女「私500万円で売られちゃうの?」 (632)

  
父「あぁ。大きい質屋みたいなところに行くんだ」

女「そっか…」

父「安心しなさい。きっと迎えに来るから」

女「お父さんはその間何するの?」

父「500万で一山当ててくる」

女「山?」

女「お父さん山買うの?」

父「そんなところだ」

女「私はこれから何するの?」

父「少し働くかもしれないな」

女「……わかった。がんばる」

父「しっかり頑張ってくれ」

女「うん。約束する」

父「良い子だ」

  
事務所

父「…500万ではないんですか?」

社員「もちろん上限は500万円です」

社員「しかしお仕事に使えないような子にそこまで出すことは出来ません」

父「うちの娘はどうですか…?」

女「……」

社員「(久しぶりにこちらが買い取りたいと思うレベルの子だな…)」

社員「そうですね。別室で査定いたしますので少し待っていただけますか?」

父「わかりました」

父「あの人について行くんだ」

女「うん」

………

……


  
別室

社員「……なるほど」ジー

女「あの、もう服着ていいですか?」

社員「あぁ。協力ありがとう」

社員「(……14歳で処女か)」

社員「(DVも受けてなさそうだしかなり良い商品になるな)」

社員「(少し傷があるが…あの程度なら気にしない輩の方が多いはず)」

女「……」

社員「じゃあお父さんと話してくるからこの部屋で待っててくれるか?」

女「……はい」

ガチャ バタン

女「……」

女「……」

  
事務所

社員「お待たせいたしました」

父「どうです?」

父「いくらで売れますか?」

社員「焦る気持ちも分かりますが少し落ち着いてください…」

社員「まず、預入と買い取りの2種類ありますがどちらにいたしますか?」

父「……どんな違いがあるんですか?」

社員「三ヵ月以内という期限付きではありますが」

社員「預入ですと貸付金と質物保管料を払えば娘さんは手元に戻ってきます」

父「……」

社員「買い取りですと二度と手元には戻らない代わりに預入より金額を高くしています」

父「では買い取りで」

社員「ありがとうございます」

  
社員「(さてどこまで下げよう)」

社員「(ここまで即答だと多少安くてもいけそうだな…)」

社員「そうですね…」

社員「150万円でいかがでしょう」

父「買い取りで150万ですか?」

社員「はい」

父「大した額にはならないな…」

社員「どういたします?」

父「まぁいいか。金になるだけマシだ」

父「150万で手を打ちましょう」

社員「ありがとうございます。ではこちらにサインを」

………

……


  
別室

社員「……」

女「お父さんはどこにいるんですか?」

社員「もう帰ったよ」

女「!」

女「……そうですか」

女「(いつ迎えに来てくれるか聞きたかったな…)」

社員「(目が赤い。泣いてたのか…)」

社員「(まぁ珍しくもないが)」

女「……」

社員「……」

社員「(これで14歳か)」

社員「(見た目通りと言えばそれまでかもしれないが…)」

  
社員「いつまで学校に行ってたんだ?」

女「……4年生の途中までは行ってました」

社員「なんとなく幼く見えたのはそのせいか」

社員「(…親がアレだと子供の精神年齢は低いままってのもあるしな)」

社員「……」

女「学校あんまり行ってなくて頭悪いんです。すみません」ペコ

社員「謝らなくてもいい」

社員「ここでは関係のないことだ」

社員「今までは何してたんだ?」

女「……写真」

女「写真たくさん撮ってました」

社員「(ポルノでも撮られてたのか?)」

女「あの、いつお父さん迎えに来るんですか?」

社員「(このタイプは希望を持たせておいた方がいいな)」

  
社員「…わからない」

女「そうですか。すみません…」

社員「とりあえず君には仕事してもらわないといけない」

女「……どんな仕事ですか?」

社員「どうすれば一番稼げるか考えよう」

女「……」

社員「(手っ取り早いのは…)」

社員「(処女専に売る→臓器売買→死体専に抜け殻売る……)」

社員「(これだと3000万はいける)」

社員「(AVもいいな)」

社員「(ロリコン共をうまく相手にできればそこで荒稼ぎ……)」

女「……」ポロポロ

社員「!」

社員「か、かわいい…」

新章は近々始めますが、それにあたって作者からお願いがあります。
といっても、単に「作品の連載中、読んでる人は随時コメントをして欲しい」という、それだけです。
連載が終わってから纏めて、とかではなくて、“連載中に”コメントが欲しいのです。

ここでもmixiのコミュニティでも再三言ってることですが、私はSSの作者として、
「SSとは読者とのインタラクションの中で作っていくものである」というポリシーを持っています。
つまり、読者からの声がなく、作者が淡々と書いて投下しているだけという状況では、全く意味がないということです。
それなら「書かない方がマシ」といっても大袈裟ではありません。

特にこの都道府県SSは、本来3年前に終わっている作品を、需要があると言われて新たに書き続けているものです。
投下しても1件2件しかコメントが付かないのでは、その「需要」があるのか否かさえ曖昧になります。

全ての読者にレスを求めるのは酷な事だと思いますが、出来る限り「ROM専」というのはやめて下さい。
少なくとも、一夜投下する度に10~20件くらいのレスは付いてほしいです。
この数字は、私の考える、SSが正常に連載の体裁を保てる最低限度のレス数です。

連載を続けるにあたり、そのことだけは、皆さんにお願いします。

  
女「……?」

社員「(なんだ今のは…)」

社員「(柄にもない…)」

女「……」ゴシゴシ

女「泣いてばっかりですみません」

女「ちょっとだけ怖くて…」

女「でもお父さんと約束しました」

女「だからお仕事がんばります」

社員「…………」

社員「…………」

社員「(……同情してるのか)」

社員「(……そんな資格もないのに)」

  
社員「……AVも臓器売買もやめだ」

社員「もっと簡単な仕事にしよう」

女「?」

社員「かわいい服着て男の人と話す仕事だ」

女「……わかりました」

女「がんばります」

社員「(これが一番安全なはず…)」

社員「あとは注意することを言っておかないとな」

女「……」

社員「年齢を聞かれたら18歳って答えるんだ」

女「18歳ですか」

社員「ほんとは18歳以上しか働けないお店に行くからな」

女「……わかりました」

社員「困ったらこれで電話してくれ」

  
女「携帯…」

社員「連絡用だから無くさないようにな」

女「……」

社員「向こうの店には店長って奴がいるから」

社員「電話ができない状況だったら店長に助けてもらえ」

女「はい」

女「(話す仕事できるかな…)」

女「(お父さん以外ほとんど喋ったことないのに)」

社員「じゃあとりあえず店まで送らせるから」

女「……わかりました」

  
五時間後 クラブ

ガシャーン!

店長「……」

パリーン!

店長「……」




女「あ、あの店長さん…」

店長「今度はグラス?」

女「……あの、すみません」

店長「手が震えるのか?」

女「……緊張してふるえます」

店長「今日はここまでにしようか」

女「すみませんすみません」

  
二時間後 事務所

女「……店長さんに送ってもらいました」

社員「あぁお疲れ」

社員「どうだった?」

女「……難しかったです」

女「店長さんにいっぱい怒られました」

社員「(あとで電話だな)」

社員「寮あるからそこで寝るか?」

女「りょう?」

社員「あー」

社員「マンションみたいな感じだ」

女「……」

女「一人ですか?」

社員「そうだな」

  
女「…さみしいです」

社員「そう言われてもな」

社員「……じゃあ友のとこに突っ込ませるか」

女「?」

社員「ちょっと待っててくれ」

女「…はい」

………

……



友「ルームシェアするなんて久しぶりね」

社員「一人じゃさみしいって言ってるんだ」

友「……そんな甘かったっけ?」

社員「……」

友「あ、お気に入りなのね」

  
社員「そんなことはない」

友「あるある」

友「私の時なんて、売られたお前らに人権なんかあるか!」

友「とか言ってたくせに」

社員「言ってない」

友「年下のくせにねぇ」

社員「…………」

友「はいはい悪かったよ」

友「んでこの子が今日売られた女ちゃん?」

社員「そうだ」

友「じゃ部屋行こうか」

女「…はい」

友「(完全にビビってるよ)」

社員「頼んだ。この子は明日も出勤だからな」

  
203号室

友「私の部屋はここだから覚えててね」

女「203…」

友「そうそうえらいね」

女「……ありがとうございます」

友「いくつなの?」

女「えっと18です」

友「私には嘘つかなくてもいいんだよ」

友「社員と友達だから」

女「……14歳です」

友「若いね。うらやましい」

女「友さんはいくつですか?」

友「…………」

友「20代」

  
友「今日は遅いからもう寝ようか」

女「はい…」

友「上と下どっちがいい?」

女「あの、一緒はダメですか?」

友「……」

友「(ひいきする理由もわかる…)」

友「慣れたら一人で寝るんだよ?」

女「あ、ありがとうございます」

友「じゃあおやすみ」

女「……おやすみなさい」

………

……


  
女「……」

女「……」

女「……」グスッ

女「おとうさん…」ギュッ

友「…………」

友「…………」

女「さみしい…」グスッ

友「…………」

友「…………」

………

……


  
三日後

男「(あーめんどくさいめんどくさい)」

男「(キャバクラなんて行きたくねーよ)」

部長「今日はいつものとこじゃなくて高級なとこに連れてってやる」

男「ほんとですか!」

男「ありがとうございます!」

男「(……まぁこれも仕事のうちか)」

部長「最近成果が出てきたようだからな」

部長「俺からの褒美だ」

男「(高級なとこ……)」

男「(胸でも触らせてくれんのか?)」

  
クラブ

部長「んじゃ俺はいつもの子で」

店長「いつもありがとうございます」

男「俺はどうすれば…?」

店長「かわいい新人が入ったんでオススメしておきます」

男「そうすか。んじゃその人お願いします」



男「(入って分かったけど高級って逆にお触りから離れるのか)」

男「(いつもみたいにうるさくないのはありがたいけど…)」

……


  
女「……よろしくお願いします」ペコ

男「…………」

男「(おいおい若すぎないか…?)」

男「(18いってるようには見えない)」

男「(まさか危ない店なんじゃ…)」

男「でもそんなことより」

女「?」

男「かわいい」

女「!」

女「あ、ありがとうございます」

男「照れてる?」

女「このお店で初めて言われました」

男「謙遜が上手いね」

女「(けんそん…?)」

  
女「(とりあえずお礼言わないと…)」

女「ありがとうございます」

男「お酒は飲める歳じゃないよね?」

女「ごめんなさい」

男「いいっていいって」

男「いくつなの?」

女「…えっと」

女「18です」

男「(間があったな…)」

男「そうなんだ。何年なの?」

女「うさぎです」

男「(えーと…)」

男「(15か!)」

男「(いや誕生日前なら14か……)」

  
男「(さすがにかわいくても中学生は…)」

女「……」キョロキョロ

男「どうしたの?」

女「すみません」

女「いつも何話せばいいかわからなくて…」

男「最近入ったって言ってたな」

女「……はい」

男「だから緊張してるのか」

女「…そうです」

男「じゃあ…」

男「このお酒注いでくれるか?」

女「これですか?」

男「あぁ」

女「できるかな」ドキドキ

  
トクトク

女「!」

女「わわっ」

女「泡がいっぱいです!」アセアセ

男「(……やばいかわいい)」

女「ご、ごめんなさい」

男「上出来だ」

男「うまいうまい」

女「……」

女「初めて褒められました」ニコニコ

男「(決めた。通おう)」



男「(かわいすぎる)」

男「(この子オススメしてくれるなんて良い店長さんだ)」

  
翌日

女「……」

友「起きた?」

女「…おはようございます」ゴシゴシ

友「じゃあ今日は私仕事だからお留守番しててね」

女「…はい」

友「ご飯は自分で作れる?」

女「多分できます…」

友「困ったら社員に電話しなよ」

女「はい。すぐに電話します」

友「社員のこと気に入ったの?」

女「社員さん優しい気がします」ニコニコ

友「…そうね」

  
友「あとテレビとか本とか自由に見ていいから」

女「テレビ見てもいいんですか…!」

友「?」

友「もちろん」

友「じゃあ行ってくるね」

女「はい」

ガチャ バタン



女「初めてお休みもらえたんだ…」

女「とりあえずテレビ見たい」

ピッ

女「アニメやってるかな」ドキドキ

  
女「ニュースばっかり…」

女「本は…」

女「……」ペラペラ

女「難しくて読めない…」

女「……」

女「……」

女「ご飯作ろう」

………

……



女「できた」

女「この携帯で写真撮れるのかな…」カチカチ

女「?」カチカチ

  
女「撮れないのかな…?」

女「でもカメラ付いてる」

女「……」

女「……」

女「困ったときは…」

ピリリリ

女「もしもし」

社員「どうした?」

女「あ、あの…」

女「カメラってどうやって撮るんですか…?」

社員「?」

社員「カメラ?」

女「携帯のカメラ使いたくて…」

  
社員「……何に使うんだ?」

女「ご飯作ったから撮りたくて…」

社員「…………」

社員「(何事かと思えば……)」

女「だ、だめですよね。すみません」

社員「困ったら電話しろって言ったからな」

社員「何も間違ってない」

社員「電話しながらだと説明しにくいからメールで操作の仕方送るよ」

女「ありがとうございます」

女「やっぱり社員さん優しいです」

社員「……どうも」

女「じゃあ切ります」

社員「あぁ」

  
5分後

カシャッ

女「撮れた」

女「……ちょっと冷めちゃった」

女「……」モグモグ

女「……」モグモグ

女「……」モグモグ

女「早く帰ってきてほしいな…」

………

……



女「……」

女「頑張って本読んでみようかな」

女「……」ペラ

  
女「……」ペラ

女「(漢字もあんまり分かんない)」

女「(家に辞書あったのにな…)」

女「……」

女「まずコンパスが登場する」

女「は気がくるっていた」

女「のつけ根がゆるんでいたので完全な円は……?」

女「?」

女「もういいや」

………

……


  
自宅 夜

男「(電話で聞こう…)」ピリリリ

店長「はい」

男「すみません。昨日初めてお店に行かせてもらった者ですけど」

店長「(部長さんに連れられてきた人か…)」

店長「いつもありがとうございます」

男「それで…」

男「昨日横につけてくれた女の子は今日働いてますか?」

店長「少々お待ちください」

男「はい」

店長「……あの子は明日に出勤ですね」

男「そうですか。どうもです」

店長「こちらこそありがとうございます」

店長「(気に入ってもらえたか……この人で慣れされよう)」

  
一時間後 203号室

ピリリリ ガチャ

女「もしもし私です」

社員「……今度はどうしたんだ?」

女「あの…」

女「お仕事休みの日は何をすればいいのか分からなくて…」

社員「……」

社員「今日まで四日間働きっぱなしだったな」

女「はい」

社員「少しは慣れたか?」

女「……ちょっとだけ」

社員「そうか」

社員「慣れたなら頻度は減らそう」

女「……」

  
社員「これからはもっと寮にいる時間が長くなる」

女「そうですか」

女「何をすればいいですか?」

社員「そうだな…」

社員「友の部屋なら本棚にマニュアル本があるはずだ」

女「(……どれかな)」ガサゴソ

女「マニュアルって書いてあるのありました」

社員「その接客マニュアルを読んで勉強するんだ」

女「せっきゃく…」

社員「男の人と話す事だ」

社員「その本を読めば大事なことがたくさん分かるから」

女「…はい」ペラ

社員「本にも載ってるかもしれんが一番大事なのは笑顔だ」

女「笑顔…」

  
二時間後

ガチャ

女「!」

友「ただいま」

女「おかえりなさい」

友「帰ったとき人がいるのは良いねー」

友「しっかりお留守番できた?」

女「はい。社員さんにいっぱい電話しました」ニコニコ

友「そっか」

………

……


  
友「いろいろ教えようかな」

女「?」

友「私は18歳の時ここに来たの」

女「……」

友「最初は怖くて嫌だったけど段々楽しくなってきたよ」

女「そうなんですか」

友「うん」

友「周りもいい人いるし」

友「私のこといろいろ頼ってくれていいからさ」

女「……」

友「一緒に頑張って働こう!」

女「がんばります」

  
女「友さんは…」

女「お父さんが迎えに来なかったんですか?」

友「来てないね。10年経つけど一度も来てない」

友「もういないことにしてるよ」

友「友達もいるし」

女「私もお父さんに一生会えないんですか…?」

友「…………」

友「(買い取りって言ってたらしいけど…)」

友「(というか預入でも迎えに来た人なんて今まで一度も見たことない)」

友「どうかな。でも私がいっぱい遊んであげるよ」

友「社員さんにも可愛がってもらえるはず」

女「そうですか…」

友「……」

  
女「みんなに褒めてもらいたいです」

友「店長さんがいるところで働いてるんだよね?」

女「そうです」

友「じゃあいい男見つけられるかもね」

女「……ちょっとあの店怖いです」

友「最初だけだよ。あそこは高級だから」

女「?」

友「まぁそのうち分かるよ」

女「はい」

女「……あ、あの」

友「ん?」

女「今日も一緒に寝たいです。お願いします」ペコ

友「もちろん。ずっと一緒に寝ようか」

女「…ありがとうございます」ニコニコ

  
翌日

女「今日は私も行きますか?」

友「そうね」

友「行こっか」

女「…はい」

友「私は違う場所に行くから先送ってくね」

女「友さんはどこで働いてるんですか?」

友「うーん。内緒」

女「……」

友「女ちゃんも今度連れてってあげるよ」

女「ほんとですか?」

友「もちろん」

女「やった」

  
クラブ

女「……」キョロキョロ

店長「まずはお店来たら挨拶しようか」

店長「夜だけどおはようございます、だからね」

女「す、すみません」

女「おはようございます」

店長「よく言えました」

女「……店長さん優しいです」ニコニコ

店長「そうかな」

店長「(もう社員さんに怒られたくないからね…)」

女「がんばります」

店長「よし、その意気だ」

店長「そういや前の人が来るかもしれないよ」

女「そうなんですか。わかりました」

  
男「(今日ほど仕事張り切った日はないな)」

ガチャ

男「(あの子はいるかな…)」



店長「いらっしゃいませ」

男「昨日電話した者ですけど…」

店長「はい。お呼びさせていただきます」

男「ありがとうございます」

  
女「あ、こんばんは」

男「また来た」

女「今日は一人なんですか?」

男「そうだよ」

女「……」

女「……」

女「あ、あの…」

男「ん?」

女「私何もできないのに何で来てくれたんですか?」

男「あまりにもお店に似合ってないし」

男「かわいかったから」

女「……ありがとうございます」

女「知らない人ばっかりだから仲良くなりたいです」

  
男「もちろん俺もだ」

女「お酒入れましょうか?」

男「うん。頼むよ」

女「今日は失敗しません」



トクトク

女「………」

女「!」

女「あ、あふれました」アセアセ

男「(……かわいい)」

女「ごめんなさい」フキフキ

男「あぁ大丈夫だよ」

  
男「(いろいろ考えてたけど…)」

男「(こんな若い子が働くなんてやっぱり借金でもあるのかな)」

男「仕事してない時は何してるの?」

女「…………」

男「(もしかしてまずいこと聞いたか)」

女「あ、写真撮るの好きです」

男「そうなんだ」

女「でも今カメラなくて携帯で撮ってます」

男「(これってカメラねだってる……のか?)」

女「他には一人で本読んだりしてます」

男「そっか。好きな本とかあるの?」

女「……えっと」

女「まだ読み始めたばかりです」

  
男「でも読書なんてえらいな」

女「ありがとうございます」

女「でも学校行ってないからあんまり漢字読めなくて…」

男「学校行ってないのか…!」

女「(ど、どうしよう。これ言うとまずかったのかなぁ)」

女「……」

男「(思い出したくなかったんだな)」

男「イヤなこと聞いてごめんな」

女「そんなことないです…」ニコニコ

男「……」

  
男「ここって店外デートできるのかな」

女「デ、デートですか…?」

男「やっぱ無理な店なのか」

女「すみません。聞いてきます」

男「あぁわざわざごめんな」

女「……どこにも行っちゃだめですよ?」ギュッ

男「!」

男「も、もちろん」

男「(こういうところは大人っぽいな……)」

女「……」スタスタ

女「(マニュアルに書いてたけど)」スタスタ

女「(今みたいなのでほんとに嬉しいのかな)」スタスタ

  
女「…店長さん」

店長「どうしたの?」

店長「何か割っちゃった?」

女「そうじゃなくて…」

女「あの人がデートしたいって…」

店長「まじで?」

女「……はい」

  
店長「(たった二回で店外デート誘うとはいい根性してるが)」

店長「(…この子ならそこまで厳しくしないでもいいか)」

女「……」

店長「(社員さんからも頼まれてるし……あの話が本気だとは思えないけど)」ナデナデ

女「?」

店長「認めてるから行ってもいいけどお店が休みの日ね」

店長「デートも大事なお仕事だから頑張って」

店長「あとで社員さんに連絡して詳しい説明とか直接聞いてくれる?」

女「はい」

店長「…あと自分が行きたくなかったら断ってもいいからね」

女「わかりました」

女「(大事なお仕事…)」

  
店長「シフト表は持ってる?」

女「はい。持ってます」

店長「それで確認しながらお願いね」

女「わかりました」



女「ごめんなさい。遅くなって」テトテト

男「ううん。大丈夫」

女「デートしてもいいって言われました」

男「それはよかった」

女「あ、あのどこ行くんですか?」

女「私お金持ってないんです」

女「公園とかでいいですか?」

男「(金持ってないのか。借金のせいなのか……)」

男「公園いいな。小さい子の発想で」

  
女「……ちいさい」

男「いい意味でな」

女「そうですか」

男「お金は全部俺が出すから心配いらない」

女「……いいんですか?」

男「もちろん」

男「どこか行きたいとこある?」

女「えーと…」

女「昔お父さんと行ったデパートに行きたいです」

男「デパート…?」

女「だ、だめですよね。ごめんなさい」

男「そんなことないよ。ちょっとびっくりして…」

男「何か思い出とかあるの?」

女「そこのレストランで食べたオムライスがおいしかったんです」ニコニコ

  
男「あったなぁそういうの。懐かしい」

女「……いいですか?」

男「いいよ。そこにしよう」

女「ありがとうございます」

男「じゃあいつにしようか…」

女「私シフト表持ってます」ペラ

男「……」

男「なるほど」

男「4日後だと行けそうだ」

女「わかりました」カキカキ

男「ていうかほんとにデートしてくれるの?」

女「大事なお仕事ですから」

男「(おしごと……そりゃそうか)」

女「あ、これ言っちゃいけなかったですか…?」

  
男「いやそんなことないよ」

男「デートでいっぱい楽しませてみせる!」

女「うれしいです」

男「そういえば名前聞いてなかったな」

女「そうですね」

女「女っていいます」ペコ

男「男っていいます」ペコ

女「じゃあ男さんですね」

女「覚えました」

男「ありがとう」

女「名前呼んでもらうの好きです」

男「そうか。女さんかわいいな」

女「うれしいです」

女「デートの時もいっぱい呼んでください」ニコニコ

  
男「(ほんとにかわいいな…)」

男「デートの連絡とかしたいからアドレス交換しようか」

女「…はい」カチカチ

男「……」カチカチ

ピピッ

女「できました」

男「ありがとう」

男「ところでそのデパートはどこにあるか覚えてる?」

女「すみません。はっきりとは…」

男「そうか。大体でいいよ。地図見せるから」

女「…………」ジー

女「……多分この辺りです」

男「わかった。探しておくよ」

女「ありがとうございます」

  


男「節約しないとな」

男「…………」

男「…あの貯金崩すか」

………

……



203号室

女「ただいま」

友「おかえりー」

女「お風呂入ります」

友「あいよ」

  
お風呂

女「……」

女「……」

女「(暖かい…)」

女「(デート楽しみだな…)」

女「………………」ジー

女「(海行きたかったなぁ)」

女「(でもデパート行けるから感謝しないと)」

女「(今日の事友さんに話してみよう)」

ガチャ

女「……」フキフキ

女「……」フキフキ

女「………………」ジー

  
女「……」

女「あがりました」

友「ご飯食べる?」

女「食べます」

友「んじゃ座って」

女「はい」

………

……



女「おいしいです」モグモグ

友「でしょ」モグモグ

女「友さん料理上手です」

友「ここで暮らしてたら料理上手くなるよ」

女「そうなんですか。私もがんばらないと」

  
女「……」

女「今日…」

友「ん?」

女「男さんにデート誘われました」

友「ほんとに?」

女「はい」

友「その人は二回目よね?」

女「そうです。かわいいって言ってくれました」

友「それはよかった」ナデナデ

女「……」ニコニコ

友「どんな人なの?」

女「うーん。お兄ちゃんいないけどお兄ちゃんみたいな人です」

友「なるほど」

  
友「いっぱい通ってもらうんだよ」

友「そしたら社員さんも褒めてくれるから」

女「じゃあいっぱい来てもらいます」

女「頑張ったらお父さんもはやく迎えに来てくれますよね?」ニコニコ

友「……そうだといいね」ナデナデ

……



女「ごちそうさまでした」

友「ごちそさま」

友「もう寝る?」

女「……社員さんに電話したいです」

友「そうか。じゃあ私寝てるから眠くなったら入ってきなよ」

女「ありがとうございます」

  
ピリリリ ピリリリ ガチャ

女「もしもし」

社員「…………あぁどうした?」

女「もしかして寝てましたか?」

社員「よくわかったな」

女「ごめんなさい。また明日かけます」

社員「いいよ。もう起きたから」

女「やった」

社員「何の用だ?」

女「社員さんに報告したいことがあったんです」

社員「なんだ?」

女「今日デート誘われたんです!」

社員「!!」

社員「…デート?」

  
女「会うの2回目なのにびっくりしました」

女「あと友さんに褒めてもらいました!」

社員「……」

社員「そうか」

女「(……あ、あれ?)」

女「(社員さん褒めてくれないのかな…)」

女「詳しい説明してもらえって店長さんに言われたんですけど…」

社員「メールで送るから後で見てくれ」

女「…………」

女「わかりました…」

女「起こしてごめんなさい。それだけです」

社員「わかった」

女「じゃあ切ります…」

ガチャ

  
女「……」

女「……」

女「……」

………

……



女「……」ゴソゴソ

友「あぁ早かったね」

女「はい…」ギュッ

友「またさみしくなったの?」

女「……」ギュッ

友「……」ナデナデ

女「……もう寝ます」

友「わかった。ずっと抱きついてていいからね」

  
女「ありがとうございます」グスッ

友「…………」

友「…………」

友「(かわいそうに)」

友「(社員に泣かされたんだな)」ナデナデ

友「(嫉妬するくらいなら自分で守ればいいのに…)」

  
翌日

女「……」ゴシゴシ

女「あれ友さんいない…」

女「もうお仕事行ったのかな」

女「今日の予定は…」ペラ

女「18時にお迎えの車が来るのか」

女「それまで何しようかな」

女「社員さんに電話しようかな」

女「……怒られそう」

女「男さんにメールとかするのダメなのかな…?」

女「友さんもお客さんにメールするって言ってたし良いよね」

女「……」カチカチ

女『今日は来てくれますか?』カチカチ

追いついた
支援

  
一時間後

女「……ふむ」ペラ

女「……ふむふむ」ペラ

女「そろそろメール来てるかな」

女「……」カチカチ

女「来てない」

女「今日は男さんに会えないのかな…」

女「さみしい」

女「でもお金いっぱいいるみたいだし毎日来られないよね…」

女「新しいお客さんのとこ行くのかなぁ」

女「ちょっとこわいな…」

女「……」

女「でも笑顔忘れないようにしないと」

女「……」ニコニコ

  
クラブ

女「おはようございます…」

店長「ん、おはよう」

女「今日はいつもの男の人来ないかもしれません」

店長「そうなんだ」

店長「電話したの?」

女「メールしたんですけど返事がなくて…」

店長「忙しいだけかもね」

女「……あの、お客さんと電話してもいいんですか?」

店長「うん、禁じてないよ」

女「わかりました」

店長「(来ないなら他のお客さんにつかせてみるか……)」

  
二時間後

店長「ちょうどお客さんも来たし一旦やってみようか」

女「は、はい」

店長「緊張しなくてもいいよ」

店長「愛想よく相手の話を聞く」

店長「これだけで大丈夫だから」

女「……」

女「上手にできたら褒めてもらっていいですか?」

店長「もちろん。約束する」

店長「じゃああのテーブル行ってきて」

女「はいっ」

  
女「……」ペコ

女「女といいます」

紳士「んじゃ横に座ってもらおうか」

女「はい」

紳士「若いね。いくつ?」

女「18です」

紳士「倍以上違うのか」

紳士「じゃあ若さの秘訣でも教えてもらおうかな…」サワサワ

女「!」ビクッ

女「(や、やだ…)」

店長「お客様」

紳士「……」

女「お、お酒注ぎますね」ニコニコ

紳士「あぁそうしてくれ。店長よりよっぽど気が利く子だ」

  
一時間後

女「……」ギュッ

店長「……どうしたんだ」ナデナデ

女「怖かったんですありがとうございます…」

女「それにうまく出来ませんでした」ポロポロ

店長「そんなことない」

女「ごめんなさいごめんなさい…」

店長「メイクしてないからいいものの」

店長「女ちゃん泣きすぎ」

女「うぅ……」

店長「今日はあがろっか」

女「明日いっぱい働きます…」

店長「うん。そうしてくれるとうれしい」

  
203号室

ガチャ

女「ただいま…」

女「友さんいない」

女「……」

女「……」カチカチ

女「メール来てた…」

友『今日は忙しくて帰れなくなりそう。ごめんね』

女「…………」

女『わかりました』カチカチ

女「…………」

女「ご飯作らないと」

  
一時間後

カシャッ

女「うん。写真も撮れたし満足」

女「いただきます」

女「……」モグモグ

女「……」モグモグ

女「……」モグモグ

女「(一人だとおいしくない…)」

女「……」

女「さみしいなぁ」

女「男さんからメール来てないし…」

女「一人で寝たくない…」

………

……


支援

  
ピリリリ ガチャ

女「……」

社員「もしもし」

女「あの…」

社員「どうした?」

女「まだ怒ってますか?」

社員「……」

社員「何のことだ」

女「デートするって言ったことです」

社員「最初から怒ってないよ」

女「ほんとに?」

社員「ほんとだ」

女「やった」ニコニコ

社員「(かわいい…)」

  
女「社員さんに今から会いたいです」

社員「今からか?」

女「だめですか…?」

社員「…………」

社員「もう寝るだけだからな」

社員「何もしてやれないが」

女「……じゃ、じゃあ私と寝てください」

社員「!」

社員「(いや違う。寝るってのはただの添い寝のことだ……)」

社員「わかった。寮の下のロビーで運転手呼んでもらえ」

女「はい」ニコニコ

  
事務所

女「こんばんは」

社員「一人でよく来たな」

女「……」

女「社員さんに褒めてほしいんです」

女「デート誘ってもらった時も褒めてほしかったんです……」

女「わがままばっかりでごめんなさい」

社員「…そうか」ナデナデ

女「……」ニコニコ

社員「さみしくなってここに来たかったのか?」

女「今日は友さんが帰ってこないってメールくれたんです」

社員「(あとで説教だな)」

  
女「ベッド行きたいです」

社員「ここはベッドじゃなくて布団なんだ」

女「そうなんですか」

社員「小さいからはみ出すかも」

女「いっぱいくっつきます」ドキドキ

社員「……」

………

……



女「社員さん大丈夫ですか?」

社員「(くそ……)」

社員「(身体が密着しすぎて…)」

女「?」

社員「あぁ大丈夫」

  
社員「じゃあおやすみ」

女「おやすみのキスは?」

社員「!」

女「冗談です」

女「あの本のテクニックです」

社員「そうか…」

社員「ビックリしたよ」

社員「でもそういうテクニックは使えるから大事にするんだ」ナデナデ

女「……」ニコニコ

社員「それと前に言った笑顔のことだけど…」

社員「お客さんの前だと特につらいこともあるだろ?」

女「…はい」

社員「それでもちゃんと笑顔で接客することが必要だからな」

  
10分後

女「社員さん…」

社員「?」

女「写真撮っていいですか?」

社員「今か?」

女「はい」

社員「カメラ持ってるのか?」

女「この携帯で撮ります」

社員「わかった」

女「……画面見えないですけどもっと近づいた方がいいと思います」ニコニコ

社員「そうか」

女「いきますよ」ピトッ

社員「!」

カシャッ

  
女「……」ジー

女「ちゃんと撮れました」

社員「それならよかった」

女「ご飯も撮ってるんです」

女「見てください」

社員「……えらいな」

社員「友とは仲良くなれたのか?」

女「はい。友さん優しいです」

女「店長さんも優しくなってくれました」

女「でも一番優しいのは男さんか社員さんです」

社員「それは嬉しいな」

女「次のデートでもいっぱい写真撮ってきます」

社員「…………」

  
女「社員さん、私欲しいものがあるんです」

社員「……なんだ」

女「えっと…」



翌日

女「おはようございます」

社員「……おはよう」ゴシゴシ

女「あと5分はダメですよ」

社員「わかってる…」

………

……



女「じゃあ行ってきます」

社員「あぁ」

  
クラブ

女「おはようございます」

店長「ん。おはよう」

店長「男さんからお店に電話あったよ」

女「!」

女「今日来てくれるんですか?」

店長「そうみたいだ。よかったな」ナデナデ

女「はい!」

………

……


  
ガチャ

男「ふー」

女「!」

店長「席案内してあげて」

女「了解です」



女「……」スタスタ

女「男さん、私でいいですか…?」

男「もちろん」

女「じゃあ行きましょう」

男「ありがとう」

  
男「昨日は行けなくてごめん」

女「さみしかったです」

男「ごめんな」ナデナデ

女「……」ニコニコ

男「かわいい」

女「昨日は違うお客さんが来て…」

男「うん」

女「さわられたのがすごい怖くて…」

男「そうか」

女「でも店長さんが止めてくれたんです」

女「店長さんかっこいいです」

男「よかったな」



店長「(すごい懐いてるな…)」

  
男「それでデパートなんだけど多分なくなってるみたいでさ…」

女「!」

女「そうなんですか…」

男「いろいろ調べたんだけど……」

女「だから忙しかったんですね」

男「メール返せなくてごめん」

女「大丈夫です…」

女「デパートも連れてってもらったのもずっと前なんでしょうがないです」

男「ほんとにごめん」

女「男さんのせいじゃないです…」ニコニコ

男「……」

男「他のデートプラン考えてきたからそれで楽しませる!」

女「ありがとうございます」

  
翌日 クラブ

店長「女ちゃん」

女「?」

店長「これ、社員さんから頼まれてたやつ」スッ

女「!」

女「ありがとうございます!」

店長「いいよいいよ」

女「……」ペラペラ

店長「デート明日なんだってね」

女「はい」

店長「じゃあ服選んであげるよ」

女「いいんですか?」

店長「もちろん」

店長「…女ちゃんは何が似合うかな」

  
二時間後 203号室

女「……」カキカキ

女「……」カキカキ

女「……」カキカキ

女「……」カキカキ



友「(勉強してる…)」

友「(なつかしいなぁ)」

  
翌日 デート当日

女「すみません。遅くなって」

男「あぁ大丈夫」

女「……」ニコニコ

男「女さんかわいいな」

女「店長さんに服選んでもらいました」

男「そっか。よかったな」



動物園

女「初めて来ました」

女「見たい動物いっぱいいます」

男「何から見ようか」

女「うさぎです!」

言い出しっぺの法則

(´・ω・`)500円で売られるに見えてワンコインでマンコインかと思った

  
女「かわいい…」

女「かわいいですこの子」

男「そうだな」

女「癒されます」

男「…………」

女「……」ジー

女「見てください男さん」

男「ん?」

女「耳が垂れてますこの子」

女「元気ないんですか…?」

男「あれはもともと耳が垂れてるうさぎらしいよ」

女「そうなんですか。よかった」

女「……そうだ、写真撮ろう」

カシャッ

>>213
【審議中】
    ∧,,∧  ∧,,∧
 ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
| U (  ´・) (・`  ) と ノ

 u-u (l    ) (   ノu-u
     `u-u'. `u-u'

  
女「あれトラですか?」

男「そうだな」

女「おっきいです」ジー

カシャッ

男「たしかに」

女「乗れますか?」

男「子供の頃から一緒にいたら乗れるかもな」

女「じゃあ将来トラ買います」

男「欲しいんだ」

女「だっておっきいネコみたいです」

男「凶暴かもしれないよ」

女「その時は男さんが助けてくれます」ニコニコ

男「……身体鍛えようかな」

  
……



女「…かぴ…かぴばら?」

男「初めて見る?」

女「はい」

女「不思議な顔してます」ジー

女「おっきいネズミです」

男「意外とカピバラには厳しいんだな」

女「だって名前呼びにくいです」

男「なるほど…」

女「でも一応撮ります」

カシャッ

男「(前から思ってたけど仮に14歳だとしてもそれより幼く見える…)」

男「(体格とかじゃなくて……精神年齢みたいなものか…?)」

  
一時間後

女「いろんな動物撮れました」

男「よかったな」

女「最後は鳥見ます」

男「何が好きなんだ?」

女「アヒルです」

女「ぐぁーぐぁー」

女「似てますか?」

女「ぐぁーぐぁー」

男「女さんかわいい…」

女「似てるか聞いてるのに」

  
アヒル「ぐぁ」

女「ぐぁ」

女「ぐぇ」

アヒル「ぐぇ」

女「写真撮ります」

カシャッ

男「うん。うまく撮れてる」

女「あ、あの…」

女「男さんと二人で撮っていいですか?」

男「もちろんいいよ」

女「やった」

カシャッ

  
一時間後

女「満足です」

男「それはよかった」

男「じゃあそろそろ帰ろうか」

女「はい…」

男「次はいつ入ってる?」

女「……明日です」

男「必ず行くよ」

女「……男さん」

女「お金なくなりませんか?」

女「大丈夫なんですか…?」

男「平気。車のために貯めてたけど欲しくなくなったから」

女「そ、そうなんですか?」

男「自転車にするよ。ちょうど身体鍛えないといけなくなったし」

  
203号室

女「……………………」カキカキ

ガチャ

友「ただいま」

女「おかえりなさい」カキカキ

友「デートどうだった?」

女「楽しかったです」

友「よかったね」

女「写真いっぱい撮りました」

友「お、見せて見せて」

女「うさぎ!」

友「ふふ。かわいいね」

女「うん。耳が垂れてるのはもともとなんです」ニコニコ

友「そうなんだ。勉強になった」

  
三週間後 デート

女「今日はどこ行きますか?」

男「バッティングセンターの面白さをわかってもらう」

女「バッティング?」



バッティングセンター

女「……」スカッ

女「……」スカッ

女「……」スカッ

女「……男さん」スカッ

女「……あたりません」スカッ

男「よーく見て」

女「…………」ジー

女「あ、振るの忘れてた」

  
女「んー……」キン!

女「あ!」

女「当たりました!」

男「すごいすごい」

女「んー……」カキン!

女「またです!」

………

……



女「できました」

男「さすがだ」ナデナデ

女「なでられるの好きです」

男「そうか」

女「男さんだと余計にうれしいです」ニコニコ

  
二ヵ月後 デート

女「今日も楽しかったです」

男「お化け屋敷は最後まで行かなかったな」

女「……」プイッ

女「だって怖くて」

男「そうだな。ごめんごめん」

女「……」

女「今日もいっぱい写真増えました」

男「どれもよく撮れてる」

女「やった」

女「まだ遊べますか?」

男「あぁもう少し時間ある」

女「じゃあ映画行ってみたいです」

  
映画館

女「……」ジー

男「……」ジー

女「(魔法かっこいい…)」

男「(周り子供ばっかりで微妙に恥ずかしいな)」




女「面白かったです!」

女「これ観たかったんです!」

女「かっこよかったですよね!」

男「うん」

男「(すごいはしゃぎようだ…)」

  
夜 203号室

ピリリリ ガチャ

女「もしもし、社員さん」

社員「…どうした?」

女「前の続きほしいです」

女「小学校のおわりました」ニコニコ

社員「…そうか」

社員「また店長に頼んでおくから」

女「ありがとうございます」

社員「…………」

  
三ヵ月後 デート

女「串カツおいしいです」モグモグ

男「よかった」モグモグ

男「子供が喜ぶか分からなかったけど助かった」

女「んー私子供ですか?」

男「そうだな」

女「すぐ大人になってみせます」

男「楽しみにしとくよ」

女「はーい」

………

……




男「ごちそうさま」

女「ごちそうさまです」

  
男「次のデートはどこか行きたいところある?」

女「うーん」

女「食べ歩きはもうダメです」

女「私太りたくないです」

男「なるほど」

女「……」プニプニ

男「……」

女「行きたいのは東京タワーかスカイツリーとか…」

女「どっちも行ったことないんです」

女「上から写真撮れますか?」

男「きっと取れるよ」

女「じゃあさらに行きたくなってきました」

  
二時間後 事務所

女「社員さんいますかー」

社員「……」

女「いた!」ギュッ

社員「……」

女「また写真見せに来ました」

社員「……またデートの写真か?」

女「あ、社員さん嫉妬してる」

社員「……してない」

女「このたこ焼きおいしかったんです」

社員「よかったな」

女「このお好み焼きも」

社員「うん。うまそうだ」

  
女「社員さんとデートしてもいいですよ」

社員「!」

女「でも男さんには内緒です」

社員「……ありがたいけど遠慮しておこう」

女「えー」

社員「大人の事情があるんだ」

女「そうですか残念」

女「じゃあ寝ましょう」

社員「(ひどい扱いしかしてないのに……)」

社員「ほんとによく懐いてくれるな…」ナデナデ

女「だって社員さんって……」

………

……


  
翌日

女「じゃあ寮戻りますね」

社員「あぁ」

ガチャ バタン

社員「……」

社員「……」

社員「(どれだけ想っても幸せになんか……)」

社員「(違う。こんな仕事をしてるんだ)」

社員「(そう願う権利すら持っていいはずがない)」

社員「……」

社員「……」

  
三週間後 デート

女「高いです…!」

男「想像以上だな」

女「圧倒されます」

男「じゃあ登ってみようか」

女「はい」



展望台

女「……」ギュッ

男「どうした?」

女「ちょっと怖いです」

女「絶対手はなさないでください」

男「わかった」

女「……」ジー

  
男「もう少し上行こうか」

女「ま、まだ上があるんですか」

男「うん」

女「……」

男「やめとくか?」

女「どうしましょう…」

男「抱っこしようか?」

女「うーん」

女「…………あ、やっぱり抱っこだめです」

男「それは残念」

女「今日は生足でした」

………

……


  
女「……」

カシャッ

女「……」

カシャッ

男「もう写真家だな」

女「こっち向いてください」

男「はい」

カシャッ

女「ばっちりです」

男「もう高さには慣れた?」

女「余裕です。大人になりました」

男「えらいな」

  
レストラン

女「オムライスおいしいです」モグモグ

男「うん」モグモグ

女「幸せです」

男「……それはよかった」

男「もっと高い店とかは行きたくないの?」

女「行ったことないですし…」

女「男さんがいたら何食べてもおいしいです」

男「……泣きそう」

女「泣くんですか?」

女「男さんはまだまだ子供です」ナデナデ

男「優しいな…」

女「そうですか?」

女「男さんも優しいです」

  
男「そう?」

女「だってずっとお店にも来てくれてるし」

女「デートも今日で10回目です!」

男「女さんに会いたくてしょうがないんだ」

女「……男さんがいてくれなかったらずっとお仕事イヤなままだったと思います」

女「ありがとうございます」

男「なんか照れるな」

女「でも社員さんも同じくらい良い人です」

男「それ誰?」

女「私の上司みたいな感じの人です」

男「そっか。仲良いの?」

女「はい、私と寝てくれました」ニコニコ

男「!!!」

支援

  
女「社員さんと寝た後はさみしくなくなるんです」

男「(待て待て…)」

男「(寝るだと…!)」

男「そ、そうなんだ」

女「男さんも私と寝てくれますか?」

男「!」

男「そりゃもちろん寝てくれるならすごくうれしいけど」アセアセ

………

……


  
30分後

女「また次のデート決めたいです」

男「ん、そうだな」

男「いっぱい遊べるとこにする?」

女「楽しいところがいいです」

女「あと怖くないところがいいです」

男「もうお化け屋敷は行かないよ」

女「それは助かります」ニコニコ

男「じゃあ…」

男「プールとかどう?」

男「海とかでもいいし…」

女「…………」

女「…………」

女「どっちも行きたくないです」

  
男「そうか。あんまり泳ぐの好きじゃないか」

女「…………」

男「?」

女「私のこと好きですか?」

男「……もちろん好き」

女「大好きですか?」

男「あぁ。大好きだ」

女「…………」

女「……ここに手術跡があるんです」

男「……」

女「だからあんまり見られるのがイヤで…」

男「そうだったのか」

男「ごめんな」

女「平気です…」ニコニコ

  
女「でも嫌われたらどうしようと思って…」

男「嫌うわけない」

男「ごめんな。イヤなこと言わせて」

女「大丈夫です」

女「他の人にもあんまり言ってなくて…」

男「そうか」

女「ルームシェアしてる友さんって人には自分から言ったんですけど…」

男「……ル、ルームシェア?」

男「誰かと一緒に住んでるの…?」

女「はい…」

男「(どんな環境で働いてるんだ)」

男「(ただの借金ってわけじゃないのか……)」

男「次のデートはまた考えよう」

男「お店行った時でもいいし」

  
………

……



男「そろそろ時間か」

女「そうですね」

女「今日も楽しかったです」

男「それはよかった」

女「さっき言えなかったけど私も大好きです」

男「!」

男「ま、まじで?」

女「もちろんです」

男「すごいうれしい」

女「私もです」ニコニコ

  
男「…聞きたいことあるんだけど」

女「なんですか?」

男「誕生日もう過ぎてる?」

女「えーっと…三ヵ月後です」

女「11月26日です」

男「なるほど…」

男「いろいろ考えててさ」

女「なんですか?」

男「15歳の誕生日はディズニーランド行こうか」

女「!!」

女「行ったことないんでうれしいです!」

男「………………」

女「?」ニコニコ

  
男「そうか…」

男「まだ14歳だったのか」

女「!!」

女「だ、だましててごめんなさい…」

男「謝らなくても大丈夫」

女「嫌わないでくださいおねがいします」ギュッ

男「大丈夫。ずっと一緒にいるから」

女「う、うれしいです…」ポロポロ



男「(店に言わないでくださいとは言わないのか…)」

男「(ってことは店はそれを容認してる…)」

男「(というか18歳と思えないくらい見た目も幼いからな)」

男「(隠すつもりがないってことはバレても問題がないくらい危険なお店なのか…?)」

男「(やっぱり怖い人たちが関わって…)」

  
203号室

女「……」

友「あ、おかえりー」

女「ただいまです」

友「ご飯食べる?」

女「今日は食べてきました」

友「そっか」

友「今日はデートだったね」

女「はい」

女「お風呂入ってきます」

友「ん。了解」

  
お風呂

女「(今日のご飯おいしかったな)」

女「(オムライスランキング一位になっちゃった)」

女「……」

女「?」

女「(前の一位はいつのだっけ?)」

女「…………」

女「(そうだ、お父さんと食べたときの…)」

女「……」

女「(でも男さんと食べた時の方がおいしかった)」

女「(……これってお店のせいなのかな)」

女「…………」

女「…………」

  
事務所

社員「また来たのか」

女「寮の運転手さんに頼みました」

社員「…嬉しそうだが何かあったのか?」

女「……」

女「私男さんのこと好きになりました」ニコニコ

社員「!」

社員「……そうか」

女「あと…」

女「14歳ってバレました。すみません」

社員「(まぁバレてもどうせもみ消せるし大した問題ではないが…)」

社員「………………」

社員「ちょっと待っててくれ」

  
社員「(男の顧客データは…)」カチカチ

社員「…………」

社員「(初来店が1月20日)」

社員「(来店回数81回)」

社員「(平均すると週3ペース)」

社員「(……これはあの子のシフトに合わせてるんだな)」

社員「(これまで店に落とした金額は…)」

社員「(335万8000円)」

社員「……………………」

社員「……………………」

社員「その男を連れて事務所に来い」

女「男さんに何かするんですか…?」

社員「少し話をするだけだ」

女「……いつですか?」

  
社員「いつでもいいが…」

社員「早い方が男も喜ぶはずだ」

女「そうなんですか」

女「ちょっとドキドキしました」ニコニコ

女「喜ぶってことは楽しい話ですよね?」

社員「…あぁ」

女「じゃあ都合良い日すぐ探します」

社員「頼む」

社員「……」

社員「(店長に頼んでおいてよかった…)」

社員「(こんなにはやく見つかるとは予想していなかったがな)」

社員「……」

社員「(500万に達したら…と思っていたがもう十分だ)」

  
翌日 クラブ

男「事務所…?」

女「はい!」

女「来てほしいって」

男「怖いな…」

女「大丈夫です」

女「前に話した優しい社員さんですから」

男「え」

男「あの女さんと寝たっていう…」

女「そうです」

男「(美人局とかじゃないよな)」

男「(それにしては騙す期間が長すぎるし…)」

  
男「(それより予測が当たってるなら危ない事務所なんじゃないのか)」

男「(生きて帰れるのか?)」

男「(何が理由で呼び出されてるか女さんも分かってないみたいだし…)」

男「……どうにか耐えよう」

女「社員さん喜ぶって言ってました」ニコニコ

男「それが逆に怖いんだけどな」

女「男さん子供です」ナデナデ

男「……ありがとう」

  
一週間後 事務所

女「……」カキカキ

女「……」カキカキ

ガチャ

社員「……また勝手に入ってたのか」

女「これ見てください」

社員「……」

女「中学二年生までおわりました」ニコニコ

社員「そうか…」

女「みんなに追いつきました」

社員「えらいな……」

社員「風呂に入ってくる」

女「はーい」カキカキ

  
……



女「……社員さんお風呂長いな」

女「本棚とか勝手に見たら怒られるかな」

女「……」

女「……」ガサゴソ

女「……」ペラペラ

女「いっぱい読めるようになってる」

女「うれしいな」ニコニコ

女「……」ペラ

女「……」ペラ

女「買い取り、預入、質物保管料…」

女「三ヵ月…?」

女「…………」

  
翌日 203号室

女「……」

友「……」

女「……」

友「今日はあんまり元気ない?」

女「ちょっとだけ」

友「そっか」

女「……でも明日男さんと事務所行くんです」ニコニコ

友「そうなんだ」

友「ずっとお店来てデートしてくれる人だよね?」

  
女「そうです」

女「社員さんに呼ばれて」

友「社員に…?」

女「はい」

友「(何考えてるんだ……)」

友「それ私も行っていいのかな?」

女「わからないですけど…」

女「たぶん行ってもいいと思います」

友「そっか。ありがと」

女「…………」

女「私お風呂入ってきます」

  
………

……



お風呂

女「(三ヵ月ってもう過ぎてるよね)」

女「(来たときは冬だったし…)」

女「…………」

女「…………」

女「(でも明日は楽しい話できるんだ)」

女「……今のうちに泣かないと」

女「……」

女「(社員さんにも言われたし…)」

女「(笑顔が一番大事だって)」ポロポロ

支援

  
翌日 事務所

男「(女さんが呼んだらタクシーみたいに車は来るし)」

男「(見るからに建物も危ない気がするし)」

男「(いや、気合入れないと…)」

女「ここです」

男「ふー……」

ガチャ

男「お、お邪魔します」

女「来ました」

社員「わざわざ悪かったな」

社員「(これが男か。まぁ写真でイヤというほど見せられてきたが)」

男「あ、あの人が社員さん?」ヒソヒソ

女「そうです」ニコニコ

男「(社員さんって女の人だったのか!!)」

  
ガチャ

友「おじゃましまーす」

社員「友も来てたのか」

友「うん」

女「話ってなんですか?」

社員「違う部屋で待っててくれ」

社員「二人で話したいんだ」

女「えー」

友「ほら行こ」

女「わかりました…」

………

……


  
社員「どこまで聞いてるんだ?」

男「……女さんのことはほとんど何も知りません」

社員「親に売られたこともか?」

男「…………う、売られた?」

社員「(ほんとに何も話してなかったのか…)」

社員「借金があるから働いてるわけじゃない」

社員「親に売られてからここで生活してるんだ」

男「そうだったのか…」

社員「買い取り額は150万だ」

男「…………」

社員「10万でもいいから売ってくれと言ってくる奴もいる」

社員「そんな奴は引き取っても得することはないから応じないがな」

男「…………」

  
男「ここにいる人たちは全員そうやって売られた人なんですか?」

社員「基本的にはな」

社員「さっきの友もそうだ」

社員「ただ…」

社員「ホステスやキャバ嬢は一般採用で、売られた奴はかなり少ない」

社員「ほとんどAVに飛ばすからな」

男「……ホステスが一番安全だったんですね」

社員「…そうだ」

男「(優しいってのはやっぱり女さんに対してだけだったのか…)」

社員「自分がいくら店に費やしてきたかわかるか?」

男「350万くらいですかね」

社員「まだ余裕はあるか?」

男「……ほぼ空っぽです」

社員「(こんなに若いんだ。当たり前か…)」

  
社員「あの子のことは好きか?」

男「…もちろん」

社員「結婚…」

社員「いや、せめて大人になるまでは面倒を見られるか?」

男「……親がいないなら俺が面倒見たいと思います」

社員「…………」

社員「頼みがある…」

男「……何ですか?」

社員「あの子と一緒に暮らしてやってくれ…」

男「…………」

男「…………」

男「ここから解放するってことですか?」

社員「そうだ…」

  
男「女さんは親に捨てられたって自覚してるんですか?」

社員「……前はいつ迎えに来るのかとよく聞かれていたが」

社員「もう口にしなくなったな…」

男「そうですか…」

社員「どう望んでいるかわからないがあの子はまだ若い」

社員「今からやり直せば親がいなくてもまだ大丈夫なはずだ」

男「……わかりました」

社員「こんなところから離れて……」

社員「普通の暮らしをさせてやってほしい」

社員「お願いします…」

男「……やってみせます」

……


  
社員「これを受け取ってくれ」

社員「250万入ってる」

男「!」

社員「これは正当な報酬だ。あの子に渡してくれ」

男「……わかりました」

社員「ありがとう」

社員「こんなところと関わりがあるとバレるとまずい」

社員「警察はどうにかできてもどこから漏れるか分からない」

社員「だからもう関わらないようにしてほしい…」

男「……わかりました。女さんのためになるならそうします」

  
社員「来るときに乗ってきた車を下で待たせてあるから」

社員「それで送ってもらってくれ」

男「……はい」

社員「頼んだ」

……



友「(昨日は元気なかったけどもうスッキリしてるみたいね。よかった)」

女「まだかな」

友「……ん、やっと終わったみたいだよ。メール来た」

女「長かったです」

友「そうね」

友「行こうか」

女「はーい」

女「(喜ぶ話ってなにかな)」ニコニコ

  
ガチャ

女「男さん、楽しい話でした?」

男「……まぁな」ナデナデ

女「んー」

女「私にも話すことありますか?」

社員「……ある」

女「何ですか?」

社員「男君と一緒に暮らしてくれ」

女「!」

社員「……楽しい話だろ?」

女「は、はい!」

女「同棲ですよね…」ドキドキ

女「男さんいいんですか?」

男「…もちろん」

  
女「ってことは205号室ですか?」

女「あの部屋は空室でしたよね?」

社員「…………いや、ここから離れるんだ」

女「?」

女「寮じゃないんですか?」

社員「そうだ」

社員「男君の仕事場も考えなければいけないしな」

女「…なるほど」

女「賢くないからあんまり分からなかったんですけど…」

女「男さんの仕事かっこいいんです!」

男「……」

女「クラブまで遠くなるし運転手さんに頑張ってもらわないと」ニコニコ

社員「…………もう来なくていいんだ」

女「?」

  
女「お仕事にですか…?」

社員「あぁ」

女「何でですか?」

女「わ、私やっと男さん以外のお客さんも慣れてきたんです!」ニコニコ

社員「……」

社員「……」

社員「……お前よりかわいい子が入ってきたんだ」

社員「もう必要ない」

女「……」

女「クビってことですか…?」

社員「……皿もグラスも一通り割ったらしいな」

女「そ、そうですけど」

女「次から……」

女「あ、あの、次からちゃんとやりますっ…」ポロポロ

  
社員「ダメだ」

女「…いやです」

女「まだやめたくないです」

社員「私が決めることだ」

女「……いやです!」

女「まだお仕事しないといけないんです!」

社員「……儲かる方法を考えるって言っただろ」

社員「それがお前には無理なんだよ」

女「!」

女「……じゃ、じゃあ違うお仕事します」

社員「それもダメだ」

社員「ここには必要ない」

女「いやです!!」

  
社員「何度言ったらわかるんだ」

女「だって…」

女「だってまだ社員さんに全然お礼できてません…!」ポロポロ

社員「!」

女「漢字ドリルも買ってもらったのに…」

女「お父さんからも売られたのに…」

女「こんなダメな私なのに…!」

女「社員さんは私の面倒まで見てくれて……」グスッ

女「すごいうれしくて……」

女「そのかわいい子に負けないくらい努力します!」

女「テクニックもいっぱい勉強します!」

女「だから……おねがいします……」

  
社員「……お礼されるために働かせてるわけじゃない」

社員「そんなもの求めてないんだよ」

女「……」

女「でも…社員さんは傷見ても何も言わなかったし…」

女「電話しても怒らないし」

女「いつも褒めてくれるし…」

社員「……」

女「だからもっと恩返ししないといけないんです!」ポロポロ

女「…めいわくばっかりかけて」

女「そんなのいやです…」グスッ

女「私の事クビにしないでください…」

ヒソヒソ

DQN1「あれれ~?女さんってwww」

DQN2「年齢誤魔化してwww」

DQN3「ギャバ嬢やってたんだよなwww」

女「なんの事ですか?」

DQN1「じゃじゃーん!」

DQN2「この写真ばれたら困るっしょwww」

DQN3「せっかく高校に入れたのにwww」

女「それは…合se…」

DQN1「俺のオヤジここの常連wwwスマホでカメラのやり方習得してるからこんなん簡単www」

DQN2「女ちゃんwwwオワタwww」

DQN3「あとはわかるよな?あ?」

女「ふぇぇ…」ガタガタピチョン

って展開になりませんように…(´;ω;`)

  
社員「……」

社員「仕事もほとんどできてないんだよお前は」

社員「もっとかわいくて聞き上手な奴も…」

女「で、でも!」

女「つらいときも笑顔でいるの私できますっ」

女「社員さんがおしえてくれたんです…!」

女「ほ、ほら男さんもみてください」

女「私ちゃんとできてますよね?」グスッ

男「…………」

女「あ、あれ…おかしいな」

女「ちゃんとわらわなきゃ…」

女「れんしゅうしたのに…」

女「いっぱいれんしゅうしたのに…」

  
社員「男と一緒にここから出ていけ」

女「あ、あの…!」

女「頭わるくても関係ないっていうのがうそなんですよね…?」

女「漢字だけじゃなくてほかのこともべんきょうします」

女「苦手な算数もちゃんとやります…」

女「もっともっとかしこくなります…」

社員「…………」

男「女さん…」ナデナデ

女「うぅ…」

  
女「……!」

女「じゃあ自分で仕事できるようになったら遊びにいかせてください…」

女「おねがいします」

社員「…………もうここには来るな」

女「……」グスッ

女「……」

女「……」ギュッ

友「!」

女「まだ…」

友「?」

女「まだ友さんの仕事現場行ったことないです…」

女「それ見に行かせてください…」

友「……」

  
友「……ごめんね」ナデナデ

女「な、なんでっ…」

女「前まですごいやさしかったのに…」

女「きっと私わるいことしたんですよね?」

女「あやまるからゆるしてください」

女「ごめんなさい…」

女「ごめんなさい……」グスッ

社員「……」

男「……」

男「もう行こう…」ナデナデ

女「……」ギュッ

女「……」

社員「待て」

社員「携帯は置いていけ」

  
女「……」

女「……そ、そうだ!」

社員「……」

女「電話ならいいですか?」

女「ひまなときだけかけます…!」

女「ここには……」

女「もう来ないんで声だけでも……」ポロポロ

社員「物わかりの悪い奴だな」

女「!」

  
女「……それなら」

女「……な、なにもいらないんで」

女「せめてしゃしんだけ…」

女「いちまいだけでいいです」

女「りょうりもどうぶつもいらないです」

女「社員さんとふたりでとったあのしゃしんだけください…」ニコニコ

女「おねがいします…!」

女「おねがいします…」ポロポロ

社員「…………」

社員「…………」

社員「全部置いていけ」

女「!!」

女「……ひどいよ」

女「社員さんも私のこと捨てるんですか…?」

BGM~♪
モノクローム by気多の巫女(戸松遥)

  
社員「…………」

社員「…………」

社員「そうだ」

女「!」

女「……」

女「やさしいとおもってたのに…」

女「私は楽しかったのに……!」グスッ

女「お姉ちゃんみたいって思ってずっとずっと好きだったのにっ!」

女「もう…」

女「もうこんなの要らない!」

ガシャァン!

女「社員さん大っ嫌い!!」

  
………

……



車内

女「うぅ…」グスッ

男「……」

男「すみません」

男「最寄の駅までお願いできますか?」

運転手「……かしこまりました」

女「……男さんの家行きたいです」

男「わかった」

男「今日は疲れたな」

男「寝ててもいいから」

女「…ありがとうございます」

  
事務所

友「……荒れたねほんとに」

社員「はやく帰れ」

友「さすがにほっとけないよ」

社員「……」

友「そんなに泣いてるのに」

社員「……泣く資格なんてない」

社員「引き取ったのは私だ」

友「別にいいじゃん。今は私しかいないんだし」

社員「…………」

社員「いもうとができたみたいで…」

社員「一緒にいたかったけど」

社員「こんなところにいても……あの子は…」

社員「しあわせになんか…」ギュッ

  
一ヵ月後 自宅

男「ただいま」

女「男さんおかえりなさい」カキカキ

女「ご飯とお風呂どっちにしますか?」カキカキ

男「ご飯食べるよ」

女「はーい」

………

……



女「今日はたくさん作りました」

女「いっぱい食べてもらいます」ニコニコ

男「お、ありがと」

  
女「今日は友さんに教えてもらった料理つくりました」

男「そうか、いつもありがとな」

女「…急に言われたら照れます」



男「(あの時の話も少しは話せるようになったみたいだな)」

男「(全部がイヤな思い出になったわけでもなさそう)」

男「(一応誤解のないようにどういう組織?かある程度は教えたいけど…)」ナデナデ

女「?」ニコニコ

男「(社員さんみたいな職業になりたいとか言われても困るし…)」

………

……


  
女「今日パソコンで調べてたんですけど」

男「うん」

女「昔行ったデパートは違う県にあるみたいです」

男「!」

男「見つかったのか」

女「はい」

男「じゃあそこのレストラン今度行こう!」

女「……でも私どこでもいいです」

女「男さんと食べたら何でも一番になるんです」

女「好きだからです」ニコニコ

男「…うん。ありがとう」

男「うれしいけど恥ずかしい」

女「私もです」

  
お風呂

男「昨日買ってきた本はどうだった?」ゴシゴシ

女「むずかしいけど楽しかったです」

男「よかった。算数も面白いだろ?」

女「うーん、まだ少し苦手です」

男「そうか」

女「でもわかるところは好きです」

男「それで十分だよ」

女「……」ニコニコ

  
二ヵ月半後 自宅

男「はい。プレゼント」

女「!」

女「そういえば誕生日でした」

女「開けていいですか?」

男「うん」

女「……なにかな」ピリピリ

女「!」

女「カメラ!」

男「写真好きだったからな」

女「はいっ」

女「今日はこれでいっぱい撮ります!」

男「それは楽しみだ」

女「男さんありがとうございます」ニコニコ

  
ホテル

女「……」カチカチ

女「男さん、これ見てください」

男「ん?」

女「ミニーかわいいです」

男「だな」

女「男さんは違う方向見てます」

男「しかもブレてるな」

女「私はばっちり笑顔です」

男「かわいいな」

女「ミッキーは写真撮る役です」

男「贅沢だな」

女「ディズニーランド楽しかったです」

男「女さんと来られてよかった」

  
帰路

男「……」

女「……男さん」

男「ん?」

女「今すごい幸せです」

男「…うん」

女「皆のおかげです」

男「……」

男「(俺が教えるよりよっぽど自分でいろいろ考えたんだろうな)」

男「(そりゃ何も考えないわけないか)」

女「……」

女「…たぶんですけど」

女「社員さんは庇ってくれたんですよね?」

男「……」

(庇うが屁に見えた死んだ方がいいな…)

  
女「男さんの家に来てから何度か自分で考えてたんです」

女「私の事を想ってあんな風にしてくれたんだって」

女「キツく言わないと私がまた無理矢理お店に行っちゃうかもしれないから…」ニコニコ

男「……」ナデナデ

女「……そうだったら嬉しいなってだけですけど」

………

……



女「……悪い事してる人ってのも分かってるつもりです」

男「……」

女「でも私を助けてくれた人なんで少しだけ優しいんだと思います」

男「そうか」

女「だから社員さんが逮捕とかされたりするのイヤです」

女「こうやって考えるのはダメなことですか?」

  
男「……どうだろうな」

男「大人になるまでに気持ちも変わるかもしれないしな」

女「……そうですか」

女「でも大人になる前に忘れそうで…」

女「それがすごい悲しいです」

  
一時間後 自宅

男「やっと帰ってきたな」

女「電車疲れました」

男「だな」

女「でも楽しかったからまた東京行きたいです!」

男「俺も行きたい」

女「次はリゾート行きたいです」ニコニコ

男「じゃあまた予定決めようか」

女「はーい」

男「……そうだ」

女「どうしたんですか?」

男「いや、郵便ポストに入ってるの出しとかないと」

男「いっつも溜まってからチェックするからなぁ…」ガサゴソ

  
……



女「今日は疲れたんで簡単な物だけ作ります」

男「ありがと」

女「何にしようかな」ニコニコ



男「(宣伝のチラシばっかりだな)」

男「(特に重要なものは…)」

男「……ん」

男「(封筒か…)」ピリピリ

男「(俺宛の手紙か)」

男「(切手も何もないってことは直接入れたのか)」

男「……」ペラ

男「!」

  
『プレゼントだと言って同封している写真を渡してやってほしい』

『恨んでいたりして今年の誕生日に渡せなさそうなら』

『来年、再来年か…』

『いつか渡せるときが来たら渡してやってほしい』

『これ以上はもう関与しないから期待させないように』

『渡した後はこれが最後だとあの子に伝えてやってくれ』

『頼んでばかりで悪いが二人が幸せになることを祈っています 社員』

男「…………」

男「(もう一枚小さい手紙あるのか)」

『写真一枚と手紙だけ郵便受けに入れろって社員さんに言われたけど』

『それだと可哀想だから私が勝手に写真を追加しました』

『あと、最初に女ちゃんとあなたを会わせたのは私なので』

『少しくらい感謝してください』

『でもお店に来るのはダメですよ 店長』

  
男「…………」

男「(すごいしてます)」

男「(初日から感謝してます)」

男「……」スッ

男「(全部で20枚くらいか)」



30分後

女「ご飯できました」

男「ん、疲れてるのにありがとう」

女「いえいえ」

男「ご飯食べる前にこれ見て」スッ

男「社員さんからプレゼント」

女「!」

ん?店長も女…?

  
女「しゃ、写真…!」

男「……」

女「いっぱいある…」

女「ぜんぶおぼえてます…」

女「これ…」

女「いっしょに寝たときにとったやつです」グスッ

女「すてられたんじゃなかったんだ…」

女「よかった…!」ギュッ

………

……


  
女「ご飯冷めちゃいました」

女「男さんごめんなさい」

男「ううん。おいしいよ」

女「…あの写真は誰が送ってくれたんですか?」

男「店長さんが入れてくれたみたい」

女「そうだったんですか」ニコニコ

男「社員さんからの手紙も入ってた」

女「な、なんて書いてありました?」

男「幸せになってくれって」

女「!」

女「もちろんです」

女「だって男さんが一緒にいてくれますから」ニコニコ



終わり

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