咲「京ちゃん元気してる?」 (205)

咲「私ね、今、先輩の紹介で、フランスのワインセラーで働いてるんだけど、」

咲「って、でも、なんか、あのね、これ嘘でさ、」

咲「実はひきこもりやってるんだけどね」

咲「こんな手紙なんか書くんじゃなかったよ」

咲「泣きそうっていうか、泣いちゃうって思うんだけど、涙が出てこなくてね、」

咲「なんかさ、」

咲「……ごめんね」

咲「ごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんね」

咲「でも、さ、ひきこもり、って、楽しい、よね」ポロポロ

咲「……投函しちゃった」

咲「私って最低だな……でもほんとはそんなこと思ってないのかも……」

咲「……し、死のう、かな」

咲「で、でも……やっぱその、怖いからやめよ……」

咲「……はあ」トボトボ

???「ん……?あれ?おーい、咲ー!」

咲「!!?」ビクッ

咲「(やだやだやだ絶対見られたくないこんなの絶対振り返っちゃダメ!!!)」ダッシュ

タタタ…

咲「あ、足音聞こえないし、ふ、振り切った……かな?」フリムキ

久「やっ」

咲「あ、あ、」

久「ちょっとー、せっかく昔の先輩に会ったってのに、何よその反応」

久「まー私くらい器用だと、相手の足音に自分の足音合わせることくらい簡単なのよね」ニヤニヤ

咲「ななななななんで」

咲「(ううう人と会うの久しぶりすぎるからどもっちゃって話せないよお……)」

久「しっかしほんとに……えっと、」ジロジロ

咲「ううう」ポロポロ

久「あ、ご、ごめん……でも、咲、あなた……」

咲「」ポロポロ

久「――前よりなんだか可愛くなってるわよ?」

咲「……え?」

久「な、何で泣いてるのかはわからないんだけれど……」

咲「え、だ、だって、そそその、に、ニキビができてて……」

久「……あっはははははははは!!!!はっ、ひーっひひひひひひひ!!!!!!」

久「ばかもん!!!!!!!!!」ゴツッ

咲「あいったぁ…!!!!!?」

久「咲はねえ、ちょっとひきこもり生活が長すぎただけなのよ」

久「だからそんな自意識過剰になってるし、視線不安になってんのよ」

久「あのねえ、あんた元々美少女なのよ?化粧なしでもアレなのよ?」

久「まあ、元が美少女だからニキビくらいで動転しちゃったのかもしれないけど」

久「あんたの悩みは贅沢すぎんのよ!!!ひきこもり風情が様相なんて気にしてどうするんじゃ!」

久「こっちはねえ、社会生活やってんのよ?ほんと、こっちのが気い使わなくちゃいけないっての!!あのねえ、……うん?」

咲「……うっ」

久「あ、ごめん、ちょっと熱くなりすぎ、」

咲「うううわああああああああああああああああああああああああん!!!!!」

10分後

久「ほい、缶コーヒー」

咲「あ、ありがとうございます」

久「ど?落ち着いた?」

咲「落ち着きましたけど、」

久「けどなんじゃ!!!!!」

咲「ひっ」

久「ったく……すっかりひきこもり精神になっちゃって」

咲「あ、あの……」

久「ん?」

咲「……部長は、どうしてここに?」

久「私はねぇ、実は今――これやってるんだ」名刺

咲「た、探偵――!!!」

久「うん、まあ、だからさっきも、ほら、すっかり視線不安の咲に気づかれないで声かけることができたし、」

久「追いかけスキルもバッチリよ」

咲「び、尾行スキルじゃなくて追いかけスキルなんですか……」

久「だいぶすんなり喋れるようになってきたじゃない。そう、追走術、逮捕術っていうのかしらね」

久「私も無駄に社会人やってないってことよ」ジロッ

咲「うう……」

久「私が卒業してから咲とは全然連絡取ってなかったけど、」

久「そういえば、一年前くらいに年賀状が来たわよね……」

咲「ああああの、えと、ちが」

久「『元気で仕事やってます』って書いてあったから、よかったぁ、って思ってほっこりしてたんだけど」

久「……あれさ」

咲「……う、嘘……です……」

久「……ばか」ガツン

咲「いた……あ、あの、さっきの質問なんですけど」

久「ああ、ごめんごめん、私、とある人物を捜しててねえ」

久「――須賀、京太郎って言うんだけどねえ」ニヤニヤ

咲「――え?」

久「ふっふっふ、詳細を知りたいかい?」

咲「し、知りたい――です」

そう、思えばこの時点で、私はもう、巻き込まれていたのだ。

ひきこもりなんかには抗いようもない、運命の輪というやつに――

久「ぷはー」タバコ

まこ「ったく、ぬしのニコチン中毒は大学以来一貫しとるの」

久「まあねえ、この一服のために世界のすべてはあるって感じだから……」

久「おっと、こういういい加減なことばっか言う癖も、どうも治らないのよね――」

久「で、咲」

咲「は、はい」

久「ほんとのほんとに、知りたいのね?」

咲「……はい。京ちゃんから、去年年賀状が来たんですけど、そこには京ちゃんの住所が書いてあって、」

咲「こことは別の……」

まこ「別の県だった。しかしのう、確かな筋から聞いた情報なんじゃが、奴は現在、この近辺におるそうなんじゃ」

咲「住所が移動したん――ですよね?」

まこ「うむ。そして京太郎は――」

まこ「かなりの借金を抱えとるそうなんじゃ」

すまん風呂いってきま

明日大学のテストなんだけど、失敗したらひきこもりになるんだけど、それでもいいって奴は保守すればいいんじゃ!

咲「……う、嘘です、京ちゃんが、そんな」

まこ「……」

久「……ちょうど今から行こうと思ってたところなんだけど、その途中で咲と会ったんだけどね――あなたも来る?」

咲「――え?」

久「彼の家」

咲「いえ……」

まこ「わしは事務所の留守番しとるか、仕方がない」

テクテク

久「探偵って色んな経験してるからこそこういう夜道が怖くなっちゃうのよねえ」

久「ま、咲は安心してて、もし暴漢が出ても、こう、私がしゅっ、ってさ」

咲「……」

久「……」

咲「京ちゃんが、借金なんて……」

咲「やっぱり、考えられませんよ」

久「おっ、急にいい顔つきになってきたじゃない、やっぱ恋は女を強くするわね」ニヤニヤ

咲「こっっっ、こここ恋とかじゃなくて、あのう……」

久「やっぱり咲って可愛いわよ」

咲「そ、そうですか……?」

久「そうよ-。……ん?」

テクテク

???「……はあ、投函しちゃったなあ」

久「(……お、面白くなってきたわ……)」ワクワク

久「……咲、止まって、ちょっと隠れましょう」ヒソヒソ

久「不審者よ」

咲「え!?」

久「しーっ」

咲「く、暗くてよく見えないんですけど、じゃああのポストの前、100mくらい先にいるのが……」

久「そ、いいからほら、隠れて」サササ

テクテク

京太郎「……やれやれ」

京太郎「挙げ句の果てには、ひきこもり生活楽しいとか思ってるんだぜ――」

京太郎「どうしようもねえな」

久「(……っ、ダメダメ、こらえるのよ……)」

咲「(よ、よく見えないよお……もうちょっと)」サササ

京太郎「ほんっとごめんな、咲……」

京太郎「俺っていう幼馴染みを持っちまったばっかりに――」天を仰ぐ

久「ぶーっ」アッ

京太郎「!!?」

咲「きょ――」タチアガリ

京太郎「ひっ!!!!?ケツは勘弁してください!!!!!!」ダッシュ

久「追うわよ!!!!」ダッ

咲「……きょ、京ちゃん、だよね!!!?(あんまり信じたくない、けど……)」ダッ

京太郎「はっ、はっ」

京太郎「さ、さすがにここまでくりゃあ……」フリムキ

咲「……はあ、はあ」

京太郎「……え?」

咲「……」フリカブリ

バチーン

京太郎「ってええええ……!!!!!!」ウズクマリ

咲「きょ、京ちゃんの、バカ!!!!!!!ひぐっ、」

京太郎「な、なんで、咲、(あ、やべ……)う、」ウルッ

ウワーン

久「……お、面白すぎるんだけど……さすがに遠くから見守るわ……」サササ

京太郎「……落ち着いたか?ほれ、缶コーヒー」

咲「きょ、京ちゃんこそ落ち着いた?はい、缶コーヒー」

二人「あ、あれ、」

咲「……さっきさ、け、け……けとぅ……がどうとかって」

京太郎「……すまん、咲が思ってるようなことじゃないんだ、いや意味は合ってはいるんだけどさ」

京太郎「大学でさ、金なくて、俺――あるビデオ撮影を紹介されてさ、」

京太郎「で、……られそうになったんだけど」

咲「え?」

京太郎「……だから、……られそうになったんだけど、」

京太郎「なんかさ、ほんと、マジでその寸前で、俺めっちゃ怖くなって逃げ出したんだ」

京太郎「それ以来トラウマで――って、すまん、こんな話どうでもいいよな」

京太郎「俺も別に話すつもりじゃ、はは、ごめんな」

咲「べ、別に……私こそ、なんかごめん、」

咲「私京ちゃんがホントに……られちゃったのかと思って、体はホントに大事にしてよって思って、つい」

京太郎「(その言葉、知ってるんじゃねえか……)」

咲「て、ていうか京ちゃんなんでこっち来たの!?」

京太郎「……友人から借金があって、それはなんとか返したんだ」

京太郎「でもそしたらすっからかんになっちゃってさ、はは」

京太郎「県外のボロアパートがいいってのを聞いて来たんだけど――」

京太郎「……ぶはっ」

咲「な、何?」

京太郎「いや、お前ちょっとニキビ増えたよな、そんで泣き腫らした目でこっち見てくるからさ、すまん」

咲「……京ちゃんは変わらないよね、そういうとこ……」ユラッ

京太郎「え?ちょっと待て、なんで拳構えてるん――」

ボッコボッコ

京太郎「……うう」ボロッ

咲「ちょっとやりすぎたね、ごめんね」ニコッ

京太郎「いいいや別に全然っ(こえー……)」ニコッ

咲「あのねえ、私は――」

京太郎「ん?っていうか咲、今お前何やってるんだ?」

咲「え――あ、」

咲「……ひ、」

京太郎「ひ……ひで始まる職業なんてあったかな……」ヒ…

咲「ひ、ひき……」

京太郎「……」

咲「……ひきこもりカウンセラーやってるんだよ!!!!!!」ニコッ

翌日

咲「とんだ嘘ついちゃったよ……」

咲「うう、会いたくないなあ、でも会いたいなあ、」

咲「あ、こ、これは別にそういう感情じゃなくて、旧友と会えた嬉しさ?っていうかさ、」

久「よっ、何やってんのよ」

咲「あ、……」

久「鍵開けっぱなしだけど、今からどっか行こうとしてたの?」

咲「全然っ」フルフル

久「……須賀くんに会うの?」

咲「!!!!!?」

久「いや、その物凄くそわそわした感じとか、昨日の邂逅とか、考えてみたら当然でしょうに」

咲「……そうなんです、けど」

久「けどはやめい!!!!!」

咲「ひっ」

久「――あっははははははは!!!!!!」

咲「そ、そんなに笑わなくても……」

久「再会した幼馴染みがさ、両方引きこもりって、あははははは、はふう、ひー、おかし」

咲「きょ、京ちゃんはきっとやむにやまれぬ理由で借金こさえたんですう!!!!」

久「いやいやいや」

咲「そ、そう!!!私は京ちゃんを信じます!!!」スクッ

トテテ…

久「あ、行っちゃった……」

公園

京太郎「……よ」

咲「……ん。座れば?」

京太郎「……おう」

咲「……」

京太郎「……」

ミーンミーンミーン

咲「……もうさ、25回目の夏なんだよ」

京太郎「……」

咲「……私達、こんなんでいいのかな」

京太郎「……」

咲「ねえ」

京太郎「……」

咲「京ちゃん」

京太郎「……すごくどうでもいいんだけどさ、」

京太郎「……お前さ、今、私達って言わなかった?」

咲「!!!!!!?」

京太郎「えっと、あー……もしかして、お前……」

咲「……違うよ」

京太郎「……」

咲「違うんだよ私引きこもりなんかじゃなくて、ほら、たとえばなに?全人類の不幸を一身に引き受けちゃった体質っていうか、

違うんだよ、引きこもりとかじゃないんだよ、ほら、あるじゃん?やっぱこうなっちゃうのってさ、そういう意志っていうか運命の力っていうか、

あのね、ほんとに、そういうんじゃ、」

京太郎「……ごめん」

ボフッ

咲「……私っ、ほんとにひきこもりカウンセラーで、えぐっ、」顔埋め

京太郎「……」ポンポン

――俺はどうしていいかわからなくて、そのまま咲の頭を軽く撫でた。

咲の髪の毛は柔らかくてなんかいい匂いがして、ほんとにこいつ引きこもりかよ、ってちょっと思って羨ましくなった。

咲「……ふんっ!!!」バッ

京太郎「お、おう?」

咲「元気が出ました」

京太郎「よかったよ」

咲「……あのねえ、私、引きこもってる間にけっこう小説読んだんだよ」

京太郎「ふっ、俺なんか家中図書館みたいなもんなんだぜ」

咲「……嘘だね」

京太郎「さすがだな」

咲「まあ、京ちゃんのことは昔っからだいたいわかるからねー」フフフ

京太郎「……」ドキ

咲「それでさ、ある小説に書いてあったんだけど」

咲「京ちゃん、私と契約、しない?」

京太郎「契約って……もしかして、『N○Kによう……」

咲「あーっ!!!!ダメ、ダメです言っちゃダメ!!!!!」

京太郎「」ビクッ

咲「きょ、京ちゃんが知ってるなんて……これじゃ意味ないじゃん」ハアハア

京太郎「……ま、契約の中身とか、趣旨はわかっちゃうな」

咲「……」

京太郎「っつーかそんなことしてもさ、俺たちってけっこう痛いだけじゃ、」

咲「じゃあどうするの!!!!?」

京太郎「……」

咲「このまま二人ともまた引きこもるの!!?京ちゃんだってほんとは社会に出たいんじゃないの?私だって、」

咲「……実は、別に社会に出たくは……ないんだよね」

京太郎「……実は俺もだ」

京太郎「あ!!!」

咲「ど、どうしたの、京ちゃん?」

京太郎「あのさ、二人で引きこもればいいんじゃね?」

咲「――え?」

京太郎「ほら、そしたら二人とも社会に出なくて済むし、引きこもりなのに人とコミュニケーションできるし!」

咲「いや、まず社会に出なくて済むってところから間違ってると思うよ……謎理論だよ」

咲「っていうか二人で引きこもるって……っ」顔真っ赤

京太郎「うん?………」顔真っ赤

二人「……どうしよっか……」

「それならいい物件があるわよ~」

咲・京太郎「!!!?」

テクテク

久「やっ」

京太郎「ど、どうもっす……あ、もしかして昨日咲と一緒にいた人って」

久「察しがよくて助かるわね-。麻雀部にいたときもそうだったわ」

京太郎「俺はそのおかげで散々パシることになりましたからね……」

咲「懐かしいね、全国優勝しちゃったし」

咲「……お姉ちゃんにも、会えたし。変わってなかったなあ」クスッ

久「――ま、今は二人とも、なぜかこうなってるんだけどね」

咲「……そ、それは突っ込まないでくださいぃ……」ウルッ

久「そうそう、さっきの話の続きなんだけどねえ……」

さらに翌日

二人「へー、ここが……」ポカーン

久「そ、あなたたちが二人で住むマンションの一室よ」

二人「!!!!?」

久「え、もう合意してるんじゃなかったの?」

咲「そ、それは……」

京太郎「まだ……っていうか部長が強引に連れてきたんでしょうが!!!!」

久「いやー、だって物凄くお似合いだと思うわよ?」

京太郎「今はそういう話をしてるんじゃなくてですね、」

咲「(お似合いお似合いお似合いお似合い)」カーッ

まこ「見事に場が混乱しとるのう……」

まこ「(……まあ、これも依頼ってことは言わんほうがええのう)」

まこ「……」チラッ

まこ「(実は、二部屋隣に、「原村」の表札がかかっとるとか……)」

まこ「(言わんほうが、ええんじゃろうのう)」タメイキ



咲「ふう、けっこういいお値段だったねえ」

京太郎「まあ、引きこもりにはホント良心的だよな……でも、」

咲「でも?」

京太郎「……すまん、実は俺、あのときなんか裏があるんじゃないかって疑っちまってさ」

京太郎「だって、あまりにもいい話すぎるって思わないか?」

京太郎「いくら部長だからって、いや、部長だからこそ――」

ペチン

京太郎「――あ、いや、すまん、」

咲「京ちゃんのバカ!!!!」

トテテ…

京太郎「……はあ……今のは俺が悪かったな……」

京太郎「……っていうか、あれ?」

京太郎「ここって、俺と同じアパート……?」

ピンポーン

インターホンに向かって

京太郎「もしもし、咲?あのさ、俺だけど、」

咲「!!!?きょ、京ちゃん!?なんで!?」

京太郎「ここ、俺の住んでるアパートの隣のアパートなんだよ」

京太郎「一瞬同じアパートかと思っちまった、はは」

咲「――っ!!!」

京太郎「なあ、咲、さっきはごめん。話を――」

咲「帰って!!!!」

京太郎「……いるぞ」

咲「帰ってよ」

京太郎「……いる」

咲「帰れ……」

京太郎「まだいるぞ~」

咲「帰ってよう……」

ガチャ

京太郎「っはは、お前言ってることとやってること全然違うじゃん」

咲「うっさい!!!!」ガスッ

咲「うっさいうっさいうっさいうっさいうっさい!!!!!」ガスガスガスガス

京太郎「いってえ、はは、やっぱ変わってねえ、お前切れるとすぐそうやって『うっさい』しか言わなくなんのな」

咲「うっさい……うっさい……京ちゃんなんかどっか行けえ……!!!」ポロポロ

京太郎「……ごめんな、ほんと、俺咲好きだわ」

咲「――へ?」ポロポロ

京太郎「……や、なんか、今までさ、ずっと言ってなかったなって思って」

咲「い、いや私だって好きだよ」

京太郎「………セックスしたい」

咲「………え?えーと」

咲「!!?」

京太郎「(……なんだろう、言った瞬間すげー恥ずかしくなったぞ……)」

京太郎「……あー、」

京太郎「……っていうのは冗談かな、あはは、はは、はははははははは」

咲「……」

グイッ

京太郎「うわ、ちょ、危な、」

バタン

京太郎「……はっ、はっ、」

気づいたら玄関の扉が閉まって、真っ暗な部屋の中で咲の顔が物凄く近くにあった。

咲「…………しよ」

そう言う咲はなんかものすごくエロかったし、なんかもうこれが現実かどうかもよくわからなくなっていたので、俺は雰囲気に飲まれることにした。

そこから先はたぶんお互い夢中だったのだ。

だからあんまり覚えていない。

チュンチュン

咲「……起きた?」

京太郎「……ああ」

咲「……せ、責任、取ってね」

京太郎「……お、おう」

京太郎「……なんかさ、部長、俺らを一緒に帰らせたのって案外これが目的だったりしてな」

咲「え?」

京太郎「部長、たぶん俺に会ったあと、俺の家の場所調べて把握したと思うんだけど」

京太郎「咲に隣のマンションだって教えなかったのは、たぶんドッキリだったんだよな」

京太郎「さすがにこうなることまでは予測してなかっただろうけど」

咲「た、たしかにね……」

久の事務所

久「くしゅんっ」

久「あら、誰かが成功の報告をしてくれてるみたいだわあ……」クスクス

まこ「おぬしも悪よのー……」棒読み

京太郎「……っていうかさ、」

咲「うん?」

京太郎「俺たち、まだ仕事もないわけじゃん」

咲「うん」

京太郎「そんな状態で責任とかそういう話になるようなことしちゃってさ、」

咲「……ひ、」

京太郎「……」

咲「……ひきこもりカウンセラーだから!!!私!!!!なんとかなるから!!!」

京太郎「……ハローワーク、いこっか」

咲「……うん」

そのあと俺と咲はめでたくというか、策略通りというか、結局あのマンションに二人で住むことになった。

和「……よ、よくも咲さんを傷物に……殺す……須賀京太郎、殺します……」

そこでまた一波乱あるのだけれど、それはまた別の話だ。

優希は部長の話によると、遠いところへ旅に出ているらしい。

あいつらしいとは思う。元気でやっているといい。

さて、俺たち二人はといえば――今日もその日のバイトをしながら、元気にハローワークに通っている。

「職は――ありませんか」


カン!

セックスの描写したらさすがに殺されると思ったんだ

ほんとごめんなんか書いてたらセックスしてた

百合も京咲も好きです、見てくれた人サンクス

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