妹「ムニャムニャZzz…」兄「まったく…」 (47)

~リビング~

兄「ただいまー」ガチャ

兄「ふうー、疲れたー。ん?」

妹「Zzz… 」スースー

兄「ったくソファーでのんきに寝やがって。風邪引くぞー」ペシペシ

妹「うにゃあ。もう食べられないよぉ~Zzz…」

男「またベタな寝言を…」

兄「おーい、起きろ。起きろ!」ペシペシ

妹「おぉ勇者よ死んでしまうとは情けない…Zzz」

兄「お前は誰なんだよ…」

兄「よっぽど疲れてんだろうな。毛布でもかてやるか」ファサ

妹「あいつはもう消した…Zzz…」

男「だからお前は誰なんだよ!」

~兄の部屋~

兄「さて、オレも自分の部屋で一休みしようかな」バタン

妹「あ、いらっしゃーい!」

兄「ごめん部屋間違えた」バタン

兄「ん?でもよく確かめてみてもここはオレの部屋じゃねーか!」バタン

妹「またまた、いらっしゃーい!」

男「なーに勝手に人の部屋に入ってんだよ!」

兄「つーかお前、さっきまでソファーで寝てた癖にいつの間にオレの部屋に入ってきてんの?」

妹「え?ソファーで寝てた私は今もソファーで眠ってるはずだけど?」

兄「何言ってんだお前?まだ寝ぼけてんのか?」ほっぺギュウ

妹「いひゃいよ、おにぃひゃん!」

妹「そんなに疑うならリビングについてきてよ!」

男「あいつ大丈夫かなぁ…」

~リビング~

妹「もう食べられましぇん…Zzz」

兄「!?」

妹「ね?ホントにいたでしょ!」

兄「これは夢か?」ほっぺギュウ

兄「痛てぇ。夢じゃねぇ」

妹「これで信じてもらえた?」

兄「もしかしてお前ら双子か何かだったのか!?」マジマジ

妹「違うって!」

男「確かにどちらの妹もスリーサイズ、下着、ホクロの位置、匂いまでもが一致してやがる。おっと生理周期もか」クンクン

妹「とにかく信じてもらえたようね」

兄「あぁ信じられないけど確かにこの瞬間に妹は二人存在しているようだな…」

妹「さて、これでやっと本題に入れるね」ピトッ

兄「?妹、お前寝ている妹に触れて何するつもりだ?」

寝ている妹 シュウウゥン…

兄「寝ている妹が消えた!?」

妹「ふぅ、これで終了っと」

男「お前、なにしやがった!」

妹「お兄ちゃんはドッペルゲンガーって知ってる?」

兄「そっくりな自分がいてそのそっくりな自分を見たら死ぬってやつか。───ってまさかお前!」

妹「察しがいいのね。お兄ちゃん」クスクス

妹「そう、私は妹のドッペルゲンガー。いえ正しくは『だった』」

兄「そんな!だったらさっきまで寝ていた妹は!?」

妹「そんなものもういないわよ。だってもう『私が』妹なんだもの」

男「てめぇ!」カッ

妹「いいの?兄ともあろうものが妹に手を上げて?」

兄「てめぇは妹じゃねーよ!妹を返せよ、この偽物がァ!!」ブン

妹「きゃあ!!」

兄「くっ!」ピトッ

妹「やっぱり優しいのね。お兄ちゃん?」クスクス

兄「黙れ、貴様にお兄ちゃんと言われる筋合いはねぇぞ!」

男「(くそっ!頭では妹じゃないとわかっているのに!顔が、声が、スリーサイズが、下着が、匂いが、生理周期が、否が応でもこいつがオレの妹だと錯覚させやがる!)」

兄「くそ!どうすりゃ妹を取り返せるんだよ…」ガッ

妹「それはもう無理よ。もう妹は私なの。お兄ちゃんの兄妹はたった一人。そう私なの」

兄「オレはたった一人の兄妹すら守れないのかよ…」ガクッ

妹「どうあっても私を妹とは認めないみたいね。まぁいいわ」

妹「───ところで、どうして前の妹を吸収させるところまで見せて私がドッペルゲンガーだとバラしたと思う?」

男「ドッペルの考えることなんざ知るかよ…」

妹「このまま黙っていれば誰にもバレずに家族にとけこめたのに、どうしてそれをしなかったのか」

兄「だから知らねぇって!」

妹「じゃああなたはだれ?」

兄「は?兄だが?」

妹「本当にあなたは兄だと自信を持って言えるの?」

兄「しつけーぞ!ゲンガー!」

妹「さっきのドッペルゲンガーの出来事を目の当たりにしても?」

男「───まさか」





妹「────そう。あなたも取り憑かれてるわよ」

兄「ムニャムニャZzz…」妹「まったく…オラァ!!」ドゴッ
兄「ゴハッ!?」妹「無職のくせに良いご身分だな?働かずに飯食って寝てか?あ?」
兄「うぅ…」
ってゆうスレだと思って来てしまった、俺疲れてんな

妹「少しドッペルゲンガーについて説明しようかしら」

兄「……」

妹「まずドッペルは基本的に霊よ。そしてまず取り憑く相手を探すの」

妹「取り憑く相手を選んだらまずは憑依し──」

妹「そして憑依して相手の記憶やらなんやらを全てコピーするの」

妹「コピーが進むにつれてドッペルの人格も表にでてくるようになるわ。コピーが進めば進むほどにね」

妹「まぁでもコピーしてる間は本人になりきってるからドッペル自身も自分がドッペルだとは気付かないんだけどね」

妹「コピーが終了すればそこで2つの体に別れるわ。ちょうどさっきみたいにね」

妹「ざっとこんなところね。質問でもある?」

兄「分裂するまではわかった。でも妹を取り込む必要はあったのかよ…」

妹「絶対に取り込む必要はないわ。でも同じ人間が二人もいたら不都合でしかないでしょう?」

妹「ドッペルにも取り憑く人を選ぶ理由はあるのよ。地位だったり、名誉だったり、裕福な暮らしだったり」

妹「私の場合はこの可愛い体かな!じっくり吟味したんだよ~☆」

男「……」ギリィ

妹「──そう、二人も同じ人間がいては邪魔になる」

妹「だからほとんどのドッペルは分裂した後に本人を取り込み本物(オリジナル)となる」

妹「そう二人もいらないの…。この家にも私以外のドッペルなんかホントは要らない」

妹「だからお兄ちゃんにはチャンスをあげるね」

兄「チャンスだと?」

妹 ポイッ

兄「なんだこの薬は?」

妹「本人を取り込むって結構難しくてね」

妹「それはドッペルが分裂した後に本人を取り込むのを補助してくれる秘薬。

妹「それを本物に飲ませて存在を薄めて吸収しやすくするの。私は吸収上手いから今回も使わなかったけど」

兄「この薬がチャンス?」

妹「そう、この秘薬の効果を応用するの。本来の容量より多めに飲むことによって人格を破壊することができるわ」

男「───まさか」

妹「お兄ちゃんが助かる方法は簡単よ」

妹「ドッペルゲンガーの人格が表に出ている時にそれを飲みなさい」

妹「そうすればドッペルの人格は破壊されて、あなたはあなたを取り戻すことができるわ」

兄「──なるほど。オレが助かる方法はわかった」

兄「でもドッペルの人格が出てるのはいつなんだよ?」

妹「わからないわ」

男「え!?」

妹「最初の説明で言ったでしょ?取り憑いている最中はドッペルの人格も本人になりきってるって」

兄「──あ」

妹「今、私と喋っているあなたは一体どっちの人格なんだろうね?」クスクス

兄「じゃあどうすればいいんだよ!?」

妹「私はチャンスをあげただけよ。あなたを助けてあげるわけじゃない」

妹「それに私もあなたにドッペルが取り憑いていることまでしかわからないわ。あなたが今どっちの人格なんてわかりゃしないのよ」

男「じゃあオレはいつこの薬を飲めば…」

兄「そうだヒント…。何かヒントは!?」

妹「ふわぁ~。本物を取り込んだから疲れちゃた」

妹「もう寝るねぇ。お兄ちゃん」トテトテ

兄「おい!ちょ待てよ!」

妹「おやすみ~」バタン カチャ

男「鍵かけやがったな!ちくしょう、どうすりゃ…いいんだよ…」

~兄の部屋~

兄「この薬をドッペルの人格の時に飲めばいいんだよな」

兄「オレは今、一体どっちなんだ?」

兄「仮に今、オレがドッペルだとしてこの薬を飲むとする」

兄「でもそれって結局、この薬を飲むって決意した時の『オレ』は必ず死ぬんだよな?」

兄「今、オレがドッペルだとわかっていたとしても、今のオレはこの薬を飲めるのか?」

兄「──死ぬ。飲んだ瞬間の『オレ』は間違いなく死ぬ…」ブルブル

兄「かと言って飲まなくても、いずれドッペルに取り込まれ死ぬ…」

男「あーー!!もうどうすりゃいいんだよ!!」

~妹の部屋~

妹「お兄ちゃんの絶望した顔、そそったな~!」ジュル

妹「ふふっ、お兄ちゃんにはもっと私を楽しませてもらうよ~」

妹「さ~て、寝る前にドッペルの記憶と妹の記憶の整理でもしとこうかな」

妹 スゥ

妹「!?!?」

妹「──なっ、妹の記憶が!強い感情が私の中に!!」

────妹「お兄ちゃん!誕生日プレゼントありがとう!!大事にするね!」

────妹「お兄ちゃん、今日は私が料理作るから楽しみにしてね!」

────妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」


妹「うっ!感情が…制御できない…」

妹「お兄…ちゃん…」

妹「おはよう!お兄ちゃん!」

兄「……。昨日は一睡もできなかったんだ」

妹「あのね、ヒントをあげてもいいんだよ?」

兄「ホントか!?」

妹「ただし条件があるの!」

兄「条件?」

妹「今日は私と一日デートして!」

男「オレと!?」

~遊園地~

妹「お兄ちゃん、あれに乗ろ~!」

兄「ちょっと待てって!」

兄「(昨日と様子が違うような。そにこうしてるとホントに妹と…)」

男「(いかんいかん!あれは偽物だ!ドッペルだ!ゲンガーだ!)」ブンブン

妹「お兄ちゃ~ん!早くこないとおいてっちゃうよ~」キャッキャッ

男「しゃーねーなぁ!次はあっちに乗るからな!」

~家~

妹「今日は楽しかった!ありがとね、お兄ちゃん!」

兄「そりゃよかったよ…」グッタリ

妹「約束通りヒントをあげるね!」

兄「頼む」

妹「ドッペルゲンガーが記憶を読み取り分裂するまでの時間はおよそ1ヶ月」

妹「さらに記憶の読み取りが進めば進むほどにドッペル人格はたくさん表にでてくるようになる」

兄「なるほど、かなり参考になった。サンキューな!」

妹「あ、ありがと?///そ、そんな照れるよ」カァァ

男「?」

妹「よーし!ならならさらに大ヒント!お兄ちゃんにドッペルが取り憑いたのはなんと今からおよそ一週間前!」

兄「なんでそんなにヒントをくれるんだ?いや助かるけどさ」

兄「初日のお前はそんなにオレに優しかったっけか?」

妹「うっ…。ぐっ!うるさーい!わ、私は一つ屋根の下にドッペルが二人もいるのが嫌なだけなの!それだけなの!」

兄「お前は妹のカタキだけどな…。結果的にかもしれないけど、一応お前はオレの命を救おうとしてくれている」

男「正直、オレも複雑な気分なんだ」

男「でも今回のヒントは本当に助かった。礼を言うよ」

妹「うぅっ//」カァ~

~兄の部屋~

兄「よし!これでなんとか活路が見えてきた」

兄「オレが取り憑かれたのは一週間前。記憶の読み取りが終盤になり、ドッペルの人格が表に出やすくなった時を狙う!」

兄「読み取りが完了するには1ヶ月かかるらしいからな。薬を飲むのは三週間後だな」

兄「もし記憶の読み取りが早くなったことを考えて三週間より少し前に薬を飲む」

兄「あとは薬を飲んだ時のオレは必ず死ぬ。その恐怖に打ち勝つには…」

サイコロ チョコン

男「───やっぱり最後は運だな」

~次の日~

兄「おはよう」

妹「おはよう、お兄ちゃん!」

兄「策は練ったよ」

妹「ホント!?」

兄「あぁ、その策の一環としてお前にはオレに付き合ってもらうぞ!」

妹「え!?つ、付き合う!?」カァ~

兄「あぁ、もし記憶の読み取りが予定より早く終わったら元も子もないからな」

男「オレの記憶を増やすために、思い出を今からお前とたくさん作ろうと思うんだ」

妹「私で…いいの?私はあなたの妹を吸収したのよ?」

兄「正直、妹のことは一生許せないと思う。でもお前はオレのことを助けてくれようとしているんだ。感謝はしているんだ」

兄「あのさ、少し約束してもらってもいいか?」

妹「何?」

兄「妹の分、ちゃんと妹らしく生きて欲しいんだ」

妹「約束する!私は妹らしく精一杯生きてみる!だからお兄ちゃんも約束して?」

兄「ん?」

妹「お兄ちゃんがお兄ちゃんでなくらならないって」

兄「おう!!!!」

~約三週間~

サイコロ コロコロ

男「4、1、6、か」

男「じゃあ今から、オレは睡眠薬飲んで寝る」

男「4時16分後に寝ているオレに例の薬を飲ませてくれ」

妹「わかった!お兄ちゃん、任せて!」

男「おう、任せたぜ!」

妹「約束、覚えてる?」

兄「あぁ、オレの体はドッペルゲンガーなんかにゃやんねーよ。朝食でも作って気楽に待ってな」

兄 睡眠薬ゴクッ

~4時間16分後~

兄・男?「もう食べられましぇん~Zzz…」

妹「ベタな寝言だね」フフッ

妹「(行くよ!お兄ちゃん!)」サッ

兄・男 秘薬ゴクッ

妹「───お願い!神様!!」

~1ヶ月後~

妹「暖かくなってきたね~」

?「すっかり春だな」

?「今日は長期出張から帰ってくる父さん達のために何か買おうと思うんだけど」

妹「絶対お寿司がいいよ~!」

?「ハハッ、妹はお寿司がホントに好きだな」

妹「あっ桜が咲いてるね~!見てよ『お兄ちゃん』!」



兄「───あぁ、本当に綺麗だな」

                完

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