宥「サイレント・ナイト」(149)

宥<ほんの少し前までは…こんな事になるなんて思いもよらなかった……>

宥<私は今…阿知賀ではなく東京の夜空の下にいる>


宥<東京の空は夜だと云うのに、どこか不自然な光が混ざり込んでいて>

宥<それが私をどことなく奇妙に…そして不安に感じさせた>

宥<重く感じさせる曇天の空だからか…私はより強くそう思ったのかもしれない>


宥<阿知賀とはまるで違う……まるで人工物の様な夜空――――>

宥<私はこれからこの奇妙な空の下で暮らす事になる>


宥<でも…本来恐がりな筈の私は…それなのに余りその事に不安を感じてはいなかった>


宥<それは今…私の隣にこの人がいるから――――>

菫<私がこの淑女に初めて邂逅したのはインターハイで対局した時……>

菫<私が幾度にも彼女に矢を放っても……>

菫<まるで私がいつ矢を放つのかが判るかの様に……>

菫<彼女はそれを容易く掻い潜って…果敢にも私に向かって来た――――>

菫<私の心の中に入り込むかの様に>

菫<こんな事は初めてだった――――>

菫<あのインターハイチャンプの宮永 照にすら>

菫<あそこまで…詰め寄られた事は無かった――――>



菫<思えば……あの時…既に私は彼女に心惹かれていたのだと思う……>

宥<今日の東京は何時もよりも気温が低いらしい>

宥<でも…極度の寒がりの筈なのに…私はそんなに寒さを感じてはいなかった>

宥<それは……私をあったかくしてくれる人が>

宥<私のすぐ隣にいてくれているからだと想う……>


宥<私をあったかくしてくれる人―――――>


宥<≪弘世 菫≫と云う名の女の子が…私の隣にいてくれているから―――――>

 

菫<そして今…幸運にも彼女は私の隣にいてくれている……>

菫<この冬の寒空の下…私はそれだけで心があたたかくなっていた……>


菫<彼女と云う存在は…既にそこまで私の心の中を占めてしまっていた>

菫<柄にもないが…彼女の為になら私は……>


菫<私に出来る全ての事を喜んで捧げたいとすら思う>


菫<私の一番大切な人……>


菫<≪松実 宥≫>


菫<私の心を射抜いた人……>


 

12月24日


とある東京の街の雑踏の中。


冬の夜空「しんしん」



宥「あっ……雪が…」すっ

菫「天気予報で今夜は寒くなるって言っていたからな……」

菫「それにしても…この時期に東京で雪が降るなんて珍しいな……」ふむ

宥「そっかぁ…私の住んでいる処は…この時期でも結構降るから……」

菫「へぇそうなのか」

宥「うん。気温もこっちの方があったかいみたい」ふふ

 

菫「そうか。それでも今日は冷えるし……大丈夫か宥?寒かったりしないか?」

宥「うん…大丈夫だよ菫ちゃん。ちゃんと着込んで来たから」


宥「それにね…菫ちゃんとお付き合いし始めたくらいからかな……」

宥「ちょっとずつだけど、冷え性が治ってきたみたいなの」にこ


宥「それに――――」ぎゅっ

菫「!?/////」


宥「寒くてもこうやって菫ちゃんに寄り添えば…あったか~いから……////」


宥「心も…躰も……」ぎゅ~


菫「――――――――!!?///////」かぁ

 

 
菫「ゆ…宥…ちょっと……」


宥「だめ?」うるうる

菫「―――――!!?」

菫<うっ////癒し系の極の様な宥から―――>

菫<上目遣いのうるうるまなこでお願いなんかされたら――――>あうあう



菫「も…勿論、宥にだったら何時でも、私に寄り添ってくれて構わない」キリッ

宥「ホント?嬉しい……」

宥「ありがとう菫ちゃん……」ぎゅぎゅっ

宥「あったか~い」にこ

 

 

菫「うっ!?」

菫<宥に普通にギュッとされているだけでも大概なのに>

菫<こんなにぎゅっとされたら…この冬着越しにすら…おもちの感触が……」//////

菫<それにこの究極の癒されスマイル>

菫<マ…聖女(マドンナ)過ぎるよ宥さん>かあぁ



宥「すっ菫ちゃん!お顔真っ赤だけど大丈夫?」

宥「もしかして暑かった?」あせあせ

菫「あっいや大丈夫だ。気にしないでくれ」あせあせ…キリッ

宥「ホントに大丈夫?」

菫「ああ。ホントに大丈夫だ」にこ

宥「よかったぁ……」ほっ

菫<あ…危なかった危うく卒倒してしまうとこだった……>ふぅ…やれやれだぜ

 

 
…………………………。


菫「なあ宥」

宥「なぁに菫ちゃん?」

菫「今日はクリスマスだろ?」

宥「うん……」

菫「だから今日の為に店を予約してあるんだ」


宥「ホント?嬉しい……」

宥「でも…今日私が東京(こっち)に来たのって……」

菫「ああ…判っている」

菫「でも――」

菫「クリスマスはクリスマスだろ」


菫「私達にとっての初めてのクリスマス」にこ

宥「うん」ぱぁ
 

 

菫「とは言ったものの……」

宥「どうしたの?」

菫「店自体はこの近くに在るのだが」

菫「まだ予約した時間には間があるんだよ」



宥「あとどれくらいなの?」

菫「ああ…あと30分くらいかな」

菫「まあ…この位なら少し早く行っても――」

宥「ねぇ菫ちゃん」

菫「ん?」
 

宥「それだったら先にケーキ買わない?」

宥「丁度あそこにケーキ屋さんみたいなお店もあるし……」

菫「ああ…そうだな。時間調整にもなるし買いに行こうか」

宥「うん」


菫「それじゃあ早速――――!?」ぴくっ


菫<い…今店から出て来たのは…もしかして……」

菫<まさか照!?>


宥「どうしたの菫ちゃん?」

菫「い…いや……何でも無い…何でも無いんだ」

宥<………………>

宥「…………そう…それなら…いいけど……」


菫「は…早くしないと、逆に予約時間に間に合わなくなってしまうから早く行こう」

宥「うん……」
 

洋菓子店。


店員「いらっしゃいませー」


菫「何が良いかな?」

宥「うーん。二人だからこの一番小さいクリスマスケーキなんてどうかな?」

菫「うん。そうだな二人で食べるなら、これ位が一番いいな」

菫「済みません」

店員「はい」

菫「このクリスマスケーキを下さい」

店員「判りました。有り難う御座います」


菫「でも…こんなギリギリになって、ケーキを買うなんて言うのは私達くらいなものかな?」

宥「ふふ……そうかも」くす


店員「そんな事ないですよ」
  

 

 
店員「今もお客様の前のお客様も同じクリスマスケーキを買われて行かれましたから」

菫「私達の前の?」

店員「はい。店に入られたのはお一人でしたけど」

店員「後で大事な方と一緒にクリスマスを過ごされる感じでしたよ」


菫「………………そうですか……」

店員「はい」

菫<『あれ』は本当に照だったのかな……もしそうなら……>


宥<…………………>


宥「ねぇ菫ちゃん。もうそろそろいい頃じゃない?」

菫「……ん…ああそうだな」はっ

菫「時間を潰していたのに遅れたなんて言ったら本末転倒だな」はは

宥「じゃあもう行こ?」

菫「ああそうだな」
 

 
店員「ああっお客さまちょっと」

菫・宥「?」

店員「これクリスマスカードなんですけど」

店員「クリスマスケーキを買って頂いたお客様にお渡ししているんです」


店員「よかったらどうぞ」すっ


菫「どうも」

宥「私も良いんですか?」

店員「はい。サービスです」にこ

宥「ありがとう」

菫「じゃあ行こうか」

宥「うん」


店員「有り難う御座いましたー。良いクリスマスを」

  

 
…………………。

宥「ちょっと驚いちゃった」

菫「意外だったか?」

宥「うん。レストランみたいな処かなって思ってたから……」

菫「嫌だったかな?」


宥「ううん。私、こう云う和室の雰囲気の方が落ち着くから嬉しい」

宥「それに…雰囲気もあったかいから、和室の方が好きなの」

菫「そうか。よかった…そう思って此処にしたんだ」ほっ

宥「でもこう云うところって……」

菫「ん?どうしたんだ?」

宥「その…お値段とか……」

菫「ああ。その事なら心配しなくていいよ」

菫「決して安くは無いけど、奈良から東京の電車賃位だし」

菫「支払いは勿論…私がするから宥は何も心配する事は無いよ」にこ
 

 
宥「そんなっ私も出すよっ―――」あせっ

菫「ここは私が選んだ店なんだし私が出すよ」ばっ

菫「いや。私に出させてほしい」きっぱり

宥「菫ちゃん……」

宥「じゃあ今度、菫ちゃんが阿知賀に来た時は……」

宥「私が菫ちゃんにご馳走させてね」にこ

菫「うん。分った楽しみにしてるよ」

 
 

 
宥「あっそうだった菫ちゃんはい」さっ

菫「コレは……」

宥「うん…クリスマスプレゼントだよ」にこ

菫「ありがとう」

宥「開けてみて」

菫「良いのか?」

宥「うん」

菫「じゃあ失礼して………」

宥のプレゼントの紙袋「がさごそ」


菫「これは……マフラー?」

宥「うん。手編みなんなんだからね」ふんす

菫「そうか…大事につk――――!?」

菫「宥…も、もしかして……今宥がしているのと……」
 

 
宥「うん。今私が着けているのと、お揃いだよ」てへ

菫「……………////」

宥「やっぱりペアのマフラーなんてちょっと恥ずかしいかな」しゅん

菫「…い…いや…そんな事はないんだ。ちょっと驚いただけだ」あせっ



菫「これは…私からだっ////」すっ

宥「ありがとう菫ちゃん」ぱぁ

菫「あ…開けてみてくれないか?」

宥「うん」

菫のプレゼントの紙袋「がさごそ」

宥「これは手袋?」

 

 
宥「これ…菫ちゃんが……?」

菫「ああ…私も…その…下手なりに編んでみたんだ……」

菫「出来が悪くて申し訳ない……」ぺこり

宥「そ…そんな事ないよt……あっ!この手袋もしかして……」はっ



宥「さっきまで菫ちゃんが着けていた……」

菫「/////……ああ…私もその…宥とお揃いにしたいと思って……//////」かぁ

宥「―――――――!!」

宥「嬉しい…嬉しいよ菫ちゃん……」うるうる

菫「そうか…悦んで貰えて私も嬉しいよ」ほっ


菫「でも……考える事は二人とも一緒なんだな」はは

宥「うん」ふふ
 

 
座敷の襖「こんこん」

?「失礼します」

座敷の襖「すすー」

仲居「お待たせいたしました」

仲居「お料理を御持ち致しました」

菫・宥「「有り難う御座います」」

仲居「今、ご用意致しますね」

 

  
…………………。


鉄鍋「ぐつぐつ」


宥「これは…すき焼き…だよね?」

菫「ああ。関東と関西では作り方が違うって事を聞いていたけど」

菫「やっぱりそうなんだな」ふぅむ

宥「うん。ウチでよく食べるのは……」

宥「お野菜で水分を出してから」

宥「材料にお醤油とお砂糖をかけて焼くみたいな感じだから……」


菫「そうか…関東(こっち)では……」

菫「こうやって火を入れた材料に割り下を注いで作るんだ」


菫「こう云った違いも愉しんで貰えるかと思ってすき焼きにしたのだけど……」

菫「やっぱり…クリスマスにすき焼きって言うのは変だったかな……」はは…は…
 

 
宥「ううんっそんな事ないよ!」ふるふる

宥「すき焼きは……お鍋はあったかいから好き」

菫「それなら良いのだが……そろそろ煮えてきたし食べようか」

宥「うん」


宥の口「ぱく」

宥の口「もぐもぐ」

宥「あったかくて…美味しい」ほぁ


宥「でも…それ以上に……」

宥「あったかくて美味しいのは……」
 

 
宥「菫ちゃんと一緒に頂いているから……」

宥「菫ちゃんと一緒に頂くお料理は」

宥「どんなものでもあったかくて美味しいし」

宥「あったかくて美味しいものは……」

宥「もっともっと」

宥「あったかくて美味しくなるの//////」かぁぁ


菫「―――――――!!//////」かぁぁ

菫「こ―――////」

菫「こいつめ―――/////」
 

 
菫に人差し指「すっ」

宥の額「つん」

菫「恥ずかしい科白は禁止だ//////」

宥「てへ」ぺろ


菫「あはは」

宥「うふふ」

 

 
……………………。


宥「でも菫ちゃん……」

菫「ん?」

宥「菫ちゃんにこんな事までして貰えて……」

宥「本当に嬉しい……」

宥「でも…勿論。二人でクリスマスを過ごすと云う事もあったけど……」



宥「東京」(こっち)に来た目的は他にあって……」

宥「それさえも菫ちゃんにお世話になってばかりで……」


宥「そして今も本当にこんなに菫ちゃんにして貰って…甘えさせて貰ってばかりで……」

宥「本当にいいのかなって……」

 

 
菫「宥は来年から同じ東京の大学に通う」

菫「実家の旅館の為に経営学を学ぶ為に」

菫「そして今日、宥が来たのはこっちで住む部屋を探す為」



菫「それなら、私だって同じだよ」

菫「私は宥と同じ大学に通う」

菫「そして私も宥と同じでこっちで住む処を探しているのだから問題ない」

菫「実を言うと……」

菫「白糸台は23区じゃないしな」はは

菫「私も今日は泊まる心算だったから、ホテルもツインルームをとったんだし」

菫「宥が気に病む事は無いよ」

宥「菫ちゃん……」

 

菫「それに私は……」

菫「好きでこうさせて貰っているのだしな」

菫「それで宥に後ろめたさを感じさせてしまっているのなら申し訳ない」

宥「そんな―――」


菫「でも…宥」

菫「これだけは判って欲しい」

菫「私は君が…宥の事が好きだ」

菫「好きな人の為に何かをしてあげられる事は」

菫「とても…幸せな事なんだよ」


菫「だから私は―――」


菫「『今』とても『幸せ』感じているんだ――――」にこ

 

 
宥「――――――!!」

宥「菫ちゃん……」うる

宥「ホントに…菫ちゃんは……優し過ぎるよ……」じわ


宥「でも……ううん…だから……」


宥「私も菫ちゃんの事が『大好き』」にこ

菫「有り難う……宥」


菫「さっ早く食べよう」

菫「煮過ぎると煮詰まっちゃうからな」

宥「うん」

 

 
………………。


宥「――――あっそうだった!」ぱん

宥のバッグ「がさごそ」


宥「菫ちゃんコレ」すっ


菫「『コレ』って…もしかしてシャンパンか?」

宥「うん。こんな事もあろうかともって来ちゃったの」てへ


菫「こんな事って……」

菫の目「まんまる」

宥「ちょっとくらいなら…良いかなって……」

菫「そうだな……」

菫「いいだろっ!もう今日は何でもアリだっ!!」

宥「うん」ぱぁ

 
 

 
菫「開けるぞ……」ぐっ

宥「うん……」どきどき


シャンパンの栓「ポンっ!!」


菫「じゃあ改めて」


菫・宥「「メリークリスマス」」

菫・宥「「かんぱーい!!」」

 

…………………………。

菫「ふぅ」

菫「すき焼きも食べて、ケーキも食べて……」

菫「もうお腹がいっぱいだよ」

宥「そうね。ホントもう何も入らないくらい……」

宥「でも……」


宥「美味しかったぁ」ほぅ

菫「ああ。そうだな。喜んで貰えて何よりだよ」ふふ


菫「あっそうだ」

宥「如何したの?菫ちゃん」

菫「さっきの洋菓子店で貰ったクリスマスカード」

菫「この際だから此処で交換しようか?」

宥「うん。いいよ」

 

 
菫・宥のペン「かきかき」


菫「書けた」

宥「私も」

菫「じゃあ交換しようか?」すっ

宥「うん」すっ

 

――――Merry Christmas
       

       for
       

           You――――


宥「ごめんねあんまり気の効いた事も書けなくで……」しゅん


菫「いや…私がいきなり言った事だし書いてくれて嬉しいよ」にこ

 

菫「はい宥」すっ


――――Merry Christmas
       


       for
       


            宥――――

 

 
宥「ぷっ…もう菫ちゃんたら」ふふ

宥「でも菫ちゃんがこんなことするなんて珍しいね……」

菫「はは…私だってたまにはこんな事もするさ」はは


宥「でも書いてくれて私も嬉しい」にこ

菫「ああ」



…………。


菫「じゃあもう少ししたら行こうか」

宥「うん」

 

 
………………………。


とあるビジネスホテル。


菫「こんな処しかとれなくて済まない」

宥「ううん。そんな事ないよ…これで充分だよ」


菫「それならいいのだけど……」



菫「でも今日は一日不動産屋を廻ったお陰で、中々いい部屋も見付かったし」

菫「明日…宥が帰る前に何とか決まりそうで何よりだよ」

宥「うん。菫ちゃんが一緒に見て回ってくれたから……」

宥「私一人だったら、どうしていいか判らずに右往左往するしか出来なかった……」

 

菫「私も部屋を探していたから丁度良かったよ」

菫「宥と同じアパートに入れそうだし……」

菫「何よりも……」


菫「今日は宥と二人っきりでいられるしな……」

菫「だから私も今日は泊まる心算で、ツインの部屋をとったんだ……」

菫「迷惑……だったかな……?」



宥「ううん…そんな事ない。私も菫ちゃんと一緒に居られて嬉しい」

宥「でも……本当に何から何まで……菫ちゃんにして貰ってばっかで……」

 

 
菫「宥」

菫「それは言わない約束だろ」にこ

菫「さっきも言ったけど、私は好きでやらせて貰っているんだ」

菫「迷惑になって無ければいいんだ」



宥「迷惑だなんて……そんなわけない」

宥の首「ぶんぶん」

宥「じゃあ御返しに」

宥「こっちにお引っ越ししたら」

宥「今度は私が菫ちゃんのお世話をいっぱいさせて貰いますから」ふんす

宥「いまから覚悟しておいてね」にこ

菫「そうか……その時はお手柔らかにな…宥」にこ

 
 

……………。

宥<………………うん>ぐっ

宥「菫ちゃん……もう一つ訊きたい事が有るの」

菫「ん?ああ何を訊きたいんだ?」

宥「じゃあ菫ちゃんのベッドにお邪魔してもいい?」

菫「ああ。いいぞ」

ベッド「ぽんぽん」

宥「ありがとう…お邪魔します」ぽす


菫<湯上り寝間着姿の宥……綺麗だ……////>ぽぉ

宥<湯上りで寝間着姿の菫ちゃん…キレイ……//////>ぽー

宥<ううん――今は呆けている時じゃない!>

宥の頭「ぶんぶん」


宥<……よし………>


 

宥「それじゃあ訊くね?」すぅ

菫「ああ」

宥「さっきケーキ屋さんに入ろうとした時」

菫「…………」

宥「菫ちゃん…そこから出て来た人に、ちょっとの時間だったけど」


宥「心…奪われていた」じっ

菫「そ…そんな事は……」

宥「あの人―――」


宥「宮永さんだよね?」

宥「菫ちゃんと同じ高校の」

菫「…………」

菫「確かに照だったのかもしれない……」

菫「誰だって不意に知り合いを見掛けたら、吃驚するだろ?」

菫「でも…仮にそうだったとしても」



菫「宥には関係の無い話だ」


宥「菫ちゃん」

宥「菫ちゃんと宮永さんとの間に」


宥「『何』があったの?」じっ

菫「……………」

宥「何となく判るの……」

宥「『女の勘』ってやつなのかな……」

宥「でも【それ】が私に告げるの――――」


宥「貴女と宮永さんに『何か』があったと言う事を」ゴゴゴ…


菫「――――――!!」ゾクゥ


菫「そうか……まったく宥には隠し事が出来ないな」はは

菫「正直に言うよ」

菫「君と付き合い始めの頃」

菫「私は照に――――」


菫「告白されたんだ」


宥「……………」

宥「……そう」

宥「それで?」じっ

菫<―――――うっ>うぐ


菫<こんな厳しくてあったかくない表情(かお)の宥は初めてだ>


菫<これは避けて通れないな……>

菫の喉「ゴクリ」


宥<さっきのお店で飲んだシャンパンのせいかな……>

宥<ちょっと酔って歯止めが利かなくなっちゃったみたい……>

宥<勢いで宮永さんの事で菫ちゃんに迫っちゃったけど……>

宥<でも……>


宥<こうなったらもう往くしかない!!>ぐっ

菫「こ…告白はされたけど……」

菫「勿論断ったさ」

菫「その時には…君が……宥が居たから」


宥「ちゃんと断ったんだ?」

菫「ああ。もちろn――――」



宥「でも……」

宥「あの時の菫ちゃん……」

宥「宮永さんの事すごく追い掛けたそうな表情(かお)してた……」


宥「私には『それ』が…とても未練がましく見えた」

 
菫「……そうか…私はあの時…そんな顔をしていたのか……」

菫「照とは告白されて以来、殆んどまともに話せていないんだ……」

菫「だから一度、彼女と話しをしt――――」

宥「話をしてどうするの?」

宥「もし宮永さんから、もう一度告白されたらどうするの?」

菫「……………」


宥「菫ちゃんが宮永さんを見る目……」

宥「とても大切なモノを見る目だった……」

宥「とても彼女の事を気に掛けているのか…私にだって判る……」

 
 

  

 

 


 

 
菫「ど……どうするって……」

宥「菫ちゃんが宮永さんを見る目……」

宥「とても大切なモノを見る目だった……」

宥「とても彼女の事を気に掛けているのか…私にだって判る……」


宥「そんな大切に想っている人から二度も告白されたら――――」

菫「宥」すっ



菫と宥の唇「ちゅっ」


 

 
宥「――――!?」


菫「可笑しな事を言う口には『こう』だ」


宥「菫ちゃん……//////」ぽぅ



菫「確かに照の事は大事に思ってるよ」

菫「何と言っても高校の三年間……」

菫「同じ部活の同学年で…たった二人のレギュラーとして頑張ってきたからな」

菫「言うなれば照は、無二の『戦友』だよ」


菫「それにあいつは、麻雀以外ではちょっと抜けている処もあるからな」ふふ

 

菫「だから正直に言って……」

菫「あの照が私の事をそう言う風に想っていた事にかなり驚かされた……」

菫「そんなこと私は…思いも寄らなかったから……」


宥<菫ちゃんも…ちょっと抜けてる処が有るよ……>

宥<自分がどれだけ魅力的な女の子なのか全く判ってない……>


宥<まったく……宮永さんの事をとても言えた義理じゃないよ……>むぅ

 

 
菫「でも宥」

菫「私が一番大切に想っているのは……」

菫「恋して…いや愛しているのは――――」



菫「 『 宥 』 」



菫「君『だけ』だよ……」にこ

 

宥「―――――――!!//////」両手を口に

宥「で…でも――――」



菫と宥の唇「ちゅっ」



宥「―――――//////」かぁ


菫「さっきも言った筈だぞ…宥」

宥「/////////…………うん……」こく


菫「それに…もし私が宥…貴女が言う様に……」

菫「照にもう一度告白されて私がそれを受け入れたとしたら」

菫「宥…貴女も『それ』を受け入れて、さっさと私の事を諦めるのか?」

 

 
宥「…………ううん」ふりふり

宥「別れない―――」


宥「私は絶対に何があっても宮永さんに―――」

宥「ううん…たとえ誰であろうと菫ちゃんを渡さないっ!!――――」ゴォッ!


宥「私は多分…皆には…おっとりしてて……」

宥「控え目な子だと思われているのかもしれない……」


宥「でも私は…大抵のものは我慢出来るけど」

宥「本当に欲しい『モノ』はどんな手を使ってでも――――」


宥「必ず手に入れたいと思ってる」

 

 
宥「そして…手に入れたら絶対に手放さない――――」


宥「私はそんな欲に塗れ――――」


宥「嫉妬深くて独占欲の強い」



宥「情念の塊の様な」



宥「そんな……ドロドロとした女なの――――」オオオオォ……

 

 
宥「インターハイが終わって、菫ちゃんが初めて私に話しかけてくれた時……」

宥「ホントはちょっと怖かったの……」

宥「でも……話していく内に」

宥「私の相談や悩みを、聞いてくれたりしてくれる内に」


宥「貴女はとても優しくて、思いやりのある人だと知った……」


宥「不思議だった……」

宥「知り合って間もないのに……」

宥「すぐに自然に貴女に悩みや相談事を打ち明けられるようになっていた」

宥「こんな事…初めてだった……」

 

宥「でも…貴女と話す度に触れ合う度に」

宥「私の身体が…心が…あったかくなるのを感じていた……」

宥「私は叶わないと自分に言い聞かせながら」

宥「それでも貴女に…どうしようもない程に想い焦がれた」

宥「だけど私は貴女に想いを伝える事が出来なかった」

宥「貴女が私から離れて終うのが…怖くて仕方なかったから……」


宥「それを考えただけで、寒くなって震えが止まらなかった……」


宥「いつの間にか……貴女の矢に私の心は――――」


宥「射抜かれてた――――」

 

 
宥「だから、貴女が私に告白してくれた時――――」


宥「涙が止まらなくなるくらい嬉しかった」

宥「これまでに無いくらい、あったかくなった……」


宥「菫ちゃんは私を一番あったかくしてくれる一番大切な人……」

宥「だから私は菫ちゃんを手離したくない」

宥「例え誰であろうと渡したくない!渡さないっ!!」


宥「…………………………」スゥ……



宥「私はもう――――『寒い想い』なんてしたくないの――――」ゾォッ


 

 
菫「――――――――ッ!!」

菫の喉「ゴクリ……」


菫<圧倒された――――>おののき


菫<宥って私が想っていたよりも>


菫<ずっとずっと情熱的だったんだな……>おどろき


菫<でも―――――>すぅ…


菫「それなら話は早い――――」

菫「私は照のモノには絶対にならない」


菫「私は宥…君のモノなのだからな」

菫「そして――――」


菫「宥…君は私のモノだ」だきよせっ
 

 
宥「//////菫ちゃん……」ふるふる

宥「信じて良いの……」じっ


菫「私は君が哀しむ様な嘘は決して吐かない」びしっ

菫「それに……」


菫「心を射抜かれたのは私も同じだ…宥……」

菫「私も…弘世 菫も君に…松実 宥に……」


菫「とっくに私の心を射抜かれているんだ……」


宥「菫ちゃん………」

宥「嬉しい……」ぎゅっ

 

 
宥「ねぇ菫ちゃん……」

宥「このまま菫ちゃんのベッドで……」

宥「一緒に…寝ても……いい?」じっ


菫<うっ―――>

菫<か…可愛い上に艶っぽい――////>どきどき


菫「…………ああ…いいよ」にこ


宥「えへへ……」

宥「菫ちゃんあったか~い」ぎゅ~


菫「宥もあったかいよ」だきよせ

 

 
……………………。


宥「菫ちゃん……手…繋いでもいい?」

菫「ああ。勿論だ」

菫「宥が私と手を繋ぐのに、私の許可なんか要らないぞ」

菫「宥が繋ぎたい時に繋げばいい……」


宥「うん……」ぎゅっ

宥「じゃあこれからは、菫ちゃんも繋ぎたい時に私の手を繋いでね」

菫「ああ…これからはそうするよ」にこ

宥「うん……」にこ

 

…………………。


宥「窓から見える雪もキレイ……」ほぅ

菫「ああ…そうだな」


宥「静かね……」

宥「静かだな……」

宥「東京ってもっと……何時も賑やかな所だと思ってた……」

菫「東京だってこんな夜くらいは、気を使って静かになってくれるさ……」

 

 
宥「サイレント・ナイト」

宥「かな?」


菫「ああ」



菫「サイレント・イヴ」

菫「とでも言うのかな?」


宥「うん」


宥「ふふふ…」

菫「ははは…」

 

 
菫「そろそろ寝ようか?」


宥「うん」



宥「おやすみなさい菫ちゃん」


菫「おやすみ宥」


 

  
宥<何時までも菫ちゃんと、あったかくて幸せな日々が続きますように……>



菫<やっと掴めた宥(ゆめ)がこの手から離れる事がありませんように……>




菫・宥<<来年も二人で―――サイレント・ナイト―――を迎えられますように……>>




おしまい。

 

おまけ。



一年後。


観客「「「わぁアアアアアアああ!!!」」」


実況『たっ大変な事が起こりました!!』

実況『今年レビューしたばかりの新人『宮永 照』が!!』

実況『なんとプロ一年目で個人タイトルを獲得の快挙だーーー!!!』



実況『≪サイクロン・クイーン≫宮永 照!!』



実況『正にその異名の通り、周り全てを吹き飛ばす―――』

実況『圧倒的な強さを魅せ付けましたーーー!!!』

 

 
観客席。


玄「ふぅ~~む なるほどなるほど なるほどー」


玄「あなるなど」


宥・菫「!?」びくっ


玄「あなるほどは置いときまして」 

玄の両手「エアよっこいしょういち」

 

 
玄「お姉ちゃん、菫さん……私…決めたのです」ぐっ


玄「あの人と…宮永 照さんと同じチームに入る事を……」


玄「松実、宮永のチームに入るんだってよ。なのです」ふんすっ

 
宥「じゃあ…あのスカウトの人の、お話を受けるって事なのね?」

玄「はいなのです」

玄「あの人とはインターハイで何度か打ったのですけど……」

玄「今日の対局を見て、今度は同じチームで一緒に打ちたい」

玄「一緒にプロの世界で上を目指したい。『夢』を掴みたい――――」

玄「何故か…そう強く思ったのです」ふぅ~む


菫「そうか……今年のインターハイで、一気にその名を馳せた」

菫「ドラゴンロード…いや、今やドラの全てを自由自在に統べる事すら出来る――――」


菫「≪ドラゴンルーラー≫の呼び声も高い松実 玄さんが……」


菫「あいつと同じチームに入ってくれるなんて心強いよ」

 

菫「私がこんな事を言える立場に在るのかは判らないが……」

菫「……いや…あいつの元チームメイトとして、玄さんにお願いしたい」


菫「あいつの事を……宮永 照の事を宜しく頼む」ふかぶかとおじぎ



菫「今日のあいつの対局を見て思ったのだが」

菫「あいつは確かに高校の時よりも更に強くなった…」

菫「凄味が増した―――」


菫「それこそ…鬼気迫る程に……」

菫「だけど……それ故にどこか危ういんだ」

 

 

菫「でも……雀力でも玄さんなら、『今』のあいつにだってそう引けは取らない」

菫「玄さんなら…あいつの横に並び立てる」

菫「そして…あいつのすぐ横で…あいつの支えになってほしいんだ……」


宥「私からもお願い玄ちゃん」ぺこり



玄「お姉ちゃんと菫さんにお願いされたら断れないです」にこ


玄「わかったのです」ぐぐっ


玄「この不肖 松実 玄!!」



玄「ヤッテヤルデス」


 

玄「もとい」


玄「このドラルーのクロさんに全部――――」



玄「おまかせあれっ!!」

後に、


≪サイクロン・クイーン≫宮永 照。


≪ドラゴンルーラー≫松実 玄。


≪シュワーヒット・エンプレス≫弘世 菫。


≪スカーレット・コレクター≫松実 宥。


と称され、麻雀界にその名を轟かす事になるこの四人が、

とある正月の松実館の新年会にて、

ばったり顔を合わせる事になるのはもう少し先の事であった。


本当におしまい。


おあとがよろしい様で


 

どうにか終わらせる事が出来ました
最後に厨二っぽくなってしまったのは
>>1が生粋の厨二と云う事で、ご理解頂きたいと存じます
呼んで下さった方々におかれましては
厚く御礼申し上げます

有り難う御座いました
 

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