男「やっぱ気持ち悪い……」 芋虫娘「よいしょ、よいしょ」 (19)

男「これ、人間の耳じゃないよな? 作り物だよな?」

耳「…………」

男「ははは……まさかな。まったく、誰かは知らんが悪趣味な嫌がらせしやがって」

頭部「…………」ゴロリッ

男「ひっ!」

口「誰か、そこにいるのですね? 姿が見当たりませんが」

目玉「キョロキョロ」

男「……そうだ、俺、病院に行こう。黄色い救急車いっぱい呼ばなきゃ」

口「実は私、わけあって体が分離されてしまいまして……」

男「なんだよこの音声発する薄ピンクの物体……俺、もう駄目なのか? 昨日喰った鮟鱇の肝のせいか?」ヒョイッ

口「痛い痛い! 抓まないでください! 涙出てきたじゃないですか」

目玉「じわっ」

男「きもい……グロイ……」

口「私の頭部がこの辺りに散らばってるはずだから、なんとかくっ付けてくれませんか?」

男「…………」

口「あんまりわがまま言える立場じゃないのはわかってますけど、その、あんまり変な位置にパーツ置かないでくださいね」

口「左右対称に、左右対称にお願いします。目は気持ち下で……」

男「あ、ああ、わからないけどわかった」

頭部「ぬっぺらぼう」

男「……これに、これに貼ればいいんだな?」

口「ええそうです。物わかりがよくて本当に助かりますよ。あなた、もてる方でしょう?」ペラペラ

男「ど、どの辺りに貼れば?」

口「センスにお任せしますよ。ただ、変な顔にしたら一生恨みますからね。一回付けたら離せないんですから」ペラペラ

男「……こう、かな」ピトッ

頭部「ありがとうございます。次はお目めをお願いしますね。地べたはあまりに視点が低すぎるもので……」」

…………

男「こ、これでいいでしょうか?」
(あれ、なんか歪んでね? 大丈夫だよなこれ?)

男(いや……頭部だけだからアンバランスに見えるんだろう。きっとそうだ、うん)

頭部「はい、助かりました」

男「じゃっ、じゃあ僕はこれで……」

頭部「あーちょっと待ってください」

男「ひゃっひゃい!」

頭部「ちょっと鏡的な何かを見せてくれませんか?」

男「…………」

頭部「うんうん大丈夫そうですね、ありがとうございます」

男「良かった」ホッ

頭部「ただ……」

男「ひいっ!」ビクッ

頭部「鼻もうちょっとだけ高い方がいいかなーとか……」

男「え? え?」ビクビク

頭部「ご、ごめんなさい、冗談のつもりでした」

男「えっと……すいません」

頭部「……重ね重ね申し訳ないのですが、あなたの家にしばらく泊めてもらえないでしょうか?」

男「えっ?」

頭部「体が見つかるまでは、まともに食事も取れませんし……」

男「え? いや、でも……」

頭部「大丈夫です、スペースは取りませんから」ニコッ

男「そのギャグはちょっと自虐的すぎるというか……」
(こわい……こんなの家にあったら寝れねーよ)

頭部「お願いします。体が戻ったら、私にできることならなんでもしますから」

男「は、はあ」オゾッ

頭部「あ、い、いやそのえっちい意味ではなくてでして」アセアセ

男「…………」

男(初めて連れ込んだ女が生首か……)

頭部「なるほどーこの時代の内装はこんな感じなんですね」チラッチラッ

男(……いや、持ち込んだといった方が正しいか)

頭部「あまり人目に付くところで転がっているわけにはいかなかったので、助かりましたよ」

男「は、はぁ……」

頭部「初めて会ったのが散乱した顔の部位を見ても喋る唇を見ても動じない、奇想天外な頭の持ち主で本当に助かりました」

男(ぶっ飛びすぎててナチュナルに貶されても怒る気すらしねぇ……)

頭部「それでその……厚かましいことだとはわかっているのですが、できれば体の方も早い内に回収して欲しいかなーって」

男「……まあ、他の人の目に付いたら火葬される可能性もあるもんな」

頭部「べっべつに体を回収と言ってもえっちい意味ではえっと」アセアセ

男(……面倒くさい生首だなこいつ)

頭部「今夜中……いや、今すぐにでも行ってきてもらわないと正直な話困るというか」

男(なんか……見慣れてきたな)

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