亜美「兄ちゃんのこと好きなんだろー」真美「ち、ちげーし」(211)

亜美「おい双海ー、お前兄ちゃん先生のこと好きなんだろー」

真美「はぁ!? そ、そんなんじゃねーし」

亜美「うっわ~顔赤くなってるー! やっぱぜってぇー好きなんだぜコイツー!」

真美「ばっ、やーめ、やーめろって!」

亜美「けーっこん、けーっこん!」ヒューヒュー

真美「もー! やーめーろーよー!」
     クラス
亜美「事務所のみんなに言ってやろー」

真美「……ぜ、全然好きじゃねーし!」

亜美「嘘だー」

真美「嘘じゃねーし! に、兄ちゃんのことなんか、全然、なんとも思ってねーし! むしろ嫌いだし!」

亜美「嫌い?」

真美「あう……」

亜美「ホントにそーなの?」

真美「ううん……それこそ嘘っぽいよ……嫌いになるわけないっしょ」

亜美「そっか~。んっふっふ~、知ってたけどね!」

真美「もー、亜美に相談した途端これだよ~! 真美達はもう中学生なんだよ!」

亜美「でもでも~、真美もノリノリだったっしょ?」

真美「まーね! んっふっふ~」




P「」

小鳥「あら? プロデューサーさん、そんなところに立って、どうかしたんですか? 顔面蒼白ですけど……」

P「あ……音無さん……」

P「う、うぅ……」

小鳥「ま、まぁまぁ落ち着いて……それで、なんでしたっけ」

P「ま、真美が……俺のこと、嫌いだって……」

小鳥「……」

P「ぜ、全然……好きじゃないって……」

小鳥「そ、そうですか」

P「うわああああ!!」

小鳥「ちょちょ、泣かないでください、良い年して」

P「だって、だって! ふぇええええ!」


小鳥「……もしかしてプロデューサーさんは、真美ちゃんのこと、好きだったんですか?」

P「はぁ!? ち、ちげーし! ぜ、全然、好きなんかじゃねーし!」

小鳥(よほどショックだったのね。精神年齢がずいぶん低くなっているわ)

P「……というのは、置いておいて」

小鳥「あ、はい」

P「好きか嫌いかで言えば、どっちかで言えば……」

小鳥「ふんふん……」

P「そりゃあ、愛しています」

小鳥「ふんふ……えっ?」

P「だってそうでしょう、真美はあんなに可愛いし、素直だし、優しいし」

P「ちょっと子どもっぽすぎるところもあるけど、そこがまた、成長した体とのギャップもあってグッとくるし」

P「目と目が逢う瞬間ティンと来たんですよ。ああ、この子を生涯プロデュースしよう、って」

小鳥「そ、そうですか」

P「でも、それで……これまでふたりで頑張ってきたのに……まさか、真美は全然、俺のこと……」

小鳥「……」

P「うぅ……」

小鳥(本気の涙を流している……)

ガチャ

亜美「まぁまぁ、亜美にまっかしといてよ!」

真美「あ、亜美~! ヨケーなことしなくていいから!」

P「!」ドキッ

小鳥「あ、ふたりとも。もう社長室で遊ぶのは終わりにしたの?」

亜美「んっふっふ~! ウォッホン! ピヨちゃんくん、ちょ~と、席を外してもらえるかな?」

小鳥「はいはい。あんまり、プロデューサーさんをからかわないようにね」

亜美「うあうあー! ピヨちゃん、これは亜美達にとってはシンセン勝負なんだよ~!」

小鳥「真剣勝負、ね。ほら、亜美ちゃん。行きましょう」

亜美「うん! 真美、がんばってね!」ポンッ

真美「う、うん……」

真美「……」

P「……」

真美「ね、ねえ兄ちゃん」

P「な、なんだ?」

真美「あのさ、今週の日曜、ひま?」

P「ああ、特に予定はないけど……」

真美「それじゃさ、いっしょにコンサート行こうよっ!」

P「コンサート?」

真美「うんっ! 亜美がね、今度遊園地のステージでやる、竜宮小町のライブのチケットくれたんだ~」

P「……」

P(俺なら、チケットなんかなくても中に入れるんだけど……こ、これってもしかして……)ドキドキ

P「あ、ああ、もちろん! 真美が誘ってくれたなら喜んで――」

亜美「おっ? んっふっふ~、兄ちゃん達、もしかしてデートってやつ~?」ヒョコ

P・真美「「そ、そんなんじゃねーし!!」」

真美(うあうあ~! なんで亜美ジャマすんの~!)

亜美(ありゃ? おジャマ虫だった?)

真美(そりゃそうっしょ! つい、さっきみたいなお芝居の続きをしちゃったじゃーん!)


P「……ど、どうしてもっていうなら行ってやってもいいぜ」

真美「え!? ……べ、べつに真美だって、どーしてもってわけじゃねーし!」

真美「ただ他に、誰も暇な人がいなかっただけだし!」

P「お、俺だって、本当は暇じゃねーし」

真美「そ、それならいいし。ひとりで行くから……」

P「あ……」

真美「ふーんっだ! はるるんあたりを誘っていこーっと!」

P「……」

真美「……」チラ

P「……し、しかたねーなし。春香だって休ませてやらなきゃだし、一緒にいってやるし」

真美「えっ、ホント!?」パァ

P(あ、かわいい……)

亜美「んっふっふ~! よかったね、真美!」

真美「はぁ!? べ、別によくねーし、普通だし」

亜美「まーたそんなこと言っちゃって~。ホントは嬉しいんでしょ?」

真美「や、やーめーろーよー!」

亜美「顔真っ赤になってんじゃーん! デュクシ、デュクシ!」

チョンチョン

真美「あっ、いたっ! このー、やったな~!」

ワイワイ



P「……ふ、ふふ」

小鳥「プロデューサーさんも、嬉しそうですね♪」

P「はぁ!? べ、別に嬉しくねーし」

小鳥(めんどくさい人ね、もう)

P「それにそもそも……真美は俺のことなんて……」

小鳥「……うーん……」

小鳥「プロデューサーさんは、きっと勘違いしてるんだと思いますよ」

P「え……勘違い、ですか?」

小鳥「ええ。真美ちゃんがプロデューサーさんを嫌いになるわけ、ありません。それに――」

亜美「おっと」

ポスン

P「っとと……大丈夫か、亜美」

亜美「うあうあー! 兄ちゃん菌がついた~!」

P「」

亜美「たーっち!」

真美「うあうあ~! バリアー!」

亜美「バリア無効です~」

真美「や、やーめ、やーめーろーよー!」


P「やっぱり嫌いなんじゃないですか……!」

小鳥「あ、あはは……」

小鳥(もう、みんなして……まるで小学校ね)

Pも中学生ってことでいいの?

P「……まぁ、でも」

小鳥「はい……」

P「デートには、行きます。し、しかたないですからね。真美もどうしてもって言うし」

小鳥「……ふふっ。やっぱり、デート?」

P「ちち、ちがいます! 間違ってそう言っちゃっただけです」

小鳥「そうですか♪ 楽しんできてくださいね」

P「くっ……こ、こらこらお前達! もう遊んでないで、レッスンに行きなさい!」

真美「はーい」

亜美「亜美はもう、今日のお仕事終わっちゃったもーん」

P「でもそうやって真美の邪魔ばっかりするなら、律子先生に言いつけるぞ!」

亜美「うあうあ~! 兄ちゃん、それはズルっしょ~!」

>>20
Pは立派な社会人の設定です。

朝ご飯食べてくる

【デート三日前の夜】

真美「うーん……」

亜美「ねえ真美ー、まだ決まんないの?」

真美「だってだって~!」

亜美「いつもの格好でいいじゃーん。はやくマリオの続きやろーよー。次、真美の番だよ」

真美「でもそんなんじゃ、バカにされちゃうっぽいよ~!」

亜美「そうかな~?」

真美「……兄ちゃんなら、そんなことしないと思うけどさ。でもでも」

亜美「っていうか、こんなに早く決めなくてもいいっぽくない?」

真美「でもでも~! うあうあ~!」

亜美「けっきょく、決まんなかったね」

真美「うん……」

亜美「でも、だいじょーぶだよ、真美」

真美「え? なにがだいじょーぶなの?」

亜美「んっふっふー! 亜美、知ってるもん。兄ちゃんは、いつも通りの真美が一番好きっぽいってこと」

真美「えぇえ!? す、すす……!?」

亜美「おやすみなさーい」モゾモゾ

真美「うあうあ~! ちょっと待ってよ亜美~!」


真美「い、いつも通りの真美……?」

【翌日(デートまであと二日)】

真美「おっはよーだぴょーん!」

P「ああ、おはよう、真美」

真美「うあっ!」

P「な、なんだよ」

真美「……」

P「……ま、真美?」


『亜美、知ってるもん。兄ちゃんは、いつも通りの真美が一番好きっぽいってこと』


真美(うあうあー! あんなこと言われたら、ヨケーにいつも通りにできなくなっちゃうよ~!)

真美「……今日のお仕事は?」

P「あ、ああ。えーっと……今日の予定は、午前中に新曲の衣装合わせ、午後からレッスンだな」

真美「ふーん」トタタ

P「あ、ちょっと真美!? どこに行くんだ?」

真美「べっつに~! 兄ちゃんにはカンケーないっぽいよ~!」

P「あ……」シュン

真美「あ……」シュン

P「……9時までには、戻ってきてくれよ」

真美「……うん……」

P「うぅ……エッグ……グスッ……」

小鳥「へぇ~。そんなことが……」

P「ズビッ、ズビビ……」

小鳥「なるほど……真美ちゃんが反抗期、ですか」

P「……ヒッグ」

小鳥「ふふっ、大丈夫、そんなことはないですよ。ああいう年頃の女の子には、よくあることです」

P「グス……?」

小鳥「そうです。私にも、多少は親に向かってそういう態度取っちゃった時期もありますし……もう随分昔のことですけど」

P「……」

小鳥「きっと、時間が経てば元通りです。だから、ね?」

P「……エグ……ウッ、ウッ……」

小鳥「いいえ♪ これくらい、おやすい御用ですよ、プロデューサーさん」

【世界のコンビニ ナムコット】

真美「……」

ペラ、ペラ……

真美「ふんふん」

真美「なるほど~……」

ペラペラ

真美「年上のお兄さんとデート☆特集……参考になるっぽいね!」

真美「こーいう格好がいいのか~……」

おまわりさん「ちょっと、君」

真美「え?」

おまわりさん「見たところ、中学生だね。こんな朝早くからコンビニで立ち読みとは良い度胸だ」

おまわりさん「学校はどうしたんだ? もう登校時刻だろう」

真美(うあうあ~!)

【交番】

P「はい……ええ……すみません、こちらの管理不足でした」

真美「ごめんなさーい……」

P「……はい、芸能活動については、ちゃんと学校に許可を受けていますので……今日もこれから……」

真美「……」

P「ですから、どうか……大事には……はい、ありがとうございます! 以後、気をつけます」

真美「気をつけまーす……」

P「それでは……失礼します」



真美「こんなピチピチの年でおまわりさんにお世話になるとは思ってなかったよ~」

P「こら」

ポカン

真美「あ痛っ!」

P「本当に反省してるのか、こいつめ……」

真美「……」

P「……」

P(何を話したらいいんだろう……)

真美(兄ちゃんに怒られちった……)

P(ついつい、いつものノリで頭をポカンとやってしまった……また、嫌われてしまったかも)

真美(兄ちゃん……こんな真美のこと、嫌いになっちゃうよね……)

P(……音無さんに、時間を置け、と言われていたのに)

真美(……でも、ずーっとこんなんじゃダメっぽいよね)

P・真美(……とにかく!)


P・真美「「……あのっ!」」

P「あ……」

真美「えっと……」

P「ま、真美からどうぞ」

真美「に、兄ちゃんから言ってよ」

P「いや、でも……」

真美「……それじゃあ」


真美「兄ちゃん……あのね」

P「うん……」

真美「ごめんね」

P「……」

真美「また、メーワクかけちゃった……」

P「迷惑だなんて、そんなこと……まぁ、確かに、かなりビックリしたけどさ」

真美「う……」

P「ああでも! 結果、何事もなかったんだし……それに」

真美「え? それに?」

P「……ビックリしたのは、あの電話だよ」


『兄ちゃん兄ちゃん! 真美、おまわりさんに捕まっちゃったよ~! お助け~!』


P「――って。真美が何かの事件に巻き込まれたのかと思ったら、心配で心配でしかたなかったんだ」

真美「……!」

P「だから、今度からは気をつけてくれよ」

真美「……うん」

真美「……ねぇ兄ちゃん」

P「ん? まだ何かあるのか?」

真美「……ごめんね」

P「謝るのは、さっきもしただろ? もう大丈夫だよ」

真美「うあうあー、それとは違くて~! えっと……」

P「違う……?」

真美「あの……さっき、そっぽ向いちゃったこと」

P「!」

真美「……真美、いつも通りにしなきゃって思ったんだけど、なんか、モヤモヤしちゃって」

P「……」

真美「だからね、ごめんね……」

P「……いいよ」

真美「ねぇ兄ちゃん」

P「今度はどうした?」

真美「あのね……」

P「うんうん……」

真美「……真美のこと、嫌いになっちゃ、やだよ?」

P「……」

キュン

P(おや、今の感情の起伏は)

P「き、嫌いになんてなるわけ……」

真美「ホント……?」

P「ああ、ホントだって。むしろ俺は、嫌いどころか……」

真美「え?」

P「ああいや、なんでもない!」

真美「な、なんでもないってことはないっしょ! も、もしかして……」

P「い、いやいや! べ、べつに、好きとかそーいうんじゃねーし!」

真美「ま、真美だってべつに、兄ちゃんのこと好きじゃねーし!」

P「そんなの、言われなくたって知ってるし!」

P・真美「「ふんっ!」」


P「……なあ真美」

真美「なーに」ツーン

P「好きじゃないってことは……やっぱり……嫌いか?」

真美「……そだよ」

P「……!」ガーン

真美「……兄ちゃんと同じくらいね」

P「え?」

真美「うあうあー! だから~! 兄ちゃんが真美を嫌いなのと同じくらい、嫌いだって言ってんの!」

P「でも、俺、真美のこと嫌いじゃないって今……」

真美「もーお仕事の時間っしょ! いこいこ!」

【都内某スタジオ】

P「それじゃあ、この子をよろしくお願いします」

スタッフ「はい。それじゃあ真美ちゃん、行きましょう」

真美「うん! お願いしまーす♪」



P「さて……」

あずさ「あら? プロデューサーさ~ん」パタパタ

P「え? ああ、あずささん!」

あずさ「おはようございますー。今日は真美ちゃん、ここでお仕事なんですか?」

P「ええ。衣装合わせだけですけどね」

P「あずささん……というか、竜宮小町もここに?」

あずさ「いえ、今日は私だけです~」

P「え!?」

あずさ「? どうかなさったんですか?」

P「い、いえ……」

P(何を考えているんだ、律子……あずささんをひとりにするなんて)

あずさ「少し、衣装の胸のあたりがキツくなっちゃって、それでサイズ変更をですね……」

P「……」ゴクリ

あずさ「っと、それはともかく……プロデューサーさん?」

P「あ、ああ、はい。なんですか?」

あずさ「ふふっ、亜美ちゃんから聞きましたよ? 今度のお休み、真美ちゃんとデート、するんでしょう?」

P「……あ、あはは」

あずさ「羨ましいわー、真美ちゃん。私なんて、まともなデートと言えることなんて今まで……」

P「……」

あずさ「……?」

P「……はぁ」

あずさ「先ほどから、どこか浮かないお顔ですけれど……なにかあったんですか?」

P「……あずささん、ちょっと、聞いてもいいですか? その、でで、デートという件なんですけど」

あずさ「ええ、私でよければ……ふふっ。何かお悩みですか?」

P「はい……実は……」

あずさ「はい」

P「……何を着ていったらいいか、わからなくて」

あずさ「はい……えっ?」

P「だってそうでしょう? 相手は、中学生ですよ?」

あずさ「んー……」

P「そして俺は、冴えない成人男性です。一見したら犯罪の香りがしますよ」

あずさ「そ、そうでしょうか?」

P「だからどういう格好なら、真美と一緒にいても自然かどうか……わからないんです」

あずさ「……いつも通りで、良いと思いますよ?」

P「いつも通りって……1900円の、カレーの染みが付いたパーカーでもいいってことですか?」

あずさ「そ、それは確かに、考え物ですけれど……」

P「それとも、営業で着るようなスーツ?」

あずさ「それだと、より一層……いえ、なんでもありません」

P「……はぁ。それに、適当な格好で行って、真美を恥ずかしい気持ちにもさせたくないし……」

あずさ「……」

あずさ(……プロデューサーさん、真美ちゃんとのデートのこと、真剣に考えていらっしゃるのね)

あずさ「……わかりました!」

P「え? な、なにが……?」

あずさ「ふふっ、そういうことなら、私達にまかせておいてください!」

P「私達?」

あずさ「私と、律子さん。今日のお仕事が終わったら、見繕ってさしあげます~!」

P「ほ、ホントですか!? それは助かります!」


トテトテ

真美「兄ちゃんにいちゃー……」

あずさ「だから、今日の夜……――時に、事務所で……」

P「わかりました。それじゃあ、よろしくお願いします!」

真美「え……」

真美(あずさお姉ちゃん? それに、夜?)

真美「……兄ちゃん」

P「ん? おお、真美!」

あずさ「ふふっ、おはよう、真美ちゃん」

真美「……うん」

あずさ「素敵な衣装ね~。これで今度の新曲も、バッチリね?」

P「うんうん。よく似合ってるぞ」

真美「……」

P「……真美? どうした、お腹でも痛いのか?」

真美「……なんでもないですよーだ! べー!」

P「え……」

真美「兄ちゃんのおバカさん!」トタタ

P「あ、ちょ、真美!?」

真美「着替えてくるだけだから、こっち来ないで~!」

【夜、765プロ事務所】

P(その後……真美はレッスン中も、どこか不機嫌な顔を浮かべたままだった)

P(気が付かないうちに、また俺は何かしてしまったのだろうか……?)


P「さ、さあ真美。今日の活動はもう終わりだけど……」

真美「……」

P「えーっと……じゃんけんでもするか? それとも、声真似ゲームとか……」

真美「そんなのいいもんっ! ふんっ、そんなので真美がいっつもゴキゲンになると思ったら、大間違いなんだかんね!」

P「う……」

真美「お疲れちゃーん!」タッタッタ

P「あ、ああ……お疲れさま」

P「……はぁ」

小鳥「プロデューサーさん……またため息、ですね」

P「音無さん……」

小鳥「なにかあったんですか?」

P「えっと、実は……」

小鳥「って、あら? ……そこにいるのは……」

真美「……」コソコソ

小鳥「……なんとなく、わかりました。真美ちゃんとのことですね」


真美(しー! しー!)

小鳥(ふふ、わかってるわよ、真美ちゃん。あなたがそこに隠れてるのはナイショなのね)


P「いやぁ……音無さんはなんでもお見通しですね」

小鳥「プロデューサーさんが、まわりを見れていないだけです」

P「え……」

小鳥「なんでもありません♪」

ガチャ

律子「お疲れ様でーす」

小鳥「あら、律子さん。お疲れ様です。それに、みんなも……」

伊織「はぁ~……もう今日は疲れちゃったわよ……って」

P「おつかれ……」ズーン

伊織「そんな顔しちゃって、どうしたの、ドロリコン」

P「なっ!? 帰ってくるなり、し、失礼なことを……」

伊織「だってそうでしょう? 聞いたわよ、真美とのこと」

P「……亜美」

亜美「んっふっふ~! 楽しいことはみんなで知ったほうがいいっしょ?」

P「まったく……いや、いいけどさ」

伊織「ま、この宇宙一のスーパー美少女アイドル、水瀬伊織ちゃんの晴れの舞台を、精々ふたりで楽しむといいわ!」

P「ああ、そうさせてもらい……たいんだけど、な」

伊織「なんなのよ、もう。いつもみたいな張り合いがないわねぇ……」

あずさ「伊織ちゃん、プロデューサーさんはね……」

P「あ、あずささん! あのことはなるべく……」

伊織「なになに? ……って」

真美「……」コソコソ

伊織「……真美? そこでなにを――」

もがもが

伊織「……! ……!」

P「内密に……って、あれ? 伊織? それに亜美も……どこに行ったんだ?」

あずさ「それじゃあ、プロデューサーさん♪ 行きましょうか」

P「え、ええ」

律子「まったく、なんで私まで……」ブツブツ

P「すまないな、律子。嫌だったら無理にとは言わないけど……」

律子「……いーえ、着いていきます。あずささんとふたりにさせて、万が一ということがあったらたまりませんし」

あずさ「ま、万が一って……まぁ」ポッ

律子「なんですかその顔……それに、あの子のためでもありますから」

P「あの子って……真美?」

律子「ええ。真美があなたのこと――」

あずさ「り、律子さん!」

律子「……ごほん! じゃなくて……怪しい格好をした人が担当プロデューサーなんて、真美がかわいそうでしょう?」

P「う……怪しいって、そこまで言わなくても」

律子「さ、そーと決まったらちゃっちゃと行きますよ! ふふふ、覚悟しといてくださいね!」

休憩する

【ショッピングモール】

律子「さーて、と……」

あずさ「次は~……あ、あそこなんていいんじゃないかしら!」

P「あの、ふたりとも……」

律子「どうしたんです? 浮かない顔ね」

P「いや……そんな、ここまでちゃんとしたところの服じゃないといけないのか?」

律子「もう、わかっていませんね、相変わらずあなたは」

P「え? どういうことだ?」

律子「たとえ真美とは言え、女の子なんです。だから、安っぽい格好では、呆れられちゃいますよ?」

P「うーん……それはなんとなくわかるんだけどさ」

律子「さ、さ! 次、行きますよ~!」

あずさ「ふふっ、律子さん。なんだかんだ言って、楽しそうですね?」

律子「そりゃそうですよ。こんなに好き勝手いじくれるのは、小さい頃、涼にした以来……」

P「いじくる……?」

律子「あ、いえいえ。こういう機会、めったにありませんからね! あはは……」

あずさ「さあ、プロデューサーさん~」グイグイ

P「わ、わかりましたわかりました」



亜美「……真美隊長。目標は次のブチスライムに入った模様。おーばー」

真美「了解した亜美隊員。我々はこのまま追跡を続ける、おーばー」

伊織「……」

真美「あれ? いおりん?」

伊織「……色々言いたいことはあるけど……まず、ブチスライムじゃなくて、ブティックね」

亜美「そだっけ? んっふっふ~、まぁそんな細かいことはいいっしょ!」

伊織「ええ、そうね。確かにそれは細かいことだわ」

真美「じゃあさ、どったの? なんだかオデコが元気ないけど~……」

伊織「うるっさいわね、おでこは関係ないでしょ!!」

亜美・真美「「うあうあ~! いおりん、おっきい声出したらバレちゃうっしょ!」」

伊織「あ、ご、ごめんなさい……じゃなくて! と、とにかく!」

伊織「……なんで私達、尾行ごっこなんてしてるのよ!?」

真美「だって~……」

亜美「いおりんはいいの? このままじゃ兄ちゃん、あずさお姉ちゃんのエロエロぼでーにノックアウトされちゃうよ?」

伊織「私としては、本当にどうでもいいんだけどね……」

真美「いおりんのヒトデ!」

伊織「誰がヒトデよ。人でなしって言いたいの?」

真美「そんな感じ!」

亜美「まぁまぁいおり~ん。ここは真美のためにもさ、一緒にがんばろーよ」

真美「今度オレンジジュース買ってあげるからさ~」

伊織「……あんたたち、それで私が『それはいいわね! 着いてくぴょん!』って、素直に言うこと聞くと思ったら大間違いよ」

真美「いおりんは、やなの?」

伊織「トーゼンじゃない。こんな、コソコソと人の秘密を嗅ぎまわるようなマネ、みっともないわよ」

真美「……そっか~……」

伊織「……」

真美「それなら、ちかたないね……いおりんがやなこと、無理矢理させちゃダメっぽいよね……」

亜美「うん……そうだね」

伊織「……う……」

真美「……それじゃあ、いおりんとはここでお別れだね」

亜美「短い間だったけど……楽しかったよ。ありがとね、いおりん」

伊織「……え、ええ」

真美「それじゃあ……亜美」

亜美「うん……いこっか、真美」

テクテク

伊織「……」

真美・亜美「……」チラ

伊織「……あーもう、わかったわよ! 着いていけばいいんでしょ、着いていけば!」

真美・亜美「んっふっふ~!」

伊織「ったくもう……」

―――
――


P「……こ、こんなもんでいいでしょうか」

あずさ「んー……、そうですね!」

律子「今日はこれくらいにしといてあげましょうか」

P「今日は!? ……というか、絶対、一週間は着まわせるくらいたくさん買ったよな……」

律子「精々三日でしょう。それで一週間はさすがに持ちませんよ」

P「え、だって……ズボンは毎日違うのを穿くわけじゃないし……」

律子「……はぁ~。先が思いやられるわね」

あずさ「まあまあ律子さん。男性と女性では、色々と違うところもありますから」

P「う……なんだか、やんわりとバカにされてる気がする……」

P「……まぁ、とにかく。ふたりとも、ありがとう。助かったよ」

律子「いーえ♪」

あずさ「お安い御用です~。ふふっ、私達も楽しかったですし」

P「しかし、今日だけで随分散財してしまったな……はは」

律子「私なら、絶対にこんなに服にお金は使えませんね」

P「え!? そ、それを買わせたのか……」

律子「まぁ、私の財布ではないですし……必要経費、ですから」

P「経費?」

律子「あなたと真美にとっての、ね」

P「……ありがとう」

律子「ふふっ、いいんですよ! それじゃあこのあとは……」



コソコソ

真美・亜美・伊織「「「……」」」

真美「……あずさお姉ちゃんだけじゃなくて、律っちゃんとも仲よさそうっぽいよ~……」

亜美「兄ちゃんって、やっぱりああいうのが好きなのかな?」

真美「ああいうのって、おっぱい?」

亜美「うん! ボイーンでデデーンでフッカフカで!」

真美「うあうあー! 真美にはないモノすぎるっしょ~!」

伊織「なんでそうなるのよ……胸とか、そういうのじゃなくて、あれでしょ」

真美・亜美「あれ?」

伊織「オトナ、ってやつ。律子もあずさも、あのだらしない男よりはずっとしっかりしてるじゃない」

伊織「ま、もちろん、この伊織ちゃんだって負けてないけどね! にひ――」

真美「あっ! 兄ちゃん達行っちゃう! いこいこ!」

亜美「うん!」

伊織「ひっ、って……ちょ、ちょっと待ちなさいよ! そういうところ、落ち着きが足りないって言ってんの!」

P「えーっと……今日のお礼に、飯でもどうだ? おごるよ」

律子「そうですね。あ、でも、おごりとかじゃなくていいですよ」

P「いや、でも……」

律子「そういうお金は、真美とのデートのために取っておいてください。今日はもう、随分使わせちゃいましたし」

P「……わかった」

あずさ「ふふっ、それじゃあ次は、お食事をしながらデートの作戦タイム、ですね!」

P「さ、作戦って……あ、いや、やっぱり必要ですね。よろしくお願いします」

あずさ「はい、喜んで~♪」

あずさ「ですから、そうしたら……これをこうして」

P「ふんふん……なるほど」

律子「ふふ、これで真美も、きっと喜んでくれますよ!」

P「そ、そうだといいんだけどな」



【レストラン外】

真美・亜美「……」ペットリ

伊織「ちょ、ちょっとふたりとも! 窓に顔くっつけるのはやめてよね!」

伊織「他のお客さん、奇異な目線でこっちを見てるじゃない!」

真美「でも~……」

亜美「兄ちゃん達、楽しそうだね」

真美「うん……こっから何話してるか、聞こえないかな~」

伊織「聞こえるわけないでしょ! こ、こっちまで恥ずかしいわ、もう……!」

【駅】

P「――ふたりとも、重ね重ね、今日はありがとう」

律子「お礼なら、日曜が終わったあとでもいいですよ」

あずさ「うふふ、がんばってくださいね。私達も、ステージの上から、お二人のことを応援していますから」

P「ええ……とりあえず、まだ一日ありますから、色々と自分でも考えてみることにしますよ」

プォォー……

P「っと……電車が来たみたいだな。それじゃあ、ここらへんで」

律子「はい! お疲れ様です」

あずさ「お疲れ様ですー、プロデューサーさん、律子さん。それでは……」

テクテク

律子「って、あずささん!? あなたの家はそっちの路線じゃないでしょう!?」

あずさ「あ、あら? 私ったら……」

律子「まったく……心配ですから、私もついていきます」

あずさ「ごめんなさいね、律子さん……」

P(あはは……相変わらずだな、あのふたりは)

亜美「お、兄ちゃんがやっとひとりになったっぽいね!」

真美「……」

伊織「……? どうしたのよ、真美」

亜美「突撃しないの~? やいやい、どーいうことだー! ってさ」

真美「……今日はやめとくよ~」

伊織「今日は、って……」

真美「そ、それよりいおりん! 真美、おなかすいちゃった。ご飯食べに行こーよ!」

伊織「うーん、あんたがそれでいいなら、それでもいいけど……って、真美?」

真美「ん? ど、どったの?」

伊織「あんた、顔が……」

亜美「うあうあー! 真美、どうしたの!? 真っ赤になってるよ~!」

真美「え? そ、そうかな……けほ、こほ」

伊織「……ほんと、あんたってバカね」

真美「……」

伊織(バカなのは、ひとりで見張るんだって言った真美を、あのまま外にほっといた……私もだけど)

伊織「……しかたないわね、もう」

ポパピプペ

伊織「……あ、もしもし新堂? ええ。今から帰るから、迎えに来てちょうだい」

伊織「ゲストがふたりいるから、遅れないようにね。それじゃあ……」

ピッ

真美「いおりん……?」

伊織「あんた達は今日はそのまま帰りなさい。送っていってあげるから」

真美「……ごめんね」

伊織「いいわよ、そんな言葉」

伊織(バカな私には、もったいないわ)

ガチャ

新堂「おまたせしました、お嬢様」

伊織「ええ。さ、ふたりとも。中に入って」

真美「おじゃましまーす……」

亜美「うあうあー! めっちゃ広いね! 事務所の車とは全然違うよ~!」

伊織「にひひっ、トーゼンでしょ! ……って、こら亜美! 寝っ転がらないの!」

亜美「だって~。フッカフカなんだもん!」

伊織「ったく……いーい? そこにはね……」チラ

真美「……?」

伊織「……真美を、寝かせてあげなさい」

亜美「! そ、そうだね……ごめんね、真美」

真美「……うん」

ブロロロ……

伊織「……ねぇ、真美。寝ながらでいいから、聞いてちょうだい」

真美「ん……?」

伊織「どうして、ここまでがんばるの?」

真美「……わかんない」

伊織「……そう」

亜美「いおりん、真美はね、兄ちゃんのことが……」

伊織「わかってるわよ、そんなこと。だけど、これだけはまだわかんないの」

伊織「……恋って、そんなに大切なこと? 体を崩してまで、あの変態のことを見張っていることが必要なの?」

真美「……わかんない。わかんないけど……でも」

伊織「……」

真美「言葉じゃ、うまく言えないけど……嬉しいよ」

伊織「嬉しい?」

真美「……兄ちゃんはね、褒めてくれるんだ」

伊織「褒める?」

真美「真美がオーディションに受かったときとか、レッスンを頑張ったときとか」

真美「めっちゃ、めーっちゃ……もういらない、ってくらい、褒めてくれるんだよ~」

伊織「……そうなの」

真美「んっふっふ~! それに、イタズラしたって、兄ちゃんならドーンと受けてくれるし」

真美「いっしょにいて、いつだって楽しいって言うか……」

真美「次はどんなことをしたら、兄ちゃんはどんなリアクションをしてくれるのか、って……気になって」

亜美「真美……」

真美「……そんでね。いつからか、わかんないけど……」

真美「兄ちゃんが、他の子と仲良さそうにしてたら、やだなって思うようになったんだ~」

亜美「……亜美だって、前に真美に怒られちゃったもんね」

真美「兄ちゃんは、亜美のじゃなくて、真美の兄ちゃんだもん! トーゼンっしょ?」

真美「だからね、こう……声が出ないくらい、真美はね……」

伊織「……!」

真美「兄ちゃんのことが……」

伊織「……もう、いいわ」

真美「……」

伊織「はい、ハンカチ。そのみっともない顔、拭きなさい」スッ

真美「……ありがと……」

グシグシ

真美「……とにかくね、そう思えるのは、なんか……嬉しい」

真美「兄ちゃんのためなら、どんなことでも、めっちゃがんばろーって気持ちになるんだよ~」

伊織「……そう。でも、ストーカーまがいなことは、もうやめなさいよね」

真美「えへへ……」

伊織「今日みたいにあんたが体を壊したら、あんたの大好きなアイツが、どう思うかくらい……わかるでしょ?」

真美「……うん」

―――
――


真美「……けほ」

亜美「真美、だいじょぶー……? ほら、つかまって」

真美「うん……」

亜美「送ってくれて、ありがとね、いおりん」

伊織「気にしないでいいわ。……それより、亜美?」

亜美「んー?」

伊織「真美のこと、ちゃんと休ませてあげるのよ」

亜美「……うん」

伊織「それじゃ、また明日ね」

【ふたりのお部屋】

亜美「……ねぇ、真美」

真美「んー……?」

亜美「明日、お休みしちゃおーよ」

真美「……ダメっしょ~。お仕事、入ってるもん」

亜美「でもでも~……」

真美「兄ちゃんに、またメーワク、かけちゃうから」

亜美「……」

真美「……おやすみ、亜美」

亜美「うん……おやすみ、真美」

お昼ご飯食べる

            / /  /    ,>: : , -------ミ: ヽ  \

             / /  ,イ    /, <         \\  \
              /:/   ,'   //             \}  |
          /:/   /   .l/  }     }  }    |   ! V  !
          |::|  /!     |  ,'     ,'  ,'    }   }  }  |
          |::l   /|    | /    /  /    ,'   ,' | !
          / :l   /!    |_/___/__/__/__/  |  |
.           /: :/  /|    | /||ll-===='||||llllll|||ー===\_ノ  ,'
          /: :/  //|    l/ll|__,x===ミヽ   //-ミ||||l/  ,'
          |: /.   //!     |  |l 、_≦ラ_ノ/   /´r=ゥヽ/   /|
         |/    /!    |    ` ̄´´  {||lトニニ//  ./! !
        /    //l      !、                }  / |∧
.       /    ///|     ! \    ____    八   { ∧
      /     / 厶ィ!    .ト、__ \  ` ー一'´ , <Y     !  .∧ 食事代行はよ…
.     /  > '´⌒ヽ |     i/人__ノ> ニ <  、∑V   |    ',
     / /       !     l / /ー(_ノl\_ノlーヘ∨}   |\   }
.    / /         |     |/ /  / /@ | |  ∨,|   !  \ノ

諸事情により遅れた
保守してもらっちゃってごめんなさい
再開します

【翌日、765プロ事務所】

P「……」ソワソワ

P(なんだろう……ソワソワして落ち着かないな)

P(昨日あんなことがあったから、真美と顔を合わせるのが恥ずかしいのか?)

P(それとも……)


ガチャ

P「!」

真美「お、おはようございまーす……」

P「あ、ああ。おはよう、真美」

真美「……」

P「……?」


P(どうしたんだろう、なんか、いつもより元気がない気がする……)

P「えーっと、真美……」

真美「ん、なに、兄ちゃん」

P「その、だな……昨日は、すまなかった」

真美「え? な、なんのこと?」

P「……正直に言うよ。実は、自分でもよくわかっていないで謝ってる」

真美「……」

P「でも、確かに昨日の午後から、真美の様子はおかしかっただろ?」

P「きっと、俺が何かしてしまったんだと思う……どうか、わけを教えてくれないか?」

真美「……えへへ」

P「え? な、なんで笑って……」

真美「兄ちゃん! そんなのはもう、昨日の話っしょ?」

真美「真美は過去にとらわれない女なんだよ~。だからもう、だいじょうぶい!」

P「……許して、くれるのか?」

真美「……うん!」

真美「それより兄ちゃん兄ちゃん! 今日の真美のお仕事は~?」

P「ん、ああ……えーっと、今日はこのあと、13時までレッスン……」

真美「うんうん……」

P「それから、新曲のレコー……って、真美!?」

真美「え……?」

P「お前、どうしたんだ、その顔!」

真美「か、顔? んっふっふ~……いつもどおり、かわいいっしょ?」

P「いや、そりゃそうだけど……」

真美「……」カァァ

P「さらに真っ赤になったじゃないか……!」

P(これ……もしかして、風邪か?)

真美「……」

P「……なあ、真美」

真美「えー……?」

P「体調、崩してるんじゃないか?」

真美「そ、そんなことないっぽいよ! 真美はいつも以上に、フルパワーで……」

P「……ちょっと、おでこさわるぞ」

ピト

真美「ひゃあっ」

P「……」

P(やっぱり、少しばかり熱があるみたいだ。それほど大熱ってわけでもないけど……)

真美「うぅ……に、兄ちゃん! もういいっしょ!」

P「……ああ」

P「……今日は休もう。な?」

真美「えぇ!? だ、ダメダメ! そしたら……」

P「レコーディングのことなら、俺が連絡をつける。レッスンだって、一日くらい休んだって問題はない」

P「それより……俺は、真美がこれ以上具合が悪くなるのを、見ていられないんだよ」

真美「で、でも~……!」

P「……大丈夫、なんの心配もないよ。テレビとかの収録じゃなくて助かった」

真美「そんなんじゃなくって!」

P「っ!」

真美「けほ、こほ……」

P「……なぁ、真美」

真美「え……?」

P「お前……なんでそんなに、頑張ろうとしてるんだ……」

真美「……そんなの、決まってるっしょ?」

P「……」

真美「兄ちゃんに、褒められたいから……」

P「ほ、褒める?」

真美「そだよ。兄ちゃんに褒められたら、真美は、すっごく嬉しくなるんだから」

P「……無理して頑張ったって、俺は褒めてやることは出来ないぞ」

真美「でも……っ!」

P「でもじゃない!」

真美「兄ちゃんのわからずやっ!」

P「わからずやなのはどっちだ! いいから、送っていくから、今日は家に帰って――」

真美「真美はねっ!」


真美「……真美はね、兄ちゃんのことが好きなんだよ!」

ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/   ゙̄`ー-.、     u  ;,,;   j   ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\   ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
'"       _,,.. -─ゝ.、   ;, " ;;   _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ  | 、  .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
  j    /   ,.- 、  ヾヽ、 ;; ;; _,-<  //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─--  エィ' (. 7 /
      :    ' ・丿   ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、  i     u  ヾ``ー' イ
       \_    _,,......::   ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... '  u ゙l´.i・j.冫,イ゙l  / ``-、..- ノ :u l
   u      ̄ ̄  彡"   、ヾ ̄``ミ::.l  u   j  i、`ー' .i / /、._    `'y   /
              u      `ヽ  ゙:l   ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_   ̄ ー/ u /
           _,,..,,_    ,.ィ、  /   |  /__   ``- 、_    l l  ``ーt、_ /  /
  ゙   u  ,./´ "  ``- 、_J r'´  u 丿 .l,... `ー一''/   ノ  ト 、,,_____ ゙/ /
        ./__        ー7    /、 l   '゙ ヽ/  ,. '"  \`ー--- ",.::く、
       /;;;''"  ̄ ̄ ───/  ゙  ,::'  \ヾニ==='"/ `- 、   ゙ー┬ '´ / \..,,__
、      .i:⌒`─-、_,....    l   /     `ー┬一'      ヽ    :l  /  , ' `ソヽ
ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i

P「な……!?」

真美「けほ、こほ……」

P「な、何を急に言って――」

真美「……――が、一番知ってるんだから」

P「え……?」

真美「真美の気持ちは……」

P「……」

真美「……ねぇ、兄ちゃん」

P「あ、ああ……なんだ?」

真美「レッスンは、その……おやすみするよ。だから……」

P「……」

真美「午前中、休むからさ……治ったら、午後のお仕事、行ってもいい?」

P「……わかった」

P「ほら、ソファに横になってな」

真美「……うん」

P「いま、常備薬を持ってくるからな。あと毛布も……」

真美「……ごめんね」

P「……俺は、真美のプロデューサーだぞ。これくらい、当たり前だ」

真美「そっか……そう、だよね」

P「……」



P(……真美)

P(俺は……自分のことで浮かれて、こんなことにも気づかずに……)

P「ほら、薬」

真美「……ありがと。んく、んく……」

P「……」

真美「……ぷは。……ねぇ、兄ちゃん」

P「ん?」

真美「あの、さ……さっきの、どう思った?」

P「……さっきの、好きだ、ってやつか?」

真美「うん……」

P「……俺も好きだよ。真美のことは」

真美「! そ、それじゃあ……」

P「それ以上は、体調が治ってから、言う。だから……今は眠っておいてくれ」

真美「……うん」

―――
――


真美「……すぅ、すぅ……」

P「……」

ガチャ

ピポパ……

P「……あ、もしもし。いつもお世話になっております、私、765プロダクションの……」

P「ええ、はい……実は、本日のレコーディングなんですが……担当が体調を崩してしまいまして」

P「……はい、はい……申し訳ありません、ご迷惑をおかけします」

P「それでは……はい、失礼します」

ガチャ


P「……さて、次は……」

P「……ああ、わかった。それじゃあ……」

ガチャ

P「さて、と……」

グイッ

真美「んむぅ……zzz……」

P「……はは、重くなったな、こいつめ」

小鳥「……プロデューサーさん」

P「……音無さん」

小鳥「お家、行かれるんですね」

P「ええ……こんなところじゃ、治る体調も治りませんからね。送っていきます」

小鳥「ふふっ、きっと、その背中の子、怒ると思いますよ?」

P「……わかっています。でも……」

小鳥「……」

P「俺は、プロデューサーですから。アイドルの体調管理は、俺の仕事です」

小鳥「プロデューサーさんは、プロデューサーさん……」

P「そうですよ、それ以外、何者でもありません」

小鳥「ふふっ、そうですね。たとえ……、担当の子じゃなくても、あなたはみんなのプロデューサーさんです」

P「ええ、もちろんです」

小鳥「行ってらっしゃい」

P「……行ってきます」




P「……さ、帰るぞ。亜美」

お?

ブロロロ……

真美?「……うぅん。ゆ~れ~るぅ~」

P「っと、起こしちゃったか」

真美?「……兄ちゃん? あれ? ここどこ?」

P「車の中だよ」

真美?「あ、もしかして、もうお仕事の時間になっちゃってた?」

P「いや……そうじゃない」

真美?「……?」

P「今から、お前の家にいくんだよ。帰らせるためにさ」

真美?「え……えぇ!? なな、何で!? 約束と違うじゃん!」

P「……悪いな。でも、レコーディングなんてどうせ出来ないだろ?」

真美?「そ、そんなことないもん!」

P「いーや、そんなことある。だって、歌えないだろ? たとえいくら全快したって、お前には歌えない。だって……」

P「これは、真美の曲だから。亜美には歌えない」

真美?「……!」

亜美「……いつから気付いたの?」

P「……正直、最初はわからなかった」

亜美「……」

P「でもさ、さっき……」


『……真美はね、兄ちゃんのことが好きなんだよ!』


P「って、言われたときから……なんとなく、へんだなって思ったんだよ」

亜美「へん……?」

P「ああ、そうだ。だって、最近の真美なら、俺のことを素直に好きだなんて言わない」

亜美「……」

P「あいつならきっと……好きじゃねーし、ちげーし! って言うだろう」

P「何を思ったのか、最近はときどき、真美はそんなキャラになるからな」

亜美「んっふっふ~……そうかもね! でもそれ、最初は亜美がやり始めたんだよ?」

P「はは、そうだったのか……」

そういうことか…社長だったのか

P「さっき、律子にも連絡を取ったんだ。そしたら案の定、亜美がレッスン場に来ていないって聞いた」

亜美「それでバレちゃったんだ……」

P「というか、バレないとでも思ったのか? 入れ替わるにしても、適当すぎるぞ」

亜美「えへへ……けほ、こほ」

P「……でも、亜美だって体調を崩しているのは確かだ。横になって、寝てなさい」

亜美「……うん」

ポスン

亜美「いおりんのお家の車と、ゼンゼン違うね。固すぎっしょ~」

P「悪いな。もっと良い車を買えるように、お前のプロデューサーに頼んでくれ」

亜美「んっふっふ~……律っちゃん、ケチンボだからな~」

P「あはは、違いない」

亜美「……ねぇ、兄ちゃん」

P「ん?」

亜美「……さっきの、あれ……」

P「あれ、って……」

亜美「……ごめんね」

P「……どうして謝るんだ? 俺は別に、怒ってなんか……」

亜美「兄ちゃんが怒ってなくても……」

P「……」

亜美「……ごめんね」


亜美「ごめんね……真美……!」

亜美「亜美……、亜美は……」

P「……大丈夫だよ」

亜美「うぅ……」

P「お前は、姉思いの、立派な妹だ……俺が保証する」

亜美「で、でもっ……」

P「……心配しなくても、誰も、不幸になんかならないよ。もしそうなったら、俺のこと思いっきり殴ってくれていい」

亜美「……イタズラ百連発でもいい?」

P「ああ、もちろん」

亜美「んっふっふー! 自信満々っぽいね、兄ちゃん」

P「そりゃそうだ。だって俺は、あの真美のプロデューサーだぞ」

亜美「そうだね……えへへ」

P「……家に着くまで、もう少しある。寝てなさい」

亜美「はーい……」


亜美「……ねぇ、兄ちゃん」

P「ん?」

亜美「最後に……」

亜美「最後に……うそ、じゃなくて……入れ替わりでもなくて……」

亜美「兄ちゃんのこと、亜美は、本当にだいすきだよ」

P「……」

亜美「……真美の大好き、とは、違うかもしんないけど」

P「……ありがとう。俺も、亜美のことは大好きだぞ」

亜美「えへへ……だから時々は、真美だけじゃなくて、亜美とも遊んでね?」

P「ああ、もちろん」

亜美「ぜったい……やくそく……だか……」

P「……」

亜美「んね……」

P「……おやすみ、亜美」

亜美「……zzz……」

【双海家の玄関前】

P「……ここか。おーい、亜美~」ユサユサ

亜美「んん~……」

P「家に着いたぞ。起きてくれ」

亜美「んも~……あと五十分~……」

P「どれだけ寝るつもりなんだ……ほら」

グイッ

亜美「うひゃあ! に、兄ちゃんのエロエロ~!」

P「ひ、人聞きの悪いこと言わないでくれ! ちょっと腕を掴んだだけだろ!?」

亜美「うあうあ~! 亜美が弱っているところにつけこんで、オトナの関係せまろうとしてるんだ~!」

P「まったく……それだけ元気なら、もうひとりで部屋に帰れるな?」

亜美「……あ……」

亜美「……おんぶ」

P「えー……」

亜美「亜美、もう熱でうなされて死んじゃうから、おんぶ!」

P「それなら、病院に行ってぶっとい注射を打ってもらわないといけないな。双海クリニックに行くか?」

亜美「うあうあ~! 亜美は妹だから、兄ちゃんにおんぶしてもらったら治んの!」

P(言ってる意味がわからない……けど、まぁ)

P「……わかったよ、ほら」

亜美「!」

P「どうした、乗りな」

亜美「……う、うん」


ポフン

亜美「……兄ちゃんの背中、でっかいね」

P「そうか?」

亜美「うん……やっぱり、いいなぁ。真美……」

P「……」

ピンポーン

P「あれ? 出ないな……」

亜美「いま、パパもママもいないはずだから……これ、鍵」

P「……お、おう」

亜美「……兄ちゃん、へんなこと考えてるっしょ~?」

P「そ、そんなわけないだろ? まったく……」


ガチャ

P「おじゃましまーす……さて、お前達の部屋は……」

亜美「ねぇ、兄ちゃん」

P「ん?」

亜美「……真美に、顔出してあげて」

P「……ああ」


P(……これまで、はっきりとは聞いてなかったけど……)

P(やっぱり、亜美が体調を崩したのは……真美にうつされたのが原因か……)

テクテク

亜美「……そこが、亜美達の部屋だよ」

P「あ、ああ」

亜美「よい、しょっと……」

スタン

P「亜美? どうしたんだ」

亜美「……亜美はオジャマ虫っしょ?」

P「いや、そんなことは……」

亜美「ここまでおんぶしてくれて、ありがとね、兄ちゃん!」

亜美「そこのママの部屋で寝てるから、帰るとき教えてね~! そんじゃっ!」トタタ

P「あ、ちょっと!」

P「……」

P「ひとりで真美とご対面とか……マジか……この状況で……」

ガチャ

P「……」

真美「……すぅ、すぅ……」

P「……真美」

真美「……むにゃむにゃ……」


P(寝ている……)

P(天使かよ)

P(かわいい)

P(ムラムラしてk……ああじゃない、そうじゃない)


P「……」

真美「……うぅん……にいちゃ~ん……」

P「……」ドキドキ

P(最低なことを考えてないで、しっかり様子を見ておこう)

P(……顔色は……思っていたより、悪くないみたいだ)

P(さすが医者の娘……いや、関係ないだろうけど)


P「……」

真美「……zzz……」


P(下心はない。だから、今から真美のおでこに手を載せるのは)

P(ただ、熱がないかどうか確認するだけで……)

P(それだけなんだからね)


ピト

真美「うぅ~ん……」

P「……」

真美「……ん?」

P「!」ドキッ

真美「……」パッチリ

P「……や、やあ真美」

真美「兄ちゃん……」

P「具合はどうだ?」

真美「にいちゃんがいるから、もう元気だよ~……えへへ」

P「そ、そっか」

真美「ん~……」スリスリ

P「!?」

真美「んっふっふ~……あったか~い」

P「お、おう」

真美「サイコーな夢っぽいよ~……」

P「……夢?」

真美「うん……」

真美「だって、そうっしょ? 兄ちゃんが真美の部屋にいるわけないっぽいもんね」

P「……」

真美「頭、撫でて~」

P「あ、うん……」

ナデナデ

P「……さらさらだな。亜美はちょっとクセがあるのに、真美にはないんだ」

真美「んっふっふ~……髪、伸ばしたからね。毎日ちゃんとお手入れしてるもん」

P「そっか……」

真美「……えへへ。気持ちいー……」

P「……なぁ、真美」

真美「んー?」

P「これは、夢だ」

真美「そうだね~……これは夢だよ~」


P(夢なら、何が起きても……許されるよな)

P(閃いた)

P「……真美。よく聞いてくれ」

真美「うん……なあに、兄ちゃん……」

P「……俺、さ」



P「真美のこと、愛してる」

真美「え……?」

P「……アイドルとしての真美もそうだし、いつもの、ありのままの双海真美も大好きだ」

真美「……」

P「いつも思ってるんだ」

P「なんでお前はもっと早くに生まれてなかったんだろう、って……」

P「13歳なんて……犯罪だからな」

真美「……え、えぇ……?」

P「生まれ変わったら、真美の中学校のクラスメイトになりたい。それが今の俺の最大の願いでもある」

P「そして真美のことを、影ながら……ずっと見てるんだ。席替えとかで席が近くになったら、きっとそれだけで小躍りするだろう」

P「というかいつも、こんな風に考えてるんだ。あー真美のクラスの男子全員爆発しないかなーって」

真美「に、兄ちゃん!?」

P「……それくらい、真美のことが大好きなんだ」

真美「……」カァァ

P「結婚してくれ。生涯養うから」

真美「うぇええ!?」

真美「……夢みたい」

P「……夢だよ。だから、言えるんだ」

真美「……」

P「真美は……その、どうだ?」

真美「どう、って……」

P「……俺のこと、やっぱり嫌いか?」

真美「な、なんでそんな……」

P「だって、真美、こないだこんなこと言っていただろ?」


『に、兄ちゃんのことなんか、全然、なんとも思ってねーし! むしろ嫌いだし!』


P「――ってさ」

真美「あう……あ、あれは……」

真美「あれは、その……亜美につられちゃっただけだよ……」

P「……そっか」

真美「ホントの真美は……」

P「……」

真美「真美……は……」

ポロポロ

P「……真美」

真美「あ、あれ? なんだろ、なんか……」


真美「……ここは、夢の中、なのに……」

真美「それに、嬉しくて、嬉しくて、しかたないはずなのに……」


ポロポロ……


真美「止まんない……!」

真美「……」

真美「……好き」

P「……!」


真美「だいすきだよぉ……兄ちゃん……!」

真美「兄ちゃんがいるから、兄ちゃんが褒めてくれるから、真美は頑張れるんだもん……」

真美「兄ちゃんと、ずっとずっと、離れたくないんだもん」

真美「だから……真美も、いっしょ、なんだよ」

真美「兄ちゃんといっしょで、真美も……兄ちゃんのこと、大好き」

P「……よかった」

真美「え……?」

P「ははは……俺さ、こないだ、音無さんの前で泣いちゃったんだよ」

P「真美に嫌われた、って勘違いしてしまって……」

真美「……んっふっふ~。真美が兄ちゃんのこと、嫌いになるわけないっしょ?」

P「……」

真美「だって、真美と兄ちゃんは……これまでずーっと、いっしょだったもんね!」

P「……! あ、ああ、そうだな……!」

真美「それに……これからだって、そうっしょ?」

P「ああ、もちろんだ……」

真美「……ねぇ、兄ちゃん」

P「ん?」

真美「……これ、夢なんだよね」

P「……ああ」

真美「それじゃあ、もうすぐ覚めちゃう?」

P「うん……そうだな。シンデレラはベッドで寝る時間だ」

真美「じゃあさ、じゃあさ……最後に、真美のお願い、聞いてくれる?」

P「お願い? ああ、いいぞ」

真美「んっふっふ~! それじゃあ……ちょっと、顔、こっちに近づけて?」

P「え? こう、か――」






真美「……おやすみ、兄ちゃん」

P「……あ、ああ」

真美「また、ね……」

真美「……すぅ、すぅ……」

P「……おやすみ、真美」


P「さて、と……これからどうするかな」

P「まず、亜美に帰ることを伝えて……それから一旦、事務所に寄っ……て……」

亜美「……」

P「おやおや、亜美ちゃんじゃないか」

亜美「そういう君は、兄ちゃんくんではないか」

P「ははっ! いつからそこにいたんだい?」

亜美「んっとね、兄ちゃんがおでこに手を載せたあたりからかな~」

P「そっか……そっかそっか」

亜美「え、えへへ……」

P「くぃどぅるるるるる」

亜美「に、兄ちゃん! お、落ち着いて~!」

P「あ、ああ……ごめん。ちょっと冷静さを失っていたよ」

亜美「……んっふっふ~。真美ったら、オトナの階段のぼっちゃいましたなぁ~……」

P「……見た?」

亜美「ばっちし!」

P「……」

亜美「真美と兄ちゃん……ちゅーして――」

P「ちょ、ちょっと、捕まっちゃうから、大声で言わないでくれ!」

亜美「うあうあ~!」

【部屋の外】

P「まったく……それで、体調はどうなんだ?」

亜美「うんっ! もうばっちりっぽいよ! 車で起きたときには、ホントはもう元気いっぱいだったもん」

P「そうか……ということは、嘘ついておんぶさせたんだな?」

亜美「あ……えへへ」

P「……まぁ、いいけど」


亜美「ねぇねぇ、それより兄ちゃん。明日、どうすんの?」

P「明日って……あ」

亜美「あー、やっぱりデートのこと、忘れてたっぽいね~」

P「すっかり……あはは」

亜美「んっふっふー! そんだけ、真美のことが心配だったのかな?」

P「……」

亜美「結婚してくれ。生涯養うから……」

P「やめてくれ……恥ずかしくて死んじゃう」

     /  `   ` _ )
   / ̄  _,,ニ=‐─'´ー''',、
   ゝ-┬l;;;        ヽ
    l// |;;         _l

    l ,./;;   (ニ=、  , ,=ニ
   /イr'ヽ;   ー=^、', ', r^'l
   ノ/ l l、!l   `'''''  ヽ`´!

  . レ  〉、`ヽ     ノー-‐' l
      lゝノ''l    ,イメ三ヾ、!
     /、 l ヽ   〃 ,,, リ,,/l! (私の出番ではないみたいだな…)
   , -l:::ヽヽ、 ヽ、,l!___l;;;;;;;;;lヽ、

  ´   l::::::ヽ ヽ`ー─ヽ;;;;;;l::l `

P「……そろそろ、お暇するよ。仕事もあるしな」

亜美「そっか~……」

P「今日のことは、律子にも報告しとく。真美と入れ替わってレッスンサボったってな!」

亜美「うあうあ~! 兄ちゃん、それはズルっしょ~!」

P「はっはは! それが嫌だったら、さっきのアレは黙っておくんだな」

亜美「ぐぬぬ……ちぇっ、しょうがないなぁ~」





亜美「そんじゃーね! ばいばい、兄ちゃん」

P「ああ。亜美も、油断せずにちゃんとあったかくして寝ろよ?」

P「明日、体調が少しでも悪いなと感じたら、すぐ俺か律子に連絡するんだ」

亜美「うん! でもだいじょぶだよ~、きっと。ちゃーんと、コンサートできるもんね!」

P「期待しておくよ。それじゃあ……」

亜美「ばいばーい!」ブンブン

亜美「さてさて……」

トテトテ


ガチャリ

亜美「まーみー」

真美「……」モゾモゾ

亜美「んっふっふ~。亜美だよ→☆」

ユサユサ

真美「…………風邪、うつっちゃうっぽいから、部屋に入っちゃダメっしょ」

亜美「えー? でも、もう治ってるっしょ?」

真美「そ、そんなことないもん!」

亜美「……」

亜美「にいちゃんがいるから、もう元気だよ~……えへへ」

真美「うあうあ~!!!!」

亜美「……よかったね、真美」

真美「な、なんのこと?」

亜美「んっふっふー! 言ってもい・い・の?」

真美「うぅ……」

亜美「おじゃましまーっす」

モゾモゾ

真美「うぇ!? あ、亜美~!」

亜美「……」

ぎゅぅぅ

真美「あ、亜美……?」

亜美「……ほんとに……」


亜美「よかったね、真美……!」

真美「……ありがとね、亜美」

ぎゅぅぅ

亜美「わぷ」

真美「だいすきだよ……」

亜美「……うん。亜美もだよ~」

真美「えへへ……最近はあんまり、こういうこと言わないから、ちょっと恥ずかちいね」

亜美「次は、ちゃんと兄ちゃんにも言うの?」

真美「……わかんない」

亜美「そっか~……」

真美「夢の中のことにされちったかんね……」

亜美「でも、もう答えもわかってんじゃん」

真美「……でも、中学生に手を出したら、犯罪なんだよ~?」

亜美「あ~……ごほん! 真美くん」

真美「え? な、なに?」

亜美「……昔、えらい人がこう言いました」


『スリルのない愛なんて 興味あるわけないじゃない。わかんないかな』

『タブーを冒せる奴は 危険な香りまとうのよ。覚えておけば?』


真美「……!」

亜美「ね!」

真美「お、オトナっぽい……!」

亜美「んっふっふ~!」

真美「そっか~……時代はスリル……タブーを冒せない兄ちゃんなんて、ダメダメっぽいね!」

亜美「そうだよ~!」

【翌日、日曜日(デート当日)】

P「……」

P(本当は、真美の体調を考えて、中止にしようかと思ったけど……)

P(真美から、絶対行くから、と連絡がきてしまった)

P(それで、中止なんかになったら、兄ちゃんのこと嫌いになると……)


P「そう言われたら、しかたないよな……」ソワソワ

真美「に~いちゃん♪」ヒョコ

P「! お、おお、おはよう、真美!」

P(今日もかわいい! 私服がまぶしいよ、真美!)

P「と、そのまえに……」

ジロシロ

スンスン

真美「え? な、なになに?」

P「……うん、お前は間違いなく真美だな」

真美「そうだけどー、なんで? 一目見たらわかるっしょ?」

P「う……すみません」

真美「なんで謝んの~!?」

P「あ、いや……ほら、そろそろ開園だし、行こうか」

真美「うあうあー! 待ってよ兄ちゃーん!」

真美「……えいっ」


ぎゅっ


P「……!?」

真美「……えへへ」

P「ま、真美……その、手」

真美「つないでちゃ、ダメ?」

P「い、いや……そんなことはないけど」

真美「だよねっ! さー行くよ、兄ちゃん!」


P(嬉しい、嬉しいけど……)

P(本当に……タイホされないだろうな……俺……)

P(真美の手の平。柔らかい)

P(ぷにぷにしたくなるな……)


真美「兄ちゃん?」

P「は、はいっ!?」

真美「なんかちょっと……、そんなにプニプニしてたら、くすぐったいっしょ?」

P「あ、ああ、ごめん」

真美「……」

P「……えーっと……」

真美「ねぇ、兄ちゃん。昨日はお仕事サボって、ごめんね」

P「あ、いや、大丈夫だよ……亜美から、ちゃんと連絡きてたし」

P(という設定にしておいてある。真美は昨日、俺が自宅にいったこと、知らないはずだからな)

P「それより、真美の体調が復活したみたいでよかったよ」

真美「……兄ちゃんは、優しいね」

P「そりゃそうだ。俺はお前のプロデューサーだぞ」

真美「そっか~……」

P「なんで風邪なんて引いちゃったんだろうな。前日はあれだけ元気だったのに」

真美「うむ、それにはピヨちゃんの小皺よりも深く、あずさお姉さんのムネムネくらい高い理由があるんだよ~」

P「そうすか……あとで音無さんに謝っておけよ」

真美「んっふっふ~!」


テクテク


真美「……ねぇ、兄ちゃん。聞いてくれる?」

P「うん、どうした?」

真美「……真美ね、昨日、夢を見たんだ」

P「……夢?」

真美「うん! すーっごい、ちょー素敵な夢だった!」

P「……そっか」

真美「夢の中ではね、兄ちゃんも出てきたんだよ」

P「ははは……こりゃ、出演料をいただかないとな」

真美「……真美がオトナになったら、払ったげる」

P「オトナ?」

真美「うん。……16歳になったら、ね!」

P「……っ」

真美「ほらほら、兄ちゃん兄ちゃん! もうすぐ、亜美達のステージ、始まるっぽいよ!」

P「あ、ああ……」


P(今の、真美の顔は……)

P(俺が今まで、見たこともないほど……大人っぽくて、美しい顔だった)

P(……ずっと子どもだと思っていたけど……知らないうちに、真美は一歩一歩、成長しているんだな……)

P(そんな顔も、また俺は――)


ざわざわ……


真美「兄ちゃん」

P「ん?」

真美「えへへ……一回しか言わないから、よく聞いてね」

P「なんだなんだ、誰かのモノマネか?」

真美「うあうあー! そんなんじゃないって~!」


 ざわ、ざわ……


『みーんなー! 今日は、この伊織ちゃんのために集まってくれて、ありがと~!』

『うあうあー! いおりんのためだけじゃないっしょ~!』

『あら、そうかしら? でも亜美目的の人が仮にいたとしても、そんなの、ほんのちょびーっとだけじゃない?』

『まぁ、ふふっ……伊織ちゃんったら、そんな風に言っちゃダメよ~?』

『にひひっ♪ ジョーダンよ、ジョーダン!』

真美「兄ちゃん……」

P「……」


『ま、そんなお決まりのやりとりもこのへんにして……それじゃあ、さっそく行くわよっ!』

『うん! そだね! せっかくみんな来てくれたのに、つまんないって言って帰っちゃうかもだしね!』


真美「……これからも、ずっと、ずーっと、一緒にいてね!」

P「……ああ、もちろんだ!」

真美「えへへ……兄ちゃん兄ちゃん!」

P「ん、今度はなんだ?」


『それでは皆さん、聴いてくださいね~! 私達、竜宮小町の新曲……』


真美「……だーいすきっ!!」


『ハニカミ! ファーストバイト!』

 
 
――…… 今日は初めてのウェディング バージンロードにご入場 ……――


――…… わたしもパパと できるかな? ……――




――…… ハニー ハニー ハニーなdish  シュガーシュガーシュガーなkiss……――

――…… めくるめくの 愛の味 ……――



―――
――

―――
――



小鳥「……以上、あの伝説の竜宮小町による、今日だけの復活ライブでした!」



パチパチパチ……


小鳥「いいですよね、『ハニカミ! ファ-ストバイト』……」

小鳥「……ふふっ、私もいつかはこんな風に……って、違う違う」

小鳥「おっほん! えー、それでは続きまして、新郎新婦のご友人代表として……高木順二郎から、ご挨拶を……」




P「ははは……相変わらずだな、音無さんは」

真美「えへへ……そうだね、兄ちゃん」

P「……なあ、真美」

真美「んー?」

P「……夢、叶っちゃったな」

真美「……そだね」

P「どうだ、気分は」

真美「……夢みたい」

P「俺もだよ……」


真美「でも……」

P「ああ」


P・真美「夢じゃない!」

真美「えへへ、兄ちゃん兄ちゃん!」

P「どうした?」


真美「今度は、ホントのホントに、言うかんね。あのときみたいに、聞こえないフリしちゃ、やだよ?」

P「……あ、あはは……うん」


真美「……兄ちゃん」



真美「……だーいすきっ!!」


終わり

終わりです、読んでくれた方ありがとう
ご指摘の通り>>195は順二郎じゃなくて順二朗ですね。すみません
思春期まっさかりの真美も最近なかったし、たまにはいいよね かわいい

            ノヘ,_
    ,へ_ _, ,-==し/:. 入
  ノ"ミメ/".::::::::::::::::. ゙ヮ-‐ミ

  // ̄ソ .::::::::::: lヾlヽ::ヽ:::::
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 ノ:::|:::l{::.|」ム‐ ゛ ,,-、|::|:|:::: ノ   /    /   /  | _|_ ― // ̄7l l _|_
 ヽ::::::人::l. f´i  _l :i |:|リ:ζ  _/|  _/|    /   |  |  ― / \/    |  ―――
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 ヽ(_  lt|゙'ゝ┬ イ (τ"

       ,、ヘ__>}ト、
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