エレン「…アンタ誰?」ダンテ「エッ?」(153)

※「神曲」のダンテ



――― 黒き森


エレン「……一体今、オレ達はドコにいるんだ?」ザッザッ

アルミン「訓練中、急に真っ暗になったと思ったら…」

ミカサ「…元いた所とは違うような気がする」

ジャン「こんなに暗いと、立体機動装置も使えやしねぇ」

ライナー「森の中というのは確かのようだが…」

ベルトルト「こんなに歩き回って大丈夫かな」

コニー「ま、急に暗くなったんなら、また急に明るくなるコトもあんだろ」

マルコ「ハハ、コニーは楽観的だなぁ」

ユミル「しっかし歩きづらいったらありゃしない。 クリスタ、大丈夫か?」ガサガサ

クリスタ「ウ、ウン……」

アニ「…早く帰りたい」



    …ガサッ



サシャ「……エレン、待ってください!」

ミカサ「サシャ、どうしたの?」

サシャ「…何か聞こえませんか?」

  ガサガサ…

ライナー「音が近づいている」

 …ガサッ!

「―― ウワアァァッ!!」

エレン「!?」

アルミン「僕達の他にも!?」

「ひ… 人、か?」ハァハァ

「少年と、少女達…」

「…君達も真実の道をはずれ、この森に迷い込んだのか?」



ジャン「ハ? 真実の道? …何言ってんだか分からねぇが、迷い込んだのは確かみてぇだ」

エレン「…アンタ誰だ? 見たところ、教官じゃないみたいだが」

「エッ、教官とは?」

「私の名はダンテ… ダンテ・アリギエーリ。 花の都フィレンツェを追放された者だ」

コニー「ドコだそれ?」

エレン「…都ってことはウォール・シーナの中の街か?」

ミカサ「アルミン、知っている?」

アルミン「さぁ… 聞いたコトもないよ」

ダンテ「フィレンツェを知らんのか!? …待て、君達は揃いも揃っておかしな服を着ているな」

ジャン「知らねぇのか? こりゃあ訓練着だよ。 オッサンこそズルズルした物着やがって…」

ダンテ「オ、オッサン!?」

アルミン「待って、ジャン。 何かが変だ… ここで迷っているコトもそうだけど…」

アルミン「話を聞かせてください」



-----------


アルミン「…つまり、あなたのいたフィレンツェという所で政治的抗争があり」

エレン「白い方のリーダーの一人だったアンタは、黒の陰謀で街を追い出された」

ジャン「そんで歩ってたら、いつの間にかこの森にいた… と」

ダンテ「非常に短く話せば、そのようなものだな」

ダンテ「私以外の白派の指導者は全員、投獄・追放となった」

ベルトルト「だけど一体ココはドコなんだろう…」キョロキョロ

ライナー「双方とも迷い込んだようだしな」

アルミン「どちらかの世界… あるいは、どちらでもない世界…」

マルコ「何にせよ、この森でずっと立ち止まってるワケにはいかないね」

コニー「とりあえず歩こうぜ」

ダンテ「む!? …見たまえ、星だ! あの星の光は私達を導いてくれるぞ!」

エレン「ヨシ、行くか!」

ペリーの人?

>>6 違う
つらつらと地獄編を書いていこうかと思ってる



ガサガサ ザッザッ…


アニ「ハアァ… 何でこんなコトに…」

ライナー「ブツブツ言わず、しっかり歩け」

クリスタ「でも兵站行進よりはラクだね」

ユミル「こっから、どうやったら帰れるかってコトを考えなければな」

サシャ「…あ! 見てください、あそこ!!」

ダンテ「森が… 森が終わっている!」

エレン「出れたぞ!!」

ダンテ「星のおかげだ。 さぁ、先へ進むぞ」

アルミン「坂道だ。 …それにしても随分荒涼とした景色だね」

コニー「あぁっ! アレ何だ!?」

ダンテ「あれは… 豹! 肉欲の象徴!」

豹「ガルルル」



エレン「へえぇ… こんなの、オレ達の世界にはいないな」

ミカサ「マダラ模様だけど、大きな猫みたい」

ベルトルト「そこにも… こっちにもいるよ!!」

ダンテ「ライオン!? 暴力や権力… そして慢心を表す生き物」

サシャ「もう一匹は狼ですねぇ… 狼なら皆も知っているでしょう。 …おや、これはメスですかね?」

メス狼「グルル…」

ダンテ「メス狼… それは強欲」

ダンテ「駄目だ… これではまた、あの深い森に戻されてしまう」

ジャン「何で? 邪魔なら叩き斬っちまえばいいじゃねぇか」スチャッ

マルコ「ジャン! 殺生は…」

サシャ「そうですよ! 筋張っていて、食べても美味しくなさそうですよ」

ジャン「んなコト言ってもよ… 進めないんじゃしょうがねぇだろ」


    …ユラリ



クリスタ「…今度は人が現れた!?」

「……私は人ではない。 だが、人であったことはある」

「我が父母はロムバルディアの者マントヴァ人
 皇帝アウグストの下、ローマに住めり
 折りしも嘘や偽りが力を伸ばす、悪しき時代g

コニー「スッゲェ長ぇ名前だな。 オレ、覚えらんねーよ」

「…今のは名ではない」

アルミン「アレじゃない? 『第104期訓練兵固定砲整備何班の誰々』みたいなさ」

エレン「ああ、所属か!」

コニー「なるほどなぁ… やっぱ頭イイな、アルミン。 …で、何だって?」

「…我が名はアイネイアスの詩を歌った…

ダンテ「おぉ! それではあなたはウェルギリウス!!」

ライナー「何だ、知り合いだったのか」



ダンテ「知り合いではない。 この方は美しい詩の流れを生み出し、詩人は皆… 私もまたこの方を師と仰いだ」

コニー「師匠か。 でも、師匠なら知り合いじゃんか」

ダンテ「分からぬ子供達だ。 この方は私が生まれるもっと以前… 昔々の詩人なのだ!」

アニ「つまり幽霊ってコトかい?」

ウェルギリウス「そうとも言う」

ウェルギリウス「さてダンテ… と、予想外にもこの場にいる少年達よ。 …何故先へ進まぬのだ?」

ダンテ「師よ! あの獣をご覧ください。 あれらが私達の邪魔をして進めぬのです」

ジャン「だから斬っちまえばいいだろって」

ミカサ「動物を殺すのは気が進まない」

サシャ「食べない生き物は、殺しちゃいけませんよ」

ジャン「サシャなら食えんだろ」

サシャ「私を何だと思ってるんですか!」

ジャン「芋」


ウェルギリウス「………」



ウェルギリウス「…少年よ、あの獣をわざわざ殺す必要はない」

ウェルギリウス「いつか偉大なる猟犬ヴェルトロが、獣を死にいたらしめる」

ウェルギリウス「猟犬は獣を追い詰め、再びヤツを『地獄』へと突き落とすのだ!」

ダンテ「再び… では獣は… 狼は地獄から来たのですか!?」

ウェルギリウス「そうだ。 他を妬み、競いうらやむ心がヤツを地獄から呼び寄せたのだ!」

エレン「地獄ってホントにあるのか?」

アルミン「…見たコトがないから、何とも言えないや」

アニ「でも幽霊がいるくらいなんだから、地獄もあるかもしれないよ?」

ウェルギリウス「…それなら私が案内しよう。 ついてくるがいい、地獄へ!」

ライナー「だが、俺達は訓練の途中だぞ?」

ベルトルト「そうだよ、早く戻らないと…」

アルミン「でもこの世界が僕達の知っている所でない以上、この人についていった方が元の世界に戻れる可能性があると思うんだ」

ユミル「そりゃそうかもしれんが… 地獄だぞ?」

コニー「考えたって始まらねぇだろ。 オレ達も行くぜ師匠!!」



ダンテ「ミューズよ、高き才よ、我を見守りたまえ…」

ダンテ「私はこれから見るものの全てを書き記す。 …君達もこの旅を記憶に留めておくがいい」

コニー「…そもそも地獄って何なんだよ」

エレン「悪い奴が行く所だろ?」

コニー「そんなら牢獄だろ」

アルミン「それは生きている場合だよ、コニー」

ミカサ「地獄とは、悪い事をした人間が死んだ後に行くところ…」

ジャン「つーことは、俺達はこれから死後の世界に行くってワケか」

ユミル「おっかない話だ」

マルコ「怖いな……」

クリスタ「私も怖いよ」

アルミン「…僕もさ」

ダンテ「私も恐ろしい…」



ダンテ「この過酷なる旅に耐える力があるのか… 私にはそんな力があるのだろうか」

コニー「まぁ、そんな気張んなよオッサン。 なるようになるって」肩ポン

ライナー「俺もそこまで楽観的になってみたいものだぞ、コニー」

ウェルギリウス「……肉の身を持つ者の、なんと弱いことか。 …私が何故お前(達)を連れに来たのか話そう」

ウェルギリウス「煉獄にいた私を、一人の尊き美しい淑女が呼びに来たのだ」

ウェルギリウス「お前達が獣の出現に怯え、森へ引き返そうとしている時だった…」

ジャン「怯えてなんかいえねぇっての」

ウェルギリウス「……無益な殺生も含め、あの方はそんなお前達を見て心を痛めた」

ウェルギリウス「その方がお前達を助けに行くよう私に頼まれた。 …その方の名はベアトリーチェ」

ダンテ「ベアトリーチェ!? おお、私の女神!我が天使よ!!」

エレン「また知り合いか?」

ライナー「それに女神… 天使だと!?」



ダンテ「そうだ! 我が最愛の… 私が誰よりも愛した美しき人」

ウェルギリウス「そう… 若くしてこの世を去った心美しき人は今、至福の天上界に住まわれる…」

クリスタ「もう亡くなってるんだ…」

ウェルギリウス「そのお方がダンテ… 他の皆は分からぬが、お前を見守っているのだ!」

ライナー「俺は死した女神より、生ける天使の方がいいな…」チラ

ユミル「クリスタをチラ見すんじゃねぇ!」ゲシッ

ユミル「ったく、油断も隙もない…」

ダンテ「…分かりました。それなら私は地獄の底をも恐れません!」

エレン「おっ、覚悟決めたかオッサン!」

ミカサ「私も… 私も、エレンが行くのなら恐れない」

アニ「道に迷った末、幽霊に会って地獄なんて…」ハアァ…

ベルトルト「行かなければ戻れないのなら、仕方ないよアニ」


アルミン「それなら… 行こう、地獄へ!!」



――― 地獄門


ダンテ「これが地獄門…」

マルコ「門に文字が… 『我を通りて嘆きの街へ』」

アルミン「我を通りて永遠の罰 我を通りて罪多き… 地獄の民の集う街へ」

ダンテ「なにも我より先に無く なにも我より後に無し…」

ジャン「一切の希望を捨てよ 我が門を過ぎる者…… か」

エレン「まったく歓迎はされてないな」

ウェルギリウス「さぁ、ダンテ……」

ダンテ「き、君達も…」スッ

ライナー(真の闇がこの身を包んでいく中、皆で手を繋ぐのはいい…)

ライナー(…だが、何故俺はおっさんのすぐ後ろを歩いていたのだろう)

ライナー(後ろはベルトルト… せめて女子と手を繋ぎたかった…)



  オオオオォォォオオーーー
   ウワアアアァァァアーーーーッ


ライナー「…ン、この声は!?」

ウェルギリウス「地獄だからな。 …もう手を離してもいいぞ」

ダンテ「闇から出てみれば… 彼らは何です!? 何故、嘆き苦しんでいるのですか?」

ウェルギリウス「あんな奴らは放っておけ」

アルミン「エェッ!?」

ウェルギリウス「彼らは恥じることも無く世を送りし、悲しき魂共…」

ウェルギリウス「…神に仕えるでも背くのでもなく、自堕落に人生を生きた者共だ」

エレン「神はともかく… 自堕落はいただけないな」

ミカサ「それなら… あの人達は何を嘆いているの?」

ウェルギリウス「奴らは天国へも地獄へも入れて貰えず、ここで永劫の時を嘆き彷徨うのだ」



ウェルギリウス「天国・地獄に入れなければ、本当に死んだ事にはならず… 従って生まれ変わる事もできない」

ウェルギリウス「大切な人生を、無駄に生きた報いがこれだ」

ジャン「生まれ変わりなんて、本当にあるのか…?」

ベルトルト「…何か来るよ!!」

  ブウウゥゥーーーーーーン!!!
   …ヒイイィィィィイィーーーー

サシャ「アレは蜂ですか!?」

ウェルギリウス「そう… 虻や蜂に刺され続け体中が腫れ上がり、目も耳も刺され… そして見えなくなった目から血の涙を流す」

ウェルギリウス「行くぞ! あんなつまらぬ者達は放っておくがいい」

ダンテ「……これは、まだ地獄ではないのか?」

アルミン「まだ… 境界に過ぎないようだね」

ダンテ「では、地獄とは ――?」

とりあえずここまで
まだ第一の圏にも入ってないww
長くなりそうだし、ゆっくりにもなりそうなんで、誰か乗っ取るなら続き書いてくれていいよ



マルコ「おや、向こうの広い川… 岸に人が集まってる」

ダンテ「師よ、あの人達は何をしているのです?」

ウェルギリス「あれはアケロンテの川… 皆、待っているのだ。 カロンを」

アニ「船がやって来た… 白髪頭を振り乱したおじいさんが乗ってる…」

ウェルギリス「あれが地獄の渡し守、カロンだ。 …行くぞ、あの船に乗る」

カロン「汝ら悪しき魂共よ! もはや二度と天を仰ぐ事はできんぞ!」

カロン「向こう岸まで連れて行くぞ! 永遠の闇の中… 氷の中、火の中へ行くのだ! 乗れ!!」

「……ヒ、ヒイィィ」ガタガタ

アルミン「皆、怯えて…」

カロン「遅い!!!」

ベルトルト「…なッ! 人々をオールで打ち据えて!?」

エレン「やめろ! 乱暴するな!!」

カロン「……何だ貴様らは!? 生きておるではないか!」



カロン「これは死者を乗せる船! 貴様ら如きを乗せる船ではないぞ!!」

ウェルギリス「怒るなカロン、これは天によって定められた事。 その訳を問うてはならぬ」

  …グラグラグラ ビュウゥゥゥウウゥーー

ユミル「…地震!?」

クリスタ「風が… 見て! 空が真っ赤に!!」

ダンテ「……うぅ」バッタリ

カロン「気を失ったか! それなら死者も同然だ! 船に乗せよう!!」

ライナー「エッ!? 気を失わねばならんのか?」

ミカサ「任せて…… フンッ! フンッ!!」ゴスッ ドスッ!

アニ「…ハッ!!」ドッ! ガスッ

ライナー「」

ベルトルト「」

ジャン「」

マルコ「」



サシャ「エエェェェエ!? …コ、コニー!!」

コニー・サシャ「ていっ!!」ゴッチンコ!

コニー・サシャ「」キュウ…

エレン「ア、アルミン… 軽く当てるから、気を失ったフリをしてくれ… エイッ!」ポス

アルミン「うわぁぁ!」パタッ

ユミル「大丈夫だクリスタ… 私も軽く… うまく倒れてくれよ? …ヨッ!」ペチ

クリスタ「きゃ、きゃぁぁ(棒)」パタ

ユミル「…わ、私は自分でやるから! えい」ポコ! …バタッ

アニ「さ、エレン行くよ… フンッ!」ブンッ!

エレン「」

ミカサ「…そんなに強くする必要はなかったのに」

アニ「ちゃんと加減はしたよ。 さぁ… 最後は私達の番だ」

ミカサ・アニ「……セイッ!」ポカポカ …バッタリ


カロン「…………」



――― 第一の圏(たに)

ジャン「……オッサン」ペチペチ

エレン「おぉーい、オッサン!」

ダンテ「…ん、うぅ… ここ、は?」

アニ「さぁ… 地獄の縁、かねぇ…」

ウェルギリウス「ここは辺獄(リンボ)… 地獄の淵を取り巻く、第一の圏(たに)…」

ベルトルト「縁から底を覗いても… まったく何も見えないよ」

ウェルギリウス「…ここからは物質的な光も、精神的な光もないからな」

アルミン「…アレ? ここの構造は……」

ウェルギリウス「気付いたか。 ここは… 地獄というのは、すり鉢状の形をしていて…」

アルミン「見た感じだけど… 最上部から、下へ下へと幅を狭めながら降下しているんだね?」

ウェルギリウス「うむ、その通りだ。 最上部から… 底は第9圏まである」



   テクテク トコトコ…


マルコ「…アレ、ここは地獄だよね?」

ダンテ「ここでは叫び声ではなく、ため息ばかりが聞こえてくるな」

コニー「師匠! なんかここらの奴ら皆、スンゲェため息つきながらコッチ見てくんだけど?」

ウェルギリウス「君達はあまり気にしなくていいと思う」

ウェルギリウス「彼らは罪人ではなく… ただ洗礼を受けていないだけなのだ」

コニー「センレイ?」

エレン「アルミン知ってるか?」

アルミン「洗礼っていうのは… ある宗教の教徒になる儀式だよ」

ジャン「お、なんかの本でソレ読んだコトがあるなぁ…」

ジャン「頭に水ぶっ掛けたり、全身を水にブチ込んだりすんじゃなかったっけ? そうする事で罪を洗い清めたり、清めなかったり…」

エレン「どっちだよ!!」


ウェルギリウス「……大まかに言えば、そのようなものだ」



ウェルギリウス「まぁ… ここの者達はあまり気にしなくていいと思う」

ウェルギリウス「何せ、キリストがお生まれになった以前の者がほとんどだから…」

ダンテ「エ? では…」

ウェルギリウス「…私もその中の一人だ」

アルミン「僕達は知らないけれど…『キリスト』という方は神ですか?」

ウェルギリウス「我々は、そのお方が生まれる以前に生を受けたから…」

ウェルギリウス「…正しい教えを受けられなかったのだ」

アルミン「では、その方の生誕を知らなかった者は… 中には心正しい魂もいらっしゃるのに、ここにずっといなければならないのですか?」

ウェルギリウス「それは分からぬが… 永劫ともいえる時を越え、いつかは救われるやもしれぬな…」

サシャ「エ… だってココには… ホラ、あそこにも!」

サシャ「あれは理性…? 尊い魂の光が見えるじゃないですか!」

ダンテ「私にも見える…」



アルミン(寄ってきた魂… それは僕達が聞いた事もない名前だったけれど…)

アルミン(詩聖と呼ばれる4人や… 他にはオジサンの民族の祖先に当たる人…)

アルミン(…彼が歴史上でだけ知っている、素晴らしい業績を残した王や執政者達もいたらしい…)

アルミン(神がお生まれになる以前に生まれたこと… この世界では、それ自体が罪になるのだろうか)


――― 第二の圏


マルコ「……これが第二の圏?」

ベルトルト「第一の圏よりは少し狭いようだけど…」

ウェルギリウス「だが… 苦痛は増す上、その魂はより苦しみ泣き叫ぶ」

ウェルギリウス「…あれを見るがいい」

エレン「何だアレ…」

ミカサ「とても大きく… 尾が付いている?」

ウェルギリウス「彼は、地獄の裁判官ミノス… ゼウスとエウロペの子」



ウェルギリウス「…見てみるがいい。 罪人が自分の罪を告白すると、彼はその尾っぽで自分の体を巻く」

ウェルギリウス「その罪の大きさによって… その尾っぽが何巻きかする」

ウェルギリウス「…そして巻かれれば巻かれるほど、深い地獄へと落とされるのだ」

サシャ「ほほぅ。 では、巻く方は… 尻尾の人は、これまで一切の罪を犯していないのですか?」キョトン

サシャ「もちろんこの世界のコトは、よく知りませんけど…」

ミノス「何だと!? …貴様、今何を言った!?」

サシャ「…ふぇっ!?」

ウェルギリウス「…そう怒るなミノス。 この者達は知らぬのだ」

ウェルギリウス「…それ故に、地獄を巡る。 どうか通してやってはくれまいか」

ミノス「…ハハ、そうか! …では、この苦しみの場所に来た者達よ! 地獄の全てを知るがいい!!」

サシャ「ふえぇ……」フルフル



サシャ「うぅ… 怖かった…」

ダンテ「…私もまだ震えが止まらない」

ウェルギリウス「だが、お前達はまだ罪人ではないからな… 罪人であれば、ミノスはもっと恐ろしい」

    …ビュウウゥゥゥゥウウゥーーーー

クリスタ「―― 急に、風?」

ダンテ「嵐の海のようだ…」

ライナー「…アレは? 風に舞いながら人の姿が…」

   アアァアアァァァァアーーーーー

ユミル「黒い風… それに飛ばされながら、なんて悲しそうな声……」

ウェルギリウス「あれは…」

ウェルギリウス「…あれは愛を貪るあまり、世に災いをもたらせた者達」

ウェルギリウス「あくなき愛欲に苦しむ魂達なのだ…」



ウェルギリウス「…地獄の暴風は、休む事なく哀れな魂を吹き飛ばしていく」

アルミン(ウェルギリウス… 師匠は、しばらくの間また僕達の知らない名前をいくつか語った…)

ウェルギリウス「あれは夫を殺し、アッシリアの女帝となったセミラミス」

ウェルギリウス「そしてカルタゴの女王ディドに、エジプトのクレオパトラ、トロイア戦争の原因であるヘレネー」

ベルトルト「…ン? あそこ…」

サシャ「オヤ? ここの人達は皆、風に弄ばれているのに… あそこの2人は何だか軽やかに舞っているように見えますね」

ダンテ「あの2人に話しかける事はできるのですか?」

ウェルギリウス「もう少し近付いてきたら心で話しかけてみるがいい」

ベルトルト「心で……? あ、来る」

ベルトルト(……も、もしもし?)

サシャ(チョイとそこ行くお2人さん)

ダンテ(哀れな2人よ… 何故この風に吹かれているのか、近く寄ってその訳を話してはくれまいか)



「強き声で私達を呼ぶ方々よ…」

「黒き風に飛ばされる我らを招いて下さる優しい人達よ」

ライナー「あなた達は?」

「私の名はパオロ」

「私はフランチェスカ」

ダンテ「おぉ! ではあなた方があの悲劇の…」

ミカサ「…悲劇?」

ダンテ「うむ…」

アルミン(オジサンの話によれば… この綺麗な女の人、フランチェスカは親の命令で隣国の城主ジェンチオットと見合いをすることになった)

アルミン(だが、醜いジェンチオットはフランチェスカに会うことを恐れる)

アルミン(自分を見て、フランチェスカが破談にするのではないかと思ったのだ)

アルミン(そこで自分の代わりに、美男の弟パオロを身代わりに立てようと考える)

アルミン(見合いの席であった2人はお互い、一目で恋に落ちた…)



アルミン(しかし本当の結婚相手は、醜いジェンチオットだった)

アルミン(2人は悩み、苦しみ… それでも真実の想いを心に秘め続ける事はできず…)

アルミン(…その恋を知ったジェンチオットは怒り狂い、2人の胸を剣で突いて殺したのだという)


フランチェスカ「…恋は私達を死に導きました」

フランチェスカ「私達はこの世界を風に飛ばされながら、いつか地獄に落ちてくるジェンチオットを待つのです……」


マルコ「あ… 行ってしまう…」

クリスタ「2人で寄り添い、庇い合いながらまた風に…」

ユミル「想いを… 真実の恋を貫くことは罪なのか?」

ダンテ「フランチェスカの過ちとは、なんなのだろう…」



――― 第三の圏


  ザアアアァァァァアァーーーー


エレン「ひどい雨だな」

ライナー「地獄にも雨が降るのか」

ウェルギリウス「ここは常に冷たい雨が大地を濡らし続ける… 行くぞ」

  …ビチャビチャ

コニー「なんか地面がスンゲェぬかるんでんだけど…」

ダンテ「うむ… ドロドロで歩きにくいな」

エレン「…それに妙に臭くないか?」

ジャン「うへぇ… この泥、マジで臭ェぞ」

ベルトルト「うわッ! 今、何か踏んづけた!」

ライナー「人の手か、それは!?」



ミカサ「泥に混じって人の手が… 足もある」

ウェルギリウス「ここはそういう所なのだ」

  …ピクッ!

クリスタ「きゃ… 手が動いた!」

ユミル「見ろ、手だけじゃないぞ!」

  ……オオォオオオオオォォオ

「痛…ぃ… 苦し…」

アニ「泥から人が…!? これは一体」

ミカサ「……何か来る!!」

  カ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ア゛ッ!!!!

マルコ「三つ首の… 巨大な犬!?」

エレン「泥から起きた人を食ってやがる!!」

ダンテ「師よ! あの怪物は何なのですか!!??」



ウェルギリウス「あれは地獄の怪物ケルベロス!」

ウェルギリウス「ここは飽くことを知らぬ貪欲な者共、他人を押しのけ他人の分まで取り上げる強欲な者共」

ウェルギリウス「飽くなき貪欲に狂う、大食い共の落ちる地獄だ!!」

サシャ「なんですとッ!!??」

ウェルギリウス「1つの口では飽き足らず、3つの口で手当たり次第何でも喰らう!」

ウェルギリウス「あの浅ましい姿こそ、この地獄に落ちた者の姿なのだ!!」

ライナー「ふむ… まさにその通り、と言えなくもないな」

ジャン「他人の分まで取り上げる… ねぇ」チラチラ

ダンテ「お… 大食いがこれ程の罪なのでしょうか? これ程の罰を受けねばならぬのですか?」

サシャ「そうですよ!!!」

ウェルギリウス「大食漢は罪人なり! 大食いの陰には飢える者がいる! …人は足ることを知るべきなのだ!!!」

コニー「サシャにパン取られたら、こっちは腹減るわな」

サシャ「だから足りないんですってば!!!」



ウェルギリウス「大食の罪を犯した亡者共の有様を見るがいい… ケルベロスの鋭い爪で引き裂かれ、巨大な牙で噛み砕かれる!」

ウェルギリウス「食われた身体は泥となって排出され… そして泥から再び人間に戻り、食われ続けるのだ!!」

ダンテ「ではこの泥は人!?」

  グルルルルルルル……

ベルトルト「こ、こっちに向かって来る!」

サシャ「……戦う」ユラリ

サシャ「私は大人しく食べられたりはしません。 …戦って、私の『食』を勝ち取ります!!!!」ダッ!

コニー「なッ!? 行くのかサシャ!!」

ジャン「オイ! 俺達は仲間に一人で戦わせろと学んだか!?」

ライナー「そいつは心外だな…」

エレン「全員! 立体機動準備!!!」

ミカサ「エレン私も… 私も戦う!」

ダンテ「き、君達!!??」

ウェルギリウス「待て待て待て待て!!!」



ウェルギリウス「ケルベロスは不死身なのだ!!」

エレン「そんなの… やってみなければ分からない! サシャ、うなじを狙ってみろ!!!」

ウェルギリウス「いいから!! 言う事を聞きなさい! …泥を拾って投げるんだ!!」


------------

  テクテクトコトコ…

ウェルギリウス「全く… 3匹の獣の時といい、どうにも血の気の多い子供達だ」

アルミン「ア、アハハ…」

ダンテ「しかし、ここの人達の受けている罰はひどい… あまりの惨めさに心の痛みを覚えるほどです」

ウェルギリウス「…天使のラッパが鳴り響く日まで、彼らが再び肉の身体を得ることはない」



ウェルギリウス「ケルベロスは不死身なのだ!!」

エレン「そんなの… やってみなければ分からない! サシャ、うなじを狙ってみろ!!!」

ウェルギリウス「いいから!! 言う事を聞きなさい! …泥を拾って投げるんだ!!」


------------

  テクテクトコトコ…

ウェルギリウス「全く… 3匹の獣の時といい、どうにも血の気の多い子供達だ」

アルミン「ア、アハハ…」

ダンテ「しかし、ここの人達の受けている罰はひどい… あまりの惨めさに心の痛みを覚えるほどです」

ウェルギリウス「…天使のラッパが鳴り響く日まで、彼らが再び肉の身体を得ることはない」

ミスってた
クソ、まだ第3の圏か… 先が長すぎる

1は他に何か書いたのあんの?

古典文学が楽しく読める。

>>46 アリガト。また明日書くよ
>>45 あるけど進撃のcpモノだし、別に知らなくていいと思う
しいて挙げれば、先月くらいに木魚の話を途中から書いた



――― 第四の圏


アルミン「更に下へと向かっている…」

ダンテ「…何か聞こえないか?」

  …ズシン ズシン ズシン ズシン

エレン「あ、アレは… 巨人!?」バッ!

ウェルギリウス「あれは地下神プルート」

コニー「人を食ったりしねぇだろうな!?」

ウェルギリウス「食わんさ」

プルート「パペ・サタン パペ・サタン アレッペ!!」ドゴッ ドゴォッ!

エレン「喋った!? …けど、全然意味が分からねぇ!!」

ジャン「岩に当り散らして… 荒ぶってやがるぜ」



ウェルギリウス「黙れプルート! この者達が下へ進むのは使命なのだ!!」

ウェルギリウス「天に逆らっても、我らの道を阻むのかプルート!!」

プルート「………」

マルコ「と、止まった…」

クリスタ「…俯いて、うずくまってる」

ウェルギリウス「……進むぞ」


ダンテ「何やら… 空気が重く感じられるような…」

ウェルギリウス「地獄が深くなるからだ。 罪が重くなれば、亡者を取りまく空気も重く冷たく、暗くなる」

  …オオォォオオォ

ユミル「また声が…」

ライナー「…人々が大きな石を押しながら、右から左へと」

ベルトルト「叫び合ってる…」



「何故貯める!!」  「何故浪費する!!」

マルコ「この人達は?」

ウェルギリウス「奴らは金を貯め込むだけに、生涯を費やした者… あるいは節度なく浪費した者達だ」

ウェルギリウス「これらがぶつかり合うと叫びを上げる」


「何故貯める!!」  「何故浪費する!!」


ウェルギリウス「吝嗇家と浪費家は、永遠に衝突するのだ」

ダンテ「浅ましい…」

ユミル「人の欲望には、限りがないのか?」

アルミン「それが本当の人間の姿なんだろうか…」

ウェルギリウス「…その答えは、人間一人一人が考えるべきものかもしれぬ」



――― 第五の圏


サシャ「…また変な匂いがしてきましたよ」

ジャン「クッサ!!」

ウェルギリウス「…沼だ」

ベルトルト「ブクブクと水面が泡だって…」

クリスタ「なんてドス黒い… 黒い水、黒い沼」

ウェルギリウス「ここはステュクスの沼。 …この黒き沼に沈む者共を見るがいい」

ダンテ「彼らもまた罪人ですか?」

アルミン(目を凝らしてみると、沼の中を泥まみれの魂がうごめいていて… 皆、怒りが顔に染みついたようだった)

エレン「…なッ!? 互いに殴り合い、噛み付き合ってる!」

ミカサ「彼らは何故争っているの?」



ウェルギリウス「あれらは怒りに我を忘れ… 怒りに身を任せ、人を傷つけた者共だ」

ウェルギリウス「彼らはこの地獄においても怒り合い、相手をどこまでも傷つける」

アニ「繰り返し繰り返し、傷つけ合うんだね…」

ウェルギリウス「この沼には、怒りや不満で自分を見失った者達の心が汚れた沼となってふき出している」

マルコ「水面の泡から声が聞こえてくる…」

ダンテ「不平や不満… 人を罵倒する声も」

エレン「けど… 不平不満を持つコトは罪なのか?」

エレン「不満を持つからこそ、世の中に立ち向かっていくんじゃないのか?」

ウェルギリウス「その通りだ、少年よ。 不満を持つ事は罪ではない」

ライナー「その不満に、どう向かうのかが大事ということか」

ウェルギリウス「不満を自分をみがく糧として世に向かった者は、ここには来ない!」

ウェルギリウス「ここへ来る者は自分の不満を他人にぶつけたり、世の中を呪った者共なのだ!!」

ベルトルト「汚れた怒りをぶつけ合う… ここはそうした地獄なんだね」



  テクテクトコトコ…


クリスタ「塔が見えてきた…」

ユミル「お! 塔の上に炎が… なんかの合図か?」

ウェルギリウス「あれだ」

 ザザザァァアアァーーー

サシャ「…あ、見てください。 まるで矢のような速さで小舟が来ましたよ!」

ウェルギリウス「ステュクスの沼の渡し守… 軍神アレスの子、フレジアスだ!」

フレジアス「…来たか邪悪な魂共め! さあ乗れ、もっと恐ろしい地獄へ連れて行ってやる!!」

ウェルギリウス「大声を出すなフレジアス、私達は天の意志で地獄を渡るのだ。 私達を向こう岸へ渡せ」

ウェルギリウス「…皆、乗るがいい」

コニー「乗れって言われてもよ… こんな小さい船だぜ? 全員乗れるのか?」

エレン「なんとかなるだろ …ヨッと」ギシ…

ジャン「狭ッ! …オッサン、ソコちょっと詰めてくれ」

ダンテ「あ、ああ… スマン」ゴソゴソ



サシャ「ギリギリ浮いてるだけ… のような気もしますが、ちゃんと進んでますね」スイスイ

ジャン「匂いは堪らんがな」

ライナー「今回は気を失わずに済んで良かった…」

ベルトルト「沼の中の人達を押し退けながら進むのは、どうも気分が…」

    …パシャッ

アニ「…誰かこっちに近付いてくるよ」

「オイ… アンタ方は一体何者だ? 何故生きているのにこんな所へやってくるんだ」

ウェルギリウス「我らは、ただ通り過ぎるだけだ」

「…行かないでくれ! 見てくれ、俺はこんなにも泣いているんだ!」

ダンテ「…その顔には見覚えがあるぞ。 フィリッポ・アルジェンティだな!」

フィリッポ「俺を知っているのなら、どうか舟に乗せてくれ!」ガッ

マルコ「うわッ!?」グラグラ

エレン「離せよ! 舟が沈んじゃうだろうが!!」



ダンテ「お前のような呪われた者は、いつまでもこの沼で泣いているがいい!!」

フィリッポ「…そう言うなよ」グイッ

クリスタ「きゃっ…」

ウェルギリウス「さっさと消えるがいい、この犬畜生! 畜生は畜生の沼に沈んでいろ!!」ガッ

フィリッポ「アアァァ……」バシャーン

コニー「師匠も… オッサンも言う時は言うんだなぁ」

ダンテ「彼は富と権力をかさにきて、フィレンツェの街を威張り散らして歩いていた悪党なのだ」



アルミン「舟… 乗ってから、かなり経つけど…」

ウェルギリウス「…いよいよだ」

ウェルギリウス「いよいよディーテの町だ」

ユミル「…アレか? 城壁が見える」

クリスタ「お城の上の空が、真っ赤に輝いて… まるで戦場の空みたい…」



ウェルギリス「城の内で罪人を焼き焦がす、永劫の火だ。 その地獄の炎が、空を真っ赤に染めている」

アルミン「城壁… 鉄で出来ているようだ」

サシャ「さっきから堀を周っていますが… まだ降りないんでしょうか?」

ミカサ「あ… 止まった」

フレジアス「降りろ! ここが入り口だ!!」


「…何だお前達は! 死者ではないな!!」

「生きている者がここへ来るな!!」

「ウェルギリス、お前はいい! だが他の皆は、今すぐこれまで通って来た道を引き返すがいい!!!」


コニー「ありゃ何者なんだ?」

ウェルギリス「堕天使達だ」

ライナー「…まぁ、歓迎はされんだろうな」



エレン「でもこっから引き返せって言われてもなぁ…」

ダンテ「私達だけであの道を… プルートやケルベロスのいた、あの道を帰れる訳がない!」

アニ「私は訓練所に戻りたいよ…」


「…ここは死せる民の国だぞ!! 生者など、とっとと帰れ!!!」


ジャン「どうしたモンかねこりゃ… 話になりゃしねぇ」

ウェルギリス「…だが、我々の旅は誰も妨げることはできん。 …少し待て」スタスタ

コニー「師匠… アイツらに近付いてった」

アルミン「何か話をしているようだよ」

  …ウアァァアァーー
    ワアアァァアーー

マルコ「どうしたっていうんだ!? 先を争うように、彼らが門の中へ……」


  バタァァーーーンッ!!!


ウェルギリス「………」



ユミル「…オイオイ、締め出されちまったぞ?」

ウェルギリス「何ということだ… 私が町へ入ることを拒むとは……」

ダンテ「師よ、我々の道は閉ざされてしまったのでしょうか?」

ウェルギリス「いいや、何者といえど我等の行く手を奪うことはできない。 これは天命なのだから」

ウェルギリス「しかし… しばらくの間、待たねばならんだろう。 この町も、いつまでも我々を拒むことはできない」


------------


コニー「……ヒマだな」

エレン「そういや訓練途中だった。 せっかくだから対人格闘でもやるか! アニ、頼む!!」

アニ「こんな所まで来て訓練かい? アンタもホント好きだね」ハアァ

サシャ「…ちょっと待ってください! 城壁の… あの燃えている塔の上で何か叫んでいるみたいですよ」

サシャ「メドューサ? …がナントカとか、石がどうとか…」

ギリシャ神話で有名なキャラが多いな。



    バサ バサ バサ…


ベルトルト「羽ばたきの音が…?」

ウェルギリウス「あれは… メドゥーサ!? いかん… 皆、目を覆え!」

ルギリウス「もし彼女達の目を見た者は、石になってしまって元の世界に帰れなくなるぞ!!!」

コニー「マジか!?」


-------------------


ウェルギリウス「もう目を開けていい…」

アルミン「エ…? アレ、は……?」

ウェルギリウス「…メドゥーサではなく、我々が待ち望んでいたヒトのようだ」

ベルトルト「あの沼に… 足も浸さず歩いてくる」

マルコ「……輝いて!?」

ウェルギリウス「あれこそが、私の待ち望んでいたお方… 神の御使い!」

>>60 古典文学だからじゃん?



アルミン(…天の御使いというお方は、神々しい光を放ちながら、こちらへやって来た)

アルミン(そして… 持っている杖でディーテの町の門に触れる)

アルミン(扉がゆっくりと開き出した…)



「…天を追われし魂! 貶められた魂よ! 何故このように天を叛くのだ!!」

「運命に逆らって、何の得がある! …この者達を通せ!!!」



アルミン(ゆっくりと… ゆっくりと扉が開いていく…)


ユミル「…何故、あんなにも拒むんだ?」


ウェルギリウス「きっと皆、恥じているのだ」

ウェルギリウス「自分達の行いを……」



――― 第六の圏


クリスタ「……あつい」

マルコ「そうだね、門を越えたら途端に…」

ライナー「上着を脱ぐか…」

ウェルギリス「この町の上空を焦がす、赤い光を見たろう」

ウェルギリス「…まもなく、炎に焼かれる罪人達を見ることになる」

ベルトルト「火にあぶられる苦しみ、痛み… そんなのを目にしなければならないのか…」

ウェルギリス「だが、それをしっかりと見届ける事が、皆の使命なのだ」



クリスタ「お墓… 棺だらけ」

  ウウウゥゥウゥ……
   ァアアアァアァァ…

ミカサ「…それに呻き声が」



アルミン「…どのお墓も、蓋が片側にズラしてある」

アニ「そこから炎がメラメラと出て…」

ダンテ「師よ、この中に横たわっているのは、一体どんな魂なのですか?」

ウェルギリス「ここにいるのは異教徒の首領と、その弟子達…」

ウェルギリス「または正しい教えを受けながら、道に背いた行いをした者共だ」

マルコ「…異教徒? それが罪になるんですか?」

ウェルギリス「誤った信仰の罪は深い…」

アルミン(…本当に異教徒は罪人なのか?)

アルミン(生涯正しい教えを受けることなく死んでも、それは罪になるんだろうか…?)



アルミン(……そうして僕らはウェルギリスの導くまま、さらに深く暗く冷たい奈落の底に向かって旅を続ける)



   …ビュウウゥウウウウゥーー


クリスタ「ケホケホ… か、風が…」

ユミル「…地の底から吹き上げてくるみたいだ」

ジャン「熱いんだか冷たいんだか… それに何より悪臭がヒデェ」

ウェルギリウス「生きている身では、無理もなかろう… これは地獄の最下層より吹いてくる風なのだ」

ウェルギリウス「あの岩陰で少し休むか…」

ダンテ「ハァ… ハァ…」

ウェルギリウス「皆、辛かろう… だが、既に第六の圏まで見てきた」

ウェルギリウス「これまで生者が訪れた事もない道を、君達は巡って来たのだ」

ダンテ「体よりも心が辛いのです、師よ」

ウェルギリウス「地獄の責め苦に合う者らを見て廻るのだから、心も痛むはずだ…」

コニー「オレ… この先行けっかな…」ゲホゲホ

ウェルギリウス「この先の旅も、皆であればそれを見届ける事ができよう」



ウェルギリウス「これから行く第七の圏… それは暴力を振るった者のいる地獄…」

ミカサ「暴力を…?」

ウェルギリウス「うむ… 第七の圏は3つの層に分かれていて、異なる種類の暴力を働いた者達がいる」

ウェルギリウス「隣人へ暴力、自分自身への暴力… そして神への暴力」

アルミン「隣人… 自分自身、そして神…」

ウェルギリウス「…では、下へ降りよう」



――― 第七の圏


   …ブモオォォォォオ

サシャ「変な… 鳴き声が聞こえてきます。 アレは牛? それとも豚ですか?」

ウェルギリウス「…あれはミノタウロス」

エレン「ミノ、タウロス…?」

ダンテ「…牛頭人身の化け物だ」



ダンテ「その昔… 神々がまだ地上に現れていた頃の話だ」

ダンテ「とある国の王が神の怒りを買い… その妻は、牡牛に恋する呪いをかけられた」

ダンテ「王妃は想いを遂げ、呪われた子… 牛頭人身の怪物ミノタウロスを産む」

ダンテ「王はその子を恥に思い… 地下深い迷宮に隔離するが、毎年その生贄として7人の年若い男女を隣国に差し出させた」

ダンテ「隣国の王子はこれを怒り、生贄に紛れ侵入し… 王妃の娘、アリアドネの協力を得てミノタウロスを殺した」

エレン「……でも、そいつが悪いワケじゃねぇだろ?」

ミカサ「悪いのは全て王様… だと思う」

ライナー「―― 見えたぞ!!」

ベルトルト「…なッ! 自分の手を食らって!?」

 ブモオォォォォオーーーー!!!

ウェルギリウス「獣よ立ち去れ!! …私達はお前の妹、アリアドネに導かれてやって来たのではないぞ!!」

ミノタウロス「ブオオオオオォォーーーッ!!」

アルミン「あれは怒り… 悲しみ!? あんなにも岩に我が身を打ち付けて…」

【挿絵】
http://i.imgur.com/YDKdUMy.png



【これまでの挿絵】


カロン「早よ乗れ言うとるやろが!!」ベシーンベシーン
http://i.imgur.com/n8dcieC.jpg


ミノス「巻・い・ちゃ・う・ゾ☆」
http://i.imgur.com/h4cHOWj.jpg


パオロとフランチェスカ
http://i.imgur.com/FKev2DU.jpg


しょんぼりプルート「……アレッペ」
http://i.imgur.com/Onr0xU0.jpg



アルミン(……僕らは怒り狂い、または嘆き悲しんでいるのか分からないが、牛頭の怪物の横を駆け抜け…)

アルミン(真っ赤な水の流れる川のほとりへ辿り着いた)

ウェルギリウス「…あの川は血でできているのだ」

ウェルギリウス「煮えたぎった血の川… フレジェトンタの川には、他人に暴力を振るった魂が煮えられている」

ウェルギリウス「…ここは暴力により人の血を流し、そして命を奪い… 神をも冒涜した者共の地獄だ」

アニ「血を流し、命を奪い…?」

ウェルギリウス「そうだ… 自分が流した血の海で、永遠の苦しみを受けるのだ!」

サシャ「…んむ? あちらの川岸に、不思議な生き物がたくさん… 弓矢を構えていますが?」

ウェルギリウス「…彼らはケンタウロス」

ウェルギリウス「半人半馬の蛮族だが逞しく、狩りやブドウ酒作りに長けている」

ベルトルト「…アッ! 川から上がろうとした人に矢を放った!!」

ウェルギリウス「彼らの弓から逃れる事は不可能だ」

「…そこを歩く者達よ、何故ここへ来た!? 正直に答えねば、弓を引くぞ!!」

面白い。



ウェルギリウス「私だ、ケイロン! ウェルギリウスだ!!」

ケイロン「そうか! お前達が地獄を巡っている事は既に聞き及んでいるぞ!」

アルミン「…彼は?」

ダンテ「彼はケイロン… クロノス神の子だ」

ダンテ「天文・医学・音楽・狩猟にも通じ、蛮族と言われるケンタウロスの中でただ一人の英雄だ」

ケイロン「ハハハ、通るがいい! …だが、貴様らは駄目だ」ヒュンッ!

「…ギャッ!!」

ウェルギリウス「…今射られたのはアレクサンドロス」

ウェルギリウス「次は北イタリア暴虐の領主、アッツォリーノ」

ウェルギリウス「…如何にここから出たくとも、誰もケンタウロスの矢から逃れる事はできぬ」

ケイロン「…達者でな! ウェルギリウスと詩人… それに子供達よ!!」



エレン「……ククッ」

ミカサ「何を笑っているのエレン?」

エレン「だってあのケイロンて半分馬のオッサン… 凄えジャンに向けて笑顔だったんだぜ?」

エレン「アレ、絶対仲間だと思ってるよ」ケラケラ

ジャン「…アァ!? 聞こえてんぞエレン!!」

ミカサ「フフ、想像してしまった…」

ジャン「ミカサまで…… ちぇっ」

ダンテ「どこに行っても変わらんなぁ、この子達は… それに安心してしまう私も私だが…」

ウェルギリウス「…フフフ」


  テクテク トコトコ…


クリスタ「…ひゃ! あの森… あの木々に、また変な生き物が」

ユミル「鳥か? …首から上は人だが…」

>>73と他の方々よ
面白いと思ってくれるのが何より嬉しい。 アリガトウ
そして、今更ではあるが転載禁止でお願いします



ウェルギリウス「あれは『掠めるもの』アルピエ(ハーピー)… 人頭鳥身の醜き怪物」

ウェルギリウス「奴らは群れをなし、木々の芽も何もかも貪欲に食らい全てを萎えさせてしまう」

マルコ「人間の… 女の首と顔、足には鋭い鉤爪が…」

サシャ「ここの木々… 緑の葉っぱが一枚もありませんよ。 全部真っ黒です」

  ア…アアァァ ア
   ウゥ ウウゥゥウ…

ライナー「…気のせいか? さっきから囁くような声が聞こえてくるんだが…」

ダンテ「私にも聞こえる。 まるで泣いているような…」

ウェルギリウス「…そこの枯れ木の枝を折ってみるといい」

コニー「ハ? 枝だって?」ポキ

「アアアァアァ 何故折るんだ! それは私の指… お前には憐れみの心がないのか!?」

コニー「エッ!? 木が叫んだ!!」

ベルトルト「折れた所から血が…」


【挿絵】
http://i.imgur.com/DbvrqND.jpg



ダンテ「では、この木々は皆… 人々の変わり果てた姿だというのですか!?」

ウェルギリウス「ここは自殺者の森… 自ら命を絶った者の地獄だ」

「今は木と成り果てたが、私は元は人間だ。 …いや、例え人でなくこの木が蛇であったとしても、お前には慈悲の心がないのか?」

ダンテ「虐げられし魂よ、あなたはどなたですか?」

「私の名はピエール・デッラ・ヴィーニャ」

ダンテ「おお! あなたが…」



アルミン(…彼は貧しい家庭に生まれ育ったが、苦学の末に学校を出て宮廷に入ったそうだ)

アルミン(やがて当時の皇帝に認められ、その助言者として大臣にまで昇る…)

アルミン(…しかしある日突如大臣を罷免され、両眼を潰され岩牢に入れられた)

アルミン(そして絶望した彼は、獄中で壁に頭を打ちつけ自殺する…)


アルミン(今、木となった彼の体はねじれ、節くれだち… 朽ち果てる時をただ待ち続ける……)


ウェルギリウス「行こう… 先はまだ長い」



ミカサ「…ここは、燃える広野? これが3つ目の層?」

ジャン「空から炎の塊が降り注いで… 草木の1本もない、熱砂の荒野だ」

ウェルギリウス「ここは自然の理に背いた者の地獄。 神を冒涜した者、神に背いて横領した者… 不自然な快楽に耽った者達が堕ちる地獄だ」

エレン「不自然な快楽って?」

ダンテ「同性愛者だよ」

アルミン「エッ!?」バッ

ライナー「何だ… 何故皆、俺を見る?」

サシャ「イ、イエその… アハハ」

ダンテ「えぇと… 君はそのぅ… 『そう』なのか?」

ライナー「何だそれは!? 俺は違う、断じて違うぞ!! 俺は天使のように可憐で、女神の如く慈悲深い女子が好きなんだ!!!」

ダンテ「おぉ… 同志よ…」ガシッ

ライナー「全く… これまで何度となく言ってきたろうに」

マルコ「ハハ… その件に関して、ライナーは疑われやすいよね」



ウェルギリウス「この熱き地を歩むのは同性愛者… 熱き地に座り込む者達は高利貸し」

ウェルギリウス「そしてこの地に臥せるのは、神を侮蔑した者共だ」


ライナー「…というか、同性愛というならユミルの方がマズイんじゃないのか?」

ユミル「アンタみたいな欲望の塊と一緒にするな」

ユミル「私のは純愛だ。 それに快楽なんてものとは無縁なんだからな」

クリスタ「やめなよユミル… そういうコトを口に出すのは、女の子らしくないよ?」

ユミル「やっぱり可愛いなぁクリスタは…」


  ドオォオォオオオォォーーー
  
  
ベルトルト「ン? 滝だ…」

ウェルギリウス「涙の川が落ちていく… 第七の圏の終わりだ」

ダンテ「この下へ行くのですか? ですが私にはとても下りることなど…」

ウェルギリウス「大丈夫だ」



ウェルギリウス「……ゲリュオン!!」

  ―― ザザザザザザザッ!!

コニー「んなッ!? また怪物か!!」

ダンテ「けばけばしい蛇の体に獣の脚… 二股のサソリの尾、そして蝙蝠のような羽…」

エレン「顔は人間だな。 ヒゲのオッサンだ」

ウェルギリウス「ゲリュオン、我らを背に乗せ下へ運んでくれ!」

ウェルギリウス「…しかし人数が人数だから、何往復かせねばなるまい」

ジャン「エ? いいよ俺らは。 先に行ってくれるんなら、後からついてくから」

ダンテ「ど、どうやって!?」

ジャン「説明すんの面倒クセェな… まぁホントここの地形なら大丈夫だから、先行ってくれ」

サシャ「あ! 私それに乗ってみたいです!!」

コニー「オレもオレも! なんか楽しそうだし!」



ウェルギリウス「ふむ… 4人であれば、一度で運べるか… では頼むぞゲリュオン!」

コニー「ウッヒョー! 出発だーー!!」

  ……ヒュウゥゥーー

ダンテ「彼らは一体どうやって?」

サシャ「立体機動ですよ」

ダンテ「りったいきどう… ハテ、確かケルベロスの時にもそんな事を言っていたような気がするが…」

コニー「あん時は、使わねぇウチに止められちまったからな」

サシャ「見てれば分かりますよ、ホラ…」

エレン「行くぞ皆!!」パシュッ!

ジャン「テメェが仕切るんじゃねぇ!!」ヒュンッ
  
  …ゴオオオォォォーーーー

ダンテ「な…! と、飛んで!?」

ウェルギリウス「きっと住む世界が違えば、技術も色々と違うのだろうさ」

【挿絵】
http://i.imgur.com/TogAuim.jpg

ゲリュオンは毛髪がふさふさしててなんか安心した
続き期待

>>85 ハゲリュオンはなんかヤだな…


サシャ「……ハアアァ、楽しかったですぅ」

コニー「アレいいな。 オレ達の世界にも欲しいぜ」

ウェルギリウス「…フフ、だがゲリュオンは、やがて世界を腐らせる怪物と言われているぞ?」

サシャ「エ! それじゃ困りますねぇ。 あ… 皆来ましたよ」

…シュタッ! スタン!

ジャン「全く… お前ら楽しやがって」スタスタ

サシャ「貴重な体験をさせてもらいました」ニコニコ

アルミン「移動しながら見たけど、ここって…」

ウェルギリウス「うむ… 第八の圏は、地獄の底への大きな穴を取り囲む形で十の仕置き場があるのだ」

ウェルギリウス「これらは深い深い壕となり、十の異なる罪を裁く」

エレン「へえぇ… さっきは3つ、今度は10か」

ウェルギリウス「それだけ罪を犯した人間も、犯した罪の種類も多いということだ。 …行こう」



ギャアアァァアァーー
    ……ウアアァアァァーッ


アニ「悲鳴が凄い……」

ベルトルト「鬼? 悪魔に人々が鞭打たれて…」

ウェルギリウス「第一の壕は、女衒共の地獄。 …女を騙し、売り飛ばした罪でひたすら鞭打たれる」

ウェルギリウス「…肉が裂け、骨を砕かれ血の涙を流すのだ。 女を騙すような賎しい者にはふさわしい罰だ」

クリスタ「それはそうかもしれないけど…」チラッ

ユミル「もしクリスタを売り飛ばすような奴がいたら、私自ら鞭打ってやるだろうよ」


バシーン! バシーン!
    …ギヤアァァァーッ!!!


ユミル「…行くぞクリスタ!」

クリスタ「ウ、ウン……」タタッ



コニー「……クッセェ!」

ライナー「ウ… 何だ、この悪臭は……」

ウェルギリウス「第二の壕は、汚物の地獄だからな」

ジャン「これまでだって臭かったが… ここはマジで堪んねぇぞ!」ウェ…

マルコ「ジャン、涙目だよ。 訓練着で鼻と口を覆えば、少しはマシになるんじゃない?」

ジャン「うぅ… 口で呼吸しても、肺が腐りそうだ……」

ウェルギリウス「ここは権力にへつらい、甘言や巧言の限りを尽くし権力者に取り入った者共の地獄…」

ウェルギリウス「汚物は目に、鼻に口に流れ込み、肉体を腐らせる! …あれを見るがいい」

ウェルギリウス「あの賎しき女の顔… かつての美貌も、今や見る影もない」

ダンテ「あれは誰なのですか?」

ウェルギリウス「アテネの遊女タイデ …男をたぶらかし、虚飾の浮世を渡り歩いた女」

ウェルギリウス「…だが今はただ、汚い爪で汚れた体をかきむしるだけだ」



ライナー「…次で3つ目か」

エレン「うわッ!? 何だココ! …穴ン中に人が逆さまに入れられて、脚だけ飛び出てる!!」

ベルトルト「まるで体を杭のように、地面に打ち込まれて…」

ダンテ「上半身はどうなっているのです?」

ウェルギリウス「穴の中は、激しい炎に包まれている」

ウェルギリウス「ここは堕落した聖職者… 聖職者でありながら、その地位を利用し金儲けに走った者共がいる」

ダンテ「何と! 一体いつ、神が金をせびったというのか!!」

アニ「…お金を持って喜ぶのは、人間だけじゃないの?」

ダンテ「そうとも! 聖なる任務を汚した坊主めらが!!」

ウェルギリウス「ここには教皇もいる」

ウェルギリウス「…ここに新しい者が来る度に、彼は穴の奥深くへと圧し入れられていくのだ」



マルコ「次は何だろう…」

エレン「一見、普通に歩いている亡者みたいに見えるけど… ちょっと足元がおぼつかないな」

ミカサ「でも近づいてよく見ると、全て首が後ろを向いている」

エレン「あ、ホントだ! だからあんなにヨロヨロしてんのか!!」

ウェルギリウス「あれらは偽りの預言者、占い師達だ」

ウェルギリウス「誤った占いで人心を惑わした者達… 何度となく悪魔に首を回され、歩くこともままならぬ」

クリスタ「泣いてる……」

ユミル「だが、首が後ろを向いているからな。 こぼれた涙は全て背に…」

ライナー「またはケツに落ちていく」

ベルトルト「ライナーは、またそういうコトを…」ハアァ

ベルトルト「…だから、疑惑がいつまで経っても晴れないんじゃないか」

ライナー「お、俺は見たままを言っただけだぞ!?」



エレン「……ここは何だ? 沼か?」

アルミン「ボコボコと煮えたぎって…」

ミカサ「でも、前みたいに血ではない。 真っ黒で、ひどく粘っているような…」

ウェルギリウス「ここは第五の壕… 煮えたぎっているのはドロドロのタール」

ウェルギリウス「落ちないよう気をつけろ。 生きている者なら、たちまち溶けてしまう高熱のタールだぞ」

クリスタ「でも、ここにいる人達は…」

ウェルギリウス「そうだ。 罪人は溶けもせず、永遠の痛みに苦しむ」

マルコ「ここの人達は何を?」

ウェルギリウス「ここは汚職を働いた者… 賄賂を取って私服を肥やし、社会を腐らせた者共が堕ちる地獄だ」

ウェルギリウス「…見るがいい。 タールの高熱から少しでも逃れようと表面に浮かべば、ああして…」

ベルトルト「ひ… よってたかって悪魔の熊手で突かれてる」

ダンテ「あの悪魔達の顔や姿のなんと恐ろしいことか!」



ウェルギリウス「……ここは少々面倒なのだ。 皆はその岩陰で隠れていなさい」

コニー「し、師匠…… 行っちまった」

エレン「面倒って、何がだ?」

ライナー「あの悪魔の中に進んでいったが…」

ジャン「あ! 一斉に熊手を向けられたぞ! 大丈夫なのかよ、オイ」



ウェルギリウス「…乱暴は許さんぞ! マラコーダ、この地を監視する悪魔の頭目よ!!」

ウェルギリウス「私は天命により生者を案内しているのだ。さあ、私達を通せ!」

マラコーダ「……誰も手を出すな」



ウェルギリウス「…皆、来るがいい!!」

サシャ「凄くおっかない顔してますけど… ホントに平気なんですかねぇ」オドオド

悪魔「沢山いやがるな…」

悪魔「コイツら子供じゃねぇか」



マラコーダ「10名… でいいか。 お前ら、向こうの橋まで連れて行ってやれ」

悪魔「ハァ……」


ジャン(…オイオイ、随分とヤル気のねぇ返事じゃねぇか)

アルミン(互いに目配せして、歯をガチガチいわせてる…)

ユミル(…こりゃ何か企んでんだろ)

マルコ(絶対企んでる……)


----------


アニ(幽霊どころか、10人の悪魔と並んで歩くなんて……)ハァ

ダンテ「君らが何を考えているのか、何となく分かるが…」

ダンテ「だが私達の世界では、こんな言葉がある。 『教会に行くなら聖人と、飲み屋に行くなら大酒飲みと』」

ダンテ「要は、そこに行くに相応しい人と行けばいい… ということだが」



ジャン「そんじゃメシ屋に行くならサシャと… ってコトか?」

ユミル「確かに色々店は知ってそうだ」

サシャ「そりゃもう! 安くて美味しくて量のある店だったら、いくらでも案内できますよ!」

コニー「へぇー、今度連れてってくれよ」


悪魔「……お?」

悪魔「岩陰に隠れて浮いている奴がいるぞ!!」

悪魔「突け! その腕を貫いてやれ!」

悪魔「…こっちへ来い!!」ズルズル

「ウアアアァーーッ!!」


クリスタ「アァ! あんなに腕の肉が削げて…」


悪魔「皮も剥いでやるがいい!!」



ダンテ「師よ …できることなら、あの不幸な魂と話をする事はできませんか?」

ウェルギリウス「うむ……」スタスタ


「私はナヴァール王国の生まれだったのですが… 父が散財し自殺したため、とある王家に仕えました」

「ですがそこで… 私は汚職の味を覚えてしまい、汚い金に手を染める人生を送ってしまったのです」

悪魔「今頃悔いても遅い!!」ザグッ!

ダンテ「あの、この中に… このタールの下にイタリアに生まれた人はいますか?」

「ウゥ… ここに浮かぶ少し前… イタリアの、サルディーニャ島生まれの者と一緒にいました」

「ああ! 私も彼のように下へ潜っていれば、このように悪魔の熊手に突かれずに済んだものを!!」

悪魔「ヨシ、この方々を楽しませるためだ! ソイツを呼んで来い!!」

「…ですが、あなた方がそんなに恐ろしい顔をしていては、誰一人このタールの中から顔を出せないでしょう」

「どうか、少し下がって… 隠れていては貰えませんか?」

悪魔「お前… この中に潜って、逃げようというつもりではないだろうな?」



「誰もあなた方の翼から逃れられる人はいませんよ」

悪魔「…では俺達は離れるから、下の仲間を呼べ!!」

   バサ バサ バサ…


「………」

「オ… オオォォオオオォーーッ!!」ダダッ …ドッパァーン!


悪魔「―― しまった!!」

悪魔「…お前が仲間を呼んで来いなんて言うから!」

悪魔「お前が離れるって言ったんだろう! マラコーダに報告してやる!」

悪魔「やれるものならやってみるがいい!!」

   ギャー ギャー ギャー

ベルトルト「あ… 悪魔2人で取っ組み合って!?」

マルコ「…アァッ!?」


    …ドッパァーーーン!!



ライナー「この中… タールの中に落ちてしまったぞ!?」

アルミン「み、みるみるウチに溶けて……」

ウェルギリウス「奴らの身体は、この高熱に耐えられるようにできてはいない……」

ウェルギリウス「だが、仲間の恨みをこちらに向けた悪魔共がやってくるぞ!」


悪魔「…アイツ等のせいだ!! …追え!!」


コニー「ウッソだろ!?」ダダッ!

ウェルギリウス「早く! 走り抜けるぞ!!」

ジャン「…クソ! アンカー刺せるようなトコもねぇし、奴らの翼の方が速ェ!!」ダダダ


悪魔「アイツ等を殺せ! タールに突き落としてしまえ!!」


ウェルギリウス「…あそこだ! あの岩の向こうへ!!」

エレン「あそこか!? …ならいける!!」



アルミン「うわッ!?」

ミカサ「アルミン!!」ガシッ! パシュッ

ダンテ「ウワアァァーー!!」

エレン「オッサン!!!」ピシュッ! ガシィッ!

サシャ「ひゃああぁぁぁあーー」ヒューーーン


--------------------


エレン「…オッサン、オッサン大丈夫か?」

ダンテ「ハァ、ハァ… 助かった…」

ライナー「……ヤツ等は?」


   ギャーギャー!!


ウェルギリウス「…彼らはあそこから、こちら側へは来れない」

ウェルギリウス「もう大丈夫だ……」



コニー「なんか… 久しぶりに真面目に走ったような気がするぞ」ハァハァ

サシャ「イヤァ… あそこに突き落とされたら、ひとたまりもありませんでしたねぇ…」



マルコ「…ン? この先… たくさんの人が歩いてる」

ベルトルト「ホントだ… 皆、フードのついた金色のマントを着て…」

エレン「マント、足元まであるな。 雨具みたいだ」

クリスタ「でも… 皆泣いてるよ?」

ベルトルト「本当だ… とても疲れた様子で、一歩一歩ゆっくりと…」

ウェルギリウス「あれは金メッキだ。 …そして内側には鉛が貼ってある」

ウェルギリウス「死ぬほど重い… 永遠の苦しみのマントを着せられ、歩んでいるのだ」

アニ「…ここは第六の壕?」

ウェルギリウス「そうだ、そしてここは偽善者共の地獄… 鉛のマントは全身に重くのしかかり、頭ひとつ動かせない」

ウェルギリウス「倒れて横になることもできず、ただのろのろと永遠の時を歩み続ける……」



サシャ「…オヤ、そこに仰向けに倒れた人がいますが…」

アルミン「3本の杭で左右の手と、重ねた両足を地面に打ち付けられてる…」

ライナー「ここにいたら、あの金メッキの団体に踏まれてしまうんじゃないのか」

ダンテ「どうしてこのような目に合っているのです?」

ウェルギリス「彼はユダヤの大祭司カイアファ」

ダンテ「なんと!キリスト磔刑の…」


「…そうだ。 私はその昔、群衆をたきつけ罪なき人を落とし入れた」

「そちらの人の言う通り、あの鉛マントの偽善者達が通る度に踏まれ… つまずかれる」

「民衆を利用した報いがこれなのだ…」



ウェルギリス「……次へ向かおう」



マルコ「ここはもう第七の壕…?」

サシャ「ん、む… この下から… 何か聞こえるような気がしますが、真っ暗で何も見えませんね」

ウェルギリス「少し下へ降りるぞ」スタスタ


コニー「お… うっすら見えてきた、けど…… ウエッ!?」

ジャン「蛇の群れじゃねぇか!」

クリスタ「キャアァ! ユミル!!」ガバッ

アニ「ヘビ… ヘビ嫌い… 足がなくってニョロニョロしてて…」フルフル

サシャ「すごく色んな種類のヘビがいますよ」

アルミン「人々が蛇から逃れようと走り回って… アッ! 1人が飛び付かれて首を噛まれた!!」

ジャン「…なッ!? 噛まれたら、あっという間に燃え尽きちまったぞ!!」

ミカサ「灰になって地面に散り散りに…」

ウェルギリス「ここは盗人の地獄」

ウェルギリス「人がたゆまぬ努力を重ね、手にした富を掠め取り、人を不幸と絶望に追いやった悪人共… その罪は重い」



ウェルギリス「蛇に噛み殺された者は、炎となって燃え尽きるが… その灰はすぐまた人の姿に戻り、休む間もなく蛇が襲う」

ユミル「盗人ねぇ……」チラチラ

サシャ「な、何です?」

ユミル「食糧庫もヤバイんじゃないのか?」

ジャン「大事な大事な皆の食糧なんだぞ?」

コニー「ハハハ、犬に食われたりヘビに噛まれたり大変だなサシャ!」

ダンテ「何だ、盗みを働いているのか? 盗みはいかんぞ、盗みは」

サシャ「あうぅ… だって、ひもじくて……」ウルウル

エレン「見ろ! あそこ、大蛇が人を締め付けてる!!」

アルミン「……蛇の様子がおかしいよ」

ミカサ「混じり合い、2つに分かれて…?」

マルコ「蛇が人間に、人間が蛇に変わった……」

ウェルギリス「…ああして合体を繰り返しているのだ」



ベルトルト「ヘビの谷を過ぎたと思ったら… 急に険しい登りになったね」

エレン「岩やら尾根やら… けど、これも訓練だと思えばな」

ライナー「なるほど。 訓練のひとつだと思えばいいのか」

ジャン「…点は一切入らねぇが」

ライナー「だが、心身を鍛えていることに変わりはあるまい」

マルコ「どっちかっていうと、身体より心を鍛えている気がするよ」

コニー「クソ、手ェつかねぇと進んで行けねぇ」

エレン「…オッサン、大丈夫か?」

ダンテ「だ… 大丈夫だ… ハァ、しかし君達の体力は凄いな」

ジャン「まぁ、俺達はアンタよりゃ若いしな」

サシャ「ここでこうして一緒になったのも、神様のお導きでしょう」

ウェルギリウス「フフ… その通りだ」



アニ「やっと上に着いた…」

ウェルギリウス「足元に気を付けなさい。 踏み外せば、深い谷底に落ちてしまうぞ?」


ベルトルト「向こう… いくつもの炎が見える」

アルミン「動いているね」

ウェルギリウス「あの炎の中に魂がいる。 皆、燃える火の罰に身を巻かれているのだ」

マルコ「これが第八の壕…?」

ウェルギリウス「うむ… ここには権謀術策を用いて世を渡った者共がいる」

コニー「けんぼう… エ?」

ウェルギリウス「陰謀や謀り事をもって、人を欺いた者達ということだ」

ウェルギリウス「燃えても燃えても、彼らの肉体が焼け崩れることはない…」

ウェルギリウス「炎の痛みから逃れる術はなく、永遠の痛みと苦しみに踊り続けるのだ」

ユミル「あそこに見える炎… 先が2つに分かれてるが?」

ダンテ「あの中にいるのは誰なのですか?」



ウェルギリウス「彼らはオデュッセウスとディオメデス」

ダンテ「…おお! あのトロイの木馬の!!」

アルミン「トロイの木馬…?」

ダンテ「……うむ」



アルミン(その昔… 2つの国の間で、戦争が起こった…)

アルミン(原因となったのは、あの黒い風に飛ばされていた美女、ヘレネー)

アルミン(一方の国… トロイアは、強固な城壁を持つ市街に籠城し、戦争は長期化……)

アルミン(……とうとう10年目に突入した)

アルミン(もうひとつの国は計略を用いて、この状態を打開する事を決意する…)

アルミン(それに使用したのが巨大な木製の馬… 敗退したと見せかけて、沢山の兵士を忍ばせたこの木馬を残し、戦場を去る)

アルミン(勝利に浮かれたトロイア軍は、この木馬を城内に引き入れ祝う…)

アルミン(そして皆が祝い酒に酔った頃、木馬の中隠れていた兵士達が一気に出てきてトロイアを攻め滅ぼしたのだそうだ……)



ウェルギリウス「…共にトロイの名将と讃えられているが… 神の怒りを買い、神罰を受ける身だ」

ダンテ「英雄と謳われているあの2人が……」

ウェルギリウス「今となっては、この炎の中でトロイの権謀を悔いて泣いているのだ…」



アルミン(戦いに勝つため… 策略を用いる事は罪なのだろうか)

アルミン(もちろんこの世界と、僕達の世界では状況が違う)

アルミン(だけど僕は…… 僕はまだ決して多くは知らないけれど……)

アルミン(…何かを変えることのできる人間は、何かを犠牲にする事ができる人間なのではないかと思う)


アルミン(それは例えば人間性… それさえ捨て去る覚悟)

アルミン(覚悟を持たない人間には、何も変える事ができないんじゃないかと思うんだ……)



サシャ「……ん? 血の匂いがします」スンスン

ジャン「血の匂いだぁ? よく嗅ぎ取れんな、こんな色んな匂いが混ざってンのに…」


  グオオオォォオーー!
   ギャアアアアァァーーーーッ!!!


アニ「また… 凄い叫び声が聞こえてくる…」

ダンテ「……アァッ!? あれは!!」

  …ザシュッ!!

クリスタ「人が… 悪魔の剣で切り裂かれて… 酷い」

ウェルギリウス「目をそむけるな。 ここは不和の種をまいた者… 戦を仕掛けた者達の地獄だ」

クリスタ「だってあんなに! 喉元からお腹まで!!」

ユミル「腸がはみ出してしまってる…」

ベルトルト「あちらは首を切られて、今にも反対側に首が落ちてしまいそうだ…」

ウェルギリウス「一族を仲違いさせ、骨肉の争いをさせた者が、今度は自分の身体を裂かれる」



マルコ「切られながらも、皆走っている……」

ダンテ「何故走るのです? 彼らはどこへいこうとしているのですか?」

ウェルギリウス「……走る事しかできぬのだ」

ウェルギリウス「常人には耐えられぬ痛みだから… だから、痛みに耐えかねて走るのだ」

アルミン「でもここをいくら走っても…」

ウェルギリウス「そうだ、この壕は円周になっていて、どこに行くこともできない」

アニ「…切られた身体でぐるぐる同じ所を回るだけ?」

ウェルギリウス「走る間に傷は次第に元通りになるのだが… 傷の痛みが消える間もなく、再び悪魔の剣がその身を裂く」


  …ズガッ!!
   ギャアアァーーーッ!!!



【挿絵】
http://i.imgur.com/QiuOZMb.jpg



ミカサ「エレン見て、あの岩の所……」

エレン「…あ、頭がない!? …切り離された自分の頭… 髪の毛を掴んで、こっちを見てる!!」

「私を見るがいい!!」

ベルトルト「頭が喋った!?」


「私の名はベルトラン・デ・ボルン。 …私が手に持つ首提灯! これは私の行く手を照らし、私の体を映し出す」

「今や私は二つで一つ、一つで二つの身体となった!」

「……私の首に足はなく、私の肩に首はない」

「私もかつては詩人であった。 …そしてその言葉で父と子を割いたのだ!」

「英国王ヘンリー2世の長男をたきつけ… 父王に叛かせた。 その報いがこれ… この有様だ」


ダンテ「師よ… 師よ、この涸れた壕を埋め尽くす血まみれの亡者達… 私は見るに耐えられません!」

ダンテ「あまりに無残過ぎる…… それに、あちらに私の親戚の者がいるのが見えました……」

ウェルギリウス「…深く考えるな」

【挿絵】
http://i.imgur.com/t40AnjE.jpg

もし、アルミンが、第8の壕にいったら、耐え続けるのかな?



ウェルギリウス「さぁ… 次は第八の圏の最後、第十の壕だ。 私達に残された時間も少ない。 ……行こう」

エレン「時間制限があったのか」

ミカサ「あの橋の向こうが最後の壕?」

ウェルギリウス「うむ…… 最も罪人の多い第八の圏も、そこで終わる」


   ……キイィィヤアァァァーー


ユミル「何だ? 異様な金切り声みたいなのが聞こえるぞ」

ライナー「う… これはまた、ひどい臭気だな」

ジャン「汚物の時とはまた違うが…… 俺はもう駄目だ、助けてくれマルコ」ウゥゥ

サシャ「……これは腐臭?」

ウェルギリウス「そうだ…… 腐った肉体から立ち上る悪臭だ」

クリスタ「橋の下… 視界が開けてきた」



ウェルギリウス「ここは騙りの罪を罰する場所…… 錬金術師や贋金作り、詐欺で人を騙した者もいる」

ウェルギリウス「人を欺き、人の心を弄んだ罪は重い」

ダンテ「彼らは一体……」

ウェルギリウス「ここの亡者達の体は腐敗し続ける。 腐敗し、カビが生え、蛆がわく」

マルコ「皆、狂ったように自分の身体を掻きむしってる……」

ウェルギリウス「腐敗する身体は、異常な痒さに苛まれる。 どんなに痛くとも掻きむしり、肉を剥ぎ取る」

ウェルギリウス「しかし、掻けども掻けども痒みは治まらない」

ベルトルト「ふ、腐敗したまま再生してる……」

コニー「…頭の天辺から、つま先までカサブタだらけのヤツもいるじゃんか」

ライナー「ん? 誰かこちらを見ているぞ」

ダンテ「女性か? 師よ、彼女は…」

ウェルギリウス「あれはキプロスのミュラ」



ウェルギリウス「実の父に恋慕し… 母の留守中、他の女に変装して父の寝所に忍び込み、想いを遂げた」

アニ「……お父さんに?」

ウェルギリウス「…父を欺き欲情に走った哀れな女は、この地獄で瘡にまみれた身体で泣いている」

ウェルギリウス「フフ… 子供にはまだ早い話だったか」

ジャン「ンなこたねぇがよ…… ひ、人は誰だって… 間違いのひとつやふたつくらい、しでかしちまうモンじゃねぇのか?」

ダンテ「そうです! 人は一生のうちで何度か罪を犯してしまう…… それこそが人ではないのでしょうか」

ウェルギリウス「……故に人生とは、神が人に与えた試練なのだよ」

ウェルギリウス「人は死後の世界がある事を知らねばならない」

ウェルギリウス「現世だけうまく生き抜こうとする者は、永劫の苦しみを味わう事になるのだと、知らねばならんのだ」

アルミン「……死後の世界がある事を知れば、現世での生き方も変わる… ということだろうか」

ウェルギリウス「そう… 現世が神によって試されているのだと分かれば、人の生き様も変わるやも知れぬ」

ウェルギリウス「だからこそ、地獄をしっかり見ていくことだ」

ウェルギリウス「そしてダンテ…… お前はこの地獄で見たものを、人の世に伝える使命がある」

ダンテ「私が……」



――― 第九の圏


   …ブオオオォオオォ


アニ「……何の音?」

クリスタ「角笛、かなぁ…」

ユミル「それにしても、霧が凄い」

ウェルギリウス「ただの霧ではない。 小さな氷の粒だ」

ウェルギリウス「ここは地獄の最下層、コキュートスに最も近い第九の圏」

マルコ「地獄の最下層、コキュートス……」

ウェルギリウス「…そこへは我々だけで下りて行く事はできぬ。 ここにいる者の力を借りねばならんのだ」

ダンテ「ゲリュオンのようなですか?」

ウェルギリウス「まぁ… そのようなものだな」

>>115 団長のがヤヴァイかもしれないな


  ―― ドオオォォォオン!!


コニー「うわ! 地震か!?」グラグラ

エレン「地獄に地震てあんのか?」

ライナー「闇が深いな… だが、向こうの方に沢山の塔が建っている」

ウェルギリウス「……塔ではない」

ベルトルト「う、動いてる…?」

エレン「―― アァッ!?」

ミカサ「巨人!?」

アルミン「じ、地面から上半身しか出してないけどアレは……」

エレン「超大型!!!」

ジャン「超大型ってシガンシナを襲った一体だけじゃないのか!?」

エレン「クソッ! どんなに沢山いようが、やってやる!!!」ジャキッ!

ウェルギリウス「待て!!!」



ウェルギリウス「何を言っているかよく分からんが、ここにいる巨人達は、君達の考えているものとは違うと思う」

ミカサ「違う、とは?」ギリッ

ウェルギリウス「ここの巨人族(ギガンテス)は遠い昔… 神話の時代、神々に反抗し戦いを挑んだのだ」

ダンテ「な、何故…」

ウェルギリウス「彼らはその強く大きな身体を過信し… 己の力に思い上がり、神々に戦争を仕掛けた」

ウェルギリウス「彼らの破壊力は凄まじく、その戦争は熾烈を極め、長きに渡った」

アルミン「戦争を仕掛け… 知性があるんだ」

ウェルギリウス「巨人族は山に岩を積み重ね、天に攻め昇ろうとするが… 雷を武器にしたゼウスにその野望を打ち砕かれる」

ウェルギリウス「彼らの弱点を母である大地の神ガイアが教えてやらねば、神々でさえ勝利を手にする事は難しかったろう……」

エレン「弱点って何だ? うなじか!?」

ウェルギリウス「…うなじ? いや、彼らの様子を見れば分かるだろう」



ウェルギリウス「彼らは深い井戸につけられている。 …大地から生まれた巨人族は、大地に足がつくとすぐに力を回復してしまう」

ウェルギリウス「だから足がつかないよう、あのように繋がれているのだ」

エレン「……人を食ったりとかはしないのか?」

ウェルギリウス「神に戦いを挑むほど不遜ではあるが、人間を食べたりはせぬ」

エレン「そう、か……」


  ズズズズ…


サシャ「…あッ! 一体立ち上がりましたよ!?」

コニー「足、つかねぇようにされてんじゃねぇのかよ!!」

ウェルギリウス「落ち着け、あの巨人はアンタイオス」

ジャン「20メートル級ってトコか? 他に比べりゃ大分小さいが…」

ウェルギリウス「獰猛な巨人ではなく、不埒な真似をしたわけではないので手足も自由にされている」

ウェルギリウス「最下層に下りるためには、アンタイオスの力が必要なのだ」



ウェルギリウス「アンタイオスよ! この者達は地獄のつらい旅を続けてここまで来た!!」

ウェルギリウス「地獄を巡り、そこで見たもの聞いたことの全てを現世で伝えてくれる者達だ!!」

ウェルギリウス「だが、最下層コキュートスへ下りる谷はあまりに深い」

ウェルギリウス「力を貸してくれ、我らを谷の底へ下ろしてくれ!!」

  …スッ

ベルトルト「……手を差し出した」

マルコ「だけどさすがにこの人数は… それに握り潰されそうだよ」

ウェルギリウス「…ううむ」

ジャン「なぁ… 肩とか背中とか、ちょっとチクチクしても大丈夫か聞いてくれ」

ダンテ「どうするつもりだ?」

ジャン「イヤ、立体機動のアンカー打ち込んでさ」

エレン「オレも、手よりそっちのが落ち着くな」

ウェルギリウス「ふむ… では聞いてみよう」



---------------


エレン「行くか!」パシュッ!

  …パシュッ! ヒュンッ!

アンタイオス「………ウ」

ウェルギリウス「すまぬな、アンタイオス。 …では行くぞ、コキュートスへ!!」



【挿絵】
http://i.imgur.com/pepCuOm.gif



アニ「これが…… 地獄の底」

ダンテ「全てが凍りついている…… 動くものはない… 風だけだ」

ウェルギリウス「ここがコキュートス、人の心までが凍りつく氷の地獄…」

ウェルギリウス「長かった地獄の旅も、四つの層からなるこのコキュートスで終わる」



  …コツコツ カツン、カツン

アルミン(聞こえるのは氷上を歩く、僕らの足音だけ……)

ダンテ「……聞いてもよいだろうか」

ダンテ「ずっと気になってはいたのだが… 君達はまだそんなにも年若く、幼いとさえ言っていい年齢なのに…」

ダンテ「何故、そんなにも戦うことに拘るのだ? そして、先ほどの巨人族を見たときの明らかな憎悪といい……」

アルミン「あなた方の世界の事は、よくは分からない。 だけど……」

エレン「……オレ達の世界には、巨人がいるんだ」

ダンテ「おぉ! では君達は神話の時代の人間なのか!?」

ジャン「そうじゃねぇ… そうじゃないんだが、こっちの巨人はさ…」

エレン「人を…… 人間を、食うんだ」

ダンテ「…なんと!?」



アルミン「僕らの世界では、およそ110年前… ほとんどの人類が、巨人に食い尽くされた」

アルミン「巨人の大きさはこちらと違って様々だけど…」

ミカサ「奴らに共通しているのはひとつ… 人間を食べると言う事」

ジャン「その後俺らのご先祖サンは、巨人の越えられない… 高く強固な壁を築き」

マルコ「人類は巨人の存在しない、安全な領土を確保したように思えた…… けれど」

アルミン「……5年前、再び惨劇は起きたんだ」

エレン「何重かの壁の、外側が壊され… 奴らはやって来た」

コニー「オレはまだ、実物を見たコトはねぇけど… さっきいたのと違うってのは分かる」

ミカサ「…あれらに知性はなく、意思疎通は不可能」

マルコ「他の生物… 動物なんかには、一切関心を示さない」

サシャ「彼らは人間だけを食べるそうです。 …でも」

クリスタ「壁を築いてから100年以上… そもそも巨人は食事を取ること自体、必要ないのかもしれないと言われています」



エレン「……5年前、壁が破られ襲われたのは、オレの住んでた街なんだ」

エレン「そしてオレの母さん… 母さんを!!」

ミカサ「それが私達が最初に見た地獄……」

アルミン「奴らには善良な男女も、幼い子供も手足の自由の利かない老人も関係ないんだ!」

アルミン「僕の両親だって… でもあれは、口減らしのために人間に殺されたようなものだけど……」

エレン「今、人類はいつ破られるかも分からない… 小さな壁の中に縮こまって生きていく他ない…」

エレン「だけど… そんな家畜みたいな人生、オレはイヤだ!!」

エレン「いつか壁の外に出て… 人間らしい自由を… 人としての尊厳を取り戻したいんだ!!!」


ウェルギリウス「……そうか」



ウェルギリウス「そうか…」



ウェルギリウス「地獄の中も、色々な人々の生も見てきた私だが… 正直、現世でのその苛酷さは想像もつかぬ」

ウェルギリウス「だが…… ひと度目を瞑ってみれば、容易に見る事ができる」

ダンテ「あぁ… 私にも見えます、師よ!」

ダンテ「彼らがその信念を胸に、未来に立ち向かう姿が……」

ウェルギリウス「……たとえ、住む世界が違ったとしても」

ウェルギリウス「天は自らを助くる者を助く…… 運命に抗い、懸命に生きようとする者達を、神は決してお見捨てにはならぬ」

ウェルギリウス「君達がここへ来た事は、きっと偶然ではあるまい」

ウェルギリウス「大いなる神の御意志によって、定められた事なのだ」


ダンテ「私は… 私は現世に戻ったら、この地獄での全てを書き記す…」

ダンテ「そしてきっと君達の事も… こんなにも勇敢な少年達と一緒に旅をしたのだと、誇らかに書くだろう」



  …コツン、コツン カツ カツ


アルミン(その後僕らは、しばらく無言で歩いていた…)

ダンテ「ここは……」

ウェルギリウス「ここは第九の圏の一の層『カイーナ』」

ウェルギリウス「その昔… アブラハムの子カインは、弟のアベルを殺した」

ウェルギリウス「……そのように、血族の信に背いた罪人達が氷の池に首まで浸かっているのだ」

ベルトルト「エ! ……今、何か踏んだよ!?」

「…誰だ! 何故私の鼻を蹴飛ばすのだ!?」

ダンテ「…アイツは!!」タタッ!

ダンテ「…私はお前を知っているぞ! 名乗るがいい、その汚れた裏切り者の名を!!」

「やめてくれ! 生者なら死者を哀れんでくれ!!」

ウェルギリウス「ダンテ… ダンテ、もういい」

ダンテ「ですが私達は、この者の裏切りのせいで負けたのです! 多くの同志達が虚しく死んでいったのです!!」

確か、天国編と天国へ行くための再生編があったかな。もし、書ききれるなら3部とも見たい。

>>131 煉獄&天国までは書き切れない
地獄で終わらすから、続き書いてくれないか?



ウェルギリウス「……彼はもう罰を受けている。 その為の地獄なのだから」

ダンテ「………」

エレン「裏切り者って… 知ってる人間だったのか…」

コニー「…な、泣くなよオッサン」

サシャ「そうですよぅ! 私達まで悲しくなっちゃいますよ!」

ダンテ「そうだな… スマン」

ウェルギリウス「先へ進もう…」


   ガリガリ ガジ…


ベルトルト「人が… 人の頭を齧ってる?」

マルコ「一つの穴に… 二つの魂が一緒に凍りついて…」



【挿絵】
http://i.imgur.com/a3wOyng.jpg



ダンテ「…何故あなたは人を齧るのですか!? どうか教えてください!」

ダンテ「私は生きている者… 現世に戻れば、あなたの晴れぬ胸を内を語ることもできるでしょう」


「……また思い出させるのか。 …口に出さなくとも、心はこんなにも締め付けられるようなのに」

「それ故、噛み狂っているものを…… だが、いいだろう。 そのわけを話そう」

「私はウゴリーノ伯爵… こやつは司教のルジェリという……」

ウゴリーノ「私がこやつを信用したばかりに、私は捕まり殺された…… だが、それは政り事の駆け引きだ。 …許せないのは、そのやり方」

ウゴリーノ「私だけでなく、一族を根絶やしにするため、息子達まで高い塔に閉じ込めたのだ」

ウゴリーノ「閉じ込められてから最初のうちは、ほんのわずかなパンが来た…」

ウゴリーノ「そして夜明けに目を覚ませば、子供らがパンを求めて泣いている…… 何度も月が満ち、そして欠けていった」

ウゴリーノ「ある日、私は異様な物音を耳にした。 …それは塔の門という門を、釘で打ち付ける音だった」

ウゴリーノ「私は裏切り者の烙印を押され… 生きたまま、その塔を私の棺にされたのだ!!」



ウゴリーノ「一日、また一日と日が過ぎてゆく…」

ウゴリーノ「ある日、私は空腹と絶望を堪えるため、両手を噛んでいた…」

ウゴリーノ「それを見ていた息子の一人が言ったのだ 『僕を食べてください』 と……」

ウゴリーノ「驚いた私は二度と取り乱すまいと心に決めたが… 翌日から、もう誰も喋らなくなった」

ウゴリーノ「そして4日後、息子の一人が死んだ… 『どうして誰も助けてくれないの?』 それが最後の言葉だった…」

ウゴリーノ「…5~6日目には私の目も潰れ… 私は手探りで息子達を探し、4人の息子の名を呼び続けた… だが……」

クリスタ「…ウッ」ガバッ

ユミル「クリスタ……」

ウゴリーノ「……アァ! もう… もう聞くな! 二度と私に語らせないでくれ!!」



アルミン(これはダンテが言っていたのだが… 彼の時代に本当にあった悲劇なのだそうだ……)

アルミン(伯爵の幽閉された塔は、これ以後『飢えの塔』と呼ばれたという……)



ウェルギリウス「……いよいよコキュートス、第四の層ジュディッカだ」

ウェルギリウス「ここで皆は、この世に悪をもたらした暗黒の王サタン… 堕天使ルシフェルを見るだろう」

ウェルギリウス「ルシフェルの翼が巻き起こす風は、全てを凍らせる。 ……心を強く持つがいい!!」


マルコ「ウワァァアアーッ!」

ベルトルト「この、風…… 体が芯から凍ってしまいそうだ」

ダンテ「……あれか!?」

ライナー「なんて巨大な………」

エレン「食ってる…… 人を食ってるじゃないか!!」

ウェルギリウス「あれが悪魔の王… 堕天使ルシフェルだ!!」



【挿絵】
http://i.imgur.com/bk7RIiq.jpg



アルミン(……それはなんと巨大で恐ろしい姿だったろう)

アルミン(六枚の翼に醜い三つの顔… その三つの口では人を噛んでいる……)


ウェルギリウス「左右の口ではカエサル暗殺の首謀者、ブルータスとカシウスを…」

ウェルギリウス「そして中央の口で、神の子イエスを裏切ったユダを…… 噛まれても噛まれても再生するその身体を、噛み砕き続けるのだ!!

ダンテ「あれがルシフェル!? かつては最も神に愛された天使… 輝ける天使ルシフェルなのですか!?」

ジャン「元… 天使だって…?」

ウェルギリウス「そう、かつて最も美しかった天使…… その変わり果てた姿があれだ!」

ウェルギリウス「大天使は驕り、自らが玉座に座る事を企んだ…」

ウェルギリウス「…神は怒り、天使ルシフェルを天界より投げ落とし…… 美しかった翼は醜いものへと変わった」

ウェルギリウス「だが奈落の底へ落とされた堕天使ルシフェル… サタンは、ラッパを鳴らし配下を結集…」

ウェルギリウス「再び神の軍へ戦いを挑んだのだ!!」

アルミン「…でも最後には、神の軍が勝利したんでしょう?」

ウェルギリウス「そうだ… 大天使ミカエルが、最後には堕天使軍を打ち破った……」



ウェルギリウス「そしてミカエルに敗れた魔王は、こうして地獄の最下層に閉じ込められた」

ウェルギリウス「急ごう…… もう時間がない」

コニー「エッ!?」

ウェルギリウス「魔王の体が地獄の底… すなわち宇宙の底。 その体の中心線を境に、宇宙の位相が逆転するのだ!」

ウェルギリウス「そうすれば、来た道を戻らず帰る事ができる!!」

ライナー「……来た道を戻らずにだって?」

ウェルギリウス「魔王の体毛を掴んで昇れ… そしてここで体を逆転させるのだ! …皆、急げ!!」

サシャ「…ま、待ってくださいィィ」

エレン「うわ… 頭がグラグラする」

ウェルギリウス「重力が逆転するからだ!」

ダンテ「君… 君達! この先の道へは、私一人で行くかもしれないが…… 君達の事はずっと忘れないぞ!!」

コニー「オッサン、オレも! それに師匠のコトも忘れないぜ!!」

ジャン「オッサン、達者でな! 長生きしろよ!!」

アルミン「ウェルギリウスさん! 僕は――― !!!」



--------------


ミーナ「……もう! 上位組のアンタ達がそこで止まってたら、誰も先に行けないじゃない!」

マルコ「…エ?」

ミーナ「どうしたの? ボーッとして。 まるで夢でも見てたみたい」

ベルトルト「夢… だって?」

ライナー「ここは……」

アルミン「ここは、元いた森…?」

コニー「帰ってきた… オレ達、帰ってきたんだ!」

クリスタ「戻れたよ、ユミル!!」

ユミル「あぁ… ああクリスタ! 本当だ!!」

トーマス「ホントにどうしちゃったんだ? 皆… 急に立ち止まったと思ったら、そこでボンヤリして…」

明日には終われるかな



ジャン「エット… 俺達が立ち止まってから、どれくらい時間が経ってんだ?」

ミーナ「チョット! 大丈夫なの? 今さっき立ち止まったばかりじゃない。 頭でも打ったの!?」

ミカサ「今さっき……?」


----------------


アルミン(……僕らが訓練中に立ち止まっていたのは、ごく僅かな時間だったそうだ)

アルミン(だが、僕を含め皆…… あそこに行った人間は、全部を覚えていた)

アルミン(2人の人間と会ったこと… そして地獄の全て巡ったことを……)



アルミン(―― あれから数日経った今、僕達の中でホンの少し変化があった)


コニー「…ようエレン、アレッペ!」

エレン「アレッペ! コニー」


アルミン(…2人の中での朝の挨拶なんだろうか? これはしばらく… 飽きるまでの間、続くかもしれない……)



アルミン(それと、食事の時間が静かになった)

アルミン(サシャが他の人にパンをねだらなくなったからだ)

アルミン(代わりに休日、山へ狩りに出るようになった。 …どうやら食料庫への侵入も止め、自給自足することに決めたようだ)


アルミン(ジャンはといえば… 少しだけ周囲の人に優しく接するようになった)

アルミン(抜き身すぎると評されるその性格… 根本が変わったのかは分からないが……)


ジャン「……俺はあんな臭ェトコ、行きたかねぇからな」

ジャン「イヤ、俺が行くワケねぇってことは分かってるけどよ!」

ジャン「でもその… 言葉の暴力? ってのもさ、もしかしたらアリなのかと…… ハハ、なんつってな!!」


アルミン(そんな分かりやすいジャンの変化を、マルコは優しく見守っている)



ユミル「……クリスタが地獄に堕ちるワケないだろ」

クリスタ「でも私だって… 自分でも気付かないウチに、罪を犯してるかもしれないよ」

ユミル「そうだなぁ… それなら、あの黒い風の中にいた2人みたいにさ」

ユミル「私がクリスタに寄り添い… 庇いながら、一緒に風に飛ばされてやるよ」


アルミン(相変わらずのユミルだけど、あの黒い風の地獄… あれは愛を貪り、愛欲に狂った者達なんだということを忘れているんじゃないだろうか)


ミカサ「……エレンが行くのなら、私も共に地獄に堕ちよう」

ミカサ「でもそんな日は来ない。 だから何の心配もいらない」


アルミン(ミカサもこれまた相変わらずだ)


アルミン(……ライナーは物思いに沈むことが多くなった。 生真面目な性格だから、色々考えることもあるのだろう)

アルミン(ベルトルトは以前より少し口数が減った。 でも元々あまり喋る方じゃなかったから、僕以外は気付いていないと思う)

アルミン(……アニに関しては、全く何の変化も見られない。 これもまた、彼女らしいといえば彼女らしい)



アルミン(……コキュートスの氷上を歩く僕ら)

アルミン(ダンテの言葉を僕は思い出す……)

アルミン(彼は言った。 信念を胸に、未来に立ち向かう皆の姿が見える、と……)



ダンテ『―― 君達の目には強い意志の光、そして目には見えぬがその背には真っ白な翼… 自由の翼が生えているのが分かる』



アルミン(ウェルギリウス…… ダンテの師よ)

アルミン(……人は何故、地獄を必要とするのですか?)

アルミン(人が人らしくあるのなら… 神が地獄をお作りになるはずないでしょう)

アルミン(…地獄は人が必要とする故に、存在するのではないのですか?)

アルミン(彼らと住む世界は違い… 犯す罪も、与えられる罰も違うかもしれない)

アルミン(…だけど僕も、人々に伝えたい)

アルミン(詩人ダンテほどの才… 言葉の力など、欠片ほども持ち合わせなくても)


アルミン(――そうして僕達が見たもの、聞いたことの全てを書き記し後世の人へ残そうと、僕はペンを取る)

終わり
後悔はしてない

あと誤字やら言い回しのおかしい所やらが沢山あるんで、よそに転載できるレベルじゃない
読んでくれた人アリガトウ

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