貴音「食べ物の恨みは恐ろしいのです」(116)

ガチャ

P「ただいま戻りましたー」

響「だからさっきからごめんって言ってるだろー!」

貴音「響、今回ばかりは私も簡単に許すわけにはまいりません」

響「じゃあどうすればいいんだよー!」

P「……」

小鳥「あ、プロデューサーさんお疲れ様です」

P「音無さん、いったい何があったんですか。あいつらが喧嘩なんて珍しい」

小鳥「それが、ついさっきこんなことが……」

ガチャ

響『ただいまー』

小鳥『あら、響ちゃんお帰りなさい』

響『あー、今日はいつもより疲れたぞー』グデー

小鳥『ふふっ、随分とハードなレッスンだったみたいね』

響『まあ自分は完璧だからなんてことなかったけどな!』

小鳥『そう? じゃあプロデューサーさんにもっと厳しくても大丈夫みたいって言っておこうかしら』

響『うぅ……そ、それはちょっと困るぞ……』アセアセ

小鳥(焦る響ちゃんもかわいいわあ)

響『……なんだかお腹空いてきちゃった。ぴよこ、何か食べるものないか?』

小鳥『そうねえ、確か給湯室の戸棚の中にカップラーメンがあったと思うわ』

響『給湯室だな!』タッ

小鳥『2種類あるんだけど1つは貴音ちゃんのだから……ってもういない!?』

小鳥『す、すぐに教えてあげないと!』

プルルルルルル

小鳥『ああ! こんなときに電話!?』ガチャ

小鳥『はい! お電話ありがとうございますこちら765プロでございます!』

―20分後―

小鳥『ああ、あれからお仕事の電話が立て続けにくるなんて……』

小鳥(こうなったら響ちゃんが貴音ちゃんのラーメンを選んでないことを祈るしかないわね……)

響『』ズルズル

小鳥(一心不乱にラーメンをすすっている。よっぽどお腹が空いてたのね)

小鳥(……あんな姿見てたらこっちまで何か食べたくなっちゃう)ゴクリ

響『ぴよこ、よだれ垂れてるぞ』

小鳥『ええっ!? み、見苦しいところを見せてしまったわね』

響『別に自分は気にしないけど。はい! ぴよこも一口食べていいぞ!』

小鳥『あ、あたしはいいわ! 仕事中だし!』

響『そんなこと言ってさっき食べたそうにしてたでしょ。いいから食べなよ!』

小鳥『うぅ、そ、それなら一口だけ……………………って違う! 違うわ!!』

響『!?』ビクッ

小鳥『響ちゃん! そのカップラーメンなんて書いてる!?』

響『え? えーと、長崎限定長崎ちゃんぽん……』

小鳥『』フラッ

響『ど、どうしたんだ?』

小鳥『終わった……』

小鳥『……いい? 響ちゃん、落ち着いて聞いてね?』

小鳥『そのカップラーメンは実は……』

ガチャ

貴音『ただいま戻りました』

小鳥『』

貴音『小鳥嬢? どうしたのですかそのような場所で固まって』

貴音『……なにやらよい香りがしますね。これは……そう、らぁめんの……』

響『お帰りー、貴音もカップメン食べる?』

貴音『おや、この香りの出所は響からでしたか。』

響『長崎ちゃんぽんって言うらしいんだけど、おいしいぞ!』

貴音『』

貴音『響、もう1度そのらぁめんの名前を言ってもらえませんか?』

響『え? 長崎ちゃんぽん。これがどうかしたのか?』

貴音『』

響『ど、どうしたんだ? 今日はなんかみんな変だぞ』

貴音『そ、そ、それは、それはそれはそれは……………………それは、わ、私のらぁめんです!!!』ズガガーン

響『』

小鳥「なんてことがありまして……」

P「あぁ……それはやっちゃいましたね」

小鳥「貴音ちゃんには響ちゃんに教えなかった私が悪いと言ったんですけど……」

P「聞く耳持たず、ということですか」

小鳥「はいぃ……」

P「……まあこれは様子を見ていきましょう」

P「あいつらならすぐに元通りになるでしょうし」

P「それで、さっきの話の中にあった仕事の電話の内容はなんだったんですか?」

小鳥「そ、それなんですが、実は響ちゃんと貴音ちゃんをよこしてほしいというオファーが1本……」

P「うーん……」

響「そんなに怒るんならふたにでも名前とか書いておけばいいだろ!」

貴音「書いてますよ。ほらこのように、容器の底に」

響「うぎゃー! そんなの分かるわけないぞ!」

貴音「では響は分かりやすく名前を書かなかった私が悪いと言うのですか?」

響「う、い、いや、それは……」ゴニョゴニョ

貴音「はて、よく聞こえませんが」

響「……そ、そうだ! 貴音が悪いんだぞ! 貴音がちゃんと管理をしてればこんなことにはならなかったんだ!」

響「悪いのは貴音だ! 自分は悪くないぞ!」

P(あ、あいつ開き直りやがった……)

小鳥(これはいけませんね……)

貴音「……響の言い分は分かりました。確かに私にも非はあるやもしれません」

響「……」

貴音「ですが今回だけではありません。響はつい先日も私の物を食べてしまいましたね」

響「うぅ……」

貴音「これで今月に入って4回目です。私が言うのもおかしな話ですが『仏の顔も三度』という言葉はご存知ですか?」

貴音「私でも何度もこのようなことが続くのは耐えかねます」

貴音「そもそも響には注意力が欠けています。先日の収録でも何回ミスをしていたことですか」

響「た、たかがラーメンぐらいでそこまで言わなくてもいいでしょ!」

貴音「……たかがらぁめん、されどらぁめん。食べ物のことを悪く言うのは響といえど許しませんよ?食べ物の恨みは恐ろしいのです」

響「」バンッ!

貴音「!」

響「ああもう! そんなにラーメンが大事ならラーメンと一緒に住めばいいだろ!」

響「とにかく自分はちゃんと謝ったからな! それ以上のことは知らないぞ!」
貴音「……響」

響「……自分今日はもう帰る。プロデューサー、ピヨコ、バイバイ!」

貴音「響、待つのです! 話はまだ……!」

小鳥「行っちゃいましたね……」

P「あの、音無さん、その収録日はどうなってますか?」

小鳥「ええと……い、1週間後です……」

P「ぬう……時間がありませんね……」

小鳥「は、早くなんとかしないと!」

P「……いや、本人達にまかせましょう。俺達が介入するのは最終手段ということで」





貴音「……」

P「貴音が珍しいな、あそこまで熱くなるなんて」

貴音「プロデューサー……いえ、響はあれぐらい言わなければ分からないのです」

P「まあ、こんな時になんだけどさ、来週お前と響でテレビの収録の仕事が入ったから。なんとかそれまでに仲直りしてくれよ」

貴音「…………はい」



小鳥「ぷ、プロデューサーさん。あんなのでいいんですかぁ?」ヒソヒソ

P「いいんですよ、あれぐらいで。こういうのは俺の経験上自分達で処理させるのが1番ですから。」

小鳥「うーん、でも……2人とも大丈夫かしら……」

―響の家―

響「もう! 貴音のやつ関係ないことにまで口出ししてきて!」

響「自分の仕事のことなんてほっといてほしいぞ!」

響「……」

響「でもやっぱり言い過ぎたかな……」



(♪~アナタノイデンシガヨンデル……!)



響「! 貴音!?」パカッ

響「……なんだプロデューサーだぞ。仕事のメールか……」

響「来週、貴音と、テレビの収録」

響「……うぅ、なんでこんなときにこんな仕事が入るんだ~」

響「明日からどんな顔して貴音と会えばいいんだよー!」

―翌日、事務所―

ガチャ

響「はいさい! おはようだぞ!」

貴音「……」

響「……!」

響「ピヨコ! プロデューサー! はいさい!」

P「おーっす」

小鳥「あら、響ちゃんおはよう」

響「……」

小鳥「ひ、響ちゃん? 貴音ちゃんにはあいさつしないの?」

響「……あ、あぁ、貴音いたんだな。気付かなかったぞ。お、おはよう」

貴音「……………………………………おはようございます」

響(うぎゃー! なにやってるんだ自分はー!)

P「……」

小鳥「うぅ……」

響(明日! 明日こそは絶対貴音と話すんだ!)



―数日後、事務所―

響「……」コソコソ

貴音「……」モグモグ

小鳥「プロデューサーさん、明後日にはもう収録ですよ!ホントに大丈夫なんですか!?」

P「……明日、明日になってもダメなら俺が仲裁に入ります」

小鳥「頼みますよ……?」

律子「プロデューサー」

P「ん? なんだ?」

律子「もうすぐ貴音の雑誌の取材の時間ですよ? そろそろ現場に向かわないと」

P「あ、俺別件の仕事が入っててさ。悪いけど律子が連れていってくれないか?」

律子「まったく仕方ないですね……その代わりそっちの仕事はバッチリ頼みますよ?」

P「はは、面目ない……」

律子「それじゃあ貴音、行くわよー」

貴音「はい……」

ガチャ バタム

P「さて、俺もそろそろ行きますね。小鳥さん、あとはよろしくお願いします」

小鳥「はい!頑張ってきてくださいね」カリカリ

ガチャ バタム

小鳥「……」カリカリ

響「……」

小鳥(き、気まずい……!)カリカリ

小鳥「……あら? ペンのインクが切れちゃったみたい。響ちゃん、あたしちょっとお買い物に行ってくるからお留守番頼めるかしら?」

響「え? あ、うん! まかせてよ!」

小鳥「それじゃよろしくね」

ガチャ バタム

響「……」

響「……今日も貴音に声掛けられなかったぞ……」

響「ただごめんって言えばいいだけなのに……ああもう! イライラするー!」ワシャワシャ

響「そういえば、貴音の方からも何も言ってこないし……も、もしかして自分嫌われちゃったのかな……」ジワッ

響「い、嫌だ! そんなの嫌だぞ!」

響「で、でも貴音に酷いこと言っちゃったししょうがないのかな……」

ガチャ

響「!」

伊織「ただいま……って響しかいないのね」

響「なんだ伊織か……」

伊織「なんだとはなによ。せっかくこのスーパーアイドル伊織ちゃんが帰ってきたって言うのに」

伊織「で、他のみんなは?」

響「ピヨコは買い物、プロデューサーが仕事、律子は……た、貴音の付き添いに行ってるぞ」

伊織「ふぅーん……?」ジッ

響「な、なんだ? 自分の顔そんなに見て」

伊織「……あんた涙目になってるわよ」

響「! き、気のせいだぞ!」ゴシゴシ

伊織「何かあったのならこの伊織ちゃんが話を聞いてあげるわよ?」

響「伊織に話すことなんて何もないぞ!」

伊織「あら、本当に?」

響「ないってば!」

伊織「……さてはあんた、貴音と喧嘩でもしたわね?」

響「うっ、し、してないよ! だから何もないって言ってるだろ!」

伊織「にひひっ、その反応を見ると図星みたいね」

響「うぅ……なんで分かったんだ……?」

伊織「私じゃなくてもあんたの今の顔見たら誰だって何かあったと思うわよ。ま、喧嘩の部分は勘だけどね」

響「今の自分の顔そんなにひどいか……?」

伊織「ひどいなんてもんじゃないわ。まるで世界の終わりみたいよ」

響「伊織には敵わないな……実は……」カクカクシカジカ

伊織「へぇー、そんなことがねぇ……」

伊織「……ま、あんたが悪いわね」

響「うぐ……やっぱりそう思う?」

伊織「当然よ! 名前を分かりやすく書かない方が悪いなんて逆ギレもいいとこよ」

響「返す言葉がないぞ……」

伊織「それで? まだ仲直りしてないの?」

響「う、うん……実は明後日貴音と収録があるんだけど……まだ……」

伊織「はあ!? なにやってんのよ!」

響「自分も早く謝らなくちゃーって思ってるんだけどいざ貴音を前にすると何も言えなくて……」

伊織「まったく……そんなウジウジしちゃってらしくないわねぇ」

響「……」

伊織「……私もよく兄さん達と喧嘩するけどね、すぐに仲直りするようにしてるわ」

伊織「だって毎日顔を合わせる人が暗い顔してたらこっちだって気分が落ち込むじゃない。それが好きな人なら尚更よ」

響「……」

伊織「……この事務所で貴音のことを1番知ってるのは誰? あんたしかいないでしょ」

伊織「あんただって貴音の本心に気付いてるんじゃないの?」

響「で、でもそのときも謝ったけど貴音は聞いてくれなかったんだ!」

伊織「そんなのどうせあんたも貴音もムキになってただけよ。もう一度、誠意をもって謝りなさい」

響「で、でも……」

伊織「さっきも言ったけど貴音のことを1番知ってるのはあんたよ。自分を信じれば大丈夫。何も心配する必要はないわ。私が保証する」

響「……」

伊織「……」

響「……うん、そうだ。伊織の言う通りだよ。心配する必要なんてないんだ」

響「そうだよ、自分と貴音のことさえ信じられればなんくるないさー!」

伊織「にひひっ、あんたらしさが戻ってきたわね!」

響「うん! ありがとう伊織! いつの間にか自分自身を見失ってたみたい!」

伊織「今のあんたいい顔してるわよ。やっぱりアイドル我那覇響はこうでなくっちゃ!」

響「そうとなったらすぐに行動しないと! 伊織、ありがとね!」ダッ

ガチャ バタム

ガチャ

小鳥「ど、どうしたの? 今すごい勢いで響ちゃんが飛び出していったけど」

伊織「さあね、ペットの餌でもあげ忘れてたんじゃない? にひひっ♪」

小鳥「???」

―同時刻、都内某所―

貴音「……」

律子「……」

律子「……貴音? どうしたのぼーっとして、最近変よ」

貴音「……そうですか?」

律子「ええ、取材にもあまり集中できてなかったみたいだし」

貴音「申し訳ございません……」

律子「……あんた響と喧嘩したんだって?」

貴音「……」

律子「小鳥さんから聞いたわよ。なんていうかあんたらしいっていうか……」

貴音「今思うと大人気なかったですね……」

律子「これに懲りたらもう事務所に食べ物は置いておかないことね」

貴音「はい……」

律子「明後日2人で収録あるんでしょ? 大丈夫なの?」

貴音「そのことなんですが……」

律子「?」

貴音「……私の代わりに美希に出てもらうことはできないのでしょうか」

律子「!? 無理よ! 無理無理ぜーったい無理!! だってあちらがあんた達2人をご指名なのよ!? それに収録の2日前になんて急すぎるわ……!」

貴音「そ、そこをなんとか……!」

律子「貴音、1回冷静になりなさい!」

貴音「……」

貴音「……今の私では響の魅力を引き出せることができないのです。それどころか顔を曇らせてしまう始末」

律子「……」

貴音「響の魅力は笑顔、私がいることでそれが損なわれてしまうのならば、私がその場から去るのが最善かと」

律子「……」

貴音「……いかがでしょうか律子嬢」

律子「……ふふっ」

貴音「? なにがおかしいのですか?」

律子「貴音、あなた本当に響のことが好きなのね。他人のためにそこまでするなんてありえないわ」

貴音「好き、ですか……?」

律子「ええ」

貴音「……確かにその通りかもしれません。あれから5日ほど経ちましたが、なにやら私の心に大きな穴が空いたような感覚が続いているのです」

律子「いつの間にか貴音にとって響はかけがえのない存在になっていたというわけね……」

貴音「どうやら、そのようですね」

律子「なら話は早いわね。その気持ちを率直にあの子にぶつけてあげればいいのよ」

貴音「それだけでよいのでしょうか……?」

律子「なに言ってんの、響の性格は貴音が1番よく知ってるでしょ? よくも悪くも響はとても素直。そんなあの子が貴音のそんな気持ちを聞いて黙っていられるわけがないじゃない」

律子「貴音は気付いてないかもしれないけどね、響もあんたのことが大好きなの」

律子「毎晩毎晩誰もいなくなった事務所であの子、1人で泣いてたのよ?」

律子「初めて聞いたときはホントに怖かったんだから。あぁ、今思い出してもゾクゾクするわ」ブルッ

貴音「なんと……響が1人で……」

律子「響って人に自分の弱気なところは絶対見せようとしないでしょ? だから、ね……」

貴音「響には大変申し訳ないことをしてしまったようですね……」

貴音「……律子嬢、ありがとうございました。あなたが教えてくださらなければ私は過ちに気付かぬままでした」

律子「……それより貴音、これからどうするの? 事務所に戻る?」

貴音「いえ、夜も更けて参りました故、今日は家へ帰らせていただきます」

律子「なら近くまで送っていくわよ」

貴音「いえ、結構です。なんだか今宵は月を見ながら帰りたい気分なので」

律子「そう……? ……じゃあ気をつけてね」

ブロロロロロロ……

貴音「……」

貴音「ふふっ、今宵の月はいつにも増して輝いて見えますね」

貴音「……」

貴音「……おや?」

貴音「おかしいですね、だんだん月が霞んで見えて参りました……」

貴音「……」

貴音「……響」

―響の家―

響「よいしょ……よいしょ……」

響「で、これをこうして、と……」

響「うん! こんな感じかな! あとは貴音をうまく呼び出して……」



(♪~アナタノイデンシガヨンデル……!)



響「ん? メール? 誰からだ?」

響「……」カコカコ

響「! 貴音……!」

『お話したいことがあります。明日事務所に早めに来てくださいませんか? 誰かが来る前に、そうですね……7時00分頃でいかがでしょうか?』

響「話したいこと? ……まさか!」


貴音『響、あなたにはもう付き合いきれません。私にはもう2度と声をかけることのないようお願いします。今までありがとうございました』


響「いや! 違う違う! さっき貴音を信じるって誓ったんだろ!」

響「よし! こっちだって呼び出そうと思ってたんだから!」カコカコ

響「それ! 送信!」ポチッ

―貴音の家―

貴音「響からの返事はまだでしょうか……」ソワソワ



(♪~メールガトドキマシタ)



貴音「!」バッ

貴音「……」

『自分も貴音に言わなくちゃいけないことがあるんだ。7時00分に事務所で待ってるぞ!』

貴音「ふふ……ふふふ……! 明日が楽しみになって参りましたね……!」

―翌日、事務所―

響(自分の気持ちを正直に伝えるんだ。そうすれば大丈夫……)ドキドキ

響(鍵は……)

ガチャ

響(空いてる……! 貴音、もう来てるのか)

貴音「響……!」

響「あ、た、貴音! あ、あの、その」

響「ご、ごめ 貴音「申し訳ございませんでした!」

響「え? な、なんで貴音が謝るんだよ!」

貴音「私、響の気持ちも考えずに辛く当たってしまいました……」

響「な、なんだ、そんなこと全然気にして」

貴音「嘘はやめてください!」

響「!」

貴音「あなたは毎晩夜が更けてから事務所で1人で泣いていたと聞きました」

響「ど、どうしてそのことを……!?」

貴音「律子嬢から聞きましたよ」

響「うぅ…………だ、だって! あれから貴音と話せなくなっちゃって……もしかしたら貴音がそのまま遠くへ行っちゃうんじゃないかって思って……そ、そしたらなんだか……グスッ……こ、怖くなっちゃって……グスッヒグッ ……う……うぅ……」

響「うえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

貴音「響……!」

響「うぅっ……うっ……うえぇ……」

貴音「……」ギュッ

響「! ……グスッ……た、貴音……?」

貴音「それほどまでに響に辛い思いをさせていたのですね……申し訳ございません……」ギュッ

響「そ、そんな……! 悪いのは自分で……!」

貴音「いえ、あなたの変化に気付けなかった私の罪は重いのです……」

貴音「もっと早くに気付いてさえいれば! 響はこのような思いをせずに済んだのに……!」

貴音「う……うぅ……」ポロポロ

響「ちょっ! た、貴音まで泣かないでよ!」

貴音「……それに恥ずかしながら、私も響がいない日々は虚しく、どこか満たされていなかったのです」

貴音「私もまた響を必要としていたようですね」

響「……な、なんか面と向かって言われると、は、恥ずかしいぞ」

貴音「わ、私もです。いざ本人に言ったとなると……あぁ、は、恥ずかしい……!」

響「……ぷっ、あはははははははははは! 貴音、顔真っ赤だぞ!」

貴音「響! か、からかうのはやめてください……!」

響「あはははは! でも、貴音は自分がいないとダメなんだってことは分かったぞ!」

貴音「ええ、私も決して遠くへは行きません。ずっとあなたの傍にいます。」

響「よし、それじゃあ! これからもよろしくな! 貴音!!」

貴音「こちらこそよろしくお願いしますね、響」

貴音「……? 入り口のドアが少し空いて……?」



P「……」ニヤニヤ

伊織「……」ニヤニヤ

律子「……」ニヤニヤ

小鳥「……」ニヨニヨ



貴音・響「」

響「な、な、なんなんだお前たちー! なんでこんな早くに来てるんだよー!」

P「いや、俺は仕事が溜まっててだな」

律子「私は伊織と朝からの仕事が」

小鳥「私は気まぐれで」

貴音「い、いつからいらしてたのですか?」

伊織「あんたたちが抱き合ってたとこからよ」

響「……な、な、な、なななななな」

小鳥「んもう、朝からいいものが拝めたわ~!」

響「うぎゃー!! なんなのもー!!!」

伊織「細かいことはいいじゃない! あんた達は仲直りできたことを喜んでればいいのよ!」

響「た、確かにそうかもしれないけど……なんか腑に落ちないぞ……」

律子「あら?響が持ってるのはなに?」

響「あ、そうだった! はい! 貴音にあげる!」

貴音「響……これは……?」

響「カップメン食べちゃった代わりにはならないけど自分、サーターアンダギー作ってきたんだ!」

貴音「貰っていいのですか?」

響「当たり前だぞ! ほら早速食べてみてよ!」

貴音「……」パクッ

貴音「! これは、真美味ですね……!」

響「でしょでしょ! 貴音の為に凝りに凝って作ったんだから!」

貴音「私の為に……」パクパク

響「そう! 貴音の為にだぞ!」


伊織「……なんかあいつら仲直りした途端に甘ったるい空気が広がったわね」

P「でも仲がいいに越したことはないだろ」

小鳥「そうですよね~」カシャカシャ

律子「小鳥さんいったいどこからカメラを……」

―数日後―

P(響と貴音の番組収録は大成功。2人の知名度も鰻登りだ!)

P(あれから2人はというと……)


響「はい! 貴音! 今日の分のサーターアンダギー!」

貴音「ありがとうございます。……ですが私のちゃんぽんの恨みを晴らすにはまだまだ足りませんよ?」パクパク

響「ちゃんと明日も作ってきてあげるよ!」

響「作るのも大変だけどさ、貴音の笑顔が見られるならそれくらいなんくるないさー!」

貴音「ふふふ、そんなこと言っても恨みは晴れませんよ?」パクパク

響「分かってるよー!」

響「まったく、食べ物の恨みは恐ろしいぞ!」


P(響も嬉しそうだし放っておこう……)


こんな時間まで見てくださった皆さんありがとうございました

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