さやか「あ、あたしたちの中に化け物が……?」(439)

さやか「っ……い、いやだ!あたし、こんなとこに居たくない!」

まどか「さ、さやかちゃん!?」

ほむら「あなた、何を……!」

さやか「あたしはここを出て行く!
    化け物が居るかも知れないのに、こんなところに居られないよ!」

マミ「み、美樹さん、落ち着いて……!」

杏子「外は嵐なんだぞ!?それに外に出たってどうしようもないだろ!」

さやか「う、うるさい!嵐だろうがなんだろうが、ここよりは安全だ……!」




その日の朝

さやか「みんなおっはよー!」

ほむら「あなたが集合時間より早く来るなんて、珍しいわね」

さやか「そりゃそうでしょ!だってせっかくの旅行だよー?もー楽しみで楽しみで!」

マミ「ふふっ、楽しみで寝られなくて遅刻、なんてことにはならなくて良かったわ」

杏子「あー、さやかならあり得るね、確かに!」

さやか「し、失敬な!確かにあんまり寝られなかったけどさ……。
    それより、まどかたちはまだ来てないの?」

ほむら「そろそろ集合時間だし、もうすぐ来るとは思うけど……」

まどか「みんな、おはよー!ほらママ、パパ!もうみんな来ちゃってるよぉ!」

詢子「ほぉー、まだ集合時間1分前だってのに、みんなきっちりしてるねぇ」

ほむら「おはようございます」

詢子「うん、おはよう。いやぁごめんね。
   せっかくの子どもだけの旅行に大人が付いて来ちゃってさ。
   でもまー万が一ってこともあるからね。
   あ、出来るだけみんなの邪魔はしないようにするから、そこは安心して良いぞー?」

くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、まどか達のみんなへのメッセジをどぞ

まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

マミ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

ほむら「・・・ありがと」ファサ

では、

まどか、さやか、マミ、京子、ほむら、俺「皆さんありがとうございました!」



まどか、さやか、マミ、京子、ほむら「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

マミ「いえ、邪魔だなんて。付いてきていただいてありがとうございます」

知久「あはは、どう致しまして」

さやか「たっくん久し振りー!しばらく見ない間に、こんなに大きくなってー!」

タツヤ「あい!おーきくなった!」

杏子「しばらく見ない間って、あんたたちこないだ会ったばっかじゃなかったっけ?」

さやか「むむ、野暮な奴め!たっくん!成敗してやれー!」

タツヤ「あいー!」

杏子「おわっ!やめなよ、子どもは手加減ってやつを知らないから苦手なんだって!」

まどか「えへへへっ。良かったぁ、みんな馴染んでくれてるみたいで」

詢子「よーっし、それじゃあみんな揃ってるし、早速行こうか!」

さやか「はーい!」




詢子「……さてと。チェックインも済んだし、それぞれの部屋に向かおうかね。
   それじゃ、みんな楽しみな。行動は別々だけど、何かあったらすぐ連絡するんだよ?」

ほむら「はい、ありがとうございます。みなさんも、ごゆっくり」

さやか「じゃあね、たっくん。
    お姉ちゃんの面倒はこのさやかちゃんがばっちり見ちゃいますからねー!」

まどか「も、もう。さやかちゃんってば」

知久「それじゃあみんな、まどかをよろしく頼むね」

マミ「ふふっ……はい、任せてください」

タツヤ「ばいばーい」

杏子「はぁ……やっと解放された。来たばっかだってのにもう疲れちゃったよ」

マミ「鹿目さんのご家族、とっても良い方ばかりね。付いて来てもらって良かったわ」

杏子「まー、まどかの家族は良いとしてさ。……なんであんたまで付いて来てるわけ?」

QB「なんでって、魔法少女のケアも僕の仕事だよ。
  確かにワルプルギスの夜を越えてからの見滝原は比較的平和だけど、
  旅行先で何か無いとも限らないからね」

さやか「別に付いてくるのは良いけどさ……出来るだけ遠くに居てよね」

QB「やれやれ、嫌われたものだね」

ほむら「当然でしょう。みんなあなたの正体を知ってるんだから。
    どうせ付いて来た理由も、本当はまどかが目的なんでしょう?」

QB「…………」

まどか「わ、わたしは契約なんてしないからねっ!」

QB「……もちろん機会があれば契約を提案しようと思ってるのは事実だ。
  でも、君たちに何かあったら困るというのも本当だよ」

杏子「ふん、どーだか」

マミ「まぁ、拒否しても結局こっそり付いて来ちゃうだろうし、仕方ないわね。
   付いてくるのは構わないけど、さっき美樹さんが言ってた通り、
   あんまり近くには寄らないでね、キュゥべえ?」

ほむら「無闇に近付くと体が1つ減ることになるわよ」

QB「はいはい、わかったよ」

さやか「それはそうとマミさん、これからの予定なんかは何かあるの?」

マミ「えぇ。この近くにね、島があるらしいの。
  小さな島なんだけど、自然が豊かで景観がとっても綺麗なんですって。
  だから、まずはそこに行ってみようかなって」

ほむら「良いんじゃないかしら」

杏子「あたしは島の景色より美味いものが食べたいよ。
   海が近いんだし、海鮮系の名物とかありそうじゃん?」

まどか「あははっ、美味しいものなら晩ご飯でたくさん食べられるよ」

杏子「んー……まぁ、我慢した方が美味しく食えるかもね。よしっ、じゃあ早速行こうぜ!」

さやか「食べ物のことばっか考えてないで、ちゃんと自然も楽しみなさいよ?
    でも早く行きたいっていうのは同感だね!
    さっさと部屋に荷物置いて行っちゃいましょうよマミさん!」

マミ「ふふっ、そうね。1泊2日しかないんだもの。
  時間をめいっぱい使わないともったいないものね」




船着場

さやか「ここに船が来るんだねー……って、あれ?」

詢子「ん?おー、なんだ。もしかして、みんなもあの島に行くのかい?」

まどか「えっ、うん。っていうことは、もしかしてママたちも?」

詢子「まぁねー。しかし、あの島に目を付けるとはなかなか渋いねぇ。
   結構穴場だって聞いてたんだけどなぁ。さては、かなり下調べして来たね?」

杏子「あー、通りでマミの奴、夜遅くまで雑誌やらパソコンやらを見てたわけだ」

ほむら「そうなの?一生懸命調べてくれたのね」

マミ「も、もう、佐倉さん!みんなには言わないでって……」

杏子「なんでだよ?別に良いじゃんか」

マミ「だって、あんまり張り切りすぎちゃってるのが知られたら、
ちょっと恥ずかしいじゃない……?だから……」

さやか「くぅ~!マミさんってばもう!やっぱり可愛いなぁ!」

マミ「こ、こら!先輩をからかうんじゃありません!」

まどか「……ぷっ、あははははっ」

マミ「鹿目さんまで……」

まどか「あ、ごめんなさい……でも、えへへっ。やっぱりちょっと、可愛いなって」

マミ「……もうっ」

ほむら「ふふっ……良いじゃない、巴さん。褒められてるんだから」

杏子「そうだぞ、マミ。喜んどきなよ」

マミ「あんまり褒められてる気がしないわ……」

マミ「あ、そうだわ。それより、電話しないと」

さやか「電話?」

知久「それなら大丈夫。もう僕たちの方でしておいたよ」

マミ「まぁ、本当ですか?すみません、ありがとうございます」

まどか「マミさん、電話って何ですか?」

マミ「えっとね。あの島は住んでる人も居ないし人の行き来もあんまり多くないから、
  普段はフェリーみたいなのは出てないらしいの。
  だからシーズン以外は、たまに島に行く観光客のために出してくれる小さな船があるくらいで。
  後は、自然や遊歩道を管理するための定期船くらいみたい」

杏子「なるほどね。こんな妙な時期に島に行きたいなんて変わった観光客は
   自分で連絡して船を出してもらうってわけだ」

ほむら「つまり無人島、ということになるのかしら」

マミ「そう言うと大袈裟に聞こえるけれど、そういうことになるわね」

さやか「へー。なんていうか、本当に穴場っぽいなぁ。よく調べられましたね、マミさん」

杏子「だから言ったろ?毎晩夜遅くまで……」

マミ「もう、佐倉さん!」

ほむら「……船、来たみたいよ」

まどか「あっ、ほんとだ!」

男「いやー、お待たせしました。そんじゃ、行きましょうか。
 早速乗っちゃってください。足元に気をつけてくださいねー」




さやか「おぉー!結構スピード出るもんだねぇ!」

マミ「船が小さめだから、思ったよりも揺れるわね」

ほむら「まどか、大丈夫?船酔いはしてないかしら」

まどか「う、うん。まだ大丈夫……」

杏子「思ったより距離があるね。島までもつかい?
   まー、最悪でも海に魚の餌をばら撒くことになるだけだしね」

QB「魚の餌?まどかは魚の餌なんて持ってるのかい?」

ほむら「持ってないわ。黙りなさい。話しかけないで。近くに寄らないでと言ったでしょう」

QB「近寄るなと言っても、船が小さいんだからしょうがないじゃないか」

ほむら「魚の餌になりたいの?」

QB「やれやれ……わかったよ。極力話しかけないようにするよ。
  だからその物騒なものをしまってくれ。まどかの両親に見付かってしまうよ?」




詢子「ふー、着いた着いた。思ったより長かったねぇ」

タツヤ「ねっちゃ、だいじょーぶー?」

知久「船酔いしちゃったのかな。大丈夫かい?」

まどか「えへへ、大丈夫。ちょっとだけ酔っちゃったけど、すぐに治るよ。心配しないで」

さやか「まどかのことはあたしたちで看てるんで、先に行っちゃってください」

詢子「そうかい?んー……ま、確かにそんなに酷く酔ってるわけでもなさそうだし、
   ここはお言葉に甘えておこうかね。
   それじゃ、こっからは当初の予定通り別行動ってことで」

男「帰りは何時頃にしますかね?大体決めてもらえればありがたいんですが」

詢子「それじゃー……3時頃で良いかな。みんなはどうだい?」

マミ「はい、大丈夫です」

男「3時頃ですね。そんじゃ、お待ちしてますんで」

知久「はい、ありがとうございます」

杏子「あ、そうだ。なぁおっちゃん。この島で何か美味いもんとか食うとこないかい?」

さやか「あんたまだ諦めてなかったのか」

男「ん~?美味いもん、ねぇ。一応、もしもの時のために食料を備蓄してる建物はあるが、
  そりゃあ非常用だ。観光客用に、ってのは今はねぇなぁ。一応シーズンなんかには、
  新鮮な魚介をその場で調理するってのもやってるんだけど、まぁ時期が悪かったな」

ほむら「だそうよ。残念だったわね、佐倉さん」

杏子「ちぇっ。やっぱ夜まで我慢か」

詢子「そんじゃみんな、また3時頃にここで待ち合わせね」

知久「まどかのこと、よろしくね」

ほむら「はい、それでは、また」

さやか「……ねぇまどかー。あんまりきついんだったら、魔法で治そうか?」

杏子「船酔いなんて治せんのか?怪我を治すのとはわけが違うぜ?」

マミ「治せないということはないでしょうけど……」

まどか「う、ううん、良いの。こんなことで、魔力使わせられないよ。
    それに本当に大したことないから、大丈夫」

ほむら「酔い止めを持ってくるべきだったわね……ごめんなさい」

まどか「ほ、ほむらちゃんが謝ることないよぉ」




まどか「……うん、もう大丈夫!みんなごめんね、わたしのせいで待たせちゃって……」

さやか「あれ、もう良いの?まだ10分くらいしか経ってないよ?」

マミ「気を遣ってるんじゃない?本当に大丈夫?」

まどか「はい、本当にもう平気です。心配かけちゃってごめんなさい」

ほむら「少しでも体調が悪くなったら、すぐに言うのよ?」

杏子「むぐむぐ……。ん、もう治ったのかい?よっし、そんじゃ行くかー」

さやか「って、あんた何食ってんのよ!?」

杏子「見りゃわかんだろ?おにぎりだよ」

さやか「あ、あんた……1人だけリュック背負ってると思ったら……。
   なーんで自然散策だって言ってんのに食べ物持ってきてんのよ!」

杏子「歩きながら食うんだよ。いつものことじゃん」

さやか「そりゃそうだけどさぁ……」

まどか「あははっ、旅行先でも杏子ちゃんは杏子ちゃんだね」

ほむら「花より団子という言葉はこの子のためにあるようなものね」

マミ「食べ歩きは構わないけど、ゴミを捨てたりしちゃ駄目よ?」

杏子「だいじょーぶ、そんくらいは分かってるよ」

マミ「そう、なら良いの。それじゃ、行きましょうか」




まどか「わー、こんな自然の中歩いたのなんて、何年ぶりかなぁ」

ほむら「自然の中は空気が美味しいというけど、本当にそう感じるわね」

さやか「ん~、こうして思い切り息を吸い込むと、森の香りとほのかなマヨネーズの香ばしい……。
    って杏子ぉ!あんたもうちょっと離れて歩きなさいよ!」

杏子「あん?なんでだよ?」

さやか「あんたのツナマヨのせいで雰囲気台無しになってんの!風下に行きなさい風下に!」

杏子「ちぇっ。はいはい……」

マミ「他に人が居なくて良かったかもね。
   周りの人にまで食べ物の匂いをかがせちゃうところだったわ」

まどか「もしかしたら、匂いに釣られて動物が集まって来ちゃったりして!」

さやか「あははっ、そりゃ良いね。でも、熊とか出てきちゃったらどうするー?」

まどか「えっ!?そ、それは怖いよぉ」

ほむら「待って」

まどか「……ほむらちゃん?」

ほむら「みんな、気付いたかしら」

杏子「ちっ……あーあ、マジかよ」

まどか「!ま、まさか、本当に熊が……!」

QB「いいや、熊なんかじゃないよ。これを幸いと捉えるかどうかは別にしてね」

まどか「キュゥべえ!じ、じゃあもしかして……」

マミ「まったく……こんなに人が居ないところに出るなんて、変わったこともあるのね」

さやか「移動中にたまたま見つけちゃった、って感じですかね?」

QB「そうだろうね。きっと人の多いところへ向かっている途中だったんだろう。
  君たちに見付かってしまったのは、魔女にとって運がなかったと言えるね」

杏子「ったく。せっかくの休暇だってのに邪魔してくれちゃってさ」

マミ「仕方ないわね。早く倒してしまいましょう。
  放っておいたら鹿目さんのご家族が危ないかもしれないものね」

ほむら「そうね。まどか、今から結界に入るわ。私のそばから離れないでね」

まどか「う、うん!」

さやか「そんじゃ、行きますか!」




15時、船着場

詢子「おっ、来た来た。ぴったりだね」

知久「みんな、楽しかったかい?」

さやか「いやー、自然って良いですね!
    完全にリフレッシュしちゃいました!思ったより早く倒せたし!」

詢子「倒せた?何が?」

さやか「えっ、あー、なんでもないです!こっちの話、こっちの話!」

まどか「そ、それより、たっくんどうだったー?お散歩楽しかったー?」

タツヤ「あい!たのしかったー!」

マミ「そう言えば、まだ船は来てないんですか?」

知久「そうみたいだね。まぁ、もうすぐ来るとは思うよ」




30分後

まどか「うーん……なかなか来ないね」

さやか「混んでるのかなぁ?」

ほむら「海の上で何が混むというのよ」

知久「一応、電話してみた方が良いかも知れないね」

マミ「あ、だったら今度は私が……あら?ごめんなさい、圏外みたい……」

さやか「えっ!……うわ、あたしもだ」

ほむら「……私もね」

まどか「わ、わたしも……」

さやか「杏子、あんたは……って、あんた携帯持ってなかったわね」

杏子「ふん、悪かったね」

詢子「あたしもパパも駄目……ってことは、全滅か。参ったね、不便な島だよ。
   仕方ない、もう少し待ってみるか」

……電話が使えないのなら待つしかない。
しかし、そこから更に30分が経ち、そして1時間経ったが……
一向に船が現れる気配はなかった。

まどか「たっくん、寝ちゃったね……」

詢子「……ったく!良い大人が仕事もきっちりできねえのか!」

知久「ママ、落ち着いて……。でも困ったなぁ。
   このまま待ってても船は来そうにないね。
   みんな、ちょっとここで待っててくれるかい?どこかで電話を借りれないか探してくるよ」

そして、更に1時間後。
もうすぐ日が暮れようかという頃に、知久は戻って来た。
しかし、その表情は暗く……

知久「駄目だ、かなり探してみたけれど、電話は1つしかなかったよ。
   しかも、その電話も使えなかった。電話自体が故障していたのか、
   回線に問題があったのかは分からないけど……」

詢子「えぇ!?おいおい、ってことは……」

ほむら「……今日はこの島に泊まることになりそうね」

マミ「そんな……!もう向こうのホテルにお金払っちゃってるのに……」

詢子「そこは大人に任せな。あのおっさんに、きっちり責任取らせてやる」

さやか「さ、流石まどかママ、頼もしい……」

杏子「泊まるのは良いとしてさ、どこに泊まるわけよ?どっかアテがあるの?」

詢子「んー……この島の大きさが大きさだからなぁ。無人島に宿泊施設があるかどうか……」

まどか「……あ、確か山の方に、ペンションみたいなのがあったと思うよ!」

マミ「そう言えば……えぇ、確かにあったわね。散策中に、少し離れたところに見えたわ」

知久「本当かい?だったら、そこに案内してもらえるかな」

さやか「へー、ペンションかぁ。でもいきなり行って泊めてもらえるかなぁ?」

ほむら「そもそも、今営業しているのかも怪しいわね。
    けどここに居ても仕方ないし、とりあえず行ってみましょう」

マミ「そうね。それじゃ鹿目さん、行きましょうか。2人で案内しましょう」

まどか「あ、はい!」




マミ「……ここで、間違いなさそうね」

まどか「はい……良かったぁ、ちゃんと着けて」

詢子「ほー、結構立派なペンションじゃないか。観光シーズンはそこそこ盛況してるみたいだね」

知久「でも、明かりが点いてないね。やっぱり人は居ないのかな……」

杏子「まぁ良いや。とりあえず入ってみようぜ」

さやか「あのねぇ杏子、誰も居ないのに鍵開いてるわけが……」

杏子「……開いてるみたいだけど?」

さやか「えっ、マジで?」

杏子の言う通り、確かに扉の鍵は開いていた。
しかし、中はやはり暗い。
人の気配もない。
まず杏子が先陣を切って中に入り、スイッチを探り当てて明かりを点ける。

杏子「おーい、誰か居ないのかーい?」

知久「……誰も居ないみたいだね」

詢子「じゃあなんで鍵が開いてたんだ?閉め忘れか?」

まどか「どうしよう……。誰も居ないのに勝手に泊まったりしたら、怒られるかなぁ?」

ほむら「でも……今から別の泊まれるところ探すとなると、少し大変になるわね」

さやか「もう日も落ちてるし、この暗い中、
    山道を歩くのはちょっとなぁ……。たっくんも居ることだし……」

詢子「……仕方ない。誰も居ないけど、ここを使わせてもらおう」

知久「そうだね……。僕たちだけならまだしも、君たちに何かあったら大変だ。
   さやかちゃんの言う通り、もう外はかなり暗い。
   明かりもないし、こんな状態で山道を歩き回るのはさすがに危ないからね。
   責任者の人には明日にでも事情を説明しよう。責任は僕たちが持つよ」

マミ「えっ、で、でも……」

詢子「まー良いから良いから。こういう時こそ、大人には頼っておくもんだよ?」

杏子「……だってさ、マミ。普段あんまり頼れないんだ、ここで頼っておこうぜ?」

マミ「え、えっと……あ、ありがとうございます!」

知久「どういたしまして。それじゃ、僕はタツヤをベッドに寝かせてくるよ。
   さすがに、腕が疲れてきたからね」




さやか「うーん、なんていうか……誰も居ないペンションに泊まるっていうの、
    なんか悪いことしてるみたいでドキドキしちゃうよね」

マミ「実際、悪いことだと思うんだけど……」

杏子「まー固いこと言うなって。ワケありなんだし、別に大して悪いことでもないっしょ」

さやか「あんたが今までしてきたことに比べればそうかもね、なーんて!」

杏子「ちぇっ、今そのことを引き合いに出すなよな。もうやってないっての」

さやか「あははっ、ごめんごめん」

まどか「ほむらちゃんも、あんまりドキドキしてないみたいだね……」

ほむら「……まぁ、私のしてきたこともかなり悪いことばかりだから」

さやか「あー、確かに時間停止なんて、ガンガン悪いことに使っちゃえそうだよね!
    テスト中に時間止めちゃえば、カンニングし放題じゃん!
    はっ……あんたまさか!」

まどか「さやかちゃん……ほむらちゃんはそんなことしないよ」

ほむら「悪いことをしたとは言え、私利私欲のために使ったことなんて一度もないわ……」

マミ「テスト中に時間を止めるだなんて……」

杏子「そんな発想すんの、さやかくらいじゃないの?」

さやか「えっ!?う、うそ!?」

杏子「時間停止があんたの魔法じゃなくて、本当に良かっ……ん?」

さやか「あれ、この音……雨?」

マミ「あら、本当……それも結構強いわね」

くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、まどか達のみんなへのメッセジをどぞ

まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

マミ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

ほむら「・・・ありがと」ファサ

では、

まどか、さやか、マミ、京子、ほむら、俺「皆さんありがとうございました!」



まどか、さやか、マミ、京子、ほむら「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

ほむら「降り出す前にここに着けて、良かったわね」

まどか「そうだね……あ、パパ、ママ。おかえりー。たっくん、どうだった?」

詢子「あー、もうぐっすり。よっぽど疲れたんだね」

知久「この感じだと、夜中に目を覚ましてそのまま寝てくれないっていうパターンかも知れないね」

詢子「あははっ、それは勘弁してよー。こっちも結構歩いて疲れてるんだからさぁ」

知久「そうだね。でもまぁ、雨に濡れずに済んだから、それはラッキーかな」

詢子「確かにねー。それに、雨が降ったとなればこのペンションを使う理由が1つ増えたよ。
   こんな状態じゃあ、無断で使ったってそこまで怒られることはないだろ!」

知久「こらこら、滅多なことを言うものじゃないよ。良くないことをしてるのは確かなんだし」

詢子「わかってる、冗談さ」

詢子「それより……もうこんな時間だ。さすがにお腹空いてきちゃったね」

杏子「あー、確かに」

さやか「あんた、あんだけ食べといてやっぱりお腹減るんだね……」

マミ「でも、どうしましょう。食べるものなんて何も……」

詢子「んー、一応昼間の弁当の残りならあるよ。
   別に痛んじゃいないとは思うけど……こんなので良かったら、食べるかい?」

杏子「痛んでないんなら全然問題ないよ。それ、みんなで食っちまおうぜ!
   食い物を粗末にするわけにもいかないしね」

詢子「そうかい?そんじゃ、そうしよっか。
   量はそこまでないけど、まぁみんな女の子だしね。一晩越えるくらいにはなると思うよ」

知久「女の子だし、か。それじゃあ僕は、ちょっとだけ我慢しなきゃね」

詢子「まー良いんじゃない?最近ちょっとお腹出てきたような気もするしさ」

知久「え、そうかなぁ……あはは、参ったね」

さやか「…………」

詢子「ん?どーした、さやかちゃん」

さやか「あ、いえ。2人とも、すごく仲良さそうで良いなー、って」

マミ「自分と上条くんもあんな風に……ということかしら?」

さやか「おぶんっ!?」

まどか「えー?今のさやかちゃんたちも十分仲良しだと思うけどなぁ」

マミ「あのね、鹿目さん。美樹さんは将来、上条くんとけっこ……」

さやか「ちょ、ちょっとマミさぁああん!?」

さやか「あなた何言ってんすか!ほんとマジで!」

マミ「ふふっ、昼間にからかわれたお返しよ」

さやか「うぐっ……!お、おのれぇえ……」

杏子「マミって結構根に持つ性格してるからな。今後は気を付けなよ、さやか」

マミ「佐倉さん?何か言った?」

杏子「!あー、いや、なんでもない。お、おぉ!これ美味そうじゃん!いっただきー!」

ほむら「……この人はあまり怒らせない方が良いわね」

まどか「う、うん、そうだね……」

マミ「でも本当に美樹さんの言う通り、仲が良いですね」

知久「あはは、面と向かって仲が良いって言われると、ちょっと照れるなぁ……。
   そうだ。僕はちょっとタツヤの様子を見てくるよ!」

詢子「あ、逃げた。まったく、何も照れることなんてないと思うけどなぁ」

まどか「パパってば、たっくんさっき寝かせに行ったばっかりなのにね。
    どうせすぐに戻ってくるのに……」

まどかの言う通り、知久はすぐに戻って来た。
ただ、その様子は先ほどとは少し違っていた。

詢子「?なんだ、どうかしたのか?」

知久「いや、それが……タツヤが居ないんだよ。
   確かにさっきまでベッドで寝てたはずなのに、居なくなってるんだ」

まどか「へっ?起きてどこかの部屋に行っちゃったのかな?」

詢子「……よし、あたしも探すよ」

ほむら「あたしたちも、手伝いましょうか?」

詢子「あー、大丈夫大丈夫。部屋の数はそう多くないし、すぐ見付かるからさ。
   みんなはそこでのんびりしてて」

そう言い、詢子は立ち上がって知久と2人席を外した。

杏子「あーあ、これだから子どもってのは。ちょっと目を離すとすぐどっかに行きやがる」

マミ「そんなことを言わないの。あなただってそんな時期があったはずよ」

杏子「いーや、あたしはそんなことなかったね」

さやか「そんなのあんたが覚えてないだけで……」

と、その時……廊下の方が突然騒がしくなった。

杏子「なんだ、急に……?」

マミ「……何かあったみたいね。行ってみましょう」

その場に居た5人は一斉に立ち上がり、声のする方へと急ぎ足に向かう。
すると、廊下の奥から知久と詢子が姿を現した。
その様子は、明らかにおかしい。
血相を変え、2人ともかなり慌てたように見える。

まどか「ふ、2人ともどうしたの!?たっくんに何か……!」

知久「う、裏口が開いてた!」

さやか「えっ……!?そ、それってもしかして!」

詢子「全部の部屋探したけど、見付からなかった……!
   タツヤ、外に出ちまったんだ!この暗いのに、雨も降ってるのに、山の中に1人で!」

マミ「そんな……!」

まどか「す、すぐ探しに行かなきゃ!」

さやか「あたしたちも手伝います!」

詢子「いや、あんたたちは待ってろ!あたしたちで探す!」

まどか「でも……!」

詢子「これ以上心配の種を増やすなって言ってんだ!」

まどか「っ……」

知久「ママ、駄目だよ、少し冷静にならないと……!」

詢子「冷静にだって……!?こうしてる間にもタツヤが……」

知久「良いから、落ち着くんだ!……みんなにも少し、手伝ってもらおう」

詢子「て、手伝ってもらうったって、でも……」

知久「ただし、このペンションの周りだけだ。ペンションの位置が見えるくらいまでなら、
   山の中とは言ってもそう危険な場所はなかった。
   そのくらいの距離までなら、この子たちにも任せて良いはずだよ」

詢子「っ……わかった、じゃあ手伝ってくれる子は懐中電灯持って外に出てくれ!
   部屋に1つずつあるはずだ!
   ただし、絶対ペンションから離れすぎるんじゃねえぞ!」

そう言い残して詢子と知久は外へ飛び出し、
ペンションには5人が残される。

まどか「わ、わたしたちも……!」

ほむら「待って、まどか!」

まどか「ほむらちゃん!?と、止めないで、たっくんが……!」

杏子「いいや、あんたはここで待ってろ。あんたの弟はあたしたちで探す」

まどか「そ、そんな、どうして……」

マミ「あなたはここで、たっくんの帰りを待っていて。
  もしかしたら、戻ってくるかもしれないでしょう?
  その時に誰も居なかったら、下手をするとそのまま、またどこかへ行ってしまうかもしれないわ」

まどか「っ……そ、それは……」

さやか「まどかには、まどかの出来ることをして。
    外の捜索は……あたしたち魔法少女の仕事だよ!」

まどか「みんな……!」

マミ「それじゃあ鹿目さん、留守をよろしくね!」

さやか「たっくん、絶対帰ってくるから、心配しないで!」

ほむら「信じて、待ってて」

杏子「ったく、世話のやけるガキだね、ほんと」

魔法少女の4人は変身し、外へ飛び出し、バラバラに散らばった。
確かに魔法少女なら、タツヤ捜索の成功率は格段にあがるだろう。

まどか「……お願い、たっくん、無事で居て……!」

……あれから何分が経っただろうか。
30分は経ったようにも感じるが、もしかしたら10分も経っていないかもしれない。
まどかには1分1秒が、長くも、短くも感じていた。

QB「大変なことになったね、まどか」

まどか「キュゥ、べえ……な、何しに来たの……!」

QB「言わなくても察しは付いてるんじゃないかな」

まどか「っ……」

QB「みんな魔法少女に変身して君の弟を探しに行ったみたいだけど、本当に見付かるのかな?
  昼間ならまだしも、今は夜中だ。草木も生い茂っているし、それに雨足も強い。
  これじゃあ視覚にも聴覚にもほとんど頼れないよ。
  いくら魔法少女の感覚が強化されてると言っても、
  こんな状況で小さな子どもを探し出すなんて不可能に近いとは思わないかい?」

まどか「そ、そんなこと……」

QB「君が本当にそう思ってるなら良いんだけどね。
  でもそんなことを言って、手遅れになったとすれば君は間違いなく後悔するよね。
  ただ君の選択次第では、そんな運命を避けることは造作もないよ。
  君の祈りはもう決まってるはずだ。だから僕と契約して、魔法少女に」

ほむら「それには及ばないわ……!」

まどか「ほむらちゃん……!?」

QB「……まどかの弟を探しに行かなくても良いのかい?」

ほむら「巴さんから、たっくんだと考えられる動きを感知したとテレパシーがあったわ。
    もうすぐ、連れて帰って来てくれるはずよ」

まどか「ほ、本当!?たっくん、見付かったの!?」

QB「なるほどね……。リボンを細く長く、蜘蛛の巣のように張り巡らせたのか。やるじゃないか。
  ただそんなことをすれば魔力の消費もそれなりになるはずだよ」

ほむら「昼間狩った魔女のグリーフシードがある。何の問題もないわ」

まどか「じゃあ、本当に大丈夫なんだね……!?」

ほむら「えぇ。きっとそろそろ……」

マミ『みんな、見付けたわ!やっぱりたっくんだった!
  今は気を失ってるみたいだけど、ちゃんと無事よ!』

さやか『本当ですか!』

杏子『へっ、手間かけさせやがって』

ほむら「……今確認が取れたみたいよ。たっくん、ちゃんと無事だって」

まどか「よ……良かったぁあ……!」

マミ『今から、ご両親の近くまで行って、気付いてもらえるように寝かせておくけれど、
   それでも良いかしら?そうでもしないときっとあの人たち、
   見付かるまで何時間も探し続けるわ。
   山道が危ないのはご両親にも言えることだし、それに早く安心させてあげたいから……」

さやか『確かに、そうだね。それじゃあ、マミさんお願いしても良いですか?』

杏子『せっかく見つけたのに、ここからヘマするってのは勘弁だぜ?』

さやか『こらぁ!フラグを立てるな!
    マミさんのフラグ回収率結構高いんだからやめてよ!』

マミ『……美樹さん、あとでちょっとお話良いかしら?』

さやか『えっ』

ほむら「……たっくんよりさやかの心配をした方が良いかも知れないわね」

まどか「えっ!さ、さやかちゃんどうしたの!?大丈夫!?」




さやか「な、なんてこった……あたしとしたことが失言を……」

マミのテレパシーを受け、さやかはペンションへと戻っていた。
タツヤが見付かったという安心感と、
帰ったらどんなお仕置きが待っているのかという不安で、複雑な心境だった。
そんな精神状態で、既に集中力も切れており、
さやかの視界は先ほどよりはクリアでなくなっていた。
集中していればあるいは、それが見えていたかもしれない。

さやか「……ん?今、何か……」

視界の端で、何かの影がちらりと動いたような、そんな気がした。

あのシルエットは……人……?

しかし常識的に考えて、こんな時間に、
雨の中で、山の中を、1人歩いている人間なんて考えられない。
あり得るとすれば自分たちのような特殊なケースか、あるいは……人間でないか。
視界の悪さとその“常識”が、
見間違えという結論を導き出したのも仕方のないことだった。




まどか「ママ、パパ!たっくん、大丈夫なんだよね!」

知久「うん……!怪我もないし、今は眠ってるだけだよ!」

詢子「心配かけさせやがって、このバカ息子……!
   目ぇ覚ましたら、たっぷり叱ってやるから、覚悟しろよ!」

まどか「うん、うん……ぐすっ……」

知久も詢子も、目に涙を浮かべながらタツヤに顔を寄せて笑う。
まどかも安心したのか、泣き出してしまった。

さやか「いやー、ほんと!無事見付かって良かったよ」

マミ「ただちょっと、全身濡れちゃってるから風邪をひいたりしないか心配ね」

知久「そうだね……とりあえず服を脱がせて、体を拭いてあげよう。
   着替えはないけど、室温をあげて布団をかぶせればきっと大丈夫だ」

詢子「よっし、それじゃあタオルの準備だ!備え付けの奴が十分あったはずだよ」

まどか「わ、わたしは布団の準備してくるね!」

そうして、鹿目家は全員タツヤについて、一部屋に集まった。
リビングには魔法少女とキュゥべえだけが残される。

杏子「あんたさ、いい加減にしなよほんと」

QB「そう言われても、契約を結ぶのが僕の仕事なんだから」

さやか「たっくんは無事に見付かったんだから、契約に頼る必要なんてないでしょ!?」

QB「それは結果がそうであっただけだよ。
  事実、あの時点ではまだ見付かっていなかったじゃないか」

さやか「このっ……!」

マミ「やめておきなさい、美樹さん。これ以上口論したって無意味に苛立つだけよ」

QB「やれやれ……そんなことより、ちょっと気になることがあるんだ」

ほむら「今この状況で、あなたの話を聞くと思うの?」

QB「そう言わないで聞いて欲しいな。これは君たちにとっても重要なことになるはずだよ」

杏子「重要なこと、ねぇ。どうあたしたちに関係するってのさ」

QB「君たちが今ここに居る原因に関わる話だよ」

マミ「ここに居る原因って……乗って帰るはずの船が来なかったからよね?
  それと関係するって言うの?」

QB「その通りだ。その船が見付かったよ」

さやか「は?どこで?」

QB「君たちが待っていた場所から見て、ちょうど島の反対側の船着場さ。
  そこにあの船が泊まっていた」

杏子「おいおい、マジかよ?
   じゃあ何、場所間違えてたっての?しっかりしてくれよな、おっさん」

マミ「もしかしたらそっちが帰り専用の船着場だったのかも知れないけど、
   それにしたって説明不足よね?まったくもう……」

さやか「それで、操縦士の人は?」

QB「遠目に見ただけだから姿を確認したわけじゃないけど、
  近くに小屋があったからそこに居るんじゃないかな?」

さやか「…………」

ほむら「……さやか、どうかしたの?」

さやか「えっ?あー、いや、別に。ま、とりあえず良かったね。
    船が来てるってことは、この嵐さえやめばすぐにでも帰れそうだし」

事故だとか、何か問題があったわけではなくて、一安心。
タツヤも無事見付かったし、みんながほっと気を抜いた、その時。

異変は起こった。

  「きゃぁあああああああああッ!?」

突然の悲鳴。
リビングに居た4人は、雷に打たれたように立ち上がる。

マミ「今の、鹿目さんたちの部屋からよね……!?」

ほむら「まどか……!!」

まず最初に駆け出したのはほむら。
後に続いて、3人とキュゥべえも悲鳴の元へ向かう。

まどかたちが居る部屋へ辿り着き、ほむらは勢いドアを開け、

ほむら「まどか、どうした……」

言葉を最後まで続けることができなかった。
ほむらに続いて、マミ、杏子、さやかも部屋に着く。
そして部屋の様子を見、同じように言葉を詰まらせた。

まどか「ぁ、あぁ……ぃ、ぁ……」

床に座り込み、壁に背を付けるまどか。
背中に壁があるのに、それでもまだ後ろへ後ろへ下がろうと、足を動かしている。
そしてその体は、真っ赤に染まっている。
まどかの体だけではない、部屋中が、真っ赤に染まっている。

まどかの目線は、1箇所に釘付けになっているようだった。
同じように、他の4人も、キュゥべえすらも。
1箇所から目が離せなかった。

それは、ベッドの上。
そこは本来、タツヤが寝ているはずの場所。
しかし、今そこに居るのは……

タツヤ「あぅー、きゃははははは!」

顔は、タツヤだった。
しかし、顔以外は、タツヤなんかではない……人間ですらない。
いや、あんなモノは、誰も見たことがない。
喩えて言うならまさに……化け物だった。

タツヤの顔をしたそれの体は、色や質感は人のそれに近かった。
しかし、昆虫のような足が何本もあり、胴体からは触手のようなものが何本も飛び出し、
うねうねと動き続けている。

この異常な状態で真っ先に動くことが出来たのは、杏子。
ソウルジェムをかざし、魔法少女に変身する。

杏子「て……てめぇッ!一体なんなんだ!?」

タツヤ「うー?きょーこ、きょーこー!きゃはははははは!」

“タツヤ”は顔だけを杏子の方へ向け、一見すると無邪気な顔で笑う。

マミ「き、キュゥべえ!あれは何なの!?た、たっくんなの!?」

QB「まさかアレは……!違うよ、マミ。アレは鹿目タツヤじゃない!」

さやか「っ……!じ、じゃあ……」

ほむら「見た目通りの、化け物ということね……!」

杏子「それなら……遠慮はいらねぇな!?この、化け物がぁああッ!!」

杏子は、“タツヤ”に斬りかかる。
そして、触手の1本を斬りおとし、

タツヤ「ぃぎゃぁああアアア!!オォオオオオオオオオッ!!」

杏子「なっ……ぐうッ!?」

さやか「杏子!!」

“タツヤ”はおぞましい叫び声を上げたかと思うと、残りの触手で杏子の体を吹き飛ばした。
壁に激突した杏子はうめき声をあげたが、すぐに立ち上がる。

杏子「ってぇな、くそ……!」

QB「その攻撃じゃあ無理だ。アレを倒すには、脳を破壊しないと!」

ほむら「……脳の位置なら、大体わかるわ」

そう言ってほむらは拳銃を取り出し、狙いを付け……発砲した。
銃弾は、“タツヤ”の額の中央を撃ち抜き、そして……
“タツヤ”は倒れ、そのまま動かなくなった。

杏子「し……死んだのか?」

さやか「た、多分……」

マミ「……!そうだわ、鹿目さんのご両親は……ッ!」

詢子と知久は、探すまでもなくすぐ近く……ベッドの横に居た。
ベッドの上の化け物に目線を奪われていたから、気付かなかったのだ。
しかし、床に倒れている2人は……一目見ただけで手遅れだと分かるほど、酷い状態だった。
この部屋全体を真っ赤に染めたのは2人の血なのだということが、その場に居た全員に理解できた。

QB「これは……もう、無理だね。死体は修復できたとしても、蘇生は不可能だ」

マミ「そ、んな……」

さやか「うぅッ……!」

杏子「……くそっ……」

3人は、3つの死体を見て呆然とする。
その3人を尻目に、ほむらは部屋の隅で震えるまどかの元へ駆け寄り、声をかける。

ほむら「まどか、大丈夫!?怪我はない……!?」

まどか「っ……ぇ、ぁ……ほ、むら、ちゃ……」

目を見開き一点を見つめ、小刻みに震えていたまどかだったが、
ほむらの呼びかけに反応して顔を向ける。
そしてその直後、ほむらに寄りかかるように倒れてしまった。

ほむら「まどか!?しっかりして、まどか!?」

QB「大丈夫、気を失ってるだけだ。命の危険はないよ」

マミ「暁美さん、あなたは鹿目さんの体を綺麗にしてあげて。
   血の汚れと、それから、どこか怪我をしてないかも診てあげて……」

ほむら「え……えぇ、わかったわ」

ほむらはまどかを浴室へと運び、
そして、死体のある部屋には、3人とキュゥべえが残る。

さやか「……2人の死体、傷は一応治しておいたよ。でも……」

マミ「やっぱり、駄目だったのね……」

QB「それは仕方ないよ。でもあそこまで酷かった遺体の損壊を直すなんて、流石さやかだね」

さやか「……うるさいな」

QB「あれ?褒めたつもりだったんだけど……」

杏子「おい、それよりキュゥべえ……。こいつは、何なんだ?魔女……じゃないよな?」

QB「そうだね、これはれっきとした生命体だ。ただし……この星の生き物じゃないけどね」

さやか「こ、この星の生き物じゃない!?そんな、漫画みたいな……」

杏子「……いや、逆に納得できるな。こんなのが地球の生き物だって言う方がどうかしてるよ」

QB「きっと隕石か何かに付着して、この星に辿り着いたんだろうね。
  詳しいことはほむらが戻ってきてから説明させてもらうよ」




リビング

さやか「ほむら……。まどか、大丈夫そう?」

ほむら「……分からないわ。少なくとも怪我はなかった。眠ってるように見えるけれど、
    目を覚ました時に何か精神的ダメージが残ってないとも限らない……」

マミ「そればっかりは、仕方ないわね……」

ほむら「3人の、遺体は……?」

杏子「まだ部屋に置いてあるよ。
   ここで埋めちまうか、明日病院に連絡するか、まどかに決めてもらおうと思ってさ」

さやか「ただ……たっくんの死体は……」

マミ「……そのことも、鹿目さんの目が覚めてから考えましょう」

マミ「今はそれより、優先することがあるわ」

ほむら「……そうね。キュゥべえ、アレについて説明してちょうだい」

QB「アレはね、鹿目タツヤに擬態していたんだよ」

マミ「擬態って……ニセモノのたっくんということ!?
   じゃあ、本物のたっくんは、どこに……」

QB「残念だけど、本物はもう居ないよ。アレに捕食されてしまった」

ほむら「っ……捕食、ですって……?」

QB「つまり、アレの細胞は獲物の細胞を食い尽し、その細胞に成り代わるんだよ。
  そうやって細胞レベルで擬態しつつ増殖し、その生き物自身に成りすまし、
  同種の生き物に接近し、同じように捕食する。
  それを繰り返して、自分の仲間をどんどん増やしていくんだ」

さやか「な、何、それ……。そんな生き物、聞いたことがないよ!?」

QB「当然だよ。だって、地球の生き物じゃないんだから」

マミ「……この島には、ずっとアレが潜んでいたということ……?
  じゃあまさか、この島に来たことのある人は全員……!」

QB「いや、少なくとも今日の昼間までは、そんなことはなかったはずだ。
  もしそうだとすれば、船の操縦士の正体は間違いなくアレだろう。
  でも、彼は君たちを襲ったりしなかった。1人ずつ襲おうと思えば、いくらでも出来たはずだよ」

ほむら「1人ずつ……?あの化け物には、その程度の知性があるということかしら」

QB「その程度どころか、君たちと同レベルの知性を持っていると思って良い。
  さっき行った通り、彼らは細胞レベルで獲物に成り代わるんだ。
  つまり、知性も擬態したものと同じレベルになることができる」

さやか「う、うそ……」

マミ「でも、さっきのたっくんのニセモノは、それほどの知性があるようには……」

QB「それは、擬態したのが鹿目タツヤだったからだよ。
  彼に精巧に成り代わったからこそ、知性で言えば3歳児程度の知性しか備わらなかったんだ。
  不用意にあんな姿を晒してしまったのはそのせいもあるかも知れないね。
  もっとも、基本的には本能で擬態に徹するし、
  アレが完全に擬態していれば、本物との判別は僕にも不可能だ」

杏子「ちっ……まぁとにかく、あの化け物は島の外には出ちゃいないってことで良いんだね?」

QB「今のところはね」

さやか「じゃあこの化け物は今日初めて地球に来たってこと?なんでよりによって……」

QB「これは僕の推測なんだけど……さっきマミが言った通り、
  この島にはずっとアレが潜んでいたんじゃないかな。
  ただし、恐らくは長い眠りについていたんだろう。それが今日、目を覚ましたんだ。
  きっかけは多分……昼間の魔女との戦いだろうね。そう考えるのが一番自然だ」

マミ「っ……そんな……!」

さやか「あ、あたしたちが、あの化け物を起こしちゃったって、こと……?」

QB「まぁ、結果的にはそうなるだろうね。でも仕方ないことだ。
  それに君たちが何もしなくても、いつかは何かのきっかけで目を覚ましていたと思うよ。
  とにかく、ここが無人島だったのは運が良かったかも知れないね。
  もし他にたくさん人が居たなら、被害はこんなものじゃ済まなかったはずだ」

さやか「そ……そう、だよね。それに、さっきもう、化け物は倒したんだし、これで……」

マミ「……本当にそうかしら」

ほむら「巴さん……?」

マミ「アレが目を覚ました時……この島に居たのは、本当に私たちだけ?」

杏子「……おいおい、まさか……」

QB「操縦士の男が、アレに成り代わられている、ということかい?」

QB「つまり……君たちをこの島から逃がさないために、わざと船を隠していた。
  マミ、君はそう考えているんだね。……確かにそれなら辻褄が合うよ」

ほむら「でも……船があるのなら、こんな島なんて出て行ってもっと人の多いところに
    行った方が良いんじゃないかしら。
    目的が仲間を増やすことだとすれば、そっちの方が遥かに……」

杏子「目の前の獲物から確実に、ってことかもね。
   化け物も化け物なりに慎重になってるってことじゃないの?」

マミ「……旅行者の私たちを仲間にしておけば、
  もっと早く広範囲に仲間を増やせる、ということかも知れないわね」

さやか「ちょ、ちょっと待ってよ!それじゃあこの島に、まだあの化け物が居るってこと!?」

QB「可能性としては、あるだろうね。
  もちろん、操縦士は普通の人間で、ただ船着場を間違えた可能性だってある。
  ただ、もし本当に彼がアレだとすれば、船着場の小屋なんかじゃなくて、
  きっとこの近くに身を潜めているんじゃないかな」

さやか「この近くに……あっ……!」

マミ「美樹さん?」

さやか「あ、あたし、見たかも……そいつ、見たかも!」

杏子「なんだと……!?いつ、どこで!」

さやか「マミさんからたっくん見付けたってテレパシーがあって、ここに戻って来る時!
    一瞬ちらっと、人影みたいなのが見えたんだよ……!
    あの時は、こんなとこに人が居るはずないって、気のせいだって思ったけど、
    もしかして、あれが……!」

ほむら「本当に……!?本当に、見間違いじゃなかったの!?」

QB「だとすると……鹿目タツヤを外に連れ出したのは、それの仕業かもしれないね」

さやか「……!」

十分に、あり得る話……。
いやむしろ、その可能性が圧倒的に高かった。

全員口には出さなかったが、おかしいとは思っていた。
3歳の子どもが、真っ暗で雨も風も強い屋外に、1人で出ようとするものだろうか、と。
だが、連れ出されたのであれば、それも納得の行く話になる。

すぐ近くに、高い知性を持った化け物が居る。
だとすると、この状況で最も危険なのは、1人になることだ。

……1人……?

さやか「ま、まどか……!」

立ち上がったのは、全員同時。
そして、裏口の方から小さな物音が聞こえたのもそれとほぼ同時だった。

全員、裏口へと走る。
ただし、可能な限り音を消して。

そして、廊下の角を曲がり、裏口が見える。
そこには……

男「……!」

間違いない、操縦士の、あの男だ。
顔を確かめた瞬間、男が何か行動を起こすよりも早く、

杏子「マミ!」

マミ「わかってる!」

マミはリボンで、男を拘束した。
手足を完全に封じられた男は、そのまま床へ倒れ込む。

男「なっ……!?お、おい!なんだこりゃ!?どうなってんだ!?」

QB「この男はちょうど今入ってこようとしていたところみたいだね。
  まどかに何かされる前に間に合って良かったよ」

マミは男を拘束したまま、外へと連れ出した。
それに引き続き、他の3人も外へ出る。

さやか「あ、あんた……ここに、何しに来たのよ……!?」

男「何って、ペンションの明かりが点いてたから、変だと思って……。
  もしかしたら昼間の客たちが居るんじゃないか、って……」

杏子「だったら正面から堂々と入ってくりゃ良いだろ。
   なんで裏口からコソコソ入ってくんだよ?」

男「船着場からの最短距離だと、こっちのが近いんだよ!
  あ、そ、そうだ、申し訳ない。俺が昼間、船着場間違えちまったんだ、ほんと、申し訳ない」

ほむら「……普通の人間にしか見えないわね」

確かに、その通りだった。
縛られて悶えるこの男の姿は、先ほど見たあの化け物の姿とは重ならない。

さやか「ね、ねぇ。この人本当に、あの化け物なの?あたしたちのことも覚えてるっぽいし……」

杏子「ふん……記憶があるかどうかなんて、アテになりゃしないよ。
   タツヤのニセモノだって、あたしの名前を呼んでただろ」

男「お、おい!?さっきから何を言ってんだ!化け物!?なんのことだよ!?」

QB「杏子の言う通りだ。彼らは、獲物を完璧にコピーできるんだ。
  記憶の有無は判断基準にはならないよ」

マミ「ねぇ……本当に見分ける方法はないの?」

QB「僕には不可能だけど、君たちには方法がないわけじゃないよ。
  彼に、失血させてみると良い」

ほむら「……失血?」

QB「動脈を傷つけたりして、大量に失血させるんだ。そのまま放って置けば
  普通の人間なら失血死するだろうけど、もしニセモノならその程度では死なないよ。
  血液の量を操るくらい、彼らにとって造作もないことだからね。
  血を抜かれても死なないという点では、君たち魔法少女と似ているかもしれないね」

さやか「同じにしないでよ!あんな化け物と!」

QB「おっと、悪かったよ。まぁ確かに魔法少女と比べるのは間違いかな。
  傷の回復力は魔法少女ほど高くはないし、人間に擬態した今、脳を打ち抜かれれば即死してしまう。
  生物としての耐久力は実はさほど高くないんだよ。擬態の精巧さと攻撃力に特化した生き物だからね」

杏子「……なるほどね。そんじゃ早速、こいつの頚動脈でも切ってみるか?」

男「な、何を言ってるんだ!さっきから誰と話してる!?
  頭おかしいんじゃないのか!?お前ら、俺を殺す気か!?」

杏子「安心しなって、あんたが普通の人間なら死にはしないよ。死ぬ前に治してやるからさ」

杏子は男の首筋に槍の切っ先を添える。

杏子「そんじゃ……さやか頼んだよ」

さやか「わ、分かった」

ほむら「……本気なの?」

男「やっ、やめろ!やめてくれ、頼む、やめてくれッ!!」

マミ「っ……でも、仕方ないわ。こうするしか……」

杏子「大丈夫、そんなに痛くないようにするから……さ!」

そうして勢い良く、槍を引いた。

男「がッ……!?」

男の首筋から、勢い良く血が噴き出る。
キュゥべえ以外の全員が、その瞬間だけは思わず目を逸らさずにはいられなかった。

男「が、あっ、あアッ……!」

さやか「うッ……!」

血の噴出は止まらない。
果たしてあれからどれだけの時間が経っただろうか。

この男の失血量は、尋常じゃない。
そろそろ傷口を塞いでやらないと、まずいんじゃないか。

さやか「っ……だ、駄目だ!これ以上はもう、本当に死んじゃうよ!」

我慢の限界だと言う風に、さやかは男へ駆け寄ろうとする。
しかし、それを杏子に止められた。

杏子「待てさやか!」

さやか「と、止めないで!だって、あんなに血が出て、苦しんで……!
    やっぱり普通の人だったんだ!!早く、治さないと……」

杏子「だからだよ!!」

さやか「は、はぁ!?あんた、何言って……」

杏子「“血を出し過ぎてる”し、“苦しみ過ぎてる”んだ、こいつは……!」

さやか「だ、だから、早く治さないと……!」

杏子「馬鹿!おかしいと思わないのか!?」

さやか「な、何が……!」

QB「失血の量が、普通じゃない。普通の人間なら、意識が朦朧としてくるはずだよ。
  いや……既に意識を失っていてもおかしくない」

マミ「……でも、この人は……」

男「た、頼む、早く止めてくれ、血が、止まらない、止めてくれ……!」

さやか「っ……!」

それから更に時間が経ち、どう考えても、この男から出た血の量は、
普通の人間ならとっくに失血死しているはずの量を超えていた。
しかし……

男「くそっ、なんで、早く、止め……!」

ほむら「……決まりね」

QB「うん、間違いない。この男は、人間じゃない」

杏子「あんたさ……もう下手な芝居はやめなよ。とっくにネタは上がってんだ」

男「な、何を……」

マミ「あなたが出した血の量……人間ならもうとっくに死んでるのよ」

男「ッ……くそ、離せ、離しやがれぇええッ!!ああぁああァアアアアアア!!」

突然男は叫び出し、そして……その体から、触手が生え始めた。

さやか「こ、この……化け物ォオ!!」

さやかは咄嗟に男に斬りかかる。
その剣は、男の首と胴体を一撃で切り離した。
首は地面を転がったが……胴体の触手はまだ蠢いている。

杏子「ちっ!首を切り落とすだけじゃ駄目ってか!」

ほむら「やっぱり、脳を潰さないと……!」

マミ「わ、わかったわ!」

マミは転がった頭に狙いをつけ、引き金に指をかける。
引き金を引く……その直前。
男の首は笑った。
そして、言った。

男「お前らの中に、仲間が居るぞ」

 パァン

マミの銃撃により、男の頭は弾け、胴体も動かなくなった。
しかし……その場に居た全員も、動けなかった。

杏子「……今、あいつ、なんて言った……?」

さやか「あたしたちの中に、あ、あいつらの仲間が……?」

ほむら「いいえ……!あいつの嘘という、可能性だって……!」

マミ「く……苦し紛れの、はったりということ?」

QB「もちろんその可能性もあるだろうね。ただし……事実である可能性だって否定できない」

マミ「そう言えば……大切なことを聞いていなかったわ。
   キュゥべえ、あの生物は、どうやって獲物を捕食するの……?」

QB「自分の細胞を、獲物の体内に侵入させるんだ。
  一番効果的かつ確実性が高いのは、傷をつけて傷口から侵入させることだろうね。
  その男の体のどこかに、傷痕はないかい?」

ほむら「……あるわ。背中に、何かに刺されたような傷が……」

さやか「そ、それじゃあ、この化け物に傷を付けられるだけで、
    こいつらの仲間になっちゃうってことなの!?」

杏子「ちっ……まるでゾンビ映画だな。皮肉なもんだよ」

マミ「で、でも、大丈夫よね?私たちは、誰も、傷なんて……あっ……」

マミは突然、何かを思い出したように、杏子を見る。

杏子「あん?なんだよ?」

マミ「佐倉さん、確かあなた、たっくんのニセモノに……」

ほむら「……!攻撃を、受けていた……!」

杏子「は、はぁ!?」

くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、まどか達のみんなへのメッセジをどぞ

まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

マミ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

ほむら「・・・ありがと」ファサ

では、

まどか、さやか、マミ、京子、ほむら、俺「皆さんありがとうございました!」



まどか、さやか、マミ、京子、ほむら「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

杏子「ちょっと待ちなよ!ま、まさかあんたら、あたしを疑ってんのか!?」

さやか「待って杏子、落ち着いて……!」

杏子「これが落ち着いていられるかよ!?あたしは化け物なんかじゃない!
   確かに攻撃は食らったが、あれは打撃だった!
   傷なんか付いちゃいないよ!!なんなら見てみるか!?」

ほむら「でも、魔法少女なら傷なんていくらでも……」

杏子「このっ……!ふざけんな!とにかくあたしは違う!!化け物なんかじゃない!!」

QB「みんな、その理由で杏子を疑うことは出来ないんじゃないかな。
  君たちは魔法少女なんだ。
  仮に多少細胞を捕食されたとしても、再生能力の方が勝ると思うよ」

さやか「そ……そう、なの?」

QB「それから、アレの細胞に侵入された獲物は、その瞬間に一度意識を失うはずだ。
  目を覚ますまでの時間は場合によって差があるみたいだけどね。
  でも、杏子はアレの攻撃を受けても意識ははっきりしたままだっただろう?」

さやか「じゃあ杏子は……」

杏子「だからそう言ってるだろ!」

マミ「……ごめんなさい、佐倉さん」

杏子「ちっ……まぁ良いさ。とりあえず安心したよ。
   あたしたちの再生能力の方が上ってんなら、成り代わられる心配はないってことだよな?」

QB「だと良いんだけどね。今のはあくまでも、侵入してきた細胞が多少であればの話だ」

ほむら「……どういうこと」

QB「深く大きな傷を付けられて、大量の細胞を侵入させられたとすれば、
  君たち魔法少女だって彼らに全細胞を食い尽くされてしまうだろう。
  まぁ……数秒もかければ、十分な量の細胞を侵入させられるだろうね」

マミ「そんな……!」

さやか「で、でもさ!とりあえずあたしたちは、誰も傷なんか付けられてないんでしょ?
    だったら、やっぱりあいつの嘘……」

杏子「いや、待て。確かにあたしたちは傷は付けられてない。だけど……」

ほむら「っ……!まさか、まどかを疑っているの!?」

マミ「そう言えばたっくんも……今の鹿目さんみたいに、気を失っていたわよね」

QB「なるほど、確かに今のまどかの状況はあの時の鹿目タツヤに似ているね」

さやか「ま、待ってよ!まどかが気を失ったのは、精神的なショックを受けたからでしょ!?」

ほむら「そうよ……!まどかが化け物になんか、なっているはずがない!」

その時。
裏口から外に、1つの影が出てきた。

まどか「……ば……化け物って、どういうこと……?」

俺くん!?

まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

マミ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

ほむら「・・・ありがと」ファサ

では、

まどか、さやか、マミ、京子、ほむら、俺「皆さんありがとうございました!」



まどか、さやか、マミ、京子、ほむら「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

さやか「まどか!?」

そこには、目を覚ました鹿目まどかが立っていた。
恐らく、外で言い合う数人の気配を感じ、様子を見に来たのだろう。

まどか「ね、ねぇ、みんな……。一体、どういう、こと……?
    わたしが、化け物って……ひっ!?」

まどかはふと視線を落としたかと思えば、怯えた悲鳴をあげる。
その視線の先には、男の首と、胴体があった。

まどか「こ、これ、さ、さっきの……たっくんと、同じ……。し、死んでるの……?」

杏子「……この化け物はな、人間に化けるんだよ。それも、本人そっくりに」

まどか「え……」

まどかはかなり動揺していたように見えたが……。
すぐに杏子の言葉の意味を理解したのか、一瞬で顔の色を変えた。

まどか「ッ!?ち、違うよ!?わたし、違うよ!わたしは、に、人間だよ!!」

ほむら「ま、まどか、落ち着いて……!」

まどか「ゃっ……いやぁ!違うよ!わたし、人間だよ!やめてぇ!殺さないでぇ!!」

さやか「まどか、違うよ、落ち着いて!殺したりなんかしないよ!大丈夫だから!」

まどか「……っ……っひ、ぅえっ、ひぐっ……!」

マミ「大丈夫よ、鹿目さん。あなたを殺したりなんか、しないわ。絶対に」

杏子『おい……早いとこ、やっちまおう』

さやか『なっ……まさか、まどかにも、さっきと同じことを!?』

杏子『仕方ないだろ!これしか方法はないんだ!』

マミ『っ……えぇ、やりましょう……!』

ほむら『なっ……何を言ってるの!?まどかの首を切る!?ふざけないで!』

杏子『……さやか、ほむら、分かってくれ。これは必要なことなんだ』

ほむら『だ、駄目よ……!まどかを傷つけるなんて、そんな……!』

マミ『私だって、こんなことしたくない……!
  でも、鹿目さんの無実を証明するためなの……お願い……』

さやか『ほ……本当に、これしか方法はないの……!?』

QB『そうだ、今はもうこの方法に頼るしかない』

杏子『やるしかないんだよ。ただし……絶対に頼むぞ、さやか。
   あんたを信頼してるから、あたしはこれだけ思い切れるんだからな』

さやか『っ……わ、わかった……!』

QB『さやかの覚悟は決まったようだね。さて、君はどうするんだい、ほむら』

ほむら『……絶対に、まどかを死なせないで。約束して』

さやか『や……約束する!命を賭けるよ!』

ほむら『痛みも、感じないように、出来るだけ……』

杏子『あぁ、分かってるよ』

ほむら『……わかったわ、やってちょうだい。まどかの無実を、証明するために……!』

杏子「……なぁ、まどか」

まどか「っ……き、杏子、ちゃん……?」

杏子「理由は、あとで説明する。だから、許してくれ」

まどか「え……」

杏子の言葉が何を意味しているのかを考えるよりも早く……
まどかの頚動脈は切られた。

まどか「えっ……あ、ぇ、えっ……?」

まどかは、自分の首に温かいものを感じ、手で触れる。
そして手が真っ赤に染まったのを見て、
何が起きているのか理解できないという風に、助けを求めるように……

まどか「ぁ、血、その、あれ?血が、ね、ねぇ、血が、いっぱい、と、止まらないの……」

杏子「っ……」

まどか「いっぱい、こ、これって、酷い、怪我だよね、血が、出て、ね、ねぇ、これ……」

自分の体からこれほど大量に出血しているところを初めて見たのだろう。
まどかは自力で血を止めようとしているのか、手で傷口を押さえる。
しかし、その程度では当然、血は止まらない。

まどか「ゃ、やだ、やだよぉ、血、止まら、ひっ、ぅえぇ、やだ、やだよぉお……!」

恐怖が混乱より遅れてやって来たらしく、遂にまどかは泣き出してしまった。
まどか以外は、1人も声を発していない。
その場に、まどかの泣き声だけが響き渡る。

……しかし、その音量は段々と、小さく、か細くなっていき、
そして……

杏子「さやかあッ!!」

杏子の怒鳴り声にも近い一言が、全てを物語っていた。
まどかは……失血により、意識を失い始めていたのだ。

さやか「ッ……!」

杏子の叫びを受け、さやかは魔力を解放する。
そしてその魔力の全てを、まどかの傷口を塞ぎ、
失った血を回復させるため、両手に集中させた。

ほむら「ま、まどか、まどかぁ!!」

さやか「ごめんほむら!ちょっと離れててッ!」

マミ「美樹さん、私も手伝うわ!」

さやかとマミ、2人はまどかを治療しながら、気付いた。
間違いなく、この体からは出血した分だけ血が減っている。
それはつまり……

マミ「っ……やっぱり鹿目さんは、普通の人間だった……!」

さやか「も、もう少しだからね、まどか!もう少しで、完全に元通りだからね!」

そのまま2人は、まどかの治療を続ける。
そして遂に……

まどか「ぅ……あ、あれ……わたし……」

マミ「鹿目さん!目を覚ましたのね……!」

さやか「まどか……!良かった、まどかぁあ!」

ほむら「本当に、良かった、本当に……!」

まどか「え、っと……」

杏子「その……ごめん、まどか。事情があったとは言え、本当に、ごめん……」

まどか「あ……な、何が……?わたし、あんまり覚えてなくて……」

QB「とりあえず、現状を説明した方が良さそうだね。
  君は今までずっと気を失っていたんだから、
  君が眠っていた間に起こったことを色々と話しておく必要がある」

マミ「えぇ……そうね。ちょっと刺激の強い話かも知れないけど……。
  鹿目さん、もう落ち着いた?話しても大丈夫?」

まどか「っ……は、はい。お願いします、話してください……」




まどか「……そう、なんだ。それでわたし、また、気絶を……」

杏子「本当、悪かった。あんたを、無駄に危険な目に遭わせちまって……」

まどか「ううん、良いの……これしか方法がなかったんだから。
    で、でもこれで、わたしは本物だって、証明できたんだよね……?」

QB「現段階ではほぼ間違いないと言って良いだろうね。
  まぁ本当は契約してみるのが一番確実なんだけど……。
  今僕がまどかから感じている素質が本物かどうか、それではっきりするからね」

ほむら「その必要はないわ。もうこの子の無実は証明された。
    それに契約して確かめるなんて、論外よ」

QB「やれやれ。そう言うと思ったよ」

マミ「鹿目さんの無実も証明されたということは……」

さやか「やっぱり、あたしたちの中に化け物が居るなんて、あいつの嘘だったんじゃん!」

QB「そのことなんだけど……1つ思い出したことがあるんだ。
  多分、君たちの中にニセモノが紛れている可能性はまだ消えていないよ」

さやか「はっ!?な、なんでよ!?」

ほむら「私たちは誰も、アレに傷なんて付けられていないはずよ……」

QB「確かに、その瞬間を誰も目撃はしていない。だけど、よく思い出して欲しい。
  アレには、誰にも目撃されずに君たちを
  1人ずつ捕食できるチャンスが一度だけあったはずだよ」

杏子「誰にも目撃されず、1人ずつ……って、おい、まさか……」

さやか「……!た、たっくんを、探しに行った時……!?」

QB「そう、その時だ。男のニセモノが鹿目タツヤをさらった理由……
  それは、君たちをバラバラに森の中におびき寄せるためでもあったんじゃないかな」

まどか「そ、そんな……!」

マミ「も、森の中で、私たちの誰かが、襲われて……!?」

QB「可能性としては、決して低くはないと思うよ」

ほむら「でも……もし本当にそうだとすれば、どうしてあの男はわざわざ、
    私たちの中にニセモノが居るなんて重要な情報を……」

QB「そうだね、彼が君たちにこのことを明かすメリットはそこまで大きくない。
  せいぜい、疑心暗鬼による仲間割れくらいだろう」

さやか「だ、だったらやっぱり、あいつの嘘なんじゃ……」

QB「もっとも、仲間割れにこそ君たちを捕食するための
  チャンスがあると踏んでの暴露だった可能性もあるし、
  死を目前にして自棄になっての暴露だった可能性だってある」

マミ「つまり……考え出したらキリがない、ということね……」

QB「そうだね。今の段階ではっきり言えることは、
  “君たちの中にニセモノが居る可能性は否定できない”ということだけだよ」

杏子「ッ……くそっ!マジかよ!」

さやか「本当に……あ、あたしたちの中に化け物が……?」

さやか「っ……い、いやだ!あたし、こんなとこに居たくない!」

まどか「さ、さやかちゃん!?」

ほむら「あなた、何を……!」

さやか「あたしはここを出て行く!
    化け物が居るかも知れないのに、こんなところに居られないよ!」

マミ「み、美樹さん、落ち着いて……!」

杏子「外は嵐なんだぞ!?それに外に出たってどうしようもないだろ!」

さやか「う、うるさい!嵐だろうがなんだろうが、ここよりは安全だ……!」

QB「そうとも言い切れないよ、さやか」

さやか「なっ、なんでよ……!」

QB「今君がここを飛び出せば、みんな君を追いかけるだろう。
  そうなった時に一番先に追いついたのがアレだった場合、その危険度は言うまでもないよね」

さやか「ッ……」

QB「一番安全なのは、みんなが一箇所に固まることだよ。
  現時点で手を出してこないことを考えると、5人に紛れている敵の数は多くないはずだ。
  恐らく、人数の半分は超えてない。つまり、多くても2体じゃないかな」

マミ「確かに……その可能性は高いかもね」

杏子「まだ仲間が少ないから大人しくしてる、ってわけか。つまり狙いは……」

QB「きっと獲物と2人きりになるチャンスを待っているんだ。
  そうやって確実に仲間の数を増やすつもりだろう」

ほむら「じゃあ本当に……敵の近くに居ることが一番安全、というわけね……」

QB「ただし、寝るのは別々にした方が良いね。
  部屋には鍵をかけられるようだし、寝る時はそれが安全だろう」

さやか「だ、だったらずっと部屋に居るよ!そっちのが安全じゃん!」

QB「排泄まで部屋でする気かい?
  もし何かの用で部屋を出ることになったら、その時こそ君は無防備だ。
  それに……君だって疑われる立場にあるということを忘れてもらったら困るな」

さやか「なっ……!?」

QB「確かさやかは、森の中であの男を見たと言ってたよね。
  そのことを考えると、今一番疑わしいのは君だと言えるかも知れないよ。
  それに君はさっきから随分1人になりたがっているよね。それはもしかして……」

さやか「ち……違うッ!あたしは化け物なんかじゃない!!」

QB「……良いかいさやか。
  みんなが一箇所に集まるというのは、互いを監視するためなんだよ。
  全員が全員を監視し合うんだ。そうしている以上、アレは下手に手を出せない。
  そのうち痺れを切らしてボロを出してくれる可能性だってあるしね」

さやか「っ……わ、わかったわよ……。ここに居れば良いんでしょ……」

まどか「さやかちゃん、良かった……」

さやか「近付かないでッ!!」

まどか「っ……!」

さやか「あ……ご、ごめん、まどか……」

マミ「……美樹さん……」

ほむら「仕方ないわ……。こんな状況だもの、神経質になるのも無理はない」

杏子「……なぁキュゥべえ、ちょっと良いか?」

QB「?なんだい、杏子」

杏子「あんたはずっと、自分は関係ないみたいな口ぶりだけどさ。
   あんたがあの化け物に襲われるって心配はないわけ?
   それとも、もう既にあんた自身があの化け物になってる、とか」

まどか「えっ……!?」

杏子のその言葉に、全員の視線がキュゥべえに向き、身構える。

QB「僕がニセモノだとすれば、君たちに情報を与えるメリットがないじゃないか。
  そもそも体の作りから言って僕への成り代わりは不可能だと思うよ」

さやか「…………」

QB「それに万が一僕が彼らに成り代わられたとしても、
  そうなればこの個体は処分されるはずだしね」

マミ「それじゃあ……あなただけは、信用できるということね……」

ほむら「唯一信用できるのがキュゥべえだなんて……皮肉なものね」

QB「とりあえずみんな、少しは落ち着いたようだね。
  それじゃあ僕はアレの死体をもう少し調べてみるとするよ。
  もしかしたら本物とニセモノを判別する方法の手がかりが見付かるかもしれないしね」

さやか「み、見付けられるの!?」

QB「努力はするよ。絶対出来るとは言い切れないけどね」

杏子「死体と言えば……やっぱりまどかの両親、埋めちまうしかないよな」
  
ほむら「……1日や2日なら、魔力でもたせて病院に引き渡すこともできたのだけど……」

マミ「鹿目さん……埋めてしまっても、良い?」

まどか「っ……はい……お願いします、埋めて、ください……」

QB「そうか。それなら早いうちに埋めてしまおう。
  ただし今からの作業の間、みんな決して誰かと2人きりにならないよう注意するんだよ。
  もしアレと2人きりになんてなってしまうと……」

杏子「わかってるよ。わかってるから……早いとこ、済ませちまおうぜ」

QB「僕がニセモノだとすれば、君たちに情報を与えるメリットがないじゃないか。
  そもそも体の作りから言って僕への成り代わりは不可能だと思うよ」
QB「それに万が一僕が彼らに成り代わられたとしても、
  そうなればこの個体は処分されるはずだしね」

本当にそうかな?

全員一緒に、死体のある部屋へと向かう。
変わらず、詢子と知久は床に横たわっていた。
ベッドの上には、“タツヤ”の死体もあった。

QB「なるほど……2人の死体に異変がないところを見ると、
  獲物が生きているうちでないと成り代わりはできないようだね。
  あぁ、そうだ。鹿目タツヤのニセモノは残しておいてくれ。
  その死体も、さっきの男の死体と合わせて調べてみるよ」

キュゥべえの指示の通り、詢子と知久の遺体だけ部屋から運び出す。
まどかは2人の遺体を見て、堪えきれなくなったのか、
2人にすがってまた泣き出してしまった。
4人はそれを、黙って眺めることしかできない。

大きな泣き声が次第にすすり泣きに変わり。
そしてしばらく後、まどかは遺体から離れる。
それを合図に、既に掘ってあった穴に、2人を入れ、土をかけた。




リビングに戻っても、5人は一言も発さず、沈黙が続く。
張り詰めた重い空気がしばらく続いた後、外からキュゥべえが戻って来た。

さやか「キュゥべえ!ど、どうだった?何か分かった!?」

QB「残念だけど、まだ何とも言えないね。もし何か分かるとしても、少し時間がかかりそうだ」

杏子「てめぇ……ちゃんと真面目に調べたんだろうな」

QB「もしかして僕を疑っているのかい?
  だったらこの個体を潰して確認してみると良いよ。
  ただ、この島の場所が場所だ。近くに別の個体も居ないし、
  代わりが来るまで少し時間がかかると思うから出来ればやめて欲しいけどね」

マミ「……佐倉さん、やめておきましょう。
  しばらくキュゥべえを欠くというのは好ましくないし、
  それにもしニセモノなら、今のキュゥべえの発言はあまりにリスクが高すぎるわ」

杏子「……ふん。まぁ、こいつを疑い出したらキリがないしね。今は信じといてやるよ」

QB「そうかい。僕も個体を無駄にされずに済んで良かった。さて、もうかなり遅い時間だ。
  精神的にも疲れているだろうし、君たちはそろそろ眠った方が良いかも知れないね」

キュゥべえのその言葉で、互いを監視するという重苦しい状況から解放されるからか
その場の緊張感が少し和らいだ。

そうして、決して2人きりにならないよう、全員でリビングを出る。

QB「目で確認できる範囲に人数分の部屋があるのは都合が良いね。
  これなら部屋に行くまでの間に2人きりになるなんてこともない」

全員で廊下を歩き、そしてそれぞれが部屋の前に立ったのを確認し……
そして、同時に部屋に入った。

QB『全員部屋に入ったね。もう鍵はかけたかい?』

さやか『……当然でしょ』

杏子『魔法での強化もしっかりしてる。こじ開けようとすればその前に目が覚めるよ』

マミ『でも、鹿目さんは……』

まどか『あ……わたしは、大丈夫です。キュゥべえが一緒だから……』

ほむら『キュゥべえ、あなた……』

QB『まさかこんな非常時にまで、まどかに近寄るななんて言うつもりかい?
  もし僕が居なければ、まどかは本当に無防備になる訳だけど』

まどか『だ、大丈夫だよ、ほむらちゃん。だから、心配しないで……』

ほむら『……わかったわ』

QB『それじゃあみんな、もう寝ると良い。起床は時間厳守で頼むよ』




翌朝

マミ『みんな、起きてる?』

ほむら『えぇ、起きているわ』

さやか『それじゃ……せーのっ』

さやかの合図で、部屋の扉が一斉に開いた。
部屋から出るタイミングを同時にすることで、
誰かが部屋の外で2人きりになるのを避けるためだ。

杏子「ったく……こんな馬鹿馬鹿しいことを大真面目にやらなきゃいけないとはね」

QB「仕方ないよ、こうするのが一番安全なんだから」

まどか「あの……」

ほむら「……どうしたの、まどか」

みんなでリビングに移動しよう、という時。
ふいにまどかが、恐る恐るといった様子で声を発した。

マミ「どうしたの、鹿目さん。何か問題があった?」

まどか「あ、いえ……問題っていうか……」

さやか「な、何よ。はっきり言いなさいよ……」

まどか「お……お手洗いに行っても、良い、かな……?」

QB「そうか、昨日からずっと行ってなかったね。わかった、行くと良いよ。
  ただし、全員一緒でだけどね」

杏子「……はぁ。何かと思えば……今度は連れションかよ」

まどか「ご、ごめんなさい……」




リビング

QB「みんなも排泄は昼間のうちに済ませておいた方が良いよ。
  もし夜中にトイレに行きたくなるなんてことになれば、
  そのたびにテレパシーで全員を起こさないといけない羽目になる。
  多分長期戦になるだろうから、寝不足なんかのストレスは溜め込まない方が良いからね」

さやか「ち、長期戦って……何日ここに居なきゃいけないわけ……?」

QB「それはまだなんとも言えないね。
  でも少なくとも判別方法が分かるまでは、この島から出るわけにはいかないだろう?」

まどか「で、でも、ご飯はどうするの?そんな、何日もかかっちゃったら……」

ほむら「……この島のどこかに、非常用の食料を備蓄している建物があると聞いたわ」

杏子「あー、そう言えば……。そんじゃ、そこに行く必要があるってわけだ」

マミ「それもやっぱり、全員で一緒に?」

QB「そうだね。建物を探すのに手分けできないのが手間だけど、仕方ない」

こうして、5人とキュゥべえはペンションを出る。
外の天気は、まだ雲は厚いが、雨はやんでいるようだった。

杏子「ちっ……こんな状況でなけりゃ今頃島なんか出て美味いもん食ってるはずなのにさ」

さやか「……あんた、こんな状況でまだ食べ物のことしか考えられないわけ?」

杏子「こんな状況だからこそだよ。無人島に閉じ込められてるんだぞ。
   食い物こそ今一番大事なことじゃんか」

さやか「そりゃそうだけどさ……」

マミ「……良かった。美樹さん、昨日に比べてずいぶん落ち着いたみたいね」

さやか「まぁ……一応は、こうしてみんなで居る間は安全なわけなんだし……」

まどか「そ、そうだよね!今は誰も襲われたりなんか、しないんだよね!」

ほむら「…………」

全員こうは言っているが、内面は複雑だった。
こうして会話をしていると、この中にニセモノが居るなんて考えられない。
考えたくない。
でも……考えないわけにはいかない。

もしニセモノが紛れ込んでいるのだとすれば……。
こんなことをしていて、本当に良いのだろうか。
何の解決にもならないのではないか。
判別方法が見付かるまで待つなんて悠長なことをせずに、
自分だけでも島から逃げ出すべきではないだろうか。

そう、脱出手段はある。
あの男の船が、別の船着場にある。
その船に乗って、逃げるべきなのではないか。

しかしそれをさせないのが、自分1人逃げるわけには行かないという罪悪感と、
あんな化け物を放っておくわけにはいかないという使命感。

そしてそれらと同じくらいに大きいのが、
自分たちの中にニセモノが居るはずがない、そんなこと信じられない、という考え。

ニセモノが本物そっくりだという情報を聞いてはいるが、
実際に目で見ても、会話しても、全員が本物にしか思えない。

ニセモノが居るかも知れないという考えと、
やっぱりニセモノなんて居ないんじゃないかという考え。

みんなその正反対の考え方に挟まれ、揺れていた。




しばらく後。
5人とキュゥべえは、1つの建物の入り口の前に立っていた。

マミ「……ここで、間違いなさそうね」

ほむら「思ったよりすぐに見付かって良かったわね」

まどか「でも、鍵がかかってるみたい……」

杏子「ちょっと退きな……ほら、開いたよ」

さやか「躊躇ないわね……手馴れすぎでしょ」

杏子「魔法少女なら誰だって出来るよ、こんなこと」

QB「とりあえず、これで中に入れるね。早く食料を確保してしまおう」

中に入ると、そこには何列もの棚と、そこに並ぶ大量の非常食、保存食があった。

杏子「へーっ、こいつはすごい。流石に全部の棚にぎっしり、
   ってわけじゃないみたいだが、こんだけあればしばらくはもちそうだ」

マミ「これで一先ず、食料の心配はしなくて大丈夫そうね」

まどか「よ、良かったぁ……」

ほむら「こんなことなら、私たちも杏子のようにカバンを持ってくるべきだったわね」

さやか「まぁ、あんまり多くもらいすぎても悪いし……。
    それに、そんな何日も居るつもりなんてさらさら無いんだからさ!」

QB「そうだね。距離もそう遠くないし、足りなくなればまた来れば良い」

杏子「この辺は大体、缶詰か……ふーん、色々あるんだね」

ほむら「こっちの方は……お米なんかもあるのね」

さやか「これは……お湯が使えないと駄目なやつかぁ」

みんな棚を見て回り、使えそうなものを物色する。
しかし、見落としていた。
この建物は意外に広く、そして、何列もの棚で仕切られているため……
死角が非常に多いということを。

ここに辿り着くまでの間、全員があまりに“いつも通り”であったためか、
それとも、食糧不足という危機に陥ることがないと安心してしまったためか。
“互いを監視する”という鉄則を、ほんのわずかな時間、忘れてしまっていた。

キュゥべえは忘れていたわけではないが、
まさかみんながこの鉄則を忘れているとは考えなかったためか。
気付くのが遅れてしまった。
いつの間にか……まどかと自分の目の届く範囲に居るのが、
さやかだけになっていると言うことに。

QB「……!まどか、さやか!大変だ、他のみんなの」

“姿が見えない”
キュゥべえのその言葉は次の瞬間、さらに大きな声と音により、遮断されてしまう。

  「ひっ……きゃぁあッ!」

息を呑んだような小さな声と、短い悲鳴。
それと同時に、缶詰が床に落ちる大きな音が建物に響き渡る。

まどか「い、今の声……!」

さやか「マミさん!?」

さやかを先頭に、まどかとキュゥべえも悲鳴のした方へ走る。
いくつかの棚を素通りし、そして、ついに悲鳴の主……巴マミを見付けた。

マミ「あ……み、美樹さん、鹿目さん……!?」

少し遅れて、杏子、ほむらもそこへ駆けつける。

杏子「おいマミ、どうしたんだ!なんだよ今の悲鳴は!?」

ほむら「まさか、あいつが出たんじゃ……!」

と、次の瞬間。
ほむらと杏子の足元を、黒い小さな影が走り抜けて行った。

杏子「ッ……!」

とっさに杏子はソウルジェムから槍を出し、その影を貫く。
……が、そこに居たのは予想に反して、

杏子「……ちっ。ただのネズミかよ」

初めはピクピクと動いていたネズミだったが、すぐに動かなくなった。
どうやら、本当にただのネズミらしい。

さやか「え、っと……。もしかして、さっきの悲鳴と音は……」

まどか「ネズミに、びっくりして……?」

ほむら「……大方、缶詰を手に取った瞬間にネズミが現れて、
    驚いて缶詰を落としてしまった……そういうことでしょうね」

杏子「ったく、人騒がせな奴だね。焦って損したよ」

真相を知り、安堵する4人。
しかし……ただ1人、巴マミだけは、表情を崩さなかった。
強張った表情のまま4人から目を離さず、じっと見ている。
その目つきは、睨んでいると言っても良いほど鋭いものだった。

まどか「えっと……マミさん?だ、大丈夫ですか?」

まどかは、その場に立ち竦むマミに心配そうに声をかける。
しかしマミは、そんなまどかから一歩退き、そして、恐る恐る声を出した。

マミ「あ……あなたたち、2人きりになったの……?」

まどか「え……?」

マミ「か、鹿目さんと美樹さん……暁美さんと佐倉さん!2人一緒に現れたわ……!」

さやか「まさか、マミさん……あたしたちを、疑って……?」

マミ「あなたたちだって分かっているはずよ!
   誰かと2人きりになった……それが何を意味するのか!」

杏子「ちょっ……やめなよ!2人で一緒に現れたからってそんな……。
   あたしはほむらに襲われてなんかいないし、もちろんあたしだって化け物なんかじゃない!」

QB「残念だけど杏子、君にはそれを証明する手段がないよ。
  短い時間とは言え、君たち2人が死角へと消えたのは事実なんだから」

マミ「き、キュゥべえ。あなたは、鹿目さんたちと一緒に居たのよね?
  この子たちは、どうなの?私の見ていないところで、何もなかったの……!?」

QB「この2人に関しては、何もなかったよ」

さやか「で……でも、ほむらと、杏子は……」

杏子「ふ、ふざけんな!なんだよその目は!?やめろよ、くそッ!!」

ほむら「っ……仕方ないわ、杏子。みんなの言い分も、もっともよ……」

杏子「ほむら……!あんたは良いのかよ!?
   こいつら、あたしたちを化け物扱いしてやがるんだぞ!?」

ほむら「疑いの目が、強まったと言うだけ。今までだって多少は疑われていたのだし……。
    むしろ、これが正しいかも知れないわ。疑いが完全に晴れるその瞬間までは、
    私たちは、お互いを信用してはいけないのよ……」

杏子「なっ……なんでそんなに、簡単に割り切れるんだよ……!?
   ほ、本当はあんた、ニセモノなんじゃないのか!?
   だからそうやって開き直れるんじゃないのか!?」

ほむら「……そう思いたければ思えば良いわ。
    ただし、私も全く同じ疑いをあなたに向けているということを忘れないで。
    ムキになって否定するのは、正体を暴かれそうになって焦っているからじゃないの?」

杏子「ッ……!てめぇ、ふざけんなッ!!」

まどか「き、杏子ちゃん!やめて!」

ほむらに掴みかかる杏子を、まどかが制止する。

まどか「ま、マミさん、さやかちゃん!2人を止めて……!」

そう言って、2人を振り返る。
しかし……マミもさやかも、緊張した面持ちで、
ほむらと杏子の様子を見ているだけで、動こうとしない。

“このまま2人が争い続ければ、化け物が正体を現すかもしれない”

恐らくはそんな考えが、マミとさやかの頭を回っているのだろう。

まどか「そ、そんな……!お願い、やめて、ケンカなんて、嫌だ、嫌だよぉ……」

ほむら「……まどか」

目に涙すら浮かべつつ、懇願するまどか。
そんなまどかの様子を見て……杏子は舌打ちをして、ほむらの胸倉から手を離した。

杏子「……言い争ったって、なんの解決にもなりゃしない。
   良いよ、あんたたちの好きにしな。好きなだけ疑ってかかれば良いさ。
   ただし、あたしだって同じようにあんたたちを疑ってやる。
   自分が化け物だから、疑いの目を逸らすためにあたしを化け物扱いするんだろう、ってな」

さやか「……杏子……」

マミ「…………」

杏子「多少疑いが濃くなろうが、どうせやることは変わらないんだろ?
   昼間は全員一緒に居て、夜は全員別々に寝る。それだけだ。
   キュゥべえが判別方法とやらを見付けるまでの辛抱だよ」

まどか「杏子、ちゃん……あ、あの、えっと……。も、もしも、ね?
    本当はニセモノなんか居なくて、それで、みんな無事に、帰れたら……」

杏子「……心配すんな。そんときゃ全部水に流すよ。
   さっきは……あたしもカッとなっちまった。
   こんな状況じゃ、互いを疑うのは何も悪いことじゃない。
   ほむらの言う通り、疑ってかかるべきなんだよ、あたしたちは。
   だけどもし、全員無事で帰れたら……。そしたらお互い、こんなことはさっぱり忘れようぜ」

まどか「う、うん……!」

マミ「……ごめんね、佐倉さん」

杏子「謝んなって。あたしだって今、マミを疑ってんだからさ。
   あんたに疑いの目をかけられるのはこれで二度目だから余計にね」

マミ「っ……」

杏子「とにかく……あたしたちは、互いの疑いが完全に晴れるまでは敵同士だ。
   もうこうなったら徹底的に警戒してやるから、あんたたちもそのつもりで居なよ」

ほむら「……あなたも十分割り切れているじゃない」

杏子「ふん……あんたほどじゃないさ」




その後は、今度こそ全員お互いを目で確認できる位置を保ったまま、非常食を集めた。
そして、行きよりも圧倒的に強い警戒心を持ちながら、ペンションへと戻る。
食料を集めるほんの数分の間に、多少は和らいだと思った雰囲気は再び……
いや、より殺伐としたものへと変わった。

まどか「……どうして、こんなことになっちゃったのかな……」

さやか「まどか……」

まどか「昨日までは、あんなに楽しかったのに……みんな、仲良しだったのに……」

さやか「……仕方ないよ。あんな化け物が紛れ込んでるって言うんじゃ……」

杏子「おい、2人とも何をこそこそ話してんのさ」

まどか「き、杏子ちゃん……」

さやか「何って……別に、なんでもないわよ。あたしとまどかが話してちゃいけないわけ?」

杏子「あぁ、いけないね。化け物同士で、あたしたちを全滅させる相談なんかされたら困るからさ」

まどか「え……?」

さやか「はぁ!?あたしのことを疑うのは仕方ないよ!でもまどかは関係ないでしょ!?
    もう確かめたじゃん!まどかは化け物なんかじゃないって!!
    それにキュゥべえだって、さっきあたしとまどかには何もなかったって……!」

杏子「はっ、どうだか?大体、キュゥべえの証言だって
   それが本当だって証明する証拠なんてありゃしないんだ。
   仮にあの建物で何もなかったとしても、
   昨日の夜から今までの間にも何もなかったなんて言いきれるのかよ?」

QB「君たちと一緒に居る以外は、僕がずっとまどかに付いていたよ。
  まさか、君はまだ僕を疑っているのかい?」

杏子「あんたが化け物じゃないってのは信じてやる。
   だが、それがまどかが襲われていない証拠にはならないってことさ。
   こいつは魔法少女じゃない。
   少し傷を付けられるだけであっという間にあいつらの仲間入りだ。
   山の中を歩いてる間に、ほんの一瞬の隙を見つければそれでおしまいさ」

まどか「そ、それは……」

さやか「な、何言ってんのよ!?
    アレにやられたらその瞬間に気を失うってキュゥべえが……」

杏子「だから、それが本当だって証明できるのかって言ってるんだよ。
   例外があるかもしれないだろ?それとも、気を失わずに
   あいつらの仲間入りをしちまう可能性が絶対ないって言い切れるか?」

QB「……確かに、100%そうとは言い切れない。アレはまだまだ謎の多い生物だからね」

さやか「だ、だったら調べれば良いじゃない!まどかの体に傷があるかどうか!」

杏子「はぁ……そんなもん、あんたたちに化けたニセモノがすぐ治すに決まってんじゃん」

さやか「っ……」

QB「やれやれ……僕の言うことまで疑い始めたらキリがないと思うんだけどな」

杏子「ふん……。あんたの言葉を信じるかどうかは、あたしが自分で判断するよ。
   今この状況で信用できるのは、自分だけだ。
   この目で見たわけでもないのに信じろっていう方が無理だね。
   とにかく、もうあたしたちの中で絶対本物だって言い切れる奴は居ないんだよ」

マミ「……鹿目さんの疑いだけは、晴らせるんじゃないかしら」

まどか「え……」

ほむら「巴さん、あなたまさか……!」

さやか「ま、またあんなことする気なの!?」

杏子「……確かにもう一度あれをやれば、まどかの疑いだけは晴らせるかもね。
   そうと決まれば早速やるか。おいあんたら、準備しな」

まどか「そ……そんな、ま、また、あんな……?」

ほむら「私は反対よ。もう二度と、まどかのあんな姿を見たくない……!」

さやか「あ、あたしだって嫌だよ!」

杏子「必死になって庇うのは、お仲間の正体を見破られたら困るからかい?」

さやか「ッ……このっ……!」

QB「残念だけど、マミ、杏子。その手は多分、もう二度と使えないよ」

マミ「……どうして?」

QB「まどかがもう、その方法を知ってしまっているからさ。
  もし今のまどかがニセモノだとして、失血させられたとしても……。
  きっと敢えて血を生産せずに、自ら気を失うだろう。
  そうすれば君たちに助けてもらえることを、既に知っているからね」

ほむら「そうよ……。アレは、獲物の記憶まで完全にコピーする。
    まどかがあの方法を知ってしまった以上、もう同じ手は使えないわ」

まどか「じ、じゃあ……もう、良いんだよね?あんなの、やらなくて……」

さやか「当たり前だよ!どっちにしろあたしは、もう二度とあんなことしたくない……!」

杏子「……ってことは、やっぱり今のところは打つ手なし……。
   まどかの疑いを晴らす方法もない、ってことだな」

さやか「だから……!なんでそんなに、まどかを疑いたがるのよ!?」

杏子「勘違いすんな。あたしは全員を疑ってる。別にまどか1人を疑ってるわけじゃない」

マミ「美樹さん、よく考えて。佐倉さんだって、真っ先に鹿目さんの疑いを晴らそうとしてくれてたのよ?」

さやか「それは……!そうですけど……」

杏子「……だが、結局また振り出しだ。
   キュゥべえが何かはっきりした方法を見付けないことにはどうにもならないよ」

QB「そうだね。取り敢えず、君たちが眠りにつく時間までは死体を調べることにするよ」




ペンションに着く。
キュゥべえは外で死体を調べ、リビングに居るのは5人だけ。
しかし、全員一言も喋らず、空気は張り詰めている。

そんな沈黙を破ったのは、まどかのおずおずとした声だった。

まどか「あ、あの、杏子ちゃん……?」

杏子「……なんだよ」

まどか「えっと……さ、さっきはありがとう!
    杏子ちゃん、わたしの疑いを晴らそうとしてくれてたんだよね!わたし……」

杏子「やめな」

まどか「え……」

杏子「そうやって優しくして。あたしの油断でも誘ってんのか?」

まどか「そ、そんな……!わたしは……」

杏子「……あんたみたいに良い子ぶってる奴が一番怪しいんだよ。
   自分だって化け物候補の1人だってことを忘れるんじゃない」

ほむら「杏子……もう少し、言葉を選んだらどうなの」

さやか「そ、そうだよ!まどかは、あんたのことを気遣って……!」

杏子「だから、そういう奴が一番怪しいんだっての」

さやか「ッ……」

マミ「暁美さん、美樹さん。気持ちはわかるけれど……佐倉さんの言うことも尤もよ。
  みんなの警戒心が最大に高まっている今、
  敵が少しでもそれを解こうとしてくるのは当然のことなんだから」

さやか「ま、マミさんまで……」

マミ「正直に言うとね、周りを警戒して誰も寄せ付けようとしない佐倉さんより……。
  優しく近付いてくる鹿目さんの方が、ずっと怪しいの」

まどか「っ……!」

さやか「ひ……酷すぎるよ、マミさん!そんな言い方って……」

杏子「言っておくが、その次に怪しいのは、さやか、あんただ。
  “疑うな”ってのは、ここじゃあ敵に一番都合の良い、一番間違った主張なんだよ。
  そんな馬鹿げたことを必死になって
  喚き散らすってのがどういうことか、ちょっとは考えてみろってんだ」

さやか「それは……!あ、あんたたちはどうなのよ!?
    さっきからそうやって冷静ぶって……そういう奴こそ怪しいんじゃないの!?
    まどかを槍玉に挙げて、自分から目を逸らして!
    なんなら今すぐあんたたちの頭刺して……!」

マミ「落ち着いて。ニセモノも魔法を使える可能性がある以上、
  そんなことをしても無意味よ。あなたも分かってるはずでしょう?」

マミ「それに回復力の高くない佐倉さんは、
  脳なんて破壊されたらそれこそ自力でなんとかなるか分からないんだから……」

杏子「……ふん」

ほむら「さやか……もうまどかを庇うのはやめなさい」

さやか「ほ、ほむら!?嘘でしょ、あんたまで……!」

ほむら「あなたは“まどかだけは疑うな”と言っているようだけど……。
   今の状況だと、“まどかこそが化け物だ”と言っているように聞こえるのよ」

さやか「ッ……!違う、あたしは……まどかは……!」

まどか「さ、さやかちゃん……もう、良いよ……」

さやか「え……まどか……?」

まどか「みんなの、言う通りだもん……。
    そうだよね、こんな時に、近付かれたりしたら、誰だって怖いよね……。
    も、もう、大人しくしてるから……。
    だから、みんなも、ケンカなんか、しないで……」

杏子「……それで良いんだよ。あたしたちは誰にも近寄らせないし、近寄らない。
   自分以外は全員が敵だって、そう思い続けるんだ。それが今、一番正しいことなんだよ」

ほむら「……そうね。残念だけど」

マミ「とても悲しいことだけど……仕方がないわ」

さやか「……っ」




その夜。
結局今日も、キュゥべえは死体から何の手がかりも得られなかった。

時間もかなり遅くなっていたので、みな眠りにつくことにした。
また昨日のように、各々の部屋に鍵をかけ、閉じこもる。

まどか「……ねぇ、キュゥべえ」

QB「どうしたんだい、まどか?」

まどか「ニセモノと本物を見分ける方法……あとどれくらいで見付かりそうなの……?」

QB「どうだろうね。もしかしたら、死体からは何も見付からないかも知れないね」

まどか「そ、そんな……。わたしもう、嫌だよ、こんなの……!」

QB「まぁ、仮に見付からなかったとしても完全に打つ手がないわけじゃないよ」

まどか「そ、それってやっぱり、契約……?でも、それは……」

QB「やれやれ。まだ契約する気にはならないんだね。
  契約以外となると、状況から推理して仮説を立てて、
  それを実証する……くらいの手は残されていると思うよ」

まどか「じ、状況?仮説……?」

QB「実は今少し考えてることがあるんだ。
  ねぇまどか、あの男のニセモノがわざわざ船を残しているのは少し変だと思わないかい?
  本気で僕たちをここに閉じ込めるつもりなら、船なんか処分してしまえば良いのに」

まどか「……それはだって、船がないと……」

と、その時。
部屋の扉から、カチャリと音がした。
鍵が……外から、開けられた。

まどか「えっ……!?」

QB「!君は」

くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、まどか達のみんなへのメッセジをどぞ

まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

マミ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

ほむら「・・・ありがと」ファサ

では、

まどか、さやか、マミ、京子、ほむら、俺「皆さんありがとうございました!」



まどか、さやか、マミ、京子、ほむら「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり




ほむら「……今、何か……」

自分の部屋でまだ起きていたほむらの耳に、何かが聞こえた。
普段なら気のせいだと無視できる程度の小さな音だったが、
この状況だとそうはいかない。
ほむらは念のため、テレパシーでまどかに呼びかける。

ほむら『……今何か物音がしたようだけど、何かあったの?』

……しかし。
返事がない。

ほむら『ねぇ、聞こえているかしら。寝てしまったの……?』

再度呼びかけるが、やはり返事はない。

ほむら『っ……キュゥべえ、聞こえているでしょう?何かあったの?』

次はまどかの部屋に居るはずのキュゥべえにテレパシーを送るが……。
やはり、返事はなかった。

ほむら「……!何か、あったのね……!」

そう悟ったほむらは急いで立ち上がり、部屋を出る。
そしてまどかの部屋の扉を開けると、やはり鍵は開いていた。

部屋の中に居たのは、まどかではなく……。

ほむら「き、杏子……!?」

部屋の真ん中に立って、足元を見下ろしていた杏子。
その目線の先には……動かなくなった、キュゥべえの体があった。

杏子「!ほむら……!」

ほむら「杏子、あなたまさか……キュゥべえを……」

杏子「っ……いや、違う!あたしが来た時には、この状況だったんだよ!」

杏子は、慌てて否定しようとする。
その時、ほむらの後ろからもう1つ影が現れた。

マミ「何があったの!?廊下が騒がしいと思ったら……ッ!?
   さ、佐倉さん!?キュゥべえ……!?あ、あなた……!」

杏子「くそっ……!良いか、これをやったのはあたしじゃない!
   何か物音がしたから駆けつけたら、もうこんな状況だったんだよ!」

マミ「それを、どうやって信用しろと言うの……!」

杏子「まどかがここに居ないのが何よりの証拠だろうが!」

ほむら「そ、そうよ……まどかは、まどかはどこに行ったの!?」

杏子「そんなの、あたしが知りたいよ!多分、そこの窓から外に出たんだ……!」

そう言って杏子が指差した先には確かに、全開になった窓があった。

マミ「ど、どういうこと……?どうして突然、逃げたりなんか……」

杏子「あいつが本物だろうとニセモノだろうと、逃げ出す理由はある……!
   だが今はあいつがどっちかなんて考えてる場合じゃない!
   追いかけることが最優先だ!」

ほむら「待って……!さやかは、どこに居るの……!?」

杏子「ッ……!」

ほむらの言葉を聞き、杏子は真っ先にさやかの部屋へ向かう。
そして、一気に扉を開ける。
鍵は開いており、部屋の中にはやはり……

杏子「……くそッ!あいつもかよ!!」

マミ「美樹さんと鹿目さんが、2人とも……!?」

ほむら「さやかの部屋は、窓は閉まったまま……まさかキュゥべえを殺したのは……」

マミ「そう考えるのが、自然でしょうね……。美樹さんが鹿目さんの部屋に行って、
  キュゥべえを殺して、そして……鹿目さんを連れ去った」

杏子「ってことは……!」

ほむら「……とにかく、追いましょう。手遅れになる前に……!」




まどか「はぁ、はぁ、はぁ……さ、さやかちゃん、待って……」

さやか「はぁ……はぁ……はぁ……!」

まどかとさやかは、森の中を走っていた。
さやかがまどかの手を引き、連れて走っていた。

しばらく走り続け、森を出て……
海が見えた頃になってようやく、さやかは走るのをやめて歩き始めた。

まどか「はぁ……はぁ……さ、さやかちゃん、どうしたの突然……!
    キュゥべえも、こ、殺しちゃうし、何も言わずに、こんなところまで……」

さやか「…………」

まどか「さ……さやか、ちゃん……?」

さやか「……あんたを、この島から逃がす」

まどか「え……?そ、それって、どういう……」

ずっとまどかに背を向けていたさやかだったが、ここで初めて向き直る。

さやか「みんなあんたを疑ってるけど、あたしは、まどかだけは違うって分かるんだよ。
    だって、あたしはまどかのことはずっと注意して見てたんだ!
    まどかは魔法少女じゃないんだから、一番危ないんだから、
    食べ物を探しに行く時だって、あんたからは絶対に目を離さないようにしてた。
    だから分かるんだ。あんたは一度も、化け物に傷を付けられたりなんかしてないって……」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「だからさ……もうあんたは、ここに居るべきじゃないんだよ。
    あんな化け物と戦えるのは、あたしたち魔法少女だけなんだ……!」

まどか「で、でもそんな、わたしだけ逃げたりなんて……!」

さやか「大丈夫だって、あたしたちが絶対やっつけて帰るからさ!
    とにかく、船着場まで行こう!あと少しだから!
    船の動かし方はよくわかんないけど……。まぁ、なんとかなるでしょ!
    ほら、早くしないとあいつらに追いつかれるよ!」

まどか「ほ……本気なの、さやかちゃん……。
    そんなことしちゃったら、さやかちゃんが……」

さやか「大丈夫だって。確かに怒られるだろうけど……。
    でも、まどかを守るためだもん。みんな分かってくれるって!」

まどか「…………」

さやか「それに、なんていうか……
    やっぱり、みんなの中にニセモノが居るだなんて思えないんだよね。
    みんなお互いを疑ってるみたいだけど、それが逆に、っていうか……。
    だからあたしは、きっとまた全員で楽しく過ごせる日が来るんだって。そう、信じてるんだ」

まどか「……でも、駄目だよ……そんな、わたしだけ、逃げちゃうなんて……」

さやか「まどか……もうそんなこと言ってる場合じゃないんだよ!
    ほらあそこ、船が見えた!早く行くよ、付いて来て!」

そう言って再びまどかの手を取り、先に向かおうとする。
しかし、その足が先に出る前にさやかは……激痛に足を止めた。

まどかの手を掴んだ自分の右手に、何かが、突き刺さった……!?

さやかは振り返り、痛みの正体を確認する。

さやか「ッ……!?」

さっきまで確かに、まどかの左手を掴んでいたはずだ。
しかし、今自分が掴んでいるのは……。

いや、よく見ると確かにこれは“手”だ。
でも、この手からは……無数の大きな棘が突き出ている……!

まどか「……えへへっ」

まどかの、“いつもの”笑い声。
しかしさやかにはこの笑い声が、何よりもおぞましいものに聞こえた。
痛みと信じがたい光景に混乱していた頭だが、ここで一気に1つの結論に辿り着く。
間違いない、こいつは、こいつは……

さやか「……っ……」

次の瞬間、さやかは意識が薄れ始めるのを感じた。

まずい、駄目だ……今気を失ったら、駄目だ……!

さやか「は……離、せ!」

まどか「わっ!」

さやかは変身し、まどかの手を振りほどく。
そして、全ての魔力を右手に集中させる。

さやかは激痛と共に、確かに感じていた。
右手の先から、徐々に細胞が食われていくのを。

さやか「くっ……と、止まれ、止まれ、止まれ……!」

まどか「あれ?気絶しないなんてすごいよ!頑張ってるね、さやかちゃん!
    でも……ちょっと遅かったね」

さやか「ば、化け、もの……!」

まどか「えぇー、酷いよぉさやかちゃん。
    さやかちゃんだって、もうすぐ“そう”なっちゃうんだよ?」

額に汗を浮かべ、必死に右手に魔力を集中させるさやか。
そんなさやかに“まどか”は、にこにこと“いつもの”笑顔を浮かべながら話しかける。

まどか「わたしの細胞、もうさやかちゃんの中にたくさん入っちゃったよ。
    えへへっ、もうすぐわたしたちの仲間入りだね、さやかちゃん!」

さやか「くっ、あ、あぁあ……!」

治療魔法を集中し、食われたそばから細胞を回復しようとする。
しかし、それでもほんの少し侵食のスピードを抑える程度。
さやかの右腕は、既に肘から先が自分の物ではなくなっていた。

まどか「無理だよぉ。いくらさやかちゃんでも、もう止められないよ。
    だから無駄に魔法なんて使わない方が良いと思うな」

“まどか”の言う通り……このままでは、魔力がもたない。
恐らく、侵食範囲はあと数秒で肩を越え、
1分もかからないうちに、全身が化け物に乗っ取られてしまうだろう。
もう……考えてる暇はない。

さやか「ぅ……ぁああぁああああッ!!」

さやかは左手で剣を振り上げ、そして、自分の肩口に振り下ろした。

まどか「!まさか……!」

さやか「ッ……はは、本当だ……。
    痛みなんて、その気になれば簡単に消しちゃえるんだ……!」

まどか「自分で腕を切り落とすなんて……そんなのってないよ!あんまりだよ!」

さやか「うるさい……まどかの口で、それ以上喋るな!!」

さやかはそのまま、再び剣を振り上げ、まどかに斬りかかろうとする。
が、その時。

ほむら「……え……」

マミ「美樹さん……鹿目さん……!?」

杏子「っ……どういうことだ、おい……!」

さやか「み、みんな……!」

さやかとまどかは同時に、ほむら、マミ、杏子に顔を向ける。
そして、まどかは3人の姿を確認すると、突然、目に涙を浮かべ……

まどか「た、助けて、さやかちゃんが……!」

さやか「なっ……!?」

まどか「さ、さやかちゃんが、いきなり襲ってきて、わたし……!」

さやか「ふ、ふざけるな!お前何を……!」

杏子「さやか、落ち着け!」

さやか「き、杏子!?あんたまさか、こいつの言うことを信じるんじゃ……!」

マミ「……正直、ついさっきまであなたを疑っていたわ、美樹さん」

まどか「え……?ま、マミさん?」

ほむら「まどか、あなた……その左手は、どうしたの……?」

まどか「あ……えへへっ、元に戻すの忘れちゃってたよ」

杏子「てめぇ……!やっぱり、化け物だったのか!」

マミ「そんな気はしていたから、あまり驚きもしないわ……!」

そう言ってマミが手をかざすと、まどかの周囲からリボンが現れ、拘束する。

まどか「っ……!や、やだ、離して!」

杏子「はっ、もうこれでおしまいだな。魔法少女を4人も相手にするんじゃあね」

マミ「美樹さんは右腕を治すことに集中して。
  それだけの怪我、いくらあなたでもそう簡単には治せないでしょう?」

さやか「あ……は、はい」

まどか「ぐ……ォオオオァアアオオオオオオ!!」

とてもまどかのものとは思えない、おぞましい叫び声をあげ、全身が形を変えていく。
マミの拘束を解こうと必死にもがく“まどか”。
それを見て、マミは銃で狙いを定め、杏子は槍を振り上げ、
そして、ほむらは銃弾を放った。

……マミ、杏子、さやかの四肢を狙って。

杏子「ッ……な、に……!?」

ほむらの放った銃弾は関節を砕き、3人は両手足の動きを奪われ、地面に倒れる。

ほむら「まったく、次からは気を付けなさい。手を元に戻し忘れるなんて……」

まどか「ごめんなさい……でも、ありがとう。助かったよ」

さやか「そ……そん、な……」

マミ「暁美さんまで……!?でも、いつの間に……!?」

ほむら「その前に、逆に訊きたいのだけど……
    あなたたちは、まどかが“変わった”タイミングはいつだと思っているの?」

さやか「た、食べ物を探しに行った時、じゃないの……!?」

まどか「あははっ、違うよぉ。わたしがたっくんに襲われた時、
    あの時にわたしはもう、“わたし”になっちゃったんだよ?」

マミ「っ!?でも……!」

さやか「その後、確かめたのに!?まどかの首切って、血がたくさん出て……!」

杏子「……待て……タツヤのあの時、既にまどかがニセモノだったとすれば……。
   ッ……!ほむら、てめぇッ……!」

マミ「あっ……あの、鹿目さんをお風呂場に連れて行った時に……!」

ほむら「えぇ、その通り。その時に私はまどかに食べられて、“私”になったの」

マミ「じゃあ……鹿目さんにあの方法を試した時は……」

ほむら「私がテレパシーで教えてあげたのよ」

まどか「えへへっ。だからね、わざと血を作らずに気絶したんだ。
    そうすればみんな、わたしが人間だって信じてくれるから、って。
    ちょっと怖かったけど、みんなのこと信用してたから頑張れたんだよ!」

杏子「……くそッ……!」

まどか「あ、そうだ。1つだけ教えてもらっても良いかな?
    マミさんと杏子ちゃん、さっき言ってたよね?
    わたしが本物じゃないって薄々わかってた、みたいなこと……。
    どうして分かったのか、知っておきたいな。教えてもらえるよね?
    やっぱりわたし、優しくしすぎたのかなぁ?」

マミ「……違うわ。むしろ、その逆……本物の鹿目さんは、もっと、優しい子よ……」

まどか「……?」

マミ「本物の鹿目さんならきっと……家族があんな目に遭ったら、契約してしまうもの。
   弟が怪物にされて、両親を殺されて……耐えられる方がおかしいのよ……」

杏子「そういうこった。契約までは行かないにしたって……立ち直るのが早すぎたんだよ、てめぇは。
   まぁ、そこの馬鹿はまどかが立ち直ったってことに単純に安心しちまって、
   疑おうとなんてしなかったみたいだけどな」

さやか「っ……」

まどか「うーん……死んだ人のことまではちょっと頭が回らなかったなぁ。
    性格はちゃんと再現したつもりだったけど、まだまだだったみたいだね。
    これからの参考にさせてもらうね!マミさん、杏子ちゃん、ありがとう!」

くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、まどか達のみんなへのメッセジをどぞ

まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」

マミ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」

ほむら「・・・ありがと」ファサ

では、

まどか、さやか、マミ、京子、ほむら、俺「皆さんありがとうございました!」



まどか、さやか、マミ、京子、ほむら「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり

ほむら「さて、疑問も解けたところで……お喋りはこのくらいにしておきましょうか」

まどか「そうだね。魔力は少ないって言っても、もうすぐ傷も治っちゃいそうだし」

“ほむら”と“まどか”は倒れている3人に近付く。
その両手は既に、人間のものではなくなっていた。

マミ「な……何を、する気……!?」

まどか「やだなぁ、マミさん。わかってるくせにぃ」

杏子「っ……くそ、くそ、くそぉおおお!!」

さやか「き、傷さえ、治れば、なんで、なんで……!」

ほむら「万全ならそんな傷、あっという間に治せるでしょうね。
    でも、この島に来てからのあなたたちの精神状態を考えれば、
    ソウルジェムの穢れはそれなりに溜まっているはず。回復力もその分落ちているわ。
    特にさやか、あなたはついさっきも大量に魔力を消費したのだから」

まどか「さっきは手だったけど、今度はお腹なんかどうかな?
    お腹から食べていけば、さっきみたいに体を切り取ったりなんてできないよね?」

ほむら「えぇ、そうね」

軽い口調でそんな会話を交わし、そして何の躊躇もなく……ほむらは杏子とマミの腹に、
そしてまどかは、さやかの腹に、尖った腕を突き刺した。

杏子「が、ぁああぁ……!」

本来は細胞の侵入が始まると気を失うはずだが……3人の意識はまだあった。
腹部に魔力を集中して、精一杯抵抗しようとしているのだ。

まどか「あははっ!そう言えば、昼間に杏子ちゃんの言ってた通りだね。
    気絶しない例外があったよ!」

杏子「ふ……ざけんな、殺す、殺して、やる……!」

まどか「もー、杏子ちゃん?そんなこと言っちゃ駄目だよ?
     もうすぐ、わたしたちの仲間になるんだから」

“まどか”はわざとらしく、まどからしく、杏子に話しかける。
しかしここで、“ほむら”は気が付いた。

ほむら「……待って、様子がおかしいわ」

杏子「殺してやる、ぶっ殺す、殺してやる、殺してやる……!」

3人とも既にソウルジェムに穢れをかなり溜め込んでいる。
にも関わらず、細胞の侵食に抵抗しようと魔力を使い続けている。
加えて……この絶望的な状況。

このままだと、まさか……

杏子「殺す、殺す殺す殺す殺す殺す……ァ、ぁああアアアアァあアアアアアアアアアアッ!!」

次の瞬間“ほむら”は、杏子の体の細胞の侵食が止まったのを感じた。
そして、それに続くように……

マミ「いや……化け物なんて、嫌、嫌、ぃ……ァアアあああぁ……!!」

さやか「ぁぐ、く、アァアア、ああぁあアァアアァアア!!」

次の瞬間、周囲の景色が変わり……。
そこには、魔女が3体。

まどか「えっ……これって、もしかして……!」

ほむら「……まさか3人とも、こんなに早く魔女になってしまうなんて。
    こうなる前に済ませてしまいたかったのだけど」

まどか「それじゃあ……」

ほむら「この体は……もう死んでしまった。だからもう、食べても意味がないわ」

“まどか”はそれを聞いた途端、表情を一変させた。
いや……表情が無くなった。

まどか「ふーん、なんだ。せっかくもう少しで仲間に出来たのにな」

ほむら「仕方ないわ。とりあえず、この島を出ましょう。
    みんな死んでしまった以上、もうここに用はないわ」

まどか「うん、そうだね。海を渡って、仲間を増やそう」

ほむら「まずはこの結界から出ましょう。……さよなら、3人とも」

結界を脱出し、2人……いや、2体は、船着場の船へと乗り込んだ。
操縦の仕方など分からないが、ほむらの魔法を使えば船を操ることなど容易い。

まどか「早いね。これならあっという間だね」

ほむら「えぇ。すぐに着くわ」

まどか「この星の人たち、みんなわたしたちの仲間にできるかな?」

ほむら「きっとできるわ。慎重にやればね」

まどか「そっか」

もう2体とも、成功を疑っていなかった。
しかし、かなり沖合いに出た頃……想定外のことが起こった。

周りの風景が再び、一変したのだ。

まどか「……これって……」

ほむら「しつこいわね……」

キャンデロロ「キャハハハハッ」

ほむら「まさか、私たちを追ってきたのかしら?」

オフィーリア「グォオオオオオオ!」

オクタヴィア「オォオオオオオオオ!」

まどか「!もう……いきなり攻撃して来ないでよ」

ほむら「仕方ないわ……。あなたは下がっていて。
    魔女はさすがに魔法を使わないと倒せないわ」

まどか「うん。頑張って」




ほむら「……これで終りよ」

キャンデロロ「キャァアアアアアア……!」

まどか「思ったより時間がかかったね。お疲れ様」

魔法の力を持った“ほむら”の戦闘能力はかなり高く、魔女3体を全て倒してしまった。
そして魔女を倒したことにより、

ほむら「……結界が、解け……」

“ほむら”の言葉は、そこで途切れた。

……さっき結界に飲み込まれたのは、高速で走る船の上だった。
そして結界は、自分たちだけを飲み込んだ。
だったら……結界が解けたら、その時は……

まどか「……なに?どうしたの」

ほむら「まずいッ……!!」

気付いた時には、もう遅かった。
結界が解けた時には、既に船はそこになく。
2体は、海へと落下した。

そしてその瞬間……

まどか「っ!?ガぼっ、げぼ、ブァ、ィギャァアア!?」

ほむら「ゴボ、がぼっ……」

為すすべなく海に落ちた2体は、溺れているというより……苦しんでいる。
2体とも、原形を留めることすら忘れたのか次々と形を変え、
そして……

まどか「ァが、ガぼ……」

海の底へと、沈んでいった。

その一部始終は夜の海の、沖合いで起こったことだったため、当然それを目撃した人間は居ない。
しかし……2体が目指した陸の灯台に、人間ではない唯一の目撃者は居た。

QB「……やっぱりね。僕の仮説は正しかったようだ」

キュゥべえは、いくつか仮説を立てていた。
男のニセモノが船を破壊せずに残したという事実から、
“あの生き物は自力では海を渡ることはできない”可能性を考えた。

そこから、“泳ぐことができない”という仮説、
“魚類には成り代われない”という仮説、
“海水が苦手である”という仮説……。

色々と考えていた。
明日になっても死体から何も発見できなければ、これらの仮説を実証するつもりだった。
もう少し早く決断していればこの結末は避けられたかもしれないが……
今更そんなことを言っても仕方がない。

しかしやはり、アレは自力で海を渡ることはできなかったようだ。
あの苦しみ方を見ると、“海水が苦手である”という説が正解に近かったのかもしれない。

QB「それにしても……まさかまどかがニセモノになっていたとはね。
  通りでなかなか契約してくれなかったはずだ。まんまとやられたよ」

QB「まどかを失ったのは大きいけれど……それでも、人類全てを失うよりは良かったかな。
  アレに乗っ取られた人間の感情は作り物だからね。
  とてもじゃないけどエネルギーなんて得られない。
  お手柄だよ、さやか、杏子、マミ。君たちは魔女になっただけでなく、
  あの2体だけを上手く結界に引き込んだことで、人類を救ってくれたんだ。
  宇宙のために大きく貢献してくれて感謝するよ」

キュゥべえは既に居なくなった3人に労いの言葉をかけ、
しばらく灯台の上から、海の様子を眺めていた。

これでもう、全てが終わった。
残念だけど、見滝原の魔法少女は全滅してしまった。
でも、ほむら以外は魔女になってくれたんだし、良しとするか……。

そんなことを考えていたキュゥべえだが、ふと気付く。
真っ暗な水面に何か、不自然な波が起きていることに。
よく見ると……何かが、こちらに向かって泳いできている。

QB「……あれは、まさか……」

キュゥべえは灯台から降り、そして、“何か”の元へ向かう。
確かにそれはこちらに向かって泳いできており、そしてついに陸に着いた。
キュゥべえはそれが何かを確認して……話しかけた。

QB「……驚いたな、生きていたのかい」

ほむら「…………」

QB「確かに死んでしまったと思ったんだけどね。
  だけどこうして君が生きているのを見ると、僕の考えが間違っていたということかな」

ほむら「……いいえ、死んだわ」

QB「一度死んで生き返ったとでも言うのかい……?君は一体……どっちなのかな」

ほむら「さぁね……そんなこと、どうでも良い」

QB「……暁美ほむら……」

ほむらはその場を立ち去る。
そしてその後、誰も……キュゥべえさえも、もう二度とほむらの姿を見ることはなかった。




   おしまい

付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ

上にも出てたけど「遊星からの物体X」を基にしたお
あと「パラサイト」とか

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