女「誘拐するならちゃんと誘拐しなさいよ!」 (637)

  
夜 路地

女「(今回のお客さんは3回目ね)」

女「(すぐ抱きつくけどいい人だし…)」

男「…………」スタスタ

男「口に貼るときは髪につかないように…」ペタ

女「!!」

男「よし。ガムテープは髪につくと剥がすとき痛いからな」

女「(な、なにこいつ!)」

男「んで手は背中側に回して結束バンドで固定…」

男「もちろん足も閉じて固定させて」

女「んー!」

男「こけると危ないから動かないで」

女「(だ、誰か…!)」

男「んで最後にアイマスクして完成」

  
移動中

女「(何も見えない!)」

女「(ど、どうしよう…)」

男「シートベルト締めにくいから腕の方は外すか」パチッ

女「んー!」

男「ん?」

男「見えてないから分からないと思うけど銃持ってるから」

女「!」

男「ガムテープもアイマスクも外さないで」

女「(ど、どこに連れて行かれるの…)」

男「ちょっとリラックスして待ってて」

女「(なにリラックスとか言ってんのこいつは…!)」

  
1時間後 自宅

男「我ながら完璧」

女「……」

男「アイマスクとガムテープ外さないとな」スッ

女「!」

男「動くなよ女さん」

男「無理に外すと痛いし」

男「……それと」

男「叫んだら大変なことになるから」ペリ

女「(大変なこと…!)」

女「……はぁはぁ」

男「苦しかった?」

女「……」キッ

男「睨まないで」

  
女「……」

女「な、何が目的なのよ…」

男「(物分りいい子だな…)」

男「女さんがあまりにも可愛くて」

女「!」

女「……身代金目的じゃないのね」

男「ん?」

男「まぁ金はいらないな」

女「(どうやって逃げよう)」

女「(どこかに電話とかがあれば…)」

男「持ってたカバンは隠したから」

女「!」

男「中に携帯あるはずだし」

男「まだ中身は確認してないけど」

  
男「縄きつくない?」

男「イスに固定するときは難しくて…」

女「…………」

女「ゆ、誘拐なんて頭おかしいんじゃないの?」

男「…………まぁ叫ばないだけマシか」

男「これで黙ってもらおう」

女「な、なによ…」

男「ナイフ」

女「!」

男「ていうか誘拐じゃなくて拉致のはずなんだけど……まぁどうでもいいか」

女「やめて…」バタバタ

女「ま、待ってよ…!」

女「愚痴とか悩みとかあるなら私が聞いてあげるからっ…!」

サクッ

  
女「……い、いたくない…?」

男「これおもちゃ」

女「!」

男「一回やってみたくてさ」

男「どう?」

男「騙された?」

女「……こ、こいつ!」

男「反抗的な目やめて」

女「…………」

男「今日はとりあえず何もしないから安心してよ」

男「ご飯もちゃんと用意してあるから」

女「(わけわかんない…)」

女「(長い時間かけて私を痛めつけるのが目的なの…?)」

女「…………」

  
男「ちょっと移動するか…」

女「?」



10分後

男「よし完了。締め付けは大丈夫?」

女「……」

男「リクライニングチェアの方が長時間でも楽だし」

男「あのイス座り心地あんまりよくなかっただろ?」

女「……」

女「(すごいふかふか…)」

女「(ゆったりできる…)」

女「じゃなくて!!」

男「!」

男「し、静かに!」

  
女「油断してる場合じゃない…」

男「リラックスしてくれた方が助かるんだけどな」

女「……」

女「どういうつもりなのよさっきから!」

男「?」

女「おもちゃで脅したりふかふかのイスに縛ったり…!」

男「…本物で脅した方がよかった?」

男「ちょっとナイフ持ってくる」スタスタ

女「ま、待ちなさいよ!」

男「何?」

女「私は脅されたいわけじゃないの!」

男「?」

男「まぁ最近の若い人は急にキレるって言うし…」

女「(なに言ってんのこいつは…)」

  
女「はやくここから解放してよ」

男「いやそれはちょっと…」

女「今帰してくれたら警察にも言わないであげるから」

男「まじで!?」

男「……どうしようかな。いやでも絶対叱られるし」

女「(何本気にしてんのよ)」

女「(もしかしてバカなのかしら)」

男「うーん…」

男「やっぱ解放するのはできないな」

女「……」

男「せっかく女さん拉致できたんだし」

男「…我慢できないんだよ可愛い子見ると」

女「!」ビクッ

女「ま、まさかあんた今までにも誰か誘拐してきたの…!?」

  
男「してない!!」

女「(うるさっ)」

男「女さんが誘拐って言い方が気に入ったんならそう呼ぶけど…」

女「(気に入ってない)」

男「俺の誘拐童貞は女さんに捧げたんだ!」

女「…………」

女「…………」

女「きもちわる」

男「そんな目で見ないで」

女「…なんなのよ誘拐童貞って」

男「簡単に言うと初誘拐」

女「……」

男「童貞捧げてるんだからもっと反応があってもいいと思うんだけど」

女「……やっぱりバカだこいつ」

  
女「……私をどうしたいのよ」

男「どうしよう」

男「あんまりこの先は考えてなくて…」

女「え?」

男「困った…」

女「さっきまで手際よかったじゃない」

男「あれはすごい特訓したから」

男「ガムテープ貼る練習とか」

女「(どんな練習よ)」

男「縄の跡が残らないような縛り方とか調べたり…」

女「……」

男「今確認してみようか」

女「?」

男「左腕の縄切るから動かないで」

  
チョキン

男「ほら!」

女「…うるさい」

女「まぁたしかに跡はついてないわね」

男「特訓した甲斐があった」

女「……」

男「ほんとはあと一ヵ月くらい計画練ってから誘拐するつもりだったんだけど」

女「……知らないわよ」

男「ちょっと事情があって」

女「だから知らないわよもう」

男「そんなこと言わずに」

女「……はぁ」

  
男「今から3日間しか時間ないから急がないといけないんだけど…」

女「(普通の誘拐事件とかだと警察は3日くらいで来るのかしら)」

女「(…………でもきっと来ないだろうな)」

女「(連れて行かれたところも人通り少なかったし…)」




男「あの本の通りに進めてみようか…」

女「?」

男「誘拐拉致入門」

女「どんな本よ」

男「でも頼りすぎるのもよくないな!」

女「(一人でなに盛り上がってんのよこいつ)」

男「それに計画もまったくの白紙ってわけじゃないから大体の流れはあるし…」

男「てことで早速やりますか」

女「!」

  
女「わ、私犯されちゃうんだ…」

男「今日はしないよ!」

女「…………あんた3日しか時間ないんじゃないの?」

男「だってこういうのってお互いの気持ちが大切だし…」

女「誘拐犯が何言ってんのよ」

女「ていうかどこで奥手になってんの」

男「そ、それに無理矢理したら嫌われそうだし」

男「まずは1日かけて親睦を深めないと…」

女「バカなの?」

女「3日間しかないうちの丸々1日使って親睦深めるってどういうことなのよ」

男「…すみません」

女「どう考えたってペース配分下手すぎるわよまったく」

男「いきなり饒舌になったね女さん」

女「(……い、いつもの癖でツッコんでしまった)」

  
女「(でも言わなきゃ気が済まない…!)」

女「あんたがあまりにもバカだし杜撰な計画立てるからでしょ」

男「たしかに…」

男「よし、じゃあ今から犯す!」

女「ま、待ちなさいよ!」

男「?」

女「私は別に犯されたいわけじゃないの!」

男「ほらやっぱりお互いの気持ちが大切なんだって」

女「……いらいらするわね」

男「……」

女「(なんなのよこいつは…)」

女「(親睦深めるとか言ってるし)」

女「(誘拐犯なら力づくでするもんじゃないの…?)」

  
女「熱く語ってたら喉乾いちゃったじゃない」

男「水持ってこようか?」

女「うん。カバンの中にあるから」

男「あ、でもカバン勝手に見られたら女の人って怒るよな…」

女「今さらそんなこと気にしてどうすんのよ!」

男「怒らないで…」

女「じゃあはやく水持ってきてよ」

男「わかった」

男「……」

男「(よくツッコむし、そこまで動揺してるわけでもないし)」スタスタ

男「(…………この子すごい適応力だな)」スタスタ



男「はい」

女「……よかった。半分くらいは残ってるわね」

  
男「あ、俺が飲ませるよ」

女「いいわよ別に」

女「左手自由なんだから」

男「ま、待って」

男「飲ませたいんだ」

女「知らないわよそんなこと」

男「じゃ、じゃあもう一回縄で縛るからちょっと待ってて」ガサゴソ

女「わかった!」

女「わかったから!」

男「よし、粘り勝ち」

女「なんなのよもう面倒くさいわね」

男「誘拐したらやりたいランキング上位だよこれは」

女「知らないわよ」

  
女「(何で左手使えるのに飲まさせられてるのよ…)」

男「ちょっと上向いて」

女「ん」

男「できるかな…」トク

女「……」ゴクゴク

女「…ぷは」

男「もういい?」

女「……もうちょっとだけ」

男「うん」トク

女「……」ゴク

男「……」トク

女「……?」ゴク

男「……」トク

女「(な、長い…!)」バタバタ

  
女「!」ゴホッ

男「あ、ごめん」

女「…はぁはぁ」

女「何すんのよ!」

男「飲んでる姿がかわいくてつい…」

女「ついじゃないわよ!」

女「縄の時みたいにちゃんと練習しときなさいよ!」

男「ほんとすいません」

女「ふん」

女「(ていうか水飲むの恥ずかしかった…)」

男「……よし、やりたいことリストひとつ埋まった」カキカキ

女「なによそれ…」

男「見る?」

女「見せないできもちわるい」

  
男「じゃあ次は何しようか…」

女「……」

男「ご飯食べる?」

女「別にいらない」

男「じゃあリビングで食べてくるから」

ガチャ バタン

……



女「なんなのよあいつは…」

女「話してるだけで疲れるわね」

女「……まぁそんなことより」

女「…………」キョロキョロ

女「よし、今のうちにどうにかして逃げよう」

  
女「それに今なら左腕も動かせ」

ガチャッ!

男「忘れてた」

女「!」

男「さすがに目を離すときは腕縛らないとな」グイッ

女「(抜けてんだかしっかりしてんだか…)」

男「……ていうか今逃げようとしてた?」

女「…………」

女「あったり前じゃない」

女「こんなとこ絶対どうにかして逃げてやるわよ」

男「……逃げる素振りを見せるのはよくないな」

女「……」

男「罰を与えないと」ガサゴソ

女「!」

  
男「アイマスクして…」スッ

女「な、なにすんのよ!」

男「ちょっと放置するだけだから」

ガチャ バタン

女「(何も見えない…)」

女「(身体も動かせない…)」

女「…………」

女「…………」

女「どれくらい放置されるの…?」

女「…………」

女「待つしかないのかしら…」

  
15分後

ガチャ

女「!」

男「お腹いっぱい…」

女「(やっと部屋に帰ってきたんだ)」

男「15分経ったから外そう」スッ

女「(……まぶしい)」

男「懲りた?」

女「別に…」

男「それは困った」

女「……」

男「さっきの間にいろいろ考えてたんだけど…」

男「縄は切るよ」

チョキン

  
チョキン

女「どういうつもりよ」

女「解放してくれるわけ?」

チョキン

男「家から出すつもりはないよ」

男「でもある程度は自由にしてもらいたいからな」

女「……」

男「また逃げようとしたら放置するから気を付けて」

チョキン

男「よし、完了」

女「……」

女「(やっと体動かせる…)」

女「ふー」

  
男「ていうかカバンの中に携帯ないんだけどどこかに隠し持ってる?」

女「…………」

女「…………」

女「教えない」

男「じゃあ服脱がして探すしかないってことか」

女「!」

女「やだっ…」

男「女さんが教えてくれればこんなことしなくても済むんだけど…」

女「も、持ってないの!」

男「……」

男「(やっぱりか…)」

女「ほ、ほんとよ?」

男「じゃあ調べるために服脱ごうか」

女「ついさっき言ったことくらい守りなさいよ」

  
男「あ!」

女「何よ急に」

男「そういや水飲む前にも解放してとか言ってたよな?」

女「!」

男「じゃあもう一回放置しようか」ガサゴソ

女「ま、待って!」

女「逃げようとしてないから!」

男「ほんとに?」

女「ほんとほんと…」

男「それならいいか」

女「(なんでそこは素直に信じるのよ)」

女「(動ける状態になったんだからチャンスが来るまで待とう…)」

  
女「ていうかあんたの判断基準が適当すぎるのよ」

男「いろいろ誘拐拉致入門で勉強したんだけど…」

女「またあの本か」

男「なかなか咄嗟に思い出せなかったりしてさ」

女「知らないわよ…」

女「タイトル長いし」

男「じゃあ誘致入門」

女「(意味が…)」

男「女さんと話してると楽しいな」

女「私は何一つ楽しくないわよ」

男「ははは」

女「何笑ってんのよもう」

女「…………」

女「(普通に話してる分には危害を加える気がないのかしら…)」

  
………

……



女「……ねぇ」

男「?」

女「お腹空いた」

男「おっけー」

女「はやく持ってきて」

男「はいはい」




男「どうぞ」

女「……普通に食べていいの?」

男「ん?」

男「食べさせてほしいの?」

  
女「別にしてほしくない」

女「また無理矢理させられるのかと思っただけ」

男「………いや、やろう!」グイ

女「ちょっ…いいわよ」グイ

女「自分で食べられるから!」

男「いや大丈夫!」

女「何が大丈夫なのよ!」モグッ

男「あ、食べた!」

女「ふん、あんたが出したんでしょ」モグモグ

男「じゃあ罰だな」

女「!」モグモグ

女「おかしいでしょ!」モグモグ

男「だって…」

女「だってじゃない!」モグモグ

  
女「別に今は逃げようとしてないでしょ」

男「そうだけど…」

女「まったく」モグモグ

………

……



女「……ごちそうさま」

男「おいしかった?」

女「ふつうね」

男「今度から女さんに作ってもらおうかな」

女「…いやよ」

男「作れないの?」

女「違うわよ」

男「まぁそれは今度確かめるとして…」

  
男「お風呂にしようか」

女「(……ヤられるのかな)」

男「一人で入ってもらうから」

女「(こいつエスパーなのかしら)」

男「今日は何もしないって言ったからな」

女「……ていうか入らせてくれるんだ」

男「どういうこと?」

女「もっと雑に扱われるものかと思ってただけよ」

男「女さんにそんなことしないよ」

男「それに女の子って一日お風呂入らないだけでもイヤなんじゃないの?」

女「どこ気にしてんのよ」

女「誘拐される方が万倍いやよ」

男「ははは」

女「何笑ってんのよもう!」

  
お風呂

女「……ほんとに一人で入らせてくれるんだ」

女「……」

女「……」

女「気持ちいい…」

女「……」

女「……」

女「っていうか私何やってるのかしら」

女「誘拐犯の家でお風呂つかって…」

女「……」

女「でも落ち着くわね…」

女「それにいきなり襲ってくることは無いみたいだし」

女「ゆっくり考えよう…」

女「…………どうせ助けなんて来ないし」

  
30分後

女「なんでアイマスクしてんのよ」

男「ここは紳士にいこうと思って」スタスタ

女「紳士は人をさらわないの」スタスタ

男「まぁまぁ」

ガチャ

男「ここに服とか下着とかあるから」

女「……よく物にぶつからなかったわね」

男「自分の家だし」

女「ていうか何この服の数!!」

男「どんな服が好みかわからなくて…」

女「どんだけ買ったのよこれ…」

男「かなりお金使った」

女「バカじゃないの?」

  
男「だって好みじゃない服着てたら落ち着かないでしょ?」

女「誘拐犯の家にいて落ち着く瞬間ないてないわよ」

男「たしかに!!」

女「テンションうざっ」

男「…もう着た?」

男「アイマスク外したい」

女「ま、まだ選んでる!」

女「……うーん」

女「どれにしようかしら…」

女「ていうか違う場所で待っててよ」

男「でもさすがにアイマスクつけたまま離れるわけには…」

女「外して待ってればいいじゃない!」

男「なるほど。女さん賢いね」

女「(バカにしてんのかこいつは…!)」

  
男「じゃあ監禁部屋で待ってる」スタスタ

女「はいはい」

……



女「……これほんとにすごい数ね」

女「どれだけ使ったのかしら」

女「パジャマと下着だけでこんなにあるなんて…」

女「……」ジー

女「……」ジー

女「……」ジー

女「これかわいい…」

女「このパジャマにしよう!」

……


  
ガチャ

女「……」

男「それにしたんだ」

女「…わるい?」

男「ううん。かわいいよ」

女「……別に褒められてもまったくうれしくない」

男「そう」

男「でも気に入ったんならよかった」

女「あれ全部でいくら使ったのよ」

男「女さんに引かれるから言えない」

女「ガムテープ貼られた時点でもう限界まで引いたわよ」

男「80万」

女「うわぁ…」

男「ドル」

  
女「え!?」

男「冗談だよ」

女「……」イラッ

男「お、怒らないで」

男「joke」

男「ジョッ、ここはジョークアベニュー」

女「?」

男「…………寝ようか」

女「う、うん」

女「(今のなんだったのかしら…)」

男「……」

男「じゃあ2階行こう」

女「ここって一軒家なの?」

男「そうだよ」

  
女「全然わからなかった…」

男「だってエレベータ乗らなかったでしょ?」

女「普通の精神状態じゃなかったからあんまり覚えてないわよ」

男「それにマンションとかって防犯カメラあるみたいだし」

女「…なるほど」

女「って感心するところじゃないわね」

………

……



寝室

男「この部屋で寝てくれていいから」

女「あんたはどこで寝るのよ」

男「一階」

男「逃げられると困るし」

  
女「なるほどね」

男「じゃあおやすみ」

ガチャ バタン

女「…………」

女「…………」

女「(よし…)」

女「(探索しよう…)」

女「(……少し待ってから出発ね)」



2時間後

女「んっ…」

女「ちょっと寝ちゃった…」ゴシゴシ

女「…………」

女「ていうかあいつはほんとに何もしてこないのね」

  
女「……行こう」

カチャ パタン

女「(……抜き足)」

女「(……差し足)」

女「(……千鳥足)」フラッ

女「……」

女「(遊んでる場合じゃない)」

女「(2階は寝室と…)」

カチャ

女「(物置部屋っぽいところと…)」

パタン

女「……」

カチャ

女「(ここはトイレね)」

  
女「(2階はこれだけね)」

女「(降りよう…)」

スタスタ

スタスタ

女「(あいつはどこにいるのかしら…)」

女「(ここがリビングで…)」

女「(キッチンもある)」

女「(……カレーまだ残ってる)」

女「(おいしかったなぁ…)」

スタスタ

女「(あとはお風呂と…)」

女「(トイレと…)」

女「(服置いてる部屋と…)」

女「(最初にいた監禁部屋ね)」

  
女「(ってことは今あいつ監禁部屋にいるのね)」

女「…………」

女「…………」

女「(逃げ出せるかも…)」

女「(あの部屋から玄関は遠いし…)」

女「…………」コソコソ

女「…………」コソコソ

女「(よし、行ける)」

女「(靴はいて…)」トントン

女「(ふふ、あいつほんとにバカなのね)」

女「(おじゃましましたー)」カチャ



男「……こんばんは」

  
女「!!!!」

男「……せめて窓から脱出しようとすればいいのに」

女「な、な…」

男「正面突破は無理だよたぶん」

女「なんでここにいるのよ!」

男「……深夜だからとりあえず中入ろうか」

女「(なんで、なんで…!)」

………

……



監禁部屋

男「これでよし」

女「……うぅ」

男「今イスに縛ると寝るかもしれないから今回は立って放置ってことで」

  
男「時間は前回の倍だから」

女「……」

ガチャ バタン

女「……」

女「……」

女「ふかふかのイスに縛られたい…」

女「見えないし…」

女「疲れるし…」

女「……」

女「……」

女「……」

女「今度は30分なのかしら」

女「前はたしか15分経ったとか言ってたし」

  
30分後

女「……もう疲れた」

女「……」

女「……」

女「絶対1時間は経ってる」

女「解放されたら文句言ってやるんだから」

ガチャ

女「!」

女「遅いわよ、はやく解いて」

「いきなり文句言ってんじゃねーよ」

女「……だ、誰?」

「声だけで違うってわかるのか?」

女「(こ、こわい…)」

「びくびくしてかわいいなぁおい」

  
女「やめて…」

「ちょっとイタズラしてやるか」

女「やだっ!」

女「こ、来ないで!」バタバタ

「まずはアイマスク外してやるよ」

女「触らないで…」

スッ

男「おいーす」

女「……えっ?」

男「これボイスチェンジャー」

男「ヘリウムガス吸った時みたいな声も出せるんだよ」カチッ

男「どう?(高音)」

男「騙された?(高音)」

男「ん?(高音)」

  
女「こ、こいつ…!!」

男「十分楽しめたな」

女「はやく解いて!!」

男「はいはい」

……



女「……」

男「ほらもうそんな怒らないで」

女「ふん」

男「もうボイスチェンジャー使わないから」

女「そういう問題じゃない!」

男「じゃあどうすればいいの」

女「縛るときはちゃんとふかふかのイスに縛ってよ」

男「(そこなんだ)」

  
男「もう逃げないで」

女「ふん」

男「縄もあんまりストックないから使いたくないんだよ」

女「切らずに済むような縛り方にすればいいじゃない」

男「誘致入門にはやり方書いてなかったから…」

女「どんだけその本好きなのよ!」

男「参考になるし」

女「はぁ…」

男「抜け出すことも想定して一日目の夜は外で待機すべきってしっかり当たってたし」

女「……その本通りの動きしてたのね私」

男「そうなるな」

女「もう寝る」

男「今からは俺も一緒に寝るよ」

女「えー…」

  
寝室

女「狭いよ出てって」

男「でもここ俺の家だし…」

女「あんたが家に連れ込んだんでしょうが!」

男「そんな怒らないで」スリスリ

女「ちょっ…!」

女「スリスリすんな…!」グイッ

男「ごめん」

女「やだ。許さない」

女「ていうかベッドから出ていけって言ったの」

女「家から出ろなんて言ってないわよ」

男「…………」

女「…………」

男「…………」

  
女「黙ってないで出てってよ」

男「……うん」

スタスタ

男「これでいいですか」

女「(体育座りしてるし…)」

女「……そんなんじゃ寝られないでしょ」

男「添い寝できないのがショックで」

女「きもちわるっ」

女「どのタイミングでへこんでるのよ」

男「だって…」

女「…………スリスリしないで」

男「?」

女「それ約束するなら一緒に寝てもいいから」

男「!」

  
男「デレ期!!」

女「うざ…」

女「デレてないし」

男「じゃあなんで許可したの?」

女「逆上されるのが怖いだけよ」

男「そんなことしないのに…」

女「そうなんだ」

男「もちろん。紳士だから」

女「じゃあ添い寝なしで」

男「う、嘘です。逆上します」

女「……はぁ」

男「い、いいんだよな?」

女「自分の家なんだから勝手にすれば?」

男「女さん優しい!」

  
20分後

女「(なんで力づくで脅さないんだろう…)」

女「(逃げようとしたら放置されるけどそれ以外何も不自由してない)」

女「(……いや、待遇はむしろ良いくらい…)」

女「(親睦深めるってこういうことなのかしら)」

女「(……とにかく誘致入門とかいう本がむかつくわね)」

女「(明日にでも引き裂いてやろう)」

女「(……今日は疲れた。もう寝よう)」

男「……うーん」スリスリ

女「!」

女「こ、こいつ…!」

男「……」zzz

女「なんだ、寝てるのね」

女「…………まぁいいか」

  
深夜

ピリリリ ガチャ

……

男「うん。一応は順調だと思う…」

男「それはしてない。びっくりするぐらいすぐ馴染んだ」

男「いや、通帳とか見せても意味ないって」

男「仲良く会話できてるのか心配」

男「それは思った。ボケたらちゃんと返すし」

男「それはさすがに……当たり前だけど警戒されまくってるし」

男「ていうかほんとによかったのか?」

男「そういう意味の刺激?」

男「もしそう言ったらな」

男「かわいいのはほんとだからな」

男「…10歳差くらいか?」

  
男「12も差あるのか。一回り違う…」

男「もっと詳しく教えてくれないか?」

男「難しいな…」

男「…聞き出すのはまだまだかかりそうだ」

男「今更引けないのは確かだし」

男「まぁ食べたけどほんとにカレー好きなのか?」

男「それは姉ちゃんも同じ」

男「…はい。すいません」

男「計2回だな」

男「正直2時間とか耐えられないだろ」

男「大丈夫。性能はかなり良いし」

男「じゃあまた」

ガチャ

  


男「……おはよう」

女「…………」

男「なんでそんな落ち込んだ顔してるの」

女「誘拐犯の家で起きた経験がないときっと理解できないわ」

男「……」

女「とりあえずご飯食べたい」

男「了解」

………

……



リビング

女「ここで食べていいの?」

男「もちろん」

  
女「ジャム出して」

男「ない」

女「トースト出しといてジャム用意してないってどういうことよ」

男「いつもチョコ塗るから…」

男「ほら、これ使って」

女「やだ」

男「……」

女「蜂蜜でもいいわよ」

男「それもない」

女「じゃあ食べない」

男「朝食べないと元気でないよ?」

女「うっさい」

男「……わかった。買ってくる」

男「ちょっと待ってて」

  
……



女「バカだあいつ」

女「出ていった」

女「どうしようかな…」

女「ちょっとだけカバン探してから脱出しよう」



10分後

女「ない!」

女「カバンはもういいや」スタスタ

女「出よう!」スタスタ

女「おじゃましました!」

ガチャ

男「ん」

  
監禁部屋

男「今回も前の倍だから」

女「…………」

………

……



女「あいつのことバカだと思ってたけど」

女「私の方がバカなのかな…」

女「……」

女「長いよ」

女「今回も立ったままだし…」

女「私二度寝するタイプじゃないのに…!」

女「……はぁ」

女「トースト食べたい…」

  
30分後

女「もう限界…」

女「……」

女「喉乾いたし」

女「お腹空いたし」

女「……」



30分後

女「……」

女「……もうゆるして」

女「…………」

女「おかしくなっちゃう」

女「…………」

ガチャ

  
男「……」スタスタ

チョキン チョキン

女「……さきにアイマスク外してよ」

男「なんで?」

女「……別にいいじゃない理由なんて」

スッ

男「ご飯食べるか?」

女「…うん」

男「またトースト焼くから」

女「いいわよ。冷めたの食べる」

男「もう俺が食べたよ。焼けるの待ってて」

女「……うん」

バタン

  
リビング

男「はい、トースト」

女「ん」

男「これジャム」ドサッ

女「!」

女「なんでこんないっぱい買ってくるのよ!」

男「どれが好みかわからなくて…」

女「お金もったいないわよ」

男「お金の心配はいらないけど…」

女「?」

男「女さんがそこまで言うなら返品してくる!」

女「やめて。もう面倒だから」

  
男「そう?」

女「うん。私の為にしてくれたのは十分理解してるしうれしいから」パカッ

男「デレ期!」

女「…………」ヌリヌリ

男「デレ期!!」

女「いや聞こえてないわけじゃないから」ヌリヌリ

男「そうだったのか」

女「無視してただけ」モグモグ

男「ひどい」

女「ひどいのは誰よ」

男「……どちらかと言えば俺か」

女「100対0よ」モグモグ

女「(……あれだけ無駄に服買うくらいだからお金は持ってるのかしらね)」

  
女「ていうかほんとにジャム買いに行ってたのね」

男「もちろん」

男「逃げる前に帰ってこれてよかった」

女「…………」

  
……



女「ごちそうさま」

男「うん」

女「あのジャムおいしかったわ」

男「それはよかった」

男「じゃあアレしようか」

女「?」

男「朝ごはんの後はすることがあるでしょ」

女「だから何よ」

男「ヒント。日本で一年間に4億本以上売られている道具を使用する」

女「誘導形式うざっ」

男「……ごめんなさい」

  
洗面台

女「……」ゴシゴシ

男「……」ゴシゴシ

女「……」ゴシゴシ

男「……」ゴシゴシ

女「ぺっ」

女「……」ガラガラ

女「ぺっ」

女「……」フキフキ

女「リビング戻ってるから」

男「あい」ゴシゴシ

………

……


  
女「なんでこんな規則正しい生活送ってるのよ私は」

女「……」

女「私が望んでたのはこんな生活じゃ…」

女「……」



15分後

女「遅いなぁ」

女「テレビ見てもいいのかしら」

男「あぁみえおいいよ」ゴシゴシ

女「ひっ」

男「?」ゴシゴシ

女「いつまで磨いてんのよ!!」

男「えおいつおおれくあいいあいてうかr」ゴシゴシ

女「洗面台行きましょうね」

  
20分後

男「完了」

女「遅いわよもう…」

女「ってなんでスーツ着てるの?」

男「仕事行くから」

女「!!」

女「し、しごと?」

男「?」

男「おかしい?」

女「あんた仕事してるの?」

男「うん」

男「会社いる間は留守番してて」

女「(…………こ、こいつバカだ。留守番なんてするわけないでしょ!)」

女「(っていうか誘拐するならせめて仕事辞めてからしなさいよ…)」

  
男「返事がないみたいだけど」

女「しょうがないわね…」

女「わかったわよ」

男「助かるよ」

男「じゃあ行ってきます」

女「…………」

男「行ってきまーす」

女「…………」

男「行ってきます!」

女「うるさいわね…」

男「返事するまで行かない」

男「行ってきます」

女「………………」

女「い、いってらっしゃい…」フリフリ

  
………

……



女「むかつく…!」

女「絶対やりたいことリストに書いてたやつだ…」

女「……」

女「……」

女「そうだ、この家パソコンとかないのかな」



30分後

女「どこにも置いてない…」

女「…………」

女「窓は全部開けられなくなってるし」

女「カバンも見つからない…」

  
女「まぁカバンくらいどうにでもなるし」

女「大事なのは手帳くらいだけど…」

女「まぁそんなこと言ってられない」

女「脱出しよう」

女「窓が無理なら…」スタスタ

女「玄関から出るしかないみたいね」スタスタ

女「……よし」トントン

女「おじゃましましたー」

ガチャ

  
男「うん」

女「!!」

男「戻ろうか」

女「し、しごと」

男「仕事と誘拐は両立できないよたぶん」

女「…………」

男「今回は2時間」



監禁部屋

女「もうやだ」

女「……」

女「……」

女「自分がこんなにバカだったなんて」

女「あいつの言う通りだ…」

  
………

……



1時間後

女「…………」

女「(もうそろそろかしら…)」

女「…………」



女「(今まで人をパシらせたりワガママ言ったことなんてなかった…)」

女「(ずっと人の話だけ聞いて…)」

女「(愚痴聞いて…)」

女「(もちろん楽しい時もあったけど)」

女「(それにそうしないと生きていけなかったし…)」

女「(でも…)」

  
女「(私の話を聞いて優しくしてくれたことなんてほとんど…)」

女「(逃げたときの罰が怖くて勝手に頭が心地よく思わせてくれてるだけなのかしら)」

女「(もうどうすればいいのか自分じゃわかんないよ)」

女「…………」

女「…………」

女「(また後で考えよう…)」

女「…………」

女「…………」

女「(とりあえず放置が終わったらあの本捨てたい)」

………

……


  
1時間後 リビング

男「昼ごはん食べる?」

男「またカレーだけど」

女「………………」

男「困ったな」

女「誘致入門」

男「?」

女「誘致入門どこにあるの?」

男「……欲しいの?」

女「はやく」

男「後でちゃんと渡すから先にご飯でいい?」

男「お腹空いてるでしょ?」

女「……」

女「うん…」

  
1時間後

女「ごちそうさま」

男「うん」

女「はやくちょうだい」

男「……」

男「はい」

女「なによこれ」パシッ

女「本って言ってたのにパンフレットみたいね」

男「入門だからな」

女「仕事に行く振りして外で待ち伏せするとかどうせこれに書いてあるんでしょ」

男「…よくわかったな女さん」

女「やっぱり…」

女「まぁどうでもいいけど」ビリビリ

男「!」

  
女「なによびっくりしちゃって」ビリビリ

男「あー…」

女「ふん」

男「破られた…」

女「少しすっきりしたわね」

男「…………」ジー

女「なによ。文句あるわけ?」

男「……」

女「文句あるならまた放置すれば?」

男「しないよ。逃げないなら何でも許す」

女「……」

………

……


  


男「お風呂入る?」

女「入る」

男「一緒に入ろうか」

女「やだ」

男「……」ポロポロ

女「泣くなきもちわるい」

男「嘘泣きです」

女「……」イラッ

女「今日は添い寝なし」

男「!」

女「じゃお風呂入ってくる」

  
お風呂

女「ふー」

女「……」

女「昼ごはんの後から何してたんだっけ…」

女「えーっと…」

女「ゲームして」

女「漫画読んで」

女「映画見て」

女「…………料理失敗して」

女「……」

女「刺激的すぎるわねほんとに」

女「なんだか…」

女「…………あいつが私の保護者みたい」

女「言ったものはすぐ買うし遊んでくれるし…」

  
………

……



女「放置の罰はもう受けたくない」

女「……」

女「どうせ…」

女「どうせ逃げたって…」

女「…………」

女「全部話そうかなぁ」

女「……」

女「家出少女って教えたら」

女「あいつ驚くかしら」

女「まぁ家出というか……」

  
20分後 リビング

女「……」

男「あがったのか」

女「うん」

男「俺も入ってくる」

女「…………」

男「?」

男「どうかした?」

女「別になんでもない」

………

……



女「パジャマかわいいのに…」

女「……テレビ見よう」

  
1時間後

女「眠たい…」

男「じゃあ寝室行くか?」

女「うん…」

……



寝室

女「…………」

女「…………」

女「眠いからあんまり聞きたくないんだけど…」

男「はい」

女「なんでそんな部屋の隅にいるのよ」

男「添い寝禁止って言ったから…」

女「…………」

  
女「…………」

女「なんで襲わないの?」

男「……襲ってもいいんですか」

女「だめ」

男「…………」

男「やっぱりまずは親睦を深めてから…」

女「……はぁ」

女「あとなんで私がだめって言うだけで言うこと聞くわけ?」

男「(……なるべく嘘はつきたくないけど)」

男「好きだから」

女「なんなのよそれ」

女「恋人にでもなりたいの?」

男「…………そういう感じです」

女「誘拐なんてしたら一生恋人になれないわよ」

  
女「じゃあ私寝るから」

男「うん。おやすみ」

女「……」

女「…はぁ」

女「おやすみ」

男「まさか一回で返してくれるとは」スリスリ

女「だからスリスリすんな…!!」グイッ

男「寝た振りしてたときは許してくれたのに」

女「!」

女「あ、あれ寝た振りだったのか!」

女「ぜったい許さない…!」ポカポカ

男「…………パジャマ今日もかわいいな」

女「も、もう褒めても遅いっ」

  


女「……」

女「……」ゴシゴシ

女「(結局あいつ床で寝たのね)」

女「(下降りよう…)」

……



女「パン焼きたい…」ガサゴソ

チーン

女「……」ヌリヌリ

女「……」ヌリヌリ

女「いただき」モグモグ

女「……ジャムおいしい」モグモグ

女「……ていうかあいつまだ寝てるんだ。脱出しようかしら」

  
女「次って何時間放置だっけ…」モグモグ

女「……えーっと」

女「4時間か」

女「今から4時間後は…」

女「もうお昼ね」

女「……うーん」

女「……」

女「漫画の続き読みたいし…」

女「今はやめとこう」

女「……」モグモグ

  
30分後

男「…おはよう」

女「遅かったわね」ペラ

男「今日も夜遅くまで電話してて…」

女「ふーん」ペラ

………

……



男「もう3日目だ」

女「そうね」ペラ

男「今日のうちに仲良くならないと…」

女「まだ言ってたの?」ペラ

女「(警察なんて来ないのに…)」

男「だから今日はデートしに行こう」

  
女「…デート?」ペラ

男「そう」

女「何言ってんのよきもちわr」

女「!!」

女「そ、それって外…?」

男「もちろん」

女「……それなら行きたい」

男「やっぱり外出たかったか」

女「ったりまえじゃない!」

女「あんたが監禁してたんだから!」ニコッ

女「それに外ならいくらでも逃げ切れそうな気がするし!」

男「……そうか」

男「じゃあ着替えてきてくれる?」

女「うんっ!」

  


女「ふふ」

男「うれしそうだな」

女「久しぶりの外出だし」

女「それにこの服かわいいもん」

男「それはよかった」

女「あのアイス食べたい」

女「買ってきてよ」

男「一緒に行こう」

女「やだ。待ってる」

男「……ここで逃げようとしても家帰ったら罰あるよ?」

女「ちっ」

女「しょうがないから一緒に行ってあげる」

  
……



女「おいしい」

男「こっちもおいしい」

女「そのアイスちょうだい」

男「はい」

女「いただき」ガブ

男「えっ」

女「……んー」

男「全部なくなったけど」

女「おいひい」

男「…………」

女「ずっと気になってたんだけど」

女「あの家って住所どこなの?」

  
男「さらった場所と都道府県は一緒」

女「ふーん」

女「この辺の景色まったく見たことない…」

男「そうか」

女「うん…」


幼女「ママーこっちこっち!」

母「(あんなに走って…)」

母「こけないようにね」

幼女「はーい!」

父「今日はどこ行こうか」

幼女「ゆーえんち行く!」



女「………………」

  
女「………………」


少年「あ、あのさ…」

少女「ん?」

少年「手つないでいい?」

少女「……うん、いいよ」

少年「っしゃ!」



女「(あの2人は中学生くらいかしら…)」

女「………………」

男「とりあえず駅向かおうか」

女「うん…」

………

……


  
20分後 駅周辺

女「(あ、交番だ…)」スタスタ

男「ここの駅名くらいは知ってる?」スタスタ

女「(気づいてないのかしら)」

男「女さん?」

女「え、えぇ。名前くらいは知ってるわよ」

女「………………」

女「ちょっと話したいことあるんだけど」

男「?」

男「ここでいいなら聞くよ」

女「うん…」

女「…………」

女「警察とかきっと来ないわよ」

  
男「…俺の家にってこと?」

女「そうよ」

女「私学校もずっと行ってないし」

女「いま家族が住んでる家もどこにあるか知らない」

男「…………」

女「あんたは何も知らずに私を誘拐したわけ?」

男「…………」

女「……私今までネットで知り合った人の家に泊めてもらったりしてたの」

男「そうなんだ」

女「……」

男「……」

女「何も聞かないの?」

男「これより先は家で聞きたいと思って」

男「(それに俺も言わないといけないことあるし…)」

  
女「(泣きそうなの察してくれたのかしら…)」

男「次はどこ行く?」

女「……じゃあ遊園地行きたい!」

男「よし」



女「私行くの初めてよ」

男「そうなのか」

女「……」

女「一度行ってみたかったからすごい…」

男「?」

男「すごい…なに?」

女「…楽しみなの」

……


  
遊園地

男「も、もうやめよう…」

男「ゲロる」

女「情けないわねー」

男「ちょっと休憩」

女「私まだ乗り足りないのに!」

男「ちょっとでいいから…」

女「じゃあ私一人で乗ってくる!」

男「はい…」

  
絶叫系マシン乗り場

女「(……15分待ちか)」

女「(これならすぐ乗れそう)」

女「(あいつ今トイレ入ってった…)」

女「(どんだけ苦手なのよ)」

女「(情けないわね)」

女「…………」

女「(あ、ここって入退場ゲートに近いんだ)」

女「(あいつはトイレに行ってるし、切符代のお釣りもある…)」

女「(チャンス…!)」

女「…………」キョロキョロ

女「!!」

女「……」スタスタ

女「……」スタスタ

  
ベンチ

男「はぁ…」

男「(絶叫こんなに苦手だったのか…)」

男「(女さんはどのアトラクションに乗りに行ったんだ?)」

男「……」キョロキョロ

男「……」カチカチ

男「……」

男「(とりあえず待つか…)」

男「……」

男「……」

………

……


  
元カレ「!!」

元カレ「(あ、あいつはもしかして…)」

元カレ「…………」

元カレ「…………」

元カレ「(こんなところで会うとはな…)」



10分後 ベンチ

女「わっ!」

男「!!」

女「びっくりした?」

男「女さんか…」

女「ふふ」

男「しかもネコ耳つけてるし」

女「かわいい?」

  
男「もちろん」

女「これ貸してあげようか?」

男「平気。女さんがつけてた方がかわいいよ」

女「ふふ」

男「……今はどれに乗ってきたんだ?」

女「乗ってないわよ」

女「待ってる間にいろいろ眺めてたらお店見つけたから買っちゃった」

男「お金あったのか?」

女「切符代のお釣りで買えたわよ」

男「そういや渡してたな」

………

……


  
3時間後 家

女「つかれた」

女「お腹空いた」

男「そうだな」

男「今日は出前にするか」

女「やった」

男「何にしたい?」

女「お寿司」

男「……了解」



30分後

女「わぁ…」ドキドキ

男「うまそうだな」

女「うんっ!」

  
女「いただきます」

男「いただきます」

……



女「おいしい」モグ

男「うん」モグ

女「!?」

女「……!」バタバタ

男「ん?」

女「かっ…かやぁい…!」バタバタ

男「あぁワサビか」

女「んー!」バシバシ

男「いたっ」

男「叩かないで」

  
1時間後

女「ごちそうさま」

男「ごちそうさま」



男「どうする?」

男「お風呂入る?」

女「そうしようかしら」

男「じゃあ俺も入る」

女「ぜったいやだ」

女「……もし入ってきたら熱湯かける」

男「……」

女「わかってるの?」

男「我慢すればなんとか…」

女「冗談でもそんなこと言わないでよ」

  
お風呂

女「……こういう約束は守るのよね」

女「……」

女「信頼してもいいのかしら」

女「……」

女「……」

女「どうせ駅で言うつもりだったんだし…」

女「ちゃんと言おう」

女「それに見放されたらまた元に戻るだけ」

女「でもどこにも戻るところなんて…」

女「……」

………

……


  
男「あがったか」

女「えぇ」

男「じゃあ俺も入ってくる」



30分後

女「えーなんでうまく曲がれないの!」ピコ

男「……」

女「だからなんでアイテムとアイテムの間通り抜けるのよ!」ピコ

男「……」

女「また8位になっちゃったじゃない…」

男「あがったよ女さん」

女「!」ビクッ

女「い、いたのね…」

  
男「女さんってゲームするとき声出すタイプなんだな」

女「……だいっきらい」

女「勝手に聞かないでよ」

男「リビングでやってたら聞こえるよそりゃ」

女「……」

女「レースゲーム初めてなんだから別にいいじゃない…」

………

……



1時間後

女「寝室行きたい」

男「眠たくなった?」

女「うん…」

男「じゃあ俺も行くよ」

  
寝室

女「駅でできなかった話…」

女「……今していい?」

男「もちろん」

男「その後で俺も話す」

女「わかった…」

………

……



女「私…」

女「中1の7月から学校行ってないの」

男「……」

女「家族が夜逃げしたから。私を残して」

男「……」

  
女「それからネットで知り合った人の家に泊まるようになったの」

女「最初はオフ会にまぎれて…」

女「そこで知り合った人のところに泊めてもらってた」

男「……そうか」

男「ただで泊めてもらってたのか?」

女「……」

女「一人目は…」

女「簡単に事情話して」

女「家事手伝いして1週間くらい泊めてもらった」

女「でもずっと家事手伝いでやってきたわけじゃなくて…」

男「……」

女「……」

  
女「途中からは愚痴聞き屋みたいなのやってた」

男「……名前の通りか」

女「掲示板に書き込んで返答があったら行くって感じね」

女「その時私がいる漫画喫茶とかまで迎えに来てくれることと最低2泊を条件にして」

男「じゃあ基本2泊がメインなのか」

女「ううん。一番多かったのは4日か5日くらいよ」

男「(思ってたより長いな…)」

女「そこで愚痴を聞いてる間は衣食住の保障をしてもらってたの」

女「……たまにお金くれる人もいたから」

女「人が途切れた時はそのお金使って漫画喫茶で過ごしてたわね」

男「漫画喫茶に戻るなら毎回人は途切れるんじゃないのか?」

女「……家のパソコン使わせてくれる人もいたから」

女「泊まってる間に次の人を募集して…みたいな」

  
男「誕生日聞いていい?」

女「……5月26日」

男「(ってことは愚痴聞き屋スタートが13歳で今が1月だから…)」

男「もう一年半くらいはこんな生活か…」

女「うん」

女「家に行ったのは100回くらいで…」

女「人数は80人くらいかしら。リピーターもいたし」

男「なるほど」

男「……そのうち何割が同性?」

女「9割は同性よ」

  
男「残り1割は…」

女「オネエよ」

男「!」

女「さすがに困ってても男の家には行きたくないわ」

男「…………」

女「なに?」

女「もしかして安心したの?」

男「…まぁ一応」

女「でも襲われかけたことあるわよ」

男「!!」

女「同性愛に目覚めかけた女の人に…」

女「ちょっと怖かったわ」

女「泣いたら謝ってくれてそこからは大丈夫だったけど」

男「……」

  
男「他にも危ない愚痴とか相談とかあったんじゃないのか?」

女「そうね…」

女「基本的には人間関係だったりするけど金銭面の愚痴も多かったわよ」

女「まぁそれでも何日も泊めてもらうから悩みという悩みをぶちまけられるわ」

男「よく聞き続けられたな」

女「…………私だって聞きたくてしてたわけじゃないわよ」

男「そうだな。ごめん」ギュッ

女「……抱きつかないでよ」グイッ

男「……」

女「でも中には優しい人もいてね」

女「さっきのお金もそうだけど服とかもらったり…」

女「あんたに誘拐された日に行くはずだった人は前に靴プレゼントしてくれたのよ」

男「……そっか」

女「きっと約束破られたって嘆いてるわよ。あんたのせいで」

  
男「すいません」

女「……そういえばあの人には私がよく愚痴を聞いてもらったわね」

男「そうなんだ」

女「初めて言う側に回って楽しさがわかったわ」

女「……ただ私なら家出少女を家に呼んでまで話す気にはならないわね」

男「俺は女さんになら家に呼んでまで話したいけど」

女「あんたのは呼ぶじゃなくて連れ去るなの。わかる?」

男「…はい」

女「まったくもう…」

男「あと聞きたかったんだけど」

男「愚痴聞き屋で何を得られたと思う?」

女「…………適応力?」

男「きっと合ってる」

女「そうかしら」

  
男「他にも聞きたいな」

女「……」

男「好きな男のタイプとかは…」

女「誘拐しない人」

男「うぅ…」

女「あとすぐ落ち込まない人」

男「……」

女「冗談よ」

女「……ていうかカバンの中の手帳とか見てなかったんだ」

男「?」

男「手帳とかあったのは見たけど…」

  
女「……その手帳の内容見たらわかるようなことも聞いてたから驚いたのよ」

男「だって女の子の手帳勝手に見るなんて好感度下がりそうなことできないし…」

女「久々にバカみたいな返答ね」

女「誘拐したんだから好感度なんて一生最低値よ」

女「でも逆に安心できるかもね。もう何しても下がらないわよ」

男「……かなしい」グスッ

女「きもちわるっ、なに泣いてんのよ」

男「嘘泣きです」

女「なにそれ。バッカじゃないの…?」

女「ねぇ…ほんとに」

女「…………」グスッ

女「……ねぇ泣かないでよ」

女「な、なんであんたが泣いてんのよばかぁ…」ポロポロ

  
男「!!」

女「せっかぐっ……ながないようにしてたのに…」グスッ

男「あ、あれは笑わせるためのボケというか…」

女「それくらいわかってるわよ…!」

女「だから…ちゃんとツッコんだのに…!」ポロポロ

女「でもっ…いろんなことおもいだして…」

男「…………」

女「ううっ…」グスッ

女「うああああぁぁああぁぁん!!!」

………

……


  
20分後

女「……」ゴシゴシ

男「……」

女「……正直ね」

男「?」

女「駅の近くで交番見つけた時とか…」

女「遊園地とかで一人になったときに」

女「まだちょっとだけ逃げることとかも考えてたの」

男「うん」

女「でもすぐにどうでもよくなって…」

女「前の生活に戻りたくないからって思ってたけど違うの」

女「居心地がいいの」

男「…………」

  
女「さっきあんたがお風呂入ってる時なんて逃げること一切考えてなかった」

女「その自分にびっくりしたくらいよ」

男「そうか」

女「…………」

女「…ねぇ」

男「?」

女「聞いていい?」

男「うん」

  
女「私…」

女「何もできないの」

女「料理も失敗するし」

女「ゲームもうまくないし」

女「働いたこともないし」

女「勉強できないし」

女「ワガママだし」

女「本破くし」

女「言い方キツイし」

女「お風呂も一緒に入るのイヤって言うし」

女「……愚痴聞くのが少しできるくらい」

女「ねぇ」

女「私ってここにいてもいいの?」

  
男「女さんがそう言ってくれるならもちろんいてほしい」

女「そっか…」

男「…………」

女「じゃああんたの話も聞いてあげようか…?」

男「…その話は明日にしよう」

女「ふーん。まぁ私はどっちでもいいけど」

男「今すごい眠いでしょ?」

女「……よくわかったわね」

男「さっきからうとうとしてたから」

女「……」

女「うん…」

男「じゃあ寝ようか」

女「また床で寝るの?」

女「……ベッド入る?」

  
男「いいのか?」

女「入るだけなら」

男「…うれしい」モゾモゾ

女「じゃあ寝る」

男「はい」

女「…………」zzz

男「…………」

男「(これって抱きついてもいい流れなのか…)」

男「(さっぱりわからん。どうなんだ)」

女「(抱きつくくらいなら別にいいのに…)」

男「……」

男「……」

男「おやすみ」

男「(今のうちに俺の話をしなくても……別に大丈夫だよな?)」

  


男「……」zzz

女「……」zzz

ピンポンピンポーン

男「ん…」

男「なんだこんな朝早くから…」

女「…………」ゴシゴシ

男「女さんまで起きちゃったか」

ピンポンピンポーン

ドンドンドン!!!

女「!」ビクッ

女「(もしかして…!)」

男「な、なんだよ…」

男「とりあえず出ないと」

  
女「…ど、どこ行くのよ」

男「呼んでるんだから行かないと」

女「いいじゃない別にでなくても…」

男「そんなわけには…」

ドンドンドン!!!

女「!」ビクッ

男「…………」

男「女さんはここにいてもいいから」

女「やだやだっ…」

女「行かないで…!」ギュッ

女「きっと警察が来ちゃったんだ…」

女「どうしよう…」ポロポロ

男「大丈夫。どうにかするから」

女「で、でも…」グスッ

  
男「…そうだ」

男「スマホで玄関確認できるから見てみよう」

女「…う、うん」

男「…………」カチリ

男「!」
女「!」

男「姉ちゃん!」
女「お姉ちゃん!」

女「え?」

………

……



リビング

姉「元気?」

  
男「来るの今日の昼じゃなかったのか」

姉「待ちきれなくてさ」

男「女さん。紹介するよ」

男「こちら遠い遠い親戚の姉ちゃん」

男「ってまぁ顔は知ってるか」

男「愚痴も聞いてた相手なんだし」

姉「そうね。女ちゃん久しぶり」

女「……」

姉「親戚で私が年上だから男君には姉ちゃんって呼ばせてるのよ」

女「……」

姉「女ちゃんも私のことお姉ちゃんって呼んでくれるもんね」

女「(……なんで)」

姉「んーツンツンしてるなぁ」ギュッ

女「(なんでこいつとお姉ちゃんが…)」グイッ

  
女「お姉ちゃん」

姉「ん?」

女「ど、どういうことなの?」

女「こいつと知り合いだったってことは…」

女「お姉ちゃんもグルなの…?」

姉「……男君」

男「はい」

姉「どこまで話してるの?」

男「ほとんど話してない…」

男「昨日の夜言うつもりだったんだけど」

男「遊園地ではしゃぎすぎて疲れてたから」

姉「そうなの」

姉「じゃあ今から説明しないとね」

女「…………」

  
半年前 姉宅 昼

女「おじゃまします」

姉「座ってゆっくりしてて」

女「はーい」

姉「ほんとに女ちゃんかわいいね」

女「ありがとうございます」

姉「コーヒーは飲める?」

女「苦くなければ…」

姉「じゃあとびきり甘くしてあげる」

女「はい」ニコッ

………

……



30分後

  
姉「そういえばだけど…」

姉「あなたから愚痴を聞いたりはしないんだ」

女「はい。お客さんが話してくれるまで無理に聞くことはしません」

姉「……ふーん」

姉「そういうのって誰かから教えてもらってるの?」

女「…………」

女「独学というか…」

女「今までの経験でやっているだけですよ」

姉「そっか」

姉「知りたくなっちゃった。あなたのこと」

女「…………」

女「(またこのパターン…)」

女「(愚痴聞くんじゃなくて私の話を聞きたがるタイプね)」

女「(私がこんな生活の仕方してるんだから事情とか気になるのもわかるけど…)」

  
女「(興味本位で聞いてきて適当に同情して…)」

女「…………」

姉「どうしたの?」

姉「深刻そうな顔しちゃって」

女「!」

女「いえ、なんでもないです」

女「ただ少しトイレをお借りしたくて…」

姉「あぁそうだったの」

姉「玄関の近くにあったのわかるかな?」

女「はい。ありがとうございます」スタスタ

女「…………」

女「(顔に出すなんてダメね…)」

女「(それに文句言える立場でもないし)」

女「(家に入れてくれただけでも感謝しないと)」

  
17時間後

姉「それでその後どうなったの?」

女「その後は…」

女「えーっと」

女「古着とかもらったり…」

女「同棲しようとか言ってもらったり…」

女「……」

姉「もしかして眠い?」

女「……す、少しだけ」

女「(なんなのよこの人)」

女「(どれだけ質問してくるのよ)」

女「(すごい眠たい…)」

姉「うとうとしてるのもかわいいよ」

女「どうもです…」

  
姉「じゃあ寝てもいいけど…」

女「あ、ありがとうございます」

姉「私の事お姉ちゃんって呼んでよ」

女「うーん…」zzz

姉「はやくー」

女「お、お姉ちゃん」

女「寝てもいいですか…」

姉「うんうん」

姉「じゃあ一緒に寝よっか」スリスリ

女「(……すりすりしないでよもう)」

女「…………」zzz

………

……


  
翌日 夜

姉「そうなのよ!」

姉「宝くじ当たったのに一銭も分けてくれないのよ!」

女「そうなんですか」

女「その人いくら当たったんですかね」

姉「10億2円」

女「!!」

姉「びっくりよね」

姉「もう3年も前の話だけど」

女「そうなんですか…」

姉「まぁ今は7割くらいしか残ってないけどね」

女「(やっぱあると使っちゃうのかしら)」

姉「…遠い親戚だけどすごい心配してさ」

  
姉「当たったことは自分の家族にしか言わなかったらしいんだけど」

姉「その家族もあまりの金額の多さにおかしくなったみたいで…」

姉「その時私の家族にまで宝くじが当たった話が噂で伝わったの」

女「…………」

姉「当時通ってた大学も途中で行けなくなって辞めてさ…」

姉「その後すぐに実家から逃げてきたんだって」

女「(家から逃げたんだ…)」

女「(私とは逆だ…)」

姉「どうしても一人になりたくて家族にある程度渡したって言ってた」

姉「具体的な金額は教えてもらってないけど相当渡したんじゃないかな」

姉「それから家族とは絶縁済ませてるはず」

女「…………」

女「お金怖いですね…」

姉「そうね」

  
女「お姉ちゃんはそこからまだその人のお金取ろうとしてるんですか…?」

姉「あれは冗談よ。今は男君とよく遊んでる」

女「よかったです。悪い人じゃなくて」

姉「ありがとう」

姉「最初は家飛び出したって聞いてすぐにメールしたんだけど返ってこなくてさ」

姉「当たり前だけどね。いきなり遠い親戚から電話きたらまた取られるって思うだろうし」

姉「……親戚で集まったときはよく遊んでたから少し悲しかったけどね」

姉「わざわざ何度も連絡すると良くないから待ってたら」

姉「一ヵ月後くらいに電話きて話聞いてほしいって言われて」

姉「そっからずっと仲良くしてるんだ」

女「そうなんですか。お姉ちゃん優しいです」

姉「……じゃあ次は女ちゃんの話聞こうかな」

女「ま、またですか…」

  
10時間後

女「……お姉ちゃん」

姉「ん?」

女「も、もう朝です…」ゴシゴシ

姉「そうね」

女「……そろそろ眠いです」

姉「私は聞きたりないけど…」

女「少し仮眠を…」

女「ください…」zzz

姉「寝ちゃった」

姉「…………」

姉「…………」

姉「こんなにすごい苦労してるの知ったからか…」

姉「私のつまんない愚痴なんて聞かせたくなくなっちゃった…」ギュッ

  
4ヵ月後

女「また呼んでくださってうれしいです」

姉「リピーターになっちゃうねこれは」

女「どうもです」

女「(前の時は私がずっと喋ってたのに二回目呼んでくれるなんて…)」

女「(百合さんの時みたいにまた襲われちゃうのかしら)」

女「…………」

女「(そういう感じには見えないけど…)」

……



1時間後

姉「二回目なんだしさ」

姉「敬語やめて普通に話してくれない?」

女「……そんな失礼なことできませんよ」

  
姉「別に失礼じゃないよ」

姉「友達って思えば年齢も関係ないしさ」

女「そうですか…?」

女「一回り以上離れてるのに?」

姉「!」

姉「言ったな!」

女「ふふ」

女「楽しい」

女「お姉ちゃんみたいな人初めて」

姉「よしよし」

姉「じゃあまた愚痴聞いてあげるよ」

女「…いいの?」

姉「うん。たまにはこういうタイプの人と当たってもいいでしょ」

女「お姉ちゃんがいいなら…」

  
………

……



2時間後

女「最後は土下座してきたのよ」

姉「すごいね。その人」

女「でも急に距離詰められた時はほんとにびっくりした」

姉「…逃げ切れてよかったね」

女「ほんとよ」

女「…ちゃんと貞操くらいは守っておきたいし」

姉「しっかりした考え持ってるんだ」

姉「えらいえらい」

女「いろんな愚痴聞いてたらよくわかったのよ」

女「適当に捨てるのがどれだけ勿体ないか」

  
2時間後

姉「最近は順調なの?」

女「…………」

女「あんまりかしら」

姉「…そうなんだ」

女「募集はかかりにくくなってるし…」

女「そろそろ異性も解禁しないとダメなのかしら」

女「……さっき身体大事にしたいって言ったのにおかしいよね」

姉「…………」

姉「私ならずっと養えるから一緒に…」

女「できないわよ」

女「そんな迷惑かけられない」

姉「……」

女「それにずっと一緒に住むならやっぱり男の人がいいし」

  
女「結婚して子供産んで…」

女「今度はちゃんと家族皆で幸せになるの」

姉「……うん」ギュッ

女「……」

女「恥ずかしい」グイッ

姉「あらら。振られちゃった」

女「…だって結婚したいし」

姉「まぁそりゃね」

姉「どんな人がいいの?」

女「…うーん」

女「お金持ちで」

女「私の事が好きで」

女「行ったことない場所連れてってくれて」

女「好きなもの買ってくれて」

  
女「年上で」

姉「なかなか細かいね」

女「…………一人になってからいろいろ考えてたのよ」

女「んで最後はやっぱり運命の出会いってのがいいわね」

女「刺激的な方が好きなのかしら。ベタだけど」

姉「…そっか」

姉「運命とかに憧れるのは私も同じ」

女「ふーん。アラサーも同じなのね」

姉「!」

姉「…………」ポロポロ

女「な、泣いてる…」

姉「だってまだ20代なのに…」グスッ

……


  
2時間後 靴屋

女「ほんとにいいの…?」

姉「もちろん」

女「ありがとう…」

女「この靴大切にする!」

姉「そうしてくれると助かるよ」

………

……



翌日

ピリリリ ガチャ

女「ちょっと男君」

男「どうした姉ちゃん」

女「誘拐してほしい女の子が一人いるんだけど」

  
現在

姉「こんな感じね」

女「ほんとに?」

男「うん。言った通り」

女「なんで誘拐させたのよ」

姉「運命の出会い…」

女「言葉も出ないわね」

女「……あんたお姉ちゃんが昼に来るって言ってたわよね?」

男「そうだな。3日経ったら来るのは知ってた」

女「!」

女「……3日しか時間がないってその話だったのね」

姉「今日見に来て男君に惚れてなかったら…」

姉「私と同棲するために連れて帰るつもりだったんだけど」

女「…………別に惚れてなんかないわよ」

  
姉「でもさっき泣きながら男君にしがみついてた」

女「!」

女「な、なんで知ってるのよ…!」

男「家にカメラ仕掛けてるから」

女「!」

男「俺と姉ちゃんのスマホで見られるようにしてある」

女「…そ、そんなのプライバシーの侵害じゃない!」

女「(いや違う…)」

女「(私誘拐されたのに何言ってるんだ…)」

男「トイレとお風呂には設置してないから安心してよ」

女「……それならいいけど」

姉「女ちゃんゲームしてるとき声出てたね」

女「!」

女「も、もう帰ってよ…!」バシバシ

  
5時間後

男「姉ちゃんやっと帰ったな」

女「…………ねぇ」

女「あんたは私のこと好きじゃなかったってことよね?」

女「お姉ちゃんに命令されて誘拐したんだから」

男「……」

女「……別に気にしてないけど」

男「そんなことない」

男「姉ちゃんよく写真とか見せてくれてたし」

男「かわいい子だとは思ってたよ」

女「……」

女「そういや写真撮ってた気がするわね」

男「……それに一緒に暮らしてて好きになったのも事実だし」

女「…うん」

  
男「姉ちゃんのとこ行きたいか?」

男「さっき帰ったのにメール送ってくれてるし」

姉『帰る前にも言ったけどいつ私の家に来てくれてもいいからね』

姉『男君が結婚相手にふさわしくないってわかったら遠慮せずに私に言ってね』

姉『あと男君が暴走しないようにカメラは常時チェックしておきます』

女「…………」

女「…………」

女「急に言われてもわかんない」

女「結婚できる年でもないし…」

女「……」

女「全部わかんないの」

女「どうすればいいの?」

女「私は二人の好意でここにいるってことでいいの?」

男「そうだな」

  
女「それなら…」

女「ここにいたい」

女「……」

女「……少し」

女「じゃないわね。すっごい乱暴だけど」

女「あんな生活から救ってくれたんだから」

女「感謝してる…」

女「うれしいの…」ポロポロ

女「お姉ちゃんもすっごいすっごい強引だけど…」

女「私のこと助けてくれて…」

女「……」グスッ

女「うぅ…」ギュッ

男「……」

女「……」グイッ

  
男「自分から来たのに突き放すとは」

女「……だって」

女「勢いでいっちゃったけど恥ずかしいし…」

女「それに…」キョロキョロ

男「?」

男「あぁカメラが気になるのか」

女「…うん」

男「切るよ」カチカチ

女「そんな簡単にできるんだ…」

男「こっちのスマホで操作できるし」

男「数分でお姉ちゃんから電話来る気もするけど」

女「…じゃあ数分だけでもいい」

男「うん」

女「ありがとう…」ギュッ

  
夜 寝室

女「ちゃんと説得できたの?」

男「まぁなんとか」

男「カメラいらないくらいこの家が気に入ったって言っておいたから」

女「うん」

女「……」

女「明日はどこ行こうかしら…」

男「また遊園地行きたいか?」

女「それもいいけど…」

女「買い物行きたい」

男「何買いに行きたいんだ?」

女「食材」

女「またカレー作りたい」

女「次は失敗したくないの」

  
男「そうか。わかった」

女「一人で行くからね」

男「大丈夫か?」

女「今までずっと一人だったのよ?」

男「そうだけど…」

男「少し心配で」

女「過保護って良くないの」

男「そう言われると…」

女「じゃあ私もう寝るわよ」

男「わかった」

女「…………また床で寝るの?」

男「入っていいのか?」

女「添い寝だけね」

女「おやすみ」

  
翌日 昼

女「じゃあ行ってきます」

男「うん」

男「気を付けてな」

女「別に買い物くらい平気よ」

女「さっき地図も見たし」

男「あんまりいっぱい買いすぎるなよ」

女「あんたにだけは言われたくない」



10分後 外

元カレ「!!」

元カレ「(やっと出てきたか)」

元カレ「(待ってた甲斐があったぜ…)」

元カレ「(こいつ一人なら楽勝だな…)」

  
30分後

女「(全部買えた)」

女「(ジャガイモとかいっぱい種類あったけど何が正解だったのかしら)」

女「……」

女「……」

女「(そうだ、どうせ外に来たんだから)」

女「(他の店にも行ってみよう)」

女「(雑貨屋さんとかあればいいんだけど…)」

………

……



1時間後 帰路

元カレ「声出したら刺す。車に乗れ」

女「!」

日付変わったのか

  
廃墟

元カレ「もういいぜ」

元カレ「どんだけ叫んでもな」

女「お前…!」

元カレ「んだよ。泣き叫んでもいいってのに」

女「誰がそんなこと…」

元カレ「強がりやがって」

元カレ「…ビデオも用意してんだ」

元カレ「復讐するからにはやっぱヤるだけじゃ物足りねぇからな」

女「!」

元カレ「お前のせいで俺がどれだけ傷ついたか教えてやりたいくらいだ」

女「知らないわよそんなこと」

元カレ「…………俺はあの時から居場所を失ったんだ」

女「なんか語りだした…」

  
元カレ「うっせぇ」

女「……大体あんたに魅力がないからいけないんでしょ」

元カレ「あ?」

女「それに私は百合さんのお話聞いてただけだし」

元カレ「どうせテメーが発情して百合をそそのかしたんだろーが」

女「そんなことしてない」

女「まぁ百合さんには今の彼氏よりあなたの方が好きとは言われたけど」

元カレ「」

女「1週間しか一緒に暮らしてないのに私に負けるなんて相当ダメだったんじゃないの?」

女「というかむしろ襲われかけたのは私なんだから謝ってほしいくらいよ」

女「わかった? 誤解だったんだしはやく家に帰らせてよ」

元カレ「…………よし。とりあえずヤるしかねぇ」

女「思考停止…」

女「あ、そうだ」

  
女「喉乾いたから水持ってきて」

元カレ「んなもんあるか」

女「じゃあ縄痛いから緩めて」

元カレ「縛ってんだから痛いのが当たり前だ」

女「だったらせめてふかふかのイスくらい用意しときなさいよ」

元カレ「用意するわけねーだろ」

女「はぁ…」

元カレ「なに溜息ついてんだ」

女「才能ないのよあんた」

女「誘拐の才能」

元カレ「ある方がおかしい」

女「人さらっておいて接待もできないなんて…」

女「誘拐するならちゃんと誘拐しなさいよ!」

元カレ「(……誘拐された側ってこんな態度デカくていいのか)」

  
元カレ「まぁいいや」

元カレ「最近溜まってるからその解消だけでもしねーとな」

女「!」

元カレ「まずは服脱がすか」

女「や、やだ…」バタバタ

元カレ「……」

元カレ「やっと立場が分かったのか」

女「触んないでっ!」

元カレ「聞くと思ってんのか?」

スレタイここかよwwwww

>>494
女「誘拐するならちゃんと誘拐しなさいよ!」

  
ガッシャーン!!

女「!」

元カレ「!」


男「い、いた!」

男「女さん大丈夫!?」

女「……」

女「……怖かった」グスッ

男「!」

男「ヤったのか」

元カレ「してない」

男「…………よし。童貞捧げるから覚悟しとけよお前」

元カレ「思考停止…」

……


男がホモって設定はどっかで既出だっけか

  
30分後

男「……ふぅ」

男「女さん帰ろうか」

女「うん」

男「怪我がなくてよかった」

女「あんたが来るの早かったからね」

女「来てくれてうれしかった」

男「……女さん素直になったな」

女「いいじゃない」

女「誘拐された後くらい素直になっても」

男「そうだな。常にそうであってほしい」

女「恥ずかしいからやだ」

元カレ「(……ほんとにヤられるのかと思った)」

元カレ「(でもあんな恥ずかしいことされるなんて……もう関わりたくない……)」ピクピク

元カレ何されたしwwww

  
………

……



3時間後 自宅

男「カレーおいしかった」

女「……ほんとに?」

男「もちろん」

女「もうちょっとがんばろう…」

男「少しくらい焦げてても気にしない」

女「……はぁ」

女「ていうか料理してる間にあんたが邪魔してくるからってのもあるのよ?」

男「そんなにイヤだった?」

女「…料理してる間は集中したいの」

  
……



男「女さんのお客さんの元カレに恨まれるなんてな…」

女「ほんとびっくりしたわよ」

男「誘拐なんて許せないなほんとに」

女「………………」ジー

女「……ちょっと聞くの怖いんだけど」

男「?」

女「どうやって私の事見つけたの?」

男「発信機」

女「うわぁ…」

男「……」

女「どこにそんなの付けてたのよ」

女「財布とか?」

  
男「靴」

男「姉ちゃんに付けるように言われてたんだよ」

女「気づかなかった…」

男「お金はあったからな」

男「小さくて性能良いやつ買えた」

女「(だから少し重たいブーツとか推してきたのね…)」

女「お姉ちゃんに感謝しないと」

男「俺には?」

女「……寝室行きたい」

………

……


  
寝室

男「俺には?」

女「うざっ」

女「どんだけ聞くのよ」

男「すみません」

女「……もちろん感謝してるわよ」

女「怖かったんだし…」

男「女さん…」

女「……」

女「これ渡そうと思って買ってたの」ガサゴソ

男「?」

女「あげる」

  
男「な、なに…?」

女「プレゼントでもなんでもないけどね」

女「あんたのお金だし」

女「はい」スッ

男「女さんありがとう!」

女「ただのブレスレットなのに喜びすぎ」

男「だって…」

女「おそろいにしたの」

女「名字も違うのにここに住むんだから」

女「……せめてこれくらいはあんたと一緒にしたかったのよ」

男「!」

男「うれしい…!」ギュッ

女「……」グイッ


住むの?

  
女「なんで抱きつくのよ」

男「かわいいし」ギュッ

女「セクハラよ」グイッ

男「…………」

女「前にね」

男「?」

女「一生恋人になれないって言ったの覚えてる?」

男「あぁ覚えてる」

女「あれ撤回してあげる」

男「!」

女「私が思ってた誘拐じゃなかったし」

男「じゃあもう恋人か!」

女「それは違う」

女「…………あんたのこと好きだけどね」

>>529
何をいまさら

  
男「!!」

男「ま、まじですか」

女「……でもきっと勘違いだと思うの」

女「人質が誘拐犯に惚れるってあるらしいし」

女「何症候群か忘れたけど…」

男「……」

女「だから本気かどうか自分でもわかんないのよ」

女「…どうすればいいの?」

女「好きなのに…」

女「すっごい好きなのに…」

女「この気持ちが嘘だって分かったらきっとあんたを傷つけるとか…」グスッ

女「いろいろ考えちゃって…」

女「…な、なんであんたのことなんか心配してるんだろうね」

女「私おかしくなっちゃったかなぁ…」ポロポロ

そろそろ終わらないと話がダレる気がしてきた

ちょっと今から誘拐してくるわ

  
女「うぅ…」グスッ

男「……」

男「今はそれでも良いと思う」

女「……」

男「後で考え直しても大丈夫だし」

男「明日嫌いになっても家から追い出すとかしないから」

女「うん…」グスッ

男「それに気まずくなったら姉ちゃんのとこ行ってもいいしさ」

女「ありがとう…」

男「いいよお礼なんか」

男「俺が連れてきたんだから」

女「……」ギュッ

女「……」グイッ

男「どうしたいの女さん」

>>550
  
夜 路地

女「(今回のお客さんは3回目ね)」

女「(すぐ抱きつくけどいい人だし…)」

>>550 「…………」スタスタ

女「!!」(逃げ)

>>550 (´・ω・`)

  
女「恥ずかしいの」

女「別にそれだけよ」

男「かわいい…」

女「……」

女「私もう寝たい」

男「わかった。俺も寝るよ」

女「…おそろいのブレスレット大切にしてよね」

男「もちろん」

男「今日から宝物だ」

女「うれしい…」

………

……


  
30分後

男「……」zzz

女「……」

女「……なんだか緊張するわね」ドキドキ

女「……」

女「起きないでよ」

女「……」カプッ

  
女「も、もうちょっとだけ…」ペロ

女「……」

女「キスしてもいいよね?」

女「…………よし。頷いた気がする」

女「……」

女「んっ…」ピトッ

女「…………」

女「……ぷはっ」

女「ど、どうしよう」

女「ほんとにしちゃった…」

女「……」

女「……」

女「……だいすき」

女「おやすみ」スリスリ

  
1ヵ月後 姉宅

女「それが起きてたのよ!」

姉「……そ、そうなんだ」

女「せっかく内緒でやってたのに…」

姉「うんうん」

姉「でも私そろそろ眠たく…」

女「次の日も大変でね!」

女「すぐ抱きついてくるしキスしようとするし…」

女「ほんっと困るのよ!」

姉「(そんなキラキラした笑顔で言われても…)」

姉「あ、あのそろそろ仮眠を…」

女「……」

女「……しょうがないわね」

姉「(た、助かった…)」zzz

  
翌日 自宅

女「ただいま!」

男「あ、女さんおかえり」

男「姉ちゃん家はどうだった?」

女「楽しかったけど」

女「お姉ちゃんすぐ寝ちゃうし…」

男「(姉ちゃんお疲れ様)」

女「それに私この家に早く帰ってきたかったの!」

男「服も漫画もゲームもあるしな」

女「……ふん。違うわよ」

男「?」

女「あんたがいるからに決まってるじゃない!」ニコッ



終わり


ランク付けと冷静っ子に告白する奴と新聞勧誘が同じなんか?

>>601
亀ですがその3つは書きました

>>613
他にナニ書いたかゲロっちまいなよ

>>615
>>601以外だと
女「私と一緒にいたら不幸になるよ」
女「はやく今月分の恋人料金払って」
くらいです。スレチすみません

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