響「ぷ、プロデューサーが……ガンに……?」(290)

響「あ、あはは……うそ……だよね……?」

律子「っ……」

響「うそだ、うそだよ……そんなの……」

亜美「うちの病院でも……もう、手の施しようが無いって……」

響「そんなこと、やってみないと分からないぞ?!」ガシィッ!

伊織「やめなさいっ!!!」

(パシィンッ!)

響「あ……」ヒリヒリ

伊織「っ……」ウルウル

響「ごめん、ごめんね……ごめん……」

伊織「……もう、いいわよ」

響「そ、それでっ、プロデューサーは?!」

律子「……」チラッ

響「っ……そん、な……」ポロッ

響「こんなっ……こんな姿に、なっちゃってっ……!」ポロッポロッ

 

雁P「クワックワァーッ」



響「どうしてこんなになっちゃったのさぁーーーっ!!!」




――響は慟哭した――

――己の至らなさに――

――事ここに至るまで気付けなかった自分に――

――敬愛するプロデューサーの助けになれない自分に――

――響は、あらん限りの声を張り上げ、泣いた――

響「なんで、なんでこんなことに……」

律子「分からないわ……私が事務所に来たときには、既にこの姿に……」

響「どうしてもっと早く教えてくれなかったのさ!!」

雁P「クワックワックワッ」

響「……聞こえないよ……」

伊織「……え?」

響「プロデューサーの声が、聞こえないよ……ただの雁だよ……餌くれって言ってるよ……」

雁P「クワァーッ」

美希「こんなことって……ねぇの……惨すぎるの……」ワナワナ

響「どうしてこんなになるまで放っておいたんだ!」

伊織「っ私だって……知ってたら、放っておかなかったわよ……!」

律子「……兆候は、あったのかもしれないわね」

響「え?」

律子「もしかしたら、暫く前からクチバシが生えてきたのも……」

響「え……? うそ……あの頃から、もうプロデューサーは……?」

響「もう、あの優しかったプロデューサーは帰ってこないのかなぁっ……」ヒック



P『ははっ、響。良くできたな!』バサッバサッ

P『なんだか最近、身体が軽くてな……おっ、伊織、今日も決まってるぞ』

P『おかしいな……口の周りが妙に張っててさ……ヒゲ剃る時もゴツゴツするんだ』

P『おーい雪歩! こっちにも茶を頼むよ。あとお茶受けに、雪歩なだけに落ち穂を持ってきてくれ、なんちゃって!』

P『んー、貴音。この青草、少し瑞々しさが足りなくないクワッ?』

P『千早千早! 一発芸、チップスターが無いのにクチバシ!!』クワッ

P『亜美、真美。あんまり悪戯が過ぎるとこのクチバシで突クワッ』



春香「もっと……もっとプロデューサーさんのことを見てれば……もしかしたら気付けたかもしれないのに……!」ダンッ

律子「……誰も気付けなかったのも、仕方ないわ。プロデューサーは、無理してでも不調を隠す人だったから……」

響「ぷろでゅーさぁっ……!」ポロッポロッ

美希「……そっか……そうだよ、簡単なの!」


響「み、美希?!」

美希「ミキにお任せ、なの☆」

伊織「な、何をするつもり?」

美希「ミキね、ハニーのためなら、どんな苦労をも厭わないよ……」

美希「この方法なら、きっとハニーも元に戻ってくれるはずなの! というわけでちょっとコンロ使うね」

(テクテクガチャッ)

春香「美希、何をするつもりなんだろう……」

千早「でも、あの自信に満ちた目……何かを知っているようだったわ」

(ジャー)

春香「水の音だね」

あずさ「……コンロ……水の音……変わってしまったプロデューサーさん……」

律子「あずささん、どうかしたんですか?」

美希「……そっか……そうだよ、簡単なの!」


響「み、美希?!」

美希「ミキにお任せ、なの☆」

伊織「な、何をするつもり?」

美希「ミキね、ハニーのためなら、どんな苦労をも厭わないよ……」

美希「この方法なら、きっとハニーも元に戻ってくれるはずなの! というわけでちょっとコンロ使うね」

(テクテクガチャッ)

春香「美希、何をするつもりなんだろう……」

伊織「でも、あの自信に満ちた目……何かを知っているようだったわ」

(ジャー)

春香「水の音だね」

あずさ「……コンロ……水の音……変わってしまったプロデューサーさん……」

律子「あずささん、どうかしたんですか?」

あずさ「……何か、嫌な予感がするのよ……」

雪歩「嫌な、予感……?」

あずさ「……!! ま、まさかっ!!」

(ガチャッ)

美希「おら、てめぇらそこをどけなの」ザッ

あずさ「美希ちゃん! ダメよぉっ!!!」

美希「ハニィーーッ! ミキの熱い愛でフットーしそうなお湯を食らうのぉっ!!」ザバァッ

雁P「クワッ?」

(バッシャァン!)

雁P「クワァーーーッ!?」

真美「ここでミキミキが兄(c)に熱湯をかぶせたァーーーっ!! 果たして兄(c)は生き残れるのかァーー!!?」

美希「ふっ。この前、律子、さんに読ませてもらった漫画に載ってたの。これで元通りだよ。アハッ☆」

(モクモク)

雁P「クワァッ」

美希「……なんくるねぇの」

(ガラッ!)

冬馬「チィーーッス」バァ―z_ン!

美希「!? なんでここに?!」

冬馬「動物愛護協会の者です。お話は961プロの方で伺います」ガシィッ

美希「なんなのなの?!」

冬馬「ええと、罪状は『熱湯ぶっかけ』……マジかよダチョウ倶楽部かよ……」ズルズル

美希「ハニィーッ!!」ズルズル

(アーレー)

(ピシャンッ)


響「……」

雁P「クワッ」

響「プロデューサー……餌はないぞ……」

律子「悲劇的話ね……どうすればいいのかしら……」

春香「そうだっ! これで解決ですよ!!」ポンッ

律子「きっとろくでもないわ」

春香「ふっふっふ……皆さんは、こんなお話を知っていますか?」


あるところに居た、美しい少女。

そんな彼女の父親が野獣に囚われてしまい、少女は身代わりとして赴くことに。

あんなことやこんなことがあって、心を通わせていく二人。

しかし、野獣には命の刻限が迫っていました。

今にも命の燈火が尽きてしまいそうな野獣。

そんな彼に少女が口づけをするt


律子「はいカットぉーーーっ!!」

春香「えっ!?」

律子「やっぱりろくでもなかったわ」

春香「そんな!? 律子さん、王道ですよ、王道!! ヒロインオブヒロインたる私にふさわしい方法じゃないですか!!」

律子「そう。じゃあはい」サッ

雁P「クワッ」

春香「うっ……」

律子「ほらほら、どうしたの? 勢い余って唇貫かれるかもしれないけれど」

春香「……や、やってやろうじゃないですかぁっ!!」ガッ

春香「……うっ、ちょっと鳥臭い……でも!」

律子「本気なの?」

春香「天海春香は恐れないッッッ!!!」


「ちょっと待ったぁ!!」ドンッ!


春香「!?」

伊織「そ、そんな破廉恥な行為、見過ごせないわ!」

春香「え? 伊織もしたいの?」

伊織「当たり前じゃない! 抜け駆けは許さないわよ、春……って違っ……?!」

春香「……へぇ」

伊織「……っ」


┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨


伊織「……」ズズズ

春香「……」ズズズ

亜美「両者、緊迫した睨み合いの中っ……!」

真美「先に動いたのは……」

春香「あ、やよい?」

伊織「えっ!?」バッ

春香「隙ありっ!!」

伊織「あっ!?」


亜美真美「「はるるんだァーーーーッ!!!!」」

春香「プロデューサーさんっ!」

雁P「クワッ」

春香(今、私の全ての想いを籠めて。届いて、私の気持ち――!)

(チュッ)

春香「……えへへ、ファーストキス、プロデューサーさんにあげちゃいましたっ!」テレテレ

春香(そして雁の姿から美青年に戻るプロデューサーさん! 私達二人の愛は、不滅ですよ、不滅!!)



雁P「クワッ」

春香「さぁっ! その胸の中に抱いてくださいっ! プロデュー……えっ?」

雁P「クワックワッ」

春香「うそっなんでっ!? 古今東西万能なはずなのに!!」

(ガラッ!)

愛「こんにちはぁぁぁぁぁぁあああ!!!」キィ―z_ン!

春香「!? えっ、なんで?!」キーン

愛「CEROの者です! お話は876プロの方で伺います!」ガシィッ

春香「ヴぁいっ?!」

愛「ええと、『生々しい不純異種族交遊でレーティングD』……よく分かんない!!」ズルズル

春香「プロデューサーさぁーーんっ!!」ズルズル

(アーレー)

(ピシャンッ)


伊織「……」

雁P「クワックワッ」

響「群れに帰るってどこに帰るつもりさ……」

律子「このままじゃ仕事にならないわ……」

真美「はるるんがやられたようだな……」

亜美「やつはナムコエンジェルでも最弱……」

真美「でももっと早くミキミキがやられてたよね」

亜美「じゃあ二番目かぁ」

律子「馬鹿なこと言ってないで、あんた達も考えなさい!」

亜美「そんなこと言ってもねー」バンザーイ

真美「パパがどうしようもないって言ってたからねー」バンザーイ

律子「なんのポーズよ、それ」

亜美真美「「お手上げ」」

(ガッゴッ)

亜美真美「「いったぁ!」」

律子「真面目に考えなさい! プロデューサーがフォアグラになるか否かの瀬戸際なのよ?!」

あずさ「戻らなかったら食べるつもりなんですね」

響「ぷ、プロデューサー……絶対助けてやるからな……!」

雁P「クワッ」

雪歩「と、とりあえずみんな、頭を冷やそう……ね?」

雁P「クワッ」

響「ご、ごめんプロデューサー、水浴びはもう少し待ってほしいぞ」

真「この部屋、ちょっと空気がよどんでるなぁ。空気入れ替えようよ」

(ガラッ)

雁P「クワッ!」バッ

響「あっ!? だ、だめだぞプロデューサー!!」

律子「あぁっ! 真、捕まえなさい!!」

真「えっえっ?」

雁P「クワァッ!」ゲシィッ

真「へぶっ!?」

(バサッバサッバサァッ)

響「ぷ、ぷろでゅーさぁぁぁぁぁあああ!!!!!」

  サァァァァァァ
    サァァァァァァ
      サァァァァァァ…

響「ど、どうしよう?! プロデューサーが逃げちゃったぞ!!」

真美「あ、あわわわ……兄ちゃんが大蔵じいさんに撃ち落されちゃうよ!」

律子「おおお落ち着きなさい亜美! 大丈夫よ雁猟はもう禁止されてるから!!」

亜美「りっちゃんこそ落ち着きなよ」

真「負けたっ……鳥にっ……完膚なきまでにっ……!」

雪歩「でも、どうやって探せば……」

伊織「……大丈夫よ」スッ

あずさ「え?」

(ポパピプペ)

伊織「新堂? ええ、目標の鳥を追跡して、随時こちらにデータを送って」

亜美「すげえええええええ!!!」

真美「さっすがいおりん万能説!!」

伊織「ふふん、これくらいはね」シャリラァンッ


伊織「さぁ、馬鹿鳥を探しに行くわよ!!」

― 一方その頃 ―


(ヘイラッシャァイ!)

貴音「らぁめんらぁめん!」

(ツギノカタァードウゾォー)

貴音「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ」

(アイヨォー)

貴音「ふふ……より高みを目指すために自らに課した、らぁめん二日に一度制限……」

貴音「二日経った今! 飢えた野獣の如きわたくしの胃袋が、らぁめんを欲するのです!!!」

(グゥゥゥゥゥウウウウ)

貴音「あぁっ! 甘美なる高鳴り!!!」

(バサッバサッバサッ)

貴音「はて?」

(ストッ)

雁P「クワッ」

貴音「ふふ、この二十郎の芳しき香りには、野鳥も群れを抜けて立ち寄らざるを得ないということですね」

貴音「ですが、申し訳ありません。わたくしは、自分の代金分しか持ち合わせが無いのです。ご容赦を」

(オマチィッ!)

貴音「それでは、いただきましょう。いざ、至福の高みへ――!」

雁P「クワァッ」ゲシィッ

貴音「なんと!?」グラッ

貴音「むぅ……野鳥の戯れでよろめくとは、わたくしもレッスンが足りませ」

雁P「ハムッハフッズルルッ」

貴音「ああああああああああああああああ?!?!?!?!」


雁P「クワッ」ケプッ

(オッ、イイクイップリダネェ!)

貴音「わ、わたくしのらぁめんが……!」ワナワナ

貴音「……」プチッ

貴音「この下郎」ザッ

雁P「クワッ?」

貴音「その身をもって償いなさい」ガシッ

雁P「クワァッ?!」

貴音「主人よ、今宵は雁鍋です」

(ヘイヨォッ!)

雁P「クワァーーッ!!」ジタバタ

貴音「覚悟を決めなさい。今こそ、弱肉強食という自然の摂理に準ずるのです」

雁P「クワックワックワァッ!!!」バババッ!

貴音「うっ、手を放してしまっ……」

雁P「クワァーーッ!」バサバサッ

貴音「おのれ、待ちなさい夕餉!!!」

真「んー、プロデューサーどこ行っちゃったのかなぁ」

亜美「おーぅい、残雪やぁーい」

真美「おれたちは、また堂々と戦おうじゃあないか!」

雪歩「伊織ちゃんのセンサーによると、この辺りのはず……」

伊織「捕まえたら絞め殺してやるわ……」

響「こ、殺しちゃだめだぞ!」

真「変なことすると、また動物愛護協会が来るよ」

伊織「そ、それは嫌ね……」

(ピピピピピッ!!)

あずさ「! 強い反応が出てるわ!」

律子「こ、これは……」


(ズズズズズズズ)


伊織「あの店から……!」

(ズズズズズ)

律子「な、なんてドス黒いオーラなの……」

真「き、気を抜くと、こっちがやられてしまいそうなほどの……」

真美「吐き気を催すほどの邪悪ッ!!!」

あずさ「い、一体プロデューサーさんの身に何が……」

伊織「っ……『虎穴に入らずんば虎子を得ず』! 行くわよ!!」

(ガラッ)

(ザッ)

伊織「さぁ、観念しなさい!!!!」





小鳥「うふふふふ……事務所を抜け出してまで追い求めた冬新刊の再入荷が……えっ」

伊織「よし、絞め殺すわよ」

小鳥「タップ! 伊織ちゃんタップ! 本当に死んじゃう!!」バンバンッ

伊織「何よこのセンサー!! いらないもの検知してんじゃないわよ!!!!」

響「完全に鳥違いだぞ……」

真「禍々しい気配の正体は……」ペラッ

亜美「う、うわぁ……」ドキドキ

真美「ニイちゃんのミニイちゃんがほくほくに……」ドキドキ

雪歩「みみみ見ちゃダメぇっ!!」バッ

小鳥「い゙や゙ーーーーっ!?」

伊織「なんか事務所に居ないと思ってたらこんなお店に居たのね」

小鳥「あばばばばばば雪歩ちゃん助けてぇ!」

雪歩「……」

小鳥「ゆ、雪歩ちゃん?」

雪歩「……ごめんなさい。私は、社長派ですから……」

伊織「バイバイ小鳥」キュッ

小鳥「きゅっ」

(ガラッ!)

高木「失礼するよ」ドッギャァ―z_ン!

小鳥「ぴへぇ……」

高木「青少年健全育成審議会の者です。話は765プロの方で伺うよ」ガシィッ

伊織「どうぞお持ちください」

高木「なになに、『青少年に有害図書を閲覧させる』……音無君、話はしっかり聞かせてもらおう……」ズルズル

小鳥「むふふ……」ズルズル

(ズルズル)

(ピシャンッ)


伊織「ふぅ、助かったわ」

律子「あ、トイレットペーパー三ロールもらえたわ」

伊織「今度やよいにあげましょう」

律子「そうね」

(ピッピッ)

伊織「センサーから小鳥を除外して」

律子「あ、まだ近くに反応があるわね」

あずさ「今度はプロデューサーさんのはずです~」

響「小鳥はあれでよかったのか?」

伊織「知らないわよ、あんな変態」

真「でも、伊織だってさっき鳥相手にキスしようと」

伊織「つつつつ次の反応はこっちね?!?」ダダッ

真「あ! はぐらかしたな!!」



伊織「……待って」ピタッ

亜美「ん、どったの?」

伊織「この反応……向こうからどんどん近づいてくる!?」

響「こっちに来てるのか!?」

真「バッチOK! 来なよプロデューサー、銃を捨ててかかってこい!」バッ

律子「真! 絶対に捕まえなさい!!」

真「へへっ! 二度も同じ相手に負けるボクじゃないよ!」

伊織「来るわ! 反応は……えっ?」

響「ど、どうしたんだ?」

伊織「反応が……二つ!?」

律子「えっ」

(ドドドドドド…)

あずさ「あれって……」

(ドドドドドド…)

雪歩「あの影は……」



雁P「グワッグワッ!」バサササササッ

千早「翔べ海よりも激しく山よりも高々く今私は風になる夢の果てまでぇ!!!!」


伊織「ち、千早っ!?」

― 時は数分前に遡る ―


千早「蒼いいいいいいとりひいいいいいい! ……あら?」

雁P「クワッ」バサササッ

千早「きゃっ!?」

(ドガッ)

雁P「クワァ…」

千早「いたた……どうしてラーメン屋から鳥が……」

(ザッ)

貴音「……」

千早「あ、四条さん。奇遇ね」

貴音「夕餉」

千早「え?」

貴音「夕餉夕餉夕餉夕餉」

千早「ひっ?! な、なんなの!?」

貴音「なんとこれはまこと面妖な夕餉の雁が二羽に増えて夕餉夕餉とは僥倖僥倖夕餉夕餉」

雁P「ク、クワッ」

千早「こ、このままじゃ……」


千早(喰われる!!)


雁P「クワッ!」バサッ

千早「い、一羽で逃げようったってそうはいかないわよ!」ガシッ

雁P「クワァッ!!」バサササッ

千早「わ、私も引っ張って!!」

貴音「夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉」

千早「いやああああっ!!」ダダダッ

― そして現在 ―


雁P「クワァッ」バササッ

千早「どいてええええ!!!」ダダダッ

真「ななななんで千早がプロデューサーに捕まっげふぅっ!」ドガッ

伊織「な、なんなのよ一体……」

響「早くプロデューサーを追いかけないと!」

あずさ「……ね、ねぇ、みなさん」

雪歩「?」

真美「あ、あれ……」


貴音「夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉」ドドドドド


亜美「ひいいいいいっ!?」

貴音「おやおやまたまた夕餉が増えて夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉もう数えきれないほどですね僥倖僥倖夕餉夕餉夕餉夕餉」

律子「ととととりあえず逃げるわよ!!」

(ダダダダッ)

貴音「ここで一句。夕ご飯 ああ夕ご飯 夕ご飯。貴音」

響「た、貴音むちゃくちゃ速いぞ!!」

伊織「それでも私達が追い付かれないのは、やっぱり人間も動物ということかしら」

雪歩「生命の危機に瀕すると、普段以上の力が出るものですぅ」

あずさ「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないわよ」シャカシャカシャカシャカ

亜美「あ、あずさお姉ちゃんすらもが必死だ!!」

(ダダッ)

真「ち、千早!!」

千早「あ、さっきの真だったのね。悪いけど話なら後に」

真「いや、重要なことだから! 簡潔に伝えるよ、その雁はプロデューサーなんだ!」

千早「えっ」

雁P「クワックワッ」

真「り、理由は分からないけれど、急にそうなっちゃって……とにかく! 絶対逃がさないでね!」

千早「……雁……プロデューサー……逃がさない……はっ! 分かったわ、真!」

(ダダッ)

伊織「えっ、ちょっとどこに行くのよ!」

千早「プロデューサー、このままどこかへ飛んで行って駆け落ちしましょう!」ダダダッ

雁P「クワッ」

真「うわぁそう来たかあ!」

千早「これが呪いか何かだというなら、解く方法はあるはず……二人きりになってから、じっくり探させていただくわ!」

真「せっかくめんどくさいのは美希と春香で片付いたと思ったのになあ!」

律子「ち、千早を捕まえなさい!」

響「だ、ダメだ! プロデューサーの速度も加わってるから、自分達でも追いつけないぞ!」

千早「プロデューサー、私達二人だけのarcadiaへ旅立ちましょう! さぁ、ふたつの翼であの天空(そら)へ!」

(ググッ)

響「っ?! そ、それはダメだぞ、千早ぁっ!!」

千早「翔べっ!」


(タンッ)

――その時の様子を、のちに萩原雪歩はこう語った。


雪歩「ええと、その時千早ちゃんは、プロデューサーの足を持っていたんですぅ。こう、足首に当たる部分をギュッと」

雪歩「その状態で……飛べると、心の底から信じてたんだと思います。タンッて、地面を蹴ったんです」

雪歩「ええ、いい音がしました。アスファルトを叩く綺麗な音……あんなステップで、私もダンスを踊りたいですぅ」

雪歩「でも、私はひんそーでちんちくりんだからあんなに上手くは……」

雪歩「はわわっ! は、話が逸れちゃいましたぁ」

雪歩「それで、ええと……千早ちゃんはジャンプしたんです。きっと、そのまま空へ飛んで行けると信じて」

雪歩「まるで、イカロスのお話みたいですね」

雪歩「でも……千早ちゃんが羽ばたこうとしたその羽は、蝋で固められた翼のように、脆かったんです……」

雪歩「当たり前ですけれど……」


雪歩「……雁に、人間一人を支える力は、ありません」

雁P「クワッ?!」ガクンッ

千早「えっ!?」ガクゥッ

響「手を放してぇ!!」

千早「だ、ダメ、今放したら、プロデューサーは、私の手から――」






(ボキッ)

雁P「ク、ワ…」ドサッ

千早「あっ!?」ドサッ

雁P「……」

千早「ぷ、プロデューサーの、足が……!」

響「ぁ……あぁっ……!」


千早響「「折れちゃったぁーーーッ!!!!!」」



真「っ」グルッ

亜美「まこちん!?」

貴音「夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉夕餉」

真「ごめん、貴音……せいっ!」ドスッ

貴音「に゙ゃっ」

(ガクッ)

伊織「鳩尾への、一撃……」

真「あと僅かに突きが遅かったら……ボクが喰われていた……」

書いてたら夕餉の餉がゲシュタルト崩壊して青鬼に見えてきた

響「うわぁん! プロデューサーの、プロデューサーの足がぁ!」

雁P「クワァ…」

律子「完全に折れてるわね……」

千早「ごめんなさい、ごめんなさい……私が欲を出したから……!」

亜美「なぁんだ。カンパネルラ、こいつはお菓子だ」

真美「本当だね、ジョバンニ。砂糖菓子みたいだ」

貴音「お菓子っ!?」ガバッ

真「貴音はちょっと黙ってて」ドスッ

貴音「に゙ゃっ」ガクッ

雪歩「と、とりあえず安静にしないと……」

伊織「ちょっと待ってて、今すぐ獣医を――」



(ババババババババ)

伊織「へ、ヘリのプロペラ音?!」

(ババババババ)

蒼一「そう、僕だ」ドジャァ―z_ン!

伊織「!? 何しに来たのよ!!」

蒼一「動物病院の者です。治療は局の方で致します」ガシィッ

律子「えっ!?」

蒼一「とりあえず付き添いの方がどなたか……」


伊織「わ、私が行くわ!」

千早「い、いえ、責任を取って私が!」

律子「あなた達が行くとややこしそうだから待ってなさい。私が」

あずさ「あらあら、年長者に任せていいのよ?」

亜美「亜美はめどいから先に事務所行ってるYO」

真美「行こうぜ行こうぜ→」

雪歩「あ、私もお茶の用意して待ってるね」

真「みんな騒がしいなぁ……」

カプコンヘリ「」ババババババひゅー

伊織「ちょ、アレ、墜落して……」

::::::::::::::::::::::::......   ........::::::::::::::::::::::::::: ;;;;;;;::::::::::::::::::
           γ ⌒ ⌒ `ヘ
          イ ""  ⌒  ヾ ヾ    ドガァァァァァァァァン.....
        / (   ⌒    ヽ  )ヽ
        (      、 ,     ヾ )
 ................... .......ゞ (.    .  ノ. .ノ .ノ........... ........
 :::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ、、ゝ.....|  |..., , ノソ::::::::::::::.......::::::

  _ _i=n_ ._ [l_ .._....,,. .-ー;''!  i;;;~-ヽ_ii_i=n_ [l h__
  /==H=ロロ-.γ ,~ー'''l ! |'''ーヾ  ヾ 「!=FH=ロロ
  ¶:::-幵-冂::( (    |l  |    )  )=HロΠ=_Π
  Π=_Π「Ⅱヾ、 ⌒~"""''''''⌒~'"´ ノ;;'':::日lTΠl:::....

 Д日lTl,,..:''''"   ""'''ー-┬ーr--~''""   :::Д日lT::::
 FH=n.:::::'            |   |         :::FL日l」:::::
 ロΠ=:::::.:.        ノ 从 ゝ        .::田:/==Д::
 口=Π田:::.                   .::::Γ| ‡∩:::::
 Γ| ‡∩Π::....                ...:::Eヨ::日lTlロ::::
 Д日lTlロ_Π::::.......            ...::::::::田:凵Π_=H:::
 =Hロ凵Π=_Πロ=HロΠ:::.................:::::::::::口ロロH「l.FFl



終わり

(ギャーギャー!)

蒼一「このままではいつまで経っても終わらない」

雁P「クワァ…」

響「あ、じゃあ自分が行くぞ」

蒼一「良い判断だ、掛け値なしに」


(バババババババババ)


伊織「私が!」

千早「いえ、私が!」

律子「はぁ、勝手にしなさい」

真「もう行っちゃったよ、プロデューサー達」


――――――
――――
――

(ガチャッ)

春香「……ただいま」

美希「……ただいまなの」

小鳥「……ご迷惑をおかけしました」

律子「前二人はとりあえずいいわ。小鳥さんはバッチリアウトなんで始末書書いておいてください」

小鳥「はい……」


亜美「ねぇねぇ、兄ちゃん大丈夫なの?」

雁P「クワッ」

響「なんか回復速度が異常だから一週間もあれば治るって」

千早「うぅ……良かった……本当に良かった……!」

雪歩「とりあえずは一安心、だね」

雁P「クワァーッ」

響「うん! みんなで一生懸命看護して、また飛べるようにしてやるからな!」

響「そうだ、経過を日記に書いておこっと」

『プロデューサー観察日記』


○月×日

足が折れちゃったプロデューサーは、今日から静養生活。
お医者さんは治るって言ってたし、一生懸命看てあげないと!

○月△日

プロデューサーはまだ動けない。固定された足がむず痒そうだ。
もうちょっと我慢してね。頑張って、プロデューサー!

○月□日

怪我をしてから弱ってたプロデューサーだけど、最近元気が出てきたみたい!
餌を食べる量も増えてきたし、一安心だ。

○月▽日

お医者さんによると、もう骨折は治ったそうだ。
でも、まだ歩けないみたい。リハビリ、頑張ろうな!

○月◇日

大分歩けるようになってきた! もうちょっと!
最近は羽をばさばさと羽ばたかせてる。早く飛びたいんだね。


響「プロデューサー、だいぶ元気になってきたな!」

○月◎日

怪我は治ったし、プロデューサーも無事歩けるように!
寂しいけど、とうとうお別れの日がきちゃった……。



響「……プロデューサー……」

雁P「クワッ」

律子「響」

響「律子……」

律子「寂しい気持ちは分かるわ。でも、この日が来ることは分かってたでしょ?」

響「うん……」

雁P「クワァーッ」

春香「大丈夫だよ、響ちゃん!」

響「春香?」

春香「雁は渡り鳥。ちゃんと毎年、同じ餌場に戻ってくる。そうでしょ?」

響「……うん」

美希「ねえ、今年はさ、みんなで稲を植えようよ!」

響「稲を?」

美希「お米が取れたら、おにぎりがいーっぱい食べられるの!」

美希「それに、ここ一面に黄金色の稲穂が揺れたあと、そこに、きっとハニーが啄ばみにくるの!」

あずさ「日本の原風景ね……」

千早「……今となっては、雁が訪れる環境も、減ってきているでしょうしね」

秋には、豊かな実りの波が風と共に流れて

稲を刈り終えた後には、落ち穂が残って

寒い冬がくると、プロデューサーの群れがやってくる


そうしてまた年が明け

暖かくなった頃にプロデューサーは旅立っていく

穏やかな営みを年々続けて、プロデューサーも私達も

次の世代へと、脈々と時代を紡いでいくのだろう



響「見えるぞ……」

  サァァァァァァアアアア…………

響「金色の海が、目いっぱいに広がってっ……!」


律子「……ふふ。そんな事務所も、いいのかもしれないわね」

真「あ! あそこ!」

雪歩「わぁっ……鳥の群れ……」

貴音「まこと、雄大な……」

雁P「クワッ」

小鳥「ほら、響ちゃん。プロデューサーのこと、後押ししてあげましょう?」

響「プロデューサー……」

響(……っ!)

響「プロデューサー、飛ぶんだ!」

雁P「クワッ」トテテテッ

響「その足なら、もう大丈夫だから!」

雁P「クワックワックワッ」バタバタ


響「翔べぇーーーっ!!」



(バサァッ)

亜美「あっ!」

真美「兄ちゃんが飛んだよ!」

響「あ……あぁっ……!」ポロッポロッ

伊織「っ飛びなさい! 私達の方を振り向かずに! 高い高い空へ!」グスッ

(バサァッバサァッ)

あずさ「……どうしてか分からないけれど、飛んでいる姿を見ていたら、涙が」ツツッ

律子「……私達は今、生命の尊さを、見つめているのかもしれません」

美希「ハニー、ちゃんと群れに帰れるかな」

春香「大丈夫だよ! プロデューサーさんだもん!」

千早「ふふっ。いい話ね。ところで……」



千早「プロデューサー、旅立っちゃって良かったのかしら」

律子「あ」

律子「あああああああああああああああああああああああ」


アアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァ………….........

響「うがー! ついいい話風な流れに乗せられちゃったけど本末転倒だぞ!!」

美希「なにがハニーが啄ばみにくるなのしにたいの」

春香「……」

亜美「でも嘆いても仕方ないよ……兄ちゃんはもう新天地に向かっちゃったZE……」

律子「ふふ、ふ、ふふふ……まだ、まだ激務が続くのね……」ブクブク

貴音「あぁっ、律子嬢が蟹のように! 食べられるのでしょうか!」

真「ちょっと黙ってて」ドスッ

貴音「に゙ゃっ」ガクッ

伊織「ぷ、プロデューサー……きっと、きっと帰ってきてくれるわよね……!」グスッ

小鳥「今はただ、待ちましょう……きっと、プロデューサーさんは帰ってきてくれますから……」

あずさ「私達、ずっとずっと、待ってますからね……」

真美「真美達、いっぱいいっぱい頑張るかんね」

雪歩「決して、恥ずかしくない様に」

千早「プロデューサーが帰ってくる、その日まで……」

(タッタッタッ)

高木「なんだ君達、こんなところに居たのかね」

小鳥「あ、社長」

律子「しゃちょおおおおおお」ガシィッ

高木「ど、どうしたんだ律子君!? とりあえず、全員落ち着きたまえ」

春香「ヴぁい……」

高木「全員ここにいては、もうすぐ帰ってくるやよい君が寂しがるぞ?」

伊織「あっ! 今日はやよいが長期ロケから帰ってくる日じゃない!」

真美「やばっ! 長いお仕事でお疲れ様なのに可哀想なことしちったYO!」

あずさ「早く事務所に帰らないと……」


(タッタッタッタッ)


「みなさーん!」

響「この声は!」クルッ

やよい「えへへっ」

伊織「やよい!!」


「「「おかえり!!!!」」」


やよい「うっうー! ただいまですよ!」


真「うわっ、すごい焼けてるね!」

やよい「えへへ、色んなことを学んできました!」

雪歩「なんだか、すごく逞しくなった気がするよ!」

やよい「はいっ! 早速、色んなことを活かしていきたいと思います!」

書き溜め分が間に合わん
申し訳ないけどちょっと投下スピード落とす

やよい「あのっ、えっと」ソワソワ

春香「? やよい、どうしたの?」

やよい「その、みなさんと会うの久しぶりだから、いつものあれがやりたいかなーって」

千早「ふふっ。ええ、いつものアレね?」

やよい「はいっ! それじゃあ行きますよーっ!」


「「「はい、たーっち!」」」

やよい「いえいっ♪」ブラン

響「えっ、なんかやよいの手に大きなものが握られて」


雁P「ク…ワァ…」グターッ


響「ぷろでゅうさああああああああ!!!!?!!??」


伊織「や、やよっ……そ、それ、どうし……」

やよい「あっ、この鳥さんですかぁ?」

― 回想 ―


やよい「無人島一か月生活のロケがやっと終わりましたぁ! えへへ、もうすぐ事務所っ!」

やよい「うっうー、このサバイバルスキルがあれば、きっと家のやりくりも楽になりますよー!」

(バサッバサッ)

やよい「あれ?」ジィーッ

雁P「クワックワッ」バサッバサッ

やよい「あっ! 美味しそうな鳥さんです!」

雁P「クワッ」

やよい「無人島で食べた鳥さん、美味しかったなぁ……あ! そういえば!」

(ゴソゴソ)

やよい「じゃじゃーん! お土産にもらったサバイバルキット!」

やよい「ええと、距離30、北東の風……うん、これくらいなら」

雁P「クワッ」バササッ

やよい「水浴びに降りる……その瞬間を狙って……」スッ

雁P「クワァ」バシャバシャ

やよい「今っ!」

(フッ!)

(ストンッッ)

雁P「グェッ」

(ドサッ)

やよい「うっうー! 鳥さん、討ち取ったりぃーー!」

    たりぃーー
      たりぃーー
        たりぃーー……

やよい「というわけです!」

雪歩「あわわわわわ……」

やよい「今日は鳥鍋ですよー!」

真「え、えっとね、やよい? そ、その雁は……」

(バッ)

真「うぇっ!?」

やよい「羽をばむしり候へ!」

真「えっ?! い、いや!」

やよい「伊織ちゃんは御手透きですか?」クルッ

伊織「ちょ、ちょっ……」

(バッ)

雁P「グェ…」グタァッ

伊織「ひぃっ!?」

やよい「むしり候へ!」

真美(あかん)

美希「いいい急いでハニーの代わりを持ってくるのぉ!!」ダダッ

あずさ「鳥よ、鳥を持ってくるのよ!」シュタシュタシュタシュタ

真美「出たァ! 当社比3倍速のあずさお姉ちゃん! 目が血走って真っ赤だZE!」


やよい「早く鳥さんを絞めましょう!」

亜美「ね、やよいっち! と、鳥って食べる直前に絞めるのがいいんだYO!」

やよい「え? でも、お肉は少し寝かせるくらいの方がいいって……」

律子「あああああれよあれ! せっかく綺麗な状態で捕まえたし、プロデューサーにも見せてあげたいでしょう?!」

やよい「あっ! そういえば帰ってきてからまだプロデューサーさんにお会いしてません!」

春香「ねぇ、やよい? 信じられないかもしれないけど、実はこの鳥さん、プロデューサーなんだよ」

やよい「えーっ、なんですかそれ……春香さん、面白くないですよ……?」

春香「ネタじゃなくて!」


真美「まぁ信じられなくても仕方ないよね……」

小鳥「プロデューサーさんの変化があったのは、やよいが出発してからだから……」

響「……あれっ!?」

千早「どうしたの?」

雁P「ク、クワ、ァ…」

響「ま、まずいぞ……プロデューサーの脈拍が低下してる!」

律子「なんですって!?」

高木「ど、どうしてかね?!」

やよい「あ、もしかしたら痺れ薬が強すぎて、心臓とかに影響してるのかも……」

響「プロデューサー! しっかりするさーーー!!!」

雁P「ク、クワッ…」

響「あぁっ! 画面下辺りにありそうなプロデューサーのライフゲージがどんどん下がってる!!」

律子「誰かぁぁぁああああああやくそうかポーションかハートのかけらかなんでもいいからああああああ!!!!」

雪歩「り、律子さんしっかりしてください!!」

美希「ただいま!」ダダダッ

あずさ「調いました!」シャカシャカシャカシャカ

真「い、今はそれどころじゃ……」

律子「トリメイト持ってきた?! 鳥だけに!!」バッ

美希「はいっ! ホロホロ鳥!」バッ

あずさ「名古屋コーチンを!」

律子「あら、美味しそうね」

やよい「ビーフストロガノフも美味しいですよっ。牛、牛を使う」

真美「だからそれどころじゃないんだってば!」

響「ぷ、プロデューサーが死んじゃいそうなんだよぉ!」

美希「き、きっと栄養不足なの!」

春香「え? いや、やよいの痺れ薬が……」


美希「これを食べて精を付けるの、ハニィーーーっ!!!」グァッ

雁P「クワッ?!」

美希「AHUUUUUUUUUUUUUUUUUU!!!!!!!!」

(シュバババババッ)

雁P「グェックックワッ」バババババッ


律子「あ、あれは!」

亜美「知っているのか、りっちゃん?!」

律子「あれは、格闘ディナーの奥義、グルメ・デ・フォアグラ! 無理矢理相手に食べさせる極意!」

響「雁は草食だぞ!?」

貴音「その点は心配いらないかと」スッ

響「ど、どうしてだよ!」

貴音「……あの方は、わたくしの二十郎をも喰い躙ったのです……!! あああ思い出しただけで!!!!」

真「せいっ」ドスッ

貴音「に゙ゃっ」

(ガクッ)

真「……またつまらぬ腹を殴ってしまった……」

雁P「クワッ!」カッ

美希「! ハニーが目を見開いたの!」

響「えっ、嘘っ!? こ、こんな方法で本当に!?」

あずさ「美希ちゃん、汚名返上ね!」

美希「ふふん、ミキの手にかかればこんなもんなの!」


雁P「…」


やよい「? うっうー、静かになりました!」

千早「……ねぇ、これ」

(ツンツン)

春香「え?」

雁P「…」

千早「……これ、窒息してるわ」

雪歩「あっ」


――プロデューサー、享年2×歳、ここに散る

――その時、一陣の風が吹いた――

――少女たちを撫でる様に吹き去った風は――

――行き先も分からぬ、青年の命を乗せていく――

――ある者は悲しみに暮れ、ある者は茫然自失とし、ある者はその場に崩れ落ち――

――ただ一人、理由のわからぬ少女は――

――友の姿を見ながら、ただただ慰める他なかった――



律子「……プロデューサー、殿……」

雁P「…」

律子「どうして、どうして先に、逝ってしまわれるのですか……」

亜美「りっちゃん……兄ちゃんは、兄ちゃんは、もうっ……!」グスッ

律子「本当なら、今、ここには人間に戻ったあなたがいて……私が、あなたの手を握りながら……」



律子「膨大な量の仕事の引き継ぎをしているはずだったのにっ!!!!」

亜美「最低だよりっちゃん」

響「プロ、デューサー……」

(スッ)

雁P「…」

響「頑張ったな……必死に、生きたんだよね……」

(ギュッ)

響「……神様……もし、またプロデューサーが、ニライカナイから来ることがあれば――」

響「……その時は、どうか……どうか、穏やかに、過ごさせてあげてください……」

雁P「…」

響「プロデューサー……」

(トサッ)

響「……」

響「ぷろ、でゅぅ、さぁっ……!」ジワァッ



(ツツゥッ)

(ポタッ)

(.....………パァァァァアアアアアアアア)


響「わっ……?!」


雁P「…」ピカァァァァァアアアッ


高木「なんだね、この光は!?」

春香「プロデューサーさんから、光が……!」

やよい「うっうー、とっても綺麗ですー……!」

千早「碧く透き通って……」

小鳥「まるで、沖縄の海みたい……」


(――みんな)

響「えっ、この声……」

(ああ、なんだか、暖かいよ――)


響「プロデューサァァァァァアアア!!!」

(カッ!)


響「うわぁっ!!」

やよい「へぅー!」

雪歩「ま、眩しいですぅ!」


(キラキラキラキラ…)


あずさ「響ちゃんの涙が……プロデューサーさんに当たって……!」

響「あ……」

「なんか、迷惑、かけちまったみたいだな……」

響「そ、そんなこと、ないぞっ……!」フルフル

「なんて声かけたらいいのかな……」

響「言う言葉なんて、決まってるさ」ゴシゴシニコッ

「ははっ、それもそうだな」


「「「おかえりなさいっ!!!」」」

P雁「ただいま!!!」バサッバサッ


亜美「ってうわあああああああ顔だけ人間に戻ってるううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!」

真美「気持ち悪ううううううううううううううう!!!!!!!!!!!」

雪歩「……」フラッ

真「ゆ、雪歩ぉっ!?」ガシッ

貴音「め、面妖な……まままままこと面妖なぁ……」ガタガタガタガタ

美希「……正直、これなら戻らない方が良かったの……」

伊織「見ちゃダメ!! 見ちゃダメよ!!」バッ

やよい「えぇーっ!? 私もプロデューサーさんにごあいさつしないと……」

P雁「み、みんな酷いな! せっかくこうして話せるっていうのに!」バサッバサッ

響「……」ヒクッヒクッ

P雁「響……お前は、俺の味方だよな?」

響「……」ベシッ

P雁「痛っ! 響!?」

響「その結果を招いたのが自分の涙だということが……何よりも許せないさ……」

響「あのまま……美しい思い出のままにしておけばよかった……」

春香「うわぁ……」

千早「……」ジトーッ

あずさ「……お、お待ちしていますね、元に戻れる日まで……」サッ

P雁「ちくしょう、酷い扱いじゃないか……俺だって好きでこんな格好してるんじゃ……」バサバサッ

律子「……」ニコニコ

P雁「り、律子! そうか、お前は俺の味方になってくれるんだな!」

律子「ええ、私はプロデューサー殿の味方です」ニコッ

P雁「おぉ! なんだか目付きに感情が籠ってないのが怖いけど信じてて良かっ」

(グワシッ)

P雁「ピョッ?!」

律子「ええ、頭がプロデューサー殿に戻っていただければ、仕事はできますよね? それでは早速引き継ぎをしましょう」

P雁「わ、分かった! 分かったからまずは首から手を放してぇっ!!」バサバサバサッ

(アズササンッタスケテェッ)

(エ、エット…)

(コレマデサンザンヤッテアゲタンダカラ、コキツカワセテモライマスヨ)

(ウワァァァッァァアアアアア!!!!)




高木「……これまで、彼は休職扱いだったのだが」

小鳥「はい」

高木「……これからの雇用は、人扱いでいいと思うかね?」

小鳥「いいんじゃないですかね」

高木「……彼の飼育代は」

小鳥「給料から天引きで」

― 翌日 ―


P雁「お前らね、俺はひどく傷付いたよ」

亜美「いきなりこんなになったら誰だって気持ち悪いよ。多分顔がやよいっちでも辛いよ」

真美「でも、こうして見ると意外と可愛いかも? あっそうそう、あん時なんかキラキラしてたしキメラキラリって呼んでいい?」

P雁「いい度胸してんなぁお前ら!」バサァッ!

亜美真美「「兄ちゃんが威嚇したーーー!!!」」

(フッ!)

(グサッッ)

P雁「うっ!」

やよい「もう! プロデューサー、めっ! です!」

P雁「か、身体の自由が……」

やよい「うっうー! 薬は薄めてあるから死にはしませんよ!」

春香「プロデューサーさん! 私のファーストキスを奪った責任、いつか取ってくださいね!」

P雁「えっそんなことしたの!? い、今の俺はこんなだけど……」バサ、ァ…

春香「ええ! 待ってますから……ふふ……」ナデナデ

律子「ん~、担当戻したら本当に楽! 営業にはまだ出せないけど、だいぶマシになったわ!」

貴音「響は今日は来ていないのでしょうか?」

小鳥「響ちゃんなら伊織ちゃんのところの研究所に」

真「そっか、顔だけ戻ったのも涙のせいだもんね。研究すれば、治す薬とか作れるのかな」

雪歩「まずは原因の究明から、って言ってたよ」コトッ

美希「お茶ありがとっ! ハニー、早く戻ってくれないかな……正直怖いの」ズズッ

社長「765プロとしても、彼には早く本格復帰してもらいたいのだが……」

千早「あっ! 人面雁ってことでバラエティ番組に出してみたら」

律子「あんなののプロデュースはごめんよ」

あずさ「あらあら……でも、PTAとかから苦情は来そうね~」

千早「それは……えぇ……」

― 水瀬研究所 ―


研究者A「こ、これは……!」

伊織「どうなのよ、プロデューサーの首の境目から採取された細胞は」

研究者A「これは、人類の歴史を覆す可能性を秘めています……! 注意深く研究しないと、とんでもないことになるかも……」

伊織「病気なの?」

研究者A「まだ何とも言えません。それに……」チラッ


響「な、なんだか自分の涙が観察されてるって不思議な気分だぞ……」

研究者B「な、何なんだこの物質は!」

響「えっ、変なもの入ってた?」

研究者B「わ、私では、これが変なのかどうなのかも分からない……サンプルをベセスダのガン研究所にも送るんだ!」


伊織「まぁ、治療薬のアテはありそうね。安心したわ」

研究者A「はい。しかし、一つ注意していただかなければならないことがあります」

伊織「えっ?」

(タッタッタッタッ)

響「はぁっはぁっはぁっ!」タッタッタッ

伊織「そんな、まさか……!」


研究者A『原因はまだ特定できませんが、環境によるものである可能性が濃厚です』

研究者A『つまり、彼と全く同じ境遇の人物がいるのなら――』


(バァンッ!!)

伊織「律子!!」


律子「うわぁっ!? い、いきなりどうしたのよ伊織!」

伊織「か、身体はなんともない!?」

律子「へっ!?」

響「ぷ、プロデューサーと同じような暮らしをしてると、ああなっちゃうかもしれないらしいぞ!!!」

律子「な、なによ、そのこの上なく気持ち悪い話……」

P雁「おい」バサバサ

伊織「異常はないのね?!」

律子「あはは、大丈夫よ。これからは仕事量も減るし」

響「ほっ……よかった……」

P雁「ヘイヘーイりっちゃんもこっち側に来ようぜい!」バッサバッサ

律子「ふんっ」ベシィッ

P雁「あんっ!」

千早「ぷ、プロデューサー! 変な声出さないでください!!」

やよい「でも、こんな風にしてると、765プロに帰ってきたんだなぁって気がします!」

春香「プロデューサーさんも、きっとすぐに治せますよ!」

P雁「だといいんだけどな」バサバサ

貴音「で、でなければ、わたくしも困ります故……」ガクガクブルブル

P雁「まだ怖いのか……」


春香「じゃあ、プロデューサーさんが治るまでは、みんなで頑張ろうっ!」

「「「おーっ!!」」」

律子「んー」

あずさ「どうかしました?」

律子「なんか最近、口の周りが張ってて」

あずさ「美容には気を付けないと~」

律子「そうね、もう少し気を遣いましょうか」


響「プロデューサー……きっと、治してやるからな!」

伊織「さて、とりあえずサンプル提供は終わったし、今日もアイドル活動、頑張りましょうか」


P雁「みんな、それじゃあ張り切って行こう!」バサバサッ

「「「はいっ!!」」」

――この話は、決して他人事ではない――

――若い雁患者の割合は、年々増加傾向にある――

――そして主に、芸能プロダクションのプロデューサーにはとみに見られるとの事だ――

――近年は、一人のプロデューサーが13人ものアイドルを担当するという事例が増えている――

――中にはプロダクションを梯子し、更に3人――

――場合によっては、携帯電話やスマートフォンを片時も離せないほどに、人生をプロデュース業に費やす若者もいる――

――決して、他人事だと思ってはいけない――

――次は、あなたの番なのかもしれないのだクワッら――


伊織「早く薬完成しないかしら……」

P雁「俺だってさっさと戻りたいよ」バサッバサッ

響「プロデューサー、自分、頑張るからな!」

律子「あっ、見て見て、クチバシ!」クワッ

あずさ「うふふ、一発芸で使えそうですね~」



おわり

他にアイマス書いてたら教えて欲しいかなーって

おかしいな、こういう話じゃなかったんだけどな
流石に産卵はヤバいと思いとどまった自分をほめてあげたい
オチが弱くてすまn

え、りっちゃん産むの!?

>>276
最近だと
春香「りめんヴぁーい! ハールカッカー!」
春香「清純派ちーちゃんが真心を込めて」
春香「真冬の夜は暖かくて」
P「最近猫を飼い始めたんだ」 ※一応閲覧注意
真美「千早お姉ちゃんは照れ屋さん」

よろしければどうぞ

>>278
いや、Pが産卵してPヘッド達が生まれる的な

やっぱりオチは即興じゃなくて最初に書いちゃった方がいいな
読んでくれたやつ乙かぶとがに

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