モバP「担当アイドルとうまく意思疎通できない……」(210)

P「昔から、アイドルが好きだった」

P「そんなアイドルたちを応援する立場になりたかった」

P「そして、念願がかなって俺は今アイドルのプロデューサーという職業に就くことができた」


P「……なのに、俺は」

P「担当アイドルとうまく意思疎通できない……」

P「どうしてこうなった」

P「……なんでだろうなぁ、俺が思ってたのはもう少し」

 ガッチャーンッ!

??「おはようございます! ふふん」

P「ん? あぁ……おはよう、幸子」

幸子「おやおや? 元気がありませんね。まったく仕方のない人ですね!」

P(俺の担当は3人、幸子は一番まともだ)

幸子「でも、朝からボクの顔を見れたんです。疲れなんて吹っ飛んでしまったでしょう?」

P「あぁ、うん……まぁ担当だし毎朝顔を合わせてるんだけどな」

幸子「つまり、毎朝疲れが吹っ飛んでいるってことでしょう? ふふん、プロデューサーさんは幸せ者ですね」

P「うん、そうだな」



輿水幸子(14)

幸子「まったく、ボクのプロデューサーをしているんだからもっとしっかりしてくれなきゃ困りますよ?」

P「そうだな……うん、そうだな」

幸子「やれやれ、ボクがカワイイって証明をするには一人じゃ無理なんですから」

P「あぁ、頑張るよ」

幸子「それじゃあ、キリキリ働いてください! ボクのために!」

P「いや、幸子のためっていうかユニットのためだけどな」

幸子「……そのうち、ボクのソロの活動が増えてボクのためだけに働くことになりますよ!」

P「あー、幸子は将来有望だなぁ」

幸子「ふふん、当然です。ボクはカワイイので!」ドヤッ

P(幸子は話す内容がいちいち自分の可愛さについてなこと以外は普通……なんだけどなぁ)

幸子「どうしたんですか? 同意ぐらいしてくれてもいいんじゃないですか?」

P「あぁ、うん。期待してるよ」

幸子「なんですかその気の抜けた返事は! まったく、本当にどうしようもない人なんですから……」

P「ハハハ……」

P「……ん、そろそろ他の2人も来ていい時間だな」

幸子「ボクは万全を期して早めに来ましたがね! ふふん、意識の持ち方が違うんですよ」

P「そうか……すごいな」

幸子「当然です! ボクはカワイイので!」ドヤッ

P「あぁ……」

 ガチャッ…

??「フッ……煩わしい太陽ね」

P「あ、蘭子……おはよう」

幸子「神崎さん。おはようございます」

蘭子「我が下僕P、そして寵愛を求む姫よ。闇へと声を響かせよう!」

P(言葉が通じないって意味じゃ、段違いなのがこの子……神崎蘭子だ)

蘭子「ククク……時は止まることを知らぬか……」

P(なんか笑ってるけどよくわからない)


神崎蘭子(14)

幸子「まったく、仕方ない人ですね。だけどボクが早めに来ただけなのでご心配なく!」

P(なぜか幸子は蘭子が何を言ってるか理解できるみたいだけど……何言ってるんだ?)

P(なんでわかるのか聞いたら『ボクはカワイイので!』って返されたし。どういうことだよ……)

蘭子「安らぎのひと時というわけか。輝きたる進撃者はいずこへ?」

幸子「そういうことです……ふむ、もうしばらくしたら来るんじゃないですか?」

 ドタドタドタドタ…

幸子「ほら、噂をすればってやつですよ」

蘭子「始まりを告げる鐘よ……」

P(……蘭子とは別ベクトルで意思疎通が困難な子が、来る)


 ガッチャーン☆

きらり「うっきゃー! ちこくちこくー☆ ヤバーい! おまたせしちゃったかにぃ?」


諸星きらり(17)

幸子「まったく、諸星さんは。寝坊でもしたんですか?」

きらり「そーなのー! 朝ね、おめめがパッチリしてばっちし☆って思ったのに時計さん見たら時計さんがおねんねしちゃってたのー! ヤバーい!」

蘭子「フッ……刻む時すら虚空へと消えるとはまさに輝ける星のチカラよ」

きらり「むむむー、お仕事が楽しみできらりんパワーがにゅにゅにゅーってなっちゃったのかにぃ……」

幸子「さぁ、どうなんでしょうね? ボクがカワイイせいかもしれませんね!」ドヤッ

きらり「えー! 幸子ちゃんスゴーい! 時計止めちゃうのー!?」

幸子「ふふん、真相はわかりませんけどね」

きらり「あっ、でもそしたらきらり困っちゃうからもうやめてー!」

幸子「考えておきましょう!」

蘭子「偶像たる力は、時も距離すらも通じぬというわけか……」

P(……この3人が、俺の担当アイドルだ)

P(悪い子達ではない。でも、意思疎通がうまくいかない)

P(……俺、プロデューサー向いてないのかなぁ……)

幸子「……どうしたんですか?」

P「え? 何がだ?」

幸子「まったく、聞こえてなかったみたいですね? ボクのカワイイ声を聞きのがすだなんてもったいない!」

P「あ……あぁ。なるほど、仕事の時間か」

きらり「Pちゃん! 今日はどんなお仕事なのー?」

P「そうだな……うん、今日はグラビアが1本と……」

蘭子「……我が身体を衆目へと刻むか。クク、灼熱に果てるがいいわ!」

きらり「うきゃー! お写真ぱしゃぱしゃ? やっちゃう? やっちゃうー?」

P「お、おう。そうだな」

幸子「それと、なんですか?」

P「それから、えぇと……蘭子にショートコラムの依頼があるな」

幸子「む、神崎さんだけですか?」

P「そ、そうだな……ソロのお仕事っていうのも、増やしてみようって話した……よな?」

幸子「むーん……まぁ、別にいいですけれど。わかりました、準備しましょうか」

お風呂に入ろう
ばしゃばしゃ

幸子「さぁカメラマンさん! このカワイイボクをちゃんとかわいく撮ってくださいね!」

蘭子「ククク……私のことを映すその目、その瞳よ。この悠久の時を祝うが良い!」

きらり「にょっわー! きらりもかわいーく撮ってほしいにぃ! もっともーっとおっきくなっちゃうにぃー!」

幸子「あぁ、諸星さん。前に出すぎですよ! まったく、ボクが写らないじゃないですか」

きらり「にょ……ごめんなさい」

幸子「わかってくださればいいんです。いいですか、諸星さんだってボクほどではないとはいえカワイイんですからもっと写り方を考えないと」

きらり「うつりかたー?」

幸子「そうです。ただ横に並んだり前に出たのではあなただけ見切れてしまうでしょう? だから、ちゃんとそこをどう見えるようにするかがですね……」

きらり「なるほどー、りょーかい☆」ヒョイッ

幸子「えっ? ちょ、ちょっと!」

きらり「うっきゃー! 幸子ちゃんちっちゃーい! かわいー!」

幸子「な、なんでボクを抱えるんですか! 確かにボクはカワイイですけれど、ぬいぐるみじゃないんですよ!」

きらり「でもでも、こうしたらいっしょにお写真に写れるにぃ?」

幸子「う、うぐ」

きらり「でも……幸子ちゃん、いや?」

幸子「……まったく」

きらり「にょ?」

幸子「諸星さんに抱えられた状態でもカワイイだなんてボクは本当に罪なオンナですね! ふふん!」

きらり「幸子ちゃん……にょわーっ!」ぎゅうっ!

幸子「ちょ、ちょっと! もう、苦しいですってば!」

蘭子「繋がりは時として奇跡を呼ぶか……」

きらり「蘭子ちゃんもぎゅーっ!」

蘭子「ふぇっ!? あ、あうっ……」

きらり「3人いっしょにぎゅーってして、いっぱいハピハピすぅー!」

P「……それぞれが1枚ずつと、集合が1枚、2人ペアを3枚作る予定だったのになぁ」

幸子「ボクがかわいすぎたんでしょうね」

きらり「いっぱいぎゅぎゅーってして、きゅんきゅんしてむゃーってなったのー!」

蘭子「我が魂の導きか……世へと響く孤高の音も、共鳴し、さらに大きくなるということね」

P「うん。怒ってるわけじゃないんだ。きらりが幸子を抱きしめたくだりから集合が5枚採用してもらえて、ページ増えたんだし」

幸子「やっぱりボクがカワイイからですね!」ドヤッ

きらり「あのねあのね、幸子ちゃんはぎゅーってするとむにむにーってして、蘭子ちゃんはぎゅーってするとむにゅむにゅーってしたのー!」

蘭子「進撃者たるその波及力はすさまじいが、私の真なる内へと届くことはなかったわ……フッ」

P(ダメだ、やっぱりまとまらない)

P「まぁ、なんだ……みんな、よく頑張ったな!」

幸子「ふふん。ボクにとっては朝飯前ですよ!」ドヤッ

きらり「にゅふふん☆ またみんなと一緒にお写真撮りたいにぃ!」

蘭子「私の前へと広がりし混沌も、共に行くものがあるのならば乗り越えるのは容易いわ!」

P「……うん、そうだな!」

P(なんだかよくわからないが、3人はすごく満足気だ)

P(うぅん……仕事はきちんとこなしているけど、プライベートは深く干渉したことないような気がする)

P(もう少し、俺の方からきちんとアプローチをしてみるべきかもしれないな)

幸子「お疲れ様でした! 神崎さん、頑張ってくださいね!」

きらり「おつぁーしゃー☆ まったねー!」

蘭子「ククク……あの鐘の元へ、また集おうぞ!」

P「幸子もきらりも気を付けて帰るんだぞ」

幸子「大丈夫ですよ、駅からはちゃんとお迎えが来ますから!」

きらり「そこまではいっしょにいくのー! うぇへへへー☆」

P「そうか……最寄駅はわかるか?」

幸子「当然でしょう? ボクはカワイイですからね!」ドヤッ

きらり「うきゃー! 幸子ちゃんスゴーい! ヤバーい!」

幸子「ふふん、そうでしょうそうでしょう」

P(……楽しそうだから放っておこう。駅までは10分もかからない距離だし)

P(今はそれよりも……)

蘭子「ククク……魂が猛るわ……」

P(一番、会話が成り立たない相手と2人っきりになったことが問題だよなぁ……)

蘭子「どうした? 我が下僕よ」

P「あぁ、うん。少し考え事をな……」

蘭子「そうか? 何者かによるまじないなどではないのならよいが……」

P(まじないってなんだろうな……)

蘭子「まぁ、良い。私を呼ぶ声達へと応えるため、往くぞ!」

P「え? あ、うん。そろそろコラムの取材が来るしいこうか」

記者「今を時めく人気アイドル、神崎蘭子さん。その素顔を見たいということでお伺いしました」

蘭子「今こそ創世の時!」

記者「えーっと……よろしくお願いします」

P「よろしくお願いします」

記者「神崎蘭子さんは普段から、その独特な言葉づかいなんですか?」

蘭子「我が魂に刻まれし因果よ。『瞳』を持たぬものに解するは難いか……」

P「そうですね、こういっているとおりです」

P(どのとおりなんだろうか)

記者「なるほどー」

P(わかってるんだろうか……)

記者「では、普段苦労する点などは?」

蘭子「私の因果は他者をも巻き込む……孤高たるありかたも、楽ではない……」

記者「……えーっと、どういうことでしょう?」

P「え? えーっとですね……」

蘭子「む……我が下僕よ」

P(なんだかじっと見つめられてる……この答え方で蘭子に対するイメージが変わる! しっかり考えろ、俺!)

記者「あの……」

P「ちょ、ちょっと待ってくださいね。えっと……」

蘭子「……」ジッ…

P(蘭子はなんて言った? いんががたしゃをまきこむ……? ここうたるありかた……?)

P「あー、そう……な、なかなか信じられる人ができなくて大変だ、と……」

記者「そうなんですか、なるほど。流石プロデューサーさんですね! よくわかってらっしゃる」

P「い、いえいえ……」

蘭子「……!」パァァ

P(ほっ、どうやらあってたみたいだ。よかった……)

記者「では、同じユニットの輿水幸子さんや諸星きらりさんとはどうなんでしょう?」

蘭子「永劫たる孤独もまた覇道。だが私が望むは王道……」

記者「ふむふむ。プロデューサーさん」

P「え? あぁ……ひ、1人でやるのもいいけど、やっぱりあの2人といると楽しいし一緒にトップを目指したい……とか」

記者「仲がよろしいんですね?」

P「それはもう。個性的だけどいいパートナーをしていると思いますよ」

蘭子「……ククク、流石は我が下僕よ」

P(あ、褒められた)

記者「いやぁ、助かります。神崎さんの言葉をそのまま載せるとわからないって意見もでちゃいそうなので」

蘭子「我が言霊を解すには『瞳』が必要よ。恥じることはないわ」

記者「なるほど」

P(この人、とりあえずいったんうなずけばいいと思ってないか……?)

記者「でも、できれば神崎さん自身の素の言葉も聞いてみたいななんて……」

蘭子「む、戯言を……」

記者「やっぱり、神崎さんにも乙女な一面とかあるんじゃないですか? どうなんでしょう?」

P「いや、あの」

記者「すみません、できれば神崎さん本人に!」

蘭子「く、くくく……」

P(か、顔がひきつってる……)

記者「やっぱり訳す時に多少別のニュアンスが入っちゃったりしているかもしれませんし。お願いできませんか?」

蘭子「う……あ……」チラッ

P「あ……あの!」

記者「はい?」

P「すみません。やっぱりアイドルの意思を優先したいので……大丈夫です。蘭子のことは俺が一番分かっています。間違えたり他のニュアンスなんて入ってません」

記者「……そこまでいうのなら、いいんですけれど。神崎さんもいいんですか……?」

蘭子「異はないわ。真実のみを語るヨリシロよ」

記者「――はい、ありがとうございました!」

蘭子「闇に飲まれよ!」

P「お疲れ様でした」

記者「いやぁ、すみませんでした」

P「いえ。蘭子のワガママもありましたし……すみません」

記者「こちらとしても無茶な要求でしたかね? でもスムーズに訳してくださって助かりました」

P「は、ははは……まぁこれぐらいは……」

P(無我夢中でむちゃくちゃな訳をしたような気がする……蘭子怒ってないかな?)

記者「それでは、また!」

蘭子「フッ、再びめぐり合う時を待とう……」

P「はい、ぜひまたよろしくお願いします!」

P「あ、あの……蘭子?」

蘭子「……」

P「その、普通にしゃべるのが苦手だろ? 俺が勝手に訳したけど……」

蘭子「……」

P「ごめんな? 変な意訳とか、してなかったか?」

蘭子「……プ、プロ」

P「え?」

蘭子「プロ……プロ、プロデューサー!」

P「……!?」

P(蘭子が、普通に理解できる単語を……!?)

蘭子「わ、わた……私。その……」

P「え?」

蘭子「……あり、がとう。わ、私、あなたの期待に答えてみせるから……! そ、それだけ言いたかったの」

P「あ……」

蘭子「さ、さらばよ!」

 タッタッタッタ……

P「……」

P「なんだ……蘭子、普通に、しゃべってくれるんじゃないか……しかも、お礼だなんて……」


P「……はっ!? お礼を言われたことに驚いてフリーズしちゃったけどどこ行く気だ蘭子!?」

蘭子「うぐぅ……無礼者め……」

P「いや、逃げなくてもいいじゃないか……」

蘭子「あ、あの場にて……あのような……(あ、あのインタビューで、あんな……)」

P「あれ?」

蘭子「む、如何したというのだ?(ど、どうしたんですか?)」

P(……なんだか、蘭子が何を言ってるかわかるぞ……? どういうことだ……?)

蘭子「どうしたのだ……? ま、まさか、やはり何者かのまじないが!(いったい何が……ま、まさか! やっぱり体調が悪いんじゃ!?)」

P「い、いや。元気だよ。体調は悪くない」

蘭子「ふん、陽なる気を持つか……(元気なら、いいんですけれど……)」

P「……ははっ、蘭子は優しいんだなぁ」

蘭子「下僕を思うも主人の務め!(プロデューサーが頑張ってくれてるから、心配なんです!)」

P「ところで蘭子、インタビューのことって、なんだっけ?」

蘭子「……」ジトッ…

P「あ、あの……」

蘭子「ふん。所詮はその程度か!(わからないならいいです! 知りません!)」

P「ご、ごめんな蘭子。インタビューに答えるのに一生懸命で……こう、ちゃんと蘭子のことを伝えれたらと思ってだな」

蘭子「我が言霊を解すことができるは選ばれし物のみ(ちゃんとわかってくれる人って、少ないですしね)」

P「ひょっとして変な訳し方しちゃったか? 途中の質問はもうなんだったのか……」

蘭子「……やはり下僕か。闇の彼方の如く(……やっぱりもういいです。忘れてください)」

P「いや、でもだな? せめてどういうことだったかだけでも……もう二度としないよう気を付けるから!」

蘭子「我がカルマへと響いたそなたの言葉……決して、忘れはしない。そう伝えたかったのに」

P「え?」

蘭子「ふん! さぁ、私達の宮殿へと参らん!(いいです! 帰りましょう!)」

P「ちょ、ちょっと待ってくれよ蘭子!」

P(最後の言葉だけ訳がわからなかった……なんだったんだ?)

蘭子(……プロデューサーが、私のことを考えて、ちゃんと答えてくれて)


記者『それじゃあ、蘭子さんの夢は?』

蘭子『それは……』

P『当然トップアイドルです! そりゃあ、少し変わっているかもしれませんが。やっぱり蘭子はきちんとかわいらしい女の子ですから!』

記者『ちょ、ちょっとプロデューサーさん。神崎さんは答えてませんけど……』

P『あ、すみません……つ、つい熱くなって……』

蘭子『クッ……ふふっ。その通り。我が意を組むとは流石は下僕よ!』


蘭子(嬉しかったんです。きちんと、かわいらしいって言ってくれて……)

蘭子(……とっても嬉しくって、だからこれからも頑張りますって言いたかったのに。忘れちゃうプロデューサーなんて)

P「蘭子、ほら。俺も至らないところだらけだけど、がんばって理解できるようになるから……」

蘭子「……ならば、並べるように励め。……我が友よ」

P「お、おう!」

蘭子(じゃあ、ちゃんと一緒にいてくださいね。……プロデューサー)

――――

――

P(なんだかよくわからないうちに、蘭子との意思疎通ができるようになった)

P(なんとなくだけど、聞きながら意味が頭に流れ込んでくるような……これがバウリンガルってやつか?)

P(あのインタビューで意味を理解しようと必死だったおかげかもしれないな……)

P「……とはいえ」

幸子「おはようございます! おや? どうしたんですか? 悩み事でもあるんですか?」

P「あぁ、おはよう幸子」

幸子「ふふん! 流石はボクですね! 5分前どころか20分前には到着ですよ!」ドヤッ

P(まだ解決には遠いよなぁ……)

幸子「それで、プロデューサーさんはいったいどうしたんですか?」

P「いや、少し悩みがあってな」

幸子「へぇ、大変ですね」

P「ちょっとだけ進展したような気もするんだが……まだ根本的な解決にはいたってなくてだな……」

幸子「ふぅん……なかなか苦労してるみたいですね! まったく、仕事場にまでそれを持ちこんじゃうなんて」

幸子「プロデューサーさんはダメダメですね!」ドヤァッ!

P「……でも、まぁ進展があっただけいいだろ?」

幸子「それもそうですけれどね。まったく、1人じゃ限界もあるでしょう? カワイイボクと違ってプロデューサーさんは不器用なんですから」

P「んー、これは割と個人の問題のような……」

幸子「へぇ、このボクに関係ないっていうんですか?」

P「そ、そういうわけじゃないが」

幸子「本当にプロデューサーさんは仕方のない人ですね! 1人でなんでもできるだなんて、まったく」

P「……頼る、たよるかぁ……」

幸子「そうです。身近な相手に言うことで楽になることだってあるでしょう?」

P「考えてみるよ。ありがとうな、幸子」

幸子「いえいえ。ボクはカワイイだけじゃなくて優しいですから!」ドヤッ!

P(まぁ、幸子本人に『お前とどう接していいかわからない』なんていうわけにはいかないけれど……蘭子に聞いてもらうか……?)

 ガッチャーン☆

きらり「おいーっす☆ きらりんとーちゃく!」

P「お。おはよう、きらり」

きらり「おっすおっす! Pちゃん元気してぅー?」

P「あ、あぁ……なんとか……」

幸子「おはようございます、諸星さん。今日は大丈夫だったみたいですね?」

きらり「うん! そーなのー! あのねあのね、ぴぴぴーっていうからおめめパチってしてね! そしたらそしたらちゃんと朝だったのー!」

幸子「それはよかったですね! ボクがちゃんと止まらないように祈ったおかげでしょうか」

きらり「わー! 幸子ちゃんありがとー☆ 今日もハピハピー!」ギュッ

幸子「だ、だから抱き着かないでください! もうっ!」

P(きらり……俺よりも身長が高くて、この言動。どうしても苦手意識が出ちゃうんだよな……)

 ガチャッ……

蘭子「ククク……煩わしい太陽ね(おはようございます!)」

P「お。おはよう、蘭子」

幸子「おや、全員そろいましたね! おはようございます、神崎さん」

きらり「にょっわー! 蘭子ちゃんおはゆー☆」

蘭子「輝きたる進撃者よ。そのまばゆさは曇ることも知らぬ……(きらりさんは今日も元気ですね!)」

きらり「うぇへへへー、きらりんパワー☆まっくすで今日もやったるにぃ!」

蘭子「その星屑の欠片、我らの中にもまた目覚めよう!(じゃあ、私も元気を分けてもらって……頑張ります!)」

幸子「ふふん、ボクらのことを見た人たちもきっと元気になるでしょうね!」

P(……蘭子は思ったよりも普通の話題で話してたんだな……)

幸子「それでプロデューサーさん、今日の予定は?」

P「えーっと、まずはCDのサイン会」

幸子「やれやれ、なかなか骨が折れそうですね! ボクたちも人気者ですし」

蘭子「血が滾るわ……(頑張ります!)」

きらり「にゅふふー、きらりのことすきすきっていってくれゆ人たちと会えるんだよね? うれすぃー☆」

P「そう、そのあとは……きらり。ソロで収録があるんだ」

きらり「にょにょにょっ!? きらりひとりで!?」

P「あぁ。どうしても画として欲しいと言われてな……」

きらり「むむむー、やったるにぃ!」

P「お、おう。がんばってくれ」

幸子「む、ボクには無いんですか?」

P「向こうからは目立つ子を1人っていう指示が出ててな……蘭子はソロは厳しいだろうし」

蘭子「致し方なし。輝ける星は、星座を紡ぐがごとく……(そうですね、私は少し。でも、きらりさんなら大丈夫だと思います……)」

幸子「まるでボクが目立たないみたいじゃないですか!」

P「あ、いや。すまない、そういう意味じゃないんだが……」

幸子「……ふーんだ、いいですよ。今日はちょうど習い事があるから早く帰りたかったですし!」

きらり「にょ……幸子ちゃん……」

幸子「まぁ、諸星さんもボクほどじゃないですがカワイイですし! ちゃんとボクたちのことも宣伝してくださいね?」

きらり「う、うん! がんばるにぃ!」

蘭子「ふふっ、その輝きが万里を照らすだろう(きらりさんだから、きっとうまくいきますよ)」

きらり「蘭子ちゃん……うんっ! にょっわー! それじゃーサイン会やっちゃう? やっちゃうー?」

蘭子「うむ、参ろうぞ!(はい、いきましょう!)」

P「……うん。話がまとまったみたいだしいこうか!」

きらり「きらりたちのこと、好きでいてくれてありがとー☆」

幸子「ボクらのサインがもらえるだなんて、本当に幸せ者ですね!」

蘭子「フッ……私が紡ぐからには扱いには気を付けることね(えっと、大切にしてもらえると嬉しいです!)」

P(サインを求める人たちの列……)

P(アイドルとして、やっと大きく羽ばたき始めたところだな。あぁ、よかった)

P(アイドルへの苦手意識もなくさないと、ここから先は厳しいだろうなぁ……)

P(ただがむしゃらに、アイドルたちに頑張ってもらうだけじゃ、ダメだ)


きらり「……にょ」

P「ん?」

きらり「……」チョイチョイ

P(なんだ? 何かあったのか?)

P「どうした、きらり?」

きらり「あのね、Pちゃん……幸子ちゃん、たぶんおトイレいきたいと思うにぃ?」

P「え? ……幸子が?」チラッ


ファン「いつも見てます!」

幸子「ふふん、そうですか。まぁボクはカワイイですからね! ちゃんとこれからも見逃さないでいるといいですよ」


P(そういう風には見えないが……)

きらり「いかせてあげてほしいにぃ……」

P(しかし、今並んでいるファンの人たちを待たせることになるわけで……)

P(それに幸子はプライドが高いし、行きたくもないのにトイレに行けなんて言われたら拗ねるかも……)

P(……いや。俺は何を考えてるんだ)

P(その時は俺がそれを受け止めればいいんだ。たぶん、きらりなりに理由があって言ってるはずだ)

P(だから……)


P「おーい、幸子。少しいいか?」

幸子「え?」

幸子「まったく、なんですか? いったんボクのファンの人へのサインを中断させるだなんて」

P「いや、その……幸子。大丈夫か?」

幸子「何がです?」

P「……トイレ、いってきた方がいいんじゃないか?」

幸子「なっ……」

P「あー、いや、その……」

幸子「何を考えてるんですか、まったく! デリカシーがないんですね!」

P「ご、ごめんなさい」

幸子「わ、わざわざ呼び出してまでだなんて……もう……」

P「すまん、勝手に勘違いしたな……」

幸子「……いえ。でも、助かりました。すこしお茶を飲みすぎちゃったみたいで」

P「そ、そうか。行ってこい」

幸子「でも、流石にさっきのはひどいですよ! もう……それじゃあ、ちょっと急いで済ませてきます」

P(……プロデューサーなのに気づけないなんてな。きらりには感謝しないと……)

ファン「……幸子ちゃん、どうしたんだろう?」

きらり「幸子ちゃんはー、だーいじなお話をしてるからちょっーと待ってほしいにぃー?」

ファン「へ? は、はい!」

きらり「うぇへへ、後ろの人たちもごめんねー? なんだか、いいおしらせもあるかもしれないにぃ?」

蘭子「悠久なる時の調べを奏でよう(少し待っててくださいね!)」

幸子「す、すみません。お待たせしました」

蘭子「しばしの時の戯れよ(いえいえ、お帰りなさい)」

幸子「えーっと……その……」

きらり「幸子ちゃん、今度の写真集のお話どうだったー?」

幸子「え? あ、そうそう! 実は今度ですね、ボクのソロの写真集が出るんです!」

  \オォォォォ…!/

幸子「ふふん、とびっきりかわいく撮るための相談でした。ちゃんと、買ってくださいね?」

  \ワァァー!/

きらり「……ばっちし☆」

幸子「助かりました、ありがとうございます」

きらり「うぇへへへ、よかったにぃ☆ しゃしんしゅー!」

幸子「撮ってもらわないといけなくなりましたけどね!」

P「ま、任せてくれ」

きらり「Pちゃんならだいじょぶって信じてるにぃ!」

P「……あぁ、ありがとう」

幸子「何の話です?」

P「いや、ケツに火が付いた形になるからたきつけてくれてありがとうってな」

きらり「どーいたしましてー☆」

蘭子「フフフ……実に良き時よ(ふふっ……なんだか、いい雰囲気ですね……)」

P「それじゃあ、気を付けて帰るんだぞ? 道は……」

蘭子「我が瞳の前に、偽りは映らぬ!(大丈夫です、迷いません!)」

幸子「安心してください、ボクはカワイイですからね!」ドヤッ

P「……うん、信じてるぞ」

幸子「ふふん、それではまた明日」

蘭子「輪廻を巡れ!(また明日ー!)」

きらり「まったねー☆」

P「あぁ、また明日!」


P「……それで、きらり?」

きらり「にょ?」

P「なんで幸子がトイレに行きたがってるって気づいたんだ?」

きらり「むー、幸子ちゃんってガマンするのじょーずだけど、ちょっぴりもじもじしてたから……」

P「……そんな少しのところから察したのか」

きらり「うぇへへへー、きらりは幸子ちゃんのこともだーいすきだからにぃ☆」

P「俺もちゃんとみてたつもりだったんだけどな……」

きらり「きらりも、幸子ちゃんも女の子だからたぶんわかったんだにぃー?」

P「そういうものかなぁ?」

きらり「そゆこと! にゅふふふん、ばっちし?」

P「……ん、ばっちしだ」

きらり「それじゃあお仕事いっくよー!」

P「よーし、出発だ!」

きらり「おーっ!」

司会「さてこの問題。きらりちゃんはどう思いますか?」

きらり「んー、むつかしいけど……ひだり!」

司会「答えは……なんと!」

きらり「むむっ!」

司会「……右でした。残念!」

きらり「にょ、にょわぁ……しっぱい……」

司会「だけどすごいですね。2択とはいえこの精度! 現在3位タイです」

きらり「あのねあのね、お友達の幸子ちゃんと蘭子ちゃんはもっともーっとぶあーってできちゃうよ?」

司会「なんと、すごいですね! 今度お呼びするときは、3人そろっての形になるかもしれません」

きらり「まってゆー!」

司会「私も、また会うのを楽しみにしています。それでは次の挑戦者の方――」

P「お疲れ様、きらり」

きらり「むー、しっぱいしちゃったの……」

P「残念だったな。でもすごかったよ」

きらり「ほんと? きらり、すごいー?」

P「あぁ、本当にすごかった……今日一日だけでだいぶ考えを改めないといけないと思ったよ」

きらり「うぇへへへ……いっしょーけんめーだったきらり、どうかなー? すてき? きゅんきゅんしちゃうー?」

P「正直、その通りだ。ときめいたよ」

きらり「にょっ!?」

P「きらりのこと、誤解してた。すごく素敵な女の子だったんだな……」

きらり「も、もーっ! Pちゃんてれゆーっ!」ブンブン

P(体が大きいからって力も強い? そんなわけなかったな……もし、本当にすごい力だったとしてもきらりはむやみに人を傷つけるはずがない)

きらり「Pちゃんどしたー?」

P「いや、本当に助かったよ。ありがとう、きらり」

きらり「どいたまー☆ みんないっしょにハピハピがいっちばーん!」

P(……そういえば、少し前にきらりたちが事務所で何か話してたっけな)

P(確か、憧れること、とかで……)

P(きらりの憧れは……えっと……)


P「……そうだ、きらり」

きらり「なになにー?」

P「ちょっとこっちに来てくれないか」

きらり「こーお?」

P「ん、そのまま……よしよし」ナデナデ

きらり「うきゃっ……!?」

P「モフモフだな……えーっと、きらり」

P「本当はもっと背の高い相手から撫でられたいんだろうけど……よく、頑張ったな。偉いぞ、すごい!」

きらり「にょ、にょ、にょ、にょ……」

P(いっぱいいっぱい頑張ったあと、頭を撫でられながら褒められたい……だったよな。きらりも乙女なんだよ……なぐっ!?」

きらり「も、もーっ! だ、だめだにぃ、き、きらりもうどきどきーってして、こんなの……むぇーっ!」

P「ゲ、ゲホッ……こ、これが、きらりんパワー、か……」ガクッ

きらり「にょっ!?」

P「」

きらり「Pちゃん! たいへーん! にょ、ど、どーしよー!?」

きらり「だ、だって、もーっ! 頭が、あたまが、どっかーんてして……もーっ!」

きらり「うっきゃー! わかんなーい! きらりどうすればいいのー!?」

P「き、きら……り……」

きらり「Pちゃん!」

P「か、帰ろう……か。事務所……」

きらり「う、うん! だいじょぶ? いたい? いたくないー?」

P「へーき、へーき……大丈夫だから気にするな」

きらり「わかったにぃ……だいじょぶ? ほんと?」

P「おう、ばっちしだよ……ばっちし……」

P(不意打ちだと、セーブが利かないんだな……うん。気をつけよう……)

――――

――

P(きらりは、実は誰よりも気遣いのできる乙女だった)

P(……少しパワーがあったが、あれは主に反撃用だ。不用意なことをした俺が悪い)

P「しかし、意志疎通、か……蘭子も、きらりもいい子だった」

P「苦手意識を持っていたのが悪かったのかな……」

幸子「なんの話ですか?」

P「お、おぉ。幸子」

幸子「ふふん、ボクが来ているのに気付けないなんてプロデューサーさんは本当にダメですね!」

P「すまんな。少し考え事してたんだ」

幸子「そうですか。まぁ、ボクたちのことをちゃんと有名にしてくれるために頑張ってるんでしょう? なら少し位仕方ありませんね!」

P(……思えば、幸子も強く自己主張をしてくるな。ちゃんと向き合う必要があるかもしれない)

幸子「だけど、最近はプロデューサーさんも少しはやるみたいじゃないですか!」

P「……」

幸子「ボクたちのお仕事も順調に増えていますしね。まぁ、ボクがカワイイからでしょうけれど!」ドヤッ

P「……」

幸子「どうしたんですか? プロデューサーさん」

P「いや、そうだな……幸子は可愛いよ」

幸子「え?」

P「……俺自身、ついこの前まで。きちんと管理やプロデュースできていなかったと思う」

幸子「そうですか? まぁ、プロデューサーさんなりによくやってくれていたとは思いますけど」

P「いいや、ダメダメだったさ」

P(幸子にも、蘭子にも、きらりにも苦手意識があって、ただひたすらにこなせるペースで仕事を割り当てていただけ。向き合っていなかったんだからな)

幸子「ふふん、いきなりダメだなんて言い出すとはさては疲れていますね?」

幸子「まったく、自己管理もできないなんてダメダメですね! ちゃんとしてください!」

P「……すまないな」

幸子「結構です。しょうがありませんね、今日はボクたちは自力で収録現場までいきますよ。他の方の車に乗せてもらうなりしますから」

P「え?」

幸子「わからないんですか? 体調が悪いのに無理をするような真似をする気だったとでも?」

P「……あー」

幸子「まったく、ボクたちのことをプロデュースする以上きちんとしてもらわなきゃ困ります! さっさと帰って寝ることですね!」

P(これも、前だったらきっとイヤミだと思っただろうな……だけど、今ならわかる)

P「幸子」

幸子「なんですか? まぁ、ボクにとっては簡単なことなのでご心配なく! なんといってもカワイイですから!」ドヤッ

P「ありがとうな」

幸子「え? あ……ふ、ふふん。別にお礼を言われるようなことは言っていませんけどね!」

幸子「それとも、ボクがあまりにもカワイイので存在に感謝したくなってしまいましたか?」

幸子「やれやれ、カワイイっていうのも罪ですね!」

P「いや。純粋に心配してくれたことがうれしいよ」

幸子「……なんのことですか? ボクはただ、ダメダメなプロデューサーさんにもう少ししゃっきりしてほしかっただけですよ」

P「幸子は、俺が投げた仕事にきっちり答えてくれてたよな」

幸子「まぁ、ボクたちのユニットですからね。諸星さんも神崎さんも確かにカワイイですし、素敵ですから」

幸子「当然、一番カワイイのはボクですけれどね!」ドヤッ

P「大丈夫だ、幸子」

幸子「何がですか?」

P「幸子は可愛いよ。みんな知ってる」

幸子「……何の話です?」

P「俺が担当を発表された時、3人は初対面だったよな」

幸子「……まぁ、そうですね。2人とも個性的で驚きました」

P「俺も驚いたよ。それで、おびえて、向き合わなかった」

幸子「何を言ってるんですか? ちゃんとお仕事も、レッスンもしてくれたじゃないですか」

P「俺が、きちんと3人に向き合おうと思ったのは……ついこの前のことだよ」

幸子「そうなんですか?」

P「みんな才能があって、きちんとした子ばかりだったからここまで来れたんだ。俺は何もしてない」

幸子「……よくわかりませんけれど、やっぱり今日のプロデューサーさんは変ですね?」

P「いや、俺なりにいろいろ考えた結果なんだ」

幸子「ふぅん……?」

P「3人とも、驚いたはずだ。だって、念願のアイドルになれると思ったらユニットメンバーは個性派すぎるぐらいだったんだから」

幸子「まぁ、ボクは平気でしたけどね」

P「そうだな、ありがとう」

幸子「な、なんでお礼を言うんですか? まったく意味が分かりませんよ」

P「俺が3人をきちんと向き合うようにしないといけなかったんだ」

P「本当なら、蘭子はきらりのことを怖がっていたかもしれない」

P「本当なら、きらりは蘭子のことをわかってあげられなかったかもしれない」

P「……きっと、2人をつなげてくれたのは。幸子、お前だろう?」

幸子「……ふん。ボクがカワイイって証明するためのユニットなのに、メンバーがバラバラじゃカッコがつきませんからね」

P「幸子のおかげで、2人素が出せた」

P「幸子のおかげで、ここまで来れたんだ」

幸子「まぁ、当然でしょう? ボクはカワイイですし、優しいですから」

P「そうだな、幸子は本当に優しい子だよ」

幸子「む……な、なんだか調子が狂いますね」

P「だけど、これは勝手な想像だけれど……幸子、2人の素を見て、可愛いと思ったんじゃないか?」

幸子「……まぁ、同じユニットのメンバーですからね! ボクほどではないですが、確かにカワイイと思いますよ」

P「うん。幸子は可愛いよ」

幸子「うぅ……だから、なんなんですか!」

P「勝手に思ってることだけれど……幸子、お前は2人に負けないように自分に言い聞かせてたんじゃないか?」

幸子「ほ、本当に勝手な推測ですね! そんなわけないじゃないですか!」

P「2人とも、キャラとしても、素の魅力も。素晴らしいと思ったんだ……幸子もそう思っただろ?」

幸子「だ、だから……」

P「俺は、幸子も2人に負けないぐらい魅力的だと思う。一見、女王様みたいな振る舞いをしながらもきちんと気遣いもできるしな」

幸子「……ふんだ。なんなんですか、急に」

P「俺なりに、きちんとアイドルたちに向き合わなきゃって思ったんだ」

幸子「ふぅん? ボクたちだけでもEランクにはなれましたよ?」

P「すまなかった。そして、ありがとう」

幸子「遅いんですよ、まったく……」

P「ごめんな。いろいろ裏で苦労したんじゃないか?」

幸子「諸星さんは気づかいはできますけれど、あわてると逆に一番危ないですからね、まったく目が離せませんでした」

P「あはは……そうだな。きらりは優しいけど、難しいことは苦手みたいだ」

幸子「それに、神崎さんはあれで割と普通の人ですからね。誤解されやすいようなのでやっぱり目が離せません」

P「中身は可愛らしい女の子だな……ちゃんと、向き合って思ったよ」

幸子「やれやれ、最後の1人がボクみたいに優しくてカワイイ女の子じゃなかったらユニットはうまくいってませんでしたよ?」

P「あぁ。本当にありがとう」

幸子「感謝してくださいね。ボクの優しさと……かわいさに!」ドヤッ!

P「ありがとう。幸子」

幸子「……足りません」

P「幸子、ありがとう。感謝してる」

幸子「まだです、もっと……」

P「……あぁ。幸子、可愛いよ」

幸子「……ん」

P「本当に、可愛いよ。大丈夫だ、幸子は可愛い」

幸子「……本当ですか?」

P「もちろんだ。すごく魅力的だぞ?」

幸子「………ボクのことを、ちゃんとみていてくれますか?」

P「これから先、ずっと見てるよ。もう目を離さないから」

幸子「…………仕方ありませんね。それじゃあ、許してあげましょう」

P「ありがとう、幸子」

幸子「プロデューサーさん?」

P「ん?」

幸子「ボクたちのユニット……他のどんなグループにも負けませんから」

P「あぁ、きちんとお前たちの魅力が伝われば無敵さ」

幸子「わかっていますよね?」

P「がんばるよ。みんなのためにも」

幸子「むっ……みんな、ですか」

P「このユニットの3人は、すごく魅力的だってようやくわかったからな。俺だけが知ってるのは不公平だ」

幸子「……確かに、神崎さんは素敵ですね。綺麗ですし、魅力的です」

P「あぁ、蘭子はああ見えて素敵な女の子だ。トップアイドルになりたいって、目標も聞いたしな」

幸子「諸星さんは、すごいですね。ほかにはない魅力の詰まった太陽みたいな人です」

P「きらりは、元気いっぱいだけど他の人のために何かをできる優しい子だ」

幸子「……そして、ボクはカワイイです」

P「うん。幸子は意地っ張りだけど、努力家で、負けず嫌いで、可愛いよ」

幸子「ふふん、それじゃあボクが一番カワイイってことを証明するためにも……」

 ガタッ ガタタンッ!

P「うわっ!? ドアが……」

幸子「って、あ……」

蘭子「くっ……血塗られし罠……!(ド、ドアが外れちゃうなんて!)」

きらり「にょ、にょ……にょわー。さ、さぼてんだにぃ?」

幸子「諸星さん、ごまかせてませんよ?」

きらり「うきゃー……」

P「えーっと……」

蘭子「こ、これは、えっと……その……」

幸子「神崎さん? どうしたんですか?」

蘭子「世界を惑わす蜜事よ!(ド、ドアの前に来たら声が聞こえたのでつい……)」

幸子「へぇ……盗み聞きですか? 瞳の持ち主ともあろう人が?」

蘭子「あ、あうぅ……」

幸子「やれやれ、仕方ない人たちですね」

きらり「ごめんなさい……」

蘭子「秘たる物事にこそ真実を見ゆ……(出来心だったんです……)」

幸子「……ふん。言っておきますけれど」

きらり「にょ……」

蘭子「う、うむ……」

幸子「一番カワイイのボクってこと以外はでたらめですから! 勘違いしないでくださいね!」

蘭子「……」

きらり「……」

幸子「な、なんですかその目は」

蘭子「ふふっ……愛しきかな。その振る舞い!(幸子ちゃん、すっごく可愛い!)」

きらり「幸子ちゃんきゃわわー! ぎゅぎゅぎゅーっ!」

幸子「わ、わぷっ……もうっ! プロデューサーさんも何かないんですか!」

P「あはは、みんな可愛いなぁ」

幸子「ちょ、ちょっと!」

P(まったく、俺は何を考えてたんだか)


幸子「い、いいですか! 別にボクは、自分がカワイイって証明のためにですね……」


P(この子たちは、こんなにいい子じゃないか)


きらり「うぇへへへへ……幸子ちゃんなでなでー☆ きゃわわー!」


P(……うん)


蘭子「むっ!? ま、待たれよ! 我が闇を侵すとは、きゃぁっ!(あ、あれ!? きらりさんちょっと待ってください! 私は……きゃあっ!)」


P「3人とも、今日も収録頑張るぞー!」


きらり「にょわー!」
幸子「は、はーい!」
蘭子「ま、まかせよー!」


おわり

最近きらりと蘭子のSSを見かけなかったので、つい
さっちゃんも痛い目見てばかりだったから、こうなった

保守支援ありがとうございました

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