小鳥「まるで、花が咲くように」(278)

 
小鳥「……うーん、良い香り」

テクテク……

小鳥「……まるでこの花が咲くように、私にも満開の春がやってこないかなぁ~」

小鳥「なーんて……はぁぁぁ~……」

いつから鳥の子供は喋るようになったんだ

続けて

 
【雑居ビル 階段】

小鳥「…………お、重い」

小鳥(ちょっと調子に乗って、色々と買いすぎちゃったかしら……)

小鳥(こんなことなら、プロデューサーさんにも買出し手伝ってもらえば良かったかも)

フラフラ……

小鳥(……なんて、そんなことお願いしちゃダメよね)

小鳥(プロデューサーさん、春香ちゃんと打ち合わせしてて忙しそうだったもの)



小鳥「あーんもう、早くエレベーター直らないかなぁ……ぜぇ、……ぜぇ……!」

小鳥「……よっこいしょういちっと!」

ドサッ

小鳥「ふぃ~……やっと到着だわっ! 頑張った、頑張ったわね小鳥っ!」

 
【765プロ事務所】

小鳥「ただいまもどり──……」ガチャッ

ドンッ!

小鳥・春香「「きゃあっ!」」

ガラガッシャーン!



春香「あいたたた……。す、すみません、小鳥さん……」

小鳥「つつつ……だ、大丈夫よ。春香ちゃんこそ、怪我はない?」

春香「はいっ、平気です! えへへ、私、こういうの慣れてますからっ!」

小鳥「そう、それなら良かっ──」

小鳥(……あら? 春香ちゃん、なんだか目が……)


春香「って、うわあぁっ! 小鳥さん、荷物荷物!」

小鳥「……ああっ!」

小鳥さんは可愛いピヨ

 
春香「ごご、ごめんなさいっ! あ~、私ったら……!」

小鳥「あははは……拾うの、手伝ってくれる?」

春香「もちろんですっ! ……っと、いけないいけない……大声出したらダメよね……」ガサゴソ

小鳥「大声がダメって、どうかしたの?」ガサゴソ

春香「……小鳥さん、ほらあれですよ、あれ」


P「……すぅ……すぅ……」


小鳥「……もしかしてプロデューサーさん、寝てる?」

春香「そうなんですよぅ。ついさっき、打ち合わせが終わったんですけど……」

春香「ちょっと目を離した隙に、気がついたらすやすやしちゃってまして」

小鳥「へぇ~……珍しいこともあるものね」

小鳥さんかわいい

かわいい小鳥さん

大丈夫ですかおばあさん

 
春香「……はい、これで全部ですよね?」

小鳥「うん、そうね。ありがとう春香ちゃん」

小鳥「……おっと、そういえば鉢植えは……良かったぁ、割れてなかったわ」

春香「あれ? 小鳥さん、それ……花?」

小鳥「そうよ~。ほらこの事務所、飾りっ気がないじゃない。だからお花でも、と思って買ってきたの」

春香「へぇ~……わぁ、かわいいなぁ」

チョンチョン

春香「このお花、なんていう名前なんですか?」

小鳥「サイネリアって言うんですって」

春香「サイバスター?」

小鳥「さ、サイネリアよ。……春香ちゃん、サイバスターを知ってるの?」

春香「んー、知りませんけど、なんとなく頭に浮かんできて。えへへ……」

小鳥「そ、そう」

まさかDS組……!

 
小鳥「……花言葉は快活、変わらぬ喜び。うふふ、この事務所にぴったりだって思わない?」

春香「えへへ、本当ですねっ! さすが小鳥さん、お花のことも詳しいんだぁ……」

小鳥「ま、まぁね! 私くらいになると、これくらいわねっ!」


小鳥(……まぁ、本当のことを言うと)

小鳥(鈴木さんという、金髪を! ツインテにした! さらにゴスロリの!)

小鳥(とにかくとにかく、と~~っても可愛い妖精みたいなバイトさんに、すっごい勢いでお勧めされて……)


『仕事場に飾る花が欲しい? それならこれデスヨ! サイネリアしかありませんっ!』

『ほらほらこの色、このカタチ! きゃうーん激カワユスっ! 奥さんにもぴったりだってアタシ思います!』

『家内安全、恋愛成就、百合運上昇! あと一品のみの限定販売ですよ! ほらほらほらほらほらほら』


小鳥(それでついつい、『あらそうなんですか~うふふ』って感じで買っちゃったんだけどね)

奥さん……?

 
小鳥(もちろん私は『奥さん』ではないけど……ま、まぁ、そう見られるっていうのは悪くない気分だったしね)

春香「あ、そんなことより……小鳥さん、私、そろそろ帰りますね」

小鳥「あら、もう帰っちゃうの?」

春香「はい。撮影も無事終わって、個人打ち合わせもやっちゃいましたし……」

春香「それにもう、こんな時間ですから。帰りがおそい~、ってお母さんに怒られちゃいます」

小鳥「そうなの……あ、そうだ春香ちゃんっ!」

春香「えっ? なんですか?」

小鳥「さっきあなた達が帰ってきたときは慌しかったから、ちゃんと言えなかったけど……テレビ、観たわよ」

春香「! あ、あのっ! どうでしたか……?」

小鳥「うん、とっても良かった。春香ちゃんの元気いっぱいなところ、沢山伝えられてたと思うわ!」グッ

春香「本当ですかっ!」パァァ


P「フゴッ」


小鳥「しー、しー……」

春香「おっと……私としたことが、また大きな声出しちゃって……えへへ」

 
春香「……私、小鳥さんにそうやって褒めてもらえるのが、一番嬉しいです」

春香「小鳥さんはずっと、正式にデビューする前からも、私たちのこと応援してきてくれましたから……」

小鳥「……そんなこと言っちゃって。一番嬉しいのは、プロデューサーさんに褒められたときじゃないの?」

春香「あ、あぅ……そ、それはまた別腹っていうかっ! ごはんとケーキっていうかっ……」

小鳥「うふふっ、冗談♪」

春香「じょ、冗談って……もう」

小鳥(うへへ、春香ちゃんってば、慌てた顔も可愛いんだから!)

小鳥(……っと、いけないいけない……顔がついついニヤけちゃうわ。お姉さんっぽくしないと……)

小鳥「……」ペチンペチン

春香「……それにそもそも、プロデューサーさんは絶対……」ゴニョゴニョ

小鳥「え?」

春香「……なんでもないでーすっ」プイ

小鳥「な、なによぅ。教えてよ~!」

 
小鳥「……でも、私もね。春香ちゃんと一緒よ」

春香「いっしょ?」

小鳥「うん。春香ちゃんがいつも笑顔で、毎日たくさんの活躍が出来ているのが……一番嬉しい」

春香「……!」

小鳥「もちろん、春香ちゃんだけじゃなくて、みんなもだけどね」

小鳥「あなたたちの夢は、私の夢でもあるんだから……だから私も、とっても嬉しいの」

春香「こ、小鳥さん……」

小鳥「それにまた、今度アルバム発売でしょう? ……春香ちゃん、本当に、立派なアイドルになったわね」

春香「……立派なアイドル……それ、本当ですか?」

小鳥「ええ、もちろん! 私が保証するわ」

春香「…………」

小鳥「あら、まだ信じられない?」

春香「そ、そういうわけじゃないんですけど……なんだか、また嬉しくなっちゃって……」

小鳥「……」

小鳥(……本当に、良い子ね)

 
春香「……」ジワッ

小鳥「……春香ちゃん……」

春香「ご、ごめんなさい、私ったら……ずびっ」

春香「えへへ……なんだか、今までのこと思い出したら、感極まっちゃいました……」

小鳥「……私が春香ちゃんに嘘ついたこと、ないでしょ? だから、胸を張っていいの」

春香「……そうですねっ!」

ゴシゴシ……

春香「私……いま、とっても幸せです」

春香「大好きなみんなと、毎日楽しく過ごせて……これ以上の幸せは、お腹いっぱいで入らないってくらい」

春香「……だから……小鳥さんも、絶対、幸せになってくださいねっ!」

小鳥「え? 私?」

春香「……そうですよ。小鳥さんってば、何かにつけて私たちのことばっかり気にかけてくれるんですから」

春香「たまには、私たちのこと抜きにして、小鳥さんだけの幸せを見つけたっていいと思いますっ」

小鳥「ど、どうしたの? 急にそんなこと言っちゃって……」

小鳥(春香ちゃんにまで心配されるって……うぅ、私、そんなに幸薄そうに見えるのかしら……)

 
小鳥「私だけの幸せ、かぁ……」

春香「なーんて……えへへ、ごめんなさい。私なんかが生意気言っちゃいましたね」

小鳥「……ううん、そんなことはない。ありがとね、春香ちゃん」

小鳥「でも私だってもちろん、今とっても幸せなのよ? だって今では昔と違って、みんながこーんなに……」

春香「そうじゃなくてぇ~!」

小鳥「……はい。そうよね、言いたいことはなんとなくわかります……」


小鳥(そりゃあ私だって、『私だけの幸せ』を見つけたいっていう気持ちは山々なんだけど……)

小鳥(でも、アイドルのみんな以外のことで、幸せなんて……)

小鳥(……忙しくて、最近はあんまり……、考えてなかったかな)

やっぱ小鳥さん素敵や

 
春香「おっとと、そんなこと話してる間に、また時間が……」

小鳥「ああっ、ごめんね、私もつい話し込んじゃって……終電、間に合う?」

春香「えへへっ、さすがにそこまで田舎じゃありませんよぅ」

パタパタ……

春香「……今日はなんだか、とっても良い夢が見れそうな気がしますっ!」

春香「それじゃあ小鳥さん、また明日……」

小鳥「うん、また明日ね。家に帰ったらゆっくり休むのよ」

春香「はーい!」

──バタン


小鳥「……」

P「すぅ……すぅ……」

小鳥「……さて、と……」


小鳥(プロデューサーさんと、ふたりきりになっちゃいました)

 
小鳥(私たち以外は誰もいない、とても静かな事務所……)

小鳥(耳に入る音は、かすかに鳴るエアコンの駆動音と、プロデューサーさんの寝息だけ)

小鳥(……みんなには悪いけど、いまだけは私がプロデューサーさんを独り占め?)


小鳥「……なーんてね」

小鳥「毛布、どこにやったかしら? えーっと……確かここの棚に……」

ガサゴソ……

小鳥「……あ。あったわ。そーっと、そーっと……」

ファサッ

P「……うぅん……」モゾモゾ

小鳥「……ふふっ。まるで美希ちゃんみたいね」

 
  *  *  *


小鳥「窓際に……こんな感じかしら」コトッ

小鳥「……うん、良い感じじゃない! やっぱりお花がひとつあるだけで、さわやかな事務所っぽくなるわねー」

P「あははっ……!」

小鳥「!」ビクッ

P「……やったな、はるかぁ……合格だ……」

小鳥「え? 合格?」

P「オーディション……この調子でいけヴぁ……いふか……」

小鳥「…………」

P「……むにゃむにゃ……」

小鳥「……寝言?」

P「……すぅ……すぅ……」

小鳥「……どんな夢、見てるのかしら」

小鳥(でもきっと……素敵な夢ですね)

 
小鳥(プロデューサーさんが765プロダクションに入社してきてから、もうすぐ一年になります)

小鳥(それまでは皆、頑張ってはいるんだけど、なかなかアイドルらしい活躍が出来ていませんでした)

小鳥(あの頃はまだ余裕が無くて、律子さんも竜宮小町を担当するだけで手いっぱいだったし……)

小鳥(……春香ちゃんや雪歩ちゃんなんて、そのせいで……ひどく落ち込んでしまうこともあって……)


──────────────────────────────────────────────

 ……こんなんじゃ私達、毎日、なんのためにレッスンしてるのか……わかりませんよぉ!

 やっぱりその……、私達がほっとかれるのは……将来性が無いから、でしょうか……?

──────────────────────────────────────────────


小鳥「…………」

小鳥(……ううん、でもそんなこと、もう関係ありませんね)

小鳥(だって、今ではもう、こんなに──)

 
小鳥「えっと、明日は……。真ちゃんが学園ドラマの収録に、竜宮小町が写真集の撮影……」

小鳥「雪歩ちゃん達が新曲プロモーションビデオ撮影に、美希ちゃんはファッションショーのリハーサル」

小鳥「千早ちゃんはミュージックプレーヤーの広告撮影……あと貴音ちゃんが、以前撮った化粧品CMの──」


小鳥(今では、壁にかかったホワイトボードが空白になっている日はほとんどありません)

小鳥(確かに、まだまだトップアイドルとして認められたというわけではないけれど……)

小鳥(765プロの全員が、みんな笑顔で……それぞれが持った大切な夢に向かって、まっすぐに歩き続けています)

小鳥(すべてはあの日、あなたが、ここに来た瞬間から……)



小鳥「……あなたの、おかげ」

P「……zzz……」

小鳥「あなたのおかげで……、いろんなことが、いろんな風に、変わっていったんですよ」

いいよいいよ

 
小鳥「プロデューサーさん……」



小鳥「……ありがとう……」

P「……zzz……」



小鳥「……なんてね。さ、私も残った仕事仕事、っと……」

小鳥(こういうことは、ちゃんと……起きているときに、直接伝えてあげないといけないわよね)

──────
────
──

小鳥「……くぁ~……肩凝るわぁ~」パキッポキッ

P「ずごごご……」

小鳥「あら、すごいいびき……。きっと本当に疲れが溜まっているのね」

P「……ぐがー……ぐごご……」

小鳥「……無理、しないでくださいねー……」ボソボソ

小鳥「……」

小鳥(……それにしても、こんなに無防備な姿を見たの、初めてかもしれないなぁ)

小鳥(よく考えたら今って、相当レアな場面に遭遇してるんじゃない!? よーし、写真撮っちゃおーっと♪)

カシャッ

P「……うん……」

小鳥「っとと……だめだめ、春香ちゃんも言ってたけど、音を立てちゃいけないのよね……」

P「んん……? ……うぅん……zzz……」

小鳥「……大丈夫みたいね、うん……」ドキドキ

 
小鳥(いつもはみんなを引っ張っていく、頼れるお兄さん。優しい眼差しでみんなを暖かく見守る存在……)

小鳥(……っていうのは、その……乙女フィルターによって美化されているのかもしれませんけど)

小鳥(こうやって寝ている姿は、こんなに……)



小鳥「……ふふふっ。まるで、子どもみたい」

P「……すぅ……すぅ……」



小鳥(……なんだか、懐かしいな)

小鳥(プロデューサーさんが765プロに入社してくる前の、あの頃のことを思い出しちゃう)

小鳥(確かあの日、騒ぎ疲れたみんなも……この机のまわりで、こんな風に眠っていて……)

 
小鳥「……」

スゥ……


────────────────────────

 ……いま輝く一番星 ひとつ夢を願った

 だけど、今日もまた 終わってゆく……

────────────────────────


小鳥「……──♪」

 
小鳥「……小さくたって あの花の様に……」

P「……ん……?」パチッ

小鳥「星は光を咲かせてく──」

P「……」


────────────────────────

 どうか 負けないで

 自分を信じて 大丈夫だから……

────────────────────────


小鳥「……──♪」

P「…………」


P(……歌? 音無さん……歌ってるのか)

P(……なんていう歌だろう。なんだか、ホッとするな……)

支援

 
  *  *  *


小鳥「夢が朝になっても……覚めないなら……」

P「……」

小鳥「明日をむーかえー……え……え?」

P「……あ」

小鳥「……えーっと……」

P「お、おはようございます」

小鳥「ぷ、プロデューサーさんっ!?」

P「あの……是非、続けてください、歌」

小鳥「そそ、そんなこと、出来ないですっ!」カァァ


小鳥(ついつい、歌うことに夢中になっちゃって、起きてることに全然気づかなかった……)

小鳥(い、いつから聞かれてたのかしら!? うぅ、恥ずかしすぎてもうから揚げになりたい……!)

唐揚げwwww

 
小鳥「……もうっ。起きてるのなら言ってくださいよぉ……」ジトッ

P「あはは、つい聞き惚れちゃって」

小鳥「ききほっ……!?」

P「音無さん、歌お上手なんですね。俺、知りませんでしたよ」

小鳥「…………」

P「ところで、いまの歌は──」

小鳥「ごめんなさい、プロデューサーさん」ペコリ

P「え? 何がですか?」

小鳥「だって……うるさくて、起こしちゃったんですよね」

P「いえいえっ! うるさいなんて、とんでもないです!」

P「むしろ耳に心地良くて、ずっと聴いていたくなるというか……」

小鳥「お、お上手ですね。でも私は、営業先の人でもないんですから、お世辞なんて……」

P「いや、そんなつもりはないんですって……」

小鳥「うぅ……」

小鳥(私、本当は、人前で歌なんて歌えないっていうのに……)

 
P「えーっと……あははは……」

小鳥「……」モジモジ

P「……あの、音無さん。これなんですけど」

小鳥「あ……毛布?」

P「音無さんがかけてくれたんですよね?」

小鳥「……ええ。風邪ひいちゃうと思ったから……」

P「ありがとうございます。暖かいです、とても……」

小鳥「……ふふっ、それなら良かったです」

P「……音無さんは、優しいですね」

小鳥「何を言っているんですか。これくらい、大したことではありませんよ」


小鳥(いつも頑張っているプロデューサーさんにしてあげられることは……)

小鳥(私には、これくらいしかありませんからね)

 
小鳥「あ、そうだ……私、コーヒー淹れてきますね。目が覚めますよ」

P「ああそんな、お構いなく。コーヒーなら自分で淹れてきますから」

小鳥「だめですよ、プロデューサーさんは休んでいてください。お疲れなんでしょう?」

P「でも……」

小鳥「いいからいいから、ね?」

P「……」

小鳥「最近忙しかったですし、休めるときくらい休まないと。ほら、その間に、お顔でも洗ってきてください」

P「……すみません、それじゃあ、お言葉に甘えます」

小鳥「はい♪ どんどん甘えちゃってください!」

これはいい小鳥

 
【給湯室】

小鳥「……うぅ……」

小鳥(……なーにが、『はい♪』よ……)

小鳥(いまなら、穴掘って埋まりたいっていう、雪歩ちゃんの気持ちがわかるかもしれないわ……)

小鳥(プロデューサーさん、変な風に思わなかったかしら……?)


小鳥「……はぁぁ~……」

小鳥(……誰かに、こうやって歌を聴かれたのなんて……いつぶりだろう)

小鳥(…………)


『音無さん、歌お上手なんですね』


小鳥「……」

小鳥「……お上手なのはあなたのほうですよー……えへへ」

小鳥「……よーし、確かにさっきは、かなり恥ずかしかったけど……」

小鳥「これは名誉挽回、汚名返上のチャンスよねっ! いつまでもへこんでちゃダメだぞ、小鳥!」
 
小鳥「……んーっと、プロデューサーさんのコーヒーの好みは……」

小鳥「……」


トットット……

……コポ、コポポ……


小鳥(それに私は、プロデューサーさんよりも年上だし……)

小鳥(あの人にも、ちょっとはお姉さんっぽいところ、見せてやらないとね)

 
コポコポ……


P「……ふわぁ~……」

P(コーヒーの良い香りが、ここまで伝わってくる……)

P(さっきの歌について、結局詳しくは聞けなかったけど……まぁ、綺麗な歌声を聴けただけラッキーだったかな)

P(……しかし、寝てるところを見られるなんて、ちょっと恥ずかしい……)


……──♪

『……いつも ありがとう 頑張って……♪ 胸が 詰まって言えない……──♪』

ヴーヴー……


P「ん?」

P(音無さんのデスクの上で、携帯が鳴ってる? この曲は……)

 
小鳥「……~♪」

コポポ……


……──♪

『いつでも 応援してるよと……伝えたいのに……♪』

ヴーヴー……


P「……」

P(……音無さん、携帯が鳴ってることに気付いていないみたいだな)

P(ま、言わなくてもそのうち気付くだろう。人のプライベートを詮索するのもあれだし……)

P(……顔洗ってこよう)

>>43ちょい訂正

 
コポコポ……


P「……ふわぁ~……」

P(コーヒーの良い香りが、ここまで伝わってくる……)

P(さっきの歌について、結局詳しくは聞けなかったけど……まぁ、綺麗な歌声を聴けただけラッキーだったかな)

P(……しかし、寝てるところを見られるなんて、ちょっと恥ずかしい……)


……──♪

『……いつも ありがとう 頑張って……♪ 胸が 詰まって言えない……──♪』

ヴーヴー……


P「ん?」

P(音無さんのデスクの上で、携帯が鳴ってる? この曲は……)

P(……『さよならをありがとう』……春香の歌だ)

支援

 
  *  *  *


小鳥「はい、どうぞ」コトリ

P「すみません、いただきます」

ズズッ……

P「はぁ……あったまるなぁ」

小鳥「…………うふふっ」

P「ん……?」

小鳥「おっと……」サッ

P「どうしたんですか、そんなにニコニコして」

小鳥「い、いえっ!」


小鳥(私としたことが……お姉さんっぽく、お姉さんっぽく……)

 
P「俺の顔、よだれか何かついてますか? さっき顔洗ってきたんだけどなぁ」ポリポリ

小鳥「そういうわけじゃないんですけど……えーっと、ただ、その……」

P「ただ……なんですか?」

小鳥「……とっても美味しそうに飲んでくれてるな、って思って……」

P「…………」

小鳥「そ、それだけですっ!」

P「……実際、本当に美味しいですから。ありがとうございます、音無さん」

小鳥「…………」

小鳥「どういたしまして……えへへ」


小鳥(なーにがお姉さんっぽく、よ!)

小鳥(これくらいのことですぐ慌てて顔に出しちゃって、情けないったらないわ、もう!)

小鳥(……と、内心思っています……。顔は言うことを聞いてくれないみたいですけどね)

 
小鳥「……おいPIYO、きさま話をきいているのか……うぅー……」ペチンペチン

P「……何やってるんですか?」

小鳥「おほほ、ちょーっとたるんだこの体とこの顔に喝を入れているんですよ」ペチンペチン

P「音無さんは、全然たるんでるようには見えませんけど……」

小鳥「え……」ペチ……

P「あ、ああいや、そりゃあ、体を見たことはないですけどね! あははは……」

小鳥「んなっ、なにを言ってるんですかっ!?」

P「す、すみません……」

小鳥「……もう、恥ずかしい……」

小鳥「……」

小鳥「……ふふふ……♪」ペチペチ

 
小鳥「よーし……こんなもんかしら」キリッ

P「……俺、いつも思っているんですよ」

小鳥「思ってるって、なにをですか?」

P「音無さんの淹れてくれるコーヒーは最高だって」

小鳥「え……」

P「外回りが終わって事務所に帰ってくるとき、何を楽しみにしてるかといったら、これですね……」ズズッ

小鳥「……それ、本当ですか?」

P「はい、もちろんです!」

小鳥「…………う~……」ペチンペチン

P「……ふふっ」


小鳥(……情けない情けないと思いつつも、喝を入れつつも……)

小鳥(こうやってちょーっと褒められるだけで、すぐに顔が綻んでしまうのは)

小鳥(私が、単純だからでしょうか……)

 
小鳥「……そ、それにしても! プロデューサーさんって、いつもそうですよねっ。その話し方!」

P「話し方?」

小鳥「ん、んー……え~……、おっほん!」



小鳥「君の言葉には、勢いがあって実に頼もしい!」キリッ



P「……?」

小鳥「……」

P「……」

小鳥「……なんてね」

P「……あっ、それ、社長のモノマネですね!?」

小鳥「そんな目で見ないでください……」カァァ

小鳥(やってから恥ずかしくなってきちゃいました……)

小鳥(どうしてこんなことを……よく考えたら私、え○りかずきのモノマネくらいしかレパートリーが無かったのに……!)

ピヨピヨ

そんなこと言ったってしょうがないピヨ

P「あ、ははは……とても似てるって、俺は思うなぁ! うん、社長の特徴をよくつかんでるっていうか」

小鳥「うぅ……下手にフォローされると余計につらい……」

P「す、すみません……」

小鳥「と、とにかくっ! ……ありがとうございます、プロデューサーさん」

P「ありがとう、って?」

小鳥「いま、私が淹れるコーヒーが最高だって言ってくれたじゃないですか」

小鳥「それはもちろん、お世辞でしょうけれど……、そんな風に言ってもらえるのは、やっぱり嬉しいです」

P「……何言ってるんですか、本心ですよ。お世辞なんかじゃありません」

小鳥「…………本当の、本当に?」

P「はい!」

小鳥「……それなら、余計に嬉しい、かな」

P「え、余計に?」

小鳥「ええ……ふたつ分、嬉しいです」

 
P「ふたつ分、ですか?」

小鳥「……はい。褒めてもらったということの嬉しさと……」

小鳥「私がプロデューサーさんの役に立てていたっていう嬉しさの……ふたつ分」

P「……」

小鳥「たとえ、コーヒーを淹れてあげるとか、そんなささいなことでも……」

小鳥「私があなたにとって、何かの力になれているのなら……少しでも、ホッとさせてあげられているのなら」

小鳥「それは、とっても嬉しいことなんですよ。ふふふっ……♪」

P「……!」ドキッ

小鳥「いつもお疲れさまです、プロデューサーさんっ!」

P「……い、いえ……それほどでも」チラッ

小鳥「あら? どうかなさったんですか、急にそっぽ向いちゃって」

P「あーいや、ちがうんですっ! 窓の外に、いつも雪歩の上空を飛んでるUFOがいた気がして……あはは」

小鳥「……んー……UFO?」

P「きき、気のせいだったみたいですね! すみません」

小鳥(どうしたのかしら……急に、プロデューサーさんの落ち着きが無くなったような……)

 
P「……ごほん。あの、音無さん」

小鳥「はい、どうかしましたか? UFO、見つかりました?」

P「いや、UFOじゃなくてですね……その、無理にとは言わないんですけど……」

小鳥「……?」

P「も、もし良かったら、今日俺と──」

プルルル!

P「!」ビクッ

小鳥「あら、電話……ごめんなさいプロデューサーさん、ちょっと待っていてくださいね」

ガチャッ

小鳥「はい、765プロでございま……あぁ、社長! お疲れさまですー」

P「……はぁ」

 
小鳥「ええ、はい……え、そうなんですか? はい……わかりました。それではこちらは……」

小鳥「……はい、失礼します」

──ガチャリ

P「……社長、なんですって?」

小鳥「今日はもう、戻られないそうです。だから先に事務所を閉めておくように、ですって」

P「そうですか……でも、律子たちがまだなんじゃ?」

小鳥「律子さんたちも、今日は現場から直帰だそうですよ」

小鳥「なんでも、明日も撮影で朝早いからだって……さっきプロデューサーさん達が帰ってくる前に連絡がありました」

P「なるほど。それじゃああとは、俺たちだけなんですね」

小鳥「ええ。……ところで、さっきは何を言おうとしていたんですか?」

P「い、いえ! なんでもないです、大したことではなかったですから! あははは……」


P(俺の言葉には勢いがあって実に頼もしい、なんて音無さんは言ってくれたけど……)

P(……音無さんを目の前にしたときだけは、どうも……へたれてしまう……)

ワクワク

 
小鳥「プロデューサーさん、いつ頃帰られますか?」

P「そうですね……あとちょっと、書類整理してからにします」

小鳥「そうですか。それじゃあ私、それが終わるまで待っていますね」

P「えっ!?」

小鳥「えっ」

P「……ど、どうして待ってる、なんて」

小鳥「だって、今日事務所の鍵を預かるのは私の担当ですから……」

P「あ、ああ! そうですよね、あはは……いやー」

小鳥「……ふふふっ。もしかして……」

小鳥「私がプロデューサーさんと一緒に帰りたいから、『待ってます』って言ったって、そう思いましたか?」

P「…………」

小鳥「なーんて……あら?」

P「……仕事、ちゃちゃっと終わらせちゃいますね」

小鳥「え、ええ……」

小鳥(え? なに? いまの顔、いまの反応……)

 
P「……」

小鳥「……」


カチッ、カチ……


P「…………」

小鳥「…………」


カタカタ……ッターン!



P・小鳥(なぜかきまずい……)

あぁーいいわぁー

 
小鳥(……ちょっちょちょちょっとなに? いつもの冗談、のつもりだったんだけど……なんなの?
   あんな風に反応されたら私までどんな顔したらいいかわからなくなっちゃうわよ……
   ……でもでも、私が一緒に帰りたいって思ったら、プロデューサーさんは嬉しいのかしら?
   期待、するようなことなのかしら? …………だ、だめだめ!
   何を考えているの小鳥! そんなこと考えるだけ時間の無駄よ!
   そもそも私はただの事務員だし、アイドルじゃないし っていうかなに? さっきの私はなんなのなの?
   小鳥はどうしてそうなっちゃったの? なーにが『私がプロデューサーさんと一緒に帰りたいからうんたらかんたら』?
   ああいけない、なんだか恥ずかしくなってきちゃったこれはもう黒歴史決定ね
   そもそも歌を聴かれた時点ですでに恥ずかしいっていうのに あぁさらにまた思い出しちゃった
   歌なんて人前じゃ緊張しちゃって全然ダメなのに それは私が一番よく知っていて 十年前だってあぁもう
   ……でもプロデューサーさん聞き惚れたって言ってくれた 私の歌を褒めてくれた……
   でへへ。参っちゃうな、今までそんなこと誰からも言われたことなかったし……
   ……んじゃなくて! だめ、だめよ小鳥! うろたえるんじゃあない! ドイツ軍人はうろたえないッ!
   どーせいつものお世辞よ、こんなんだからにじゅう[チョメチョメ]年間彼氏いないのよ独身なのよ
   遠くにいるお母さんごめんなさい小鳥はまだ結婚していませんでも生んでくれてありがとう)

小鳥「うーん……いやいやでもでも……」モンモン

P「あ、あー……ごほん!」

小鳥「ほぁっ」ビクッ

P「お、音無さん?」

小鳥「ひゃ、ひゃい。どうしたんですか、突然?」

P「突然というか……あの、何度か声かけたんですけど……」

小鳥「えぇっ!? す、すみません……」

ピヨッ

 
小鳥「……おほん。それで、どうなさったんですか?」

P「これ、見てくれませんか」スッ

小鳥「これって……写真? 春香ちゃんと響ちゃんと、美希ちゃん……」

小鳥「……あっ、もしかして!」

P「そう、春香達のユニットの、新アルバムのジャケットです。今日撮ってきたんですよ」

小鳥「へぇ~……とっても素敵だと思いますよ♪ この春香ちゃんなんて、とっても楽しそうで……」

P「……きっと、素晴らしいアルバムになります。これまでの一年間の、集大成ですよ」

小鳥「ふふっ……そうですね」

ペラ……

小鳥「……ようやく、ここまで来たんですねぇ」

P「……ええ。やっとここまで、あの子達の頑張りが形になりました」

 
小鳥「本当に、一年前なら考えられないなぁ……」

P「でも、まだまだです。これからもっともっと、上を目指していきますよ!」

小鳥「あら、もう先の方を見ていらっしゃるんですか?」

P「もちろん! 目指す夢は、トップアイドル! ですからね」

小鳥「……ふふっ。プロデューサーさんが言うと、本当にその夢、すぐに叶っちゃいそうな気がします」

P「あはははっ! まぁ、大船に乗ったつもりで見ていてください!」

ドンッ

P「げほ、ごほっ!」

小鳥「……まだちょっと、頼りない、かな?」

P「あはは……すみません」

小鳥「うふふっ、冗談です♪」

 
小鳥「……プロデューサーさん。ちゃーんと私にも、見せてくださいね」

P「え? 見せるって?」

小鳥「あの子達が、夢を叶えた姿。……そして、その先を」

P「……」

小鳥「それをこの目で見ることが、私の夢でもありますから……」

P「……はい! もちろんです!」

支援は紳士のつとめ

 
  *  *  *


P「……さて、こんなもんかな」トントン

小鳥「あ、終わりましたか?」

P「ええ、お待たせしました」

小鳥「……あの、プロデューサーさん、ごめんなさい」

P「へ?」

小鳥「よく考えたら私、ずっとお喋りしちゃってて……お仕事の邪魔をしちゃいましたよね」

P「あっはっは! いいんですよ、そんなこと。俺、静かな場所では集中できないタイプですから」

小鳥「……そうなんですか?」

P「むしろ、少しうるさいくらいのほうが捗るってもんです」

P「そうじゃなかったら、いつも騒がしいこの765プロじゃまともに働けないですしね!」

小鳥「……うふふっ、それもそうですね」

支援

久しぶりに綺麗な小鳥さんを見た気がする

 
P「えーっと、それじゃあ……そろそろ帰りましょうか」

小鳥「……」

P「音無さん? どうかしたんですか?」

小鳥「……はっ! い、いえっ! なんでもないです、はい……」

P「でも、なんだか、元気が無くなっているように見えましたけど……」

小鳥「そ、そんなことないですっ! いつ通り、元気いっぱいの音無さんですから!」

P「……本当ですか?」

小鳥「……はい。あ、私、帰りの仕度してきますねっ!」パタパタ

P「……」

支援

 
【女子更衣室】

小鳥「……ロッカーロッカーロッカッカー♪ ……なーんて……」

小鳥「はぁ……」


小鳥(……プロデューサーさんとふたりでいる時間は、あっという間に過ぎていきました)

小鳥(私たちの間で交わされた会話は、そのほとんどがアイドルのみんなに関する話題だったけど)

小鳥(だからこそ……私たちが愛するみんなのことだからこそ、とても楽しくて……)


小鳥「…………」


小鳥(だから、もう少しだけ……)

小鳥(……もう少しだけ、このままふたりで時間を過ごしたかった)

小鳥(なーんて……恥ずかしくて言えません)

 
【事務所外】

小鳥「それではプロデューサーさん……また明日」

P「……はい」

小鳥「……」

P「あ、あのっ、音無さん! えーっと……」

小鳥「……?」

P「き、気をつけて帰ってくださいね。近頃物騒ですから」

小鳥「……ふふっ、はーい。心配してくれてありがとうございます」

P「あははは……それじゃあ、また明日」

小鳥「ええ。お疲れ様でした」

P「…………」

 
テクテク……

小鳥「…………」

小鳥(今日みたいに、プロデューサーさんとたくさんお喋りできたのは……)

小鳥(もしかしたら……入社して以来、初めてかもしれないなぁ)

小鳥(いつもはプロデューサーさん、みんなに囲まれているから……話すとしても、お仕事の連絡ばかりで)


小鳥「……でも、だめよね」

小鳥(確かにこんな機会、滅多にないことだけど……贅沢を言っちゃいけないわ)

小鳥(……いまの私は、アイドルじゃない)

小鳥(プロデューサーさんにとっては、ただの……事務所にいるスタッフの一人に、過ぎないんだから)




タッタッタ……

P「……音無さんっ!」

小鳥「……えっ?」

支援

 
P「……すみません、ちょっと……待ってください」

小鳥「ぷ、プロデューサーさん!?」

P「ぜぇ……ぜぇ……!」

小鳥「どうしたんですか、走ってきたみたいですけど……もしかして、事務所に何か忘れ物でも?」

P「……ちがいます」

小鳥「それじゃあ……どうして?」

P「あの、俺……やっぱり、音無さんと一緒に帰りたくて」

小鳥「……! そ、それって……」

P「……駅まで、送っていってもいいですか?」

小鳥「……、……」

小鳥(……プロデューサーさんが、私を追いかけてきてくれた。一緒に帰りたい、って……言ってくれた)

小鳥(私が、あなたともう少し一緒にいたかったと思っていた、そのときに……)

小鳥(……私は──)

小鳥「…………け、け……」

P「……け?」

小鳥「結婚してください!」

 
小鳥「……結構ですっ! ひとりで帰りますからっ!」

P「えっ」ガーン

小鳥「……」ドキドキ

P「あ、あはは……そう、すよね……」ズーン

P「……すみません、調子に乗っちゃって……」

小鳥「あ……」

P「お疲れ様です……」トボトボ

小鳥「あ、あの! いや、そうじゃなくてっ!」ガシッ

P「え……?」

小鳥「……い、嫌だってわけじゃないんです……でも」

P「……」

小鳥「……す、少し時間をください、今、ちょっとテンパってて……」

P「……はい」

 
小鳥「……」ドキドキ

P「……」

小鳥「……送ってくれるって言ってくれたこと、とっても嬉しいです」

小鳥「でも……そうしたらプロデューサーさん、帰りが遅くなってしまうじゃないですか」

P「……俺のことなら、気にしないでください。俺の家、ここから歩いていける距離ですから」

小鳥「……でも……せっかく今日は、こんなに早く帰れたのに……」

小鳥「プロデューサーさんは近頃、毎日、帰りが遅くなっていたし……」

P「あはは、数十分遅くなるくらい、関係ないですよ」

小鳥「……」

P「……こんな夜に女性をひとりで帰らせるなんて、男として格好がつきません。だから……」

小鳥「……わ、わ……」

P「……?」

小鳥「…………私の前で格好をつける必要が、あるんですか……?」

P「……あります。むしろ……音無さんの前だからこそ、ですよ」

小鳥「…………!」

 
小鳥「……」プイ

P「……音無さん?」

小鳥「ちょ、ちょっとだけ……こっちを見ないでください」

P「……」

小鳥「そーいうこと、言うと……」

P「へ?」

小鳥「……なんでもありません」


小鳥(そういうこと言うと、カンチガイしてしまいますよ)

小鳥(……とは、言えませんでした)

小鳥(それを言って、あなたがどんな顔をするのか……それを見るのが怖かったから)

モヤモヤするぅ

 
小鳥(そして、何より……)

小鳥(……そんなことを言っても、私自身がどんな答えを期待しているのか……、わからなかったから)


P「……あの、やっぱりダメですか?」

小鳥「とんでもないですっ!」グルンッ

P「ひっ」

小鳥「け、結構ですっていうのはつい出ちゃったというか、私も、もっと一緒にいたいってちょうど思ってたっていうか!」

P「ほ、本当ですか!?」

小鳥「あ、うぅ……そ、そんな、深い意味があるわけじゃないんですけれど……」

P「……それでも、良いです。ありがとうございます」

小鳥「……こちらこそ……」


小鳥(だけど……)

所属しているアイドルたちより事務員の方が可愛いという、おかしなアイドル事務所

 
小鳥「……えへへ」

P「……」

小鳥「それじゃあ……行きましょう? しっかりエスコート、してくださいね」

P「……はい!」



小鳥(……だけど、不思議です)

小鳥(この人と一緒にいると、私は自然と、笑顔になってしまいます)

小鳥(きっとこれが、この不思議な力が……みんなの魅力をたくさん引き出す、秘訣なのかもしれませんね)


小鳥(そう思うと……)

小鳥(アイドルのみんなのことを少し、ほんの少しだけ……羨ましいとさえ、感じてしまいます)

 
小鳥(……でもまぁ、いまさら私がアイドルなんて──)


テクテク……

P「……そういえば、音無さん」

小鳥「はい、なんですか?」

P「アイドルになろうとは思わなかったんですか?」

小鳥「ブ────ッ!!!!」

P「おわっ!?」

小鳥「けほっ、こほっ……す、すみまぜん……ちょっとビックリしちゃって」

P「い、いえ……大丈夫ですか?」

小鳥「は、はい……でも、どうして急に、そんなことを……?」

P「いやぁ、さっき歌を聴いてて思ったんですよ。音無さん、とても楽しそうに歌ってるなって」

P「歌うこと、心から好きなんだなって感じました。だから……」

小鳥「…………」

甘酸っぱいな
支援

 
小鳥「……歌うことは、確かに大好きです」

小鳥「小さい頃はずっと、母と一緒に歌を歌いながら過ごしていましたから……」

P「お母さん?」

小鳥「ええ……」




小鳥「──でも、私は……」

P「……?」

小鳥「……」


小鳥(……結果として……私は、だめだった)

小鳥(少しでも、恩返しがしたかったけれど……私には、出来なかった)

支援

 
────────────────────────

『……あ、うぅ……』


ざわ……ざわ……

    おいどーしたー?


『……っ』


ちょ、ちょっと小鳥ちゃん!? どこ行くの!?


『す、すみません……やっぱり、あたし……!』

────────────────────────


小鳥(…………それはもう、随分と、昔のこと)

 
小鳥「…………」

P「音無さん……」

小鳥「……あ、ご、ごめんなさい! 急に黙っちゃって……」

P「いえ……あの、いま俺が言ったことなんですけど……、気に障ったなら、すみません」

小鳥「あ、いや! 別に、そういうわけじゃないんですよ!」

小鳥「まぁ、なんと言ったらいいんでしょうか……女には、色々な過去があるってことです」

P「…………」

小鳥「……それに私は、歌うことよりも、みんなのことを見守っていく今の生き方の方が性に合っていますから」

P「……音無さんらしいですね」

小鳥「ふふっ、そうですか?」

P「ええ。……でも、俺は……」

小鳥「え?」

P「俺は、音無さんの歌、好きですよ」

小鳥「……!」

あがり症か

ぴよちゃんが一番可愛いと言ってるのに俺の周りは誰も共感しない

しえん

ほっこりしてくる

明日の朝までよろしく

支援

  
小鳥「す、好き? 私の歌が、ですか?」

P「はい。とても綺麗な声ですし、聴いてると、安心しました」

小鳥「……また、お世辞とかじゃなくて……?」

P「お世辞じゃないですよ。っていうか俺、音無さんにお世辞なんて言ったことないです」

小鳥「……そんなこと、直接言ってくれたのは、プロデューサーさんが初めて……」

P「直接?」

小鳥「あ、ああいえっ! こちらの話です!」


小鳥(……プロデューサーさんが、また褒めてくれた)

小鳥(職業柄、いつもたくさんの音楽に囲まれて過ごしているプロデューサーさんが、私の歌を……)

しえしえ

 
小鳥(……ちがう。ちがうわよ……)

小鳥(職業柄とか、音楽に慣れ親しんでるからとか、そういう話じゃなくて……)

小鳥(あなたに褒めてもらえたから……だからいま、私は──)


小鳥「……あ、あの……嬉しい、です……えへへ」

P「……というか、俺は……」

小鳥「え?」

P「音無さん。お、俺……ずっと言おうと思っていたんですけど……」

小鳥「……な、なんですか?」

小鳥(なに? 急に雰囲気が……。この感じ、どこかで……)


P「……俺が好きなのは……音無さんの歌、だけじゃなくて……」

小鳥「…………」



小鳥「──ハッ!」ティン

小鳥(そうだ……この雰囲気、このシチュエーション! 漫画で見たことがあったんだわ!!!)

 
小鳥(……え、えっと、確かこのあと主人公が…………いやいやいやいや!
   おお、お、落ち着いて小鳥っ! まさかそんな、ねぇ?
   さすがに突然すぎるっていうかなんというか特にフラグも立ってなかったし!?
   え? なに? 私がフラグを見逃してただけだっていうの? いやそんなはずはないわ
   とある乙女ゲー業界の隅っこでは落とし神とさえ言われているこの私が
   フラグが立つなんてそんなわかりやすいビッグイベントを見逃すはずはない
   ででもプロデューサーさんなんだかいつになく真剣な眼差しをしていりゃっしゃるし……
   私とプロデューサーさん……見つめ合うふたり……これは本当にまさか噂に聞くあれでは?
   都市伝説で語り継がれているいわゆるKO☆KU☆HA☆KUというやつでは?
   こ、困るわ、急にそんなこと言われてもだってそもそもプロデューサーさんはプロデューサーだし
   やっぱり社長がいつか言っていたようにプロデューサーはアイドルの子達にとってあのその
   だからずっと私はこの気持ちを見て見ぬフリをして……
   いやでもその先をちょこっと見てみたいような気もするけどでもでもぴよぴよぴぴぴヒヨコがぴょん)

P「俺は、音無さんのことが……」

小鳥「…………ごくり」ドキドキ

P「す──」

律子「あら? プロデューサー、小鳥さーん! お疲れ様でー……」

P「るめ!」

小鳥「めだか!」

P「か、か……かっかー!」

律子「って……何やってるんですか? しりとり……?」

www

 
P「お、おう律子! お疲れ!」

律子「はい、お疲れ様です。……しっかし、これは……私としたことが、やっちゃったかなぁ」

小鳥「な、なんのこと?」

律子「……もしかして、お邪魔しちゃいました?」

P「何を言ってるんだい!? あっはっは、律子が邪魔なんてそんなことあるわけないじゃないか!」

小鳥「そ、そうですよ! べべ、別に、何があったわけでもないんですから!」

小鳥(な、なんなのよ……もう)

小鳥(……プロデューサーさん、何を言おうとしていたのかしら……)



律子「でも、まぁ……ふたりがもう、ここまで進んでいたとはね……」

小鳥「こ、ここっ!? ここってどこのこと!?」

律子「ふふっ、それならそうと、私にも教えてくれればいいのに。水臭いなぁ、もう」

P・小鳥「「そんなんじゃないって!(ありません!)」」

しえ

 
律子「小鳥さんがここにいるということは、事務所、もう閉めちゃいました?」

小鳥「え、ええ……」

律子「あちゃー……それなら、無駄足だったかな。先にメールしとけば良かったかも……」

小鳥「……律子さん、今日はもう戻られないんじゃなかったですか?」

律子「あははは、ちょっと忘れ物しちゃって……緊急じゃないんですけどね」

小鳥「そう……でもそれなら一応、もう一回、事務所開けにいきます? ここからなら距離もないですし」

律子「え、それ本当ですか!? そーしてくれると助かりま──」チラ

P「ん? どうした、こっち見て」

律子「……んー、やっぱりいいです。事務所の鍵だけ貸してくれれば、自分で取りにいきますから」

小鳥「だけどそうすると、明日事務所の鍵を開けるのが……」

律子「私が朝一で開けにいきますよ。小鳥さん、明日はのんびりしといてください」

小鳥「えぇ!? で、でも……」

律子「いいからいいから! ……お邪魔しちゃったお詫びです」ヒソヒソ

小鳥「お、お詫びって……」

小鳥「……でもまぁ、それなら、お言葉に甘えちゃおうかしら」

 
小鳥「それじゃあ……はい」チャリン

律子「確かに、受け取りました」

P「……あの、律子さん」

律子「なんですかー、そんな呼び方して」

P「ちょっといいかな」クイクイ

律子「はいはい。小鳥さん、ちょっと彼をお借りしますね」

小鳥「か、彼!?」




P「……あんまり余計なことは言わないでくれよ。本人の前だぞ……」ヒソヒソ

律子「これくらい言わないと、いつまで経っても進展しないじゃないですか」

P「うぐっ」

律子「……でも、ごめんなさい。私、本当にタイミング悪かったみたいね」

P「……いや、いいよ。俺もちょっとテンションおかしかったし……」

 
律子「……それにしても。よく頑張りましたねー、プロデューサー殿っ」ポンッ

P「……ばか。何言ってるんだよ……」

律子「ふふっ、そんなこと言っちゃって。あなたのことだから、精一杯の勇気を出して小鳥さんと──」

P「わー! わーわー!」




小鳥「……」ポツーン

小鳥(プロデューサーさんと律子さん、なんだか仲良さそうね)

小鳥(きっと同じプロデューサー同士、私が知らない苦労とかも共有してるんだろうなぁ)

小鳥(……ん? 秘密の共有……おっ、これはまた……うん、良い妄想のタネに──)

──ズキッ

小鳥(……)

小鳥(……どうして、胸が痛むのかしら)

 
律子「それではふたりとも、また明日!」

P「う、うん……」

小鳥「また明日ー……」


P・小鳥「「……」」

P「……俺たちも行きましょうか。あははは……」

小鳥「そ、そうですね! うふふふ……」

ヒュルルル~……

小鳥「……うぅっ、さぶいぃ」プルッ

P「……近頃めっきり寒くなりましたねぇ……」

小鳥「……本当ですねぇ……」

P「…………」

小鳥「…………」


小鳥(……さっきの胸の痛みが、気になって)

小鳥(何を話したらいいか、わからなくなってしまいました)

支援

律子さんはいい人だな

 
小鳥(プロデューサーさんと律子さんが仲良さげにしているのを見たとき……)

小鳥(あのとき、私の心に生まれた気持ちは……きっと……)

小鳥(……やっぱり、私は──)

……──♪

『進め 負けない ここから始まる……♪』

小鳥「!」ビクッ

P「ん? 響から電話だ……えーっと」チラッ

小鳥「あ……私のことは気にしないで、電話に出てあげてください」

P「……すみません」

小鳥「…………」

小鳥(やっぱり、私は……なんだろう?)

小鳥(なにを、考えていたのかしら……)

 
ピッ……

P「もしもし、響? どうした?」

響『プロデューサぁ~! た、助けてぇ~!!』

P「……!? お、おい、何があったんだ!?」

小鳥「え……?」

小鳥(プロデューサーさんの顔が……急に、険しく……)

小鳥(もしかして、響ちゃんの身になにか……!?)



P「響、お前──」

響『じっ、自分っ! このままじゃ……』



響『──めちゃくちゃにされちゃうっ!!』

ごめんな響

 
小鳥(ひょ、ひょっとして……最近人気の響ちゃんを狙った、誘拐事件とか……!?)

P「……とにかく、落ち着いて状況を説明してくれっ!」

P「電話が出来るってことは、まだ無事なんだな!? 何もされてないんだな!?」

響『う……うん……』

P「……すぐ助けにいくから、安心しろ。連れ込まれた辺りの特徴とか、覚えてるか?」

響『え? 連れ込まれた?』

P「え」

響『プロデューサー、何言ってるんだ……?』

P「……だってお前、誘拐されたんだろ? 悪質なファンの連中に」

小鳥(あ、プロデューサーさんも、私と同じことを考えていたみたいです)

小鳥(……でも、なんだろう。ついさっきまでとは全然ちがう、気の抜けた顔になっているけど……)

響『誘拐!? 自分がっ!?』

P「あー、うん……そう思ったんだけど……違うの?」

響『全然ちがうしっ! 貴音がそんなことするわけないでしょっ!』

P「はぁ……?」

 
P「貴音、って……」

小鳥「貴音ちゃん……?」

P「えっと、とりあえず落ち着いてくれないかな」

響『う、うん……』

P「……あの、我那覇さん。今、自分がどこにいるかわかりますか?」

響『貴音の家だけど……』

P「……まわりには、誰がいる?」

響『貴音だけさー。いまは自分、隠れてるから近くにはいないけどね』

響『っていうか! 連れ込まれたんじゃなくて、ちゃんとお呼ばれされてお邪魔してるんだしっ!』

P「……そうすか」

響『だから助けてよぉ~!』

P「あはは! 響は説明をするのがへたっぴだなぁ」

P「……しかしまぁ、お前がなんくるなくて良かったよ……本当に」

響『だから、これからなんくるなくなりそうなのっ!』

小鳥「あの、プロデューサーさん! それで、響ちゃんの身に、一体何が……!?」

P「ああ……いいんです音無さん。もう解決しましたから」

小鳥「え」

響『あれ? もしかしてプロデューサー、ピヨコと一緒にいたの?』

P「あ、うん……」

響『むむむぅ……自分、前から思ってたんだけどさ、プロデューサーってピヨコのこと……』

P「いやいやいや! な、何を言ってるんだあっはっは! そんなことより今はお前のことだろ!」

響『でもそっちも気になるぞ……』


小鳥(何の話をしているんだろう……?)

 
P「と、とにかく! 話を戻そう、な!」

響「う、うん……」

P「めちゃくちゃにされるって、どういうことだ? 貴音になんかされそうなのか?」

響『あー、あのね、貴音、こないだ化粧品のCMに出たでしょ?』

P「うん。あれは良いCMだったね」

響『そうかー……? まぁとにかく、それから貴音がね、なんか、変な風に目覚めちゃったっていうか……』

P「目覚めた?」

響『うん……さっきまでは普通だったのに、急にまた、自分のこと──』

貴音『響っ! そんなところに隠れていたのですね!』

響『うわぁっ、見つかっちゃったぁ~っ!』

貴音『うふふっ♪ さぁ、こちらに……綺麗にしてさしあげますからね……ふふっふふふふ』

響『そんなのいいからぁ~! じ、自分、そんな、化粧なんてあんまり好きじゃないからっ!』

P「……化粧?」

小鳥「……化粧?」

支援

 
P「……貴音に代わってくれる?」

響『うん……はい、貴音。プロデューサーだぞ』

貴音『はて、プロデューサー?』

P「……もしもし、貴音か?」

貴音『はい。あの……どうかなさいましたか? もしや私が、また何か不手際でも……』

P「あーいや、違うんだ。……ただな、響のこと思いっきり可愛くしてやれって言いたくてさ」

貴音『! ふふふっ……承知いたしましたっ! 私におまかせください!』

響『えぇっ!? プロデューサー、何言ったの!? ねぇ!』

P「響ー。チバれよー」

貴音『と、いうことですので……あの方のお許しも出たところで、ではさっそく……!』

響『うぎゃーっ! プロデューサーの薄情モノぉぉ──…………

P「すみません、お待たせしました」ピッ

小鳥「あの、響ちゃんは……」

P「大丈夫、可愛くなるだけですから」

小鳥「……?」

こういうの書いてて恥ずかしくならないのかな

読んでないけど

 
──────
────
──

P「──って感じで」

小鳥「まぁ……うふふっ、確かに、それなら心配ありませんね」

P「まったく……響のやつも、いつまで経ってもあわただしくて落ち着きがないというか……」

小鳥「……でもそんなこといって、プロデューサーさん、とっても嬉しそうに見えますよ」

P「え、そ、そうですか?」

小鳥「ええ。響ちゃんに何事もなくて、安心したんでしょう?」

P「……まぁ、それは……あはは」

 
小鳥「……ふふっ、ふふふっ……♪」

P「……音無さんも、ずいぶん嬉しそうですね」

小鳥「それはそうですよ。なんで嬉しいかというと、それはきっと……あなたといっしょ」

P「いっしょ?」

小鳥「……私たちが愛するみんなが、今日も変わらず、笑顔でいてくれるからです」

小鳥「そして、なにより……」



小鳥(あなたが、笑顔になったから)



小鳥「……──っ!」

P「……?」

小鳥「……そっか、そうだったんだ……」

P「音無さん? あの、どうかしたんですか……?」

小鳥(……いま、はっきりと……、わかっちゃった)

小鳥(私は……いつの間にか……)

ちゃんと最期まで見るぞ

 
小鳥(この気持ちとはっきりと向き合うのが怖くて、今まで、なるべく考えないようにしていたけれど)

小鳥(……プロデューサーさんはみんなのプロデューサーだから……私なんかじゃって思って……)

小鳥(ずっと……見て見ぬふりを、してきたけれど)


小鳥「私が嬉しくなる理由……それは、なにより……」

P「なにより……なんですか?」

小鳥「……ふふっ。もうひとつの理由は……」


小鳥(アイドルのみんなのことを、いつだって真剣に考えて、心配して……)

小鳥(みんなが笑顔なら、いっしょに笑顔になって。みんなが悲しいなら、いっしょに悲しんで)

小鳥(そんなあなたの後姿に惹かれて……いつしか私は、あなたの笑顔を目で追うようになっていて……)



小鳥「ナイショですっ! 当ててみてください♪」



小鳥(……そして……私は、いつの間にか……)

小鳥(プロデューサーさんのことが、こんなにも……好きになっちゃっていたんだ)

 
小鳥(……なんだろう)

小鳥(途端に、気持ちの奥でかたまっていた、なにかが溶けた気がしました)


小鳥(──私はいつの間にか、あなたに恋をしていた)

小鳥(たったそれだけのことで、これまで当たり前に過ごしてきた日々も、決して当たり前ではなく……)

小鳥(それはきっと、とても幸せな積み重ねだったんだとさえ、思えてしまいます)



小鳥「……ふふ」

P「音無さん? おーい……」

小鳥「……えへへ……はい、なんですか?」

P「大丈夫ですか? ボーっとしていたみたいですけど」

小鳥「……大丈夫です。今の私は、とても幸せですから……」

P「へ?」

>>124

こういうの書いてて恥ずかしくならないのかな

読んでないけど

 
小鳥「あっ、ほらほら、そんなことより。もっといろんな話をしましょう?」

P「うーん、そうですねぇ……それじゃあ、響が急に沖縄に飛んで行っちゃった話でも」

小鳥「え!? な、なんですかそれっ! 初耳なんですけど……」

P「あはは、実は……響の地元の友達、アリサって言うんですけど、その子が──」



小鳥(……こうして話している瞬間も、私の胸にはまた、次々に新しい気持ちが生まれていきます)

小鳥(それは、まるで……)



小鳥「へぇ……そんなことが……」

小鳥「……うふふっ、続きを聞かせてください、プロデューサーさん!」



小鳥(それはまるで、花が咲くようだって……)

小鳥(今の私は、そんな風に、思う)

 
──────
────
──

テクテク……

P「──そういえば……またさっきの話なんですけど、あの歌、なんていう曲なんですか?」

小鳥「あの歌?」

P「事務所で俺が寝ているときに歌っていた、あれです」

小鳥「う……あ、あれは……」

P「765プロが出した曲でも、他のアーティストが出した最近の曲でもないですよね」

小鳥「…………」

P「いやぁ、印象に残る歌詞とメロディだったから、どこの誰が出したCDなのかって気になっちゃって……」

小鳥「あの歌は……」


小鳥(あれは……私にとって、少しだけ、特別な歌)

小鳥(……あの歌は──)

 
小鳥「……あの歌は、子守唄なんです」

P「子守唄?」

小鳥「そうです。小さい頃、母がよく私に歌ってくれた……子守唄」

小鳥(そしてそれは、たったひとつ、いまでも私が覚えている……思い出の歌)



小鳥「えっと、さっきも言いましたけど……私は小さい頃、母とよく歌を歌って過ごしていたんですよ」

小鳥「それで……実は、プロデューサーさんにさっき聴かれてしまったその歌は、オリジナルなんです」

P「え!? お、オリジナル?」

小鳥「ええ。母が歌詞を考えて、そこに曲をつけたんだって、私は昔、本人から聞きました」

P「へぇ……それにしては、随分とちゃんと形になっていたような……」

P「もしかして音無さんのお母さんは、作曲に携わる仕事でもしていたんですか?」

小鳥「いえいえ、そうではありませんよ。まぁちょっとだけ、歌に関係する仕事はしていたようですけどね」

P「そうだったんですか……」

しえん

 
小鳥「……本当に、小さい頃のこと。だけど私は、ずっとそれを覚えていて……」


────────────────────────────

 ……どうか負けないで 自分を信じて大丈夫だから

 どうか止めないで 夢が朝になっても覚めないなら

 明日を迎えにいってらっしゃい……

────────────────────────────


小鳥「……つらいことがあったとき、悲しいことがあったとき……」

小鳥「この歌を口ずさんでいると、頑張ろうって気持ちになったんです」

P「…………」

小鳥「ふふっ。だから、どこを探しても、あの歌のCDは見つかりませんよ」

P「……そうですか。それは残念だな、本当に」

眠いよぅ

腹減ったな

 
小鳥(……きっと、今の私を形作っているものは、この歌なんだと思います)

小鳥(小さい頃からずっと私のそばにいて、いつだって私のことを励ましてくれたこの歌のように……)

小鳥(私は、みんなにとって、そういう存在になりたくて……)



P「ところで……その歌に、タイトルはあるんですか?」

小鳥「はい、もちろんありますよ! その歌のタイトルは……」



小鳥「……『光』、です」

 
──────
────
──

小鳥(それからも、私達は……)

小鳥(これまでの思い出や、仕事での失敗談なんかを、笑いあいながら話していました)

小鳥(それはとても楽しくて、まるで魔法にかけられたみたいに……、時間があっという間に過ぎていきます)

小鳥(……どれくらいあっという間かというと)


小鳥「……」

P「……」


 ガタンガタン……

       ガタンガタン……


小鳥(駅に着いてしまったことに、少しの間気づかなかったくらい……)

さる

 
小鳥「……プロデューサーさん。送っていただいて、ありがとうございました」

P「いえいえ。俺から言い出したことですし……」

小鳥「……とっても、嬉しかったです。こんな風にたくさん、いろんな話が出来たのは、初めてでしたから」

P「……俺もです」

小鳥「…………」

P「…………」


小鳥(……もう間もなく、私が乗らなくてはいけない電車が到着します)

小鳥(だからもう時間もないし、どれだけそこにいても、あまりお話なんて出来ないってことはわかっているのに)

小鳥(私にはなぜか、改札へ足を向けることが出来ませんでした)

小鳩に見えてどうしたあの中二病って思って開いてから気がついた

 
小鳥(……好きな人とこれだけ同じ時間を過ごすと、お別れがこんなにもつらくなる)

小鳥(私はこのことを、この瞬間に、生まれて初めて知ることができました)

小鳥(けれど……)


──♪

『……まもなく、841番線に……電車が参ります……』

小鳥「あ……」

P「……さあ、もう行かないと」

小鳥「……はい」


小鳥(けれど時間は過ぎていきます。お別れのときは、もう目の前に来ています)

小鳥(……もちろんこれは、一生のお別れでもなんでもありません)

小鳥(明日になれば、また会える。いつも通り……事務所で会える)

小鳥(ひとりのプロデューサーと、ひとりの事務員として……)

しえ

 
小鳥(それでもプロデューサーさん、私は……そんなのは、いやなんです)

小鳥(私はいま、この瞬間に、もっとあなたと──)


小鳥「それじゃあ……私、行きますね」

P「……はい」

小鳥「……」クルッ


タッタッタ……


小鳥(……それ以上は、何も言えず、振り返りもできずに)

小鳥(私は、ホームへと入り込んできた電車の中に、駆け込みました)

 
【電車の中】


 ガタンガタン……

       ガタンガタン……


小鳥「…………」

小鳥(……どうしてかしら。頭の中で、あの歌が流れ続けている)

小鳥(つらいことがあったとき、悲しいことがあったとき、いつだって私を励ましてくれたあの歌……)

小鳥(……『光』……)


────────────────────────

 ……いま輝く一番星 ひとつ夢を願った

 だけど、今日もまた 終わっていく……

────────────────────────


小鳥(この電車が駅に到着して、家に着いたら……、今度こそ、今日が終わっちゃう)

小鳥(魔法が解けちゃう……)

もやし駅前もやし駅前

 
──────────────────────────

 ただ自分でいたいのに……

 ただ笑っていたいのに……

 だけど成れなくて もう出来なくて 落ちる涙

──────────────────────────


小鳥(……でも私は、この歌のように涙は流さない。言葉にできないさみしさを感じてしまうけど)

小鳥(それでも、あふれそうになる涙を我慢できる程度には、私は大人になってしまっているから……)


小鳥「……っ……」


小鳥(……あなたは……いつだって、アイドルのみんなことを、一番に考えていて)

小鳥(でも……それなのに、あなたは……)

支援

 
『俺は、音無さんの歌、好きですよ』

小鳥(あなたは、私の歌を、好きだと言ってくれて)


『外回りが終わって事務所に帰ってくるとき、何を楽しみにしてるかといったら、これですね……』

小鳥(あなたは、私が淹れたコーヒーが最高だって、褒めてくれて)


『……こんな夜に女性をひとりで帰らせるなんて、男として格好がつきません』

小鳥(あなたは、アイドルのみんなのことだけじゃなくて、私のことも気遣ってくれて……)


 ガタンガタン……

       ガタンガタン……


小鳥(──そして、私は……)

小鳥(今頃になって、ようやく気付けたことだけど……どうしようもなく、この胸が痛んでしまうくらいに)

小鳥(そんなプロデューサーさんのことが、大好きで……!)

 
 ガタンガタン……

       ガタンガタン……


小鳥「…………」

小鳥(……プロデューサーさんに、メールでも送ってみようかな)

小鳥(この気持ちをありのまま伝えるのは、まだ恥ずかしいけど……)

小鳥(でも今は、少しでも……どんなカタチでもいいから、あの人と繋がっていたいから)


パカッ

…………………………
 メール着信:1件
…………………………


小鳥「……あら?」

小鳥(メール? いつの間に来ていたのかしら。えっと……誰からだろう)

ピ、ピ……

小鳥(……春香ちゃん?)

 
小鳥「…………」

ピッ……

………………………………………………………………………………………………
From:春香ちゃん
Sub:ファイト!

春香です。小鳥さん、今日もお疲れ様でした。
えっと…、とくに用事があったってわけじゃないんですけど、
なんとなく小鳥さんに、これを伝えたくて、メールしちゃいました。

さっき、小鳥さんが帰ってくる直前の話なんですけど、
プロデューサーさんってば、寝言で小鳥さんの名前を呼んでたんですよ♪
…私、ずっと一緒だったから、なんとなくわかるんです。
プロデューサーさんはきっと、小鳥さんのことを特別に思ってるって…。
あっ、もちろん、私の勘違いってこともあるかもですけど…それだったらごめんなさい。

とにかく!私は、プロデューサーさんのことも小鳥さんのことも、大大大好きだから、
ふたりには絶対、ぜぇ~ったい! 幸せになってもらいたいって思うんです!

なーんて…えへへ。
こんなの私が言うまでもないことで、余計なお世話になっちゃうかもしれないですけどね。

でもでも…、とにかく小鳥さんっ!
ファイトですよっ、ファイトっ!

春香より
………………………………………………………………………………………………

 
小鳥(……プロデューサーさんが、私のことを……とか)

小鳥(春香ちゃんが送ってくれたこのメールに書いてあることが正しいかなんて、今の私にはわからない)

小鳥(でも、とにかく今は……もっと、考えないといけないことが、ある気がする……)



『はいっ、平気です! えへへ、私、こういうの慣れてますからっ!』


小鳥(……事務所のドアでぶつかった、あのとき……春香ちゃんの目、少し赤くなっていた……)


『ご、ごめんなさい、私ったら……ずびっ』


小鳥(それに、そのあとも……いつもより涙もろい、っていうか……)


『私……いま、とっても幸せです』

『大好きなみんなと、毎日楽しく過ごせて……これ以上の幸せは、お腹いっぱいで入らないってくらい』

『……だから……小鳥さんも、絶対、幸せになってくださいねっ!』


小鳥「…………!!」

さるよけ

 
小鳥(……私の胸の中に、また、たくさんの想いが湧き上がってきました)

小鳥(その気持を整理して、うまく言葉にすることは、今の私にはとても難しくて……)

小鳥(言葉にするまでもないとか、言葉だけでは伝えられない気持だって、きっとここにはあるけれど)

小鳥(……だけど、いますぐに言葉にして伝えたい気持だって、確かにこの胸の中にある)


小鳥(……もしも)

小鳥(もしも、もう一度、あなたに会えるなら……たった一言、伝えたい)

小鳥(涙を我慢しながら、それでも私に『幸せになってください』と言ってくれた、あなたに……)

小鳥(……ありがとう、って……)



『次は~、○○駅、○○駅……お降りのお客様は……』

小鳥「……っ!」



 ガタンガタン……

       ガタンガタン……

 
──────
────
──




プォォ──……




小鳥「プロデューサーさん。いま、どこにいますか?」

P『……え? どこ、って……』




 ガタンガタン……!

       ガタンガタン……!

 
小鳥「もう、家に着いてしまいましたか?」

P『いえ……、まだ、帰り道の途中です』

小鳥「そうですか……良かった」

P『というか音無さん、いま電車の中にいるんじゃないんですか? 電話なんて……』

小鳥「……実は、途中で降りちゃったんです」

P『降りたって、一体どうして?』

小鳥「……あなたの声が聞きたくて」

P『……』

しえん!

 
小鳥「……ここは、とても寒いです」

P『……音無さん……』

小鳥「もうすっかり慣れてしまったと思っていたけど、ひとりでいることなんて平気だと思っていたけど」

小鳥「本当は決して……そんなことはありませんでした」

P『…………』

小鳥「あたたかさを覚えてしまったぶん、寒さは、より一層強く感じてしまうんです」

小鳥「……だから、私はいま……」


小鳥「私は、いま、すぐにでも……あなたに会いたい」

 
P『……待っています。さっき別れた、あの場所で』

小鳥「……ごめんなさい。こんなわがままを言ってしまって」

P『いいんですよ。だってそれは、俺も一緒だったから』

小鳥「え? いっしょ?」

P『……俺も、あなたにもう一度会いたいと思っていました。だから……』

小鳥「……!」

P『だから、いつまでだって、待っています』

小鳥「……はい!」

 
  *  *  *

小鳥(……その場の雰囲気とかで、妙にテンション上がっちゃうことってありますよね)

小鳥(さっきはつい、気持ちが盛り上がって、あんな感じに言えちゃったけど……)



小鳥「……あ、あの……」

P「……」

小鳥「お待たせしました……」モジモジ

P「い、いえいえ! 俺も、いま着いたところですから」



小鳥(電車で折り返して、ちょっと時間が経ってしまった今となっては……)

小鳥(プロデューサーさんと顔を合わせるのが……、とても恥ずかしい……!)

小鳥(さっきまでの私はどこに行ったのよ!)

小鳥(っていうか! よく考えたらさっきの電話ほぼ告白みたいなものだったじゃない何考えてるのよ!!)

 
小鳥「うぅ……」

P「……音無さん」

小鳥「ひゃいっ!?」

P「その……いやだったら言ってくださいね」

小鳥「え……?」


ぎゅっ……


小鳥「……!」


小鳥(──プロデューサーさんが繋いでくれた手は……)

小鳥(冬の寒さのせいで、とても冷たくなっていました)

 
小鳥「……うそばっかり」

P「え?」

小鳥「いま来たところ、って……」

P「……あはは」

小鳥(きっとあの電話のあと、すぐに駅まで戻ってきて、私のことをずっと待っていてくれたんでしょう)

小鳥(……本当に、冷え切っている。……でも……)


ぎゅぅ……


P「!」

小鳥「……いやなわけ……ありませんよ」


小鳥(でも……そんな冷たくなった手だからこそ、プロデューサーさんのやさしさを感じて)

小鳥(そのやさしさに包まれて……私の心はいま、こんなにも……、あたたかいです)

ピヨ

しえん

 
小鳥「……あの、私……プロデューサーさんに伝えたいことが、たくさんあるんです」

P「……はい」

小鳥「そ、その中には……たぶんもう伝わっちゃってるんじゃないかな? って思うこともあるんですけど……」

小鳥「……こんな状況ですし」


ぎゅぅ……


P「……」

小鳥「それでもやっぱり、ちゃんと言葉にしたくて……考えてきたんです、電車の中で」

小鳥「……だ、だけど……!」

P「え……?」

小鳥「……今、あなたの顔を見たら……ぜんぶ、空の向こうに吹っ飛んじゃいました。えへへ……」

P「あ、あはは……そ、そうですか」

小鳥「……ごめんなさい」

P「い、いやいや! 良いんです! 謝らないでくださいっ!」

 
小鳥(それから私たちは、どちらからともなく、どこへ向かうかも決めないまま、歩き始めました)

小鳥(この右手に、あなたの左手のぬくもりを感じながら……)


小鳥「……プロデューサーさん、ごめんなさい」

P「あはは、だから謝らなくていいですってば」

小鳥「そうじゃなくて、えっと……時間のことです」

P「時間?」

小鳥「さっきは私、自分で『私のせいで帰りを遅くさせるわけにはいかない』みたいなこと言ったのに……」

P「ああ……そんなこと、気にしないでいいですよ。遅くなるのは慣れっこですからね!」

小鳥「……」

P「それに、隣に音無さんがいてくれるなら、俺の体力はどんどん回復していくくらいですし!」

小鳥「! も、もう……またそんな、適当なことを言って……」

 
小鳥(きっと、どこへ向かったっていいんです。今の私たちにとっては、場所なんて関係ありません)

小鳥(そこに、あなたと私さえいれば……それだけでいい)



……──♪

小鳥「……あ。プロデューサーさん! あれ、見てください!」

P「え?」

小鳥「ビルの屋上。ほら、画面に映ってますよ!」



小鳥(……でも、やっぱり、なんですよね)

小鳥(やっぱり、私たちが行き着くところ──それは)



P「ああ、あれは……貴音ですね」

小鳥「ふふっ、可愛い……!」



小鳥(私たちの大好きなアイドルの笑顔が、あるところ……)

しえ

 
……──♪

『ねえ いいかな ずっと願い続けてて──』

『そっと……話しかけたい どう転んでも あなたが好き!』



P「……」

小鳥「……」



小鳥(街を行く私たちの目に飛び込んできたのは……)

小鳥(ビルの屋上に設置された電光掲示板から流れる、とある化粧品のCMでした)

小鳥(イメージガールは四条貴音ちゃん。そしてタイアップ曲は、フラワーガール)


小鳥(ちなみに、貴音ちゃんが妙な目覚め方をしてしまったという、あのCMのことです……)

 
……──♪

『夢の中で また包んで ねぇ もう……』

『花になりたい……グっと あふれ出す思い──』



小鳥「……不思議ですよねぇ」

P「不思議って?」

小鳥「貴音ちゃんって、普段はあーんなにクールで、ミステリアス美女! って感じなのに……」

小鳥「歌えと言われれば、ああいう可愛い歌もばっちり歌いこなせちゃうんだから」

P「ああ、なるほど……でも、むしろ俺は、ああいうキュート路線こそが、貴音の本当の魅力なんだって思いますよ」

小鳥「あら、そうですか? 私はもっとこう、『雪歩、タイが曲がっていてよ』的な貴音ちゃんのほうが」

P「へ? タイ?」

小鳥「……はっ! い、いいえっ、なな、なんでもありません!」


小鳥(だめっ! だめよ小鳥ぃぃ!)

小鳥(いまは、いまだけは、そういうあれじゃないんだから……!)

 
……──♪

『開いてくの 本当の私の姿に……』

『手をつなぐの あと少し! 空に連れてって──♪』



小鳥「……あは、あはは……はぁ」

P「……まるで」

小鳥「え?」

P「花が咲いているみたいだって思いませんか? あのCM……」

小鳥「……ふふっ、たしかに、そのとおりですね」

P「貴音、どこか吹っ切れたかのように楽しそうだ……」

小鳥「本当に……たくさんの貴音ちゃんが狂ったように踊っていて、まるで花の妖精みたい」


小鳥(ちなみに……)

小鳥(雪歩ちゃんはそのCMを見るなり、貴音ちゃんのあまりの可愛らしさにびっくりして失神し、病院に運ばれました)

小鳥(まぁ、今はまったく関係のないことですけどね)

 
小鳥「……今ではもう、あの子達の笑顔を、テレビや雑誌で見かけない日はありませんね」

P「ええ。アイドルの子達はみんな、毎日頑張ってきましたから」

小鳥「みんなだけ、じゃない。プロデューサーさんも……でしょう?」

P「いやいや、そんな……俺はただ、あの子達のサポートをしただけですよ」

小鳥「またまた、ご謙遜しちゃって」

P「いやぁ、謙遜なんて……」

小鳥「……ふふっ、それでも私、思うんです。プロデューサーさんは、花咲かじいさんみたいだなって」

P「な、なんですか急に……まだじいさんなんて年じゃありませんよ」

小鳥「それはあくまでものの例え。……とにかく、そうなんですよ」

小鳥「だってあなたは、ずっと土の中にいて眠っていた、みんなの才能を芽吹かせてくれたんですから」

P「……」

小鳥「……それはまるで、花が咲くように」

小鳥「冬が終わり、春が訪れて……765プロには、多くの夢が花咲くようになりました」

小鳥「すべては、あなたが事務所のドアを叩いた、あの日から……いろんなことが、どんどん変わっていったんですよ」

 
P「……花、か。あの子達を表現するのに、その言葉はぴったりかもしれませんね」

小鳥「……プロデューサーさんっ!」

P「どうしたんですか?」

小鳥「ふふっ、私……、伝えたい言葉、やっと思いつきました!」



小鳥(それは……ずっと伝えたかった気持ち)

小鳥(私の胸に芽生えた、恋という感情とは……また、ちがう)

小鳥(けれど、とても大切な気持ち……)

 
小鳥(きっとみんなも、私と同じように、こう思っている)

小鳥(でもみんなと違って私には、こんなことを言うチャンスは、なかなか与えられないから)

小鳥(だから、いまこそ……あなたと少しだけ距離を縮められた、今日だからこそ)

小鳥(私は、この気持ちを……ちゃんと言葉にして伝えたい……)



小鳥「……プロデューサーさん」

P「……はい」

小鳥「765プロに来てくれて……私たちと、出会ってくれて……」

小鳥「たくさんの夢を叶えてくれて、応援してくれて……」

小鳥「……本当に、本当に」



小鳥「ありがとう……」

しえ

 
P「…………」

小鳥「……プロデューサーさん? 聞いてましたかー?」

P「……はい、もちろんです。でもそれは……俺なんかには、もったいない言葉ですよ」

小鳥「むむっ、私の精一杯の気持ちを否定するんですか?」

P「い、いやいや! そういう意味じゃなくて……だって、頑張ってきたのは決して俺だけじゃ……」

小鳥「……ふふふっ、冗談です」

P「冗談って……」

小鳥「あなたなら、きっと、そう言うと思っていました。私、ちゃーんとわかっているんですよ♪」

P「……!」



P(……そう言って、やわらかく微笑んだ音無さんは)

P(俺の立っている場所からは、たくさんの光に包まれているように見えて……)

P(それは、思わず再び心奪われて、言葉を無くしてしまうくらいに……とても綺麗だった)

 
P(……この気持ちを今、あえて言葉にするなら……それは──)



P「…………」

小鳥「プロデューサーさんって、いっつもそうですもんね。自分のことになると謙虚というか……」

P「……音無さん」

小鳥「はい、どうかしまし──」

ガシッ

小鳥「え? ぷ、プロデューサーさん……?」

P「……俺……!」



P「俺は、あなたのことが……、好きです」

素晴らしい

ここまで長かったな

小鳥ちゃんとふしだらしたい

 
小鳥「…………────!」

P「あのっ、実は俺っ……ひと目見たときから、ずっとあなたのことが気になってて……!」

P「それで、一緒に仕事をするようになってからも……あはは、こっそり律子に相談とかしちゃったりし」

小鳥「ちょ、ちょ、ちょっと! ちょっと待ってくださいっ! ストップストップ!」

P「でも……!」

小鳥「……こ、ここ街中っ!」


  ざわ……
       ざわ……


小鳥「その……人の目が、ありますから」

P「……あ」サー

小鳥「……もう一回、手……貸してください」


ぎゅぅ……


小鳥「こっち……ふたりになれるところ、行きましょう?」

すばら

すばらしえん

 
【夜の公園】

P「……すみません、ちょっと暴走してしまいました」

小鳥「い、いえ……」

ドックン ドックン……

P「あの、音無さん……返事を、聞かせてもらえませんか?」

小鳥「え!? へ、返事って……!?」

P「……もう一度言います。俺、音無さんのことが、好きなんです」

小鳥「……!」


小鳥(……もう、なんというか……)

小鳥(この状況を考えれば、きっとプロデューサーさんも……って、思ってはいたけど……)

小鳥(……実際こうなってみると、なんにも考えられない……!)


P「……きっかけは、正直に言って……一目惚れでした」

小鳥「お、おおぅ……!?」

小鳥(そ、そしてなんか始まった……!!!)

 
P「……自己紹介のとき、音無さんはこう言いましたよね」

『あ、私のことはお好きに呼んでくださいね。小鳥ちゃんでも、小鳥姉さんでも。うふふ♪』

小鳥「あー……確かに、そんなことを言ったかもしれません……」

P「本当のことを言うと俺、もう思いっきり叫びたかったんです。下の名前で……」

小鳥「そ、それなら別に……呼んでくれても……えへへ」

P「こんな綺麗な女性を目の前にして、そんな慣れ慣れしいことが出来ますか……!?」ゴゴゴ

小鳥「え、え、ぇぇえぇ……!?」

P「……ごほん。失礼しました」

小鳥「…………」ドキドキ

P「……相手がアイドルなら、俺も、それなりに落ち着いて行動することができるんです」

P「でも、あなたはちがうから……だから、どういう距離感で接したらいいか判断するのが、難しくて……」


小鳥(き、綺麗って……綺麗って言った? 加齢じゃなくて?)

小鳥(私は……どうしたらいい? この胸の痛みをどうしたらいいのプロデューサーさん!?)

小鳥(指先がチリチリする。口の中はカラカラだ。目の奥が熱いんだ! ぴぃぃぃぃぃ!!)

にやにやしてまう

 
P「……でも、本当に俺があなたのことを好きになったのは……もっと違う理由があるんだ」

小鳥「え……?」

P「俺は、あなたの生き方に、憧れたんですよ」

小鳥「……生き方?」

P「……音無さんと一緒に働くようになって、アイドルたちとも距離を縮めていって……」

P「そしたら俺、わかったんです。音無さんは、本当にアイドル達みんなのことを愛しているんだなって」

小鳥「……っ!」

P「……以前、春香に聞きました。まだ俺が入社する前の……あの日のこと」

小鳥「……それは……」


小鳥(……それはきっと)

小鳥(頑張っても頑張っても報われなくて、春香ちゃんたちがひどく落ち込んでしまった……あの日)

──────────────────────────────────────────────

 ……こんなんじゃ私達、毎日、なんのためにレッスンしてるのか……わかりませんよぉ!

──────────────────────────────────────────────

 
P「……あのとき、音無さんが、春香たちを慰めてくれたんですよね?」

小鳥「……慰めるだなんて……。私はただ、当たり前のことを言っただけですよ」

P「それでもです。それでも、確かに……春香たちは救われた」


──────────────────────────────────────────────

 ……そうしたら、小鳥さんは私たちにこう言ってくれたんです

 『夢は、想い続ければ、必ず叶うから』、『私は最後まで、みんなを応援し続けるから』って……

──────────────────────────────────────────────


P「……春香は、あなたのその言葉のおかげで、そのときもう一度立ち上がれたんですよ」

P「ひとりでも、自分たちのことを見守ってくれる人がいる。それならその期待に、精一杯応えたいって……」

小鳥「……春香ちゃん……」

P「……いつだって一番にアイドルのことを考えて……、みんなが笑顔なら、いっしょに笑って」

P「みんなが悲しいなら、いっしょに悲しんで……」

小鳥「……!」

P「俺は、そんな風に生きるあなたの姿に……いつからか、本当に心惹かれていたんです」

 
P「……だから、俺と付き合って欲しい。ずっと、一緒にいてほしいって……そう思うんです」

小鳥「…………」

P「……どうでしょうか」

小鳥「……い、いまさら……」

P「え?」

小鳥「いまさら……返事が、必要ですか?」


ぎゅぅぅ……


小鳥「こんな……さっきから、手とかも繋いじゃってるっていうのに」

P「! そ、それじゃあ……」

小鳥「…………あ、うぅ、その……だから……!」


小鳥(一言……たった一言でいい)

小鳥(たった一言、『私も好きです』って、そう言えばいいだけなのに……)

小鳥(……いまの私には、それが……何よりも、難しい……!)

やはり小鳥さんは一番可愛い

何でこの人事務員やってるんだろ

 
小鳥「……あの……うれしぃ、です……」ボソボソ

P「え?」

小鳥「だからっ! う、うれしいんですっ!」

P「!」

小鳥(『私も、プロデューサーさんのことが、大好きです』)

小鳥(『そして……私があなたに惹かれたのも……いまあなたが言ってくれたのと、同じ理由』)

小鳥(『みんなの為にいつだって一生懸命なあなたの姿を……ずっと見ていたいって思ったから。うふふ』)

小鳥(……そんな風に、頭の中では考えられるのに……! 心の中では饒舌なのに……!)


小鳥「……ぁ、の……──き……」

P「えっと……なんて?」

小鳥「すきっ! ……です。わたしも……あなたの、こと……はい……」

P「!!!!」

小鳥「お付き合い……できたら、私も嬉しいかなって……うん」


小鳥(現実の私が言えるのはこれが精一杯!!!!)

 
P「音無さ──」

小鳥「……っ!」タッ


ぎゅぅぅぅ……!


P「っ!?」

小鳥「……見ないで、ください。きっといま、情けない顔……してるから」

P「……そんなことないですよ」


ぎゅっ……


小鳥「! う、うぅ……!」

P「……」

小鳥「……すき……すきすき、だいすきぃ……!」

小鳥「こ、こうやって抱きしめられるのが、嬉しくて嬉しくて、泣きだくなっぢゃうぐらい……!」


小鳥「わだしも……あなたのことが……だいずきですぅ……!!」

朝ごはん食べる

小鳥さん可愛いピヨ

待ってる

砂糖吐いてもいいですか?

可愛い

ほしゅ

小鳥さんマジ正妻

保守ありがとうございました 再開する

しえ

 
  *  *  *


小鳥(それから、私たちは……)

小鳥(しばらくの間、無言で抱き合っていました)


小鳥(……私はただ、返事をするだけで良かったのに)

小鳥(ただ一言、『私も好きです』と伝えるだけで良かったのに……)

小鳥(なんだか、随分とカッコ悪くなってしまいました気がします。情けないですね……)

小鳥(……でも、それもまた、私らしいのかもしれません)


小鳥(……それに)

小鳥(プロデューサーさんが言ってくれたように、私たちにはまだ、たくさんの時間があります)

小鳥(いまはまだ、この気持ちのかけらを伝えただけ……)

小鳥(この想いのすべてを伝えるには、これからゆっくりと、でいいんです)

小鳥(……だから……ずっとずっと、私に付き合ってくださいね。プロデューサーさん……)

頼むからぴよぴよの妄想or夢オチはやめろよ…!

>>208日本語おかしいので訂正
×小鳥(なんだか、随分とカッコ悪くなってしまいました気がします。情けないですね……)
○小鳥(なんだか、随分とカッコ悪くなってしまった気がします。情けないですね……)
でオナシャス

 
小鳥(そして今、私たちは……駅へと続く道を、ふたり並んで歩いています)

小鳥(……右手にはもちろん、あなたの左手)


テクテク……

小鳥「……ふふっ」

P「どうかしたんですか?」

小鳥「こんなに幸せで、いいのかなって思って……」

P「……」


ぎゅっ……


小鳥「! えへへ……もう、そんなに強く握らなくても、私は羽ばたいて飛んでいったりしないですよ」

P「……いいんですよ、幸せになっても」

小鳥「え……?」

P「だって、これまで、あなたは……ずっとずっと、頑張ってきたんですから」

小鳥「……!」

 
小鳥「頑張ってきた、って……?」

P「ずっとあなたのことを見てきたから、俺はちゃんと知っています。だから……、いいんです」

P「……ときには自分のこと以外、何も考えずに幸せになったって……誰も、あなたのことを責めません」

小鳥「…………」ウルウル

P「……!? こ、小鳥さん……」

小鳥「……え、えへへ……あ、あれ? なんでかなぁ……な、涙、が……」


ポロッポロポロ……


小鳥(……そんな風に言ってくれて、とっても……嬉しいはずなのに)

小鳥(春香ちゃんからも、同じことを言われて……あのときは、こんな気持ちにはならなかったのに)

小鳥(まるで、さっきまでの私と、今の私は……全然、違うみたいで……)

小鳥(そ、それに……! 私はもう、涙は我慢できるくらい、大人になったはずなのに……!)


ボロボロ……


小鳥「……ひぐっ! ……う、うぇぇえぇ……!!」

小鳥さんスレ発見

 
──────
────
──

P「……落ち着きましたか?」

小鳥「はい……」グズッ


小鳥(まさかこの年で号泣することになるとは……)

小鳥(……だけど、プロデューサーさん……泣き止むまで、頭、撫でてくれた……嬉しい)


小鳥「……あれ?」

P「どうかしましたか?」

小鳥「……なんだか、私……今何か、大切なことを聞き流しちゃったような……」

P「!」ドキッ

小鳥「うーん……なにかしら、モヤっとする……」

P「さ、さぁ……なんでしょうね、『音無さん』。あはは……」

小鳥「んー……?」

 
小鳥「……そんなことよりっ、プロデューサーさん。いまのは、ずるいと思います!」

P「へ? ずるい?」

小鳥「そうですよ……私くらいの年齢の女性っていうのはですね、そういうものなんです」

P「……どういうことですか?」

小鳥「……つまりですね。……す、好きな男性に……」テレテレ

『僕は知ってるよ ちゃんと見てるよ 頑張ってる君のこと』

小鳥「なーんて言われたら……そりゃあ、いくら我慢しようとしたって、こうなるってものなんですっ!」

P「そ、そういうものなんですか……」

小鳥「そうです、そういうものなんです!」

P「でも俺、そんな風に言ったっけかな……?」

小鳥「ある程度乙女歴が長いと、脳内で勝手にそう変換されてしまうんですよ。ふふふ」

P「なるほど……」

乙女だもんな
仕方ないな

 
小鳥「……でも、私もごめんなさい。また格好悪いところ見せちゃいました」

P「……いいんですよ。格好悪くなんかないし……むしろ、嬉しいです」

小鳥「嬉しい?」

P「そういう弱いところを見せてもらえるのは、彼氏冥利に尽きるっていうか」

小鳥「かっ、かれひっ!?」

P「えっ!?」

小鳥「…………」プシュー

P「……い、一応聞いておきますけど……そう、ですよね?」

小鳥「そ、そう……ですけど……」

小鳥「……もう、なんでそんなこと、サラっと言えちゃうのかなぁ……」

P「あははは……」

小鳥「…………ふふっ。でも……」

小鳥「私は、あなたのそういうところ……大好きですよ」

 
P「……改めて、幸せだなって思います。音無さんにとっての大切な存在になれたこと」

小鳥「……私もです。でも私は、こうなる前から、あなたのことは大切な存在だって思ってましたよ」

P「え……」

小鳥「だってあなたは……かけがえのない、仲間でしたから」

P「……仲間、か。確かに、それはそのとおりですね!」


小鳥(……だから私は、こう思う)

小鳥(プロデューサーさんはさっき、『アイドルになろうとは思わなかったんですか?』と私に聞いたけど)

小鳥(私は、アイドルをやっている自分ではなくて──)


小鳥「……プロデューサーさん。私、いまの自分のことが、一番好きです」

P「いまの自分、ですか?」

小鳥「はい!」

 
小鳥「これまで歩んできた、決して短くない人生の中で……私なりに、いろいろとあったけれど」

小鳥「いまの私の隣には、あなたがいてくれる……」

小鳥「そしていつだって……アイドルのみんなが、仲間がいてくれる」


小鳥「やっぱり私は……みんなが持つ、ひとりひとつの光を、何より愛しているから」

小鳥「だからきっと……これ以上の幸せは、ありません」

かわいい

 
小鳥(だからね、春香ちゃん……)

小鳥(春香ちゃんはさっき事務所で、こう言ってくれたけど……)


──────────────────────────────────────────────

 ……小鳥さんも、絶対、幸せになってくださいねっ!

 小鳥さんってば、何かにつけて私達のことばっかり気にかけてくれるんですから

──────────────────────────────────────────────


小鳥(……いまなら、あなたの言葉に、胸を張ってこう答えられる)




小鳥「……私はいま、本当に……幸せです」

小鳥「大好きな仲間が、隣にいてくれるから……だからこそ私は、最高に幸せなんだって思います」

P「……小鳥さん」

小鳥「……うふふっ、さぁ、プロデューサーさん! 行きましょう?」

P「……はい!」

 
──────
────
──

小鳥(……駅に、着いちゃった)

小鳥(私の右手に繋いだ、この左手を、離さないといけません……)


小鳥「……」キョロキョロ

P「どうしたんですか? 何か探しものでも……」

小鳥「……あのっ、プロデューサーさん。お願いがあるんですけど……」

P「お願い?」

小鳥「いまなら……その、まわりに誰もいないから……」


小鳥「……も、もう一度、最後に……ぎゅってしてくれませんか……?」

 
P「そ、そりゃあ、もちろんいいですけど……」

小鳥「……」ドキドキ

P「……それじゃあ……」


ぎゅぅっ……


小鳥「……んっ……」

P「……」

小鳥「……んふふふ……。ありがとうございま──」



……ちゅっ



小鳥「!!!!?!!?」

squallを聞きながらニヨニヨしてしまう

俺「!!!!?!!?」

 
P「……」

小鳥「あ、あぇ……? い、今……えっと……」

P「……あはは、可愛かったから、つい」

小鳥「…………────~~~!!!!」プシュー


小鳥(……私の、ファースト・キスは)

小鳥(プロデューサーさんがいじわるをするせいで、よくわからないまま、終わってしまいました)

小鳥(こ、こんなの……全然、長年思い描いていたような……、ロマンチックなキスじゃないわ……!)



小鳥「うぅうぅぅうぅうぅうぅぅううぅう…………!!!」

P「お、落ち着いて……どう、どうどう……」

小鳥「……も、もう一回! もう一回してくださいっ!」

P「え!?」

小鳥「今の! よくわかんなかったから! せめてもう一回ぃぃぃぃ!!」

 
P「わ、わかりました、それじゃあ……」

小鳥「…………」ドキドキ


ちゅっ……


P「……今のは、どうでしたか?」

小鳥「……いまのも、よくわかんなかった……」

P「……そ、それなら、もう一回やるしかないですかね」

小鳥「そ、そうですね! しかたない、しかたない……」

P「で、ではいざ……!」




小鳥(ここからは恥ずかしいので少し省略します)




小鳥「うえっへへへっへ……♪」

P「……へ、へへ」

 
  *  *  *


小鳥「それじゃあ……もういい加減、私も行きますね」

P「ええ。帰り道、気をつけてくださいね。こんな夜更けですし」

小鳥「プロデューサーさんも。それに、ちゃんとあったかくして寝てください。風邪なんて引かないでくださいよ?」

P「……はい」

小鳥「……ふふっ、そんな顔しないでください」

小鳥「また、明日になれば……会えるんですから!」

P「……あはは、そうですね!」


小鳥(プロデューサーさんとは、今日はまた、お別れです)

小鳥(でも……私の胸には、さっき別れたときとは、全然ちがう気持ちが芽生えていました)

小鳥(明日になれば、また会える。それがどんなに幸せかっていうことが……わかったから)

 
小鳥「それじゃあ……おやすみなさい」

P「おやすみなさい……」

小鳥「……」


テクテク……

──ピタ


小鳥(……駅のホームへと続く階段に足をかけた瞬間、ふと振り返ると……)

小鳥(やっぱりプロデューサーさんは、まだそこにいてくれました)



小鳥「……プロデューサーさーん!」ブンブン

P「はーい! どうしたんですかーっ?」

小鳥「えへへ……。また……また明日っ!」

P「……はいっ! また……」


「「また明日っ!」」

これは、!砂糖の甘さじゃない!

ああ^~

 
P「……行ったか……」

ピピピピ

P「ん? メールが……」

P「! 音無さんじゃないか……なになに」

ピッ

P「……な、なんだこれ……!?」


……………………………………………………
From:音無小鳥
Sub:待ち受け画面にしちゃいました♪


かわいい!


添付ファイル:寝顔♪
……………………………………………………


P「……あははは……はぁ。いつの間に撮られたんだ……?」

……──♪

『……My Blue Bird どこにいるのかな……♪』

ヴーヴー……


小鳥「……あ、メールのお返事かしら? ふふふっ……」


『夢になって 愛になって 誰かと……♪』


小鳥「……」ピッ


……………………………………………………
From:プロデューサーさん
Sub:消してください


それか、小鳥さんの寝顔も撮らせてください。
……………………………………………………


小鳥「えぇっ!? そ、それって、ヤバイ意味じゃないわよね……?」

小鳥「……ん? ていうか……」

小鳥「…………『小鳥さん』?」

 
小鳥「……」ボッ

小鳥「……さっきからたまにあった違和感は、これね……堂々と呼んでくれればいいのに、もう……」

小鳥「……き、『機会があれば、寝顔くらい、いつでもどうぞ』っと……」ピッ



小鳥「なーんて! なーんて!」

金髪ツインテ「……」ピピッ

小鳥「うえへへ、な、何言ってるのかしら、私……ったら……」

金髪ツインテ「……駅のホームでひとりでハシャいでる酔っ払い発見なう、っと……」

小鳥「…………」

金髪ツインテ「あ、さっそくELLIEセンパイから……ん? なんか視線を感じるわネ」

小鳥「……えーっと……あなたたしか、お花屋さんのバイトの……」

金髪ツインテ「……」



金髪ツインテ「」ダッ

小鳥「ちょっちょっと!?」

 
小鳥「も、もう……!」


小鳥(で、でもだめね、私ったら。こんなことで、いちいちこんなに舞い上がっちゃって)

小鳥(お姉さんっぽく、お姉さんっぽく……落ち着きを持って行動しないと)

小鳥(……でも……)


小鳥「……ふふっ♪」

 
小鳥「……よーし! 明日もがんばるぞー!」


小鳥(……ううん。明日だけ、じゃないですね)

小鳥(それがいつになるかは、まだわからないけど……)

小鳥(私たちならきっと……それを、叶えられるはずだから)



小鳥「……だから、その日まで。ずっと、ずっと……」

小鳥「いっしょに、がんばっていきましょうね……プロデューサーさんっ!」


──────
────
──

ピヨピヨ

 
【翌日、765プロ事務所】

ガチャッ

P「おはようございますっ、こと──」

律子「おはようございまーす」

P「……律子さん」

律子「なーに、またさん付けしちゃって。それに、私の名前はことりつこじゃなくて律子ですよ」

P「あ、あははは! ごめんごめん、ちょっと寝ぼけてたみたいで!」

P(そうだった……)

P(今日は、いつもみたいに小鳥さんが事務所を開けるんじゃなくて、律子になっていたんだった)


律子「しかしまぁ、ふーん……」ニヤニヤ

P「……なんでしょうか」

律子「音無さん、じゃなくて、小鳥さんですか。一晩で随分仲良くなったものね~」

P「い、いいだろ別にっ! 一応もう、了承も取ったんだから!」

P(あのあと、メールでだけどな……)

支援

 
──────
────
──

テクテク……

春香「……ふふっ、そっか……」

春香「おめでとうございます小鳥さん、私も、とっても嬉しいです……っと」ピピッ

──パタンッ

春香「……あっ! 千早ちゃ~んっ!」

千早「……? あぁ、はる──」

春香「って、うあっ、うわわわっ!」

ドンガラガッシャーン!

千早「……」

春香「あいたたた……うぅ~、また転んじゃったぁ~……」

千早「おはよう、春香。……大丈夫?」

春香「う、うん……えへへ、私、こういうの慣れてるからねっ!」

 
千早「はい、これ。落としたわよ」スッ

春香「あ、携帯……ありがとう」

千早「……ねぇ、春香」

春香「どうしたの?」

千早「今拾うときに、待ち受け画面が見えてしまったんだけど……あれって」

春香「あうっ! あ、あ……み、見ちゃった?」

千早「……ええ、ごめんなさい」

春香「……もう変えるから、小鳥さんには内緒にしてね?」

千早「それは構わないけど……でもどうして、音無さんに?」

春香「そりゃあもちろん……私は、ふたりとも、大大大好きだからだよ。えへへ……」

千早「……そう」

 
千早「まぁ、春香がそれで良いなら、私は何も言わないけど……」

春香「えへへっ、いーんです!」

春香「……あっ! そんなことより、見て見て千早ちゃんっ!」

千早「え? なに?」

春香「ほら、向こうから貴音さんと響ちゃんも歩いて──」

響「まぁ……ごきげんよう、ふたりとも」シャララン

春香・千早「「えっ」」

えっ

 
──────
────
──

P(俺が出勤するのを確認した律子は、『じゃ、あとはお願いします!』と言って外へ行ってしまった)

P(いま事務所には俺ひとりだけ……はやく小鳥さん来ないかな)

P(っと、いけないいけない。公私混同してはダメだよな……気をつけないと)


P「……ふーんふふーん ふふふーんふーん……♪」トントン


ガチャ……

高木「……ウォッホン! 今日の君は、随分と上機嫌のようだね」

P「うわぁっ、しゃ、社長!? すみませんっ、真面目に働きます!」

高木「いやいいんだよ、まだ女の子達も来ていないようだしね」

P「あははは……えーっと、おはようございます」

高木「ああ、おはよう。……うん? しかし、いまの歌はどこかで……」

P「へ?」

高木「……もしかしてそれは……『光』か?」

 
P「確かに、今のはそうですけど……。社長、この歌のことをご存知なんですか?」

高木「……うむ。しかしそれを説明する前に、だね……君は、どこでそれを?」

P「こと……じゃなくて、音無さんが歌っているのを、偶然耳にしたんです」

高木「音無君が……ああ、そうか、そうだったのか……!」

P「? なんだか、随分と嬉しそうですね」

高木「はっはっは、嬉しくもなるよ。いや、実に懐かしいねぇ」

P「懐かしい……? ……というか社長、この歌はオリジナルだと聞きましたが」

高木「ん? オリジナルだって?」

P「ええ、音無さんがそう言っていました」

高木「……なるほど、彼女はそう伝えていたのか。まぁ無理もないかもしれないが」

P「彼女っていうのは……それは、音無さんのことですか?」

高木「……いや、ちがう。本来その歌を歌うはずだった、とあるアイドルのことだよ」

P「あ、アイドル!? それに、歌うはずだった、って……」


P(あの歌は小鳥さんの母親が考えたもので、もちろん発表もされていないって聞いたけど……違うのか?)

 
P「…………」

高木「確かにその歌は、CDにもレコードにもなっていないし、今ではどこにも記録は残っていないだろう」

高木「だが私は、その歌のことはよく覚えている……」

高木「……忘れることもできない、と言った方が正しいのかもしれないが」

P「……それは……一体どうして?」

高木「はは……それを歌うはずだったアイドルのプロデューサーが、何を隠そうこの私だったのだからね」

P「えっ!?」


P(いろいろと驚くことはあるけど……何より、まずこれだ……)

P(……社長、本当にプロデューサーだったのか……!)

P(いつも何をしているかわからないから、てっきり適当なことを言っているものかと……)

社長涙目

 
P「……高木社長がプロデュースした、アイドル」

高木「うむ。君も聞いたことがあるかもしれないな。かつて『空』や『花』という歌を歌った歌手のことを」

P「! まさか、それって……いやでも、名前が……」

高木「……君が知っているその名前は、彼女の芸名だ。だから、音無君の名前とはなんの関係もない」

P「あ……そ、そうか……」

高木「いやはや……世界は、広いように見えて、実はとても狭いのかもしれない」

高木「私も、初めて彼女の『娘』に出会ったときは目を疑ったものだよ。まるで生き写しのようだったからね」


──────────────────────────────────────────────

 ……あの歌は……子守唄なんです

 小さい頃、母が私に歌ってくれた……子守唄

──────────────────────────────────────────────


P(……かつて社長がプロデュースしたという、『空』や『花』を歌ったアイドル……)

P(そして本来、『光』を歌うはずだったその人が……)

P(それが、小鳥さんの母親なのか……?)

 
高木「その歌、『光』はね……彼女が引退前、最後にリリースするはずだった楽曲なのだよ」

高木「しかし……、それが完成され世に出る直前に、彼女は私の元を去ってしまったのだ」

P「去ったって……どうしてまた?」

高木「今でも、はっきりとした理由はわからない。しかし彼女は最後に、私にこう言っていたな……」


『この歌を歌うのに、今の私はふさわしくありません』


高木「……彼女は、私の見ていないところで、随分と悩んでいるようだった」

高木「ははは、今になってこんなことを言っても、もう遅いがね……」

P「社長……」

高木「何十年も昔の話だよ。……とにかく、それから私は、色々と考えを改め直すことになった」

高木「プロデューサーがアイドルの心の支えとなり、二人三脚で様々な困難を乗り越えていく……」

高木「そうした先に、私が求めるアイドルの理想形があるんだ……とね」

P「……理想のアイドル……?」

高木「ああ……私が黒井と袂を分けたのは、ちょうどその頃だったかな」

 
高木「音無君を初めて見たときは、これが天のめぐり合わせかと思ったものだったが……」

高木「だが、考えを改めたところで、それを実現するには私は少し年を取りすぎていたようだ」

高木「もう少し早く、君のような若者に出会っていれば……音無君もあるいはまた……」

P「……!」

P(それって……)

P(社長の言い方だと……、もしかして小鳥さんも……?)


高木「……いやしかし、君には本当に感謝しているよ。よくぞここまで、アイドル諸君を成長させてくれた」

P「……いや、まだです。俺達は、まだまだこれから、さらに上を目指していきますよ!」

高木「おお、そうか!」

P「もっともっとあの子達を輝かせて、そして……必ずや、みんなまとめてトップアイドルにしてみせます!」

高木「うむ! やはり君の言葉には、勢いがあって実に頼もしいな!」

 
P(……俺が今考えていることが正しいとするなら、小鳥さんもまた、昔……)


──────────────────────────────────────────────

 ……女には、色々な過去があるってことです

 それに私は、歌うことよりも、みんなのことを見守っていく今の生き方の方が性に合っていますから

──────────────────────────────────────────────


P(もしかしたら、彼女は……。自分が持っていたかつての夢を、みんなに託しているのかもしれないな)

P(トップアイドルという夢を叶えた、その先を見たくて……)


──────────────────────────────────────────────

 ……プロデューサーさん。ちゃーんと私にも、見せてくださいね

 あの子達が、夢を叶えた姿。……そして、その先を

 それをこの目で見ることが、私の夢でもありますから……

──────────────────────────────────────────────


P(だからあの人は、いつだって優しく微笑みながら、みんなのことを見守っているのかも……)

 
P(……いや、余計な詮索はよそう)

P(それに、小鳥さんにどんな過去があったかなんて、関係ない)


P(俺が……いや、ちがう、俺だけじゃないな)

P(765プロのみんなが大好きな、音無小鳥さんは……間違いなく……)


──────────────────────────────────────────────

 いつだって……アイドルのみんなが、仲間がいてくれる

 私は……みんなが持つ、ひとりひとつの光を、何より愛しているから……

 だからきっと……これ以上の幸せは、ありません

──────────────────────────────────────────────


P(こう言って微笑ってくれた、いまの彼女なんだから)

音無って名前には悲壮感あるなって支援

 
──────
────
──

テクテク……

小鳥「……ふふっ、春香ちゃんったら……」

小鳥「私も、大好きよ、っと……」ピピッ

──パタンッ

小鳥「……よーし!」


小鳥(あれから、一晩が経ちました)

小鳥(今日は律子さんのお言葉に甘えて、いつもよりちょっと遅めの出勤です)

小鳥(……とは言っても、もちろんアイドルの皆よりは早く着く予定だから、決して遅刻ではありませんよ!)

 
テクテク……

律子「……あっ! 小鳥さーん!」

小鳥「あぁ、律子さん! おはようございますー」

律子「おはようございます。鍵、ちゃんと開けときましたからね」

小鳥「ふふっ、ありがとうございます。おかげで、のんびりできちゃいました」

律子「……それより! 聞きましたよ~、例の件っ!」

小鳥「……? なんのことですか?」

律子「何ってそりゃあ、プロデューサーとのことに決まってるじゃないですかっ」

小鳥「!!! そ、そう……プロデューサーさんから?」

律子「ええ、今朝直接ね。ふふふっ、おめでとうございます!」

小鳥「……あ、ありがとうございます……えへへ」ニヤニヤ

ぴよかわいい

 
律子「本人から聞いたかもしれないですけど……私は以前から知っていたんですよ、あの人の気持ち」

小鳥「そうだったんですか……」


小鳥(確かに、街中で告白されたときに、ちらっとそんなことを言っていたような気がする……)

小鳥(……頭がこんがらがって、あのときはあんまり聞いてなかったからなぁ……)


律子「まぁ、あの人はあの人で、仕事以外のことはてんで奥手だから……」

律子「こうなるのはもっと先になるかと思ってたんですけどね。でも、結果良ければなんとやらです!」

小鳥「……律子さん……」

律子「──っとと……すみません小鳥さん、引き止めておいてなんだけど、私そろそろ行かないと」

小鳥「これから、営業ですか? それにしては随分早いような気もするけど」

律子「いえ、今日は竜宮の撮影の付き添いだから……ただ、あずささんを迎えに行くんです」

小鳥「あぁ、なるほど……」

律子「今度、ゆっくり話を聞かせてくださいね! それではっ!」

小鳥「……ええ、行ってらっしゃい!」

律子「はいっ、行ってきます!」

 
小鳥(……行ってきます、行ってらっしゃい、か)

小鳥(私もいつか、プロデューサーさんと、そんなやりとりをするようになるのかな)

小鳥(……もちろんそれは、仕事以外で……そ、その、つまり……)


小鳥「えへへへへ……!」

小鳥「……はっ! いけないいけない……」


小鳥(あんまり調子に乗っちゃだめだぞっ、小鳥! 公私混同してはいけないわ!)

小鳥(これからお仕事なんだから……)


小鳥「事務所での私は、プロデューサーさんのコレ(小指を立てながら)じゃなくて……」

小鳥「みんなの頼れるお姉さん……765プロ唯一の、スーパー事務員さんなのよ……うん!」

小鳥「…………」

小鳥「……えへへへへ……♪」モンモン

 
【765プロ事務所】

ガチャッ

小鳥「おはようございまーす!」

P「お、来ましたね! おはようございます、小鳥さん!」

小鳥「ふふっ、プロデューサーさ……ん……」

小鳥「……ぉ、お元気そうでなによりでございますぅ……」

P「あ、あの……どうかしましたか? 急にちっちゃくなっちゃって」

小鳥「なな、なんでもないでございますよ! あは、あはは……」


小鳥(公私混同しちゃいけない、とはわかっているのに!)

小鳥(……どうしても、昨日のことを思い出しちゃって……プロデューサーさんの顔、直接見れません……)

小鳥(うぅ……思春期の女の子じゃあるまいし、二重の意味で恥ずかしいわ……!)

 
小鳥「……」モジモジ

P「……ああ、なるほど」

小鳥「え?」

P「大丈夫ですよ、小鳥さん。何も恥ずかしがることはありません。堂々としていればいいんですから!」

小鳥「……プロデューサーさん……」


小鳥(……やっぱり、不思議ですね)

小鳥(あなたにそんな風に言われると、本当に私……)


小鳥「……ふふっ、ありがとうございます。そうですね、こんな私、私らしくないですよね!」

P「いや、まぁ、小鳥さんっぽいとは思いますけどね」

小鳥「ええっ!? ど、どういう意味ですか!?」

まるでお花畑状態

 
小鳥「もう……」

P「あははは……」

小鳥「……ところでプロデューサーさん、何かあったんですか?」

P「何か、って?」

小鳥「昨日までとは、また少し、顔つきが変わっているような気がするんですけど……」

P「うっ……随分、察しが良いんですね」

小鳥「そりゃあ、あなたのことですから……」

P「……大したことじゃありませんよ。本当に、当たり前のことを再確認したです」

小鳥「……なんだか、そう言われると、余計に気になっちゃうかも……」

P「あはは! つまり、俺はやっぱり、いまのあなたのことが大好きだってことですよ!」

小鳥「うぇっ!? え、えぇ……!? い、意味がわかりません~~!」


小鳥(大好きだって……な、なんなのよ、急に……)

小鳥(そういう風に私に言えば、なんでも誤魔化せると思っているんじゃないかしら?)

小鳥(……まぁ、それは確かに……大体合ってるかもしれないけど……でへへ)

小鳥(っと、いけないいけない……お姉さんっぽく、お姉さんっぽく」

P「いまさらそんなの、意識しなくてもいいと思いますけど……」

小鳥「えっ!? ああっ、わ、私ったら今、声に出してました!?」

P「ええ、ばっちりです!」

小鳥「うぅ……カッコ悪ぅぅ……!」

P「……俺は、無理に飾ろうとしない、そのままの小鳥さんが一番魅力的だって思いますよ」

小鳥「………………」

P「それに、他のみんなだって、きっとそう思っていますし」

小鳥「……じゃ、じゃあ……妄想してもいいの……?」

P「まぁ、ほどほどになら」

小鳥「ほどほどかぁ……」

P「……さあ、もうすぐアイドルのみんながやってくる時間だ。今日も頑張っていきましょう!」

小鳥「……ふふっ、はーい!」


小鳥(……でも確かに、そうかもしれませんね)

小鳥(ありのままの自分でいられるから、私はこの場所のことを、こんなにも好きになれたんですから……)

 
小鳥「……でもプロデューサーさん、今日だけではありませんよ」

P「え?」

小鳥「みんなの夢が、ひとつ残らず花咲くその日まで。私たちはずっと……でしょう?」

P「……そうですね!」



小鳥(──そう、私たちはこれからも……)

小鳥(春は花をいっぱい咲かせて、夏は光いっぱい輝いて……)

小鳥(そんな風に、一日ずつ、一歩ずつ……笑いあいながら、泣きあいながら)

小鳥(今ここにある幸せを、精一杯にかみ締めながら)


小鳥(これからもずっと……変わらずに、ありのままに、過ごしていくんです)

 
──ガチャッ

「「「おはようございまーっす!」」」


P「お、きたきた……みんな、おはよう!」

小鳥「……ふふっ」

P「……すみません、小鳥さん。気になるかもしれないですけど、さっきの話の続きはまたあとで……」

小鳥「はい、わかっています。だって私たちには、大切なお仕事がありますからね!」




小鳥(……それはきっと、私たちにしか出来ないこと)

小鳥(この場所に生まれた小さな夢を、眩しく映る広いあの空に向けて、まっすぐに伸ばしてあげること)

小鳥(たとえるなら、それは……)


小鳥(それはまるで、花が咲くように)

 
小鳥「さぁ、プロデューサーさんっ!」

小鳥「私とあなたのお話はとりあえずここまで。これからはまた、いつものように……」



小鳥「アイドルの時間の、始まりですよ!」

P「はいっ!」

おわり

乙!
素晴らしかった!

乙なの!

名作がうまれたな、素晴らしい

おつおつ。よかったで!

おわりです。読んでくれた方、支援してくれた方ありがとう
無駄に長くなってしまい真に申し訳ござピヨちゃんかわいい!!

ぴよかわ

おつ!

おつ

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