狐娘「主様ーっ」男「うっせ」(368)

狐「コーン……」

男「……」

男(狐だ。狐がいる。拾ってくださいと看板を提げた捨て狐がいるぞ)

男(ああいうのってなんか訳有りっぽいんだよな)

男(何かの病気にかかって、治療費がかかるからって捨てる親は沢山いるもんな)

男(これは……スルーだな)

狐「コーン……」

男(中途半端に構うのが一番良くないんだ)

エキノコックスヤバすぎ

エキノフォックス

男(大体、独り暮らしの学生な俺にこいつを世話できる財力なんて――あるっちゃある)

男(問題は、ペット禁止の寮に住んでるってとこか)チラッ

狐「……」ジーッ

男「……」ジーッ



支援

――自宅

狐「……」

男(保護しちまった)

男(えっと、なにすりゃあいいんだろ……)

男(取りあえず、暖房つけてあったかくしとくか?)ピッ

ブオォーン

狐「クゥーン……」スリスリ

男「なんだ、人懐っこいな」

男(やっぱ、誰かが捨てたってことなのかな)

男(……とりあえず、明日病院へ連れて行くか)

再度支援
ガンガレ

エキノフォックスで笑ってしまった…

男(確か、狐って犬と同じような飯食うんだよな……)

男(都合がいいことに、隣の友からなぜかドックフードの差し入れがある)





男「ほれ」スッ

狐「……」クンクン

男「毒なんか入ってないぞ」

狐「……」モグモグ

男(ほっ。お口に合ったようでなにより

はよはよはよ





男(……寝床は、空きダンボール組み立てて、そこに毛布でも敷いておくか)ガタガタッ

男「ここで寝てくれよな」スッ

狐「……」クンクン

男「……俺も寝るか。バイトで疲れたしなぁ」ファアア

男「電気、消すぞ」

男(……暗くない方がいいか?)

このSSと既存のSSは何が違うのですか?

男(一応、豆電球をつけておくか)カチャン カチャン

男「おやすみ」

男「……」

男「んごぉおおおおおお」

狐「……」ガサゴソ

期待

――次の日、日曜日、朝


男「……んんっ」パチッ

男「……」ムクリ

男「……」チラッ

狐娘「……」zzZ

男「……」ゴロン

男(まだ夢の中か)

男「……」zzZ

きたこれ

――30分後


ユサユサ ユサユサ……


男「んん~……? 友、勝手に家に入り込むなっていっただろぉ……」zzZ

ユサユサ ユサユサ……

男「んあぁあもうっ、しつこいぞ」バサッ

狐娘「……」

男「……」

狐娘「あの、何か言ってください……」

寝る前にとんでもないスレを見つけてしまった

終わるまでは眠らない

男「服を着ろ」

狐娘「へっ?」

男「服を着ろぉおおおおおおおおおおお!!」

狐娘「えっ、あのっ――きゃああああああ!?」

男「Yシャツが似合いそうな良い体だっ、さぁこれを着ろぉおおおおおお!」





男「うわぁあああああっ! 誰だお前っ、デリヘルなんて頼んだ覚えも頼む予定もないぞクソッたれ!!」

狐娘「今更驚きますか……」

ktkr

狐ちゃんかわいい

狐娘「私ですよ、私」

ピョコン

男「狐耳……」

男「……」グイッ

狐娘「いたたたたたっ」

男「えっ」パッ

狐娘「いきなり耳を引っ張らないでくださいぃ……」

男「……」

男「破ァ!」バシィン

男「いってぇ! すげぇ、痛み入る!」

狐娘「それ、使い方違いますよ……いきなり自分の頬をぶつなんて、どうしたんですか」

この作風私知ってます
有名な作者さんですよね

はよはよ

狐娘で主様とか某調教ゲー思い出すな

いかにもありがちな展開
だがそれがいい

しえん

男「……」グルングルン

狐娘「……あの、なにを?」

男「混乱のあまりブレイクダンスをな」グルングルン パッ

狐娘「……」

男「よしっ、誰だお前っ」

狐娘「そこから始めるんですかっ」

男「あぁあああああ……」グワングワン

男(訳わかんねぇよぉおおおおおおおおお)

狐娘「あ、あの、落ち着いてください」アセアセ

男(そうだ、手のしわの数を数えよう。手のしわは偉大だ。なんてったって、合わせてしあわせだ)

男「……」ブツブツ

狐娘「……今度はなにを?」

男「あぁああ、お前が邪魔するから、どこまで数えたか分かんなくなっちゃった!」

狐娘「ごめんなさい……」

くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、まどか達のみんなへのメッセジをどぞ

まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

俺「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

ほむら「・・・ありがと」ファサ

では、

まどか、さやか、京子、ほむら、俺「皆さんありがとうございました!」



まどか、さやか、京子、ほむら「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

もふもふ

くぅー疲やめれww

もふもふ

しえんだ!

男「……あれ? なんか落ち着いてきたぞ」

狐娘「! なら、私の話を」

男「冷静に考えてみれば、これが現実な訳ないよなぁHA↓HA↑HA↑」

男「寝る」ゴロン

狐娘「寝ないでください、ちょっとだけ私の話を聞いてくださいっ」グイッ

男「……」ムクリ

男「……」チラッ

狐娘「……な、なんですか」モジモジ

男「分かった。話を聞こう」

狐娘「そうですか! それは良かった」



男「あの狐、ですか」

男「昨日の捨て狐。看板提げた狐」

狐娘「はい」

男「いやおかしいだろ」

狐娘「はい」

男「そこ頷いていいのかよ」

狐娘「はい」

男(……生命の神秘はここまでの奇跡を起こせるのか?)

男「ふぅむ……」

狐娘「……」

男(発想を変えてみるか)ジーッ

狐娘「あの、あまりじろじろ見られると……」モジモジ

男(俺にも運命の人が現れたのだと)ジーッ

支援

はよ

こういうことか
http://i.imgur.com/FKS3ZK8.jpg

支援

チラッとムクリの順番が逆だったらこいつどこ見て勃起してんだよって突っ込むところだ

男(いや、ないわ。狐耳の女の子に恋するとかないわ)フルフル

狐娘「なんですかその反応、ちょっと傷つきますよ」

男「なぜ傷つく」

狐娘「……いえ、なんでもないです」

男「さて。狐……さん。狐さんは今後どうするんです?」

狐「さん付けとか、敬語とかやめてください」

狐娘「主様、じゃないですか」

男「……主様ですか」

男「なぜに主様?」

男(ご主人様とか色々あるだろうが)

男(……問題はそこじゃねぇっていう)

狐娘「……主様に、なってくれないんですか」ショボーン

男「飼い主のこと、ですよね」

狐娘「その解釈で概ね合ってます。あと敬語はいらないですってば」

男(概ねってなんだ。なんか嫌な予感がするぞ)

男「昨日の狐だったら、飼ってもいいかなと思ったけど……」

男(ペット禁止だけど、まぁ大家さんに頼んで、寮で飼うって形にすればなんとかなると思うし)

狐娘「昨日の狐ですよ」

男「主にサイズが段違いですよ」

狐娘「だから敬語はいらないと」

男「だったら飼うのやめよっかなー」

狐娘「敬語でいいです」

男(……なんだ、そんなに飼い主が欲しいのか)

男「前の飼い主のところにでもいってくださいよ」

狐娘「いません」

男「えっ」

狐娘「前の飼い主なんて、いません」

俺のところに来ていいですよっ

男「じゃあなんであんな看板提げてたんだ」

男(あっ、敬語にすんの忘れた。まぁいいや、めんどくさいし)

男「お前が書いたとでも言うつもりか?」

狐娘「それは……」

狐娘「たまたま猫を捨てようとしていたおばさんが持っていたお手製の看板が急な突風にさらわれてしまい、その看板が偶然私の首にさがったんです」

男(無理ありすぎだろそれ)

男(でもまぁ、そんな言い訳を吐くくらいには事情があるようだ)

男(ここは、妥協するべきか)

男「保健所、いきましょうか」

狐娘「ほけんじょ?」

男「捨てられた動物を預かってくれる場所。一定期間中に引き取り手が見つからない場合、殺処分されることも」

狐娘「いやぁあああああ!!」

いやいやこうだろ
http://upup.bz/j/my44816shpYtX_4u_s5IDBA.jpg

このSS前にも読んだ気がします
再放送という奴ですか?

ひどいことしやがる

男「冗談だ……1週間、1週間だ。その間だけならここにいてもいい」

男「その間に今後の方針でも考えておくんだな」

狐娘「……そんなぁ」

狐娘「私を傍においておくと便利ですよっ」

男「例えば、どんな風に」

狐娘「……尻尾、もふもふできますっ」

男「……」

男(そういや、やけに尻尾の数が多いな……最近の狐はこうなのか?)

狐娘「もふもふできますよっ」

男「俺、別にもふもふしたくないし……つか、それ便利って言わないよね」

狐娘「……」

男「おい、便利なところが尻尾もふもふで終わりかよっ」

好きなときに好きなだけもふれるのに拒否するとか酷い

狐娘「……あっ」

狐娘「動物の言葉を翻訳できますよ」

男「……別段特に動物が好きって訳でもないしなぁ」

狐娘「なら、なんで私を拾ってくださったんですか」

男「うぅむ……なんでだろうな」

男「でも、拾ったからには責任を持って飼う――つもりだったけど、これじゃあな」

狐娘「これじゃあってなんですか、責任取ってくださいっ」

男「一週間の内に、俺がその気になったらな」

狐娘「私、がんばります!」グッ



狐より公園闊歩してる裸の大将見かけたときの方が怖いわ

男「それじゃあ、ちょっとコンビニいってくるわ」

狐娘「いってらっしゃーい」フリフリ

狐娘「って、おかしいじゃないですか!」

男「えっ?」

狐娘「私も一緒に連れて行ってくださいよ」

男「いや、狐耳の女の子と一緒におでかけって、どんな羞恥プレイっすか」

男(まわりの視線がヤバイ)

狐娘「私は恥ずかしくありません」

男「俺には恥死量すぎる」

狐娘「私を一人にするんですか、寂しくて死んじゃいますよ!」

男「昨日の狐だったらよかったんだけどなー」

狐娘「分かりました」

ボンッ

狐「これでいいでしょう!」

男「その姿になれるんなら最初からそのままでいろやっ!」

一匹で二度おいしい!

>恥死量

うまい

ハサハかわいいよハサハ

狐「この姿、窮屈なんですよ……押入れに無理やり押し込まれてるような気分です」

男「そうなんですか」

狐「そうなんです……」

狐「これで、連れてってくださいますよね?」

男「……分かった。その代わり、外で喋るなよ。他の人に聞かれたら面倒だし」

狐「大丈夫です、主様以外にはただの鳴き声にしか聞こえませんから」

男「……なんで分かるの。あと主様って言うのやめろ」

狐「何で、って言われても」

狐「そうなってるからとしか言えません」

男(主様の部分スルーされたっ……)

男「分かった。もう深く考えるのはやめる」

男「勝手に付いてくればいいだろ……ちょっとコンビニいくだけなのに……」

至高の狐っ娘は藤花

どちらにせよコンビニの中には入れないような

>>58
さすがの俺も完全に同意

狐「わーい」ダッ

男「……肩に乗るんですか」

狐「良い眺めです」

男「……うん、どうにでもなれ、もう」


――コンビニ


店員「店内にペットを連れ込むのはちょっと……」

男「ですよねー」

――店外

男「と、いうことで外で待ってろ」

狐「ようは、あの人に見えなければいいんですよね」ゴソゴソ

狐「これで問題ありません」

男「……コートの中にもぐりこむのやめてくれない? なんかくすぐったいし暑い」

狐「あったかいですっ」

男「……いいか、俺が良いというまで顔を出すなよ」

狐「はい」





店員「アリヤトシター」


男(……また、無駄遣いしちまったなぁ)

ランシャマー

狐娘「人外?馬鹿な事を言うな。猿に少々遅れを取ったが、私たちも『進化』しているんだ」

男(コンビニにくると、どうも色々と食い物を買っちまう)ガサッ

男(あっ)

男「もう顔出してもいいぞ」

狐「……」ヒョコ

狐「肩の上もいいですけど、ここも中々いいですね」

男(微妙に顎に耳が当たってくすぐったいんだけど)

狐「それに、あったかいです」

男「そですか」

スタスタ……

友「おっ」

男「あっ」

友「よう。昼前に起きてるなんて珍しいな」

男「まぁ、色々サプライズがあってな……」

友「?」

友「ところで、そのコートからヒョコっと顔を出してる奴はなんだ。流行のファッションか?」

狐「主様のお知り合いですか?」

男「喋るな」

友「おおぅ、なんだ、ホンモノかよ……小犬?」

男「狐だ」

友「へぇ……狐。初めてみた。ちょっと触っていい?」スッ

狐「……」ゴソ

友「……引っ込まれたのですが」

男「了承なしに触ろうとしたからじゃないか?」

友「そうなのか……狐って中々シャイなんだな」

友「つか、うちの寮ってペット禁止じゃなかった? いいのかよ」

男「あー……知り合いの頼みでな、一週間限定で家に置いてるんだよ。大家さんも了承してる」

男(言っちまった以上、あとで許可取りに行こう……)

読んでるよ

友「ふぅん」

男「お前のドックフードが役に立ったぞ、さんきゅ」

友「えっ、なんで役に立つん?」

男「狐に食わせた」

友「狐ってドックフード食うのか……へぇ」

友「まぁ役に立ったならよかった」

友(押し付けるようにやったものだが、結果オーライだな)

男「お前、どっかでかけんの?」

友「米炊くの忘れちゃってさぁ。食パンも何もねーし、コンビニで買って来ようかなと」

友「お前も似たようなもんだろ?」

男「まぁな……無駄に買いすぎたけど」ガサッ

友「まぁた無駄遣いか。僕にも分けろよ」

男「金」

支援

支援

友「なにがあんの」

男「パンとか弁当とかからあげちゃんとか」

友「だったら普通に買ってくるわ」

男「最初からそうしろ……じゃあな」

友「あぁ」

友は僕か良い良いな

――自宅


狐「……」ダッ

ボンッ

狐娘「ふぅ……やっぱりこっちの方がいいですね」

男「……」

狐娘「な、なんですか、微妙に熱い眼差しを感じますよ」

男「いや、どういう仕組みなんだろうなって思って」

男(俺が着せたワイシャツ、どこに収納されてたんだ)

男(……まぁいいか)ガサッ

男「さて……とりあえず飯でも食うか」ガサゴソ

狐娘「……」ジーッ

男「お前にはあれな、ドックフード」

狐娘「あれ、そんなに美味しくないです」

男「栄養食とか書いてあるし、味はよくないのかもな」

男「でも、栄養はあるんだぞ」

男(多分)

狐娘「私も主様と一緒のものが食べたいです」

男「主様をやめろ」

男(そんなこといわれても、狐に与えちゃいけないものなんてわかんねーしなぁ……)

男(俺が買ってきたものがこいつにとって有害とも限らないし)

男「ちょっとまってろ」

狐娘「?」

男(携帯で検索してみるか)カチャ

狐娘「……」

男「……」

男(基本的に犬と一緒なのか)

寝れない

狐娘「桃以外ならなんでも食べられますよ、私」

男「……桃、以外」

狐娘「はい」

男「桃を食べるとどうなる?」

狐娘「一日寝込みます」

男「そうか」

男(桃ってなんかそういう謂れってあったっけな……)

男(まぁいいか。……さっきからそればっか言ってる気がするな)

男「ほれ、からあげちゃん。一個だけなら分けてやる」

狐娘「ありがとうございます――あーん」

狐娘「もぐもぐ……」

狐娘「!」ピーン

男「……どした、耳と尻尾起立させちゃって」

狐娘「おいしい! これ、おいしいですよ!」

男「そう」パクッ

喋れる分、下手に美味いものあげると後々苦労しそうだな

男「……」モグモグ

狐娘「……」

男「……」

男「わかった。もう一つだけやる。これで最後だからな」

狐娘「わーいっ」

狐娘「もぐもぐ……んー♪」

男(からあげちゃん――というよりは鶏肉が好きなのかな)

男(……ま、一週間はこの生活が続くんだし、好みくらいは把握しておいて損はないよな)

狐娘「みなぎってきますっ」

男「なにが」

狐娘「活力です」

オコジョさんってあったよな?

男「へぇ。活力」

男(こんなんで活力が漲るなら、俺、今頃超人だな)

狐娘「これなら一週間でも……」ハッ

男「……?」

狐娘「もっと食べさせてください!」

男「ダメだ。ドックフード食ってろ」

狐娘「むぅ」

男(……なにか誤魔化したな、こいつ)

男(めんどくさい事じゃなけりゃあいいけど……)

男「ま、いいか……」モグモグ



俺も股間が漲ってきますっ

tea

男(飯を食い終わった訳だが。さて……)

男「寝る」ゴロン

狐娘「寝るんですかっ」

男「だって、昨日はバイトで疲れてんだよ……」

狐娘「ばいと?」

男「仕事だよ。お金のため自分の生活のため、働かないとダメなのですよ」

狐娘「ほぅ……」

男「だから、休ませて」

狐娘「……」ゴソゴソ

男「布団に入ろうとするな」バシッ

狐娘「いたっ」

狐娘「……暇です」

男「……そこらへんでじっとしてろ」

狐娘「ひどいっ」

男「じゃあじっとしてるな。常に振動してろ。プルプルしてろ」

狐娘「もっとひどいっ」

男「……」ムクリ

男(あぁ、そうだ。大家さんにこいつの事、報告しないとダメだった)

男(めんどくせぇ……でも、後で問題になって追い出されるのは勘弁)

男「でかけるぞ」

狐娘「どこかで遊びに連れて行ってくださるんですねっ!」

男「……それを兼ねてもいい。だけど、その姿じゃ連れて行かないからな」

ボンッ

狐「どんとこいですっ」

男「そか。どんといくぞ」ガシッ

狐「あの、鷲掴みじゃなくて、もうちょっとたいとに抱いてくださると……」

ふむ

――大家さん家

ピーンポーppppppピンピンpppp……

ガチャンッ

大家「日曜の朝からうるっせぇえええ!!」

男「こうでもしない起きないと思って」

大家「男。お前の家賃1.5倍な」

男「すみませんすみませんそれだけは勘弁してくださいっ」ペコッ

大家「……で、何の用だよ」ポリポリ

男「ちょっと、知り合いにペットを預かってもらえないかと頼まれまして……一週間ばかり」

ヒョコッ

狐「狐です、以後お見知りおk」

男「ちょっと引っ込んでろ」グイッ

狐「あうぅ……」

大家「狐か。珍しい……まぁ狐だろうと狸だろうとどうでもいいが、うるさくしないことだな」

大家「苦情が一つでもきた場合、家賃は1.3倍な」

男「ちょっと下がったけどそれでもキツイんで勘弁してください……」

大家「ペット禁制の寮なんだ。そこらへん弁えろよ」

男「……はい」

大家「話、それだけか。なら帰れ」

男「寝ているところ、すみませんでした。失礼します」

ガチャンッ

ヒョコッ

狐「美人さんでしたね」

男「俺にはそう見えないが……」

男(大家さんの言うとおり、ペット禁制だもんな)

男(追い出されるよりはマシ、か)

男(それでも家賃が増えるのは勘弁だが)チラッ

狐「?」

男(やっぱ、拾うんじゃなかったかもなぁ)

狐「主様っ、あるじさまっ」

男「その呼び方やめろって言ってんだろ」

狐「どこに連れて行ってくださるんですか?」キラキラ

男(聞いてねぇし……)

男「ま、テキトーにぶらぶらとな……特にこれといった目的地がある訳でもない」

狐「この町を見て回るんですね?」

男「そこまではしねーよ……疲れる」

男「……そうだな、神社にいこう」

狐「神社、ですか?」

見てるよ

さるよけ

人間の姿ならペット禁止と言われないしセックスできるし問題無しだな

男「あぁ。名前も分からない、ボロッボロで、誰もいない神社」

狐「……」

男「でも、本殿の裏から見える景色が好きなんだよね」

男「人気がないし、それならお前も気楽――今のなし」

狐「……優しいんですね」

男「……奥に引っ込んでろ」グイッ

狐「あうぅ……」グリグリ



博霊神社

はよ

――神社

男「懐かしいな……」ハァハァ

狐「息、上がってますよ」

男「ここまで何段の階段があると思ってんだ……帰宅部には辛すぎる」

狐「きたくぶ?」

男「気にするな」

男「しっかし、改めてみると、昔に比べてすげーボロボロ……ん?」

男「……」

男(狐の像が欠けてる。頭だけなくなってるぞ)

狐「それがどうかしたんですか?」

男「いや、前はこの像、頭もあったと思うんだけど……」

狐「きっと、風雨に晒されて劣化したんでしょう」

男「劣化っつってもな……」

ぬしさま?あるじさま?

男(ごっそり欠けてるんだが。なんかに齧られたかのような欠け方だな)

狐「裏手にいきましょうよ。景色、綺麗ですよ」

男「んん? そうだな、そうしよう」

男(こいつ、今……?)

男(……ま、いいか)


――神社、本殿裏

男「久しぶりにみたなー、この景色」

男(多分、7、8年ぶりくらいかな)

男(あんまり変わってないや)

稲荷神社再建フラグか

狐「……この町は広いですね」

男「田舎町だぞ。然して広くもない」

狐「広いですよ。長い間ここにいたのに、それまでにあなたに会えた事は……ありませんでしたし」

男「……ふぅん」

男(狐ってそんなに寿命長いのか)

狐「ハッ」

狐「そういえばお腹すきましたねっ」

男「? さっき食べたばかりだけど」

狐「そうでした……」

グゥー

男「……割と食い気のある方か」

狐「……はい…………」

狐っ娘かわいい支援

男「……」ボリボリ

男「商店街にでもいって、なんか食ってくか」

狐「!」キラキラ

狐「主様、太っ腹!」

男「主様っていうのやめろ」


――商店街

ラッシャセー オカイドクーオカイドクー

狐「活気づいてますねぇ」

男「夕方になるともっと活気づくぞ」

狐「へぇ……これ以上。見てみたいです」

朝まで残ってますように

いいぞいいぞ

俺の眠気も活気付いてきた…

男「あとで一匹でくればいい」

狐「主様はついてきてくれないんですかっ!?」

男「主様いうなっちゅーに……男やっちゅーに」

男「一週間のうち、暇があったらな」

狐「やたー」

狐「……ややっ、主様、ストップすとっぷ!」

男「?」

狐「あれ、あれですよあれっ」ビシッ

男「……稲荷寿司?」

狐「稲荷寿司っていうんですか?」

男「あぁ」

狐「食べてみたいです。とっても美味しそう……」ジュルリ

「あのひとキツネと会話してるー」

「見ちゃいけません!」

男(……稲荷寿司って確か、狐の好物って謂れがあったな。あれ、マジだったのかな)

男「まぁ、あれくらいなら買ってやってもいい」

狐「いぇーい、主様のいけずぅ~」

男「それ、使い方違う上に言い方がすげーイライラするからやめろ。主様もやめろ」

狐「すみません」

男(食べ物が絡んだ時だけ素直に謝りやがってからに……)

男「すみませーん、稲荷寿司くださーい」



   , ィ ´      ,ゝ、_ `r'   l |  、レ // `テ三..ノく _ `       ヽ、
  /       , -' ,、  `、_)   l,i,  i //  (/  ...,,;;;;:` 、        ヽ
 ;'       '" ノ ;;;;::::      i !  : //    .....:::::;;イ、_、_\ _    _ノ
 l ..,, __,ィ"-‐´ ̄`i::::: ゙゙゙= ...,,,,,. l | ,//  - = ""::;; :/       ` '''' '"
            ヾ :;;;,,     ,i l,//     ,,..," /         _,,.....,_
   ,. -- .,_        \ :;,.   ;'  V ;!   `;  /;: ノ      ,.ィ'"XXXXヽ
  /XXX;iXXミ;:-,、     ヾ  '" ''' /./!  ヾ   /    ,. - '"XXXXXXXX;i!
 ,!XXXXi!XXXXX;`iー;,、  i   、. / ;:::゙i   ;: , |  ,. r'"XXXXXXi!XXXXXX:l!
 |XXXXX;|XXXXX;|::::::::|`ヽ、    ,! ,': : :|    ,.レ"::::|XXXXXXX|XXXXXXX;l!
 !XXXXX;|XXXXX:|:::::::::i  `   ;! : :  i!  / !:::::::::|XXXXXXX|!XXXXXXX|
 XXXXXx|XXXXX;!:::::::::::!   `. /::    | '"   l:::::::::::|XXXXXXX|XXXXXXX |
 XXXXXx!XXXXxリ:::::::::::!    |::     |    i:::::::::::ゞXXXXXツ1XXXXXXX|
 XXXXX/ \XXソ::::::::::/     i!::    ノ     i!::::::::::::ゞXX:/  lXXXXXXX|
 XXXX:/   `ヾ::;;;;;:ツ      ヾ;::: ; ノ      ヾ:;;:::::::ゝ'"     ヾXXXXX |
  XXX/       `ヽ 、     _ゝく      _,,. -`''"        i!XXXXX:|

>>108
残念、それもお稲荷さんだ…

それは私のお稲荷さんだ

支援
寝たいのに

――自宅

ボンッ

狐娘「主様っ、あっるじっさまっ」

男「……」ピキピキ

狐娘「……男さん」

男「よし」スッ

狐娘「わぁあ……」キラキラ

狐娘「いただきます――あむっ」

狐娘「……」モグモグ

狐娘「ん~~♪」

男(表情がころっころ変わって面白いな)

あえて主様と呼ばせないのは男として見てもらいたいからなんですよねっ!

男「じゃ、俺は寝るから。それ食ったら大人しくしててくれよ」

狐娘「はーい」

男(現金な奴……)ゴロン

狐娘「あーんむっ……んん~~♪」

男(耳障りになって寝れないかと思ってたが……意外に悪くない心地)

男「……」zzZ

――夕方

男「……」パチッ

男「……」チラッ

狐娘「……」zzZ

男(だから布団に入り込むなと……)ハァ

男(……可愛い寝顔しやがって)ツンツン

狐娘「……ぅうう」

こういう主人公は何故か受け入れないよな
こんな素敵なシチュエーションなのに

エキノコックスてどんな感じでヤバいの

まさかのホモ疑惑
あるいは狐娘が男の娘?

お前ら、保守は頼んだぞ

ケモナー趣味じゃないんだよきっと

寧ろ狐のままがいいガチケモナー

男(なんだ。嫌な夢でも見てるのか)

狐娘「ごめん、なさいぃ……」ホロリ

男(……涙)

男「……」ポリポリ

男(美味いもん、振舞ってやるか)

スタ スタ スタ……

狐娘「……」zzZ



また財布が軽くなるな

>>116
肝臓に虫が寄生して深刻な肝機能障害を起こす
臓器とか萎んでくらしいよ
詳しくはシラネ

>>123
KOEEEEEEEEE

狐娘「……んんっ」パチッ

狐娘「んー……」ムクリ

狐娘「……あるじさまぁ」キョロキョロ

スタ スタ……

狐娘「なんだか、良いにおい……」クンクン

男「ん、起きたか」

狐娘「おはようございます……ふぁあ……」

男「もう夕方だけどな」

男「お前、また勝手に布団の中入ったろ」

狐娘「……ごめんなさい」

男「もう、入ってくるなよな」

狐娘「……?」

狐娘(主様、なんだか優しくなった気がします)

エキノコックスを穂菌しているのは主にキタキツネね

男「次入ってきたら保健所行きだから」

狐娘「ヒドイっ!?」

狐娘(気のせいでした……)トホホ

グゥー

狐娘「!」

男「飯、できてるぞ」

狐娘「……やっぱり、主様がちょっぴり優しくなってる気がします」

男「お前飯抜きな」

狐娘「ごめんなさい食べたいです」

男「今後、俺にそういうことは言わないようにな……気持ち悪くて仕方ない」

狐娘「……褒められることが嫌いなんですか?」

男「さぁ、わかんね」

男「そんなこと、どうでもいい。飯食おうぜめし」

狐娘「はい」パクッ

男「ていっ」ボコッ

狐娘「痛いですよ、何するんですかっ」

男「いただきますをしろ、いただきますを」

狐娘「……いただきます」

男「いただきます」

男「……」

狐娘「がつがつもぐもぐ……」

男(狐に言っておいてなんだが……いただきますなんて、何年振りに言ったんだろうな)

男(なんかこう、胸にこみ上げるものがある――)

狐娘「この茶色い塊、外はサクサク中はお肉で美味しいですね」

男「あぁ、それはから揚げって言って――おい、俺の皿に持ってあったから揚げは?」

ムツゴロウ王国はよく飼えたもんだ

支援支援しえしえしえ

>>129
まぁ、ムツゴロウさんがぶっ飛んでたからね…
絶対家族は反対してたと思うよ

狐娘「あっ」

狐娘「……」ダラダラ

男「……」ピキピキ

男「……狐って、焼いたら美味いのかな」

狐娘「えっ、それはどうでしょう……多分まずいと――ヒッ!?」

男「まぁ、物は試し……」ガシッ

狐娘「いやぁあああああああああ!!」

男(――そんなことなかった)

性的には美味しいはず!

――月曜日、朝、自宅

男「俺には学校がある。だからお前はここで留守番な」

狐娘「いいんですか、私を一人にして」

狐娘「ありったけの食料を食い尽くすかもしれませんよ?」ニヒヒ

男(こいつ、シメて売りに出したい)

男「……そんな事をする奴だったか。そうかそうか」

男「じゃあ今すぐにでも保健所に――」

狐娘「申し訳ございませんでした」ペコリ

男(保健所を設立した方々に感謝だな、こりゃ)

男「夕方には帰ってくるから。大人しくしてろよな」

ガチャン

狐娘「……」ポツーン

そろそろ狸娘(♂)も出そうか

鞄に入れていって、おおい、出てくんなよ!みたいな展開はやらんのか

野郎はNG

――学校、教室


友「よぉ」

男「お前、今日は遅刻しなかったのな」

友「それこっちの台詞ね、遅刻神さん」

男「……サプライズがあったからな」

男(狐に起こされるっていう体験をすることになるとは思わなかった)

友「昨日も言ってたよな。なによ、そのサプライズって」

男「狐が人になった」

友「頭おかしいんじゃねぇの」

男「俺もそう思う。まだまどろんでいるのかもしれない」

友「そんな時はこれよこれ」スッ

男「……アメ?」

しえーん!

友「梅味のアメ」

男「ほぉん……」パクッ

男「おぉ、すっぺぇ……」

友「少しは覚めたか?」

男「これいいな。うめぇ。あ、いや、梅とかけたんじゃなくてな」

友「説明されなくても分かるわ」


――2限

エー デアルカラシテー

男(そろそろ昼休みかー)ホケー

男(腹減った)

男「……」

男(あっ)

男(まぁ、ドックフード残ってるし、大丈夫……だよな?)

――同時刻、自宅


狐娘「……お昼ご飯は、いずこ」

狐娘(どっくふーどとやらをまた食べなければいけないのでしょうか……)

狐娘「あるじさまぁ……」シクシク

狐娘「……!」ピョコン

狐娘(主様の元へ行けばいいじゃないっ)

狐娘「……」

狐娘(どこにいるか分からない……)シクシク

昼休みに抜け出して狐ちゃんの様子を見に行く主様かっこいー

――昼休み、教室

男「……ふぅむ」ムム

友「どうした、腕組しながら唸っちゃって」

男「いやな。昨日、家で狐を預かってるって話しただろ」

友「あぁ」

男「飯、用意しておかなかったなぁと思って」

友「お前の飼い犬……飼い狐だったらお前の自由かもしんねーけどさぁ」

友「それって知り合いの狐なんだろ? もし病気とかになったらどうするん」

男「……一食抜いただけで病気にはならないだろ」

友「病気にはならなくても、体調を崩す事はありえなくもないぞ」

男「むっ」

友「飯用意してないって言ってたけど、飲み水も用意してないんだろ?」

男「むむっ」

友「引き受けたんだから、責任持って世話してやれよなー」

男「むむむっ」

男「そうか……そうだよな」

男「ちょっくら家に戻るわ」ガタッ

スタ スタ スタ……

友「じゃなー」フリフリ

友(あっ。やべ、飯食う相手いなくなっちゃった)

主様っ、ねむいです!

――校門

男「……」

狐「……」

男「お前、なんでここにいるの」

狐「いやぁ、テヘヘ」

男「テヘヘ、じゃねぇよアホ狐」グイグイ

狐「いふぁいへふ、ほほほひっはははいへふははい」

男「どうやって外に出た」

狐「窓を開けて、ひょいっと」

男「……今すぐ家に戻るぞ」ガシッ

狐「えっ」

男(泥棒なんて来る事はまずないだろうが、念の為戸締りくらいはしとかないと……)

――自宅

狐娘「これはなんですか?」

男「やきうどん」

狐娘「ほぉー、やきうどん」クンクン

狐娘「いただきます……あむっ」

狐娘「……」モグモグ

狐娘「稲荷寿司やからあげちゃんには劣りますけど、これも美味しいですねぇ」モグモグ

男「そか」ズルルー

男(まぁ店の味には敵わんよな)

男(稲荷はともかく、からあげちゃんに劣るってのはなんだか悔しい気もするが……)





狐娘「ごちそうさまでした」

男「ごちそうさま……さて、学校戻んねーと」

男(めんどくせぇ……)

狐娘「……」

男「連れては行かんぞ」

狐娘「ですよねー」ペタン

男(耳が垂れた)

男「勝手に外にでるなよ。窓からでるのも禁止だ」

狐娘「分かりました……」

男「じゃ」

ガチャン

狐娘「……」

狐娘「寝よう」


――放課後、帰路

スタ スタ スタ……

男「……」

猫「……」

男「……」

スタ……

猫「ちょっと待ちにゃー兄ちゃん」

男「!?」ビクッ

新キャラか

猫「そんなに驚くほどでもなかでしょー」

猫「最近、同じような体験をしたろー?」

男「……あの狐の知り合いですか」

猫「敬語なんていらない」

男「はぁ……」

男(なんだ、敬語ってそんなにダメだったのか?)

猫「狐の知り合い、と言ったか。にゃぁ、概ねその通りではあるんだけどなー」

男(また『概ね』か……ハッキリしないなぁ)

男「なら、引き取ってくださいよ。迷惑してるんです」

猫「敬語いらねって」

猫「にゃぁ、それは聞けない相談だなー」

さるくらった也

男「それはまた、どうしてですか」

猫「もう敬語でいいわっ」バシィン

男(脛を猫パンチされた。全然痛くねぇ、寧ろ気持ちいい)

猫「暫く世話してやってくれ」

男「……暫く、といってもですね。俺は一週間以上世話するつもりはありませんよ」

猫「それで十分」

男「……そすか」

猫「それじゃあにゃー」

男「あっ、ちょっと」

猫「んん?」

男「あなたたち、なんなんですか。動物って訳でも……ない、ですよね」

猫「そりゃあ、あれでしょ」

男「あれ、とは」

猫「……妖怪?」

男「はっ?」

猫「にゃぁ、だから妖怪と」

男「……妖怪、ですか」

猫「うむ」

男(ははっ、さっぱりわかんねぇ)

猫「ま、理解しなくても問題ないよ」

猫「それじゃあにゃっにゃにゃーん」

スタ スタ スタ……

男(尻尾が二つに分かれてる……あれか。猫又って奴かにゃ?)

男「……」

男(にゃってなんだよ、にゃって……)

男(取りあえず、帰ろ)

にゃっははははは

――夕方、自宅


男「喋る猫にあった訳だが」

狐娘「はい」

男「お前、妖怪なの」

狐娘「はい」

男「素直に頷いてんじゃねぇっ」ダンッ

狐娘「事実ですし……」

男「そこは隠しておくべきところと違いますのん!?」

狐娘「いえ、別に」

男「……俺がお前を怖がって、追い出したりするかもしれないだろ?」

狐娘「ハッ!?」

男「今頃気づくなやっ」

狐娘「でも、そんなこと、ありませんよね? ……ありません、よね」

男「ありえますね」

狐娘「えぇえええ……」ガクリ

男「……ま、それは一週間後の話だが」

狐娘「……主様って、結構素直じゃありませんよね」

男「……」ギロリ

狐娘「冗談です」

男「とにかく、一週間と言っちまったからな……約束は、守らないとな」

狐娘「……ふふっ」

男「……なんだよ、何がおかしいっ」

狐娘「いえいえ、おかしくなんかありませんよ」

狐娘「そうですよね。約束は守られるべき、ですよね」

どんどん続けて

――夜


男「んぐぉおお……すぴー」zzZ

狐娘「……」ハァ

狐娘(思ったより戻りが早い……もう少し、ですね)

狐娘(これなら、あと二日もあれば……)チラッ

男「……」zzZ

狐娘(罪悪感でも、感じているのでしょうか。今更?)

狐娘「……くだらない」

ドンドン防虫

――水曜日、朝、自宅


男「今日はバイトがあるから、帰りは遅くなる」

狐娘「えっ」

男「昼飯と晩飯、作り置きしといたから。そこの四角い箱――冷蔵庫から取り出して食べろ」

男「そこのレンジでチンしてもいい」

狐娘「れんじで、ちん?」

男「……分かった、ちょっとみてろ。実際に使うから」



――朝、学校


友「お前、何か顔色悪くねぇか」

男「……そうか。そう見えるか」

男(今朝から、なーんか気だるいというか、体が重いというか……)

男「風邪でもひいたかな……」

友「おいおい、僕にうつす前に保健室でもいってきたらどうだ」

男「そうだな……お前はともかく、バイト先の人たちにうつす訳にもいかないし」

男「ちょっと行ってくるか」ガタッ

男「……あ、れ…………?」フラッ

友「お、おいっ」ガシッ

友「……重症なんじゃねぇの?」

男「……悪い。ちょっと保健室まで肩を貸してくれ」

友「仕方ねーな……」

ほう

――保健室


保険医「少し熱があるようね

男「少しじゃないですか」

友「でも、さっき倒れそうになってただろ」

男「あれは……」

保険医「ちゃんとご飯食べてる?」

男「はい。しっかり三食食べてます」

保険医「睡眠は?」

男「10時には寝てますけど……」

保険医「ふむ」

友「バイトの疲れ、溜まってんじゃねぇの」

男「そうなのか……?」

保険医「少し横になっていけば?」

男「……そっすね。そうさせてもらいます」

ふむん

保険医「友くん。男くんの件、担任に伝えておいてもらえる?」

友「分かりました」

男「悪いな」

友「貸し一つな」

男「分かってる」

友「んじゃ」

ガララ……

男「じゃ、窓際の方のベッド、使わせてもらいます」

保険医「うん」

保険医「あっ。ちょっとしたら職員会議があるから行かないといけないの」

保険医「すぐ戻れると思うけど……何かあったらそこの電話使って、職員室の番号へコールね」

保険医「今は他に寝てる生徒もいないから」

男「はい」



保険医「じゃ、行ってくるね」

男「はい」

ガララ……

男「……ふぅ」

男(布団あったけぇなぁ……)

男(でも、保健室のベッドではなぜか眠れないんだよなぁ)

男(携帯でもいじって暇を――)チラッ

猫「……」
男「……」

男「寝よ」

猫「起きろ」

男「なんすか……俺に何か用事ですか」

猫「にゃぁ、大した用事じゃあない」

猫「様子を見に来たのさー」

男「……様子、ですか。何の?」

猫「お前の様子に決まってるだろー」

猫「案の定、体調を崩しているんだなー」

男「なんか、知ってるんですか」

猫「にゃぁ、害はないといっとくー」

猫「2日3日もすれば元気になるぞ」

男「……出来れば今すぐ元気になりたいところなんですけど」

猫「にゃぁ、それは無理」

猫「それじゃあにゃっにゃにゃーん」ダッ


男(なんだったんだ……)

男「……」

男(二日三日はこの状態が続くのなら……バイト先に休みの連絡、しとくか)

男(あぁ、給料減るなぁ)ガクリ

――昼休み、保健室


男「……」ゴロン

グゥー

男(腹減った)

男(……弁当は教室か。取りにいくか)

男「ちょっとバッグ取ってきます」

保険医「もう大丈夫なの?」

男「まぁ、ちょっと教室に行く程度ですし、大丈夫でしょう」

ガララ

友「おぉっ」

男「……なんだ、わざわざバッグ持って来てくれたのか」

友「弁当、入ってるんだろ。だから一応な」

男「何から何まで悪いな」

友「貸し二つ目な」

男「押し付けがましいような気もするが……まぁいいか」

友「もう体は良いのか?」

男「……微妙?」

友「ふぅん。このまま保健室で寝てるつもりだったら、いっそ早退でもしたらどうだ」

男「早退か……気が進まねぇな」

男(もし風邪だったら、あの狐にうつしちまう可能性も……あれ、動物に人間の風邪ってうつるのかな)

男(あっ、そもそも動物じゃなかったんだな)

友「ま、どっちにしてもだ。早く治せよな。じゃ、教室戻るわ」

男「おう」

ガララ……

保険医「良いお友達ね」

男「そうですかね」

保険医「もし早退するんだったら、早退届、書いといてね」

男「はい」

男(妖怪だとしたら、うつす心配もないのかな)

男(……今頃、あいつは何をしてるんだろ)

男「……」

男「俺、早退します」

――昼下がり、自宅前


男(特に倒れる事もなく帰ってこれたな。よかったよかった)

男(さて、と……)チャリン

男「……」ガチャリ

男「おーい、きつ、ね……」

狐娘「……」zzZ

男(……俺のベッド占領しやがって、こいつめ)

男「……」

男「おろ……?」フラッ

男(あっ、これヤバイ奴じゃね――)

バタンッ

狐娘「……んんっ」パチッ

狐娘「……」チラッ

狐娘「!」

狐娘「主様っ、あるじさまっ! しっかりしてください!」






――夕方、自宅


男「……うぅん…………」パチッ

狐娘「……」ホッ

男「……あれ、狐」ムクリ

狐娘「あぁ、まだ寝てなきゃダメですよっ」アセアセ

男「……」ゴロン

男(そうか。俺、倒れたんだったか)

男(イマイチ実感わかねぇけど……)

男「……お前が、看てくれてたのか?」

狐娘「……」コクリ

男「そうか……ありがとう」

狐娘「……」フルフル

狐娘「お礼なんて、やめてください」

男(なんだこの狐、やけに潮らしいな……)

狐娘「調子はどうですか」

男「……さぁ。わかんね」

グゥー

男「分かるのは、腹が減ったってことだけかな」

たまらん

>>46
背景と人物比がカオスなせいで騙し絵みたいな絵だな

狐娘「待っててください」スッ

スタ スタ……

男「おい……」ムクリ

男(まさか、料理でも振舞う気か?)

男(……なんか嫌な予感がする)スッ

スタ スタ……

狐娘「あっ、なに出歩いてるんですっ」ムッ

男「お前がなにをしでかすか心配でならないんだっつーの……」

狐娘「……ごめんなさい。でも、朝教わった『れんじでちん』くらいはできます、やってみせますよ」

男「それ、お前の分の晩飯だろうが」

狐娘「いいんです。私はほら、どっくふーどを食べますから」

男「……なんか、気味が悪いな」

狐娘「失礼なお人ですね」フン

男「わかった、妥協案を提示しよう」

狐娘「?」

男「半分こにしよう。俺、今はあんまり食欲がないんだ」

男(ま、いざとなったら手付かずの弁当もあるし)

狐娘「そんなことっ」

グゥー

狐娘「……今のは違います。虫の声です」

男「腹の虫じゃねーか」

狐娘「……」

男「……」ポリポリ

男(不本意ではあるが、仕方ないな……)

男「分かった……んじゃ、飼い主の――『主様』の命令だ」

狐娘「!」

男「一緒に飯を食え」

狐娘「……やっぱり、主様は優しい人です」

男「だからそういうこというのやめろ」

狐娘「ごめんなさい」

狐娘「ごめん、なさい……」

男(……今日の狐は、どこかおかしいぞ)

男(こうして泣きそうな顔になったり、辛そうな顔をしたり……)

男「……」ポム

狐娘「……なんですか、この頭上にのせられた手は」

男「いや。なんとなく」ナデナデ

狐娘「……」

男「さぁ、夕食にしようか」

狐娘「……はい」

――夜


男「……」

狐娘「……」

男「寝ないの」

狐娘「主様こそ」

男「俺は昼間、ぐっすり寝てたからな。眠くないんだよ」

男(正確には意識を失ってた、だが)

狐娘「そうですか」

狐娘「なら少し、お話しませんか?」

男「? いいけど」

狐娘「……主様は、どうして優しいのですか?」

男「あのな……何度も言わせんな。つか、それ質問じゃね?」

狐娘「私、それが不思議でなりません」

男(無視されたっ)

狐娘「捨てられた狐を拾う。それだけならまだ分かります」

狐娘「でも、私はただの狐じゃありません」

男(ただの狐じゃあない……妖怪、って線は大分濃厚になったな)

狐娘「そんな私に、今も尚優しくしてくれるのは、なぜですか?」

男「……」

男「……なんだかんだ、俺は甘いのかもなぁ」

狐娘「?」

男「昔、犬を飼ってたんだよね、俺」

狐娘「犬」

男「あぁ。でっかい犬。狐状態のお前なんか一飲みしちまいそうな、でっかいの」

狐娘「ほぇー……」

男「でもその犬、飼った時はすげー小さかった。そん時は可愛がられたんだ。両親も、姉も、散歩する役を取り合うくらいには可愛がられてた」

狐娘「……」

そろそろ佳境か
おかげで眠れんwww

男「でも、でっかくなったら、あら不思議。だーれも世話しなくなっちまった」

狐娘「どうしてですか?」

男「可愛くなくなったから、でかくなって余計に手間が掛かるようになったから」

男「そんなとこだろ」

狐娘「……無責任ですね」

男「あぁ、無責任な奴らだよ……俺も、その無責任な奴らだった」

男「俺、元々犬を飼う事には反対しててな。その時は、動物が嫌いだったから」

狐娘「どうして嫌いだったんですか?」

男「何考えてるのか、分からないから」

男「俺に分かる言葉を口にしてくれないと、俺は何もわかんねぇ」

男「なぜだか、子どもの頃はそれがすげー怖くてさ……」

狐娘「人間だって、何を考えているのか分かりませんよ」

狐娘「もちろん、私だって」

男「子どもの頃の話だ。今はそんなこと思っちゃいない」

男「でも、動物は本能に忠実だよな。きっと、何一つ嘘はついてないんだろう」

男「『お前ら』は例外みたいだけど」

狐娘「……」

男「話が脱線したな」

男「動物嫌いの俺も、当然犬の世話はしなかった」

男「家族はただ餌と水をやるだけ。それさえ面倒そうだった」

男「うるさく喚けば、バケツいっぱいの水をかけて黙らせて」

男「それでも黙らなければ、暴力だって振るってた」

狐娘「ヒドイ……」

男「……そんな様子をみて、同情でもしたんだろうな」

男「或いは、か弱きものを助ける俺カッケェ――みたいな。そんなとこだ」

男「両親や姉に代わって、俺が犬の世話をすることにした」

男「毎日散歩もした。餌もやった。たまに遊んだりもした」

男「すげー大変だった。こりゃ誰もやりたがらないのも頷ける」

男「でも、途中で投げ出したりはしなかった」

男「世話をしている間に、俺は動物が、犬が嫌いじゃなくなってたんだ……と、思う」

狐娘「……」

男「ある日、犬は元気がなくなった。動こうとしないし、吠えないし、ずっと座ったままだった」

男「俺が近くによると、鳴くんだよ。悲しそうな声で」

狐娘「……病、ですか?」

男「そうだろうな」

狐娘「だろうな、って……」

男「医者に見せるのは結構金が掛かるそうだ」

男「親に相談したら、スッパリ断られた。『そんな金はない』、ってね」

男「初めて親に反抗したね。殴ってやった。でも、殴り返された」

男「あれは痛かった。痛かったし、なぜだか怖かった。ガチガチ震えたよ」

男「当時子どもだった俺には金を出せる訳もなくて」

男「俺は犬が弱っていく様をただただ、毎日見続けるだけだったよ」

狐娘「……」

男「今だから分かることだけど、診察くらいはただでしてくれるところも多いそうだ」

男「治療費を分割払いにしてくれるところだってある」

男「無知は罪だよなぁ……親の言う事真に受けて、自分で調べようともしなかった」

狐娘「……」

男「それから数日後、犬はとうとう死んじまった」

男「コップがいっぱいになるんじゃないかってくらい泣いたね。泣いたし、憎んだね」

狐娘「……何を、憎んだんですか」

男「家族。あと、何もせず見てただけの自分」

狐娘「だから、なんですね」

男「……あれ以来、どうもな」

男「動物に限らず、困ってる奴がいたら何かしてやりたいと思うようになっちまった」

男「ま、思ってるだけで、何もしないことのほうが多いけどな」

男「捨てられる動物を見たときなんか、特に」

狐娘「でも、私は拾ってくださいました」

男「……ホント、なんでだろうな」

男「だけど、あんま拾ってきた感じはしないな……なにより、人型だし」

男「居候娘って感じ」

狐娘「間違ってはない、かもです……」

男「……お前が俺に優しい部分を感じるってんなら、これが原因だろう」

男「納得したか」

狐娘「ええ……話してくれて、ありがとうございます」

男「お礼言われるほどのことでもないんだが……」

狐娘「私は――いえ」

男「最後まで言えよ」

狐娘「今日はもう寝ますね。おやすみなさい」

男「……あぁ、おやすみ」

男(長話してたら、俺も眠く……)

男「……」

男「……」zzZ

狐娘「……」ムクリ

動物愛護法「ああん?」

――金曜日、朝、自宅


男「……」

男「……狐?」

男「……」

スタ スタ……

男「……」キョロキョロ

男(いない……)チラッ

男「……ん?」ペラッ


 お世話になりました


男「……」グシャッ

男「……」ハッ

男(なにしてんだ、俺)

男(……何、イラついてんだよ)

――朝、学校、教室


友「うーっす」

男「おう」

友「昨日はしっかり休んだか?」

男「あぁ。おかげでピンピンしてる」

男「ポカリ、さんきゅーな」

友「気にすんな。お前も僕が体調不良のとき、色々してくれたからな」

男「……そんなこともあったか?」

友「あった。だから、お互い様だ」

男「そか」

友「……なんか、浮かない顔だな」

男「そんなことはない。いつだって俺は教室で浮いてるぞ」

友「やめて。その言葉、心にクる」

男「冗談」

男「こんな冗句をいえるくらいには、俺は元気だぜ?」

友「そうかい……あっ、そうだ」

友「保健室の先生が、復帰したら保健室に寄るように、だとさ」

男「……なぜに」

友「なんだったけか……」

男「……分かった。とにかく、昼休みにでも行ってみる」

友「あぁ」

狐も可愛いがエキノコックスって名前すらかわいいよね
感染しても後悔はしない

――昼休み、保健室


男「先生」

保険医「あぁ、男くん」

保険医「もう体調の方が平気なの?」

男「ええ」

保険医「それはよかった」

男「友から、ここに寄るよういわれて来たんですけど……なにか用ですか?」

保険医「そうそう。その話ね」

保険医「この前書いてもらった早退届、失くしちゃって☆」

保険医「もう一度書いてくれる?」

男「……はぁ、分かりました」

男(そっちで勝手に書いちまえばいいのに……そういうのって社会ではダメなんだっけか)カリカリ

男(社会、めんどくせぇ)カリカリ

男「書き終わりました」

保険医「ごめんねぇ」
保険医「ついでにもひとつお願いしていいっ?」

男「……俺に出来る範囲であれば、まぁ」

保険医「だいじょぶだいじょぶ、ちょっとの間保健室に居てくれるだけでいいから」

男「……なんでですか?」

保険医「ほら、あのーあれ。その……お手洗いに、ちょっと」

男「あ、はい……分かりました」

保険医「お願いねー」

ガララ……

男(……狐、どこいったんだろうな)

男(散々居させてくれと頼んでたくせに、紙切れ一枚で姿を消しやがって)イライラ

男(あぁ、やっぱり俺イライラしてる。あいつにイライラしてるんだ)

男(勝手にいなくなったからか? ……違う)

男(紙切れ一枚で別れを済ませたことか? ……それも違う気がする)

男(……なににイラついてるんだろうな)

ガタッ

男「!?」ビクゥ

猫「よっ」

男「……また俺の様子を見にきたんですか」

猫「にゃあ、それは違う」

猫「九尾の狐がいなくなったことについて、知りたいかなって思って」

男「……」

男(九尾……そういやあいつの尻尾、9本だったな)

男「……どうして、いなくなったんでしょうか」

猫「あいつは、おみゃーから力を吸い取ってたんだよー」

男「はっ?」

猫「にゃぁ、だから急に体調を崩したのだー」

男「……はぁ。でも、どうやって、何の為に」

猫「にゃぁ、仮の主従契約を交わし、生活を共にする」

猫「それだけで力――活力は吸えるんだなー」

男「活力」

男(『みなぎってきますっ』ってのは、そういうこと、なのか……?)

男(つか、いつのまに仮契約なんてしたんだ)

猫「にゃぁ、狐は力が弱まっていたから、どこかで補給する必要があった」

男「……それが、たまたま通りがかった俺という訳ですか」

猫「にゃぁ、その通り」

猫「おみゃー、あのボロっちい神社を知っているだろー?」

男「……あの、狐の像がある神社の事なら」

猫「あの女狐は、あそこを守る妖怪なんだ」

猫「本来あいつはあの敷地からは出られない」

猫「だがにゃー、実際問題外に出ている」

男「もしかして、像の頭が欠けてた事に関係してます?」

猫「にゃぁ、あの像は狐を縛り付ける鎖みたいなもんだー」

男「……鎖」

猫「ああいう、土地やそこに居る土地神様を守る為にいる妖怪ってのは信仰を糧にするんだなー」

男「……」

猫「人々の信仰――思いと言い替えても良い。それがないと、あの狐は生きていられないんだよ」

猫「あんなボロっちい神社、誰もこないからなー」

男「それじゃあ、誰の思いもなくなったら、狐は死んでしまうんですか?」

猫「にゃぁ、死なない。でも、生きてもいられない」

男「……よくわかりません」

猫「限りなく存在が希薄になり、誰にも認識されなくなる」

猫「生きてはいるけど、誰の目にも、妖怪の目にも映らない」

男「そんなの、……そんなのっ」

猫「にゃぁ。死んでると同じ、かもしれないねー」

猫「今あの狐が見えてるのは、お前がいるからなんだぜー」

猫「にゃぁ、今のあいつは、一人の思いに支えられてる」

男「俺、あの神社がなにを祀ってるのかも知りませんよ。信仰のしようがありません」

猫「思いでは、あるんだろー?」

男「……まぁ。多少は」

猫「にゃぁ、それで十分なんだよ」

猫「心のどこかにあの場所を覚えている人がいる、それは力になるのだー」

男「はあ……そんなもんですか」

猫「そんなおみゃーから力を吸い取ったこと、後ろめたいんだろうなー」

猫「おみゃーを裏切った、と取れないこともないー」

男「だから、出て行ったんですか」

猫「にゃぁ、そこらへんは本人に聞いてみろー」

男(長い話をしておいてそれかよ……)

男「でも、どこにいるかが分からないんじゃあ聞こうにも……」

猫「あいつの行くところなんて、一つしかないだろー?」

猫「それじゃあにゃぁ、にゃんにゃんにゃーん」ダッ

男「……」

男(正直意味分からん)

男(思いの力がどうのこうの……現実味に欠けすぎてんだろ)

男「……」

ガララ……

保険医「いやー待たせちゃったかな」

男「先生。俺、早退します」

ガララ……

保険医「へっ?」

保険医「えぇえ……」

――神社


男「……」キョロキョロ

男(いない……)

男(……『景色、綺麗ですよ』)

男(裏手か?)

ザッ ザッ ザッ……


――神社裏



狐娘「……」

ザッ ザッ ザッ……

狐娘「……?」チラッ

狐娘「!」

男「よっ」

狐娘「……」

男「少し、話をしよう」

狐娘「……」フルフル

男「……主様の命令、でもか」

狐娘「……」フルフル

男「……」ポリポリ

男「これだけは言っておく」

狐娘「……」

男「約束は守る」

男「……それだけ、言いたかった」

男「それじゃあな」

ザッ ザッ ザッ……

狐娘(……『約束は守る』、ですか)

狐娘(重いです、主様。とても、とても重いです……)

――夜、自宅前


男(なんとも言えないこのモヤモヤを解消すべく、バイトに打ち込んでいたのでした)

男(ちっちぇ男だな、俺……)

ガチャリ

猫娘「よっ」

バタン

男「……」

ガチャリ

猫娘「よっ」

バタン

男「……」

ガチャリ
バタン

猫娘「にゃぁ、反応も待たずに閉めるなー」

にゃあ

男「……」

ガチャリ

男「もしかして、あの猫ですか?」

猫娘「にゃぁ、その通り」

男「どうやって入ったんですか」

猫娘「通りがかりの人に、ここの人の彼女ですと言ってやったら、すんなり開けてくれたぞ」

男「……ちょっとお待ちを」

バタン

スタ スタ……

ドンドンドン

ガチャ

友「はい……おっ、なんだ男ぐえへぇっ!?」

男「ワンパンしなきゃ気がすまないんだ」

友「ワンパンした後の台詞じゃねーしっ」

男「誰かも分からない奴を俺ん家に入れるんじゃねぇー!!」

友「……お前の彼女じゃねぇの?」

男「お前は俺を貧乳猫耳和装ロリを愛するペド野郎と認識してたの!? うわーんショック!!」

友「……なんか、ごめん」

男「合鍵、返せよ」

友「えっ」

男「大体、なんで合鍵なんて持ってるんだよ。おかしいだろ」

友「だったらお前も僕の合鍵渡せや」

男「あれは、お前が体調崩した時の為に、いつでもかけつけられるようにって作ったんだろうが」

友「その台詞、そのまま返すぜ」

男「……」

友「……」

男「水に流そう」

友「あぁ、流そう。綺麗サッパリな」

バタン

スタ スタ……

ガチャ

男「ふぅ」

猫娘「にゃぁ。あれか、『ほも』とかいう奴か」

男「どうしてここに来たんです」

猫娘(否定しないのかー)

猫娘「いやにゃー、どうなったのかと思って」

男「……さぁ。どうなるんでしょう」

男「正直、俺はどうなって欲しいのかも曖昧なんです」

男「戻ってきて欲しいのか。それとも、このままどこか遠いところへ行って欲しいのか」

猫娘「にゃぁ」

男「……でも、消えて欲しくはないんです」

猫娘「にゃぁーん」

男「俺の話、聞いてますか」

猫娘「にゃぁ」

男「……」

猫娘「勝手な希望を言わせてもらうとなー?」

男「……?」

猫娘「にゃぁ、あの土地に生えてるマタタビが好きなんだよ」

猫娘「でも、狐の力が弱まるにつれて、土地は荒れていく」

男「マタタビが育たなくなる、と?」

猫娘「だから、おみゃーらがまた同棲でもしてくれりゃあいいかなーって」

男「同棲て……」

男「一緒にいたら、土地は荒れないんですか?」

猫娘「にゃぁ、その通り。信仰してくれる奴が傍にいるっつーのは、中々力が湧いてくるのだー」

男「敷地内にいないといけないんじゃないんですか」

猫娘「にゃぁ、それは狐が月に一度、あそこに戻れば解決なんだなー」

猫娘「像が役割を成していない今、あいつは自由だからのー」

男「……はぁ、そんなもんですか」

猫娘「狐の活力は既に十分だろうし、これまでみたいに体調を崩すことはないぞー」

男「……そすか」

猫娘「悪い条件じゃあないと思うんだけどー」

男「さっきも言ったとおり、俺にはこの先どう転ぶのか分かりませんよ」

猫娘「にゃぁ、転ぶのか分からないなら、転ばせればいいじゃなーい」

男「と、いいますと」

猫娘「犯す」

男「わぁああああああああああああ!?」

猫娘「耳が痛い」

男「そんなこと出来る訳にゃー!!」

男「大体、なんでそんな話になるんです……」

猫娘「おみゃーの気持ちをダイレクトに伝えるもっとも簡単な方法だ」

男「伝える方法なら他に幾らでもありますからっ」

猫娘「にゃぁ。あるのなら、それで伝えたらいい」

猫娘「『約束は守る』の一言だけで全てが伝わる訳がなーい」

男「見てたのかよっ!」

猫娘「あの狐もおみゃーと同じくらい、意固地なんだぜー」

男「昨日今日あった人に、俺の何が分かるんですか」

猫娘「にゃぁ。今この場にいることが、意固地である証明だ」

猫娘「欲しいもんがあったら、その手で掴めー」

男「……」

男「そういうのは、よくない。本人の同意もなくそういうことは……」

猫娘「鶏肉は好きだが、チキンは嫌いだなー」

男「チキンとか臆病とか、そういう問題じゃあないと思うんですけど」

猫娘「惚れてるんだろー?」

男「そんなんじゃありませんよ」

猫娘「キッパリ言い切るんだな」

男「……ただ、こっちの意見も聞かずに出て行ったってのが癇に障る。それだけですよ」

男(そうだ。勝手に結論を出したこと。それにイライラしていたんだな、俺)

猫娘「……だ、そうだにゃー」

男「……えっ?」

そんなに言うなら猫娘を犯してやれば

猫娘「でてこい狐ー」

スッ

狐「……」

男「えっ……えっ」

男「えっ」

猫娘「驚きすぎだろー」ビシィ

男「いやいやい、やいやいやいや、いやいやい」

猫娘「にゃぁ、俳句の解釈ってのは受け手に依存するんだぜー」

猫娘「短い言葉だもの、そこから思い描く情景なんて千差万別」

猫娘「俳人が何を思ひ書き連ねたのかなんて、俳人が明かさないとわかんねー」

男「……分かりましたよ、言えばいいんでしょ言えばっ!」

男「おい狐」ギロリ

狐「!?」ビクッ

ガシッ

狐「~~っ!!」バタバタ

男「いいか、よく聞けよアホ狐」

狐「……っ」ブルブル

男「……」

男「…………」

男「……………………」

狐「……?」チラッ

男(言え、言え、言え、言え、言え、言え言え言え言え言え言え言え言え)

男「こっ」

猫娘「……こっ?」

くぅ~④

男「こここここここ」

猫娘「……にゃぁ、鶏かお前ー」

狐「……くすっ――ハッ!?」

狐「……」

男「……ここ。ここに、居れば……いいじゃない。居たら、どうなんです」

狐「……」

男「もう活力とやらを吸う必要もないんだろう? なら、何も問題ないじゃんか」

狐「……でも私は、主様を裏――」

男「――最後まで、聞け。黙って聞け。異論は認めない」

狐「……」

狐「……」コクリ

体で払ってもらおうかってやつですね

男「大体の事情はそこの猫から聞いた」

男「俺は、ちっとも気にしちゃあいない」

男「全部、全部だ。お前が俺から無断で力? を吸い取ってた件も含めて、ぜぇんぶどうでもいい」

男「ただ一つ、看過できない点はだな」

男「お前が、勝手に結論出して、勝手に納得して、勝手に出てったことだ」

狐(それ、一つじゃないのでは……)

男「なんだか知らないうちに、仮の主従契約とやらが交わされてるみたいだけど……」

男「仮とはいえ、俺は今、お前の飼い主――主様だ」

男「主様の意見も聞かずにどこかへ行こうなんざ、甘ぇ。マッ○スコーヒーより甘ぇ」

男「つーことで、俺の意見を言う」

男「俺は約束を守る男だ。どんな約束であれ、一度交わしたのであれば、守る」

男「お前は確か、こう言ってたな? 『約束は守られるべき』って」

狐「……」

男「お前を拾った次の日、お前は『責任とってくださいっ』と言ったな」

男「対して俺はこう返答した。『一週間の内に、俺がその気になったらな』、と」

狐「そんなの、約束じゃないです……ただの揚げ足取りじゃないですかっ」

男「……うるせ、そんなの百も承知だっ!」

男「俺は、責任を取ってもいい気になった。責任持って、世話してやる気になった」

男「だからここにいろ。そうだな、あと50年ばかりここにいろ」

男「――以上、俺の意見でしたっ」

男(あぁ、顔あっちぃ。すげー恥ずかしい事口走っちまったぁああぁあ……)

男(ざっと思い返しても言ってる事意味わかんねーし、こんなので、誰が説得できんだよぉ……)

猫娘「だから犯せって言ったにゃ」

狐「……」

狐「あの、そろそろ下ろしてもらえませんか」

男「あっ」

男「ごめんっ」スッ

狐「力強く掴みすぎです」

男「……ごめん」

狐「全くまったく……」

男「……」

狐「とても、魅力的な提案ですね」

男「!」

狐「でも、その提案を呑む訳にはいきません」

男「おい、そこは呑めよ!」

狐「……こんな都合のいい結末を迎えていいはずがありません」

狐「私は、主様の気持ちを弄びました」

クライマックスコーヒー

狐「主様に付け入り、力を吸い取りました。無断で、勝手に出て行きました」

狐「主様は許すと言って下さいました。すごく……すごく嬉しかったです」

狐「きっと、主様の元にいれば、素晴らしい日々を送ることが出来るでしょうね」

狐「けれど、それはいけません。何のお咎めもなしに、そんな幸せを得るのはダメです」

猫娘「にゃぁあ……罰でも欲しいのかー?」ファア

猫娘(ねむっ……)

狐「……でないと、私は胸を張って主様の隣を歩けません」

男「……」

猫娘「なら、にゃぁが罰をやろー」

男「えっ」

猫娘「一ヶ月やる。少しの間だけでいいから、あのボロっちい神社を人で埋め尽くせー」

狐「……人で埋め尽くす」

男「そんなの、どうやって……」

猫娘「おみゃーは口を出すな。手も貸すな。この罰――課題は狐一人のものなんだからなー」

狐「出来なかった場合は」

猫娘「にゃぁ、こいつで斬り捨てる」チャキッ

男(懐に小刀なんて仕込んでたのか……こわっ)

男「罰重くないですか。出来なかったら死って――」

チャキッ

男「――っ!?」

猫娘「口を出すなって言った筈だぞー」

男「……でもっ」

狐「心配しないでください。失敗しなければいいんですよ」

狐「大丈夫ですって」

男「……」

猫娘「手を貸したら、おみゃーも斬り捨てるからなー」

男「……はい」

猫急にこえーよwwwww

猫娘「話は決まった。それじゃあにゃぁ、にゃんにゃーんにゃんっ」ダッ


男「……どうするんだ、狐」

狐「なんとかしてみせます」

男「具体的な策はあるのか」

狐「……大丈夫です」

狐「私、頑張りますからっ」グッ

狐「では、また一ヵ月後にお会いしましょう」

スタ スタ スタ……

男「……」

男(俺には、待ってることしか出来ないのかな)

男「……」

男(そんな訳あるか。手を貸さなければいいんだろ? だったら幾らでも方法は……)

男「幾らでも、ねぇよなぁ……」ハァ

――日曜日、昼、神社、幣殿


狐娘「ハァ……」

狐娘(あんなことを言ってしまいましたが、ちっとも良い考えは浮かびません)

狐娘(こんな寂れた場所に、一体だれが来るというのでしょうか)

狐娘(……でも、頑張らないと)

狐娘(この課題をこなしたら、主様、撫でてくれるかな)

狐娘「……」

狐娘(一体何を考えてるんですか私は……)

狐娘(これは、私が納得する為の罰なのに……)

狐娘「……ハァ」

――同時刻、自宅


男「……」ゴロン

男「……」ゴロン

男「……」ゴロン

男(バイト終わってから徹夜して、なーんも思いつかなかった……)

男「俺ってバカなんだなぁ……あぁああ……」

男「……」

男(そういや、あいつ、飯はどうしてるんだろ)

男(……差し入れするくらいなら、手を貸すとは言わないよな?)

男(よしっ、稲荷寿司を持っていってやろう。そうしよう)ムクリ

男(猫が言うには、あいつ、今は神社に住んでるらしいな)

男(ま、元々の住処だし、住んでるというよりは戻ったというべきか)

男(さてと、行くか)

俺はただ・・・狐娘とのほのぼの系日常がみたいだけなのに・・・

――30分後、神社

男「……」キョロキョロ

男(また裏手か?)


――神社、本殿裏


狐娘「あっ」

男「……よう」

男「お前、その着物どうしたんだ」

狐娘「これは私の普段着です」

男「へぇ……似合ってるな」

狐娘「そうですか? えへへ――って、そうじゃないっ」

狐娘「なんでここにいるんですかっ!」

男「これを持ってきたんだ」ガサッ

狐娘「ややっ、それは……稲荷寿司っ!」キラキラ

狐娘「でも、手は貸すなって猫さんが……」

紫煙

クソッ・・・これから受験だ・・・・後でまとめて見るか・・・

俺はダイドーブレンドコーヒー派だわ

支援

男「こんなの、手を貸すうちに入らないだろ」

男「あの猫が今も尚俺を斬り捨てに現れないのがその証拠だ」

狐娘「……でも」

男「一緒に食べよう。こんな絶景の場所で食う稲荷寿司は、きっと格段に美味いぞ」

狐娘「…………はい」

男「ほれ」ガサッ

狐娘「いただきます……」ヒョイ

男「いただきます」ヒョイ

狐娘「……」パクッ

男「……」パクッ

狐娘「……ん~♪」

男(いつものことながら、良い顔するなぁ)モグモグ

狐娘「ありがとうございます」

男「……飼い主の役目、だからな」

狐娘「そうですね」クスッ

男「……」

男(なんかバカにされてる気がする……)

男「例の課題、なんとかなりそうか?」

狐娘「……今のところは、なんとも」フルフル

男「……」

狐娘「大丈夫です、まだあと29日もありますから」

男「そっか」

男(頑張れ、なんて言うのはどうなんだろう)

男(……よくよく考えてみると、この罰って、俺といる為に課したものなんだよな)

男(つまり、そうまでしてでも俺と一緒に居たいってこと、なんだよな)

男「……」

男(あっれぇ!? すげぇ嬉しいっ! うわっ、なんだこれ。なんだこれっ!!)

狐娘「……主様?」キョトン

男「わぁあぁあああああ!!」ポロッ

男「あっ……稲荷寿司が」

狐娘「どうしたんですか? 心なしか、顔が赤いような……」

男「見るなっ、見るんじゃねぇっ! 主様権限発動!!」アセアセ

狐娘「?? はい……そこまでいうのなら、見ません」クルッ

男(落ち着け。落ち着こうぜ。相手は狐だぜ。妖怪なんだぜ)

男(いくら見た目が可愛らしい女の子でも、あれは狐だ)

男(……『惚れてるんだろー?』)

男(えっ、マジか。俺、いつの間にかこいつのラブしちゃってるのか、えっ、マジか。俺――)

男(――おっと、思考が無限ループするとこだった)

男「……」チラッ

狐娘「はむっ」モグモグ

狐娘「んん~♪」

男(あぁ、可愛い顔しやがってからに……そんなの見たら、俺……俺……)

男「ほあぁあぁああああああああああ!!」

狐娘「!?」ビクッ

狐娘「! んんー、んんんんんーー!!」トントン

男「! 詰まったのか、今すぐ水を……」ガサゴソ

男(買ってきてて良かった伊○衛門お買い得サイズ!)

もふもふしたい。

男「ほれ、これ!」スッ

狐娘「ごくっ……ごくっ……ぷはぁああ……」

狐娘「いきなり大声出さないでくださいよ……げほっ、げほっ」

男「ご、ごめん」

男(あぁ、やべぇ。ドキが宗重してる。やべぇよ。キュンキュンしてね? してるよね?)

狐娘「これ、返しますね」スッ

男「あ、あぁ……あっ」

狐娘「?」

男(あれ? 俺、確かここへ来る前に一口飲んだよな)

男(つまり、……)チラッ

狐娘「……なんだか今日の主様、少し変ですよ?」

マックスコーヒー美味しいけど名古屋じゃ500㍉ペットボトルがたまに売ってるだけだ・・・・・・・・・・・・・・

しえ

男(あの唇と……)

男「って、初心な思春期真っ盛りの高校生男児かーいっ!!」ガンガン

狐娘「主様!? 塀に頭をぶつけるのは良くないですよ、怪我しちゃいますよっ!」アセアセ

男「うわぁぁああぁあぁあああ!!」ガンガン

狐娘「主様ー!!」

――夜、自宅


男「……」ゴロン

男「……」ゴロン

男(俺、恋しちゃったのかなぁ……)

男(そっち方面に意識を向けて以来、どうも胸がドキドキする)

男(……冷静になってみると、ドキが宗重ってなんだよ。バカか)

男(ハァ。恋した相手が、よりによって狐とは……人外じゃねーかよ)

男(でも、見た目は女の子なんだよなぁ……人型の時だけだが)

男(どっちが本当の姿なんだろうな)

男(あいつ、人型の方が楽って言ってたな。なら、人型の方が本当の狐なのかな)

男(……どっちでもいいか)

男(どちらにしても、俺はきっと好きなんだろう)

男(好きに、なっちゃったんだろうな)

男「……」

男「~~っ!!」バタバタバタ

神秘的な出来事なのに気怠い感じで面倒くさそうな主人公がうぜえ

――月曜日、朝、学校、教室

男「あぁ……」ゲッソリ

友「よぉ、男……少し見ない間に、随分と顔の色合い蒼くなったなぁオイ。エディットに失敗したか」

男「……考え事してて、眠れなくてな」
男「なぁ、友」

友「んん?」

男「異種間の恋愛って成立すると思うか?」

友「保健室行こう」ガシッ

男「真面目に聞いてよぉおおおん!!」ブワッ

友「泣きそうな目でこっち見んな気色悪いっ! 声もきめぇっ!」

男「……真面目に答えてくれよ、頼むからさぁ」ショボーン

友「……そもそも異種ってなんだ。犬とか猫とか、そういう動物のことじゃないよな」

男「……」

友「精神科に行こう」

男「違うんだって、例えばの話、例え話っ!」

友(例え話でも、その話題はどうよ……)

男「金曜の猫耳和装少女みたいなのを思い浮かべてくれたらいい」

友「あれは可愛かったな……あの子、お前の従兄弟かなんか?」

男「あ? ……あぁあー、そう。連絡も寄越さず急に来るもんだから、変な誤解を生んじまったな」

友「まぁ冷静になってみれば、あんな幼い子がお前の彼女な訳ないもんなぁ」

男「当たり前だろ」

男「で、話を戻すけど」

友「えー……戻すの」

男「どう思う?」

友「あの子は人間だろうが。どう思うも何もねぇよ」

男「ああいう動物がいると仮定してくれ」

友「お前必死すぎるだろ。マジで頭やばいんじゃ」

男「……」

友「いや、黙らないでよ」

男「……」

友「わぁーったわぁーった、答える、答えますよ」

友「お互いが納得してれば、それでいいんじゃないの」

男「そうなのか?」

友「あぁ、多分そう。互いが互いのことを好き――相思相愛だってんなら、何の問題もないんじゃね」

男「そうかっ」

友(いやまぁ大問題ではあるが……そう言っておこう)

男「ありがとうなぁ……」

友「……」

友(まぁ、人にはこういう他人の理解の範疇を超えた趣味の一つや二つ――)

友(――いや、それでも異種間恋愛はないな)

――2限


エー エー エーット アレ コウダッケ


男「……」ホケー

男(なんであんな事聞いたんだろ、バカか俺)

男(……でも、互いが好きなら、いいのかもな)

男(狐が俺の事を好きだと決まった訳じゃあないけど)

男(……課題をクリアしないと、あいつ、殺されちゃうんだよな)

男(それだけは避けたい)

男(なにか、なにか良い方法はないものか……)

――同時刻、神社、幣殿前

狐娘「ハァ……」

狐娘(最近、溜息を吐く回数が増えた気がします)
狐娘(こんな場所に、どうやって人を呼び込めばいいのでしょうか……)

狐娘(……火事でも起こす?)

狐娘(いやいや、それは本末転倒すぎます)

狐娘(きっとこの罰は、この神社の注目度を上げることに繋がりますし)

狐娘(頑張らないとっ)

狐娘(……頑張らないとなぁ)

狐娘「ハァ……」

狐娘(何をどう頑張ったらいいのか、サッパリですよ……)



猫「……」

猫(にゃぁ、苦戦してるみたいだなー)

猫(さっさとクリアして欲しいもんだー)

猫(早くマタタビが欲しい)

狐さんの、見た目は何歳くらいなんだろう

――放課後、帰路


スタ スタ スタ……

男「ふむぅ……」

男(人を集めるだけってんなら、幾つか方法はあるんだよな)

男(1つ、敷地内で火事を起こす。2つ、敷地内で人を殺す。3つ、敷地内で自殺する)

男(4つ、神社で人の死体を発見したと通報をする。5つ、曰くつき物件として宣伝する)

男(どれもまともな方法じゃねぇな……)

男(この罰はきっと、あの神社の知名度を上げることにも一役買ってくれるだろうし)

男(そんなマイナスイメージを貼り付けるのはよろしくない)

男(また狐の力が弱まりかねない……多分。詳しくないから知らんけど)

男(んんんん……)チラッ

男「……?」ピタッ

男「……」ジーッ

男(町内清掃ボランティアのポスターか……)

男(……これ、使えるか?)

男(町内なら、あの神社だって含まれる)

男(ただ、『人で埋め尽くす』って条件がどの程度で満たされるのかが分からん)

男(その辺、あの猫はどういう風に考えてるんだろう)

男(あとで聞いてみるか)

男「……」

スタ スタ スタ……

男(一番手っ取り早くて、尚且つプラスになる方法っつったら……)

男(……あそこで祭事でもあったらよかったんだけどな)

男(そしたら、出店とか出してもらってさ)

男(然して広くもない町だ。きっと人は集まるだろう)

男(ま、現実的じゃあないな。近々イベントがある訳でも――)

男「……節分祭があったな」

男(でも、あの神社で祭りを開催してくれるかっていったら……どうだろう)

男(そういうのって、町内会で決めてるんだっけか)

男(……行ってみるか?)

男(まぁ普通に考えて、いきなり節分祭の会場をあの神社に変えることは無理だろうが……)

男(でも、ボランティアの件もついで聞けるだろうし……うん、行くか。明日あたり)

男「……」

男(これ、『手を貸す』の範疇に入ってるよなぁ……)

男(いや、聞くだけだから。聞くだけ。大丈夫だろ。うん)

スタ スタ スタ……

狐娘に触らせてもらえるんなら喜んでいきますよ、はい

――火曜日、放課後、町内会事務所前

男「……」

男(なんか、緊張するな……ちょっと聞くだけなんだが)

爺「なんか用かい?」

男「!?」ビクッ

男「は、はいっ、あの、俺、いや私は○○学園高等部二年の――」

爺「へぇ。あの学園のか。懐かしいなぁ、はははっ」

男「……今日は、聞きたいことがあって参りました」

男(ところどころ言葉遣いが怪しいが……このまま突っ走ってしまおう)

爺「まぁまぁ、立ち話もなんだ。あがんな」

男「えっ、そんな」

爺「まぁまぁまぁまぁ」



爺「ほれ。熱いから気をつけろ」コトン

男「ありがとうございます……」

男(ちょっと質問して帰るはずが、なぜこんなことにっ)

婆「あらー、お客さん?」

男「どうも……」ペコリ

婆「ゆっくりしていきんさいねー」

男「はぁ……」ペコリ

男(――って、いかんいかん。ペースを乱すな、俺)

男「ごほん――では、質問してもよろしいでしょうか」

爺「どんとこい」

男「……あの神社、長ったらしい階段の上にある神社をご存知ですか?」

爺「あぁ、ミケガミ神社なぁ。知ってるとも」

男(ミケガミ神社っていうのか。知らなかった)

爺「有名な場所だったんだけどなぁ……今じゃあのザマだ」

男「何かあったんですか?」

しえ

爺「7年くらい前かなぁ。あそこの宮司が亡くなって、その跡継ぎもすぐに亡くなっちまった」

爺「そのまた跡継ぎもなくなって……そのうち継ぐ奴はだんれもいなくなっちまった。怖いだろ?」

男(こわっ、怖すぎるだろそれっ)

男「……宮司って、なんですか」

爺「神社を管理する人のことだぁよ」

男「あぁ、なるほど」

爺「今は町内会で管理することになってんだけども、そういう、アレ。アレだよ」

男「……オカルト、ですか?」

爺「そうそうそう。おめー頭良いなぁ」

男(あんまり嬉しくねぇ)

爺「そういうおかると? を怖がっちまって、みんなあの神社に立ち寄ろうとしねぇんだ」

男「それって結構重大な問題なんじゃ……」

爺「みーんな黙認してる。疑問にすら思ってねぇんだ」

これは宮司になるパターンか?

爺「正直、俺もこえぇんだよなぁ」

男「……」

男(既に曰くつきだったのか……)

男(もしかして、俺だけか。それを知らなかったの)

男(……俺一人だから。俺があの場所を忘れたら、狐は消える?)

男「……」

男「あのっ、俺、来週末にボランティアがあるってポスターを見ました」

爺「おっ、参加してくれんのか?」

男「参加します。その代わり、お願いがあります」

爺「んん?」

男「ミケガミ神社の清掃をしたいんです」

爺「……さっきも言っただろ」

しー

男「あそこは、俺にとって大切な場所なんです……思い出の場所なんです」


狐『コーン』

男『うぉおおっ……狐だっ、狐がいるっ』

狐『……』ダッ

男『あっ、待てぇええ!』ダッ


男「確かに、その話を聞いて気味が悪いとは思いました」

男「正直、ちょっぴり怖いです」

男「でも、あそこが大切な場所だということに変わりはありませんし、揺るぎません」

男「お願いします、手を貸して下さい」スッ

爺「おいおい、頭を上げろよ……」

スタ スタ……

婆「あら……」

男「お願いしますっ!」

爺「婆さんも言ってやってくれよ。土下座なんてやめろって」

婆「……どういうことなの」

男「ミケガミ神社の清掃をしたいんです。来週末のボランティアで」

婆「あらまぁ……でも、どうして?」

男「あそこが、俺の思い出の場所だからです」

男「俺だけじゃありません。少なくとも、もう一人います」

男「そいつと俺の、大切な場所だから……あのまま埃に塗れて、寂れて、朽ちていく様をみるのは耐えられません」

男「お願いしますっ」スッ

婆「……私たちに頭を下げても、なんにもならないよ」

爺「そうだ。ワシらがオーケーを出しても、他の町民がな」

男「だったら、他の町民の了承を得ればいいんですね」

男「町内会に所属してる人の住所、教えてください」

爺「知ってどうするんだ」

男「頼んで回るに決まってるじゃないですか」

婆「……」

爺「……」

男「教えてください、お願いします」スッ

爺「……さっきから、頭を下げてばかりだな、お前は」ポリポリ

爺「町民の殆どが町内会に入ってるんだ。全部の家を回るといっても過言じゃあないぞ」

男「然して広くもないこの町を回る事くらい、小学生のガキにだって出来ます」

婆「いいんじゃありませんか、爺さん」

爺「婆さん……」

爺「……」ワシャワシャ

爺「……ちょっと待ってろ」スッ

スタ スタ スタ……

婆「よかったわね」

男「……えっ」

婆「あれはオーケーってことよ」

男「……!」

婆「私もそろそろ、ちゃんとしないといけないと思ってたのよねぇ」

男「……そう、なんですか?」

婆「ミケガミ神社には私も思い入れがあるの

婆「きっと、私と同じような人が少なからずいると思うのよ」

男「……」

婆「今回の件、私も協力させてもらうわ」

男「本当ですかっ! ありがとうございます!」

婆「でも、あまり期待はしないでね」

婆「私に出来るのは、井戸端会議の中で、その件を織り込むくらいだもの」

男「いえ……一人でも協力者がいるのは心強いです」

さるよけ猛烈支援

スタ スタ スタ……

爺「とりあえず、役職についてる奴をリストアップしておいた」

爺「全員分のをやるわけにはいかんからな」
爺「もってけ」ピラッ

男「ありがとうございますっ」ペコリ

爺「もう頭は下げるな。価値も一緒に下がるぞ」

男「……え?」

爺「そう簡単にヘコヘコ頭を下げていいもんじゃねぇってことだ、覚えとけ若造」

男「……すみま――いえ、はい。肝に銘じておきます」

婆「私、この子に協力するから」

爺「えっ」

婆「あなたも強力、するのよね?」

爺「えっ」

婆「……」
爺「はい」


――町内会事務所前

男「本日は貴重な時間を……えー……」

爺「堅っ苦しい言葉、やめろ」

男「今日は、ありがとうございましたっ」

婆「がんばってね。応援してるから」

男「はいっ」

男「それでは、失礼します」

スタ スタ スタ……

男(なんだか、ノリで色々口走っちまった)

男(朽ちていく様を見るのは耐えられない――なんて、ホントはそんなこと思ってないクセに)

男(……思い出の場所であることは事実だけどさ)

男(あっ、節分祭の件、聞いてなかった……まぁいいか。いい情報も入ったし)

シュタッ

猫「にゃんにゃにゃーん」

男「……」

猫「おみゃー、分かってるんだろうなー?」

男「……何のことだか分かりませんね」

猫「にゃぁ、いい度胸だー」

男「これは、狐の為にやったことじゃありませんからね」

男「ただ俺が、俺の為にあの場所を綺麗にしたいってだけなんですよ」

男「たまたま俺の目的が、あの場所の清掃だっただけ」

男「狐を助けようとしている訳じゃありません」

男「……それでも斬ろうってんなら、勝手にすればいい」

男「もちろん、ただで殺されるつもりはありませんけど」ギロリ

猫「やめとけやめとけー、たかが人間がにゃぁに勝てるわけがないだろー」

男「……ですよねー」
男「でも、これってあなたにとっても都合がいいと思うんですよ」

猫「?」

>>269
本当にすごくどうでもいいがオカルトって言葉で頭がいいって言ってんのにこの爺さんリストアップって言葉は普通に使うんだな

男「あの敷地に生えるマタタビが好きなんでしょう?」

男「だったら課題はクリアできるに越した事はない」

男「多分、あいつだけじゃあこの課題はこなせません」

男「でも、一人と一匹だったら――二人だったら、なんとかなるかもしれません」

猫「にゃぁ、それをあの狐は望んでいるかなー」

男「……俺はあいつと、堂々と一緒にいたいんです」

男「これは元々、俺と狐が、胸を張って隣を歩けるようになる為の罰です」

男「歩きたいのは狐だけじゃない。俺だって、胸を張って隣を歩きたい」

男「あいつ一人が頑張ってこの罰を乗り越えて、俺の元に戻ってきたとしても、俺が釈然としないんですよ」

男「……俺だって、この罰を受ける資格がある」

猫「むちゃくちゃだなーおみゃーは」

猫「自分がなにを言ってるのかわかってんのかー?」

猫「惚気話なら狐に言えよなー」

男「……」

男「……う、うるさいっ///」

猫「にゃぁ、つまりおみゃーは、あいつのこれまでの頑張りを無駄にするって言うんだなー?」

男「……えっ?」

猫「そうだろー? あいつ一人で罰を乗り越えられないと決め付けたんだ」

猫「それって、信じてないってことだよなー」

猫「頼りないから。仕方ないから、俺が代わりにやってやる」

猫「狐の頑張りを、思いを踏み躙るのと同義だー」

男「……そんなつもりじゃ」

猫「なら尚のこと性質が悪い」

猫「もう一度、よぉく考えてみるんだなー」

猫「それじゃあにゃぁーんにゃーんにゃぁん」ダッ


男「……そんなつもりじゃ、…………」


――夕方、自宅


男「だぁー……疲れた」

男「ハァ……」ゴロン

男(……あの猫の言うとおりだ)

男(俺が頑張って、その結果条件をクリアしたって、あいつは喜ばない)

男(これは、あいつが納得する為の、俺といる為の罰)

男(分かってるようで、分かってなかった……)

男(あいつの頑張りを、踏み躙っていいはずがないんだ)

男(……でも、なんとかしてやりたい。手伝いがしたい)

男(それは、あいつの為にならないんだろうか)

男(余計なお世話で、……信じていない、ってことになるのかな)

男「……」

男「わっかんねぇ……」

男(このままなにもせず、ただじっと結果を待てばいいのか?)

男(それが、冴えたやり方って奴なのか?)

男「そんなわけ、ない」

男(何もしないことは正解かもしれないけど、俺にとっては違う)

男「……」

ピラッ

男(さっそくこの紙は、不要になりそうだ)

ガチャ

友「おーっす」

男「……友か」ゴロン

友「ちょっと米分けてくんね? また炊くの忘れちゃってさぁ」

男「……勝手に持ってけ」

友「今日は一段とブルーだな」
男「……ちょっと、猫に説教されちゃって」

友「はっ?」

男「いや、今のは忘れてくれ」

友「おう……」

男「……なぁ」

友「ん」

男「お前は、分からない事があったらどうする?」

友「答えを見る」

男「……そういうんじゃなくて」
男「答えの載ってない問題集でも思い浮かべてくれ」

友「頭のいい奴、もしくはその教科の先生に聞く」
男「……」

友「なんだよ、まだ不満なのか?」

男「頭のいい奴に聞いても、先生に聞いても分からなかった、どうする?」

友「諦める」

男「その選択肢はなしの方向で」

Que interesante

友「じゃあ……誰かと一緒に考える、とか」

男「一緒に考える……」

友「三人寄れば真珠の知恵って言うだろ、あれだよ」

男「文殊な」

友「あらいやだ、恥ずかしい」

男「……一緒に考えても、いいのかな」

友「禁止されてなければいいんじゃね?」

男「……考えてくれるのかな」

友「何が言いたいのか分からないが、友の頼みなら考えてくれるだろ、多分」

男「友達の頼みか」

男(……飼い主と飼い狐だけどな)

男(話して、みようか。今悩んでることを全部、打ち明けてみようか)

男(狐はどう思うかな。迷惑に思うだろうか)

男(今は課題の事で精一杯だろうし、そんなことを考える暇なんてないかもしれない)

男(……打ち明けるかはおいておこう。とにかく、狐と話をしてみよう)

友「男?」

男「ありがとう。なんか、頑張れる気がしてきた」

友「? そうか、ならいいけど」

友「米、もらってくぞ」

男「おうもってけ。炊飯器ごともってけ」

友「マジで!?」

男「嘘だ」

友「ですよねー」

――水曜日、放課後、ミケガミ神社裏


狐娘「……」

ザァアアア……

男「なにやってんだ?」

狐娘「あっ、主様」

狐娘「水をあげてるんです」

男「……そこに、なにもないけど」

狐娘「種を植えましたっ」

男「へぇ。何の種?」

狐娘「色々です」

男「色々……」

男「ところで、どこから種を持ってきたんだ」

狐娘「商店街のお花屋さんに譲っていただきした」

男「はっ? お前、その姿で商店街歩いたの!?」

じゃあ僕は狐娘に種を植え付けます

狐娘「はい」

男「いやいやいや、狐耳に九本の尻尾の女の子とか奇抜ってレベルじゃねぇぞ!!」

狐娘「ちゃんと隠しましたよ」

男「どうやって」

狐娘「耳は帽子で隠して、尻尾は着物の中に、こう、無理やり」

男「すげーふっくらした尻だな」

狐娘「そこが気になるところですね」

男「……しかし、よく譲ってもらえたな」

狐娘「一生懸命お願いしましたからねっ」フフン

男「ふぅん……」

男「なんで花を育てようとしてるんだ?」

狐娘「ここは昔と違って、緑が少ないですからね。だから育てようと思いました」

狐娘「今は、私も、この土地も少しは潤っていますし、きっと元気に育ってくれると思うんです」

男「……課題は解決できそうか?」

狐娘「……いえ、そこまでは」

くさい

狐娘「でも、やれることをやろうって決めたんです」

狐娘「これは大いなる一歩なのですよ~」

男「そっか」

狐娘「はいっ」

男「……」

男(こいつも、こいつなりに頑張ってるんだよな)

男(……もう少しで、その頑張りを無駄にするところだった)

男「……ごめんな」

狐娘「えっ……どうして謝るんですか?」

男「俺、その頑張りを無駄にしようとした」

狐娘「……そうなのですか?」

男「お前にこの課題はクリアできない」

男「……そうどっかで決め付けて、勝手に課題を解決しようとした」

男「近々、町内清掃ボランティアがある。そこでミケガミ神社の清掃もしてもらえるよう、昨日頼みに行った」

男「結果はこれからの頑張り次第だけど、上手く言えば、人で埋め尽くす――とまではいかいないけど、人を集める事は出来る」

狐娘「……」

男「でも、その必要なんてなかったんだよな」

男「俺はお前を信じられなかった……だから、でしゃばった真似をしたこと、謝る」

男「ごめんな……ごめん」

狐娘「……」フルフル

狐娘「謝らないでください」

男「……」

狐娘「確かに、信じられていなかったのは悲しいことですけど……」

狐娘「それは、私が不甲斐ないから、仕方ありませんね」

男「そんなことない」

男「……そんなこと、なかった」

狐娘「私の為に、頑張ってくれていたんですね」

男「……違う。結局、自分の為だ。俺が狐にしてやりたかったから…………」

狐娘「そうだとしても、それは結局、私の為じゃないですか」

男「……あっ」

狐娘「それにしても、よく猫さんに斬られませんでしたね」

男「あ、あぁ……色々理屈を並べて、ね。これは俺が俺の為にやることだから――とか言って」

狐娘「そうなんですかぁ……」

狐娘「それじゃあ、主様のやろうとしていたことを私が引き継ぐというのは、ルール違反なのでしょうか」

男「えっ? ……それは、どうだろう」

狐娘「私も、ここを綺麗にしたいと思っていたんです」

狐娘「一人でちょこちょこ掃除はやってるんですけどね……広いし、建物は一つだけじゃないので」

狐娘「ちっとも綺麗になりませんでした……あっ、賽銭箱はすっごい綺麗になりましたっ」

男「……狐がやりたいことなら、いい……のか?」

狐娘「いいんでしょうか……?」

猫「言い訳にゃーだろー」

男「!?」

狐娘「!?」

夕方まで残ってたらうれしいが…
仕事行ってくる…

男「なんか上から猫の声が……」
猫「とうっ」ダッ

ヒュー……

男「えっ」

男「……ふぎゃっ!」ボフッ

ガンッ

狐娘「主様っ、大丈夫ですか!?」

男「……」ガシッ

男「なんでわざわざ俺の顔面めがけて飛び込んできますか!」

猫「にゃぁ、離せよー」
男「あっ、はい、すみません――そうじゃねぇっ!」

猫「みみっちいにゃー」

狐娘「……ダメ、なんでしょうか」

猫「ダメ」

狐娘「そうですか……」
男「……狐がしたいこと、ですよ」

猫「むり」

男「俺と同じ理屈なのに、ダメなんですか」

猫「おみゃーのも認めた訳じゃなかー」

男「えっ」

猫「一言もいえすと言ってないぞー」

狐娘「……」チラッ

男「いや、あれ、あれぇ……アハハ」

猫「……にゃぁ、おみゃーらが『二人で一人』ってんなら、話は別だけどなー」

男「えっ」

狐娘「えっ」

猫「二度は言わない」

男「二人で……」チラッ

狐娘「一人……」チラッ

猫「それじゃあにゃぁ、にゃんにゃこにゃこにゃーん」ダッ


男「……」

狐娘「……」

男「と、言う事らしいぞ」

狐娘「らしい、ですね」

男「……でも、それってさ。俺も一緒に課題をやることになるんだけど」

狐娘「はい」

男「お前は、それでいいのか?」

男「俺は、手伝ってもいいのか?」

狐娘「……私は、胸を張って隣を歩きたいんです」

狐娘「だから、これは私一人でやるべきだと、そう思っています」

男「……」

狐娘「主様はどう思いますか?」

男「俺は……俺も、そう思う」

男「けど、その一人ってのは……俺たちのこと、なんですよ」

狐娘「……ふふっ、そうでしたね」

狐娘「……これは私が納得する為の、胸を張って主様の隣を歩く為の罰」

狐娘「そして、主様が納得する為の、胸を張って私の隣を歩く為の罰、なんですね」

男「……あぁ」

狐娘「ふふっ……なんだかおかしい」

男「……だな。なんか、よくわかんなくなってきた」

男「がんばろう。これで失敗したなんてことになったら、お笑い種だからな」

狐娘「そうですね、頑張りましょう」クスッ

――11日後、朝、ミケガミ神社


ガヤガヤ……ガヤガヤ……


男「自分たちで頼んで回っといてなんだが、結構集まったな……」

狐娘「すっごいですね……」

男「……きっと、俺だけじゃこんなに集められなかったよ」

狐娘「私だけじゃ、こんなに集められませんでしたよ」

狐娘「『一人』だからこそ、集められたんですよね」

男「だな」

爺「おーい、二人ともサボってねぇで手伝えー!」

男「はーい」

男「行くか」

狐娘「はい」



――昼下がりの午後


男「みなさん、今日はホントにありがとうございましたっ」ペコリ

狐娘「あ、ありがとうございましたっ……」ペコリ

婆「いいのよお礼なんて……寧ろ、こっちが言いたいくらいだもの」

狐娘「……?」

婆「これからは、きちんとここを管理するようにと町内会議で決まったの」

婆「あなたたちがここの問題を見直すきっかけをくれたんだもの。ありがとうね」

男「……このミケガミ神社は、また人で賑わうんでしょうか」

爺「おう。今後行われる祭りの会場にもする予定だ」

男「そうですか、それはよかったっ」

狐娘「……」ホッ

爺「やっぱ若ぇモンのぱわぁって奴はすげぇな」

婆「ええ、そうねぇ」

婆「ところで、二人はどんな関係なのかしら」

男「えっ、……いや、その、友達ですよ」

狐娘「? 主さ――むぐぅ!?」

男「いいか、何も言うな。主様っていうな。黙ってろ。黙って頷いてろ」ヒソヒソ

狐娘「……」コクコク

爺「なんだ、友達かよ。てっきり『これ』なのかと」ピン

男「そんなんじゃありませんて……」

狐娘「……?」

爺「じゃあ、今日のところは解散だー」

オー オツカレサマ-

爺「また掃除しに来るからよ。お前らも参加しろよな」

男「はいっ」

狐娘「……」コクリ

スタ スタ スタ スタ……

男「疲れたな」

狐娘「……」コクリ
男「いや、もう喋っていいから」

狐娘「そうですか」
狐娘「ところで主様」

男「ん?」

狐娘「おじいさんが小指を立てて『これか』といっていましたけど、どういう意味ですか?」

男「気にするな」

狐娘「気になりますよ」

男「……そんなに気になるか」

狐娘「はい」

男「……」

男「あとでな」

狐娘「あとで、ちゃんと教えてくださいね」

男「あとでな……」

狐娘「……そうだ。裏手に行きましょう、主様」
男「? 別にいいけど……」

――本殿裏

男「ぉおお……すげぇ、まるで花畑だ」

狐娘「そうでしょう」フフン

男「花ってこんなに咲くの早かったっけか?」

狐娘「いえ……」
狐娘「みなさんが来てくれたおかげですよ」
狐娘「力を、たくさん分けてくださいました」

狐娘「おかげで、土地が少し潤いました」

男「そうなのか」
狐娘「私の胸もこころなしか成長していますよ」

男「えっ」

狐娘「冗談です」

男(……成長しなくても十分あるだろうが)

男「でも、そうか。これが、俺たちの成果って訳か」

狐娘「はい」

男「綺麗だ」

狐娘「綺麗です」

男「ここで食う稲荷寿司は、きっとすごい美味いだろうな」

狐娘「そうですね。最高でしょうね」

男「さて。ここに稲荷寿司がある」ガサッ

狐娘「なんですとっ」

男「そして、レジャーシートもある」スッ

狐娘「……なんですか、れじゃーしーとって」

男「地べたに座ると服が汚れるだろ。だから、これを敷いてその上に座るんだ」

狐娘「なるほど」

男「……食べる?」

狐娘「もちろんっ」

シュタッ

男「うぉおおおおっ!?」ビクッ

男「……って、猫さんですか。驚かせないでくださいよ」

狐娘「見てくださいましたか、猫さん」

猫「にゃぁ、見たぞー」

猫「埋め尽くす――とまではいかなかったようだけどなー」

男「それは……」

猫「まぁいい。その稲荷寿司一つで手を打ってやろー」

男「えっ……」

猫「不満なのかー?」

男「いえいえいえ……これ一つで済むのなら、よろこんで」

狐娘「私の分の稲荷寿司が減りますっ」

男「いやそこは我慢しとけよっ!?」

猫「にゃははー」

ボンッ

猫娘「いただくとしようかなー」

男「……その姿になる意味、ありましたか」

猫娘「こういうのは箸を使って食った方がうみゃーい」スッ

狐娘「マイ箸、ですって……」

狐娘「主様、私にも箸をっ」

しえんー

男「いっつも素手で食ってるクセに……ほれ」パシッ

狐娘「なかなか、扱い、づらいっ……」カチッ カチッ カチッ

男「大人しく素手で食っとけよ……」

狐娘「ふんっ」グサッ

男「行儀悪いなぁ」

狐娘「仕方ないじゃないですかぁ……」

猫娘「おみゃーが教えてやればいいだろー」モグモグ

狐娘「教えてください、主様っ」

男「……あとでな。今日は素手で食っとけ」

狐娘「絶対ですよ、約束ですよ!」

男「分かってる……時間はたっぷりあるんだ、そう焦るな」

狐娘「……」

狐娘「そうですね、時間はたくさんありますよね」

男「そうそう」

猫娘「……にゃぁ、お邪魔虫はそろそろ退散するかなー」

男「お、お邪魔なんかじゃないですよ」

狐娘「? そうですよ」

猫娘「一ついただいたからにゃー、ごっそさん」

猫娘「せいぜい幸せになー」ダッ


男「……幸せにって」

狐娘「?」



――鳥居前


男「おーい狐。早くしろよ。置いてくぞー」

狐娘「はーい」

タッ タッ

スタ スタ スタ……

狐娘「主様」

男「んん?」

狐娘「これからは、私と一緒に考えてくださいますか?」

男「もちろん」

狐娘「私と一緒に、悩んでくださいますか?」

男「任せとけ」

狐娘「私と一緒に、笑ってくださいますか?」

男「当然っ」

さるよけ>>1愛してる支援

男「なぁ」

狐娘「はい」

男「いつやったかは知らないけど、今は仮契約なんだよな」

狐娘「はい。正確に言うと、主様が私と衣食住をともにしたときから」

男「……本契約ってのは、どうやるん?」

狐娘「ええっと……どうやるんだったかな……」ムムム

男「いや、思い出せないんならいいや。本契約をしないと、俺たちが一緒に歩けないってことはないし」

狐娘「でも、本契約してくださるのなら、したいです」

男「方法が分からないんじゃ仕方ないだろ」

狐娘「うーん…………」

狐娘「!」

狐娘「思い出した、思い出しましたよ主様っ」

男「ほう。その方法は」

パンツ飛んでった

狐娘「接吻ですっ」

男「ほぁあああああ!?」

狐娘「……主様は時々おかしくなりますよね」

男「いや、接吻て。意味分かってんの」

狐娘「はい。口と口を合わせることですよね」

男「……俺と、そういうことしていいの」

狐娘「? もちろんです」

男「…………、俺の事、好きなの?」

狐娘「もちろん」

狐娘「私の主様じゃないですか」

男「……あぁ、はい。飼い主だものね。ですよね。ですよねですよねー」

男(その『好き』って、俺の『好き』とはベクトルが違うんだろうなぁあああああああ……)

狐娘「?」

男「お前とは本契約しないっ」

狐娘「えっ、なんでですか!?」

男「そういうのはちゃんとお互いの同意の上にやるべきだ」

狐娘「主様、けっこう乗り気だったじゃないですか!」

男「気のせいだ」

狐娘「主様ー」

男「……」

狐娘「主様、あっるじっさま、あるじーさまー!!」

男「うっせ」



おわり

乙! ほっこりした(*´ω`*)

久々に読み応えがあったわ、乙
そしてやっと寝れる

乙。
今日の昼食はいなり寿司にしよう。

よく書き終えたな

おつ

超乙
いなり寿司買ってくる



近くの稲荷神社でも行ってみようかな

おつおつ
朝まで残ってて嬉しい

おつ

乙!

乙!
俺のとこにも狐娘来ないかなぁ・・・

大層乙であった

乙カレー

おつかれさまです

おつかれ


寝起きからほっこりした

超乙
近所に寂れた神社があるから行ってみよ

追いついたら終わってた


後日談があったら嬉しいな

乙せざるを得ない

乙なりさんをあげよう

おつ

後日談…

乙乙ー
妄想はかどるわー

おれ……近所の寂れた神社の狛犬様二体たまに一人で掃除したりしてるけど……
突然狛犬夫妻が頼みごとしてきたら泣きそうだな
稲荷さまのほうに来てほしかった

>>332
姉妹の可能性が

>>333
なるほど
おまえが天才か?

http://art18.photozou.jp/pub/303/570303/photo/74093841.jpg

http://pds.exblog.jp/pds/1/201106/20/39/a0147539_23282559.jpg

張り切って雪かき掃除行ってきます

>>335
これまじか

ニコリン坊が♂だという事実

こんな可愛い狗が女の子なわけない

昼までよく残ってたな

1乙

乙!

乙!

良スレは長生き

帰るまで残っててほしい

一段落してからのほのぼのパート期待してたんだがなぁ。まあ乙

お疲れ様

残ってんのかよ……

おつ

後日談 ほしいね
お疲れ


>>1

>>286
狐娘「私は幸せ者ですね。こんなに優しい主様に恵まれました」

男「……ううぅ」ブワッ
狐娘「わっ、なんで泣いてるんですかっ」アセアセ

男「しらねぇよ……なんか出てきて、止まんねぇんだよ……」

狐娘「……」

ギュッ

男「……お゛い、なにじでんだよ」

狐娘「こうしたら、泣き止むかと思って……小さい頃、私が泣いていた時にはこうしてもらいましたから」

男「ぐすん……お前、あったかいな……」

狐娘「体温には自信があります」

男「それ、自慢になんねーよ……」

男(こうしてると、なぜだか安心する)

スッ

男「もう大丈夫だから。泣き止んだから」

狐娘「そうですか、よかった」ホッ
男(……やべぇ。すげぇドッキュンドッキュンしてる)ドキドキ

>>303
男「おーい狐。早くしろよ。置いてくぞー」

狐娘「はーい」

タッ タッ……
タタッ

狐娘「あっ」

男「!」ダッ

トン

男「……なにもないとこで躓くとか」

狐娘「すみません……」

男「……」
狐娘「……主様?」

ギュッ

狐娘「きゃっ」

狐娘「主、様?」

男「俺、前にもこうした事がある気がする」

狐娘「……」

!?

男『待てってばー!!』ダッ

タッ タッ タッ……

狐『……』

男『やっとみつけた……ぜぇ、ぜぇ』

狐『コーン……』

男『……?』



男「子どもの頃、同じように……そう。悲しそうに鳴く狐を」

男「……もしかして」

狐娘「ばれちゃいましたか」

男「ばれちゃいましたかってお前……」

男「……なんで黙ってたんだよ」

狐娘「なんででしょうか……」

男「俺に聞くなよ」

狐娘「……思い出して欲しかったのかもしれませんね」

男「……?」

狐娘「だって、寂しいじゃないですか。私だけ覚えてるだなんて」

狐娘「私はその程度の存在だった、なんて。思いたくなかったんです」

男「……」

狐娘「でも、覚えていてくれたんですねっ」ギューッ

男「苦しい苦しいっ」

狐娘「すみません、緩めます……」ギュッ

男「……あのとき、なんで悲しそうに鳴いてたんだ?」

狐娘「あの日は、母が亡くなった日なんです」

男「そうだったのか……」

狐娘「いっぱい泣きました。泣きすぎて枯れちゃいましたよ、涙」

狐娘「そんな時に、小さな男の子が現れたんです」

狐娘「泣き顔なんて見られたくなかったし、なにより、知らない人だったから」

狐娘「私は逃げました」

男「狐状態のお前が泣いてるかなんて、俺には見分けがつかないけどな」

狐娘「そうなんですか!?」

男「うん」

男「でも、悲しそうに鳴いてたからな……」

狐娘「……鳴いてる私を、抱きしめてくださいましたね」

狐娘「すっっごく温かくて、とても安心できました」

男「……『小さい頃、こうしてもらいましたから』ってのは、俺の事だったか」

狐娘「ええ、主様でした」

狐娘「でも、昔は動物は嫌いじゃなかったんですか?」

男「お前に会ったのは、犬が死んだ後だからな」

男「不謹慎かもしれないけど、犬には感謝だ」

狐娘「?」

男「こうして、お前と出会うきっかけをくれたんだからな」ギューッ

狐娘「うぅ、苦しいですよっ」

男「ご、ごめん」ギュッ

狐娘「全くまったく」

男「……」

男「帰るか、家へ」

狐娘「……はいっ」

タッ タッ

スタ スタ スタ……

ktkr!

狐娘「主様」

男「んん?」

狐娘「これからは、私と一緒に考えてくださいますか?」

男「もちろん」

狐娘「私と一緒に、悩んでくださいますか?」

男「任せとけ」

狐娘「私と一緒に、笑ってくださいますか?」

男「当然っ」

狐娘「……主様ーっ!!」ギューッ

男「暑いから離れろ」

狐娘「ヒドイっ!?」ガーン


>>305
おわり

>>1はやれば出来る子だってずっと前から知ってたよ乙

http://i.imgur.com/SJIJ5am.jpg

補完>>1

>>1

支援

乙!
寝落ちしてもうないと思ったけど
まだあってよかった

乙!!

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