シンジ「ターミナルドグマ最大トーナメント……!?」(318)

<ネルフ>

グニャ~……

空間を歪ませ、父子が対面を果たす。

ゲンドウ「久しぶりだな」

シンジ「父さん……ッッ!」

シンジ「ついに決着をつける時が来たね」ザッ

ゲンドウ「私は今ここでお前と戦うつもりはない」

シンジ「なんだって!?」

シンジ「父さんはぼくの目標であり、母さんの仇だ!
    ぼくは今日まで父さんを倒すためだけに鍛錬してきたッッッ!」

シンジ「──なのに、どうしてだよ!」

ゲンドウ「お前には一ヶ月後に開かれる、
     ターミナルドグマ最大トーナメントに参加してもらう」

シンジ「ターミナルドグマ最大トーナメント……!?」

シンジ「なんだよターミナルドグマって……」

ゲンドウ「ターミナルドグマとは、このネルフの地下にある闘技場のことだ」

シンジ「地下闘技場……ッッ」

ゲンドウ「15年前、人類は最強を決めるべく南極で格闘大会を開いた。
     しかし大会は興奮した選手たちによって大乱闘となり、
     その激闘の影響で、南極の氷は全て溶け、地軸はずれ、地球環境は激変した」

ゲンドウ「これがセカンドインパクトの正体だ」

シンジ「~~~~~ッッッ!」
   (巨大隕石の衝突が原因じゃなかったのか……ッッ)

ゲンドウ「ゆえに我々は地下闘技場ターミナルドグマを作り、
     選ばれた者だけが試合を行えるようなシステムを作り上げたのだ」

シンジ「知らなかった……父さんがそんなことをやっていただなんて……」

シンジ「でも……だったらなんで、今になってトーナメントなんか開くの!?」

ゲンドウ「南極での格闘大会……そもそもの発端は
     南極に眠るアダムと戦いたい武術家同士の挑戦権の奪い合いからだった」

シンジ「今回もそうだっていうの……?」

ゲンドウ「そうではない」

ゲンドウ「ぶっちゃけた話、理由なんかなんでもいいんだ」

シンジ「!?」

ゲンドウ「強いヤツと戦いたいッッッ! 強いヤツを見たいッッッ!
     これはもう、逃れようのない人類の本能なのだッッッ!」

ゲンドウ「だから私は地上最強の16名を集めて、トーナメントを開催する!!!」

シンジ「たとえサードインパクトを引き起こすことになっても……かい?」

ゲンドウ「そのとおりだ」

ゲンドウ「互いに勝ち上がれば、お前も私と戦うことができる。悪い話ではなかろう」

シンジ「…………」

ゲンドウ「出場するのなら早くしろ、でなければ帰れッッッ!」

シンジ「父さんの主張は理解できたし、大いに賛成するよ」

シンジ「だけど、どうして今ぼくと戦ってくれないの?」

ゲンドウ「今のお前では弱すぎて、私の相手にはならないからだ」

シンジ「弱い!? 師範(せんせい)のもとで鍛錬を重ねた、このぼくがッッッ!?」

ゲンドウ「そうだ」

ゲンドウ「今のお前は、私はおろか、同年代の格闘士(グラップラー)にも勝てん」

シンジ「ウソだよ、そんなの!
    ぼくの実力は今や父さんに次いで、世界二位のはずだ!」

ゲンドウ「……葛城一尉、レイをここに」

ミサト「はい」

シンジの前に、綾波レイが現れた。

ゲンドウ「レイも私と同じく、ターミナルドグマ地下闘技場正ファイターだ。
     この場で私と戦いたくば、まずはレイに勝ってみせろ」

シンジ「分かったよ……ッッ」

シンジ「邪ッッッ!」ダッ

ドザァッ!

シンジは高速タックルで、瞬く間にレイを押し倒した。

シンジ(よし! このまま寝技で一気に仕留め──)
レイ「どいてくれる?」

グルンッ!

あっという間にレイに体勢をひっくり返され──

逆にチョークスリーパーを極められてしまった。

レイ「あなたは勝てないわ、私が絞めるもの」ギュウウ…
シンジ「~~~~~ッッッ!」ジタバタ

シンジも必死にもがくが、レイのチョークは全く振りほどけない。

そして──

ドサッ……

レイ「失神しました」

ゲンドウ「勝負ありッッッ!」

目を覚ますシンジ。

シンジ「知らない天井だ……ッッ」

シンジ(ぼくはあの青い髪の女の子に挑んで、あっさりチョークを極められて……)

シンジ(ぼくは……負けたのかッッッ! 父さんどころか、あんな女の子に!!!)

ミサト「完敗だったわね、シンジ君」

シンジ「あなたは葛城さん……!?」

ミサト「ミサトでいいわよ」

ミサト「今、あなたには二つの選択肢があるわ」

ミサト「レイに勝てないようじゃお父さんには到底勝てないと逃げ出すか、
    あるいは私のもとで修業してトーナメントに出場するか……」

ミサト「どうする、シンジ君?」

シンジ(逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ)

シンジ「……出ます」

シンジ「だから……ぼくを一ヶ月で強くして下さい! ミサトさん!」

ミサト「決まりね」ニコッ

こうしてシンジはミサトに弟子入りし、同居生活が始まった。

シンジ「ミサトさん、いつもなにを飲んでるんですか?」

ミサト「アルコール100%のビールよ」プハァッ

シンジ(ビールじゃない……ッッ!)



ミサト「目標をセンターに入れて、スイッチ(中段突き)!」

シンジ「目標をセンターに入れて……スイッチ(中段突き)ッッッ!」

ビュバァッ!



シンジ「邪ッッッ!」

ペンペン「クエエエエッッッ!」

バシィッ! ドガァッ! ベシィッ! ドゴォッ! メキャッ!

転校先の中学校でも頼もしいライバルに出会う。

トウジ「すまんなァ、転校生」

トウジ「ワシはお前を殴らないかん。殴っとかな気が済まへんのや」

トウジ「ワシは強いヤツを見ると、殴りたくなる性分でな……」ザッザッ

シンジ(この軽快なフットワーク……ボクシングか!)

ドゴォッ!

シンジの顔面を、トウジの右ストレートが打ち抜いた。

シンジ「~~~~~ッッッ!」ヨロッ…
   (N2兵器でもビクともしないぼくが、パンチ一発でぐらついた!?)

ケンスケ(すっげェ……同じ中学生にトウジのパンチを受けて
     気絶どころかダウンもしないヤツが存在するなんて……ッッ)

シンジ「邪ッッッ!」

ズドォッ!

トウジの顔面を、シンジの突きが射抜いた。

トウジ「ぐおお……ッッ!」グラッ…
   (なんてヤツや……ワシは天狗になっとったかもしれん!)

ヒカリ「ちょっとあなたたち、なにやってるの!?」

トウジ「ジャマが入りよったか……」

トウジ「転校生、お前も出るんやろ……? 最大トーナメント」

シンジ「うん」

トウジ「じゃ、この続きはその時や!」スッ…
シンジ「うん、約束だ!」スッ…

ガシィッ……!

固い握手で結ばれる、友情……!

ドイツからやってきたエリート格闘士との運命の邂逅。

アスカ「ねぇバカシンジ、なんであんたは格闘技を始めたのよ?」

シンジ「ぼくはアスカみたいに地位や名声は欲していない……。
    父さんに勝てさえすればよかったんだ」

アスカ「あんたバカァ? 全く理解できないわ」

シンジ「父さんが地上で一番弱い生物なら……ぼくは二番目に弱い生物でよかった」

アスカ「あんたバキィ?」

シンジ「だけど、今はちがう」

シンジ「師匠であるミサトさんやペンペン……同世代の綾波やトウジ……。
    次々に強い人と出会ううち……みんなに勝ちたくなったんだ」

シンジ「もちろん、アスカにもね」

アスカ「面白いじゃない……かかってきなさいよ!」

シンジ「邪ッッッ!」

両手でアスカの首を締めあげるシンジ。

ギュウウウウウ……!

アスカ「気持ち悪い」ブンッ
シンジ「!?」

アスカが軽く首を振るだけで、シンジは投げ飛ばされる格好となった。

ドザァッ!

シンジ(なんて首の筋力だッッッ!)

アスカ「あんたバカァ? この程度であの碇司令に勝てると思ってんの?」

シンジ「エフッ! エフッ! エフッ!」

アスカ「急に笑い出して……どうしちゃったのよ」

シンジ「嬉しいんだよ、アスカ……。
    君みたいな猛者と同時代に生まれたということが……ッッ!」

アスカ「……ホントにバカね」

さらに──

シンジ(だれだろう……?)

海岸で、一人の少年が演武を披露していた。

カヲル「…………」ユル…

ユルゥ~…… ユラァ~……

シンジ(太極拳のようなゆるやかで無駄のない動き……なんて美しいんだろう)

カヲル「やぁ」クルッ

シンジ(気づかれた!? 気配は消していたはずなのに……ッッ!)

カヲル「武術はいいねえ。武術は心と体を鍛え上げてくれる。
    リリンの生み出した闘争の極みだよ」

カヲル「そう感じないか? 碇シンジ君」

シンジ「なぜぼくの名前を……ッッ!」

カヲル「ボクも君と同じく、最大トーナメント出場者だからね」

シンジ「カヲル君、君の得意技はなんだい?」

カヲル「ボクは指を折り曲げて丸めた手を、
    足腰と肩を使って前方にまっすぐ繰り出す技が得意だよ」

シンジ「君がなにをいってるのか分からないよ」

カヲル「突きってことさ」

ヒュワァッ!

カヲルの繊細な正拳突きで、水平線の彼方まで海が割れた。

ズザザザザッ……!

シンジ「~~~~~ッッッ!」
   (綾波とも、トウジとも、アスカともちがう……ッッ!)

カヲル「ボクは君と戦うために、生まれてきたのかもしれない」

カヲル「最大トーナメントでは、ぜひ君と当たりたいね」

シンジ「……ぼくもだよ、カヲル君」

時を同じくして、シンジすら知らない猛者たちもうごめく。



リツコ「母さん……必ず仇は討つわ。力を貸してちょうだい」



加持「鈴を鳴らす時が来たか……」



時田「私のジェットアローン拳こそが、地上最強であると証明するッッッ!」



キール「碇よ……。お前の地上最強の称号も、トーナメントの日までだ」

ズガァァァンッ! ズドォォォンッ!

サキエル≪せりゃあッッッ!≫

バキィッ!

サキエルの上段突きが、サハクィエルのダイビングプレスを迎撃する。

サハクィエル≪ぐああ……ッ!≫ドザァッ

ラミエル≪勝負ありッッッ!≫

周囲の使徒たちがざわつく。

マトリエル≪~~~~~ッッッ!≫
シャムシエル≪まさか……サキエルがサハクィエルを下すとは……ッッ!≫
イスラフェル≪あのひよっ子がここまで成長するなんて……ッッ!≫

ゼルエル≪決まりだな≫

ゼルエル≪我々の陣営に与えられた二枠からは、私とサキエルが出場するッッッ!≫

サキエル≪ありがとうございます!≫

ゲンドウ「ユイ……いよいよ最大トーナメントの日が近づいてきた」

ゲンドウ「お前と当たることもあるかもしれんな」

初号機「…………」

ゲンドウ「あの日、お前がエヴァに取り込まれたのは本当に事故だったのか……。
     あるいは──」

初号機「…………」

ゲンドウ「いや、問うまい」

ゲンドウ「今私にあるのは、お前やシンジを始めとする
     世界中の猛者と戦いたいという闘争心だけだからなッッッ!」

ゲンドウ「エフッ! エフッ! エフッ! エフッ! エフッ!」

初号機「…………」ニィ~

そして、最大トーナメント当日となった!

<ターミナルドグマ>

この日、ターミナルドグマは一般開放され、大勢の観客が詰めかけていた。

ワイワイ…… ガヤガヤ……

冬月「地上最強の生物を見たいか~~~~~ッッッ!」

オオオオオオオオオオ~~~~~ッッッ!

冬月「私もだ、私もだみんな!」

冬月「選手入場!!!」





マヤ『全選手入場です!!!』

『居酒屋殺しは生きていた! 更なる飲酒を積み人間凶器が甦った!
 酒神! 葛城ミサトだァッ!!!』

『負けそうになり次第、自爆しまくってやる! 第3使徒、サキエルだァッ!!!』

『タイマンなら絶対に敗けん! 思春期のケンカ見せたる!
 暴走中学生、碇シンジだ!!!』

『バーリ・トゥード(なんでもMAGI)ならこいつが怖い!
 ネルフのデータ・ファイター、赤木リツコ先輩だ!!!』

『関西から炎のジャージが上京だ! ボクシング、鈴原トウジ!!!』

『チャーシューの無いラーメンを食いたいからチルドレンになったのだ!
 クローンのケンカを見せてやる! 綾波レイ!!!』

『冥土の土産に人類補完とはよく言ったもの!
 秘密結社ゼーレの権力が今、実戦でバクハツする!
 人類補完委員会議長、キール・ローレンツだッ!!!』

『ジェットアローンこそが地上最強の代名詞だ!
 まさかこの男がきてくれるとはッッ! 時田シロウ!!!』

『闘いたいからここまできたッ! キャリア一切不明!
 ゼーレのフィフスファイター、渚カヲルだ!!!』

『オレは使徒最強ではない全生物で最強なのだ!
 御存知第14使徒、ゼルエル!!!』

『格闘技の本場は今やドイツにある! アタシを驚かせる奴はいないのか!
 惣流・アスカ・ラングレーだ!!!』

『デカァァァァァいッ! 説明不要! エヴァンゲリオン初号機だ!!!』

『スパイの仕事はどーしたッ! スイカの水やり、未だ終わらずッ!
 口説くも抱くも思いのまま! 加持リョウジだ!!!』

『特に理由はないッ! 学級委員長が強いのは当たりまえ!
 学校にはないしょだ! 洞木ヒカリがきてくれた~~~~~!!!』

『葛城家で磨いた野性ファイト!
 第3新東京市のデンジャラス・ペンギン、ペンペンだ!!!』

『ネルフの司令が帰ってきたッ!
 どこへ行っていたンだ、サングラスッッ!
 私たちはあなたを待っていたッッッ! 碇ゲンドウの登場だ~~~~~ッッッ!!!』

~ トーナメント表 ~

<Aブロック>

          ┌─  綾波レイ(ファーストチルドレン)
      ┌─┤
      │  └─  惣流・アスカ・ラングレー(セカンドチルドレン)
  ┌─┤
  │  │  ┌─  加持リョウジ(スパイ)
  │  └─┤
  │      └─  碇シンジ(サードチルドレン)
─┤

  │      ┌─  洞木ヒカリ(学級委員長)
  │  ┌─┤
  │  │  └─  葛城ミサト(ネルフ)
  └─┤
      │  ┌─  時田シロウ(日本重化学工業共同体)
      └─┤
          └─  サキエル(使徒)

<Bブロック>

          ┌─  渚カヲル(フィフスチルドレン)
      ┌─┤
      │  └─  初号機(エヴァンゲリオン)
  ┌─┤
  │  │  ┌─  碇ゲンドウ(ネルフ)
  │  └─┤
  │      └─  ペンペン(温泉ペンギン)
─┤

  │      ┌─  赤木リツコ(ネルフ)
  │  ┌─┤
  │  │  └─  鈴原トウジ(フォースチルドレン)
  └─┤
      │  ┌─  ゼルエル(使徒)
      └─┤
          └─  キール・ローレンツ(ゼーレ)

ワアァァァァァ……!

マヤ『Aブロック第一試合ッッッ!』

マヤ『青龍の方角、綾波レイッッッ!
   白虎の方角、惣流・アスカ・ラングレーッッッ!』

マヤ『いきなりの好カード、果たして勝ち抜くのはどちらの少女でしょうか!?』

マヤ『実況は私、伊吹マヤ! 解説に格闘技マニアの相田ケンスケ君を迎え、
   お送りいたしますッッッ!』

ケンスケ『こりゃ、とてつもない勝負になりそうだねえ』

ワアァァァァァ……!

アスカ「ふん! いきなりあんたと当たれるなんて、クジ運に感謝するわ。
    残念ながら、あんたはここで敗退よ」

レイ「二回戦、碇君と再戦するのは私よ」

アスカ「あんたバカァ? あいつが加持さんに勝てると思ってんの!?」

レイ「碇君は勝つわ」

アスカ「~~~~~ッッッ!」

日向「武器の使用以外、全てを認めます!」

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

ガゴォッ!

マヤ『オープニングヒットォッ!』

マヤ『アスカのアッパーが、綾波レイの顎を打ち抜きました!』

レイ「くっ……!」ガクッ

アスカ「さっきの威勢はどうしたのよ!?」

バキィッ! ドズッ! ドゴォッ! メキッ! ベシィッ!

マヤ『アスカの猛ラッシュに、レイ早くも活動限界かッッッ!』

だが──

アスカ「つっ……!」

マヤ『お~っと!? 攻撃をしていたアスカの両拳から、出血!?』

レイ「私は負けないわ、私が守るもの」
アスカ「マ、ワ、シ、ウ、ケ……ってわけね」

マヤ『マワシウケ?』

ケンスケ『空手道に伝わる、両手をそれぞれ円を描くように動かす防御法さ。
     廻し受けを完璧に成し遂げたなら、
     ATフィールド以上の防御力を得るといわれている!』

アスカ「だったら……フル稼働、最大戦速で打ち込むまでよッッッ!」

ドズゥッ! ベキィッ! バゴォッ!

再びアスカの拳がヒットし始める。

レイ(速い……ッ! 防御技が……追いつかない……ッッ!)

ケンスケ『ンなるほどォ~~~~~ッッ!
     いかに堅固な受け技も、出させなければ意味がないってことか!』

マヤ『右ストレート! 左フック! 右ローキック! 左アッパー!
   面白いように打撃がヒットしますッッッ!』

レイ(こっちも反撃に出ないと……ッッ!)ヒュッ
アスカ「無駄よっ!」ブオンッ

人の域を超えた、凄まじい攻防が繰り広げられる。

「これ本当に一回戦かよ」 「スッゲェ~」 「どっちも頑張れッッッ!」

シンジ「…………」ゾクゾクッ

シンジ(優勝も夢じゃない二人だけど……勝ち上がれるのは一人だけ……ッッ!)

シンジ(これが……ッッ! これが最大トーナメントか!!!)

ワアァァァァァ……!

マヤ『お~~~~っと、どうしたことでしょう!?
   ここでアスカの腹部から、突然の出血ゥゥゥッ!』

アスカ「…………」ジワァ…

アスカ「ロンギヌスの槍でも通さないんだけどね……あんた、なにしたの?」

レイ「貫き手」ボソッ

シンジ(あのアスカの鋼鉄の腹筋を……ただの貫き手で……ッッ!?)

ゲンドウ(本気になったレイの貫き手は……ロンギヌスの槍以上の貫通力を誇る!)

アスカ「ふうん……」

アスカ「この程度で、負けてらんないのよッ! キャオラッッッ!」ダッ

加持「いかん!」

レイの狙いはダメージではなく、アスカの怒りを誘うことにあった。

ザクゥッ……!

マヤ『~~~~~ッッッ! アスカの首に、貫き手が突き刺さったァッッッ!』

青葉「しょ……勝負あ──」

アスカ「殺してやる……殺してやる……殺してやる……殺してやる……ッッ!」ブシュウウ…

レイ「まさか……!」

マヤ『アスカ、再起動ッッッ!』
ケンスケ『おいおいウソだろ? 頸動脈を完全に切断されたってのに……ッッ!』

アスカ「頸動脈がなくったって……こちとらには一万二千の技と、
    鍛え抜いた肉体があるんだからッッッ!!!」
レイ「~~~~~ッッッ!」

ズガンッ! ドゴンッ! メキィッ! グシャアッ! ドゴォッ!

ガゴンッ! ズバァッ! ドグァッ! メキャッ! ズバァンッ!

マヤ『殺気に満ちたアスカの猛攻に、レイ、もはや打つ手なし──』

マヤ『────!?』

アスカ「……血が足りないわ。やだな……ここまでなの」

アスカ「悔しいけど……あんたの勝ちよ……」ガクッ

ドッサァッ……!

青葉「勝負ありッッッ!」

レイ(あと一撃もらってたら……私の敗けだった……ッッ)

シンジ「アスカ……すごい出血だったけど大丈夫かな……。
    綾波も相当なダメージのはずだし……」

加持「オイオイ、人の心配してる場合じゃないぞ」

シンジ「加持さん!」

加持「次は俺たちの番だ。葛城に教わった全てを……俺にぶつけてこい」

シンジ「……はい!」

ワアァァァァァ……!

ケンスケ『さっきの試合がすごかったから、観客もまだ沸き立ってるねぇ~』

マヤ『Aブロック一回戦、第二試合を行います!』

マヤ『青龍の方角、加持リョウジッッッ!
   ──対しまして白虎の方角、碇シンジッッッ!』

マヤ『試合直前にもかかわらず、加持リョウジ、水を飲んでいますが……!?』

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

加持「シンジ君……俺はここで水を吹くことしかできない」

プシュッ!

加持が口から吹き出した水が、シンジの右目近くにヒットした。

シンジ「!?」

ゴボゴボゴボ……

まるで溺れるように、もがき苦しむシンジ。

マヤ『どうしたんでしょう!? シンジ君……いえ碇シンジの様子が変です!』

ケンスケ『あの加持さんって人……水で“涙穴”を狙ったね』

マヤ『ルイケツ?』

ケンスケ『目の下にある急所の一つさ。
     人間はここに高速で水をぶつけられると、目と鼻に同時に水が入り──
     溺れてしまうんだ』

シンジ「ガボォッ……ゴボォッ……!」

ミサト(加持君……子供相手になんてえげつない技を!
    いえ……これこそが武術家、加持リョウジの本性ッッッ!)

加持「──だが君には君にしかできない、君にならできることがあるはずだ。
   それは俺に倒されることだッッッ!」ダンッ

溺れているシンジを、加持の容赦のない攻撃が襲う。

ズドォッ! ドゴォッ! バキィッ! ボゴォッ! ズンッ!

マヤ『加持リョウジ、猛ラァ~~~~~ッシュ!』

シンジ「げぼぉっ……!」

加持「君はあの碇司令の息子で、葛城の弟子だからね……手加減はしない」ガシッ

加持はシンジの頭部を掴み、激しく揺らし始めた。

リン…… リリン…… リン……

「なんだこの音?」 「鈴みたいな音がする」 「ホントだ!」

キール「この音……ヤツが鈴を鳴らしておるな」

リリン…… リン…… リン……

加持「シンジ君、今君の脳みそは俺にシェイクされることによって、
   ピンボールのように頭蓋骨内を衝突しまくっている」ブンブンッ

加持「これがこの鈴の音の正体さ」ブンブンッ

リン…… リン…… リリン……

加持「そしてこれが──」

ミサト「加持君、やめてッッッ!」

加持「ウォーターメロンクラッシュッッッ!」グイッ

グシャアッ!!!

加持はシンジの顔面を、自分の膝に全力で叩き込んだ。

ドサァッ!

マヤ『碇シンジ、沈黙ッ!』

ケンスケ『プロレスには“ココナッツクラッシュ”っていう
     相手の頭を、自分の膝に叩きつける技があるんだけど……
     今の技は、おそらくはその数千倍の威力……ッッ!』

ケンスケ『いかにシンジといえど、これじゃもう立つことは──』

ドクン…… ドクン…… ドクン…… ドクン……

ガバァッ!

立ち上がるシンジ。

加持「ほう……」

シンジ「加持さんって、もっとマジメな人だと思ってました」

シンジ「だけど勉強させてもらいました」

シンジ「大の大人が子供相手に容赦なくえげつない急所を突き、叩きのめす。
    これもまた、“武”なんだと!」

加持「さすがはシンジ君、よく気づいたな」

加持「だが気づくのが少しばかり遅かったようだな。
   今の君は、もう立っているだけでやっとのはず──」

ベシィッ!

シンジのハイキックが、加持の口元にヒット。

加持「~~~~~ッッッ!」ザクッ

シンジ「すみません、しゃべってたんで舌噛んじゃいましたか?」

加持(今の蹴り……速かったじゃないか……ッッ!)

冬月「勝ったな」
ゲンドウ「ああ」

シンジの猛反撃が始まる。

ズドォッ! ドボォッ! ベキィッ! ガゴォッ! バゴォッ!

マヤ『~~~~~ッッッ! 復活した碇シンジ、
   加持リョウジに一発の反撃も許さないメッタ打ちッッッ!』

加持(どうやら俺は……とんでもないものを呼び覚ましてしまったようだ)

シンジ「目標をセンターに入れて……」グッ…

シンジ「スイッチ(中段突き)ッッッ!!!」ビュバッ

ズドンッ!

シンジの中段突きが、加持のミゾオチにめり込んだ。

加持「がふっ……!」

加持「これもシナリオの内ですか……碇司令……ッッ」ドサァッ…

マヤ『加持リョウジ、完全に沈黙ッッッ!』

青葉「勝負ありッッッ!」

試合後──

ミサト「お疲れ~シンちゃん」パチパチ

シンジ「ミサトさん……」

ミサト「どうしたのよ、せっかく勝ったのに元気ないじゃない」

シンジ「ミサトさんは……本当は加持さんと戦いたかったんじゃ……」

ミサト「まぁ、その気持ちがなかったっていったらウソになるけど……
    師匠として、あなたの勝利が嬉しいっていうのもホントの話よ」

シンジ「ありがとうございます。ところで、次はミサトさんの試合ですね」

ミサト「そうね……。じゃあ、ちょっちこれを飲んでから……」

ゴボッ…… ゴボッ……

壺に入った14キロのビールを、一瞬で飲み干すミサト。

シンジ「委員長も綾波やアスカに匹敵する強さを持つ強敵ですよ……。
    試合前に飲んで大丈夫なんですか……!?」

ミサト「ン~……私の場合、飲んだ方が強いから」

シンジ「へ?」

<試合場>

マヤ『Aブロック第三試合!』

マヤ『青龍の方角、洞木ヒカリッッッ!
   白虎の方角、葛城ミサトッッッ!』

ケンスケ『委員長は正統派の拳法を駆使する実力者……
     ミサトさんにそれをさばける技量があるかどうかがポイントだろうね』

マヤ『ビシッとした構えを取る洞木ヒカリに対し──
   葛城ミサト、完全に千鳥足になっています! 戦えるんでしょうか!?』

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

ミサト「ウイ~……ちょっち飲みすぎちった……」ヨロヨロ…
ヒカリ(泥酔してるじゃない……でも容赦はしないッッッ!)ビュオッ

鋭い突きを放つヒカリ。

しかし──

スカッ

あっさりとかわされてしまう。

ヒカリ「ウソッ……!?」

ケンスケ『あ、あれは……ッッ! まさか……酔拳!?』

ヒカリの攻撃はかすりもせず──

バシッ! ドゴッ! ベシッ! ガッ! ベチンッ!

ほとんどふざけてるとしか思えないミサトの打撃が次々クリーンヒット。

トウジ(あかん……! イインチョと、ミサトさんの変則的な拳法は相性が悪すぎや!)

ヒカリ「げほっ……ごほっ……!」ガクガク

ミサト「もう止めた方がいいわ。これ以上続けたら命の保証はないわよ」ヒック

ヒカリ「わ、私は……諦めないッッッ!」

すると──

パサァッ……

試合場にタオルが投入された。

ヒカリ「鈴原……!」

トウジ「すまんなぁ。これ以上イインチョの傷つく姿を見たくなかったんや……」

マヤ『ここで鈴原トウジからタオル投入ッッッ!』

青葉「勝負ありッッッ!」

マヤ『Aブロック第四試合! パターン青でおなじみ、使徒のサキエルと
   時田シロウが睨み合っていますッッッ!』

時田「この大会で優勝し、私のジェットアローン拳の最強を知らしめる!」ザシャッ
サキエル「…………」ズシンッ

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

時田は両手をぶら下げながら、歩き始めた。

ケンスケ『あの歩法……ッッ! ジェットアローン歩法!』

ケンスケ『体の中心──正中線をずらさず歩くことによって、
     どんな角度からの攻撃にも対処できるという無敵の歩法だ!』

ズシィンッ!!!

マヤ『時田シロウ、サキエルに踏み潰されましたァッッッ!
   かろうじて生きているようですが……立てそうにありません!』

マヤ『日本重化学工業共同体の英雄が、日本重化学工業共同体の英知が、
   使徒の前に儚く散ってしまったッッッ!』

青葉「勝負ありッッッ!」

<医務室>

その頃、シンジはまだ昏睡状態にあるアスカを見舞いに来ていた。

シンジ「アスカ……」

シンジ(ミサトさん、あの委員長を相手にかすり傷ひとつ負わなかったし、
    綾波にもロンギヌスの槍以上の貫き手がある……)

シンジ「ミサトさんも、綾波も怖いんだ……」

シンジ「助けて、助けてよ、アスカ! 起きてぼくとスパーリングしてよ!」ユサユサ

この時、シンジの中にある感情が芽生える。

シンジ(アスカの体内に凄まじい闘気を感じる……!)

シンジ(眠りながらも大怪我と戦っているアスカを見ていたら、
    正拳突きを叩き込みたくなってきた!)

シンジ(最低だ、俺って……)

シンジ「でももう自分の中の闘争本能を抑えられないんだッッッ!」

シンジ「アスカ、ごめんよ……ッッ! ──邪ッッッ!」ブオンッ

昏睡状態のアスカめがけ、全力で突きを放つシンジ。

ドゴォンッ!

ドザァッ!

突きを放ったはずのシンジがダウンしていた。

シンジ「~~~~~ッッッ!?」ピクピク
   (顎にモロに喰らった……ッッ! 立てない……ッッ!)

突きの命中寸前に飛び起きたアスカが、シンジにハイキックをぶつけていたのだ。

アスカ「あんたバカァ? あんな殺気ぶつけられたら、死んでたって起きるわよ」

シンジ「…………ッッ!」

アスカ「……でも、アタシを起こすためにやったんでしょ? 礼はいわないけど」

シンジ「う、うん……アスカが目を覚ましてくれて……よかったよ」

アスカ「しかもその様子だと、加持さんに勝ったみたいね……少し見直しちゃった。
    じゃあアタシ、試合見に行くから」タタタッ

シンジ「すぐぼくも行くよ」

シンジ「…………」

シンジ(負けた……ッッ! 昏睡状態だったアスカに……ッッッ!)ギリッ…

碇シンジ、闘争本能の暴走を抑えきれず、人知れず敗北……!

<試合場>

ワアァァァァァ……!

マヤ『ターミナルドグマ最大トーナメントも、いよいよBブロックに突入!』

マヤ『青龍の方角、渚カヲルッッッ!
   白虎の方角からは、エヴァンゲリオン初号機ッッッ!』

マヤ『先の時田シロウ、サキエル戦に続き、これまたサイズ差が激しい組み合わせ!』

マヤ『フィフスチルドレン、渚カヲル、果たして勝ち目があるのでしょうか!?』

アスカ「シンジ……この試合、どう見る?」

シンジ「カヲル君の実力ならサイズの差はさほど問題にはならないと思う。
    だけど、あのエヴァンゲリオン初号機……なにか気になる……ッッ!」

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

カヲル「さぁ、行くよ」ザッ
初号機「ウオオォォォォォォッッッ!」ズシンッ

ズドォンッ!

マヤ『し……ッッ! 信じられない光景だァ~~~~~ッッッ!
   渚カヲル、正面からエヴァンゲリオン初号機に殴り合いを挑んでいますッッッ!』

ドゴォッ! メキィッ! ズドォンッ! ドボォッ! バキィッ!

アスカ「バッカじゃないの!? 自殺行為よ!」

ズガッ! ベシィッ! ゴッ! ボゴォンッ! バゴォッ!

シンジ「いや、海を割るカヲル君の突きなら、十分に勝機はある!」

ガスッ! バキィッ! ガゴンッ! ゴガンッ! ズドドッ!

ミサト「いえ、ちがうわ」ザッ
シンジ「ミサトさん!?」

ミサト「彼の狙いはエバーを殴り合いに集中させてからの──」

マヤ『ここで渚カヲル、初号機の背後に回り込みましたッッッ!』

初号機「!?」

ミサト「電力供給源の切断ッッッ!」

ザンッ!

カヲルの手刀が、アンビリカルケーブルを断ち切った。

カヲル「アンビリカルケーブルをプツッ……とね」

カヲル「ボクもだいぶダメージを受けたけど……楽しかったよ」ザッ

初号機「…………」ピクッ

シンジ「──カヲル君、まだ終わっちゃいないッッッ!」

カヲル「!?」

ガシィッ……!

初号機の巨大な右手に捕まるカヲル。

初号機「…………」
カヲル(しまった……ッッ!)

ケンスケ『人間が無酸素でも五分間の運動が可能なように──
     エヴァンゲリオンも五分間の無電力運動が可能ということかッッッ!』

メキメキ……! ミシミシ……!

マヤ『渚カヲルを握り潰そうとするエヴァ初号機ッッッ!』

だが──

カヲル「シンジ君との約束を果たすまでは──負けられないッ!」グググ…

マヤ『なんと渚カヲル! エヴァの巨大な手を押し開いていますッッッ!?』

初号機「ウオオォォォォンッッッ!」ガシィッ

すかさず、左手でもカヲルを握り締める初号機。

シンジ「あれはまさか──」

シンジ「握撃……ッッ!?」

パァンッ!!!

初号機の超握力で、カヲルの全身が爆ぜた。

マヤ『~~~~~ッッッ!』

青葉「勝負ありッッッ!」

シンジ「カヲル君!」ダッ

シンジ「カヲル君、大丈夫かい!?」

カヲル「どうにかね……。すまないシンジ君……君と戦いたかったんだけど……」

シンジ「いいんだよ! いい試合だったよ、カヲル君!」

シンジ(握撃……母さんの得意技を、なぜエヴァ初号機が──!?)

ゲンドウ(さすがだ……ユイ)

マヤ『Bブロック第二試合、碇ゲンドウVSペンペンッッッ!』

ミサト「あら、シンジ君も応援してくれるの?」

シンジ「ええ……ペンペンもぼくの師匠ですからね。
    だけど相手はあの父さん……どこまでやれるか……ッッ!」

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

開始と同時に、ペンペンが突っ込む。

ペンペン「クエエエエッッッ!」ダッ

ズドドッ! バキィッ! ドゴォッ!

マヤ『碇しれ……碇ゲンドウ、ペンペンの猛攻をガードもせずに受けているッッッ!』

ゲンドウ「いい打撃だ……」

ゲンドウ「パワー、スピード、タイミング……全てが超一流の域に達している」

シンジ(ウソだ……ッッ! あのペンペンの打撃を、楽しんでいるなんて!)

ゲンドウ「葛城一尉、これほどの動物を育て上げた功績を評し、
     君を今から三佐へと昇格しよう」

ケンスケ『なんとここでミサトさんがご昇進! おめでとうございますッッッ!』

ゲンドウ「私はアフリカゾウ、ホッキョクグマ、シロナガスクジラ、
     果ては使徒にエヴァ量産機……さまざまな相手と素手で戦い、勝ってきたが」

ゲンドウ「このペンギンの戦力はそれらを上回っている」

ゲンドウ「ゆえに、この技で相手をしよう」ス…

いつも机でやっているように、両手を組み合わせるゲンドウ。

冬月「碇がよくやっているあのポーズは、決してただのクセではない……。
   あれはれっきとしたトレーニングなのだ」

ズドンッ!

両手を組み合わせたハンマーパンチが、ペンペンの脳天に炸裂した。

ドザァッ……!

マヤ『碇ゲンドウの鉄槌で、ペンペン脳震盪ッッッ! 活動を停止しましたッッッ!』

青葉「勝負ありッッッ!」

ミサト「ペンペン、よくやったわ……!」

シンジ(これが地上最強の司令……碇ゲンドウの実力なのかッッッ!)

試合場を出るゲンドウ。

リツコ「司令、一回戦突破、おめでとうございます」

ゲンドウ「君か……」

リツコ「やはり司令を倒せるのは、この私だけのようですね」

ゲンドウ「君の母……赤木ナオコは優秀な格闘士(グラップラー)だった。
     特にS2機関以上の無尽蔵のスタミナから生じるしつこい攻めには、
     私も大いに手こずらせられた」

ゲンドウ「ゆえに私も全力で相手をし、彼女の命を奪う結果となってしまった」

ゲンドウ「君はあの偉大な母を超えたというのかッッッ!」

リツコ「もちろんです。それに、私には常に母がついていますから」

ゲンドウ「…………?」



ワアァァァァァ……!

マヤ『青龍の方角から、ついに赤木リツコが登場ゥッッッ!
   先輩、頑張って下さいッッッ!』

マヤ『あ、あと白虎の方角から鈴原トウジが出てきました』

ケンスケ『あのぉ、実況は中立じゃないと……』

リツコ(母さん、鈴原トウジのファイトスタイルは……?)ピピピ…

メルキオール『ボクシング』
バルタザール『ボクシング』
カスパー『ボクシング』

リツコ(偉大な武術家だった母の人格が移植されたコンピュータ『MAGI』)

リツコ(そのMAGIを自分の脳に埋め込んだ私に、もはや敵は存在しないッッッ!)

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

トウジ「ワシはイインチョの分まで勝たなあかん……行くでッ!」ダッ

リツコ(母さん、鈴原トウジが向かってきたわ。どうすればいい?)ピピピ…

メルキオール『右に回避』
バルタザール『右に回避』
カスパー『右に回避』

リツコ(右に──)

バキャアッ!!!

青葉「勝負ありッッッ!」

マヤ『せ、先輩ィ~~~~~ッッッ!』
ケンスケ『なんでボケッと突っ立ってたんだろう、あの人……』

試合後──

ゲンドウ「君には失望したよ、赤木リツコ君」

リツコ「…………」

ゲンドウ「MAGIから出る指示を、行動に移すまでのロスタイム……。
     最大トーナメントのレベルならば致命的といっていいだろう」

ゲンドウ「母を超え、仇を討つといっておきながら……結局は母に頼りきりとはな。
     ──恥を知れいッッッ!」

リツコ「……出直します」

リツコ「一から……一からッッッ!」

リツコ「私はもう……母には頼りませんッッッ!」

ゲンドウ「……期待しているよ」ザッ

ゲンドウはこの瞬間、赤木リツコにさらなる進化の予兆を感じ──微笑むのだった。

リツコ(ごめんね、母さん……。これからは母さんに頼らず、もっと強くなるわ!)

メルキオール『承認』
バルタザール『承認』
カスパー『承認』

マヤ『Bブロック第四試合にして、一回戦最終試合ッッッ!』

マヤ『最強の使徒ゼルエルと世界の黒幕キール・ローレンツの激突!
   これは凄まじい激闘が期待できそうですッッッ!』

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

ゼルエル「…………」ズシン…
キール「最強の使徒ゼルエル。破壊力、耐久力、持久力……全てが高水準を誇っておる」

シュバァッ!

マヤ『ゼルエルが仕掛けましたッ!』

キール「だが……それだけだ」ヒョイッ

グルンッ!

ゼルエル「!?」

ズドォォォォォォンッ!!!

青葉「しょ……ッッ! 勝負ありッッッ!」

マヤ『なんと、優勝候補筆頭ともいわれたゼルエル、開始2秒で完全に沈黙ッッッ!』

ケンスケ『合気だ……ッッ! あの爺さん、ゼルエルのパワーを逆に利用して──
     ブン投げたんだッッッ!』

ワアァァァァァ……!

マヤ『ターミナルドグマ最大トーナメントもついに二回戦に突入ッッッ!』

マヤ『さて二回戦第一試合、最初のカードは──』

マヤ『青龍の方角! ファーストチルドレン、綾波レイッッッ!
   白虎の方角! サードチルドレン、碇シンジッッッ!』

ワアァァァァァ……!

アスカ「…………」

ミサト「アスカはどっちを応援するの?」

アスカ「アタシに勝ったヤツを応援するのもシャクだし、
    かといってバカシンジがファーストに勝つのも面白くないし……」

アスカ「両者共倒れが理想ってとこね」

ミサト「ふふっ……あなたらしいわね」

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

ビュッ! ビュバッ! シュバッ!

マヤ『いきなり綾波レイ、伝家の宝刀“ロンギヌスの貫き手”を繰り出しましたァ!』

マヤ『しかし、攻撃がまったく当たりませんッッッ!』

シンジ「邪ッッッ!」

メキャアッ!

レイ「~~~~~ッッッ!」ドザァッ

マヤ『碇シンジのエルボーがクリーンヒットォッッッ!』

ケンスケ『綾波の貫き手はたしかに強力だけど、軌道が直線的だからね。
     すでに技を知っているシンジには、いくら打っても当たらないだろう』

レイ「当たらないのね、もう」

シンジ「一回戦の君とアスカの試合はばっちり見てたからね……」

レイ「なら、これよ」ユル…

シンジ(綾波から急激に力みが消えた……!?)

ベッシィィィッ!

シンジ「うわぁぁぁぁぁ~~~~~ッッッ!!!」ゴロゴロ

マヤ『碇シンジ、地面をのたうち回っている!』

アスカ「なによ、ビンタ一発で大げさに痛がっちゃって……だらしない」

ミサト「いえ今レイがやったのはただのビンタじゃなく……鞭打よ」

アスカ「ベンダ?」

ミサト「流れる水のように脱力して鞭と化した手を相手にぶつけることで、
    相手の皮膚を攻撃、ダメージでなく痛みを与える技よ」

アスカ「痛みを!?」

ミサト「ましてレイの鞭打ともなれば水なんて生易しいものじゃなく……
    まさにLCLの鞭!!!」

ザワザワ…… ドヨドヨ……

シンジ(なんて激痛……ッッ! こんなの初めてだッッッ!)

レイ「もう一発、行くわね」ユル…

ビッシャァァァッ!

鞭打がさらにヒット。

シンジ「~~~~~~~~~~ッッッ!」

シンジ(痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!)

シンジ(とてつもなく痛いッ! だけど──これでいい!)

シンジ(闘争は楽しい、闘争は痛い……この二つは決して矛盾しない!
    闘争は痛いからこそ──楽しいんだッッッ!)ザッ

マヤ『碇シンジ、痛みに涙しながらも構えを取りましたァッッッ!』

シンジ(綾波にもこの楽しさを伝えたい!)

シンジ「目標をセンターに入れて……スイッチ(鞭打)ッッッ!」

ベッチィィィッ!

シンジの鞭打が、レイに炸裂した。

レイ「~~~~~~~~~~ッッッ!」

トウジ「アイツ……技をコピリよった! さすがやな!」

シンジ「どうだい、痛かっただろう?」

レイ「ごめんなさい……こんな時どんな顔をすれば分からないの」

シンジ「笑えばいいと思うよ」ニィ~

レイ「…………」ニィ~

ベッチィィィッ! ベッシィィィッ! ビッタァァァッ!

マヤ『両者、笑いながら鞭打を撃ち合っていますッッッ!』

ケンスケ『いやァ~こりゃすごい。もうマゾの域を通り越しちゃってるよ』

アスカ「なによこれ……バッカみたい!」

ミサト(またひとつ成長したみたいね、シンジ君)

シンジ「どうやらもう、鞭打じゃ決着はつきそうにないね」ハァハァ…

レイ「そうね」ハァハァ…

シンジ「だったらお互い一番自信のある技で決着をつけようッッッ!」ザッ

レイ「分かったわ」ザッ

シ~ン……

会場が静まり返る。

動くのは、同時だった。

シンジ&レイ(──今ッッッ!)

シンジ「目標をセンターに入れて──スイッチ(中段突き)ッッッ!」
レイ「あなたは勝てないわ、私が貫くもの」

シンジの中段突きと、レイの貫き手が激突する!

ズドォッ!!!

レイ「…………ッ!」ベキボキバキ…

シンジの中段突きが、レイの貫き手を粉砕した。

だが、レイは砕けた貫き手を何度もシンジにぶつける。

シンジ「綾波……君は本当にスマートだね。 ──邪ッッッ!」

ズドンッ……!

中段突き、再び。

マヤ『綾波レイ……完全に沈黙……ッッ!』

青葉「勝負ありッッッ!」

試合後──

ミサト「おめでとう、シンちゃん」
アスカ「まっさか、バカシンジがベスト4まで残るなんてねぇ」

シンジ「これもみんな、ミサトさんが修業をつけてくれたおかげだよ。
    あとアスカと綾波の試合を見てたってのも大きかったし」

ミサト「じゃ、次は私ね」

ミサト「シンちゃん、準決勝で会いましょ」



ゼルエル≪すまんみんな……仮にも使徒最強を名乗っている私が、
     あんな無様な試合をしてしまった……ッッ!≫

アルミサエル≪うぅ……!≫グスッ
レリエル≪ゼルエルさん……≫シクシク
サンダルフォン≪くぅ……ッッ≫ウルッ

サキエル≪ゼルエルさん。ゼルエルさんの無念、どうか俺に背負わせて下さい≫

ゼルエル≪サキエル……!≫

サキエル≪この大会──俺が必ず優勝しますッッッ!≫

<試合場>

マヤ『Bブロック二回戦第二試合!』

マヤ『酔拳で洞木ヒカリを退けた、葛城ミサトと──
   巨体でもって時田シロウを瞬殺した、使徒サキエルの対決ですッッッ!』

サキエル「…………」ズシンッ

ミサト「あ~……飲みすぎちったわ」ヨロヨロ…

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

ドゴォッ!

ミサト「~~~~~ッ! ……効いたわッ!」

ベシィッ!

サキエル「…………!」グラッ

ケンスケ『サキエルのパンチに対して、ミサトさんもローキックで返すとはね。
     こいつはすごい打撃戦になりそうだ!』

ケンスケの予想通り、試合は激しい打撃戦となっていく。

ミサト「酒(シュ)ッッッ!」バキィッ
サキエル「…………」ズドンッ

ドゴォッ! ベキィッ! ドズゥッ! ズドンッ! ガゴォッ!

シンジ「すごいな……ミサトさんも、使徒も、鬼気迫るって感じだ」

アスカ「うわっ……ちょっとあそこ見てよ、さっき負けた使徒が見に来てるわ」

シンジ「ホントだ。彼らにも仲間意識とかあるのかな?」

アスカ「あんたバカァ? あるわけないじゃない、そんなの」

ゼルエル「…………」

メキャッ! ズギャッ! ギャドォッ! ドボッ! ズガンッ!

攻防は互角。両者、間合いを開ける。

ミサト「やるじゃない……ビールが足らなかったかしら」ゼェゼェ
サキエル「…………」

ミサト(15年前の南極での格闘大会──あれには父も参加していた)

ミサト(だけど父は敗れ……この世を去った)

ミサト(私はこの最大トーナメントで優勝して、父の無念を晴らしたいのかもしれない。
    だから酔拳のことを、弟子のシンジ君にすら話さなかった。
    その方がトーナメントで彼と当たった時に、有利だから……)

ミサト(私はなんてズルイ女なの……ッッ!)

ドゴォンッ!

マヤ『一瞬動きの鈍った葛城ミサトに、サキエルのローキックが決まったッッッ!』

ミサト「ゲホッ!」ドザァッ

アスカ「なにやってんのよ、ミサト!」
シンジ「ミサトさんッッッ!」

ケンスケ『先ほどご昇進されたミサトさん、ここでさらに二階級特進かァッッッ!』

サキエル「…………」ズンズン

ミサト(ここまでね……)

ミサト(師匠失格の私に、これ以上戦う資格はないわ……)

シンジ「動いてよッッッ!」

ミサト「!」

シンジ「今動かなきゃ、負けちゃうじゃないかッッッ!」

シンジ「ミサトさん、ぼくと準決勝で会うんじゃなかったの!?」

ミサト「シンジ君……ッッ!」ググッ…

マヤ『葛城ミサト、再起動ッッッ!』

ズドッ! ドゴッ! バゴッ! ガゴッ! バシッ!

マヤ『連打がサキエルに炸裂ゥッッッ!』

サキエル「~~~~~ッッッ!」

ミサト「できれば使用(つか)いたくなかったけど……
    あなたに敬意を表し、最大の技で終了(おわ)らせてもらうわ」

すると──

ミサト「ウボオオオオオオオオッッッ!!!」
サキエル「!?」

マヤ『こ、これは……ッッ! 葛城ミサト、胃液とビールが混ざった液体を、
   凄まじい水圧で吐き出したァァァッッッ! 見たくありませんッッッ!』

加持「いい年して戻すなよ……ッッ!」

ミサトの最大奥義をまともに受けたサキエルに、もはや力は残っていなかった。

ミサト「胃袋のセカンドインパクト……名づけて“ストマックインパクト”」

ミサト「碇司令と当たった時のとっておきだったんだけどね……」オエッ…

シンジ「これがミサトさんの切り札……ッッ!」
アスカ「下品な技だわ……!」

サキエル「…………」ヨロッ…
ミサト(まだ動けるの!?)

サキエル「…………」ガシィッ

マヤ『これはサキエル、自爆するつもりかァッッッ!?』

ミサト(まずいッッッ! 今の体力で自爆を受けたら──)

ゼルエル≪──やめろッッッ!≫

サキエル「!」

ゼルエル≪お前の負けだ、サキエル……受け入れるんだ≫

サキエル≪はい……ッッ!≫ガクッ

マヤ『なにをいってるのか分かりませんが、使徒、戦意喪失したもようです!』

青葉「勝負ありッッッ!」

試合後──

サキエル≪ゼルエルさん……優勝するといっておきながら俺は……ッッ!≫

ゼルエル≪ナイスファイト、ナイステクニック、ナイススピリット……。
     お前は我々使徒の誇りだ……≫ギュ…

サキエル≪~~~~~ッッッ!≫

ゼルエル≪最大トーナメントはなにも今日だけじゃない、出直そう≫

サキエル≪はいッッッ!≫



冬月「これでAブロックは二回戦終了か……」

冬月「まったくどの試合も私を楽しませてくれるよ」ニィッ

冬月「そして次の試合はいよいよ──」

冬月「地上最強の夫婦喧嘩だッッッ!」

<試合場>

ワアァァァァァ……!

マヤ『Aブロックが終了し、二回戦もいよいよ後半戦!』

マヤ『青龍の方角ッ! 汎用人型決戦兵器、エヴァンゲリオン初号機ッッッ!
   白虎の方角ッ! ネルフ最高司令官、碇ゲンドウッッッ!』

シンジ(父さんと初号機の戦いか……)

カヲル「やぁ、シンジ君」

シンジ「カヲル君! エヴァに全力で握り締められてたけど、もう平気なの?」

カヲル「心配してくれてありがとう。とりあえず動けるぐらいには回復したよ。
    あと……彼女は“全力”じゃなかった」

シンジ「(彼女?)全力じゃなかった……? ウソだよ!」

カヲル「いや……全力を出せなかったというべきかもしれない」

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

ズドォンッ!

マヤ『碇ゲンドウのハンマーパンチが、初号機にクリーンヒットォッッッ!』

ドゴォッ! ベキィッ! ズドンッ! ──ドザァッ!

マヤ『碇ゲンドウの猛攻で、エヴァ初号機、あっという間に沈黙ゥッッッ!』
ケンスケ『ペンペンとの一回戦は、全然本気じゃなかったってことか……』

ゲンドウ「どうしたユイ……この程度か」

初号機「やはり、このままじゃアナタには勝てないわね」

シンジ「!?」
ケンスケ『エ……エヴァがしゃべったッッッ!?』

ズチャッ……

マヤ『~~~~~ッッッ!? な、な、なんとォ~~~~~ッッッ!
   無人のはずのエヴァ初号機から、一人の女性が出現(あらわ)れました!!!』

ゲンドウ「11年ぶりか……いや、毎日会ってはいたがな」
ユイ「えぇ」

冬月「復ッ!!! 活ッ!!!」

冬月「碇ユイ復活ッッ! 碇ユイ復活ッッ! 碇ユイ復活ッッ! 碇ユイ復活ッッ!」

冬月「碇ユイ復活ッッ! 碇ユイ復活ッッ! 碇ユイ復活ッッ! 碇ユイ復活ッッ!」

冬月「碇ユイ復活ッッ! 碇ユイ復活ッッ! 碇ユイ復活ッッ! 碇ユイ復活ッッ!」

シンジ(碇ユイって……まさかあの人はぼくの母さん!?
    父さんは自分のせいで死なせてしまったっていってたのに……)

ゲンドウ「よもやの自力サルベージ……やはりアレは事故ではなかったか」

ゲンドウ「飽くなき強さを求める我々人類はアダムやリリスをベースに
     人造人間エヴァンゲリオンを作り上げたが──」

ゲンドウ「お前はさらなる強さを得るために、わざと取り込まれたのだなッッッ!」

ユイ「そのとおりよ、アナタ」

ゲンドウ「……で、どうだった。10年以上エヴァと同化しての感想は……?」

ユイ「一回戦の渚カヲル君との試合で、はっきりと理解(わか)ったわ。
   生身で戦った方が強い、と」

シンジ「~~~~~ッッッ!」

カヲル「やはり……」
   (もし生身の彼女が相手だったら、ボクはまちがいなく死んでいた……ッッ!)

ゲンドウ「ユイ、お前はたしかに強かった。
     だが、10年以上のブランクがある今のお前では──
     私には決して勝てんッッッ!」

マヤ『試合再開ィッッッ!』

メキャアッ!

ゲンドウの拳がユイにヒットするが──
攻撃後のスキを逃さず、ユイがゲンドウの右腕を掴む。

パァンッ!!!

マヤ『握撃ィッッッ! 碇ゲンドウの鋼鉄の腕が爆ぜたァッッッ!』

ゲンドウ「なんだと……ッッ」ブシュウウ…

さらに、アッパーがゲンドウの顎を打ち抜く。

ガゴォンッ!

ゲンドウ「ぐほっ……がはっ……!」
    (なぜだユイ……ッッ! ブランクがあるハズなのに、強くなっている!?)

シンジ(あの父さんが押されてるところなんて、初めて見た……ッッ!)

ユイ「私はエヴァの中で、ずっと鍛錬を重ねていたわ……」

ユイ「エヴァに取り込まれた私がいた世界は、ここよりも濃密な空間だったわ。
   つまりそこで鍛錬を重ねた私のトレーニング量は──
   アナタを遥かに上回るッッッ!」

ゲンドウ「~~~~~ッッッ!」

冬月(二人の戦いを見ていると、大学教授時代を思い出すよ……)

冬月(あの頃、ユイ君の白衣が血で染まっていなかったことはなかった……)

ズガァッ!

ゲンドウのハンマーパンチが炸裂する。

ユイ「……さすがね、アナタ」ペッ

ゲンドウ「お前こそ、まさかエヴァの中で鍛錬を重ねていたとは……
     私のシナリオにはなかったことだ」

ずれたサングラスをかけ直すゲンドウ。
四つんばいになるユイ。

グニャ~……

カヲル「二人の闘気がスゴすぎて……ターミナルドグマ全体が歪んでいるね」
シンジ「本気だ……ッッ! 二人とも……ッッッ!」

ギュアッ!

四つんばいの姿勢から、ユイが突進する。

ゲンドウ(なにが来るッ!?)

ガブッ……!

マヤ『碇ユイ、碇ゲンドウの肩に噛みつきましたァ~~~~~ッッッ!』

ケンスケ『噛みつき(バイティング)は戦場格闘技では基本中の基本だけど……
     まさか女性が使用するなんて……ッッ!』

メリィッ!

ゲンドウの肩を食いちぎるユイ。

ユイ「…………」モニュ… モニュ…
ゲンドウ「ぐおお……ッッ!」ブシュウウ…

ミサト「夫を……食ってる……ッッ!」

カヲル「シンジ君、目の前で両親が戦うのを見るのは辛いだろうけど──」
シンジ「…………」ニィ~

シンジ「これだよ、カヲル君ッッッ!
    夫婦とはこうあるべきなんだ! まさに二人はぼくの理想ッッッ!」

カヲル「~~~~~ッッッ!」
   (血は争えない、か……ッッ)

ズガァンッ!

マヤ『碇ゲンドウのアッパーで、碇ユイ、第3新東京市まで吹っ飛んだッッッ!』

地上最強の夫婦喧嘩はさらにエスカレートしていく。

ズガンッ! ドゴォッ! ベキィッ! ボゴォッ! ドグァッ!

メキャッ! グシャアッ! ドボォッ! ガキィッ! ズンッ!

果てしない殴り合いの末、ゲンドウの首筋の防御が空く。

ユイ(好機!!!)

すかさずユイが頸動脈に噛みつこうとするが──

ゴキィッ!

ゲンドウのエルボーが、ユイの顔面にヒットした。

ユイ「え……ッッ!」グラァ…

ケンスケ『そうか、口を開いた瞬間は、もっとも打撃にもろい瞬間でもある!』

ゲンドウ「ユイ、お前のトレーニング量は私よりも上かもしれん。
     だが、しょせんはエヴァの中での孤独な鍛錬……
     ネルフの最前線で実戦経験を重ねてきた私には、通用しないッッッ!」

ズドォォンンッ!

ユイの脳天に、ゲンドウのハンマーパンチが決まった。

ユイ「…………」ピクピク

マヤ『碇ユイ、完全に……沈黙しました……』

青葉「勝負ありッッッ!」

ワアァァァァァ……!

マヤ『地上最強の夫婦喧嘩、ついに決着ゥゥゥッ!
   激闘を制したのは地上最強の司令、碇ゲンドウッッッ!』

マヤ『しかし、妻である碇ユイもすばらしいファイトを見せてくれましたッッッ!』

<医務室>

シンジ「母さん……」

ユイ「シンジ……あなたがいるのに、エヴァに取り込まれてまで強さを求めて、
   私は母親としても武術家としても失格ね」

シンジ「そんなの関係ないよッッッ!」

シンジ「母さん、いつかぼくとも戦ってくれるかい?」

ユイ「えぇ……もちろんよ」ニコッ

<試合場>

マヤ『二回戦最終試合ッッッ!』

マヤ『青龍の方角ッ! フォースチルドレン、鈴原トウジッッッ!
   白虎の方角ッ! 人類補完委員会議長、キール・ローレンツッッッ!』

ヒカリ「鈴原……ファイト」
レイ「鈴原君……」
アスカ「あんな爺さん、ちゃっちゃとやっつけなさいよ!」
シンジ「トウジなら勝てるよ!」

トウジ「みんな、ありがとな!」ザッ

向かい合う二人。

キール「フォースチルドレン……君はボクシングが得意だそうだな」

トウジ「だったらなんや?」

キール「ならば私も……ボクシングで相手をしよう」スッ…

トウジ「なんやと……!?」

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

バゴォンッ!

マヤ『鈴原トウジ、ダウ~~~~~ンッッッ!
   キール・ローレンツのたった一発のブローで、地に伏してしまったァッッッ!』

トウジ「げほっ、ごほっ……ゲボォッ!」ビチャビチャ…

シンジ「トウジッッッ!」

キール「私が合気だけだと思ったら、大きな間違いだ。
    私の拳は、ゼーレのモノリス10枚を粉砕する」

アスカ「10枚!? ウソでしょ……ッッ!」

ゼーレのモノリスは、瓦よりもはるかに頑丈で、
たった一枚を割れる武術家ですら世界に10人いないといわれている。

トウジ(これがハッタリやないとしたら……ワシのパンチより遥かに上や……)ハァハァ

トウジ「──だが!」

トウジ「ボクシングは拳の威力だけが、勝敗を決めるんやない!」

トウジ「地上最速の打撃──受けてみいッッッ!」

スパァンッ! スパパァンッ! パパパッ!

トウジのジャブが、キールに連続ヒットする。

ケンスケ『ボクサーのパンチ……特に左ジャブはどんなテクニシャンでも
     かわせないといわれている……いくらあの爺さんでも──』

キール「ふむ、まだ若いのにボクシングの利点をよく理解(わか)っている」

キール「だが、君のいる場所は、すでに20年前に通過した場所だッッッ!」

ドズゥンッ!

キールの超音速ボディブローが、トウジの腹を射抜いた。

トウジ「20年……ワシらが生まれる前や、ないか……」

ドザァッ……!

青葉「勝負ありッッッ!」

アスカ「あの爺さん、優勝持ってっちゃうわよ!」
シンジ(トウジをこうも簡単に沈めるなんて……ッッ!)

キール「人類補完計画の遂行は近い……」ザンッ

こうして最大トーナメント二回戦は全て終了した。

ワアァァァァァ……! ワアァァァァァ……!

マヤ『ベスト4!!!』

マヤ『ターミナルドグマに集った地上最強の16名の格闘士!
   激戦に次ぐ激戦の末、ついに4名にまで絞られましたッッッ!』

マヤ『改めて、ここまで勝ち上がった四選手を紹介いたしますッッッ!』

マヤ『サードチルドレン、碇シンジッッッ!』

マヤ『一回戦ではクレバーな戦術を得意とする加持リョウジを撃破、
   二回戦では綾波レイの貫き手を中段突きにて粉砕いたしました!』

マヤ『ネルフ作戦課長、葛城ミサトッッッ!』

マヤ『一回戦は洞木ヒカリ、二回戦は巨体を誇る使徒サキエルを
   酔えば酔うほど強くなる酔拳にて下し、準決勝にコマを進めました!』

マヤ『ネルフ司令官、碇ゲンドウッッッ!』

マヤ『一回戦はペンペンの打撃をあえて受けながら退け、
   二回戦は初号機改め碇ユイとの壮絶な夫婦喧嘩を制しました!』

マヤ『人類補完委員会議長、キール・ローレンツッッッ!』

マヤ『一回戦では最強の使徒ゼルエルを投げ技で一蹴、
   二回戦においては鈴原トウジを相手の土俵で破っております!』

ワアァァァァァ……! ワアァァァァァ……!

マヤ『準決勝第一試合、碇シンジVS葛城ミサトッッッ!』

マヤ『師弟対決、制するのは師匠か!? はたまた弟子か!?』

ミサト「シンジ君、師匠だからって遠慮せずあなたの全力をぶつけてきなさい。
    それは、とてもとても気持ちのいいことなのよ」

シンジ「はい!」

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

シンジ「邪ッッッ!」ダッ

ブオンッ! ビュオッ! ブワォンッ!

次々に打撃を繰り出すシンジ。

シンジ(あ……当たらないッ! なんて変則的な動きなんだッッッ!)

ミサト「酒(シュ)ッッッ!」ブオッ

バキィッ!

シンジ「~~~~~ッッッ!」ドザァッ

マヤ『ハイキック炸裂ゥ~~~~~ッッ! 碇シンジ、ダウンッ!』

ズドォッ! ドゴォッ! バキィッ! メキィッ! ドギャッ!

ダウンしたシンジを、徹底的に踏みつけるミサト。

アスカ「うっわ……!」
加持「今の葛城はヒールを履いているから、ダメージは10倍になる!」

ミサト「さぁ立ってッ! 立ちなさいッッッ!」ドゴォッ

シンジ「勃ってるよ、ミサトさん」

ビュルルルルルッ! パシャッ!

シンジの精液が、ミサトの両目に炸裂した。

ミサト「しまっ──!?」

マヤ『不潔ッッッ!』

すかさずシンジは立ち上がると──

シンジ「目標をセンターに入れて、スイッチ(中段突き)ッッッ!」

ズドンッ!!!

シンジ「最高だ……俺って……」ニィ~

ミサト「くっ……!」ゴシゴシ

シンジ「ぼくから行きますよ、ミサトさんッッッ!」

バシィッ! ベキィッ! ドズゥッ! ドゴォッ! バキィッ!

マヤ『視界を塞がれた葛城ミサトに、碇シンジの容赦ない連撃ィッッッ!』

ミサト「くっ……ッッ!」

ミサト(スゴイわ、シンジ君……)

ミサト(一回戦では加持君の大人のクレバーさを学び、
    二回戦のレイとの戦いでは闘争の楽しさを覚え──)

ミサト(司令たちの夫婦喧嘩に触発され、さらなる覚醒を遂げた……!)

ミサト(だったらこっちも出し惜しみは無しよ!)ウエッ

ミサト「ウボオオオオオオオオッッッ!!!」

ズガァァァンッ!!!

ミサトの口からストマックインパクトが吐き出される。

だが、シンジもかろうじてかわしていた。

シンジ(ストマックインパクト……なんて威力だ……ッッ!
    まともに喰らえば悪くすれば死……最低でも昏倒は免れない!)

シンジ(だけどかわせない速度ってわけじゃない!)

ミサト「なかなか素早いわね、シンちゃん。だったら──大人のキスよ」スッ
シンジ「!?」

マヤ『葛城ミサト、碇シンジの唇を奪いましたァッッッ!』
ケンスケ『なんてうらやましいッ!』

シンジ(なんでミサトさんは突然ぼくにキスを……?)

シンジ(──まさか!?)

シンジ(零距離ストマックインパクト!?)

シンジ(ま……まずい……ッッ!)

シンジは自分からミサトに息を吹き込むことで、
必死にストマックインパクトを抑え込む。

ミサト「~~~~~~~~~ッッッ!」
シンジ「~~~~~~~~~ッッッ!」

加持「すごい試合になってきたな……色んな意味で」

二人が大人のキスを始めてから10分が経過した。

マヤ『吐き出したい葛城ミサトッ! 押し込みたい碇シンジッ!
   二人のキスはまだ続行(つづ)いていますッッッ!』

ミサト(まずいわ、ちょっち酔いが冷めてきた。距離を取らないと!)バッ

後ろに飛びのき、間合いを取るミサト。

シンジ「もうキスは終わりですか?」
ミサト「大会が終わったら続きをしましょう」

アスカ「続きってなによそれ!」
レイ「ダメ……」

シンジ「だけど今の長時間キスでミサトさんの酔いは冷め、
    ストマックインパクトも押さえ込めたハズ……ぼくが有利ですよ」ニヤッ

ミサト「あら、シンジ君……私くらいになると──」ドクン…

ミサト「体内でアルコールを生み出し、自分で酔うこともできるのよ」ドクン…

再び泥酔状態に戻るミサト。

シンジ「そ、そんな……ッッ!」

泥酔MAXのミサトが、攻めに転じる。

ベシィッ! ドゴォッ! バチィッ! ズドンッ! ドギャッ!

シンジ「邪ッッッ!」ブンッ
ミサト「当たらないわよ~ん」ヨロ…

ゴキィッ!

ヒザ蹴りが、シンジの顔面にヒット。そして──

ミサト「ウボオオオオオオオオッッッ!!!」

ズガァァンッ!!!

マヤ『ゼルエル以上の破壊力とマトリエル以上の溶解力を併せ持つ、
   ストマックインパクトがついに炸裂ゥッッッ!』

ミサト「ウイ~……悪く思わないでね」オエッ

マヤ『碇シンジは完全に沈黙──……いえ、高エネルギー反応ですッッッ!』

ミサト「なんですって!?」

シンジ「綾波がやってた“廻し受け”ってのを、やってみたんだ……。
    これがなかったらアウトだったよ……ミサトさん」プスプス…

ミサト「なんてインチキッッッ!」

シンジ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

ミサト(胃に多大な負担を強いるストマックインパクトの連発に、
    脳内アルコールまで分泌させたけど倒せなかった……)

シンジ「目標をセンターに入れて──」

シンジ「スイッチ(中段突き)ッッッ!」

ドォンッ!!!

ミサト「強くなったわね……シンジ君」

ミサト「私はあなたの師匠であること……誇りに思う、わ……」グラッ…

ドサァッ……!

青葉「勝負ありッッッ!」

シンジ(ぼくもです……!)

シンジ(ミサトさんが師匠であること、誇りに思っています……ッッ!)

ワアァァァァァ……! パチパチパチパチ……!

マヤ『準決勝第二試合ッッッ!』

マヤ『碇ゲンドウとキール・ローレンツ、果たして決勝に進むのは
   どちらのファイターでしょうか!?』

ケンスケ『二人とも正真正銘の怪物……格闘マニアの俺でも予想がつかないや』

ワアァァァァァ……!

ゲンドウ「お久しぶりです、キール議長」

キール「ふむ……碇よ。我らは互いに世界屈指の戦力を持ちながら、
    これまで一度も手合わせしたことがなかった」

キール「なぜなら、私とお前がやり合えば、
    セカンドインパクト以上の災害が起こることは必至だからだ」

キール「──だが、この闘技場であれば心配はいるまい」

キール「存分に戦い、お前の“地上最強”の称号、今日ここではぎ取ってくれる」

キール「そして私の最強を証明した後、ゼーレのシナリオ通り全人類を補完する」

ゲンドウ「やってみればいい」

ゲンドウ「やれるものならね」

日向「開始(はじ)めいッッッ!」

Qアスカ「とっくの昔に義眼じゃよ!」

ズゴゴォンッ!!!

いきなり、キールのモノリス粉砕拳と、ゲンドウのハンマーパンチが激突する。

マヤ『衝撃波、来ますッッッ!』

ズオオォォ……!

ゲンドウ「くぅ……ッッ!」ビリビリ…
キール「ぬぅ……ッッ!」ビリビリ…

ザッ!

衝撃波で観客に怪我人が大勢出たが、逃げ出そうとする者は一人もいなかった。

ゲンドウ「さすがです、キール議長」

ゲンドウ「ところで、私が人類補完を目指したのはユイと喧嘩をしたかったからで、
     それはすでに叶ってしまいました」

ゲンドウ「あなたはなぜ、人類補完を目指すのです?」

キール「試合中におしゃべりとはな……だがよかろう、教えてやろう」

キール「私は己の腕力と武術で、どんな敵をも打ち倒してきた。
    ゼーレ最高幹部となったのも、全て私の武力によるものだ」

キール「だが──」

キール「私が武によって名声を得るたび、周囲はこういうのだ」

キール「キールは才能があるから、肉体に恵まれたから、環境がよかったから、
    強いのだ……と」

キール「これではいつまでたっても私は真の最強とは認められん」

キール「ならば、全人類をLCLに還元してしまえば──
    みな条件は同じとなり、もはやだれも言い訳できなくなる」

キール「人類を補完しLCLと化した全人類で格闘大会を開き、
    私が真の最強となる」

キール「これが私の夢なのだッッッ!」

マヤ『なんとォ~~~~~ッ! ここでキールの恐るべき野望が明らかになった!』

「俺、爺さんの気持ち分かるよ」 「肉体を失いたくない!」 「う~む……」

マヤ『観客の反応はまさに賛否両論ですッッッ!』

キール「どうだ、碇……地上最強といわれるお前も、私の気持ちは分かるだろう」

ゲンドウ「分かります……が、賛同はできません」

ゲンドウ「LCLになってしまったら、サングラスをかけられませんからね」

キール「……ゼーレを裏切るつもりか、碇」

ゲンドウ「邪ッッッ!」
キール「補(ホ)ッッッ!」

目まぐるしい攻防を繰り広げるキールとゲンドウ。

両者が一撃浴びせるたびに、凄まじい衝撃波が周囲に飛び散る。

マヤ『す、すごい……ッッ! 両者の拳足の一撃一撃が、
   おそらくセカンドインパクト以上の破壊力なのでしょうッッッ!』

ゲンドウ渾身の左ストレートが──

ヒョイッ!

ケンスケ『ここにきて合気ィ~~~~~ッッッ!』

見切られ、投げ飛ばされる。

だが、投げ飛ばされながらも、キールに蹴りを当てるゲンドウ。

ザッ……!

キール「さすがだ……地上最強の名は伊達ではないな」

ゲンドウ「あなたこそ、老人だとあなどっていましたよ」

キール「ならば……お前に究極の武術を教えてやろう」ユラ…

殺気を消し、無造作にゲンドウに歩み寄るキール。

ゲンドウ(なんだ!? 闘気や殺気がまるで感じられない……!
     まるで無二の親友と接する時のような……ッッ!)

キール「究極の武術とは、敵を憎み、打ち倒すことではない。
    心の壁を取り払い、相手と仲良くなることだ」ス…

マヤ『キール・ローレンツ、碇ゲンドウに握手を求めていますッッッ!』

キール「さぁ、握れるかね?」ニコッ

ゲンドウ(さっきまで戦っていたキール議長が……なぜこんなに愛しいのだ!?)ス…

ガシィッ……!

マヤ『なんと両者、試合中に握手ゥ~~~~~ッッッ!』

すると──

パシャッ!

キール「人類補完拳……。裏死海秘伝書より会得した、武術の究極型だ」

マヤ『碇ゲンドウ、キール・ローレンツと握手を交わした瞬間──
   LCLになってしまったァッッッ!』

ゲンドウ(どこだ……ここは……)

ゲンドウ(なんと心地よい……)

ゲンドウ(そうか私は……キール議長にLCLにされて──)

ゲンドウ(いや、もはやどうでもいい……私はずっとここにいよう……)

ゲンドウ(人類補完計画が遂行されれば、みなここにやってくるのだろう)

ゲンドウ(少しの間……一人でここを漂うとしよう)

ユラ~……

ユラ~……

ユラ~……

「父さんッッッ!」

「アナタッッッ!」

ゲンドウ「!」

シンジ「父さん……ぼくと戦ってくれるんじゃなかったの!?」

ユイ「戻ってきて……アナタ」

レイ「碇司令……」

リツコ「あなたには失望しましたわ」

ナオコ「碇のバカヤローッッッ!」

冬月「碇、お前一人の体じゃないことを自覚してくれ!」

ミサト「碇司令、立ちなさいッ!」

加持「まだお休みになるのは早いんじゃないですかね?」

アスカ「こんなのが父親じゃ、シンジも報われないわね!」

………

……



ゲンドウ「そうだ……私はこんなところにいるワケにはいかんッッッ!」

青葉「勝負あ──!?」

ムクムク……

マヤ『な、なんとッ! 碇ゲンドウ、LCL状態から元に戻りましたァッッッ!
   ──全裸でッッッ!』

キール「バ、バカな……ッッ!?」

ゲンドウ「時計の針は元には戻らない……。
     そんなふうに考えていた時期が私にもありました」
キール「~~~~~ッッッ!」

ゲンドウ「闘気と殺気を完全に消すことで、アンチATフィールドを生み出し、
     握手を交わした相手をLCL化させる奥義……さすがでしたよ、議長」

ゲンドウ「だが、ここで終わらせるッッッ!」バッ

ゲンドウはターミナルドグマから衛星軌道まで一気に飛び上がると──
落下の勢いを利用した超ハンマーパンチをキールに喰らわせる!

ズドゴォォォォンッ!!!

キール(フッ……最強への道はまだまだ険しい、か……)ドサッ

マヤ『キール、完全に沈黙ッッッ! あと碇司令、パンツ履いて下さいッッッ!』

青葉「勝負ありッッッ!」

何となくだけど、
ゲンドウ「(優勝)おめでとう」ニコ
ユイ「おめでとう」ニコ

シンジ「ありがとう」ニィ~

なオチが目に浮かんだ

ワアァァァァァ……!

冬月「地上最強を目指して何が悪い!!!」

冬月「生物として生まれたからには、誰だって一度は地上最強を志すッ!」

冬月「地上最強など一瞬たりとも夢見たことがないッッ!」

冬月「そんなヤツは一人としてこの世に存在しないッッ!」

冬月「それが心理だ!!!」

冬月「ある者はクラスメイトに殴られッ――ある者は戦略自衛隊の火力にッ!
   ある者は使徒の破壊力にッ! ある者はセカンドインパクトに屈してッ!
   それぞれが最強の座をあきらめそれぞれの道を歩んだ……」

冬月「アニメ監督、オペレーター、大学教授、副司令、国連軍、エアギタリスト!」

冬月「しかしッ! 今夜あきらめなかった者がおるッッッ!」

冬月「偉大なバカヤロウ2名!!!」

冬月「この地上で誰よりもッ! 誰よりもッ! 最強を飢望(のぞ)んだ2名!」

冬月「決勝(ファイナル)!!!」

ワアァァァァァ……!

マヤ『青龍の方角ッ!』

マヤ『サードチルドレン、碇シンジッッ!
   偉大なる師を越えた少年は、偉大なる父をも倒し、神話になれるかッッッ!?』

ワアァァァァァ……!

マヤ『白虎の方角ッ!』

マヤ『ネルフ最高司令官、碇ゲンドウッッ!
   最愛の妻との再会を果たした彼に残された仕事は、息子への教育かァッッッ!』

ワアァァァァァ……!

シンジ「父さん……」

ゲンドウ「シンジ……」

シンジ「…………」

ゲンドウ「…………」

アスカ「なに黙り込んじゃってるのよ、あの二人……なんかしゃべればいいのに」

ミサト「無理ないわ……親子とはいえ、ほとんど会ったことがないんだもの」

レイ「碇君……」

トウジ「シンジ……夢が叶ったんやな」

ヒカリ「決勝戦が親子対決だなんて……!」

カヲル「シンジ君、あとはもう全てをぶつけるだけだ」

冬月「地上最強の親子喧嘩が……開始(はじ)まる」

ワアァァァァァ……!

ゲンドウ「シンジ」

シンジ「!」

ゲンドウ「Aブロックからは葛城三佐が上がってくるものと予想していた。
     お前は私の予想を覆したのだ」

ゲンドウ「よくやったな、シンジ」

父(ゲンドウ)が子(シンジ)を褒める。初めてのことだった。

ユイ「アナタ……シンジ……」ウルッ…

ゲンドウ「お前の人生は、父親から誉められるという当たり前──
     抜け落ちたまま過ぎ去った14年だった」

ゲンドウ「すまなかっ──」
シンジ「謝らないでよ、父さん」

シンジ「ぼくはもう十分です」

シンジ「“よくやったな”……今の言葉だけで十分です」

シンジ「今の言葉だけでぼくの14年の人生は──全て報われたんだ」

シンジ「だから、これでもうなんの憎しみも恐れもない……。
    純粋な気持ちで父さんに挑み──そして勝つッッッ!」ザンッ

ゲンドウ「来いッッッ!」ザンッ

日向「開始(はじ)めいッッッ!!!」

シンジとゲンドウ、両者が同時に拳を繰り出す。

ズドォォォンッ……!

マヤ『ついに親子喧嘩が勃発したァ~~~~~~~~~~ッッッ!』

ズガァッ! ドゴォッ! ベシィッ! ドズゥッ! ドゴォッ!

ザキィッ! バシュッ! ビシィッ! ボゴォッ! グシャッ!

メキィッ! ズドンッ! ドグァッ! バゴンッ! メチィッ!

両者、一歩も引かずに殴り合う。

マヤ『速くッ! 重くッ! 止まらないッ! なんという打撃戦でしょうかッ!』
ケンスケ『なんていうか、互いに互いを確かめ合ってるって感じだ』

両者、間合いを開ける。

シンジ「ようやく体が温まったよ、父さん」ポカポカ

ゲンドウ「私もだ」ポカポカ

ワアァァァァァ……!

トウジ「ウソやろ……!?」
レイ「今までの戦いが──」
カヲル「ウォームアップだったなんて……!」
アスカ「悔しい……ッッ!」ギリッ…

じゃあ、今までの殴り合いは「ポカポカ」レベルだったのかっ!

ゲンドウの味噌汁は少ししょっぱい

シンジ「目標をセンターに入れて、スイッチ(中段突き)ッッッ!」

ズドォッ!

中段突きが、ゲンドウのミゾオチにめり込む。

ゲンドウ「ぐぅ……ッッ!」

ゲンドウ「邪ッッッ!」

ドゴォンッ!

ゲンドウのハンマーパンチが、シンジの脳天に叩きつけられる。

シンジ「あうぅ……ッッ!」ガクッ

ミサト「まずいわッ!」
マヤ『やはりパワーは碇ゲンドウが上のようですッ!』

ゲンドウ「もう一度だッ!」

ブオンッ!

膝をつくシンジに、ゲンドウの鉄槌が振り下ろされる。

パシィッ!

廻し受けで、ゲンドウのハンマーパンチを弾くシンジ。

ザクゥッ……!

さらに“ロンギヌスの貫き手”が、ゲンドウの腹に突き刺さった。

ゲンドウ「これはレイの技……ッッ!?」

レイ「碇君、すごい……」

さらにミサトの酔拳に似た動きから──

シンジ「おっとっと……」ヨロッ…

トウジのようなジャブ連打を披露。

スパパパァンッ!

ゲンドウ(速いッ!)

ミサト「まさか酔ってないのに、酔拳を使用(つか)うなんて……」
トウジ「天才やッッッ!」

シンジの快進撃は止まらない。

シンジ「バームクーヘンにしてやる……バームクーヘンにしてやる……ッッ!」ビキビキッ

アスカのように殺気を全開にし、カヲルのような繊細な突きを放つ。

ズバァンッ!

シンジ「ウォーターメロンクラッシュッッッ!」

グシャアッ!!!

ゲンドウ「ぐおお……ッッ!」ガクッ

アスカ「バカ……無理しちゃって」
カヲル「彼の中には今まで出会った武術家全てが宿っているんだね」

マヤ『信じられない光景です!』

マヤ『“地上最強の司令”碇ゲンドウが、14歳の少年になすすべなく
   追い詰められているッッッ!』

加持「本当に信じられないよ、あのシンジ君が……」

リツコ「スゴイわ……シンジ君の中にいる武術家たちとのシンクロ率が、
    400%を超えているわ」

ゲンドウ「シンクロ率が400%を超えると──
     これまでに体験したあらゆる技を使えるようになるという」

シンジ「ミサトさんの“ストマックインパクト”はさすがに無理だけどね」

ゲンドウ「だが──」

シンジ「邪ッッッ!」シュッ

ゲンドウに右ストレートを放つシンジ。

ヒョイッ

シンジ「え!?」グルンッ

ドザァッ!

マヤ『合気ですッッ! キール・ローレンツが使っていた合気で、
   碇シンジ投げ飛ばされましたァッッッ!』

キール「碇め……ついに達しおったか」

ゲンドウ「シンクロ率400%に達しているのは、お前だけではない」

さらに──

パァンッ!!!

マヤ『碇シンジの左腕が爆ぜたァッ! 碇ゲンドウ、実の息子に握撃ィッッッ!』

エアギタリストww青葉か

>>225
実はベースなんだけどね、あれ

シンジ「くぅっ……!」ブシュウウウ…
ゲンドウ「邪ッッッ!」

ドゴォッ! ベキィッ! ズドォッ! バシィッ! ドゴォッ!

ミサト「ペンペンのような猛ラッシュだわッ!」
ペンペン「クエエエエッッッ!」

ケンスケ『シンクロ率400%に達したシンジは無敵だと思ったけど……
     これで試合は分からなくなった……ッッ』

アスカ「バカシンジ、しっかりしなさいよッ!」

シンジ(ありがとう、アスカ……ッッ!)

バシィッ! ベキィッ! ドゴォッ! バチィッ! ベキィッ!

シンジもどうにか反撃に出るが、シンクロ率400%同士であれば
経験豊富なゲンドウが圧倒的に有利になる。

そして──

ガブゥッ……! ブチィッ!

ユイ「アナタ、そこまでやるのね……」

ユイのようなゲンドウの噛みつきで、シンジの右上腕が食いちぎられた。

ブシュウウウウ……!

マヤ『碇シンジの右腕から、おびただしい出血ゥッ! これは危険な状態ですッッ!』
ケンスケ『シンジィッッッ!』

リツコ「上腕動脈をやられたわね」

加持「人体で出血が致命傷となる、急所九つのうちの一ヶ所。
   放っておいても10分、動いて5分、戦闘不能になるまではおそらく──」

加持「3分!!!」

すると──

ミサト「もういいわ、やめてッ!」
ヒカリ「碇君はよくやったわよ!」

レイ「碇君、ダメ……」
アスカ「バカシンジ、さっさとギブアップしなさいよ!」

トウジ「シンジ、死んじまったらなんにもならへん!」
カヲル「これ以上は危険すぎる……」

ゲンドウ「どうする……シンジ」

シンジ「…………」ブシュウウウ…

シンジ「みんなには悪いけど、ぼくはまだ戦える」

シンジ「ぼくに残された185秒、これだけあれば父さんを倒せるよ……!」

ゲンドウ「…………」ニィ~

ミサト「もう……好きになさい」
ヒカリ「男の子って、いっつもこうなんだから」

レイ「分かったわ」
アスカ「あ~もう! 人がせっかく親切にしてるのに!」

トウジ「勝たな承知せえへんで!」
カヲル「君の決意、好意に値するよ」

試合が再開される。

ズドンッ! ドゴォッ! ベキィッ! バキィッ! ドスッ!

マヤ『目まぐるしく技が披露された先ほどまでとうってかわって、泥臭い殴り合いッ!』

ケンスケ『慣れてない他人の技を下手に使うと、逆襲される危険があるからね……』

ドゴォッ! バゴォッ! メキィッ! ガゴォッ! ドボォッ!

シンジ(残り1分を切った……ッッ!)

ゲンドウ「失血による戦闘不能を待つつもりはない……仕留める」

ガツンッ!

ハンマーパンチで吹っ飛ばされるシンジ。

ゲンドウ「邪ッッッ!」バッ

ジャンプでターミナルドグマを脱出し、衛星軌道に到達するゲンドウ。

マヤ『あ、あれは……! キール・ローレンツを倒した……ッッ!』

ゲンドウ「シンジィィッッッッッ!!!」
シンジ「父さぁぁぁんッッッッッ!!!」

ユイ(決まるわ……この一撃でッ!)

上空から降って来たゲンドウを、中段突きの構えで迎え撃つシンジ。

ゲンドウ「勝負ッッッ!!!」

シンジ「目標をセンターに入れて──」

シンジ「スイッチ(中段突き)ッッッ!!!」



ズドォォォォォォォォォォンッ!!!



父と子の激突は、サードインパクトを引き起こした。



……

………

マヤ『いたた……ターミナルドグマは崩壊してしまいましたが──
   観客も選手も全員無事なようです……』

ケンスケ『今の人類はみんな格闘士(グラップラー)だからね。
     あれぐらい、どうってことないよ』

そして──

マヤ『ガレキの中で立っているのは──』

マヤ『…………』

マヤ『シンジ君ですッッッ!』



ゲンドウ「強くなったな……シンジ」

シンジ「父さんこそ……」



青葉「勝負ありィィィッッッ!!!」

サードインパクトで「いたた…」かよw

マヤ『決ッ……ちゃ~~~~~くッッッ!』

マヤ『サードインパクトを起こしながらも、
   ターミナルドグマ最大トーナメント全試合、全て終了いたしました!』

マヤ『最大トーナメント優勝の栄冠に輝いたのは──
   弱冠14歳、ネルフの誇るサードチルドレン、碇シンジだァッッッ!』

マヤ『この偉業は、永久に格闘史で神話として語り継がれることになりましょう!』

マヤ『しかしながら、地上最強の16名が集まったこの最大トーナメント、
   全15試合、一つとして凡庸な試合はありませんッッッ!』

マヤ『全ての試合が大勝負ッ! 全ての試合が名試合ッ!』

マヤ『全ての選手が──イカしてましたァ~~~~~ッッッ!』

ワアァァァァァ……! ワアァァァァァ……! ワアァァァァァ……!

~ トーナメント表 ~

<Aブロック>

          ┏━  綾波レイ(ファーストチルドレン)
      ┌━┫
      │  └─  惣流・アスカ・ラングレー(セカンドチルドレン)
  ┏━┫
  ┃  ┃  ┌─  加持リョウジ(スパイ)
  ┃  ┗━┫
  ┃      ┗━  碇シンジ(サードチルドレン)
━┫

  │      ┌─  洞木ヒカリ(学級委員長)
  │  ┏━┫
  │  ┃  ┗━  葛城ミサト(ネルフ)
  └━┫
      │  ┌─  時田シロウ(日本重化学工業共同体)
      └━┫
          ┗━  サキエル(使徒)

<Bブロック>

          ┌─  渚カヲル(フィフスチルドレン)
      ┌━┫
      │  ┗━  初号機(エヴァンゲリオン) ⇒ 碇ユイ(コア)
  ┏━┫
  ┃  ┃  ┏━  碇ゲンドウ(ネルフ)
  ┃  ┗━┫
  ┃      └─  ペンペン(温泉ペンギン)
━┫

  │      ┌─  赤木リツコ(ネルフ)
  │  ┌━┫
  │  │  ┗━  鈴原トウジ(フォースチルドレン)
  └━┫
      ┃  ┌─  ゼルエル(使徒)
      ┗━┫
          ┗━  キール・ローレンツ(ゼーレ)


<決勝>

  ┏━  碇シンジ(サードチルドレン)
━┫
  └─  碇ゲンドウ(ネルフ)

………

……



シンジ「終わったんだな……全て」

シンジ「母さんが帰ってきて、父さんと戦って……なんだか夢みたいだ」

シンジ「観客も選手もみんな引き上げちゃったし……ぼくもそろそろ帰ろうかな」ザッ

すると──

アスカ「なにチンタラやってたのよ、バカシンジ!」

シンジ「アスカ……まだこんなところにいたの?」

アスカ「あんたバカァ? みんな、あんたを待ってたのよ!」

シンジ「え……ッッ」

     「遅ぇぞ、チャンプッッッ!!!」

レイ「おめでとう」パチパチ…

アスカ「おめでとう!」パチパチ…

加持「おめでとう!」パチパチ…

ヒカリ「おめでとう!」パチパチ…

ミサト「おめでとう!」パチパチ…

時田「おめでとう!」パチパチ…

サキエル≪おめでとう!≫パチパチ…

カヲル「おめでとう」パチパチ…

ペンペン「クエェッ!」

リツコ「おめでとう」パチパチ…

おめでとう

おめでとう!

トウジ「おめでとさん!」パチパチ…

ゼルエル≪おめでとう≫パチパチ…

キール「めでたいものだ」

日向「おめでとう!」パチパチ…

青葉「おめでとう!」パチパチ…

ケンスケ「めでたいな」パチパチ…

マヤ「おめでとう!」パチパチ…

冬月「おめでとう」パチパチ…

ゲンドウ&ユイ「おめでとう!」



シンジ「みんな……ありがとう!」

シンジ「ぼく……もっと強くなりますッッッ!」

父に、左フック。

母に、右ストレート。

全ての格闘士に、アリガトォォォ~~~~~ッッッ!!!

マックシンジだァッッ!!!

シンジとゲンドウが引き起こしたサードインパクトの影響で、
地軸は元に戻り、なぜか南極も復活し、地球はめでたく以前の状態になった。

集まった選手たちもまた各地に散り、再び修業の日々へと戻るのだった。



<碇家>

ゲンドウ「邪ッッッ!」
ユイ「初ッッッ!」

ドズゥッ! メキィッ! バキャッ! ドゴォッ! ズガァッ!

シンジ(父さんと母さんとぼくで一緒に暮らすようになったのはいいけど──
    毎日ファイトしてて、うるさくってしょうがない……)

シンジ「父さん、母さん、学校に行ってくるね」

ゲンドウ「ああ」

ユイ「シンジ、気をつけるのよ」

シンジ「うん」

<第壱中学校>

ワイワイ…… ガヤガヤ……

「トーナメントで優勝したんだって!?」 「スッゴ~イ」 「学校の誇りよね~!」

シンジ「いやぁ、ぼくなんか……」

アスカ「バカシンジ、トーナメント優勝ぐらいで調子に乗るんじゃないわよ!」

シンジ「調子になんか乗ってないよ」
   (医務室でノックアウトされた借りはいつか返すよ、アスカ)

トウジ「しっかし、シンジに勝てる奴なんて、もうどこにもおらへんやろうな」

ケンスケ「そりゃそうさ、あの大会で優勝したんだもん。今や地上最強だよ」

ヒカリ「大会での碇君、すごかったものね~」

レイ「…………」

ガラッ……!

老教師「皆さん、授業を始めますよ」

「先生!」 「碇君、最大トーナメントで優勝したんですよ!」 「スゴイでしょ!」

老教師「ほぉ、それはすごいですね」

最凶使途編

老教師「碇君、ちょっと私と立ち合ってもらえませんか?」

シンジ「かまいませんけど……」ザッ
   (悪いけど先生とじゃ勝負にならない……。怪我させないようにしないと……)

老教師「ちょいなッ」ヒュッ

ズンッ……!

シンジ「うぅ……っ!」ドサァッ

老教師の突きで、シンジは失神した。

アスカ「えぇ~~~~~ッッッ!?」

トウジ「ウソやろ……!?」

ケンスケ「あのシンジがあっさりと……!」

ヒカリ「そんな……!」

レイ「…………ッッ!」

老教師「油断大敵というやつですね。いい授業になったでしょう」ニコッ

世界にはとてつもない強さの格闘士(グラップラー)がまだまだいるのである!
チルドレンの戦いは終わらないッッッ!

                                      終劇

俺「>>1乙う」パチパチ

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