岡部「ハーフボイルド?」翔太郎「厨二病?」(130)

慣れないSS作成だが投下するぜ。

―この街からすればオレたちは異邦人

―街の喧騒、立ち並ぶビル、慣れない風

―そんな中で立ち寄った一件のカフェ

―ひと息つき、コーヒーを待つ俺

―ハードボイルドだぜ・・・

フェイリス「お待たせしたのニャご主人さま!コーヒーお持ちしましたのニャ!」

フィリップ「これが秋葉原のネコ耳メイド・・・実に興味深い」

翔太郎「」

それは2011年の年末の事であった。

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仮面ライダーW × STEINS;GATE
Mの思い出/電脳市街のハーフボイルド

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俺たちが何故秋葉原にいるのか、話はほんの2日前にさかのぼる。

亜樹子「翔太郎くん!大変!!フィリップ君がぁー!!」

翔太郎「どうした、また検索で暴走でもしてんのか?」

亜樹子「それがぁ・・・」

とりあえずガレージに降りる。
そこにはホワイトボードに検索結果を書き殴りながらぶつぶつと何かをつぶやく相棒の姿。

翔太郎「いつもの事だろ、亜樹子。ほっとけば元に戻る。」

フィリップが帰ってきた後も、回数は少ないがこうして何かの検索にハマってしまう事があった。
変身を急ぐような非常時でなければ特に問題は無い。
気のすむまでやらせておけば、やがて平常心に戻る。
(もっとも変身もある程度は『ジョーカー』単体でカバーできることもあるが)

亜樹子「それなら良かったんだけど・・・」

翔太郎「?」

フィリップ「!翔太郎!!君は知っているかい!?秋葉原という街を!」

このテンションの相棒は久しぶりだ・・・

フィリップ「家電?PC?萌え?アニメ?・・・様々な分化が混ざり合い、独特の分化を形成している・・・実に興味深い」

「検索結果の閲覧だけじゃ理解できない・・・こんな事は初めてだ」

「翔太郎!行ってみたいとは思わないかい!?」

亜樹子「ね?秋葉原に行くって聞かなくて・・・」

照井「それはちょうどいい」

翔太郎「うお!照井、お前いつの間に!」

亜樹子「あ!竜く~ん!どうしよう?ってちょうどいい?」

照井「ああ。実は以前お前たちが以前関与したカンナギ事件にも関わる奇妙な情報を入手したのだが」

翔太郎「そういや、あの事件は財団Xがらみだったな。」

照井「やつらが投資を打ち切ったはずのガイアメモリを使用していた事は知っているな」

「どうやら投資は打ち切ったが、財団内での独自開発・独自応用は続けているらしい」

「NEVERの技術同様にな」

亜樹子「あいつらがガイアメモリを流出させてるっての?」

照井「いや、今のところ風都以外でのドーパント目撃例は無い」

翔太郎「じゃあ奇妙な情報って」

照井「ないのは“ドーパント目撃情報”だ。実は“ガイアメモリ目撃情報”が見つかった」

「情報によると背骨をかたどった様な大きめのUSBメモリ、鮮やかな緑色ということだ」

亜樹子「それって・・・もしかして」

翔太郎「お前らの結婚式の日に現れたメダルの怪物が持ってた・・・」

照井「ああ。『メモリーメモリ』の可能性は高い。あれは変身させるメモリではなく情報収集型の特殊なメモリだったからな」

翔太郎「?財団Xがどう関係があるんだ?」

照井「確かにメモリの流出だけなら問題はあれど珍しくは無い。EXEとかいう若い連中もいたしな」

「だが、問題はあのメモリはいわゆる『一点もの』だったという事だ」

亜樹子「一点ものって、他には無いってて事でしょ?なんでそんな事が分かるの?」

照井「かつての園崎家崩壊後、超常犯罪捜査課において事件の後処理を行った」

「その際、調査の中において特殊な力を持っているメモリや力の強いメモリ、いくつか『一点もの』として作られたメモリがあった事が分かった」

「やつら幹部級が所有していた『テラー』や『クレイドール』や『タブー』、いわゆるゴールドメモリがいわゆる『一点もの』」

「あの忌々しい『ウェザー』もだ。そしてその中に含まれていたのが『メモリー』」

翔太郎「その『一点もの』の『メモリーメモリ』は」

照井「左、お前がブレイクしたはずだ。オーズと一緒にな」

「だがそのメモリが再び目撃されている」

「となれば、新たに作られた可能性が高い。事実、以前風都にばらまかれたT2ガイアメモリの中に『ウェザー』もあった。」

「財団Xならば作る事が可能だ。そしてやつらが未だメモリを使用しているという事実」

翔太郎「なるほどな。で、最初のちょうどいいってのは」

照井「目撃情報は東京、秋葉原だ」

フィリップ「グッドタイミング!ゾクゾクするねぇ」

翔太郎「やれやれ・・・」

こうしてオレたちの秋葉原行きが決まった。
ちなみに情報を持ってきた照井はというと、

照井「残念だが目撃情報だけでは捜査には乗り出せない。まして、他の管轄ではな」

という事だ。
風都を留守にするのは心苦しいが、この街の仮面ライダーは一人ではない。照井がいる。
受け売りの言葉でいえばライダーは助け合いってやつだ。
オレは事務所の留守番は亜樹子に任せ、相棒とともに街の外へとやってきた。

とはいえ、なにから調べたものか・・・

カチッ \バット/\スタッグ/

とりあえずガジェットに街を見て回ってもらおう。

―――やっと、会えた

世界線STEINS;GATEに到達してから数カ月後
俺は牧瀬紅莉栖と再会した。ラボメンとして迎え入れた紅莉栖はあっという間に俺たちのなかに溶け込んだ。
かつて旅したいくつもの世界線で出会った時の様に。

紅莉栖「ああ!岡部!これ食べちゃったの!?」

「ちゃんとラベルに名前まで書いておいたのに!このバカ岡部!」

岡部「何だと、このセレセブがっ!それに牧瀬プリンと読めるではないか」

「森永さんちのプリンも小岩井さんちのプリンも・・・」

紅莉栖「屁理屈をこねるな!それにセレセブいうな!」

岡部「大体、ここは俺のラボ、あれは俺のラボの冷蔵庫、そしてそれは俺のラボの冷蔵庫の内容物、つまり俺のものなのだ!」

ダル「なんというジャイアニズムwその理論は無茶苦茶すぎるおw」

まゆり「だめだよ?人の者をとったら、ちゃんとごめんなさいって言わなきゃ」

岡部「むっ!お前たちまで助手の味方をするというのか!」

紅莉栖「だれが助手だ!」

もはや溶け込みすぎなくらいだ。
かつて聞く事の出来なかった、あの言葉。

―――岡部・・・私も、岡部の事が・・・

その先を聞く事を聞く事はもうかなわないのだろうが、それでも俺は良かった。
紅莉栖が生きている、俺たちとともにここにいる。
それ以上を望むのは高望みが過ぎるだろう。

・・・数分後

岡部「・・・ごめんなさい」

ダル「さすが牧瀬氏ッ!あっさりオカリンを論破してみせるッ!そこに痺れるぅ、憧れるぅ!」

紅莉栖「分かればよろしい。この落とし前はきっちり付けてもらうからな」

岡部「落とし前?」

紅莉栖「プリン。新しいの買ってきてくれたら、それでいいわ」

岡部「承知した、ではさっそく・・・」

まゆり「じゃあじゃあ、まゆしぃもバナナが欲しいのです」

ダル「ガタッ」

紅莉栖「落ち着けHENTAI!」

ダル「サーセンwでも僕もオカリンにお使いを頼みたいわけだが」

岡部「断る」

ダル「ちょwwまだ内容も言ってないおww」

岡部「なんだ、コーラか?それならまだ冷蔵庫の中に残っているだろう?」

ダル「いや新しいガジェットの材料だお。これがリスト」

岡部「なおさら断る!スーパーだけで済むプリンとバナナならまだしも、これでは余計な体力を使うことになるではないか」

まゆり「オカリンはもうちょっと運動した方がいいと思うなぁ」

紅莉栖「同感。あんまり人の事は言えないけどね」

ダル「3体1だお、オカリン」

紅莉栖「レッツお使い」

まゆり「気をつけてね~」

岡部『俺だ、いまラボメンが結託して謀反を図っている。』

『俺をラボから追い出そうと・・・何?あえて乗れ?』

『仕方がない・・・いまは従いつつ機をうかがうしか無いか・・・分かった。』

『ああ、無茶はしない。追って連絡する。エル・プサイ・コングルゥ』
俺は電話に話しつつ、ラボを出た。

紅莉栖「まったく、素直に『行ってきます』も言えないものかねぇ」

ダル「あんなのはいつも通りだお」

まゆり「最近のオカリンはとっても楽しそうなのです」

「とくに紅莉栖ちゃんがいるときは」

紅莉栖「ふぇ!?」

ダル「うはw牧瀬氏顔面ドクペレッドwww」

紅莉栖「ちょっ、それはどんな色よ!それに別に岡部の事なんか・・・」

ダル「ツンデレ、乙!」

紅莉栖「だれがツンデレだ!」

まゆり「ラボが賑やかになってまゆしぃも楽しいのです!」

紅莉栖「そりゃぁ、命の恩人だし・・・再会できてうれしかったし・・・ブツブツ」

岡部「やれやれ、まずはダルが欲しがっているパーツを買いに行くか」

「ジャンク品ならば安く揃うだろう。もちろん金はあとできっちり請求するがな」

「なになに・・・USBメモリに・・・」

・・・

そういえばこうやって電話レンジのパーツも買い集めたっけな。
電話レンジは解体し、紅莉栖の論文は消滅した。もうタイムマシンは無い。
あれは人の手に渡ってはいけない技術だった。
ほんの数十バイトのデジタルデータが時を遡り、人の運命を、そして世界の運命を変えてしまう。

岡部「必死だったな・・・」

ジャンク品をあさりつつ、いろいろ考えていると

ピカッ カシャリ!

岡部「!?」

なんだか今写真を撮られたような・・・指圧師・・・がいる様でも無いな。
ん?コウモリ?

東京にも居るんだな・・・。

フィリップ「翔太郎!今度はあっちへ行ってみよう!」

翔太郎「だー!まて!落ち着け!!」

パタパタ ピピッ

翔太郎「!バットショットにスタッグフォンが戻ってきたか」

「どれどれ」

スタッグフォンにはめぼしい記録は無かったが、バットショットに1枚決定的な画像を見つけた。
メモリーメモリだ。

翔太郎「フィリップ!見つけた、メモリーメモリだ・・・ってどこ行った!?」

「全く、仕方ねぇ・・・」

路地裏に入りダブルドライバーを装着し、フィリップに語りかける。

『おいフィリップ!どこ行った?メモリーメモリを見つけた』

『翔太郎、そんなことより君はケバブを・・・』

『もういいわ!・・・あとで合流しよう』

どんだけこの街の風に流される気なんだ、相棒は・・・

改めて画像を見直す。

ジャンク品と思われる籠の中から、緑色のメモリを拾い出す、白衣の男の姿。
街中で白衣?もしかしてメモリが集めた情報を回収に来た財団Xか?

秋葉原に来る途中、照井の情報をもう一度整理しなおした。
そもそもなぜメモリーメモリなんかを流出させる必要があったのか。
それはもちろん情報収集だろう。

時間や空間を超えて、そこにあった物や人の記憶を引き出す、それがメモリーメモリ。
何故秋葉原なのか分からないが、この街に何か引き出したい『記憶』があるのだろう。
それを利用しようとしている。というのがオレなりの考えだ。

とはいえこんな行き当たりばったりなメモリの流し方、本当に財団Xなのだろうか。
しかし、ガイアメモリに携わると、必ず聞く決まり文句みたいなものがある。

――人とメモリは惹かれあう。らしい。

素質なのか、たまたまなのか。それとも『運命』なのか。
メモリが内蔵する記憶に合う様な思想や気質をもつ人間の手に渡るのだ。
それを見越しての流出なのかもしれない。

翔太郎「案内してくれ」
オレはダブルドライバーをしまうとバットショットを追った。

フィリップ「家電や萌えだけでなく、食にも様々な分化が混じっている・・・」

「ケバブ・・・実に興味深い・・・そして美味い」

カシャッ

フィリップ「!?なんだい、君は。急に写真を撮るとは失礼にもほどがある」

萌郁「・・・めずらしい・・・格好だったから」

「それに・・・美味しそうに食べてて・・・」

「・・・かわいい・・・」

フィリップ「邪魔しないでくれたまえよ・・・もぐもぐ」

バットショットの画像が撮影された場所に到着したが、撮影したときより時間がたっている。
メモリも白衣の男もいなかった。
画像データをスタッグフォンに移しフィリップにメールで送る。
ちょっとは落ち着いているだろうか、相棒は。

ピピッ

フィリップ「翔太郎からのメールか。そういえばメモリを見つけたと言っていたね」

「メモリを手にする白衣の男か・・・」

「これだけでは情報が乏しいな」

萌郁「・・・その写真・・・」

フィリップ「今度はのぞき見かい?」

萌郁「・・・知ってる・・・」

フィリップ「え?」

萌郁「・・・岡部君・・・バイト先の近くの・・・」


フィリップ「翔太郎に連絡しなくては」

岡部「俺だ、ただいま帰還した」

紅莉栖「お疲れ様、プリンは・・・あるわね、サンクス♪」

まゆり「おかえりオカリン、ありがとうなのです」

ダル「サンキュー、オカリン」

岡部「まったく人使いの荒い・・・」

紅莉栖「もとはといえば、勝手に人のプリンを食べるからでしょうが」

まゆり「はい、オカリンに一本分けてあげる」

俺はバナナを食べつつ、ひと息ついた。

岡部「そういえば、新しいガジェット、と言っていたな」

ダル「exactly、その通りでございます」

紅莉栖「どんなガジェットなの?」

ダル「名付けて未来ガジェット8号First edition Ver. 1.2.5・・・」

紅莉栖「長い」

ダル「うはw」

岡部(そういえばかつては電話レンジが8号だったな)

ダル「ガジェットの設計内容は自律式ロボット掃除機だお」

まゆり「あー!るんば・・・だっけ?」

ダル「あそこまでのものは作れないお。もっと単純な設計で」

「この手持ちモップに動力を取りつけて、プログラムを組み込んだUSBメモリを・・・」

「ってあれ?このUSB・・・微妙に大きくない?」

紅莉栖「本当、コネクターが一回り大きいわね。それになんか悪趣味なデザイン・・・」

ダル「安物で済まそうとして、パチ物つかまされたんですね、分かります。」

紅莉栖「全く岡部らしいわね。ちょっと見せて」

「こんな規格のUSB、アメリカでも見たこと無いわ。少なくとも私は」

「ん?ここにスイッチみたいなのが・・・」

カチッ\メモリー/

白服「予定通り、“惹かれる相手”にメモリは渡った。あとは回収だけだな」

「これより現場へ向かう。出来るだけ騒ぎは起こしたくない。慎重にやれ」

「だが、抵抗するなら強引な手段をとってもかまわん」

「この街の『記憶』はそれだけの価値がある」

紅莉栖(何これ・・・メモリのスイッチを押したら急にめまいが・・・)

(ここ・・・ラボ・・・よね・・・いったい何が)

―――貴様、クリスティーナとか言ったな

―――一言も言っとらんわ!

紅莉栖(一言も言っとらんわ!ってあれ?)

(岡部?それにあれは・・・私?)

―――ではこれより電話レンジ(仮)の実験を行う!

紅莉栖(電話レンジ?)

―――そんなに珍しいの?

―――うんうん。まゆしぃ以外では初めての女の子のラボメンです♪

紅莉栖(今度はまゆり・・・どうなってるの?)

―――この電話レンジ(仮)は・・・タイムマシンだ!

紅莉栖(!?)

―――俺の目に狂いは無かった・・・おまえは最高だ!

―――何よ急に・・・気持ち悪い・・・

―――白衣!やはり研究機関において・・・白衣こそがユニフォーム!!

紅莉栖(こんなやりとり・・・あったっけ・・・?あれ?)

―――お前は大切な仲間だ。相談にはいつでも乗る。

紅莉栖(岡部・・・)

―――俺は友達が欲しかっただけだったのかもな・・・

―――私は・・・仲間だと思ってるよ。前に言ってくれたでしょ?私の事、大切な仲間だって。

紅莉栖(・・・)

―――ぬるぽ

―――ガッ

紅莉栖(ちょw)

―――未来から来たと言えば、多分私は信じる

紅莉栖(未来・・・?)

―――ありがとう、紅莉栖

紅莉栖(・・・!)

―――紅莉栖って呼ばれた事、私、忘れちゃうんだね・・・

紅莉栖(・・・)

―――目を閉じろ・・・いいから閉じなさい

紅莉栖(私は・・・)

―――岡部・・・私も、岡部の事が・・・

そうか、私は、会っていたんだ。

何度も、何度も、岡部と。

いろんな世界で。いろんな時間で。

だからあの時、助けてくれたんだ、命がけで。

再会して、無意識にでた『助手』という言葉の意味も。

次々に流れ込んでくる情報が、記憶が、思い出が、私の中にあふれていった。

「・・・栖!」

「・・・瀬氏!?」

「クリスちゃん!」

気が付くと、涙を流しながら、立ち尽くしていた。

紅莉栖(私は・・・私は・・・)

そのまま膝を崩し、倒れこんでしまった。

萌郁「・・・ここの・・・2階・・・」

翔太郎「ご協力感謝するぜ、お嬢さん」

フィリップ「ありがとう、たすかったよ」

萌郁「・・・///」

ブラウン管工房という秋葉原らしい(?)マニアックな店舗のわきの細い階段を昇る。


コンコン

翔太郎「反応なしか?・・・なんだか中が騒がしいな」

フィリップ「入ってみよう」

翔太郎「あ、おい」

ガチャ

中に入ると、涙を流しながら立ち尽くす少女の姿があった。

そしてその手には・・・

翔太郎「フィリップ!メモリーメモリだ!」

フィリップ「ああ、だが様子がおかしい」

岡部「紅莉栖!」

ダル「牧瀬氏!?」

まゆり「クリスちゃん!」

少女は倒れ込む。

岡部「!?誰だ!!」

翔太郎「すまねぇ、勝手に入っちまって・・・てこいつ白衣の!」

フィリップ「そんなことより今、倒れたその女性・・・」

岡部「そうだ、ヘンテコなUSBメモリを持って、急に・・・」

まゆり「クリスちゃん・・・!クリスちゃん・・・!

翔太郎「メモリーメモリ・・・のせいなのか?」

フィリップ「おそらく、流れ込む情報に飲み込まれて気を失ったのだろう」

「だが妙だ・・・たかが1地点で集積される記憶情報の量は、人一人が抱えきれなくなるほど大量ではない・・・」

ダル「いったい何の話をしてるん・・・?」

翔太郎「紹介が遅れた。おれは左翔太郎、こいつはフィリップ。探偵だ」

「彼女の手にしてるメモリーメモリ、そいつを追ってきた」

「ってお前は写真の・・・!」

岡部「写真・・・?そんなことより紅莉栖は?紅莉栖は無事なのか!?」

翔太郎「俺たちはこのメモリの専門家ってやつだ・・・が」

「こんな事態ははじめてだ。フィリップ、何か手はあるか?」

フィリップ「彼女の意識と直接対話してみよう」

翔太郎「出来るのか?そんな事」

フィリップ「問題無い。かつて鳴海壮吉に行ったのと同じようにすればいいだけさ」

翔太郎「・・・ビギンズナイトの時の話か」

フィリップ「ああ。さっそく始めよう。彼女の名前は?」

岡部「紅莉栖・・・牧瀬紅莉栖だ。」

(こいつら一体、何者なんだ?)

―――・瀬・・栖・・・

私は・・・

―――牧瀬紅莉栖・・・

私は・・・

―――牧瀬紅莉栖!

紅莉栖『はっ!?』

『ここは・・・?』

フィリップ『ここは地球の本棚・・・深層心理の世界みたいなもの、と思ってくれればいい』

『ずいぶんと大きな記憶の波に飲み込まれたみたいだね』

紅莉栖『あなたは・・・?』

フィリップ『ぼくはフィリップ。わけあってこの街に来た探偵・・・の片割れさ』

紅莉栖『探偵?そんなことより、一体何が起きてるの?』

フィリップ『君はさっき、妙な形のメモリを手にして、スイッチを押した』

『そしてそのままこのラボの記憶が君に直接流れ込んだ』

紅莉栖『そうだ・・・私は、あのラボで、この世界とは違う別の世界で、何度も岡部と皆と出会って・・・私は・・・私は・・・!』

フィリップ『落ち着きたまえ、自分を見失っちゃだめだ』

『多くの記憶が流れ込んできても、君は君だ』

『君自身の意識を保つんだ』

紅莉栖『私・・・自身・・・』

フィリップ『少しは落ち着いたかい?』

『君の仲間が心配してる。さあ、帰ろう』

紅莉栖『仲間・・・』

フィリップ『さあ、手を貸して』

フィリップ「ふう」

翔太郎「どうだった?」

フィリップ「問題ない。じき、目を覚ますだろう」

翔太郎「さすがだぜ、相棒」

眠る少女を心配そうに見つめていた連中も、少し安心したようだった。

岡部「改めて礼を言う。俺は岡部倫太郎だ」

ダル「橋田至、ダルでいいお」

まゆり「椎名まゆりです」

話を聞くかぎり、どうやらただの大学生や高校生らしい。
白衣は研究機関のユニフォームだから着ているとか。
まあ白衣よりインパクトのある格好の人が歩いている街だし、意外と普通・・・なのか?


フィリップ「そういえば、彼女、気になる事を言っていたんだ」

「私は岡部やラボの皆と何度も会っていた、それも、別の世界で、と」

岡部「!?」

翔太郎「何か訳がありそうだな」

岡部「・・・すまない、まゆり、ダル、席をはずしてくれないか」

まゆり「・・・行こう、ダルくん」

まゆり「なんだか悲しそうな顔なのです。」

ダル「まゆ氏?」

まゆり「きっとなにか訳があるんだよ。」

岡部「すまない。いずれ二人にも話す」

二人は未だに眠る紅莉栖をソファに移すと、ラボの外に出て行った。

俺は探偵を名乗る二人組に夏に体験した事を可能な限り話した。

翔太郎「タイムマシン!?」

フィリップ「世界線の漂流・・・」

岡部「そうだ」

翔太郎「おいおい・・・そんな話信じられるか、フィリップ?」

フィリップ「実に興味深い話だ。だが『世界線』の話は信用に値する」

翔太郎「信用に値って・・・」

フィリップ「翔太郎、君も一度体験しているはずだ」

翔太郎「・・・!そうだ、あいつにあった時に」

フィリップ「そうディケイド、門矢士」

「彼の能力の片鱗に触れ、僕たちは・・・」

翔太郎「おやっさんに出会った」

フィリップ「正確には違う世界の鳴海壮吉。この場合違う世界線と表現したほうが良いのかな」

翔太郎「じゃあ、こいつの世界線漂流ってのは」

フィリップ「だから信用に値する」

フィリップ「なんども時間が繰り返されたこの場所だからこそ、濃密な記憶情報が残留していたんだ」

「それがメモリーメモリによって一気に引き出され、メモリを起動した牧瀬紅莉栖がその流れに飲み込まれた」

「牧瀬紅莉栖が気を失った理由はそれで説明がつく」

岡部(まるで人工リーディング・シュタイナーだな・・・)

フィリップ「問題はタイムマシンのほうだ」

「少なくとも時間を遡る技術はこの世界には存在しない」

岡部「だが事実だ。事実だったというべきか」

「俺自身完全に原理を理解しているわけではない」

「最初は偶然の産物、だけどそれをタイムマシン、タイムリープマシンとして完成させたのが、紅莉栖だった」

岡部「おそらく紅莉栖はこの世界でもその原型になる理論を知っている」

フィリップ「どういう事だい?」

岡部「色々あってな」

今度は紅莉栖がドクター中鉢に襲われた時の話、そしてその顛末を話した。

翔太郎「自分の体を盾に・・・」

「そして命をかけて女を守る、たとえ彼女に記憶が無くても・・・か」

「ハードボイルドだな」

岡部「?まあ、あの時は、俺も必死だったからな」

フィリップ「そして牧瀬紅莉栖のタイムマシン論文は消失した、と」

「だが論文自体が消失したとしてその理論が消える訳ではない」

「おそらくこのメモリーメモリの目的は牧瀬紅莉栖のタイムマシン理論の記憶を引き出すことだ」

岡部「!?」

翔太郎「そうか・・・!財団Xの狙いはタイムマシンの技術・・・!」

岡部「そんな・・・SERN以外にもそんな連中が・・・」

「やっと世界線からタイムマシンを切り離したというのに・・・!」

フィリップ「悲観する事は無い、岡部倫太郎」

翔太郎「幸いにも俺たちがこの街にいる」

岡部「お前たちはいったい・・・」

翔太郎「俺たちは」
フィリップ「僕たちは」

「ふたりでひとりの探偵さ」

紅莉栖「・・・う・・・ん」

フィリップ「!どうやら目を覚ましたみたいだね」

紅莉栖「岡部・・・?」

岡部「良かった、急に倒れたから心配したぞ」

紅莉栖「あなたは」

フィリップ「さっきはどうも、牧瀬紅莉栖」

翔太郎「オレは左翔太郎、こいつの相棒さ」

岡部「大丈夫か?」

紅莉栖「うん・・・でも・・・。何でもない」

岡部「どうした?」

紅莉栖「何でもないってば!・・・ごめん」

「ちょっと、いろいろ整理がつかなくて・・・」

「一人に・・・させて・・・」

そういうとビルの屋上に登って行った。

紅莉栖(私が見たラボの記憶、あれは私。でも私じゃない。)

(“あの私”はあんなに思っていたんだ)

(あんな想いで、ずっと一緒にいたんだ)

(“私”は・・・どうしたら・・・)

『落ち着きたまえ、自分を見失っちゃだめだ』

(『自分』・・・か。私自身の思いは・・・)

(そういえば持ってきちゃったな、このUSB)

岡部「紅莉栖・・・」

フィリップ「よっぽど、彼女が大切みたいだね」

岡部「なっ!・・・ああ、その通りだな」

「もう傷つくところを見たくない。」

フィリップ「よし、とにかく彼女のメモリをブレイクしよう」

「あれを放置するのは危険だ」

「それに本当に財団Xが絡んでいるのであれば、メモリを回収しに来るはずだ」

翔太郎「そうだな、そうなると彼女も危ない」

岡部「なに!?」

翔太郎「メモリを起動できるのは、最初にメモリを起動した人間だ」

「とすると彼女自身も狙われる可能性が高い」

岡部「そんな・・・ならば今すぐにここに戻ってもらわねばな」

翔太郎「念の為、さっきの二人・・・ダルくんと椎名さん、だっけ?」

「二人もここにもどってもらおう」

ほどなくして二人はラボに戻ってきた。

ダル「あれ牧瀬氏は?」

まゆり「クリスちゃん、目が覚めたんだね。でもどこ行っちゃったの?」

岡部「いま、呼んでくる」

屋上に登ると、紅莉栖の姿があった。

岡部「いつまでそうしているつもりだ、クリスティーナ」

紅莉栖「!?・・・岡部いつの間に」

「それにクリスティーナと呼ぶなといっとろーが」

岡部「泣いていたのか?」

紅莉栖「こっちみんな!」

岡部「・・・。いつもの調子に戻ったな」

紅莉栖「ねえ、岡部さっき私・・・見たの」

「このラボで、違う世界のこのラボで、私と、そのまわりで何があったのか」

「ラジ館で初めて会った時、何で岡部があんなに悲しそうな顔をしてたのかも分かった気がする」

岡部「・・・」

紅莉栖「私が知らない、私の思い出。せつなくて懐かしくて、でもこの世界には無いはずの記憶」

岡部「紅莉栖・・・」

紅莉栖「いま紅莉栖って呼んでくれた」

岡部「っ!いや、これは・・・」

紅莉栖「ほんとはさっき倒れた時も呼んでたけどね」

岡部「なっ!聞こえていたのか・・・」

紅莉栖「聞こえてないと思って呼んでいたのか、おのれはw」

岡部「いや・・・」

紅莉栖「あの記憶は、私にとっては夢みたいなもの、本当は無いもの」

岡部「・・・」

紅莉栖「でも、この『私自身』は、あの時助けてくれた岡部に再会できて、嬉しかった」

「このラボに迎えてくれて嬉しかった」

「日本で、このラボで過ごす時間が楽しくて仕方がなかった」

「それは間違いのない事実よ」

岡部「紅莉栖・・・」

紅莉栖「だから、岡部。わたしは・・・」

その瞬間、岡部の体に衝撃が走った。

岡部「ぐはっ!」

下っ端白服「メモリーメモリ及び所持者確認。確保する」

紅莉栖「岡部!」

―――岡部!

翔太郎「!?」

フィリップ「翔太郎!」

まゆり「いまの声・・・クリスちゃん?」

ダル「オカリンに何かあったんじゃ」

翔太郎「フィリップ、二人を頼む。俺は上へ!」

フィリップ「分かった。無茶はしないでくれよ」

事態が飲み込めない二人はフィリップにまかせ、オレは屋上に向かう。

屋上へ駆け上がると、うずくまる岡部倫太郎に、例の白服が4人、牧瀬紅莉栖を捕まえているヤツを入れて5人。

翔太郎「やっぱり出やがったな、財団X」

下っ端白服「メモリとその所持者は回収する」

翔太郎「させるか!」

オレは牧瀬紅莉栖を捕まえているヤツにつかみかかり、彼女を引き剥がした。

紅莉栖「ッ!岡部!」

岡部「大丈夫だ・・・それよりこいつらが・・・」

翔太郎「財団Xだ」

下っ端白服「邪魔はしないんで欲しいんですがね・・・」

そういうと5人の白服がポケットからガイアメモリを取り出す

カチッ\マスカレイド/ \マスカレイド/ \マスカレイド/

岡部「!?」

紅莉栖「なによこれ・・・どうなってるの!?」

ムカデや背骨を思わせる模様の入った5人のマスカレイド・ドーパントが、3人を取り囲んだ。

翔太郎「本当は、街の外で変身するのは見られたくないんだけどな」

ダブルドライバーを取り出し、装着する。

『いくぜ、フィリップ!』
『ああ、翔太郎!』

カチッ\サイクロン/\ジョーカー/

ほどなくしてサイクロンメモリが転送されてくる。
サイクロンとジョーカーのメモリを装填し、ドライバーを開く。

サイクロン!ジョーカー!

翔太郎の体が風に包まれ、左右2色の超人、仮面ライダーWが姿を現す。
翔太郎「いくぜ!」

岡部「」
紅莉栖「」

そのころラボ

ダル「ちょ!フィリップ氏!?」

「ポーズとって気絶ってどういう事なの・・・」

フィリップ(二人を守りながらの戦いだ。あまり威力のあるメモリは使えない)

翔太郎「ああ、ヒートやトリガーはやめておいた方がいいかもな」

そんなやり取りをしているあいだにじりじりと5人のマスカレイド・ドーパントが間合いを詰めてくる。

瞬間、そのうちの一人が飛び込んできた。

翔太郎「おっと!」

「ふぉれ!」

いなしつつ一発お見舞いする。

しかしその一人をかまっているうちに4人が岡部と紅莉栖におそいかかる。

紅莉栖を捕まえようと手を伸ばす

岡部「くそ!やめろ!」

岡部がそのてを振り払いながら、紅莉栖とともに距離を置く。

それでも執拗に追ってくるマスカレイド・ドーパント。

岡部「・・・紅莉栖には手を出すな!」

紅莉栖「岡部・・・」

岡部の行動のおかげで、二人とマスカレイド・ドーパントに距離が生まれた。

フィリップ(この機を逃す手はないよ、翔太郎!)

翔太郎「ああ、こいつだ!」

カチッ\ルナ/

ルナ!ジョーカー!

翔太郎「まとめてケリつけてやるぜ!」

ジョーカー!マキシマムドライブ!!


翔太郎「ジョーカーストレンジ!」
フィリップ(ジョーカーストレンジ!)

ダブルが左右に分かれ、右半身が分身したかと思うと、
某海賊漫画の主人公の様に腕を伸ばし、鞭のようにしならせて5人のマスカレイド・ドーパントを襲う。
右半身の攻撃に耐えかね倒れ込む5人。
起き上がる隙を与えず、左半身が飛び込み、連続で手刀を決めてゆく。
そして左右の半身が元に戻るとともに、マスカレイド・ドーパントは爆散した。

岡部「」
紅莉栖「」

翔太郎「いっちょあがりだ」

「さあ、今のうちにあんたの持ってるメモリを渡してくれ!」

紅莉栖「ふぇ!?あ、ああ!これ」

紅莉栖がダブルにメモリを渡そうとする。が、次の瞬間彼女の姿は消えていた。

?「まさか仮面ライダーがこの街に来ていたとは、誤算だったな」

翔太郎「お前、いつの間に!?」

謎のドーパントが紅莉栖を捕らえていた。

?「ずっとここにいたよ。気付かなかったのか?」

フィリップ(メモリの力で身を隠していたのか?)

岡部「紅莉栖を離せ!」

?「おっと」

岡部「ぐぼッ!?がんがぼべッ!!」

謎のドーパントは腕を液体の様に変化させ、岡部の顔面を包み込んだ。

?「じっとしていろ。あんまりうっとうしいと、このまま窒息死させるぞ」

紅莉栖「嫌!岡部!!」

「やめて!やめてよ!!」

岡部「くびぶ!」

?「やれやれ」

岡部を投げ捨てる、謎のドーパント。

岡部「・・・」

紅莉栖「岡部!岡部ぇ!」

「あ・・・あ・・・」


岡部はそのまま意識を失ってしまった。

翔太郎「この!」

咄嗟にパンチをお見舞いするが・・・

フィリップ(体が硬化した?)

?「ふんっ!」

翔太郎「くっ」

ガードされ、反撃を食らってしまった。

?「部下を失ったのは悲しいが、目的のものは手に入った。ごきげんよう諸君」
こんどはダブルに向かって粘弾を放つ。

とっさにガードするダブル。

ガードを解いた時みえたのは紅莉栖を捕らえたまま撤退する敵のドーパントの姿であった。

フィリップ(これは・・・)

変身を解きラボに戻ってきた。気を失った岡部を抱えて。
オレはこれまでの事を話せる範囲でダルくんと椎名さんとに話し、
牧瀬さんが連れ去られた事も伝えた。

まゆり「オカリン!」

ダル「オカリン!」

岡部「・・・紅莉・・・栖」

「紅莉栖・・・!」

「紅莉栖!!うわああああああああ!!」

「なんでだよ!!何なんだよ!!」

まゆり「オカリン・・・」

岡部「助けに行かなくては・・・ッ!」

翔太郎「落ち着け、岡部」

岡部「落ち着いていられるか!」

フィリップ「まだ手が無いわけではない。岡部倫太郎、君のおかげだ」

岡部「・・・ッ?なに?」

翔太郎「お前があの時牧瀬さんを助けようと動いてくれたおかげで、やつに隙が出来た」

「おかげでこいつを仕掛ける事が出来た」

カチッ\スパイダー/

オレはスパイダーショックの発信機を仕掛けていた。

フィリップ「そして君が受けた攻撃、ダブルが受けた攻撃。これらからおおよその敵の能力がつかめた」

翔太郎「お前の行動は無駄なんかじゃ無かったて事だ」

岡部「・・・」

翔太郎「ああ。だがこここら先は俺たちだけじゃ無理だ」

フィリップ「ここは僕たちの街じゃないからね」

翔太郎「この発信機が示すのは直線的な距離。これにたどりつく為にはこの街を知る人間の力がいる」

「岡部、お前の力を貸してほしい」

フィリップ「君ならこの街に詳しいはずだ。だが無理にとは言わない」

「命に関わるかもしれない」

岡部「・・・」

フィリップ「・・・まあ無理も無い。さっきも下手したら殺されて・・・」

岡部「・・・フフフ」

「フゥーハハハハ!!!」

「命の危険!?それがなんだ!!紅莉栖の為に一度は賭したこの命!!」

「恐れるものなんて何もない!!!」

まゆり「オカリン・・・そんなの・・・」

岡部「案ずるなまゆり!もちろん死ぬつもりもない!」

「紅莉栖を奪い返し!このラボに連れ戻す!!」

「そしてこの俺も生きて帰る!!」

ダル「おお、いつものオカリンに戻った!」

岡部「まだ助けられるチャンスがあるのだろう!?ならば迷う事は無い!!」

「俺は狂気のマッドサイエンティスト!鳳凰院凶魔!!」

「恐れるものは何もない!!」

「フゥーハハハハ!!!」

翔太郎「・・・」

「こいつ、こんなキャラだったのか?」

フィリップ「ふふっ」

「翔太郎と、倫太郎。案外似た者同士かもしれないね」

翔太郎「俺が!?こんな厨二病野郎と!?」

まったく、勘弁してほしいぜ・・・

フィリップ「さて」

「行動を開始する前に奴のメモリについて検索しよう」

岡部「検索?PCならそこに・・・」

翔太郎「いや、こいつの検索ってのは・・・見た方が早いな」

「さっき気絶してた牧瀬さんに語りかけてたときと同じ力だ」

フィリップは地球の本棚に入った。

―――さて、検索ワードは・・・

―――液状化

―――硬化

―――粘弾

―――絞れた、予想通りだ

翔太郎「どうだ?フィリップ」

フィリップ「予想通りだ、翔太郎。奴のメモリの正体は『Mud』、泥の記憶のメモリさ」

「液状化により身を隠す隠密行動や、岡部倫太郎を攻撃した液化攻撃」

「ダブルの攻撃から身を守った硬化能力」

「少し厄介なメモリかもしれないね」

「だが弱点も分かった。問題ない」

岡部「」

ダル「おお・・・何だかわからないけどチート能力Ktkr!」

まゆり「フィリップ君、なんだか凄いのです」

岡部「なんという厨二スキル・・・」

「さっきの変身といい、何なんだこいつらは」

フィリップ「メモリは見破った。あとは牧瀬紅莉栖の救出だ」

翔太郎「岡部、もう一度聞くぞ。危険な作戦だが、手伝ってくれるか?」

岡部「無論だ!フゥーハハハハ!」

「これより、牧瀬紅莉栖救出作戦はオペレーション・ハミンギアと名付ける!」

「さあ作戦開始だ!」

(弱気になっている場合ではない、紅莉栖を救い出すためにもな)

オレは岡部とともに街に出た。

岡部には護身用にスタッグフォンと一つメモリをあずけてある。

翔太郎「こっちだな・・・この方角にはなにがある?岡部」

岡部「迂回しなければならないな・・・こっちだ」

フィリップはダルくんに椎名さんとラボで待機している。

ダブル変身の際に備えてもらっている形だ。

岡部「この先は・・・」

翔太郎「?」

岡部「ラジ館?」

翔太郎「屋内か・・・予想していたとはいえ厄介だな」

岡部「問題ない、館内の構造は熟知している」

今は閉館し、解体を待つ封鎖されたラジ館。

俺にとってはすべての始まりの地。

ここに紅莉栖が。

翔太郎「行くぞ、岡部」

岡部「ああ、左さん!」

俺たちは封鎖されたラジ館に乗り込んで行った。

マッド・ドーパント「ここでお前はタイムマシン理論を記した論文を中鉢に渡した」

「ならばここでメモリーメモリを起動し、記憶を抽出すれば」

「タイムマシン理論を回収できる可能性が非常に高い」


紅莉栖「・・・」

マッド・ドーパント「さあ、メモリーメモリを起動しろ、牧瀬紅莉栖!」

紅莉栖「・・・岡部・・・」

岡部・・・ごめんなさい・・・私のせいで危険な目に・・・

その時、燃え盛る火炎の塊がマッド・ドーパントを襲った!

ヒート!

岡部「うわっちっちち!!」

預かったスタッグフォンにヒートメモリを装填し怪物に放った俺。

マッド・ドーパント「ぐっ!?なんだこりゃぁ!」

体当たりを繰り返すヒートメモリ・スタッグフォン。

マッド・ドーパント「うぜぇ!」

ヒートメモリの力を内蔵したスタッグフォンが岡部の元にはじき返された。

マッド・ドーパント「お前か・・・邪魔するのは!」

「情けをかけてさっきは殺さずに残してやったが」

「気が変わった。ぶっ殺してやる!!」

マッド・ドーパントが岡部に迫る

その時!

翔太郎「うりゃぁ!」

左翔太郎のキックがさく裂した。後ずさりをするマッド・ドーパント。

さるってました

翔太郎「お前が、財団X、いやマッド・ドーパントか」

そういいつつダブルドライバーを装着する

フィリップ(これ以上、お前好きにさせるわけにはいかないな)

装着されたダブルドライバーにサイクロンメモリが転送される。

岡部「紅莉栖!いまたすけるぞ!」

岡部が紅莉栖に駆け寄る

翔太郎「変身!」

風に包まれた翔太郎は、左右非対称の超人に姿を変えた。

翔太郎「財団X、いや、マッドドーパント!」

翔太郎「さあ、お前の罪を数えろ!」
フィリップ(さあ、お前の罪を数えろ!)

マッド・ドーパント「邪魔をするな!」

泥の粘弾を放つマッド・ドーパント
だが一度見た攻撃だ。
十分に対応できる。

翔太郎「はぁッ!」

蹴り一発で粘弾を弾き飛ばす。

翔太郎「そいつはもう見切ってるぜ」

そのままマッド・ドーパントに突っ込みパンチをお見舞いする。

マッド・ドーパント「フンッ!」

体を硬化してガードするマッド・ドーパント

フィリップ(今度は硬化能力か。)

(だが弱点は検索済みさ。翔太郎!)

翔太郎「ああ!」

「岡部!ヒートメモリだ!」

岡部「ああ!」

預かっていた真っ赤なメモリを変身した左さんに投げる。

カチッ\ヒート/

ヒート!ジョーカー!

翔太郎「これでもくらいな!」

炎をまとったパンチをぶつける

マッド・ドーパント「グハァッ!?何ぃ・・・」

フィリップ(残念だったね。そのメモリは熱による攻撃に弱い)

(だから岡部倫太郎にはスタッグフォンとともにヒートメモリを渡したんだ)

翔太郎「一気に決めるぞ、フィリップ!」

カチッ\メタル/

ヒート!メタル!

翔太郎「お熱いの、かましてやるぜ!」

メタル!マキシマムドライブ!

翔太郎「メタルブランディング!」
フィリップ(メタルブランディング!)

メタルシャフトが燃え盛り、マッド・ドーパント強烈な一撃を与えた。

マッド・ドーパント「ぐッ・・・は」

爆発とともに変身が解除されるマッド・ドーパント。
マスカレイド・ドーパントのようにそのまま爆散してしまった。

翔太郎「これで、決まりだ」

岡部「紅莉栖!」

紅莉栖「岡部・・・岡部!」

「うわぁぁぁん!!」

岡部「もう大丈夫だ」

紅莉栖「岡部・・・岡部・・・」

岡部「こうしてここでお前を助けるのは2度目だな」

紅莉栖「・・・ぐすっ」

岡部「お前が無事でよかった・・・よかった・・・」

俺も泣いていた。

紅莉栖「ちょっと・・・なんであんたが泣くのよ・・・」

岡部「また、お前を失ってしまうかもしれないと思うと」

「怖かった・・・怖かったんだ」

紅莉栖「私は、無事よ」

「助けてくれてありがとう」

岡部「・・・」

紅莉栖「わたしは、岡部が・・・岡部の事が・・・」

「岡部の事が、好きよ」

岡部「!」

紅莉栖「他の世界での思い出を知ったからじゃなく」

「これは私自身の想い」

岡部「・・・やっと・・・聞けた」

翔太郎「やれやれ・・・」

ずいぶんと甘酸っぱいモン見ちまったな。

オレたちは変身を解除した。

岡部、牧瀬さんとともにラボに戻ってきた。

ダル「オカリン!」

まゆり「クリスちゃん!」

フィリップ「お疲れ様、翔太郎、岡部倫太郎」

「無事でよかった。牧瀬紅莉栖」

岡部「左さん、フィリップさん、本当にありがとうございました」

紅莉栖「なんてお礼を言ったらいいか・・・」

翔太郎「礼には及ばないぜ」

「とはいえ、これでひと段落ってかんじだな」

フィリップ「ひと段落。ならば翔太郎、秋葉原の散策を再開だ!」

翔太郎「まだやるのかよ!」

「まあしょうがねぇか・・・。よし行くか、フィリップ」

岡部「ならば俺たち未来ガジェット研究所が全力でバックアップしよう!」

「秋葉原は俺たちの庭の様なものだからな!」

「フゥーハハハハ!!!」

まゆり「みんなでいこうよ!」

ダル「悪くないと思われ」

紅莉栖「賑やかでいいわね、で岡部、何処に案内するつもりなの?」

岡部「まずはメイクイーン・ニャンニャンだ!」

再びさるったので、別回線から

フェイリス「あれ?お帰りなさいませ、凶真!クーニャン!まゆしぃにダルニャン!」

「それに翔ニャンにフィリップニャン!!」

翔太郎「」

フィリップ「ネコミミメイド・・・やはり興味深い・・・」

HOUKOKUSYO

秋葉原での事件は終わった。

財団Xによるメモリーメモリ流出。

照井によれば禅空寺の土地にあったミュージアムの施設から盗まれたデータがあったらしい。

もともとあそこの施設は強化アダプタや自律式メモリなど特殊なアイテムの開発を行っていたところだ。

そこでメモリーメモリも開発されていた、そしてそのデータを財団Xが盗み出した、とのことだ。

岡部と牧瀬さんへは何かあったらすぐ駆け付けると伝えた。

何があっても必ず護る、と。

再び牧瀬さんを狙い財団Xが接触を図るかもしれない。

タイムマシン技術を狙って。

その時は、俺たちの出番だ。

甘酸っぱい愛の告白を聞いてしまったんだ。

それを護るってのもハード・ボイルドだろう?

翔太郎「なあ、フィリップ」

フィリップ「なんだい、翔太郎」

翔太郎「今回の事件はおわった。だが再び奴らが岡部たちを襲うかもしれないな・・・」

フィリップ「そうだね。だが問題無い」

翔太郎「?」

フィリップ「僕たちがいる」

翔太郎「・・・そうだな」

「風都に秋葉原」

「護るべきものが増えちまったな」

フィリップ「ああ」

翔太郎「だが、悪くないぜ」

「他の街でも俺たちを頼ってくれる人がいる。まさにハードボイルドだぜ・・・」

フィリップ「安請け合いしてしまうあたり、ハーフボイルドだけどね」

翔太郎「おいこら!フィリップ!」


それは2011年の年末のことであった。

おわり

以上になります。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
初SSでしたが楽しめました。

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