来夏「喜翆荘?」緒花「合唱時々バドミントン部?」(118)

田中「まさか本当に白祭の打ち上げが旅行になるなんてな」

ウィーン「僕は楽しみだよ大智。早く風呂上がりのコーヒー牛乳というのを飲んでみたいなぁ」

田中「ウィーン、お前また違う本読んでないか……?」


来夏「旅館までもうすぐかな~~」

紗羽「もう来夏、それさっきから何回目よ」

和奏「ふふ、楽しみだね」

過去回想


ガサゴソガサゴソ

紗羽「ん? お母さん、この宿泊券なに?」

志保「あぁ、それなんだっけ。確か商店街の福引の景品か何かだったかな~~」

紗羽「へぇ……」

志保「結局使わなかったから安値で貰ったんだったか」

紗羽「えーと、うわ、丁度五人まで大丈夫だ」

志保「どうしたの……?」

紗羽「お母さん、これ欲しかったり!!」

紗羽「でもさ、よく和奏のお父さんオッケーしてくれたよね」

和奏「これでも結構大変だったんだよ。男子もいるって言ったらついて来るって言うし」

来夏「アハハ、そういえば紗羽のお父さんも似たようなこと言ってたよ」

紗羽「あのオヤジ……」


ウィーン「大智、今のはどういう意味なんだい?」

田中「別に何でもない。お、そろそろ旅館に到着みたいだな」


来夏「おぉぉ!! ここが『喜翆荘』かーー!!」

緒花「ようこそ喜翆荘へ!!」

菜子「ようこそいらっしゃいました。お荷物をお預かりします」


来夏「お、おおお、お願いします」

紗羽「なに緊張してんのよ」

来夏「だ、だって同じ年ぐらいの人達なのに凄い落ち着いてるから」


緒花「えーー? そんなことないですよ~~」

田中(なんだコイツ……)


ウィーン「わーー、これが旅館かぁ、これは触っていいのかなぁ」キョロキョロ

和奏「ウィーン、見るのはチェックインしてからにしよ」

来夏「いやーー、ここはいい所だね~~」

紗羽「荷物を置いたらこの辺りをちょっと散策してみよっか」

和奏「ん? あ、これが紗羽のお母さんが持ってた宿泊券?」

紗羽「そうそう、そうだよ」

来夏「またお礼言いに行こうよ和奏。宿泊費が無料だからこうして旅行来れたんだもん」


和奏「…………」


紗羽「和奏……?」


和奏「……これ、期限切れてる」


紗羽「えっ……」

来夏「えっ……」

来夏「す、すすす、すみません」

縁「はい、何でしょう」

紗羽「これって、まだ使えますか……?」

縁「えーと、少々お待ち下さい」




縁「これは……確か……」

巴「何ですそれ?」

縁「あーー!! 思い出した!!」

縁「これ何年か前に崇子さんに頼んで売ってもらった宿泊券だ!!」

巴「あ~~、そんな話ありましたね。でも確かそれ期限付きじゃ……」

縁「もしかして、あの子達……」

田中「まさか来て早々に帰ることになるとはな……」

来夏「そうだ、田中とウィーンには野宿してもらって私達は旅館に」

田中「おい」

ウィーン「僕にはいい思い出になったよ。こうやってみんなと旅が出来て楽しかった」


紗羽「みんな、ごめん……」


和奏「紗羽が謝ることないよ。みんな旅行出来るって浮かれて確認しなかったんだから」

来夏「そうだよ紗羽!! みんな悪いんだ!! さぁ、帰ろう!!」


縁「ちょっとちょっと、まぁ落ち着きなよ」

紗羽「喜翆荘の若旦那さん……?」

縁「君達、ここで働いてみる気ない?」

和奏「どういうことですか……?」

縁「前にも似たような事があってね。お金を払えないお客をここで働いてもらってるんだよ」

紗羽「泊めてもらえるなら助かりますけど、なんで私達を?」

縁「ちょっと最近忙しくて人手が足りないんだ。毎回協会に増員を頼むワケにもいかないしね」

田中「俺達、旅館で働いたことなんかないですけど」

縁「あーー、それは別に大丈夫だよ。掃除や雑用だけやってもらうから」

来夏「仲居さん!! 仲居さんやってみたいーー!!」

紗羽「ちょ、ちょっと来夏。待ってよ、そんな簡単に」

縁「もちろんご飯も出すし、お客さんとして今の部屋を使ってくれて構わない」

ウィーン「こんな経験出来るなんて……メモ帳足りるかな……」

縁「まぁその分、朝から晩まで働いてもらうけどね。どうだい?」

和奏「えっと……」

来夏「私達は……」

縁「ということで、彼等には予定の二泊の間だけウチで働いてもらうことになった」

次郎丸「えーー、そんなのアリなのかい、ちゃんと宿泊代貰ったほうが」

徹「お前が言うな」


縁「接客はさせないし、掃除と雑用だけやってもらうことになるけどね」

巴「五人も増えるなら、それは確かに助かりますけど」

縁「明後日のイベントで忙しくなるから丁度人手が欲しかったんだ」


蓮二「まぁ、いいんじゃないのか。夜更けにこんな若い連中を放り出すのも考えものだしな」

電六「そうですねぇ」


縁「とりあえず、軽く自己紹介してもらおうか」

来夏「み、宮本来夏です!! が、ががが、頑張ります!!」

紗羽「沖田紗羽です。えーと、趣味は乗馬です」

和奏「坂井和奏です。よろしくお願いします」

田中「田中大智です。バドミントンやってます」

ウィーン「前田敦博です。みんな僕のことはウィーンって呼んでくれます」


喜翆荘メンバー(……ウィーン……?)


緒花「私は松前緒花!! 一緒にぼんぼろうね!!」


白高メンバー(……ぼんぼろう……?)

田中「ふぅ、喜翆荘って結構広いんだな」

ウィーン「大智、日本ではこの雑巾がけでレースをするんじゃないの?」

田中「や、やらねえよ……」

田中(……小学生のときはよくやったけどな……)


来夏「あ、田中、ウィーン」

田中「おう、お前らはゴミ捨てか」

来夏「ちゃんとやってるのかーー?」

田中「お前に言われたくねえよ、どっかでサボってたんじゃないのか」

来夏「なにをーーーー!!」

ウィーン「その格好……」

和奏「え、なに、変?」

ウィーン「ううん、とても良く似合ってる。本物の仲居さんみたいだ」

紗羽「…………」

田中「沖田……?」

紗羽「みんな、本当にごめんね」

田中「まだ気にしてんのかよ」

紗羽「だって……!!」

田中「俺は、むしろ期限切れててよかったと思ってるけどな」

紗羽「え……?」

来夏「だって、だからこんな仲居さんの格好も出来たからね!!」

ウィーン「旅館で働くなんて、そう出来ることじゃないよね。ありがとう紗羽」

和奏「私も、またみんなで同じことを頑張れるのって、嬉しいかな」

紗羽「みんな……」

来夏「紗羽、もう謝ったりなんてしたらダメだからね!!」




巴(……な、なにあれーー!! 甘酸っぱい青春~~~~!!)

菜子「と、巴さん。柱から覗いて何で号泣してるんですか」

和奏「これも、捨てていいのかな」

??「触るな!!!!」

和奏「っ!?」

民子「あ……いや……」

和奏「ご、ごめんなさい……」

民子「それは私の仕事だから、やらなくていい」

和奏「…………」


徹「おい民子!! なんだこれは!? こんなものをお客様に出す気か!?」

民子「す、すみません徹さん!!」


和奏「…………」

来夏「つ、鶴来さん怖かった……」

紗羽「緒花ちゃんや菜子ちゃんとはすぐ仲良くなれたけど、鶴来さんは難しいかも……」

和奏「あの人……」

紗羽「あっ、お母さ……じゃなくて巴さん」

巴「お母さん……」

紗羽「す、すみません。巴さんの声がお母さんにとても似てるので、その……」

巴「へ、へぇ~~、そっちの私は結婚して子供いるのか……」

紗羽「????」




巴(……紗羽ちゃんみたいな子供が……)

巴(……わ、私も早く裕人さんや風早くんを見つけないと……)

巴(……このままでは独り身のまま私自身がイッペンシンデミル……!!)

大浴場

緒花「ん~~、今日はみんなお疲れ~~!!」

来夏「はぁ~~、こうやって喜翆荘のお風呂に入ったら疲れも吹っ飛ぶよ~~」

菜子「ふふ、みんなで入るお風呂もいいね」

紗羽「ふぅ……いいお湯……」


来夏「……紗羽~~!!」ぐりぐりぐりぐりぐりぐり

紗羽「ちょ、来夏!? 胸に顔押し付けてぐりぐりヤメレ~~!!」


緒花「な、なな、なにそれーー!? 私もやる!! なこち~~!!」

菜子「お、緒花ちゃん!?」

緒花「おりゃ~~~~!!!!」ぐりぐりぐりぐりぐりぐり

菜子「きゃああああああああああ」


来夏「緒花ちゃんどう? スッキリするでしょ?」

緒花「これはイイことを教えてもらったよ、こなち」

紗羽「はぁはぁ……」 菜子「はぁはぁ……」

来夏「よーし、次は……」

緒花「相手を入れ替えて……」

紗羽「ちょ」 菜子「ひぃ」


民子「なにやってんだか……」

和奏「あはは……。さっきは、ごめんなさい」

民子「ん? あぁ、別に。気にしてないから」

和奏「でも謝りたくて、鶴来さんの迷惑になったなら」

民子「迷惑なんてこと、ないけど」

和奏「でも、鶴来さんが板場で本気で頑張ってるのを見たから……」

民子「本気で……」

和奏「私も本気でやってる事があるから分かる。だから鶴来さんに迷惑かけたくなくて」

民子「もういいから、本当に気にしてないし。……あの時は、私のほうこそ怒鳴ってごめん」

民子「それから、みんちでいい。緒花達はそう呼んでる」

和奏「ありがとう。これからよろしく、みんち」

田中「……沖田?」

紗羽「なんだ、田中じゃん」

田中「何してんだ、そんな所で」

紗羽「うーーん、まぁ、ね」

田中「湯冷めすんぞ。明日も早いし、早く寝ないと……」


紗羽「ほら見てみなよ。――――星が、凄く綺麗」


田中「……ッ」


紗羽「田中?」


田中「あ、あぁ、そうだな。――――綺麗だ……」


紗羽「喜翆荘、やっぱり来てよかった」

田中「沖田は、進路とか決めてるのか?」

紗羽「…………。そう言う田中は?」

田中「俺は、やっぱりバドミントンかな」

紗羽「まぁ、そうだよね。田中は」


田中「もし、もしもの話だけどよ。俺達が同じ大学に行くことになったら、どうなるかな」


紗羽「私達? あーー、私達五人全員が同じ大学なら……」

田中「あっ、いや……」

紗羽「また合唱部作ったり、歌ったり、楽しいかもね」

田中「あ、あぁ、そうだよな」


紗羽「でも、そんなことはないけどね」


田中「沖田……?」

紗羽「なに田中、もしかして踏まれて喜んでるの?」

田中「ち、ちがっ……。そんなことあるワケ……」

紗羽「ふーーん。でも、身体は反応してるじゃん」

田中「あ、あぁぁ……。お、沖田、もう、やめ……」

紗羽「沖田? あれーー? 私、言わなかったかな。紗羽様だって」


田中「紗、羽……さ……ま……」


紗羽「アハッ、アハハハハハハ!!!!」




次郎丸「って僕は何を書いているんだーーーー!!!!」

次郎丸「い、いかんいかん。あんな純粋な若者達をネタにこんなものを……」

次郎丸「僕は官能小説を辞めたんだ。しかし彼等を見ているとネタが……」

次郎丸「えーーと、続きを読みたければ、ワッフルワッフルと……」

次郎丸「よし、これでいい」

田中「ふぅ……。風呂掃除って言ってもこれだけ広いと大変だな」

ウィーン「そうだね。でも、僕達が掃除をすることで喜翆荘が綺麗になるのは嬉しいな」

次郎丸「若者が二人で頑張っている……。うーーん、いいネタが浮かびそうだ……」

田中「次郎丸さん、ちゃんと掃除して下さいよ」

次郎丸「……田中くん、君には失望したよ!!!!」

田中「は……? 何の話っすか?」

次郎丸「考えてもみたまえ。ここは昨夜女風呂だったんだよ?」(ヒソヒソ

田中「そうっすね」

次郎丸「君がよく知るあの女の子達もこの風呂に入ったんだ」(ヒソヒソ

田中「えっ……ぁ……」

次郎丸「数時間前にはここにいたんだ。裸の彼女達が……」(ヒソヒソ

田中「べ、別にそんなの関係ないっすよ」


ウィーン「あれ? 大智、なんで前屈みでデッキブラシかけてるの?」

田中「べ、別に、な、何でもねえよ……」

次郎丸「フッ、あの年頃なら仕方ない。誰だってそうなる、僕だってそうなる」

和奏「えっ……自由時間ですか?」

縁「あぁ、今日のイベントの準備はおかげさまで終わったからね」

紗羽「い、いいんですか?」

縁「せっかく湯乃鷺まで来てくれたのに、何も観光させないワケにはいかないよ」

来夏「わ、若旦那ァァァァ!!!!」ズド

縁「グフッ」


田中「そういえば前から気になってたんだけど、イベントって何するんだ?」

緒花「歌だよ~~!! あ~~あ~~ぁ~~!!」

ウィーン「歌?」

菜子「喜翆荘に有名な合唱団に来てもらって、歌を歌ってもらうらしいです」

田中「合唱って……。こんな所まで来てるのに凄い偶然だな……」

ウィーン「合唱イベント、とても楽しそうだね」

縁「崇子さんの提案でね。お客さも大勢呼んでるし、新聞やテレビも来るんだ」

縁「きっと喜翆荘のいい宣伝になるぞぉぉーー!!」

来夏「いってきまーーす!!」

緒花「いってらっしゃーーい!!」


縁「さてと、僕は合唱団の人達が到着するまで最終チェックをしておこうかな」


崇子「エ、エニシングゥゥーー!! た、大変よ!!!!」


縁「ど、どうしたんだい崇子さん。そんなに慌てて」

崇子「今、合唱団の人から連絡があって……」

縁「えっ……?」


崇子「交通事故で合唱団の人達を乗せたバスが身動き取れなくなってるらしいのよ!!」


縁「そ、そんなぁぁ~~」

紗羽「あっ、私これ見たかったのよ」

田中「ちょ、ちょっと待てよ。俺はこっちが食いたかったんだ」

ウィーン「僕はご当地レンジャーグッズが欲しいなぁ」


和奏「…………」

来夏「和奏……?」

和奏「えっ? なに、来夏」

来夏「さっきから黙ってるから、どうかしたのかなぁ~と思って」

和奏「え、そうかな。みんなと観光楽しいよ」

来夏「それならいいんだけど。もしかして、喜翆荘のこと?」

和奏「そう、かもね。やっぱり私は歌が好きだから、合唱団の歌を聴いてみたいかな」

来夏「私も聴いてみたい!!」

和奏「ふふっ、来夏なら、そう言ってくれるかもって思ってた」

来夏「それに、喜翆荘のみんなと頑張るのって、凄く楽しいよね!!」

縁「と、とにかく合唱団が来るまでの時間を稼がないと」


徹「合唱団はどのくらい遅れそうなんだ?」

民子「連絡ではそこまで遅くはならないみたいですけど」

蓮二「まぁ、どれだけ遅れるにしても、お客を待たせ続けるワケにはいかんだろう」


崇子「何か、前座、余興、何でもいいわ。今から何か用意しないと」


緒花「はーーい!! はいはい!!」

巴「お、緒花ちゃん、どうしたの?」

緒花「お客さんは歌を聴きに来るんですよね。だったら歌しかないでしょう!!」

菜子「う、歌……?」

民子「このバカ緒花は……。それで、誰が歌うのよ。まさかとは思うけど……」


緒花「私達で歌うんだよ!!!!」

田中「はぁ……やっぱりか……」

紗羽「ね、田中。私が言ったとおりでしょ? どうせこうなるって」

ウィーン「気にしないで。イエローが言わなくても僕が提案したよ」


来夏「紗羽……田中……ウィーン……」

和奏「みんな……」


田中「まぁ、俺もこうなるかもって思ってたけどさ」

和奏「あの、私達のことは気にせずに、観光を続けても」

ウィーン「和奏、僕達は仲間だ。仲間はいつも一緒さ」

紗羽「喜翆荘もお客さん大勢来るなら、私達がいたほうが少しは助かるかもしれないしね」

来夏「紗羽~~!!」


和奏「それじゃ……」

来夏「戻ろう!! 喜翆荘へ!!!!」

緒花「なこち~~!! なこちも歌おうよ~~!!」

菜子「む、むむむ、無理だよ~~。ギー太もいないし……」


縁「お、緒花ちゃん、本当に僕達で歌うつもりなのかい?」

緒花「そうですよ!! だって今から他の歌う人探す時間がないなら、私達で歌わないと!!」

縁「それは、そうだけどさ……」


緒花「さぁ、練習しましょう!!」

縁「いや、でも、緒花ちゃんはオーバーランした歴史が……」


緒花「あ、あれは私が戦犯じゃないんですぅぅーー!!」

次郎丸「ここは僕の出番かな……」

緒花「次郎丸さん……? もしかして歌上手いんですか!?」

次郎丸「はぁ、緒花ちゃん、誰に向かって聞いているんだい。僕はね」


次郎丸「うたのプリンスの一人だよ」


緒花「え……?」


次郎丸「ドームを女の子で満席にして、僕が登場すると『ぴぎゃああああ』ってなるんだから」


緒花「…………」ジトー


次郎丸「ここは僕に任せて……って緒花ちゃん? 聞いてる?」

緒花「はいはい、今は次郎丸さんの妄想小説に付き合っている暇はないんです」


次郎丸「緒花ちゃ~~ん、待ってよ~~、本当なんだってば~~」

崇子「オッケー、エブリワン、分かりました。ここは私が歌って時間を稼ぎます」

縁「た、崇子さん!?」

崇子「大丈夫よエニシング」


崇子「アザディスタンのために……あ、間違えた、喜翆荘のために私が歌います!!」


縁「いや、でも崇子さん。『ゴロゴロ死体』の歌は不味いよ~~」

崇子「『ゴロゴロしたい』です!! そこ間違えない!!」




和奏「皆さん、こんな所で集まってどうかしたんですか?」

来夏「ええぇぇ!? 事故で合唱団が遅れてるぅぅーー!?」


和奏「それで、どうするんですか?」

縁「とりあえず、お客さんを待たせるワケにはいかないからね」


緒花「だから私達で歌って、合唱団が来るまでぼんぼるんだよ!!」


縁「と、まぁ、緒花ちゃんはこう言ってるんだけど、どうするか……」


来夏「……和奏」チラッ

和奏「……うん」コクッ


紗羽「まさかこんなことになるなんてね~~」

田中「それも白祭の打ち上げ旅行でな」

ウィーン「でも僕は凄くワクワクとドキドキしているよ」

和奏「――――若旦那。歌は、私達が歌います」


緒花「え……?」

縁「君達が……?」


紗羽「だって、私達……」

ウィーン「僕達は……」




来夏「白浜坂高校合唱部ですから!!!!」




田中「合唱時々バドミントン部な」

巴「あ、本当だ。インターネットにも白浜坂高校声楽部って載ってますね」

蓮二「ほう、かなり有名みたいだな」

徹「声楽部……? 合唱部じゃないのか?」

来夏「」ギクッ


縁「今はそんな事はどうでもいいよ~~!!」

崇子「そうね。これはチャンスだわ」


縁「君達は救世主だ!! 喜翆荘の為に頼むよ~~!!」

和奏「はい、分かりました」

縁「それで、何か用意したほうがいいのかい?」

和奏「そうですね……。ピアノがあれば後は何とかなると思うんですけど……」

縁「あ~~、そうか、楽器か。喜翆荘にはピアノなんてないし、どうすれば……」


緒花「あっ、ピアノだったら……」

結名「呼ばれて飛び出て和倉結名でぇす☆」

緒花「結名さん!!」

結名「また緒花ちゃんがハチャメチャするって聞いてピアノ持って来ました~~!!」

緒花「いやいや今回もハチャメチャが押し寄せてきたんだよ!!」


結名「それで、ピアノが必要なのは……?」

緒花「あ、それはこっちの白浜坂高校合唱部の人達だよ」


田中「……ど、どうも」

ウィーン「ありがとう。これで僕達は歌う事が出来る、とても感謝しているよ」


結名「へぇ、君はなかなかイケメンだね」

田中「えっ////」

紗羽「田中のことじゃないよ」

~~♪♪

来夏「どうかな、和奏。大丈夫そう?」

和奏「うん、このピアノなら大丈夫だと思う。さぁ、練習しよ」

巴「何とか間に合いそうですね」

縁「よし、ステージも合唱部用に改良したし、こっちは準備万端だよ」


来夏「こっちも練習は完璧だね!!」

紗羽「田中、ちゃんと歌詞覚えてたね~~」

田中「あれだけ白祭の為に練習したのに、そう簡単に忘れるかよ」


ウィーン「……そうだ。何か足りないと思ってたら、衣装だよ」

田中「衣装?」

ウィーン「うん、お客さんの前で歌うのにこのまま私服はよくないと思うんだ」

和奏「確かにそうだけど、私達は旅行で来てるんだから特別な衣装なんて……」


菜子「衣装……。緒花ちゃん、アレが使えるかも……」

緒花「なこち? あっ、アレかーー!!」

電六「どうぞ、こちらへ……」

来夏「うわーー!? 着物がいっぱ~~い!!」

紗羽「これ、着ていいの?」

緒花「大丈夫大丈夫。私やなこちも何回も着てるから」

和奏「どれにしようか、悩むかも……」


田中「おいおい、合唱するのに和服って、歌い難いんじゃないか?」

一同「…………」

田中「別に私服でも大丈夫だろ。誰も服なんて見てねえよ、それに」


来夏「くず、ばーか」
紗羽「ばか、しんじらんない、はげろ」
和奏「くず、むしんけー」

緒花「ホビロン!!」
民子「ホビロン」
菜子「ホビロン、です……」

田中「……え?」

電六(……へただなぁ、田中くん。へたっぴさ、女心がまるで分かってない……)

縁『えーー、お詫びに、今回はサプライズなゲストをお呼びしておりまして』


来夏「ど、どう? お客さん見える?」

紗羽「み、見える……。凄い人数、白祭とは比べ物にならないくらい」

ウィーン「これだけの人達の前で歌うのか、さすがに緊張するね……」

田中「しかも今回は白祭のときと違って、俺達を知ってる人はいないんだ。やばいかもな……」


和奏「大丈夫だよ」

来夏「和奏……?」

和奏「お客さんは歌を聴きに来た人達だから、きっと大丈夫。それに……」

来夏「音楽は音を楽しむもの……」

和奏「私達が楽しまないと」

来夏「相手を楽しませられない!!」


紗羽「ふふ、そうだね。というか来夏と和奏はなに? 打ち合わせでもしてたの?」

田中「まぁ、ここまで来たらやるしかないしな」

ウィーン「うん、そうだね。さぁ、行こう!!」

http://www.youtube.com/watch?v=_nIz3U_gvL0

http://www.youtube.com/watch?v=3GtwDVyKb64

縁「お疲れ様ーーーー!!!!」

「お疲れ様でしたーーーー!!!!」


縁「いやぁ、本当どうなるかと思ったけど上手くいってよかったよ~~」

和奏「お役に立てれて、私達もよかったです」

崇子「お客さんのウケも上々だったし、これは使えるかも……」


巴「緒花ちゃんと結名ちゃんが周りで踊り始めたときはどうなるかと思ったけど」

紗羽「巴さんも後から踊りに参加してたじゃないですかぁ」

巴「そ、それは、緒花ちゃんに呼ばれて、し、仕方なく」


緒花「こなち~~!! 楽しかったね~~!!」

来夏「楽しかったぁ!!」

来夏「うぅ……」

田中「おいおい大丈夫か? はしゃぎ過ぎなんだよ」

和奏「私もみんちの作る料理が美味しいから食べ過ぎたかも……」

紗羽「送別会に宴会までしてもらったからね~~って私も食べ過ぎかも……」


田中「ったく、明日帰るのに、大丈夫なのかよ」

ウィーン「そうか、明日帰るんだよね……」


コンコン


和奏「?」

来夏「はい、どうぞ~~」


??「失礼します」

スイ「私は喜翆荘の女将をしております、四十万スイと申します」

和奏「あ、女将さんですか」

スイ「この度は、この喜翆荘のために尽力して頂いたと聞き、お礼を申し上げに来ました」

来夏「お、女将さん!?」

紗羽「そ、そんな頭を下げなくても」

田中「あ、あぁ、俺達も泊めてもらって助かったワケだし」

ウィーン「うん、お礼は僕達の方が言わないといけないよね」


スイ「お客様……」


和奏「女将さん、この喜翆荘で楽しく歌わせてもらって、ありがとうございました」

来夏「すっごく、すっごく、楽しかったです!!」

和奏「女将さん、私はこの喜翆荘で沢山の楽しい音に出会えました」

スイ「……音、で、ございますか」

和奏「はい、とても楽しい音です。いいところですね、喜翆荘」




『女将さん、喜翆荘って本当に素晴らしい場所ですね。ここならいい歌が作れそう』




スイ(……あれは確か、数年前に旅行に来た夫婦の奥方様が言っていた言葉……)


和奏「……?」

スイ(……そういえば、どこか面影が……)

和奏「あ、あの、すみません、変なこと言って……」

スイ「いえ、そんな事はございません」

スイ(……まさか、ねぇ……)

緒花「また、また来てね!! こなち~~!!」ギュ

菜子「来夏ちゃん、また、ね」

来夏「また絶対来るからね!!」


和奏「頑張って」

民子「うん、そっちも」


徹「あ、これ、蓮さんから弁当」

田中「あ、ども、ありがとうございます」

紗羽「ほら来夏、ずっと抱き合ってたら帰れないよ」

来夏「う、うん」グズッ

ウィーン「それでは、行きます」

縁「また湯乃鷺に来たらウチに泊まってよ」

巴「歓迎するからね」

和奏「はい、そうします」


来夏「それじゃ、またね~~!! 喜翆荘のみんな~~~~!!!!」

ウィーン「本当にいい所だったね」


田中「あぁ、また来るか」


和奏「そうだね。また来ようよ、五人で」


紗羽「……五人で……。そうね、いつか、きっと」


来夏「また来よう、喜翆荘に!!」

田中「って、今は次に来たときのことより、帰ってからのことを考えないとな」

ウィーン「そうだね、帰ったら僕はヤンに手紙を書かないと」

和奏「お父さん大丈夫かなぁ」

紗羽「あ、お父さんのこと忘れてた……」

来夏「アハハ。それじゃ、帰ろう!!」


和奏「うん。私達は、私達の場所へ――――」




     「TARITARI」×「花咲くいろは」


     『出会ったり、花が咲いたり』


           完

ここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました。

劇場版いろはの物語を想像する上で、
こういうクロスオーバーな物語も面白いのではないかと思い書きました。

もし多少なりとも皆様に楽しんでいただけたのなら幸いです。

支援レスとても嬉しかったです。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年10月31日 (金) 17:40:23   ID: ZG65jlNv

「来年」て、来てみても、喜翆荘は営業していないのだよな。
ちょっと切ない。

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