小椋「榊原くん、今月のお友達料払ってよ」(83)

恒一「はい、2万円……」

小椋「確かに受け取ったわ」

恒一「これで今月も……」

小椋「分かってる。でも皆の前では話しかけないで」

恒一「……うん」

小椋「ところで次の日曜日、暇?」

恒一「え? 暇だけど……」

小椋「だよね。一緒に出かける友達もいなさそうだし」

恒一「酷い言われようだ……」

小椋「まあいっか。じゃあ日曜日、ちょっと付き合ってくれない?」

恒一「……買い物か何か?」

小椋「なんでもいいじゃない。勘繰るなら追加料金貰うから。断っても貰うけど」

恒一「えぇぇ……わ、分かったよ。行けばいいんだろ、行けばさ」

――――
――


恒一「……と、毎月お金を払ってこき使われるという、奴隷のような日々を送ってるんだけど……」

鳴「ひどい」

勅使河原「ああ、小椋のヤツ人間じゃねぇ! そんな女だとは思わなかったぜ……」

望月「月に2万も……お金はどうやって用意してるの?」

恒一「バイトでなんとかね。学校じゃ禁止されてるけどさ」

望月「ダメだよ、そんなの……そのバイト代もそんなに多くないんでしょ?」

恒一「まあ……4万くらいかな」

勅使河原「半分も持ってかれてるじゃねーか!」

恒一「あ、でも最初の月は『入会特典で無料』みたいな感じでタダにしてもらって……」

勅使河原「『もらって』じゃないだろ! なにしっかり飼い慣らされてんだよ!」

勅使河原「サカキ……友達料なんて無くても、今は俺達って友達がいるだろ? もう払うことないんだぜ」

鳴「そうね」

恒一「……でも、実はそう簡単な話じゃなくて」

勅使河原「あん?」

恒一「今日3人に相談に乗ってもらってるのはさ。実は、ここからが本題なんだけど」



恒一「僕が小椋さんを好きになってしまった場合は、どうすればいいんだろう」



勅使河原「えっ」

望月「えっ」

鳴「」

鳴「うそ……」

恒一「いや、本当なんだ」

勅使河原「……サカキ。お前、大量に金を貢がされた上に、好きになったって……」

望月「ドM?」

恒一「……そうかもしれない。好きな人との関係を壊したくなくて、やめたいなんて言えない……」

鳴「うそ、うそだ……」フラフラ

勅使河原「おい、見崎の精神状態がやべえ。屋上から飛び降りそうだぞ」

望月「そんなことより、どうして小椋さんを好きになったの?」

恒一「……どうしてだろう」

恒一「……結構最初から、かも」

望月「最初、っていうと」

恒一「転校してきたばかりの頃だよ。あの頃は、どうしても周りの空気に馴染めなくてさ」

勅使河原「まあ……そこは、俺達にも責任があるかもな……」

恒一「そこで小椋さんに『お友達料を払えば友達になってあげる』って言われて」

望月「なるほど。人の弱みにつけ込むのがうまいね、小椋さん」

鳴「その手があったか」

恒一「何度か話したり、一緒に出かけたりするうちに、気がついたら好きになってた」

望月「そっか……」

勅使河原「でもよ。それも小椋の策略じゃねぇか?」

恒一「え?」

勅使河原「きっとそうやって小椋から離れられなくして、これからも貢がせるつもりなんだよ!」

望月「……残念だけど、その可能性は否定できないね」

恒一「でも……」

望月「言いたいことは分かるよ。好きになった弱みもあるだろうし」

勅使河原「そうだ! サカキが小椋を嫌いになればいいんじゃねーか!?」

望月「それができないから榊原くんは困ってるんだよ……」

恒一「…………」

望月「……とりあえず、どの程度酷くこき使われてるのか知りたいよね」

鳴「うん」コクコク

恒一「どの程度、って」

望月「さっきの話の続きしてみてよ。日曜日に出かけた話」

恒一「ああ……あれの続きっていうと……」

――
――――


小椋「……遅い」

恒一「ごめん……」

小椋「日が照り付けるこの暑い中、30分も女を待たせるなんて最低だと思わないの?」

恒一「そ、そうなんだけど。待ち合わせの30分前に来たら、まさか倍も早く来てるとは……」

小椋「……ふぅん、言い訳するんだ」

恒一「お、遅れました! ごめんなさい!」

小椋「はぁ……」

小椋「次から気を付けてよね。はい」サッ

恒一「……え? な、なにこれ」

小椋「缶ジュース。東京は缶ジュースも売ってないド田舎なの?」

恒一「いや、そういうことじゃ……あ、ありがとう。汗だくだから助かるよ」

小椋「そう。飲むならさっさと飲んでね、時間もったいないから」

恒一「……どこに行くのかと思ったら、デパートか」

小椋「買いたい物があるの」

恒一「へぇ、なに買うの?」

小椋「言う必要ある?」

恒一「嫌なら言わなくていいよ」

小椋「…………下着」

恒一「えっ」

小椋「ランジェリーよ。ブラとパンツ」

恒一「……ご、ごめん」

小椋「榊原くんって、女に恥ずかしい言葉を言わせないと満足できない人?」

恒一「ごめんって……」

小椋「これどう?」

恒一「い、いいんじゃない?」フイッ

小椋「こっちは?」

恒一「似合ってると思うよ」フイッ

小椋「どこ見て言ってるの。ちゃんと見てよ」

恒一「無理、無理だって!」

小椋「これを着けてる私を想像して、どう思うかを言えばいいだけでしょ」

恒一「まず想像するのがハードル高いんだよ……」

小椋「ちょっと、それどういう意味? このブラは私の貧相な胸じゃみっともないってこと?」

恒一「そ、そんなこと思ってないって!」

小椋「……言っておくけど、これはさっきの罰。ちゃんと見て判断するまで許さない」

恒一「ええぇ……」

恒一「お、終わった……ついに災厄を乗り越えた……」

小椋「バカなこと言ってないで早く行くわよ」

恒一「…………」

小椋「もう午後だし、どこかでお昼にしたいわね」

恒一「そうだね。お腹も減ったし」

小椋「別に私は減ってないけど、一応お腹に何か入れて」

恒一「ファミレスでいい?」

小椋「……うん」

ファミレス――


小椋「榊原くん、奥に座って」

恒一「うん……うん?」

小椋「よっと」 ポフッ

恒一「小椋さん……ここ、テーブル席だよ」

小椋「見れば分かるけど」

恒一「……なんで横に座るの? 普通、対面じゃない?」

小椋「そう?」

恒一「しかも、腕が当たるくらいくっつく必要ある?」

小椋「でもこの方が一緒にメニュー選んだり、待ち時間に写メの見せ合いっことかできるじゃない」

恒一「ああ……そうか、それもそうだね」

小椋「でしょ。いいから早くメニュー取ってよ」

恒一「はいはい」

食事中。。

小椋「榊原くんのハンバーグ、おいしそうね」モグモグ

恒一「うん、おいしい」モグモグ

小椋「私のキャベツと交換しない?」

恒一「ハンバーグ定食のハンバーグと、エビフライ定食のキャベツを交換……厳しいなぁ」

小椋「全部欲しいなんて言ってないじゃない。一口だけでいいから」

恒一「ああ、そういうこと……はい、あーん」サッ

小椋「あーん」パクッ

恒一「どう?」

小椋「おいしい」モグモグ

恒一「良かった。もう一口いる?」サッ

小椋「あーん」パクッ

小椋「はい、エビフライ」サッ

恒一「……いいの?」

小椋「さすがにキャベツと交換させるほど鬼じゃないし。はい、あーん」

恒一「あーん……」

パクッ

恒一「!? 熱っっつぅぅぅぅぅ!?」

小椋「あははっ、ばーか」

恒一「み、水水水!!」ゴクゴク...

小椋「口を付けたらやたら熱かったから、ちょっと冷ましてから食べようと思って」

恒一「はぁ、はぁ……」

小椋「あははっ! おいしかった?」

恒一「味なんか分からなかったよ……」

30分後――


恒一「なんだかんだでお腹は膨れたね。でも、小椋さんにお金払ってもらっちゃって……」

小椋「いいの。夕食代も私が出すから」

恒一「いや、それは悪いって!」

小椋「どうせ、私のお金じゃないし」

恒一「え?」

小椋「……なんでもない。午後は映画に行こう」

恒一「映画って……この間も行かなかった?」

小椋「あれはアクション物だったけど、今日は恋愛物なの」

恒一「恋愛物かぁ。あまり観たことないかも」

小椋「途中で寝たら殴るからね」

恒一「寝ないって……」

上映後――


小椋「ヒック、グスッ……」

恒一「だ、大丈夫? はい、ハンカチ」

小椋「グズ……」ゴシゴシ

恒一「……でも、確かにいい映画だったよ。僕もウルッと来ちゃった」

小椋「でしょう……グス」

恒一「意外と涙もろいんだね」

小椋「おっ、大きなお世話よ……」

小椋「それより、ハンカチ……」

恒一「ああ、グシャグシャになっちゃったね。洗えばいいから気にしないで」

小椋「…………イヤ」

恒一「え?」

小椋「榊原くんに借りを作ったままっていうのがイヤ」

恒一「ええ!?」

小椋「……あ、そうだ。そのハンカチもダッサいし、私が新しいハンカチ買ってあげるわ」

恒一「い、いいよ! そんなの悪いって!」

小椋「あっそう。友達やめてもいいんだけど?」

恒一「そ……それは卑怯だろ……」

小椋「うーるーさーい。ほら、行くわよっ」

――――
――


恒一「って感じかな。あとは公園で散歩とかして、レストランで夕食食べて帰ってきたよ」

勅使河原「………………」

望月「………………」

鳴「死にたい」

恒一「え?」

勅使河原「……それって、あれだろ。デートだろ」

恒一「そんなわけないだろ。小椋さんは多分、僕のことを金ヅルくらいにしか……」

望月「いや……僕も勅使河原に同意するよ」

恒一「えぇ!?」

望月「どう考えても小椋さんは……というか、何で榊原くんがそれに気付かないのか不思議だよ」

望月「昼食代、夕食代、映画の料金、買い物代。あとはジュース代に、交通費も入るかな」

勅使河原「……いきなり何の話だ?」

望月「なんかさ。小椋さんが払ったお金って、合計したら2万円くらいになりそうじゃない?」

恒一「……どういうこと?」

望月「ああもう。だからね……小椋さんは君から貰った2万円を、そのまま君とのデート代に使ってるんだよ」

恒一「えっ……」

鳴「どうしてこんなことに……」

望月「榊原くん。バイトの給料額、小椋さんに言ったことある?」

恒一「あ、ある。というか、4万って言ったら『じゃあ半分の2万ね』って言われたんだ」

勅使河原「……あ、そういうことかよ」

望月「うん」

恒一「??」

望月「夫婦に例えると、旦那の稼ぎの半分は嫁の分で、そのお金を好きなことに使ってるだけだね……」

勅使河原「だよな。嫁にとって好きなことってのは、旦那とのデート……あれ、なんかすげーいい女に思えてきた」

望月「方法に問題があるから凄く良いってわけでもないけどね……」

恒一「小椋さんはいい女に決まってるだろ!」バンッ

勅使河原「わ、わかったわかった!」

鳴「そうだ。榊原くんを殺して私も死のう」

勅使河原「うわぁぁぁ、早まるな見崎!」

望月「これでデートが月1回で、毎回同じような流れだったら確定だよ。彼女も楽しんでるんだ」

恒一「デートかは分からないけど、一緒に出かけるのは月1回で、だいたい毎回映画や買い物かな」

望月「あ、そう……もう付き合えばいいのに……」

恒一「……でも、だからって小椋さんが僕のことを好きなんて……」

望月「じゃあ、確かめてみる?」

恒一「えっ……」

勅使河原「確かめるって……そんな方法あんのかよ?」

望月「うん。恒一くんが『ある言葉』を小椋さんに言って、彼女が必死になったら確実だよ」

恒一「ある言葉って?」

鳴「『お前を殺す』」

勅使河原「荒んでるな、見崎……」

放課後――


恒一「小椋さん」

小椋「……なに? 用事なら手短にお願い。話してるとこ、人に見られたくないし」



恒一「『もう、やめにしよう』」



小椋「…………え?」

恒一「それじゃ。数ヶ月だったけど、小椋さんが友達になってくれて――」

小椋「……ちょ、ちょちょっと待って! 待ってよ!」

恒一「?」

小椋「ええぇ、えっえっ? なに、やっ、やめにするって何!? もしかしてお友達料のこと!? ねぇ、ねぇ!?」

恒一「う、うん。やっぱりこういうのはよくないから」

小椋「だ……ダメ! そんなの絶対ダメ!!」

恒一「…………」

小椋「榊原くんはお友達料払わないとダメなの! ずっとあたしのお友達でいないとダメ!!
   なんで!? 何か足りないところあった!? お友達料高かった!? デートが平凡だった!?
   じゃあお金なんていらないし! デートも工夫するから! 可愛くなかったらもっと綺麗になる!
   榊原くんが望むならクラスの男とも話さない! お弁当も作るし掃除もするよ!?
   だから行かないで! あたしと一緒にいて! 榊原くんと一緒にいたいの!! 離れたくないの!!」


恒一(……え。なにこれ……)

恒一「う、うそだよ」

小椋「え…………」

恒一「ちょっとした冗談。ずっと友達でいてくれた小椋さんと離れるなんて言わないよ」

小椋「……そ、そう……悪い夢かと思った……」ホッ

恒一「あぁ、でもお友達料はそろそろ勘弁して欲しいんだ」

小椋「も、もうそんなのいらない! あたしは……」



恒一「こっ……恋人料なら喜んで払わせてもらうけど……」

小椋「……えっ……」

恒一「……あ、だめだこれ恥ずかしい……///」

小椋「さ……榊原くん。それって」

恒一「う、受け入れてくれるなら、恒一って呼んで欲しいんだけど……」

小椋「…………こっ、こういち、くん///」

恒一「うわ……なんか、むずがゆい///」

小椋「じ、自分で言わせて何言ってるのよぉ……///」

キャッキャ ウフフ...


勅使河原「おめでとう、サカキ」

望月「おめでとう、小椋さん」

鳴「……世界が滅びればいいのに」


終わり。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom