千早「大好きはーにぃ……♪」(109)

 
千早「いちごみたいに……♪」 サラサラ

千早「純情なの……♪」 グツグツ

千早「ずっと見てて……絶対よ……♪」 カチャカチャ

千早「……うふ、うふふふっ」




ガチャッ




春香「千早ちゃん」

千早「あら、春香」

春香「何してるのかな?」

千早「何って……ふふっ、変なことを聞くのね。お茶の準備だけれど」

春香「そっかぁ」

千早「ええ」

春香「黒魔術かと思った」

千早「春香ったらおかしなことを言うのね、ふふっ」

春香「でもね千早ちゃん、想像してみて」

千早「?」

春香「事務所に戻ったら、真っ暗な給湯室の中で」

春香「低い声でふるふるフューチャーを歌いながら」

春香「暗闇の中で何かを作ってる女の子を見たら、どう思う?」

千早「何かのおまじないかと思うわ」

春香「千早ちゃんはポジティブだなぁ」

千早「私も、お茶くらいは淹れられるようになった方が良いと思うの」

春香「だったら、もう少し普通にしようよ」

千早「普通って?」

春香「だから、こう……そうだ、雪歩みたいな」

千早「萩原さんみたいに?」

春香「うん!」

千早「でも、私は白い粉なんて持ってないわ」

春香「雪歩ー!? 雪歩いるー!?」

千早「雪歩ならレッスンに行ってるわ」

春香「後で律子さんに相談しておこう……」

千早「だから私は、私なりのやり方でいこうと思って」

春香「それでふるふるフューチャー?」

千早「ええ」

春香「真っ暗な事務所で?」

千早「その方が落ち着くから」

春香「ポジティブなのかどうなのか微妙なラインだね」

春香「でも、どうして急にお茶なの?」

千早「……実は、その」

春香「うん」

千早「プロデューサーに、差し入れをしようと思ったの」

春香「へぇー、すっごく良いことだと思うよ!」

千早「日頃から、お世話になってるし……」

春香「うんうん!」

千早「そうすれば、『千早は気が利くな、良い子だな、もう俺の家に来いよ』と言って」

千早「私の頭を撫でてくれるかもしれないわ」

春香「千早ちゃん、計画と妄想がごっちゃになってるよ?」

千早「それで、今度お菓子を作ってこようと思ったのだけれど」

春香「良いんじゃないかな、お菓子作るのって楽しいし」

千早「それにプロデューサー、甘い物が好きみたいだし」

春香「そうだね」

千早「だから、差し入れをするならお菓子が良いと思ったの」

春香「うわぁ、すっごく女の子らしくて素敵だよ、千早ちゃん!」

千早「そ、そうかしら?」

春香「うん!」

千早「そ、そう……じゃあ、やっぱりお菓子の方で良かったのね」

春香「うん?」

千早「お寿司にしようかとも思ったのだけれど」

春香「その選択肢はおかしくないかなぁ」

千早「でもプロデューサー、お肉よりはお魚と言っていたわ」

春香「そうだけど、千早ちゃん」

千早「なに?」

春香「えっとね、差し入れに手作りのお菓子っていうのはすごく良いと思うの」

千早「ええ」

春香「でも、差し入れに自分で握ったお寿司を持ってくる女の子ってどう思う?」

千早「すごく粋だと思うわ」

春香「そっかぁ、私の基準は通用しないんだ」

千早「それで、まずはクッキーを作ろうと思って」

春香「うんうん」

千早「材料も、実は買ってあるの」

春香「そっか、準備がいいね!」

千早「でも私の家、フライパンしか無くて」

春香「なんでそれで材料買っちゃったの?いきなり挫折しちゃってるよ?」

千早「でも、テフロン加工のフライパンだから何とかなるかしら」

春香「千早ちゃんはテフロン加工を信頼しすぎだよ!」

千早「わかったわ、オーブンが必要なのね」

春香「う、うん……まあ、クッキーを焼くならね」

千早「帰りに買って帰るわ」

春香「そんな、帰りに牛乳を買って帰るような軽いノリで買うものじゃないと思うんだけどなぁ」

千早「いいのよ」

千早「プロデューサーに撫でてもらう代償なら安すぎるくらいだと思うの」

春香「千早ちゃんは本当にプロデューサーさんが大好きなんだねぇ」

千早「べ……別に、私は日頃のお礼をして」

春香「えへへ、今さら過ぎるよ?」

千早「だ、だからプロデューサーは、私の……その……」 

春香「うんうん」 ニコニコ

千早「それは確かに、プロデューサーに頭を撫でてもらうと気持ちが暖かくなるし安らげるし、すごく良いとは思うわ」

千早「それにプロデューサーはいつも私のことを気にしてくれているから、そのぶん私もプロデューサーを気にしているし」

千早「朝起きた時はプロデューサーはもう起きたかしらとか、プロデューサーの朝ご飯は何だろうとか」

千早「寝る前はいつも心の中でプロデューサーにおやすみなさいを言っているし、それに食事中でも」

春香「千早ちゃん」

千早「後、寝る前に布団の中で、明日も事務所に一番乗りをすればプロデューサーは褒めてくれるかしら、とか」

千早「次に頭を撫でてもらえるのはいつかしら、どうすればプロデューサーは私を」

春香「千早ちゃん」

千早「何?」

春香「ちょっと落ち着こうか」

千早「私は落ち着いてるわよ?」

春香「そっか、じゃあ千早ちゃんとしては平常運転なんだね」

千早「ええ」

春香「心配だよ」

千早「それで、クッキーの話に戻るのだけれど」

春香「うん」

千早「何かおすすめの本とか無いかしら? 私、こういうものはどうも弱くて」

春香「うーん……そうだ、千早ちゃん」

千早「?」

春香「私の家で作らない? 材料さえあれば、いつでも作れるよ?」

千早「えっ……いいの? 春香」

春香「うん! 千早ちゃんならいつでも大歓迎だよ!」

千早「わかったわ、材料の一部はクール宅急便で送ってもいいかしら」

春香「お寿司は次の機会にしてね!」

 
……一週間後


千早「それじゃあ春香、よろしくお願いするわ」

春香「うん、任せて!」 キョロキョロ

千早「どうしたの?」

春香「材料はこれだけだよね?」

千早「そうだけれど」

春香「良かったぁ、鮮魚が無くて本当に良かったよ」

千早「一応、ガリだけは持ってきたけど」

春香「仕舞っておいて!」

 
 
 
 
千早「……春香、次は?」


春香「卵黄を入れた後は、小麦粉を入れて軽く練るんだよ」

千早「そうなの」

春香「うん!」

千早「じゃあ……こっちの白い粉ね」

春香「小麦粉だよね?」

千早「どのくらい入れれば良いのかしら」

春香「千早ちゃん、小麦粉なんだよね?」

 
 
千早「んっ、んっ……」


春香「この棒で平たく伸ばすのが、地味に大変なんだよね」

千早「伸ばし終わったら成型するのよね?」

春香「うん、色んな形が作れて面白いよ!」

千早「そう……」

春香「うん!」

千早「立体感は不要ね、むしろ平べったい方が魅力的だわ」

春香「千早ちゃん、クッキーの話だよね?」

千早「少しくらいぺったんこの方がプロデューサーも気に入るはずよ」

春香「クッキーのことだよね?」





千早「……できたわ、春香!」

春香「すっごく美味しそうに焼けたね、プロデューサーさんも喜ぶよ!」

千早「そ、そうね……ありがとう、春香」

春香(見事に全部まっ平らなクッキーだけど)

千早「ところで春香、春香が焼いたクッキーはどうするの?」

春香「えっ!? あ、いや、実はそのー……えへへ」

千早「?」

春香「つ、ついでに私も、プロデューサーさんに差し入れしようかなーって……あはは」

千早「そうなの……ふふっ」

春香「うん……えへへ」

千早「ガリを添えておくわね」

春香「やめて!」

千早「ふふっ、冗談よ」

春香(目が笑ってなかったけど)

千早「それで、春香……その」

春香「後はラッピング、だよね?」

千早「……え、ええ」 モジモジ

春香「任せてよ、すっごく可愛くしちゃおうね!」

千早「ふ、普通でいいのだけれど」

春香「駄目だよ、むしろメッセージカードでも入れちゃおうか?」

千早「そ、そんな……」

春香「えへへっ」

千早「でも、婚姻届けならそこの引き出しに入ってるわ」

春香「それは今度の機会にしてね」

千早「一応、ラッピングの材料は持ってきたのだけれど」

春香「うわぁ、すっごく綺麗な包装紙だね」

千早「火で温めるとメッセージが出てくるのよ」

春香「やめようよ、ダイイングメッセージみたいで重いよ」

千早「日頃のお礼を書いただけよ?」

春香「この包装紙に?」

千早「ええ」

春香「ちょっとした新聞紙並の大きさの包装紙に?」

千早「最後の方は収まりきらなくて大変だったわ」

春香「あはは、そんなにぎっしり書いたんだ」

千早「ええ」

春香「プロデューサーさんには火気厳禁って言っておかないと」

千早「ところで、春香」

春香「なに?」

千早「これ、どうやって渡せばいいのかしら」

春香「どうやって?」

千早「こう、机の上に置いておくとか……」

春香「えぇー、駄目だよ千早ちゃん! せっかく頑張って作ったんだから、直接渡したほうがいいよ!」

千早「そ、そう?」

春香「うん!」

千早「でも、家の前で待っていたらびっくりしないかしら?」

春香「それはびっくりするよ! なんで住所を知ってるのかな!?」

千早「ちゃんと書いてあったわよ? 社員名簿に」

春香「それ個人情報!」

千早「わかったわ、事務所で普通に渡せばいいのね」

春香「うん、普通にね。普通に。普通にだよ?」

千早「ええ」

春香「上手く渡せるといいね、千早ちゃん!」

千早「そうね……あの、春香」

春香「なぁに? 千早ちゃん」

千早「その……えっと」

春香「うん」

千早「……ありがとう」

春香「ううん、気にしないで!」








千早「ところで春香、お寿司を握ったことはある?」

春香「無いなー! 無いから本か何かで調べた方がいいよ! ね!」

  ……翌日



雪歩「それでは、お疲れ様でしたぁ」

真「お疲れ様でしたー!」

P「おうお疲れさん、気をつけて帰るんだぞ」




バタン




P「ふぅ……」

千早「……プロデューサー」

P「うおっ!?」

千早「ごめんなさい、驚かせてしまいましたか?」

P「あ、ああ、大丈夫だから気にするな……ところで」

千早「はい?」

P「千早はまだ残ってるのか?」

千早「え、ええ」

P「そっか、春香もまだ戻らないし……ああ、春香を待ってるのか」

千早「そ、そうですね、そんなところです」

P「そうかー」





春香(プロデューサーさん、実はいるんですよ、私……)

春香(千早ちゃんに、一人だと不安だからって言われたから見守ってるだけで)

春香(好きでこんな覗きみたいなことをしてるんじゃないんです……本当です……)

春香(うう、ロッカー狭いなぁ……) グスン

千早「あ、あのっ、プロデューサー」

P「うん?」

千早「の……喉、渇きませんか?」

P「そうだな、買出しでも行ってくるかな……千早、何か欲しいものとかあるか?」

千早「あ、今欲しいのはプr……いえ、そうではなくて」

P「?」

千早「わ、私がお茶を淹れます、から、プロデューサーは座っていて、くら、ください」

P「お、おう、わかった」

千早「それでは」



パタン



P「いやーすごい迫力だったな。はっはっは」

千早「どうぞ」

P「おう、ありがとう」 ズズッ

千早「ど、どうですか?」

春香(変な味とか粉っぽかったりしませんか!?) ハラハラ

P「おう、美味いぞ」

千早「本当ですか? 忌憚の無い感想が欲しいのですけど」

P「うーん……強いて言うなら、少し渋いというか苦いかも」

春香(何の苦味なんですかねぇ!?) ハラハラ

千早「そ、それは……あえて、濃い目に淹れましたから」

P「そうなのか?」

千早「に、苦めのお茶と一緒に……その、お菓子とか、欲しくありませんか?」

P「? そうだなー、甘い物と一緒だとちょうど良い感じかもな」

千早「で、では……よろしかったら、どうぞ」

P「ん?」

千早「お茶請け、じゃないですけど、差し入れで、お菓子で、クッキーなんですけど、えっと」 オロオロ

P「お、落ち着け千早」

千早「は、はいっ」

P「とにかく、このクッキーを俺にくれるのか?」

千早「……そう、です」

P「手作りっぽいけど」

千早「……頑張って、作りました、けど」

P「…………」

千早「……あの」

P「千早は可愛いなぁ!!」 ナデナデ

千早「!!」

春香(いいな! 私も頑張りましたよ、プロデューサーさん!)


千早「あ、あの、プロデューサー……」

P「いやぁ、千早が手作りのお菓子を差し入れてくれるなんて嬉しくってな」

千早「は、はじめて作りました」

P「そうなのかー」

千早「お菓子にするか、お寿司にするかで迷ったんですけど」

春香(それは言わなくていいのに!)

P「そっかー、千早は粋だなぁ」

千早「ふふっ」

春香(!?)

千早「あの、プロデューサー」

P「ん? おっとそうだ、早く開けないとな!」 ガサゴソ

千早「は、はい」

P「いやー楽しみだなー」 ガサガサ

千早「お、美味しくないかもしれませんよ?」

P「千早の手作りだぞ? 美味くないはずがないさ」 ガサガサ

千早「も、もうプロデューサーったら、そんなこと……」

P「はっはっは」 ガサガサ

千早「…………」

P「…………」 ガサガサ

千早「…………」

P(包み紙でけぇ!) ガサガサ

千早「……」 ドキドキ

P「それじゃ、いただきます」

千早「め、召し上がれ」

P「…………」 モグモグ

千早「…………」

P「うめえ!」

千早「! ほ、本当ですか!?」

P「おう、甘みが強いような気もするけど、この渋めのお茶との相性がぴったりだ!」

千早「そ、そうですか……良かった」





春香(プロデューサーさん、今私を呼びましたか!? あっ甘みですかそうですか!)

P「いやぁ、感動だなー……」

千早「そんな、大袈裟ですよ、もう……ふふっ」

P「ありがとう、本当に美味しかったよ」

千早「いえ」

P「また気が向いたら作ってくれよ、楽しみにしてるぞ」 ナデナデ

千早「……はいっ」

千早(ここで俺の家に来いとか言われたかったけど)

千早(私の頭を撫でるプロデューサーの手の感触の中で、不満なんか出てくるはずもなくて)

千早(もうこの手だけで癒されて、頭がとろけそうで)

千早「たまりませんね」

P「ん?」

千早「あ、いえ、春香ったら遅いですね」

P「ああ、そうだなー」


春香(千早ちゃん誤魔化し方が下手すぎだし、プロデューサーさんもチョロすぎですよ!)

春香(っていうか、もう入っていいんですよね!? よーし、春香さん入っちゃいますよ!)

P「せっかくご馳走になったし、食器は俺が下げておくよ」

千早「ありがとうございます」

P「お互い様だ」

千早「…………」

千早「……春香、もういいわよ」



バタン!


春香「うう、狭かったぁ……」

千早「ごめんなさい春香、私の我が侭で……」

春香「あっ、ううん! 気にしなくていいよ!」

千早「そ、そう?」

春香「うん! 良かったね、千早ちゃん!」

千早「……ええ。ありがとう、春香」

 
 
P「お? 春香、いつの間に戻ってたんだ?」


春香「あ、ついさっきです! それよりも、プロデューサーさん!」

P「ん?」

春香「差し入れ、机の上に置いておきましたから! 食べてくださいね!」

P「おお、ありがとう……何だか今日は至れり尽くせりだなぁ」

春香「えへへっ……それじゃ千早ちゃん、帰ろっか!」

千早「ええ、そうね」

春香「それではプロデューサーさん、お疲れ様でした!」

千早「お疲れ様です、プロデューサー……その、今日もありがとうございました」

P「おう、二人とも気をつけてな」



バタン






春香「うーっ、やっぱり寒いねー……」

千早「……春香、今日は本当にありがとう」

春香「ううん、私もプロデューサーさんに差し入れ渡せたし!」

千早「それと、ごめんなさい」

春香「ロッカーのこと? あははっ、それならもう気にしなくていいよ!」

千早「それもあるのだけど」

春香「うん?」

 
 
 
 
P「うん、やっぱり春香のお菓子も美味いなぁ」 モグモグ


P「つい自分でお茶を淹れてしまった」

P「やっぱり春香は料理上手だなぁ」



P「……それにしても」 モグモグ



P「なんでクッキーにガリが添えてあるんだろう」






終わり

いや春香さん好きなんですよ本当に
でもめんどくさいちーちゃんが一番好きなんです

俺がガリみたいじゃねえか

ピザ乙

>>101
ピザじゃねえハゲだ

それでいい

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