魔王「勇者に負けそうになり、我が身を封じて数百年」(169)

魔王「遂に復活の時よ!」バッ

魔王「……」シーン

魔王「何故、城内に誰もおらんのだ」

魔王「あの時側近が放ったこの封印の術はまさか……我のみにしか作用しないものだったのか?」

魔王「誰かおらんのか!!」オランノカ ンノカ  カ

魔王「……」

魔王「我は……我に仕えていた者全てを失っ」キィィィン

『魔王様、お目覚めになりましたか!』

魔王「側近?! 何処におる。というより何故念話なのだ」

側近『事態は急を要します。何点か確認したい事があります』

魔王「貴様、我が問うて……」

側近『急がなくては魔王様のお命に関わる事なのです! どんな責め苦も甘んじて受けます。ですが今はお赦し下さい』

魔王「……いいだろう。申せ」

側近『私が行った術により魔王様並びに契りの儀を行った全ての眷族が封印されました』

側近『その者達は魔力が減少傾向、変質が確認されています。魔王様、魔力による障壁を張る事は可能ですか?』

魔王「……」キィン

魔王「む……? 上手くいかんな……いや張れているのだがこの強度は」

魔王「……ふむ、絶対の壁としての力は失われたか」

側近『どの程度の強度でしょうか……?』

魔王「……魔法を無効化する力は無いだろう。あの時の魔法使いの少女の一撃に耐えられるか否か」

魔王「物理であればそれなりに耐えられるだろうが……魔王クラスを相手取るなら一撃凌げればいい方か」

側近『……それでは魔王様が行われていた飛行能力はどうでしょうか?』

魔王「……」フワ スィー

魔王「高度は3mも出んな。速度も全力で時速20kmくらいだろうか」

側近『……』ゴクリ

魔王「どうした?」

側近『今すぐ魔王城から逃げ出し、岬の中腹あたりにある岩場まで全速力できて下さい』

魔王「一体何が起こっていると……いやそれも含めて後で聞くとしよう」

側近『大至急お願い致します。我々はその岩場で待機しておりますので』

魔王「はぁ……はぁ……あそこ、か……」タタタタ

側近「魔王様! ご無事で何よりです!」

魔王「ふう……ふう……」

騎士A「ま、魔王様、お水を」スッ

魔王「うむ……すまない」グビ

魔王「ふう……では、側近よ。状況の詳細を報告せよ」

側近「はい、あの日より約370年経っており、人間達は魔王様が自らを封印した、と前回の戦いを結果付けました」

魔王「ほう……もっと慢心するかと思ったが」

側近「私も驚きですね。以降人間達は産業を発展させ続け、様々な道具や兵器を生み出しました」

側近「結果、魔法という存在が曖昧、というよりも技術力が取って代わってしまった世界と言えるでしょう」

側近「魔王城の扱いは昔恐ろしい魔王がいた城として、歴史的に価値が高いものとして残されてきました」

側近「我々は一週間ほど前から目覚め、魔王様のお目覚めを待っていたのですが人間達に見られてしまい、大戦力が進行中であります」

魔王「新兵器をもって、か。それはどの程度のものなのだ?」

側近「後ろをご覧下さい」ン ゥン

魔王「……なんだ? 森? 森が浮いている?」ゴゥンゴゥン

側近「あれは森にカモフラージュする様ペイントされたものですね」

魔王「……」ジー

緑色の何か「」ゴゴンゴゴン

魔王「僅かに光沢があるようにも見える。あれは金属なのか?」

側近「あれが人間達の今の主戦力の戦艦です」

魔王「あれが船だというのか?! 浮いているぞ!」

側近「魔王様も浮きになられるじゃないですか」

魔王「規模が全く違うではないか! あれは……本当に大型の船だぞ!」

側近「あ、そろそろ隠れましょう」ガサガサ

魔王「むう……で、あれは何をしようといるのだ」

側近「その様子まではもう少し時間もかかるでしょうし、世界情勢についてお話しておきましょうか」

側近「今も昔と同じ五ヶ国からなります。まずは北の雪国、シルバースノウ」

側近「ここは山脈に囲まれた土地を利用し、完全に鎖国をしています。戦艦の殆どが防衛や奇襲に特化した屈強の特殊艦隊となっています」

側近「中央の国、多くの川が流れるウェッブリバー。ここは地形の優位性が無く、通常戦艦を多く有して物量での戦法を敷いています」

側近「西部、岩山だらけの領土で洞窟を利用した生活圏を持つロックケイブ。ここはウェッブリバーと友好的ですね」

側近「地理上、攻め込まれる場合ウェッブリバーが先に落とされる形になる為、高速戦艦や射程距離重視の戦艦を保有しています」

側近「南部、樹海の国のグリーングランド。今魔王城に向かっている戦艦の国です。基本は樹海にカモフラージュして攻め込む相手を下から撃つ」

側近「そして上空の戦艦も攻撃に加わるという二方向からの攻撃を展開する戦法をもっていますね」

側近「東部、砂漠の国シーサンド。ここが精力的に各国への侵略を行っています。今のところは物量で戦っている感じですが」

側近「何やら特殊戦艦を造っているという話があります」

魔王「で?」

側近「グリーングランドは我々の目撃に対して魔王様の復活と考え、先制をもって終わらそうと考えているようです」

側近「ああ、説明が遅れました。戦艦の基本攻撃は砲弾、巨大な金属の弾を射出します」

魔王「どうやってだ? まさか空気圧でか?」

側近「昔はそうでしたが今は魔石を用い、爆破魔法の要領で飛ばしているようです」

魔王「魔石? 人間界は魔石が少ないはずだったが」

側近「前回、魔王様が全ての鉱山で魔力を放った結果、クズ石一つでも膨大な魔力を保有するようになったようです」

魔王「……まさか航空戦艦も我の所為か?」

側近「魔石を元に飛行技術を得ていますからね……」

魔王「む、戦艦が止まったぞ」

側近「あそこから魔王城に対し発砲して沈める気なのでしょう」

魔王「? 城に対し戦艦を横に向けたぞ」

側近「あー……あれは伏兵戦艦ですからね。上空を狙う関係上、正面の砲塔は低い位置は狙えません」

側近「なので上下の稼動が利く側面の砲等を使うのでしょう」

魔王「なるほど……さて、お手並み拝見と行くか」

グリーングランド 戦艦内
艦長「……あれは歴史的に見ても非常に価値ある存在だ」

艦長「可能であれば未来に残していきたいものだが」

「……」

艦長「これも時代か……全艦、照準魔王城。弾種徹甲!」

「照準魔王城、弾種徹甲!」

艦長「……」グッ

艦長「全艦、撃てぇ!」

ドドドドン ドドン

ズドドドドドォ

魔王「……」ォォォ

側近「……」ォォ

魔王「人間界侵略はもう止めにしよう。時代は変わったのだ」

側近「そうでしょうね」

魔王「だがしかし……このままおめおめと魔界に帰るのも」

魔王「我を魔力しかない魔王と侮辱するあの者達を見返すことも出来ず……」

魔王「……ん? そのシーサンドの勢力はどのくらいのものだ」

側近「今現在は小競り合い程度でとても世界を掌握できるものではありません」

側近「が、特殊戦艦建造を含め、戦線に出していない多くの戦艦が控えています」

側近「総戦力となったら……各国のいち早い連携無くして迎撃できるものとは思えません」

魔王「ふむ……」

魔王「良し、我の行動は決まった。人間に加担しシーサンドを討つぞ」

魔王「一騎当千は無理なのだろう。だが、我が様々な方面に働きかけこの世界を救おうものなら、それこそ我の偉業よ」

魔王「形こそ違えど我が成し遂げた事。シーサンドが屈強でより絶望的な戦力差ならそれも良かろう。我とて男、燃えるではないか」

側近「……」

魔王「魔族魔物の者にとっては人間など蔑視する存在だ。流石のお前も嫌なのだろう、魔界に戻る事を許可しよう」

側近「……魔王様」

側近「我々は個人の感情より、魔王様の忠誠を第一とするものです」ニコリ

側近「そして魔王様ならばそうお考えになるだろうと、下準備は整えております」バッ

側近「既にグリーングランドにおける、特殊戦艦の艦長の座を頂いております。魔王様、何時でも行動はできます」

魔王「……」ポカーン

魔王「ふ、ふははは! やはりお前は優秀だ! だが……流石に魔物達まで残す訳にもいくまい」

魔王「四天王はもう討たれているのだな……誰に統率を任せたものか」

側近「候補はこちらに。二人とも前へ」

騎士A・B「……」ザッ

魔王「……見ない顔だな。このような者がいただろうか?」

側近「彼らは今を生きる魔族です。元々、人間界に攻め込んだ魔王様を敬っていたようです」

騎士A「数日前、魔王様の復活の兆し、魔力を感じたゆえ居ても立ってもいられず、この微力をお使い頂きたく馳せ参じました」バッ

魔王「……ふむ」

魔王「すまぬがお前達は魔界に帰れ」

騎士B「魔王様……」

魔王「お前達には側近の推薦どおり、ここにいる多くの魔族魔物の統率を任せる」

魔王「400年近く経っているとなると、色々と変わっているのだろう……」

魔王「契りの儀は……時間がないか。すまないが君達を眷属にしてやれるのは」

魔王「我がシーサンドを討ち、魔界に戻ってからになるな」

魔王「すまないが、我が命を受けてくれるか」

騎士A「あ、ありがたき幸せ!」バッ

騎士B「この任、必ずや」バッ

魔王「艦長以外に得られたものはあるか? というよりもどうやってそれを」

側近「戦艦の動力は魔力を元にしていますからね。ちょっとした助言一つで信頼と地位が得られました」

側近「私が仕える方として魔王様を艦長に、私が副艦長、他に優秀な人材がいれば適宜、役職についてもらうと」

魔王「ふむ……」

魔王「その戦艦の機構に対し、我が軍で活躍できそうな者はいるか?」

側近「技術職が強いですからね。総合的に見ると人間側に一日の長がありますね。開発であれば話は別ですが……」

魔王「ならば我に聞くまでも無いではないか」

側近「いえ、連れて行きたいと思う者がいればと思いまして」

魔王「構わん。無理に死地に連れて行く気など無い」

側近「おや……死地であるとお考えなのですか」

魔王「当然だ。あんな物、落とされたら乗組員全員の死亡が確定するようなものではないか」

側近「一応脱出手段はありますがね。基礎知識を含め、その辺りはグリーングランド首都に行く前に説明いたしましょう」

魔王「……グリーングランド首都まで二日、三日といったところか。我が艦長になるにあたっての必須知識から頼む」

側近「あ、いえ。迎えが来るのは六日後です。その間に徹底的に知識を叩き込みます」

側近「それにしても……魔王様は学問に対して熱心なのに、どうして魔法学だけはダメなのでしょうね」フゥ

魔王「それができれば我とて苦労はせんわ」

側近「まあ、それ故に感覚だけで空を飛んだり障壁を張ったりできたのでしょうが」

魔王「……貴様は我を蔑みたいのかそうでないのか」

側近「いえ、魔王様ほどの力があって何故こうも遠回りをしているのだろうと漠然に」

魔王「何かを為す、という事はそういうものだ。話を始めろ」

側近「畏まりました。まずは戦艦の簡単な構造を」

側近「まず飛行に関してですが、恐らくではありますが魔王様が行っていた事を機械で行っているものだと思われます」

魔王「ほう、つまり我の飛行能力が解明されたようなものか。詳細はどのようなものだ」

側近「ええとですね。ああ、語句の説明もしないといけませんね」

側近「魔石の事をマナ鉱石と呼び、これを液化したものをマナ水、気化したものをマナ気体と呼びます」

魔王「待て待て待て! なんだと? 魔石を融解?! 蒸発?!」

側近「この点だけでも魔界の常識をひっくり返していますね」

魔王「魔力を完全に物質化させて扱うとは……人間とは化け物の集まりか」ブルル

側近「理論も技術も頭がおかしいと言わざるを得ませんね」

側近「マナ水がマナ気体になる際に大きな力が発生するようです。これを推進力、浮力として利用しているようです」

側近「その後、マナ気体は後方下部にある、複数の循環弁を通り外界の温度でマナ水に戻します」

魔王「ほう……魔力を再利用するのか。しかしそれではそこを破壊されたら終わりだな」

側近「基本、どの戦艦も循環弁周囲は装甲が厚いです。またマナ水に戻る時は単純に斥力が発生するようです」

側近「これが強力で特定の入射角にならない限り、並大抵の砲弾は循環弁から反れます」

魔王「斥力を無視できる威力だとしたら?」

側近「それなら直接船体に当てた方が早いかと。まあ、集中砲火を浴びせ、着弾の衝撃で破壊する手もありますがそれも……」

魔王「なるほど……よほどその位置取りにならん限りは狙う必要は無い、か」

側近「魔力の圧力をマナ圧といい、圧力の高さで出力を調整し、専用の技師が管理します。この一連の機関をマナユニットと称します」

魔王「我が飛行した際に高度に限界があったがそれはどうなった?」

側近「こちらにもありますね。戦艦の高度限界は四千五百mとされていますね」

側近「これを超えると魔王様と同様に、浮力を失い墜落するようです。高度限界は浮力を得るタイミング、マナユニット始動時の高度からになります」

魔王「となるとやはり急速に出力を減少させると、魔力が暴走してあらぬ方向に飛んでいってしまうのか?」

側近「はい、戦艦が全くおかしな方向への推進力を得てしまい、操縦不能になるようです。またユニット停止から始動の間の降下だけでも操縦不能になるので」

側近「止めて動かして高度限界を伸ばす、は無理ですね。それと出力減少は一定速度以下、魔力が暴走しない速度までにしかできません」

魔王「これさえ無ければ、いくらだって人間の国を攻められたものを」

側近「魔力を打ち消す障壁の関係上、速度を維持しつつ降下なんてできませんからね」

側近「高度の話でもう一つ。戦艦とは別に小型の船があります。それをリトルシップと呼び、基本二人で乗る小型と」

側近「十数名ほどを運ぶ、運搬型とがあります。今回迎えに来るのはこの運搬型です」

側近「運搬型は四千m、小型は五千mの高度限界となっています」

魔王「どういう事だ?」

側近「私もまだ理解できていないのですが、ユニット構造によって高度に差があるようです」

側近「二人乗りのタイプは、搭乗者が向き出しになっている関係上、あまり高い高度が飛べないようにしているようです」

魔王「……ふむ。構造については詳しく知りたい所だが、今は戦艦を優先させるべきか。次を頼む」

側近「戦艦種類の説明の前に簡単に歴史をお話しておきます」

側近「初めはロックケイブで大本のマナユニットの構造が確立されました」

側近「当時は平和だったらしく、全ての国が集まりこの技術を研究するプロジェクトがあったようです」

側近「そして戦艦の初期モデルとなった、小型艦ショートソードが生まれました」

側近「船体が剣をイメージされつつ、構造上から柄と刀身を定めた際に長さからこの名になりましたが、今では戦艦は武具の名前であるのが当たり前です」

側近「かくして各国はショートソードを持ち帰り、それを改良して遊んだりと、道楽、または何らかの作業に使われていました」

側近「この頃にマスケット銃という、人が砲弾を射出できる兵器が現れました。それもあってショートソードにはまだ、武装らしい武装がありませんでした」

側近「それからしばらくして、国内のみでのショートソードの改良に限界を感じ、また各国が集まるプロジェクトを興します」

側近「そしてできたのが今現在最も一般的な戦艦ロングソードです」

側近「この戦乱以前は貴族や国が決闘等、ペイント弾による戦闘を行っていました」

側近「元々、戦艦ロングソードは様々なカスタマイズができる機構を備えており」

側近「グリーングランドの伏兵型、多くの国で持つ射程重視や機動型も戦艦ロングソードからなるものです」

魔王「主戦力でありつつカスタム機か……で、攻撃の方だが砲弾に種類はあるのだろう」

側近「はい、敵艦の装甲を貫く事に特化した徹甲弾。発射後、搭載された小型の弾が発射される榴散弾」

側近「対象を燃やす事を目的とした燃料搭載の焼夷弾。着弾時に爆発、または爆破した際の破片で被害を与える榴弾」

側近「この辺りが一般的ですね」

魔王「思ったよりもあるな……」

側近「弾道計算において下方砲撃は不得手らしく、艦隊戦において高度の優位性は低いほうにあります」

側近「中には逆をついて対地砲塔を大量に備える、という戦艦もあるようですが……まあ脅威と言うほどではないですね」

魔王「あまり上空を飛ぶべきではないという事か……」

側近「こちらが先に敵に気付けばいいだけですが、用心するに越した事はないでしょうね」

側近「そういった意味ではグリーングランドは、とてつもない地形の理と言えますね」

側近「基本的な戦闘は戦艦の物量で決まります」

魔王「だろうな」

側近「交戦したくはありませんが、何れ手を取り合わざるを得ない所としては、シルバースノウはそれをひっくり返しています」

魔王「防衛特化だと言ったな。どういう戦艦だ」

側近「現在、登録されているのは二種類。まず第一に戦艦ランス」

側近「ランスという武器は元々、騎兵の武器であり専用の道具で固定し、馬の突進力を利用する武器です」

側近「この戦艦もそれに倣っており、一切の砲門を持ちません。形状は太く長く、一見槍を彷彿とさせます」

側近「装甲は非常にぶ厚く、正面から見ると傾斜のある船体で、多少の砲撃なら僅かながらも威力を削げるようです」

側近「機動特化で旋回能力と正面に対する推進力は他の戦艦の群を抜きます」

側近「ランスの体当たり……いえ突き倒しは、戦艦の機動を奪い、時には操縦不能にまで追い込むそうです」

魔王「それではその戦艦ランスもただではすまないのでは?」

側近「構造不明ですが戦艦そのものには衝撃を緩和させる機構が備わっているのでは、という話です」

側近「もう一種が戦艦チャクラム。これは人間達の何処かの教団が使っていた武器のようです」

側近「チャクラムとは輪っかの形をしており、投げる事で対象を切断する武器となっております」

側近「戦艦においてはこちらも砲門を一切持たず、左右下部の三箇所に可動式ののこぎり状の刃がついており、近接カッターというそうです」

側近「戦艦ランスより低い旋回能力と、ランスを上回る前方への推進力で突進し、すれ違い様に船体を切り裂くようです」

魔王「聞くだけで恐ろしい戦艦だな」

側近「彼らと交戦し、勝利して帰還した戦艦はありません」

魔王「この情報は?」

側近「詳しい戦法は遭遇したリトルシップのパイロットや、戦線から撤退した艦隊からですね」

側近「攻撃意思がなく、領土から逃げ出す戦艦までは攻撃しないようですね」

側近「後はそうですね……今のところ、各国で実戦経験があまり無い戦艦として戦艦バスタードソードというのがあります」

魔王「長剣と大剣の間にいる剣だったか」

側近「はい。戦艦としてはロングソードに比べて大きく、攻守共に強化した戦艦ですが機動力の低下はそれほど大きくありません」

側近「戦艦ロングソードの上位互換と言った所ですがコスト上、滅多に出陣しませんね」

側近「一戦の記録も無いところですと戦艦クレイモアという大型戦艦があります」

側近「こちらは非常に高い耐久と攻撃力を持っていますが、機動力とのトレードオフになります」

魔王「こちらは実物の剣どおりの仕様だな」

側近「周辺環境次第でしょうが、予想値としては一撃で戦艦ロングソードを沈めるほどの力を持っていますからね」

側近「重要なところでは以上でしょうかね……後はこちらの本を読了していただく他無いですね」ドサドサ

魔王「この書物の山はなんだ」

側近「戦闘に関する知識や発光信号……空では基本、発光パターンで決められた言葉で通信を行います」

側近「通信ワイヤーという物を相手に繋げれば直接会話もできますが、航行中ともなるとワイヤーの維持は難しいですからね」

魔王「ふむ」ペラ ペラ

側近「私は魔界に戻る者達の今後の予定を立てておきます。何かありましたらお申し付け下さい」

魔王「うむ」ペラ ペラ

魔王「む? 今シルバースノウの話で登録、と言ったな。どういう意味だ」

側近「おっと失礼しました。どこの国にも属さない中立の立場として戦艦ギルドという組織があります」

側近「各地で工房を設けており、長距離長期間を航行する戦艦の修理や弾薬の補給」

側近「また、開発している兵装、特殊砲弾等の購入も出来ます」

側近「但しそれはこのギルドに登録された戦艦のみとなります。登録された戦艦の一覧は誰でも閲覧できます」

魔王「未登録ならどうなる」

側近「付近を通過しただけで戦艦ギルド周辺の地表にある対空砲で攻撃されます」

側近「登録していない戦艦は無いといわれていますね。我々の戦艦も登録されます」

魔王「……確かに補給は必須だろうがいいのかそれは」

側近「我々が預かる特殊戦艦の索敵能力は群を抜いていますから、何とか敵を切り抜けるしかないですね」

側近「ギルド周囲での戦闘を禁止とされています。ギルドのリトルシップが周辺を巡回しており」

側近「周囲で停泊している戦艦、未登録艦、また戦闘を行っていないかを確認しております」

魔王「完全に中立なのだな」

側近「最近のシーサンドの行動もあり、より強化しているようですね」

魔王「にしても、地表からの砲撃で戦艦が落ちるものなのか?」

側近「戦艦には装備できないような超大型のものです」

側近「並の戦艦では装甲を突き破るほどの威力だそうです」

……
リトルシップ内
「ほーこの方があんたのご主人か」

側近「はい、私の誇りでもあります」

「ま、この人を従えるぐらいだ。よっぽど凄い人なんだろう」

「艦長になるんだってな。まーシーサンドは大した戦力も無いのに攻めてきているだけだし、気を楽にしてくれればいいさ」

魔王「そもそもどういう戦艦を預けられるんだ。その辺りは何も聞いていないぞ」

側近「おっと失礼しました。戦艦はロングソードより小型の戦艦です」

側近「機動力がある分、上手く立ち回らないとロングソード一隻相手でも沈められてしまうでしょう」

側近「隠密を目的としているので索敵能力を高く、またリトルシップ発着部が設けられています」

魔王(諜報活動用、か)

側近「戦艦の名称についてはまだ決められていません。いかがいたしますか?」

魔王「隠密……うーむ……戦艦ジャマダハル……いや長いな」ペラペラ

側近「短さをお求めでしたら戦艦パタないかがでしょうか?」

魔王「パタ……これは別に隠密を目的とした武具ではなかろう」ペララ

側近「いっその事逆をついて英雄の剣や聖剣はどうでしょうか?」

魔王「大それた名など要らぬ。戦艦スティレット、これで良い」パタン

側近「そんな投げやりな……隠密と言うにはいささか長い短剣ですし」

側近「……グリーングランドには戦艦スティレットとして名称の申請はしておきます」

魔王「外交にあたってグリーングランドから補佐は来ないのか?」

側近「勿論同乗して頂きます。というより居て下さらないと話になりませんし」

魔王「その者はまず第一にどう動くべき、と」

側近「私もまだお会いしていませんので、直接艦内で話し合う事になるかと」

魔王「なんだ? グリーングランドの王と謁見をしなくても良いのか」

側近「こちらの方で済ませております。お会いしたかったですか?」

魔王「曲がりなりにも特殊戦艦なのだろう。一隻預かり受ける礼を言いたかったのだがな」

側近「あちらも忙しそうなので、今からですと中々謁見は難しいかとも」

魔王「既に済ませたのであれば重ね重ねというのも失礼だ。であれば後は行動で示す他ないか……」

家臣「お待ちしておりました。私が外交を勤めさせて頂きます家臣です」

側近「私は側近です。こちらが私の主の……」

魔王「*****だ」

側近(何故わざわざお兄様の名を?)

魔王(何処で漏れるか分からんからな)

魔王「我の事は艦長とでも呼んでくれればいい」

家臣「かしこまりました」

魔王「そうだ。この近辺に特殊武装を開発しているような場所は無いのか?」

家臣「近くに我が国の研究所があります」

側近「何かありましたか?」

魔王「もっと隠密に適した武装でもないだろうかと思ってな」

家臣「適した……ですか。特別にそういった研究はしていませんので」

魔王「何か応用出来る物があるやもしれんというだけだ」

「ふぅむ、砲弾ではないものならあるにはあるが」

魔王「どういったものだ?」

「魚型噴射推進式機雷といってな。燃料を燃やして飛んで行き、着弾時に爆発すものだ」

「コストは榴弾以上に高い分、飛距離も長く発射時の音も小さく、遠くから撃てば位置を特定されにくいだろう」

側近「しかしそれでは射線から位置が割り出されるのでは?」

「それは当然だろう。が、距離さえあれば気付く頃には雲隠れもできる。しかしコストが高いから誰も使わん。お陰でデータも取れておらん」

魔王「仮にそれを設置するとして何日かかるだろうか?」

「あの新型戦艦か……あれなら一日でできるぞ」

側近「え、突貫工事ですか?」

「馬鹿を言え、発射口はロングソードの機構を利用したものだ。その新型戦艦にも同様の機構があるんだよ」

魔王「その魚型推進噴……」

「魚型噴射推進式機雷、略して魚雷と呼んでいる」

魔王「その魚雷は今いくつあるんだ?」

「どうだったかな……20ぐらいあったかなぁ」

魔王「ではそれを全て無償で寄越せ」

「はあ? ふざけんな!」

魔王「おやぁ? データが欲しいのでは無いのか? 果たして現状のままで使う艦があるのだろうかなぁ?」

「ぐぬぬ……」

「ええい、くそ! データ収集を確実にしろよ!!」

魔王「交渉成立だ」ニヤ

魔王「ああ、それと煙幕系の特殊武装は無いだろうか?」

「特殊ねぇ……十発程度なら煙幕弾をすぐに作れるだろうが」

魔王「どういった物だ?」

「発射後、煙を上げて飛んでいくだけだ。数方位に発射すれば短時間で周囲を煙幕で覆えるだろうな」

側近「それはそれでここにいますよ、と宣言するようなものですね」

魔王「その弾は一般的な物なのか?」

「んな訳ないだろう。そもそも戦艦で煙幕つったら投下型の煙幕だけだ。ああ、着弾式のほうがいいか?」

魔王「いや、発射後に煙があがるものを十発貰おう。側近、支払いを頼む」

側近「畏まりました」

「魚雷の発射口は艦首側に二門。砲塔ではないから戦艦の方位そのままに直進するぞ」

魔王「本当に直進するのだろうな」

「想定誤差は3度程度だ。誤射しないよう気をつけてくれ」

魔王「微妙に使い辛いな」

「タダでくれてやったんだ。出し惜しみして使いませんでしたじゃ困るぞ」

魔王「分かっている」

側近「魔……艦長、家臣さんが呼んでいます」

魔王「ああ、これからの進路の相談か」

家臣「今現在、シーサンドの攻撃は大した事はありませんが、この先、必ず激化されると見るべきでしょう」

魔王「ほう……そちらでもその考えをしている者がいたか」

家臣「あの攻撃は恐らく、こちらの戦艦の情報収集でしょう。危機感ぐらい生まれますよ」

家臣「我々は早急に各国と連携し、シーサンドを攻撃、もしくは迎撃態勢を整えなければなりません」

家臣「まずはウェッブリバーに向かい協定を結んだ後、ロックケイブとも協定を結びます」

側近「まあ、妥当なところですよね」

魔王「問題はシーサンドの特殊戦艦か? 三ヶ国だけでどうにかなるのだろうか?」

家臣「シーサンドが本気で世界征服を狙っているとしたら、無駄な足掻きになるでしょうね」

家臣「三ヶ国での協定を結んだ後、シルバースノウに向かいます」

魔王「どうやって協定を結ぶんだ。そもそも近づいただけで迎撃されるだろうに」

家臣「それを考えるのですよ……」

側近「シーサンドが侵攻している中、手を取り合ったりはしないのでしょうかね?」

家臣「シルバースノウは一隻たりとも落とされた事がないですからね」

魔王「よほどの鳩派で無い限り、か」

翌日
魔王「それではな」

「おう、気張って来いよ!」

機関室<<出力安定>>ゴオオォォ

魔王「浮力100。浮上」

側近「浮力100。浮上!」ゴゥンゴゥン

魔王「進路真方位3-0-0。巡航速度」

側近「真方位3-0-0。スティレット原速発進!」

航海長「原速発進、宜候!」

魔王(索敵には耳と目……大抵は手持ちの単眼鏡だが、この艦には大型が設置されているのか)

魔王(戦艦ロングソードと比較しても聴音器の数も多いようだし、あの聴音員も相当な技量の者なのだろう)

魔王(何れにせよ、シーサンドの戦艦に見つからぬよう、隠密に行動しなくてはならんな)フゥ

側近「それにしても静かなものですね」

魔王「ユニット駆動音が聞こえんのか?」ゴゥンゴゥン

側近「違います。空がです。今この空が戦場などと……」

魔王「……果たしてそうだろうか」

側近「え?」

聴音員「2時の方角、距離20、発砲音多数! ウェッブリバーの艦隊が交戦しているものと思われます!」

魔王「さて……」

魔王「魚雷射程内に身を隠せそうな雲は?」

側近「いきなりですか?」

魔王「一撃離脱であれば今ほど好機はないだろう」

見張員「前方に雲海多数、魚雷射程距離まで続いているかは確認できません」

側近「魚雷の射程は約5マイルですか……」ペラ

魔王「巡航速度を維持して雲海に突入。 見張員、敵艦隊の位置と雲海の終わりに注意しろ」

ウェッブリバー ロングソード戦艦内
「発光信号! 2-5番艦、4-1番艦、機関損傷甚大! 航行不能!」

艦長「どういう事だ……あれは本当にシーサンドのロングソードか?!」ドドォォン

「2-4番艦! 黒煙多数! 沈みます!」ドンォン ドゴォォン

「8時の方角、飛来物を確認!」

艦長「敵の援軍?! いや飛来物? 新兵器か?!」

「! 飛来物は敵艦隊に向かっています!」

艦長「なに?! 近辺に援軍などいなかったはずだが……」

聴音員「魚雷命中……巨大爆発音……一隻轟沈」

魔王「ほう……この距離で当たったか」

側近「データ収集を確実に!」

<<了解!>>

魔王「進路2-6-0、第二戦速にて戦線を離脱。敵艦隊の索敵範囲外に移動次第、進路3-0-0、巡航速

度にて航行せよ」

側近「このまま首都まで戦線を離れますし、少し軍事関係の話もしておきましょう」

魔王「一通りの書物は読んでおいたが?」

側近「それにない部分です。基本は一艦隊五隻で組まれます」

側近「通常ロングソードならただの第一艦隊、機動型なら機動第一艦隊」

側近「バスタードソードなら強襲第一艦隊、クレイモアなら攻撃第一艦隊、が一般的です」

魔王「あまり我には関係なさそうだな」

側近「共闘する時になって味方の通信が分からないでは困ります」

側近「国によっては優秀な司令に大規模な艦隊を与え部隊とさせたりしていますね」

側近「例えばグリーングランドの第三部隊は強襲艦隊2、伏兵艦隊3、機動艦隊2、攻撃艦隊1からなります



魔王「本当に大規模だな」

側近「今の所、部隊が出る事はありませんがね」

側近「各艦の呼び方は強襲第一艦隊の二番艦なら、強襲1-2番艦といった具合ですね」

魔王「ふうむ……しかし総戦力で挑んだ場合、どこの国のどの部隊の強襲1-2番艦か分からんな」

側近「そこまでは流石に無理ですが、どの程度戦力が奪われたかは考えて下さい」

側近「というより、魔王様にとっては得意分野でありましょう」

魔王「まあな」

側近「それと追加で弾道計算等の書物もこちらに」

側近「ああ、それと。人間達は弾道計算において、発射後の落下軌道に対する計算における定義や理論が不確立のようです」

側近「その為、砲弾が落下に入る以前に命中させる事が前提です」

魔王「やたらと飛距離が短い扱いはそれか」

魔王「しかし上空から下方に撃つ分には十分に命中させられるのでは?」

側近「魔力による浮力は当然ながら船底より発しております」

側近「その為に無理に砲塔をつけても、可動並びに射線にその影響を受ける事になります」

側近「浮力を発生させる部位を調節するとなると、戦艦の能力低下が問題視されるようですね」

魔王「逆に言えば、そこがクリアできたとしたら位置エネルギーも相まって」

魔王「最大火力の戦艦が出来上がる訳か」

側近「恐ろしい話ですがそうなりますね。上空からとなれば有効射程もかなりのものになるでしょうし」

側近「さて、今日はここまでに致しましょう。時間がとれましたらまた行いますね」

側近「ウェッブリバー、間もなく到着します」

魔王「ウェッブリバーに対する外交は問題ないのか?」

家臣「既に使者も送っておりますのでスムーズに進むかと思いますね」

家臣「また先の戦闘に関する内容も首都に伝わっているでしょう」

側近「まさかそこまで?」

魔王「丁度良い手土産にはなるだろうからな」

魔王「そうだ、魚雷のデータは?」

側近「たった二発ですからね……今のところ誤差5度といったところです」

魔王「ううむ、そうか……」

国王「話は聞いておる。それと先日、南南東の国境沿いでシーサンドとの戦闘があった」

国王「相手はロングソード艦隊だが今までものとは違った。砲門の口径や砲弾が違ったのだろう」

国王「おかげでこちらは壊滅に追い込まれたが、謎の兵器の一撃で敵艦一隻を沈め、シーサンドの艦隊を混乱に陥れた」

国王「そちらの支援なのだろうな」

魔王「恐れ多くも劣勢と見させて頂きましたゆえ、後方支援をさせて頂きました」

国王「もとより協定を結ぶつもりであったが、これでは頭を下げてでも結ばせて頂かなくてはな」

魔王「いえいえ、こちらとしてもシーサンドに被害を与えられましたので」

「陛下!」

国王「他国との謁見をしているのだぞ」

「そ、それが、北北東の国境にてシーサンドの艦隊と戦闘。数隻が不時着。残存艦は隊列を再編成し第二波に備え臨戦態勢」

「不時着した戦艦の救出が行えない状況となっています」

国王「シーサンドめ……」

魔王「いよいよ本腰といったところでしょうか」

国王「第三機動艦隊を援軍に向かわせよ。第一強襲艦隊を東の国境に」

国王「第四機動艦隊を南東に配備せよ」

魔王「北東の戦線では敵影が?」

「戦線より東に80の位置に戦艦ロングソードが20ほど集結しています」

魔王「よろしければこちらも一緒に向かいましょうか?」

家臣「艦長殿?」

魔王「先の戦闘で使った兵装は通常の砲弾より飛距離があります」

魔王「救出、ならびに可能であれば戦艦の復旧するのでしょう」

魔王「このタイミングで敵も動く可能性が高いでしょう。その際の援護、致します」


側近「よろしかったのですか?」

魔王「売れる恩は売っておきたいからな」

魔王「何より状況如何ではよりデータ収集ができるのだからな」

見張員「ウェッブリバーの機動型ロングソードより発光信号」

見張員「シーサンド相手に隠密戦艦の力を借りるまでも無い」

見張員「勝手な行動は慎む事、と」

側近「あからさまですね」

魔王「止むを得ないさ。向こうからしたら純粋に戦闘型でないこちらの手を借りるというのも、プライドが許さない話なのだろうな」

魔王「それにしても随分とシルバースノウの国境近くだな」

魔王「航行ルートを見誤るな。先方の艦隊がルートから外れそうになったら即座に発光弾を上げろ」

側近「……周囲は雲も多いし嫌な予感がしますね」

魔王「むしろシルバースノウとの接触がありそうだな」

魔王「既に向こうの国境付近で戦闘があったんだ。警戒して巡回してくる可能性がある……そこでどうなるか」

魔王「一層雲が多いな……ルートを反れてシルバースノウに突っ込むのは避けたい」

魔王「進路、真方位0-7-5。向こうにも発光信号で」

聴音員「この音は……特殊戦艦、11時の方角に五隻!」

魔王「友軍に発砲禁止の信号弾! こちらも一切攻撃するな!」


艦長「発砲禁止? 何を馬鹿な事を」

「11時の方角に戦艦ランス出現! 数五! 俯角5度!」

艦長「なっ……馬鹿な! 国境の山までまだ距離があるのだぞ!」

「五隻とも照準をこちらに合わせています!」

艦長「う、ぐっ! 全艦! 攻撃せよ!!」

見張員「ロングソード艦隊、砲塔稼働!」

見張員「照準、戦艦ランス!」

魔王「恐怖に駆られたか。発砲禁止の信号弾と停戦の信号弾を打ち続けろ」

魔王「発光信号、照準を戻せと伝えろ。全砲門、照準友軍機動艦隊」

側近「よ、よろしいのですか?」

魔王「構わん」

側近「全砲門照準、前方ロングソード艦隊!」

「せ、戦艦スティレットの砲塔がこちらを!」

「発砲禁止、ならびに停戦の信号弾確認!」

艦長「ば、馬鹿な……我々を盾に逃げ出すつもりか?!」

「艦長……」

艦長「……」

艦長「全艦、攻撃中止……砲塔の照準を戻せ」

見張員「ロングソード艦隊より停戦の信号弾。砲塔、戻りました」

見張員「ランス艦隊、動きありません」

魔王「……ふー」ドサ

側近「流石に緊張しましたか」

魔王「当然だ……ランス艦隊に発光信号」

戦艦ランス
「せ、戦艦スティレットより発光信号」

「『今回の騒動に対する詫びは何れさせてもらおう 失礼する』……との」

艦長「騒動に詫び、か……随分と面白い艦長が乗っているようだな」

副官「見逃してもよろしいのですか?」

艦長「構わん。ここは本来の防衛域外だ。それに……あの戦艦の能力は分からない所がある」

艦長「シーサンドがバスタードソードを上げてきた今、悪戯に被害を被る訳にもいかんだろう」

魔王(それにしても……何故こうもあっさりと引き下げたのだ?)

魔王(シルバースノウにとってこの戦艦も目障りではないのだろうか?)

魔王(無傷、といえずともこちらを全滅させる事は可能だったはず……敵視されていない? いや、向こうは敵も味方もない)

魔王(であれば見逃しす事に理由をつけるなら)

魔王「リトルシップを一機飛ばせ! 目的地はこの先の戦線。交戦していなければ、敵艦隊の動向を探れ!」

側近「リトルシップ隊、三番機スタンバイ。目標、進路上のウェッブリバー国境」

側近「既に交戦していた場合、戦況を確認せよ。膠着状態においては敵艦隊の動向を探れ」

側近「どうなさったのです?」

魔王「嫌な予感がする……向こうに発光信号、第三戦速で進め」

魔王「こちらは先に第二戦速まで上げろ」

「艦長、まだ第三戦速で航行を?」

艦長「向こうから止める合図が来るまで従っておけ」

「しかし、たかだかグリーングランドの使いの指示など……」

艦長「シルバースノウの艦隊接触における状況判断は向こうが正しかったのだ」

艦長「まあ、これで貸し借り無しと考えれば……」

「リトルシップ、一機確認。戦艦スティレットより飛び立ったものです」

艦長「一体何を調べていたのやら……」

「現在交戦はしていませんが危険な状態にあります!」

「敵艦隊構成、攻撃型ロングソード十五隻、80ノットでウェッブリバーの艦隊に接近」

「到達まで後20分ほど。その後方に別部隊確認」

側近「増援……?!」

魔王「別部隊の構成は?」

「それが……戦艦バスタードソード二隻、戦艦クレイモアが一隻の計三隻が60ノットで航行」

「ク、クレイモア!」

「馬鹿な……シーサンドに戦艦クレイモアが」

魔王「強襲か……ロングソードとの交戦によって目を奪っている隙に接敵するつもりだな」

すまんが風呂入って寝るー
落ちたら深夜

お前だけに保守を任せるかよ、保守

保守

     ,ハ::`丶、:::::::::::::::::::::::|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_,, -‐:〈
     {;;;;ヽ、:::::`丶、:::::::::::::l:;:;:;:;:;:; ィ";:;:;:;:;:;:;:}
    ..,l;;;;;;;;;シ丶、:::::::`:`:ー'‐::'':"::::::::_, ィ"´;;l

    fうl;;;ミミ、  ``丶 、::::::::,: - ''"´  リ;;;;;;f-、
     l l;;;;;ッ=`   (三> `^´ (三シ  ム;;;;;;ソl}
     t !;;;リ    r‐、r‐、  _,,..,,_    l;;;//
     ゙l ヾ;l   r‐、! .|  | ,: 'ノ ひノ、  l;//

     ..`ーll!  |  i  |  |l:.:^''==彡'" ,!リノ  マローシュ・ヴィ・ミカドニアが命じる

        ll  |  |  !  !l:.:.:` '' "  ,i;;l´
        li., |  |  |  |:.ヽ、    ,:,り    全力で保守しろ
         t、イ  i  |  |,r '゙ヽ  /,K
        / l.  !  !  !    } // /ヽ、
      ./ ./!  |  |  |ニ==,ノ,ノ7 /:.:.:.:ヾニヽ

.      ヽ ヽ !  |  |  |一 ''"/,/,/:.:.:.:.:.:.:.:ソ }- 、、
     / ヘ. ∨.     !  ヽ   , -‐‐、.:/ /   ` 丶、
.   - {  ヾ|         ヽニ二ン´ , ' .:'" ,/       ` 丶

魔王「今の情報を発光信号で向こうにも送ってやれ」

魔王「戦闘を避けては通れんだろう。総員、戦闘配備」

側近「総員、戦闘配備!」

側近「しかし、クレイモアが相手となると……」

魔王「向こうの有効射程距離はこちらの魚雷とほぼ同等。射程圏外から援護、という訳にはいかんな」

魔王「だが実戦経験を積むには絶好とも言えよう」

「前方、戦闘中のロングソード第三艦隊を確認! 距離14! 俯角3!」

艦長「俯角5度、総員戦闘配備! 何としでも敵艦隊を退けるのだ!!」

「敵増援、距離20! 最前線に対し戦艦クレイモアの射程圏内まで50秒!!」

艦長「全長距離型砲門! 弾種徹甲! こちらの射程圏内に入り次第撃て!」

「せ、戦艦スティレット! 真方位1-3-5へ回頭! 120ノットで航行!」

艦長「前線を前に怖気づいたか! 構わん。所詮は戦闘もままならない小船だ! 捨て置け!」

見張員「敵増援、距離10! 仰角0!」

見張員「砲塔正面! こちらに気付いていません!」

魔王「進路そのまま、第四戦速。魚雷発射準備」

側近「進路そのまま、第四戦速。魚雷発射用意!」

魔王「全乗組員に告げる。我々は一部のミスも許されない状況下にある。各員の奮闘を祈る」

側近「そのような激励は珍しいですね」

魔王「流石の私も手に汗を握る状況だからな」

見張員「距離5!」

魔王「魚雷撃て」

側近「魚雷撃てぇ!!」

「3-2番艦、沈みつつあります! 3-6番艦、爆散!!」

「せ、戦艦スティレット、敵増援の右舷より攻撃を確認!」

艦長「なに?!」

「尚も攻撃しつつ前進しています!」

「馬鹿な! ぶつかるつもりか?!」

艦長「あの戦艦の艦長は……敵艦隊は混乱するだろう、発砲しつつ全艦突撃!!」

「全艦突撃ぃ!!」

側近「魚雷第三派、撃てぇ!」

見張員「敵艦接触まで30秒!!」

魔王「ダウントリム30、主砲、弾種徹甲」

側近「ダウントリム30! 主砲、弾種徹甲!!」

聴音員「多数の爆発音、バスタードソード一隻、甚大な被害」

見張員「バスタードソード下部、潜ります!」

魔王「主砲照準、戦艦クレイモア」

側近「照準、戦艦クレイモア!」

見張員「バスタードソード、潜り抜けました!」

魔王「撃て」

側近「ってぇ!!」

見張員「敵増援の下方、通り抜けきりました!」

魔王「戦艦クレイモアは?」

見張員「主砲着弾を確認。速度20ノットまで減速。方位に変化なし」

側近「流石に堅いですね……」

見張員「戦艦バスタードソード一隻大破、沈みつつあります」

見張員「もう一隻、損傷確認できません。戦艦クレイモア、下部に主砲被弾。速度30ノット」

魔王「急速上昇反転。敵艦後方を突っ切る時に引っ掛けてやれ」

側近「急速上昇反転! 右舷全砲門、照準クレイモア。弾種徹甲!」

「戦艦スティレット、7時の方角に回頭! 強襲部隊から離れていきます!」

「ロングソード艦隊、距離1.5マイルにて散開!」

「戦艦バスタードソード1、爆散!!」

「戦艦クレイモア、スティレットの攻撃により多数被弾! 尚も前進してきます!!」

艦長「こちらの戦艦を一隻でも道連れにする気概か……敵艦隊は瓦解する寸前である!」

艦長「全艦、敵増援を集中攻撃せよ!!」

見張員「全敵艦隊、沈みつつあります!」

見張員「戦艦クレイモア爆散!」

魔王「何とかなったか」フゥ

側近「敵艦に突っ込みそうになった時は冷や冷やしましたよ」

魔王「ちゃんと計算はしていたぞ……だが、それ以上に優秀な乗組員だ、対応遅延による誤差も考えていたが」

魔王「殆ど必要がなかったな。バスタードソードの下を抜けるのだって、あそこまで余裕があるとは思わなかったぞ」

側近「あれで余裕……」

魔王「向こうに発光信号。これよりロックケイブへと向かう。引き続きの防衛、健闘を祈る」

ギルド内 補給中
魔王「ロックケイブに使者は?」

家臣「既に送っており、向こうも好意的ですよ」

側近「やはり難関はシルバースノウですか」

魔王「先の騒動の一件もあるしな。鎖国も喜ぶその貢物とは、か」

側近「三ヶ国で頭を下げれば……それでも駄目そうですね」

魔王「……ロックケイブの次はシーサンドに向かう」

家臣「え?」

側近「何故でしょうか?」

魔王「通常の戦艦では……クレイモアですらシルバースノウ攻略の糸口にはならんだろう」

魔王「であれば少なくとも、特殊戦艦とは別にシルバースノウ攻略用の戦艦は作っているはず」

側近「その情報を、ですか」

魔王「現状、シルバースノウへの土産はその程度がやっとだからな」

家臣「気は進みませんが……これ以上の膠着はシーサンドに付け入る隙を与えるだけですし、これも止むを得ないのですね」

側近「となると……やはりここで新しい武装も?」

魔王「待て、何の話だ。我は聞いていないぞ」

ガッシュベル「…こんな頭の良い魔王に成りたかった……」

地区書オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

確か他スレに書き込むと猿さんに成り難いって聞いたがどうなんだ?

側近「特殊砲があるそうですよ。なんでも艦首側に複数の砲門を設置し、連続で発射できるものです」

側近「因みにお値段はこちらほどです」ペラ

魔王「……」

家臣「……お高いですな」

魔王「買えない額ではないが、射程距離はどの程度だ?」

側近「3マイルですね」ペラ

家臣「クレイモアの射程に入ってしまいますな……」

魔王「飽くまで奇襲する上では大きな火力になるだろう。砲門の数は?」

側近「艦首に一基の砲塔、横2縦3の六門となります。六門全て連動して照準を合わせます」

魔王「六連装連動連射砲か……」ペラ ペラ

魔王「面白い、購入しよう」

側近「畏まりました。特殊砲弾もあるようですがいかがしますか?」ペラ

魔王「徹甲榴弾? なるほど、装甲を貫いた上で爆発するのか」

家臣「しかし……これの価格ですとあまり搭載できないですな」

魔王「12だ」

側近「六連装連動連射砲にですか?」

魔王「これから先、戦艦クレイモアも多く出撃してくるだろう。今の瞬間火力では不安が残る」

家臣「しかし12発ではよほどの状況下でもなければ中々撃てませんな……」

魔王「そういえば、先の戦線での魚雷のデータは取れているのか?」

側近「艦長の仰るとおり、優秀な乗組員ですからね。こちらに」パサ

魔王「誤差4~6度か……随分と差があるではないか。戦速中に発射でこれだけ誤差があるのではな」

側近「命中したのは、精密射撃を行わなかったから、だそうです」

魔王「いいのか悪いのか何とも言えんが、まあ改良の余地があると見て喜ぶべきなのだろうな」

魔王「リトルシップを一機飛ばせ。今あるデータを研究所に持って行ってやれ」

魔王「こちらの航行ルートも渡しておけ。回収できないでは困るからな」

側近「まだ時間もありますし、少し他の勉強もなさいますか?」

魔王「他の?」

側近「リトルシップについてはあまり詳しい話をしておりませんので」

魔王「ああ……そうだな。一つよろしく頼む」

側近「格納庫のシップはご覧になったと思いますが、見ての通り操縦席はむき出しとなっております」

側近「基本、小型はどの機体も細長い形状で前後に一席ずつ。どちらの席でも操縦はできますが」

側近「前が操縦者、後ろがナビゲート……航路や計器確認、また発光信号等の通信を行うのが一般的です」

支援

側近「最大速度は210ノットですが、当然ながら直進するだけでもパイロットに高い能力が要求されます」

側近「また最大速度での航行は高確率でエンジンが焼け付く為、エンジンとの引き換えにという考え方をされています」

側近「基本航行速度は160~180ノットです」

魔王「この艦の最大戦速以上か」

側近「リトルシップは最も速い機体です。それ故、長距離の相手への連絡などに用いられます」

側近「基本兵装は機関銃並びに、煙幕です」

側近「艦隊戦ともなると活躍できるのは索敵ぐらいですね」

魔王「既存戦艦において、無数のリトルシップを運用させるのは我々だけなのか?」

側近「他の戦艦ですと連絡用に二機あるかないかですね」

魔王「リトルシップで敵艦隊攻略の要にはならんか?」

側近「それは流石に難しいでしょうね……」

側近「確かに他の戦艦との差別化という意味では分かりますが」

側近「ブリッジに直接、機関銃を叩き込むか煙幕を撒いてかく乱させる程度でしょうか」

魔王「上手くいかんもんだな……」

ロックケイブ
国王「なに? 戦艦クレイモアだと?」

魔王「ウェッブリバーから報告が来ていないのですか?」

側近「ウェッブリバーは何を考えて……」

国王「いや……こちらに報告している余裕がないと見るべきか」

魔王「恐らくは。その前の段階で攻撃型ロングソードも出撃してきております」

魔王「シーサンドの特殊戦艦もだいぶ形になってきているのではないかと」

国王「で、あろうな。ウェッブリバーが落とされるわけにはいかん。そして、それはグリーングランドも同様」

国王「全ての艦隊をウェッブリバー、グリーングランドに派遣せよ」

国王「そちらはこれよりどうするのだ?」

魔王「我々はこれより、シーサンドの特殊戦艦の情報収集に向かいます」

国王「……そうか。気をつけていくのだぞ」

魔王「ええ、平和に向けて必ずや」


魔王「さて、行くか」

側近「緊張しますね」

魔王「リトルシップ隊を待機させよ。シーサンドの国境に入り次第、索敵を行わせる」

ウェッブリバー北北東国境
「戦艦スティレット、真方位0-9-5に向けて航行」

艦長「何をしにきたのだ?」

「発光信号! これよりシーサンドに対し諜報活動を行う」

「後退時、迷惑をかける」

艦長「……いいだろう、その時は我が国が迎撃してやろう」

艦長「無事な帰還を、と伝えてやれ」

ウェッブリバー・シーサンド国境
魔王「意外と草原が続くのだな」

側近「この先20マイルより徐々に砂漠地帯に入っていきます」

側近「先ほど通過したギルド以降、80マイル先までギルドがありません」

魔王「……やはり先ほどのギルドで補給すべきだったか」

側近「敵前で補給という訳にはいかないでしょう」

見張員「リトルシップ五番機より、先ほどの戦艦ギルドにウェッブリバー機動型ロングソード10」

魔王「なに?」

魔王「ウェッブリバーは何を考えているのだ?」

側近「まさかシーサンドに攻め込むつもりでは?」

魔王「いくらなんでも早すぎる……ウェッブリバーの増援で尚且つ、補給しているだけならいいが……」

見張員「前方、雲海確認。視界不良」

魔王「速度、半速。聴音員、一切の音も聞き漏らすな」

聴音員「了解」

側近「全リトルシップを艦へ。通信ワイヤーを接続後、周囲の索敵を行え」

なんという優秀さ、やっぱり頭の良い奴はどこに行ってもry

<<こちら二番機、距離3000フィート、雲海途切れます>>

魔王「速度、微速。厳戒態勢」

側近「速度微速、見張り聴音は一層厳に」

聴音見張り「了解」

航海長「微速前進宜候」

<<こ、こちら四番機! 九時の方角に艦影確認! 数10!>>

魔王「10……ウェッブリバーか?」

側近「馬鹿な、本当に攻め込むつもりか?!」

<<後方艦隊、航行速度100ノット! こちらに向かってきます!>>

側近「ほぼ第三戦速……こちらの動きを知らないのか?!」

聴音員「! 下方よりユニット音多数! 距離前方20!!」

側近「なに?!」

<<二番機! 距離22マイル! 雲海より敵艦多数浮上!」

魔王「潜伏していたのか……」

側近「……今後の事態への不安はありますが、後方のウェッブリバー軍の存在は心強いですね」

<<こちら四番機!! 後方艦隊、シーサンド軍旗を確認!!>>

魔王「な……」

側近「馬鹿な、一体どういう?!」

最近一度猿にかかると規制強化が半端ないけど
ゆっくり投下じゃ何時間掛かることやら

魔王「勇者に負けそうになり、我が身を封じて数百年」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1356413176/)

もう深夜に完全に移動すんの?

>>164
このペースだと今日中に終わらないのよ……

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom