照「淡と咲が一緒に歩いてる……」(186)

ID:aQEuJ3Ek0の代行

代行ありがとうー

照「なんで? どうして?」

菫「私に聞くな」

照「咲は私が好きなんじゃないの?」

菫「本人に聞け」

照「さっきから冷たいね菫」

菫「当たり前だ。 さっきからコソコソしてるから周りからの視線が痛いんだ」

照「ねぇ、淡が咲に近づきすぎじゃない?」

菫「仲のいい友達ならふつうだろ」

照「なるほど。咲は私に会いに来たけど、淡に会って仕方なく遊んでるんだ」

菫「どんな曲解だ」

照「それでお土産を買うのも忘れてて、今買いに行ってるんだ」

菫「そろそろ現実見ような」

照「今日は帰ろう。そして家で待ってよう」

菫「まぁ、期待しすぎるなよ」

咲「さっきお姉ちゃんの声しなかった?」

淡「テルの声? 気のせいでしょ!」

咲「そうかなー」

淡「そうに決まってるって! それよりおなか減ったからお店行こう!」

咲「そうだね。なに食べる?」

淡「デザートはもう決まってるよ!」

咲「なに食べるのかな?」

淡「サキ!」

咲「うん。冗談はいいから早く決めようか」

淡「冷たい! サキが冷たい!」

咲「こんな道端でそんなこというからだよ」

淡「むー……まぁ、適当なものでいいや!」

咲「結局そうなるんだね」

淡「じゃあ私これ食べる!」

咲「私はこっちかな」

淡「ふっふー。頭がいい私は料理が来る前にお金を用意するんだよ!」

咲「なくしたりしないの?」

淡「平気平気! あっ」 チャリーン

咲「落としたりしたらダメだよ」

淡「あははー、ごめんねー」

淡(ん? んん? もしかして今ならサキのスカート覗き放題?)チラッ

淡「おおぅ!」

咲「わっ、淡ちゃんどうしたの急に変な声あげて?」

淡「なんでもないよ! それより少し足あげてー!」

咲「こうかな?」

淡(ぐぬぬ……あと、あと少し!)

咲「とれた?」

淡「もう少し足開いて!」

淡(これで……これで見える!)

咲「ねぇ淡ちゃん」

淡「なにー?」

咲「もしかして覗こうとしてる?」

淡「えっ! そんなこと」ガン

淡「いてて……そんなことないよ!」

咲「お金とれたの?」

淡「お金は取れなかったけど、それより価値のあるものならとれそうだった!」

咲「そうなんだ。いいからお金拾おうね」

淡「はい」

咲「料理も来たし食べよ?」

淡「怒ってる?」

咲「あんなことで怒ったりしないよ」

淡「よかったー! サキに嫌われてたら生きてけないよ!」

咲「大げさだよ」

淡「サキの料理もおいしそうだね」

咲「食べる?」

淡「そうするー」




菫「なんで私がこんなことを……。 もしもし、照か?」

照「早く咲のことを教えて!」

菫「淡に覗かれそうになってた、今は料理を食べあってる」

照「まだまだ、こっちに来そうにない?」

菫「そうだな」

照「ちょっと待ってて。すぐにそっちに行く」

菫「私は帰っていいか?」

照「淡を咲から引き離しといて」

菫「なんで私がそこまでしないと!」

照「松実旅館宿泊の件はなしでいいと?」

菫「っ……。わかった、どうにかして引き離そう」

菫「失敗したらどうなる?」

照「なしの方向で」

菫「鬼! 悪魔! シスコン!」

照「ありがとう。 じゃあ頑張ってね」

菫「くっそ! 旅館がなければこんなことには!」

菫「どんな感じで行けばいいんだ……。 わからない。こうなればあたって砕けろだ!」

菫「おい淡ィ!」

淡「うわぁ!」

菫「ちょっとこっちこい!」

淡「え? スミレ?」

咲「お久しぶりです菫さん」

菫「やぁ、久しぶり咲ちゃん。悪いけどほんの少しだけ淡を借りるな」

淡「やだー! サキと遊ぶー!」

咲「もしかして今日部活の日でした?」

菫「いや、違うんだが。まだ前回の反省文書いてないからな」

咲「淡ちゃん迷惑かけたらだめだよ?」

淡「それ書いたもん! 絶対書いた!」

咲「ほら、また今度遊べるから、ね?」

菫「いいから行くぞ」

淡「サキー!」

咲「うーん、今日はもう帰ろうかな」

照「あれ、咲?どうしたのこんなところで」

咲「お姉ちゃん?」

照「誰かと待ち合わせ?」

咲「ううん。 遊んでたんだけど用事ができちゃったみたいで帰ったよ」

照「今から帰るのも大変だから、今日泊まっていってもいい」

咲「ほんと! ありがとうお姉ちゃん!」

照「今から帰ってもまだ早い時間だし、もう少し時間つぶそう」

咲「お姉ちゃんはお昼どうしたの?」

照「まだ食べてないけど」

咲「食べなくていいの?」

照「うん。夜のためにお腹すかしとかないとね」

咲「もしかして今日なにかあるの?」

照「うん。きっと咲も忘れないようなことがあるよ」

ちょっと手がかじかんで無理だわ


咲「今から楽しみだよ!」

照「楽しみにしてて」

咲「でも、今日はもう歩き疲れちゃったから家で休憩したいなー、なんてね」

照「疲れたなら休憩しよう。無理に歩かせたら大変だしね」

咲「ありがとうー」

照「でも咲は本当にかわいくなったね」

咲「急にそんなこと言われたら恥ずかしいよ」

照「照れない照れない。もうすぐ家に着くよ」

咲「お姉ちゃんの家かー……想像つかないなー」

照(あれ? 咲のポスターとかはがしたっけ?)

咲「お姉ちゃん、急にだまりこんでどうしたの?」

照「あっ、なんでもないよ。それより家を少し掃除したいから外で待っててね?」

咲「別に気にしないよ?」

照「私が気になるから」

咲「ちゃんと呼んでね」

照「わかってる。こんなかわいい咲を忘れるはずがない」

照「よし、ポスターはがしてる。 妄想日記も隠した。 咲ちゃん抱き枕は……セーフかな」

照「咲ー。入ってきていいよー」

咲「お邪魔しまーす。わぁー、全然散らかってないね」

照「少し掃除したからね」

咲「それにしても本がいっぱいあるね」

照「あっ……」

咲「どうしたのお姉ちゃん?」

照「なんでもないよ? それよりお風呂入ってきたら?」

咲「もう少し本見てたいけど」パサッ

咲「本? 棚の上から落ちてきたのかな?」

『咲好き咲好き咲好き咲好き咲好き咲好き咲好き咲好き咲好き咲好き咲好き……』

咲「えっ……」

照「あー、見られちゃった」

咲「これ、お姉ちゃんの?」

照「うん。私が咲のことどれだけ好きかわかるでしょ?」

咲「お、お姉ちゃん怖いよ……」

照「大丈夫、痛いことなんてしない、むしろ気持ちいいことだよ」

咲「いや……こっちに来ないで……」

照「そんなこと言ってるけど今から楽しみなんでしょ?」

咲「そんなこと思ってないから……」

照「ふふっ……追い詰めた。 じゃ、いただきます」

カン!って入れるの忘れたからカン!

咲「ん……」

照「どうしたの咲? 嫌って言ってたくせにずいぶんと感じてるね?」

咲「ちが……う…」

照「違うって言っても、こんなに濡れてたらね」



『まこが現れた!』


照「咲? 私のこと好きかな?」

咲「うん……お姉ちゃんのこと好きだよ……」

照「…………よし、この物語話を進めよう」

淡「却下ー! 初めのほうは入れていいけど最後の相手がダメー」

菫「そんなことはどうでもいい。 咲ちゃんを白糸台の文化祭に連れてきて演技させるつもりか」

亦野「私と尭深でてさえいないんですが?」

照「それはごめん。でもこれでいいと思うんだ」

淡「最後さえ帰れば私はそれでいいよ?」

照「じゃあ咲を私にデレデレにさせればいいのか!」バンッ

淡「違うよ! 相手を私に変えてよ!」

菫「また始まったぞ」

亦野「魚釣り行ってきます」

照「ほー、なら咲に聞いてみようか?」

淡「いいねそれ。テルの悔しがる顔がよく見えるよ!」

つまりどういう事だってばよ・・・

>>56
全部お前らが悪い!

淡「もしもしサキー?」

咲「どうしたの淡ちゃん」

淡「いまからこっちに来れる?」

咲「いけるけど、どうしたの?」

淡「聞きたいことがあるの!」

咲「わかったよ、じゃあすぐ行くね?」

淡「これでサキが来るね!」

照「あー、淡泣いてもしらないから」

淡「テルこそ泣いても知らないよ?」

咲「来たよー?」

淡「サキー! この台本見てよ!」

咲「うん」

照「私が書いた。 咲に聞きたいのは最後の相手はどっちがいいか」

咲「うん、誰にしたって私は出ないよ?」

淡照「え?」

咲「だって、私こんな恥ずかしいことできないから」

淡「そ、そこをなんとか!」

照「お願い咲!」

咲「だからー、人前だとこんなことできないってば!」

淡「ん?人前だと?」

照「つまり人前じゃなかったらいいと?」

咲「まぁ、そうなるかな?」

淡「よし、今すぐしよう!」

照「待て、ここは順番でいこう」

この後、三人は幸せに暮らしました!

カン!

菫「待て待てまてーい!」

照「どうしたの菫?」

淡「今からいいところなのにー」

菫「おかしい! いくらなんでもおかしい!」

照「なにが?」

菫「なんでここではじめようとしてるんだ!」

淡「気にしすぎだよー」

菫「大体、咲ちゃんだっておびえてるぞ!」

淡「え? ご、ごめんねサキ?」

照「ごめん」

咲「ん、大丈夫だよ」

菫「とりあえずだな、お前らというより私以外の白糸台高校はポンコツだ!」

淡「ダウトー、スミレもポンコツー」

菫「だれがポンコツだ!」

照「と、いうより一番ポンコツだよね?」

菫「それはない」

淡「ごめんねテル。さすがにそれはないよ」

咲「お姉ちゃん……」

照「みんなしてそんな目で私を見るな」

淡「でも、一番真面目なのは尭深だよね?」

咲「そうだね」

淡「でも、みんな違ってみんないいよね!」

照「さぁ、咲帰ろうか」

咲「じゃあ、今日はありがとうございました」

菫「いや、こっちこそ悪かったな」

淡「今から、サキペロタイムかー」

照「咲ペロ」

咲「それ、恥ずかしいからやめてね」


この後、三人は末長く暮らしていきました!

めでたしめでたし!  カン!

咲さんはスーカンツしてないだろいい加減にしてよ!

今てんほうしてる

淡「今夜は寝かさないぞ!」

咲「まだ道端だからそんな大声だしちゃだめ!」

照「サキペロ!」

咲「もう、今日はなしにしようかな?」

照「ごめん」

淡「調子にのりましたすみません」

咲「次そんな大声出したら怒るからね?」

照「どこ行くの?」

淡「テルの家じゃないの?」

咲「私もお姉ちゃんの家だと思ってたけど」

照「今日母さんがいるんだ」

淡「でも、どうしよ?」

照「この千載一遇のチャンスどうにかしないと!」

淡「私とテルはサキとやるためだけに生まれてきた!」

咲「別に機会はいくらでもあるよ」

淡「いやだ! 今やりたい!」

咲「もう、発情期じゃないんだから落ち着いて」

淡「にゃー!」

照「まったく淡は猫はもういるだろ……」

咲「そうだよ淡ちゃん。それにマナー悪い人のマネしちゃだめだよ」

淡「ごめんね」

咲「淡ちゃんは犬タイプだよね」

淡「サキはなんだろ?」

咲「さぁ? わかんない」

照「私も犬だよね」

淡「テルは犬だね! サキに忠実だし!」

この後、咲さんは自分が猫なのか犬なのか悩みながら生きていきました!

三人しあわせでした

かん!

もう見ればわかるだろっ……!

限界なんだよっ……!

ここで一旦乙乙
まだまだ行けるんじゃありません?

あわさき流行らないかなー。誰か書いてみ

お前らも本当は書きたいんだろ?

ここ使ってかけよ

淡(一限目だる~…はやく放課後にならないかな)
教師「今日は皆さんに転校生を紹介します」
教師「はい、じゃあ自己紹介お願いします」

咲「転校生の宮永咲です。両親の都合で長野から引っ越してきました」
淡(…ミヤナガ?)
咲「私東京は初めてで、色々と慣れないんですが、よろしくお願いします(ペッコリン」
ザワザワザワ

*「ねえ、宮永さんってさー」
*「もしかして、だけど宮永照の妹さん…だったりする?」
淡(そんな訳ないじゃん。苗字が宮永ってだけでミーハー丸出し。みっともない)
咲「あ、えーと…はい」
淡(!?)

*「きゃー!本当!?すっごい!」
*「お姉さんって家じゃどんな感じ!?」
*「宮永さんも麻雀やるの?」
ザワザワザワザワ

淡(…テルに、妹居たんだ)
何だろう、凄く、嫌な気分

人、人、人、人…
好奇心で出来てますって顔したクラスメイトに取り巻かれて
質問攻めに合う気の弱そうな転校生は、小声で何とか質問に答えている
どんなって…普通です。お姉ちゃん、あまり喋らないけどちょっと抜けたところがあって
麻雀はやってました。家族麻雀ですけど、お正月とかにお父さん達と一緒に…

転校生の一言ごとに教室に歓声が沸いて、次から次へと質問が飛ぶ

これは淡咲ですか?

いつもと同じ休み時間、何時もと違う教室を取り巻く異様な雰囲気が最高潮に達したのは
私のよく知る顔が教室に現れた時だったろう
赤い髪に赤い瞳、白糸台では、ううん多分日本全国で知らない人間を探す方が難しい
三年連続の全国優勝校のエースであり、高校生麻雀部員の頂点宮永照
あれだけざわついていた教室が、照の姿が現れた途端水を打ったように静まり返る
そして照は私の方に目もくれず、クラスメートに取り巻かれた転校生の方へ足を進めると

「学校に馴染めてるか心配できたんだけど、心配なさそうだね咲」
転校生の周りの人間に目をやって、それから転校生に目をやると凄く優しい笑顔でそういった

その予定です

おもしろくない、おもしろくない、おもしろくない
私は照のあんな笑顔は知らないし、あんな風に言葉をかけてもらったことは無い
なのにこの気の弱そうな転校生は、私が手に入れられないものを、あんなに簡単に手に入れた
何で?妹だから?妹だからって理由だけで、そんな理由で
きっと今の私は惨めな顔をしてる。机の上に突っ伏して、眠ったふりをして
いっそ眠れたらどんなにいいだろう。一限目の眠気が残っていたら
でも今の私は眠ることも出来ずに、狂ったように脈打つ心臓の音で頭がいっぱいになりながら
転校生の言葉に耳を澄ましている

どうぞ続けて

*「ねえ、宮永さんは麻雀部に入らないの?」
誰かが言った言葉に、すかさず別の誰かが相槌を入れる
麻雀部!宮永さんならきっとレギュラーに入れるわよ。だって宮永照の妹なんだもの
何て勝手な言葉だろう。どれだけの人間が、どんな思いをしてレギュラーになろうとしているのか分かってるんだろうか
私が、どんな思いをして、宮永照と一緒に居たくてレギュラーになったのか知らないくせに
宮永咲、宮永照の妹、だから麻雀部に入るべき
無神経な周りの声に押されて宮永咲が麻雀部への入部をほのめかさせられたのはそれから少ししての事

許せないと思った
宮永咲が
照の妹だからって理由だけで、ずけずけ私の日常を踏み荒らしていったあの転校生が
今日学校に来るまでは、私は日本一幸せな学生だった
憧れの先輩と、日本一の麻雀部、そして全国
宮永照と一緒の部で、宮永照と一緒にすごして、一緒に得た成果
でも今の私には何も無い。例え一緒に全国に行っても、日本一になっても
妹じゃないって理由だけで与えられないものがあることを知ってしまった
妹だからって理由だけで与えられる人間を知ってしまった
だから宮永咲が嫌い。絶対に許せない
きっとこれは八つ当たり。でも、だからって私にどうすることが出来るんだろう

「この子が新しく部に入った宮永咲」
放課後、クラスの人間に押し出される様にして入部した咲を、照が皆に紹介する
周りから向けられる視線が怖いのか、下を向いておどおどした様子の咲を背にかばい
仲良くやって欲しいと照が頭を下げる
私が入部した時も照はあんな顔で笑ったんだろうか。頭を下げたんだろうか
よく思い出せない

咲が入部して一ヶ月
周囲の期待の様に咲は部内で頭角を現すこともなく
地味といった方がいい存在になっていた
照が普通に接してくれと言った言葉のとおりに雑用を与えられ
本人も雑用を苦にした様子もなく、与えられた仕事をこなす
麻雀部は咲が来る前と何も変わらない
周囲の人間も、時が過ぎるにつれて飽きが来て今では咲を特別意識することもなくなったようだ
私を除いては
時間は一月、二月と過ぎて行き
季節は秋も終わりに近付いていた
『議題:卒業前の麻雀部での発表活動の演目について』
早い話が学校内で麻雀部の活動成果を見せる為に何をするかという奴だ
大方の流れは卒業生と在校生で試合をすると言うことで固まっていたけれど
「私に案があるんですけど」
挙手して立ち上がる
「卒業生と在校生の試合には賛成ですけど、目玉になる試合を組んだらどうでしょう」
「宮永照と、宮永咲さんの試合」

もっとはよはよ

「きっと話題になりますよ。何てったって「宮永」姉妹の対戦だもん」
そうだ。話題になるに違いない。話題になって注目を浴びて
そして大恥でもかけばいい
「…卒業生と、在校生の残りの人選は?」
「卒業生はスミレさんが入ればいいし、在校生はこれから選べばいいじゃないですか」
私の提案でざわめく部室の中で、照は普段と何も変わらない
普段通りの顔で私を見、咲を見て
一言咲にどうする?と尋ねた
答えなんて分かりきってる。この気の弱いクラスメイトは周りの空気に酷く敏感で

かくして宮永照と宮永咲の試合が決まり
下火になっていた宮永咲の人気も再燃した
宮永さん、宮永さんと周囲の人間にせっつかれ
うつむく咲の姿を見て暗い喜びを覚える
麻雀部の私には、宮永咲と組みたいという人間が現れないと分かっていたから
誰が平凡な成績の咲と一緒に大舞台に上がりたいと思うだろう
今や試合は前項の注目を浴びていて、噂ではマスコミまで現れるのではないかと言われている
咲と一緒に恥をかきたい人間がいるはずもない

宮永咲のパートナーは見つからない。予定された日時だけが近付いてくる
日に日に落ち込んでいく咲をみて暗い喜びを覚える
「妹さん、お相手見つからないみたいですね」
タブレットに目を落とす照に話しかける
見ているのは咲の牌譜
私は何度も目をとしている
面白みの無い、どこにでもありそうなありふれたもの
「そうみたいだね」
「もう少し麻雀が上手ければ集まったんでしょうね」

照「こんな打ち方をやめればね」
淡「打ち方?」
照「咲の牌譜、見た?」
淡「見ましたよ。平凡で、面白みが無くて…」
照「いつもプラスマイナスゼロ」
淡「…!」
思わず照が覗き込んでる牌譜に目を落とす
あれも、これも、全部
淡「…わざとやったって言いたいんですか?」
血が逆流するような感覚に襲われる
気付けば、駆け出していた

淡「…宮永、咲!」
咲「あ、あの」
三軍用の部屋に駆け込んで、咲の手を取って引きずるように部屋を出る
咲の控え目な抗議の声も、周囲の視線もどうでもよかった
そのままずんずんと廊下を歩き続け
淡「ねえ!」
咲「は、はい」
淡「あんたがわざとプラマイゼロにしてるって聞いたんだけど!」
咲「あ、えっと」
淡「そうなの!?」
咲「はい…」
淡「何で?」
咲「え」
淡「何でそんなことするわけ?全っ然わかんない」
咲「昔から、人に勝つとかが嫌で…負けた人を見るのも嫌で」
淡「だから部でも手を抜いて打ってたわけ?」

淡「…あんたって」
咲「え…?」
淡「あんたって、どこまで人をいらつかせるわけ!?」
淡「悔しがらせたくないから勝ちを恵んで差し上げますって?何様のつもり?」
咲「あのっ…!」
淡「来なさいよ」

尭深「…どうも」
誠子「よろしく」
淡 「せーこちゃんとたかみちゃん。一緒に卓囲んでくれるように頼んだの」

咲「えっと、よく状況が…」
淡「本気で打って」
咲「え?」
淡「手加減とかプラスマイナスゼロだとか抜きで、勝とうとして打ちなさいよ」
淡「でないと私、照がやる気の無い人間の入部認めたって言うよ?」
淡「宮永照は、大した事無い人間を、妹だから、贔屓して部に入れたって」
咲「!」

誠子「……」
尭深「……」
淡 「……」
咲 「……」
尭深「半荘5回…一位は淡が三回、宮永さんが二回」
誠子「接線だったなー…二人で目一杯張り合って」
尭深「来た事を後悔した」

淡(ああ、宮永咲、この子本当に)
淡(本当に強いや)
咲「大星さん」
淡「ふぇ!?」
咲「凄いよ大星さん。こんなに強い人と打ったの私初めてだよ」
淡「あ、当たり前じゃん。日本最強校の大将だし!」
尭深「高校百年生だし?」
咲「え?」
淡「たかみちゃん!」

気がつけば宮永咲に抱いていたわだかまりも、憎しみに似た感情もどこかに消えていた
息の詰まるような戦いの中、お互いの一挙措にまで神経を張り詰めあって卓を囲み
相手の内面を読み合い、知能を絞り切った末にあったのは
全国の舞台でも見たことの無いような強敵と、力の限り、根限りにぶつかった先にあったのは
ただ純粋な感動で
ほんの数時間共に過ごしたこの相手の事がこの上なくいとおしかった

咲「あの、渋谷さん」
尭深「何?」
咲「大星さん、居ますか?」
尭深「…卒業生と在校生の試合の件?」
咲「はい。私大星さんと出たくて」
尭深「そう。でも淡はまだ来てない」
咲「そうですか…」
尭深「でも、多分脈はある」
咲「え?」
誠子「ずーっと牌譜と戦ってたもんな。誰かの為に」
咲「それは、どういう」
尭深「昨日はずっと百面相をしてた。多分、宮永さんの腕を認めるのが悔しくて」

「宮永咲!」
驚いた様に振り返った咲に、抱えていた紙束を押し付ける
今まで酷使した指が酷く痛い

咲「これは…牌譜?」
淡「テルとスミレの。今まで手抜きして打ってたんだから、必死に研究しないと勝てないでしょ」
淡「…いらないなら捨てなさいよ。どうせ大したものじゃないし?」
誠子「大したものじゃないものを、わざわざ手で書き起こすかね。注釈つきで」
尭深「圧倒的なひらがな率」
淡「うるさいなあ!」

淡「そ、それから!」
咲「?」
顔に血が上るのが自分でも分かる
多分今私の顔はほおずきのような色をしてる筈
馬鹿馬鹿しい。一人で恨んで、憎んで、大恥をかけばいいと思ってた相手なのに
ただ一度麻雀をしただけでこんなにも私は他愛も無く
淡「勝手に試合組んだりして悪かったって思ってる」
淡「咲が辞退したいなら、私が責任持って話をつけてくるし」
淡「もし出るつもりで居て、まだ相手が見つからないなら」

「わたしと一緒に出てくれませんか」
一晩考え、断られる場面を思い浮かべ続けた言葉を
必死に口の外に押し出して、目をつぶった
一秒、二秒時間が経つのが凄く遅く感じる
今咲はどんな顔をしているのだろう
勝手に恨まれて勝手に陥れた人間がこんな事を言うのは酷く勝手なことだと分かっているし
きっと許されないことなのだろうけど
それでも私は祈ってしまう
この子ともっと打ちたいと、この子をもっと知りたいと
ああ、こんなに体が震えなければいいのに

随分と長い時間が経った気がするし
ほんの短い時間だった気もする
気付けば私は咲に手をとられ
「大星さん、私ね、初めて麻雀を打って楽しいと思った」
咲の顔がすぐ近くにあった
「始めたきっかけは凄く強引だったけど、私は大星さんと麻雀を打てて楽しいと思った」
「だから、これからも一緒に打ちたい」
「こちらこそよろしくお願いします」

時間が経つのは本当に早い
それから咲と私は毎日麻雀を打ち、一緒の時間をすごした
共に過ごす一秒ごとに互いの事を知り合って
そして気付けば卒業式の前日、卒業生と在校生が卓を囲む最後の日が来た
「咲」
「なに、淡ちゃん」
控え室の中で何をするとも無く時間を過ごす
手持ち無沙汰な私の手は咲の手と重なって出番を待っている
後少しすれば私達の出番
淡「私、宮永先輩の事好きだった」
淡「インターハイを見て一目惚れ。こんな人がいるんだって思った」
咲「うん」
淡「だからいきなり咲が転校して来て、宮永先輩の妹ですって言われて凄くショックだった」
咲「うん」
淡「咲には迷惑かけたよね」
咲「うん、何て怖い人だろうって思った」
どちらからとも無く笑いあう

共に過ごした時間が、過去を笑い話に変えてしまった
こうやってこれからも時間を重ねられればいいと思う
二人で

スピーカーが私達の名前を呼んだ
これから二人は舞台へ上がる
割れるような歓声に、スポットライト
舞台の上には宮永照
全国一万人の頂点で、宮永咲の姉
血のつながりの無い私には無い、特別な絆を咲と結んだ存在で
ほんの少し、私にとって妬ましい相手
本当に、変われば変わるものだ

これは続かなければならない

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

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