーム……)」

まゆ「おはようございまぁす」

P「おう、まゆ、おはよう」

P「(今俺はたしか……勝ち越し、いや、負け越しだったか……?)」

P「(最近は勝敗なんて気にしていなかったような気がする)」

―――――――

カタカタカカタカタカタカタ

P「……(最近の俺は、非常に好調だ)」

カタカタカカタカタカタカタ

P「……(健康で、仕事もバリバリできている。アイドル達は非常に人気になり、
マネージャーもつくようになってきた)」

カタカタカカタカタカタカタ

P「……(そうして俺は『伝説のプロデューサー』として名を知れ渡らせることとなった)」

カタカタカカタカタカタカタ

P「……(しかし、マネージャーを断ったため、俺が直接プロデュースしているアイドルも、中にはいる)」

タンッ

P「……仕事に行くぞ、まゆ」

まゆ「はぁい♪」

                          
P「(気のせいか……そういえば、最近、 『 課金をしてない 』 気がする)」


                                              fin

やっぱりままゆは大天使やったんや。
最後の台詞は、好きに想像してくださいな

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