甥っ子「僕、マー君みたいになる!」 (49)

さいてょ「そう言えばな…おじさん、そのマー君よりも強かったんだ…」

甥っ子「そんなことないもん!マー君が世界一の投手だもん!おじさんの嘘つき!バカ!もう一生お話しない!」バタバタバタ

さいてょ「…」

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僕がハンカチ王子と呼ばれて何年が過ぎただろう

僕は日ハムを首になり、仕事を失った

確かに僕は底辺ども(一般サラリーマン)より多く稼いだ

しかしまだまだ若輩

人生これからだ

例え今稼げても老後の事を考えると怖くなる

そして僕は入社した

会社の社長は僕が元ハンカチ王子ということは知っていても周りの人はそれを知らない

たぶんハンカチ王子なんて言葉知らないだろう

だけど僕はそれでよかったんだ

もし僕が元ハンカチ王子ってばれたら大変だもんね

周りはバカばっか

ろくにパソコンを使えないバカOL

下には偉そうな態度のクセに上にはへこへこする課長

嘘しかつかない同僚

会社について何もわかってない後輩

それでも僕は頑張っている

ある時僕は草野球に誘われた

出来たばかりのチーム

数が合わないからという理由だ

正直な話僕は嫌だった

僕はこれでもあのマー君に勝っている

こんなところで野球するような人間じゃない

僕のポジションはライトの九番

まぁ数合わせだから仕方がないか

ピッチャーは係長

あぁ…あのオヤジあんな球投げてる…コース甘ぇよ…それを打てないバッターもバッターだ

つまらない…

カキーン

ほれみろ打たれた

打球はライトのフライだ

僕は当然取ろうとした

が球は思いの他飛びストーンと音がした

一瞬僕は何が起きたかわからなかった

後ろを見たら白球が転がっている

エラーだった

その間ランナーはファーストを抜けた

僕はその後球を取り、投げた

しかし力が入ってしまい悪送球

ファーストの方に飛んで行ってしまった

ファーストもファーストでまさか自分の方に来るとは思わずもたついた

その後ランナーはホームインまさかのランニングホームラン

ピッチャーが交代をかける

何を言っているんだこのピッチャーはまさか僕が本気でミスったとでも思っているのか!?

ピッチャー「ドンマイ!ドンマイ!気にするな!」

ピッチャーがライトに移動した(彼は昔ライトを守っていたらしい)

ピッチャー「まぁ気張らずやってくれ。打たれても俺らが取るから。お前の名前ハンカチ王子と同じだから相手もビビるよwww」

僕の心に暗い日影が出来た

まさかハンカチ王子の名前を知っているなんて

その上僕は

さいてょ「そっすねwwさいてょと間違えられますねwww」

自分を否定した

僕はもうハンカチ王子なんかじゃない

彼と僕はきっと別人

たまたま同じ名前の人なんだ

そう考えたのは何度もある

しかしそれを実際に口に出したことはなかった

しかし僕はそれを口にしてしまった

完全な彼との別れ

完全なハンカチ王子との別れ

気づいた時には居酒屋だった

確か負けた

あの一点で

覚えているのはあの後僕は抑えた

しかし押さえても点数が取れなきゃ意味がない

僕が打ってもホームベースに帰れなければ点にはならない

覚えているのはそれだけだ

みんな笑っている

何がおもしろいのだろう

負けたんだ

不愉快なだけだ

ピッチャーはあの時残念だったなと言ってくれた

気を使ってくれたのだろうか僕には不愉快で仕方なかった

失敗したのは例え凡ミスでも僕の責任だ

責めてくれた方が楽だしそれが当たり前だった

当然僕だってそうする

少なくとも過去の人生だとそれが当たり前だった

その後僕はのらりくらりと過ごし帰った

一応家はマンション

家には誰もいない

ハンカチ王子の時はあんなにいたファンもういない

昔はモテた

歳をとったからか?

いや、違う

僕は初めからモテてなんていなかったんだ

彼女らは最初から僕より僕の金が欲しかったのだろう

きっと中には僕自身を好きであった女もいただろう

しかしその子はもういない

後の祭りとはこのことだろうか

テレビをつけたらスポーツをやっていた

マー君がメジャーに行った時ニュースはそれで持ち切りだったが今はほとんど聞かない

正直そのニュースは聞きたくなかった

彼に勝った僕

にも関わらず彼は大物メジャーリーガー

僕は日本でくすぶっていた

いや彼はもう別人か

ニュースは石川遼君をやっている

嫌いだ

マー君や遼君のニュースはミュートにし、頃合いを見計らったことに音を戻す

まだやってたら苦痛でしかない

マー君は言わずもがな遼君が苦手な理由は察してほしい

髪型が叩かれてた時は爽快な気分であった

ニュースの音量を元に戻す

しまった一番苦手なニュースを見てしまった

今年の甲子園の優勝投手についてだ

これを見たときにはもう何もしたくはなくなる

僕はテレビを消しパソコンで2chをやることにした

最初は憂さ晴らしって言うかなんて言うか

底辺の見本みたいな奴らを眺めるのは気分がいい

僕は普段野球板となんjにいる

ちょうど今なんか祭りが起きているらしい

正直彼らの特定行為には関心しない物がある

話が逸れたが戻そう

その祭りを見て気分が良くなったのか今年の甲子園のスレに行った

「そう言えば○○高の投手は大学行くらしいぜwwwさいてょの二番煎じ(あ…察し)」

「今年の投手はメジャーもスカウトにきてるらしいぜwww一方さいてょは首になったンゴwww超絶草不可避www」

言いたい放題であった

いつもならスルーするはずだったが気分が良いせいかかっとなり自画自賛してしまった

帰って来た言葉は

「本人乙」

「本人キタ―――――AA(ry」

「本人がいると聞いて」

彼らに罵声を浴びせた

僕らしくない

「さいてょ泣いてもええんやで(ニッコリ)」

泣きたいはずもない彼はもう僕ではないからだ

その後僕は叩かれ退散

散々な一日であった

何日経ったろうかある時高校の頃の知り合いに小学生のコーチを頼まれた

僕は逃げ出したい気分に駆られたが相手の執拗な交渉の末折れ、一日だけとのやくそくでコーチになった

当日彼は彼なりに気を使ったのだろう大物のコーチが来ると言ったのだろう子供たちは目を輝かせていた

僕は物置の影で待機した

「プロ野球選手だって」

「え?マジで?」

憶測が憶測を呼び最終的にはマー君では?という結論に行きついた

僕が登場した

子供たちはポカーンとした

口々に「誰?」の合唱が始まった

そして子供たちの目から輝きが失った

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