男「とてつもない能力に目覚めた」後輩「改!」 (53)


 季節は春。

 思春期の男子高校生にとって、女子高生の行動は本当に不思議である。


 なぜパンツが見えるほどスカートを短くするのか。

 なぜパンツが見えるのに電車でがにまた座りをするのか。

 なぜ常識と言うモノを忘れていくのか。

 なぜ可愛い顔の上にお面を塗りたくるのか。


 理解できない。

 ……が、もし理解できてしまったら。

 この物語は、そんな稀有な体験をしてしまった同情すべき男子高校生のお話である。


 (上記の疑問文に出てくる女の子は基本的に出てこない)


 

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1390069882

前作読んだよ

野球部員「好きです! 付き合ってください!」

マネ「ご、ごめんなさい」

野球部員「……そう、ですか」ガクッ

マネ「で、でも……嬉しかったよ?」オロオロ

野球部員「せ、先輩……///」ウルウル

マネ「絶対、甲子園いこうね」ニコッ

野球部員「は、はい! 先輩を甲子園に連れて行くっす!!」



教室


友「うわー、見事に振られましたな」

幼馴染「でも、やる気にするのは偉いですね。さすがマネージャーです」

男「………」

友「どしたぁ?」

男「………あの、さ」

幼馴染「?」




男「あのマネージャーの頭上に出てる【バスケ部員とサッカー部員とテニス部員の三股中】って文字、見える?」




二人「………え?」

>>2ありがとうございます! 前作のリベンジ作品ではありますが、前作とは全く関係ない話です!

男「さらに言えば」


野球部員【マネとヤリたいだけで告白した】


男(いや、流石に純情な幼馴染にこれは言えないな……)チラッ

幼馴染「どうしたの?」【男と痴漢プレイしたい】

男「」

友「どうしたんだ男」【アニメキャラでしか勃起しない】

男「」

二人「男?」




男「お、お前らの変態!!」ダッ




二人「えぇ!?」

男子トイレ


男「………はぁはぁ」

男「い、今のはなんだったんだ……え」スッ




男【頭上に相手の最も恥ずかしい秘密が現れ中】


男「んだよ……これ」

男(なんか、とんでもねー能力に目覚めてしまった……)

帰り道


主婦【不倫中】テクテク

サラリーマン【SMクラブ常連】テクテク

JK【援助交際上等】テクテク



男「もうやだ……この国」

後輩「あれ? 先輩じゃないですか?」

男「こうは……っ」

男(俺はこれ以上知り合いの変態な部分を見たくないっ!)チラッ



男「!!」







後輩【昨日サンタさんいないことを知った】




男「後輩ぃいいいい!」ギューッ

後輩「は!?/// や、止めてください先輩!!」グイグイ

男「あ、す、すまんっ、ついっ」

後輩「もー、なんなんですか一体!」プリプリ

男「いや、お前がサンタさんがいないことを初めて知ったなんて可愛いことを恥ずかしがってるから…」スマンスマン




後輩「な、ななな、なんで、なんでそれぉおお!?」カァ///




男「あ……」

男の部屋


男「結局、ライン入れても返事なかったな」

男(でも、やっぱ世の中変態ばっかじゃないんだ!)

姉「男、入るぞー」ガチャ

男「ん、な……に?」



姉【あー、弟の匂いくんかくんかスーハースーハー】



男「で、出てけぇえええ!」グイグイ

姉「ちょ、な、何でだよ!!」

男「俺は変態が嫌いなんだぁあああ!」ガチャッ


<オトコー! ワタシハヘンタイジャナイ! ヘンタイジャナインダァアア!!

<ウワァアアア!! オトコニキラワレタ! モウニオイカゲナイーーーッ!!


男「変態じゃねぇか……」グスッ

男(ちょっとがさつで男っぽい所があったけど、優しくて良い姉ちゃんだと思ってたのに……)



――こんこん



男「?」

<イモウトデスハイッテイイデスカ?

男「あ、うん」

妹「さっきお姉ちゃんが猛ダッシュで滝に打たれてくるとか言って出て行ったけどどうしたの?」

男「知らん。放って……お、け」



妹【お兄ちゃんの部屋の位置、鞄の中身、服の汚れ、汗の臭い、全て把握しています】



男「」

妹「どうしたの?」

男「い、いや、な、なんでもない……」

男(これ触れちゃダメなやつだ……殺される奴だ…)ガクガクブルブル

妹「?」

男「ちょ、ちょっと出かけてくる」

妹「うん……じゃあこの服にして?」

男「え、何で?」

妹「その服が洗濯してから一番長く着てないでしょ?」

男「あ、そうだっ……け?」

男(そういえば今までは、妹はよく見てるなー程度にしか考えてなかったけど……)

妹「どうしたのお兄ちゃん」フフフッ




男「い、行ってきます!!」ダダダッ

男(こんな家いられるかぁああああ!!)




妹「?」

公園

男「はぁはぁはぁ……」

男(世の中知らない方がいいことばかりだ……)



後輩「あ、先輩……」



男「お、おう、後輩、さっきは悪かったな」

後輩「い、いえ……私も取り乱し過ぎました。ごめんなさい」ペコリ

男「本当に悪気はなかったんだ……た、だ…」チラッ




後輩「?」【一昨日までキャベツから子供が生まれると思ってました】




男「きゃわいいいいいい!!」ギューッ///

後輩「うぎゃぁあああああ///// 放せぇええええ!!」グイグイ

男「あ、すまんつい……」パッ

後輩「先輩……本当どうしたんですか?」ハァハァ///

男「いや、お前がまさかキャベツから子供が生まれると思ってたなん――」ハッ




後輩「////////////」ダッ




男「後輩ぃいいいいいいい!!」

本屋

男(後輩のことは後に回すとして、これから先どうすればいいんだ。両親は出張でしばらく帰ってこないから、姉と妹と義妹の四人暮らしなのに……)

男「……義妹に賭けるしかない…」ピッ


prrrr



男「ああ、義妹か?」

義妹『はい、どうしました?』

男「あのさ、今どこいる?」

義妹『部活が終わったので帰宅している所です』

男「今、駅前の本屋いるんだけどさ、ミスドナ寄って行かない?」

義妹『それはお兄様のお小遣いから出資されるということですか?』

男「ああ、うん。どうだ?」

義妹『分かりました。すぐ行きます』

男「うん、待ってる」ピッ



男「よし、決戦は近い!」



ミスドーナツ


男「………」ドキドキ


カップル男【浮気五人目】アハハ

カップル女【ストーカー】ウフフ

店員♀【ドーナツ盗み食い】

店員♂【ドーナツで自慰したことある】



男「ぶふっ」

男(そんな奴が働いてる店で食えるかっ!)

義妹「お兄様?」

男「あ、義妹……」



 俺は、心の中で土下座した。

 変態の姉とヤンデレの妹とくれば、とてつもない義妹が来ると思ってたからだ。

 しかし、天使は……存在した。






義妹「?」【夜に一人でトイレに行けない】



男「………」ホロリ

義妹「お、お兄様!?」オロオロ

男「義妹……今日から二人で暮らさないか?」

義妹「えっ、だ、ダメですよっ、お姉さまと妹ちゃんが哀しみます」オロオロ

男「……だよな、すまん」

義妹「はい……でも、少しだけ……嬉しかった…です」カァ///

男(結婚しよ……)



義妹「なぜあそこでドーナツ買わなかったのですか?」

男「義妹、二度とあの店で買ってはいけないよ」

義妹「?」

男(心配だから後で密告しておこう……)



マクドル



男「やっぱハンバーガーだな」モグモグ

義妹「美味しいです」パクパク

男(いやー、世界がこんなに清々しいとは思わなかったよ!)アハハ



先輩「あれ? 男と義妹ちゃんじゃない」



男「あ、せんぱ……い」

先輩「偶然だねぇ♪ 座って良い?」
【義妹ちゃんで毎晩自慰してます】


義妹「あ、はいもちろ「絶対だめっ!!」

先輩「なんだよ男ぉ、釣れないなぁ」

男「座るならこっち!」パンパンッ

先輩「もう、仕方ないなぁ」ストッ

義妹「あ……」

先輩「で、どうしたの? 二人でいるなんて珍しいね」

義妹「お兄様がご飯を御馳走してくれたんです」ニコッ

先輩「そっかぁ♪ 良かったわねぇ」ニヘラ///

男(気付かなかった……この人レズかよ!!)ガーン

帰り道

男「あのさぁ義妹」

義妹「なんでしょう?」

男「先輩に変なことされてないか?」

義妹「変なこと、ですか?」キョトン

男「い、いや、例えばベタベタ触られるとか」

義妹「たまにマッサージをしてくれます」ニコッ



男「あいつぶっ殺す」ゴゴゴゴ



義妹「?」

後輩「あ、先輩」

男「後輩」

義妹「後輩ちゃん♪」【夜一人でトイレに行けない】

後輩「義妹ちゃん♪」【毎週欠かさずプリキュア見てる】



男「……平和な世界が、あったんだ……」ポロポロ


二人「???」

夜 男の部屋

男「悪かったな。今日は先に帰って」

幼馴染「ほんとだよぉ、あの後、友君とちょー気まずかったんだから」

男「すまんすまん」

幼馴染【男と痴漢プレイしたい】

男(今の俺の方がもっと気まずいわっ!!)

幼馴染「で、何で逃げたの?」

男「………」

男(待てよ……後輩ちゃんは指摘したら変わった。……つまり、この表示は変動する!?)

幼馴染「何黙ってんの男ー」

男「あ、あのさ……」

幼馴染「うん」





男「痴漢プレイって……興味ある?」





幼馴染「」

幼馴染「な……なんで…」プルプル

男「!!」ハッ

男(しまった! ついストレートにぶっ飛ばしてしまった!)

男「ち、違うんだ幼馴染! これは――」



幼馴染「男も興味あったの!?」キラキラキラ



男「」

幼馴染「いやー、あれって本当興奮するよねー。って、私が直接した訳じゃないんだけどね? なんかお兄ちゃんがそういうゲーム沢山持っててさー、つい見ちゃったんだよねー。そしたら、すごーく良かったの! あ、何が良かったかなんて聞かないでね恥ずかしいから」アハハ

男「」

幼馴染「それでね、実際痴漢プレイやってみたいなーって思うけど、どうせなら好きな人としたいじゃない? でも、好きな人にそんなこと知られたくないし、知られたら恥ずかしくて死ねるとも思ってたんだけど、男が興味あるなら隠す必要ないような気がしてきた」エヘヘ

男「」

幼馴染「男はどんなシチュエーションがいいの? やっぱ窓際におっぱいを潰す系? あれってやばいよねー、だって外から丸見えだよ? でも、なんか興奮しちゃうっていうか、電車の振動とかやばそうじゃない?」

男「」

幼馴染「それとも、あの腰の位置あたりにあるバーに女性の下半身をグイグイ押し当てる系? でもあれっておしっこ出ちゃうらしいよ? さすがにおしっこはまずいよねぇ」

男「」

幼馴染「それともオーソドックスに満員電車の中でパンツに手を入れる? でも最初は下着の上から性器を優しく撫でてね? ちゃんと濡らさないと痛くて声出ちゃうかもしれないし。ああそうそう、後、私敏感だから、あんまりおっぱいは刺激しないでね? 声出ちゃうし」

男「」フラッ

幼馴染「後は本番行為だけど、もし男が本番したいなら、やっぱり私も処女だし……あ、処女って言っちゃった/// ま、今更こんな話してて恥もないよね。処女だし、やっぱ初めてはベッドの上でしたいかなぁって思うんだ。だから、まずは駅前のラブホで――」

男「」ガチャッ



廊下



男「うわーーーーーーっ!!」ダダダダダッ

義妹「ひっ!?」ビクッ

妹「どうしたのー?」

義妹「な、なにかが走ってます!!」ビクビク

妹「あー、もう大丈夫だからさっさとトイレ行ってきなよー」

妹(さっきから盗聴器の調子が悪くて一刻も早くお兄ちゃんの部屋の前に行かなくちゃいけないんだから!)

友の家

友「散らかってるけど好きにくつろいでくれ」

男「ああ、うん。悪いな」

男(今日は帰らないでおこう……)

友「オレンジジュースで良いか?」

男「ああ、すまん」

友「すぐ戻る」ガチャッ

男「………」ジーッ


男(あいつアニメ好きな癖して、部屋に漫画すらないぞ? あるのは教科書類と勉強机、それからベッドとソファーだけ。テレビすらないじゃないか)


友「お待たせ」ガチャッ

男(ああ、でも、友はアニメでしか勃起できないことを恥だと思ってたんだな。ということは隠してるのか?)

友「どうした? そんな難しい顔して」

男(気になる……)

男「ああ、えっと……友ってテレビとか見ないのか?」

友「うーん、昔は見てたけど、最近の番組があまりに面白くないからな」

男「確かに」

友「男は? 見るのか?」

男「俺も最近は見なくなったなぁ」

友「だろ?」

男「でも、アニメとかは見てるかな」

友「!」ピクッ

男(食いついた!)

友「あ、ああ、そうなんだ。そう言えばアニメなんて小学校以来見てねーなー」

男「マジでか?」

友「最近何が流行ってんだ?」

男「うーん、深夜番組はどれも似たようなのばっかだからなぁ」

友「へぇ」

男(あれ? どういうことだ?)

男「友ってあんま女の噂も聞かないよな」

友「は? 俺らまだ学生だぜ。そんな噂出る方がおかしいっつの」

男「でも、お前背高いし、かっこいいし、モテるだろ?」

友「おいおい、俺がモテるんならイケメンはどうなるんだよ」

男「あいつは別格。金持ちの家、スポーツ万能、秀才、笑いのセンスもある。完璧だよ」

友「だなー」

男(なんだか訳分からなくなってきた……)

友【アニメキャラでしか勃起しない】

男(でも、なんかどうでも良くなってきた。こいつ良い奴だし)

友「そろそろ寝るか?」

男「ああ、そうだな……」

友「………」

翌朝 学校


男「………」ウプ

男(学校中の生徒や教師が秘密を頭に掲げて歩いてる姿は、見ているだけで吐き気を催すレベルだ……)

友「男、大丈夫か?」

男「ちょ、ちょっとダメかも……」

友「保健室行って来いよ」

男「ああ……」


保健室


男「失礼します……」フラフラ

男(ダメだ……気絶しそう…)

保健教諭「あら、どうしたの?」

男「ちょっと……気分が悪くて」フラフラ

保健教諭「あらあら、それじゃあ、ベッドに横になって?」

男「は……い」トスッ

保健教諭「一時間くらいして気分が優れなかったら、今日は早退しなさい」

男「………」コクリ



 いつのことだっただろう。


 あの日、自分のせいで多くの人が、死んだ。


 でも、皆、皆死んで、誰もそれが俺のせいだって知らない。


 あまりにも小さかった俺は、それがバレることを強く恐れた。


 そして、逃げた。


 逃げて、逃げて、逃げて、逃げた。


 大人になっていくにつれ、逃げていることを忘れていった。


 だけど、決してなくなることはない――罪。


 俺だけが知っている……一生隠さなければならない“秘密”。



 

男「………」パチッ

男(えっと……何してたんだっけ…)

後輩「………」ナデナデ

男「あれ……後輩?」

後輩「ひゃっ/// お、起きてたんですか先輩///」アワワ

男「俺……えっと…どうして…」

後輩「ずっと寝てたんですよ。お昼休みで先生が離れるから、保健委員の私が代わりに看てたんです」エヘヘ

男「そっか……悪かったな」

後輩「大丈夫ですか?」

男「……どうだろ…」

後輩「まだ体調良くなかったら寝てていいですよ」

男「添い寝……してくれるのか?」

後輩「あはは、そんな弱弱しく言われたら本気にしちゃいますよ?」

男「……ははっ…」

男(うわ……俺…今、若干本気で言ったな……)



後輩「ちょっとだけですよ?」シャッ



男「えっ……」

後輩「失礼します」モゾモゾ

男「こ、後輩?」オロオロ

後輩「……えへへ、何だか悪い事してるみたいですね」

男「……してるんじゃないか? これ」

後輩「あはは、そうですね」

男「ていうか……ドキドキして体調悪化しそう…」ウプ

後輩「わわっ、それは大変です」サッ

男「………///」

後輩「………///」

男「あ、あのさっ///」

後輩「はいっ///」



男「……ありがとう…」ボソッ



後輩「はいっ、保健委員ですからっ」

男「さすがプリキュアを毎週欠かさず見てるだけあるな」アハハ

後輩「」

男「あ……」

職員室

男「すみません」

担任「まぁ、そういう時もあるわな」【JKに手を出した】

男「………」

体育教師「男、体力足りてないんじゃないか?」【通勤中の痴漢が趣味】

男「………」ウプッ

教頭「今日のところは帰っていいですよ?」【妻への暴力虐待】




男(ああ……ダメだ。俺は……)フラッ



教師達「!?」

男「………あんたらと…一緒だ…」ハァハァ





 罪を―――恥じている。




病院


男「!!」ガバッ

男「こ、ここはっ」キョロキョロ

姉「………」スゥスゥ

男「姉ちゃん……」

妹「むにゃむにゃ……」

男「妹……」


義妹「起きられましたか、お兄様」


男「義妹……」

義妹「久しぶりにきますね。ここ」

男「……ああ」

男(あの事故……以来だな)

義妹「お兄様に助けられなかったら、今頃私はあの人達と同様に死んでいました」

男「………」

義妹「だから私はお兄様には感謝しているのです」ニコッ

男「……でも…」

男(俺は……)



義妹「もし」



男「っ!」ビクッ

義妹「もし、お兄様があの事故を“自分の所為”だと責めているのでしたら」

男「………」ドクンドクンドクンドクン




義妹「お兄様の手で、私を殺してくださいね」ニコッ




男「あ……あ…」

姉「う、うぅん……」ゴシゴシ

妹「お兄ちゃん……起きたの?」ムクッ

男「あ、ああ……」

義妹「………」ニコニコ

男(結局、即日退院となった俺は、三日間学校を休んだ)

男「しかし……どうすれば…」

幼馴染「やっほー、男元気?」

男「幼馴染」


幼馴染【自分のせいで男が人を殺した】


男「!?」ゾクッ

幼馴染「?」

男「お、おまっ、えっ……な、なんでっ」ガクガク

幼馴染「んー? 何言ってるの?」

男「わ、悪い……ちょっと出かけるところ思いだした…」フラフラ

幼馴染「まだ体調悪そうだし、一緒に行くよー」

男「い、いや、良いよ」

幼馴染「でもさー」



男「放っておいてくれよ!!」



幼馴染「っ!?」ビクッ

男「あ……」

幼馴染「ご、ごめんね。男の気持ちも考えずに」プルプル

男「ち、違うんだ……」

幼馴染「ま、また元気になったら会いに来るね!」ダッ

男「………」

男(お前が……背負うことじゃないだろ…)

街中

男「………」ボーッ

通行人【財布盗んだ】

男「………」

通行人【キセル常習】

男「………」

通行人【彼女殴った】

男「………」

通行人【今から人を殺す】

男「………」

通行人【パンツ履いてない】

男「………」

後輩【男先輩のことばっかり考えてる】

男「後輩!?」ビクッ

後輩「あわわ/// せ、先輩!?」オロオロ

男「な、何してるんだこんな所で」アワアワ

後輩「い、いえ、ちょっと///」

マクドル

男「………」ズズッ

後輩「………」モグモグ

男「………」

後輩「あ、あの……」

男「な、何かなっ」

後輩「体調は……大丈夫なんですか?」

男「お、おう……」

後輩「そっか……良かった」エヘヘ

男「後輩……」

後輩「先輩に元気がなかったら私も元気じゃなくなりますからね」ニコッ

男「………っ」ズキッ

男(後輩は……こんな純粋なのに…俺は……)プルプル

後輩「先輩?」

男「………」

後輩「………」シュン…

帰り道

男「………」

後輩「………」

男「あ、あのさ……」

後輩「は、はいっ」

男「ありがとな」ナデナデ

後輩「へ?」

男「……ありがとな」ナデナデ

後輩「……はい///」



通行人「お、おいっ、あっちで人が暴れてるらしいぞっ」

通行人「こえーよ、逃げようぜ!」

通行人「首筋に火傷の痕がある女の子が人質にとられてるらしいぞ!」


男「!?」

男(義妹!?)ダッ

後輩「先輩!?」

男「後輩は来るな! 逃げろ!!」

後輩「先輩!!」

男(義妹!!)

通行人「………」グイッ

義妹「………」


ギャラリー「ざわざわ」


男「……くっ、どいてくだ…さい」ダッ

義妹「お兄様」

男「義妹!!」

通行人「知り合いか?」【今から人を殺す】

男「!!」

男(さっきの……)




男(くそっ……俺が見て見ぬふりをしたばっかりに!!)




通行人「よし、それいいな」ボソッ

義妹「?」

後輩可愛い

通行人「おい、そこのお前!」

男「……義妹を放せ」

通行人「ああ、お前が言うことを聞けば放してやる」

男「……言うこと?」

通行人「そうだ。これを使え」ポイッ



――がしゃっ。



男「ナイフ……?」

通行人「そうだ、それで



 俺達を面白がってる外野を一人殺せ」



男「!?」

ギャラリー「!?」

義妹「………」

男「できる訳ないだろ!」

通行人「いいや! できる! お前ならな」

男「……は?」

通行人「俺が何故、こんな所でこんな可愛い女の子を人質にとってるか分かるか?」

男「……何故だ…」



通行人「俺にはな、“人の過去が視える”んだよ」



男「!?」

通行人「こいつはな、過去に“両親を殺した”と書いている。あくまで本人の主観だから、実行犯がこいつかどうかは分からないがな」

男(こいつ……俺と同じ!?)

通行人「お前は過去に“義妹を助けるために殺人”を犯してるらしいな」

ギャラリー<ざわざわ

男「………それがどうした」

通行人「なぁ、おかしいと思わないか?」

男「?」



通行人「今、後ろで俺達を見物してる奴ら、こいつらの過去はみーーんな犯罪を犯してる! チャリをパクった程度の犯罪から人を殺したレベルの犯罪までな」

男「……それのどこがおかしい」

通行人「そんな奴らが、どうしてこの状況を面白がる!?」

男「!!」

通行人「お前は今、とてつもなく苦しい顔をしている。まるでこの世が終わってしまうような、そんな絶望に満ちた顔をな! だけどこいつらは何だ!?」

男「………」バッ




ギャラリー【こいつら死なないかな】ニヤニヤ

ギャラリー【ツイッターにあげよう】ニヤニヤ

ギャラリー【友達に自慢しよう】ニヤニヤ

ギャラリー【あの女犯されねーかな】ニヤニヤ



男「………あ」ガクガク

通行人「な、分かるだろ? こいつらは俺達の事をゴミだと思ってやがる」

男(見るな……見ないでくれ…)



過去 事故現場

ギャラリー「うわっ、爆発してんじゃん」ニヤニヤ

ギャラリー「死体あるし、きもっ」ニヤニヤ

ギャラリー「どうせ不注意でしょ」ニヤニヤ


義妹「……男…君…」

男「誰か! 誰かこの子を!!」グイグイ

幼馴染「あ……ああ……」ガクガク


ギャラリー「にやにやにやにやにやにやにやにやにやにや」


男「あぁああああああああ!!」ジャキッ

ギャラリー「!?」ザワッ

通行人「そうだ、それで良い」ニヤリ

義妹「お兄様……」

男「お前ら!! 何がそんなに楽しい!」ズキズキ

ギャラリー「な、何してんだっ、こっちくんな!」【こいつら死なないかな】

男「お前! そんなこと思って自分を恥じるくらいなら、どっかいけよ!!」

ギャラリー「なっ///」カァ

ギャラリー「いいからナイフしまえよ!」【ツイッターにあげよう】

男「人の不幸をツイッターにあげて楽しいか!? 本人らは苦しんでるんだぞ!?」

ギャラリ「………っ」

男「お前らはいつだってそうだ! 自分たちが綺麗な世界に住んでると勘違いして泥だらけで必死に生きている人間を嘲笑う! だけど、そんなのは間違っている!!」




男「俺達は、罪を償わなきゃ前に進めないんだよ!!!」ブンッ!!




ギャラリー「うわぁああああ!!」ダダダッ

通行人「そうだ、もっとだ。もっと……」

義妹「お兄様……」

通行人「お前、あいつを止めなくていいのか」

義妹「……あの人をあんな風にしたのは私です。……だから、お兄様が道を間違えれば、私は死んで償います」

通行人「……まぁ、どっちにしろお前には死んでもらうがな」

義妹「………」



男「義妹を、助けたいんだよ……。誰か……誰か殺されてくれよ」フラフラ



後輩「……良いですよ…」スッ



男「!!?」

通行人「ほう」

通行人(なんて“綺麗な過去”の持ち主だ。何一つ穢れのない……)

義妹「あいつ……」ギリッ

義妹(お兄様を高い所へ連れて行く悪魔め……。お兄様は羽根を持っていないのに……)

男「い、いや、無理だよ……後輩を殺すなんて…」

後輩「先輩!!」

男「っ!」ビクッ

後輩「私の目を見てください」

男「……い、いやだっ」

後輩「先輩!!」

男「!!」ジッ

後輩「先輩……」ニコッ

男「あ……」



後輩【先輩の苦しみを何一つ理解してなかった自分】



男「こう……はい…」ポロポロ

後輩「良いんです。私……馬鹿だから。こうすることでしか、先輩の想いに答えられないから」ポロポロ

男「く、くるなっ」

後輩「先輩……」テクテク

男「頼む、俺を、俺をこれ以上……」プルプル



後輩「今です!!」



通行人「しまっ!?」

友「残念だったな」グイッ

通行人「ぐえっ!!」

男「友……?」

友「……へっ」グッ

警察署前

男「………」

友「男!」

後輩「先輩!」

義妹「お兄様……」

姉「……皆、ありがとな」

妹「お兄ちゃん……」グスッ




男「皆、俺、もう一度行ってくる」



一同「!?」

義妹「お兄様!!」

男「………」

義妹「もし、“あのこと”言いに行こうとしてるなら、先にこっちの言うことを聞いてもらいます」

男「……分かった」コクリ

友「何のことだ?」

後輩「……分かりません…」

姉妹「………」

男の部屋

男「俺は、過去に義妹の両親を殺した」

友「?」

後輩「ちょっと意味が……」

義妹「お兄様は、7年前の中央駅前事故の事を言っているのです」

友「あ、なんか死者数十人の交通事故か?」

後輩「でもあれって、完全に事故だってニュースで……」




男「車の前に飛び出したからって、殺人犯にはされないだろ」




一同「!!」

男「……あの日、俺は義妹の両親を殺すためにジッと待っていた」

幼馴染「男、やめて」

男「義妹は虐待を受けていて、それはエスカレートするばかりだった」

姉「私たちの両親も、幼馴染だった義妹両親を何度も説得したけど、全然聞く耳を持ってくれなかった」

男「俺は何も考えてなかった。ただ、勝手に義妹を被害者、義妹の両親を加害者だと決めつけて、ヒーローごっこをしただけだったんだ」

男「結局、車の前に飛び出した俺を避けるために右にハンドルを切った義妹両親の車は、多くの通行人を巻き込んでしまった。しかも、運の悪い事に炎上した車は、助かった義妹の身体に一生残る火傷を負わせたんだ」

友「………」

男「俺はまだ小学生だったし、現在の交通法じゃ最終的に車側に責任があることとなった。……だけど、俺はあいつらを殺す気だったし、実際死んだ! なら、俺は立派な殺人犯じゃないか!」

後輩「………」

男「それなのに、誰ひとり、誰ひとり俺を責めなかった。全身にやけどを負った義妹、事の顛末を知っている幼馴染、全て打ち明けた姉、妹、誰ひとりだ! 誰ひとり……俺の…俺の苦しみを……分かってくれなかった」ポロポロ

姉「……それは…」グッ

妹「私だって……」ポロポロ

男「俺は殺人犯だ。だから、この罪を償わないといけない! じゃないと……俺は…いつまで経っても…



自分のことを死ぬほど恥じてしまう……」ガクッ



一同「………」



後輩「先輩」ギュッ


一同「!?」

男「………離してくれ」

後輩「嫌です」

男「頼む。離してくれ」

後輩「絶対に離しません」

男「俺は、お前みたいな綺麗な人間が嫌いだ」

後輩「私は先輩が大好きです」

男「俺は、お前みたいな人の苦労を知らない人間が嫌いだ」

後輩「私は先輩みたいな優しい人間が大好きです」

男「俺は……俺は…」ポロポロ

後輩「先輩……私は誰ですか?」

男「え……」




後輩「私は、先輩の後輩ですよ? だから、大丈夫です」ニコッ




男「……う、うぅ…」ギューッ

後輩「よしよし」ナデナデ

一同「………」グスッ


 結局、警察は俺の話を聞いてはくれなかった。

 七年前の解決している話だし、俺は当時小学生。

 どんだけ殺意があったとしても、事故を起こした前方不注意は車の方にあったのだし、殺意のあった人間が命を危険にさらしてまで人を助けない。そう突っ返されてしまった。



 それは、ある意味で死刑宣告に等しいと俺は思う。



 “罪を償う機会を与えない”。

 

 俺は一生この重みから逃げられないし、逃げてはいけないのだ。





 数年後。。。


男「………」ガシャッ

おばさん「いやー、あんたよく働くねー」

男「そんなことないっす」

おばさん「日本人はやっぱ働き者だわー」アハハ

男「………」

おじさん「どうした? 日本が寂しくなったか?」

男「いえ、……世界にはまだまだ苦しんでいる人達がいっぱいいますから」

おじさん「……そうか」

男「あ、ちょっとあっちの方も見てきますね」

おばさん「行ってらっしゃい」ニコニコ

男「………」


おじさん【息子を戦争に行かせたこと】

おばさん【息子を戦争に行かせたこと】


男「………」タタタッ

男(こっちはまだ瓦礫だらけだな……)




――先輩!




男「えっ?」






 その日、俺は……天使を見た。





完。

おやすみなさい。

おつおつ

こんな話だと思わなかった。乙!

いい話だった

イイハナシダッタナー

(´;ω;`)ブワッ


後輩かわいいなぁ、幼なじみもかわいいなぁ、天使を見てみたいなぁ(チラッチラッ)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月11日 (月) 21:08:41   ID: bWor-DLX

なぜだか涙が出るのは、俺だけだろうか?

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom