憧「不思議の国のアコス?」(130)

――――――新子神社

憧「はーあ、なんで私が巫女さんなんかやらなくちゃいけないのよ」

望「そりゃあんたが神社の子だからでしょう」

憧「いやいや、今までこんなに参拝客いなかったじゃないの。
  初詣なんて地元の人が来るくらいで……
  それがなんだってこんな大賑わいなのよ、近くの道路一帯露店まで出てるし」

望「しょーがないじゃない、あんたたちが10年ぶりにインハイ出たんだし」

憧「はいはい、有名税ってやつね」

望「私たちの時もすごかったっちゃすごかったけど……
  インハイのネット配信だとか、中継する局の数も増えたしね。
  注目の度合いは段違いよ」

タコス

憧「つまり、この人たちは私の活躍を目にして駆けつけてくれたってことか…
  そう考えれば、そう悪い気はしないわね」

望「はいはい、いいから体を動かす。
  納屋のほうから御神酒持ってきて。
  それが終わったら、数が少なくなってるお守りを補充して。」

憧「えぇ?女の子にあんな重たいもの運ばせるつもり!?」

望「私があんたくらいの時にはいつもやってたわ。
  つべこべ言わずにダッシュ!」

憧「うぁ~~~い……」

アコス

憧「よいしょ、っと。はー、重い~~~~っ。
  ん?あれは、シズ?」

肩で息をする憧の少し向こうを、小柄な人物が走り抜けていく。
友人の穏乃のようである。

しかし、テールコートにシルクハット。
片眼鏡に金の懐中時計という出で立ちで、普段の彼女にはあまりに似つかわしくない。

穏乃「ひゃあ!遅刻だ遅刻だ~!」

手にした懐中時計を見ながら、一目散に神社の裏手、雑木林のほうに走っていく穏乃。

憧「あ、ちょっとシズ!どうしたのよ?」

叫び声は届いていないようで、そのまま駆けて行ってしまう。

憧「どうしたんだろ……ちょっとついて行ってみよう」

ガサガサッ

憧「えーっと、確かこっちに行ったわよね…
  あ!いた!って、あれ?」

憧「見つけたと思ったのに、急に消えちゃった…」

穏乃が消えたあたりに近づいてみると、巨大な穴が開いている。

憧「ま、まさか、この中に落ちちゃったのかな…」

穴に首まで突っ込んで覗き込み、叫んでみる。

憧「おーーーーーい!しーーーずーーーー!!!」



オーーーーーイ……シーーーーズーーー……

……ーーーイ……ズーー…






「なに?」

憧「きゃあ!」

穴は底が見えないほどに深かったのに、そのはずなのに。
すぐ耳元で声がした。ような気がした。
ずるり、と。驚きで、穴の淵に掛けておいた指が滑る。

憧「う、おあ、った、っと」

憧「きゃああああああああああああああ!!」

憧はそのまま穴へと落ちて行った。

―――――――???


袴が、裾が。風を切ってバタバタと音を立てる。
自由落下が終わらない。
体感では、既に10秒以上落ち続けている。

憧(ちょ…どこまで落ちるのよ)

憧(こ…こんな高さから落ちたら…)

憧(……)

憧(嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!!まだ死にたくなふきゅっっ!?」

柔らかな山に着地する。……顔面から。

憧「あいったたたた…なにこれ」

憧が着地したのは枯葉の山だった。
どうやらこれがクッションになって助かったのだろうか?
とはいえ、顔面から着地したせいか鼻と頬をすりむいているようで、
じくじくと痛み、かすかに熱を持っているようである。

憧「は、はにゃが痛い…痕にならないでしょうねこれ」

ふと、大きな姿見が置かれているのに気づき、怪我の状態を確認しようと覗き込んでみる

憧「!?」

そこに映っていたのは



小学生くらいの自分の姿だった

憧「え」

驚きはそれだけで終わらない。
唐突に目線が低くなり、同時に着ていた巫女服がだぼついて仕方なくなったのだ。

憧「な……これ…どういうこと」


ぐい

ぺたぺた

すとーん

信じがたいことだが、どうやら体が小学生当時のものに縮んでしまったらしい。

ふんふむ

憧「……」

憧「そうよ!夢!これは夢よ!」

憧「第一なんでこんなところに鏡があることに疑問を持たなかったんだろ!
  体が縮むなんてありえないし、夢で決まりね!」

しかし、じくじくと痛む鼻の感覚は現実のものと微塵の揺らぎもなく。
ついでに頬もつねってみようとして、怖くなってやめた。

憧「そんなことより、ここはどこなんだろう…?」

枯葉の山に立って上を見上げてみるが、はるか上にも入ってきた穴の光は見当たらない。

憧「この道を進むしかないか…」

足を踏み出したその瞬間、袴に足を取られてすっころぶ。
今の体躯にこの服は大きすぎる。

憧「白衣だけでも十分な丈があるみたいだし…
  袴はここで脱いでいっちゃおう。どうせ夢なんだから」スルリ



姿見のあった廊下を抜けると、扉が立ち並ぶ広間についた。

憧「うわ。なにここ……」

無数の扉が立ち並ぶさまは、何とも不気味だ。
どこまでもどこもまでも続く扉…
何となく、憧は病院のようだ、と思った。

あこちゃ!

期待支援

ふと、視界の端に扉ではないものが映る。
テーブルと椅子のようだ。
テーブルは憧の腰くらいの高さで――もっとも、今は胸くらいの高さだった――、
少しくすんだ金色に光る鍵が置かれていた。

鍵は中指ほどの長さで、色合いから真鍮か青銅でできているのだと知れた。

憧「とう」

憧は最も手近なドアを開けようと試みる。
しかし、鍵がかかっているようだ。
一つ、二つと隣のドアを、鍵穴を確認しながらドアノブをひねる。
そのどれもに鍵がかかっており、すべて鍵穴が違うようである。

憧「つまり…全部試すしかないってわけね」

あ゛こち゛ゃ゛ーだぁ゛ぁぁ!!

うんざりした様子で鍵を差し込んでいく憧だったが、意外にも3つ目のドアに鍵が合致した。

ドアを開けると、そこには小さな抜け穴があった。
それは…ちょうど、猫くらいであれば通り抜けられそうなものだ。
つまり、人間には通ることができないということである。

憧「期待して損した…」バタン

憧「ん?」

先ほどのテーブルに目をやると、何かが置かれているのが目についた。

大きめのタンブラーに、ピンク色の液体が満たされている。
下にはコースターが敷いてあり、何か文字が書かれているようだ。

憧「『I'm wonderful strawberry milk.
drink me』?
  私は不思議ないちごミルク。私を飲め…?怪しすぎる。
  …いちごミルクに不思議も何もあってたまるもんですか」

憧「……喉乾いたし、ちょっとだけ」ちゅぴ

憧「なにこれ!?すっごくおいしい!」

憧「んく…こく……」

小さな口の端からいちごミルクが垂れるのも構わずに、
憧はいつの間にかタンブラーいっぱいのいちごミルクを飲み干してしまっていた。

憧「けふ……」

口を袖で拭い、タンブラーをテーブルに置こうとして、はたと気が付く。
テーブルが、途方もない大きさになっている。
周りを見渡すと、ドアもすべて大きくなっていた。
いや、そうではない。自分が小さくなっていたのだ。
胸ほどの高さだったテーブルは、今や学校の校舎のように高い。

憧「こ…これならあの穴を抜けられるわね…」

3番目のドアのところへたどり着いたとき、憧はドアを閉めてしまっていたことに気が付いた。
ドアノブははるか頭上にあり、飛び上がっても届かないだろうし、
垂直なドアによじ登ることなどできるはずがない。


憧「ダメじゃん。どうやっても開けらんない」

憧「ここで立ち尽くしていても、しょうがないし。
  それよりも何かないかな。梯子とか」

憧「…あれ?」

憧はテーブルの下に、何か細長いものを見つけた。

憧「こ、これ……う、うなぎドック?」

丁寧にラップでくるまれたそれは、まるでコンビニにおいてある商品のように、
商品名とバーコードがプリントされたシールが貼られている。
ただ、本来なら値段が書かれているべき場所には別の文字が印刷されていた。

アコスの可愛さは異常

!?
服って縮まねぇよな……?

憧「『
eat me』?私を食べろ…ってこと?
  食べるとどうなるんだろう?
  大きくなるのかな?それとも、もっと小さくなるのかな?
  もっと小さくなれば、ドアの隙間から通れるかもしれないし。
  大きくなれば、鍵が使える。まだ試してないドアの先に道があるかも!」

憧「じゃ、いただきます。はむ…」

憧がうなぎドックを飲み下すと、体がどんどん大きくなっていく。
元の身長に戻った時、今度はどんどんおもちが大きくなり始めた。

憧「ちょ…ちょっと、なにこれ。聞いてないわよ」

見る間にスイカをゆうに超えた大きさになります。

憧「う……ぐ……くるし……」

霞さん以上……!

とうとう着ていた白衣は弾け飛び、
おもちが向かいのドアに達し、憧の背中は壁に押し付けられてしまう。

憧「つぶれ……ちゃ…う…」

バキリ、メリメリ。向かいのドアが圧力に耐え切れず割れてしまったところで、
やっとおもちは大きくなるのをやめた。
体は元の大きさに戻りましたが、今の憧には鍵を使ってドアを開けるどころか、
動くことさえできない。

憧「そんな…こんなのって…」

身動き一つとれない憧は、悲しくなって涙をこぼした。

憧「こ、こんな体になっちゃって、一人ぼっちで…
  もう、わけわかんないよ」


憧「うわああああぁぁぁぁぁん!誰か助けてよおおぉぉぉ!」

憧が涙を流すたびに、その涙は広間にたまり、大きな池になっていく。
深さ10センチ、20センチ。どんどん水かさが増していく。

憧「助けてえええぇ!シズーーーー!」

兎耳の生えた穏乃「なに?」

そばのドアから穏乃がひょっこり現れたところで、憧はやっと泣き止むのをやめた。
穏乃は着替えの途中だったようで、脱ぎかけのドレスシャツに、手にいつものジャージを持っている。

穏乃「わ!なんだこの水!
   って、うわあああああ!ばけもの!」

巨大なおもちの怪物に驚いた穏乃は、手にしていたジャージを放り投げると、
元来たドアへ逆戻りしてしまった。

憧「え、あ、ちょっと、シズ…」

涙に揺られて、放り出されたジャージが憧の手元へ流れてくる。
ジャージの上には穏乃がいつも髪をまとめるのに使っているヘアゴムも乗っていた。

憧「はは…しょうがないよね。そりゃびっくりするよ。
  もう、前みたいに話すこともできないのかな」

憧「だったら、せめて…思い出だけでも。
  このヘアゴムを、シズだと思って、ずっと一緒にいられるよう…」

二つくくりを解いて、穏乃のヘアゴムで一つに髪をまとめる。
と、その瞬間、パチンと風船が割れるような音がしておもちが霧散する。

憧「ごぼっ!」

支えを失った憧は、そのまま涙の海にダイブした。
なんとかテーブルを足場にして立ち上がる。

憧「よ、よかった…私、一生あのままかと」

人心地ついたところで、自分が裸であることに気付き赤面する憧。
手元には穏乃のジャージがある。

憧「しょ、しょうがないよね、これしかないんだし」

憧「インハイ以来だなあ……これ着るの」スンスン

憧「シズの、匂いがする」

突然、ジャージがぼうっと輝き始めたので、憧は驚いて顔を離す。
しばらくすると、なんと、みるみる体が縮みはじめる。
とうとううなぎドックを食べる前くらいに小さくなって、テーブルに足がつかなくなって、
ついには涙の海を泳ぐしかなくなった。

憧「泳ぐのって、あんまり得意じゃないんだけど…」

だが、不思議と水の中でも息苦しくない。この光るジャージのおかげだろうか?

憧「これなら、さっきの穴の奥に抜けられそうね……やっと」

先ほど砕けたドアをすり抜けて、水底に沈んだ小さな抜け穴にたどり着いた。

憧「この先は何があるのかな…できれば、元の世界につながっててほしいけど」

憧は水に満たされた暗いトンネルを進んでいく。
きっと、もしも今ここでジャージの力が失われてしまえば、
憧は先ほどの広間に戻ることもできず、前に進んでもこの暗闇を抜けきることができず溺れてしまうだろうな、と思った。

いやいや、俺は好きよ

水に包まれたこの状況では、前に進んでいるという感覚が希薄になる。
視覚のほとんど働かないこの暗闇では、想像力が掻き立てられる。
視覚のほとんど働かないこの暗闇では、恐怖が煽り立てられる。
視覚のほとんど働かないこの暗闇では、―――――差し迫る脅威に気付かない。

不意に、前方にジャージの放つ燐光を反射するものがある。
いや、これは―――壁だ。

憧「えっ、ウソ!?行き止まり!?」

ここまでの道程は、半月形のパイプのような一本道で、ほかに進むことはできそうになかった。
それは、つまり。

憧「ここまで来て、ハズレってこと…」

がっくりと肩を落とし、元来た道を戻ろう…としたその時。
振り返った先にも、壁があったのだ。

支援か!支援がほしいのか!このいやしんぼうめ!

紫煙

憧「え、あ、なに、これ…」

どの方位を向いても、たった今通ってきたはずの道が見当たらない。
憧は、完全に閉じ込められていた。尚悪いことに、今まで気が付かなかったのだが、
改めて見れば身にまとっているジャージの燐光は初めに光りだした時より明らかに輝きを失っている。

最初はケータイのバックライトくらいには周囲を照らしていてくれたものの、
今や燃え尽きる寸前のマッチほどの光源にもならない。

憧「ちょっと!冗談でしょ!?こんな…こんな…」

最後に、数度呼吸するように明滅して、ジャージの光は、完全に消失した。




完全なる暗闇に取り残される。


心という鍋に注がれた恐怖が、狂気が、煮え滾りその嵩を増していく。

憧「う、あ、あ、ああああああぁぁぁぁぁ……」

鍋の蓋を弾き飛ばし、沸騰し、噴き零れる。

憧「ああああああああああぁぁぁっ!!」

憧(ごぼっ!?)

終には周囲の水から護る力も失われたらしく、憧の叫びは中途で只の水飛沫となった。

憧(息が……できない……)

体中の細胞が酸素を求めているのを感じる。
頭がガンガンと割れそうに痛み、憧は両の拳を壁に向かって打ちつける。
が、当然水の抵抗によって阻まれ、ただ壁にぴたりと音を立てただけだった。

憧(あ、たし、もう、ダメ……)

そして、憧の意識は暗闇に溶けていった。

―――――森の中?



草いきれの、濃密な緑の香りがする。

憧「は?」

むくりと体を起こした憧は、己の目を疑う。
自分がいるのは暗い通路などではなく、木漏れ日の眩しい森だったのだから。

憧「私、助かったの?」

水たまりに両の足を浸してはいるものの、服も、髪も、一切濡れた様子はない。

憧「よ…よかったぁ!」

憧「あ、でも体は小さいままなのね…」

森の中を歩き始める憧。

しえん

憧「この体じゃ、いくら進んでも進んだ感じがしないわ!」

景色を見る限り、木の幹のそばを15本は通り過ぎたが、実際には50メートルほどしか進んでいなかった。

と、急に目線が高くなる。
元の大きさに戻ったのかと思ったが、そうではなかった。
何者かに首根っこをつかまれて、持ち上げられているのだ。

チェシャ猫の東横桃子「ふっふっふ、うまそ~なネズミ発見っす!」

小さくなった憧を捕えた顔には、見覚えがあった。鶴賀学園の東横桃子だった。
しかし、今はピンクと紫の着ぐるみのようなものに身を包み、
頭には同じ模様の猫耳を生やしている。

憧「ちょっと東横さん!離してよ!」

支援

桃子「さ~て、では味見するっす」

言うが早いか、桃子は憧を口に含んだ。

憧「ちょっと!聞こえないの!?やめてったら!」

桃子「はむ…んちゅ……」

桃子の柔らかな舌が、憧の全身を撫ぜていく。

憧「んあ…ちょ…」

桃子「ぺろ…れろ…」

普通は到底ありえない『全身を一枚の大きな粘膜に包まれる』という行為に、
憧は甘い吐息を漏らしていた。

憧「くっ……ふっ……」

桃子「はぁて、ふぉれじゃいただきまふっす」

ぐあ…と開けられた口には、人間にはない鋭い牙が並んでいる。

その、牙が。


憧に、突き立てられた。

憧「ごふっ!?」

甘美な快感に半ば身を委ねていた憧を襲ったのは、腹部を貫くすさまじい痛み。

憧「ふ、く…、かはっ」

全身の呼気を絞り出してあげられるはずの悲鳴は、声にならなかった。

あこちゃ!

憧(なんで!どうして!私がこんな目に…)

桃子「んむ!?これ…ネズミの味じゃないっす…」ぺっ

桃子「うあー、やってしまったっす。これ小人さんじゃないっすか」

憧はぐったりと体を横たえ、ほとんど虫の息だ。
腹部からはとめどなく血が流れ出している。

桃子「んー、えっと、確かこの辺に」

桃子はどこからか小瓶を取り出すと、中身を憧に飲ませた。

桃子「ほれほれー、お口を開けるっすよー」

ところどころ描写がこわい

どうにかこうにか憧が液体を飲みこむと、瞬く間に体が2メートルを超す大きさになった。

憧「げほっげほっ、ごほっ」

桃子「背中さすってあげるっす」スリスリ

憧「…すっごく痛かった。死ぬかと思った」

桃子「申し訳ないっす。ネズミかと思ったもので。
   …でも、大きくなったらさっきのは虫刺されみたいなもんっす」

憧がジッパーを下げて傷跡を確認すると、確かにおなかには針で刺したような赤いしみが残っているだけだった。

憧「ほんとだ」ジーッ

桃子「でもほんと、ごめんなさいっす。阿知賀のツインテさん、であってるっすよね。
   ……いまは、ポニテみたいっすけど。ついでに、小学生になってるみたいっすけど」

憧「もう、いいわよ。ちゃんと生きてるわけだし。
  でも、ほんと痛かったんだからね!」

桃子「これに懲りて拾い食いはよく確認してからにするっす。
   なにぶん私もおなかが空いていたもので…」

桃子「というか、さすがに、今の大きさってのは不便っすよね。
   岩手の姉帯さんよりでかいっす。
   お詫びに体の大きさを元に戻すキノコのところへご案内するっす」

憧「わかったわ…それでチャラにしてあげる」

憧が桃子の後についていくと、赤と青の茸がたくさん生えている場所に出た。
そばには赤と青、それぞれ大きなキノコが1つずつあり、2匹の芋虫がその上に寝そべっていた。
青の大きな茸の上の芋虫は煙管を咥えている。


芋虫の藤田靖子「ようこそ、『茸だらけの日陰』へ。こんなものよりカツ丼食べたい…」スパー

芋虫の三尋木咏「赤か青か、どちらかのキノコは食べると体が大きくなって、
        どちらかのキノコは食べると体が小さくなるみたいだねぃ。知らんけど。
        ちなみに、どっちがどっちかは私にもわっかんねー!」

憧(…寝袋?なにこれ、芋虫のつもりなわけ?)

二人は、首だけ出して寝袋に収まっていた。

憧「…東横さんは、どっちがどっちかわかんないの?」

しえ

桃子「はいっす。ただ、こいつらのうち片方に1回だけ質問することができるっす。
   一人はウソつきで、一人は正直者らしいっすから、よく考えて質問してほしいっす」

靖子「だよー」

咏「知らんけどー」

憧「んむむむむむむ……わからん!
  こーなったら、どっちも食べればいいのよね!
  とりあえず、青のほうから…」はぐ

口に含んだその瞬間、憧は森をはるか空高くから見下ろしていた。

あ こ「わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!お゛お゛き゛く゛な゛り゛す゛き゛い゛!」

あ こ「し゛ゃ゛あ゛、あ゛か゛い゛ほ゛う゛を゛」

次に赤い茸を飲み込むと、今度は小指の第一関節ほどにまで縮んでいた。

桃子「あーあ、豆粒みたいになっちゃってるっす」

桃子に青い茸を取ってもらい、一かじり。
どうにか2メートル程の大きさまで戻ることができた。

憧「なんて効果の強いキノコなのよ…これまでとは段違いじゃない」

桃子「食べるんじゃなくて、こう、舐めてみたらどうっすか?
   両手に1本ずつ持って、交互に微調整を繰り返したらいいと思うっす」

憧「なるほどね…そうするわ」

言われたとおりに、憧は両手に赤と青を1本ずつ持ち、茸を舐めていった。
小さくなりすぎれば青を、大きくなりすぎれば赤を。
10分ほどして、憧はようやく元の身長に戻ることができた。

憧「んむ…れろ…」

憧「うん、このくらいでいいかな」

桃子「じゃあ、ありがとうございました。お二人とも」

咏「いや、うちらなんもしてねーし」

靖子「まったくだな」

桃子「そしたら、ツインテさん。森の出口に案内するっす」

憧「あ、うん」

―――――――三月兎の家



桃子の後をついていくと、開けた場所に、レンガ造りの家が見えてきた。

憧「あれは?」

桃子「三月兎の家っす。森の出口はあっちじゃないっすよ」

憧「兎の家ってことは、シズがいるかもじゃん!ちょっと寄って行こうよ」

桃子「仕方ないっすね…」

憧「お邪魔します…」

投下ペースはやいね

気狂い帽子屋の蒲原智美「ワハハ、お客さんだぞー衣」

三月兎の天江衣「そのようだな智美」

憧「こんにちわー、天江さん、蒲原さん、ここで何してるの?」

衣「何、茶会余興に麻雀を打っていたところよ。
  よければ阿知賀のもどうだ?」

智美「ワハハ、今回の茶菓子のアップルパイは力作だぞー」

憧「うーん、せっかくだしお願いします。
  東横さんもいるから四麻できるし」

桃子「私は参加確定なんすか…」

衣「時に阿知賀の。お前はどういうときに茶会を催す?」

憧「茶会?…パーティーなら、やっぱり誕生日とか?
  何らかの記念日じゃない?」

衣「そうだ。世間では特別な日を祝い、祭事を行う。
  だが、それでは365日のうち1日だけだ」

智美「だから、私たちは特別じゃない日を祝うんだ」

衣「特別じゃない日を祝えば364日、毎日がお祭りだ」

俺のキノコもなめてもらいたい

>>60
ハンプティ・ダンプティでも舐めてろ

智美「だから、特別じゃない日に乾杯!」

衣「乾杯!」

智美「だから、私たちはインターハイじゃない日に麻雀を競うんだ」

衣「その通り」

衣「前置きはこれまでとしようか。刻は満ちた。
  …さて、貴様の耳にも、昏鐘鳴の音が聞こえるか?」

憧「…よろしくお願いします」


桃子(や、別にいーんすけど。このテンションついていけないっす…)

この4人の中で誰が死ぬんですか?(小声)

2時間後

憧「ねえ…………」


2ヶ月後

憧「この麻雀………いつ終わるの………?」



2100万年後

憧「」

衣「…衣たちは、『インターハイではない日』を祝って麻雀をしている」

智美「インターハイが来たら終わりだなー」

憧「じゃ、インターハイっていつなのよ?」

智美「この世界にインターハイなんてものはないぞ」

衣「この麻雀に終わりなどない」

衣「あるとすれば、自身が打つのを止めたとき、だな……」

憧「……………」

憧「…………………………………………」

憧「そ、じゃあ私たちはこの辺でお暇するわ。お茶、ごちそうさま」

桃子「っすー」

衣「では、さらばだ」

智美「ワハハ、またなー」

ワハコロははまり役すぎるな

―――――――庭園


桃子「じゃあ、私が案内できるのはここ、森の出口までっす」

憧「ありがとね」

桃子「おたっしゃで」

桃子がぺこりと一礼すると、その姿は周囲の景色に溶けるように消えていった。




憧「森を抜けたらすぐ庭園、か…この世界の建築センスってどうなってるのかねまったく」

庭園に植えられている生垣には、五筒の花が咲き乱れていた。
と、そのとき憧の耳に、遠くから歌声が聞こえてくる。


三元牌・中の緋菜「五筒の花を赤ペンキで塗るし♪」

三元牌・發の菜沙「大至急チョッパヤでペンキを塗るし♪」

三元牌・白の城菜「五筒の花を赤五筒にするし♪」


歌声のするほうに近づいてみると、3つの麻雀牌が歌を歌いながら五筒の花に赤ペンキを塗っていた。

あこあこ

憧「な、なんで五筒にペンキを塗ってるの?
  ていうか、なんで五筒が木に生えてるわけ……?」


緋菜「赤の女王はドラが大好き♪」

菜沙「ただの五筒はドラじゃない♪」

城菜「ただの五筒植えたら殺される♪」

憧「ふーん、そりゃ穏やかじゃないわね…
  じゃ、あたしも手伝ってあげる」

3人「ありがと~~だし~~~~♪」(echo)


憧たちがペンキをすべての五筒に塗り終わると同時、どこからかラッパの音が鳴り響く。

しえん
池田の妹可愛い

女王様は……

菜沙「赤の女王のお通りだし!」アワアワ

緋菜「ペンキを隠すし!」イソイソ

城菜「あでっ!」ズルッ

憧「ああっ!ペンキ思いっきり石畳にこぼれた!」

城菜「どうしよう……」

緋菜「どうしようもないし!女王さまもう来てるし!」

あれこれヤバくね?

赤の女王の松実玄「ご機嫌ようなのです、みなさん!!」

菜沙「ご、ご機嫌ようだし…」

玄「ん?なにこの赤ペンキ」

憧「って、玄じゃない!」

玄「私を誰だと思ってるの?赤の女王だよ!?」

            \   /´  __r― r‐ r‐、.ト
             乂   f i |  !  i ∨
        |\_   \ 八}  {   }  }  }
        <    /    \   ' __,.. -- '
        |/\| 二 ミ、/:` ¨¨´::::::::::::ヽ

               /::::::::::::ハ::::ハ::::::::::ム
               i:: ハ 乂 レ ノ リ:::::::} 
               |:。:l. >  < .|l:::::i
               ノ::::八xx   xx ノ::::::} 
              /:::メ:_≧-⌒-≦_::::::::i 
             ./:::/ヽ>=Y=<, `ヽ::l 
             .て_ソ:`i  .||.   iヽl__)l
            /:::::::メ::::::.|  ||.   |:::ゞ::::ヽ

クロチャー…

玄「…そんなことはどうでもいいや。このペンキ…まさか!」

玄は生垣の赤五筒を調べ始める。

玄「これ……偽物じゃない!赤ペンキを塗っただけの!」

3人「…」ガタガタガタガタ

玄「ちょっと……池田!池田ァ!」

3人「は、はい!」(震え声)

玄「あなたたちじゃないのです!」クワッ

ディズニーの曲が頭をよぎるわ。しえん

六索牌の池田華菜「はい!はい!ただいま参りました!」

玄「池田…あなたに命令です。この3人の首を刎ねなさい」

華菜「ななななな、なんですって!?」

玄「こ、い、つ、ら、を、殺せ、っていったの」

玄「じゃ、私は宮殿に戻りますので。」

華菜「」

(アカン)

支援支援

華菜「そ、そんなことできるわけないし…」

華菜「な、なあアンタ!頼むよ!妹たちを助けてやってくれ!お願いだし!」

憧「言われなくても…わかってるわよ。
  玄に言いたいこともあるし」

憧「ほら、あんたたち。ジャージのポケットに入ってなさい」ムンズ

3人「わー」

華菜「ありがとだし…恩に着るし…」

しずよけ

童話って結構怖いもんな
シンデレラの母ってガラスの靴が脱げなくて死ぬらしいし、知らんけど

―――――――宮殿


玄「ん?さっきの人と、池田じゃないですか。
  ちゃんとあの3人の首は刎ねたんでしょうね?」

華菜(正直に言っても、尋問されて居場所吐かされて、みんなまとめて殺されちゃうだけだし…)

華菜「はい!ちゃんと死刑にしましたし!」

憧「ちょっと玄!どういうつもりよ!」

玄「さっきもそうだったけど、あなた、女王に対する口のきき方がなってないよね…」

玄「池田!この人の首を刎ねちゃいなさい!」

憧「さっきから軽々しく人を死刑にだなんて…いい加減にしなさいよ!」

華菜「そうですし。いくら女王様といえど国民以外を一存で死刑になんてできませんし」

玄「うぐぐ……でしたら、裁判をしましょう。決着は法廷でつけてあげます」




――――――――麻雀牌の国裁判所


赤の王様の松実宥(おひげ装備)「静粛に。それでは、これから被告人、新子憧の裁判を始めます」カンカン

宥「新子憧さんは、麻雀牌の国・女王の玄ちゃんを侮辱したので、死刑です♪」



宥「これにて閉廷です」

おい宥姉

宥姉がこんなこと言う訳ないだろ!

憧「ちょ、なにふざけたこと言ってんのよ宥ねえ!こんな裁判認められるわけないでしょ」

宥「法廷侮辱罪と王様への侮辱罪…ついでに国家反逆罪も追加だね♪」

宥「あ、忘れるところだった。宮殿の五筒にペンキを塗るなんて。
  器物損壊と詐欺罪も乗っけないとね」

玄「うわわわわ……犯罪量刑余裕の52飜。クアドラプル役満だよぉ。こりゃゴーモン確定だねおねえちゃん♪」

宥「火頂冠に焼きゴテ。鉄板に火あぶり。あったかいのい~っぱい」

憧「」ブチッ

駄目な宥姉も珍しい

松実宥(おひげ装備)

参考画像はよ

憧「こ、の……たかが麻雀牌の分際で、ちょーしに乗ってくれちゃって…」

憧「こんなこともあろうかと取っておいた青いキノコで…」はぐ

憧「ぶっつぶしてやるわ!!」




新子憧は麻雀牌を見あげていた。
先ほど口にしたのは、青の茸ではなく、赤の茸だったのだ。

玄「ふっふっふ…潰されるのはどっちなのでしょうねぇ…」

逆に考えるんだ・・・小さくなれば体内に入って攻撃できると

玄「みんな!その愚か者をぺしゃんこにしちゃうのです!」

一萬の神代小蒔「全力以上でのしかかっちゃいます!」

南の石戸霞「得意分野…いかせてもらおうかしら!」

九索の佐々野いちご「こんなチョイ役とか…そんなん考慮しとらんよ」



憧「いやああああああぁぁぁぁぁぁ!」

ちゃちゃのん…

『次のニュースです。1月2日午後5時ごろ、奈良県吉野町の雑木林で、

 私立阿知賀女学院の生徒の遺体が発見されました。

 警察庁の鑑定の結果、女生徒は近くに住んでいた、新子憧さんとみられています。

 新子さんは、強く頭を打ち、発見された時には既に息を引き取っていたとのことです。

 現場には争った形跡がないことから、警察は事故と自殺の両面から捜査を続けるとのことです

 さて、次は天気予報です………………』

えっ

死んじまったのかよ

いやいや

おいこら

―――――――現実


望「おーい、あこー、おきろー」

憧「んぅ…」

憧「はっ!?」

望「そんなところで寝てると、風邪ひくよー」

憧「あ、うん…」

望「まあ今日はなかなかハードだったからね。お風呂入ってさっさと寝ちゃいなさい」

憧「はーい」

!?

夢落ち?

不思議の国のアリスも夢オチだっけ?

夢オチは原作通り

憧「戻ってきた…んだよね。」

脱衣所の鏡に映っているのは間違いなく高校一年の新子憧である。
着ているのは穏乃のジャージではなく、赤い袴と白衣だった。

憧「どこからが夢で…どこまでが現実なのか…いつの間にか一日が終わってるし…
  だいたい、最後に頭の中に流れてきたニュース番組だけ、異質過ぎない?」

憧「あ~~もうっ!さっさと入って寝よ!」




チャラ



憧「?」


憧「袴のポケットに…なんか入ってる?」





それは、見覚えのある…三元牌だった。
脱衣所の鏡が、石を投げ込んだ水面のように、小さく、波打った気がした。

カン

乙だし

おつー
夢オチで安心した

乙なのよー

面白かったのよ~また別のが読みたいね

あこちゃをソフトリョナりたかっただけのSS


一人称視点に近い感じにして冒険してる感出したかったんだけど
やっぱ地の文多いのは受けないみたいだからやめるのよー

お題なんかあればくださいな

じゃあの

不思議の国のタコス

お題ね。それじゃあオーソドックスにシンデレラとか

鏡の国の…

童話縛りなの?
シズとアコチャーのいちゃいちゃがあればなんでも

スレタイでランバラル隊の副官を連想した件

いや、ぜんぜん童話で縛らないよ

鏡の国はさ、一応ラストの行で布石っぽくはしてみたけど
不思議に比べてほとんどの人が知らないエピソードばっかだから全然情景浮かばなくてつまんないと思うから書かない

間違えた、副官じゃねえな

あれでロリコンに目覚めた奴がかなり居ると聞いたぞ

とはいえ童話以外に考えられるお題となると・・・例えば何があるかな?

あとでよむほ

おつおつ
アリスよく知らないけど楽しめたし
この続きも見たい

風の谷のナンポカ

穏乃「うで♪うで♪うで♪」

姫子を尋ねて3000マイル

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