末原「咲がむっちゃ好きやねん!!」咲「えっ!?」(276)

代行 ID:U97AguoS0

代行ありがとうございました!!

二回戦終了後 姫松高校控室


末原「…………」

洋榎「ん、どないしたん恭子?」

末原「……主将ですか。別になんでもありませんよ……」

洋榎「そんな深刻な顔してなんでもない訳ないやろ!」

洋榎「何かあったんやろ?」

末原「……いえ、別に……」

洋榎「……もしかして、宮永咲のことか?」

末原「…………はぁ、主将にはすべてお見通しみたいですね」

末原「私はこれでも姫松の大将としてやってきたプライドがあります」

末原「そやけど宮永のあのプラマイゼロ……あらホンマもんの舐めプレイですわ」

末原「そんなことされて平然としていられるほど、私は大人やありません」

洋榎「まあ気持ちは分かるで。うちかて目の前であんなプレイされたらブチ切れるわ」

洋榎「全力で戦うべき場所で相手を見くびるようなことは、うちも許せれんわ」

洋榎「でもな、内容はどうあれ準決勝に進出や。そこでリベンジしたらええやん!」

末原「……それはそうですけど……」

洋榎「まあ、今日のことはひとまず忘れて、ホテル戻ろうや」

洋榎「絹や漫たちは先に戻っとるし、うちらも行こうや」

末原「いえ、私はもう少しここにいるんで。主将は先に戻っといてください」

洋榎「そうか? 分かったわ、先に戻っとくで」

末原「すみません主将」

しえーん

インターハイ会場 廊下


末原(主将はリベンジしたらええって言うとったけど……)

末原(打ってみて肌で嫌というほど感じたあの威圧感と恐怖……)

末原(……明後日のこと考えるだけでメゲるわ……)

?「ココどこ……」グスッ

末原「ん、なんやこの声は?」

?「は、早く行かないと、も、もれちゃうよ……」モジモジ

末原「って、あれは宮永咲やん!?」

末原(まさか本人に会えるとは思っとらんかったわ……)

末原(にしてもなんか様子がおかしいな?)

咲「も、もう限界……」プルプル

末原「…………まさか!! アカン、宮永!!」ダッ

末原「トイレはこっちや!! もらしたらアカンよ!!」

咲「うぅ……」グスッ

――――――――――

末原「……はぁ、なんとか間に合ったみたいやな」

ジャー ガチャ

咲「あの……末原さん……でしたよね。本当にありがとうございました」ペッコリン

末原「いや、別にええんやけどな……」

咲「トイレに行こうと思ったら迷子になっちゃって」

末原「…………」ジー

末原(あれ? 宮永ってこんな感じのやつやったっけ?)

末原(ちょうどええ、あの舐めプレイについて訊いたろ)

末原「なあ宮永、一つ訊きたいんやけどな」

咲「はい、なんですか?」

末原「さっきのあのプラマイゼロ、あれはわざとなん?」

咲「あっ……」

末原「……やっぱりか」

咲「ごめんなさい……」

末原「はぁ、宮永、どんな理由があるか知らんけど、あんな舐めプレイはやったら――」

咲「違います!! 舐めプレイなんかじゃありません!!」

末原「えっ!?」

咲「ご、ごめんなさい、大声出しちゃって……」

咲「でも、決して皆さんを舐めてあんなことをしたんじゃありません」

末原「なら、なんでプラマイゼロを狙ってしたん?」

咲「……少し長くなりますけど、いいですか?」

末原「ええよ、このままやったら気になってしゃあないし」

末原「そこの椅子に座って聞かせてくれへんか?」

咲「はい、分かりました」

――――――――――

末原「…………」

咲「――以上です」

末原「……なるほどな。小さい頃にお年玉を取られまいとして身に付けたんか……」

末原「そんで、緊張のあまりそん時の打ち方しか出来へんかった訳か……」

咲「末原さんや他の対局者の方々にすごく失礼なことをしたと思います」

咲「でも、それは決して皆さんを舐めてやったことではありません!」

咲「それだけは信じて下さい!!」

末原「分かったわ、信じたるわ」

末原(なんや、別に宮永は舐めプレイでプラマイゼロにしたんとちゃったんか)

咲「あ、ありがとうございます!!」パァ

末原「…………////」キュン

末原「そ、それにしても、白糸台の宮永照が、まさかあんたの姉さんだったとはな……」

末原「何か関係あるとは思っとったけど、まさか姉妹やったとは……驚きやわ」

咲「でも、お姉ちゃんと仲直りできてないんですよ」

咲「お姉ちゃん、私がプラマイゼロしてるのすごく怒ってて……」

咲「やっとしないで打てると思ったのに、またしちゃって、今度は末原さんを怒らせちゃって……」グスッ

咲「もしお姉ちゃんと打った時にまたプラマイゼロしちゃったらと思うと……」ヒックヒック

末原「ちょ!? そんな泣かんでも!!」

末原「安心せえ、私は別に怒っとらんから!!」ワタワタ

咲「ご、ごめんなさい……」ヒックヒック

末原「ほら、よしよし」ナデナデ

――――――――――

末原「……落ち着いたか?」

咲「は、はい……ごめんなさい、ご迷惑をおかけして」

末原「ええよ。それにしても緊張して昔の打ち方をしてしまうんは難儀やな」

末原「私には宮永が緊張しとるようには見えんかったけどな」

咲「えっ、そんなことないですよ! 私今まで家族としか麻雀やったことなかったですし」

咲「もし私の所為で負けちゃったらって思うと、怖くて……」プルプル

末原(……やっぱり思ってたんと違うな)

末原(手の付けられへん怪物かと思っとったけど、普通の女の子やん)

末原(……なんとかしてやりたいな)

末原「宮永、緊張するんはおかしいことやないよ」

末原「姫松で大将やってる私かて、対局前はめっちゃ緊張しとるんやから」

咲「ほ、本当ですか!?」

末原「ホンマや。そやから緊張することはおかしいことやないで」

咲「で、でもまた昔の打ち方になっちゃったら……」

末原「……そ、そやったら、私が相談に乗ろっか?」

咲「えっ?」

末原「ほ、ほら、昔の打ち方に戻ってまうこととか、姉さんとの仲直りのこととか!」アセアセ

末原「な、何か力になれるかもしれんやろ!?」

咲「…………」

末原(な、なんで私こんなこと言っとるん!?)

末原(ほ、ほら宮永かて呆れ取るわ)

咲「本当ですか!?」パァ

末原「えっ!? あ、ああ。私で良かったらな」

咲「すっごく助かります!!」

末原(こ、こないに喜んでくれるとは……)

末原「そ、それじゃ連絡取り合えるように、番号交換しとこうか」

咲「あ……はい。えっと……ごめんなさい、まだよく使い方分かってなくて」

末原「し、仕方ないな。貸してみ……」カチカチ

末原「……よし、これでできたわ。ほら、私の番号登録しといたで」

咲「ありがとうございます!!」

咲「でも……末原さん本当に良いんですか?」

末原「何が?」

咲「だって私、末原さんにとっては敵なのに、相談に乗ってくれるなんて」

末原「ええよ、ここで話聞いたんも何かの縁やし。それに――」

咲「それに?」

末原「困っとる宮永見とったら、何か力になってやりたい思ったんよ」

咲「末原さん……」

末原「これは私がやりたいからするんやし、宮永は気にせんと自分のことだけ考えときや」

咲「本当にありがとうございます、末原さん!!」ペッコリン

ホテル


末原「……はぁ」

末原(なんで私あんなに宮永の力になりたい思ったんかな?)

末原(勢いで相談受けたる言ってまうし……)

末原(いったい私、どないしたんやろ……)

洋榎「なんや恭子、まだ宮永咲のこと考えとるんか?」

末原「ひゃい!? えっ、そ、そんな宮永のこと考えてるって!?」ワタワタ

洋榎「ん? 宮永咲にされた舐めプレイのこと考えとったんとちゃうんか?」

末原「あ……そ、そっちですか?」

洋榎「それ以外にあるんか?」

末原「いえ、こっちの話です」

洋榎「まあ恭子、気にすんなや。あんな舐めたプレイやらかす宮永咲なんか、最低の雀士や」

末原「…………」ムカッ

洋榎「そんなふざけたやつのやること考えたって時間の無駄や」

末原「…………」イライラ

洋榎「それよか準決勝進出のお祝いに、みんなで飯でも食べに――」

末原「主将に宮永の何が分かるんですか!?」バンッ

洋榎「おぉ!?」ビクッ

末原「さっきから聞いてれば、最低の雀士だのふざけたやつだの!!」

洋榎「あ、あの……恭子さん?」ビクビク

末原「だいたいあれは舐めプレイでもなんでも――」ハッ

末原「……すみません、主将」コホン

洋榎「ど、どないしたん恭子?」

末原「いえ、なんでもありません」

末原(ホンマどないしたんやろ私?)

末原(主将が言っとったことに腹立てて)

末原(だいたい主将が言ったことと同じようなこと、私も少し前まで言っとったやないか)

末原(そやのに怒鳴ったりして……アカンな)

末原「本当にすみませんでした主将、私は先に休ませていただきますんで」

洋榎「そ、そうか……わ、分かったわ、ゆっくり休みぃや」


―――――

―――

翌日 ホテル


末原「…………」

末原(昨日色々考えたけど、さっぱり分からんかったわ)

末原(なんで私、あんなに宮永のことが気になるんやろうな?)

末原(うーん、ホンマ分からんわ……)

洋榎「恭子、どないしたん?」

末原「へっ!? しゅ、主将、どうしたんですか!?」

洋榎「どうしたもこうしたもないわ。さっきから呼んどんのに、まったく反応せえへんし」

末原「すみません。ちょっと考え事してたんで……」

洋榎「大丈夫か? ホテルで休んどってもええで?」

末原「いえ。私らの目標は優勝です。その為には今日の準決勝を見ておく必要があります」

洋榎「そうか? ほな、行こか。そろそろ試合始まりそうやし」

アキラメタラオ-ワリー、キモチヲリセットシテー♪

末原「すみません主将」ピッ

末原「もしもし」

?『も、もしもし……末原さんですか? 宮永です』

末原「えっ!?」ドキッ

咲『ごめんなさい、今お時間大丈夫でしょうか?』

末原「あ、ああ。全然大丈夫や、問題ないで!」

咲『良かった。あの、昨日の今日でご迷惑かと思ったんですけど……』

咲『相談したいことがあるんですが……駄目でしょうか?』

末原「いやいや、ええよ!! ちょうど暇やったし!!」

咲『ありがとうございます!!』

末原「そ、そんなら昨日話したとこで待ち合わせな!」

咲『分かりました、昨日の場所ですね!』

末原「あ、ああ。ほな、待っとるからな!!」ピッ

末原「すみません主将。ちょっと用事が出来たので、失礼します」ダッ

洋榎「ちょ、ちょい待てーな恭子!! ……行ってもーたわ……」

洋榎「……しゃーない、絹でも誘って行くとするかな……」ハァ

――――――――――

末原「…………」ソワソワ

末原(ま、まさかホンマに宮永から相談受けるとは思わんかったわ)

末原(なんか知らんけど、めっちゃ嬉しいわ)ニヤニヤ

末原(……宮永、早よ来ーへんかな?)チラチラ

末原「……それにしても少し遅いな……宮永どないしたんやろ?」

咲「うぅ……ココどこ……」グスッ

末原「宮永、どないしたん!?」

咲「あっ、末原さん!! 良かった……また迷子になっちゃって……」

末原「そ、そうか……。にしても宮永方向音痴やったんか。何かあったんか思って焦ったわ」ホッ

咲「ごめんなさい、お待たせしまして」

末原「ええよ、無事着いたことやし。そんで相談やったな?」

咲「はい。明日の準決勝の前に、どうしても相談したくって……」

末原「そうか。そんなら場所変えよっか」

末原「相談やったら、ここより喫茶店とかの方がええやろ」

咲「はい、分かりました」

喫茶店『ハーベストタイム』


末原「すんません、レイコ――やのうてコーヒー一つ。宮永は?」

咲「ミルクティーを一つお願いします」

末原「ミルクティーか、宮永らしいな」クスッ

咲「そうですか? でも末原さんもコーヒーって、ピッタリですね」

末原「そうか?」

咲「そうですよ。だって末原さん、大人っぽくてカッコいいですし」

末原「そ、そないなことないよ////」テレテレ

咲「あっ、照れてるところ、すごく可愛いです」

末原「か、可愛いことなんてあらへんよ!?////」

咲「えー、そんなことないですよ。女の私から見ても可愛いって思いましたもん」ニコッ

末原「か、からかったらあかんよ!!////」

末原「んんっ、そ、それで、相談って何や?」

咲「そうでした。昨日もお話したんですけど、どうやったら緊張せずに打てるか相談したくって……」

末原「宮永は緊張するとプラマイゼロで打ってまうんやったな?」

咲「はい……。それでどうやったら緊張せずに打てるんでしょうか?」

末原「宮永、昨日も言ったけど、緊張はして当然や。ない方がおかしいで」

末原「せやから緊張しつつも、その中でいかに自分の力を出せるかやからな」

咲「そうですよね……そんな一朝一夕に無くせないですよね……」

末原「宮永は県予選ではどうやったん?」

咲「えっ、どうって?」

末原「あの天江衣を倒したんやろ? 緊張しとって打って、勝てるような相手とちゃうし」

咲「衣ちゃんと打った時は、靴を脱いでいたので……」

末原「靴?」

咲「はい。私、一番麻雀をやってたのが子供の時だったんですよ」

咲「その時はいつも裸足で打ってて……」

咲「だから裸足になると、いつもの感じで打てるんですよ」

末原「そんならなんで昨日は脱がんかったん?」

咲「えっと、その……き、緊張しすぎて脱ぐのを忘れてしまって……」

末原「そ、そうなんか……」ガクッ

末原「でも、せやったら簡単やん。明日の試合は靴脱いで、裸足でやったら解決やん!」

咲「それはそうなんですけど……」

咲「昨日も試合前は脱ごうと思ってたのに、いざ対局室に着いたら緊張で頭が真っ白になってしまって……」

末原「そんで靴脱ぐん忘れて、プラマイゼロやってまったんか」

咲「はい……」

末原「なるほどな。そやったら明日の試合、対局前に私が言ったるわ」

咲「えっ……?」

末原「それなら宮永が忘れとっても大丈夫やろ?」ニカッ

咲「で、でも末原さん、いいんですか?」

末原「何が?」

咲「だ、だって末原さんからしたら、私がまともに打ててない方がいいんじゃ……」

末原「何言うとんねん。私は全力の相手と戦いたいんや」

末原「手負いの相手に勝てたかて、嬉しくもなんともない」

末原「それに、知ってしもうたからな。宮永がいつも通り打ててないことをな」

末原「それを知って何もせんと明日打ったかて、勝っても負けても後悔するわ」

末原「宮永かて、全力出せんとやったら後悔するやろ?」

末原「せやから私は、全力の宮永と戦いたい。それだけや」ニコッ

咲「末原さん……」グスッ

末原「ああもう、泣くなや宮永」

咲「ごめんなさい。で、でも嬉しくって……」

末原「まったく……」

末原(良かったわ、何とか宮永の力になれたみたいやな)

末原「そういや姉さんとの仲のことも相談乗るって言ったな」

咲「あ、いえ。お姉ちゃんとのことはいいです」

末原「えっ、で、でも悩んどったみたいやし……」

末原(もしかして私、ホンマは宮永の力になれてへんかったんか!?)

末原(せやから私に相談しても意味ないと思ったんか!?)アセアセ

咲「お姉ちゃんとのことは、私自身で考えないと駄目だと思うんです」

咲「私はお姉ちゃんと仲直りしたいと思うだけで、まだ何もできてません」

咲「だから私、まずは自分でどうしたらいいか考えて行動したいんです」

咲「それで、その……もし駄目だったら、その時は末原さんに相談しても……いいですか?」

末原「も、もちろんや! いつでも相談乗ったるで!!」

末原(よ、良かった……私が頼りにならん訳やなかったみたいやな)ホッ

咲「末原さん、この後何か予定ありますか?」

末原「えっ、特にないけど……」

咲「それなら一緒に東京回りませんか?」ニコッ

末原「い、一緒にか!?」

咲「もう少し末原さんと一緒にいたくって。……駄目ですか?」

末原「駄目やないよ!! よっしゃ、一緒に東京回ろっか!!」

咲「はい!」

東京タワー


咲「わぁ、すごくいい景色ですね」

末原「なんや宮永、東京タワー初めてか?」

咲「はい! 一度来てみたかったんですよ!!」

咲「末原さんは来たことあるんですか?」

末原「ああ、去年うちの主将たちと一緒にな」

末原「なんや今の宮永みたいにすっごく行きたがっとってな、無理やり付き合わされたわ」

咲「でも、楽しかったんですよね?」

末原「そらな。大阪にも通天閣があるけど、展望台から見える景色はくやしいけどこっちの方がええからな」

咲「そうなんですか」

末原「そうや宮永、あそこに立ってみいひんか?」

咲「えっ、どこにですか?」

末原「ほら、床がガラスになってて真下が丸見えになっとるところや」

咲「わっ、本当ですね。……ガラス割れたりしないですよね?」プルプル

末原「大丈夫やって。そないにビビらんでもええから」

咲「……それなら末原さん、お願いがあるんですけど……」

末原「なんや?」

咲「――ぎゅっと私の手を握っててもらえますか?」

末原「!!」ドキッ

咲「お、お願いします。末原さんが手を握っててくれたら怖くないと思いますんで!!」

末原「そ、それくらいお安い御用や!!」ギュッ

末原(わぁ~、宮永の手握ってもうたわ!!)ドキドキ

末原(めっちゃ柔らかくて、温かいわ……)ドキドキ

咲「わぁ……すごい眺めですね……」

末原「せ、せやろ?////」

咲「ありがとうございました」

末原「え、ええよ、こんくらい」

末原(あ……手離れてもうた……)シュン

末原「ど、どやった?」

咲「はい、すごくハラハラしました」

咲「でも、その分ここから見えた景色は格別でした!」

末原「よ、良かったわ、楽しんでもらえて」

末原「去年来た時、私や後輩の子たちは結構満足やったんやけどな」

末原「主将が、『嫌や~、うちまだ死にとうないわ~!』ってめっちゃ泣いて嫌がっとったんよ」

末原「せやから、宮永もホンマは嫌やったのに、断りきれんとやってくれたんかと思ってな」

咲「そんなことないですよ。確かに最初は怖かったですけど……」

咲「……でも、末原さんがぎゅって手を握っててくれてたから、全然怖くなかったです」ニコッ

末原(くぅ~、ホンマ宮永の笑顔は可愛えな~////)キュンキュン

咲「そうだ末原さん、一緒にプリクラ撮りませんか?」

末原「ぷ、プリクラか!?」

咲「こういうところって、ご当地限定のがあるんですよ」

咲「ね、いいですよね!?」

末原「え、ええで。一緒にプリクラ撮ろうか」

―――――――――

咲「えーと、フレームは……」

末原(うわ~、み、宮永とこんな密着するやなんて!)

末原(……宮永って、ええ匂いがするな――って、私何変態みたいなこと考えとんねん!!)

咲「末原さん、これでいいですか?」

末原「え、ええんやないの?」

咲「分かりました。――それじゃ、撮りますよ」

咲「3、2、1――えいっ」ギュッ

末原「わっ!!?////」ドキッ

パシャ

咲「えへへ、ごめんなさい。つい……」

末原「も、もう宮永は、しょうがないな……////」ドッキンドッキン

咲「末原さん、何書きますか?」

末原「せ、せやな……み、宮永に任せるわ」

咲「いいんですか?」

末原「あ、ああ。私こういうのあんましたことないから、勝手が分からんのや」

咲「そうなんですか。分かりました、それじゃ――」カキカキ

咲「できました。あとはプリントを待つだけですね」

パサッ

咲「プリントできたみたいですね」

咲「はい、末原さんの分です」

末原「あ、ありがとうな」

末原(わ~、私宮永に抱きつかれて、顔めっちゃ真っ赤やん!)

末原(それに、『さき きょうこさん 仲良し』って書いてあるし!)

末原(……携帯に張っとこっと)ペタ

咲「次、どこ行きましょうか?」

末原「ん、そうやな……宮永はどこ行きたいん?」

咲「そうですね……せっかくなんで服とか見に行きたいですね」

末原「服か……まあ観光名所ばかり回っとってもアレやしな」

末原「よし、次は服でも見に行こうか!」

咲「はい!」

ファッションショップ『アラタソ』


咲「この服、可愛いのに安いですね」

末原「せやろ? ここの店は私が東京来た時によく行く店でな」

末原「お手頃な値段で幅広い服を取り扱っとるんよ」

咲「確かに色んな服がありますね……」

咲「あっ、あのタヌキさんのTシャツ可愛いですね」

末原「宮永、悪いことは言わん。あれは止めといた方がええで」

咲「えー、なんでですか。可愛いじゃないですか?」

末原「いや、あのシャツを着こなせるのは上級者だけやから、止めといた方が身の為やで」

咲「末原さんがそこまで言うなら諦めますけど」

末原「ほら、宮永にはこっちの服の方が似合っとるって」

咲「えっ……わぁ、すっごく可愛いですね!」

咲「私これ買います!」

末原「ちょ、宮永、試着せんでええんか!?」

咲「はい。一目見て気に入りましたんで」

末原「そうか」

咲「あ、この服末原さんに似合いそうですね」

末原「どれどれ――ってアカンわ、私には似合わんよ」

咲「えー、そんなことないですよ?」

末原「いやいや、そないなフリフリのワンピース、私みたいな女には合わんって!」

咲「そんなことありません。末原さん可愛いんですから、絶対似合いますよ!!」

末原「宮永がそう言ってくれるんは嬉しいけどな……」ウーン

末原「昨日も監督代行に可愛い系の服着せられたんやけど、全然似合ってへんかったし」

咲「どんな服だったんですか?」

末原「どんな服って……そや、代行に無理やり撮られた写真があったわ。これや、これ」ピラッ

咲「えっと……」

末原「なっ。全然似合っとらんやろ?」

咲「…………////」ポー

末原「宮永、どないしたん?」

咲「へっ!? あっ、ごめんなさい。思わず見惚れちゃってて……」

末原「み、見惚れとったって、嘘やろ!?」

咲「嘘じゃないです!! 本当に似合ってて、すごく可愛かったんで……////」モジモジ

末原(宮永のこの反応、嘘やないんか!?)

咲「末原さん、もったいないです!! もっとオシャレしましょうよ!!」

末原「……み、宮永がそう言うんなら、ま、まあ少しくらいならやってみてもええけどな////」

咲「本当ですか!!」

末原「あ、ああ。た、たまにはオシャレすんのも、悪ないしな」

咲「それじゃ、この服着てみてください!!」

末原「わ、分かったわ。着てくるわ」

――――――――――

末原「ど、どや?」

咲「わぁ……いいですよ。すっごく可愛くて、思わずキュンってきちゃいました////」

末原「そ、そうか?////」テレテレ

末原(不思議なもんやな……昨日代行に着させられて、可愛いとか言われても何も感じんかったけど)

末原(宮永に可愛い言われたら、嬉しすぎて顔がにやけてまうよ)ニヤニヤ

末原「せ、せっかく宮永が選んでくれた服や、私もこれ買うわ」

咲「いいんですか? 私は似合ってると思いますけど、末原さんの好みとかあるんじゃ……?」

末原「ええよ、私も宮永と同じや。……気に入ったんや、この服が」

咲「末原さん……ありがとうございます」

末原「いや、お礼言うんはこっちの方や」

咲「それじゃ、私先にお会計してきますね」

末原「分かったわ。私は着替えなアカンし、ここで待っとるわ」

――――――――――

末原(あれやな、オシャレするんもええな)ゴソゴソ

末原(……もう少し私も女らしい服装勉強しよっかな)シャッ

末原「あれ、宮永おらへんな。まだ会計中か」

末原「せっかくやし、待っとる間に髪留めでも見てようかな」

末原「ほう、このリボンなかなかええな……」ヒョイ

末原「値段は――って、ちょい高いな」

末原(アカンわ、この服買うたら足りひんくなるな)

末原(うーん、しゃあないわ、今日のところは諦めるとするか)

咲「お待たせしました。あれ、それも買われるんですか?」

末原「いや、ええと思ったんやけど、持ち合わせじゃ足りひんからな」

末原「ほな、私も会計してくるわ。ちゃんとここで待っとってな」

咲「あ、はい」

――――――――――

末原「買い物もしたし、ぼちぼち帰るとするか」

咲「そうですね」

末原「宮永、泊まっとるところ教えてくれへんか?」

咲「えっ、なんでですか?」

末原「なんでって、送っていくからに決まっとるやろ?」

咲「そんな、大丈夫ですよ」

末原「昨日今日と迷子になっとったやつが、よう言うな」フフフ

咲「そうでしたね……それじゃ、お願いします」

末原「ああ」

咲「あと、はぐれないように……手、繋いでもらえますか?」

末原「……ええで」ギュッ

咲「わぁ、末原さんの手、とっても温かいです」

末原「宮永の手の方が温かいで」

咲「末原さん、今日は色々ありがとうございました」

末原「ええよ。私も楽しかったし」

咲「明日は全力でいきます! そして一緒に決勝に行きましょうね!!」

末原「よっしゃ、約束や!! 姫松と清澄、一緒に決勝行こうな!!」

ホテル


末原(今日は最高の一日やったわ~)

末原(宮永の力になれたみたいやし、一緒に東京回ったり)

末原(こ、これって、デ、デートやでな!?)

末原(って私何考えとんねん!! 大体、宮永はほっとけん存在ってだけで、別に好きとか……)

末原(でもでも、可愛い言われて、めっちゃ幸せやったわ~)ニヤニヤ

赤阪「すっえはっらちゃ~ん」

末原「あ、代行ですか。どうしたんですか?」

赤阪「今日も強くなるために、これ着てみよな~」

末原「はい、いいですよ」ニコッ

赤阪「嫌や言うてもアカンで~、これは末原ちゃんの為に――って、今何て言うたん?」

末原「いいですと言いましたが、それが何か?」

赤阪「」

末原「これですか……可愛いですね、ではさっそく着てきますね」

赤阪「……………………………やない」ボソッ

末原「何か言いましたか、代行?」

赤阪「……嫌がりもせん末原ちゃんなんて、私の好きな末原ちゃんやない!!!」

赤阪「うわぁ~~~~~ん!!!」バタバタ

末原「…………どないしたんやろ、代行は?」

末原「まあええか……それより、早くこれ着てみよう!!」ルンルン


漫「……す、末原先輩が、壊れてしもうた……」


―――――

―――

翌日 インターハイ準決勝


みさき「副将戦終了!」

みさき「現在一位は臨海女子、続いて二位に清澄、三位に有珠山と続きます」

みさき「四位に転落した姫松は、巻き返せるのでしょうか?」

理沙「不可能!!」プンプン

みさき「泣いても笑っても、この大将戦で決勝に進む二校が決定します」

理沙「クライマックス!!」プンプン

みさき「果たして、臨海女子と清澄がそのまま抜けるのか、はたまた有珠山と姫松が逆転するのか、注目です」

姫松高校控室


絹「す、すみません……私のせいで……」グスッ

洋榎「あぁ、泣かんでもええって絹」

漫「三位の有珠山との差は四万点ですね……」

由子「正直、絶望的なのよー……」

洋榎「これはさすがに厳しいんとちゃうかな……」

絹「わ、私がこない失点せんかったら……」ヒックヒック


末原「――安心せえ絹ちゃん。私が絶対になんとかしたるわ」ゴッ


洋榎「な、なんや今日の恭子、いつもと感じがちゃうで!?」ブルッ

絹「す、末原先輩……お、お願いします!!」グスリ

赤阪「末原ちゃん……私の末原ちゃんはどこいったん……」ブツブツ

末原「ああ、まかせとき!!」

インターハイ会場 廊下


末原(おかしなもんやな。一位でバトン渡された時より負ける気せえへんわ)

末原(三位とは四万点差、おまけに相手は怪物揃い)

末原(こんなんメゲるわ……昨日までの私やったらな)

末原(今日の私は今までの私とちゃう。理由はなんとなくやけど見当ついとる)

末原(……宮永と約束したからな、一緒に決勝に行くって)

咲「…………」プルプル

末原「ん? 宮永やん。どないしたん?」

咲「あ、末原さん……や、やっぱり緊張してきちゃって……」カタカタ

末原(……こない震えるほど緊張しとったんか……)

末原(一昨日もこんな状況で、ようやったな……)

末原「……宮永」ダキッ

咲「えっ、す、末原さん!?////」

末原「宮永やったら大丈夫や。約束したでな、全力で来るって。一緒に決勝行くって」

咲「末原さん……」

末原「……少しは落ち着いたか?」

咲「……はい」ニッコリ

末原「そうか。ほな行こうか。靴脱ぐの忘れたらアカンで!」

咲「はい!!」

――――――――――

みさき「続々と各校、大将の選手が入場してきました」

みさき「今清澄の一年大将、宮永咲選手と姫松の大将、末原恭子選手が入場してきました」

理沙「前言撤回!!」プンプン

みさき「はい? いきなりどうしたんですか、野依プロ?」

理沙「姫松の大将、今までと違う!!」プンプン

みさき「何が違うんですか?」

理沙「ぜんぶ!!」プンプン

みさき「……できればどこが違うかを詳しく教えてもらいたいのですが……」

理沙「……と、とにかくぜんぶ!!」プンプン

みさき「……はぁ……各校の選手が出揃いました。いよいよ大将戦が始まります!」

インターハイ準決勝 大将戦


末原「ロン。6400」

末原「ツモ。2000 4000」

末原「ツモ。4000 8000」


みさき「姫松の末原選手、連続和了で三位に浮上しました」

理沙「愛の力!!」プンプン

みさき「……さあ、末原選手の勢いはどこまで続くのでしょうか」


末原(一昨日宮永と打った時は威圧感と恐怖で震えが止まらんかった)

末原(でも今はちゃう! 最高に楽しいわ)

末原(もっと宮永と打ちたい。そん為にはここで負けるわけにはアカンのや!!)

咲「ツモ。3000 6000」

末原(嶺上開花か、宮永らしい上がりやな)

末原(……私も負けてられへんな)ニヤ

――――――――――

みさき「ついにオーラスを迎えました」

みさき「現在一位は清澄、二位は臨海女子となっています」

みさき「そして僅差で三位は怒涛の追い上げを見せている姫松です」

みさき「姫松の末原選手は二回戦の時とはまるで別人のようです」

理沙「恋する乙女!!」プンプン

みさき「……果たして、決勝へとコマを進めるのはどの高校でしょうか」

末原「ロン。6700」


みさき「準決勝決着――!!」

みさき「姫松の末原選手、臨海に直撃し、逆転で二位に浮上しました!」

みさき「決勝進出を果たしたのは、長野代表・清澄高校と南大阪代表・姫松高校となりました!!」

理沙「愛は奇跡を起こす!!」プンプン

―――――――――

末原「ふぅ……」

末原(ギリギリやったけど、なんとか逆転できたわ)

末原(宮永も今回はプラマイゼロやなかったし、万々歳の結果やわ)

咲「末原さん!!」タタタッ

末原「宮永、どないしたん?」

咲「末原さんのおかげで緊張せずに打てました!!」

末原「別に私のおかげとちゃうよ。宮永自身が緊張を克服できたからや」

咲「いいえ、試合前に末原さんがぎゅって抱きしめてくれたから、まったく緊張しないで打てたんです!」

咲「だから末原さんのおかげです!!」

末原(私が抱きしめて……? ――ってそやったわ!!)

末原(試合前に私、宮永のこと抱きしめたんやった!!)

末原(あん時は緊張で震える宮永に何かしてあげたくて無意識にしてもうたけど)

末原(よう考えたら、私何恥ずかしいことしとったんやろ!!////)アワアワ

咲「末原さん、どうかしたんですか?」

末原「ふぇ!? な、なんでもあらへんよ!」

咲「そうですか。それで私、末原さんに何かお礼がしたいんですけど……」

末原「お、お礼って……んなもんいらへんよ」

咲「でも、私末原さんに色々としていただいたのに……」

末原「せやからそれは私がしたくてしたことやから、気にせんでええって最初に言うたやん」

咲「それでも何かしたいんです!」

末原(うーん、困ったな……)

末原(いらん言うても宮永のことや、引き下がらんやろうしな……)

末原(どうしたらええんやろ――って、そうや!)

末原「み、宮永、そ、そんならな……」モジモジ

咲「はい……」ゴクリ


末原「わ、私のこと、名前で呼んでくれへんか?」

咲「…………えっ?」


末原「ほ、ほら、私らせっかく仲良うなれたんやし、苗字で呼び合ってんのもおかしいやん!!」アセアセ

末原「い、いい機会やし、私のことを名前で呼んでくれたら嬉しいなって!!」アセアセ

咲「……分かりました、恭子さん」ニッコリ

末原(~~~~~~!!!!////)

咲「なんか、照れちゃいますね////」テヘッ

末原(ああもう、照れてる宮永抱きしめたいわ~)

咲「あの、恭子さん」

末原「な、なんや宮永?」

咲「私のことも、咲って呼んでくれますか?」

咲「私も、恭子さんに名前で呼んでもらいたいです」

末原「あ、ああ、ええよ。…………さ、咲////」ボソッ

咲「恭子さん、聞こえないですよ」クスッ

末原「す、すまんな! さ、咲!////」

咲「はい、恭子さん」ニコッ

末原(うっわー、やばいやばいやばいやばい!!!)

末原(宮永――やのうて咲と名前で呼び合うだけでもう最高に幸せやわ~)

咲「そろそろ戻らないといけませんので失礼しますね」

末原「そ、そやな。私もそろそろ戻らんとまずいしな」

咲「あ、恭子さん、言い忘れるところでした」

末原「な、なんや?」

咲「一緒に決勝に行くって約束果たしてくれて嬉しかったです」

咲「準決勝の時の恭子さん、とってもカッコ良かったです////」

末原「!!」ドッキン

咲「そ、それじゃ、明日の決勝でまたお会いしましょうね!!」タタタッ

末原「…………」ドキドキ

姫松高校控室


ガチャ

洋榎「おっかえり~、恭子!!」

洋榎「すごいやないか!! あっこから逆転って!!」

由子「恭子すごいのよー」

漫「末原先輩、お疲れ様です!!」

絹恵「本当にありがとうございました、末原先輩!!」

洋榎「よっしゃ、決勝進出祝いにこれからみんなで飯でも食べに行くで!!」

漫「いいですね。行きましょうよ!!」

由子「洋榎ナイス発案なのよー」

洋榎「せやろー、さすがやろー。善は急げや、ほな行こうか――って、恭子?」

末原「……えへへ、さ、咲。き、恭子さん……やて、ふふっ……」ニヤニヤ

洋榎「……アカン、恭子が壊れてもうたわ……」

中華料理店『ハオハオ』


洋榎「うわ、美味すぎやで、このからあげ!!」

絹恵「お姉ちゃん、このチンジャオロースもめっちゃ美味しいで!」

由子「勝った後の食事は格別なのよー」

漫「あ、すいません。からあげ二人前追加でお願いします」

洋榎「ほら恭子もからあげどうや? 美味いで~」

恭子「……さーき。……きょーこさん。……えへへ……」ニヤニヤ

洋榎「はぁ、相変わらずこの調子か。代行は代行で朝からおかしいままやし」

赤阪「……もう私の好きな末原ちゃんはどこにもおらへんのや……」ブツブツ

由子「まあ二人はほっといていいのよー」

絹恵「末原先輩たち用に料理テイクアウトしとくで、お姉ちゃん」

洋榎「せやな。せっかくのからあげ、うちらだけで食べつくすんは悪いしな」

カラアーゲオイシクツクルンナラー モミッモミー♪

洋榎「お、電話か」ピッ

洋榎「もしもし――なんや久か。どないしたん?」

絹恵「!?」ピクン

洋榎「ああ……いや、うちらは見てへんで」

洋榎「分かったわ。見かけたら連絡するわ」ピッ

絹恵「……ねぇお姉ちゃん。久って誰なん?」プルプル

洋榎「ん? ああ、清澄の部長や。一昨日ホテル帰る時に会うて、仲良うなってん」

洋榎「それがどないしたんか?」

絹恵「……いや、別に……」

漫「それより、なんやったんですか?」

洋榎「ああ。なんか宮永を見てへんかって電話やったで」

末原「!?」ピク

由子「宮永って、清澄の大将の子?」

洋榎「せや。なんかちっと買い物に行く言うて、まだ帰ってきてへんらしいねん」

末原「主将!!」バンッ

洋榎「わっ!? 急にどないしたん恭子、ビックリしたがな!!」

末原「その話本当ですか!?」

洋榎「あ、ああ。今久から聞いたから、ホンマらしいで」

末原「……咲!!」ダッ

洋榎「ちょ、恭子!? どこ行くねん!?」

洋榎「……アカン、行ってもうたわ」

都内 大通り


末原「はぁ……はぁ……」キョロキョロ

末原(咲、どこ行ったん!?)

末原(携帯に連絡しても、まったく繋がらんし!!)

末原(まったく、方向音痴の癖して、なんで外に出るん!?)

末原(もし咲の身に何かあったら……アカン、そないなこと考えとうないわ!!)

末原(咲は無事や! 私がそう信じんでどないすんねん!!)

末原「あっ、すいません!! ちょっとお尋ねしたいんですが!」

「ん、どげんしたと?」

末原「人を探してるんですが――この子見ませんでしたか!?」プリクラミセル

「いや、私は見とらんよ」

「うーん、すみません。私も見てません」

末原「そうですか……どうもありがとうございました!」

「あ、待ってください!」

末原「はい、なんでしょうか!?」

「よろしければ私もその子を探すのに協力させてもらってもいいでしょうか?」

末原「えっ、いいんですか!?」

「もちろんですとも。誰かの助けになれる、そんなすばらなことはありません!」

末原「た、助かります! これ、私の携帯の番号です!」サッ

「分かりました。私の番号はこちらになります。何かあったら連絡してください」

末原「本当にありがとうございます!! それじゃ、私はあっちの方を探しに行きますんで!!」ダッ

「という訳で部長、すみませんが……」

「はぁ、仕方なかと。私も協力するたい」

「ぶちょー、私も協力するとです!!」

「……私も」

「なんもかんも都会が悪い」チュー

「みなさん……ありがとうございます!!」ペコリ

末原「ホンマどこ行ったんや!?」

末原「すいません、少しお尋ねしたいのですが」

「ん、何や――おお、誰かと思ったら姫松の大将やないか」

末原「って、アンタは、千里山の江口セーラやん!」

セーラ「どないしたん、そない必死になって?」

末原「そうや、今人探しとんねん!!」

末原「この子どっかで見かけんかったか!?」プリクラミセル

セーラ「どれどれ――あぁ、見たで」

末原「ホ、ホンマか!?」

セーラ「ホンマやで。そこの通りのベンチに座っとったわ」

末原「ありがとうな!!」ダッ

咲「うぅ……また迷子になっちゃったよ……」グスッ

咲「携帯で連絡しようにも、電池が切れちゃうし……」

咲「誰か助けて……恭子さん……」

末原「咲!!!」

咲「恭子さん!?」

末原「良かった無事で!!」ダキッ

咲「きょ、恭子さん……うぅ……」ヒックヒック

末原「大丈夫や、もう安心やで」

末原(良かった、ホンマ良かったわ。ホンマに……)

末原「アンタは心配掛けて……なんで一人で外に出たん?」

咲「ご、ごめんなさい……」コトン

末原「ん、なんやこの箱……?」

咲「あ、こ、これは……」

咲「……恭子さんに渡そうと思って買った物です」

末原「えっ、私に!?」

咲「はい。……開けてみてください」

末原「あ、ああ。分かったわ……」ガサガサ

末原「こ、これって……」

咲「はい――昨日恭子さんが欲しがってたリボンです」

末原「咲、もしかしてこれ買う為に外に出たんか?」

咲「そうです……私、やっぱり形でも恭子さんにお礼がしたくって」

咲「そんな時昨日のこと思い出して、これをプレゼントしようって思ったんです」

咲「なんとか店まで行けて買ったのは良かったんですけど、帰り道が分からなくなってしまって……」

末原「……アホ……」ダキッ

末原「それで咲にもしものことがあったら、私は嬉しくも何ともないわ……」

末原「……ホンマに……アンタはアホや……」グスッ

咲「恭子さん……心配掛けて、本当にごめんなさい……」

――――――――――

末原「ああ、見つかりました。本当にありがとうございました」

『いえいえ、無事見つかったみたいで、すばらです!!』

末原「あ、お名前訊かせてもらってもいいですか?」

『私は新道寺高校の花田煌と申します』

末原「花田さんですね。私は姫松高校の末原恭子と言います」

末原「またお礼は改めてしますんで、それじゃ」ピッ

咲「誰に電話してたんですか?」

末原「ああ、咲探してた時に協力してくれた人に報告しとったんよ」

咲「そうなんですか。その方にもちゃんとお礼しないと駄目ですね」

末原「そや、咲。……このリボン、ありがとうな」

咲「いえ。喜んでもらえて嬉しいです」ニコッ

末原「…………」

末原(そうか……最近感じ取ったこの気持ち、やっと何なんか分かったで……)


末原(私、咲のことが好きなんや……)


末原(咲が迷子になったって聞いて、胸が張り裂けそうなくらいしんどかったし)

末原(咲が無事やって分かったら、心の底から良かったって思えた)

末原(ホンマ、私気づくのが遅いわ……)

咲「あ、ホテルに着きましたね」

咲「それじゃ恭子さん。今日は本当にありがとうございました」ペッコリン

末原(アカン、このまま別れたら!)

末原(咲に私の気持ちを伝えるんや!!)

末原「ちょ、待ってくれへんか!?」

咲「えっ?」

末原「えっと、そのな……」ソワソワ

末原「さ、咲にどうしても伝えたいことがあってな……」モジモジ

咲「? なんですか?」

末原「そ、それはな……」

末原(いや、ちょっと待て。ここで私が咲に告白したらアカンのちゃうか?)

末原(もし私が咲に告白したとする。咲は少なからず動揺するはずや)

末原(信頼してた相手に、いきなり好きなんて言われて平然としとるやつはおらん)

末原(しかも女から。普通に考えて、女が女に恋するんはおかしいことや)

末原(優しい咲のことや、そのことで悩んで、苦しむやろな。そしたら明日の決勝に影響が出てまう)

末原(……それだけは絶対にアカン!!)

咲「あの……恭子さん?」

末原「すまんな、咲。今は言えんわ」

咲「えっ、どうしてですか!?」

末原「ホンマすまんな……」

咲「恭子さん、すごく気になるんですけど!?」

末原「咲、明日の決勝が終わったらちゃんと伝えるわ」

咲「明日の決勝の後ですか……?」

末原「ああ。そん時に、今言えんかったこと全部咲に言うわ」

末原「……アカンかな……?」

咲「……分かりました。すごく気になりますけど、我慢します」

末原「すまんな」

咲「いいえ」

末原(明日、決勝が終わったら、勇気を出して言うんや…)


末原(――私が、咲のこと好きやって気持ちを……)


―――――

―――

翌日 インターハイ決勝


恒子「副将戦大決着!!!」

恒子「王者白糸台、先鋒宮永照が作ったリードを守ってトップです!!」

恒子「姫松と清澄も僅差で追っています!!」

恒子「新道寺も部長の白水哩が奮闘して三校をちょー猛追してます!!」

恒子「果たして、今年のインターハイを制するのはどの高校か!!」

健夜「正直、どの高校が勝ってもおかしくないと思います」

恒子「小鍛冶プロは大将戦、注目する選手は誰ですか?」

健夜「そうですね……白糸台の大星選手、そして清澄の宮永咲選手もですが」

健夜「私が大将戦で最も注目してる選手は、姫松の末原選手です」

恒子「おおっ! それはどうしてでしょうか?」

健夜「二回戦の時と違い、準決勝の時の彼女はまるで別人のような打ち筋を見せていました」

健夜「何が彼女をここまで変えたのか、私には分かりませんでした」

健夜「大将戦、このまま彼女が何もせずに終わるとは、私には思えないですね」

恒子「おお、小鍛冶プロでも分からないって驚きですねー!」

恒子「小鍛冶プロが分からないということは……末原恭子を変えたのは、案外恋だったりするんじゃないでしょうか!?」

健夜「ちょっと、なんで私が分からないと答えが恋になるの!?」

恒子「えっ、だって小鍛冶プロ、恋愛ごとに関してはダメダメじゃないですか?」

健夜「そ、そんなことないよ!! わ、私だって本気を出せば……」ゴニョゴニョ

恒子「それでは、大将戦が始まるまで、もうしばらくお待ちください!!」

健夜「む、無視しないでよー!!」

咏「あのアナウンサーの言ってること、あながち間違ってないねぇ」

えり「そうなんですか?」

良子「ええ。三日前はカタカタ震えながら打ってた彼女が、昨日はエンジョイしながら打ってました」

良子「あの顔は、まさに恋するメイデンでした」

みさき「三尋木プロと戒能プロがそう言うのでしたら、昨日の野依プロの言ってたことは本当だったんですね」

理沙「ひどい!!」プンプン

はやり「はやりも気づいてたよ☆ 恋をすると女の子は綺麗になるから☆」

はやり「見て見て、はやりも恋してるから綺麗でしょ?☆」

えり「瑞原プロ、恋されてるんですか!?」

はやり「そうだよー☆ はやりはね……はやりのファンみーんなに恋してるの☆」キャハ

えり「…………」イラッ

咏「どうどうえりちゃん。まあ、小鍛冶プロには一生分かんないだろうね。知らんけど」

みさき「そんなことないですよ。小鍛冶プロだって女性なんですから」

咏「いや、絶対に分からないだろうねぃ」

良子「ノーチャンスノーチャンス」

理沙「無理!!」プンプン

はやり「アラフォーだもん、分かんないよ☆」

靖子「駄目だろうな」ガツガツ

大沼「……そうだな」

えり(小鍛冶プロ……哀れな)ホロッ

姫松高校控室


洋榎「とうとうこれで終わりか……」

絹恵「なんとか僅差で末原先輩に繋げれて良かったわ」

由子「ところで恭子はどこ行ったのよー?」

漫「あ、本当ですね」

末原「すみません、少し支度に手間取って」

洋榎「おお。恭子、最後頼んだ――」

末原「? どうかしましたか、主将?」

洋榎「き、恭子、なんやねん、その格好は……?」

末原「何って、制服ですが?」

洋榎「いやいや、なんでスカート履いとんねん!?」

洋榎「スカートが嫌やからスパッツ履いとるって言うとったのに、どないしたん!?」

末原「ちょっとした心境の変化ですよ」

由子「よく見たら恭子のリボン、初めて見るやつなのよー」

末原「ああ、これはな――世界で一番大切な人から貰ったもんなんよ」

末原「それでは主将、行ってきます」

ガチャ

絹恵「いやー、驚いたなお姉ちゃん」

洋榎「ホンマや。今年一番驚いたで」

漫「でも、末原先輩めっちゃ可愛かったですね」

由子「うーん、何が恭子をあそこまで変えたのよー?」

洋榎「まあ格好なんてどうでもええわ。さぁ、しっかり恭子の応援すんで!!」

インターハイ会場 廊下


末原(いよいよ最後か)

末原(このインターハイも色々あったな……)

末原(思えば咲に最初に会うたんもこの廊下やったな)

末原(あん時は咲に対して腹立っとたんのにな)クスッ

末原(でも、それが誤解で、そっから咲の力なりたい思うて)

末原(――気が付いたら、めっちゃ好きになっとった)

末原(最初は咲と同じ卓で打つのが怖ぁてしゃあなかったのに)

末原(今では咲と一緒に打ちたくてウズウズしとるわ)

末原(……でも、それもこれで終わりや)

末原(簡単には終わらせたりせえへんで。咲との対局!!)ゴッ

咲「あ、恭子さーん!!」

末原「なんや咲、待っとったんか?」

咲「はい、えへへ」

咲「って恭子さん、その格好どうしたんですか!?」

末原「たまにはこういう格好も悪ないと思うてな」

末原「それよか昨日は大丈夫やったか?」

咲「ま、まあ……部長や原村さんとかに、すごく怒られましたけど」テヘッ

末原「当然やな。あんだけ心配させたんやから」

咲「……いよいよ、これで終わりなんですね」

末原「……せやな」

咲「……あの、恭子さん」

末原「なんや、咲?」

咲「昨日みたいにぎゅって抱きしめてくれますか?」

末原「ん? 今日は緊張しとらへんやろ?」

咲「そんなことないですよ~。実はすっごく緊張してます」ニコニコ

末原「……しゃーないな。……ほら」ダキッ

咲「わっ////」

末原「…………////」

咲「…………////」

末原「……こ、これでええやろ?」スッ

咲「はい! ありがとうございます!!」ニッコリ

末原「……咲、お前ホンマは全然緊張しとらへんかったろ?」

咲「あ、ばれちゃいましたか?」テヘッ

末原「当たり前や。あんな笑顔で緊張しとる言うても説得力ないわ」

咲「言われてみればそうですよね」

末原「……やっと、克服できたんか?」

咲「いえ。全然克服なんてできてませんよ」

末原「えっ、せやったらなんで?」

咲「だって――」


咲「――恭子さんがそばにいるからです……」

末原「……咲……」


咲「さあ、決勝頑張りましょうね」

末原「……ああ!!」

――――――――――

恒子「お待たせしました!!」

恒子「九日間に渡って行われたインターハイもいよいよ最後です!!」

恒子「現在トップの白糸台が史上初の三連覇を達成するのでしょうか!?」

恒子「はたまた名門姫松、そして新道寺がそれを阻止するのでしょうか!?」

恒子「それとも清澄が初出場でインターハイ制覇という快挙を成し遂げるのでしょうか!?」

恒子「すべてはこの大将戦で決定いたします!!!」

恒子「それでは大将戦、開始です!!!!」

インターハイ決勝 大将戦


末原(なるほどな……いきなり五向聴からのスタートか……)

末原(……これが大星淡の能力……おもろい、やったるわ!)

淡「ツモ! 2000 4000」

――――――――――

恒子「まず大将戦、先制したのは白糸台の大星淡だ!!」

健夜「大星選手は場を支配することができますからね」

健夜「テンパイに持っていくだけでもかなり厳しいのではないでしょうか」

――――――――――

姫子「ツモ。8000オール!!」

末原(今度は新道寺か……周りは全員怪物揃い)

末原(これは凡人の私にはきついな……なんてな)

末原(確かに私は凡人やけど、今の私はただの凡人やない!)

末原(咲への想いに気づいて、その咲と一緒の卓で打てとる!!)

末原(見せたるで、私の咲への想いがどんだけのもんか!!)

末原「リーチ!!」

淡「えっ!?」

――――――――――

恒子「おーっと、姫松の末原恭子! 三順目で早くもリーチです!!」

健夜「配牌時から末原選手は、一向聴でしたからね」

健夜「おそらく今の彼女には、大星選手の支配は効いていないのでしょう」

――――――――――

末原(まだまだや、私の咲への想いはこっからや!!)

末原「カン!!」

末原「ツモ!! 4000 8000!!」

――――――――――

恒子「なんと姫松の末原恭子!! 嶺上開花だ!!」

健夜「宮永選手が得意とする手ですね。まさか末原選手がやってくるとは思いませんでした」

――――――――――

末原(どやっ、今の私はただの凡人やないで!!)

末原(さあ、怪物共、かかってこいや!!)

咲「恭子さんすごいですね……」

咲「でも、私だって負けません!!」

咲「ツモ! 12000オール!!」

――――――――――
恒子「今度は清澄の宮永咲が得意の嶺上開花で上がったー!!」

健夜「これで各高校、一度は一位に立ってますね」

恒子「さあ、勝利の女神が最後に微笑むのは、どの高校でしょうか!!」

――――――――――

恒子「――――――け、決着!!」

健夜「最後の最後まで息をつかせる暇を与えない対局は久しぶりに見ました」

恒子「これにて全国高等学校麻雀選手権大会、完全決着!!」

恒子「見事、インターハイを制した高校は―――――」
















恒子「――――――――――白糸台高校です!!」

末原「……届かなかったか」

姫子「……くやしかね」

咲「……お疲れ様でした」

淡「すっごい楽しかった!!」

淡「ねぇ、またこのメンバーで打とうよ!!」キラキラ

末原「……ええで。今度は私が勝ったるで!」

姫子「私かて、次打ったら負けんとね!」

咲「……麻雀って、やっぱり楽しいよね」

咲「またいっしょに楽しもうよ!!」

インターハイ会場 屋外


末原(……終わったな……)

末原(最終的には二位か、でも、それは私だけの力やない)

末原(……咲がいてくれたからあそこまでやれたんや)

咲「恭子さん、お待たせしました」

末原「ええよ、待ってへんから」

咲「インターハイ、お疲れ様でした」

末原「それは咲もやろ」

咲「あ、そうでしたね」

末原「まったく……」フフッ

咲「そういえばリボン、付けてくださってましたね……とても嬉しかったです」

末原「当たり前やん。咲が、私の為に買ってきてくれたもんやからな」

咲「恭子さん……」

咲「でもなんで急にいつもと違う格好にしたんですか?」

咲「恭子さんって、スパッツのイメージだったんですけど……」

末原「そ、それはな……」

咲「それは?」

末原「……さ、咲が可愛い言うてくれたからよ」

咲「そ、それでスカート姿だったんですか?」

末原「せ、せや。……へ、変やなかったか?」

咲「変じゃなかったですよ。すっごく可愛かったです!!」

末原「そ、そうか?////」テレテレ

咲「……インターハイ、終わりましたね」

末原「せやな……」

咲「……聞かせてもらえますか、昨日私に言おうとしていたことを」

末原(……ついにきたか、こん瞬間が)

咲「すっごく気になってたんですよ。恭子さんがどんなことを私に伝えたかったのか?」

咲「約束しましたよね、決勝終わったら言ってくれるって」

末原「あ、ああ。じ、実はな……」カタカタ

末原(あ、あれ? 私めっちゃ震えとる……)

末原(怖い……そうか、私怖いんやな……)

末原(好きって伝えて、咲と今までのような親しい間柄でいられんくなること)

末原(咲にフラれてもうたら、私どうしてええか分からんくなる。いや、フラれるだけで済んだらまだええわ)

末原(下手したら嫌われてまうこと……軽蔑されてまうこと……)

末原(そないなこと考えたら、怖ぁてメゲてまうわ……)

末原(……いや、メゲたらアカン!! ここで勇気出さんでいつ出すんや!!)

末原(頑張れ恭子! お前の想い、咲に全部ぶつけるんや!!)

末原「わ、私はな――――」







末原「咲がむっちゃ好きやねん!!」







咲「えっ!?」

末原「最初は舐めプレイやらかす、いけすかんやつや思ってた」

末原「でもそれは誤解で、ホンマはええ子やって知った」

末原「せやからなんとか力になってやりたい、そう思ったんよ」

末原「でも、一緒におるうちに、どんどん咲に惹かれていった」

末原「咲に可愛いって言われた時は心が躍るように嬉しかった!」

末原「咲が迷子になった聞いて、胸が張り裂けそうなくらいしんどかった!」

末原「咲が無事や知った時は、涙が溢れるくらいホッとした!」

末原「そして気づいてもうた、咲のことが好きやって」

末原「後輩とか妹のようにとかやない。……一人の女性として愛しとる」

末原「ホンマは昨日すぐに伝えたかった。でも、その所為で咲が決勝でまともに打てんくなるかもしれん」

末原「そう考えたら、よう言えんかった……」

末原「もう前みたいな関係には戻れへんかもしれん。でも、それでも私は言いたかったんや」

末原「……咲がむっちゃ、好きやって……」

咲「…………」

末原「…………」カタカタ

咲「……私、今まで人を好きになったことなかったんです」

末原「……さ、咲?」

咲「最初、恭子さんが相談に乗ってくれるって言ってくれた時、すごく嬉しかったんです」

咲「その後も親身になって相談に乗ってくれて、一緒に東京回ったりしてすごく楽しかったです……」

咲「まるで、もう一人お姉ちゃんができた、そう思ってました」

末原「…………」

咲「……昨日、試合前に恭子さんが抱きしめてくれた時、驚くくらいあっという間に緊張が解けたんです」

咲「代わりに、心臓がすごくバクバクしてました」

咲「迷子になってとっても不安だった時、真っ先に恭子さんのこと考えてました」

咲「そして今、恭子さんに好きって言われて、すごく嬉しかったんです」

咲「こんなこと、もし恭子さんがお姉ちゃんだって思ってたら、感じないですよね」

咲「だから気づいたんです。この気持ちが、『恋』なんだな……って」

末原「そ、それじゃ……」

咲「私も大好きです、恭子さん////」

末原「さ、咲!!!」ダキッ

咲「わぷっ、い、痛いですよ、恭子さん////」

末原「ご、ごめんな……」グスッ

咲「恭子さん、なんで泣いてるんですか?」

末原「……怖かったんや。もし咲に嫌われたら、軽蔑されたらと思っとったから……」グスリ

咲「…………そんなこと、ある訳ないですよ」

咲「私が恭子さんを嫌いになるなんて、絶対にないです」

末原「さ、咲~」ヒックヒック


―――――

―――

インターハイ会場 廊下


咲「それじゃ恭子さん、行ってきますね!」

末原「咲、私は主将が出てるから、表立って応援はできへん」

末原「でもな、咲のことは心からやけど、精一杯応援しとるからな!」

末原「せやから個人戦、頑張ってきいや!!」

咲「はい、頑張ります!!」

末原「でも大丈夫か?」

咲「何がですか?」

末原「ほら、団体戦の時は、私が一緒やから緊張せえへんみたいなこと言うとったけどな」

末原「個人戦では私は一緒におられへん。緊張せんと姉さんと打てるか心配になってな」

咲「あ、そうですね……ちょっと不安です」

末原「うーん、どないしよっかな……」

咲「……恭子さん、勇気、貰ってもいいですか?」

末原「ん? 勇気貰うって、いったい――」



咲「んっ――」チュッ

末原「~~~~!!!!????」



咲「――ぷはぁ。……勇気、頂きました////」ニコッ

末原「…………////」ポー

咲「それじゃ、行ってきますね、恭子さん!!」タタッ

絹恵「あ、ここにいましたか、末原先輩」

絹恵「もうお姉ちゃんの試合始まってしまいますよ」

絹恵「ほら、早く応援に行きましょうって」

末原「……なあ、絹ちゃん」

絹恵「どうしたんですか?」

末原「キスって、どんな味か知っとるか?」

絹恵「キ、キスって!? いきなり何言うてはるんですか!?////」

末原「キスはな……甘い甘い、恋の味がすんねんで////」ウットリ

絹恵「……アカン、末原先輩が壊れてしもうたわ……」


―――――

―――

長野


洋榎「もうそろそろ清澄に着くな」

絹恵「せやなお姉ちゃん」

由子「それにしても、清澄と練習試合だなんて、急にどうしたのよー?」

漫「そうですよ……それになんで引退した先輩方まで一緒に来るんですか?」ブツブツ

赤阪「あ~ん、漫ちゃ~ん、嫌がってる顔、最高に可愛えわ~」ルンルン

洋榎「え、ええやないか別に////」

絹恵「……お姉ちゃん、怪しいな?」ジー

洋榎「あ、怪しいことなんて何もあらへんよ!!」アセアセ

末原「…………」

末原(もうすぐ会えるな、咲)

清澄高校部室


コンコン

久「はい、どうぞ」

ガチャ

洋榎「久、約束通り来たったでー」

久「あら洋榎。早かったじゃない。……そんなに早く私に会いたかったの?」

洋榎「そ、そないなことあらへんよ////」

絹恵「」

咲「…………」キョロキョロ

末原「咲ーー!!」

咲「あ、恭子さん――んっ!?」

末原「ちゅ……んっ…あむ……」チュッチュッ

和「」

末原「ふぅ……咲、会いたかったで」

咲「も、もう恭子さん……みんなの前でキスは、は、恥ずかしいですよ////」

末原「ええやないか、見せつけてやったら」

咲「もう……しょうがないですね……んっ……////」チュッ

由子「……恭子が、壊れたのよー……」

優希「おぉ~、咲ちゃん大胆だじぇ////」

京太郎「咲、お前いつの間に!?」

まこ「おやおや、朝からお熱いの~」ニヤニヤ

和「咲さんが他の女性とキスなんてSOASOASOASOASOA」ブツブツ

久「ねぇ洋榎、麻雀の前に、ベットの上で一局どう?」

洋榎「あ、あかんて久……うちまだシャワー浴びてへんし……////」

絹恵「お姉ちゃんが他の女とイチャイチャとかありえへんありえへんありえへん」ブツブツ

赤阪「す~ずちゃ~ん、こっちの服も似合いそうやな~」ルンルン

漫「……誰か私を助けて下さい……」シクシク

末原「咲、私な、長野の大学受験することにしたんよ」

咲「本当ですか!?」

末原「ホンマや。せやから来年の春からは、毎日会えるで」

咲「うわ~、今から楽しみです」

末原「咲」

咲「なんですか、恭子さん?」


末原「むっちゃ好きやで」

咲「私も、むっちゃ好きです」




末原「咲がむっちゃ好きやねん!!」咲「えっ!?」  カン

代行、支援ありがとうッス!!
ってかいくつかSS書きましたけど
こんなに反応があったのは初めてで嬉しいッス!!

咲さんにカタカタさせられる末原さんが大好き!!
でも逆に末原さんが咲さんにベタ惚れってのもアリじゃないか!!

咲恭も好きだけど恭咲も大好きだ!!!!

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