~ひとりぼっち探偵~ (40)





やっはろ~! 今、あたしたちはなんと、品川駅にいます!


でもさここマジで人多くない? 前見えないくらい人いるじゃん。

ゆきのんからは「お盆の帰省ラッシュと重なるから混雑は覚悟しておきなさい」

って言われてたけど、まさかここまで多いなんて・・・


それにあたしが引きずってるのはパンパンに大きくふくらんだ荷物いれ。ちょー重い。

あー、そういえば旅行の時に使うこの縦長でタイヤがついてるバッグって何て言うんだっけ?

忘れた。・・・いやそもそも知らないのかもしれないな~


ため息ついて、また前を見るともうヒッキーが新幹線に乗り込んでた。

なんか人混み進むの早くない?あと、おいてかないでよ~


あれ・・・そういえばゆきのんがいない。まさかもう新幹線内に!?

やっぱ、ゆきのんってすごいな、ホント。


そうすると誰かに肩をガシッとつかまれる。

さすがにアホアホ言われてるあたしでも、これくらい誰がやったかくらいは分かる。


「由比ヶ浜、急げよ。発車まで時間にそこまで余裕ないしな」

「ついでにくれぐれも迷うなよ。こっちは不安で仕方ない」


平塚先生! 今のけっこうひどくない!? まさかの小学生扱い!?


とか思って歩いたたら、OLさんとぶつかった。 ・・・いたっ

スマホを持ったOLさんがこっちをにらんでくるし、

平塚先生は生暖かい目でこっちを見てるし・・・、うわっ、もう最悪だ~

ぶつかった肩だけじゃなくて、なんか頭も痛い。


『博多駅行きのぞみ1号まもなく~』

ってやばっ!! 発車しちゃうし! あたしはあわてて新幹線にかけこむ。


はあ、もう最近体調が悪いのか頭痛もするし、駅も混んでるし、ホントに最悪。


でも、だからってこれを休んだりなんてあたしには出来ない。

あたし達はもう高校三年生で、今はもう・・・夏。

今から電車を乗り継いで、あたしたちは岐阜県の神山高校古典部ってとこに行きます。


一泊二日のこの合宿が、あたしたち三人が奉仕部部員として過ごす最後の二日間になる。




   そしてこれが最後の依頼なんだ。

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俺ガイル と 氷菓 の学園ミステリー系クロスSSです

原作を知らない方も楽しんでいただけるよう最大限努力しようと思っています


後、書くスピードが遅いですが、そこのところもご容赦下さい

期待してる


新幹線に乗り込むと、あたし達が座る四人席が向かい合うように並べてあって、

そこでヒッキーが荷物の整理をしているとこだった。

あたしがそこへパンパンにふくらんだ荷物をもっていくと、

ヒッキーは力なく笑ってこう言った。


「何このムダにでかい荷物?お前これからどっかの遠い国にでも行くの?」

「別にこんなの普通だし!っていうかヒッキーマジウザいんだけど!」

「はいはい、ビッチの普通は俺には分かりませんよ」

「ビッチって言うな!ホントにヒッキーは」


「・・・あなた達ここが公共の車内だってことを、少しはちゃんと理解したらどう?」


ああ・・・、ごめんなさい。ちなみにしっかりしろよ、とぶつぶつ言っていた平塚先生の荷物は

あたしのより大きかった。 ・・・なんか安心。

ガタンという音がした。なんか新幹線が発車したっぽい。


「一応名古屋で乗り換えで、正午前には神山着な」

と、平塚先生がこれ以上にないくらい雑に今日の予定を言った。


「あと名古屋の乗り換えは、15分しかないから注意しておきなさい」

と、ゆきのんがフォロー。ウソでしょ・・・、また乗り換え!?うわー頭痛い。


「雪ノ下・・・、お前がいれば何とかなりそうだな。だったら私はここで寝ておくよ」

よく見ると、先生の顔色があまりよくない。だからあたしはきいてみた。


「先生、体調が悪いんですか?」

「そりゃあ、由比ヶ浜、お前みたいな生徒がいればな・・・」


うわっ、ブーメラン!?確かにあたしは現国ぜんぜんダメだよ。

なんか「いろいろ危ないってレベル」らしいし。

でも合宿中くらい、そんなこと忘れさせてよ!


するとゆきのんが助け船を出してくれる。

「せ、先生、さすがに今のは・・・」


そしたら先生は、あわてて謝ってくれたけど、やめて、ますます傷つくから。


「まっ、由比ヶ浜はアホの子だし、しょうがないって」

今、ヒッキーがアホって言った。言ったよね!?


そうこうあって、しばらくするとゆきのんは英単語帳をめくりだし、

ヒッキーは数学チャートをにらみはじめた。


受験生だけど、あいかわらず変わらない奉仕部の雰囲気。

これももうすぐ・・・


でも、そこであたしはこの合宿の目的がよく分からないことを、思い出した。

断言できる、このスレタイじゃ人は来ない


ゆきのんが言っていたのは、古典部がどんな部活とか日程はどうとか、

そういうことばっかでこの合宿についてはあんまよく聞いてない。


でもヒッキーもゆきのんもなんか勉強中って感じで話しかけにくいし、平塚先生は寝ちゃってる。

どうしよう・・・


一度不安になるとどんどん不安になってくる。例えば今朝あったこと。

あれはやっぱり気のせいだったのかな。


まさか最後の合宿で大失敗なんてしないよね・・・ 大丈夫だよね・・・


そういうことを考えると、なんだか泣きそうになってきた。

そしたらガタンゴトンと電車が橋を渡る音が聞こえてきた。


「もうすぐ名古屋ね。そろそろ降りる準備でもしておきましょう」


・・・しょうがないか。不安がっても仕方ない。別にここから引き返せるわけでもないし。


よし、切り替え切り替え、せっかくの合宿たのしんでこ~う!





夏枯れ、という言葉がある。これは、この時期に多くの業界が直面する由々しき課題だ。

具体的に言えば、お盆の周辺になると客足が遠のいてしまう、という経済現象を表す。

これは裏を返して説明するならば、お盆というこの時期は多くの人が家で親戚との再会を楽しんでいる、

ということになるのだ。


だったらば、俺が「やらなくてもいいことはやらない、やるべきことは手短に」

という自身の信条を堅守し、家で受験勉強だけをすることは極めて常識的判断なのではないか。


俺はそういった具合の主張で、古典部の活動には参加しないぞという、確固たる意志を電話で皆に示していた。

しかし、それを部員が聞くや否や、


「ふっふっふ、ホータロー、入部届けに判を押した以上、ホータローは古典部と一蓮托生なんだよ」

里志には、持ち前のジョークでそう茶化され、さらに伊原に至っては、


「はあ?あんた年中枯れてるじゃない」

と言われる始末だ。さらに伊原はまくしたてるように言う。


「折木、夏休み1回集まったのにサボったからこれ知らないでしょ、だからよく聞きなさい」


サボったとは、心外な。あの日午前中はちゃんと予備校に行ったんだぞ。

まあ言ったところでムダなのは分かっているから言わないが。


「氷菓が完成してないの、来週業者が来るんだけどね」

氷菓とは古典部が毎年発行している雑誌のことだ。そして伊原は部長では無いが、氷菓の実質責任者である。


「俺も里志も原稿を終わらせたんだが、もしかして何か不備でもあったのか」

俺は最も可能性のある問いを訊いた。だが伊原は違うと言う。

俺と里志ならば不備の一つや二つありそうなものだが・・・。すると伊原は小声でこう言った。


「完成してないのはちーちゃんの原稿なの」

ちーちゃんとは、千反田のことである。千反田は成績優秀・好奇心旺盛と原稿を書くには最高の逸材のはずなのだが・・・


そう言われてはもう俺に登校を断るカードは無くなってしまったようなものだ。

仕方あるまい顔だけ出すか。


そういって登校した後、俺は合宿というものの存在を突如知らされることとなった。

お、氷菓SSか。こないだ書こうか迷ってた人かな?

ダンロンだと思ってスレ開いたらはまちだった
はまちの方が好きだからいいけど

面白そうだけど、このスレタイじゃ中身わからないな。

俺も霧切だと思ったわ


古典部部室である地学準備室の前に立つ。残りの3人の部員は既に部室に揃っているようだった。

何と勤勉なことか。


しかし、千反田の原稿が、ねえ・・・。嫌な予感がする。

これは何というか経験からして・・・だ。

もしかしたらこのドアを開いたらとんでもなく厄介な謎と共に、千反田が飛び出してくるのではなかろうか。

念のため俺はとりあえず万が一のためにすぐにでも逃げ出す構えをしつつ、部室のドアを開けた。


何も飛び出してこない。まあ、あたりまえだが。

千反田は身の回りに謎があると興奮し我を忘れる傾向がある。だからこそ俺は拍子抜けした。


あまりにも様子が普通すぎた。ただ机には氾濫せんばかりの大量の資料があったから、どちらにせよ厄介な難敵なのだろう。

明らかに嫌そうな表情を浮かべていたであろう俺に、千反田は言った。


「折木さん、少し協力していただきたいことがあるんです」


やはり不自然だった。『気になります』が来ないだと?あれほど身構えた俺の苦労を台無しにするつもりか。


「折木さん、これどう思いますか」


それはどうも昔話・・・、だろうか、『水龍と怨霊』と書いてある。何だこれは。


「まさか千反田、お前は俺に文学評論をさせるつもりなのか」


すると里志が言った。


「ホータローだけじゃない。今回は心強い援軍が来るじゃないか」

「はあ?それはまたどういうことで」


すると伊原が言った。


「そうか折木前の会議に来てなかったから。他の学校から合宿しに来ることしらないのね!」

古典部に合宿だと?


「ホータロー、さすがにそれは知っておかないと・・・」


おいおい待て待て。


前の会議は1週間前だぞ。


その援軍とやらの話がそのときに出たのなら、


千反田は原稿を1週間で書けないと見越していたことになる。


・・・何が起こっている?それだけの問題が?


まるで俺だけが時代を遅れているような気分だった。

氷菓×俺ガイルか
タイトルじゃわからんかったが氷菓SS少ないし期待


千反田から手渡された『水龍と怨霊』という厄介そうな資料を読み込む。

いろいろ書き込めるように広く行間をとった上で、物語が綴られている。

どうも言葉遣いが現代っぽかったから、おそらく千反田が予め現代語訳をしておいてくれたのだろう。


ここでここまで俺が聞いた経緯をまとめてみる。

古典部といういかにも厳格そうな名に反して、氷菓の内容は自由極まりないものばかりだ。

正直、古典の影すら見当たらない。だから、今回の氷菓は千反田の方針として、

『古典らしきもの』をテーマに据えることにした。


まあ、俺はここで『怠惰の感性』と称して、平安貴族の趣ある短歌をまとめ、

静かにぐうたらすることにも価値を見いだすべき、と説いたが、まあそれは必要ない話だろう。


ここで千反田はこの神山市周辺の昔話をピックアップしたらしい。

その中で備考も追加資料も全く見当たらなかったのが、この水龍と怨霊のようだ。


そして今、俺はそれを読んでいる。俺のささいな要約力で要約するならば、


水龍が嵐と豪雨で村を壊したので、主人公である庄さんが怨霊と結託して水龍を追放する話だ。

だが最後がよく分からない。怨霊は・・・、死んだのか・・・?


「まずこの国ってのが、美濃の国なのか飛騨の国なのかも分からないんだよね」

「じゃあ怨霊さんは岐阜全土どこにもいる可能性があるってことでしょうか」

「第一、この話何なのよ!昔話ってもっと説話っぽいのじゃないの?」


・・・古典部員に光明が差し込む余地は無いらしい。ああ、俺のただでさえ受験勉強で少ない夏休みが・・・


すると、千反田が何かに気付いたように言った。


「そろそろ神山駅に向かったほうがよさそうですね」


「なっ、まさか合宿って今日来るのか!?」


すると伊原から一言。


「折木っ、あんた・・・、はあもういいわ、今日よ今日」


「ホータロー、とりあえず神山駅に僕と行こう?どうせ手持ちぶさただろう?」


「神山駅までのバスで大体の事情は説明するからさ」


里志に引きずり出される。見るとどうも千反田と伊原は作業のため、残るらしい。



俺はセミの鳴きしきる暑い夏、こうして訳の分からない出来事に巻き込まれたのだ。


とりあえず援軍が厄介事をあっさり解決してしまう事を、心の奥底から祈るとしよう。



これが今、俺が出来る最大限の事なのだから。





名古屋での乗り換え。相変わらずここも人が多い。

由比ヶ浜さんが目をまわしているのがここからでも分かる。・・・大丈夫かしら?

ここからJRひだ、に乗り換え。乗り換えは新幹線ホームの群衆から抜ければとてもスムーズだった。


特急に乗り込むと、まばらな席の空き方のせいで、四人席が空いていなかった。仕方ないので私は二人席に座る。

すると隣に平塚先生が座る。すると平塚先生は後は頼んだ、とでも言うように肩に手を置いた。


そしてアイマスクをつける。それにしてもバッグから大量のタバコが見えているのだけれど。

これで本当に生徒指導教員なんだものね。・・・まあ使いたくなる気持ちは想像できなくはないけれど。


・・・それにしても比企谷君と由比ヶ浜さんは? まさか迷子になったんじゃないでしょうね? すると、


「お前、起きても寝ててもアホなのな」

「うるさいっ!つーかアホ言うな!」


と、聞くからにアホらしい、意味不明な会話が聞こえてきた。


少しでも心配した私がバカみたいじゃない、これ。


それにしても疲れた。しかしなんでこんな合宿を企画することになったのか、



話は2週間前の1学期終了式の日にさかのぼる。

親が帰ってきたので少し間を置いて投稿します

申し訳ありません

終了式の日の帰りに、私は平塚先生に呼び出された。

・・・しかし部長だからと、突然私を呼び出すのはやめていただけないものかしら?


そして言うまでもなく職員室に行くと、平塚先生がいた。


要件はこうである。奉仕部の最後にふさわしく、今年の合宿は県外にしてみよう、という。

そう言いながら平塚先生は、とあるパソコンの画面を表示させた。

学校間交流のサイトらしい。



神山高校古典部   
       部長 千反田える

文集制作に協力していただける人を募集しています


「それで、ここなんだが、雪ノ下。なかなか名案だと思うだろう」


先生は勝ち誇ったような笑みを浮かべている。子供じみていたが突っ込まないでいておいた。


「先生、どうしてまたこんな遠くの学校に」


「ああ、ここよく見てみろ」


「『出来れば県外の方、希望』・・・ずいぶんと変なオーダーですね」


「まあな。だがここならお互い好都合だろう?それに最後は大がかりな合宿に限るだろうし」


「それで実際のところ、どういう目的なんですか?」


「うっ、相変わらず鋭いな。まあ、お前達が引退したら来年度からまた部員が必要になる」

「こちらからすれば、出来たら実績が欲しいところなんだよ」


「まあ、悪い条件では無いんでしょうけど」


「よし、なら決まりだな。まあ部員内で親交を深めるビッグイベントだとでも思えばいい」


「ならプランはこっちで作っとくから。連絡はよろしくな」


・・・私は一言もイエスとは言っていないのだけれど。



この後、私は比企谷君と由比ヶ浜さんにお盆前という無茶苦茶な日程の合宿を、

決定的な動機付けもなしに参加をお願いした。


こころなしか一番面倒な所を押しつけられた気がする。



でも私には『奉仕部内での親交』という言葉が引っかかっていた。

それなら行く価値はあるかもしれないと思った。


奉仕部内のほんの少しのわだかまりが解ける機会になるならば。


これは部長としての責務を全うできるビッグチャンスなのかもしれない。


そんな具合


そんな具合で私は今に至っているわけなのだけれど・・・


とりあえず今は神山市に着くことが先決だ。これからの一泊二日の旅は出来れば収穫あるものにしたい。


そうして単語帳をくりながら電車に乗っている。


ふと外を見ると景色が出発時とは一変して、夏の生き生きとした田園風景が広がっていた。


すると、由比ヶ浜さんと比企谷君が何かを話している声が聞こえてきた。


『それって・・・材木・・・』


『仮に仮にだ・・・じゃあ』


彼女達は何を雑談しているのかしら? 


何というか気がかりだった。





名古屋駅でもうホントにウザい乗り換えをし終わって、神山へ向かう特急に乗ると、

ヒッキーと今回はとなりの二人席に座ることになる。

そこで荷物を置き、とりあえず一段落。ちょ~疲れた~。


ヒッキーも同じように一段落ついている。お互い何も喋らない。


・・・で、でも、せっかくの合宿なんだし、やっぱ会話は必要だよね!?


なのであたしはちょっと今朝あった事を話してみることにした。


「あ、あのさ、ヒッキー、朝ちょっと気になることがあってね」

「何かあったのか?」

「いや~そのね。何かさあたし今朝寝ぼけちゃったみたいでさ」

「何か持ってこようって思ってたものをこうなんつーの、あれ!いじった!」


「・・・意味わからん。やっぱお前起きてても寝ててもアホなのな」

「うるさいっ!つーかアホ言うな!」


「・・・で、今朝何があったんだ?」

「そう、何かね、持ってくる予定の荷物の山から何かをどかした記憶があるんだよね。何か寝てる間にさ」


「あ、後なんか夢っぽい感じ。勝手に体がこうスウーって動くような」

「・・・俗に言う夢遊病って奴か? ただ確かあれは普通、本人の記憶には残らないはずだけど」

「うんまあ、そんな感じ・・・かな」


そしたらヒッキーはホントに嫌そうな顔して、こう言った。


「で、何? その変な妄想だか夢だか分からん奴のために、忘れ物を探せってでも言うのか?」


ヒッキーはあたしの荷物を手のひらで叩く。荷物がパンパンに詰まってるから、ボンボンって鈍い音がした。


まあ、その通りなんだけどさ~。これじゃあたしもどうだか分かんないし。



だからこそ何か気持ち悪いんだよね。

ちょっと外を見ると、一面の緑、緑、緑だった。なんかすごくきれい。

その後ヒッキーがスマホを少しいじって、もう岐阜に入ってる、とつぶやいた。


最近あたしも機種替えしてスマホ買ったけど、スマホマジすごい。すごい、ここが、岐阜!


「そーいや、さっきのお寝ぼけの話だけどな? お前もしかして」


え・・・、もしかして? 何か分かった・・・


「遅すぎる中二病発症? 夢が物語のカギになる王道小説でも読んだの?」

「違うし!あと、ちゅーにってあの材木座君の事でしょ? あたし別にそんなんじゃないし」


「ああ、そう・・・だな」

ヒッキーは何か苦笑いをしてる。


「ホントホント、奉仕部に『剣豪将軍の事は全部忘れてくださいっっ』ってスライディング土下座してきたのはヤバかった」


ヒッキーは黙り込んでしまった。そういえばゆきのんが「彼も昔、通った道よ。精神攻撃以外の用途で話題にしてはダメ」

とか言ってたっけ。そしたらヒッキーは話題を変えたいのか、こう言ってきた。


「仮に仮にだ、由比ヶ浜が今朝突然寝ぼけたとして、それが何でかでも考えるか」


「まず、お前の無意識をYUIとおこう」


と、ヒッキーは不自然に、にやけながら言った。


マジキモい。つーかヒッキーこれ絶対ふざけてるでしょ。あたしだってこれくらい分かるし!

おうぼっち探偵と言えば霧切さんという風潮やめろや
ほうたるも古典部ないとぼっちだから

丁寧ですごく読みやすいです。どっちも好きだしゆっくりでいいから完結してほしいなー

ヒッキーはスマホを手にとって何かを調べはじめる。


「寝ぼける・原因・無意識、とでも入れるか」

「えーと、まず子供に起こりやすく…」


と言い、ヒッキーはチラッとこちらをふりかえると、何か納得したようなためいきをついた。


ぜったい今、失礼なこと考えてたよね…。


「あ、あのさ、ヒッキー、もうせっかくだし勉強しよう? ほら、ゆきのんみたいにさ」


「新幹線でチャート解いたら酔ったんだよ。それに今は別に休憩でもよくね?」


「へ、へー、そうなんだ。で、話はかわるけどさー」


「…原因はまあストレスか。合宿の日の前日なら妥当なところではあるんだろうが」


あー、これこっちの話聞いてないパターンだよ。


「ただ寝ぼけてたとしても由比ヶ浜の話が正確なら、持ってくるべき荷物に一目でYUIさんが困る物があったって事か」


「うん、やっぱどうでもいいわ、これ。ノーヒントで分かる問題じゃねーよ。つーか忘れ物くらい一人で何とかしとけ」



「それひどくない!? まーさ、あたしも確か片手で軽々持てる大きさだったなー、くらいしか覚えてないけど」


「それでもわかんねーよ、絶対。こんなパンパンの荷物からさ」



「第一、ほらここにも書いてあるだろ。ストレスが発散されれば何の問題もないわけ」


「YUIさんなんてありもしない物に不安になるからまた面倒なことになるんだよ」


と言い、ヒッキーはスマホの画面をパンパンとたたく。



でもそこに、あたしは頭痛がはしるような言葉があるのを見つけた。



『無意識のうちに寝ぼけてしまう原因としては、

     身や心のよりどころとしていた環境の喪失などが挙げられ…』

  

邯壹″縺阪※縺溘?

うーむ、続きが楽しみだ





ボクは今日、ここで『出た』。

それにしても電車に乗るのは初めてだ。これが電車なのかあ…。



…それにしても何でボクがよりにもよって、ここに『出た』のか。


やっぱりボクの素性がバレそうになってるからなのかなあ。


この電車にはボクがこれから対峙することだってありうる四人がいるわけだし。


平塚静、比企谷八幡、雪ノ下雪乃、そして由比ヶ浜結衣。


あの古典部の人達も可能性はあるけれど、こっちだって充分ボクの事を暴露できそうな顔ぶれだ。


状況があんまりよくないって事かな?



…まあいい。ここにボクが『出た』のも何かの縁なんだろう。とりあえず敵状視察でもしておくにこしたことはない。



だってボクには絶対に守らなきゃいけないものがあるんだ。




そう思ってボクはとりあえずまず雪ノ下雪乃と平塚静の席へ向かう。

当たり前かもしれないけど、別に大したことをしているわけでもなかった。

片方は熱心に勉強をし、片方は夢の国へ旅立っていた。

ここはもういいだろう。


そうしてボクは比企谷八幡と由比ヶ浜結衣の席へ歩を進める。すると、


…今、雪ノ下雪乃が少しこちらを見なかったか?


ということに気付く。でもやっぱり気のせいかな。人外の嗅覚でもないかぎりボクの事は分かるまいし。



そしてボクは二人が座っている席に移動し、そしてそこで興味深いものを見つけた。



『YUI』 『ストレス超過?』 『何かを壊した?』 『無意識の暴走?』 『つーかお寝ぼけだろ、どうせ』



へえ、これは…。使えそうだね。いいよ、いいよ、これ!


ボクが大事な物を守るのにバッチリ役に立ちそうだ。ぜひとも使わせてもらおう。




             

            …まあ今日は収穫もあったことだし、ボクはとりあえずこの辺で『消える』とするか。

誰なんだ……?sage





バスに乗る。しかし今日も無駄に暑い。

…しかしバス内くらいは涼しくあって欲しかった。おのれ『ただいま節電中 ご協力ください』め。


まあこれに関しては俺がどうこう言ったところでどうしようもないが。それに今は里志に話を訊くのが先決だった。




「で、里志よ。とりあえず今が、どういう状況なのか説明してもらおうか」


「まあまあ、落ち着こうよホータロー。それで本当に摩耶花が説明した事以外は、何も聞いてないんだよね」


…返す言葉もない。ただ、黙っていても仕方ないので、俺はいくつか気になっていることを里志に訊いた。



「あの例の昔話だが、現状どうなんだ。どれくらい裏が取れてるんだ」


これで五割方でも決着がついていれば、多少俺の負担と割くべき労力が減る。だが里志の答えは俺の希望を軽々打ち砕いた。


「言いにくいんだけどね。部室でホータローにメモを渡しただろう? 現状あれが全てさ」


「俺がさっき気付いたことを書き込め、と伊原に渡されたあれか?」


「そうそう、それ。今持ってるかい?」


「いや千反田に返したが。それとあれにはさほど大したことは書いてなかったように思えたんだが、気のせいだよな…?」


声が震える。もしあれだけならこれから途方もない調査が必要なのでは…。


「そりゃそうさ! いきなり龍だ霊だ、言われてもね。お手上げだよ。特に怨霊に至っては結末も曖昧だし」



こうして俺の夏『休み』は死刑宣告をくらったのだった。 …これは全力で控訴せねばなるまい。


だが控訴は置いておくとして、まだ気になることがある。


「なあ、里志」


「何かなホータロー」




「どうして千反田はあそこまであの昔話にこだわってるんだ? 意地でもあれだけをカットする気はなさそうじゃないか」

「そういえばそうだね。ただ原稿カットは摩耶花がもう提案していたはずなんだけど」


伊原が、ねえ。まあ順当なところだろう。いかにもあいつがやりそうな事だった。


「なんでも『申し訳ないんですが…、その限界まで機会を頂けませんか? ってちーちゃんに言われた』らしいけど」


と、里志が伊原の声真似をして言ったが、全く似ていなかった。一応、恋人同士であるはずなんだが。


…どうでもいいな。俺は里志に質問を続ける。


「そもそもあの昔話の出自はどこなんだ。そこから探るのが一番ベターな方法だと思うんだが」


「うーん。千反田さんの事だし、もうそこは当たってる気がするけどなあ」


「それにこちらが目を通す時には、既にああいう形でまとめられていたし」


つまり、出自は知らない、と。しかし、これ以上の情報はのぞめそうにないな。話を変えるか。


「はあ、もういいよ。じゃあ次は例の援軍とやらについて訊かせてもらおうか」


「ああ、それならほら、これ」


と言われ、資料みたいな物を手渡される。



中には顔写真と要項を記載したプリントが一枚。


…『奉仕部』 目的は社会貢献。千葉県内中心に活動中。


 『雪ノ下 雪乃』 黒髪で端正な顔つきの女だった。部長とも横に書いてある。


 『由比ヶ浜 結衣』 褐色じみた明るい髪色の女。見るからに流行とかを気にしていそうな風貌だった。


 『比企谷 八幡』 億劫そうな態度の顔写真だ。案外、気が合うかもしれない。


それにまあ軽く日程の説明がいくつか。



「これで千反田は合宿招待を決めたのか?」


「いろいろ向こうの部長さんとは調整していたみたいだけど、おおよそはこれみたい」



…千反田が何がしたいのかますます分からなくなってきたぞ。

「で、まあ千反田がどう考えているのかは知らんが、向こうは何の目的で来るんだ」


「表向きは全国間の学校交流をすることで向こうの部の実績ってことになってる」


「表向き?」

「そうさ裏には壮大な陰謀が…」

「茶化すな。で、実際のところはどうなんだ」


「どうやら向こうの部も我らが古典部と同じで部員が全員三年生らしくてね」


「向こうの顧問の先生が最後の思い出にドッキリを仕掛けようと立案したらしくてね。これは僕個人が受けた依頼だけど」


「…何でまたそう厄介そうなことを」


「そりゃあさ、ホータロー。ドッキリに別れへの悲しみと感動のドラマが詰まってるんだ。こんな興味深い話はないよ」


さいですか。相変わらずぶれない里志なのであった。



「まあ、千反田さんがその依頼を受けようか考えあぐねてたからね」


「こちらから単独で電話して共謀したわけさ」


…なんてアグレッシブな奴なんだろう。その気力が勉強に向いたら伊原も苦労しないだろうに。



「じゃあ、俺にもそのドッキリとやらについて教えてもらおうか」


共謀者になるのは非効率的だが、混乱している今の俺の現状を考えれば、訊いておくにこしたことはなかった。


「ああ、最後にふさわしく夏休みの無人校舎を利用した…」


『まもなく神山駅~』


「おおーっと、初めからネタばらしなんてする気は無かったけど、ちょうどよくごまかす言い訳ができたぞー」



…お前は何をしているんだ。というかタイミング計って言いやがったな、こいつ。



「まあ、ということでこれからの『壮大な悪戯』楽しみにしていてくれたまえ」


「…お前本当楽しんでるよな」




「まあね。楽しめるときに楽しんどくべきだよ。じゃあ出迎えへ行こうか。お客様を待たせるわけにはいかない」

今日はここまで


読んでいただいてる方がいたら幸いです。

乙です。続き楽しみにしてます/





電車が神山駅に着く。しかし本当にずいぶんな長旅だったわ・・・。


荷物を持ち電車を急いで降りる。すると、横から聞きなじんだ騒ぎ声が聞こえてきた。


なにやら比企谷君が由比ヶ浜さんをからかっているらしい。手には何やらメモらしきものが見える。


しかし「痛い発言だよな~」などとガキガヤ君は騒いでいるのだけれど。いつ私は幼稚園の引率の先生になったのかしら?



・・・もういい。無視しましょう。



しかしお盆真っ盛りのこの季節だけれども、ちょうど時間が正午過ぎだからだろう、神山駅には人がほとんどいなかった。


改札を抜けると、全く空調が効いて無さそうな待合室で、二人の制服を着た男子生徒が完全に意気消沈しているのが見える。


この時間帯に待合室にいて、かつ制服、間違いなく私たちの待ち合わせ相手だった。


それに向こうもこちらに気付いたらしい。騒いでる人たちがいるから。誰とは言わないけれど。



すると一瞬のうちに小柄な男子が飛び出してきた。


「すいません、総武高校の方ですか?」


快活な喋り方だった。人見知りをしないタイプの人なのね。これは正直助かった。


「ええ、そうですが」


すると平塚先生たちが後から追いついてくる。するとこれまた間髪入れずに目の前の少年が動く。


あれね・・・、失礼だけれどネズミみたい。小動物然とした態度だった。


「平塚先生ですよね。お話うかがっております、福部と申す者です!ここ2日間よろしくお願いします」



・・・確か私はずっと『ちたんだ』さんとかいう部長さんとしか話した記憶しかないのだけれど。


福部君・・・ねえ。先生とどうも話したことがある様子ね。しかしこれはまあ些細な事よね。


「あのそういえば、ちたんださんは?」


「部長の方は少し立て込んでおりまして・・・」


苦々しい顔をしながらも立て板に水のように話す。すると後からいかにも気怠そうな男子が一人現れた。



「あ・・・、折木です。えっと・・・、まあよろしくお願いします」


今日はこうして顔あわせを済ませてから、その『立て込んだ用事』の手助けをすることになる。先はまだまだ長い。



ただこの後、予想外の『アクシデント』が起こったのだ。

縺翫?縲√▽縺?↓莨壹▲縺溘°

おつです。次回が楽しみですsage

バス内では由比ヶ浜さんと比企谷君が見事に暑さに打ち負けていた。空調が効いてないのは分かるけれども…。


…でも合宿目的地に行くだけでこの有様なんて、本当に先々が思いやられるわ。


そしてその二人にひっそりと混じって、気だるそうにしているあの男子はいったい…、確か折木君とか言ったはずだけれど。


そんな三人組を見て私はため息をつく。それから何か察したのか福部君が話しかけてきた。


「ああ、ホータローはずっとあんな調子だから問題ないよ。それにホータローは何たって我らがエースだからね!」

「エース?」

「そっ、推理力は僕たちの中でも群を抜いてる。ただ本人は全然積極的じゃないからね…。今回の件もノータッチだし」


彼の説明が的を射たものであるのは、見るからに明らかだった。古典部も一枚岩ではないのかしら…?

ふと大事なことを思い出して私は彼に訊いた。

「そういえば、今日の予定は…」


「ああ、多分午後から、二手に分かれて片方は調査、片方は原稿の校正って形になると思うよ」


ここで話は途切れた。そして彼は今度は平塚先生と打ち合わせを始めた。…ずいぶんと熱心ね。



しばらくしてバスが神山高校に到着する。やはり外は恐ろしく暑かった。


ここで私が神山高校についてあらかじめ聞いたことをまとめておこう。



・今はお盆休み中なので原則校内は立ち入り禁止だ。ただ地区大会の練習のため部活をしている生徒は散見される。
 
 「祝 バレー部、県代表選出」だの「野球部3年引退試合決行!」だの「祝 演劇部特別賞受賞」だの校門前の掲示板

 には貼られていた。部活道に力を入れているのかしら? ただ、私は迷い猫のポスターの方に目がいったが。


・この校舎は上から見たらエの字型になっていて、今いる校門前にあるのが一般棟、3階渡り廊下を渡って奥がわにある

 のが特別棟らしい。あと、体育館と武道場があるとか。私たちに縁があるのは、一般棟の職員室と特別棟最上階(=4階)

 の古典部部室だけだろうけれども。

・ついでに今は文化祭準備期間でもあるらしい。どうりで騒がしいはずだ。 あれ…、立ち入り禁止は?蒸発したの?


…正直有益な情報はありそうに無かった。


「じゃあ校舎に案内しようか」


という福部さんの声に由比ヶ浜さんが「うんっ!」と大声で返事をしたときにアクシデントは降ってきた。


…そう、降ってきたの。ニュートンの万有引力の法則にのっとって実際に。


その時、一瞬だけ眩しい光が指した。思わず眼をつむる。そして、

                  『カシャーーン』と甲高い音がした。


はっと上を見る。窓が開いていてカーテンがたなびいていた。


福部君が嬉々とした表情で、何かが落ちたところへ向かう。それは、…アルミホイルで巻かれた何か? 福部君は言った。


「ホータローこれ…、辞書だ!! ジーニアス英和がアルミホイルに巻かれて落ちてきたよ!!」

続きキター!

ひさびさに来たら続きが来てる
頑張ってくださいー!

あ、sage忘れた

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