奉太郎「千反田、オレと付き合ってくれ」(447)

える「……すみません。折木さんの思いには応えられません」

それ以降の言葉は全く頭に入ってこなかった。

正直、成功すると思っていた。

今までの千反田のオレに対する態度はなんだったのか?

単なるオレの勘違いだったのか?

やはりオレには灰色がお似合いだということなのか?
える「では……失礼します……」

千反田は身を翻えすと、そのまま行ってしまった。

下校中に告白したのが幸いだった。

告白したのもはじめて、振られたのもはじめてだった。

いったい何がいけなかったのか?

そのとき携帯が鳴った。

二年生になると同時に買い与えられたものだ。

相手は……里志……。

奉太郎「もしもし?」

里志「奉太郎かい? で、結果はどうだったのさ?」
そうだ。

里志に結果を連絡するという約束だった。

里志「今は千反田さんと二人? お邪魔だったかな? まあまた詳細をきかせてよ」

奉太郎「いや、その……」
里志「とうとうあの奉太郎にも彼女か~。しかも相手があの千反田さんなんてね~」

奉太郎「里志」

里志「ん? 何?」

奉太郎「振られた」

里志「え?」

奉太郎「千反田に振られた」

里志「そんな……」

奉太郎「今は一人にしてくれ……」

里志「……ごめん」

奉太郎「悪いな」

電話を切った。

里志も成功すると確信していたみたいだ。

思えば一年生のときに比べ、二年生になってから千反田が、オレに接触する回数が減った気がする。

時期を逃してしまったのだろうか?

他に好きな奴ができたのか?

それとも……

考えがまとまらない。

供恵「おかえり~」

奉太郎「ただいま……」

供恵「あら、いつもに増して元気ないわね? なんかあったの?」

奉太郎「なんでもない」

とにかく今は一人になりたい。

オレはそのまま自分の部屋のベッドに寝転がった。

勘のいい姉貴のことだ。

今頃、オレの身になにがあったかを察して、母さんに触れ回っているに違いない。

でも、今はそんなことどうでもいい。

朝がきた。

結局、昨日は何も食べずにそのまま寝てしまった。

供恵「奉太郎~、朝ご飯よ。気分でも悪いの~?」

学校に行く気が起きない。
しかし、オレが今日休めば千反田は自分のせいでオレが休んだと、自分を責めるだろう。

千反田はそういう奴だ。

奉太郎「今、行く」

千反田に余計な心配はさせたくない。

結局、いつも通りの時間帯に家を出た。

もし途中で千反田や里志に会ったら、オレはどういう顔をすればいいんだろうか。

それに朝会わなかったとしても、部活がある。

さすがに無断で休むわけにはいかない。

これからまだ1年以上、千反田と一緒に放課後を過ごさなくてはならない。

千反田はどうオレに接してくるのだろう?

オレは、これからどう千反田と接すれば良いのだろう?

登校中に千反田に会うことはなかった。

授業は頭に入ってこない。
放課後のことばかり考えてしまっていた。

しかし、どうしてもいい案が浮かんでこない。

そして、導き出された結論は退部だった。

そもそも、姉貴の頼みで古典部を消滅させないために入ったんだ。

オレがやめても少なくとも、千反田達がいる間は、部は存続するだろう。

どうせやめるなら無断欠席をしても関係ない。

そう考えたオレは無断で三日間部活を休んだ。

里志から電話があったが体調が悪いと言ってごまかした。

明日は退部届けをだそう。
そう決意して床についた。
あの日以来、千反田とはまだ顔をあわせてない。

授業を無難に終えた。

退部届けを郡山に出しにいかなければならない。

その途中、以外な人物に声をかけられた。

入須「折木君、ちょっと今いいか?」

入須と話したのはいつ以来だろうか。

オレは承諾すると、入須はオレを校外に連れていこうとした。

奉太郎「学校の外に出るんですか?」

入須「ああ、校外では人の目につく」

入須によって連れていかれた先は、映画製作のときと同じ店だった。

いったいここまで連れてきて、オレに何の用があるというのか?

入須「安心しろ。もちろん支払いは私がもつ」

奉太郎「はい……」

あのときと同じ座敷に通され、オレと入須は向かいあった。

注文をとった後、いくらかの沈黙が続いた。

奉太郎「あの、話というのは?」

入須「……」

奉太郎「入須先輩?」

入須「千反田えるに告白して振られたらしいな」

奉太郎「……そうですが」
まさか入須から千反田の名前が出るとか思わなかった。

話というのは千反田のことなのか?

入須「つまり折木君。君は千反田えるのことが好きだった」

奉太郎「はい」

入須「それで今はどうなんだ?」

奉太郎「今ですか……?」
入須はなにをオレに言わせようとしている?

奉太郎「もうあきらめました。やっぱりオレに恋愛は無理みたいです」

入須「そうか」

入須が茶を啜った。

入須「折木君」

奉太郎「はい」

入須「今ではもう千反田えるに未練はない。私はそう受け取ってもいいんだな?」

奉太郎「はい……」

オレがそう答えたあとは再び沈黙が訪れた。

入須の真意が全く分からない。

沈黙は時間にしてみれば、どれほどのものでもなかったと思うが、長く感じられた。

沈黙を破ったのは入須だった。

入須「折木君」

奉太郎「はい」

入須「私と付き合ってくれないか?」

耳を疑った。

奉太郎「え?」

入須「聞こえなかったか? ではもう一度言おう。私と付き合って欲しい」

奉太郎「先輩、またなにか企んでるんですか?」

入須の口元が少し緩んだ。
入須「ひどいな折木君。私の告白を君はそういう風にしか受け取ってくれないのか?」

奉太郎「……」

入須「折木君。私は君のことがずっと好きだった」

奉太郎「……」

入須「そう怪訝な顔をしないでくれ。私はずっと待っていたんだ」

奉太郎「待っていた?」

入須「そうだ。私は待っていた。君か、えるが告白して君達の関係が壊れるのを」

奉太郎「どういうことですか?」

入須「折木君がえるのことを好きなのを私は分かっていた。えるも君のことが好きだったようだ」

奉太郎「……」

入須「私も、相思相愛の君達の間に入っていく余地はないと思っていた」

奉太郎「でも、オレは千反田に振られました」

入須「そうだ。君は振られた。どうやら私の目に狂いがあったらしい」

奉太郎「……」

入須「私は君がえるに振られたことを聞いて決意した。折木君、君に告白しようと」

奉太郎「でも入須先輩ほどの人が、どうしてオレなんかに?」

入須は再び微笑した。

入須「折木君、君は自分を過小評価している。少なくとも、私が見てきた男の中で君は最も興味を惹かれる存在だ」

奉太郎「……」

入須「君は私を過大評価しているようだな。私は『女帝』などと呼ばれているみたいだが、現実には私だって失敗もするし、恋もする」

この1は分かってる

入須「では改めて言おう。折木君、私は君が好きだ。答えをきかせてくれ」

奉太郎「……」

入須「まだ私を疑っているのか? これは私の本心だ」

傾く夕日が入須を照らし出した。

艶のある髪に、端正な顔立ち。

千反田と系統は違うが、間違いなく学校内でも一、二を争う美人だ。

奉太郎「時間を……下さい」

入須の顔が少し曇った。

入須「まだ、えるに未練があるのか?」

奉太郎「そういうわけではありません」

入須「……」

奉太郎「本当にただ考える時間が欲しいだけです。それ以上の意味はありません」

不意に入須が立ち上がった。

入須は、オレと入須を隔てていたテーブルを回ってオレのそばで立ち止まった。
入須「折木君」

入須はしゃがんだ。

オレの身体と入須の身体が密着する。

入須は、オレの耳もとで小さな声で囁いた。

「いい返事を期待している」

入須の身体からはいい匂いがした。

先輩がえるに頼み込んで振ってもらった出来レースだとしたらまじで興奮

入須と共に店を出た。

今日はもう退部届けは出せそうにない。

オレは入須に別れを告げ、家に帰ることにした。

その間、入須の茶屋での言葉が何回も頭の中で反響した。

「いい返事を期待している」

入須は美人だ。

そこには疑う余地はない。
性格はシビアだが、悪い人物ではない。

このまま入須と付き合ってしまえばいいのではないだろうか?

入須と付き合えば、この虚無感も解消されるかもしれない。

家についてからも、頭の中は入須のことでいっぱいだった。

様々な考えが頭を駆け巡る。

どちらにしろ入須をあまり待たせるわけにもいかない。

結論は早く出さなければならない。

再び先程の茶屋での言葉が思い出される。

今、思い起こしても鳥肌がたった。

千反田と一年余り一緒にいてもなかったことだ。

確実に入須は千反田にはない魅力を持っている。

気付けば、午前二時を回っていた。

こんなに夜更かししたのはいつぶりだろう。

明日も早い。

結論は出た。

明日、入須に伝えよう。

千反田に振られてからはじめて、明日が早く来て欲しいと思った。

これほど放課後が待ち遠しかったのはいつぶりだろう。

オレは7限目が終わるとすぐに、入須が出て来るであろう門で入須を待ち伏せした。

まもなく入須が出て来た。
入須はオレの姿を確認すると、微笑を浮かべた。

奉太郎「入須先輩、お話したいことがあります」

入須「昨日のことか?」

奉太郎「はい」

オレ達は、再び昨日と同じ茶屋に入った。

入須は昨日とは違って、席につくとすぐに、本題に入った。

入須「それで折木君、私の告白を承諾してくれるのか?」

入須の顔には終始どこか微笑みが含まれていた。

自信の表れだろうか?

おそらくこの人は確信している。

自分の告白が断られるはずがないと。

オレはゆっくりと口を開いた。

奉太郎「すみません。オレは入須先輩の告白を受けるわけにはいきません」

入須の顔色が変わった。

入須「私のどこが気にいらない? 君が言ってくれるなら直す」

奉太郎「いえ、入須先輩に直して欲しいところはないです」

入須「で、では、私はどうしたら……」

明らかに入須は動揺していた。

これはなかなかレアなものだろう。

奉太郎「入須先輩。少し落ち着いてオレの話を聞いてくれませんか?」

入須「あ、ああ」

入須は動揺を隠そうとしているが、隠しきれていない。

オレは、わざとためてからその言葉を言った。

奉太郎「入須先輩、オレと付き合って下さい」

入須の表情が動揺から驚きに変わった。

目が見開かれるたのがその証拠だ。

入須「折木君、いったいどういうことだ? 私の告白を断っておいて、なぜ折木君から……」

奉太郎「男として筋を通したかった、というのが入須先輩の告白を断ってからオレが告白した理由の3割です」

入須「ではあとの7割は?」

奉太郎「入須先輩のその顔が見たかったからです」

入須「なっ」

奉太郎「これで映画製作のときのことは無しです」

入須の白い肌が紅潮していた。

赤面した入須を見た人間が世界でも何人いるだろう?

すみません

飯食べてきます

携帯からなるべく自分でも保守はしますが、支援していただけると光栄です。

飯食べ終わりました

再開します

入須に再び微笑が戻った。
入須「ふふふ、つまり私は折木君にしてやられたということか」

奉太郎「すみません」

入須「いいよ。私もあのときは申し訳なかったと思っている」

奉太郎「……」

入須「なんだ? まだなにかあるのか?」

奉太郎「いえ、その……まだ入須先輩の口からオレの告白に対する答えを聞いていないので」

入須「ああ、そうだったな」

入須はきちんと正座に座り直した。

入須「私も折木君のことが好きだ。これから末永くよろしく頼む」

深々と頭を下げて言った。

奉太郎「いえ、こちらこそよろしくお願いします」

入須「やめないか」

奉太郎「えっ?」

入須「もう私達は恋人同士だろ? 敬語は使わなくていい」

奉太郎「いきなりそう言われても……」

入須「あと『入須先輩』という呼び方はよそよそしいな……冬実でいい」

奉太郎「ふ、冬実ですか?」

入須「そうだ。私もこれから君のことを『奉太郎』と呼ぶ。それでいいか? 奉太郎?」

奉太郎「なんだか慣れないですね」

入須「ふふふ、また敬語を使っているぞ」

奉太郎「あっ、すみません。いや、あの、す、すまん」

入須「少しづつ慣れていけばいい。これからずっと一緒にいるんだからな」

オレの人生は薔薇色に変わった。

そう確信した。

そうだ。

古典部なんか最初からいらなかったのかもしれない。
冬実は三年生で医学部を目指しているため、会える時間は少ないかもしれない。
そう言っていたが、次の日曜日にデートすることが決まった。

オレにとっては人生ではじめてのデートだった。

日曜日。

オレは待ち合わせ場所に5分前に行った。

入須先輩はすでに居た。

入須「おはよう。奉太郎」
奉太郎「おはようございます。入須先……冬実」

私服の入須先輩はいつもにも増して優美だった。

奉太郎「……」

入須「奉太郎? まずはどこに行く?」

思わず見とれてしまっていた。

入須先輩とのデートは充実した時間だった。

入須「どうして取れない? 奉太郎、もう一回だ」

ユーフォーキャッチャーに向きになる入須先輩はかわいかった。


夕方の公園を二人で散歩する。

入須「奉太郎、今日はどうだった」

奉太郎「楽しかったです」
入須「そうか。良かった」
入須が微笑みを浮かべる。
ベンチに座った。

公園にはオレと入須以外に人の気配はない。

入須「私達……だけだな」
奉太郎「そうみたいですね」

入須が不意に目線をそらした。

入須「奉太郎、君は誰かとキスしたことはあるか?」
奉太郎「いえ……」

入須「そうか、私もだ」


入須「そんな顔をするな。私は女帝などと呼ばれているが、実際は普通の女の子だ」

奉太郎「は、はい」

入須が再び目線を合わせた。

入須「奉太郎」

奉太郎「はい」

入須「キスしてもいいか?」

奉太郎「はい」

身体が熱い。

顔が今、真っ赤になっているのが自分でも分かった。
入須が目を閉じる。

入須の唇に自分の唇を徐々に近づけていく。

後、50cm……30cm……10cm……5cm……



奉太郎「あっ」

声が出ていた。

姿を見たのはいつ以来だろう。

視界の隅にあいつが居た。
すでにこちらには、背を向けて走っていて、どんどん姿が小さくなっていく。

足が勝手に動いていた。

入須「奉太郎?」

奉太郎「すぐに戻ります」
すでにかなり距離が離れている。

絶対に見失ってはいけない。

全力疾走なぞ人生ではじめてかもしれない。

徐々に千反田との距離が迫っていく。

追い付いた。

オレは千反田の腕を掴んだ。

オレも千反田も息がきれていた。

奉太郎「どうして逃げる?」

える「……」

奉太郎「言ってくれないと分からない」

える「私、見ていられなかったんです」

奉太郎「見ていられなかった? 千反田はオレを振ったんだろ? どうして見ていられないんだ?」

える「では、どうして折木さんは入須さんと付き合っているのに、私を追いかけてきたりしたんですか!?」

千反田の大きな目からは、一筋の涙が流れ出していた。

興奮しているためか、走ってきたからか、息は絶え絶えだ。

える「私のことはもう放っておいて下さい!」

こんな大きな声をあげた千反田を見たのは、はじめてだった。

える「もう折木さんは古典部でもありませんし、私との接点はありません!」

える「ですから……ですから、私のことは……もう本当に放っておいて下さい!」

千反田の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

今、これ以上話しても埒があかないだろう。

奉太郎「分かった。じゃあオレはもう戻る」

千反田は両手で顔を覆って泣いていた。

しかし、千反田はなぜこんなに泣く必要があるのか?
オレはもと来た道をたどった。

入須はそのままベンチに座っていた。

入須「えるか?」

奉太郎「はい」

入須「どうして追いかけた?」

奉太郎「……」

入須「まあいい。さっきの続きを……」

奉太郎「すみません。今日はもう帰らせて下さい」

入須「……そうか。分かった。ではまた……」

奉太郎「はい……」

楽しかった時間は、一瞬にして終わった。

まやかたそ~

千反田はどうして泣いていたのか?

頭の中はそのことでいっぱいだった。

しかし、どうしてオレは千反田のことをこんなに気にしている?

オレの彼女は入須だ。

やはり……まだオレは……。



いつの間にか寝てしまっていたようだ。

朝になっていた。

憂鬱だった。

だがこのことをはっきりしておかなければならない。


昼休みだった。

突然、伊原がオレのクラスに入ってきた。

摩耶花「ちょっと来なさいよ!」

伊原はオレの腕を掴むと、強引に人気のない階段の踊り場まで引っ張った。

そこまで来ると、伊原はオレの腕を掴んでいた手を離した。

摩耶花「折木の馬鹿!」

そして、伊原はその手でそのままオレの頬を平手打ちした。

まやかたそ (;゚∀゚)=3ハァハァ

奉太郎「いきなり何をする?」

摩耶花「何してんのか聞きたいのはこっちよ! あんた入須先輩と付き合いはじめたって本当なの?」

奉太郎「本当だ」

再び伊原の右手があがる。
オレはその手を掴んだ。

奉太郎「なぜ叩く? 意味が分からん。どういうことなのか説明してくれ」

摩耶花「だって、あんたちーちゃんがいるのにそれを踏みにじって……」

奉太郎「どういうことだ? オレは千反田に告白して振られたんだぞ?」

摩耶花「やっぱりあんたは何も分かってない」

伊原の左手がオレの頬をとらえた。

まやかたそに叩かれたい (;゚∀゚)=3ハァハァ

摩耶花「ちーちゃんはね! 本当は馬鹿折木! あんたのことが好きなのよ!」
奉太郎「だったらどうして……」

摩耶花「……二年生になって、ちーちゃんのあんたに対する態度が変わったのは感じたでしょ?」

奉太郎「ああ」

摩耶花「あれはね。ちーちゃんが他の名家の許嫁になったからなの……」

摩耶花「だから、ちーちゃんは自分の本当の気持ちに嘘をついてあんたを振ったりしたのよ」

摩耶花「それなのに、あんたはのうのうとすぐに入須先輩と付き合いだして……」

摩耶花「本当は折木も自分の気持ちに嘘をついてるんじゃないの!?」

女帝ルートだろ?そうだろ?

まやかたそ~

http://i.imgur.com/6UnGn.jpg
ほれ

摩耶花「あんたが本当にちーちゃんに振られてすぐに、入須先輩に心変わりしたっていうのなら私はなにも言わない」

奉太郎「……」

摩耶花「こんなのってあんまりでしょ! 好きな人に告白されたのを振るなんて! これ以上に辛いことなんてない! 今、一番辛いのはちーちゃんよ!」

奉太郎「オレにどうしろと言うんだ?」

摩耶花「だからすぐに入須先輩と別れるの! それでちーちゃんの両親を説得……」

入須「なんの相談だ?」

いつの間にか入須先輩がそこにいた。

鋭い視線で伊原を睨みつけている。

>>256
個人的に先輩が一番美しいのは斜め45°だと思うの

奉太郎「うっせぇブス」

摩耶花「調子乗るな役立たず」

奉太郎「ウィッス」

>>261
http://i.imgur.com/UbFys.jpg

摩耶花「入須先輩……盗み聞きですか?」

入須「私は、ただ単に恋人に会いに来ただけだ。すると教室にいなくてね。奉太郎のクラスメイトに場所をきいただけよ」

入須の目の焦点は摩耶花だけにあっていた。

摩耶花「大体、もとはと言えば入須先輩。あなたが全部なにか仕組んでいるんじゃないんですか?」

摩耶花も負けじと入須を睨みつける。

入須「人聞きが悪いな。私、奉太郎がえるに振られたと聞くまでは、この思いをしまっているつもりでいた」

摩耶花「映画製作のときもそんな建前を言って、結局、入須先輩は私達を騙していました。信用できません」

入須「別に信用してくれとは言ってない。ただ私の恋人に妙なことを、吹き込むのはやめて欲しいと言っているだけだ」

不毛な言い争いに決着はつかなかった。

結果的に、入須と伊原の仲が険悪になっただけだった。

このままではいけない。

けじめをつけなければいけない。

分かっていた。

オレが蒔いた種だ。

しかし、結論を出すことができない。

千反田が許嫁ならオレには取り入る隙など、そもそもないのではないか?

仮に千反田の許嫁の件が上手く処理できたとして、そうなれば自分から告白した入須先輩のことはどうする?

そもそもオレは今、いったい千反田と入須どちらのことが好きなのか?

考えがまとまらなかった。

まやかたそは貰いますね

>>300
まやかなら泣き疲れて隣で寝てるよ

翌日、オレは入須に呼び出された。

言われることは大体予想がつく。

結論はまだ出てない。

場所はいつもの茶屋だった。

席につくとすぐに入須は口を開いた。

入須「奉太郎、今日は君に大事な話がある」

入須「私と別れてくれ」

その言葉に暖かみはなかった。

全く予想していなかった言葉にオレは耳を疑った。

入須「聞こえなかったか? “折木君”私と別れて欲しい?」

オレの様子を察したのだろう。

入須は繰り返した。

入須「実はあの告白も私の本意ではない。私は、実はえるのことが嫌いでね。少し苦痛を与えてやろうと今回、君に告白したんだが、もう飽きてしまった」

オレは下向いていた顔をあげ、入須の顔を見た。

その瞬間、全てを察した。
やっぱりこの人は……

入須の目からは大粒の涙がとめどなく溢れてきている。

入須「話は以上だ。承諾してくれるか折木君?」

それならば、入須先輩の思いを今度はオレが踏みにじってはいけない。

奉太郎「はい……。入須先輩、すみません。ありがとうございます」

入須「ふふふ、折木君、君はやはり面白いな。振られてありがとうとは……」

入須が涙を拭いながら言った。

入須「早くえるのところへ行ってやれ」

奉太郎「はい」

オレは茶屋を飛び出した。

千反田はまだ学校にいるはずだった。

入須先輩の思いを無駄にするわけにはいかない。

古典部の部室。

勢いよくドアを開ける。

思えば、オレと千反田の関係はここからはじまった。
だから、ここで決着をつける。

居たのは、窓の外を眺めている黒髪の美少女―――千反田えるだけだった。

千反田「折木さん!?」

千反田が振り向いた。

艶のある黒髪が揺れる。

オレは部室の入口から真っ直ぐ千反田に向け、歩を進めた。

千反田の顔を改めて見つめる。

確信した。

やはりオレは間違ってない。

奉太郎「千反田、伊原から許嫁の件は全部聞いた」

千反田は大きな目を見開き、驚いた表情をみせると目をオレからそらした。

える「そうですか……」

奉太郎「入須先輩には振られた」

える「えっ」

下を向いていた千反田が再び顔を上げ、真っ直ぐにオレの目をみた。

える「そう……ですか」

奉太郎「千反田、聞いて欲しい話がある」

奉太郎「千反田、お前が好きだ。オレと付き合ってくれ」

千反田は大きな目でオレの目を真っ直ぐに見つめている。

その目が少し潤んだ気がした。

える「しかし、私は許嫁なんです。私と折木さんがそういった関係を築いていくことは……」

奉太郎「構わない」

える「えっ?」

奉太郎「今はそれでも構わない」

える「……」

奉太郎「今は無理でも、オレが必ず千反田の両親を説得してみせる」

奉太郎「オレはいつまでも待つ」

奉太郎「だから、許嫁とかは関係なく千反田自身の答えをきかせてくれ!」

える「折木さん、本当にすみませんでした。私は何も努力しようとせず、許嫁であることを理由に、折木さんの告白を断りました」

奉太郎「……」

える「でも私ももっと考えるべきでした」

える「方法は必ずあるはずです」

える「私の両親も鬼ではありません。真剣に話せば、きっと分かってくれると思います」

奉太郎「……」

える「ところで折木さん、折木さんはキスしたことはありますか?」

奉太郎「いや……」

える「ふふふ、私もです」
千反田が目を閉じる。

50cm……30cm……10cm……5cm……

オレは千反田と唇を重ねた。

長い長い時間、千反田と唇を共有しあう。

この時間が永遠に続けばいい。

える「そういえば、告白の答えがまだでした」











える「私も大好きです」

Fin

ここまで読んで下さった方々、支援して下さった方々、ありがとうございました
次回作のために、ここはこうすれは良かったなどのご指摘をいただけると幸いです。

>>387
まやかを出さない

もうちょっと里志をうまく使って欲しかった
なんだかんだで人のことにはフォロー一番うまいタイプだし

>>387
イリス先輩のキャラをとらえてると思った
次回作はいりほーでオナシャス

>>389
摩耶花は今回は少し汚れ役をかってもらいました。
摩耶花ファンの方には申し訳なく思ってます…

できればもっと書き溜めておいて欲しい


次はイリス先輩√オナシャス

>>391
里志ですね
参考にさせていただきます
>>393
今回も当初はその予定だったんですが…

>>397
やっぱり書き溜めておいた方が良いですかね…

入須に無理矢理許嫁が出来て折木が助けるSSを書いてほしい

>>400
了解です
実は今回も当初は入須先輩ルートの予定でした

>>407
入須先輩は好きですから書いてみたいと思います
そのときは読んでいただけると幸いです

>>409


脱糞して捕まってくる

>>410
次こそは入須先輩ルートでかきます

入須「折木くん、私は親から許婚を決められてしまった。助けてくれ。」

奉太郎「何で俺が…?」

みたいなのが読みたい

>>414
了解しました
入須先輩人気が高いみたいですね

単に序盤の展開から入須期待してた人多くて
そいつらが残ってただけじゃね
かと言って誰が人気とは言わないけど

みんなかわいいよ

>>416
当初は入須展開の予定でしたがネタバレが出てしまったのでやむなく変更しました…
入須ファンの皆さんには悪いことをしていまいましたね…

>>417
そうですね

>>419
ではイリスルートを今から頼む

>>419
このままのストーリーでイリスルート頼む

読者の意見で簡単に内容変えるな

>>421>>422
さすがに今からはきついですね
まあ簡単にいうと当初は>>61みたいな感じの予定でした

>>423
>>61でネタバレが出ちゃったので変えたのですが、ネタバレが出たとしても当初の予定のままかく方がいいのでしょうか?

誰かが悪役になるのはあまり受けが…

今更ながら乙です

次はできればSS速報でお願いします

>>425
よろしいと思います

もう終わったんだし次書くときは当初のネタをもっと推敲してやったほうがいいんじゃない?
何も今すぐやる必要はないわけだし

>>425
そりゃそうだろ
たまたまネタバレが的中したとしても誰も気にしないと思うよ
書く速度的に書き溜めがあるだろうから最初の展開でやり直してほしいぐらい

>>426
以後気をつけます

>>427
それはどういう板なんですか?

>>428
分かりました
以後そうします

即興だとうまくいかないし、ネタを急に変えるとなおさら

ss速報vipで検索

>>429
次回に生かせるようにするためです
今すぐかこうとは思っていません

>>430
分かりました

まあ別にVIPでも

>>431
簡単に言っちゃえばSS専門の板ですね
URL張っときます

SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/

ぶっちゃけ適当なこと言って書き手にいらない気使わせた俺らが悪いんじゃん
こんな風に展開変えたSS結構あった

>>432
了解しました

>>433
SS専用板みたいですね

>>435
そう言っていただけると幸いです

>>436
ありがとうございます

>>437
書いていて色々意見して下さるのは励みにもなります

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月12日 (火) 03:13:31   ID: sw__4h_n

発想はいいけど入須以外の扱いが雑過ぎて微妙
何も気付けなかった奉太郎にご都合主義なハッピーエンドを与えるのは勘弁

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