とある実験の一方通行 (35)

・原作3巻の改変を(本当になぜか)唐突におもいついたので立てました。

・メインで書き進めてるものがありますのでこれはGW中には完結させます。

・似たようなネタがあるとか気にしない!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367483695

「時刻は午後8時25分。
お前が次の標的でいいンだな?」

「はい、ミサカの検体番号は一〇〇三二号です、とミサカは答えます。
ですがその前に符丁を確かめるのが妥当では?、とミサカは助言します」


操車場の暗闇の中、二人の男女の声が響く。
両者の声はどちらも落ち着いていたが
少女の声は感情がなく、少年の声には退屈さが感じられた。


「ミサカネットワークだっけか?
感覚共有もできるって話だよなァ?
何でお前は死ぬのが怖くねェンだよ?
感情が希薄とかそれ以前の問題だろ」

「実験中はミサカネットワークは遮断しています。
よって、死ぬという痛みが理解できませんとミサカは答えます」

「分からないにしても昨日まで普通に会話してた仲間が死んでるンだぜ?
何の価値も見いだせずに死ンでいく。
お前はそれに何の疑問も思い浮かべないわけ?」

「価値ならあります、とミサカは答えます。
絶対能力進化こそミサカの存在理由なのです、とミサカは断言します」

「……そォかい、なら死ね。
ちょうど時間みたいだしよ」

「了解です。これより第一〇〇三二回実験を開始します」


午後八時三〇分、誰も救われぬ『実験』が始まった。


青白い閃光が闇を切り裂いていく。
二つの足音が闇に木霊する。
一方通行と御坂妹、両者の距離は10mもない
攻める一方通行に対して、御坂妹は反射を恐れているのか
一方通行の周りに電撃を放ちひたすら逃げていた。


「何に期待してるかしたねェが、奇跡なンざおきるわけねェだろ」


冷たい悪魔のような声が御坂妹の鼓膜を響かせる。
一方通行の顔に表情は無かった。
ただ、つまらないという感情だけがそこにあった。

ふと、一方通行は自分が息切れを起こしていることに気付いた。
能力によって体の疲労は0に近いはずだ。
鼻につく異臭が警告のように感じられる。


「今夜は風がないのですね————
ならば、ミサカにも勝機があります」


抑揚のない声でそう言い捨て、
御坂妹は再び一方通行から逃げ出した。


———攻撃する気とは思えない無声放電
———鼻をつんざく異臭
———風がないから勝機がある


そこまで考えて一方通行は気づいた。
その表情は一変して笑みへと変わる。


「いいねェ、いいねェ、最っ高だねェ!
しっかりと俺の敵やってンじゃン!
生きる希望でも湧いてきたかァ!」


追い詰められてるのに心底楽しそうに笑う一方通行
御坂妹がそれを不可解だと思った瞬間、
一方通行が御坂妹の眼に映った。


「んな……!?」


その情報が脳に伝達する前に御坂妹の体は
大きく回転し地面に激突した。


「な、……ぜ?」

「俺はベクトル……正確には力の向きを操れるンだ。
慣性の法則ってあるだろ?
普通は空気抵抗が邪魔するンだがな
俺の場合はそれが後押ししてくれるンだ。
さァて俺は答えたしお前にも一個質問だ」


「……何でしょうか?」

「お前の作戦が成功してたら俺は負けてた……
つまりは実験は終了。
結局お前はそれを狙ってたわけ?」

「いえ、あくまで実験は実験です。
ミサカの存在価値はそれ以上でもそれ以下でもありません、と
ミサカは誤解を解きます」

「……チッ、つまンねェな」


先程まであんなに楽しそうだった一方通行は
またつまらなそうな表情に戻る。
御坂妹は何故そんな感情の変化が起きるのかわからなかった。


「なら死ね、欠陥品」


それでも、その疑問が解消されることはないだろう。
なぜなら自分は殺されるから。
殺されて彼を絶対能力にすることだけが存在理由なのだから

御坂妹が死んで、また一方通行が絶対に近づいていく。
ただそれだけのシナリオ。


「離れろ」


そんな闇の中、一人のツンツン頭の少年が現れた。
そんなシナリオを砕くために

今日はここまでです。

今日の夜か明日またきます!



もう一個のほうは…

括弧内で改行すると見難い。

投下を再開します!

>>7
同じHNなので検索したら出てくると思います

>>8
そうですね……なんとか工夫します


「何だお前、ウニみてェな頭しやがって
 1世紀後の流行りか? 俺も人の事言えねェけど」

「離れろ……」

「あァ? 事情は知ってるみたいだな。
  第二位?……いや違うな……」

「ぐちゃぐちゃ言ってないで離れろつってんだよ三下!」


突然の罵声にピタリと止まる一方通行。
一度も叱られたことのない子供のように信じられないように。
そして一方通行は薄ら笑いを浮かべた。


「お前、ナニサマ? 誰に喧嘩売ってるのかわかってンのかァ?」


そう言いながら一方通行は足元にあった石ころを軽くける。
その石は上条の真横を通り過ぎ、派手な音をあげ電波塔を破壊した。
それでも、上条は怯まない
恐怖に震えながらも、それでもそれを超える覚悟をした目が
一方通行を睨めかえす。


「へェ、おもしれェな、お前」


一方通行の顔が再び悪魔の笑みに染まった。


両者の距離は約10メートル。
お互いが全力を出せば一瞬で詰められるほどだった。


「ォォおおおおお!」


静寂を突き破るように駈け出す上条。
右手を握りしめ、一方通行の眼前まで迫る。
普段の一方通行なら反射で終わらせるだろう。
それでも一方通行はなぜかその拳に得体のしれないものを感じた。

にも拘わらず一方通行がとった行動は
地面を軽く踏む。
ただそれだけだった。

ただそれだけ地面が地雷を踏んだように爆発した。


「………ッ!」


まるで防ぐという概念を思い出した時には既に上条は
地面に寝かされていた。


「寝てる暇なンかねェぞ!」


一方通行は足元のレールの重力を操作し、バネが弾けるようにレールを直立させ
そしてそのまま


「おらァ!」


優しく、そっと触れるような手でレールに触れた。
その瞬間、レールが盛大に回転しながら上条の元へと向かう。

その要領で何十発も放たれた鋼の塊は操車場に覆いつくし
それはまるで針金地獄を形成していた。


それでも上条はまだ生きていた。
息を荒げ、近くのレールを支えにしながらも
彼は立ち上がった。


「すげェな、お前」


そんな上条に追い打ちをかける様に背後から
死神の声が響く。
慌てて振り向こうとする上条。
それが叶ったのは蹴り飛ばされ、5m先の鉄骨にぶつかってからだ。


「はァ、つまンね」


勝利も同然の状況を前にして一方通行の顔からは笑みが消えていた。
まるで期待外れだというように


「まァ、その勇気だけは認めてやるよ。
 すぐに終わらせるけどよォ」


触れただけで鉄骨を飛ばした右手を上条に向ける。
後少しで頭に触れそうな手を上条は咄嗟に弾いた。



「はァ?」


演算式は完璧だ。
一方通行の能力に何も問題はなかった。
上条の右手が一方通行の反射を無効化したのだ。

そのことに気付くまでに一方通行は数秒間の時間を要した。
もしも、反射が効く敵の前でなら、それは隙ですらないだろう。
反射は寝ているときでも常時発動している。

それでも、今一方通行の目の前には
反射を突き破る奇跡の右手を持つ男がいた。

もちろん、その男はそんなチャンスを見逃すほど馬鹿ではない。


「おおおおおおおおおおッ!」


一方通行は思いっきり殴られた。
今まで一回も殴られたことのない一方通行には
大きなダメージとなった。


「あはぎゃはははははははははは!」


それでも、その結果に対し
一方通行は歓喜するかのように笑った。



行間

彼が初めて殴られたのはいつだろうか。
彼の記憶にあるのは10歳のころ、能力に目覚めた自分を
周りの子供たちが疎み、殴ってきたことだった。
そして、殴った子供が骨を折った。
それを止めにはいった教師も骨を折った。
しまいには一国と戦争するかのような体制がしかれ
彼は何もしてないのにも限らず、死者が出続けた。

彼は耐え切れず、投降した。
彼は怖かったのだ。
傷つけることも、傷けられることも。
そんな思いは誰にも届かず、彼は暗い研究所に送り込まれた。

自分と同じ年齢の子供たちが実験で殺されていく中、
彼らをそんな目に合わせた研究者ですらも恐れる自分という現実に
日に日に、彼の精神を追い詰めていった。


最強では足りない。
絶対になれば、争いを生むこともなく誰かに認めてもらえるんじゃないだろうか
ずっと一人で眺めていた日常を送れるのではないか
本当にそれだけだった。
そんな儚い子供の夢は最悪の形で利用されることになる。

絶対能力進化計画と聞かされ、期待に胸を膨らませた彼の前に
一人の少女が現われた。
実験内容は彼女と戦うこと。
適当に気絶させればいいだろう、
と考えていた彼だがすぐに間違っていると気付く。

何故なら、彼女はいきなり自分に拳銃を発砲し
反射された弾丸に撃たれて死んだからだ。

困惑する彼に、詳しい実験内容が告げられる。
内容は『2万人のクローンを殺すこと』


もちろん、彼は抗議した。
しかし返ってきたのは、いくつのも非人道的実験の詳細だった。

頭のいい彼は悟った。
断ればここに彼女たちを送る、と

最後は研究所の責任者からのこんな言葉があった。


「もしも、実験中に彼女達自身が自分の意思で
 実験の中止を望むのならいいだろう」


彼は決意した。
残虐な悪党になることを。
あんな実験の被験者となるぐらいな死んだ方がいい
死ぬのが怖くなって実験を辞めたくなったら尚良し

彼はは彼女たちに命の大切さを教えるなんて出来なかった。
子供のころから愛されてきたことのない彼は
その思いを言葉にするなど到底できなかった。


彼の名は一方通行。
誰よりも優しくて、愛を知らない哀れな少年。

一旦ここまでです

次回の投下で完結させたいと思います。

クズ一方はよしねや

乙 次で終わりなのか...

次回とか言っておきながら、
もう終わらせる俺ェ……

というわけで投下します!

>>19
長編を2スレ同時進行なんて真似は俺にはできない……


殴り飛ばされ、
ずるずると地面を転がる一方通行は


「ははははははははは!」


歓喜していた。
英雄が現われたことに
自分という悪党が倒されることに


「すげェな、お前!
 もしかしたら、俺を殺せるかもなァ!」

「殺す気なんて、お前はただ人生初めての敗北に
 歯を食いしばってろ」

「あァ? 本当におもしれェな
 誰も死なず決着がつくとでも?」

「つくさ!」

「やってみろォ!」


一方通行は両手を広げる。
その瞬間、風のベクトルがあやつられ
上条の体を盛大に吹き飛ばした。


「どォしたァ! 立ち上がれよヒーロォォォォォ!」


風が圧縮され一方通行の頭上に巨大なプラズマが形成される。
しかし、一方通行は勝ちたい訳ではない。
証明したいのだ。
この男が本物の英雄であるかどうかを



「そんなことはさせません、とミサカは断言します」


瞬間、プラズマの乱れる。
演算を修正しようとするが風の流れがうなりをあげて変化する。


「これは……!?」

「これがミサカ達の意思です、とミサカは
 全てを察するであろう一方通行に補足説明します」


恐らく学園都市内にいる妹達全員が風力発電のプロペラを動かし
妨害をしてるのであろう。

一〇〇三二号の言葉通りにすべてを察する一方通行。
しかし、一方通行にとってそんなことはどうでもよかった。


「は、はは」


乾いた笑いが一方通行の口から出る。
恐らく御坂美琴と上条当麻の想いが届いたのだろう。


「終わりだ、一方通行」


風で吹き飛ばされたはずの上条が歩いてきた。
やはり、本物かと一方通行は思った


「そォだな」


一方通行はあっさりと認めた。
証明は完了したからだ。
あまりのあっさりさに全員が驚いた。


「殺される予定だったはずの妹達は2万人。
 そのうち俺が殺したのは、10031人。
 お前は残り9969人の妹達が全員が満足に生活できると思うか?
 待っているのはこれ以上の地獄かもしれねェ。
 それでも実験を止めるのか?」

「もちろんだ。
 こいつらが不幸な人生を歩ませられるなら、
 俺は何とだって戦ってやる!」

「そォかい」


一方通行はその答えを聞けたことがうれしかった。
同時にどうしようもなく悔しかった。
その顔は、先程のような悪魔のような笑顔ではなく
柔らかく笑っていた。


「今から言うことを忘れるな」


一方通行は泣いていた。
天使の様に笑いながら、静かに泣いていた。


「俺はまだ負けてねェ。
 だから、今からでも実験再開したら俺は絶対になれる。
少なくとも研究員どもはそう考える」

「お前、まだ……!?」

「そして」


上条の言葉には反応せず、そのまま一方通行は続けた。


「これが悪党だ」


瞬間、一方通行の体は爆散した。
———学園都市最高の頭脳を残して

なぜ、こうなった………

ハッピーエンド至上主義の俺が何でこんなもん書いたんでしょう
答えは誰にも分らない……

後日談は………、いいか

明日になったらHTML依頼出したいと思います。

読んでくださりありがとうございました。

予想外の結末……とりあえず乙



この結末だと天井君の計画が…

全然違う展開になってくるよねぇ

どうも、>>1です。

>>25
自分でも予想外(殴

>>26
天井君は自然消滅してくれます(多分)


一応、ラストの解説を

第一位の頭脳は残ってるので実験は凍結扱い。
なおかつ、再開される可能性があるので
他の実験に使われることもない。

最後のセリフは
「これが悪党(のやり方)だ」ということです。

最初からやらなかったのは、妹達が生きる気がなかったため。
もし仮に妹達が『死にたくない』って言った場合もラストのようになります。


本当になんでこんな救われないもの書いたんだろう……

うん、なんでだろうね。ごめんねちょっとわからないや。そうだね、もう少し、いや後日談を書いてくれたらわかるかもしれない。

あと1話欲しいところだな

>>28
ですよねー

>>29
了解!


バットエンドを誰よりも嫌う俺がどうして
こんなもん書いたんでしょうか(2回目)

すごく短い後日談ですがどうぞ

とある研究所にて


「まさか、あんな行動をとるとは……」

「仕方ないわよ、だって彼は甘いんじゃなくて
 優しいんだから」

「そんなことを言ってる場合か!
 第一位の肉体が破損した責任を被らせるんだぞ!」

「はぁ、本当にどうしようもないわね。
 仮に彼が絶対能力になったところで生きられると思ったの?」


慌てふためく男に対して女の方は冷静だった。
男の名は天井亜雄,女の名は芳川桔梗といった。


「実験が始まり、あの子を脅した段階で私たちの死は確定したのよ。
 安心しなさい、あなただけが死ぬわけじゃないわ」

「ふざけるな、こんなところで!」

「惨めに死ぬのよ! それが、一人の少年を追い詰め!
 1万人以上の人間を殺させたことに対する相応しい罰だわ!」


その言葉に逆上した天井は芳川に拳銃を向ける。
しかし、その引き金は引かれることなく天井の体は倒れた。


「あら、助けてくれたの? 優しいわね」

「そういうわけじゃないわよ」


そこには、二人の容姿の似た少女とツンツン頭の少年がいた。
彼らが誰なのかは言うまでもないだろう。


「一方通行が死んだから、絶対能力進化計画は中止。
 その後、様々な非人道的実験に送られるって聞いたけど?」

「あ、それはないわよ」

「ふざけるな! 一方通行は、そのせいで!」

「布束さんから聞いたのね……
 説明するから彼女にも伝えてくれないかしら?」


芳川の真剣な雰囲気に3人は閉口せざるをえなかった。


「彼はまだ生きてるわ。
 あくまで生物学的にだけど」

「え? どういうこと?」

「君達は、一方通行の体が爆散したところは見たのよね?
 確かにその通りに体の内臓は再生不可能なレベルで粉砕されていた。
 脳を残してね」

「脳?」

「そうよ、学園都市最高位の頭脳
 今、第一位は生命維持装置に繋がれてるわ。
 それ以外の干渉を反射で遮断してるようだけど」

「何のために?」

「超能力者ってのは貴重よ。
 簡単には死なせてもらえない。
 だからこそ、彼はあえて頭脳は残した。
 絶対能力進化計画を中止にさせないために」

「あいつはずっと止めたかったんじゃ」

「絶対能力進化計画が継続されている限り
 妹達には万全な健康状態が求められる。
 だから他の実験に回されることはないわ。
 上層部は必死に妹達を生かそうとするでしょうね」


『これが悪党だ』


———それが彼の生き様だったのだろう。
———どれだけ強ければ人はこんなふうに生きていけるのだろう
———限りない絶望の中、それでも矜持を胸に抱いて生きていけるのだろうか
———ただ一粒の涙も流さないで生きていけるだろうか


上条には彼の最後の笑顔と涙の意味が分かった気がした


「おまえは、それで幸せだったのかよ……?」


その問いに答えるべき少年は
暗い闇の中、一人沈んでいた。

おかしいな……
俺は一方さんが救われる話の構想を練っていたはずだ。
なぜこんな話を思いついた……(3回目)

夕方あたりにHTML化依頼を出したいと思います

これが本当にラストです
短いながら読んでいただきありがとうございました!

鬱かっこいい一方さん
たまにはこういうバッドエンドものもいいですね、乙!

乙でした。

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