モバP「二人のアイドル」 (85)

モバマスSSです

コレじゃない感が漂う可能性があります

文章力もないです

それでもよければどうぞ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1390845837

P「え、新しいアイドルのプロデュースですか?」

社長「うむ」

P「でも、今、私は凛のプロデューサーですよ」

社長「いや、凛くんのプロデュースを止めるというわけではなく、もう一人の子もやって欲しいということだ」

P「はぁ」

社長「凛くんのプロデュースも軌道に乗ってきて、君自身も余裕が出来てきただろう」

P「たしかにそうですが…」

社長「そして、私としては新しい子をプロデュースすることによって、君自身が成長してくれることも期待しているわけなのだが、どうかね」

P「そう期待されては......」

P「わかりました。その話、引き受けさせていただきます」

社長「おお、頼むよ。新しい子のほうも活躍を期待しているよ」

P「はい」

凛「新しい子?」

P「ああ。社長の提案でな」

凛「ふーん。プロデューサーって二人もアイドルを扱えるの?」

P「ば、馬鹿にするなよ。どっちも売れっ子アイドルにしてみせるよ」

凛「ふふ、冗談だよ。大丈夫、プロデューサーのことは信頼しているから」

P「それならいいけど」

P「ただ、はじめはもう一人の子に力を入れなきゃいけないから、凛に仕事の負担をかけると思うが、ごめんな」

凛「心配しなくても、子供じゃないし、大丈夫だよ。何かあれば相談するから」

P「よろしく頼むよ」

凛「それで、新しい子はなんていう子なの」

P「ああ。緒方智絵里ちゃんって子だよ」

凛「緒方智絵里ちゃんか…」






P「よろしく。今日から君の担当になるPです」

智絵里「あ、あの。よろしくお願いします」

智絵里「わ、私、歌も踊りも演技も得意じゃないですけど、頑張りますので、み、見捨てないで下さい...」

P「落ち着いて、緒方さん」

P「どれも、これから練習していけばいいものだし、君の担当になった以上は、君のことを絶対に見捨てたりしないよ」

智絵里「本当ですか?」

P「ああ本当だ。約束しよう」

智絵里「わ、わかりました。よろしくお願いします。あの、よければこれをどうぞ」

P「これは……四葉のクローバーの栞?」

智絵里「はい。幸運の……お守りです」

P「へー、ありがたく受け取っておくよ。よし、これから一緒に頑張っていこう」

P「こちら渋谷凛さん。俺の担当アイドルだよ」

凛「プロデューサーにさんづけされるとなんだか気持ち悪いよ」

P「うるさいな。で、こちらが緒方智絵里さん、俺の新しく担当するアイドルだ」

智絵里「よ、よろしくお願いします。渋谷さん」

智絵里(きれいな子だな......それになんだか、かっこいい)

凛「よろしくお願いします。あ、私のことは凛で大丈夫だよ」

凛(かわいい子だな)

智絵里「じゃ、じゃあ、凛ちゃんで。私も智絵里で大丈夫です」

凛「わかった、よろしく智絵里……智絵里って、なんか構いたくなる雰囲気があるね」

智絵里「そうですか? 自分ではよくわからないですけど」

凛「うーん……動物でたとえると、うさぎかな」

P「わかるわ。なんだかほっとけない感じなんだよな」

凛「……智絵里、プロデューサーになんかされたら言ってくれていいからね」

P「なんでだよ」

智絵里「だ、大丈夫です。プロデューサーのこと信じてますから」

P「……それがどっちの意味なのかは聞かないでおこう」

凛「これから一緒に頑張ろう」

智絵里「はい」

P「ここがレッスン場だよ」

智絵里「ここが……」

トレ「こんにちは、Pさん。その子が新しく担当になった子ですか?」

P「そう、緒方智絵里ちゃんです。緒方さん、この人がトレーナーさんだ」

トレ「初めまして、緒方さん。会ってさっそくだけど、まずはレッスン前の腕試しをしましょう」

智絵里「は、はい、よろしくお願いします」






トレ「どう思いますか、Pさん?」

P「やっぱりいろいろ足りない部分はありますね。でも、歌なんかはかなりいいんじゃないかと思います」

智絵里「はぁ、はぁ、そうですか……」

トレ「ええ、ダンスなんかはこれから頑張っていかなきゃいけないけど、歌はかなり有望だと私も思います」

P「ふーむ。方向性はそっちかな? 緒方さんは歌は好き?」

智絵里「は、はい、動くのは苦手ですけど、歌うのは好きです」

P「じゃあ、プロデュースの方向性としてそちらを中心に考えてみるよ」

P「だけどまずは……」

トレ「そうですね……」

智絵里「はぁ、はぁ、ふぅ」

P「体力面の強化だな」


凛「おはようございます」

ちひろ「おはよう、凛ちゃん。今日は早いですね」

凛「うん。ちょっとプロデューサーに聞きたいことがあるんだけど。もう来てる?」

ちひろ「えーと、プロデューサーさんなら、席で倒れてますよ」

凛「え」

ちひろ「昨日も徹夜だったみたいね」

凛「そっか……じゃあ、後にしようかな」

ちひろ「いえ、かわいそうな気もしますけどもうお仕事の時間ですし、凛ちゃんを待たせたって話を後でするほうがプロデューサーさんは悲しみますから、起こしてあげてください」

凛「……うん、わかった。よし、プロデューサー、朝だよ。仕事の時間だよ」

P「うーん。あれ、もう朝か、ってなんで凛がいるの?」

凛「ここ事務所だよ、寝ぼけてるの? ちょっとプロデューサーに聞きたいことがあったから早く来たんだよ」

P「ふあー、そうかそうか、すまんすまん」

凛「もう、また徹夜して、体壊すよ」


P「いやー。担当アイドルが二人になると急に忙しくなってなー。凛も頑張ってくれてるし」

凛「それでも」

P「それに智絵里のプロデュースのことをいろいろ考えてると、楽しくなって時間がすぐ過ぎちゃうんだよな」

凛「そっか……」

凛(なんだろう、寂しいな)

凛(ほんのちょっと前は、いつも2人でいて、一緒になって頑張ってた……今は、いつも顔を合わせてるけど……)

P「凛」

凛「…」

P「おーい、凛」

凛「!」

凛「な、何」

P「何じゃなくて、今日は俺に聞きたいことがあったからわざわざ朝早くに来たんだろう?」

凛「う、うん。えーと、で、聞きたいことなんだけど」

凛(なんだか、心がもやもやする)








トレ「はい、そこまで」

智絵里「ふぅ、ありがとうございました」

P「智絵里、お疲れ様」

智絵里「あ、プロデューサー。見ててくれたんですか。ど、どうでしたか、私?」

P「うん。はじめの頃に比べるとすごく上達してきてるな。トレーナーさんも褒めてたし」

智絵里「本当ですか?」

トレ「智絵里ちゃんは一生懸命ですし、素直なので吸収がとっても早いですよ」

P「ほらな。もっと自信をもって大丈夫だよ。目指すレベルはもっと上だけどな」

智絵里「は、はい。ありがとうございます」


P「凛のときとは大違いだなー」

智絵里「……そうなんですか」

P「そのころ俺はかなり手探り状態だったからな」

P「凛は納得できないと結構文句とか言ってきてよく口論になったよ」

P「そのおかげで勉強になったことも多かったけどな」

智絵里「わ、私もそうしたほうがいですか?」

P「はは。智絵里は智絵里のやり方でやっていけばいいよ」

智絵里(凛ちゃんのことを話すプロデューサーはなんだか誇らしそうで、いつも楽しそう……)

智絵里(私はプロデューサーの二番目のアイドル。どんなに頑張っても一番目にはなれないし、凛ちゃんのようにはなれない。でも、私を認めてくれたプロデューサーの一番になれように頑張りたい)

智絵里「プロデューサー、私、頑張ります」

P「?」 


凛(今日も仕事はひとりか)

凛「はぁ。なんかもやもやするな」

渋谷さんお願いしまーす

凛「よし」

凛(いつも通り、いつも通り……あれ、あれって)








P「よ! 凛、やってるな」

凛「プロデューサーどうしたの? 忙しかったんじゃないの?」

P「いや、時間が少しできてな。最近、凛の様子が見れてなかったし、ちょっと様子見にな」

凛(……この人は本当に)

凛「……プロデューサーって本当に空気読めないよね。それでいて鈍感だし、タイミング悪いし」

P「いきなり、ひどい言われようだな。邪魔だったか?」

凛「でも、久しぶりに来てもらってなんか安心したよ。来てくれて嬉しかった」

P「それはよかった」




凛「プロデューサー、この後仕事は?」

P「今日の分はもう終わっているよ。凛もこれで終わりだろ。たまには晩飯でも食いにいくか?」

凛「もちろんおごりだよね?」

P「もちろん。だけど加減はしてくれよ」

凛「プロデューサーのおすすめでいいよ」

P「ん? そうか? うーん、じゃあどこがいいかな」

凛「ふふ。期待してるよ」

智絵里「お仕事……ですか?」

P「そう。そろそろ、本格的に動きだそうかと思ってな。智絵里もどんどん成長してるし」

智絵里「嬉しいです……でも……」

P「でも?」

智絵里「少し、こわいです……」

P「はじめは仕方ないと思う。だけど、智絵里はもっと自信をもっていいと思う。そして、これからもっと前に進んでいくために、最初のステップを踏み出していこうと思うんだ」

P「もちろん智絵里一人では行かせないよ。俺と一緒に行こう」

智絵里「そうですよね……一人じゃ、ないんですよね……」

智絵里「プロデューサーと一緒なら、プロデューサーが見守ってくれてれば、わ、私、頑張れる気がします」

P「その意気だ」

智絵里「はい、プロデューサー……やってみます」

智絵里「そ、そのかわり、プロデューサー……い、いなくならないでくださいね?」


凛「今日は智絵里はいいの?」

P「ん、もうすぐはじめての仕事だから、その前にちょっと休んでもらったんだ」

凛「普通は忙しくなるじゃないの、私のときはそうだったし」

P「智絵里はかなり自分を追い込むところがあるからな。緊張してるのだろうけど、それで怪我したり、体調崩してもしょうがないから一度休ませたんだ」

P「凛みたいに落ち着いてて欲しいけどな」

凛「私だってはじめの仕事はすごい緊張してたよ。プロデューサーを不安にさせないように強がってただけだよ。あのときのプロデューサー大変そうだったし」

P「まぁ俺もはじめての仕事だったからな……しかし、担当アイドルに心配される俺って……」

凛「でもあの時、プロデューサーがいてくれたからちゃんと仕事ができたんだよ」

P「え?」


凛「そ、それより、今のプロデューサーも心配だよ。そわそわしすぎ」

P「うっ」

凛「智絵里のことが気になるんでしょ?」

P「ああ、だけど今日は凛の仕事を見てるから」

凛「まったく、変なところでへたれてないで智絵里のとこにいってきなよ」

P「だけど」

凛「もう、私に恥ずかしい話をさせたんだから責任とってよね」

P「責任って……わかった、凛すまない。俺、智絵里の様子を見に行くよ」

凛「それがいいよ」

P「このお詫びは必ずするから」

凛「ほら、早く行きなよ」

P「ああ。仕事頑張ってな」











凛「……」

凛(これでいいんだよね……)


智絵里「もしもし。プロデューサーですか」

智絵里「今ですか……家の近くの公園で散歩してたんですけど」

智絵里「今からですか?は、はい。わかりました。お待ちしてます」 

智絵里「ふぅ……」






P「すまないな。俺からオフにしなって言ったのに会いに来て」

智絵里「いえ……嬉しかったです」

智絵里「本当は不安だったので」

P「はは。実は俺も不安になっちゃってな」

智絵里「プロデューサーが……ですか?」

P「仕事はいろいろやってきたけど、智絵里との仕事ははじめてだからな」

智絵里「それって、わ、私がダメな子だからですか?」

P「違う違う、全然そうなことないよ」


P「俺の力不足で智絵里を不安にさせてるんじゃないかとか、智絵里の望んでることをやらせてあげられてるのかとか」

智絵里「……」

P「いろいろ心配事は尽きないんだ」

智絵里「なんだかプロデューサーのほうが、心配してる気がします」

P「そ、そうかな?」

智絵里「はい。でも、その、なんていうか、落ち着いてきました」

P「え?」

智絵里「私のことをこんなにも考えて、心配してくれるひとがいるって考えると、そのひとのためにも頑張らなきゃって思えるんです」

P「役に立てたのかな?」

智絵里「わ、私なんて、いつもプロデューサーのお世話になりっぱなしです。だから初めてのお仕事頑張ります!」

P「うん。そうだな」


凛「ちひろさん。何見てるの?」

ちひろ「ん、これですか? なんと智絵里ちゃんの初仕事の映像ですよ!」

凛「え、智絵里っていきなりテレビの仕事だったの?」

ちひろ「いえ、プロデューサーさんが一生の記念だからっていって個人的に撮影したものです」

凛「……なんか運動会のときのお父さんみたいだね」

ちひろ「そういえば、プロデューサーさんが凛ちゃんに時間があるときないかって言ってましたよ……デートですか?」

凛「ち、違うよ。たぶん、こないだのお詫びだと思う」

ちひろ「お詫び……ですか? よくわからないですけど、一緒に出掛けるんですよね?」

凛「たぶん……そうだけど」

ちひろ「気をつけてくださいよ。凛ちゃんもそろそろ世間に認知されてきてるんですから」

凛「だから、ち、違うってば!」


P「仕事が終わってちょっとたってみて、気分はどう?」

智絵里「なんだか不思議な感じです」

智絵里「人数は少なかったですけど、私の歌や踊りで喜んでもらえて……とてもうれしかったです。Pさん、私、頑張れてましたか?」

P「もちろんさ。でも、これは始まりだからな」

智絵里「はい」

P「終わってすぐで、申し訳ないけど次のことについて、話しておくよ」

P「まだ先だけど次は、ライブバトルに出てもらうよ」

智絵里「ライブバトルですか?」

P「ああ、凛もこれで有名になったからな、相手はそこそこ有名なアイドルが出場するから大変だけど」

智絵里「凛ちゃんも……」

P「相手は強敵だけど、智絵里なら大丈夫。だから次はこれを目標にして頑張ろう」

智絵里「ま、負けたくないです!」

P「お、やる気だな。よーしその意気だ!」


P「お詫びなのに、仕事の合間になっちゃって悪いな」

凛「別に平気だよ。プロデューサーも忙しいし、しょうがないよ」

P「で、どこに向かってるんだ?」

凛「あ、あそこだよ」

P「アクセサリーショップか…」

凛「嫌だった?」

P「そういう訳じゃないよ。ただ、普段いかない場所だから緊張してな」

凛「そうなの? 彼女にプレゼント買ったりしないの?」

P「うわー。言葉が突き刺さるー」

凛「いないんだ…」

P「わかってて聞いてるだろ。まったく」

P「それで何が欲しいんだ?」

凛「ゆ、ネックレスとかだったら目立たないかな?」

P「んー、まぁ露出する服のときはあれだけど、普段なら大丈夫かな」

凛「それじゃあ選んでくれる」

P「俺が選ぶのか? センスあんまりないんだけどな」

凛「プロデューサーがそれでいいの……」

P「これなんかどうだ?」

凛「あ、かわいいかも」

P「よしじゃあこれな。会計してくる」


凛「今日はありがとう。忙しいのに」

P「お詫びだっていったろ。それに凛とこうして出掛けるのもすごい久しぶりで俺も楽しめたしな」

凛「うん。これ大切にするから。後、もうひとつお願いしていいかな?」

P「ん、なんだ?」

凛「これもらってほしいんだけど……」

P「これって……花をあしらったキーホルダーか?」

凛「そう私が作ったの」

P「凛が? どうしたんだ急に?」

凛「気が向いただけ、ってわけじゃなくて最近一人の仕事が多くて寂しかったからついね」

P「嫌味、なのか?」

凛「ふふ、冗談だよ。ただもらうだけじゃあれだから用意したものだから」

P「そうなのか? 別によかったのに。えーと、どこにつけよう?」

凛「携帯につけといてくれるとうれしいよ」

P「そうするか。携帯が華やかになった気がするな、花だけに」

凛「プロデューサー……」

P「すまん……」



P「でも、うれしいよ。凛の手作りなんて」

凛「ま、まったく……」




凛(それを送った私の気持ちも少しは考えてね……)


ちひろ「最近二人とも好調ですね」

P「そうですね。凛は安定してきたし、智絵里もライブの活躍で一気に仕事が舞い込んできましたよ」

ちひろ「これもプロデューサーさんのおかげですね!」

P「いやー、そういってもらえるとうれしいですけど、正直二人の実力ですから」

ちひろ「それだけじゃないと思いますけど……あらっ?」

智絵里「今戻りました」

P「おっ、噂をすれば、だな。智絵里、レッスンお疲れ様」

智絵里「あっ、Pさんお疲れ様です」

P「こないだのライブの評判で仕事が来たぞ」

智絵里「ほ、本当ですか? うれしいです……」

P「ドラマの仕事とかもあるから演技のレッスンも増やさないな」

智絵里「ド、ドラマですか?」

P「ああ、智絵里によく合いそうな役だからいいと思う。いやー、こんな仕事がもらえるなんてうれしいな」


智絵里「Pさんもうれしいんですか?」

P「当然さ。 智絵里が活躍してくれると俺もうれしくなるさ」

智絵里「……」

智絵里「あ、あのっ」

P「ん?」

智絵里「え、えーとですね。わ、あの、できればでいいんですけど、その、ライブを頑張ったのと、お、お仕事のお祝いということで、私、ご褒美が欲しいです……」

P「ご褒美?」

智絵里「あ、あの、やっぱりダメ……ですか?」

P「ははっ、全然ダメじゃないよ。そうだよな、智絵里は頑張ってるもんな……」

P「いいよ、ご褒美」

智絵里「ほ、本当ですか!」

P「おわっ」

智絵里「あ、ご、ごめんなさい」

P「ははっ、じゃあ、どうしようか?」

智絵里「あの、一緒にお出かけがしたいんです」

P「え、それだけでいいのか?」

智絵里「それがいいんです」

P「わかった、智絵里がいいならそうしよう。じゃあ、日程を調整して……」

智絵里(うれしいです……本当に……)


凛「ただいまー…… あれっ誰もいないのかな?」

凛「あっちの部屋からプロデューサーと智絵里の声?」

アノ、ワタシ……アナタガスキデス

凛(え?)

キミヲソウイウメデミテハイケナイトオモッテイタンダガ、ヤッパリボクモ……

P「ちひろさんどうでしょうか? 今の役?

バーン!!!

P「ど、どうした凛? そんな勢いよくドア開けて」

ちひろ「り、凛ちゃん大丈夫ですか?」

智絵里「え、えーと」

凛「あ……ご、ごめん。事務所にだれもいないと思ってたのに話し声がしたから……」

凛「……ところで何してたの?」









凛「ドラマの役の確認?」

P「確認というか、智絵里に合う役だと思ってるけど、一応演技もしながらちひろさんにも見てもらってたんだよ」

ちひろ「私もいいと思いましたよ、この役」

P「ちなみに内容は学園もので、教師と生徒の禁断の愛がテーマだ」

凛「ふーん……そっか」

智絵里「私に……できるでしょうか?」

P「智絵里なら大丈夫さ。凛もそう思うだろ?」

凛「……うん、智絵里なら大丈夫だと思うよ、役もあってそうだし」

智絵里「凛ちゃん……ありがとう」

凛「私にも演技見せてもらっていいかな? 何かアドバイスできるかもしれないし」

智絵里「はい! よろしくお願いします」






凛(あのとき、自分でも驚くくらい心臓がバクバクしてた。考える前に体が動いてた)

凛(あれが本当だったら私はどうするつもりだったのかな……)


P「やあ智絵里、今日はよろしく。それで今日はどこに行くんだい?」

智絵里「え、えーと。近くの公園でお散歩を……」

P「智絵里らしいな。天気がいいからゆっくりできそうだ」

智絵里「はい、じゃあいきましょう」






P「静かでいいところだな」

智絵里「はい、私のお気に入りの場所なんです。クローバーもあるんですよ」

P「お、本当だな。あそこにちょうどいいベンチがあるから座ろうか?」


智絵里「今日はありがとうございます」

P「別に気をつかわなくてもいいよ。なんてったってご褒美なんだから」

智絵里「えへへ、それでもありがとう、ですっ」







P「そういえば、ライブバトルの時ニャーニャーいう子に絡まれたけど大丈夫だった?」

智絵里「みくちゃん……ですよ。とってもいい子でお友達になりました」

P「ああそうだ、前川みくだっけか」

智絵里「私、お友達が少ないからうれしいです……」

P「智絵里の交友関係が広まるのはいいことだ。最近仕事も楽しそうだし……ちょっと、一緒の仕事探してみるか」グー

P「ははっ、そういえばもうお昼かな? どうしようか、どこか食事できるところを探そうか?」

智絵里「あ、あのですね……実は、お、お弁当作ってきたので、よければ……どうぞ……」

P「そいつは贅沢な提案だ、謹んで食べさせていただこうかな」

智絵里「も、もう……」

P「では早速……あむっ」

智絵里「ど、どうですか……何か言ってください」

P「すごいおいしいよ、本当に」

智絵里「よかった……安心しました」

P「ほらほら、智絵里も食べな」

智絵里「はいっ」








智絵里(今日はPさんにすごく近づけた気がしたな)

P「今日はありがとうな、智絵里のご褒美なのに俺のほうがゆっくりできちゃったよ」

智絵里「い、いえ、そんな」

P「俺はこれから仕事だけど、智絵里はオフにしてあるからゆっくりしてくれ」

P「ん、ちょっとごめん、電話だ」

智絵里(……あれって?)






P「悪いな智絵里、別れ際に」

智絵里「大丈夫です。あのPさんの携帯……」

P「ああこれか? 実は前に凛にもらったんだ。流石花屋の娘だよな、きれいな花の装飾だ。まぁ花の名前はわからないんだけど」

P「おっと時間だ。じゃあな智絵里」

智絵里「はいっ、Pさんもお仕事頑張ってください」






智絵里(あれって撫子だよね……)

智絵里(凛ちゃんはかっこよくて、優しくて、私にないものをたくさんもってる、とっても大事な友達……でも……)

智絵里(Pさん……私がアイドルを楽しめてるのはあなたのおかげ……あなたがいてくれるからです……)

智絵里(私は……)


――凛ちゃんにとって智絵里ちゃんはどんな存在?

凛「とても刺激になる存在です。年は私の方が下ですけど、可愛くて、それでいて、とても魅力的な事務所の後輩兼、大事な友人です」

凛「でも、事務所では私が先輩なので、負けたくない気持ちはつよいです」


――では智絵里ちゃんにとっては凛ちゃんの存在は?

智絵里「今は見上げる大きな山……憧れです。凛ちゃんは私とは違ってとても大人びていて、落ち着いていて、優しいから……」

智絵里「だけど、私の大事な友達で……私の……ライバルです」






P「二人とも取材お疲れ様、ほいっ、飲み物」

凛「ありがとうプロデューサー」

智絵里「ありがとうございますPさん」

P「二人一緒の取材が来るなんて感慨深いな」

凛「大げさだなもう……」

智絵里「えへへ、でも、うれしいです」

凛「ま、そうだね」


P「今は本当に二人とも勢いがあるからな、今日も大きな仕事が入ったんだぞ」

P「凛には出たがってた有名歌番組からのオファー、智絵里には映画の役のオファーが来てる」

凛「ほ、本当に」

P「ああ、本当だ」

智絵里「凛ちゃんすごい……」

P「いやいや智絵里も十分すごいからな。こないだのドラマの演技が認められたってことだからな」

P「映画は主役ではないけど、また、頑張ってもらうぞ」

智絵里「は、はい!」

P「でも、しばらくは俺は凛のほうについてやらなきゃいけないと思う」

智絵里「え……」

P「凛の番組の方が、智絵里の映画の撮影より先だからな。智絵里はずいぶん成長したし、しばらくの間は俺がつかずに仕事をしてもらうことになる」

智絵里「はい……」

P「そんな不安そうな顔するな。智絵里なら大丈夫さ」

凛「プロデューサー、智絵里がそんなに不安なら無理して私につかなくても……」

智絵里「だ、大丈夫です、凛ちゃん。それに凛ちゃんのお仕事の大事さはわかってますから……」

P「うん、智絵里よろしくな。でも、何かあったらすぐ相談するんだぞ、遠慮なんてしなくていいからな」







智絵里「Pさん」

P「どうした智絵里? やっぱりまだ不安か?」

智絵里「はい……でも、頑張りますから見ていてください……」

智絵里「あの、それで……ですね、私、頑張りますので、そのために……Pさんにお願いがあって」

P「お、また、ご褒美か? いいぞいいぞ、智絵里が頑張れるなら」

智絵里「あの、では私の手を握っていただけますか?」

P「ん、これでいいのか。って大丈夫か智絵里? 顔が真っ赤だぞ」

智絵里「だ、大丈夫です。こ、これで頑張れます」






凛「……」








P「凛、というわけで、久々によろしくな。歌うの一人だけど、番組としては三人のゲストのうちの一人という形だ」

P「渋谷凛、島村卯月、本田未央、新世代のアイドルとして、ニュージェネレーションと呼ばれる三人を特集にしている。仲いいんだろ?」

凛「まぁね。まあ、あの二人がいるなら安心かな」

P「期待してるからな。よろしく頼むぞ」






凛(ダメだ、さっきの光景が頭から離れない)

凛(智絵里のあの表情を見れば、プロデューサーをどう思ってるかなんて、私でもわかる。じゃあ、私の気持ちは……)

凛(プロデューサーは私に“アイドル”として期待をしてくれてる。プロデューサーは私が初めてのアイドルだから特別に思ってくれている……)

凛(そう、プロデューサーは私の“恩人”なんだ。そうなんだ、きっと……)

凛(そう思うことが一番いいことなんだよね……)






凛「プロデューサー、頑張るから、私のことしっかり導いてね……」


智絵里(最近、Pさんとあまりお話ができてない)

智絵里(でも、今度……バレンタインの日は会えるから)

智絵里(お友達なったみくちゃんやかな子ちゃんにも手伝ってもらって、Pさんのためにチョ、チョコを贈る……)

智絵里(か、考えただけで緊張してきちゃった)

智絵里(こ、こんなじゃだめだ。その日にPさんに私の素直な気持ちを聞いてもらうんだ)

智絵里(たとえ、ダメだとしても……)

智絵里「……頑張れ、私」


P「よっ、智絵里。今日はバレンタイン関連のイベントで忙しいと思うけど、頼むな」

智絵里「は、はい。あの、Pさん、それでですね。チ…チ…チョ…チョ…チョップです」

P「ど、どうした智絵里?」

智絵里「あ、あの、ちがうんです。チョ…チョ…ちょっと後で、お時間いただいても……いいですか」

P「ん、仕事終わった後で大丈夫か?」

智絵里「は、はい。大丈夫です」

P「じゃあ。仕事終わったらな」








凛「プロデューサーお疲れ様」

P「凛、仕事終わったのか。お疲れさん」

凛「それで、プロデューサーに渡すものがあって……」

P「お、なんだ?」

凛「はい、バレンタインチョコ、日ごろの感謝の気持ちを込めたから大事に食べてね」

P「すごいうれしいよ。ありがとうな凛。お返し期待しといてくれ」

凛「ふふ、そうさせてもらおうかな」

P「凛がくれたってことは智絵里からも、もらえるのかな?」

凛「ん?」

P「いやー、この後、智絵里と会う約束をしていてな。俄然期待が高まるよ」

凛「……」

P「担当の子たちに感謝されて本当にプロデューサー冥利に尽きるよ」


違うよ
本当にプロデューサーは何にもわかってないね
それなのに私たちに優しくして、私たちのために頑張ってくれて……
本当に馬鹿だね

凛「違うよ」

ダメだ、言っちゃダメだ

P「え」

凛「女の子が勇気を出して渡したのに、他の女の子の名前を出すなんてプロデューサーは本当にデリカシーがないね」

凛「私の本当の気持ちに全然気づいてないんだね」

凛「……」

凛「私はね。プロデューサーのことが、男の人として好きなんだよ。それは義理なんかじゃないよ、本命だよ」

P「いや、凛さっき感謝を込めたって……」

P「……」

P「本気……なのか……」

凛「そう言ったよ」


P「……り、」

凛「な、何も言わなくていいよ。わ、わかってるから、プロデューサーが私のことをアイドルとしてしか見てないって、わかってるから……」

凛「本当は告白する気なんてなかった。だけど、プロデューサーから智絵里のこと聞くうちに、私の気持ちを感謝としてしかみてないこととか分かったときに、私の気持ちがあふれちゃった……ごめんなさい」

P「凛……」

凛「あの、だから、また、いつも通」

P「凛!」

凛「……」

P「確かに今、凛の気持ちを受け入れることなんて出来ない」

P「俺はプロデューサーで、凛はアイドルだから……それにトップアイドルになるっていう凛の夢を俺が壊すわけにはいかないからな」

凛「……」

P「だけど、俺も凛のこと……好きだよ。特別な子だと思ってる、俺が担当した初めてのアイドルで、苦楽を共にしてきた仲間だから。いいところも悪いところもみんなわかってる」

P「不器用だけど、優しくて、クールに見えて実は熱くて、一生懸命な女の子……俺の大好きな女の子だよ」

P「だから……待ってくれないか結論を出すのを。凛がトップアイドルになるまで」

凛「プロ……デュー……サー」

P「トップアイドルは凛の夢で、俺の夢でもあるんだよ。それを見届けさせてほしい」

凛「……うん……ありがとうプロデューサー……」

P「ほら……泣き止んでくれ。凛が泣いてると俺は悲しいよ」








智絵里(わかっていた……わかっていたはずなんだけど……)

智絵里(私はPさんの一番にはなれないって……)

智絵里(だけど……どうしてかな……涙が止まらないです……Pさん……)






P(凛にあんな告白をされるなんて思いもしなかったな……ん?)

P「智絵里からメール……」

プロデューサーへ
用事が出来てしまって、今日、プロデューサーに会うことが出来なくなってしまいました。
実は、バレンタインのチョコレートを用意していて、それを日ごろお世話になっているプロデューサーに直接お渡ししたかったのですが、残念です。
事務所の冷蔵庫に入れてありますので、帰りにでも見てみてください。

私はプロデューサーのおかげで、今日までお仕事を頑張ってこれました。プロデューサーのおかげで楽しくアイドルをやれてきました。
だから、これからもよろしくお願いします。


P「最近、智絵里に避けられてる気がするんです」

ちひろ「智絵里ちゃんがプロデューサーさん避ける状態があまり想像できないんですけど……」

P「些細な差なんですが、いつもより距離があるんです」

ちひろ「具体的にはどんなことですか?」

P「いや、別に悪いことというわけでなくてですね。一人で仕事に行ってくれたり、指示をしなくてもいろいろやってくれたりするわけですよ」

ちひろ「こないだ智絵里ちゃんと話したときは、そろそろ自立してプロデューサーさんの負担を減らしたいって言ってましたよ。一人で仕事をしてみていろいろ思うところがあったんじゃないですか?」

P「それならいいんですが……」

ちひろ「違和感があるとしたら、それはたぶんプロデューサーさんにしかわからないものじゃないんでしょうか。たぶん、プロデューサーさんと智絵里ちゃんの間の絆があってこそだと思いますよ」

P「そうですか……わかりました。智絵里に直接聞いてみます」

ちひろ「それがいいと思いますよ。お二人なら何か問題があっても乗り越えられると私は信じてますよ!」








P「智絵里、ちょっといいか?」

智絵里「はい、なんでしょうかプロデューサー?」

P「いや、何か悩みはないかなぁと思って、最近いろいろやり方を変えてるだろ、呼び方とか……少し気になってな」

智絵里「ご、ごめんなさいプロデューサー。呼び方は……実はこないだ注意されちゃって……おかしいって言われて変えたんです」

智絵里「そ、そしたら急にいろいろなことが気になってしまって、今まで、プロデューサーに迷惑をかけていたんだなと思っていろいろやり方を変えてみたんです。相談しなくて……ごめんなさい……」

P「……」

智絵里「プロデューサー?」

P「なぁ智絵里……俺はそんなに頼りにならないか?」

智絵里「え、えーと」

P「俺の助けが智絵里に負担になってしまっているのか?」

智絵里「そ、そんなこと……ないです」

智絵里「……だけど私はもっと上を目指したいんです! そのためには、今のままじゃダメなんです! 自分の力で何とかしないと……」

P「……わかった。ただ、困ったことがあったらすぐに言ってくれよ」

智絵里「もちろん……です。プ、プロデューサーがいてくれるから……私は頑張れるんですから……」






智絵里「Pさん……」


凛「最近、智絵里はすごいね。いろんなところで智絵里の姿をみるよ」

P「……ああ、実際、もう凛の人気に並ぶのは時間の問題だと思う」

凛「プロデューサー、何か元気ない?」

P「いや、そんなことはないぞ。それより、事務所の先輩としてどうなんだ。今にも抜かれそうな現状に」

凛「む。確かにトップアイドルを目指す身としては現状よろしくないと思う。だからってこのままにしておくつもりもないから、だから、プロデューサーも智絵里ばっかり贔屓しないでよ」

P「あ、ああ」

凛(やっぱり、プロデューサーの様子がおかしい……智絵里のこと……かな)

凛(智絵里の様子が変なのは確かだと思うけど、どこがおかしいといわれるとなんだかおかしいとしか答えられない)

凛(……本当はおかしいのは……私なのかもしれない。智絵里の気持ちを知っていて、一度はそっちを優先しようとしたくせに裏切った私自身の罪悪感のせいなのかもしれない)

凛(そして、すごい勢いでトップに向かってる彼女に対する嫉妬なのかもしれない)

凛(智絵里と話していても変なところはどこにもない。でも、どこか違う感じがするのは私の自意識過剰なのかな……プロデューサーは……どうなんだろ……)


智絵里(今日もお仕事疲れたなぁ)

智絵里(凛ちゃんはこれをほとんど一人でやってたんだ……)

智絵里(それなのに、私はプロデューサーに負担をかけてばかりいたんだ)

智絵里(それじゃあ……私のことなんか……好きになってくれるわけないよね……)

智絵里(……)

智絵里(……だからこそ、私を変えてくれたプロデューサーのために……プロデューサーの夢を実現しなくちゃ……)

智絵里(プロデューサーは私の“恩人”なんだから……)


智絵里「お疲れ様でした」

「お疲れ様ー」

「智絵里ちゃんとっても演技よかったよ。また、よろしくな」

智絵里「は、はい。ありがとうございました!」

智絵里(あ、あれって?)

P「やあ智絵里……仕事ご苦労さま……」

智絵里「プロデューサー……」

P「……さ、送っていくから、帰ろう」

智絵里「……はい」








P「智絵里はもう一人前だな、本当に」

智絵里「え……」

P「映画の仕事も監督さん、褒めてたぞ、智絵里のこと」

P「スケジュールの管理もばっちりだし、仕事の評判もいいし、俺のやれることがないくらいだ」

智絵里「い、いえ、そんな。プロデューサーがいてこそです……」

P「ただな智絵里……今、仕事楽しいか?」

智絵里「……何言っているんですかプロデューサー? 私、今とっても毎日が充実してますし、ファンのみなさんにたくさん応援してもらって、とっても楽しいですよ」

智絵里(本当はあんなに楽しかったお仕事があんまり楽しくない……でも、それは、だって……)

P「……」

P「こんなことならドラマや映画の仕事をやらせるべきじゃなかったな」


智絵里「……どういう意味ですか」

P「智絵里、俺はな。智絵里の態度が変わった日からずっと違和感を持ってたんだ……だけどな、その正体がよくわからなかった」

P「だけどある時から気が付いたんだ……智絵里がみんなの前で演技をしていることに……」

智絵里「……」

P「智絵里がみんなの前で元気な演技、楽しそうな演技をしてる……そのことが違和感の正体だった」

P「別にいろいろなことを変えたこと自体は悪いことなんてないんだ。むしろ、助かってる部分も多いし、智絵里のしていることがおかしいわけじゃない」

P「ただ、俺は智絵里の本当に楽しくて笑ってる姿を見たいんだ。俺がアイドル緒方智絵里に感じた一番の魅力は笑顔なんだから」

P「それに俺はプロデューサーだからな。智絵里が何か悩んでるなら、一緒に悩みたいし、本音でぶつかり合って、二人で一緒に前に進んでいきたいんだ」

P「智絵里が笑っていてくれるのが一番だから……それが俺の一番の願いなんだよ」

智絵里「……」








P「ん。着いたぞ智絵里、ご苦労様」

P「智絵里、今日俺の言ったことよく考えてみて欲しいんだ」

P「これでも、俺は智絵里のことはよくわかってるんだからな。だから、智絵里の本心を教えてくれ」

智絵里「全然わかってないですよ……」ボソ

でも、Pさん……ありがとうございます
だから、最後に……

P「だからな、智絵里、なんでも相談してくれよ」

智絵里「やっぱりプロデューサーはすごいです……私が隠し事をしていてもなんでもわかってしまうんですね」

智絵里「プロデューサーの言うとおりです。私、少し変だったんです……無理……してました……だから……私のお願い聞いてくれますか?」

P「ああ、なんでも言ってくれ。それで、智絵里の悩みが解決できるならなんでもする」

智絵里「本当になんでもしてくれますか?」

P「ああなんでもするよ」


智絵里「じゃあ、向こうを向いて10秒だけ目をつぶってもらえますか?」

P「どこかにいってしまったり……しないよな」

智絵里「……大丈夫です。あと少し屈んでもらえますか?」

P「わかったこれでいいのか?」チュ「!!」

P「え、ち、智絵里……?」

智絵里「これが……わ、私の本心……です」

智絵里「ごめんなさいPさん……わかっていたんです。こんなことをしてもあなたを困らせてしまうだけだって……」

智絵里「Pさん、私はあなたに会うまではちょっと不幸な女の子だったんです……」

智絵里「何をやってもうまくいかなくて、何に対しても自信がもてなくて……引っ込み思案で、友達の少ない……そんな子だったんです……」

智絵里「それを変えてくれたのがPさんなんです」

智絵里「Pさんは不器用な私にずっと付き合ってくれて、つらいときは励ましてくれて……うまくいったときは褒めてくれて……こ、こんな私でも、多くの人を楽しませることができるって教えてくれてた……あなたのおかげで毎日が楽しくなったんです」

智絵里「そんなあなたを……す、好きになったんです」


智絵里「でも、あの日……」

智絵里「……バレンタインの日に私はPさんと凛ちゃんの話を聞いてしまったんです……」

智絵里「私は弱い子ですから、それだけで挫けてしまいそうでした……」

智絵里「だけど、私にとってPさんは、好きな人であると同時にこんな私を変えてくれた恩人なんです」

智絵里「だから、私はPさんの夢であるトップアイドルだけにはなろうと決めたんです」

智絵里「でも、Pさんといるのはつらいから……なるべく避けるようにして……もちろんPさんの負担を軽くしたいというのもありましたけど……」

智絵里「だけどPさんとお話しできなくてもつらくて……お仕事はうまくいっていましたけど……楽しくなくなっていったんです」

智絵里「それをPさんにいうのは、簡単でした……だけど、それは私の想いを伝えることと同じことです」

智絵里「それをすればPさんが苦しむことになることは……考えるまでもないことです。私は……Pさんのこと……よくわかってますから……」

智絵里「私はPさんを苦しめることだけはしたくありません。Pさんが喜んでくれるから私はアイドルをやってこれたんです。私が欲しいのはPさんの喜ぶ姿だけなんです。だからPさん……ごめんなさい、私、アイドルを止めます」

P「智絵里……」

智絵里「どうでしたPさん……Pさんのおかげで、こんなに演技が上手になったですよ……Pさん以外の人には全然気づかれませんでした」

智絵里「でもやっぱり、ドラマの主人公のようにはなれないみたいです」

智絵里「あの子は先生と結ばれて幸せになれましたけど……私はダメだったみたいです」

智絵里「さようならPさん……ずっと好きでした……そして、これからも……ずっと好きです……」


P(駆け去る智絵里を俺は追いかけることができなかった……)

P(俺はどうすればいいんだ……)


ちひろ「プロデューサーさん! 智絵里ちゃんは体調不良でお休みするそうですよ」

P「……」

ちひろ「プロデューサーさん?」

P「はい……聞いています」

ちひろ「だ、大丈夫ですか?」

P「はは……ちょっと寝てないだけです……大丈夫ですよ……」

ちひろ「プロデューサーさんまで、倒れられたら大変なことになりますからしっかりしてくださいね」

P「はい……」






凛「―――――」

P「……」

凛「―――デューサー?」

P「……」

凛「プロデューサー!!」

P「わっ!! ど、どうした凛?」

凛「どうした? はこっちのセリフだよ。何度呼びかけても反応しないしさ」

P「そ、そうだったのか……悪い……って今何時?」

凛「もう夜だよ。ちひろさんも帰っちゃったよ」

P「え、本当に?」

凛「うん、私にプロデューサーを任せてね」








ちひろ「凛ちゃん今日はもう何もないですけど、まだ帰らないんですか?」

凛「えーと……もう少ししたら帰るよ」

ちひろ「……なら、この後プロデューサーさんのこと任してもいいですか?」

凛「え、うん、いいけど……」

ちひろ「今日はほとんど心ここにあらずで、そのうち気が付くと思いますが、動きがないようでしたら様子をみて帰るよう促してください」

ちひろ「声をかけないとずーとそこにいる恐れもあるので……まったく……まぁ原因は智絵里ちゃんのことでしょうが……」

凛「ちひろさんも気が付いてたんだ」

ちひろ「それはまぁ、最近プロデューサーさんは智絵里ちゃんのことずっと気にしてましたし、それで智絵里ちゃんが休めば……」

ちひろ「できれば、プロデューサーさんのお話も聞いてあげてください。きっと凛ちゃんならプロデューサーさんを元気にできると思いますので」

凛「そ、そんな」

凛(むしろ、私は……)

ちひろ「では、よろしくお願いしますね」








凛「って言って私に任していったよ」

P「そっか……」

凛「で、結局、原因は智絵里なの?」

P「まぁ、そうでもあるしそうでもないともいえるかな……」

凛「どういうこと?」

P「半分以上は俺のせいでもある」

凛「……」

凛「話して……くれないの?」

P「……」

P「凛にも話せないよ……」

凛「プロデューサー……言ってくれたよね。私が泣いてると自分が悲しいって、私も同じだよ、プロデューサーが苦しんでたら私も苦しいし、プロデューサーが悩んでるんだったら、一緒に考えたいよ……」

凛「それに、それにね。きっと今プロデューサーが悩んでることの原因は私にもあるんだ」

凛「だから……話して欲しい……」

P「……わかった。言える範囲だけ話す……」








凛「そっか……智絵里がアイドルを……」

P「俺の存在が智絵里を苦しめてる。だけど、俺がいなくなっても智絵里は悲しむんだ……俺はどうすればいいんだ?」

凛「……」

凛「……プロデューサー。プロデューサーは智絵里にありのままの気持ちを話せばいいんじゃないかな」

P「ありのまま?」

凛「うん。きっと、それが智絵里にとって一番いいことなんだと思う……」

P「……」

凛「私はねプロデューサー。とってもずるくてひどい子なんだよ。智絵里を悲しませてるのもきっと私のせい……」

P「い、いや。それは……」

凛「ううん。それが本当なんだよ、プロデューサーが知らないだけ。だからね私は智絵里と一度ちゃんと話したい。だけど、それができるようにしてもらうにはプロデューサーの力を借りるしかないんだ……」

凛「私はね、プロデューサーを信じてるよ。そして、智絵里のことも信じてる。大切な友達で、ライバルだから……」

凛「だから、智絵里のことお願い……」

P「……」

P「……わかった」

凛「……二人からの連絡……待ってるから」


智絵里「……Pさんからメール」

智絵里へ

どうしても、もう一度ちゃんと話がしたい。
明日、いつか一緒にでかけたあの公園で待ってるから来てほしい。
来るまで待ってる。

智絵里「……行けるわけないですPさん」

智絵里「……行けるわけ……」


P「ふぅ、えらい寒いな」

智絵里「Pさん……」

P「……やぁ智絵里、学校はどうしたんだい?」

智絵里「今日はお休みしました……Pさんこそ、いつから待つつもりだったんですか、こんな寒い中……」

P「ずっと待つつもりだったよ……ただ、なんとなく、ああいう言い方をしたら智絵里なら朝からくるんだろうなと思ってきただけだよ。まぁ、予想通りだったわけだけど」

智絵里「……」

P「智絵里、話をしよう。ここか、もっと暖かい場所で」

智絵里「……じゃあ、うちに来てください」

P「智絵里の家?」

P「……わかった」








智絵里「あ、あの、ど、どうぞ」

P「そんなお構いなく……一人暮らしをしてもらってるわけだけど、実際に中に入るのは初めてだな。きれいにしてるんだな」

智絵里「あ、あまり見ないでくださいね。そんなに、片付いてるわけではないので……」

智絵里「それで……お話って? もう私は……」

P「うん。でも、今日は俺の気持ちを聞いてもらおうと思ってね」

P「智絵里、やっぱり俺は智絵里にアイドルを続けて欲しい」

P「智絵里は俺がいたからアイドルを続けてこれたっていってくれたけど……それは俺だって一緒だから……智絵里がいたから、俺はプロデューサーでいられたんだよ」

P「だから、智絵里のことをなかったことにして進むことなんてできない」

P「智絵里は俺に言ったよな。俺が喜んでくれるから、アイドルを続けてこれたって……でも、それだけなのか、俺だけのためにアイドルを続けてきたのか」

P「そんなわけはないんだ。だって智絵里は自分でこの世界にきたんだから、変わりたいって思ってこの世界にきたはずなんだから」

P「そして、俺は見てる。どんどん変わっていった智絵里を……頑張って、強くなっていった智絵里をな……」

P「仕事が楽しいって、友達が増えてうれしいって、ファンのみんなが喜んでくれるから、もっと頑張りたいって言ってくれた智絵里を……」

P「それを見て俺も智絵里のために頑張ろうって思えたんだ」

P「……」

P「だから、智絵里。アイドルを続けてくれないか? 俺と一緒に……」


智絵里「……Pさんはどうして、そうなんでしょうね……私はこんなにダメな子なのに」

智絵里「昨日、ずっと考えてたんです。私がアイドルやめたら、友達になってくれた子たちともお別れになっちゃいますし、ファンのみんなも悲しんじゃうのかなって……」

智絵里「でも……Pさんのことがある中で、アイドルなんて続けられない……」

P「智絵里が幸せになれるなら移籍だって……」

智絵里「Pさん……そんな苦しそうな顔で、言わないでください……それに違うんです。私はPさんと一緒にアイドルをやりたいんですから」

智絵里「だから……」






P「……俺は絶対に智絵里を見捨てたりしないよ」


智絵里「あっ……うっ、ぐす」

P「……今日、智絵里に会ったときに思ったんだ」

P「なんだか会ったばかりの時の智絵里みたいだって……」

P「本当はやりたいことがあるのに、一歩踏め出せない。少し勇気が足りないせいで」

P「だけど、今度ははその障害が俺自身になってる」

智絵里「だ、だって……わ、私、Pさんにあんな……」

P「自分を責めなくていいんだ。悪いのは俺なんだから。気づいてやれなくてごめん」

P「智絵里、これ受け取って欲しい」

智絵里「これは……四葉のクローバー」

P「実は智絵里がくるだいぶ前から探してたんだ。間にあってよかったよ」

P「智絵里が初めて会った日にくれた幸運のお守りだよ」

P「あの日みたいに勇気を出してほしい、俺という壁を越えてくれ」

智絵里「……」

智絵里「私はア、アイドルを……続けても……いいんでしょうか?」

P「当たり前だよ。むしろ、こちらからお願いするよ」

智絵里「Pさん……ごめんなさい」

P「謝らなくていいよ」

智絵里「はい……私にアイドルをやらせてください……」

智絵里「Pさんといるのはまだ……つらいです。でも、私はアイドルのお仕事も大好きなんです」

智絵里「私が変わった証で、Pさんにもらったものがたくさんあるから……」








P「やっぱり智絵里は強いな」

智絵里「そ、そんなことないです。全部Pさんのおかげです」

P「違うさ、全部、智絵里が掴んだものさ。智絵里の強さだよ」

智絵里「あ、あのもう一度約束してもらっていいですか」

P「大丈夫さ。絶対に見捨てたりなんかしないさ」

智絵里「じ、じゃあ、もう一つだけ……わ、私のことずっと近くで見ていてください……」

P「わかった智絵里のこと、ちゃんと見てるぞ」

智絵里「約束ですよ……」

P「ああ。さっ、帰ろうか?」

智絵里「はい!」


凛「……プロデューサーからだ」


凛「智絵里よかった」

智絵里「凛ちゃん、ご、ごめんなさい。心配かけちゃったみたいで……」

凛「ううん。そんなことより謝らないといけないのは私の方……」

凛「ごめんなさい智絵里。私は智絵里のプロデューサーへの気持ちを知ってたのに、それを裏切ってしまった……」

智絵里「り、凛ちゃん謝らないで、凛ちゃんがPさんのこと、どう思うかなんて凛ちゃんの自由だもん、わ、私に謝る必要ないんです……私が振られたのは凛ちゃんのせいじゃないです……」

智絵里「……悪いのはPさんなんです」

P「え?」

凛「……そうだね。プロデューサーが悪いね。私たちにこんなに想われてるのに全く気付かないプロデューサーが」

P「いや、ちょっと待って……」

智絵里「後、わ、私にもう一つ凛ちゃんに謝らないといけないことが……」

P「智絵里待って」

智絵里「わ、私、Pさんに、は、初めてあげちゃいました……」


凛「………………………………………………………………………………プロデューサー?」

P「いや、それは、キスだからっていうか、あの、智絵里の不意打ちというか……事故というか」

智絵里「Pさん、わ、私のことずっと見ていてくれるって約束してくれました。だ、だから、私まだPさんのこと諦めてません……」

智絵里「だ、だから、ご、ごめんなさい」

凛「はぁー、なんだか智絵里に謝って損した気分だよ……でも、智絵里が元気になってくれたし、悪いのはプロデューサーだから……」

凛「……まぁお相子かなぁ……でも、智絵里、プロデューサーは私のことが好きって言ってくれたし……智絵里にゆずるつもりはないからね」

智絵里「はい! 凛ちゃんとはライバルです」

きっとこれからもいろんな大変なことがあると思います。
だけど、私にはたくさんの友達やファンやPさん……そして、ライバルの凛ちゃんがいて……
みんながいるから頑張っていけると思うんです!

智絵里「Pさんこれからまた、よろしくお願いします」

凛「そうだよ。私たちのことよろしくね」

P「はは、こりゃ大変そうだ……り、凛、そっちは無理! 曲がらない方向だから!!」

終わり

極力文章を削って書いたのですが、わけわからんとこが多いですね

すいません

稚拙な文章を読んでいただきありがとうございました

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