美希「メガネ!」 (35)


美希「うーん……」ジー

響「ん、どうしたの?」

美希「……ミキ、視力が落ちちゃったかも」

響「えっ!?」

美希「カレンダーの文字がさっぱり見えないの……」

響「なんでそんな急に?」


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美希「最近、よくベッドでスマホとか使ってるから、かな」

貴音「それはよくありませんね」

美希「だよね……あっ、そうだ! ねえねえ貴音、そのメガネ貸して?」ヒョイ

貴音「良いですが……それは近眼用ですよ? 美希には合わないのでは」

美希「むむ……クラクラするの……」

響「もう、自分に合わないメガネなんてやめなよ!」


美希「これは、メガネを買うしかないの」

貴音「そうですね……視力が悪いと何事も上手くいきません」

響「貴音は昔っから目が悪いもんね」

貴音「ええ。視力を矯正することは良いことですよ、美希」

美希「そうだね……うーん」

ガチャリ

P「おーす、ただいま」

響「おかえりー」


P「さっみいな今日は……よいしょと」

貴音「あなた様、今お茶を」

P「おお、ありがとう貴音。お前らだけか?」

美希「そうだよ。さっきまで雪歩と真クンがいたけど、どっかに出かけちゃって」

P「そうか……あれ」

響「ん、どうしたの?」

P「いや……事務所に帰ってきて片付けようと思ってた書類作成が済んでる」


貴音「どうぞ」

P「ありがとな、貴音。これ、どういうことだろ」

貴音「……この、一番下のふぁいるは」

P「ん……プロデューサーさんへ? なんだこれ」カチッ

美希「ミキに見せて! ……ん? むむ……」ズイッ

P「どれどれ……『お仕事お疲れ様です! 自分の仕事が終わってしまったので、勝手ですが作成しておきました』」

美希「うーん……?」


響「美希、そんなに近づくともっと目が悪くなるぞ」

美希「そ、そうだよね」

P「美希、どうしたんだ?」

響「実は美希、目がすごく悪くなってるんだ。メガネが欲しいって」

P「駄目じゃないか、ちゃんと買わなきゃ! ……『確認しておいてください、今日はもう帰って構いません! 音無』だって」

貴音「小鳥嬢は先ほど、買い物に出かけてしまいましたが……まさか書類を作っていたとは」

P「おお……綺麗に作ってあるな」


P「どうしよ……暇になってしまった」

響「そうだ、プロデューサー!」

P「うん?」

響「みんなで美希のメガネを買いに行く、ってのはどうかな!」

P「なるほど……それはいいかも」

美希「えっ、いいの?」

P「ああ、せっかくだからな」

貴音「それならば、わたくしの行きつけの店はいかがでしょうか。ふれーむも多く、選べますよ」


美希「それじゃあ、お願いするの!」

P「よーし! じゃあ、先に出ててくれ。音無さんが帰ってきたら、事務所の鍵を渡すから」

美希「りょーかいなの!」

響「美希、せっかくだからおしゃれで高めのヤツにしたら?」

P「あ、あんま高いのは勘弁な……俺からの、普段頑張ってる美希への誕生日プレゼントってことで」

美希「えへへ、ミキは誕生日のときのあれだけでもよかったんだよ?」


貴音「美希、『あれ』とは?」

美希「オトメの秘密なの!」

響「気になるなぁ……そんじゃプロデューサー、外で待ってるね!」

P「あいよ」

バタン

P「メガネかぁ……俺のメガネもだいぶガタが来てるな」

―――
――


貴音「この道を右に曲がったところにある、小さいビルです」

P「お、ここだな」

美希「結構小さめのお店なんだね」

貴音「はい、ですがここは品質も良いのですよ? わたくしも昔から通っております」

響「へぇ~……自分も目が悪くなったら、ここでメガネ買おうかな」

貴音「響、それはいけません。視力は良いのが一番なのですから」

響「そうだね、自分は目を悪くしないように気をつけないと」


P「ほい、降りろー」

美希「はいなの!」バタン

P「それにしても、コインパーキングが近くにあって助かったよ」

貴音「そうですね……しかしこの場所は、少々値が張るのでは?」

P「大丈夫大丈夫。せっかくの半ドンなんだから、じっくりメガネを見ていこう」

響「なんか楽しくなってきた、早くいこう!」


P「広いなぁ」

美希「フレームがいっぱい飾ってあるの……」

店員「いらっしゃいませ」

P「すみません、この娘にメガネを」

店員「分かりました。それでは、こちらで検眼をお願いします」

美希「はいなの! じゃあハニー、行ってくるね!」

P「おう」


響「こんなにフレームがいっぱいあるんだなぁ」

貴音「ふふっ、響には少々珍しいのではないですか?」

響「うん、普段は滅多に見ないからな。かけないし」

貴音「このように数多くのふれーむが並んでいるのは、なかなか見る機会がないですからね」

響「そうだな……あっ、これ貴音のメガネのフレームじゃないか?」

貴音「確かに、このふれーむですね」


P「響は視力いいんだよな」

響「うん、自分完璧だからなー」

貴音「響は裸眼でもかなり遠くの文字を読めますよね」

響「確かこの間の健康診断は、両目とも1.4ぐらいだったぞ」

P「すごいなぁ」

響「沖縄に居たころはもうちょっとあったんだけどね」


貴音「あなた様は、裸眼ではどれぐらいの視力なのですか?」

P「俺は右が0.3、左が0.5ぐらいだな」

響「プロデューサー、画面見すぎだぞ」

P「ははは……ごもっとも。気をつけるよ」

貴音「メガネをかけながら画面を見るのも、あまり良いことではありませんから」

P「そうだな、仕事の時だって画面見すぎて目が疲れるし」


美希「終わったよ、ハニー」

P「お、早いな」

店員「お好きなフレームを選んでください」

美希「はーい」

貴音「美希、ふれーむはとても重要ですよ」

美希「分かってるけど、いっぱいあって迷っちゃうの」

響「こんなにあると、どれがいいのか分からないね」


P「ここは3,000円のフレームのコーナーだな」

美希「カラフルだね」

貴音「この赤ぶちのメガネは透き通っていて綺麗ですね……」

響「これ、安いフレームなんだよね? 全然安っぽく見えないぞ」

P「そうだなあ、でもほら」

響「ん?」クルッ


P「このへんはめっちゃくちゃ高そうだろ?」

響「これ……メタル?」ヒョイ

P「響、あんまり触らないほうが」

響「よ、よんまん!?」

P「な、こういうのは高いんだよ」


貴音「美希、このふれーむはどうですか?」

美希「ん、赤ぶち?」

貴音「ええ。この前の撮影でこのような色のメガネをかけていたでしょう」

響「あぁー、自分もすごく似合うなって思った!」

美希「かけてみるね! ……どう?」


P「おぉ、似合うな」

響「美希は何をしても似合うね」

貴音「ええ、羨ましいですね。ふふっ」

美希「それじゃあ、みんなが選んでくれたこのフレームにするの!」

店員「お決まりですか?」

美希「はいなの!」


 ――

ブロロロ…

貴音「美希」

美希「ん?」

貴音「車内でもメガネをかけていると、酔ってしまいますよ」

貴音「そうなの?」

貴音「はい。美希は平気やもしれませんが、わたくしは車に弱いので……」


美希「でも、ミキはまだつけてたいな」

P「美希、ずっと嬉しそうにフレーム撫でてるもんな」

美希「だって、みんながミキのために選んでくれたんだもん!」

響「本当に似合ってるよ、美希にぴったりだな!」

美希「ありがとうなの、響っ」ギュッ


響「わわっ、急に抱きつくなっ!」

貴音「……あなた様」

P「ん?」

貴音「これは、わたくし達からのぷれぜんとです」

P「……これは!」

美希「シルバーのフレーム、ハニーっぽいでしょ?」


響「自分たち、こっそり選んでたんだぞ!」

貴音「あなた様の視力に合っていると思いますよ?」

P「みんな……ありがとう! 事務所まで走って、すぐにかけてみるよ!」

美希「えへへ、大切にしてね? ……うぷ」

P「……え」

美希「き、きもちわるくなってきたの……」

響「ぷ、プロデューサー車止めて! 止めてっ!」

P「と、とりあえずメガネを外すんだ!」


 フェアリーは全員メガネが似合うと思うんです。
 お読みいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。

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