えり「贈り物?」恒子「そーそー…」(639)

前に立てたスレが落ちてしまったのでリベンジです

前スレ↓
えり「贈り物?」恒子「そーそー…」
えり「贈り物?」恒子「そーそー…」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1354423793/)

健夜「ん~……」

えり「…………」

健夜「……あ、多すぎちゃった…えっと……」

えり「……あの、健夜さん?」

健夜「ちょっと待って…今勝負どころで……」

えり「…そこまで細かくする必要はありませんよ?」

健夜「え?でも…こういうのって大事…なんだよね?」

えり「そりゃ、大事ですけど…そんな」

健夜「あ、1mmくらい過ぎちゃった…えっと」

えり「そのくらいいいですって!キリがありません!」

えり(そんな事やってたら二週間で終わらないでしょうが!)

えり「では、次に…えっと、卵を…」ゴソゴソ

健夜「た、卵……」ゴクリ

カチッ

健夜「?」

えり「あ、お湯ができたみたいですね」

健夜「お湯?」

えり「卵は湯煎にかけながらかき混ぜるんです」

健夜「へぇ……」

えり「…じゃ、卵割ってみましょうか」

健夜「は、はいっ」

健夜「………」プルプル

えり「……健夜さん?」

健夜「ちょ、ちょっと待ってね、今集中してて」

えり「は、はぁ…」

健夜「……よ、よし」

えり「卵はお皿のカドよりもこういう丸いところの…」

健夜「えっ!?」ドキッ

えり「えっ、あ、いえ!その、健夜さんのやりやすいようにどうぞ……」

健夜「すぅ……はぁ……」

えり(……いつ終わるかな、コレ……)

健夜「……んっ」コンコンッ

カパッ

えり「はい、お上手ですよ」

健夜「……ふぅー」アセヌグイ

えり「この調子で、あと2つ割っちゃいましょう」

健夜「は、はいっ!」ビクッ

えり「……健夜さん?そんなに緊張なさらず…」

健夜「だ、大丈夫だよ!大丈夫…」コンコンッ

えり「いえ、その……」

バキッ

健夜「……あ」

えり「……変に緊張して、体に力が入っていると失敗しますよ、と……」

健夜「ご、ごめんね!ごめんね!」ワタワタ

えり「いえ、大丈夫ですから!どうしてそんなに緊張しているんですか!」

健夜「あう…」

えり「簡単なものでも料理なさるなら、卵くらい割ったことあるでしょうに」

健夜「そ、そうなんだけど……なんというか」

健夜「誰かのために作る、とか…失敗しちゃダメだーって考えちゃうと…」

えり「……なるほど?」

健夜「あ、あとね?」

えり「?」

健夜「誰かに見られながらって、やったことなくて……///」

えり「えっ……あっ、はいっすみません!」

健夜「い、いや、そのっ」

えり「わ、私は後ろ向いてますねっ?」プイッ

健夜「ご、ごめんっ」

えり「こ、こちらこそ気が利かずに…ジロジロと…」

健夜「だ、だってえりさんは先生だもん!だから、その…」

健夜「……見てて、ほしい……かな?」

えり「は……」

健夜「…みてて?」

えり「………は、ぃ……///」オズオズ

健夜「……あ、ありがと……」

えり「い、いえ……だいじょうぶ、です……」

健夜「………」

えり「………」

健夜・えり(な、なんでこんな空気になってるんだろう……)

健夜「じ、じゃあ、いくよ?」

えり「ど、どうぞ」

健夜「…………」コンコンッ

えり「…………」

カパッ

健夜「……よし」ドキドキ

えり「あと、2つです……」ドキドキ

健夜「う、うん……っ」コンコンッ

カパッ

健夜「!」パァッ

えり「!」

健夜「できたーっできたよっえりちゃぁぁぁん!」ガバーッ

えり「はいっ!やりましたね健夜さんっ!」ウケトメッ

健夜「良かったぁー!第一段階繰り上げだよー!」ギュー

えり「はいはい、よくできました」ポムポム

健夜「ここで卵全滅させちゃったらと思ったら気が気じゃなかったよー!」ギュー

えり「は、はいはい、まだまだ残ってますよ」ポムポム

健夜「お皿のカドより割り易かったよー!」ギュー

えり「す、健夜さん?苦し……」パシパシ

健夜「卵って、奥深いんだね……えへへ、知らなかったよ」ギュー

えり「す、すこやさん?あの、ギブ、ギブ……っ」ペシペシッ

健夜「……ゴメンナサイ」

えり「い、いいですから、ね?」

健夜「テンション上がっちゃって……」

えり「ほら、次に行きましょう、次!せっかく割った卵を放置してはいけません」

健夜「ハイ……」シュン

えり「ほら、大丈夫ですから!せっかく早く来たのに、卵に全部持っていかれますよ?」

健夜「……うう、卵めぇ……」ゴゴゴ

えり「!?」ビクッ

えり(た、卵を敵と認識した……?)ドキドキ

ガチャガチャガチャ

健夜「えいっえいっえいっ!」ガチョガチョ

えり(…恨みを込めるかのように卵をかき混ぜている…)

健夜「えいっえいっ!」ガチョガチョ

えり「……え、ええと、卵、温まりました?」

健夜「?」ピタ

えり「手を止めない」

健夜「は、はいっ」ガチョガチョ

えり「ムラができないように、全体が人肌になるくらいにかき混ぜてください」

健夜「はーい」ガチョガチョ

えり(っと……かき混ぜている間に、お砂糖と、ハンドミキサーの準備……)タッタッタ…

健夜(…人肌くらい…に、なったかな…?でも、かき混ぜている損はないし、もうちょっと混ぜてよう……)ガッチョガッチョ

…………………
……………
………

健夜「…………」ソワソワ

えり「……そんなに焦らなくても」

健夜「だ、だって……」

チーンッ

健夜「!」

えり「……スポンジ、焼けたようですね」ニコッ

健夜「う、うん……!」ドキドキ

>>23
× 健夜(…人肌くらい…に、なったかな…?でも、かき混ぜている損はないし、もうちょっと混ぜてよう……)ガッチョガッチョ

○ 健夜(…人肌くらい…に、なったかな…?でも、かき混ぜてても損はないし、もうちょっと混ぜてよう……)ガッチョガッチョ

えり「よっ……と……」

健夜「わぁ……膨らんでる……」

えり「まあ、スポンジですから」

健夜「…あ、あれ?少しずつしぼんでいってる?……し、失敗!?」

えり「いえ、こういうものなんですよ。5分位してしぼまなくなったら、完成です」

健夜「そ、そうなんだ……」ホッ

えり「失敗しているかしていないかは、そのあとですよ」

健夜「うぅっ!」ドキーッ

…………

えり「……さて、落ち着いたようですね」

健夜「そ、そうだね…」

えり「では、さっそく……試してみますか」

健夜「た、試す…飾り付け?」

えり「何を言ってるんですか。実際に食べてみるんです」

健夜「す、スポンジを!?」

えり「勿論。ケーキの要はスポンジにあります。まだ試作品、しかも第一号なんですから飾り付けなんてもってのほか」

健夜「き、きびしい……」

えり「ほら、切りますから」

健夜「は、はーい」

サクッ……

えり「……ん……」

健夜「?」

えり(これは……いや、まだ切っただけだし……)

健夜「わぁ……キメが細かい……」

えり「では、いただきます」

健夜「い、いただきます……」

パクっ

健夜「!」モグッ

えり「………」

>>17
× えり「あと、2つです……」ドキドキ

○ えり「あと、1つです……」ドキドキ

健夜「…ん、うん!まぁまぁ…」

えり「…失敗、ですね」

健夜「えぇッ!?」ガーン

えり「これは……惜しいけれど、不合格です」

健夜「ど、どこが!?」ワタワタ

えり「もう一口、味ではなく舌触りなどを感じながら…どうぞ。口開けて」

健夜「えっ」

えり「ほら、あーん?」

健夜「……あ、あーん……///」パクッ

えり「……どうですか?」

健夜「うーん……」モグモグ

えり「舌触りは?」

健夜「……モソモソしてる……」

えり「口溶けは?」

健夜「……悪い……」

えり「…ね?」

健夜「むぐ……」ゴックン

健夜「うぅぅ~……」ガックリ

えり「まぁまぁ、第一号でコレはなかなかの成績ですよ」

健夜「うー…どこが悪かったんだろー…」

えり「……んー……」

えり(私が見ているところで、目につくような失敗はなかった…ということは、目を離していた間……)

えり(…ハンドミキサーの準備中…か)

えり「おそらく、卵のかき混ぜ、泡立てすぎ…かと」

健夜「えっ!?」

健夜「混ぜすぎると、失敗するの!?」

えり「泡立ての最中、混ぜているとだんだんかたくなっていったでしょう?」

健夜「え?…た、多分…」

えり「そうすると、目かつまり過ぎてしまいます。せっかくのフンワリ感がなくなってしまいますよ」

健夜「…たくさん混ぜたほうがコシが出て、膨らむと思ってたんだけどなぁ…」

えり「ひとつ、勉強になりましたね」

健夜「はーい…」

健夜「…………」シュン

えり「へこたれているヒマはありません、失敗は生かせばいいんです」

健夜「……う、うん」

えり「どこが悪かったかを確認して覚えておく、健夜さんはとても要領の良い人ですから」

えり「きっと、美味しいケーキが作れますよ。…恒子さんが、喜ぶような」ニコッ

健夜「……うんっ頑張るっ!」ムンッ

えり「ええ、そのイキです」

健夜「よし、じゃあ早速リベンジを…」

グゥ~…

健夜「あ………」

えり「あら……」

健夜「……///」カァア

えり「……リベンジの前に、昼食にしましょうか」クスクス

健夜「う……はぁ~い…」

えり「ふふ……ふふふ……」クスクス

健夜「わ、笑いすぎじゃないかなーっ!?」

えり「すみませ、ク、ふふふ……」クスクス

健夜「もぉーっ!」

えり「じゃあ、外食でいいですか?材料置いてなくて」

健夜「ま、任せまーす…」

えり「近くにあるファミリーレストランでいいですよね?」

健夜「うん…道案内頼みます」

えり「はい、お腹が空いてるなら早く行かないといけませんね」クスッ

健夜「もーいいでしょー!ほっといてよ~」

えり「はいはい」

~♪

えり「?」

健夜「ごめん、私の携帯だ……こ、こーこちゃんから電話!?」

えり「!」

健夜「ちょ、ちょっとごめんね!」

えり「え、ええ……」ドキドキ

ピッ

健夜「は、はい…なに?こーこちゃん急に…」

健夜「……え?今から!?無、無理無理無理!」

健夜「ん、んーと、お仕事のことで、やらないといけないことがあるのっ!だから今日は、ごめんね?」

えり「…………」

健夜「うん、じゃあ、またね…」ピッ

健夜「……ふぅう~……」ホッ

えり「はぁあ……」ホッ

健夜「び、ビックリしたぁ……」

えり「恒子さんは、なんと…?」

健夜「暇だから遊ばないかって…」

えり「な、なるほど…」

えり(昨日、夜遅くまでマフラー編んでたのに…元気な人)

健夜「私、変じゃなかったかな?」

えり「ええ、多分…」

健夜「そ、そっか…勘付かれたらどうしようかと思った…」ホッ

えり「それは大丈夫ですよ」

健夜「そう?……なんだか、安心したらお腹空いてきちゃった」エヘヘ

えり「その前から空いていたクセに」クスッ

健夜「うるさいよ~?」ムー

えり「はいはい。行きましょうか」ニコッ

健夜「うんっ」ニコッ

―――――
福与家

ツー ツー ツー …

恒子「……おや?」

恒子「……そっかー、すこやん忙しいのかー」

恒子「んー……」

恒子(……編み物に飽きたから、気晴らしに遊びに行きたかったんだけどなー)

恒子「………よしっ!」

恒子(咏ちゃんにも連絡してみよっと)ピッピッ

―――――
三尋木家

咏「………」ゴロゴロ

咏「…………」

咏「はぁあ~…」

咏「…ひまー、暇ひまヒマーっ!」ゴロンゴロン

咏(くそー…えりちゃんがしばらく帰れないとは…)

咏「あーも、わっかんねーマジでわっかんねー全てがわかんねー」

咏「何しよっかなー…えりちゃん何してんのかなー…ヒマだなー…」

咏「あーあ……」ゴロゴロ

~♪

咏「!」

>>21
× えり「ムラができないように、全体が人肌になるくらいにかき混ぜてください」

○ えり「ムラができないように、全体が人肌の温度くらいになるまでかき混ぜてください」

咏(電話…えりちゃんっ!?)バッ

『福与 恒子』

咏「……なんだよ」ピッ

咏「あいもしもーし?」

恒子『うぃーっす、こーこちゃんでーす』

咏「わーってるよ、なに?」

恒子『うわ、あからさまに不機嫌』

咏「知らんし」

恒子『えりちゃん関係?』

咏「……知らんし」

恒子『図星か』

咏「んだよ、うるせーなー」

恒子『まーまー。愚痴りついでにどっか遊びいかない?』

咏「遊びぃ?」

恒子『こっちもすこやんにフラレちゃってさー、ヒマなn』

咏「フラレてねーからッ!」

恒子『おっと、失敬。で?行かない?』

咏「んー…」

恒子『奢るから』

咏「行く」

恒子『ナイス即答』

……………
数時間後

恒子「おーい、咏ちゃーん」

咏「んー」フリフリ

恒子「いやーごめんねー。急なお誘いで、さ」

咏「いーよ、別に。暇だったしねぃ~」

恒子「早速だけど!昼ごはん食べた?」

咏「まだ」

恒子「じゃ、どっか食べに行くかー。ダラダラっと」

咏「おー、ダベりたい気分だわー」

恒子「また愚痴ぃ?」

咏「知らんし」

…………

店員「かしこまりました、ごゆっくりどうぞ」

恒子「ふぃ~…店ん中はあったかーい…」

咏「だなぁ…めーっきり冬だもんねぃ」

恒子「こう、さ。店員も心温まる接客をすべきだよね」

咏「なにそれ」

恒子「冬なら冬らしく、客に身も心もお腹も満たしてくれるような接客をだな」

咏「ん~?」

恒子「いや、ただ単に」

恒子「この前テレビで見たメイドカフェの制服がここのお店の制服と若干似てたってだけなんだけど」

咏「あー、たしかにここの店の制服ちょっとフリフリ系だねぃ~」

恒子「瑞原プロとかこんな感じじゃない?」

咏「いんや、はやりんほどスカート短くないよ」

恒子「あー、そっかそっか。結構短いよね、瑞原プロ」

咏「ま、似合ってるから良いけどねぃ!知らんけど」

恒子「そーいやえりちゃんは?」

咏「ほ?」

恒子「短いスカートとか、穿くの?」

咏「いんや、まーったく」

恒子「ま、だろうねー。生足とか見たことないもん」

咏「それでいんだよ、見んじゃねー」

恒子「おっと、さーせん」

咏「ところで、ふくよん?」

恒子「ん?」

咏「いつからえりちゃんのこと、“えりちゃん”って呼ぶようになったん?」

恒子「!」ドキッ

恒子(やっべ、そうだった……)

咏「……ん?」

恒子「え、えー?特に深い意味はないよ~?呼び易いから、呼んでるだけっ」

咏「……ホントに?」

恒子「ホントホントっ!」コクコク

咏「…ふぅん?」

恒子(……せ、セーフ?セーフだよね?セェェーフッ!)ドキドキ

恒子(もー咏ちゃんって嫉妬深いから怖いわ~もー!)

店員「おまたせ致しました、パスタとAランチになります」

恒子「と、どーもどーも!」

店員「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

恒子「はいー!」

店員「ごゆっくりどうぞ~」

恒子「はい~」ヘコヘコ

咏「なにキョドってるん?ふくよん」

恒子「え?そ、そうかな~?↑」

咏「声ひっくり返ってんぞ」

恒子「いやいやー、やっぱいいね、可愛い制服だよね」

咏「急に話帰るとか…まぁ、そーかねぃ。そのメイドカフェってのはどんなんだったん?」

恒子「そりゃ、アレよ。おかえりなさいませ~ご主人様~って」

咏「ふぅーん?」

恒子「女の子の場合はお嬢様だったけどね」

咏「おじょーさまぁあ?」

>>83
× 咏「急に話帰るとか…まぁ、そーかねぃ。そのメイドカフェってのはどんなんだったん?」

○ 咏「急に話変えるとか…まぁ、そーかねぃ。そのメイドカフェってのはどんなんだったん?」

恒子「なに、嫌なの?“お嬢様”」

咏「おじょーよりはやっぱご主人のがいいっしょ~」

恒子「場所によっては頼めるらしいよ、呼ばれ方」

咏「頼める?」

恒子「おにーちゃん、とかさ。呼んでほしがる人とかいるじゃん?」

咏「そーゆうもんかねぃ?ちなみにふくよんは?」

恒子「ん?」

咏「なんて呼ばれたいん~?」

恒子「ま、無難に“お嬢様”っしょー」

咏「オネエサマ、とかどうよ」

恒子「あっはは!アリだねそれ。咏ちゃんは?」

咏「咏様」

恒子「ぶはっ」

咏「ちょっ、きったねーなオイ」

恒子「あはははは!!うたさまっ!さまっ!あっははは!」ゲラゲラ

咏「んだよ、ご主人が駄目なら様付けだろうが」

恒子「あははは!もー叶わないわー、すげー発想!涙出てきた」

咏「泣くほど笑うとか酷くね?」

恒子「ほんっと、流石だよ咏ちゃん」

咏「へん、ほっとけぃ~」

恒子(いいなーこーゆーの。友達とバカ話して笑ってる感じ!)

恒子(ナイス息抜きってね。……ただ)

咏「ちぇー」モグモグ

恒子(…罪悪感が、重い)

恒子(少しでも、二人の時間、奪っちゃってるわけだもんなぁ…)

……………
針生家

えり「はい、どうぞ」ガチャッ

健夜「はーい、ただいまー」

えり「はい、おかえりなさい」

健夜「えりちゃんもおかえり~」

えり「はいはい、ただいま帰りました」

健夜「えへへ、ノリがいいね」

えり「さっさと手、洗ってきてください。第二号、作りますよ」

健夜「うぐ、そこはノリが悪い…」

……………

えり「さっきの反省点を復習しましょう」

健夜「一、卵を割るときは緊張しない!」

健夜「二、泡立てすぎない!」

えり「よろしい。…さっそく、湯煎にかけながら卵を割る作業に取り掛かりましょうか」

健夜「おー!」

えり「…テンションが高すぎるのも、注意」

健夜「は、はぁい…」

………………

健夜「卵、割れました!」

えり「今度は失敗せずに割れましたね」ニコッ

健夜「えへへ……」テレテレ

えり「さぁ、勝負はここからですよ」

健夜「う、うん……!」

えり「では、泡立て器をどうぞ」スッ

健夜「んっ…」ゴクリ

えり「手を、止めてはいけませんよ…?」

健夜「…はいっ!」

えり「…では、どうぞっ」

健夜「えいっえいっえいっ!」シャカシャカ

えり「…………」

えり(普通、混ぜるときはこういう音よね…)

えり(さっきの健夜さん、完全に卵にヤツあたりしてたから…激しい音してたけど)

健夜「こ、こんな感じでいいかなっ?」シャカシャカ

えり「あ、ああ。そうですね。では、お砂糖入れますよ」

健夜「はーい」

えり「っと……はい、混ぜて下さーい」

健夜「えいっえいっ!」シャカシャカ

えり「お砂糖が底で塊にならないように、まんべんなく…卵の暖かさで溶けるとは思いますが、馴染むように」

健夜「はーい!」シャカシャカ

えり「……良い感じですね。では、ハンドミキサーに持ち替えましょう」

健夜「う、うん……!」

えり「泡立てすぎ、注意ですよ?」

健夜「は……はいっ!」

…………………
……………
………

チーンッ♪

健夜「!」

えり「焼けましたね…」

………………

えり「…切り分けましたよ」

健夜「う、うん……」ドキドキ

えり「では、いただきます」

健夜「い、いただきます……」

パクッ

健夜「!」

えり「…………」

健夜「こ、これはっ」

えり「不合格」

健夜「えええっ!?」ガーン

えり「まず、このホールの状態を見てください」

健夜「え、味じゃなくて見た目?」

えり「中央がくぼんでいるのがわかりますか?」

健夜「う、うん…」

えり「油分が底に集まった証拠です。…健夜さん、あなた……」

健夜「ゆ、ゆぶん……」ワナワナ

えり「バター混ぜるとき、手を抜いたでしょう」

健夜「ご、ゴメンなさぁぁい!」

えり「まったく…」

健夜「うぅ…そんな気はなかったんだけどなぁ……」

えり「でも、実際どうですか?」

健夜「……あんまり、美味しくない気がする……」

えり「やり直し」

健夜「うあーっ!厳しいよぅ…」

えり「なにをおっしゃいますか、まだまだ……あ」

健夜「?」

えり「……残念ですが、一時休憩を挟む必要がありますね……」

健夜「どうして?」

えり「卵がもうありません」

健夜「あっ……」

えり「では、私が買ってきますので健夜さんは……」

健夜「えぇっ!?」

えり「?」

健夜「だ、ダメだよ。そこまでやらせるわけにはいかないよ。私が行ってくるから」

えり「でも……お疲れでは?」

健夜「大丈夫だよ、このくらい!」

えり「それに、お店までの道……」

健夜「駅前にあったでしょ?」

えり「え、ええ…」

健夜「じゃあ大丈夫!」タッ

えり「えっ、ちょっと、健夜さん!?」

健夜「行ってきます!」ガチャッ

えり「す、健夜さんっ!?あ……」

えり「……行っちゃった、か……」

えり「…………」

えり(すごい、行動力……)

えり「うーん……」

えり(帰ってくるまで、なにをしていようかな……)

えり「……15時、か」

えり「……あ、そうだ」

―――――

デパート

恒子「いやー……クリスマスですなぁ」

咏「どこの店言ってもクリスマスソングばっか!耳タコだよもう」

恒子「あわてんぼうのサンタがトナカイの鼻を頼りに町にやってきてーってね」

咏「混ざってる混ざってる」

恒子「見渡せばピッカピカのイルミネーションやらサンタが……おっ」

咏「ん?」

恒子「見てみて咏ちゃん!サンタ服!」

咏「お、おおー……!」

恒子「いーなーいーなー、こんなん売ってんだなー」

咏「いや、それ子供用じゃね?」

恒子「大人用ないかな、大人用」タタタッ

咏「ははー、こういうの好きかい?ふくよん」

恒子「いやー、ちょっと着てみたいよねー」

咏「そうかぁ?」

恒子「あ、あったあった!」

咏「おー…男者も女物もあるか…」

恒子「ワンピース型とかもあるんだー…お、かーわいいなぁコレ!」

咏「ほーん……?」

咏「…………」フム

恒子「…値札とにらめっこですかぃ?」ニヤニヤ

咏「まーねぃ、いくら位なのかと思ってさ~」

恒子「ほうほう?ほほう?」ニヤニヤ

咏「…んだよ」

恒子「なに?買うの?」

咏「べっつにぃ~」

恒子「なんだー、つまんなーい」

咏「ふくよんこそ、買わないの?」

恒子「うーん、ソレとコレとは違うんだよなぁ~」

咏「ふーん?わかんねーけど」

恒子「……おっ、アレとかどうよ!」タタタッ

咏「ちょっ、すばしっこいなオイ!」

―――――
針生家

ピンポーン

えり「あ、はーい」パタパタ

ガチャ

健夜「ただいまー」

えり「お帰りなさい、お疲れ様でした」

健夜「ううん、このくらい大丈夫!」

えり「荷物、預かりますね」

健夜「ありがとー」

チーンッ♪

健夜「?」

健夜「あれ…なんだかいい匂い……」

えり「ふふ…休憩がてら、お菓子はいかがですか?」

健夜「お菓子?」

えり「ええ。こちらです」

健夜「これは…?」

えり「一口、食べてみてください」

健夜「う、うん……いただきまーす」パクッ

健夜「!……美味しいっ!なぁに、これっ」

えり「さっきの、スポンジです」

健夜「え、あの失敗したやつ!?」

えり「ええ。もったいないですから、小さく切って、フライパンでカリッと焼いてみたり…」

えり「お砂糖を塗ってレンジに……」

健夜「すごいっ!」ガシッ

えり「わっ…」

健夜「凄いよえりちゃん!天才!」

えり「そ、そんな大袈裟な……」

健夜「これ、とっても美味しいもんっ!」モグモグ

えり「お、お口にあったなら良かったです…///」テレテレ

健夜「えへへー…凄いなー」

えり「あ、ありがとうございます……///」

健夜「ホント、えりちゃ……あれ?」

えり「…もういいですよ、ちゃんで」

健夜「あ、あれー?いつからえりちゃんって呼んでたっけ…えりさんって呼んでたのに」

えり「卵を割るのが成功した時、興奮してつい…という感じでしたね」

健夜「い、言ってよ~!私って基本“ちゃん”付けで呼ぶクセがあるから…」

えり「良いですよ、お好きなように」

健夜「……じ、じゃあ……えりちゃん、で」エヘヘ

健夜「…えり、ちゃんってさ。ほんとに、凄いよね」

えり「?」

健夜「こんな、私の失敗作を…美味しくお料理しちゃったり」

えり「まぁ、お料理は好きですし…」

健夜「他にも、気が利くし、真面目だし、優しいし…」

えり「…も、もう、どうしたんですか。急に…」

健夜「ううん。…勇気を出して、えりちゃんにケーキ作りのレッスンを頼んで…本当に良かったなぁって」

えり「健夜さん……」

健夜「一人だったら、絶対途中で手を抜いちゃうか…ううん。諦めちゃったかもしれない」

健夜「でも。厳しいけど…優しい、えりちゃんの教えがあって、私は初めて…」

健夜「…す、素敵なケーキを…本気で作ろうって、思えるんだろうなぁ…って」

健夜「……え、へへ、恥ずかしいな。何言ってるんだろ」

えり「…………////」カァァ

健夜「あ、紅くなってる」

えり「あ、ぅ、……その……」

健夜「照れてる?」

えり「照れてっ……」

えり「……………」

えり「……てれて……ます…」ボソッ

健夜「へぇー♪」ニコニコ

えり「…っ///」プイッ

えり「さ、さぁ!続き、やりましょう!第三号ですよ!」ガタッ

健夜「おっと」ビクッ

えり「もう時間は限られていますし、未だにスポンジを作るのに手こずっていては次に進めませんからねっ」アセアセ

健夜「そ、そっか…」

えり「だから、その……アレですよ?」

健夜「ん?」ニコニコ

えり「…ほっ、…褒めても、何も出ませんよっ!」

健夜「はいはーい♪」

えり「だから、その……その……」

健夜「ついていきます、先生♪」

えり「…っ!…び、びしびし、いきますよっ!?」

健夜「お願いしまーす!」ニコニコ

えり「うぐ……」

えり(あー、もう!調子狂う…)

えり(うぅ…どうしよう……すごく、嬉しい……かも)

………………
…………
……

えり「不合格」

健夜「えぇッ!?」

えり「えぇ、じゃありません。自分の力でやってみる、と自信満々に言っておきながら…」

健夜「う、うぅ……」

えり「分からないことがあれば聞いてください、と言ったでしょう?」

健夜「み、見様見真似でいけるかと…」

えり「いけてません」

健夜「ぐはっ」グサッ

えり「まず、材料を混ぜるとき」

健夜「う、うん……」

えり「よくできていました」

健夜「………えっ」

えり「問題はそのあとで…」

健夜「ち、ちょっと待って!」

えり「はい?」

健夜「で、……でき、てた?」

えり「ええ。充分、合格点です」

健夜「…~~~っ!!」プルプル

えり「で、次n」

健夜「やったぁぁああ!!」ガバーッ

えり「きゃあっ!?」ドサー

健夜「ありがとう!ありがとうえりちゃぁぁあん!!」ギュゥゥ

えり「わ、わかりましたから!」

健夜「ほんっとに、ありがとぉぉ!」ギュゥゥ

えり「こ、こらっ、離れてくださ…っ」ペシペシッ

健夜「合格って言葉がなによりうれしいよぉぉ!」ギュゥゥゥゥ

えり「す、すこ、……っ」ジタバタ

健夜「もー、えりちゃんのお陰だよぉぉ!!」ムギュゥゥ

えり「く、くるし……っ」ジタバタ

健夜「えへへー♪」ムギュゥゥ

えり「すこ、やさ、ほんとに、くる……っ」

健夜「……えっ!?」パッ

えり「んくっ……はぁっ、はぁ…~~もう!」

健夜「ご、ごご、ゴメンナサイ!」

えり「合格は合格ですが、その後が問題なんです!いいですかっ!?」

健夜「は、はぁーい…」

えり「まずオーブン!余熱が足りません!」

健夜「うぐ…」

えり「次、ちゃんと竹串を使いなさい!」

健夜「ぅ……」

えり「焼けたと思ったら、まず竹串をさしてみる!」

えり「それで、何もつかなかったらちゃんと焼けているってことです」

健夜「な、なるほど……」

えり「さらに!」

健夜「まだあるの!?」ガーン

えり「オーブンから出したあとは、少し高いところから落として蒸気を逃がす!」

健夜「……?」

えり「はぁ……」

えり「私がやっていたの、見ていたでしょう……?」

健夜「う、うん…取り出しやすいようにやってるのかなーって」

えり「あれは蒸気を逃がすため。そうしないとしぼんでしまいますから」

健夜「そ、そうだったんだ…」

えり「……と、いうわけで」コホン

えり「不合格!」ビシィッ

健夜「ぐはーっ!」

健夜「うぅぅ…やっぱり見様見真似じゃダメなんだね……」

えり「ええ。だから意地張ってないで、わからないところは聞いてください」

健夜「は~い…」

えり「……さて、もうこんな時間ですね。今日はお開きにしましょうか」

健夜「ありがとうございました~……」

健夜「…………」

えり「…いつまでもしょげた顔しないでください」コツン

健夜「わっ」

えり「今まで失敗したことを一度も繰り返してないんですよ?」

えり「ここまで失敗したら、次はもう殆ど成功です。…だから、元気だしてください」

健夜「……えりちゃん……」ジーン

えり「次に来た時に失敗したら」

健夜「したら?」

えり「……………」ニッコリ

健夜「頑張ります!」

えり「ええ。頑張りましょうね」

晩ご飯食べてきます
すみません

………………

えり「支度、できましたか?」

健夜「うん、大丈夫だよ」

えり「じゃあ、行きましょうか」

健夜「うん…あ、ちょっと待って!忘れ物!」

えり「あ、では玄関で待っていますね」

健夜「はーい」

健夜(えーっと、たしかレシピメモをココにおいて…)カチャ

健夜「あ、」

コロコロコロ…

健夜「え、鉛筆ー待て待てー」タタタッ

コロコロコロ…

健夜「よっと」キャッチ

健夜「………?」

健夜(この箱、布はみ出してる…)

健夜(もう、ちゃんとしまって置かないと変な折れ目ついちゃうよ)クスッ

健夜(これが、手を抜いちゃうところもあるってやつかな?…しまっておこ)カパ

健夜「……おお」

健夜(編みかけの……なんだろう、まだ途中でなんとも会えないけど…マフラーかな?)

えり「健夜さーん?電車、遅れちゃいますよー?」

健夜「あ、はーい!」

健夜(ちゃんとしまって、と)

健夜「今行くよー」タタタッ

>>186
× 健夜(編みかけの……なんだろう、まだ途中でなんとも会えないけど…マフラーかな?)

○ 健夜(編みかけの……なんだろう、まだ途中でなんとも言えないけど…マフラーかな?)

……………


えり「では、今日はお疲れ様でした」

健夜「うん、本当にありがとう」

えり「いえ。…少し復習しておくんですよ?」

健夜「もちろん!」

えり「ふふ…やっぱりそこは恒子さんとは違いますね?」クス

健夜「え?こーこちゃん?」

えり「あ、いえ、その、恒子さんだったら、そんないい返事はしないだろうなぁって……!」ワタワタ

健夜「あー、そーだねぇ。復習、とか絶対やらないよね」クスクス

えり「え、ええ、そうですよね……!」ドキドキ

えり(あ、あ、危なかった…!)ドキドキ

健夜「じゃあ、またよろしくお願いします」ペッコリン

えり「い、いえいえ。こちらこそ」ペッコリン

健夜「あれ?私は何をよろしくお願いされたのかな?」

えり「え?ええと……?」

健夜「なんて、じょうだn」

えり「無駄な卵を使わないように……?」

健夜「あぅっ」グサッ

えり「ふふふ……」クスクス

健夜「もぉー…」

えり「ま、冗談ではありませんよ?食材を無駄にしてはいけません」

健夜「うぅっ!おっしゃる通りです…」

えり「次回、頑張りましょうね」ニコッ

健夜「はいぃ~」

えり「返事は元気よく」

健夜「はいっ」

えり「ええ、元気がないと、お料理も気合が入りませんよ?」

健夜「き、気合……?」

えり「ええ。やる気、気合、大事です」ムンッ

健夜「そっか……気合いか……」ムンッ?

えり「…だから、次に来た時に元気であるために、今日はゆっくり休んでくださいね」

健夜「え?あ、はぁーい」

えり「では、今日はこれで」

健夜「うん、えりちゃんも気をつけて帰ってね」フリフリ

えり「はいー」フリフリ

………………
三尋木家

えり「ただい……あら?」

えり「咏さーん?」

えり「…………」

えり(まだ帰っていないんだ…)

えり(時間は……20時)

えり「どこ行っちゃったんだろう……?」

えり「…………」

えり「!」ピンッ

えり(い、一番風呂、貰っちゃっていいかな…?いつも、咏さんが先に入ってたし…)

えり「…♪」

まさか

……………

咏(おおーっと、ちょーっと帰るのが遅くなっちまったかなー)

咏(……でもま、えりちゃんどーせ帰ってないんしょ……)ガチャッ

咏「ただいまー……ん?」

咏「!!」

咏(えりちゃんの靴ーー!)パァッ

咏(っつーことは、えりちゃんもう帰って……)

~♪

咏「…………」

咏「……ほほう、お風呂場か」ニヤリ

脱衣所

咏(……ほほう?)

えり『~♪』

咏(うんうん♪えりちゃんお風呂好きだもんねぃ~歌くらい口ずさんじゃうよねぃ~♪)

咏(……咏だけに)

咏(うっひょ、こりゃもうたまんねーっ!)

咏(こう、唐突に風呂場に入るじゃん?えりちゃん驚くじゃん?『きゃぁっ!?』とか言っちゃうじゃん?)

『う、ううううたさ、な、なんで…っ///』

『ん~?えりちゃんが帰ってるみたいだからさ、せっかくだし一緒に入ろうかと』

『の、ノックくらいしてくださいっ!』

『いや知らんし。それよりただいまー』

『あ、おかえりなさ…じゃなくてぇっ!』

咏(で、照れてお風呂でプクプクしちゃうえりちゃん…)

咏(みたいなねっみたいなねっ!)ブンブン

咏(よし、じゃあさっそく……)

ガチャ

えり「ふぅ……」

咏「え」

えり「え?」

えり「……う、うた、さん……?」

咏「い、いやぁ、そのぉ~……」ジィー

えり「い、いつ帰って、じゃ、なく……」

咏「…………」ジィー

えり「あ、……ぁ……////」カァァァ

咏(えりちゃんの裸えりちゃんの裸えりちゃんの裸えりちゃんの)ジィー

えり「………でっ………」

バッ

咏「むぐっ!?」

えり「でっ、出てってぇぇぇええ!!!」

えりちゃん恥ずかしがりや

バムッ

咏(追い出された……)ポケ

咏(えーっと、なに投げてきたんだコレ?……バスタオル?)

咏「……………」

咏(さいっあくだーー!)ズーン

咏(今のは駄目だ、ラッキースケベはアウトだよ!)

咏(……いやラッキーだったけど)ムフフ

咏(えりちゃんは、こう……押しに弱いからお願いしたことや強引にされたことは許してくれるんだけど)

咏(こう……わざと起こした事故みたいな!これは駄目だ!)

カチャ……

咏「あ、えりちゃ……」

えり「…………」ムスー

咏(ほら機嫌悪いーーー!!)

咏「い、いや、その……ごめんねー?こう、軽いイタズラのつもりで……」

えり「……ふん、だ」プイッ

咏「」ガーン

言い訳いかんなぁ

………………

チッ チッ チッ…

えり「…………」カリカリ

咏「…………」

咏(秒針の音と、えりちゃんのペンの音だけが響いている……)

えり「…………」カリカリ

咏「あ、あー腹減ったなー!」

咏(どうだ)チラ

えり「…………」ジッ

咏(おっ)

えり「…………」プイッ

咏「」ガーン

咏(…へ、へこたれるなっ)パンパンッ

咏「え、えりちゃーん、晩ご飯なにー?」

えり「………」ピタ

咏「………」ドキドキ

えり「………」ジー

咏「………」バクバク

えり「…ご自分で作ったらいかがですか」プイッ

咏「」ガーン

咏(ま、まだまだっ)

咏「じゃ、じゃー頑張ってみようかねぃ~!」

えり「…………」カリカリ

咏「え、えりちゃんはどんなのが食べたいん?」

えり「………」ピタ

咏「………」ドキドキ

えり「………」ジッ

咏「………」バクバク

えり「……知らんしー、です」プイッ

咏「」

咏(あれ?今の可愛くね?)ドキドキ

これは咏さんがキュンってなっても仕方ない

咏「…………」

えり「…………」カリカリ

咏(……折れそう)ガクリ

えり「…………」カリカリ

咏(ちくしょー、くやしーなー…タイミングさえ合えばラッキースケベ回避、ラッキーとかじゃなく楽しめたのに……)

咏(あーあ、ちょっとしたタイミングの差が……って……)

咏(…え?ラッキーじゃなくて……って、それ……ただのスケベならいいのか?)

えり「…………っ」

咏(…?)チラ

えり「…………」ガリガリ

咏(……ああ、なるほど?)

えり「…………っ」ガリガリ

咏「……ほれよ」

えり「………?」

咏「ボールペン、インク切れたんだろ?知らんけど」

えり「……はい」

咏「使いなよ」

えり「…………」

咏「ほれ」ズイッ

えり「……ありがとう、ございます」

えり「…………」カリカリカリ

咏「…………」

咏(…会話、成功…!)

咏(あー良かった!とりあえず良かった!問題はまだ残ってるけど、ひとまず良かった!)

咏(…さぁて、そのあとどうするかなぁ…)

えり「……はぁ」カタン

咏「!」ビクッ

えり「………」カチャカチャ

咏(し、仕事終わったのかな……?)

えり「ボールペン、ありがとうございました」

咏「お、おう……持ってていいよ?」

えり「いえ、そんな」

咏「いーって。どーせ使わねーから」

えり「……じゃあ、しばらくお借りします」

咏「お、おう」

えり「………」

咏「………」

えり「……あの」

咏「お、おう!」ビク

えり「お礼と言ってはなんですが」

咏「お、おー」ドキドキ

えり「夕食は、私が作りますので」

咏「お、……おう!」パァッ

えり「ご希望は?」

咏「えりちゃんの料理なら、なんでもいい!」

えり「……わかりました」

咏「うんっうんっ」ニコニコ

えり「……あの」

咏「なーに?」

えり「これは、あくまでお礼なので」

えり「心配だからとか、そんなのではないので。誤解無きよう」

えり「……では」プイッ

タッタッタ……

咏「……~~~っ!」キュンキュン

咏(耳っ!紅くなってるの見えてんぞこのツンデレめっ!)

咏(うわぁー言いてぇーー!言って恥ずかしがらせてぇー!!)

咏(でも余計怒らせるの嫌だから言えねぇー!!)モンモン

えり「…………っ」カチャカチャ…

……………

咏「いっただっきまー!」

えり「どうぞ」

咏「おろ?えりちゃんは食べないの?」

えり「ええ、私は……お腹、空いてなくて」

咏「そ、そうなん…?」

えり「……すみません、私……先に、布団に入ってますね」

咏「あ、ああ……大丈夫?」

えり「ええ、ご心配なく。……おやすみなさい」

咏「お、おやすみ……」

咏「…………」

咏「……やばいな」

咏(こりゃあ、思ったより…仕事モードの限界が近いか?)

咏(…でも、前の仕事モードとは違うんだよなぁ…)

咏(前のは…眠れなくなって、それで最終的に体調崩す、ってパターンだった)

咏(それは、ただ単に無理矢理寝かせればよかったんだけど……イロイロ、しながら)

咏(食欲がない……?)

咏(……うーん、このあと無理矢理仕事モード解除に行くかねぃ……どうせ眠れてねーだろうし)

咏「…………」

咏「!」ハッ

>>241
× 咏(食欲がない……?)

○ 咏(でも…食欲がないって……?)

咏(まて、まてよ、さっき怒らせたばっかじゃん!)

咏(そんなんで……もっと怒らせるようなことやったら……)

『もう……もう、咏さんなんか、知りませんっ!』

咏「」

咏(普段とかだったら、そんなんどーってことないけど…あの約束を、ナシにされたら……!)

『この埋め合わせは、クリスマスに必ず』

咏(えりちゃんとの、クリスマスがぁぁぁ……!!)ガビーン

寝室

えり「…………」ゴソゴソ

えり「……はぁ」ポフッ

えり「…………」

えり(怒って、しまった)

えり(いや、それは怒って当然だと思うんだけど。…だって、私が入ってるの知ってながら、あんなところに……)

えり(それって、お風呂に入ってこようとしてたか、もしくは、ああやって待ち伏せて……)

えり(……うぅ……///)

別に襲われてもいいかもと思ってそうなえりちゃんかわいい

えり(……まぁ、それはたっぷり反省してもらうとして)

えり(問題は、健夜さんと恒子さん)

えり(恒子さんは、ちゃんとやっているのか甚だ疑問だし)

えり(健夜さんは……前途多難すぎる。まだ、スポンジも完成できていない…)

えり(……お陰で、スポンジの失敗作を再利用して、少しだけど、食べて……)

えり(……今、全然お腹が空いていないわけだけど)

えり(……どう、なるかな……)ウト

えり(……明日は、朝から仕事で…夜から、恒子さんのレッスン……)ウトウト

えり(ああ、明日も…忙しくなりそうだなぁ…)

えり「……すぅ……」zzZ

限界 ごめんなさい
おやすみなさい
9時前に来ること目指します

>>249
かわいい

おつ

寝る前ほし

誰か保守頼む

残ってた良かった

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

数日後

夜 針生家

えり「……どういうことでしょうか」

恒子「え?あ、その~……ね?」

えり「是非聞かせてくださいな。理由があるのでしたら」

えり「言い訳でもいいですよ?…私にわかるように説明を」ゴゴゴ

恒子「あぅ、うーんと……」

恒子「ゴメンナサイ、サボってました」

えり「…………」ズキズキズキ

来たか!

えり「クリスマスイヴまでに完成させるんでしょう?」

恒子「は、ハイ……」ダラダラ

えり「あと何日ですか」

恒子「……10日切りましたです」

えり「その中で私達のレッスンは」

恒子「……ほんの数回デス」ダラダラ

えり「しばらくレッスンする時間がないから、家でやってきてと言ったでしょう」

恒子「……言われまシタ」

えり「…前回とどこが変わりましたか、このマフラー」

恒子「い、一応、進んだよ!?」

えり「どのくらい?」

恒子「むぐ。……15cmくらい……です☆」

えり「………」イラッ

恒子「ゴメンナサイもっと短いですよね」

えり「………はぁあ」

恒子「…ゴメンナサイ」

えり「私に謝られても」

このこーこちゃんはダメだ

えり「これはあなたの問題なんですからね」

恒子「うむむ……」

えり「……一応、聞いておきますが…どうしてサボってたんですか?」

恒子「…………」

えり「……こんなこと、言いたくはないですけど」

えり「“面倒だったから”という理由でしたら…もう諦めてください」

恒子「……!」

えり「継続的にやらないと、こういうものはできません。…この時点で、へこたれてしまうなら…」

恒子「ち……ちがう……!」

えり「……では、何故?」

恒子「…………」

えり(一応、理由はあるようで…諦めさせる線は無くなった。けれど……)

えり(早上がりの日もあったはず。仕事が忙しかった、という言い訳は…聞きたくない)

恒子「……んが……」ポツリ

えり「はい?」

恒子「すこやんが……」

恒子「すこやんが最近冷たいんだもぉぉぉぉん!!」ウルウル

えり「」

恒子「だってさ、だってさ!」

恒子「仕事が終わってるだろうなー、暇してるだろうから電話でもかけてやるかなーって電話しても」

恒子「『ごめん今忙しい』とか!!」

恒子「アラフォーのすこやんは休日の有意義なたのしみかたなんて知らないんだろうなーって遊びに誘ったら」

恒子「『ごめん今大事な用事が』とか!!」

恒子「絶対向こうが暇してる時間に電話かけてるのにぃぃい!!」ビエーン

えり「…………あ、ぁー、なるほど?」ニガワライ

恒子「もう私、すこやんに飽きられちゃったかなぁ…!?」

恒子「からかいすぎたかな!?何か怒らせたかな!?」

恒子「ねーえりちゃぁぁぁん!!」ビェェ

えり「な、泣かないでくださいよ…はい、ティッシュ」

恒子「グスン……」チーン

えり(…ああ、なんてややこしい…裏事情をも知っているだけに)

えり(…大抵、恒子さんが健夜さんに電話をかけてくるときは…)

えり(…家で、ケーキ作ってるときですもんね…)

恒子「グスグス……」

>>303
×えり(…ああ、なんてややこしい…裏事情をも知っているだけに)

○えり(…ああ、なんてややこしい…裏事情を知っているだけに)

えり(…さて、なにを言えば良いものか…)

恒子「……グスッ……ねー、えりちゃーん……」

えり「……はい?」

恒子「私、嫌われちゃったかなぁ……」

えり「…………」

恒子「私と居るの、嫌になっちゃったのかなぁ……」

恒子「それとも……グスッ」

恒子「他の人と一緒にいるのかなぁぁ…!?」

えり「え」

恒子「うわーん!すこやんの浮気ものぉぉぉ!!」

えり(それはないっ!!)

恒子「うわぁぁー!」メソメソ

えり「お、落ち着いて……大丈夫ですから、ね? 大丈夫!」ナデナデ

恒子「ほんと? ほんとに? 根拠は?」グスッ

えり「こっ……」

恒子「ねーえりちゃぁぁぁーん…!」スガリ

えり(し、知ってるけど言えない、あなたの為に頑張ってケーキ作ってるなんて言えない!)

恒子「やっぱ嫌われたんだぁぁぁ!!」ビェー

えり(あーもう!)イラッ

えり「いい加減にしなさい!!」

恒子「だってぇ…」グスッ

えり「だってじゃない!そんなことで自分の手を止めてどうするんですか!?」

えり「そりゃ、健夜さんに何があったかなんて知りませんよ私は!でも…っ」

えり「あなたを裏切らないってことは、知ってます!」

恒子「!」

えり「もし健夜さんの心になにか変化があったと思うなら」

えり「素敵なマフラーで、またこっちに関心を向けさせようと、そのくらいの気持ちが無くてどうしますか!!」

恒子「えり、ちゃ……」

えり「まずは、信じてあげてください…健夜さんを」

えり「彼女は…あなたを裏切るようなことは、絶対にしていない。私が保証します」

恒子「………」

えり「根拠は、とか聞かないでくださいね?」

えり(そこまで面倒を見る気は、ありません)

恒子「………ん」コクリ

えり「……わかりました?」

恒子「………ん」コクリ

恒子「すごいマフラー作って……すこやん見返してやる」グシッ

えり「………」ホッ

恒子「………っ」ズピッ

えり「…涙、残ってますよ」フキフキ

恒子「ん……えへ。ありがと」

えり「……落ち着きました?」

恒子「うん……多分」

えり「多分って……」

恒子「えへへ……ごめんね」

えり「いーえ。ここまで面倒見てきたのが、全部無駄になるのが嫌だっただけですよ」

恒子「ん。……そっか」ニコッ

えり「…ええ、そうですとも」ニコ

恒子「…ありがと、えりちゃん」

えり「いーえ、私はなにも」

恒子「…………」

えり「そんなことより、時間がありませんよ。進めましょう?」

恒子「……うんっ」

えり「ったく…不安になるのは良いですけど、作るのを放置しているなんて」

恒子「む……だって、ホントに怖かったし……やっぱ、怖い…し……」

えり「怖いなら、振り向かせる!」ビシッ

恒子「…んっ!」

えり「さ、準備してください」

恒子「……えへへ。もしすこやんが浮気してたら、私は仕返しにえりちゃんと浮気してやろっと」

えり「……あの。私一応コイビトが」

恒子「咏ちゃんから奪えるほどイイ女になって、すこやん後悔させてやるんだー」

えり「…私と咏さん、部外者なんですけど」

恒子「ホント、気をつけた方がいいよ?えりちゃん」

えり「はい?話の繋がりが見えないんですが」

恒子「誰彼かまわず、優しい言葉投げたらダメだからね」ニッ

えり「…そんなことしてるつもり、ないんですけどね…」

恒子「えー、ウソウソ。だから天然スケコマシとか言われんのっ」

えり「そのスケコ……とかいう言葉の意味が未だにわからないんですが」

恒子「え?」

えり「どういう意味なんですか?」

恒子「……あー、なんだ。その……」

えり「?」キョトン

恒子「…うん。とにかく、ありがとね」

えり「は、はい……」

えり(…納得いかない)

~その頃~

健夜「最近、こーこちゃんとなかなか会えなくて……」

咏「ふーん?」

健夜「ちょくちょく電話かかって来ることは来るんだけど、なんていうか…こっちが作業中のタイミングばっかりで」

咏「あちゃー、そりゃマジなすれ違いってやつだねぃ」

健夜「で…こっちから連絡してみても、向こうが忙しかったり…」

咏「ふぅん?」

咏「で、すこやんはこんなとこで愚痴ってるっつーこったねぃ?」

健夜「…まあ、そういうこと」

咏「でもクリスマス、会うんでしょー?ちょっとしたすれ違いくらい気にすんなよー」フリフリ

健夜「……そう、かな。そうだよね、うん。気にしすぎだよね」

咏「そそ。んなこと言ったらうちのえりちゃんさー」

咏「…………」

健夜「咏ちゃん?」

咏「えりちゃんったらもう3日は帰ってきてないんだぜー!?」バンッ

健夜「!?」ビクッ

咏「年末だか用事だか仕事だか知らんけど!ずーっとえりちゃん家泊まってやんの!」

咏「お前の帰るべき所は三尋木家だろうがァッ!」クワッ

健夜「」アワワワワ

咏「……みたいな、ね。知らんけど」

健夜(ごめん、私のせいです。ゴメンナサイ)プルプル

咏「ったく、やけ食いだやけ食いー!注文頼んまーす!」

健夜「あの、咏ちゃん?ここは奢らせてね?」

咏「え?マジで?」

健夜「うん、ここは、ドーンと。奢らせてください」

健夜(あとでチャント謝るから、今はこれで許して……)

お昼ご飯食べてきます

咏「ところですこやんはさぁー」

健夜「うん?」

咏「そういうイライラとかって、何で誤魔化す?」

健夜「誤魔化すって……」

咏「しゃーねーじゃん?最近、ほんっとにストレス溜まっててさぁ~えりちゃんのせいで!」

健夜(うっ)グサ

咏「酒呑まねーとやってられねーんだよねぃ~。でもすこやんは呑めないっしょ?」

健夜「そ、そうだね」

咏「だから何してんのかなーって」

健夜「うーん…最近はネット通販にハマってるんだけど…ストレス解消になってるかどうかはわからないなぁ」

咏「ネットつーはん~?」

健夜「あからさまに嫌そう!?」

咏「だってさー…なに、衝動買いみたいな?」

健夜「だからストレス解消とかじゃなくてね…」

咏「あーゆうのってつい買い過ぎるーとかよく言うじゃん。へーきなん?」

健夜「うーん…」

健夜「そうだなぁ…たしかに、買いすぎちゃうかも」

咏「やっぱねぃ~」

健夜「でも実際に買うよりいくらか割引されてたりするんだよ」

咏「……へぇ?」

健夜「なかなか売ってないものを検索するだけで見つけることもできるし…」

咏「ちなみにすこやんは何買うの?」

健夜「私?えーっと…」

健夜「……ああ、この前は大沼さんの本買ったよ」

咏「…あー、あのじーさん」

健夜「その言い方はどうかな……」

咏「あの人の本ならそこら中の書店においてあるっしょ」

健夜「まぁ、そうなんだけど…はやりちゃんに借りて、面白かったのがあってね」

咏「はやりん?」

健夜「うん。なんでも、ファンらしいよ」

咏「ふぁん!?はやりんがあのじーさんの!?」

健夜「驚きすぎ……まぁわかるけど」

健夜「あ……これ、秘密だよ?はやりちゃんは隠したいみたいだから」

咏「えー、はやりんが、へぇー……」ニヤニヤ

健夜(あ、言いふらす気だ)

咏「で、オーヌマさんの本借りたんだ?何の本?」

健夜「んと、2作目だったかな…」

咏「2作目って…何十年前の本だよ…」

健夜「だから通販に頼んだの。それに…」

咏「?」

健夜「えの…あんまり、近所だと…さ。咏ちゃんも経験、ない?」

咏「なにが?」

健夜「その…店員さんとか、お客さんが自分のこと知ってる…とか」

咏「あー、あるある。いちおー有名人だもんねぃ~」

健夜「そ、それでさ…私が大沼さんの、麻雀の本買うって…なんというか、マンマでしょ?」

咏「んー?よくわかんねー」

健夜「だから、ツッコまれたり…色々言われそうだなーって」

咏「そーゆーもん?」

健夜「うん。…それが嫌で、通販を使ったりはするよ」

咏「へぇ~?」

健夜「誰が何を買ったか、なんてわからないわけだし…遠出して買い物に行く手間も省けるしね」

咏「………」

健夜「?」

咏「すこやん…最後のはアラフォーの発想だよ…」

健夜「あ、アラサーd……って、ええ!?」ガーン

…………………
……………
………

えり「結構進みましたね」

恒子「ほげ~……」グッタリ

えり「よく頑張りました」

恒子「あざっす~…あー疲れたぁ~」

えり「少し休憩しましょうか。甘いものでも食べます?」

恒子「え、そんなのあるの!?」

えり「ええ、お口に合うかわかりませんが……」

恒子「しかも手作りっ!?」

えり(健夜さんの失敗したスポンジ、再利用ですけどね…)

恒子「おー、なんだこりゃっ」

えり「うーん……なんでしょうね」

恒子「え!?」ガンッ

えり「…明確な名前がわからないだけです。得体のしれない物を出すわけないでしょう」イラッ

恒子「だ、だよねぇ~あはは~」

えり「…どうぞ、食べてみてください」

恒子「うん、いただきますっ」モグッ

えり「…………」

恒子「……おお、ウマい!なにこれっ!」

えり「…お口にあったなら、良かった」ニコッ

恒子「うまうま、もっと貰っていい?」

えり「どうぞ。私は、ちょっと飽きてきたところで…」

恒子「なに、こんな美味しいもん飽きるほど作って、なにしてるの?」

えり「え?…ええと、まぁ……ね?」

恒子「?」

えり「それより、なにかありますか。甘すぎる…とか」

恒子「ううん、甘さ控えめで美味しいよ~」

えり「なるほど……」

恒子「どして?」

えり「あ、い、いえ。特に理由があるわけでは」

恒子「ふーん?」モグモグ

恒子「…………」

恒子「!」ピーン

恒子(あーなるほどね、えりちゃんがクリスマスに咏ちゃんに作るやつの味見って感じなのね!)

恒子(大丈夫、大丈夫だよえりちゃん!)

恒子「この味だったら、どんな人でも喜ぶね!めっちゃくちゃ美味い!」

えり「え?あ、ああ、ありがとうございます…」

えり(ケーキを作るにあたって、恒子さん好みの甘さを知りたかったんだけど…)

えり(この反応だと、社交辞令かも…それとも、本当に気に入ってるかな……?)

恒子(咏ちゃん、きっと喜ぶよ!)ドヤッ

………………

恒子「それじゃ、またねー」

えり「今度は進めてくるんですよ?」

恒子「は、はーい…」メソラシ

えり「こら」

恒子「うぐ。頑張ります!」

えり「ええ。ではまた」

恒子「じゃねー」

えり「………」フリフリ

恒子「…あ、そだ」

えり「?」

恒子「この前もそうだったけど…咏ちゃん家にはかえらなくていいの?」

えり「あ……」

えり「……先日、少し喧嘩をしまして」

恒子「ええ!?」

――――

咏「ぶぇっくしっ!」

健夜「うわ、咏ちゃんオジサンみたいだよ」

咏「なんだよ精神的アラフォー」

健夜「酷い!!」ガーン

――――

えり「まぁ、私が一方的に気にしているだけかもしれませんが」

恒子(多分そう。そんな気がする)

えり「なんだか、距離を置かれてしまったような気がして…」

恒子「うーん……考えすぎだと思うよ?」

えり「自分でもそう思いますが…気にしすぎるくらいなら、と」

恒子「……逆効果じゃないかなぁ」

えり「……そんな気もします、理由はわかりませんけど」

恒子(理由がわからないってのが相変わらずだね…)

えり「まぁ、とにかく大丈夫ですから。すみません、心配かけまして」

恒子「ううん、ちゃんと連絡してみても、あげるんだよー」フリフリ

えり「はい。ではお気をつけてー」

恒子「んー!」

えり「…………」

えり(……という理由が、だいたい20パーセント)ガチャン

えり(残りの理由が……)

タッタッタ…

ガチャ  パタン

えり「はぁ……」ポフンッ

えり「……あぁ……」

えり(…疲れが、極端に溜まっている…こと)ゴロン

>>365
× 恒子「ううん、ちゃんと連絡してみても、あげるんだよー」フリフリ

○ 恒子「ううん、ちゃんと連絡してあげるんだよー」フリフリ

>>350
× 健夜「えの…あんまり、近所だと…さ。咏ちゃんも経験、ない?」

○ 健夜「あの…あんまり、近所だと…さ。咏ちゃんも経験、ない?」

えり(これから歩いて、電車に乗って…帰宅ラッシュに揉まれて…帰って…)

えり(咏さんのご飯作って…洗濯物見て…なんて、する元気は…)

えり(……ない)ハァ

えり(明日の分の仕事の確認と…この間の取材の記事のまとめ…やらないと……)

えり(……栄養ドリンクに頼るのは、嫌だなぁ……)

えり(……とりあえず……)

えり「お風呂……入らないと……」

咏ちゃん大丈夫かなぁ

……………

おふろあがり

パカッ パタン

えり「…んっ…んくっ…」ゴクゴク

えり「ぷ、は……」

えり(密かな楽しみ…おふろあがりの、アイスココア…なんて)フフ

えり(えっと、書類の確認と…)

ピリリリリッ

えり「!」

えり(えっと…携帯電話……)ゴソゴソ

ピッ

えり「はい、もしも……あ」

ツー ツー ツー …

えり「切れちゃった、か……」

えり「…………」

『三尋木 咏』

えり「…………」ピッピッ

プルルル プルルル …カチッ

えり(……留守電……か)

えり「はぁ……」ポスッ

えり(…でも、まだ3日かそこらだし…いいかな……)

えり(……仕事、しなきゃ……)

――――
三尋木家

咏「…………」

プルルル… ガチャ

咏「!」

留守番電話サービスに接続しm

咏「」ムカッ

ブンッ ガツッ!

咏「だぁぁぁぁもぉぉぉぉぉ!!」バフッ

咏「なんっで出ないかなー……タイミング悪かったかなー……クソッ」

咏「……タイミング……ねぇ」

――――

健夜『ちょくちょく電話かかって来ることは来るんだけど、なんていうか…こっちが作業中のタイミングばっかりで』

咏『あちゃー、そりゃマジなすれ違いってやつだねぃ』

――――

咏「…………」

咏「………これ、か?」

咏「…………」モソモソ

咏(ケータイ……投げちゃった……)

ヒョイッ

咏「……ん?」

咏(あー……投げたとき、電源オフになったのか)ピッ

咏「…………」

咏「!?」

『着信1件 えりちゃん』

咏「だぁぁぁぁぁぁーー!!」バターン

咏「くっそぉ…チクショー!!コンニャロッ」ブンッ

咏「…………」

咏(……また投げちゃったら、また電話かかってきてもわかんねーよな……)

咏「…………はぁ」

咏ちゃんがんばれ

咏「…………」

咏(夜……寝る前にでも、またかけるか……?)


A.かける
→エロルート
 咏さんのストレスは一瞬緩和

B.かけない
→通常ルート
 ストレスを貯め続け…


安価>>394様 お選びください

これは悩むBだとばれそうだしAで

kskst

→B

咏「……ま、いっかぁ……」

咏(前に、喧嘩したときよりずっとマシだし…)

咏(あんときは、結局喧嘩したまんま何日くらい帰って来なかったっけなぁ…10日くらい?)

咏(今回は、クリスマスにちゃんと予定入ってるし……ちゃんと、約束もしてくれたし)

『この埋め合わせは、クリスマスに必ず』

咏(…忘れんなよ?えりちゃん)

―――――

えり「……………」カリカリ

えり「……はぁ」カタン

えり(お仕事、終了)ノビー

えり「えっと……」チラッ

えり(……お腹、空いてないし…晩ご飯くらい食べなくてもいっか……)

えり「ふぁ……」

えり(……寝よ……明日も、早いし)

修羅場ルートキタ━(゚∀゚)━!

寝室

ギシッ……

えり「…つめた…」

えり「……ふぅ」ポフン

えり「…………」

えり(咏さんの家で寝るのは…暖かかったなぁ…)

えり(最初は布団が1つしかなくて…一緒に入ってたっけ)クス

えり(……毎晩のようにセクハラされたっけ)グッタリ

えり(で…いい加減、布団もう一つ買って…それから一緒の部屋で、並んで寝て…)

えり(私が、後から布団に行って、布団開けると…)

えり(咏さん、何故か私の布団の中で丸まってて)クス

えり(……最近は、そういうことも無くなったなあ……)

えり(落ち着いた、と言えば聞こえは良いけれど…なんというか……)

えり(…………)

えり(なんだろう。“ものたりない”?そんなまさか。じゃあ何?)

えり「……さみしい?」

えり(なるほど、さみしいのか)ポンッ

えり(……………)

えり(えっ)

えり(さみしいの?うそ。そんな、だって、まだ3日……)

えり(たった3日会ってないだけで……そんな、まさか。………)

えり(…………)ツ、…

えり「……ん……」ペロ

えり(……くちびる……かわいてる……)

えり(…………)ソッ…

えり「…―――ッ!?」ガバッ

えり(わっ、……わた、わたしは今、なにをしていたっ!?)ドキドキドキ

えり(む、無意識に、…くちびるに、指を、這わせ……っ)

えり(ゆ、ゆび、に…舌…っ)

えり「……~~~ッッ////!!」カァァァ

えり(ば、ばかっ!ばかばかばか!!)ブンブン

えり(寝よっ!もう、なんにも考えないで、寝よっ!)ポフンッ

えり(………)

えり(……………)

えり(…………………)

えり「……っ///」

えり(ううぅぅぅううぅぅ~///)ゴロゴロ

えり(このっ……もうっ……あのっ……)

えり「……ばか……っ」

えり(なにがっ!?)

えり(……し、しらないっ!もう、なんでもいいっ!寝るっ!!)

えり(……もうやだ……ぐるぐるする……)

…………………
……………
………

次の日 夕方

健夜「えりちゃん?」

えり「…………」

健夜「えりちゃーん?」フリフリ

えり「…………」ボー

健夜「……えりちゃん」ポンッ

えり「きゃあっ!?」ビクゥッ

健夜「どうしたの?ずっと呼んでたのに」

えり「え?あ、はい、すみません…」

健夜「お疲れ気味?」

えり「そう……ですね。疲れてるかもしれません」

健夜「…ごめんね」

えり「なにがですか?」

健夜「いや、その……疲れてるのに、こんな……」

えり「あ、ああ、いえ。大丈夫ですよ。気にしないでください」ニコッ

健夜「でも……」

えり「ほらっ健夜さんは、そんなことよりも大切なことがあるでしょう?」

健夜「う、うん。それで、スポンジが焼けてね…?」

えり「……えっ?」

健夜「えりちゃんに、味見してもらおうかと…」

えり「え…あ、ああ!そうでしたか!」アセアセ

えり「…でも、スポンジはもう合格をあげましたよ?」

健夜「そ、そうなんだけど…なんか、違うみたいで…」

えり「は、はぁ……これですね。……ああ」

健夜「………ね?」

健夜「なんか、うまく膨らまなくて…」

えり「……なるほど」ハァ

健夜「も、もしかして、もう原因がわかったの!?」

えり「…健夜さん、材料を混ぜるときに、いつもより苦労しませんでしたか?」

健夜「う、うん!そう!混ぜにくかった!」

えり「決まりですね…」

健夜「な、なになに…?」

えり「卵」

健夜「たまご……?」

えり「ちゃんと湯煎にかけましたか?」

健夜「………あッ…」

えり「やっぱり…」

健夜「う、うぅー…!初歩の初歩ー…一番最初に習ったのにぃ~…!」

えり「面倒だったら、湯煎にかけずに室温に戻すくらいでもいいですよ」

健夜「面倒なんてそんなっ!これは、ケアレスミスというか…ウッカリというか……」

健夜「ゴメンナサイッ!」アタマサゲッ

えり「次から気をつけてくださいね」

健夜「ほんとにっゴメンッ!」

えり「さ、次です。デコレーションもマスターしちゃいましょう」

健夜「…………?」チラッ

えり「?」

健夜「…怒らないの?」

えり「え?」

健夜「だって…スポンジの合格貰ってから、たまにスポンジでミスしたら、怒ってたなぁって…」

えり「怒られたいんですか?」

健夜「えっ!?ち、違っ」

えり「じゃ、とりあえず顔あげてくださーい?」

健夜「えっ、えっ」

えり「いきますよー」

健夜「ちょ、待っ」

えり「目…瞑ってください?」

健夜「そ、そういうわけじゃあ…!」

えり「ほら…目、瞑って?」

健夜「ぅ……」

健夜「………」ギュ

えり「はい、偉いですね…」

健夜「……~~っ」ドキドキ…

えり「安心してください。一瞬で終わりますから…」

健夜「ん……」

えり「…………」ジリジリ…


ビシッ

健夜「いっ…っっつぅ~~っ!」

えり「はい、次いきますよ」ニッコリ

健夜「うぅー、えりちゃんのデコピンなんか他の人と違って怖いよー…」

………………
数時間後

えり「…筋が良くなってきましたね」

健夜「そ、そうかな…えへへ」

えり「もうそろそろ、本当に一人でもできるようになるのでは?」

健夜「そ、そうかな?そうかな?」

えり「ええ。作業は私より丁寧だし…」

健夜「いやいや、そんなことないよ」

えり「本当ですよ。…さて、せっかく作りましたし…少し、食べます?」

健夜「!」パァッ

えり「お腹、空いてたんですか?」

健夜「え?……ふふ、実は少し」

えり「夕食の時間まではまだありますが、食べ過ぎないように」

健夜「はーいっ♪」

えり「…じゃあお皿と、フォーク…」カチャカチャ…

健夜「…?」

えり「はい、どうぞ」ニコ

健夜「えりちゃんは食べないの?」

えり「私は……あまり、食欲が無くて」

健夜「そう…なの?」

えり「ええ。…そうだ。このケーキ、健夜さんのお母様やご家族に持っていって差し上げたらどうでしょう?」

健夜「え?」

えり「せっかく作ったんですから、半端に残すのも勿体無いですもんね」

健夜「そ、そっか。うん、そうしようかな」

えり「じゃあ、入れられるような袋持ってきますね」タッ

健夜「あ!えりちゃ……」

健夜「…………」

健夜(なんか…いつもと様子が違うよね……)

健夜(なんか…基本、ぼーっとしてるし…かと思ったら、思い立ったらすぐ行動というか…)

健夜(……仕事、忙しいのかな……)

えり「おまたせしました。これでいいですかね」

健夜「あ、う、うん!ありがとう」

えり「じゃあ、ラップと……このお皿ごと持っていっていいですからね」

健夜「は、はーい……」

健夜(…気のせい、かなぁ…)

……………

健夜「じゃあ、今日もありがとうございました」ペコリ

えり「いえ。気をつけて持っていってくださいね?」

健夜「もちろん!」

えり「ご家族、喜んで貰えるといいですね」ニコッ

健夜「ど、どうかなぁ~緊張する」

えり「大丈夫ですよ。ちゃんとできていましたから」

健夜「ほんと?」

えり「ええ」

健夜「えへへ……」テレテレ

えり「では、お気をつけて」

健夜「はーい、次もよろしくお願いします」ペコリ

えり「はい」

健夜「あ、でも…あんまり無理しないでね?」

えり「?」

健夜「ほら、仕事も忙しいって……」

えり「あ、ああ……大丈夫ですよ、ありがとうございます」

健夜「ん…んー…」

健夜(なんか、不安だなー)

………………
針生家 寝室

えり「…………」グッタリ

えり(たしかに…これは……ひどい)

えり(どうしてこんなに体が重いんだろ…)

えり(お風呂、入って……明日の準備をして…)

えり(明日は……あれ、明日は……)

えり(恒子さんのレッスンも、健夜さんのレッスンもなかったような気が……)

えり(…やっと、休める…)

えり(……いや、仕事はあるか)グッタリ

晩ご飯食べてきます

いてら

――――
三尋木家

咏「んー……」カチカチ

咏「よっし、これでいいんかねぃ!」ターン!

咏(いやー、パソコンなんてほっとんど弄らないからねぃ!)

咏(すこやんにメールして、やっとひらけたぜぃ、通販サイト!)

咏「えーっと、まーずは~」カタ

咏「…………」カチカチ…

咏「…………」

咏(パソコンとか知らんし)

                   l´    ,'::\ヽ∨//_ ヘ:l:.   ',

                   l     !| ̄  ̄/' ´     ',ト::    ',
.                    ,'   Ⅵ    /'        l!∨   ',
                  /   :,'_!|__.{(   _≦千‐<へヽ

.                 //レ//「 ',l -- ´ \   ‐‐ /  ',iヽヘ`ト、
                 //ノヘ // -ヽ_‐   |  , ====ミ  !|:: :: `\
               //  :::i! ! '´ ̄ ̄`  /      ` jレi::: :::.  ', \
.              ///   :::|ヘ.',        '        /!´ !::::   ∧ `',
              // {    ::::|  ト     ー-....‐:::丶l    ,'  }:::   ノ  i!
.             l ! ヽ   :::\.ヘ    ',::::::::::::::::,'     -'/:::  /ヘ. j!
              ヾ / \   ::ヽ人    ヽ:::::; -'-‐っ /「/:::  :::   ∧
.              ∨  ::\  ∨!>   . /, ィ≦ イ  /:  ∧::    ヘ
              /   ::/ ヽ :∨::_レ ´ ヽ _.,ィl }┤ ::|:::  / ∨    \
.             /    /   !_ |/  \  ヽ'‐ヘ」つ、:!:: :{  ::\    :::\
              /  --‐‐ フ::::::ヽ       /´__   l  ├──-ヽ _  ::\
.           / / \ イ::::::::::::::::::::ト  r‐‐   {/ /   ヽ::: \     |  `.i \ ト、
.           /  !  イ⌒ヽ:::::::::::::::::∧ヽ    __ 、イト 、   / \ ヽ   l      \ \
        / /` 彡'      ∨:::::::::::::::∧ク ̄ // .!', `ヾ /、    Y: i   !   |、   \ \
.     / /イ           ∨:::::::::::::イ.  /イ  | ヘ   `i }   ノj/ i  ,'   ,┐、    ヽ
  ___./_/´            ∨::/ ヾ//i !.  !|ヽ\ /,'   / :::i /   ' ::| \   ∧ 、ヽ

咏(だーもう、面倒っちぃなぁー!)

咏(でもなぁー……)

咏「…………」カチカチ…

咏「おっ、これは……んん~?」

咏(……写真じゃサイズとかわかんねー)

咏「……ま、いっか!買いっ」カチッ

咏「さーてと、次に~?」

カチカチ…

………………
翌日 針生家 夕方

えり「んー」ノビー

えり(ついに、栄養ドリンクに頼ってやっと仕事に行けた)

えり(そのせいか……)

えり(……凄い、疲れてる……)ズーン

えり(それに……頭も、痛い気がする……)

えり(……まずいな……多分、これ…体調、崩……)

ピリリリリッ

えり「……!」

ゴソゴソ……

えり「はい、もしもし……」

恒子『はーい、えりちゃーん!』

えり「……ああ、こーこさん…どーしましたか…?」

恒子『…そんなことよりどうしたよ、えりちゃん』

えり「いえ…なんでもないですよー…」グッタリ

恒子『なんでもなくなさそうだけど…』

えり「それよりも、どーしましたか?」

恒子『あ、そうそう。今からそっちに行っても良かったりする?』

えり「今……から……?」

えり「と、いうと…?」

恒子『いやー、実は仕事が早く終わってねー』

えり「はぁ」

恒子『それで、臨時レッスンを頼もうかと』

えり「りんじ、レッスン……」

恒子『い、いやー、良ければ、で良いんだけど…』

えり「えーっと…クリスマスイヴまで、あと何日でしたっけ…?」

恒子『ん?……もう5日切っちゃったんだよねー……』

えり「それで……出来はいかがですか……?」

恒子『す、進んだことは進んだんだけど……一人だと、どうも…遅くて』

えり「……なるほど?」

恒子『と、いうわけでですね…お願いできないでしょうか!』

えり「……………」

えり「……わかりました、いいですよ」

恒子『ホントっ!?』

えり「ええ。じゃあ、後ほど」

恒子『ありがとう!』

えり「あ、あとですね」

恒子『うん?』

えり「マスク持参で」

恒子『マスク?なんd』

えり「では、お待ちしています」

ピッ

えり「……………」

えり(ま、大丈夫よね)

えり(頭痛いのも、気のせいな気がしてきたし)

えり(仕事してたほうが気が紛れるし)

えり(うん、悪くない悪くない)

えり(悪くない……)

えり(…………)

えり(……準備を…しないと……)ゴソゴソ

………………
ピンポーン

えり「はーい」

ガチャ

恒子「どもども。ごめんねー急に!仕事が早めに終わってねー」

えり「構いませんよ、早めに作るに越したことはありません。もう日数も残ってませんし」

恒子「そーなんだよねぇ…。3週間って短いよねー……」

えり「立ち話もなんですから、どうぞ」

恒子「じゃ、おじゃましまーす」

………………

恒子「えっと、ここを、こう……で、と」

えり「ずいぶんと手慣れたようですね…」

恒子「へへへ、こーこちゃんはスーパーだからね」

えり「流石……あ、そこ違いますよ」

恒子「え゛っ!?」

えり「ここを、こう……」

恒子「……えりちゃんセンセー!お手本を見せてくださーい!」

えり「はいはい…よく見ててください?ここを、こう…くぐらせて、」

ピリリリリッ

えり「あ……」

恒子「電話?出てきていいよ」

えり「は、はい…失礼します」

『小鍛治 健夜』

えり「…!?」

ピッ

えり「は、はい…もしもし?」

健夜『もしもし、えりちゃん?』

えり「は、はい……どうしたんですか?」

健夜『えへへ、実はねー…』

えり「……まさか」ダラダラ

健夜『なんと、えりちゃんの最寄り駅前でーす♪』

えり「」

健夜『驚いた?驚いた?』

えり「」

健夜『え、えりちゃーん?アレ?もしもーし』

>>486
× えり「は、はい…失礼します」

○ えり「は、はい…失礼します」タタタ…

えり「……あの」

健夜『あ、良かった。通話状態に異常が出たのかと』

えり「……どうして、そこに?」

健夜『実はね、お母さんのお使いなんだ』

えり「お使い…?」

健夜『この前、ケーキ持って帰ったでしょ?だから、お母さんがお礼にって…少しご飯持たせてくれて…』

健夜『ほら、えりちゃん調子悪そうだったから…。これなら、ご飯作ったり、とかの手間も省けるでしょ?』

健夜『ついでに、なにか買ってきてほしいものない?まだ駅にいるから、買ってから行くよ!』

えり「……健夜さん……」ジーン

えり(なんて優しい人なんだろう……タイミング以外!)

えり「ええっと……」

えり(さて……)

恒子「ここ、を……こう、して、ここに、通して……」アミアミ

えり(どうするべきか……)

ズキッ

えり「………っ」

健夜『えりちゃん?』

えり「……あの」

健夜『うん?』

えり「私、今からそっちに行きますので」

健夜『えっ!?』

えり「駅で、待っていてください」

健夜『い、いやいや!行くよ!だって』

えり「いいですから。…今、ちょっと家に上げられる状態になくて」

健夜『玄関で渡して、それですぐ帰るし……!』

えり「いいから。そこにいてください。……いいですね?」

健夜『えりちゃ……』

ピッ

えり(これで、私だけが行けば…オーケー)

恒子「ん?あ、電話終わった?」

えり「恒子さん、すみません私少し出てきます」

恒子「およ?お出かけ?」

えり「ええ。…勝手に家の中弄ったり、その辺うろつかないでくださいね?」

恒子「わたしゃ子供か!」

えり「ちゃんと進めてるんですよ?」

恒子「うー、りょーかーい……えりちゃん?」

えり「はい?」

恒子「………大丈夫?」

えり「なにが…ですか?」

恒子「顔色悪い。それに、マスク持ってこいとか言ってたし…」

恒子「……もしかして、体調悪いんじゃない?」

えり「……………」

えり「いいえ、大丈夫ですよ」ニコッ

恒子「……そう……?」

えり「じゃあ、行ってきますね」

恒子「う、うん……あ、えりちゃん!」

えり「はい?」

恒子「ほいよっ」ポイッ

えり「わっ…」キャッチ

恒子「前に何度か貰ったから、私もあげる!」

えり「……カイロ……」

恒子「んじゃ、いてらー!気をつけてねー」フリフリ

えり「……ありがとう、いってきます」ニコ

ガチャン

えり(……とは、言ったものの……)

ズキッ ズキンッ

えり「………っっ」フラッ

えり(頭、いたい……)

ビュゥ

えり「……くっ」ブルッ

えり(……寒い)

えり(……カイロ……)ギュゥ

えり「はぁ……はぁっ……」

えり(駅まで……こんなに遠かったっけ……)

えり(体が、重い……)

えり(道路の、車の音が…耳につく……)ズキッ

えり(頭痛薬…飲んでくれば良かったかな……)ハァ

えり(……さむい……)ブルッ

えり(でも、もう少し……もう、少しで……駅……)

やばいよやばい

えり(おかしいな……ちゃんと、厚着してるのに……)

えり(こんなに、寒いなんて……)ブルッ

えり(……あーあ、あったかい、お布団に入りたいなぁ……)フラフラ

えり(………一緒に………)

健夜「えりちゃーん!」タッタッ…

えり「あ……すこや、さ……」

健夜「もう、そんな………あっ!?」

えり(あ、れ―――?)フラッ…

ドサッ

健夜「えりちゃん!?ねぇ、えりちゃんってば!しっかりして…ねぇ!えりちゃん!!」

―――――

…………………
……………
………

えり(……ん……)

えり(なん、だろ……すごく……)

えり(あったかい……)

えり「……んぅ……?」

?「あ………」

同日 夜 病院

えり「………ほ、ぇ?」

?「…………っ」プルプルプル

えり「うた、さん……?」

咏「こンの…ばかッ!!」

えり「ひゃっ……」

咏「ばかっばかばかばかっ!」

健夜「う、咏ちゃん、そのくらいに……」

咏「うるせー!知らんっ!」

えり「健夜さん…も…?」

えり「えっ……と……ここは……?」

咏「びょーいん!お前倒れて救急車で運ばれたんだよっ!」

えり「倒れた……?」

咏「そだよ何回目だよっ!!」

えり「えっと……咏さんと会ってからなら、2回……」

咏「んなこと聞いてねーからぁッ!」

健夜「あ、あの、私お医者さん呼んでくるね?」

タッタッタッ…

えり「………」

咏「…救急車呼んでくれたの、すこやんなんだってさ」

えり「健夜さん、が……」

咏「んで……聞いた。全部」

えり「あ……」

咏「…仕事、とか言ってなかったっけ?」

えり「……すみません」

咏「なんで嘘ついてたん?」

えり「…………」

咏「言っちまえよ、これ以上怒らせんな」

えり「……だって、咏さん……口、軽いから……」

咏「」グサッ

えり「言わないように気をつけていたとしても…お酒の席で、イキオイで…ということもありますし……」

咏「」グサグサッ

えり「だから、やむなく……って」

咏「…………」ゴゴゴゴ

えり「う、咏さん……?」タラー

泣いて別れて帰るレベル

えり「う、咏さん?あの…」

咏「…ほぉーん?えりちゃんは、私が信じられないと?」ゴゴゴゴ

えり「そ、そうではなくてですね、やっぱり人間、アルコールが入るとなにをするかわかりませんし!」

咏「ザルってこと知ってんだろうがー!」

えり「お酒の席でテンション上がって秘密ベラベラ喋ってるのはどこのどなたですか!」

咏「知らんしー話していい事と悪いことの区別くらいできますぅー」

えり「出来てないから言わなかったんでしょう!」

咏「なんだとコンニャロー!」

えり「ええなんですか!?」

咏「てんめ、病人だからって容赦しねーぞ!」

えり「どうぞ、お好きなように!さぁっ!」

咏「…ッ」ギシッ

えり「え」

ドサッ

えり「え、え、ちょ、あのっ…!?」

咏「お好きなように、ってぇ…?」ゴゴゴゴ

えり「あ、その、こ、言葉の…ことばの、アヤで…っ」

咏「……知らんし」ズイッ…

えり「う、うた、さ……っ」

ガチャっ

ドサッ

健夜「お医者さん連れて……何してるの?」

えり「い、いいえ、なーんにも!」

咏「……っ!……っ!!」

えり「……大丈夫ですか」ボソッ

咏「ベッドから落とすとか~~っ!」ボソボソ

えり「落としてませんっ、あなたが焦って落ちたんでしょうが。…発情して」コソコソ

咏「はつじょっ…て、おまっ…」

医者「はいはいそこまでね」

えり「あっ……すみません……」

咏「~~~っ!」ムカムカ

もう襲ってもいいんだよ咏ちゃん

………………

健夜「良かった、なんともなくて」

えり「……情けないです。疲労と寝不足だなんて」

咏「…体力がないんだねぃ」ボソッ

えり「」イラッ

健夜「ま、まぁまぁ……それに、原因は私にもあるし……本当に、ごめん」ペコリ

えり「い、いえ、健夜さんは……」

咏「ホントだよねぃ~」

えり「ちょっと咏さん!?」

咏「んだよ」

健夜「まぁまぁ……」

健夜「咏ちゃん、えりちゃんに無理させちゃだめだよ。まだ熱あるんだから」

咏「熱があって無いようなもんだろ?そんなとこまでニブチンなんだしさ~」

えり「なっ」イラッ

咏「そりゃそーだろーが。どんだけ熱が出てても自分を誤魔化してまで仕事にゃ行くしさー」

咏「自分が限界になるまでほっとくとか。いや、むしろ自分が熱出したことにもギリギリまで気づかない」

咏「んで、そのまんまバタンキュー。はっ、情けない」

えり「っ……」グッ

健夜「ちょっと咏ちゃん!」

独占欲強そうな咏ちゃん

咏「なに?事実だろうが」

えり「……おっしゃるとおりです」

健夜「えりちゃっ……」

えり「ですから…倒れたのは、すべて私の…自分のせいです」

えり「余計な心配をおかけして…すみません、健夜さん」

健夜「う、ううん!そんな…」

咏「だーも、湿っぽいなーっ!そーじゃなくてさー!」

咏「自分で体調管理できねーってんなら、変に秘密がどーたらとかに拘らず、頼れっつーの!」

咏「一人でなんか抱え込んで、一人で無理して、結局倒れるとか。勘弁しろよ…」

咏「すっげー……情けねーじゃん……」

咏「もーさ…なんで言わねーのかなーとかさ…なんで相談してくれないのかなーとかさ…」

咏「頼りねーのかなーって……私じゃ、ダメなのかなーって……」

咏「……わっかんねーことばっかで…さ…。…めちゃくちゃ…不安で…さ…」

咏「なんもわかんねーっつーのに…急に、えりちゃんが倒れたって、連絡だけきてさー……」

咏「すっげー……怖い……じゃん……」

咏「………っ!」グシッ

えり「咏、さん……」

咏「そ、外の空気っ!吸ってくるっ!」タッ

えり「あっ…」

バタンッ

えり「……………」

健夜「……お邪魔……だったよね、私……」ドキドキ

えり「い、いえ!そんなこと……すみません」

健夜「どうして、謝るの?」

えり「色々と…お手数かけました。救急車、呼んでもらった…とか」

健夜「ああ…まったく。本当にびっくりしたんだからね。えりちゃんが来たと思ったら、プツンッて倒れちゃって」

えり「……すみません」

健夜「……さっきはあんなこと言われたけど、やっぱり原因の一旦は私にあると思う」

健夜「だから、こちらこそ……ごめんなさい!」ペコリ

えり「あ、頭を上げてください!そんなこと……!」

健夜「ううん…休日ももらっちゃったし、仕事が終わった後の疲れてるときも、そんな色微塵も見せずに…手伝ってくれた」

健夜「すごく、感謝してる……でも、今は謝らせて……」

えり「健夜さん……」

………………

えり(時間も時間だし、健夜さんには帰ってもらったけれど……)

えり(……咏さん、どこまで行ったんだろう……)

えり(…………)

えり(点滴、終わったかな……?)

えり(それに……もう一つ、気になってることが……)

えり(……ナースコールで、お医者さん呼んじゃえ)

えり(それで……咏さんのところに行こう)

………………
病院 屋上

咏「…………」

ビュゥ

咏「……ふっ」

咏「ぶぇっくしっ」

咏「……んぐ」ズビ

ふわっ…

咏「……!」

えり「風邪、引きますよ」

咏「………」

咏「……はっ、高熱出した本人が偉そうに何言ってんだか」

えり「……まぁ、たしかに」

咏「…………」

えり「…………」

咏「……何しに来たんだよ、病人」

えり「病人は病院の屋上に来たらダメなんですか?」

咏「……良くはねーと思うぜ?さみぃし」

えり「じゃあ、一緒に中に行きましょう?病室は暖かいですから」

咏「……一人で行ったら」

えり「嫌です」

咏「……わがまま」

えり「病人ですから」

咏「…勝手に、したら」

えり「勿論」

咏「………」

えり「………」

咏「……~~~」

えり「………」

咏「~っ!なんなんだよっ!だまーって隣にいやがってさぁ!」

えり「…勝手にしろ、と言ったのはあなたです」

咏「そーだけど! なんつーか
気まずいっつーかさぁー…!」

えり「………ですか………?」ポツリ

咏「えっ……?」

えり「……あなたの隣に居ては……だめですか……?」

咏「なっ……」

えり「………だめ?」ジッ

咏「ぅ……」

えり「…………」ジー

咏「……~~~っ!」

咏「いーよ、居てっ!ここに居なっ!」プイッ

えり「はい、居ます」ニコ

咏(なんなんだよ……ったく……てっきり、謝られるかと思ってけど…)

キュ…

咏「……?」

えり「……あったかい…手……」ニギ…

咏「お、おい……」

えり「ずっと、握っていてくれたんですね……」

咏「………ッ!」

えり「私が、寝ている間……」

えり「…………」ニコッ

咏「………チッ」プイッ

咏(……わかんねー……)ドキドキ

えり「………♪」キュ

咏(なんか…手、握ったりして…遊んでるんだか、知らんけど…)

えり「……咏さん?」

咏「な、なにっ?」ビクッ

えり「…………」

咏「………なんだよ」

えり「ぁ……その……」パッ

咏「あ……」(手、離しちゃった…)

えり「………っ///」

咏(唇に、指を押し当ててる…?)

えり「……その……」ウツムキ

えり「…………いっか」ポソッ

咏「…なんだよ」

えり「……咏さん」

咏「う、うん…」

えり「…………」スッ

咏「?」

えり「頬…冷たい…」

咏「そ、そりゃ…ずっとここに…おい、なにを…」

ちゅっ…

咏「…………」

えり「…………」ドキドキ

咏「………あの、さ」

えり「…………」

咏「そこは、唇だろ。なんでほっぺ」

えり「……風邪、うつすといけないので」

咏「…あー、そっか」

えり「…咏さん?」

咏「……ん」

えり「…ありがとう」

咏「…………えっ」

えり「心配、してくれて」

咏「…………」

えり「それと、ごめんなさい」

咏「……謝罪、先だろ。普通」

えり「……知らんしー……です」

咏「…そっか。知らんか。じゃー、しゃーねーな」

えり「………」ニコッ

咏「……念のため言うけど、まだ怒ってるかんな」

えり「ええ。…罰は、受けます。……埋め合わせと、一緒に…」

咏「………!」ゾクンッ

えり「……すべては、クリスマスに」

咏「…………」

咏「……それまでに、完治させろよ?」

えり「ええ。……約束、ですから」

えり「……それと、ですね」

咏「あん?」

えり「とても、言いにくいのですが……もう一つ、謝らなければならないことが…ありまして……」

咏「…なんだよ」

えり「………」スッ

咏「ん?……携帯電話?」


 from:福与 恒子 
 sub:どこいっちゃったの?
 ――――――――――――――― 
なかなか帰ってこないんで帰りましたー!
戸締りするときにカギ使ったんで
えりちゃん家のカギは私が持っとくね。
ではでは、おじゃましましたー!


咏「…………は?」ピキ

咏「……どぉーゆぅーことかなぁー?」ピキピキ

えり「や、やっぱり、怒りま……す?」ビクビク

咏「んんー?わっかんねーなぁ?全てがまったくこれっぽっちもわっかんねー」

えり「え、ええと、ですね。実は、その…」

咏「んー?実はぁー?」

えり「…恒子さんにも、その…健夜さんのケーキ同様、先生をしていたというか……」シドロモドロ

咏「ふぅ~ん?」

えり「だから、その……」

咏「ふくよんにもお説教がいるねぃ~…」メラメラ

えり「そ、そんなっ」

咏「おぉっと、もちろんすこやんにもするぜぃ~?」

えり「で、でもでも、あの二人にはお世話になりましたし…!」

咏「知らんし。忘れた」

えり「いくらなんでもそれは酷いですよ!?」

えり「だって、あの二人は、その、私達が……っ」

えり「……こ、コイビト…///…同士に……なる、キッカケを……」

咏「あー、そっかそっか。んで?」

えり「だから、その…お二人には、お礼も兼ねて…できる限りのお願いには応えたいと…」

咏「で?できる限りをオーバーするまで応えたわけだろ?」

えり「え……あ……そう、なるの……かな……?」

咏「じゃ、オーバーした分はお釣りが出るだろ?」

えり「え、え? そういう理屈?」

咏「お釣りを、貰いに行くだけだぜ?」ニッ

えり「えっと……えーっと……?」

咏「な?そうだろ?」

えり「……あんまりキツいことしません?」

咏「ちょろ~っとお話するだけだけど~?」

えり「……じゃあ、もうお任せします…」

咏「任された」ニタッ

―――――

恒子・健夜「「へっくしゅんっ!」」

―――――

えり「…………」ブルッ

咏「……さ、病人は病室に戻ってな」

えり「……咏さんは?」

咏「…どうしてほしい?」

えり「…………」

きゅ

咏「……ん。一緒に行こっか」

えり「………ん」コクリ

咏「……さっさと治せよ」

えり「……はい」

咏「クリスマスは、覚悟しとけよ」

えり「…………」タラタラ

咏「覚悟、しとけよ?」ニヤァ

えり「……は、ぃ……」ガクゥ

………………
翌日 病院

恒子「いやービックリしたビックリした」

恒子「まさか、倒れて入院してるとは!」

えり「は、はい……」

恒子「電話しても出ないし、とりあえずメールと、家の方には置き手紙置いといたけど…あ、そだ」ゴソゴソ

恒子「はい、これカギね」

えり「どうも……」

恒子「もー、体調が悪いなら言ってくれればいいのにぃ~!」

えり「すみません……」

恒子「謝ることじゃないけどさ…こっちこそ、ごめん」ペコリ

えり「いえ……こちらこそ、最期まで面倒を見れずに……」

恒子「あはは、大丈夫大丈夫!昨日えりちゃん家で結構進んだんだよー」ゴソゴソ

恒子「ほらっどうだっ!」

えり「わぁ…もうすぐ完成じゃないですか」

恒子「へっへーん!」ドヤッ

えり「…素敵なマフラーが、できそうですね」

恒子「……えへへ。そうかな」

えり「ええ。…きっと、健夜さんも喜んでくれますよ」

恒子「…だと、いいな…」

えり「ね、咏さんもそう思うでしょう?」

咏「…………知らんし」

恒子「見向きもしない!」ガーン

咏「えりちゃんに習ったのに失敗するとかありえねーしー、喜ばれないんだったらすこやんかふくよんのセンスがおかしいだけだしー」

恒子「むぐぐ……」

えり「……やれやれ」

恒子「そ、それで……咏ちゃん?」

咏「あ?」

恒子「そのぅ……この件は、すこやんに秘密の方向で、ですね……」

咏「…知らんし」

恒子「えぇっ!?」ガーン

えり「もう、咏さんっ!」

咏「チッ…わぁーってるよ、言わねー」

恒子「ほんっと、よろしく頼んます!」

咏「ったく…これで言ったらえりちゃんの苦労パァだからねぃ……」ポツリ

えり「しーっ」

恒子「ん?なんか言った?」

咏「べーつにぃ~?」

えり「あとは…ラッピングも考えないといけませんね…」

恒子「…………」

えり「恒子さん?」

恒子「忘れてたっ!」

えり「……はぁ」

恒子「ナイスえりちゃんっ!買ってこなきゃっ!」

えり「ええ。プレゼントの第一印象はラッピングですから、素敵なものを選んでくださいね」

恒子「うん!思い立ったら即行動っ!行ってきますっ」

恒子「じゃあね、咏ちゃん!えりちゃんもお大事に!」

えり「ありがとうございます」

咏「おー、はよどっか行け」

恒子「じゃっ」

パタンッ タッタッタッ…

えり「……ふふ」

咏「……楽しそうだねぃ」

えり「ええ。…成長した生徒を見ている気持ちです」クスクス

咏「……あ、そ」

………………

えり「んっ…」パクッ

健夜「…………」ドキドキ

えり「…はい、合格です」ニコッ

健夜「ほっ、本当に!?」

えり「ええ。よく頑張りましたね」

健夜「やっ……たぁぁぁ!!」バンザーイ

咏「うっせー、病室では静かにって書いてあんだろ」

健夜「あっ……と。やばいやばい…」

えり「そこまで気にする必要も…ここ、個室ですし」

健夜「合格…えへへ、ごーかくかぁ……ふふふ♪」ルンルン

咏「……ずいぶん嬉しそうだねぃ」

健夜「だって、えりちゃん厳しかったんだもーん♪」

えり「そ、そんなにですか……?」

健夜「スポンジだけでいくつ作ったか……」

えり「……ええ、そのスポンジのお陰で私は10日前後で4kg痩せましたよ……」

健夜「痩せっ……!?」

咏「…熱のせいじゃなかったのかよ、そのやつれた感じ」

健夜「ええっ!?」

健夜「ふ、普通逆じゃあ……」

えり「あのお菓子、お腹に貯まるんですよ……それに、満足感も得られるように食感も残しましたから」

えり「夕食のとき、食欲が湧かず…何日か夕食を抜いたら、いつの間にやら」ハァ

健夜「だって、そんな、4kgって……」ワナワナ

咏「…その様子じゃすこやん、太ったか」

健夜「う゛っ」グサッ

えり「健康的でいいじゃないですか。私はお医者さんに太れって言われちゃって…」

健夜「う゛ぅっ…」グサッ

健夜「…………」ズーン

咏「アレだな、帰るときに走って帰るしかねーな」ニヤ

えり「ちょっと、咏さん…変なこと言わないでください」

健夜「……ううん」スック

えり「え?」

健夜「走りながら、帰るっ!」

えり「い、いやいや、走ったからって痩せるわけでは…!」

健夜「いーもんっ!走るもんっ!」

えり「は、はぁ……」

えり「じゃあ、行く前にちょっと」

健夜「なにっ?」

えり「念のため、復習を。一番最初に気をつけることは?」

健夜「たまごは湯煎にかける!泡立て過ぎない!最後まで手は抜かない!」

えり「焼くときに大事なことは?」

健夜「オーブンを予め温めておく!竹串で確認する!焼けたら高いところから落とす!」

えり「よろしい。では最後にアドバイスを」

健夜「?」

えり「スポンジが焼けたら、一晩かそのくらい、冷蔵庫に保管しておいてください。寝かせたあとに、デコレーションをしましょう」

健夜「どうして?」

えり「ご存知のとおり、やきたてのスポンジはフワフワですよね」

健夜「うん。寝かせちゃったら、あのフワフワ無くなっちゃうんじゃあ…?」

えり「いいえ。それよりも残念なことになってしまいます」

健夜「…そ、それは…?」ゴクリ

えり「フワフワなものに、すぐにイチゴやらなにやらを乗せてしまっては、潰れてしまうでしょう?」

健夜「………あっ」

えり「スポンジがちゃんと落ち着いてから、デコレーションを始める。……いいですね?」

健夜「……うんっ!」キリッ

えり「よろしい。…それと、健夜さん」

健夜「うん?」

えり「ラッピングは…どんなものにするか、考えていますか?」

健夜「…………」

えり「……まさか」

健夜「忘れてたぁーッ!!」ガーン

えり「……はぁ。アナタタチハ、本当に……」

健夜「か、買ってこないとっ」ガタッ

>>621
× えり「……はぁ。アナタタチハ、本当に……」

○ えり「……はぁ。アナタたちは、本当に……」

えり「はい。焦って転ばないように気をつけて」

健夜「そ、そんなことしないよっ!」

えり「あと、病室は多少騒いでも大丈夫ですが、病院内を全力疾走しないように」

健夜「は、はーい…」

えり「…では、素敵なケーキを作ってくださいね」ニコッ

健夜「……うんっ!ありがとう!」

健夜「じゃあ、お大事に!咏ちゃんもばいばい!」

パタンッ

えり「……ふふ」クスクス

咏「クッ、くくっ…」

えり「……ほんと、そっくりですよね」クスクス

咏「ああ、第一印象真逆なのにな」ニヤニヤ

えり「…さて。これで私の“先生”としての役目も終わりですね…」

咏「どうだったよ、センセー」

えり「……大変でしたけど、楽しかったですよ」ニコッ

咏「……そっか」ニッ

ピリリリリッ

咏「……おいおい、電源入れっぱなしかよ」

えり「ま、まぁまぁ……あ、メール……2件?」

『そういえば、マフラーって完成の締めはどうすればいいんだっけ~?助けてえりちゃんセンセー!』

『ラッピングって、どんなのがいいかな?やっぱり箱…?リボンは赤?うぅーん、迷うっ!』

えり「…………」

咏「……まだお役御免、ってわけにはいかないみたいだねぃ~…」

えり「……やれやれ」ハァ

キリがいいので、今日はこの辺でお開きにしようと思います
しかし、しばらくの間、時間ができそうにないので
このスレは落として頂いて構いません
うぅん、昨日今日で終わらせられなくて申し訳ない…

火曜日の昼、もしくは水曜日の昼あたりにまた立てて、今度こそ完結させます
ひとまず、保守支援読んで下さった方ありがとうございました

次はいよいよクリスマスイヴ、えりさんをとことん追い詰める予定…多分
咏さんのストレス、ついに発散。……多分

ふんふむ
また同じスレタイでいいんかな?

>>629
そーそー
同じスレタイです

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