千早「また赤点を取ってしまったわ……」(145)

千早「まずい……このままでは……」

千早「確実に留年してしまう……」

千早「どうしよう……」

千早「はぁ……」

春香「おはよう、千早ちゃん!」

千早「春香……」

春香「ど、どうしたの? 虚【ホロウ】みたいな顔して……」

千早「(虚【ホロウ】て)……いや、ちょっとね……」

春香「……何かあったの? 千早ちゃん」

千早「……いや、大丈夫よ。これは、私個人の問題だから……」

春香「…………」

千早「? 春香?」

春香「千早ちゃん……。私、前に言ったよね?」

千早「……えっ?」

春香「……何があっても、千早ちゃんの事……ほっとかない、って」

千早「! ……春香……」

春香「悩んでる千早ちゃんをそのままにしておくことだけは、私……したくないんだ」

千早「……春香……」

春香「だから……話してくれないかな?」

千早「……ありがとう……春香」

春香「あ、ありがとうなんて、そんな……と、友達として、当然の事だよっ!」

千早「……ふふっ、そうね……友達、だものね……」

春香「うん、そうだよ! 友達だもん!」

千早「……ええ、わかったわ。じゃあ……話すわね」

春香「うん」

千早「実は――……」

千早「――……と、いうわけなのよ……」

春香「な……なるほど……」

千早「……びっくり……した?」

春香「え? いや、ま、まあ……多少は……」

千早「……よね……」

春香「…………」

春香(ま、まさか千早ちゃんがそんなに赤点取りまくってたなんて……)

春香(話を聞いたはいいけど、これって私がどうこうできる問題じゃ……)

春香(……あれ? でも確か千早ちゃんって……)

春香「ね、ねえ? 千早ちゃん?」

千早「……何かしら」

春香「その……千早ちゃんって、元々結構成績良くなかったっけ? ほら、いつだったか私、テスト前に勉強教えてもらったことあったよね?」

千早「……ええ」

春香「あれからまだ、そんなに経ってないと思うんだけど……」

千早「…………」

春香「……何で急に、その、そんな……」

千早「…………」

春香「…………」

千早「……私の……」

春香「えっ?」

千早「……私の家の事は……春香も、知ってるわよね」

春香「え? あ、ああ……うん、まあ……」

千早「私、早く家を出て……一人暮らしがしたかったの」

春香「…………」

千早「だから、高校受験の時……あえて、県外の高校を受験したの」

春香「…………」

千早「親を納得させるために、いわゆる名門校をね」

春香「…………」

千早「中学の頃はまだアイドル活動もしていなかったし、勉強も元々不得意ではなかったから……必死になって勉強したら、無事に合格できたの」

春香「……そうだったんだ」

千早「でも入学してからは、想像以上に勉強が大変で……授業についていくのがやっとだったわ」

春香「名門校だもんね……」

千早「それでも高1の頃は、なんとか全体でも上位の成績をキープできていたの。高1の夏に765プロに入ったけど、まだ最初のうちは仕事も全然無かったし」

春香「あはは、そうだったね……」

千早「…………」

春香「…………」

千早「……でも」

春香「…………」

千早「……二年に進級したころから、アイドルの仕事が少しずつ増えてきて……同時に、勉強の方も一気に難しくなってきて」

春香「…………」

千早「私の成績は、徐々に下降していったわ」

春香「…………」

千早「それでもなんとか勉強とアイドル業を両立しようと頑張って……全体で中の下くらいにはとどまっていたわ」

春香「そうだったんだ……」

千早「春香と一緒にテスト勉強したのは、ちょうどこの頃ね」

春香「えっ……。じゃ、じゃあ千早ちゃん、あの時点で既に中の下くらいだったってこと? 私より全然出来てたのに……」

千早「まあ……そうね」

春香「…………」

春香(次元が違うとはこのことか……)

千早「……でも、その少し後にあった、初の765プロオールスターライブ」

春香「…………」

千早「……もう今更言うまでもないことだけれど……あのライブを機に……私達を取り巻く環境は、一変したわよね」

春香「……うん……」

千早「……それと同時に、私の成績も……一変したわ」

春香「…………」

千早「まあ元々既に、一年の時よりは下がっていたのだけれど……ライブ以降、もうほとんど勉強する時間が無くなってしまって……」

春香「…………」

千早「それに、仕事で学校自体を休むことも多くなってしまったから……あれよあれよという間に、成績は一気に落ちていき……」

春香「…………」

千早「気が付けば……私は地の獄……っ! どこかわからぬ……地中の底の底……っ! 落ちこぼれが巣喰う、留年候補組の中にいたっ……!」

春香「…………。(なんで千早ちゃんちょっと楽しそうなんだろう)」

千早「……とまあ、そういう状況なわけで……次のテストでも今回と同じような成績だったら、私はほぼ確実に留年するわ」

春香「りゅ、留年か……それは流石にちょっと……いや、かなり重いね……」

千早「でしょう? それで、どうしたものかと……」

春香「うーん……まあでも、こればっかりは地道に頑張って、なんとかするしかないよねぇ……」

千早「……まあ、そうよね……」

春香「私にできることがあれば、なんとかしてあげたいけど……多分、今でも学力的には千早ちゃんの方が上だと思うし……」

千早「……そう……」

春香「……うん……」

千早「…………」

春香「…………」

千早「……ちなみに、春香はどうなの? 成績の方は……特に、ライブ以降」

春香「私? 私はまあ……元々真ん中くらいだったのが、ちょっと下がったかな……」

千早「そう……ちょっとで済んでるのね……」

春香「いや、私の高校は特に進学校ってわけでもない、普通の公立高校だからさ」

千早「そう……」

春香「うん……」

千早「…………」

春香「…………」

千早「ま……まあでも、春香の言う通りよね! 地道に頑張るしかないわよね!」

春香「そ……そうだよ千早ちゃん! まだ次のテストまでは大分時間あるんだし、今からでも十分巻き返せるよ!」

千早「ふふっ。そうね……そうよね。……やっぱり、春香に話して良かったわ」

春香「い……いやいや、私なんて、何も……」

千早「ううん。こうやって話を聞いてもらえただけでも、すごく気持ちが楽になったもの」

春香「そ、そう? それなら……よかったかな。えへへ……」

千早「ええ。ありがとう……春香」

春香「な、なんか照れくさいな……ははっ」

千早「よし、じゃあ今日も一日、頑張りましょう!」

春香「そうだね! アイドルも、勉強も!」

千早「ええ!」

春香「一緒に頑張ろうね、千早ちゃん!」

千早「頑張りましょう、春香!」

春香「ふふふっ……」

千早「あははっ……」



―――二ヶ月後――。


千早「……………」

千早「テストまで、後一週間……」

千早「何も……やってないわ……」

千早「ど、どうしよう……」

千早「お、おかしいわ……こんなはずでは……」

千早「そうよ。確か前のテストの後、春香に成績の事を話して……」

千早「アイドルも勉強も一緒に頑張ろう! って二人で励まし合って……」

千早「その後、すぐに遅れていた分を取り返すべく」

千早「一日三時間は机に向かうようにした……はずだったんだけど……」

千早「…………」

千早「……最後に机に向かったのがいつだったか、既に思い出せないわ……」

千早「……確か、最初の三日くらいはちゃんとやってたのよね。でもやっぱり仕事がしんどくて……」

千早「その次の日が一時間くらいしかできなくて、その次の日に四時間分やろうとして……」

千早「でも結局、三十分くらいで力尽きちゃって……」

千早「その後は……」

千早「……あ、ちょうどこの頃に海外レコーディングが入ったんだわ」

千早「で、もう勉強どころじゃない! テストまではまだ一ヶ月以上あるんだからなんとかなる! って思って……」

千早「二週間くらい海外レコーディングに専念して……」

千早「帰国した後も、なんとなくやらなきゃいけないことは分かっていたんだけど……」

千早「『明日から』『明日から』って思ってるうちに……」

千早「もうテストまで後一週間になってしまった……」

千早「……どうしよう……」

千早「はっ!」

千早「そ、そうだわ……こんなときこそ……」

千早「春香に……」ポパピプペ

千早「…………」

春香『――もしもし、千早ちゃん?』

千早「! 春香!」

春香『どうしたの?』

千早「あ、えっとね……その……テストの事なんだけど……」

春香『テスト?』

千早「ほ、ほら、二ヶ月くらい前に、話したでしょ? 私の、その、成績の事……」

春香『……あ、あ~』

千早「…………」

春香『…………』

千早「…………」

春香『……千早ちゃん』

千早「……ええ」

春香『……やばいんだね?』

千早「……はい」

春香『…………』

千早「…………」

春香『……千早ちゃん』

千早「は、はい」

春香『テストまで、後どれくらいなの?』

千早「ちょうど、一週間」

春香『……勉強の進み具合は』

千早「…………」

春香『…………』

千早「……えっ、と」

春香『千早ちゃん』

千早「! はい」

春香『明日から、千早ちゃん家でテストの対策会議しよう』

千早「えっ! で、でも仕事が……」

春香『もちろん、仕事はちゃんとやる。その上で、残りの時間を可能な限り試験対策に充てるの』

千早「春香……」

春香『もちろん、私達だけじゃ限界があるから、事務所の皆にも協力してもらってね』

千早「えっ! わ、悪いわそんなの。春香だけでも、すごく迷惑かけてしまうのに……」

春香『千早ちゃん』

千早「は、はい」

春香『そういうのは、もういいから』

千早「えっ……」

春香『友達が困っていたら、助ける』

千早「…………」

春香『ね? 簡単でしょ?』

千早「うん……ありがとう。……春香」

~翌日・千早の家~

春香「と、いうわけで! 今日から一週間、千早ちゃんを留年の危機から救うべく、765プロ一致団結での千早ちゃんの試験対策会議を始めます!」

美希「わーわーなの!」

やよい「皆でがんばりましょー!」

千早「ごめんね。皆……私のために」

伊織「いや、それはいいんだけどさあ……」

春香「? 何? 伊織?」

伊織「いや……今集まってるのって、春香以外、全員中学生じゃないの」

やよい「あー、ホントですねー!」

春香「…………」

伊織「高校の勉強なんて、私達じゃどうすることもできないわよ?」

千早「…………。(た、確かに……)」

春香「……そ、それでも!」

千早「! 春香……」

春香「765プロは……一つだから!」

千早「春香……!」

春香「今日はお仕事で来れない他の皆の為にも……今ここにいる私達全員で、力を合わせて頑張ろう!」

美希「ひゅーひゅーなの!」

やよい「春香さんかっこいいですー!」

千早「あ、ありがとう……春香……ぐすっ」

伊織「……ま、まあ、それでいいならいいけど……」

春香「よし! じゃあ今日は、中学生組にも力を借りれそうな教科にしよう!」

伊織「そんなのあるの?」

春香「そうだね……じゃあ現国なんかどう? これならむしろ、中学生組の柔軟な思考力が役に立つかも!」

千早「あ、ごめん春香……。私、現国は別に危なくないのよ」

春香「え? そうなの? 流石千早ちゃん! やっぱ頭良いんだね!」

千早「え、いや、そういうわけではないけれど……」

春香「またまた~。謙遜しちゃって~」

千早「だ、だから別にそんなこと……」

伊織「……おっほん」

千早「…………」

春香「……ご、ごめんちゃい」

春香「え、えっと……じゃあ具体的に、どの科目が危ないの? 千早ちゃん」

伊織「あんた……そんなことも聞かずに勉強始めようとしてたわけ?」

春香「あ、まあ、その……えへへ」

伊織「……あっきれた。……じゃあせめて、大まかな段取りくらいは私がしたげるわ。勉強の内容は分かんないけど」

春香「あ、ありがとう……伊織」

千早「ごめんね、水瀬さん」

伊織「……だ、だからそういうのはいちいち言わなくていいの! ……その、な、仲間……なんだから」

千早「水瀬さん……」

美希「あ~っ! デコちゃんってば、おデコが真っ赤になってるの!」

伊織「で、デコちゃん言うな! それに赤くなんかなってないし!」

やよい「あはは、伊織ちゃんかわいいですー!」

伊織「や、やよいまで……もうっ!」

春香「えっ、と……」

伊織「はっ」

美希「…………」ニマニマ

伊織「……お、おっほん。……で、千早は、どの教科が危ないっていうの?」

千早「え、ええ。まあぶっちゃけ、現国以外は全部やばいんだけど……」

伊織「うぇえ!? ま、マジで?」

千早「あ、でも本当に留年の危機に直結しそうなのは……数学、物理、化学ね」

伊織「…………」

美希「…………」

春香「…………」

やよい「……ぶ、ぶつり?」

春香「えっと……ち、千早ちゃんって理系だったの……?」

千早「いや、文系だけど……二年までは、理科二科目が必須なのよ……」

春香「でも、なんだって物理と化学……」

千早「一年の時は、結構理系科目も得意だったから……」

春香「そうなんだ……ちなみに私、両方ともやってないよ……」

千早「えっ……でも普通、文系でも一科目はやるんじゃ……?」

春香「生物選択なんだ……」

千早「…………」

美希「同じ学年の春香がやってない教科なら、もうお手上げなの」

やよい「な、なんかよくわかんないですー。同じ理科なのに、そんなにいっぱいあるんですかー?」

伊織「やよいは心配しなくても大丈夫よ。高校に行っても、私がちょくちょく勉強見てあげるから」

やよい「ホント!? わーい! ありがとう伊織ちゃん!」

伊織「い、いいのよ別に……や、やよいは、その、し、親友だから……」

美希「あふぅ……美希の出る幕無さそうだし、なんか眠くなってきたの……」

春香「ご、ごめんね千早ちゃん、私……」

千早「い、いいのよ春香。元々私がなんとかしなくちゃいけない問題なんだし……」

春香「あ、でも!」

千早「?」

春香「数学……数学なら、私でもなんとか協力できるかも!」

千早「そ、そうね! じゃあまずは数学から……」

春香「……えっと……これって……数学C……?」

千早「……ええ……」

春香「……これ、文系の受験で要るんだっけ……?」

千早「要らないと思うけど……うちの学校では、Cの途中くらいまでやるみたいなのよ……」

春香「……文系なのに?」

千早「……文系なのに」

春香「……私の高校、まだ数ⅡB入ったくらいなんだけど……」

千早「……うちでは、なんか知らないうちに、ⅡBは終わってたみたいだわ……」

春香「…………」

千早「…………」

美希「……ぉが!?」

伊織「あ、美希。起きたの?」

美希「デコちゃん……? なんで、ミキの部屋にいるの……? あふぅ」

伊織「……もう、寝ぼけてんじゃないわよ」

やよい「ここは千早さんのおうちですよー、美希さん」

美希「千早さんの……? ……ああ、そういえばそうだったの」

伊織「ったく、あんた一体何しに来たのよ」

美希「そう言われても、ミキ何もできることないの」

伊織「まあ、それはそうだけど」

美希「で、結局千早さんの勉強はどうなったの?」

伊織「…………」クイッ

美希「?」

千早「…………」カリカリカリカリ

春香「…………」ジーッ

美希「? 春香が……勉強する千早さんを見てるの」

やよい「えっとですねー、結局誰も教えられないので、皆が交代で、千早さんが勉強する様子を見守ることにしたんですー!」

伊織「やよい。見守るんじゃなくて、監視よ、監視。途中で寝ちゃったりしないようにね」

やよい「あ、そうでしたー!」

美希「……それって、意味あるの?」

伊織「ま、何も無いよりはマシでしょ。あんただって、一人でやる自主トレと、律子に監視されながらやるレッスン、どっちが集中できる?」

美希「……大変よくわかりましたなの」

伊織「まあ、元々勉強なんてのは本人次第だからね。周りがとやかく言うより、自分の頭で考えて取り組むのが一番よ」

やよい「伊織ちゃんすごいですー!」

伊織「べ、別にそんな、た、たいしたことじゃ……ないわよ」

美希「じゃあミキは自分の番が来るまで寝るの。おやすみなの」

伊織「えっ、ちょっ、あんた」

美希「…………」スゥ…スゥ…

伊織「相変わらず神速で寝るわねこいつは……」

千早「…………」カリカリカリカリ

春香「…………」ジーッ

千早「んっ……」

春香「今日はもうこのへんにする? 千早ちゃん」

千早「いや……もうちょっと頑張るわ。どうせ明日はオフだし」

春香「……いや、やっぱり今日はもう寝た方がいいよ」

千早「え?」

春香「試験は朝からでしょ? 今、変に夜型のリズムをつけちゃわない方がいいと思う」

千早「……それもそうね。じゃあ、朝早く起きて続きをするわ」

春香「わかった。じゃあ私も同じ時間に起きるね」

千早「でも、春香は明日も仕事なんじゃ……」

春香「だーいじょうぶ大丈夫。私も睡眠は千早ちゃんと同じだけ取るからさ」

千早「春香……ごめむぐっ!?」

春香「……千早ちゃん。それは禁止。ね?」

千早「……うん」

春香「じゃあ、もう寝よっか。……他の皆は、とっくに夢の中だけど」

美希「…………」スゥ…スゥ…

伊織「…………」ムニャ…ムニャ…

やよい「…………」グゥ…グゥ…

春香「…………」

千早「…………」

春香「……ねぇ、千早ちゃん」

千早「……何? 春香」

春香「……もし、千早ちゃんが無事に試験を乗り切れて、留年の危機が回避できたら……」

千早「…………」

春香「そのときは……」

千早「…………」

春香「……そのときは、皆で、思いっきり盛大に……パーティーやろうね!」

千早「……ええ」

春香「約束だよ?」

千早「ええ、約束」

春香「ふふふっ」

千早「あははっ」

春香(あの日から一週間……千早ちゃんは本当に、血の滲むような努力をしました)

春香(アイドルとしての仕事に一切穴を開けることなく、それどころか、いつも以上のクオリティで仕事をこなしながら)

春香(夜、家に帰ってからと早朝に、時間の許す限り、ひたすら勉強し続けました)

春香(一旦集中し始めた千早ちゃんは物凄いから、もう別に私達の監視なんて必要ないんじゃないかなって気もしましたが)

春香(それでもやっぱり、一人孤独に勉強するよりは、仲間が傍にいた方がいいだろうと思って)

春香(千早ちゃんが勉強している間は、常に私達の誰かが傍にいるようにしました)

春香(……そうそう、私や中学生組は、基本的に見守ることしかできませんでしたが)

春香(雪歩は英語を、真は古典を、それぞれ手分けして教えてくれていました)

春香(このあたり、流石は上級生ですね)

春香(後、忙しい合間を縫って、律子さんとプロデューサーさんも、それぞれ一日ずつ、来てくれました)

春香(律子さんは、短時間で世界史の時系列や登場人物の関係図などを、色ペンを使ってきれいにまとめたものを作ってくれました)

春香(プロデューサーさんは、「あーっ、昔やったんだけどなー」とか言いながら、結局ほとんど忘れてしまっていたようで、戦力としては役に立ちませんでしたが……)

春香(……でも、栄養ドリンクや眠気覚ましのコーヒーなど、差し入れをたくさんたくさん持ってきてくれました)

春香(あ、あと、響ちゃんが化学を教えてくれました。あまりの意外性に皆がびっくりしたら、ちょっと涙目になってましたけど)

春香(貴音さんは……確か、プロデューサーさんが持ってきてくれた差し入れのドーナツを、「美味ですね」と言いながら頬張っていたような気がします)

P「千早の赤点は~~~このポッチかな?w」ツツン

千早「アンッ///」

春香(そんなこんなで、なんとか試験を全て受け終えた千早ちゃん)

春香(今日は、その成績表を受け取る日ということで……765プロ一同、緊張の面持ちで、千早ちゃんが事務所に来るのを待っています)


P「あ~っ、緊張するなあ……」

小鳥「もう。プロデューサーさんが緊張したって仕方ないじゃないですか。結果はもう出てるんですから」

P「いや、それはそうなんですけどね……」

小鳥「大丈夫ですよ。私も陰ながら祈ってましたし」

P「……すいませんでした、音無さん。俺と律子が事務所空けたせいで、事務量一気に増えてしまって……」

小鳥「そんな……気にしないで下さい。仕事さえなければ私だって、千早ちゃんの応援に駆け付けたかったんですから」

P「音無さん……」

あずさ「ああでも、やっぱり緊張するわねえ……」

律子「まあでもここまできたら、千早が笑顔で帰ってくるのを待つしかありませんよ」

美希「千早さんなら、ぜ~ったい、大丈夫なの!」

春香「…………」

カンカンカンカン……

やよい「! 階段を上がる音がします!」

亜美「おお!」

真美「緊張の一瞬ですなあ」

春香(千早ちゃん……!)

バタンッ

千早「……おはよう、ございます」

春香「!」

P「!」

伊織「!」

やよい「千早さん……」

響「千早……」

春香「千早ちゃん……」

千早「皆――……ありがとう」

小鳥「! ってことは……」

千早「……ええ。なんとか、留年は……免れたわ」

春香「! ……ちはやぢゃ……!」

千早「……これも、皆のおか……きゃあ!」

春香「ぢはやぢゃああああああああん!!」

千早「は、はる……か……うっ……うっ……うわああああああああん」

P「良かった……本当に……良かった……」

やよい「う……うぇええ~ん。よ、よかったです……!」

伊織「も、もうっ。皆大袈裟なのよっ……! 千早の実力をもってすれば、留年なんてするはずないんだからっ!」

美希「……デコちゃん、そう言いながら目が潤んでるの。……ぐすっ」

伊織「う、うるさいっ! そういうあんたこそ!」

美希「えへへ……ぐすっ」

雪歩「ふぇ~ん……よ、よかったですぅ……」

真「へへっ……ま、僕達が教えたんだから、トーゼンだけどねっ!」

貴音「まこと、素晴らしきことですね……わたくし、感動してしまいました」

響「もう、貴音は涙もろいんだからあ……えぐっ」

あずさ「本当に……良かったですね」

律子「……ええ。本当に……」

小鳥「信じてはいましたけど……ほっと、安心しました」

社長「うむ。実に素晴らしい!」

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3846637.jpg

亜美「いやー感動ですなあ!」

真美「うんうん。生きているって素晴らしいNE☆」

亜美「……でも、それにしたって、はるるんと千早お姉ちゃん……」

春香「うえっ、ちは、ちはやぢゃ……うぇえええええ」

千早「はる、は、はるがああああああああ……」

真美「……ま、もうしばらくそっとしといたほうが良さそうだね」

亜美「そ→だね♪」

春香「ううっ……良かった……良かったぁ……」

千早「あ、あり、ありが……とう……はるか……ぐずっ……」

>>103
スカイライダーの変身ポーズか!

>>108
チガウヨ枕ナゲタンダヨ

春香「……本当におめでとう、千早ちゃん!」

千早「……私の方こそ、本当にありがとう……春香……」

春香「……ううん。私は、何もしてないよ……」

千早「……そんなことないわ。そもそも、春香が最初に私の話を聞いてくれなかったら、私、自分の成績の事なんて……多分、誰にも相談しなかったと思うし……」

春香「千早ちゃん……」

千早「春香が……私の話を聞いてくれて、それで、『アイドルも勉強も一緒に頑張ろう』って言ってくれたから……」

春香「…………ん?」

千早「……ただ、意志の弱かった私は、春香がそう励ましてくれてからも、またすぐに勉強から逃げてしまった……」

春香「…………」

千早「……それで結局、試験の直前になって、また春香に泣きついて……」

春香「…………」

>>111
そうか、枕か、それはすまなかった
お詫びにアイスをやろう、え?いらない?
つべこべ言うなよ!大好きなアイスだろ?食えよ!
どんどんどんどん食えよ !でもってお腹壊しちまえよ!!

千早「……でも春香は何も言わず、すぐに皆に連絡してくれて……その翌日から、私の家で試験対策会議を開いてくれて」

春香「…………」

千早「本当に感謝してるわ。春香……」

春香「…………」

千早「……春香?」

春香「…………」

千早「……どうか……したの?」

春香「……千早ちゃん」

千早「?」

春香「……とっても言いにくいことなんだけど」

千早「えっ」

春香「……私の学校のテスト、明日からだった……」

千早「……えっ……」

春香「…………」

千早「……で、でも春香は、ちゃんと勉強してるんでしょう? 私の試験期間中も、ほとんど毎日、私の勉強に付き合ってくれてたんだし……」

春香「……いや、まあ……言い訳をさせてもらいますと」

千早「…………」

春香「千早ちゃんから電話を受けた時点では、まだ日程的にも余裕があったので」

千早「…………」

春香「とりあえず後でなんとかしよう! と思って、自分のテストのことは頭から忘却していたのですが」

千早「…………」

春香「千早ちゃんの試験が終わってからも、その結果が気になって気になって」

千早「…………」

春香「つまりその、今の今に至るまで、完全に……」

千早「……忘れていたの?」

春香「……はい」

千早「…………」

春香「…………」

千早「…………」

春香「……えーっと……」

千早「……プロデューサー」

P「……ああ、分かってる。緊急事態だ。今日のレッスンは二人とも休みにしておく」

春香「……って、ことは……」

千早「……行くわよ、春香。……私の家に」

春香「……うん!」

千早「皆、本当にどうもありがとう! 今からもう一仕事、やっつけてきますから!」

春香「い、一夜漬けですよ! 一夜漬け! わっほい!」

千早「早く行くわよ春香! もう時間がないんだから!」グイッ

春香「わっほ……うぐっ! で、では皆様お元気でー!」ダダダダダダ

美希「……な、何なのなの……」

伊織「……なんというか……呆れてものも言えないわね……」

やよい「……まあ、でも」

美希「?」

やよい「自分の事そっちのけで、ずっと千早さんの心配してたなんて……すっごく、春香さんらしいかなーって!」

伊織「……まあ、ね」

美希「なの!」

千早「春香。とりあえず、明日の教科は何?」

春香「えっと……ちょっと待ってね。今クラスの子にメールするから……」

千早「そっからなの!?」

春香「えへへ……ごめんね、千早ちゃん」

千早「……ふっ」

春香「……くっ」

千早「ふふふっ」

春香「くくくっ」

千早「……春香」

春香「? 何? 千早ちゃん」

千早「これからも……ずっとずっと、一緒に頑張りましょう。アイドルも、勉強も!」

春香「……うん!」





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