森夏「冨樫くんの背中、あったかいね……」(83)

ーー2限、体育館


森夏「もうっ、誰も後片付けしないんだから」

森夏「使ったものくらい、ちゃんと片付けなさいよね……」


一色「勇太、早く飯食い行こうぜ」

冨樫「あ、あぁ」

冨樫「……」チラッ


森夏「……」ヨッコラセ


冨樫「……」

一色「どうした?」

一色「……おっ、さすが丹生谷。率先して後片付けとは」

冨樫「……」スタスタ

一色「おい、勇太?」

森夏「大体、なんで自由時間なんて設けるのよ」

森夏「あの先生やる気なさすぎ」

森夏「あぁ、もう……あんなところにもボールが……」

冨樫「……」ヒョイ

冨樫「手伝うよ」

森夏「……」

森夏「当たり前よっ、元はと言えばあんた達男子の後始末なんだから」

一色「仕方ねーな、俺も手伝ってやるか」

ーー体育館倉庫

冨樫「さぶっ……」ブルブル

森夏「冬場の倉庫は極寒ね……早く出ましょ」

ガチャンガチャン

森夏「あれ……」

冨樫「どうした、丹生谷」

森夏「扉が開かなくて……」

冨樫「まさかぁ」スッ

ガチャンガチャン

冨樫「……」

一色「やっぱ、倉庫っつったらこれだよなぁ」

冨樫「……お前の仕業か」

森夏「さっさと開けなさいよ……寒いんだから」ブルブル

一色「はいはい、すぐに開けますよっと」

くみん「…………」
()

一色「ーーハッ!?」

勇太「一色……?」

一色「くみん先輩がいるっ」

森夏「は?」

一色「くみんせんぷあぁぁあい‼」

ダダダダ……

勇太「えっ?」

森夏「……」ポカーン

勇太「おいっ、一色! 一色!?」

ガンガン

勇太「あの糞坊主っ‼」

ガンガン

森夏「……なに、閉じ込められたってこと?」

勇太「……ハイ」

森夏「…………」

勇太「ま、まぁ一色もすぐに戻ってくるだろ」

森夏「……本気でそう思ってる?」

勇太「いいえ」

勇太「……」ブルブル

森夏「……」ブルブル

勇太「誰も、こないな」

森夏「今は昼休みだし、みんなお昼ご飯に夢中よ」

勇太「ですよねー……」

勇太「昼休みが終われば、次の授業で体育のあるクラスがやってくるだろうし、それまでの我慢だな……」

森夏「……」

森夏「どれくらい時間が経ったか分からないっていうのは、中々辛いわね……」

勇太「……ごめん」

森夏「なによ、唐突に」

森夏「寒さで頭がおかしくなった?」

勇太「俺が手伝うなんて言い出さなければ、こんな事にもならなかったなー」

勇太「……って、思って」

森夏「悪いのはあの坊主でしょ」

森夏「冨樫くんが謝る必要なんかないじゃない」

勇太「まぁ、そうかもしんないけどさ……」

森夏「手伝ってくれた事には感謝してる」

森夏「嬉しかったんだから」

勇太「……今、なんと?」

森夏「…………今のは忘れなさい」チョップ

勇太「あだっ」

勇太「いきなりなにすんだ」

森夏「記憶を消す呪いよ」フン

勇太「随分と荒っぽい呪いですこと……」

勇太(寒さにも大分慣れてきたな……)

勇太「……」チラッ

森夏「……」ブルブル

勇太「……」

勇太「……」ヌギヌギ

森夏「!? ちょっと、なにいきなり脱ぎ出してるのよ!」

森夏「変態、エッチ、痴漢!」

勇太「……ほれ」

森夏「うわっぷ……」バサァッ

森夏「……ジャージ?」

勇太「あー、その……」

勇太「ほ、ほら。ないよりはマシだろっ///」プイッ

森夏「……」

一色「あっるぇ、確かにくみん先輩だと思ったんだけどなぁ……見間違えたか」

一色「……」

一色「なんか忘れてる気がする」

一色「……」

一色「まぁいいや。くみん先輩より大事なもんもないか」

森夏「……」ポイッ

勇太「折角の人の好意をポイ捨てかよ」

勇太(ヤバイ、結構ショックでかい)

森夏「風邪ひいたらどうすんのよ」

勇太「……ほら、俺ってDFMだから」

勇太「闇の炎とともにある我にとって、寒さなど恐るるに足りん」

森夏「……うわ、余計にさむっ」ブルブル

勇太「とにかく、寒さなんてヘッチャラなんだよっ///」ポイッ

森夏「……」バサッ

森夏「全く、こういう時だけ優しいんだから……」ボソッ

勇太「?」

森夏「でも、これはいらない」ポイッ

勇太「寒そうにしてるじゃんか。遠慮せずにーー」

森夏「ーーねぇ、富樫くん、知ってる?」

森夏「背中を温めると体中があたたかくなるんだって」

勇太「……俺は膝裏とか聞いた記憶があるけど」

森夏「いいのっ、今は背中なのっ」

勇太「……? まぁ、いいけど」

勇太「それがどうかしたのか」

森夏「……このままじゃ、お互いに風邪ひいちゃうかもしれないし」

森夏「これは緊急措置だと思うの」

勇太「……話が見えてこないんだけど」

森夏「……察しなさいよ」

勇太「そんな事言われても……」

勇太「背中を温めると体中があったかくなる……」

森夏「……」

勇太「あっ、そうだ」

勇太「背中をくっつけあおうーーなーんて……」

森夏「……」

勇太「……否定の言葉を受付中、です、よ?」

森夏「……」

森夏「私とは、嫌?」

寝る

勇太「……イヤじゃ、ないけどさ」

森夏「これは緊急措置なの。仕方ない事なのよ」

勇太「……そうか。なら、仕方ない、よな……?」

森夏「そうそう、仕方ないのよ。イヤだけど、死んでもゴメンだけど、仕方ない」

勇太「俺も死ぬほどイヤだけど、仕方ない。仕方ないんだな」

勇太「よっしゃあ、こい!」

森夏「おーけー!」





勇太「……」

森夏「……」

勇太(どうしてこうなった!!)

勇太(あぁでも、丹生谷の背中、やわらk――じゃなくて、温かい……)

森夏「富樫くんの背中、あったかいね」

勇太「お、おおう。なにせDFMの背中だからな」

勇太「煮えたぎるほどに熱いだろう」プルプル

森夏「……うん。熱いね」

勇太「……」

勇太(なんだ、この潮らしい丹生谷。こんなの丹生谷じゃない)

勇太「……時間、どんくらい経ったんだろうな」

森夏「さぁ……」

勇太「このまま、でられないかもしれないな」

森夏「……」

勇太「丹生谷?」

森夏「……ううん、なんでもないわ」

森夏(これはあれかしらね、俗に言う吊橋効果)

森夏(そう。そうに違うない)

森夏(この気持ちは、この状況によって生み出された幻想なのよ)

森夏「……」チラッ

勇太「うー、体は多少マシになったけど、手先はまだ寒い……」

森夏「……顔が熱い」

勇太「顔が? もしかして、熱でも……」クルッ

勇太「ちょっと顔みせてみろ」

森夏「!」

森夏「大丈夫よ、大丈夫、問題ないからあっち向いて!」バシンッ

勇太「ぶほぉ!!」

森夏「……あっ」

森夏「ごめんねー、つい」

勇太「ったく……」ヒリヒリ

勇太「……んん?」ヒョイ

勇太「……写真。写ってるのは……」

森夏「? どうしたの?」

勇太「いや、これが落ちてて……」

森夏「……」

勇太「くみん先輩だよな、映ってるの」

森夏「そうね。でも、なんで倉庫に……」

勇太「……あとで、くみん先輩に届けるか」

森夏「そうしましょう」

勇太「……じゃあ、元のポジションに、戻りますか」

森夏「え、えぇ。風邪を予防するためだもの」

スッ……

勇太「……」

森夏「……」

勇太「なぁ、丹生谷」

森夏「?」

勇太「……お前って、付き合ってる人とかいるの」

森夏(!?)ビクゥ

森夏「なによ、突然」

勇太「いや、俺にも分からん……」

森夏「意味わかんない」

勇太「やっぱ、今の質問は忘れてくれ」

森夏「……そう」

勇太「……」

森夏「富樫くんは、どうなの」

勇太「え?」

森夏「付き合ってる人とか、いるの?」

勇太「いる訳ないだろ」

森夏「そっか。そりゃあそうよね。中二病だものね」

勇太「『元』中二病だっ」

勇太「お前だって中二病だった癖に」

森夏「過去は振り返らないと決めているのよ」

勇太「……たまに発症してるだろうが、モリサマーめ」

森夏「モリサマー言うな!」

一色「ないっ、ないっ、ないん!!」ハァッ!

一色「ポケットに忍ばせていた俺のお守りがないっ!!」

一色(やべぇ。やべぇよ。もしあれが何かの間違いでくみん先輩の手に渡ったら……)

くみん『もう、隠し撮りなんかしなくても、幾らでも撮らせて上げるよぉ?』

一色「ふぉおおおおおおおおおおおおお」

一色(……いや、流石にないな)

一色(仕方ねー。心当たりのある場所を片っ端から探してみるかぁ)

タッタッタッ……

勇太「そろそろ、昼休みも終わる頃かな」

森夏「やっと出られる……」

森夏(この時間も、もうすぐ終わるのか……)

勇太「案外、苦痛じゃなかったなぁ」

森夏「……そうなの?」

勇太「最初は早く出たいって思ってたけどな」

勇太「俺、丹生谷と話しているのが割と楽しいみたいだ」

森夏「……なによ、それ」フン

勇太「こりゃ、一色に感謝すべきかな」

森夏「はぁ?」

勇太「おかげで、丹生谷と少し仲良くなれた気がするから」

森夏「言ってて恥ずかしくないの、それ」

勇太「すげー恥ずかしい」

勇太「けど、言う」

森夏「……言うんだ」

勇太「顔から火が出そうだけど、言わずにはいられない」

森夏「……」ゴクリ

勇太「俺、もっと丹生谷と――」


ガララ……

一色「……」

勇太「……」

森夏「……」

ヒラッ……

一色「あ、くみん先輩の写真!」

勇太「……」ヒョイ

一色「……」

勇太「……」ビリィ

一色「あぁあああああああ!! 俺のくみん先輩がぁああああ!?」

勇太「先輩がぁあじゃねぇ! てめ、この、この……!!」ゲシゲシ

一色「痛い痛い、やめてください勇太さまっ! あぁっ、あっー!!」

勇太「ふぅ……久々の外の空気だ」

森夏「……」

森夏(あのまま坊主の邪魔が入らなかったら)

森夏「……」チラッ

勇太「この件はくみん先輩に報告するからな」

一色「堪忍やで」テヘペロ

一色「やめろ、倉庫からバットなんか持ってきて何をするつもりだっ」

一色「……へへっ、殴ってみやがれ。そんなことしたら先生にいいつけて――」

勇太「……」ダッ

一色「ごめんなさいいいいいい」ダッ

森夏(富樫君に、何を言われてたんだろう)

森夏「……」

森夏「あれ、富樫くんは?」キョロキョロ

勇太「くっそ、巻かれた! 逃げ足の速い奴め……」

勇太「……」

勇太(もし、一色がこなかったら)

勇太(俺は、何を言うつもりだったんだろう)

勇太「……」

――放課後、部室


ガチャリ……

森夏「あっ」

勇太「あっ」

勇太「……よう、さっきぶり」

森夏「……さっきぶり」

勇太「他の部員は?」

森夏「さぁ……」

勇太「……なぁ、丹生谷」

森夏「な、なによ」

勇太「今日、一緒に帰らないか……いや、帰ってくださいませんか」

森夏「……」スッ

森夏「……えいっ」チョップ

勇太「いでっ」

勇太「なんだよ……また記憶を消す呪いか?」

森夏「いいえ」

森夏「契りの儀式っ」ニコッ

__
    ̄ ̄ ̄二二ニ=-
'''''""" ̄ ̄
           -=ニニニニ=-


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                       _  ,(^ω^ ) ,-''";  ;,
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                   _,,-','", ;: ' ; :, ': ,:    :'  ┼ヽ  -|r‐、. レ |
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