モバP「脱出ゲーム?」(111)

ちひろ「はい」

P「それがこの機械とどんな関係が? ウチの事務所で一番大きな会議室を潰してまで」

ちひろ「物が物ですからね」

P「酸素カプセルみたいなのが四つと、無駄にでかい装置ですね」

ちひろ「むしろこれだけで済んだのは奇跡ですよ。なんと言っても仮想世界を体験できる代物なんですから」

P「……それ、現代の技術の壁を超えてますよね?」

ちひろ「コツコツと作り上げた成果です」

P「ちひろさんが?」

ちひろ「はい。と言っても、私は資金提供と企画発案諸々の裏方でしたけどね」

P(この技術に払った金はどこから……なんて聞くまでもないよなぁ)

ちひろ「そんなわけで、そのカプセルに入って下さい」

P「拒否権は?」

ちひろ「ふふふっ、他のカプセルの中を見ても同じ事が言えますか?」

支援

P「……なんで俺が担当してる、肇と珠美、それに周子がスタンバイしてるんですか?」

ちひろ「スタンバイと言うより、プレイ中ですね。言っておきますけど、強要はしていませんから」

P「嘘だ! 絶対嘘だ! 耳元で甘言を囁いて唆したんだ!」

ちひろ「信用ありませんね、私。自覚してますけど」

P「ちなみに、三人を起こす方法は?」

ちひろ「ゲームオーバーになるか、クリアするかの二択です」

P「ゲームオーバーになったらどうなるんですか?」

ちひろ「普通に起きるだけですよ。リスクはなにもありません」

ありそうで意外と見ないメンバー

P「……本当ですか?」

ちひろ「それだけでも信じて下さい。何千万回と実験を行っていますから」

P(どれだけの人間が苦しみの涙を流したんだろ……)

ちひろ「それで、やりますか?」

P「やりますよ。やればいいんでしょ?」

ちひろ「よっ、プロデューサーの鏡!」

P(ちひろめ……違った。鬼め、悪魔め……)

ちひろ「では、中に入る前に機械を取りつけますね」

P「このヘッドギアを機械化したような物ですか?」

ちひろ「それは被って下さい。顎のベルトはちゃんと締めるんですよ?」

P「オッケーです」

ちひろ「次はこのコード付きの丸いバンドを両手足に巻いて下さい」

P「……被ってるのもそうだけど、予想以上に着けた感触が気持ち良くて悔しい」

ちひろ「ゲームする人に負担を与えたくはありませんからね。それらも最新の素材で出来てます」

P「凄過ぎて涙が止まりません」

期待

ちひろ「そんなに感動するなんて、製作者の一人として嬉しい限りです」

P「もう、どうにでもなれ」

ちひろ「カプセルに入ったら、胸と腰のベルトも巻いて下さいね」

P「はーい」

ちひろ「私が閉めたら始まりますけど、ゲームの説明は要りますか?」

P「鍵とかパスワードを探して脱出するって認識で正しかったら大丈夫です」

ちひろ「それで平気です。難易度は高くありませんので、楽しんで下さいね」

P「わかりました」

ちひろ「では、良い夢を」

――――――
――――
――


P「ふぁ~……おはよう、未知なる世界」

周子「挨拶するなら、むしろあたしたちにして欲しかったなー」

P「……周子たちがこんなところに来なきゃ、俺も参加しなかったんだけどな」

肇「おはようございます、プロデューサーさん。それとすみません」

珠美「申し訳ありません、プロデューサー殿」

P「いいよ。俺も精一杯楽しむ気になってるから」

周子「そうこなくっちゃね」

ミスったら即死するのか

肇ちゃんかわいい肇ちゃん

P「色々聞きたい事はあるけど、それはゲームが終わってからだな。今は状況確認をしようか」

肇「一クラス目は事務所のようです」

P「だな。書類の類が全部なくなって、机とかもかなり減ってるから、かなりすっきりしてるけど」

珠美「ある物は、机が一つ、鍵付きの棚が二つ、プロデューサー殿が横になっていたソファーとパソコンくらいですね」

P「電気ポットとホワイトボードも追加な。それで、三人はどこまで調べたんだ?」

周子「なにもしてないよ? プロデューサーさん待ってたから」

P「じゃあ、把握してる事は俺と同じくらいか」

肇「触れてはいませんが、多少知った事ならあります」

P「どんな事?」

周子「まず、パソコンに電源が入らない」

P「触ってないのによくわかったな?」

周子「そりゃわかるよ。ほら、あそこ」

P「……コンセント、しっかり鍵付きの蓋で覆われてるな」

珠美「パソコンのコードはそこに転がっております」

P「他のコンセントは?」

肇「棚の後ろはわかりませんが、それ以外はどこにも」

ふむ

期待

P「まっ、当然か。脱出ゲームなのになんでも使えたら簡単ってレベルじゃないもんな」

周子「そういう事だよね」

P「とりあえず、部屋ひっくり返す勢いでなにか探してみるか」

肇「あの、私はこういう事に不慣れで。どういった物を探せばいいのでしょうか?」

珠美「鍛錬不足ながら、珠美もです……」

P「そうだな。最初は鍵かな」

肇「鍵、ですか?」

P「最初の一個か二個はその辺に落ちてるもんなんだよ。他にも工具とか鉛筆とか、なんでも拾った方がいい」

珠美「わかりました!」

doorだっけそういう番組の企画があったな
どんどん水が入って来るやつ

P「探す時には死角になってる壁や床、机の裏側なんかも見ててくれ」

肇「どうしてですか?」

P「何かが貼り付けられてる事もあるからな」
P「文字とかがあって、それがパスワードとかヒントになってたりもするし」

珠美「へぇー。詳しいですね」

周子「プロデューサーさんは慣れてるの?」

P「素人に産毛が生えたってくらい」

周子「頼りにしてるからね」

P「程々にな」

フラッシュによくある箱形の部屋から鍵とかメモを探して謎解きするような感じ?

久しぶりに脱出ゲームやろうかな

P「……ないなぁ」

肇「文字や鍵どころか、目に見える物以外はありませんね」

周子「広い部屋じゃないんだけどねー」

P「四人もいれば、最初くらい早いと踏んでたんだけど、意外にリアルだと難しいんだな」

周子「仮想現実だけどね」

P「半分リアルだと難しいんだな」

周子「いや、別に言い直さなくてよかったけどね」

支援

珠美「ありました! 鍵です!」

P「よし! よくやった、珠美」

肇「どこにあったのですか?」

珠美「ソファーの背もたれと座る部分の間に手を入れたら見つけました」

P「一歩前進だな」

珠美「でも、どの鍵でしょうか? 棚二つと机の引き出し、計三つありますが」

P「全部試してみたらわかるよ。頼めるか?」

珠美「珠美にお任せあれ!」

珠ちゃんちっこいから色んな隙間に入れそう

http://i.imgur.com/nFir6VX.jpg
http://i.imgur.com/UPMLfZG.jpg
塩見周子(18)

http://i.imgur.com/aKa8u9o.jpg
http://i.imgur.com/QWr8jzU.jpg
藤原肇(16)

http://i.imgur.com/ADsyoOK.jpg
http://i.imgur.com/3ZQp26Y.jpg
脇山珠美(16)

周子「上の棚まで届く?」

珠美「そ、そこまでちっちゃくないもん!」

肇「椅子ですが、踏み台にどうぞ。支えますのでご安心を」

珠美「あ、ありがとうございます……」

P(珠美、すっごい複雑そうな顔してる)

隙間女・珠美

P「で、下の棚だったわけだけど」

珠美「開けてもよろしいですか?」

P「いいぞ」

珠美「では!」

周子「テンキーとパネルだけだね」

肇「六桁の数字を入力するようですね」

珠美「適当に入れて構いませんか?」

P「ダメだろ」

肇「ですが、なにを入力すればいいのか……」

P「多分あれだろうな、ヒントは」

珠美「ホワイトボード、ですか?」

周子「正確には、不自然な形に書かれてるマルバツゲームだと思うよ」

P「そう。左の列は、なぜか四つもマルとバツが並んでるだろ? 真ん中と右は三つなのに」

肇「なるほど。テンキーの数字の部分なのですね」

珠美「? どういう事ですか?」

P「つまりだ。マルバツゲームの結果をテンキーに重ねて、マルのボタンを押すんだよ」

珠美「そうでしたか! では珠美が……」

P「どうした?」

珠美「どの順番で入力すればいいのかわかりません……」

P「んー、じゃあ悪いけど、三回だけ俺にやらせてくれないか?」

周子「わかったの?」

P「やってみないとわからないけどな。ほいっと」

珠美「あっ、パネルが開いて鍵が出て来ました!」

P「おぉ、一回目で正解するなんてな。俺もびっくりだ」

肇「どうしてプロデューサーさんは順番がわかったのですか?」

P「わかったって言うか、なんと言うか。やってみたのは書き方順だな」

周子「書き方?」

P「文字を書く時、縦か横だろ? 数字も一緒で、右上から下に進むか、左上から右に進むかだからな」

周子「三つ目はテンキーの並んでる順番って事?」

P「そういう事。縦書き順に丸部分を押したら、偶然当たったわけだ」

肇「よくそのような発想が生まれましたね」

珠美「本当です。珠美は全く思い浮かびませんでした」

P「本当に偶然だよ。それより鍵……ん?」

肇「どうしました?」

P「パネルの裏に文字があってな。Vだ」

周子「覚えてた方がよさそうだね」

P「そうだな」

なるほど

P「さて、二つ目の鍵は机の引き出しだったわけだが」

珠美「白紙、ですね」

肇「パネルも先程の物とは違っています」

周子「タッチパネルだね。専用のペンもあるし。でも、なに書くの?」

P「なんだろう? ライターでもあれば、紙を軽く炙ってみるんだけど、なかったしなぁ」

珠美「炙り出しですね! 珠美も知っています!」

P「そうそう。珠美は博識だな」

珠美「お、お褒めの言葉、恐縮です!」

周子「表情がにやけ切ってるよ?」

珠美「し、仕方ありません! 剣士を目指していようとも、嬉しいものは嬉しいのです!」

周子「それもそうだね。いい子いい子」

珠美「こ、子供扱いしないで下さい! これでも珠美は肇殿と同い年の高校生なのです!」

肇「あまり珠美さんをからかってはいけませんよ、周子さん」

P(お母さんだ)

周子(お母さんだよね)

肇「それはそうと、一つ思い浮かんだのですが」

P「この紙についてか?」

肇「はい。ですが、違ってしまえば、取り返しのつかない事に……」

珠美「取り返しのつかない? そんなに危ない事なのですか?」

肇「危なくはありませんが、言っても大丈夫ですか?」

P「もちろん。なにも対策がないよりずっといいよ」

肇「では、私の考えた案なのですが、水に浸けてみてはいかがでしょう?」

「水につけてあぶりだす」ってのは
「忍者ハットリくん」でも使われた
手法だね。

P「そういう事か」

周子「炙り出しじゃなくて、水出し印刷ってわけね」

珠美「肝心の水はどこから得るのですか?」

P「水なら電気ポットの中にあるぞ。最初の鍵を探してる時に確認済み」

周子「濡らすだけなら乾かせばいいしね」

肇「いいのですか? もし炙り出しなら、インクが水に溶けてしまう可能性もあります」

P「その時はその時。ゲームオーバーで現実世界に戻るだけだ」

周子「それじゃあ、ちょっと都合が悪いケドね」

P「都合?」

周子「こっちの話。それよりやるだけやってみようよ」

肇「わかりました。では、責任を持って私がします」

P「そんなに肩肘張らなくても。ちひろさんに頼めば、後で幾らでもプレイ出来ると思うぞ?」

肇「いえ、時間は待ってくれませんので」

P「周子も肇もどうしたんだろ? 珠美はなにか知らないか?」

珠美「な、なんの事やら珠美にはさっぱりです、はい」

P(……知ってるな。まぁ、言いたくないなら無理に聞く気はないけどさ)

肇「水をかけてみます」

珠美「どうですか?」

周子「……あっ、模様っぽいのが浮かんできたよ」

P「大成功、みたいだな」

肇「ふぅ……よかった」

珠美「おめでとございます!」

肇「ありがとうございます」

周子「お礼を言うのはこっち。肇ちゃんのおかげで時間のロスが少なくて済んだんだから」

肇「ふふっ、お互い様ですよ」

P(なんでそんなに時間を気にしてるんだろ? タイムリミットまで、まだまだ余裕があるのに)

  _, ,_     白い部屋から脱出するために「鍵を開ける」必要があるんですねわかります
( ・∀・)   
( ∪ ∪    
と__)__)旦~~

珠美「この浮かんだ模様は、どうするのですか? プロデューサー殿」

P「妥当に考えれば、さっきのタッチパネルに同じ絵を書くんだろうな」

珠美「絵心がありません……」

周子「実家でやらされたけど、あたしも得意な方じゃないよ? プロデューサーさんは?」

P「プロデューサーに求められるスキルじゃない!」

周子「自慢気に言う事じゃないからね」

肇「それでしたら、まだ陶芸家として半人前ですが、私がこのまま続けます」

P「悪いけどお願いするよ」

肇「はい」

肇「……このような感じ、でしょうか?」

周子「読み取りっぽいボタン押してみるね」

珠美「開きました! 次の鍵もあります」

P「お疲れ様、肇。上手だったよ」

肇「そんな。私の絵はともかく、普段のプロデューサーさんに比べたら、大した事ありません」

P「俺は大した事してないよ」

肇「ふふっ、どうですかね。とある日を忘れてしまうほどですので」

P「?」

珠美「プロデューサー殿、先程と同様、文字がありました!」

P「おっ、なんて書いてあった?」

周子「Eだったよ」

P「最初と繋げてVEだな。よし、覚えた」

肇「では次ですね」

P「あぁ。コンセントの蓋は最後だろうから、棚の上だろうな」

周子「ビンゴ! 開けるね」

珠美「ボタンしかありません」

肇「八×八で並んでいますね。なんでしょう? ボタンにはなにも書かれていませんが」

P「押してみるな」

珠美「押したボタンと、前後左右一マスずつが点灯しましたね」

周子「ライツアウトね」

珠美「らい……?」

P「要するに、ボタンを押して全部点灯させたらいいってゲーム」

珠美「そうでしたか」

周子「ま、こんなの適当にやればすぐ終わるよ」

P「五×五はそうだけど、数が増えると難しいんじゃ……」

周子「はい、終わり。ん? プロデューサーさん、なにか言った?」

P「……なんでもございません」

周子「なんで敬語? ま、いいや。今回も鍵と一緒にIって文字があったよ」

P「VEIだな。了解」

P「さて、早いもんで後はコンセントを解放するだけだな」

珠美「取れました」

P「……あっさりしすぎて余韻もなにもないな」

周子「トロトロやるよりずっといいよ。パソコンのコード挿すね」

P「ほいほい。んじゃ、電源入れるぞ」

肇「パスワードの入力画面になりましたけど……」

周子「四文字だね」

珠美「一文字足りません……」

P「……珠美、コンセント隠してた蓋の裏側を見てくれないか?」

珠美「裏? あっ、ありました! 数字の2です」

P「ほい、これでいいな」

肇「ドアの方から解錠の音がしましたね」

P「これで脱出成功ってわけか」

周子「まだあるよ?」

P「そうなの?」

肇「ちひろさんのお言葉では、クラスが三つあるそうです」

P「あと二つか。けどまぁ、特別難解だったわけでもないし、勇んで進んでみるか」

肇「はい」

珠美「では行きましょう!」

――――――
――――
――


P「いつものレッスン室だな」

周子「だね」

P「……なにも、ないな」

肇「ですね」

珠美「なにかを隠す物さえありませんが、どうするのですか?」

P「……よし、壊すか」

周子「なにを?」

P「とりあえず鏡。壁にあった時計さえないしな」

珠美「よろしいのですか?」

P「ゲームだし、大丈夫だろ」

肇「しかし、罪悪感が……トレーナーさんたちにはいつもお世話になっていますので」

P「全部じゃなくていいよ。薄くなってる所か、少しひびが入ってる所があると思うから」

周子「ひびはいいけど、薄いかどうかはわからないよ?」

珠美「まだ未熟な珠美では、そのような芸当は出来ません……」

P「俺もだよ。とにかく、最初はひびを探してみよう」

肇「はい」

周子「それしかないよね」

珠美「わかりました!」

脱出ゲームってこんなんなのか

珠美「皆さん、ひびがありました!」

周子「どれどれ……本当だね。下の縁近くにあるこんなに小さいの、よく見えたねー」

珠美「ち、ちびっこちゃうし!」

周子「いや、珠美ちゃんの事じゃなくてね。……なんで関西弁?」

肇「すごいですね、珠美さん」

P「あぁ、本当にな」

珠美「えへへっ、そんなに褒められると照れちゃいますよ」

リアル脱出ゲームやりたいな

P「さて、珠美の頑張りを無駄にしないためにも割りますか」

肇「ちょっと待って下さい。素手で割る気ですか?」

P「そのつもりだけど?」

周子「怪我するってわかり切ってるじゃん」

P「所詮ゲームだから痛くないかなって」

周子「なら、はい」

P「なに? この手」

周子「握手」

P「? いいけど。はい」

周子「あたしはプロデューサーさんの手、あったかいって思うよ?」

P「そうだな。俺もだ」

周子「感覚がある以上、痛いとも感じるわけだよね?」

P「あー。そうなるなぁ。痛いのは嫌だ」

周子「それならアホな考えは止める事。わかった?」

P「はい」

珠美「プロデューサー殿。これをお使い下さい」

P「ゲームの中でもずっと持ってた竹刀だな。いいのか?」

珠美「構いません。プロデューサー殿のお言葉を借りるなら、所詮ゲーム。珠美の本当の竹刀は無事です」

P「そっか。なら遠慮なく借りるな。でも、このままじゃ悪いから、俺の上着を巻くよ」

珠美「お気になさらなくてもよろしいのに」

P「最低限の礼儀ってやつさ。ほれ、割るぞ」

周子ーおほおおお!

肇「簡単に割れましたね。しかも綺麗に一部だけ」

周子「鍵は……あったあった。文字はAだね」

P「よいしょ、鍵ゲット。珠美、ありがとな。確認したけど、ガラス片はないから安心してくれ」

珠美「その代わり、プロデューサー殿の上着が……」

P「ここに置いて行くから良いよ。それよりもここから先、その竹刀を有効活用するんだぞ?」

珠美「無論です!」

P「レッスン室から廊下に出てみたものの……床が途中から穴だな」

肇「かなり深いですね。底が見えません」

P「向こうまで四メートル以上はありそうだ」

珠美「その少し先に小さな的があります」

周子「で、丁度いい事に、あたしの手元には三本のダーツの矢」

P「どこでそんなもん拾ったんだ?」

周子「開けたドアの裏側。なんか釣竿もあったよ」

肇「釣竿もですか?」

P「なにかで使うのか?」

周子「ま、先の事はさておき、今はこの矢を的に入れるのが先決だよね」

P「大丈夫か? いつもの二倍近くある距離だぞ?」

周子「余裕余裕。ただ、一本目は多めに見てね、っと!」

珠美「あぁ、惜しかったです」

肇「もう少しでした」

周子「問題ないよ。これでいいはずだから」

珠美「当たりました!」

肇「しかも真ん中ですね」

周子「んー、ま、こんなもんかなー」

P「全く、大した子だよ」

周子「でしょ? もっと褒めても良いよ?」

P「周子はすごいよ、本当に」

周子「フフ、誰かさんに拾われたおかげで色々成長したからね」

P「その誰かさんは、なにかをしたつもりは一切ないけどな」

珠美「? 的の下からなにか出てきましたよ」

肇「ミカンや玉ねぎを包んでるネットのような物ですね」

周子「あれにも当てろって事?」

P「……当てるんじゃなくて、もしかして釣れって事かもな」

肇「そのための竿でしたか。なら、今度は私が」

周子「釣りは専門外だからねー」

珠美「珠美は無力な自分が不甲斐ないです」

P「出来るのか?」

肇「周子さんが素晴らしいお姿を見せてくれたのです。無駄にするつもりはありません」

珠美「頑張って下さい!」

周子「気楽にね」

肇「はい。……行きます」

P「肇もすごいな。一発で当てたよ」

周子「うまい具合に引っ掛かって、こっちに飛んで来てるね」

珠美「っ! 肇さん!」

肇「あっ! ネットになにかがっ」

珠美「珠美が切り落とします!」

P「剣道ってあんな事できるのか? 不意打ちで横から飛んで来た野球ボールっぽいの叩き落としたぞ」

周子「キャッチっと。出来たんだからそうなんでしょ? むしろ、珠美ちゃんのおかげで助かったよ」

P「直撃コースだったもんな。防げなかったらゲームオーバーかもしれなかったし、えぐい仕掛けだった」

周子「ま、なんとかなったからいいじゃん」

P「それもそっか」

肇「珠美さん、ありがとうございました。おかげで穴に落とさずにすみました」

珠美「珠美に出来る事をしたまでですよ。肇さんが釣ってくれたのと同じです」

肇「それでも、ありがとうございます」

珠美「こちらこそ、ありがとうございます」

肇「ふふっ」

珠美「えへへっ」

珠美はかわいいなぁ

P「友情が深まる瞬間って、良いよなぁ」

周子「ホントにね。それとは別だけど、はい」

P「このスイッチ、ネットの中に入ってたのか?」

周子「ついでにNって書いてる紙があったよ」

P「了解。珠美、肇、手に入れたスイッチ押すから気を付けてな」

肇「はい」

珠美「了解です!」

P「床が出来た先はレッスン場の正面玄関か」

肇「靴箱の上に、夜の湖が描かれた花瓶がありますね」

珠美「赤黄青と色とりどりのお花ですが、一輪だけの青は蕾のままです」

周子「後は四足の靴と三色の折り紙が貼られてるコルクボード。それに小さな金庫、かな」

珠美「靴箱は鍵で締められてます」

肇「金庫とドアもですね。今回はパソコンがないためか、ドアに直接入力機械がついてました」

P「ふむふむ」

珠美ちゃんは小梅ちゃんと二人っきりにしたい

肇「なにかわかりましたか?」

P「今回は簡単そうだな。三人はさっき頑張ったから休んでていいよ」

周子「お手並み拝見させて貰うね」

P「そこまでの事じゃないよ。まず、開けれそうなのが金庫だな」

珠美「鍵穴はなくて、三つの数字を入れるだけのようですからね。でも、肝心の数字はどこなのですか?」

P「731。はい、オープン」

珠美「早いですよ!」

P「これくらいならな」

肇「解説をお願いしても良いですか」

P「えっと、コルクボードに黄色、赤色、青色の順で折り紙が並んでるだろ?」

肇「はい」

P「これは同時に数字の順番にもなる。で、花瓶に同色の花。つまり、花の数が入力する数字になるわけだ」

珠美「そういう事でしたか」

肇「黄色の花が七輪、赤色が三輪、青色が一輪……なるほど。理解出来ました」

P「鍵を捕獲。文字はNか」

周子「ANNだね。前のクラスと一緒なら、最後は数字かな?」

P「多分な。んじゃ、ぱっぱと靴箱を開けるぞ」

周子「四つの計量器っぽいのが並んでるね」

珠美「靴をそれぞれに乗せろって事ですか?」

肇「プロデューサーさん、そうなんでしょうか?」

P「んー……」

肇「プロデューサーさん?」

P「んあ? なんだって?」

周子「花瓶、ジッと見つめてどうしたの?」

P「こっちもそこまで難しくなかったなっと思って」

私怨

珠美「流石、珠美の師です! ですが、計量器の前に注意事項が一つ」

周子「えっと『チャンスは三度までです。それ以上は強制ゲームオーバーとなります』だって。大丈夫?」

P「一発成功出来るんじゃないかな? 失敗しても二度チャンスがあれば余裕だと思う」

周子「珍しく強気だね」

P「自分のアイドルたちがあれだけ活躍すれば、強気にもなるさ」

肇「あの、今回はどんな仕組みなのですか?」

珠美「珠美にも教えて下さい」

P「じゃあ、靴を見てみようか。違いがわかるか?」

肇「……側面の模様、ですか?」

P「その通り。右から波線、星、葉っぱ、最後に魚だろ?」

珠美「そうですね。それがヒントなのですか?」

P「ヒントと言うより、基準かな。それで、順番がこの花瓶に書いてる」

周子「……そういう事ね」

珠美「もうわかったのですか?」

肇「私には夜の湖の絵にしか見えません」

P「周子は理解したみたいだけど、説明するな。俺が思ったのは、絵の上から下の順番だ」

肇「上から下まで、ですか?」

P「そう。絵の上部にはなにが描かれてる?」

珠美「夜空です!」

P「正解。で、夜空と言えばこれだ」

肇「あっ、星……」

是非最後まで脱出して欲しい
支援

P「わかったか? だから、星の靴を最初に置く。次は――」

珠美「波線の靴だと思います!」

P「残念。よく見たらわかるよ」

肇「……夜空と湖の境界でお魚が跳ねています」

P「その通り。二番目は魚の靴だな。その後はもうわかっただろ?」

珠美「湖だから波線の靴で、一番下に木々が描かれているから葉っぱなのですね」

P「よくできました。と、言いたいところだけど、下からって事もあるんだ」
P「だから、この葉っぱの靴を置くまで、正直な話、俺にもわからない」

肇「きっと大丈夫です。私はそう思います」

珠美「珠美もです!」

P「ありがとな。よっと」

肇「……」

珠美「……」

周子「……なにも起こらないね」

P「あー、逆だったかぁ。偉そうに説明したから恥ずかしっ」

肇「いえ、正解です。ほら、青い花の蕾が」

珠美「ゆっくり開いてます……」

周子「……なんだろ。すごく自然に花ってすごいと思えて来る」

P「同感。……あっ、鍵が落ちた」

周子「開いた花弁の一枚に数字が書かれてるね」

P「1な。ってことは、ANN1っと。入力終了」

肇「鍵が開きましたね」

P「よっし、ラストのクラスに突入だ」

しえん

――――――
――――
――


肇「広いですね……」

P「広いなぁ……」

珠美「椅子が多いですね……」

P「多いなぁ……」

周子「ライブ会場って……もしかしなくても、椅子に割り当てられてる英数字を全て確認しなくちゃならないんだよね?」

P「単純に考えればな。それ以外も探す事になるかもしれないけど」

いよいよ最後か
支援

珠美「二階がない事がせめてもの救いです」

P「全面同意。しかし最後のパスワードは長いな。十二文字分って……ステージの中央にあるのが嫌みにしか見えない」

肇「落ち込んでても仕方ありません。別れて調べましょう」

P「そうだな。俺が東、肇が西、周子が南、珠美が北で、調べ終わったらここに集合しよう。一時解散!」

――――――
――――
――


P「みんな、お疲れ様。どうだった?」
P「ちなみに俺の方はなにもなかった。椅子全体や床とかも確認したけど」

周子「あたしのところはE-4がなくなってたよ」

肇「Lだけでした」

珠美「珠美のところはTでした」

P「前二つのクラスを考えると、E-4はそのまま繋げてE4になって、LとTの後になるだろうな」
P「けど、他は完全にノーヒント。流石に白旗をあげたいな。みんなはどう思う?」

肇「……すみません」

P「どうした急に?」

珠美「珠美たちの協力はここまでなのです」

P「ここまでって、まさか、もうすぐ制限時間になるのか?」

周子「ううん。思ったより早く進んであたしたちは間に合ったよ」

肇「ですが、ここから先はプロデューサーさんお一人で答えを見出して頂きたいのです」

珠美「もちろん、珠美たちの我儘だと自覚しておりますが……」

P「もしかして、俺になにか隠してるやつと関係が?」

周子「関係と言うより、そのものだけどね」

肇「ですが、プロデューサーさんなら必ずクリアしてくれると信じてます」

珠美「珠美たちは少し早く起きますが、すぐに追いかけて来て下さい」

周子「そうしたら、ご褒美あげる。ゲームオーバーだけは許さないからね」

P「えっとさ、まだ理解が追いついてないけど、クリアすればいいんだな?」

肇「願うならば」

珠美「珠美もそう望みます」

周子「そんなわけで、よろしく!」

P「おっし、よくわからないけどわかった。向こうでのんびり待っててくれ」

肇「心落ち着かせて待っています」

珠美「珠美たちからのプレゼント、楽しみにしてて下さい」

周子「ま、プロデューサーさんの事だから心配いらないだろうけどね」

肇「それでは、また事務所で」

P「おう!」

P「……本当に戻っちゃった。一人って、かなり切ない……」

P「違う違う、そうじゃなくて真剣に考えないと。約束は守るもんなんだから」

P(と、言っても十二の文字と数字)

P(少し考えてわかった事と言えば、今までの脱出パスワードを全部混ぜるって事か)

P(三×四で丁度十二になるからな)

P(けど、今のクラスのLとTの順番がわからない以上、なんとかしてクラス毎の法則を見つけないと)

P(ゲームの謎解きのレベルはそんなに高くない。だから単純に考えろ)

P(例えば、クラス毎のパスワードに、一クラスなら一が、二クラスなら二が関わるとか)

P(ん? クラス? 今更だけど、どうしてランクでも、エリアでもなくてクラスなんだ?)

P(最初にそう言ったのは肇だったな。ゲームに慣れてない肇がそんな事さらっと言えるか?)

P(誰かに教えて貰ったとか、色々可能性はあるけど、まずはクラスがヒントの可能性を考えてみるか)

P(階級、種類、学校……)

P(もしかすると、学校が? いや、教室と受け取った方が進みそうだ)

P(俺の勘違いだったら時間の無駄だけど、それで整理してみよう)

P(一クラスはVEI2だった。そうなるとVは一クラスの出席番号一。つまり、一の一にする)

P(同じようにEは一の二、Iは一の三、2は一の四)


一の一
  V

一の二
  E

一の三
  T

一の四
  2


P(地面に書いてみたけど、顔文字に見えてきた……)

P(気を取り直して、二クラスのパスワードも分解。三クラスはわかってる三と四だけ)

P(それらを整列をするように並べてみよう)

P(完成したのは三と四は完成したな。答えはまだ分からないけど)


一の一 二の一 三の一 
   V    A  L or T  

一の二 二の二 三の二 
   E    N  L or T    

一の三 二の三 三の三
  I    N    E 

一の四 二の四 三の四
  2    1    4  


P「……やっぱり顔文字に見える。やる気なさそうにピースしてんじゃねぇよ、一の一」

P「……ん? 214? 確か今日って……。それにこの並び方」

P「……そっか。って事は、LとTの順番は……」

P「約束は果したぞ。だからちゃんとくれよ、ご褒美ってやつ」

しえ

貴音かわいいよ貴音

――――――
――――
――


P「ふぁ~~……寝ながら頭を使うしんどさ。時給でいくら換算になるんだろ?」

ちひろ「お早いお目覚めですね。あの子たちから遅れて数分なんて」

P「貰える物は全力で貰えと両親に教わりながら育ったので」

ちひろ「今はプロデューサーさんへのご褒美を取りに行っていませんが、きっと喜びますよ、あの子たち」

P「プレゼントを貰って喜んでくれるならいくらでも」

ちひろ「ヒモの素養あり、と」

P「おい、コラ。メモんな。ヒモになる気はねぇよ」

やっぱり肇ちゃんはかわいいな

ちひろ「冗談ですよ」

P「にしても、状況を察した限りじゃ、ちひろさんはあの子らの希望に沿って動いていたんですね」
P「なんとお礼を言っていいのやら……」

ちひろ「鬼や悪魔にも、流せる涙があれば、手を差し出す情だってあるんですよ?」

P「本当にごめんなさい!」

ふんふむ

ちひろ「今回ばかりは許しましょう。今日がどんな日か思い出せたようですので」

P「忘れていたわけではありませんけどね。職業上、イベントの日は特に」
P「俺には関係ないと思ってただけですよ。今でも、ある意味知らないままでいい気がしますし」

ちひろ「難しいお年頃ですからね、彼女たちは。ただ、渡す相手に期待して貰いたい気持ちは私にもわかります」

P「これ以上ないほど期待しちゃってますよ」

ちひろ「でしたら重畳です」


「もう起きたかな?」

「流石にまだ早くありませんか? お疲れでしょうし」

「珠美は両方想像出来てしまいました」


ちひろ「戻って来たようですね」

P「ですね」

周子「ちひろさん、プロデューサーさんは――もう起きてるよ」

肇「お目覚め加減はどうですか? まだ横になっていても大丈夫ですよ」

珠美「凄いです。珠美だったらゲームオーバーになった自信ありますよ」

P「おはよう。約束、ちゃんと守ったぞ」

周子「ちょっと早過ぎだと思うケドね。ま、プロデューサーさんらしいと思うよ」

肇「ご安心下さい。ちゃんとご用意は出来てますから」

珠美「珠美は生涯一の自信作です!」

P「楽しみだな。どんなモノをくれるんだろ?」

周子「わざとらしい口ぶりだね」

肇「まぁまぁ。では、打ち合わせ通りに」

珠美「せーの!」


『Happy Valentine!』

終わり

読んでくれてありがとう
すみませんがずれは脳内で修正して下さい
けどこんなに長くなるとは思わなかった
お疲れ様です

乙!よかった

乙乙

肇ちゃんはかわいい乙

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