モバP「アイドルに男の怖さを思い知らせてやる!」 (71)

前スレ:モバP「最近、アイドルたちになめられてる気がするんです……」
モバP「最近、アイドルたちになめられてる気がするんです……」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387770767/)

前回のあらすじ:最近アイドルになめられてるから大人らしさを見せつけて威厳を正そうとしたけど失敗したよ!

あと及川さんおめでとう!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1389509508

モバP「さて、皆さんに集まってもらったのですが、きっと理由は理解していただいているものと思います」

雫「?」

沙理奈「?」

早苗「?」

モバP「なん……だと……?」

ちひろ「あの、プロデューサーさん、これは何の会議なんです?」

モバP「……私はここ数日、私の担当するアイドル達3人にある試験を行いました。それは、皆さんが、異性や異性のアプローチに対してどれだけ警戒心を持っているか、というものです。結果は実に由々しき事態と言わざるをえない!」

ちひろ「異性への警戒心……? あ、もしかして、それって……」

モバP「はい。ちひろさんからアドバイスしてもらった奴です。それでですが――」

ちひろ「本気でやったんですか、あれ!? 私ちゃんと止めましたよね!?」

モバP「え? 後押ししてくれませんでした?」

ちひろ「何言ってるんですか? ……あっ」

ちひろ(もしかして……)

―1週間ちょっと前―

参照:前スレ最後

モバP「やってやりますよ! 手始めにキス迫るフリでもしましょうかね!?」

ちひろ「プロデューサーさん!? そんな、わざわざ自分からカモがネギ背負うような真似しなくても……!」

モバP「はっはっは。ちひろさんって、たまによくわからないこと言いますよね」

ちひろ「もう、人が心配してるのに――」

モバP「それじゃ、行ってきます!」スタスタ

ちひろ「プロデューサーさん!? まさか今やるんですか、ここ事務所ですよ、正気ですか!? プロデュ、ちょ、え」

ちひろ(アカン)

ちひろ(え、これどうするの? 修羅場? 事務所崩壊? え? え?)←混乱中

―数分後―

ちひろ「……ハッ、そうだ止めなきゃ!」

モバP「……」トボトボ

ちひろ「あっ、プロデューサーさん、早まったことは――」

モバP「」

ちひろ(目が死んでる……)

モバP「ああ、ちひろさん……ちょっと聞いてください……。そこに雫がいたので……どんなもんかな、って試してみて……」

ちひろ「はあ……雫ちゃん、ですか? あっ」

モバP「背伸びしなきゃ届かな……いや、もしかして背伸びしても……? いやそんな、ねぇ、まるで女の子みたいな……。はは、女の子が勇気出して背伸びして目閉じてー的な……。ハハ、そんな、まさかねえ……ハハッ」←“自称”165cm

ちひろ(Oh……)


※参考
及川雫(16)170cm56kg 105-64-92
松本紗理奈(22)165cm48kg 92-58-85
片桐早苗(28)152cm47kg 92-58-84


ちひろ「……プロデューサーさん、やっぱり165cmは無謀すぎますよ……?」

ちひろ(皆サバ読んでるのは気付いてるっていうか、そもそも並んで歩いたら早苗さんとそう変わらないし……)

モバP「……165cmって言っとけば、サバ読んでるってバレても160cmくらいには思ってくれるかなって……」

ちひろ(姑息すぎる……)

モバP「やっぱり、俺には無理だったのかな……。前のもなんか失敗したし……」

ちひろ「……プロデューサーさん、あんまり落ち込んじゃいけませんよ。ほら、このドリンク飲んで」

モバP「ありがとうございます……おいくらです?」

ちひろ「プロデューサーさんはいつも頑張ってらっしゃいますから、これはサービスですっ」

モバP「いつになく天使ですね、ちひろさん……。ゴクゴク、そうですね、確かに元気が無いのはいけません」

ちひろ「そうですよ、元気が一番です!」

モバP「全くです。よーし、切り替えました! 今日も一日、頑張りましょう! ファイトー!」

ちひろ・モバP「もぉー!」

モバP「やってやりますよ、ちひろさん! 俺は諦めませんよー!」

ちひろ「その意気です! ……ん?」

モバP「どうしました?」

ちひろ「……んー、いえ、多分気のせいです。なにか引っかかったような気がするんですけど……」

モバP「まあ、大事なことならそのうち思い出しますよ」

ちひろ「そうですね……あれー?」

モバP「しかし“男の怖さ”か……。思い知らせるっていっても、正直よく分からんな。具体的にどういうのなのか……ん?」

ラック>雑誌『こんな男に気をつけろ! 要注意系男子特集!』

モバP(これだ!)ガッシ

モバP「……」ペラッ ペラッ

―十数分後―

モバP「……」パタン

モバP「ふむ。なるほど、奥が深い……が」

モバP(つまり、ここに書いてあるとおりに振る舞えば、それがすなわち要注意人物ということ……! これによって彼女らの異性への警戒レベルも分かるだろう!)

モバP「待ってろよ……フフフ」



沙理奈「プロデューサーはナニしてんの?」←遠巻き

早苗「さあ? 雑誌読んでるみたいだけど……」←遠巻き

雫「なんだか楽しそうですねー」←遠巻き

モバP「ククク……」←気付いてない

ちひろ「ウーン……」←考え中

――
ちひろ(あの時引っかかってたのってまさか……)

モバP「ちひろさん?」

ちひろ「……わかりました。私にも責任の一端があります。なので、皆さんとどういうことになったのか教えて下さい。そうじゃないと判断しかねますから、色々と」

モバP「アッハイ、なんかデジャブ……あ、いえ、わかりました。まずは雫ですね。雫は――」

雫「あの、なんだか恥ずかしいんですけどー……」モジモジ

ちひろ「ごめんね、ちょっと我慢してくれる? はい、続きをどうぞ」

モバP「はい……6日前のことです……」

言うの忘れてた。回想は地の文ありの予定。読みにくかったらやめる

―6日前・岩手=雫の実家―

雫「お疲れさまです、Pさんー。暖を取って、休憩しましょー。ふぅー、ちょっと汗かいちゃいましたー」

椅子に腰掛け、雫は上着を脱いだ。ストーブに手をかざす雫を、モバPは一瞬、直視できなかった。

モバP「……」

雫「……? どうかしましたか、Pさんー?」

汗でしっとりと濡れたシャツが肌に張り付き、雫の豊かで肉感的な体のラインがくっきりと浮き出てしまって、思わず目のやり場に困ってしまった。

モバP「……なんでもない」

雫「そうですか……? あー、シャツもびしょびしょで、もー絞れちゃいますねー」

ぎゅうっ、と雫はシャツを絞った。ただでさえ零れ落ちんとするそれが、両腕に挟まれてさらに激しくたわみ、形を変える。ほら、こんなにも、といって無邪気にほほえむ雫の笑顔があまりに眩しい。

モバP「……はぁ……」

雫「……やっぱり、さっきからこっちを見てくれないですねー。椅子にも掛けませんしー。外に何かありましたー?」

モバP「いや……」

さらに、ため息をひとつ吐く。雫が不安げに、ほんの少し眉尻を下げるのを見て、慌てて話をそらすことにした。

モバP(無防備すぎるんだよなあ、雫は……)

モバP「……ロケ先が偶然雫の実家の近くだったから寄ってみたら、まさか雪かきすることになるとはな」

雫「あー、すみませーん、雪かき手伝ってもらっちゃって……」

モバP「いや、いい経験になったよ。雪の降る土地に住んだことなかったからなあ。知識として知ってるのと、実際の体験するのとではやっぱり違うな。雪国は大変だ……」

雫「そうですねー。冬はちゃんと毎日雪かきしないと、牛舎の雪が落ちてきて牛さんが困っちゃいますからー」

モバP「……あんまり役に立てなくてごめんな」

モバPは雪かき中、何度も雪にはまってしまったのだった。そのたびに雫に抱え上げてもらったので、特に雫には大きな迷惑をかけてしまっていた。周囲に笑いが起き、囃し立てられるたび、申し訳なさで立つ瀬がなかったものである。

雫「そんなことありませんよー、Pさんはたくさん頑張ってくれましたから、たくさん助かりましたー。Pさんを見てると、私も元気が出るんですからー」

モバP「……ありがとう。雫は本当にいい子だな」

雫「わー、なんだか恥ずかしいですー……」

照れたように身を縮ませる雫を見て、少し心配になってしまった。

モバP(あんまりいい子だから、逆に男に対して警戒心が薄いのだろうか? ……あ、これもいい機会かもしれない。雫に男は狼だと教えてやらないとな)

しかし、雫の警戒心のなさは、裏を返せば、自分を信用してくれているということである。モバPが男の怖さを教えるということは、その信用を踏みにじるということを意味していた。モバPのやろうとしているのは、いわば鬼畜の所業であった。

モバP(心苦しいが、これも雫の将来のためだ……。いつ何時、そういうゲスが現れないとも限らないからな……。よし。あの雑誌には確かこうあったな……)

モバP「……」ナデナデ

雫「あっ……Pさん……?」

『こんな男に気をつけろ!:①スキンシップの激しい男』

『特に髪を触ってくる男は要注意!』

モバP(確かに、突然人の頭に触ってくる奴は神経どうかしているとしか思えん。びっくりするとか以前にありえないよな。雫も年頃の女の子なんだから、髪を乱されたりするのも嫌だろうし……)

雫「……///」

モバP(うん?)

しばらく髪を撫で続けるが、雫は顔を真っ赤にして俯いてしまっている。きゅっと両手を膝の上で握って、モバPの手を振り払うような素振りはない。雫の髪は少し湿っているが、それも手に心地よく、指通りを遮るものは何もなかった。

モバP(……あ、ヤバイ、なんだこれ恥ずかしい)

辞めどきを見失って、自分の中の謎の羞恥心と戦っていると、雫が口を開いた。

雫「……なんだか小さい頃に戻ったみたいですー。最近は、頭をなでられることもなかったですから」

モバP「子供の頃は、よく親御さんにしてもらってたのか?」

雫「はいー。褒められる時はいつも、頭をなでたり、抱きしめてもらったりしてましたー。今でも抱きしめてもらったりはしますけど、大きくなってからは頭をなでてもらうことは少なくなりましたねー」

モバP「そうか……」

確かに、雫の頭をなでられるような人はそうそうおるまい、と思ったのは秘密である。思い返せば、モバP自身、雫の髪を撫でたのはこれが初めてであるように思う。

雫「だから、Pさんにしてもらって、今は少し嬉しいんですー」

モバP(雫もまだ16歳の女の子だ。しかも、親元を離れて寮に住まわせてるんだから、ちゃんと気を付けてやらなきゃいけなかったな……)

依然髪を撫で続けたまま、しばし反省する。未成年の子を預かる身として、しかるべき配慮を怠っていたと言わざるをえない。異性への免疫がないというか、恋愛やその手のものに恐ろしく疎い様子を見せる雫のことである、より注意して、ちゃんと見てやらなければいけなかった。

モバP(そういえば、雫自身、放し飼いよりもちゃんと見てもらいたい、って言っていたか……無自覚でも鋭いところがあるな)

Pさん、とそろそろと呼びかけてきた雫の声に、知らず沈んでいた意識を浮上させる。

雫「Pさん、あのー、1つお願いがあるんですけどー、いいですかー……?」

モバP「どうした? 俺にできることならいいぞ」

あのー、だの、うー、だのと雫は言いよどんでいたが、ようやく意を決したのか、パッと顔を上げた。

雫「……私がお仕事で頑張ったら、また今回みたいに頭をなでてもらってもいいですかー?」

モバP「雫はいつも一生懸命頑張ってくれてるだろう。だから、俺で良ければいつでもいいよ」

するり、と髪を撫でていた手を雫の頬に当てる。その手に、雫はそっと自分の手を添えて、しばらくモバPを見つめると、とろけるように微笑んだ。

雫「……ありがとうございますー、Pさん……あの、もぉーっとくっつきませんかー? 一緒に暖まりましょー♪」

はいはい、と椅子を雫の隣に運んで座ると、雫が腕を抱え込んできた。毎度ながら安心するような暖かさと、骨抜きにされてしまいそうな柔らかさに驚く。身長差相応に座高も違うので、自然、モバPは雫にもたれかかる体勢になってしまうが、それも、最近は悪くない、と思うようになっていた。

雫「Pさんは冬が大変だって言いましたけど、いいことだってありますよー。寒いからこそ、暖かさのありがたみが分かりますー。生きてるって感じがしますよねー。Pさん、こういう、素朴な暮らしもいいなって思いますかー?」

モバP「そうだな。それもいいなあ……しばらくは無理そうだけど」

雫「そうですねー。私も、もうしばらくはアイドルとしてPさんと一緒にいたいですー」

モバPは、雫の言葉を、これからもアイドル活動を精一杯頑張る、という意味だと理解した。プロデューサー業を生業とするモバPにとって、それはとても喜ばしいものだった。そうであったので、雫がより強く体を押し付けてきても、それを咎めることはしなかった。

雫「うふふ、もぉー寒くないですね♪ Pさんと一緒なら、なんだってできるような気がしますー。Pさん、私の話を聞いてくれますかー? 私の事、もぉーっとたくさん知ってもらいたいんですー」

モバP「当たり前だろう、俺も知りたいよ。聞かせてくれるか?」

雫「はいー♪ Pさん、冬の牧場ではですね――」

――
モバP「……という感じでした。雫の話聞いてたらウトウトしちゃいまして、雫と一緒に居眠りしちゃったんですよね。いやあ、雫のご両親たちに見つかって、えらく恥をかきましたよ。あはは」

ちひろ「……」

モバP「あ、いえ、髪は触るわ体くっつけるわやりたい放題してまして、思い返すと、あの状態ならキスなりそれ以上なり、何とでもできました。まことに由々しきことでありまして……」

雫「あのー、私、Pさん以外の男の人にあんなことしませんよー?」

モバP「俺を信用してくれるのは嬉しいけど、いくら信用してるからって大人の男を相手にあんなに接近許したりしたらダメだ。危機感が足りないぞ?」

雫「でもー……」

早苗「……へえ、P君がそんなことをねぇ……」

沙理奈「ふうん……」

ちひろ「……とにかく、雫ちゃんについてはわかりました。次は誰です?」

モバP「……? なんか空気悪いですね……。はい、次は早苗さんです。4日前でしたかね……」

早苗「ああ、あの日ね」

モバP「はい。それでですが――」

及川さん編終了。早苗さん編は書き溜めてから、そのうち

投下始めます

―4日前・事務所―

ガチャリ

早苗「ふー、お仕事終了―♪ いやー、今日も疲れちゃったわー。よっ、こいっ、しょ、っとぉ~、ゔああ~」

モバP「お疲れみたいですね。まあ早苗さんはこの後オフですから、ゆっくり休んでください」

無人の事務所に帰って早々、ソファーに寝そべって奇声を上げる早苗さんに、デスクに腰掛けながら声をかける。確かに最近、彼女の疲れている様子を度々目撃していた。

モバP「ここのところ、ずっと体動かす系の仕事が多かったですからね」

早苗「そうねー、秋の運動会以来かしら? こう、体がどうしてもねぇ……って、誰がトシよ! あたしはまだピチピチの二十代よ!」

モバP「誰も何も言ってませんよ……」

がばっ、と起き上がって何者かに抗議する早苗さんをなだめる。思わず苦笑していると、あ、そうだ、と怒ったような顔が一転して、少し上目遣いをしてモバPを見た。

早苗「ちょっとP君、マッサージしてくれない? ヘンなトコロ触ったらシメるけど♪」

モバP「触りませんけど、わかりました。……あ」

モバP(そういえば、これは好機か? 前は肩揉んだり、床に寝た早苗さんをマッサージしたけど、ソファーだと……思い出せ、あの雑誌には、そう、確か……)

『こんな男に気をつけろ!:①スキンシップの激しい男』

モバP「よしきた」

早苗「P君? どうかした?」

モバP「ああいえ、ソファーの上でいいですよね? それじゃ、失礼して……」

早苗「え? ちょっ……」

モバP「いいですから、早苗さんは寝そべっちゃってください。適当に位置固定しますから……」

言いながら、うつ伏せの早苗さんを腿で挟むようにしてソファーに膝立ちする。慌てて起き上がろうとする早苗さんの背中を軽く押さえると、一呼吸してから、ふっと力が抜けた。

早苗「もうっ、仕方ないわねぇ……。でも、変なことしたらダメだからね!」

はい、と返事をしようとして、できなかった。早苗は大変スタイルが良い。つまりそれは豊かに満ち満ちているということであり、うつ伏せになると自然、行く場を失った胸のそれは左右に広がるのである。人体の神秘を目の当たりにして、モバPは言葉を失ったのだった。

モバP「……あ、はい、しません」

早苗「返事に心がこもってないんだけど……一体どこ見てたのかしらねー? 怒らないから、お姉さんに正直に話してみなさいよ♪ って、あん、いきなりはダメよっ、こらっ」

誤魔化すようにグイーっと背中を押す。叱ろうとする早苗はをあえて無視して、背中や腰、二の腕などを、時には押し、時には揉み、時には伸ばす。妙な所には手が触れないように気をつけつつ、反応が良い箇所を重点的に、ひたすら繰り返す。しばらくその作業を続けると、

早苗「あ゙あ゙あ゙……そこよそこぉ……」

だらしなく緩みきった声を上げ続ける生物の完成である。

早苗「いやー、たまんないわぁー! P君はホントにマッサージ上手よねぇ、ね、本気であたし専属のマッサージ師にならない? P君になら、どんなトコロ触られてもいいわよ? なんてねー♪」

モバP「それは、プロデューサー業に支障が出そうだから、っ、無理ですねー、っと」

モバP(マッサージって結構力使うんだよなあ……しんどい)

早苗「冗談よ☆ P君はホントにかわいーんだからー♪」

モバP(『かわいい』……だと?)

モバPは、実は『かわいい』がどんな意味なのか理解していない。というよりも、アイドルのプロデュースを通して、『かわいい』なるものがゲシュタルト崩壊していた。そもそも、疲れるのが嫌なのを糊塗しただけのことを、なぜ『かわいい』と呼ばれなければならないのか。モバPとしては理解し難かったし、何より不服であった。

モバP(大体俺は、『かっこいい』とか『男らしい』と言われたいのに……。やはり、STEP2に移行するしかないようだな!)

モバP「……早苗さん、俺達も結構、長い付き合いですよね」

早苗「ああ~……んん、そうだね、結構付き合い長いわねー。突然どうしたの?」

モバP「ずっと思ってたんですよね、早苗さんだけ『さん』付けだなって」

早苗「う、うん、まあ、歳上だしね、あたし」

モバP「だからですね……その……」

早苗「……うん」

モバP「『早苗』って呼んでも……いいですか?」

『こんな男に気をつけろ!:②馴れ馴れしい男』

『特に初対面で下の名前で呼んでくる男には要注意!』

モバP(……とあったから、間違いないはず……!)

早苗「あ、あはは、うん、まあ、いいんじゃないかな!? あたしのほうがお姉さんだけど、付き合い長いし、うん、まあ、ね? 関係ないわよね? あ、あはは!」

モバP「そ、そうですよね、いいですよね? あはは、ンンッ、それじゃあ、いいですか? あの……」

早苗「っ……」

モバP「『早苗』……」

早苗「……っ」

うつ伏せになっているので、早苗の表情はモバPからはわからないが、その耳が赤い。それは早苗の顔も赤いということで、つまりは照れているということだった。

モバP(あっ、ダメだこれ、超恥ずい)

顔に熱が上っていくのを止められない。そわそわと視線をさまよわせるが、そもそも早苗の上に膝立ちしているのである、逃げ場などあるはずがない。知らず止まっていた手が早苗の腰に触れている。手に触れる暖かさだけが、妙にリアルだった。

早苗「……あー、もう、歳上のお姉さんをこんなにからかうなんて、P君もいけない子ねっ、取り締まっちゃうわよ?」

モバP「からかってないですよ。ずっと思ってた、っていうのは本当です」

早苗「……っ、もうっ、とにかくダメなんだから! 全く……」

モバPの下から這い出て、早苗はその場に仁王立ちする。全く、ともう一度ため息を吐く早苗を見て、モバPはソファーに座り直した。余程腹に据えかねたのか、と観念していると、はたして早苗は言った。

早苗「……悪い子にはオシオキしないとね? ほら、もうちょっと向こう座って」

モバP「え? あ、はい」

押しやられるままにソファーの端に移動すると、よいしょ、と掛け声をかけて早苗も座り、モバPの膝に頭を乗せた。

いわゆる膝枕である。

早苗「バツとして、しばらくあたしに膝を貸すこと。文句ある? ていうか本当に細いわねー、ちゃんとご飯食べてるの?」

モバP「……文句はありませんけど、失礼なことをいう口は取り締まっちゃいますよ?」

早苗「いやーん、P君にタイホされちゃうっ。……うふふっ」

モバP「どうしました?」

早苗「いやねー、こうしてると、P君の顔がよく見えるなって。……そういえば、見上げるのは新鮮ね」

モバP「失礼極まりない……。そういえば、この前早苗さんに膝枕してもらった時は、顔見えませんでしたもんねぇ」

早苗「んー? セクハラ? シメちゃうわよ?」

モバP「何がですか? ……はて」

言い差しながら、すっかり両手が手持ち無沙汰になってしまったので、早苗の髪を撫でつけることにした。あ、と早苗は目を細めたが、特に何も言わなかった。

早苗「……あ、そういえば、もう『早苗』って呼んでくれないの? さっき『早苗さん』って呼んだけど」

モバP「早苗さんが怒ったんでしょう? もう呼びませんよ」

早苗「……別に、怒ってなんか無いわよ。ちょーっと恥ずかしかっただけで……だから、その……」

モバP「はい?」

早苗「だからっ、別に、呼んでくれてもいいわよ? その……あー、ドキドキしちゃうわぁー! 何よこれ!」

モバP「あっはっは」

早苗「笑い事じゃないわよ! 元はといえばP君が始めたんでしょ!?」

モバP「すいません……。でもまあ、俺も他の人に聞かれるのはなんか恥ずかしいですからねー。聞かれて、追求されるのも、ねえ」

早苗「じゃあ、あたしとP君、2人の時は『早苗』って呼んでくれる? それなら万事解決よ☆」

モバP「そこらが妥協点ですかね。……ん? なんか忘れてるような……」

早苗「よぉーし、それじゃあP君、ここでちょっと練習してみよっか? ちょうど二人っきりだし、ほら、ね?」

モバP「え? 今ですか? 今はちょっと、心の準備が……」

早苗「別に、さっきのはまだ許したわけじゃないのよ? だからほらっ、早く♪」

モバP「はぁ……仕方ないですねー……」

早苗「~♪」

その後、都合10回以上も名前を呼ばされたモバPだった。

――
モバP「という感じでした。その後、ちひろさんが帰ってきたわけです。……早苗さん? 顔隠してどうしました?」

早苗「いや……これは……予想外にクるわぁー……」

ちひろ「……二人っきりの時は、『早苗』って呼ばれてるんですね……」

早苗「いやぁ……それは、ね? ……てへ☆」

雫「なんでしょうねー、なんだか胸のあたりがモヤモヤしちゃいますー……」

沙理奈「……もしかして、これ、次アタシ? ……ふーん」

ちひろ(アカン)

ちひろ「っていうか、あの、プロデューサーさん、これって“男の怖さを思い知らせる”っていうのが目的でしたよね? 間違いないですよね?」

モバP「はい、そのとおりですが、それが……?」

ちひろ「……マジモノだったんですか……」ガクガク

モバP「ちひろさん、なんか引いてます? 引いてますよね?」

ちひろ「……いえ、こうなったら、最期までお付き合いしますよ……次は沙理奈さんの番ですよね? プロデューサーさん、よろしくお願いします……」

モバP「え……なんか怖いんですけど……いえ、わかりました。何か意味があるんですよね? はい、沙理奈は一昨日でしたね……」

早苗さん編終了。なんだこれ
松本さん編はそのうち

投下開始 ちょっと長くなったかも

-2日前・撮影スタジオ-

カメラマン「いいねー、その挑発するようなカオ! あ、ちょっと目線落として、そうそう、うわーたまんないねぇ……。それじゃあ今度は足組んで、上目遣い……あー、それヤバイわぁ~、ビンビンキちゃうってこれ、そうそうそうそう!」パシャパシャ

シャッター音が幾つも響き、テーブルの前に掛ける沙理奈がポーズをとる。どうやら予定通り、沙理奈のピンナップ撮影は始まっていたようだ。遅参は事前に申し合わせていたが、一応カメラマンには挨拶しておかなければなるまい。
と、沙理奈の方が先にモバPに気付いた。笑みが口元だけ、かすかに深まる。
嫌な予感がするモバPにちらりと一瞥をくれて、沙理奈はカメラマンに向き直り、胸元に指をかけた。

沙理奈「それじゃあ、こんなのはどーお? サービスサービスぅ☆」胸元グイッ

カメラマン「あっはー、マジサイッコーだわ沙理奈ちゃんは! あ、モバP君」

モバP「……、どうも、遅れまして申し訳ありません。今日はよろしくお願いします」

カメラマン「うんうん、よろしくー。いやーそれにしても、キミんとこの娘は皆すごいねー、もうたまんないわー。あっはっは」

一瞬言葉に詰まったのに気づかなかったのか、カメラマンは益体もないことを口走る。しかしむしろ問題は、イタズラの仕掛け人には察せられている点だった。何やってんだと目で叱るが、沙理奈は反省の色もなく、くすくすと笑っている。実に腹立たしい。

モバP「はは、そりゃ、ウチの自慢のアイドルですからね。たくさん撮ってやってください」

素知らぬ顔でそっぽを向いている沙理奈を横目に睨みながら、『自慢の』を強調して言ってやると、わずかに表情が綻んだ。

モバP(勝った……)

いやいや、撮影中に何をしているのだと苦笑するが、沙理奈も口に手をやって笑みを噛み殺しているので同罪である。後で反省会だ。

モバP「それじゃあ、私は企画さんと話してきますので、これで」

カメラマン「あ、うんうん、はいはい。さっきみたいな表情もイイねぇ~、もっぺんしてくれる?」パシャパシャ

沙理奈「えー、それよりぃ、こっちのほうがイイんじゃなぁい?」ムニュリ

カメラマン「おほー! 沙理奈ちゃんそれイイよイイ!」パシャパシャパシャ

もはやモバPを無視して写真を撮りまくるカメラマンを、これ以上邪魔するのは気が引けた。相変わらず過剰にエロスを振りまく沙理奈に軽く手を振って、企画のもとへ向かう。
言葉に詰まった理由が、カメラマンの馴れ馴れしい『沙理奈ちゃん』呼びにもあったのは、反省会でも言わないでおこうと決めた。


企画者と、紙面の構成や使う写真のイメージなどについて、もう一度打ち合わせる。この企画はご贔屓さんであるため、話がスムーズに運んだ。ほとんど確認事項だけで済み、ほっと息をついていると、声をかけられた。

見れば、どこぞの事務所の、なんとやらというアイドルであった。企画の言によれば、別のスタジオで撮影をしていて、沙理奈の撮影を聞きつけてやって来たらしい。全くの初対面であるにもかかわらず、わざわざ挨拶に来るとは見上げた根性である。そのアイドル何某は、謳い文句通りの豊かな胸を揺らしながら勝手に喋り出した。

いわく、モバPはかなりの敏腕プロデューサーだと聞いている。
そんな人とこんなところで出会えたのは運命に違いない。
ついては連絡先を交換しないか、親睦を深めるために一緒に食事にでも行かないか。
わたしは今よりもっと活躍したいので、『イロイロと』助けてくれると嬉しい、エトセトラエトセトラ。

などと、アイドル氏は次々に表情を変えながら、なんとも大げさな身振り手振りで喋り続ける。甲高い声を話半分に聞き流しながら周囲をそれとなく確認するが、事務所関係者と思しき人影はない。
あまりのわかりやすさにため息が出た。

へー、そうなんだ、大変だねーなどと生返事をしながら横目で企画を見ると、企画は輝くような笑顔でどこかに立ち去っていった。他人事だと思って、と内心憤慨するが、自分でどうにかするしかない。
さてどう処理するかと思案に暮れていると、アイドル何某越しから沙理奈がこちらに来るのが見えた。惚れ惚れするように美しい笑顔である。モバPは小さく息を吐いた。

ともあれ、一応助け舟は出してくれるらしい。まあこの程度、適当に合わせればいいだろう。

沙理奈「プロデューサー、打ち合わせは終わったの? こっちはちょっと休憩だから……って、どこ見てるの~? ウフフっ、視線は正直ね♪」

モバP「……そんな薄手の衣装で歩き回るな。風邪引いたらどうする?」

沙理奈「さっきまでアツぅ~い目でたくさん見られて、身体火照っちゃってるから大丈夫よん♪ それとも、プロデューサーが暖めてくれるの、カ・シ・ラ?」

自分の谷間を指差す沙理奈に大きなため息を吐いてみせて、椅子にかけていたコートを沙理奈に渡した。無駄な見栄を張って少し大きめのを買ってしまったので、沙理奈が着る分には問題なかろう。
沙理奈はボタンをきっちり留める。問題なかった。なにもなかった。

モバP「……」ジトー

沙理奈「? どうかしたの、プロデューサー? ……あっ」

モバP「言うな」フイッ


※特に必要のない参考
松本沙理奈:165cm
モバP:(自称)165cm


自分には大きいサイズの服を、自分より年下の女の子に着こなされていた。

モバP(いや別にいいし。俺の方から着ろって言ったわけだし。うん)

モバP「だから気になんかしないし……」

沙理奈「と、ところでプロデューサー」

おっと、つい素に戻ってしまった。反省反省、沙理奈の軌道修正に乗っからなければ。

沙理奈「アタシの撮影中に楽しくおしゃべりしてた、この娘はだぁれ?」ニッコリ

モバP(恐い)

沙理奈は怒るとむしろ笑顔になる。たしかに沙理奈には悪いことをしてしまったが、それは後だ。

モバP「ああ、余所の……いや、別のスタジオでグラビア撮ってたところを、わざわざ挨拶に来てくれてな。紹介します、うちの沙理奈です。松本沙理奈」

沙理奈「ヨロシク☆」

沙理奈のウインクに、アイドル氏は、はあ、としか返さない。沙理奈が登場してから、どこか気圧されているようだった。
やっぱりな、と思う。

モバP「大変申し訳ありませんが、私たちは少し楽屋に戻らないといけませんので。お話しできてよかった。失礼させていただきますね」ガタッ

沙理奈「あら、ナニするのかしらん♪ もしかして、フタリっきり?」

モバP「反省会だよ、二人でな。それでは」

あ、あの、と追いすがる声は聞かなかったことにした。さっさと歩いて十分に距離を取る。アイドル氏の姿が見えないことを確認して立ち止まる。

モバP「……ありがとう、沙理奈。助かった」

なぜか沙理奈の顔が見れない。なんだこれは。

沙理奈「この前のバーの時と逆になっちゃったね、プロデューサー?」

モバP「そういえば、そうだな……」

ふむ、と思う。どことなく気恥ずかしいのはそれか。どうしてもらおうかしらねー♪、などとうそぶく、沙理奈の得意げな顔が癪だ。少し反撃することにした。

モバP「それなら、今度はお前から俺の手をとってもらわないとな?」

そう言って右手を差し出すと、沙理奈は虚を衝かれたようだった。まさに会心である。意気揚々と歩き出したが、すぐに左手を握られた。見れば沙理奈で、身体をグイグイと押し付けてくる。沙理奈があんまり上機嫌なので振りほどくわけにもいかず、また自分から言い出したこともあり、そのまま楽屋に向かわざるを得なかった。


沙理奈「ふぅ~、なんだか、ちょっとアツくなっちゃった……」イソイソ

モバP「暖房は点けたが、まだ寒いだろう。ちゃんと着なさい」

沙理奈「だってぇ、ココロもカラダも溶けちゃいそうなんだもん。プロデューサーのせいよ? ウフフ♪」

楽屋に入って早々、沙理奈はボタンを半ばまで外し出す。沙理奈持ち前のボリュームが災いして、コートから胸元がせり出している。中に着こむ襟ぐりの深い衣装がさらに拍車をかける。しかも、コートの裾が腿くらいまであるので衣装がほとんど隠れてしまい、コートの下から生足が見えている状態でもある。
いかがわしいという言葉そのままだった。

しかしモバPは仮にも男である。いくら安全パイだと言っても限度があろう。男の腕力で、無理やりに襲われでもしたらどうするのだ、と心配になった。


※特に必要のない注
松本沙理奈:48kg
モバP:(自称)40kg台


モバP(やはり、沙理奈に対してもやらねばならないだろう……“男の怖さ”を思い知らせねばなるまい!)

ちょうど、今この楽屋にはモバPと沙理奈の二人だけ。しかも休憩中は、担当アイドルたちと話す機会を作るために余人を立ち入らせないようにしているので、邪魔が入る心配もない。まさに絶好の好機であった。

モバP(そういえば、楽屋までの道中、沙理奈に無理やり手を繋がせたな……あれも一種のボディタッチの強要だ。よし、この調子でいけば……!)

沙理奈「プロデューサー、早くこっち座ったら? なんなら、アタシのトナリでもいーよ☆」

今回用意された楽屋は畳張りだった。畳の上にしどけなく寝そべる沙理奈は、それだけで一つの絵になる。しかし紗理奈も、挑発するような言動を辞めないものだ。まさか乗るわけにもいかず、一方で過剰に拒否するのも情けないというジレンマである。今まで散々これで嬲られてきたが、今日のモバPは一味違う。

モバP(しかと見よ、俺の男気を!)

モバP「そうだな。じゃあちょっと上がるぞ」

言い置いて靴を脱ぎ、仰向けで上体を起こしている沙理奈の真横に陣取った。肌が触れ合うほどには近くもなく、手も届かないほどには遠くもない距離である。いつもは対面なので、さぞや驚くことだろうと期待したが、沙理奈はむしろ複雑そうな顔をした。

沙理奈「……今日はえらくノリが良いよね、プロデューサー? もしかしてぇ、何かヤマシイことでもあるのかしら?」

モバP「そりゃ大有りだが……ああ、そういえばちゃんと謝ってなかったな。あんなどうでもいい話を聞くために、お前の撮影を見なかったわけじゃないんだ。ごめんな」

沙理奈「どうでもいいって……何の話をしてたの? 逆ナン?」

モバP「枕営業か、それに類するもんだよ。事務所の意向なら、俺を通じてコネを得たい。そうじゃないなら、俺に拾い上げて欲しかったのか……。明らかに媚び媚びだったからなあ」

沙理奈の表情がわずかに暗くなる。いや、こんな話をしたいわけじゃないんだが……。

沙理奈「……ふうん。やっぱり有るのね、この業界って。やっぱりアタシにも?」

モバP「ありえないな。絶対させるもんか。……」

モバP(そういえば、あの雑誌にはこうもあったな……)

雑誌『こんな男は駄目だ!:①仕事の話ばっかりの男』

『自分のイイ所やカッコイイ所を見せようとして仕事の話ばっかりする男は、ただ自己顕示欲が強いだけ! さっさと違うヒトに乗り換えよう☆』

モバP(つまり自己顕示欲が強いのがいけないということだ。話がつまらなければ、なおよしか……よし)

モバP「沙理奈、いい機会だから言っておこうか。俺が枕なんかを絶対にしないしさせないのは、それが逆効果だからだ」

沙理奈「でも――」

モバP「聞け。本末転倒なんだよ、枕って。アイドルの条件は、人を惹き付けるかどうかだ。たとえば容姿、たとえばスタイル、ダンス、歌、声、あるいは言葉だったり、仕種一つだったりする。その内、なんでもいいから、人の琴線に触れればいいわけだ」

モバP「一度身体を売ってしまうと、意思とか自信とかプライドとかいう、それらを支える部分が損なわれるのさ。アイドルとしては致命的だ。大体、プロデュースする側の無能を担当アイドルに押し付けるのも気に食わん」

沙理奈「仕事を取ってくるには必要なんじゃないの?」

モバP「仕事を取ってくるのが俺の仕事だ。なめんな」

雑誌『こんな男は駄目だ!:②相手の言葉を否定してばっかりの男』

モバP(合わせ技……! もう俺プロだな、これ)フフン

モバP「それに、あの子をプロデュースしても意味無いしな。もうお前が居るわけだし」

沙理奈「……どういう意味? 場合によっては怒らなくちゃいけないけど?」

口元だけに笑みを湛えた沙理奈の、形の良い眉がピクリと動くのを見て、思わず苦笑してしまった。

モバP「比べ物にならないものを比べるてどうする。あの子に素質があって、それを磨いたとしても、路線的にはお前に近くなるだろう。なのにわざわざプロデュースするのは、俺にとっても、あの子にとっても意味が無い」

沙理奈「……もしかして、アタシ、今、べた褒めされてる?」

モバP「事実なんだが……まあいい。ま、そういうわけで、あの子をプロデュースすることはないな」

ふうん、と言った紗理奈は、いつもの試すようなそれに、ほんの少しだけシニカルなものをない混ぜにしたように笑った。

沙理奈「じゃあ、もしアタシよりも――」

モバP「ありえないな」

即答する。沙理奈が続けるであろう言葉は断じて容認出来ない内容である。自然、口調は厳しくなった。

モバP「お前より魅力的な娘などいない。いたとすれば、俺のプロデュースが悪いってことだから、俺の責任だな」

沙理奈「っ……」

モバP「足りないか? そうだな、たとえば、お前のスタイル、容姿、言動は、『もし身近にこんな女の子がいたら』という男の理想の一つだ。豊かな体付き、整った容姿に、イタズラめいた言動――そして、自分の魅力を理解した上で、それを曝け出すのに躊躇しない。お前は恐ろしく魅力に溢れている」

沙理奈「ちょ、ちょっと待ってっ」

珍しく酒以外で頬を染めた沙理奈を見て、最後の言葉を継いだ。

モバP「だから別に不安がることもない。沙理奈、俺がお前を、俺の意思で手放すことは絶対にないからな」

沙理奈「ちょ、ちょっと待ってっ」

珍しく酒以外で頬を染めた沙理奈を見て、最後の言葉を継いだ。

モバP「だから別に不安がることもない。沙理奈、俺がお前を、俺の意思で手放すことは絶対にないからな」

言い切ると、沙理奈はしばらくじっとモバPの顔を見つめた。

沙理奈「……早苗さんと雫ちゃんは?」

モバP「お前とは方向性が違うだろう」

馬鹿なことを訊くものだと笑ってやると、紗理奈も呆れたように笑った。しばらくお互いにくすくすと笑い合っていると、ねえ、と言葉をかけながら、床についていたモバPの手に、沙理奈は自分の手を重ねた。ぎょっとして沙理奈の方を向くと、目と鼻の先に沙理奈の顔があった。

思わずのけぞると、貧弱な我が腹筋は不可に耐え切れず、そのまま倒れこんでしまった。同時に沙理奈も、モバPに覆いかぶさる形になる。沙理奈の温かな吐息が顔にかかってくすぐったかった。

ねえ、ともう一度紗理奈は言った。

沙理奈「もしかして本当に、アタシが誰に対してもこんなコトしてると思ってる?」

モバP「いや。お前は誰彼構わず自分を安売りしないだろうと思ってる」

それこそ、信頼できる相手にしかしないだろう、と言うより先に、紗理奈は続ける。

沙理奈「アタシ、これでも純情なんだから。こんなの、プロデューサーがハジメテよ?」

そう言った紗理奈は、心底楽しそうに、しかしどこか切なさを感じさせるように微笑んだ。そして、ゆっくりと沙理奈の顔が動き――、

ピピピッという機械音。発信源はスーツのポケットだった。手に取るとそれは携帯であり、つまり休憩終了時間の20分が過ぎたということだ。

唐突に、身体に掛かった沙理奈の重みを感じる。無理に動いて沙理奈の身体を傷つけるわけにもいかないので、沙理奈にどくよう言った。紗理奈はなぜか諦めに満ちたようなため息を吐いて、モバPから身を起こした。

ふう、と息をつく。立ち上がったモバPには、曖昧な笑みを浮かべてコートのボタンを留める沙理奈に言うべきことがあった。

モバP「沙理奈、今日はもう時間がないから仕方がないが、その内今日の反省会の続きをするからな」

きょとんとする沙理奈に、意地悪く続けてやる。

モバP「油を売る相手を間違えたな。たっぷり絞ってやるから覚悟しておけ」

そう言うと、何故か沙理奈の機嫌が急激に良くなった。説教好きとはまたマイナーである。フフ、と常よりほんの少しだけ高い声で笑って、紗理奈はモバPを流し見た。

紗理奈「搾り取られるのはプロデューサーの方でしょ? 足腰も立たなくシちゃうわよ☆」

モバP「いや売ってきたのはお前だろう……まあいい、話は後だ。行くぞ」

はぁ~い、と返事をした紗理奈は、今度はモバPの腕にぎゅっとしがみついてきた。バランスを崩したモバPが離せと入っても、紗理奈は、

沙理奈「たまにはアタシが振り回すのもイイわよねえ~♪」

と笑うのみでまともに取り合わない。結局、沙理奈に引きずられるようにしてスタジオ入りする羽目になった。

――
モバP「……という有り様で。もうこれは、一度ちゃんと膝を交えて説教しなければならんな、と考えた次第です」

沙理奈「……あの時言ってた、“この続き”って、まさかこれ? ホントに?」

モバP「当たり前だろう。何のための反省会だと思っていたのだ」

早苗「へ~~ぇ、お姉さんに黙ってそんなことしてたの? ねえ、沙理奈ちゃん?」

沙理奈「いや、流石のアタシも、これはちょっと予想外だったわ……」

雫「Pさん、絞りたいなら、私の実家に来ませんかー? この前もたくさん絞ってくれましたし、お父さんたちも喜びますよー」

モバP「うん? ああ、たしかに(乳搾りは)あの時が初めてだっただったな。いやあ、あんなに(乳が)出るとは思わなかった。いい経験になったし、そのうち時間ができたら、な」

雫「はいー♪ 楽しみにしてますねー」

ちひろ「……説教が必要なのはプロデューサーさんの方ですね、これは」

モバP「えっ」

ちひろ「『えっ』って……え? まさか本気でわかってない……? いやいや、流石にそれは……」

モバP「? 何かしたかな……」ボソボソ

ちひろ「」

ちひろ(えー!? マジですかプロデューサーさん!? ひえー!)

モバP(なに言ってんですか、ちひろさん)

ちひろ(ナチュラルに脳内に……いえ、それは今は置いといて……)

ちひろ「プロデューサーさん、ずっと話に出てきてた雑誌ってどういう……」

モバP「ああ、あれですか。俺のバイブルですので、ちょうどここにありますよ。折り目付けてるんですぐに分かります。どうぞ」つ雑誌

ちひろ「はい、ありがとうございます……なになに? ふむふむ……あ。ああ……なろほど……」

モバP「何かわかりましたか?」

ちひろ「プロデューサーさん……これ、初対面用です……」

モバP「ああ、たしかにそうですが……それが何か?」

ちひろ「いや、だからですね……ここに書いてあることは、初対面の相手からされるからドン引きするのであって……」

早苗「あの、ちょっといい?」

モバP「あ、はい。ちひろさん、ちょっと待って下さいね。さっきから何か3人で話してましたけど、どうかしました?」

早苗「そのことなんだけどさあ……あたし達で“話し合い”しても仕方ないからさ、この後、P君も時間作ってくれないかな? ちょうどあたし達もオフなんだし」

沙理奈「まあ、雫ちゃんもいるから居酒屋ってわけにもいかないし、そもそも売れっ子アイドルが3人連れ立ってお店は居るのも目立つでしょ? だからどうしよっかなって」

雫「Pさん、どうしましょー?」

モバP「ああ、それもそうだな……。じゃあ、口の堅い、信頼できるトコがあるから、そこにしよう。その分高いが、まあ仕方ない、俺が持つから安心してくれ。それじゃ、行こうか」

早苗「え!? い、今から?」

モバP「まあ、今日しなきゃいけない仕事はないですし……ですよね、ちひろさん?」

ちひろ「え? はい、まあそうですけど……」

モバP「ということです。じゃあ、行儀が悪いがお前たちに時間とらすのも悪い、電話しながら行くかな」

ちひろ「……ハッ、あ、あの、プロデューサーさん、その“信頼できる”場所って――」

モバP「ああ、日頃何かと良くして頂いてるオーナーさんの『料亭』ですよ。言えば、ちゃんとした席を用意してくれるでしょうから。それじゃ、戸締まりとかよろしくおねがいしますねー」ガチャッ

ちひろ(『料亭』……『料亭』ってことは)

ポク ポク ポク チーン

ちひろ「ちょっ、プロデューサーさん、それはマズイですって、プロデューサーさん――」ガチャッ

モバP ヘイタクシー

タクシー キキーッ ガチャッ

モバP あ、『○○』っていう料亭までお願いします

タクシー バタン ブロロロロ

ちひろ「」

ちひろ「」


ちひろ「」


早苗「え!? い、今から?」

モバP「まあ、今日しなきゃいけない仕事はないですし……ですよね、ちひろさん?」

ちひろ「え? はい、まあそうですけど……」

モバP「ということです。じゃあ、行儀が悪いがお前たちに時間とらすのも悪い、電話しながら行くかな」

ちひろ「……ハッ、あ、あの、プロデューサーさん、その“信頼できる”場所って――」

モバP「ああ、日頃何かと良くして頂いてるオーナーさんの『料亭』ですよ。言えば、ちゃんとした席を用意してくれるでしょうから。それじゃ、戸締まりとかよろしくおねがいしますねー」ガチャッ

ちひろ(『料亭』……『料亭』ってことは)

ポク ポク ポク チーン

ちひろ「ちょっ、プロデューサーさん、それはマズイですって、プロデューサーさん――」ガチャッ

モバP ヘイタクシー

タクシー キキーッ ガチャッ

モバP あ、『○○』っていう料亭までお願いします

タクシー バタン ブロロロロ

ちひろ「」

ちひろ「」


ちひろ「」


早苗「え!? い、今から?」

モバP「まあ、今日しなきゃいけない仕事はないですし……ですよね、ちひろさん?」

ちひろ「え? はい、まあそうですけど……」

モバP「ということです。じゃあ、行儀が悪いがお前たちに時間とらすのも悪い、電話しながら行くかな」

ちひろ「……ハッ、あ、あの、プロデューサーさん、その“信頼できる”場所って――」

モバP「ああ、日頃何かと良くして頂いてるオーナーさんの『料亭』ですよ。言えば、ちゃんとした席を用意してくれるでしょうから。それじゃ、戸締まりとかよろしくおねがいしますねー」ガチャッ

ちひろ(『料亭』……『料亭』ってことは)

ポク ポク ポク チーン

ちひろ「ちょっ、プロデューサーさん、それはマズイですって、プロデューサーさん――」ガチャッ

モバP ヘイタクシー

タクシー キキーッ ガチャッ

モバP あ、『○○』っていう料亭までお願いします

タクシー バタン ブロロロロ

ちひろ「」

ちひろ「」


ちひろ「」


あれ、まさかの3連投 恥ずかしッ

これで終わり 疲れた……会話文だけで書ける人ってすごいな

あ、HTML申請しなきゃな……

全裸待機の方、今日も寒いし服着ろよ

次はふーみんが書きたいなあ

何度もごめん
HTML申請ってsage進行じゃないとダメなのかな ageちった 反省やわ

ざっと見直したけど、1行が長い時があるからかな?
PCで窓最大で見ると、ひたすら右の方まで行って左に改行されるから?


例えば俺だったら次のセリフはこうする

>モバP「ああ、日頃何かと良くして頂いてるオーナーさんの『料亭』ですよ。言えば、ちゃんとした席を用意してくれるでしょうから。それじゃ、戸締まりとかよろしくおねがいしますねー」ガチャッ


モバP「ああ、日頃何かと良くして頂いてるオーナーさんの『料亭』ですよ」

モバP「言えば、ちゃんとした席を用意してくれるでしょうから」

モバP「それじゃ、戸締まりとかよろしくおねがいしますねー」ガチャッ


句点で切れなくても程良い辺りで読点の代わりで行変えたりとかしてるな
実際に目がすべるって人の意見が聞きたいなぁ

>>67
あえて「滑る」ように読んだ上で意見するので、
「そんなこと言われても…」とか思わないでくれると嬉しい

・途中の読点(「、」)が多い
頭で読む時に躓くというかで時間がかかる
・一文が長い
先に読み進みたいのに進めない

結局スピード出して読みたいから
目の速度と頭で読む速度が合わないで、
結果的に目で読んでいるところに飛ばすことになって、
頭で読む文章は飛んじゃう

で、
・長い文を飛ばして短い文で読む速度に合うようにする
・短い文を飛ばして長い文で情報を得るようにする
という状態になる




たぶん

うむむむ……奥が深いな、ss

>>67
個人的には、同一発言者のセリフを切るのは、動作の切れ目の時にしたいなって思った
つまり、
>モバP「ああ、日頃何かと良くして頂いてるオーナーさんの『料亭』ですよ。言えば、ちゃんとした席を用意してくれるでしょうから」

(ここでドアに向かって進み、ドアのところでちひろに振り返るイメージ)

モバP「それじゃ、戸締まりとかよろしくおねがいしますねー」ガチャッ

って感じで。たしかにこっちのがスッキリするな


>>68
じっくり読めって言えるほど大した文章じゃないしなあ……

実は、説明的なセリフがギャグ以外では好かんから地の文入れたんだ
ほとんど生のままの情報になるまで削ろうとして、逆に一文が長くなっちゃった
一方で情報量は多いから、結果「目が滑る」のかな

悩ましいな……


ありがとう、今後なんか書く時は参考にする
ss用に適したスタイル見つけないとな

地の文は状況説明として補助的に使う予定だったんだけど、あんなに長くなるとダメな
上手い人はそんなんなくても状況わかるし

ぐぬぬ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom