凸守「小鳥遊さん、今月の契約料金まだもらってないんだけど」(662)

六花「すまない。次の大戦に備えて暗黒商会から
   より強大な魔力を持った武具を仕入れたところ。
   そのため今は所持金が」

凸守「そーゆうのいいから。払うの、払わないの?」

六花「……あ、明日持ってくる」

凸守「明日ね。ちゃんと頼むわよ、2万円」

六花「ま、まかせて」

くみん「…………」

くみん「六花ちゃん……」

六花「くみん! お、起きてたの」

くみん「ごめんね、盗み聞きするような真似しちゃって」

六花「ど、どこから聞いていた」

くみん「だいたい全部かな……」

六花「…………」

くみん「あのね六花ちゃん、私が口出すのは良くないと思うけど……
    やっぱりこういうのは……どうかなって思うよ」

六花「……こういうの、って何のこと」

くみん「その、デコちゃんにお金を上げて、仲良くしてもらって……」

六花「違う。これはそーゆうのじゃない」

くみん「え?」

六花「今まで隠していたが凸守の真名は経済の神と強欲魔の二重襲名……
   契約続行にあたり現金を納めることは儀式として間違いではない」

くみん「…………」

六花「私はもう帰る。凸守の望む現金を錬成するためには
   かなりの時間を費やさねばならないから」

くみん「六花ちゃん」

六花「何」

くみん「あ、あの……何か悩みとかあるなら相談してね……
   人間関係のこととかで……私じゃ力になれないかもしれないけど」

六花「心配ない。邪王真眼はそんな些細なことで悩まない」

くみん「ならいいけど……」

六花「それから、ひとつだけ言っておく」

くみん「な、何かな」

六花「邪王真眼の名のもとに命ずる。
   今日ここで見たことは他言すべからず。いい?」

くみん「わかってる、誰にも言わないよ」

六花「それなら問題ない。ではまた明日」

くみん(言えるわけないよ……)

冨樫家

勇太「~♪」

六花「勇太!」

勇太「うわぁあっ! いきなり入ってくんな!」

六花「驚かせてすまない」

勇太「ったく、なんの用だ」

六花「早急に現金が必要になった。ちょっと協力して欲しい」

勇太「え、金貸せってのか?」

六花「違う。私の部屋に来て、売れそうなものがないか探して欲しい」

勇太「ああ、それならいいけど……いくら必要なんだ?」

六花「2万。明日までに」

勇太「2万って……そんなに何に使うんだよ。
   またしょうもないガラクタの類を買い足すつもりか?」

六花「しょうもなくない!」

勇太「!?」

六花「しょうもなくなんかない……とっても、大事な……」

勇太「だ、大事な……何だよ?」

六花「プリーステス……そう、プリーステスに借りていたお金を
   明日までに返さなければならない。そうしないと魂ごと闇の深淵へ飛ばされかねない」

勇太「要するにめちゃめちゃ怒られるってことか」

六花「まあ、そんな感じ」

勇太「仕方ないな、協力してやるよ。
   機嫌の悪い十花さんは俺も見たくないしな」

六花「助かる」

勇太「しっかしお前のガラクタだらけの部屋に
   金になるようなものなんてあるのか?」

六花「それをダークフレイムマスターの神眼を以て見極めて欲しい」

勇太「俺は何でも鑑定団じゃないぞ」

六花部屋

勇太「あいかわらず散らかってるな」

六花「換金できるものを探すために散らかってしまった」

勇太「で、なにか見つかったのか」

六花「とりあえずCDとDVDを全部売る。これで1万円は確保できる」

勇太「サンホラ、妖精帝國、ALI PROJECT……」

六花「おお、ジャケットを見ただけでわかるとは。流石」

勇太「うるさい、中学時代の俺の暗部だ」

六花「それで勇太、他に売れそうなものは」

勇太「売れそうなものっていったってなあ、全然分からんぞ……
   ああ、このツタンカーメンなんか高価そうじゃないか?」

六花「それはフリマで200円で買った安物」

勇太「……じゃあこのドクロ水晶は」

六花「ゲーセンで取った景品」

勇太「このキャンドルスタンドは……」

六花「中学の美術の授業で作ったやつ」

勇太「……なんか、お前の部屋が急に安っぽく見えてきた」

六花「仕方ない、お小遣いも少な……いや、
   私がいた世界の貨幣はこの世界では使えなかったのだから」

勇太「はいはい」

六花「……それより、どうにかあと1万円を捻出しなければ」

勇太「うーん、そうだなあ……このままじゃ十花さんに制裁食らうんだよな」

六花「そう。怒り狂ったプリーステスはなにより恐ろしい」

勇太「よし……じゃあこのモーゼル」

六花「それ、売れるの?」

勇太「俺が買ってやるよ。1万円でな」

六花「え、い……いいの?」

勇太「ああ、前に見た時から欲しかったし」

六花「あ、ありがと勇太……」

勇太「いいっていいって。1万円で買えるなら安いもんだし」

六花「助かった。これで凸……いや、プリーステスに怒られなくて済む」

勇太「もう借金なんか済んなよ、俺も毎回助けられるわけじゃないからな」

翌朝

森夏(はー、もうすぐテストか……面倒ね)

森夏(そういえばテスト期間中は魔術昼寝結社も活動休止なのかな)

凸守「…………」テクテク

森夏(うっ、バカ厨房……朝から嫌な顔見ちゃったわね)

凸守「あ、おはようございます丹生谷先輩」

森夏「おはよう」

凸守「丹生谷先輩って、いつもこの時間に登校してるんですか?」

森夏「まあね、余裕持って学校に着くようにはしてるわよ」

凸守「へー、流石ですね、私って朝弱くて」

森夏「まあ遅刻しないように着けばそれでいいんじゃない?」

凸守「でも早く登校できると気分いいですよねっ」

森夏「まーそうね……ってちょっと待ちなさいよ!」

凸守「はい?」

森夏「あんた、凸守よね? 中等部の凸守早苗……よね」

凸守「そうですけど……どうしたんです、いきなり。
   毎日会ってるじゃないですか」

森夏「そ、そうだけど……あ、ニョルニルハンマーがない」

凸守「さっきから何言ってるんですか、丹生谷先輩」

森夏「……あ、あーあーあー、そういうことね、なるほどねー、はいはいはい」

凸守「何がなるほどなんですか?」

森夏「二重人格ごっこね。いつもは普通の女子中学生を演じて、
   小鳥遊さんと一緒にいる時だけサーヴァントとしての人格が……ってやつね。
   私も中学の時は7つの人格を使い分けてたわ」

凸守「二重人格ごっこって……私はもうそういうの卒業したんですよ」

森夏「馬鹿言わないでよ。ガチ中二病のアンタがそんなあっさり卒業できるわけないでしょ。
   それとも自分がやってることの恥ずかしさに気づいたのかしら」

凸守「はい」

森夏「え、マジ?」

凸守「はい。思い出すだけで恥ずかしくて死にそうになるので、
   あまりそういう話はしないでもらえますか」

森夏「お、おおう」

森夏「てゆーかアンタほんとに凸守なのよね?
   頭打った? 熱でもある? 本当に二重人格なんじゃない?」

凸守「違いますって。これが本当の凸守なんです」

森夏「え、じゃあ小鳥遊さんはどうすんのよ。
   アンタ一人だけ中二病卒業したら小鳥遊さん悲しむわよ」

凸守「冨樫先輩がいるから、良いんじゃないですか」

森夏「うーん、まあそれはそうかもしれないけど」

凸守「とにかく私はもう中二病じゃないんで」

森夏「あー、そう……そうだ、それならマビノギオン返してよ」

凸守「構いませんよ」

森夏「え、いいの?」

凸守「はい、コピー取った分も全部お返しします。
   明日お持ちしますね」

森夏「はあ、良かった……これで私も中二病の呪縛から開放されるわ」

凸守「今まですみませんでした、丹生谷先輩」ペコリ

森夏「いえいえ、もういいのよ。それより真人間になってくれて嬉しいわ。
   これで私の高校生活も安泰よ」

放課後

凸守「で? 今日はちゃんと持ってきてくれたの?」

六花「なんとか用意した。2万円」

凸守「ひい、ふう、みい……うん、確かに2万あるわね」

六花「遅くなってすまない。これで契約は続行」

凸守「…………」

六花「…………」

凸守「邪王真眼第1のサーヴァント、ミョルニルハンマー凸守早苗!
   再契約の儀式遂行完了に伴い現世に復活したデース!
   会いたかったデース、我がマスター!」

六花「私も会いたかった。我が片腕とも呼ぶべき存在……
   少しの時間でも失えば心細い」

凸守「そんなこといわないでほしいデース!
   邪王真眼は何があろうとも最強なのデース!」


くみん「…………」

心が痛い

森夏(ふふっ、まさかあのバカ厨房が中二病卒業するなんてね)

森夏(やっぱり時が来ればあっさり卒業しちゃえるもんなのねー)

森夏(普通に戻った凸守は素直な後輩って感じのいい子だし)

森夏(今までは憎たらしかったけど)

森夏(中二病さえ抜ければ結構可愛いとこあるわよね)

森夏(あとは小鳥遊さんさえ中二病から脱してくれれば)

森夏(意味不明な部活も少しずつ普通の部活に近づけていける)

森夏(そうなれば奇人変人ばかりの魔術昼寝結社の評判も改善されるはずだわ)

森夏(でもま、今はとりあえずバカ厨房が真人間になったことを喜びますか)

森夏(可愛い後輩ができたようなもんだし)

森夏(やっと本当の意味で高校生活が楽しくなりそうだわ~)

ガラッ
森夏「凸ちゃーん、今日一緒に帰りましょー?」

凸守「きたデスね偽モリサマー! 今日こそ我らの因縁と宿命に決着を付けるときデース!」ヒュンヒュンヒュン

森夏「なんでやああああああああああああ!!!」ドンガラガッシャーン

くみん「もりさまちゃん!?」

森夏「ちょっと待ちなさいよバカ厨房!!
   あんた真人間に戻ったんじゃなかったの!?」

凸守「真人間とは何のことデース?
   魔力も魔道具も持てない腐れ一般人のことデスカ?」

森夏「そうよ、アンタ今朝普通に私と喋ってたじゃない!」

凸守「ハッ、そんなことあるわけないデース。
   なぜ私がお前のような愚かしい人間風情と対等に会話しなければならないのデスカ」

森夏「うぐぐぐぐ……やっぱり二重人格ごっこだったわけね……
   じゃあマビノギオンを返すってのも……」

凸守「偽モリサマーなんかにマビノギオンを渡すわけないデース」

森夏「こんのおおおお! あんた騙したのね私を!!」

凸守「記憶にないデース! 凸守はさっきあっちの世界から帰還したところデース!」

森夏「じゃあアンタが帰還する前の人格が私に何を言ったか
   拳で思い出させてやるわよお!」

凸守「望むところデース! かかってくるデース!」ヒュンヒュンヒュン

森夏「後悔すんなよバカ厨房ー!!」

くみん「も、もりさまちゃん……ちょっと」

森夏「何よ、今忙しいのよ!」

くみん「あの、凸ちゃんのことなんだけど……」ヒソヒソ

六花「!! くみん!!」

くみん「あ、あう……」

森夏「なによ、バカ厨房がどうかしたの?」

凸守「隙ありデース!!」ヒュバッ

森夏「ぶぎゃっ!! や、やったわねえー……!!」

凸守「へっ、ここまでおいでーデース!!」

森夏「待ちなさいバカ厨房ー!!」

 ドタバタ


六花「くみん……このことは他言しないように言ったはず」

くみん「ご、ごめんなさい……でも、見てられなくって」

六花「……くみんには関係のないこと」

くみん「でも、よくないよ。こういうの……六花ちゃんにとっても」

六花「私はどうなっても構わない。邪王真眼は何があろうと滅びないから」

くみん「…………」

その夜

くみん(六花ちゃんはああ言ってたけど……)

くみん(やっぱりこのまま見て見ぬふりは出来ないよ……)

くみん(もりさまちゃんに相談してみようかな)

くみん(契約切れ状態のデコちゃんにも遭遇したみたいだし)

くみん(もりさまちゃんならこういうの得意そうだしね……)ピッピッピッ

森夏『はい、もしもし?』

くみん「あ、くみんだけど……」

森夏『珍しいじゃない、電話かけてくるなんて。どしたの?』

くみん「えっとそのー……デコちゃんのことなんだけど……」

森夏『バカ厨房がどうかしたの?』

くみん「もりさまちゃん、今日普通の状態のデコちゃんに会ったって言ってたよね?
    中二病じゃないデコちゃんに……」

森夏『ええ、今朝学校行く途中でね。まんまと騙されたわ』

くみん「あの、実はね、契約が切れると普通に戻るみたいなの」

森夏『あん?』

森夏『どしたの? アンタまで中二病にかかっちゃったわけ?』

くみん「ち、違うよ、そうじゃなくって……えーと、なんて言えばいいのかなあ」

森夏『何よ』

くみん「えっとね、昨日、見ちゃったんだ。
    デコちゃんが、六花ちゃんに今月分のお金払ってって言ってて……」

森夏『お金? なんの?』

くみん「契約を続けるためのお金だよ。毎月払ってるみたい」

森夏『いつものごっこ遊びじゃない』

くみん「そうじゃなくて……デコちゃん、六花ちゃんからお金をもらって
    サーヴァントのキャラを演じてるみたいなの。毎月2万円で」

森夏『えぇっ……ちょっとそれマジなの?』

くみん「大マジだよ……今日もお金渡すところ見たもん。
   デコちゃん、六花ちゃんに対して冷たい態度で、そっけなくて……
   でもお金もらった瞬間に豹変して、いつもみたいな口調になってた……」

森夏『まさか、そんなことしてたなんて……にわかには信じられないけど……
   じゃあ私が今朝会ったバカ厨房が普通に話してきたのは』

くみん「お金をもらう前だったからだよ、きっと」

森夏『……でもそれが本当なら、お金で友達作ってるってことになるじゃない』

しえん

>>61
2万は良心的すぎるよな

くみん先輩は天使

>>63
普段のくみんだって(^q^)やん

くみん「そうなるよね……だからやめさせたいんだけど、どうしたらいいか分かんなくて。
    もりさまちゃんならこういうこと解決するの得意かなって……」

森夏『うーん、難しいわね……』

くみん「やっぱりそうかなあ」

森夏『契約してない時の厨房は、小鳥遊さんと仲良いわけじゃないのよね』

くみん「うん、そういうふうに見えたよ」

森夏『じゃあ契約をやめれば小鳥遊さんと厨房は絶交になる……』

くみん「そうなる……よね」

森夏『小鳥遊さんは厨房と友達でいたいから
   言われるままにお金を払い続けてるんだろうし……うーん』

くみん「どうしよう」

森夏『このことは他には誰も知らないのよね?』

くみん「うん、私ともりさまちゃんだけだよ」

森夏『よし、じゃあ私達だけで解決しちゃいましょう。
   まず小鳥遊さんと厨房から詳しい事情を聴きだすとこから始めるわよ』

くみん「うまくいくかなあ……」

森夏『うまくいかせるのよ。早速明日から始めるわよ』

>>64
おう表出ろや

>>68
てんす(^q^)あうあうあー

翌日

ガラッ
勇太「ういーっす」

六花「遅い」

凸守「やっとおでましデスカ、ダークフレイムマスター。
   真打は後から登場するというやつデースね」

勇太「掃除当番があって遅れただけだ。
   今日はお前らだけか?」

六花「くみんも丹生谷もいまだ姿を見せない」

凸守「はっ……!? まさか異世界へ迷い込んでしまったのでは……」

勇太「あるわけないだろ」

六花「いや、十分にありえる。学校という場所は不可解な事象が発生する一種の特異点……
   何かのはずみでゲートが開いてもおかしくはない」

勇太「はいはい」



コソコソ
森夏「この様子だと冨樫くんは何も知らないみたいね……」

くみん「冨樫くんには知ってほしくないよ……」

しえん

そういや、凸森と六花って、どこでしりあってんだ

>>73
ネット

>>74
ああ、そういえばそっか。㌧

森夏「でも2万円もらってもあんなキャラ演じるなんて……
   私には恥ずかしすぎてできないわ流石に」

くみん「ある意味優しいよねえデコちゃん」

森夏「プロ根性ってやつかもね」

くみん「でももりさまちゃんが協力してくれるなんて意外だったよお」

森夏「え、そう?」

くみん「うん、いつものもりさまちゃんなら
    『なんで私があんな奴のためにー』とか言いそうだったもん」

森夏「まあそりゃバカ厨房のことは嫌いだけど。
   こんなバカなことやめさせて、中二病も抜けさせれば
   マビノギオンを返してもらえるでしょ。それだけよ」

くみん「嘘ばっかり。六花ちゃんとデコちゃんがお金なしでも
    仲良くできないかってことも、ずっと考えてるんでしょ?」

森夏「か……考えてないわよ、そんなこと」

くみん「そうかなー、顔に書いてあるけどなー」

森夏「考えてません!
   あっ、3人とも帰っちゃうわ、追うわよ」

くみん「あ、待ってえ」

この、くみんは天使



凸守「黒き祈り届きし蘇る闇の支配者よー♪」

六花「灰に還る時まで血を求め狩る者ー♪」

勇太「うるさいうるさい、大声で歌うな」

六花「さあ勇太も一緒に」

勇太「俺はデンカレなんか知らん」

凸守「知ってるじゃないデスカ」

勇太「あれ、そういえば凸守、お前バッグ変えたのか」

凸守「ああ、臨時収入が2万も入ったので買い換えたのデース」

勇太「ふーん」


コソコソ
森夏「2万の臨時収入……やっぱり本当なのね」

くみん「もう使っちゃったんだ。六花ちゃんからもらったお金、返させようと思ってたんだけど」

森夏「そんなの後からいくらでも返せるでしょ。
   あ、凸守が一人になるわ。ちょっと行ってくるわね」

くみん「頑張って、もりさまちゃん!」

凸守「今日を生きる罪もー気付き知る罪もー受けて刻むほどにー心震わせー♪」

森夏(なるほど、一人になった時も中二病モード……徹底してるわね)

凸守「清き御霊で祈り捧げるよりー♪」

森夏「ちょっと、バカ厨房ー!」

凸守「おっ、偽モリサマー! こんなところで待ち伏せていたとは侮れない奴デース!
   我が帰還ルート63を貴様に知られてしまったのは痛いですが、
   ここで貴様を倒してしまえばその事実もなくなるというもの! いざ勝負デース!」

森夏「いいって、そういうの。小鳥遊さんもいないんだし」

凸守「マスターがどうかしたデース?
   はっ、マスターと別れたこの時を狙って攻めてきたというわけデスカ!?
   しかしこの凸守、マスターがいなくともリミッターを解除すれば本来以上の力で……」

森夏「もう、いいって言ってるでしょ。ネタは上がってんのよ」

凸守「何の話デース?」

森夏「小鳥遊さんから毎月お金もらってそのキャラやってんでしょ?」

凸守「…………」

森夏「沈黙ってことはつまり肯定ね」

凸守「ふん……まあ貴様やくみんのような腐れ一般人から見れば、
   我々の契約の儀式はそういうふうに見えるのかも知れないデスネ」

腐れ一般人(ゲス顔)

凸守「まあどちらにせよ貴様には関係のないことデース」

森夏「なんでよ」

凸守「貴様は結局のところ部外者でしかないのデース。
   これはマスターと凸守の間でのみ交わされる契約……
   第三者が介入することなど有り得ないのデース」

森夏「ふーん……まあそう言われるだろうと思ってたわ。じゃあ違う質問をするわね」

凸守「なんデスカ?」

森夏「仲良くもない人に毎月お金を払って友達になってもらう行為、
   あなたは客観的に見てどう思う?」

凸守「客観的に見れば、ろくでもない行為だと思うデース」

森夏「ほーう」

凸守「しかしお金というのはそういうものではないデスカ?
   お金を払う側は、楽しい時間を買えるわけデース。
   もらう側は、アルバイトのつもりでやっていればそれでいいのデース。
   払う側も貰う側も、お金だけの関係だと割りきっているのではないデスカ?」

森夏「でも、お金を払う側が貰う側に対して、お金だけの関係を超えた
   行為を持っていたとしたら、どう思う?」

凸守「それはお金だけの関係だと割り切れないほうが悪いのデース」

森夏「…………」

2万円で保守頼むデース

×行為を持っていたとしたら
○好意を持っていたとしたら

誤植を訂正するデース

小鳥遊家

ガチャ
六花「ただいま」

六花「ふ……やはり誰もいない」

六花「この静寂が疲弊した邪王真眼を癒す」

六花「…………」

ピンポーン

六花「誰かきた……はーい」ガチャ

くみん「こんにちは、六花ちゃん」

六花「くみん、どうしたのいきなり」

くみん「近くまで来たからちょっと寄っちゃった。
    ごめんね、いきなり来ても大丈夫だった?」

六花「構わない。上がって」

くみん「おじゃましま~す」

六花「待って……組織の監視がついてないか確認する」

くみん「ついてないと思うよ」

        -‐  ニニ ‐- 、
    ,-、/  / /    、  `く
.   / .|-‐ /  / //  |ハ   ',
   /  ト、 _l '´ |./´イ/  lト、 ヽ ハ
.   l  /  l   /    _,    ,.. レ||
  |  |{  |   |   ´       ||
  l  ∧ ,-、   トン''テミ    x=v ハ|  
  | ,' Y⌒∨ { ( リ   イリ '/ /l|  興味深いスレdeathね
  / '   ヽニ、`ヽゝ `    , `  lノ
. / /     }\    )~   ノ  ___________
// /  __ .ノ    、.    .ィ'j゙~~| | |             |
__/          \  |__| | |             |
| | /   ,              \n||  | |             |
| | /   /  ・    ・  r  ( こ) | |             |
| | | ⌒ ーnnn        |\ (⊆ソ .|_|___________|
 ̄ \__、("二) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l二二l二二  _|_|__|_

六花「で、何か用があってきたの?」

くみん「うん、まあちょっとお話したいなーって思って」

六花「話……また凸守のこと?」

くみん「まあ、そうなるかな……」

六花「その話はもういい。いいかげんしつこい。
   私と凸守のことなんだから、口を挟まないでほしい」

くみん「六花ちゃんとデコちゃんのことなら、私にも関係あるよ。
    同じ部活の友達なんだもん」

六花「友達……」

くみん「せっかく一から部活を立ち上げて集まった友達が
    お金で作った関係なんて……寂しいし悲しいから」

六花「……くみんは私にどうして欲しい」

くみん「そりゃ、やっぱり……デコちゃんにお金あげるのなんてやめて、
    普通に友達として仲良く……」

六花「残念ながらそれはおそらく不可能。
   凸守との契約は現金によってしか成り立ち得ない。
   現金を供えるのをやめれば、凸守は私の元から去っていく。
   これは私と凸守が最初に契約した時からの掟」

くみん「そんな……」

くみん「ずっとお金あげてきたの? デコちゃんと会った時から、ずうっと?」

六花「そう、ずっと。最初は毎月100円だったけど」

くみん「値上げされちゃったんだ」

六花「凸守の魔力レベルが上昇するたびに、
   より高度な儀式で契約しなおす必要があった」

くみん「100円から2万円はさすがにレベル上がり過ぎだよ……
    それに毎月払うの大変じゃないの?」

六花「お年玉貯金を切り崩した。しかしそれももう尽きた」

くみん「じゃあ、もう払えないってことだよね」

六花「大丈夫。アルバイトを始める」

くみん「アルバイトって……確かに高校生だから出来なくはないけど」

六花「邪王真眼の使い手が労働に勤しむなどこれ以上ない恥辱……しかし致し方ない」

くみん「……六花ちゃんは、本当にそれでいいの?
   デコちゃんにお金払うためにバイトまでして……
   本当はお金なしでも仲良くなりたいって思ってるんじゃないの?」

六花「……今の私では儀式なしにサーヴァントを従えることはできない。
   くみんには分からないこと。くみんはこちらの世界に首を突っ込まない方がいい」

くみん「六花ちゃん……」

その夜

くみん「もしもし、五月七日です」

森夏『はいはい』

くみん「デコちゃんのほう、どうだった?」

森夏『手強いわね。金でやってる、って割り切ってるから余計に』

くみん「そっかー……」

森夏『てゆーか、厨房のヤツは小鳥遊さんのこと金ヅルとしてしか見てないわよ。
   いっつも仲良さそうにしてるけど、ほんとに上辺だけね』

くみん「お金なしで仲良くなれれば、って思ってたけど。やっぱり無理かなあ」

森夏『ま、不可能でしょうね。そっちはどうだったのよ』

くみん「六花ちゃん、アルバイト始めるって」

森夏『ええ? まさか厨房との契約のためだけに?』

くみん「そうみたい」

森夏『はあ……厨房もダメだけど小鳥遊さんはもっとダメダメね』

くみん「どうしたらいいかなあ、私もう見てられないよ……」

森夏『うーん、まず小鳥遊さんのほうを何とかすべきかもね……』

これは勇太が六花をたらしこんで凸を忘れさせる展開

冨樫家

勇太「ふああーあ……もうこんな時間か」

十花「冨樫勇太」

勇太「ほゎぁあぁぁぁぁっ!? なんですかいきなり!!」

十花「すまない。驚かせるつもりはなかった」

勇太「驚きますよこんな夜中にいきなり出てこられたら!」

十花「それより、話がある」

勇太「話? 今じゃなきゃダメですか?」

十花「そうだな、早い方がいい。で、本題に入らせてもらうが」

勇太「はいはい」

十花「六花がアルバイトをしたいと言い出してな」

勇太「はあ、そうですか」

十花「はあそうですか、とはなんだ。真面目に聞け。
   六花がバイトを始めると言うんだぞ」

勇太「要するに六花が心配なんですね」

十花「まあ、うん……」

十花「でも考えてもみろ。あの六花がアルバイトだぞ?
   まともに出来ると思うか?」

勇太「うーん、でも流石の六花もちゃんとやると思いますけどねえ。
   何のバイトをしたいって言ってるんですか?」

十花「それはまだ聞いていないが、週に2、3日くらいやりたいらしい」

勇太「はあ」

十花「2万程度稼げれば充分なんだと」

勇太「2万……」

十花「ん、どした?」

勇太「いえ、六花が十花さんから借りてたお金も2万だったなって」

十花「借りたお金?」

勇太「え、はい……六花がそう言ってましたよ」

十花「なんのことだ? 私はあいつに金を貸した覚えなんかないが」

勇太「え? でも急いで2万円返さないと怒られるって言って、
   部屋にあったものいろいろ売ったりしてましたけど……」

十花「…………」

勇太「十花さん?」

十花「怪しい。何か裏があるな」

勇太「裏って……」

十花「アルバイトで月2万稼ぎたいというのと、
   私に返す金だと嘘をついて2万を作ったのと、何の符合もないと思うか?」

勇太「金額はあってますけど……
   てゆーか十花さん、六花から2万もらってないんですか?」

十花「貰ってない」

勇太「じゃああの2万は何に使ったんだろう……」

十花「冨樫勇太」

勇太「はっ、はい」

十花「私の方でも色々探ってみるが、君の方でも頼む。
   最近あいつと一緒にいる時間が一番長いのは君だ」

勇太「分かりました。俺も気になりますから」

十花「何か怪しいことに手を染めていた時は……」

勇太「い、いや、六花に限ってそれはないと思いますよ……
   きっと急に欲しい物ができて、人にも言えないようなもので、
   あんまり詳しく話したくないだけなんじゃ……」

十花「まあ、そんなオチならいいんだがな」

翌日

森夏「こんにちはー」

勇太「おう」

森夏「今日はアンタだけ?」

勇太「六花は掃除当番だよ」

森夏「ああ、そういえばそうだったわね」

勇太「…………」

森夏「どしたの? なんか物思いに耽ってる感じだけど」

勇太「え、ああ、いや……最近ちょっと六花の様子がおかしくてなあ」

森夏「そう? 私全然気付かなかったけどー」

勇太「なんかお金が必要みたいなんだよな。どうしたんだろうな」

森夏(うっ、もしかして冨樫くん、結構気付いてる……?)

ガチャ
凸守「邪王真眼とそのサーヴァント、凸守推参デース!」

六花「黒は闇より出でて闇より黒し……」

勇太「なんだその決め台詞」

六花「くみんは?」キョロキョロ

森夏「まだ来てないわよ」

六花「そう、よかった」ゴソゴソ

森夏「?」

六花「丹生谷、履歴書の書き方を教えて欲しい」

森夏「履歴書? 小鳥遊さんバイトでもするの?」

六花「そのつもり」

凸守「んなっ……! 邪王真眼の使い手がわざわざ労働をするなど……
   そんなことをしなくても望むものはすべて手に入れられるはずデース!」

森夏(あんたのせいだろ……)

勇太「……六花、何でバイトなんかするんだ?」

六花「理由は別にない。強いて言えば、この世界の貨幣経済を掌握するため」

勇太「掌握って……要するに金がいるってことだろ?
   なんでそんなに金がいるんだ、この前の2万だって借金返済のためじゃなかったんだろ」

六花「……なぜそれを知ってる」

勇太「十花さんから聞いた」

六花「くっ……プリーステスの妨害工作か……」

勇太「ふざけないで真面目に答えろ。この前の2万円は何に使ったんだよ?
   何のためにバイトまでしてお金を作らなきゃならないんだ?」

六花「……もっとお小遣いがほしいから……」

勇太「だから、なんのためにそんなに小遣いが……」

森夏「まあまあまあまあまあ、もういいじゃない。
   小鳥遊さんだって年頃の女の子なんだから、色々物入りなのよ。ねっ」

六花「まあ、そんな感じ」

勇太「それだけならいいけど……あんまり十花さんに嘘ついたり心配かけたりすんなよ」

六花「もとよりプリーステスとは騙し騙されあう関係。
   嘘で塗り固められた虚構の生活を送っているから無用な心配」

勇太「お前バイト先でもそんなんだったらクビにされるぞ」

六花「バイト先では下民たちのレベルに合わせるから問題ない。
   それより丹生谷、くみんが来ないうちに履歴書の書き方を」

勇太「なんだよお前、くみん先輩と何かあったのか?」

六花「別に何もない」

森夏(なんかまた面倒くさいことになってきたわね……)

>>182
十花は「君」じゃなく「お前」っていう

数日後

 ウィーン
六花「…………」

店員「いらっしゃいませ、お一人様ですか?」

六花「あ、あの、アルバイトの面接にきたんですけど」

店員「ああ、面接の方ですか。
   えーと、昨日お電話いただいた小鳥遊さんですね」

六花「は、はい」

店員「奥の部屋に面接官がおりますのでそちらにどうぞ」

六花「わ、わかりました」


ガチャ

六花「失礼します……」

十花「よう」

六花「ぷ、プリーステス!? なんでここに……」

十花「面接官にその態度はなんだ。落とすぞ」

六花「う、うう……」

六花「どーしてここにいらっしゃるのデスカ」

十花「この店は私が務めるレストランの系列店だからな」

六花「答えになってるようでなってない」

十花「おら、履歴書見せろ」

六花「はい……」

十花「ふーん、志望動機『社会勉強のため、家計を助けるため』……
   誰かに言わされているかのような模範解答だな」

六花「…………」

十花「こんなんじゃ私は納得しないぞ。言え、お前が金のいる理由を」

六花「理由なんて、別に……」

十花「冨樫勇太に嘘をついて2万を捻出して、さらにアルバイトだ。
   なんだ、どうしてそんなに金がいるんだ?
   理由を話せば私が出してやらんこともないぞ」

六花「プリーステスの協力は受けない」

十花「私が出すわけじゃない。パパがお前のために残したお年玉貯金、
   結構な額が積み立てられていたはずだ」

六花「…………」

十花「いくらいるんだ。何を買いたいんだ。言ってみろ」

六花「…………」

十花「六花、隠し事をされると私もつらい。たった二人の家族なんだからな」

六花「べつに隠しているわけじゃない」

十花「じゃあ正直に自分の思ってることを言え」

六花「…………」

十花「ったく……」

六花「…………」

十花「そういえばお年玉貯金の利子が結構ついてるはずだな……
   今日帰ったら確認してみるか」

六花「だ、ダメ」

十花「何がダメなんだ?」

六花「あ、あう……とにかくダメ」

十花「……まさかお前、もう貯金に手を付けて……」

六花「! 撤退!!」ダダッ

十花「待てっ、六花!!」

その夜 小鳥遊家

十花「…………」ガサゴソ

十花「やっぱり六花のぶんの通帳だけない」

十花「六花、出てこい。通帳を見せろ。持ってるんだろう」

六花「…………」

十花「数十万は入っていたはずだ。何に使った。」

六花「…………」

十花「全部使いきったのか」

六花「…………」

十花「パパがお前のために残してくれていたお金だぞ」

六花「…………」

十花「何に使ったかは知らんが……パパに悪いと思わないのか」

六花「…………」

十花「……白状するまで、小遣いはやらん。勿論バイトなんかさせない。いいな」

六花「…………」

勇太→六花→凸→勇太

この金の流れが作れるかどうか

>>242
右wwwww

数日後

くみん「六花ちゃん、最近どう?」

森夏「なんかちょっと落ち着かない感じだわ」

くみん「アルバイトは結局やってないんだよね」

森夏「うん。でも理由はわからないのよね。
   不採用になったのかって聞いても、はぐらかされたし」

くみん「お金、どうするつもりだろ」

森夏「うーん……稼げなくはないと思うけど……」

くみん「そうかな? どうやって?」

森夏「お、女の子だし……その」

くみん「……もりさまちゃん、笑えない冗談はやめて」

森夏「ごめん……」

ガラッ
勇太「うぃーっす」

くみん「こんにちは、冨樫くん」

勇太(丹生谷もくみん先輩もあいかわらずのん気そうだな……
   六花がおかしいことに気付いてるのは俺だけか……)

勇太(あの日の夜……また十花さんが俺の部屋にきた)

勇太(いつになく思いつめた表情で……)


十花『富樫勇太……私にはもうどうすることもできない』

十花『あいつは私に心を開いてはくれない』

十花『姉として情けないが……もうお前だけが頼りだ』

十花『頼む……六花が何をしているのか、それだけでいい……
   それだけでも聞き出してくれ……』

勇太『ちょっ、十花さん土下座なんてやめてくださいよっ!』

樟葉『お兄ちゃ~ん、お風呂開いた……どぅえぇっ、何やってんの!?』

勇太『俺がやらせたんじゃない! 十花さんが勝手に……』

十花『お願いだ、富樫勇太。このとおりだ』

勇太『分かりました、分かりましたから顔上げてください!』


勇太(六花はお父さんの残した貯金に手を付けてまで何かを買うつもりらしいけど……
   一体何に使うつもりなんだ)

ガラッ
六花「おはよう諸君」

しかしこのくみん先輩は先輩だな
敬語使う価値ある

勇太「あれ、凸守は?」

六花「体内循環魔力の不調によって動けないらしい」

勇太「風邪で休みってことか」

六花「まあ、そうともいう」

森夏「あのうるさいのがいないと穏やかでいいわね~」

くみん「いっつもデコちゃんが来たら途端に賑やかになるもんねー」

勇太「そういえば、凸守が部活休むのって初めてか」

森夏「静かでいいわ」

勇太「六花は寂しいんじゃないのか? 凸守がいなくて」

六花「凸守がいない極東魔術昼寝結社の夏……」

勇太「ん?」

六花「寂しくはない……が、これは完璧な極東魔術昼寝結社の夏ではない。
   凸守がいてこそ、この結社は完成される。欠けるなどありえない」

勇太「ほう」

六花「凸守は必要。必要、だから……」

勇太「わかったわかった」

六花「……今日はもう帰る」

勇太「え、今来たところじゃないか」

六花「帰りたくなった。勇太も一緒に来て」

勇太「ったく、しょうがないな……じゃあ丹生谷、先輩、また明日」

森夏「おつかれー」

くみん「お疲れ様ー」

森夏「…………」

くみん「六花ちゃん、デコちゃんは必要だって」

森夏「あー、何度も言ってたわね。
   やっぱ小鳥遊さん的には厨房を手放すのは嫌なのね」

くみん「でもデコちゃんは六花ちゃんのことはどうでもいい感じで……」

森夏「はあ……この話の着地点をどうすればいいのか全く分からんわ」

くみん「私はやめさせたいよ、こんなこと……
    ホントはデコちゃんも六花ちゃんもみんなあで仲良くが理想だけど、
    デコちゃんが離れていったとしても、六花ちゃんのために……」

森夏「うーん、まあそうねえ……どっちにしろ小鳥遊さんを説得できそうなのは
   次の契約切れの時よね……このままだとお金は払えないはずだから」

>>1「はあ……この話の着地点をどうすればいいのか全く分からんわ」

こうじゃないよな?
投げるとかやめてくれよ

また数日後

勇太「今週のフットンダも面白かったな。そろそろ寝よう」

コンコン……コンコン……

勇太「だ、誰だ!?」

六花「勇太……勇太……」

勇太「り、六花か……お化けかと思ったぞ」

六花「勇太、入ってもいい?」

勇太「いいけど……どうしたんだよ、こんな夜中に。
   つーかなんでお前ら姉妹は夜中に乱入してくるんだ」

六花「…………」

勇太「どしたんだ、何か用があるんじゃないのか?」

六花「……お願いがあって、来た」

勇太「お願いってなんだよ」

六花「…………」

勇太「おい、六花?」

六花「お金を……貸して、ください……」

勇太「お、お金って」

六花「お願いします、何も聞かずに貸して……」

勇太「……いくらいるんだ」

六花「2万円……」

勇太「また2万円か。この前も2万円だったな」

六花「…………」

勇太「一体何に使うんだ。それを聞かないと貸せない」

六花「それは……言えない」

勇太「じゃあ貸せないな」

六花「あう……」

勇太「だいたいお前、最近おかしいぞ。
   なんでそんなにお金が必要なんだよ。十花さんも心配してたぞ」

六花「…………」

勇太「ほら、言ってみろ。誰にも言わないから」

六花「プリーステスにも?」

勇太「ああ、言わない」

六花「…………」

勇太「どうしても言わないのか?」

六花「……プリーステスにも言いたくないけど、
   勇太にはもっと言いたくない……」

勇太「ふ、ふはははは!」

六花「!?」

勇太「落ちたものだな、邪王真眼よ。すでに富樫勇太の人格は眠りに落ち、
   今は夜の覇王ダークフレイムマスターがこの肉体を使っている。
   それすらも見抜けないとはなあ」

六花「…………」

勇太「おい、なんか反応しろよ!
   話しやすい雰囲気を作ってやったのに、恥ずかしいだろ!」

六花「ごめん……」

勇太「はあ……なんか本当に変だぞ、お前」

六花「自分でもそう思う……」

勇太「そんなしょぼくれるなよ……俺はいつでもお前の味方だ。
   ワケさえ話してくれれば、いつだってお前の力になってやるよ」

六花「……ほんと?」

勇太「ああ。だから、話してくれ」

六花「ん…………」

勇太「…………」

六花「で、凸守に……その……」

勇太「凸守がどうしたんだ?」

六花「渡す……」

勇太「え?」

六花「凸守に、お金を渡す……」

勇太「……どういうことだ、ちゃんと説明してくれ」

六花「で、凸守は……私が、お金、渡して……渡さないと……」

勇太「…………」

六花「仲良くして、くれない、から……っ」グスッ

勇太「ばっ……お前、それって……」

六花「だから、お金……もうないからっ……だから……」ヒグッ

勇太「六花…………」

これは勇太がエンコーする展開?

勇太「はあ、それで2万円か……」

六花「うう……ぐすっ」

勇太「毎月払ってたのか。払わないとどうなるんだ?」

六花「話しかけても無視される……口調も髪型も一般人っぽくなる」

勇太「じゃああいつの中二病は演技だったってことか……」

六花「このままじゃ凸守が離れていっちゃう……
   そんなの……やだ……」

勇太「なあ六花、そんな金を渡して仲良くしてもらうのなんて……」

六花「分かってる。分かってるけど……」

勇太「丹生谷とか、くみん先輩とか……友達なら他にも……」

六花「でも、凸守が必要だから」

勇太「サーヴァントとしてか?」

六花「ちがうっ!」

勇太「!」

六花「友達、だから……」

勇太「…………」

またまた数日後

くみん「ついにあれから1ヶ月……契約更新の日だよ」

森夏「小鳥遊さんは結局アルバイトしてないし、お金は工面できてない」

くみん「デコちゃんとの契約はできないはずだけど……
    でも、そうなたっとして六花ちゃんをどうするつもり?」

森夏「なんとかして目を覚まさせるわ。
   多分小鳥遊さんは凸守に精神的に依存してるからね。
   まず凸守が金だけが目当てのヤツだったって分からせなきゃ」

くみん「それちょっと荒療治じゃないかなー」

森夏「私が荒療治をする、そしてアンタがケアをする。完璧じゃない」

くみん「……もりさまちゃんって、ものすごく面倒見いいよねえ」

森夏「う、うるさいわね」

くみん「あっ、足音がする。くるよっ」

ガラッ
六花「人間はすぐなまける。人間はすぐ思い上がる。人間はすぐ気持ちが変わる。」

凸守「贅沢がしたいデース! 女がほしいデース! 人の上に立ちたいデース!!」

森夏「あれっ!?」

六花「月の血は私に大いなる力を与えてくれた……」

凸守「そこの腐れ一般人ども! 私と一緒に月へ行かぬかデース!」

森夏「ちょっとちょっと、いつもの中二病モードじゃない!」

くみん「あれ、おかしいなー」

森夏「本当に今日がその日だったんでしょうね?」

くみん「間違いないよー、ちゃんとメモ帳に印つけたもん、ほら」

森夏「日付に間違いがないとすれば、小鳥遊さんはお金を……」

くみん「でもどうやって?」

森夏「家族から貰ったか……いやでも、アルバイトしようとするくらいだし……
   となると最有力候補は……」

くみん「…………」

六花「貴様は魔界の者なのか、それとも人間なのか!」

凸守「両方デース! 貴様のような宇宙の掟を破る奴と戦うために
   この凸守は生まれてきたのデース!」

ガラッ
勇太「今日は騒がしいなー」

森夏「富樫くぅ~ん、ちょっと~」

勇太「ん? なんだ、丹生谷」

森夏「ちょっとこっち来てくれるぅ~?」

くみん「富樫くんにちょっと聞きたいことあるんだ~」

勇太「くみん先輩まで……なんですか、一体」

森夏「私達とこっちでお話するのよ~」グイッ

勇太「痛いっ! 痛い痛い痛いぃぃ!」

くみん「六花ちゃーん、ちょっと富樫くん借りるね~」

森夏「すぐに返すから~」

六花「? うん」

廊下

勇太「な、なんだよこんなとこまで連れてきて……」

森夏「黙れ」

勇太「ひっ!?」

くみん「ちょっと質問したいことがあってね~」

森夏「正直に答えないと殺すから……いい?」

勇太「お、おう……なんだよ」

森夏「単刀直入に聞くけど、小鳥遊さんにお金貸したりしてない?」

勇太「え?」

くみん「どうなの? 富樫くん」

勇太「え、えーっと……そのう」

森夏「わっかりやすいわね」

くみん「嘘つけないタイプだねー」

勇太「お、俺が六花に金貸したら何かいけないのかよ?」

森夏「お金を貸すこと自体は別に悪いことじゃないわよ。
   問題はアンタが凸守のことを知ったうえで貸したかどうか」

勇太「凸守のことって……」

くみん「正直に言って、富樫くん。
   これは極東魔術昼寝結社の夏全体に関わる問題だから」

勇太「…………」

森夏「知ってたの? 知らなかったの?」

勇太「……凸守に毎月2万あげて仲良くしてもらってる、ってことは六花の口から聞いた……」

森夏「ふーん、聞いた上で貸したんだ」

くみん「なんとも思わなかったの? その話を聞いて……」

勇太「良くないとは思いました、お金で友達を買うなんて……
   そして凸守もそこに漬け込んで、お金を巻き上げてる……
   確かに絶対ダメですよ、こんな関係」

森夏「そこまで思ってて、なんで貸したのよ」

勇太「六花には……凸守が必要だと思ったから」

森夏「…………」

勇太「六花の悲しむ顔はもう見たくないって……あの時に思ったから」

森夏「あんたねえ……」

くみん「富樫くんのバカっ!!」

俺「凸守?…なにこれ……」

凸守「ち、違うデ~ス!腐れ一般人が勝手に書いてるデ~ス…」アセアセ

俺「分かってるよ^^ちょっとからかってみただけ^^」

凸守「もう!デス!直人に嫌われたかと思って泣きそうになったデ~ス……愛してるデスか?…///」

俺「愛してるよ!当たり前だろ^^」ギュッ

凸守「デ~ス…///」チュッ

直人おせーよ

くみん「見損なったよ……!」

勇太「せ、先輩……」

森夏「そうよ、あんたのやってることはただの自己満足よ。
   何の解決にもなってない方法で女の子を喜ばせて、
   それを見てあんたも喜んでるだけ」

勇太「…………」

森夏「今月はこれでいいかも知れないけど、これから先はどうすんの?
   ずっと小鳥遊さんに毎月2万円貸し続けるの?
   あんたにそんなお金あるの? 来月またお金貸してって頼まれたら、
   小鳥遊さんに何て言うつもりだったの?」

勇太「それは……」

森夏「……こんな関係、いつまでも続くわけないのよ。
   小鳥遊さんが傷ついて、すっからかんになって、それで終わるのよ。
   最後に得するのは凸守だけ。分かるでしょ、それくらい」

勇太「…………」

森夏「それなら、もう今のうちに終わらせちゃった方がいい。
   小鳥遊さんが悲しむことになってもね」

くみん「富樫くんが本当に六花ちゃんのことを思ってるなら、そうすべきなんだよ」

勇太「六花のため、か……」

森様「ただの所有欲よ!」

 六花『しょうもなくなんかない……とっても、大事な……』

 十花『何か怪しいことに手を染めていた時は……』

 十花『あいつは私に心を開いてはくれない』

 六花『凸守がいない極東魔術昼寝結社の夏……』

 六花『でも、凸守が必要だから』

 六花『友達、だから……』



勇太「…………」

勇太「そうだな……うん、俺は……
   六花に優しくしたつもりだった。味方になったつもりだった……
   でもそれは六花にとっては……」

くみん「分かってくれた?」

勇太「はい……俺、何も考えてなかった……
   六花を悲しませたくないって、それだけで……
   丹生谷、俺を殴ってくれ!!」

森夏「オラァアァッ!!」バキィッ

勇太「ぶぎゃっ!!」

勇太「ノータイムで殴んなよ! せめて構えてから殴ってくれよ!!」

森夏「いや、殴れって言われたからつい反射的に」

勇太「反射的に!? お前ちょっと怖いな!」

くみん「ま、まあまあ……今は喧嘩してる場合じゃないよ」

勇太「はっ、そ、そうでした」

森夏「そうね。これからどうするか、だけど」

勇太「やっぱり六花を説得するのが一番じゃないのか?」

森夏「契約を解除するように?」

くみん「それが出来れば一番いいと思うけど……」

勇太「俺が話してみますよ……
   この問題を共有できるのは、六花にとっては俺だけだし」

森夏「そうね……じゃあ任せるわね」

勇太「しっかし、丹生谷がこんなに他人のことを
   親身になって考えるなんて、ちょっと意外だよな」

くみん「同じこと言われてるー」

森夏「うるさいっ!」

その夜

勇太「もうすぐ深夜アニメタイムだな」

コンコン
六花「勇太、勇太」

勇太「おわっ、びっくりした……どうしたんだ、入れよ。寒いだろ」

六花「うん……」

勇太「…………」

六花「……お金、貸してくれてありがとう。
   いつになるかは分からないけど……ちゃんと返す」

勇太「……別にいつでも構わないよ。
   それより、凸守と友達続けられてよかったな」

六花「うん、良かった……凸守は、私の一番の親友だから」

勇太「…………」

六花「一緒にいられるのが嬉しい」

勇太「でも、もう、いいんじゃないのか?」

六花「え……」

勇太「もう潮時だろ、六花」

勇太「お前も分かってるんだろ……
   凸守はお前の金だけが目当てなんだって」

六花「分かってる……でもそれでも構わない」

勇太「本当にいいのかよ。いつまでもお金を払い続ける気か?」

六花「いつまでも払い続ける。
   今はちょっとお金ないけど……どうにかする」

勇太「……お父さんの貯金も、全部使ったんだろ?」

六花「! なんで、そのこと……」

勇太「十花さんから聞いた。
   お前がそんなだから、十花さん、俺の部屋で土下座までして、
   どうにか六花を救ってやってくれって言ってたんだぞ」

六花「…………」

勇太「お前は自分と凸守だけの問題だと思ってるんだろうけど、
   十花さんにもめちゃくちゃ心配かけてるんだ。丹生谷や、くみん先輩も」

六花「…………」

勇太「凸守がいなくなる分の埋め合わせは、俺がしてやる。
   丹生谷とかくみん先輩とか一色もいる。人がたくさんいるんだ、お前の周りには。
   だからもう凸守にすがり続けなくても」

六花「いやだっ!」

六花「なんで、なんでそんなことばっかり言う……
   勇太は私の味方だって言ってくれたのに……」

勇太「味方だからこそ言ってるんだ。
   あの時はお金を渡してしまったけど、
   それが六花のためだって思ってしまったけど……
   でも違ったんだ」

六花「嘘、嘘っ! 凸守と一緒にいるのが、私のっ……」

勇太「…………」

六花「…………」

勇太「……そうか」

六花「な、何」

勇太「お前は凸守と一緒にいてもいいんだ」

六花「……?」

勇太「お前は凸守友達でいてもいいんだよ」

六花「最初からそう言ってる……」

勇太「だから……今度、凸守に会った時、言ってみろ。
   お金なしでも仲良くして欲しいって」

六花「…………!」

勇太「多分それが一番うまいオチの付け方だ。ハッピーエンドだ」

六花「で、でも……凸守とは、ずっと……現金による契約で……」

勇太「最初はお金だけのドライな関係だったかもしれないけど。
   もう何年も一緒にいるんだろ?
   それなら実は本当の友情が芽生えてたりするかもしれないじゃないか」

六花「そ、そう……かな……」

勇太「六花もそれが一番いいだろ。お金なしで、本当の友達になれたら」

六花「うん……」

勇太「だから明日聞いてみ。普通の友達として仲良くしてくれるかってな」

六花「でも、ダメって言われたら……」

勇太「その時は……もうすっぱり諦めろ。
   お前はつらいかもしれないが……十花さんや他の皆だって、このままじゃつらいんだ」

六花「…………」

勇太「俺が言いたいのはな、六花。逃げずに、立ち向かえってことだ」

六花「…………」

勇太「凸守にも、十花さんにもな」

六花「うん……」

翌日

勇太「……っていう話をした」

森夏「はー……なるほどね」

くみん「それで? 六花ちゃんとデコちゃんはどうなったの?」

勇太「さあ、まだ結果は分かりませんよ。
   さっき授業が終わって、中等部の方に行きましたから」

森夏「じゃあ小鳥遊さんと厨房が一緒にここに来たら、成功で」

くみん「六花ちゃん一人だけだったら、残念な結果、ってことか……」

勇太「そうなりますね」

森夏「でもまあ、どっちにしろ契約は解除されるんでしょう?
   それなら一応は解決……ってことになるわよね」

勇太「トゥルーエンドじゃないけどな」

くみん「でも5人でこの部活続けたいよねぇ……」

森夏「そうね、まあ……いなけりゃいないでちょっと物足りないかな」

勇太「あっ……来たんじゃないか?」

ガラッ
六花「ヒュヴァーパイヴァー」

六花「…………」

勇太「…………」

森夏「…………」

くみん「…………」

六花「…………」

勇太「…………」

森夏「…………」

くみん「…………」

勇太「お前だけ、か…………」

六花「……うっ、ひぐっ……うううっ……」

くみん「六花ちゃん……」

六花「あぅっ、うっ……ぐすっ……」

森夏「いいわよ、おもいっきり泣いても。
   ここには私たちしかいないんだから」

六花「ううっ、うああああああっ!」

くみん「よしよし……」

勇太(こうして極東魔術昼寝結社の夏から部員が一人減った)



勇太(それからというもの六花は元気をなくし)

勇太(授業中も休み時間もずっとぼんやりしている)


勇太(部室に来ても窓から外を見ているだけで誰とも話そうとしない)


勇太(凸守がいなくなった部室にはもうあの頃の賑やかさはない)



勇太(俺は事の顛末をすべて十花さんに報告した)

勇太(六花にとってはバラされたくなかったこともあるだろうが)

勇太(俺の知っていることを全部話した)

十花「六花、起きてるか?」コンコン

六花「うん……」

十花「富樫勇太から全部聞いた」

六花「…………」

十花「……お前のしたことに関しては、何も言わん」

六花「…………」

十花「でもな、これだけは言っておく」

六花「…………」

十花「お前一人で抱え込むな。私にも話してくれ。家族なんだから」

六花「…………」

十花「寂しいなら……素直に寂しいと言え」

六花「……寂しかったわけじゃない」

十花「…………」

六花「ただ……友達をなくしたくなかっただけ。
   ごめんなさい……お姉ちゃん」

十花「…………」

六花「…………」ボーッ

くみん「相変わらず元気ないね、六花ちゃん……」

森夏「厨房と契約解除してからずっとね……」

勇太「どうしたもんかな……」

森夏「あんた元気づけてきなさいよ。小鳥遊さんと同類でしょ」

勇太「同類ってお前……お前も同類みたいなもんだろ。
   それに俺じゃ凸守の代わりにはなれねえよ」

森夏「代わり以上の存在になればいいだけでしょっ」

勇太「ど、どういう意味で言ってんだよそれ……」

森夏「ほら、早く行って来なさいよ」ドンッ

勇太「うわっ……ととっ」

六花「…………」

勇太「ふう……六花」

六花「…………」

勇太「六花!」

六花「ああ……勇太」

勇太「どーしたんだよ、ボーっとして」

六花「なんでもない」

勇太「……凸守のことか?」

六花「凸守とは現金調達が困難になったため契約解除を余儀なくされた。
   しかしそれはいつかはそうなると分かっていたこと」

勇太「そうかい」

六花「ただ、凸守とはどちらが真の頂点にふさわしいか
   決着を付けられないままだった。それだけが心残り」

勇太「…………」

六花「私も凸守も、まだ真の力を開放してはいなかった」

勇太「真の力ねえ」

六花「邪王真眼は常により強き者の血を求めている……」

勇太「ダークフレイムマスターやモリサマーじゃダメか?」

六花「邪王真眼が求めるのはその血ではない……
   ……今日はもう帰る」

勇太「あ、おい六花……」

森夏「はーあ、ダメねえ富樫くん……」



勇太(六花のやつ……どうすりゃいいんだ)

勇太(丹生谷はあんなこと言ってたけど……)

勇太(さすがにそんな軽はずみなことはできんよな……)

凸守「富樫先輩」

勇太「え……おわっ、凸守!!」

凸守「こんにちは」

勇太「お、おう、こんにちは……
   なんかお前と普通の口調で会話するのってすげえ違和感あるな」

凸守「まあ、富樫先輩にとってはミョルニルハンマーの私が
   いつもの私ってことになってますからね」

勇太「で……何の用だ?」

凸守「この2万円。富樫先輩が小鳥遊さんに貸したんですよね?」

勇太「ああ、そうだけど……返しに来てくれたのか」

凸守「契約が解除されましたし、返金するのが道理かなと」

勇太「わざわざどうも……」

凸守「今月の契約更新から解除まで一日しか経ってませんし、満額の返金です」

勇太「そりゃお得だな」

凸守「用事はそれだけなんで。それじゃ」

勇太「あ、ちょっと待て」

凸守「なんですか?」

勇太「お前……契約解除の日、六花に言われただろ?」

凸守「何を?」

勇太「お金なしでも友達になってくれないか、って。
   なんでそれ断ったんだよ?」

凸守「ああ、それですか……
   私たちは所詮お金だけで繋がれた主従関係です。
   それがなくなるならもう付き合う必要なんてありませんよ」

勇太「……お前は六花と何年も一緒にいて、六花を裏切るような真似をして
   なんとも思わなかったのか?」

凸守「別に。言ったでしょ、お金だけなんですよ。私達の間にあるのは」

勇太「金の切れ目が縁の切れ目か」

凸守「それが今回の教訓ですね」

勇太「でも六花はお前のことが大好きだったぞ。
   金だけで繋がっていたんだとしても」

凸守「そんなの私の知ったことじゃあないですよ。
   私はお金が貰えればそれでいいんです。相手の気持ちなんて」

勇太「お金が貰えれば、か。じゃあ」

凸守「なんですか?」

勇太「ほれ、やろう」チャラチャラ

凸守「なんですか、この小銭は」

勇太「700円。月2万なら、一日分はこれくらいだろ」

凸守「……どういう意味です?」

勇太「あいつ、お前と契約解除してからずっと元気がなくてな。
   お前と離れることは覚悟していたみたいだし、
   もう潮時だって分かってたみたいなんだけど……
   まだ未練があるみたいなんだよな」

凸守「で、私にどうしろと」

勇太「一度だけでいいから、あいつの気が済むまで戦ってやってくれ」

凸守「えー……」

勇太「金さえもらえりゃ、何でもするんだろ」

凸守「そんなの私の知ったことじゃあないデスよ。
   私はお金が貰えればそれでいいんデス。相手の気持ちなんて」
凸守「なんデスか?」
凸守「なんデスか、この小銭は」
凸守「……どういう意味デス?」
凸守「えー……」

翌日

六花「…………」ボーッ

六花「今日は誰も来ないのかな……」

六花「…………」

ガラッ
くみん「た、たいへんだよ六花ちゃ~ん!」ドタバタ

六花「ど、どうしたのくみん」

くみん「モリサマーが、モリサマーが……」

六花「丹生谷がどうかしたの?」

くみん「もりさまちゃんじゃなくてモリサマーだよお」

六花「???」

ガラッ
森夏「くうっ……妖精王の加護をもってしても……
   あいつを止められないなんて……!」

くみん「モリサマー、大丈夫!?」

森夏「いますぐ魔法結界の準備を……妖精界とのリンクが断たれる前に……」

六花「…………?」

くみん「敵はそんなに強いの?」

森夏「ええ、今まで出会ったどんな敵よりも……
   このままじゃダークフレイムマスターもいつまで保つか」

くみん「せめて敵の正体が分かればいいんだけど……
    それよりモリサマー、早く回復を」

森夏「自愛と癒しの精よ、そのマナを我に分け与えよ……
   イスパル・ドレト・ファーク・ロッシ・ディッヒ……」

六花「…………」

勇太「ぐああああっ!!」

森夏「ダークフレイムマスター!!」

勇太「もう無理だ……我が闇の炎も奴には通用しない!
   奴と戦えるのは……邪王真眼を持つ、お前だけだ!」

六花「ゆ、勇太? 何を言って……」

勇太「いけ、邪王真眼の使い手!
   ミョルニルハンマーを灰に変えてこい!!」

六花「ミョルニル……って……」

凸守「はーっはははは、極東魔術昼寝結社の夏とやらもこの程度デースか……
   拍子抜けにも程があるというものデース」

六花「で、凸守…………なんで…………?」

凸守「おやおや、元マスターとこんな形で再会することになろうとは……
   これはまさしく運命というやつデース」

六花「ど、どういうこと? 勇太、これって……」

勇太「何をぼさっとしているんだ、邪王真眼の使い手よ!
   これこそが黙示録に記されたラグナロク……本当の最終決戦だ!!」

六花「最終決戦……」

森夏「この戦いを制したものが真の最強として君臨する。
   しかしこの終わりゆく世界ではもはや最強の称号など無意味よ……
   ならば、なぜ戦うのか……分かるわよね」

六花「……ただひたすら、より強い相手と、戦うため」

勇太「そうだ! 邪王真眼の使い手よ!
   お前の血が騒ぐままに最終決戦を心ゆくまで楽しむがいいっ!」

六花「…………!」

凸守「ふはははははは、マスターは私を愉しませてくれるんデスカ?」

森夏「気を抜かないで。敵は手強いわ!」

勇太「俺たちが二人ががりでも敵わなかったんだから」

六花「大丈夫。みんなは下がってて」

くみん「六花ちゃん……」

六花「この絶望的な戦い……不安になるのは分かる。
   でも私は負けないし、負けられない。
   なぜなら邪王真眼は最強だから……」

勇太「そうだ、六花」

六花「そしてそのことを教えてくれたのは、ミョルニルハンマー……お前」

凸守「ククク……そんなこと教えた覚えはないデスけどねえ」

六花「直接教わったわけじゃない。
   でも凸守をサーヴァントとしていた日々の中で、私はすこしずつ知っていった。
   何があっても、邪王真眼だけは無敵だって。
   邪王真眼は他の追随を許さない最強の存在だって」

凸守「じゃあそれを今から試してみるデース!」

六花「望むところ……! 爆ぜろリアル!」

凸守「弾けろシナプス!」

六花「――バニッシュメント・ディス・ワールドっ!!」


世界を揺るがす最終戦争の行く末は極東魔術昼寝結社の夏の面々だけが知るのだそうな


             お              わ                り

おしまいです

でこちゃん紳士の皆様ごめんなさい
こんなスレに付き合わせてすみません
もりさまちゃんは誰にも渡せない
りっかちゃんかわいい

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