王「ワシの所に来た魔王討伐のパーティーがおかしい」(47)

王「次の者、参れ」

将軍「応」ガッシャガッシャ

侍「ちょっと将軍様、刀くらい外してくださいよ」

将軍「何を言うか。刀は武士の誇りぞ」

巫女「相変わらずサムライ共はうるさいわねえ」

陰陽師「まあまあ」

王(何こいつら……)

王「諸君らは、魔王討伐を目指すパーティということでよろしいな?」

侍「はい」

王「本来なら、魔王討伐パーティには我が国より支援金が出るのであるが、軍資金にも限りがある故、我々に力を見せてもらわなければならぬ」

将軍「我らを試すだと!?」ギロッ

王「(うわ怖っ)申し訳ないが、そういうことになる。最近、我が国周辺にならず者が巣食っていると聞く。解決してまいれ」

侍「はい分かりました。将軍様、行きますよ」

将軍「まっこと無礼な者じゃ!我を知らぬというのか!?」

巫女「しょうがないじゃない。私らたぶん日本ではないところにいるのよ」

陰陽師「そうでしょうな。日本特有の龍脈が感じ取れません」



王「何なのあいつら」

側近「私にも分かりませぬ。ただ最近現れては町民の依頼などを受けているらしく、評判はそれなりとのことです」

王「マジでか」

――盗賊のアジト
盗賊A「今日も戦果は上々ですな、親分!」

親分「ああ。何よりあの貴族の令嬢が手に入ったのが思わぬ収穫だったな」

盗賊B「しかし随分反抗的な娘ですぜ。牢に入れるのに手古摺っちまいましたや」

親分「あれは大事な交渉材料だからな、まだ何もするなよ?」

盗賊A「分かっておりやす!」

盗賊C「親分!飯の準備が――

将軍「頼もう!」

侍「頼もう!」

盗賊A「何だ貴様らは!」

盗賊B「ここを我々のアジトと知っての行いか!?」



巫女「まったく戦闘馬鹿どもはどうして突っ走っちゃうのかしら」

陰陽師「まあ穏やかには行かないでしょうな。私は式神の準備をしますので、あなたも準備なさっては?」

巫女「そうね」

親分「どこの誰だかは知らねえが……俺らのアジトが知られたからには、生きて帰すわけにはいかねえな。おいお前ら!やれ!」

盗賊A「イエッサー!」

盗賊B「ヒャッハー!」

将軍「やあやあ我こそは……がっ」

盗賊C「何をごちゃごちゃ言ってやがるおっさん!」

侍「将軍様、こいつら言葉が通じないようです。礼儀作法に乗っ取る必要もありませんな」

将軍「うむ。こやつらは畜生と同じじゃ。けだものの類じゃ」

盗賊D「何ごちゃごちゃとしゃべってやが……る!」

侍「分かりやすい攻撃ですね。こんなんじゃ戦場には出られませんよ」

盗賊D「ムカつくなお前は……あっ」ザク

スパン

侍「賞金首、一丁上がり。目の前の敵にもう少し集中するべきでしたね」

盗賊Dの首「」ゴロン

将軍「三対一で敵を囲むとは……貴様らには武人としての誇りは無いのか」

盗賊A「何を言ってやがるおっさん」

盗賊B「今すぐ武器を捨てて降参すれば命は助けてやるぞおっさん」

盗賊C「やーいおっさんやーい」

プチン

将軍「よく分かった。貴様らは真に畜生と同じなのじゃな!」ブン

スパン スパン スパン



巫女「壮観ね……10秒足らずで4人の首が飛んだわよ」

陰陽師「盗賊共があれだけだとしたら、私たちの出番もなさそうですが……」

ザッ ザッ ザッ

巫女「どうやらそうもいかないようね……」

陰陽師「あなたは私の後ろに。見たところ、あまり戦えるわけではないでしょう」

巫女「悪いわね。祈祷専門だから……」

盗賊E「んだぁ……?一体何が起こってやがる」

盗賊F「騒がしいなぁ……おいらっち今まで寝てたんよ?」

盗賊G「何こいつら侵入者?」

親分「おいお前ら!侵入者がいる!今あっちで盗賊Aたちが戦……」

スパン プシュッ

盗賊F「今飛んでったのって……」

親分「……っているから加勢してやってくれ」

盗賊F「無理です!死にたくない!」



陰陽師「札はこんなもんでしょうか……」

巫女「なんだかまがまがしい札ね……いったいなんなのよ」

陰陽師「そうですね……言うならば『恨みを持って死んでいったものの魂』の様な」

巫女「あんたなよっちい顔してえげつないもの使うわねえ……」

陰陽師「本当なら、犬神とか用意できれば良かったのですが……」

巫女「その犬神とやらがなんなのかは聞かないでおくわ……」

盗賊E「おう兄ちゃん。いい歳して紙人形遊びか?」

陰陽師「そうですね……あなたも一緒に遊んで行かれますか?」

盗賊E「俺は遠慮しとく……ぜっ」ブン

陰陽師「おや危ない」スッ

盗賊E「スカした野郎だぜ!」

巫女(この盗賊共……装備はそこそこみたいだけどとんだ見かけ倒しのようね)

陰陽師「行きなさい」スッ

盗賊E「お?見慣れないまじゅ……」

ペタ

盗賊E「つ……だ…………」パタッ

巫女「…………陰陽師さん、あなた一体何を」

陰陽師「なに、一緒に仲良く昇天していただいただけですよ」ニッコリ

巫女(陰陽師って怖えー)

盗賊F「お、お前!盗賊Eに何をした!」

陰陽師「……いちいち説明するのも面倒ですね。体験してもらいましょうか」フッ

巫女(あ、またあの紙人形だ)

盗賊F「うわわわわ、おい、ちょっと、こっち来んな!やめろ!あっちいけ……」

ピタッ

盗賊F「しにたぅ……な……い…………」パタン

巫女「うっわぁー……凄い形相で死んでるわね」

陰陽師「いったい死ぬ前に何を見たんでしょうかね?」ニコニコ

巫女「……あんただけは心底敵に回したくないわ」

陰陽師「?」ニコニコ

盗賊G「やややややべえっすよ親分!」

親分「なんてこった!肥えた貴族共の私設兵団くらいなら軽くあしらえるはずの我が盗賊団がこんなにも簡単に……」

盗賊G「こうなったら人質の一人でも取ってやりやしょうか」

親分「…………そうするしか無いだろうな」



巫女「嫌ね……私の服、随分血なまぐさくなっちゃったわ……」

陰陽師「まあまあ。この仕事を終わらせて王都に帰れば、禊をしたり服を洗ったりはできるでしょうから、少しの辛抱ですよ」

巫女「そうね……我慢するわ」

盗賊G「油断したな!」

バッ

巫女「あっ……」

陰陽師「巫女さん!」

親分「ふ、ふふふふふ……お前ら、この女を傷物にしたくなければ大人しくしろ」

将軍「むっ……女子を盾にするか!戦場に立つ男の風上にも置けぬ卑劣さなり!」

侍「悪党どもめ……」

親分「ふ、ふふ……なんとでも言え。身動きをしたらその瞬間、盗賊Gがナイフでこの女を……」

巫女「…………天照大神様。その大いなる輝きを以って我らに仇なす者の身を……」

盗賊G「何を言っている女!妙な動きを……」

巫女「焦がし給え。太陽の炎!」ボッ

親分「ぁあん?妙なこと言ってると……」

シュボッ

親分「あああああああああああああっ!熱ぃ!やめろ!」

盗賊G「お、親分!……こんのクソ女!せめてお前だけは!」キラッ

巫女「ぁ……やっ……」

将軍「成敗!」斬!

ストン

盗賊G「ころ……」プシャァ

ボトリ

巫女「ぅ……ぁ……あれ?」

将軍「無事か」

巫女「……うん。ありがとう、助かったわ」

将軍「なんの。女子を護るのはいつの世も男の使命じゃ」

陰陽師「すみません……私がもう少し背後に気を配っていれば、あんな男などに……」

巫女「ううん、大丈夫。結果的に私どこも傷つけられてないから。ね?」

陰陽師「はい……」

侍「ところで巫女さん、さっきのは一体?」

巫女「太陽を司る神、天照大神。名前くらいは当然知ってるでしょ?」

侍「はい」

巫女「その神様のお力を少し借りてね」

陰陽師「なるほど、だから太陽の炎ですか」

巫女「ここらへん……いや、もしかしたらこの世界なのかも知れないわね……お社とかないし、神様のお力も及んでないかと思ってたけど、そうでもないようね」

将軍「では、奴らの首を持って城へ帰るとするか」

巫女「……え?こんなの持っていくの?」

将軍「当然であろう。かの王に証拠を示さねばならぬ。それにきちんと弔ってやらねば」

巫女「弔いもするのね」

将軍「死ねば皆一緒じゃ。首を埋めて手を合わせてやるのが道理じゃ」

陰陽師「私の観点から言っても、それが妥当でしょう。変に祟られたりしても困りますしね」

思いつくまま適当に書いてるけどいいんだろうか……
キャライメージ的には↓こんな感じ
将軍……偉い人。剣術に長ける。RPG的なポジションは勇者?
侍……将軍の付き人。柔軟な思考を持つ。ポジションは戦士
巫女……神様の力を借りていろいろできる。ポジションは僧侶にしようと思ってたけどしょっぱなから攻撃魔法?ぶちかましてしまった
陰陽師……式神使ったり霊をどうこうしたり地理的な力を使ったり。ポジションは魔道士

巫女さんがぶっ放した太陽の炎はフレアとかメラゾーマ的なアレ
戦闘シーン難しい……

巫女「しっかし……私の服見事に全部真っ赤になっちゃったわね」

侍「まああんな間近で首が落ちればそうなるでしょうね」

陰陽師「早いとこ帰りましょうか」

ドンドン!ドンドン!

将軍「……む。何か聞こえぬか?」

侍「いえ……あれ?」

ドンドン!ドン!

侍「あー……壁を叩く音?ですかね」

陰陽師「ちょっと様子を見てきましょう」

巫女「私も行くわ」

陰陽師「ははあ、この壁の裏は牢だったわけですね」

巫女「ちょっと陰陽師……昔ここで死んだ誰かの霊じゃないでしょうね?」

陰陽師「いえ……どちらかと言えば生者の気配ですが」

ちょっとー

巫女「あっちの方から声がするわね」

陰陽師「若い女の方でしょうか」

おーい!誰かいるんでしょー?

巫女「はーい」トコトコ

お嬢様「ああよかった。私を助けに来てくれたの?」

陰陽師「いえ、私たちはここらに巣食う盗賊共の討伐として来たものです」

お嬢様「ふぅん……まあいいわ。私としては助かったのは事実だし。それより、ここから出してくれない?」

巫女「陰陽師、あんた鍵見かけた?」

陰陽師「……さっきの盗賊共の誰かが持ってるのでしょう。探してきます」スタスタ

巫女「ということで、もうちょっと我慢してね」

お嬢様「ま、仕方ないわね」

陰陽師「すみません将軍さん、侍さん。鍵を探すのを手伝ってもらえませんか?」

侍「鍵ですか」

陰陽師「ええ、牢を開放するのに必要なんです。この中の誰かが持っていたらしいのですが……」

将軍「その鍵というのは、この鍵束のことか」ジャラリ

陰陽師「ここの親玉がもってた鍵束ですね……きっとその中の一つでしょう、お借りしていきます」

将軍「うむ」



陰陽師「お待たせいたしました。持ってきましたよ」

巫女「お疲れ様。これで牢を開けられるわね」

ガチャ

お嬢様「ふわぁー……丸三日もあんなとこにいたから、肩が凝ってしょうがないわ」

巫女「……水浴びもしていないの?」クンクン

お嬢様「……っ!?だめ、こっち来ないで!」

巫女「私だって似たようなものだし、気にすること無いのに」クスクス

――――
侍「というわけで、無事に依頼を完了しました」

王「うむ、ご苦労であった。特に、我が姪を救出してくれたことには感謝してもしきれないほどだ」

陰陽師「姪ですか?」

王「……この国の西部を治めさせているワシの弟の娘じゃ。つい4日ほど前に顔を見せにきての」

陰陽師「では、さらわれたのは……」

王「そうじゃ、その帰り道じゃ……馬車は壊され、護衛としてつけていた二人の兵士はどちらも逃げ出してしまった……姪にはワシのせいで」

お嬢様「おじさま……ただいま戻りました」

王「着替えは済んだのか?」

お嬢様「はい……城のお風呂をお借りしました」

将軍(護衛の本分を全うせぬとな……我の部下ならば見つけ出して即打ち首であろうに)

王「ところで、そちが携えている重そうな袋は何じゃ」

将軍「む、これか。証拠品じゃ。我らがきちんと依頼を成し遂げたというな」

王「証拠とな」

将軍「要は首じゃ。ほれ」

ゴロンゴロン

お嬢様「きゃっ……」

王「ひぃ」

巫女(ほんとに持ってきてたのね……うっ……酷い臭い)

侍「これで全員のはずです」

王「わ、わかった。早くそれをしまってくれ」

将軍「うむ」



陰陽師「国の頂に立つものとしては少々肝っ玉が小さいですね」

巫女「いや何の心構えもなく生首見せられたら誰だってああなるでしょうに」

陰陽師「そうですかね」

王「……それでは、この国からそなたらに少しではあるが支援金が出る」

側近「こちらを」

陰陽師「どうもありがとうございます」

王「装備を整えて、しばらくの飲食には困らない程度の金を包んでおいた。我が姪を救ってくれた分も含め、多少色を付けてある」

侍「それはご丁寧に」

王「それで、ついでと言ってはなんじゃが頼みがある」

将軍「何じゃ」

王「西の街まで、姪を護衛してほしい。西の街には優秀な鍛冶屋がたくさんいるので、そなたらの助けにもなるじゃろう」

陰陽師「そういうことなら引き受けましょう。しばらくは魔王の根城の捜索もありますしね」

お嬢様「しばらくの間よろしくね!」



巫女「ところで、私もお風呂使わせていただけるかしら」

王「おお、気が付かなくてすまぬな。側近、案内してやれ」

側近「はっ。ではこちらへ」

巫女(私生臭いとか思われてないわよね……?)

――――
王「気を付けていくんじゃぞー」

お嬢様「ありがとうおじ様!」

陰陽師「お世話になりました」ペコリ

将軍「では、西の街に向かうとするか」



巫女「ねえ陰陽師、私たちのいる意味ってあるのかしら」

陰陽師「さあ……?前衛の二人が頑張ってくれてますから……ああお嬢様、そんな怯えないで」

お嬢様「あの人たち……怖い」ブルブル

巫女「まあ、無理もないわよね……」チラッ

将軍「斬!」ブシャァァァァァ

侍「撃!」バシャァァァァァァ

巫女「いくら雑魚とはいえ、刀の一薙ぎごとに敵が真っ二つになってふっとんでいくのを見るのは心臓に悪いわ」

陰陽師「ですねぇ」

お嬢様「ひぅ……」ブルブル

巫女「大丈夫よー」

将軍「終わったぞ!怪我はないな?」ガッシャガッシャ

侍「大丈夫ですか?」

お嬢様「ひっ……」

巫女「だーいじょうぶだって……こっちは無事よ?あなたたちが頑張ってくれたおかげね」

将軍「なんの」

侍「こんな相手に後れを取ることはないですね」

巫女「頼もしいわ」

お嬢様「二人とも、ちょっと怖いけど……素敵ね。王宮騎士団にも匹敵するんじゃないかしら」

陰陽師「……王宮騎士団とは?」

お嬢様「あなたたち知らないの?王宮騎士団と言えば、この国が持つ最大戦力よ。未だに敗れたことはないとまで言われるわ」

陰陽師「それでは、魔王討伐はその王宮騎士団がやれば良いのでは……」

お嬢様「そうもいかないのよ。魔王軍は、それこそその王宮騎士団が総出でかからなければいけない相手でね……」

将軍「……それをしていては、他国の侵入を許してしまうというわけか」

お嬢様「そういうこと」

巫女「やあねえ、人類の敵ともいうべき相手を前に、人間同士で小競り合いなんて……」

将軍「仕方あるまい。領地の取り合い、財産の奪い合いは人間の生まれ持った性じゃ」

侍「ですね」

陰陽師「二人とも、敵がまた前方にいますよ」

将軍「む、行ってくる」

侍「俺もお供します」



巫女「早いものね、あと一匹……」

陰陽師「すみません!その一匹、生かしておいてください」

将軍「む?どうした」

陰陽師「狐、ですね。まさかここにも狐がいたとは」

巫女「狐がどうしたのよ?」

陰陽師「狐と言えば、数ある動物の種の中でも最も霊力の高い動物と言われています」

巫女「聞いたことあるわね」

陰陽師「中でも、長く生きた狐は天狐や空狐と呼ばれ、神通力を操るとか……」

巫女「それで?」

陰陽師「まあ、要は使い魔にしてしまおうということです。申し訳ないですが将軍さん、その狐、契約が済むまで抑えておいてください」

将軍「こうか」

狐「ケーン!」ジタバタ

陰陽師「……汝、我と契約し……」ブツブツ

狐「ケーー……」スッ

巫女「大人しくなった……すごい」

陰陽師「これで、この狐は私の力を糧とし、ある程度の神通力を使うことができます。しばらくは旅の役に立ってくれるでしょう」

巫女「ちなみに、何ができるの?」

陰陽師「この狐は生まれて2年ほどのようですから……そうですね、私の力を借りて相手に幻覚を見せるくらいですかね?」

巫女「狐ってすごい」

お嬢様「ねえ、巫女と陰陽師って何ができるの?」

陰陽師「何、とは?」

お嬢様「いや、このパーティで前衛担当はあの二人でしょ?普通は前衛二人に回復薬と後衛一人って感じで組むんだけど……」

陰陽師「ああ、そういうことですか……確かに私は後衛担当でしょうかね。主にサポート役ですよ」

お嬢様「へぇ?」

陰陽師「結界を張ったり、周囲の地形を利用したり……時には式神や霊魂を操ったりもしますかね」

お嬢様「シキガミ?」

陰陽師「こちらで言う使い魔?みたいなものです。使い捨てですが、割と簡単に作れますよ?」

巫女「材料はアレだけどね」

お嬢様「材料?」

陰陽師「聞きたいですか?」

お嬢様「…………止めとくわ」

陰陽師「それが賢明でしょうね。夜眠れなくなりますよ」

お嬢様「むぅ、子ども扱いして……」

巫女「ふふ」

お嬢様「巫女は?」

巫女「私?私は神様の力を少し借りて、敵を攻撃したり、味方の援護をしたりってところね」

お嬢様「神様、ってあの教会の?」

巫女「違うわ。私たちの言う神様は、そうね……こちらでいう精霊に近いかもね。太陽の神様や火を司る神様、それに変わったところじゃ長く使われたものに憑く神様なんてのもいるわ」

陰陽師「付喪神、ですね?」

巫女「そう。私が持ってる護符にも、神様がいるかも」

お嬢様「面白いわね……あなたたち、一体どこからきたの?」

巫女「どこ、ねぇ……それが分かれば私たちも苦労しないんだけど……」

お嬢様「?」

陰陽師「まあ、いろいろあったってことです。それより、西の街が見えてきましたよ?」

お嬢様「ほんとだわ!やっと帰ってこれた……」パァ

――――
侍「変ですねぇ……妙に街が静かだ」

お嬢様「おかしいわ、まだ真昼間なのに。まるで人気がないわ」

巫女「こういう街って、入り口に見張りとかいるもんじゃないの?」

陰陽師「そういえば、お見かけしませんでしたね」

将軍「ひとまず、お嬢の家まで行くとしようか」

陰陽師「そうですね。お嬢様、家はどちらですか?」

お嬢様「こっちよ」



西の街の長「おお、よくぞ無事で戻ってきた!」ダキッ

お嬢様「お父様!ご心配をおかけいたしました」ダキッ

長「で、そちらの方たちは?」

お嬢様「私を盗賊から助けてくれて、ここまで護衛をしてくれた方ですわ」

長「おお、それはそれは……我が娘を無事に私の所へ送ってくださり、ありがとうございました」

陰陽師「妙に街が静かですね……話によればここは、この国で最も栄えている鍛冶屋街だとか」

長「おお、そのことなのだが……そなたらは相当腕が立つ者なのだろう。その実力を見込んで、頼みがある」

将軍「なんだ」

長「昨日の朝のことじゃ。突如この街に魔物どもが大挙して襲ってきたのじゃ……」

お嬢様「!?お父様、怪我などしていないですか!?」

長「ああ、私は幸いにして怪我を負うことはなかったが……奴らはこの街の優秀な武具生産能力に目をつけ、鍛冶屋たちを皆連れ去ってしまったのだ」

お嬢様「そんな……」

長「当然、この街の敷地のおよそ7割を占める鍛冶屋通りは機能停止。残されたものも、何もできずに家にこもっておる」

陰陽師「だから街はあんなに静かだったのですね」

長「そこでだが、君たちにはその魔物共の本拠地を叩いてもらいたい」

侍「奪還作戦ということですね」

長「そうだ。この街にいる兵士にも、君たちのサポートをしてもらう。魔物どもの親玉を倒せば、残ったものも無力化できるだろう」

将軍「敵の根城はわかっているのか」

長「この街の兵に後をつけさせたところ、近くの川べりの洞窟に入っていったらしい」

巫女(洞窟か……湿ってそうだわ)

長「勿論、成功した暁にはそれ相応の報酬を支払うつもりだ。私たちに協力してはもらえないだろうか!」ペコリ

将軍「無論引き受けよう。だが、敵の姿を知らんことには我らにもどうにも出来ぬが」

長「ああ。敵の親玉は、ここらでは見かけない奇妙な魔物だった。亀の甲羅を背負い、大きな嘴を持ち、手足には水かきがある、人くらいの大きさの緑の化け物だった」

陰陽師「それって……」

巫女「あれよね……」

侍「え、お二人にはわかったんですか?」

将軍「我にも見当がついた。見つけるのは容易だろう」

侍「将軍様まで!?」

長「決行は明日だ。この街の施設は好きに使ってもらって構わない。……宿と酒場くらいしかないがな。私の名前を出せば、タダで使わせてもらえるだろう」

陰陽師「分かりました。ではまた明日」

長「よろしく頼む!」

将軍「我らに任されよ」

陰陽師「……もしも彼らの目撃情報が正しいとすれば、ですが……」

巫女「それって完全に、河童よね……」

将軍「我は妖怪退治などしたことは無いが……」

侍「……?」

巫女「しかし本当に河童なら、致命的な弱点があるはずよね」

陰陽師「そうですね。彼らの頭の皿が渇いてしまうと大幅に弱体化、もしくは死ぬとまで言われています」

巫女「そこを狙っていくか……ねえ陰陽師、あんた河童退治したことないの?」

陰陽師「あいにく私は妖怪とはあまり接点が無いものでして……ですが、よく対策を練れば何とかできるでしょう」

将軍「刀は通用するのか」

陰陽師「実体があれば、恐らくは。まじないを掛けておけば、より確実でしょう」

侍(よく分からないけど、鬼退治にでも行くんだろうか)

巫女(侍が『よく分からない……』って顔してるわね)

将軍「こうなると、作戦前に少しその洞窟とやらに探りを入れるべきかもしれぬ」

陰陽師「その意見には私も賛成ですが……しかしどうやって?」

将軍「手立てはある」パチン

その辺の農夫A「お呼びでしょうか?」

その辺の農夫B「参上いたしました」

巫女「あんたら誰よ?」

農夫A→忍「将軍殿にお仕えしている忍びでござる」

農夫B→くノ一「同じく将軍殿につかえているくノ一よ」

巫女「!?」

将軍「忍よ、そなたは鍛冶屋に化け川べりの洞窟を偵察して参れ」

忍「はっ」

くノ一「ミスるんじゃないわよ」

忍→鍛冶屋「問題ないでござる」ドロン

巫女「ちょっと……いきなりすぎて頭がついていかないんだけど……将軍、説明してよ」

将軍「む。奴ら二人は古くより我ら一族に仕える忍び一族のものじゃ。我が『こちら』に来て初めて出会ったものなのでな、しばらく諜報などさせておった」

くノ一「あんた達のことはほとんど見てたわよ」

陰陽師「話に聞いたことはありますが、これほどまでに周りに溶け込んでいたとは……仕事柄気配を察するのが得意な私でも気づきませんでしたよ」

将軍「というわけじゃ。奴らは我らの一団とは別行動ではあるが、我らの行く先には常に居ることになっておる」

巫女「なんだかすごい話ねえ」

くノ一→農夫B「それでは、失礼します」

将軍「良い報告を待っておる」

侍(どこから現れてどこへ行ったんだ!?)

巫女「……あんたの部下凄いのね。そうと知らなかったらただの農夫よあの人たち」

将軍「そうでなくては諜報役は務まらぬ。時には僧に、時には商人に、そしてあるときには足軽ともなって敵を探るのが彼らなのじゃ」

巫女「ほえー……」

陰陽師「……さて、それでは情報が来るまでの間に、作戦を練りましょうか」

巫女「っていってもあんた、河童について何か知ってるの?」

陰陽師「そうですねえ……伝え聞いた話によれば、河童という妖怪は、人間の尻から『尻子玉』なるものを引っこ抜くと言われています」

侍「その『尻子玉』とは一体?」

陰陽師「その正体は不明ですが、抜かれると腑抜けになるとか、あるいは死ぬとも言われております」

巫女「……ねえ、尻とか引っこ抜くとか言ってるけど、それってまさか」

陰陽師「ご想像の通り、河童は人間の尻に手を突っ込むようですよ」

巫女「嫌っ!私絶っ対に近寄らないわよ!」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom